JP2004069760A - 反射防止膜および画像表示装置 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、防汚層又は保護層を有する反射防止膜およびそれを用いた画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
反射防止膜は、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような様々な画像表示装置に設けられている。反射防止膜としては、透明支持体上に金属酸化物を化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法により形成した透明薄膜を積層させた、光透過性に優れる反射防止膜、及び製造が容易で生産性が高い、塗布により形成された反射防止膜等が種々提案されている。これらの反射防止膜は、擦れ等による傷防止、手垢、指紋、汗等の付着しない耐防汚性、水分付着しにくい等の性能が求められる。
【0003】
基材表面を汚れから保護し、耐傷性を向上させるために、含フッ素化合物や含シリコーン化合物等を含む撥水性及び/又は撥油性の化合物を表面側に設ける対策が開示されている。
例えば、気相法による無機物積層の反射防止膜において、例えば、特開11−129382号公報記載のケイ素酸化物層をCVD法で設けるもの、特開平1−258405号公報、特開2002−144369号公報記載のフッ素系シラン化合物やフラクタル構造の金属酸化物の皮膜を設けるもの、特開2001−281412号公報、同2002−82205号公報記載のフッ素含有のシラン化合物や高分子の皮膜を設けたもの等が提案されている。
【0004】
また、塗布型反射防止膜の最上層として、例えば、特開平10−33321号公報記載のパーフルオロポリエーテル含有のシラン化合物から形成された皮膜、特開2000−75105号公報、同2001−100003号公報等に記載の側鎖にポリオルガノシロキサンを含有の含フッ素ポリマーや、特開2000−284102号公報記載の側鎖にパーフルオロポリエーテル含有の共重合体から形成される保護膜等が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年、上記の画像表示装置は、画面の大版化が進むと共に、携帯電話等のモバイル表示装置の普及が盛んとなっている。これら表示装置の保護フルムの最上層は、手垢、指紋、汗、化粧等の付着汚れに対して容易に取り除きができること、クリーニングの繰り返しで傷や剥がれを生じないこと等への要望が一層求められている。
【0006】
従って、本発明の目的は、低屈折率層の表面が汚れから保護され、かつ耐傷性も改善されている反射防止膜を提供することである。
本発明の他の目的は、防汚性、耐傷性が良好で、生産性良好な反射防止膜を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、以下に示す(1)〜(6)の構成により達成されることが見出された。
(1) 透明支持体および隣接する層の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層が積層されている反射防止膜であって、該低屈折率層の上に下記一般式(I)で示される各繰り返し単位(成分(A)、成分(B)及び成分(C))を、各々少なくとも一種含有するグラフト共重合体(GP)を含むオーバーコート層がさらに積層されていることを特徴とする反射防止膜。
【0008】
【化2】
【0009】
式(I)中、R0はフッ素原子又は炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を表す。Xは、主鎖とポリシロキサン成分を連結する2価の有機残基を表す。
R1及びR2は、同じでも異なってもよく、各々脂肪族基又はアリール基を表し、R3、R4及びR5は同じでも異なってもよく、各々一価の有機残基を表す。pは、10から500の整数を表す。
Aは、架橋反応に関与し得る反応性基を少なくとも1つ以上含有する側鎖を有する構成成分を表す。
a〜cは、それぞれ全重合体成分中の質量%を表し、aは40〜90質量%、bは1〜30質量%及びcは1〜30質量%を表す。
【0010】
(2)上記のグラフト共重合体(GP)が、オーバーコート層の形成後に架橋している上記(1)に記載の反射防止膜。
(3)低屈折率層が微粒子を含むことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の反射防止膜。
【0011】
(4)上記屈折率層と上記オーバーコート層の間にポリマー層が積層されていることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の反射防止膜。
(5)透明支持体の屈折率よりも高い屈折率を有する高屈折率層が、透明支持体と低屈折率層との間に設けられている上記(1)〜(4)のいずれかに記載の反射防止膜。
【0012】
(6)画像表示面上に、透明支持体および隣接する層の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層がこの順に積層されている画像表示装置であって、該画像表示面の最上層に上記(1)記載のグラフトポリマー(GP)を含有するオーバーコート層が積層されていることを特徴とする画像表示装置。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の反射防止膜に関して説明する。
本発明の反射防止膜は、透明支持体、および隣接する層の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層が積層されており、この「隣接する層」は透明支持体であってもよい。
【0014】
[反射防止膜の層構成]
本発明の反射防止膜の基本的な構成を図面を引用しながら説明する。
図1は、反射防止膜の主な層構成を示す断面模式図である。図1の(a)に示す態様は、透明支持体(1)、低屈折率層(2)、ポリマー層(3)、そしてオーバーコート層(4)の順序の層構成を有する。透明支持体(1)と低屈折率層(2)は、以下の関係を満足する屈折率を有する。
【0015】
低屈折率層の屈折率<透明支持体の屈折率
【0016】
図1の(b)に示す態様は、透明支持体(1)、ハードコート層(5)、低屈折率層(2)、ポリマー層(3)、そしてオーバーコート層(4)の順序の層構成を有する。透明支持体(1)と低屈折率層(2)は、以下の関係を満足する屈折率を有する。
【0017】
低屈折率層の屈折率<透明支持体の屈折率
【0018】
図1の(c)に示す態様は、透明支持体(1)、ハードコート層(5)、高屈折率層(6)、低屈折率層(2)、ポリマー層(3)、そしてオーバーコート層(4)の順序の層構成を有する。透明支持体(1)、高屈折率層(6)および低屈折率層(2)は、以下の関係を満足する屈折率を有する。
【0019】
低屈折率層の屈折率<透明支持体の屈折率<高屈折率層の屈折率
【0020】
図1の(c)のように、高屈折率層6と低屈折率層2とを有する反射防止膜では、特開昭59−50401号公報に記載されているように、高屈折率層が下記式(i)、低屈折率層が下記式(ii)をそれぞれ満足することが好ましい。
【0021】
【数1】
【0022】
式(i)中、mは正の整数(一般に1、2または3)であり、n1は高屈折率層の屈折率であり、そして、d1は高屈折率層の層厚(nm)である。
【0023】
【数2】
【0024】
式(ii)中、nは正の奇数(一般に1)であり、n2は低屈折率層の屈折率であり、そして、d2は低屈折率層の層厚(nm)である。
【0025】
図1の(d)に示す態様は、透明支持体(1)、ハードコート層(5)、中屈折率層(7)、高屈折率層(6)、低屈折率層(2)、ポリマー層(3)、そしてオーバーコート層(4)の順序の層構成を有する。透明支持体(1)、中屈折率層(7)、高屈折率層(6)および低屈折率層(2)は、以下の関係を満足する屈折率を有する。
【0026】
低屈折率層の屈折率<透明支持体の屈折率<中屈折率層の屈折率<高屈折率層の屈折率
【0027】
図1の(d)のように、中屈折率層7、高屈折率層6と低屈折率層2とを有する反射防止膜では、特開昭59−50401号公報に記載されているように、中屈折率層が下記式(iii)、高屈折率層が下記式(iv)、低屈折率層が下記式(v)をそれぞれ満足することが好ましい。
【0028】
【数3】
【0029】
式(iii)中、hは正の整数(一般に1、2または3)であり、n3は中屈折率層の屈折率であり、そして、d3は中屈折率層の層厚(nm)である。
【0030】
【数4】
【0031】
式(iv)中、jは正の整数(一般に1、2または3)であり、n4は高屈折率層の屈折率であり、そして、d4は高屈折率層の層厚(nm)である。
【0032】
【数5】
【0033】
式(v)中、kは正の奇数(一般に1)であり、n5は低屈折率層の屈折率であり、そして、d5は低屈折率層の層厚(nm)である。
【0034】
図2は、本発明の好ましい態様における低屈折率層とポリマー層、オーバーコート層を有する反射防止膜の断面模式図である。図2に示す低屈折率層(2)は、微粒子(21)およびバインダー(22)を含む。そして、微粒子(21)間に空隙(23)が形成されている。空隙は、微粒子の内部に存在していてもよい。この低屈折率層の上に、ポリマー層(3)が設けられていることが好ましい。このポリマー層は、粒径が10nm以上のポリマーの微粒子を用いる、分子量が20000以上のポリマーを用いる等の手段により、低屈折率層の空隙を維持したまま層を形成することができる。このポリマー層(3)により、低屈折率層(2)の空隙(23)の開口部が塞がれるため、ポリマー層(3)の形成後に上にオーバーコート層(4)を設けた時、防汚層成分が空隙に拡散せず、空隙が維持されていると推定される。
【0035】
[オーバーコート層]
本発明のオーバーコート層は、前記一般式(I)で表される、主鎖がフッ素原子を主成分とし、側鎖にポリシロキサン成分を有するグラフト共重合体(GP)を、必要に応じて硬化剤及び/又は硬化促進剤等とともに、硬化されたマトリックス層である。
本発明の一般式(I)で示されるグラフト共重合体(GP)について詳細に説明する。
【0036】
グラフト共重合体(GP)中の重合体成分(A)中、R0は、フッ素原子又は炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を表す。R0がパーフルオロアルキル基を表す場合には、成分(A)に相当する単量体の重合反応性の観点からは、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基が好ましい。
【0037】
成分(A)は、全重合体成分中の質量%(a)として、40〜90質量%であることが好ましく、更には45〜80質量%が好ましい。
【0038】
グラフト共重合体(GP)の重合体成分(B)について説明する。
成分(B)中、R1及びR2は、同じでも異なってもよく、好ましくは各々置換されてもよい炭素数1〜12の脂肪族基又は置換されてもよい炭素数6〜14のアリール基を表す。
【0039】
ここで、脂肪族基は、炭素数1〜12の直鎖または分岐状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等)、炭素数2〜12の直鎖または分岐状のアルケニル基(例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基等)、炭素数3〜12の直鎖または分岐状のアルキニル基(例えばプロピニイル基、ブテニイル基、シクロヘキシニイル基、オクチニイル基等)、炭素数7〜12のアラルキル基(例えばベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、2−ナフチルエチル基等)、炭素数5〜12の脂環式(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、トリシクロデシル基、ビシクロオクチル基、トリシクロドデシル基等)等が挙げられる。
アリール基は、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基等が挙げられる。
【0040】
これらの脂肪族基及びアリール基は、更に置換基を有していてもよく、水素原子を除く1価の非金属原子構成の残基であれば限定されるものではない。置換基として、フッ素原子、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)が好ましい。R1、R2としては、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基、トリフロロメチル基、2,2,2−トリフロロエチル基、ベンジル基、フェニル基が好ましい。
pは10〜500の整数を表し、好ましくは50〜300であり、特に好ましくは100〜250の場合である。
【0041】
R3、R4及びR5はそれぞれ同じでも異なっても良く、1価の有機基を表す。好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、オクチル基等)、炭素数1〜10のアルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等)、炭素数6〜20のアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基等)であり、特に好ましくは炭素数1〜5のアルキル基である。これらの基は更に置換基を有していてもよい。
【0042】
Xは、主鎖とポリシロキサン成分を連結する2価の有機残基を表し、好ましくは下記式で表される2価の有機残基を表す。
【0043】
【化3】
【0044】
ここで、r11及びr12はそれぞれ水素原子又はフッ素原子を表す。nは1〜12の整数を表し、好ましくは1〜8の整数である。L0は、酸素原子とポリシロキサン部とを連結する2価の連結基を表す。具体的には、
【0045】
【化4】
【0046】
2価の脂環式基(脂環式構造の炭化水素環としては、例えばシクロヘプタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、ビシクロペンタン環、トリシクロヘキサン環、ビシクロオクタン環、ビシクロノナン環、トリシクロデカン環、等)、2価のアリール環基(アリール環としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環、等)で示される基等の原子団の任意の組合せで構成されるものである。
【0047】
上記において、r1、r2は同じでも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、ハロゲン原子、臭素原子、ヨウ素原子)又は炭素数1〜6の置換されてもよいアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、トリフロロメチル基、メトキシエチル基、シアノエチル基、クロロエチル基等)を表し、r3は、水素原子又は炭素数1〜12の置換されてもよい炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ベンジル基、フェネチル基、フェニル基、クロロフェニル基、メトキシフェニル基、アセチルフェニル基、トリフロロフェニル基等)を表し、r4、r5は、同じでも異なってもよく、炭素数1〜12の置換されてもよい炭化水素基(具体的には上記r3と同一の内容を表す)を表す。
【0048】
一般式(I)における成分(B)において、Xは総原子数6以上(但し、上記各例において、炭素原子数、ケイ素原子又は窒素原子に直接結合する上記r1〜r5で示される水素原子又は置換基の原子は除く)の「連結基」であることが好ましい。
【0049】
成分(B)は、全重合体成分中の質量%(b)として、1〜30質量%であることが好ましく、更には5〜20質量%が好ましい。この範囲において、反応性ポリシロキサンオリゴマーの高分子反応が充分に進行し、得られる反射防止膜の膜強度、防汚性及び水滴滑落性が良好となる。
【0050】
成分(B)における「−X−(ポリシロキサン)」部分の具体例について下記に挙げる。但し、これに限定されるものではない。
【0051】
【化5】
【0052】
【化6】
【0053】
【化7】
【0054】
次に一般式(I)を構成する重合体成分(C)について説明する。
重合体成分(C)は、架橋反応に関与し得る反応性基を置換基中に含有する、重合体成分(A)と共重合可能な一官能性単量体に相当する繰り返し単位を表す。具体的には、例えば下記一般式(II)で示される成分が挙げられる。
【0055】
【化8】
【0056】
式(II)中、V1は、−O−、−OCO−、−COO−、−CONH−、又は下記の基を表す(ここでqは1〜12の整数を表す)。
【0057】
【化9】
【0058】
L1は、−V1−と−Yとを連結する2価の連結基又は直接結合を表す。2価の連結基としては、具体的には、前記式のL0と同一のものが挙げられる。
−[V1−L1]−の結合基は、水素原子を除く原子数の総和が1〜20個であることが好ましく、更には4〜8個が好ましい。この範囲において、硬化反応が速やかに進行するとともに、形成された膜の強度も充分に保持される。
【0059】
a1、a2及びa3は各々同じでも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等)又は炭素数1〜6の置換されてもよいアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、プロポキシカルボニルメチル基、トリフロロメチル基、2,2,2−トリフロロエチル基等)を表す。
【0060】
【化10】
【0061】
Yは、少なくとも1つの架橋反応に関与し得る反応性基を表す。
架橋反応に関与し得る反応性基(Y)としては例えば、活性水素原子を有する基(たとえば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、メルカプト基、β−ケトエステル基、ヒドロシリル基、シラノール基等)、カチオン重合可能な基(エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基、ビニルオキシ基等)、酸無水物、ラジカル重合可能な不飽和2重結合を有する基(アクリロイル基、メタクリロイル基等)、加水分解性シリル基(例えばアルコキシシリル基、アシルオキシシリル基等)、求核剤によって置換され得る基(活性ハロゲン原子、スルホン酸エステル等)、イソシアナート基(保護されており、加熱によりイソシアナート基を発生するブロックイソシアナート基でも良い)等が挙げられる。
これらの反応性基は、単量体段階から導入されてもよいし、高分子反応により導入してもよい。高分子反応は、従来公知の化学結合しうる官能性同志との組合せを適宜に選択して行なうことができる。例えば岩倉義男、栗田恵編「反応性高分子」(株)講談社刊、(1977年)等に記載されている方法が挙げられる。
【0062】
上記の架橋反応性基の中で、好ましくは水酸基、エポキシ基、ビニルオキシ基、(メタ)アクリロイル基または加水分解性シリル基である。
これらの架橋反応性基を有する共重合成分の含有量は、全重合体成分中1〜30質量%の範囲であることが好ましく、5〜25質量%の範囲であることがより好ましく、5〜20質量%の範囲であることが特に好ましい。この範囲において、硬化膜の強度、膜形成後の表面の防汚性等が好ましい。
【0063】
具体的な架橋反応に関与し得る重合単位を以下に例示する。但し、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0064】
【化11】
【0065】
【化12】
【0066】
【化13】
【0067】
【化14】
【0068】
本発明のグラフト共重合体(GP)は、前記成分(A)〜(C)の共重合成分の他に、前記共重合成分と共重合可能な単量体に相当する他の共重合成分を含有してもよい。
例えば、アルキルビニルエーテル(アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)、シクロヘキシルビニルエーテル、炭素数1〜30の含フッ素アルキルビニルエーテル[例えば−CF2CF3、−CH2(CF2)4H、−CH2(CF2)8CF3、−CH2CH2(CF2)4H等であっても、分岐構造{例えばCH(CF3)2、CH2CF(CF3)2,CH(CH3)CF2CF3、CH(CH3)(CF2)5CF2H等}を有していても良く、また脂環式構造(好ましくは5員環または6員環、例えばパーフルオロシクロヘキシル基、パーフルオロシクロペンチル基またはこれらで置換されたアルキル基等)を有していても良く、エーテル結合(例えばCH2OCH2CF2CF3、CH2CH2OCH2C4F8H、CH2CH2OCH2CH2C8F17、CH2CH2OCF2CF2OCF2CF2H等)を有していても良い。]、脂肪族カルボン酸のビニルエステル又はアリルエステル(例えば脂肪族カルボン酸として、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シクロヘキサンカルボン酸等)等が挙げられる。
これらの共重合成分の導入量は、全重合体成分中、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、5〜10質量%の範囲であることが特に好ましい。
硬度、基材への密着性、溶剤への溶解性、透明性等種々の観点から適宜選択することができる。
【0069】
a〜cは各構成成分の全重合体中における質量%を表す。具体的には、各構成成分の項で記載した通りである。但し、本発明のグラフト共重合体(GP)の質量組成比は以下の通りであることが好ましい。
【0070】
本発明のグラフト共重合体は、側鎖(グラフト部分)を構成するポリシロキサン成分の主鎖の片末端に反応性基(例えば、カルボキシル基、環状酸無水物基、水酸基、メルカプト基、アミノ基、イソシアナート基、エポキシ基、ホルミル基、ハロゲン原子(塩素、臭素、ヨウ素等)を結合した一官能性ポリシロキサン(SP)を該反応性基と化学結合する相対する反応性基を含有するパーフルオロオレフィン共重合体(FP)と高分子反応により製造される。
ここで、パーフルオロオレフィン共重合体(FP)100質量部に対して、反応性シロキサン(SP)x質量部を用いて高分子反応を行う。この際用いる共重合体(FP)は、本発明のグラフト共重合体(GP)中の重合体成分(A)をa′質量%、反応性シロキサン(SP)と高分子反応を生じない他の反応性基含有成分(C)をc′質量%とする。
【0071】
【数6】
【0072】
本発明のグラフト共重合体(GP)は、上記の如く、反応性ポリシロキサン(SP)の反応性基と、パーフルオロオレフィン共重合体(FP)中の反応性基とが化学結合する組み合わせで任意に製造される。例えば、活性水素原子を有する反応性基(水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基等)は、イソシアナート基、エポキシ基又は環状酸無水物基との組み合わせ、エポキシ基等の3員環基(例えば下記の基)は、上記の活性水素原子を有する反応性基又は環状酸無水物基との組み合わせ、カルボキシル基は水酸基、アミノ基、エポキシ基等の3員環基、イソシアナート基との組み合わせ等が挙げられる。
【0073】
【化15】
【0074】
反応を促進させるために触媒を併用するのが好ましい。用いる触媒は、従来公知の有機化学反応に基づく高分子反応の反応様式によって適宜選択する。
【0075】
得られたポリマーは、そのまま、本発明のオーバーコート層用組成物に供してもよいが(好ましくは、活性水素原子を有する反応性基とイソシアナート基、エポキシ基、あるいは環状酸無水物基との組合性等の付加反応系等)、ポリマーの貧溶媒中に再沈することが好ましい。
再沈溶媒としては、特に限定されないが、溶媒の乾燥除去が容易なことからメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ヘキサン、石油エーテル、リグロイン等が挙げられる。
【0076】
本発明のオーバーコート層形成組成物には、硬化剤及び硬化促進剤のうちの少なくとも一種が併用されることが好ましい。これらは、前記本発明のグラフト共重合体(GP)中の架橋反応性部位の硬化反応に応じて、従来公知のものを適宜選択して使用することができる。
例えば、山下晋三、金子東助編「架橋剤ハンドブック」大成社刊(1981年)高分子学会編「高分子データハンドブック 基礎編」培風舘(1986年)等に記載されている化合物を用いることができる。
例えば、有機シラン系化合物、ポリイソシアナート系化合物、ポリオール系化合物、ポリアミン系化合物、酸無水化合物類、ポリエポキシ基含有化合物及びエポキシ樹脂(例えば堀内弘編著「新エポキシ樹脂」昭晃堂(1985年刊)、橋本邦之編著「エポキシ樹脂」日刊工業新聞社(1969年刊)等に記載された化合物類)、メラミン樹脂(例えば、三輪一郎、松永英夫編著「ユリア・メラミン樹脂」日刊工業新聞社(1969年刊)、等に記載された化合物類)、ポリ(メタ)アクリレート系化合物(例えば、大河原信、三枝武夫、東村敏延編「オリゴマー」講談社(1976年)、大森英三「機能性アクリル系樹脂」テクノシステム(1985年刊)等に記載された化合物類が挙げられる。
【0077】
例えば一般式(I)のポリマーの成分(C)が加水分解性シリル基を硬化反応性部位として含有する場合には、ゾルゲル反応の触媒として公知の酸、塩基触媒または金属キレート化合物を硬化促進剤として用いることができる。
酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、または酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トリフロロメチルスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸等のブレンステッド酸、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラブトキシチタネート等のルイス酸が挙げられる。
塩基としては、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、テトラメチルエチレンジアミン等の無機・有機の化合物が挙げられる。
【0078】
金属キレート化合物としては、活性メチレン化合物(例えば、ジケトン類、β−ケトエステル類等)とAl、Ti、Zr等の金属原子とのキレート化合物等が挙げられる。例えば特開平11−106704号明細書中の段落番号「0044]〜[0046]中に記載の化合物等が挙げられる。
好ましくは、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムが挙げられる。
【0079】
これら硬化促進剤の使用量は化合物の種類、硬化反応性部位の違いによってまちまちであるが、一般的にはオーバーコート層形成組成物全固形分に対して0.1〜15質量%程度が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%程度である。
【0080】
また、オーバーコート層形成組成物の保存安定性の観点から、光の作用によって酸又は塩基等の硬化促進剤を発生する化合物を使用しても良い。これらの化合物を使用する場合には、活性エネルギー線の照射によって皮膜の硬化が可能になる。
光の作用により酸を発生する化合物としては、例えば有機エレクトロニクス材料研究会(ぶんしん出版)編「イメージング用有機材料」p187〜198、特開平10−282644号等に種々の例が記載されておりこれら公知の化合物を使用することができる。具体的には、RSO3 −(Rはアルキル基、アリール基を表す)、AsF6 −、SbF6 −、PF6 −、BF4 −等をカウンターイオンとするジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等の各種オニウム塩、トリハロメチル基が置換したオキサジアゾール誘導体やS−トリアジン誘導体等の有機ハロゲン化物、有機酸のo−ニトロベンジルエステル、ベンゾインエステル、イミノエステル、ジスルホン化合物等が挙げられ、好ましくは、オニウム塩類、特に好ましくはスルホニウム塩、ヨードニウム塩類である。光の作用で塩基を発生する化合物も公知のものを使用することができ、具体的にはニトロベンジルカルバメート類、ジニトロベンジルカルバメート類等を挙げることができる。
【0081】
本発明では特に光の作用により、上記記載の酸を発生する化合物を用いることが好ましい。これらの光の作用により、酸あるいは塩基を発生する化合物と併用して増感色素も好ましく用いることができる。本発明の光の作用によって硬化反応を促進する化合物の添加量としては、オーバーコート層形成組成物中の全固形分に対して0.1〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0082】
さらに硬化を促進する他の硬化促進剤として、脱水剤を使用しても良い。脱水剤としては、例えば、カルボン酸オルトエステル(オルト蟻酸メチル、オルト蟻酸エチル、オルト酢酸メチル等)、酸無水物(無水酢酸等)等を挙げることができる。
【0083】
また、硬化剤として有機シラン化合物を用いることが好ましい。
例えば、アルコキシシラン化合物、アシルオキシシラン化合物等であり、化合物の素材安定性から、アルコキシシラン化合物類が好ましい。
具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、CF3CH2CH2Si(OCH3)3、CF3(CF2)5CH2CH2Si(OCH3)3、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−トリメトキシシリルプロピルイソシアネート、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
更に好ましくは、一般式(R11)Si(OR21)3、一般式(R11)(R12)Si(OR21)2で示されるオルガノシランにおいて、R11及びR12のうちの少なくともいずれかの置換基がフッ素原子を含有する化合物が挙げられる。
ここで、R11は、炭素数1〜10の有機基であり、例えばCF3CH2−、(CF)2CH−、CF2=CF−、CF3CH2CH2CH2−、C2F5CH2CH2CH2−、C3F7CH2CH2CH2−、C2F5CH2CH2−、CF3OCH2CH2CH2−、C2F5OCH2CH2CH2−、C3F7OCH2CH2CH2−、(CF3)2CHOCH2CH2CH2−、C4F9CH2OCH2CH2CH2−、3−(パーフルオロシクロヘキシルオキシ)プロピル、H(CF2)4CH2OCH2CH2CH2−、H(CF2)4CH2CH2CH2−等が挙げられる。
【0085】
上記オルガノシラン中、R21は、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基であり、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、アセチル基などが挙げられる。又、(R12)は、炭素数1〜10の有機基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基等のアルキル基、そのほかγ−クロロプロピル基、ビニル基、γ−グリシドキシプロピル基、γ−メタクリルオキシプロピル基、γ−メルカプトプロピル基、フェニル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基等の有機基、又はR11と同一の内容のフッ素原子含有の有機基等が挙げられる。
【0086】
硬化剤としての上記シラン化合物は、グラフト共重合体(GP)100質量部当たり、0.5〜300質量部程度の添加量が好ましく、特に、グラフト共重合体100質量部当たり、5.0〜100質量部程度の添加量とすることが好ましい。
【0087】
一方、重合成分(C)の硬化反応性部位が水酸基、アミノ基、メルカプト基等の活性水素を有する基である場合に用いる硬化剤としては、例えばポリイソシアネート系、アミノプラスト、多塩基酸またはその無水物などを挙げることができる。
【0088】
ポリイソシアネート系としては、m−キシリレンジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物、メチルシリルトリイソシアネートなどのシリルイソシアネート化合物、およびこれらイソシアネート化合物の部分縮合物、多量体や、多価アルコール、低分子量ポリエステル皮膜などとの付加物、イソシアネート基をフェノールなどのブロック化剤でブロックしたブロックポリイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0089】
アミノプラストとしては、メラミン皮膜、グアナミン皮膜、尿素皮膜などが採用される。中でもメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの低級アルコールの1種または2種以上により少なくとも部分的にエーテル化されたメチロールメラミン(例えばヘキサメチルエーテル化メチロールメラミン、ヘキサブチルエーテル化メチロールメラミン、メチルブチル混合エーテル化メチロールメラミン、メチルエーテル化メチロールメラミン、ブチルエーテル化メチロールメラミン等)、又はこれらの縮合物などが挙げられる。
【0090】
多塩基酸またはその無水物としては、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、フタル酸、無水フタル酸などの芳香族多価カルボン酸またはその無水物やマレイン酸、無水マレイン酸、コハク酸、無水コハク酸などの脂肪族多価カルボン酸またはその無水物などが例示される。
【0091】
一方、ポリマーの硬化反応性基がエポキシ基、オキセタニル基の場合は、活性水素を有する反応性基(例えば水酸基、カルボキシル基、アミノ基)あるいは環状酸無水物含有基との化学反応により硬化させることができる。
この際、上記の両反応性基がグラフト共重合体(GP)中の共重合成分として含有される、あるいは各々の反応性基を少なくとも1種含有するグラフト共重合体(GP)を併用するのいずれでもよい。
この場合に、前記したと同様の酸、塩基、光及び/又は熱により、酸又は塩基を発生する化合物を硬化促進剤として用いる。
他の好ましい態様として、エポキシ基あるいはオキセタニル基と反応可能な上記の活性水素を有する反応性基又は環状酸無水物含有基を分子中に2ケ以上含有する多官能化合物からなる硬化剤が挙げられる。
【0092】
また、カチオン重合可能な基(カチオン重合性基:活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤の存在下に活性エネルギー線を照射したときに重合反応および/または架橋反応を生ずる反応性基)の場合は、カチオン重合性基の代表例としては、エポキシ基、オキセタン基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、ビニルエーテル基などを挙げることができる。本発明ではこれらカチオン重合性基含有化合物のうちの1種を用いてもまたは2種以上を用いてもよい。
【0093】
カチオン重合性化合物の具体例としては、エポキシ基含有の化合物(例えば、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂等)、環状アセタール化合物、環状ラクトン化合物、チイラン化合物、チエタン化合物、ビニルオキシ基含有のビニルエーテル化合物、エポキシ化合物とラクトンとの反応によって得られるスピロオルソエステル化合物等を挙げることができる。
【0094】
上記した中でも、本発明では、カチオン重合性有機化合物として、エポキシ基、ビニルオキシ基含有の化合物が好ましく用いられ、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物、1分子中に2個以上のビニルオキシ基を有するポリビニルオキシ化合物、1分子中に少なくともエポキシ基とビニルオキシ基を各々一個以上有する化合物、がより好ましく用いられる。特に、カチオン重合性有機化合物として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する脂環式ポリエポキシ化合物を含有し且つ該脂環式ポリエポキシ化合物の含有量がエポキシ化合物の全質量に基づいて30質量%以上、より好ましくは50質量%以上であるエポキシ化合物(エポキシ化合物の混合物)を用いると、カチオン重合速度、厚膜硬化性、解像度、紫外線透過性などが一層良好になり、しかも樹脂組成物の粘度が低くなって製膜が円滑に行われるようになる。
【0095】
上記した脂環族エポキシ樹脂としては、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル、或いは不飽和脂環族環(例えば、シクロヘキセン、シクロペンテン、ジシクロオクテン、トリシクロデセン等)含有化合物を過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化して得られるシクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物などを挙げることができる。
【0096】
また、上記した脂肪族エポキシ樹脂としては、例えば、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートのホモポリマー、コポリマーなどを挙げることができる。さらに、前記のエポキシ化合物以外にも、例えば、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエンなどを挙げることができる。信越シリコーン社製のK−62−722や東芝シリコーン社製のUV9300等のエポキシシリコーン、Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol.28, 497(1990)に記載されているシリコーン含有エポキシ化合物のような多官能エポキシ化合物を挙げることができる。
【0097】
また、上記した芳香族エポキシ樹脂としては、例えば少なくとも1個の芳香核を有する1価または多価フェノール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のモノまたはポリグリシジルエーテルを挙げることができる。
具体例として、例えば特開平11−242101号明細書中の段落番号[0084]〜[0086]記載の化合物等が挙げられる。
これらのエポキシドのうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシドおよび脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。本発明では、上記エポキシドの1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0098】
オキセタニル基を含有する化合物としては、分子中に含有されるオキセタニル基の数は1〜10、好ましくは1〜4である。これらの化合物は、エポキシ基含有化合物と併用することが好ましい。具体的には、例えば特開2000−239309号明細書中の段落番号[0024]〜[0025]に記載の化合物、J.V.CRIVELLO etal、J.M.S.−PUREAPPL. CHEM.、A30、pp.173〜187(1993)に記載のシリコン含有のオキセタン化合物等が挙げられる。
【0099】
ビシクロオルソエステル化合物としては、例えば特表2000−506908号公報等記載の化合物、1−フェニル−4−エチル−2,6,7−トリオキサビシクロ〔2,2,2〕オクタン、1−エチル−4−ヒドロキシメチル−2,6,7−トリオキサビシクロ〔2,2,2〕オクタン等の化合物を挙げることができる。
【0100】
スピロオルソカーボネート化合物としては、1,5,7,11−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、3,9−ジベンジル−1,5,7,11−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、1,4,6−トリオキサスピロ〔4,4〕ノナン、2−メチル−1,4,6−トリオキサスピロ〔4,4〕ノナン、1,4,6−トリオキサスピロ〔4,5〕デカン等の化合物を挙げることができる。
【0101】
ビニルオキシ化合物としては、2−メタクリロイルオキシエチルビニルエーテル、2−アクリロイルオキシエチルビニルエーテル等のアルケニルビニルエーテル化合物、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等のカチオン重合性窒素含有化合物、ブタンジオールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−ベンゼンジメタノールジビニルエーテル、ハイドロキノンジビニルエーテル、サゾルシノールジビニルエーテル等の多官能ビニル化合物、Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol.32, 2895(1994)に記戦されているプロペニル化合物、Journal of Polymer Science: Part A; Polymer Chemistry, Vol.33, 2493(1995)に記載されているアルコキシアレン化合物、Journa1 of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry,Vol.34, 1015(1996)に記載されているビニル化合物、Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol. 34, 2051(1996)に記載されているイソプロペニル化合物等を挙げることができる。具体例として、特開2002−29162号公報明細書中の段落番号[0022]〜[0029]記載の化合物等が挙げられる。
【0102】
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度を考慮すると、ジ又はトリビニルエーテル化合物が好ましい。本発明では、上記ビニルエーテル化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0103】
これらの硬化剤を添加する場合、上記グラフト共重合体(GP)100質量部当り、0.5〜300質量部程度の添加量が好ましく、特に、グラフト共重合体(GP)100質量部当り、5.0〜100質量部程度の添加量が好ましい。また、これらのカチオン重合性反応性基からなる硬化系は、酸もしくは光酸発生化合物を硬化促進剤として用いる。具体的には、シリル反応性基で記載と同様の化合物が挙げられる。
【0104】
一方、ポリマーの架橋反応性部位がラジカル重合可能な不飽和二重結合(アクリロイル基、メタクリロイル基等)を有する場合には硬化剤としてラジカル重合性化合物、そして硬化促進剤として光及び/又は熱でラジカルを発生する化合物を用いることが好ましい。ラジカル重合性化合物は、重合性基を2個〜10個含有する多官能性化合物が好ましく、更には2〜6個の多官能化合物が好ましい。
【0105】
ポリマー(GP)中に含有するラジカル重合性基と共重合性良好な重合性基を有する重合性化合物を硬化剤として適宜選択して組合せることが好ましい。
その共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基や、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類およびチオール類との付加反応物、さらに、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類およびチオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用する事も可能である。
【0106】
脂肪族多価アルコール化合物として、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサンジオール、シクロヘキシルジオール、シクロヘキサンジメタノール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール等と不飽和カルボン酸(クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等)とのモノ置換、あるいはポリ置換の重合性化合物が挙げられる。
その他のエステルの例として、例えばビニルメタクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、特公昭46−27926、特公昭51−47334、特開昭57−196231記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240、特開昭59−5241、特開平2−226149記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。
【0107】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等が挙げられる。
【0108】
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロヘキシレン構造を有するものを挙げることができる。
【0109】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有する水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有する。
【0110】
さらに、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有するラジカル重合性化合物類を用いても良い。
【0111】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。さらに日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0112】
更には、フッ素原子含有の単官能もしくは多官能の化合物も好ましく、例えば特開2000−275403号明細書中の段落番号[0059]〜[0066]記載の化合物等が挙げられる。
ラジカル重合開始剤としては熱の作用によりラジカルを発生するもの、又は光の作用によりラジカルを発生するもののいずれの形態も可能である。
【0113】
熱の作用によりラジカル重合を開始する化合物としては、有機又は無機過酸化物、有機アゾ、ジアゾ化合物、オニウム化合物等を用いることができる。
具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロペルオキシド、ブチルヒドロペルオキシド、無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、アゾ化合物として2−アゾ−ビス−イソブチロニトリル、2−アゾ−ビス−プロピオニトリル、2−アゾ−ビス−シクロヘキサンジニトリル等、ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等、オニウム化合物として前記シリル反応性基で記載したと同様の化合物等を挙げることができる。
【0114】
光の作用によりラジカル重合を開始する化合物を使用する場合は、活性エネルギー線の照射によって皮膜の硬化が行われる。
このような光ラジカル重合開始剤の例としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類がある。アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。これらの光ラジカル重合開始剤と併用して増感色素も好ましく用いることができる。
【0115】
熱または光の作用によってラジカル重合を開始する化合物の添加量としては、炭素−炭素二重結合の重合が開始する量であれば良いが、一般的にはオーバーコート層形成組成物中の全固形分に対して0.1〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0116】
これらの硬化剤を添加する場合も他の硬化剤と同様に、上記グラフト共重合体(GP)100質量部当り、0.5〜300質量部程度の添加量が好ましく、特に、グラフト共重合体(GP)100質量部当り、5.0〜100質量部程度の添加量が好ましい。
【0117】
本発明のオーバーコート層形成組成物は、通常本発明のグラフト共重合体(GP)を適当な溶剤に溶解して作製される。この際ポリマーの濃度は、用途に応じて適宜選択されるが一般的には0.01〜60質量%程度であり、好ましくは0.5〜50質量%、特に好ましくは1%〜20質量%程度である。
【0118】
上記溶剤としては、本発明のグラフト共重合体(GP)を含む組成物が沈殿を生じることなく、均一に溶解または分散されるものであれば特に制限はなく2種類以上の溶剤を併用することもできる。好ましい例としては、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、エーテル類(テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、水などを挙げることができる。
【0119】
本発明のオーバーコート層形成組成物にはさらに膜強度または塗布性の改良のためにコロイダル無機粒子を添加しても良い。このようなコロイダル無機粒子としては、粒子径は5〜50nmのものが用いられるが、好ましくは、5〜30nmのものであり、特に好ましくは、粒子径8〜20nmのものである。無機粒子としては、シリカ、アルミナ、フッ化マグネシウム等が挙げられる。好ましくはコロイダルシリカである。このようなコロイダルシリカは、例えばI.M.Thomas著、Appl. Opt. 25, 1481(1986)等に記載の手法に順じて、テトラアルコキシシランを原料としてアンモニア水等の触媒を用いて加水分解・重縮合することにより調整することができる。また市販のものでは、日産化学工業(株)製スノーテックスIPA−ST、同MEK−ST、日本エアロジル(株)製AEROSIL300、同AEROSIL130、同AEROSIL50(いずれも商品名)等を利用することもできる。
【0120】
コロイダル無機粒子の添加量は、オーバーコート層塗膜硬化後の全固形分の5〜95質量%の範囲であり、好ましくは10〜70質量%、特に好ましくは、20〜60質量%の場合である。
【0121】
その他オーバーコート層、オーバーコート層形成組成物には各種シランカップリング剤、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤などの添加剤を必要に応じて適宜添加しても良い。
【0122】
オーバーコート層は、前記のグラフト共重合体(GP)を主成分として形成されるが、膜形成方法は特に限定されるものではない。通常、グラフト共重合体(GP)を含む塗布液を、低屈折率層若しくはポリマー層の上に塗布して形成する。塗布方法は、従来公知の方法を用いることができる。本発明では、オーバーコート層の材料が低屈折率層の空隙を占有している割合を70体積%未満とすることが好ましい。オーバーコート層の材料が低屈折率層の空隙を占有している割合は、50体積%未満であることが好ましく、40体積%未満であることがより好ましく、30体積%未満であることがさらに好ましく、20体積%未満であることが最も好ましい。低屈折率層の空隙を残してオーバーコート層を形成するためには、後述するようにポリマー層を設けてその上に設ける方法が挙げられる。低屈折率層上に直接設ける設ける場合には、様々な手段が採用できる。例えば、前述したように低屈折率層の空隙を微粒子とバインダーポリマーで閉じた状態で形成すれば、オーバーコート層を塗布により形成しても低屈折率層の空隙が残存する。また、オーバーコート層の塗布液が低屈折率層の空隙に浸入しないように塗布液の粘度を高くしてもよい。具体的には、オーバーコート層中のグラフト共重合体(GP)を粒径10nm以上の微粒子とするか、オーバーコート層の塗布量を低屈折率層の空隙の80体積%以下となるように調整するか、あるいはオーバーコート層中のグラフト共重合体(GP)を重量平均分子量2万以上のポリマーとする。重量平均分子量2万以上のポリマーを用いる方法が特に好ましい。
【0123】
オーバーコート層中のグラフト共重合体(GP)を微粒子とする方法では、微粒子のサイズを低屈折率層の空隙の開口サイズよりも大きくなるように調製する。これにより、微粒子は低屈折率層表面の開口部を塞ぎ、オーバーコート層は低屈折率層の内部の空隙には拡散しない。微粒子の粒径は、10nm以上であることが好ましく、10乃至100nmであることがより好ましく、15乃至70nmであることがさらに好ましく、20乃至50nmであることが最も好ましい。含フッ素化合物の微粒子は、含フッ素化合物の溶液を乳化することにより形成できる。また、含フッ素化合物の溶液から微粒子を析出してもよい。オーバーコート層の塗布量を低屈折率層の空隙の80体積%以下となるように調整する方法では、オーバーコート層を表面に付着する程度の量とすることで、低屈折率層の空隙を維持する。オーバーコート層の塗布量は、オーバーコート層形成前の低屈折率層の空隙の70体積%以下であることがさらに好ましく、60体積%以下であることが特に好ましい。オーバーコート層の膜厚は、2〜50nmが好ましく、5〜30nmがより好ましい。
【0124】
[低屈折率層]
低屈折率層の屈折率は、1.20乃至1.55であることが好ましく、1.30乃至1.55であることがさらに好ましい。低屈折率層の厚さは、50乃至400nmであることが好ましく、50乃至200nmであることがさらに好ましい。このような低屈折率の層とするには、材料の屈折率を下げる(▲1▼フッ素原子を導入する、▲2▼密度を下げる(空隙を導入すること))、或いは▲3▼層内に微細な空隙を導入する等の方法が挙げられるが、本発明では限定されるものではない。具体的には、含フッ素化合物及び低屈折率の微粒子を少なくとも含有した硬化膜が好ましく用いられる。膜を形成する含フッ素化合物は予めポリマーとして、モノマーを製膜工程で重合し皮膜化する、或いは両者を併用するなどして用いられる。これら膜形成用の含フッ素化合物は、全重合成分の10質量%以上が好ましく、更には30〜85質量%である。
【0125】
低屈折率層形成のマトリックッスポリマーは、特に限定されるものではないが、飽和炭化水素を主鎖として有するポリマー、ポリエーテルを主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーであることがさらに好ましい。該ポリマーは膜形成後において架橋していることが好ましい。フッ素原子を主鎖または側鎖に含むポリマーが好ましく、フッ素原子を含むポリマーは、フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーの重合反応により合成される。フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーの例には、フルオロオレフィン、フッ素化ビニルエーテルおよびフッ素置換アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのエステル等が挙げられる。ポリマー中のフッ素原子の含有量の増加に伴い低下する。具体的には、特開平11−64401号明細書中の段落番号「0023」〜[0033]記載の化合物等が挙げられる。
【0126】
フッ素原子を含む繰り返し単位とフッ素原子を含まない繰り返し単位からなるコポリマーであってもよい。フッ素原子を含まない繰り返し単位は、特に制限はなく、上記フッ素モノマーと共重合可能なものが挙げられる。フッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーの例には、オレフィン、(メタ)アクリル酸エステル、スチレンおよびその誘導体、ビニルエステル、(メタ)アクリルアミド、およびアクリロニトリル等が挙げられる。具体的には、例えば特開平11−52103号明細書中の段落番号「0044」に記載の化合物等が挙げられる。
【0127】
膜形成後において架橋しているバインダーポリマーを得るためには、二以上の架橋性基を有する多官能性化合物を用いる、含フッ素ポリマー中に架橋性基を含有させる、或いは両者を併用することが好ましい。多官能性化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれでも良い。例えば、多価アルコールとエチレン性不飽和基含有のカルボン酸(例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等)とのエステル類、ポリアミンとエチレン性不飽和基含有のカルボン酸とのアミド類、ビニルベンゼンおよびその誘導体ビニルスルホン、ビニルオキシ基含有化合物等の多官能性モノマー、ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキ化合物の開環重合反応により合成することが好ましい。具体的には、後述のオーバーコート層に記載の化合物と同様のものが挙げられる。
【0128】
又、ポリマー中に含有する架橋性基の例には、重合性不飽和エチレン基、水酸基、アミノ基、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、ホルミル基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基、ジ若しくはトリアルコキシシリル基等が挙げられる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。また、本発明において架橋基とは、上記化合物に限らず上記官能基が分解した結果反応性を示すものであってもよい。架橋性基を含有する重合成分は、含フッ素ポリマー全重合成分100質量部中の0.5〜50質量%が好ましい。更には、1〜40質量%が好ましい。バインダーポリマーの重合反応および架橋反応に使用する重合開始剤は、架橋反応性基の種類により、従来公知の重合開始剤を適宜選択して用いることができる。好ましくは、光重合開始剤が挙げられる。光重合開始剤の例として、前述のオーバーコート層で記載の化合物と同様のものが挙げられる。
【0129】
又、モノオルガノシラン化合物及びジオルガノシラン化合物とカップリング反応性シリル基含有のポリマーで、且つこれらの3成分の少なくとも1つにフッ素原子を含有するものである化合物類を主として含む低屈折率層用組成物を塗布後に硬化するのゾル−ゲル硬化マトリックスバイダーの系も好ましい。上記オルガノシロキサン化合物及び反応性シリル基含有ポリマーの具体例として、例えば、特開平11−52103号明細書中の段落番号[0010]〜[0047]、同11−106704号明細書中の段落番号[0013]〜[0043]、特開2000−275403号明細書中の段落番号[0015]〜[0026]等に記載の化合物が挙げられる。
【0130】
低屈折率層には、無機微粒子あるいは有機微粒子の微粒子を含有することが好ましい。微粒子の平均粒径は、0.5乃至200nmであることが好ましく、1乃至100nmであることがより好ましく、3乃至70nmであることがさらに好ましい。微粒子の粒径は、なるべく均一(単分散)であることが好ましい。
【0131】
無機微粒子は、非晶質であることが好ましい。無機微粒子は、金属の酸化物、水酸化物、含水酸化物、窒化物、硫化物またはハロゲン化物からなることが好ましく、金属酸化物または金属ハロゲン化物からなることがさらに好ましく、金属酸化物または金属フッ化物からなることが最も好ましい。金属原子としては、Mg、Ca、Ba、Al、Zn、Fe、Cu、Ti、Sn、In、W、Y、Sb、Mn、Ga、V、Nb、Ta、Ag、Si、B、Bi、Mo、Ce、Cd、Be、PbおよびNiが好ましく、Mg、Ca、BおよびSiがさらに好ましい。二種類以上の金属を含む無機化合物を用いてもよい。特に好ましい無機化合物として、二酸化ケイ素、フッ化マグネシウムが挙げられる。又、これらの無機化合物の形状は特に限定されるものではないが、特開2001−188104号公報の段落番号「0018」に記載の短繊維状無機粒子も好ましい。
【0132】
有機微粒子も、非晶質であることが好ましい。有機微粒子は、モノマーの重合反応(例えば乳化重合法)により合成されるポリマー微粒子であることが好ましい。有機微粒子のポリマーはフッ素原子を含むことが好ましい。ポリマー中のフッ素原子の割合は、35乃至80重量%であることが好ましい。含フッ素ポリマーを構成する繰り返し単位に相当するフッ素原子を含むモノマーの例として、例えば特開平11−38202号公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の化合物等が挙げられる。
【0133】
本発明に供される微粒子は、粒子内にミクロボイドを内包していることも好ましい。
無機微粒子内ミクロボイドは、例えば、粒子を形成するシリカの分子を架橋させることにより形成することができる。シリカの分子を架橋させると体積が縮小し、粒子が多孔質になる。具体的には、特開平11−326601号公報の段落番号[0011]〜[0012]等に記載されているものが好ましい。
有機微粒子内にミクロボイドを内包するには、粒子を形成するポリマーを架橋させることにより体積が縮小し粒子を多孔質にする等が挙げられる。これらの中空粒子は、例えば特開平1−185311号、同6−248012号、同8−20604号等に記載の従来公知の乳化重合によって容易に合成できる。具体例として、特開平10−142402号公報等に記載の化合物等が挙げられる。
これらの微粒子は、上記した低屈折率層の屈折率の範囲の中で、任意に調節して用いることができる。例えば、低屈折率層全成分100質量部中の1〜90質量%、より好ましくは5〜75質量%である。
【0134】
空隙を利用した低屈折率層の場合には、オーバーコート層若しくはポリマー層及びオーバーコート層の形成前に空隙を有する層として形成し、オーバーコート層若しくはポリマー層及びオーバーコート層を塗布した後に、3乃至50体積%の空隙率を有する層とすることが好ましい。低屈折率層の空隙は、微粒子を用いて微粒子間または微粒子内のミクロボイドとして形成することができる。
【0135】
粒子間のミクロボイドは、微粒子を少なくとも2個以上積み重ねることにより形成することができる。微粒子を積み重ねてミクロボイドを形成と、微粒子の粒径を調整することで、粒子間ミクロボイドの大きさも適度の(光を散乱せず、低屈折率層の強度に問題が生じない)値に容易に調節できる。
【0136】
又、他のミクロボイド形成の方法として、特開平9−227713号公報の逆相乳化方法を用いる方法、同11−64601号公報の含フッ素ポリマーの析出凝集による方法、同10−282305号の昇華性化合物を利用する方法等も挙げられる。
【0137】
ミクロボイド内包の低屈折率層は、低屈折率層全成分100質量部中の5質量%〜90質量%が好ましく、更には10質量%〜70質量%が好ましい。又パリマーは、5乃至50重量%を含むことが好ましい。ポリマーは、微粒子を接着し、空隙を含む低屈折率層の構造を維持する機能を有する。ポリマーの使用量は、空隙を充填することなく低屈折率層の強度を維持できるように調整する。ポリマーで微粒子を接着するためには、(1)微粒子表面を、物理的表面処理(プラズマ放電処理やコロナ放電処理等)、或いはカップリング剤を使用する化学的に表面処理する方法として、特開平9−222502号公報、特開平11−153703号公報記載の内容を用いることができる。
【0138】
又、他の方法として、(2)微粒子をコアとして、その周囲にポリマーシェルを形成しバインダーポリマーとの親和性を向上する方法として、特開平10−319211号公報、同11−38202号公報等に記載の内容を用いることができる。
【0139】
シェルポリマーに架橋性官能基を導入して、シェルポリマーとバインダーポリマーとを架橋により化学的に結合させてもよい。シェルポリマーは、結晶性を有していてもよい。シェルポリマーのガラス転移温度(Tg)が低屈折率層の形成時の温度よりも高いと、低屈折率層内のミクロボイドの維持が容易である。ただし、Tgが低屈折率層の形成時の温度よりも高いと、微粒子が融着せず、低屈折率層が連続層として形成されない(その結果、強度が低下する)場合がある。その場合は、バインダーポリマーを併用し、バインダーポリマーにより低屈折率層を連続層として形成することが望ましい。微粒子の周囲にポリマーシェルを形成して、コアシェル微粒子が得られる。コアシェル微粒子中に無機微粒子からなるコアが5乃至90体積%含まれていることが好ましく、15乃至80体積%含まれていることがさらに好ましい。ポリマーシェルは、ラジカル重合法により形成することが好ましい。具体的には、乳化重合法または分散重合により実施することが好ましい。乳化重合については、室井宗一、高分子ラテックスの化学、高分子刊行会(1970)に記載がある。分散重合法については、Barrett, Keih E.J.、Dispersion Polymerization in Organic Media、JOHN WILLEY & SONS(1975)に記載がある。
【0140】
分散重合法では、表面処理された微粒子にポリマー分散剤を加え、モノマーと重合開始剤を溶解し、生成するポリマーは不溶である重合媒体中で重合反応を実施することが好ましい。重合媒体の例には、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、2−メトキシ−1−プロパノール、ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ネオペンタノール、シクロヘキサノール、1−メトキシ−2−プロパノール)、メチルエチルケトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸エチルが含まれる。水、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールが好ましい。二種類以上の重合媒体を併用してもよい。乳化重合法または分散重合法において、樹脂粒子の分子量を調整するために、従来公知の連鎖移動剤を使用してもよい。その使用量は、用いる全モノマー100質量部に対し、0〜15質量部が好ましく、0〜5質量部がより好ましい。二種類以上のコアシェル微粒子を併用してもよい。また、シェルのない無機微粒子とコアシェル粒子とを併用してもよい。
【0141】
前記(2)のシェルポリマーと併用する場合、バインダーポリマーのガラス転移温度(Tg)は、シェルポリマーのTgよりも低いことが好ましい。バインダーポリマーのTgとシェルポリマーのTgとの温度差は、5℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがさらに好ましい。バインダーポリマーは、低屈折率層の塗布液にモノマーを添加し、低屈折率層の塗布と同時または塗布後に重合反応(必要ならばさらに架橋反応)により形成することが好ましい。
低屈折率層の塗布液に、少量のポリマー(例、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、ニトロセルロース、ポリエステル、アルキド樹脂)を添加してもよい。
【0142】
本発明の反射防止膜のオーバーコート層は、気相法で形成される金属化合物から成る低屈折率層上にも設けられ、耐久性に優れた耐傷性、耐防汚性を示すことができる。
金属化合物から成る反射防止膜としては、例えば、技術情報協会編「反射防止膜の特性と最適設計・膜作製技術」第3章((株)技術情報協会、2001年刊行)、特開平11−258405号、特開2001−330704号等に記載のものが挙げられる。
【0143】
[ポリマー層]
本発明は、塗布型で形成される反射防止膜における低屈折率層とオーバーコート層の間にポリマー層を設けても良い。
本発明の空隙を有する低屈折率層上に設けるポリマー層は、低屈折率層の上に塗布して形成する。本発明では、ポリマー層の材料は低屈折率層の空隙を占有する割合が小さいほど好ましく、ポリマー層の材料が低屈折率層の空隙を占有している割合は、50体積%未満であることが好ましく、40体積%未満であることがより好ましく、30体積%未満であることがさらに好ましく、20体積%未満であることが最も好ましい。このようなポリマー層を用いることにより、低屈折率層の空隙率を3乃至50体積%に保存することができる。低屈折率層の空隙を残してポリマー層を形成するためには、様々な手段が採用できる。例えば、前述したように低屈折率層の空隙を微粒子とバインダーポリマーで閉じた状態で形成すれば、ポリマー層を塗布により形成しても低屈折率層の空隙が残存する。また、ポリマー層の塗布液が低屈折率層の空隙に浸入しないように塗布液の粘度を高くしてもよい。特に好ましい方法は、ポリマーを、粒径10nm以上の微粒子として付与する方法か、あるいは重量平均分子量2万以上のポリマーを含む層を塗布する方法である。これらの方法の内、重量平均分子量2万以上のポリマーを含む塗布液を塗布する方法が最も好ましい。
【0144】
ポリマー層の化合物を、微粒子として付与する方法は、低屈折率層の空隙の開口サイズより大きい粒子として付与するため、低屈折率層の内部の空隙には拡散せず、低屈折率層表面の開口部を塞ぐような形でオーバーコート層を付与できる。この微粒子のサイズとしては、粒径10nm以上とすることが好ましい。より好ましい粒径は10nm以上100nm以下、更に好ましくは15nm以上70nm以下、特に好ましくは20nm以上50nm以下である。これらのポリマー微粒子は、ポリマー化合物を含有した溶液の乳化・析出等による方法、ポリマーの乳化重合等によるラテックス化、等により得ることができる。また、市販のポリマー微粒子、ラテックス等も使用できる。また、これらのポリマー微粒子により付与された層は付与後の加熱等により、融着させて、連続層とすることがより好ましい。
【0145】
重量平均分子量2万以上のポリマーを含む層を付与する方法は、ポリマー溶液を空隙を有する低屈折率層上に付与する時、ポリマーの分子量が大きくなると、低屈折率層の内部の空隙中に拡散しなくなることを利用している。ポリマー層に含まれるポリマーの重量平均分子量としては、2万以上が好ましく、より好ましくは4万以上200万以下、特に好ましくは5万以上100万以下である。本発明のポリマー層は、その上層に防汚性を付与するためのオーバーコート層を塗布したとき、そのオーバーコート層の素材が低屈折率層に拡散しないようにする機能、表面の膜強度を付与するための機能を持たせるために付与している。これらの機能を持たせるためには、ポリマー層の膜厚は3nm以上あることが好ましい。また、このポリマー層は、空隙を有する低屈折率層に比べると、屈折率が高いため、厚くなると、低屈折率層による反射防止性を損なう。したがって、ポリマー層の厚さは30nm以下が好ましい。膜厚としてより好ましくは5nm以上25nm以下、特に好ましくは8nm以上20nm以下である。また、ポリマー層の屈折率は1.35以上1.80以下が好ましく、より好ましくは1.40以上1.70以下である。
【0146】
本発明のポリマー層に用いられるポリマーとしては、特に制限はないが、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロ二トリル誘導体、ポリビニルアルコールもしくはその誘導体、ポリオルガノシロキサン(例、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、アルキル変性ポリジメチルシロキサン)類等、また、各種アルコキシシランをゾル−ゲル法の手法により重合させたもの等を挙げることができる。
【0147】
本発明のポリマー層に用いるポリマーは、各種素材、特に油分等に対するバリアー性を持たせることが好ましい。これは、防汚層となるオーバーコート層を設ける時、そのオーバーコートの素材が低屈折率層に拡散することを防ぐ、また、防汚層塗布後に、指紋や、マジック等の油溶性の成分が付着したとき、その成分が低屈折率層の空隙に拡散することを抑えることができる。このようなバリアー性を付与するためにはポリマーを架橋する方法、バリアー性の高いポリマーを用いることによって可能である。ポリマーを架橋するためには架橋性基をポリマー中に導入する、ポリマーと反応できるような架橋性成分を添加する等の手段を用いることができる。架橋性官能基の例には、アクリロイル、メタクリロイル、アリル、ビニルオキシ、イソシアナート、エポキシ、アルコキシシリル、アジリジン、オキサゾリン、アルデヒド、カルボニル、ヒドラジン、カルボキシル、ジ若しくはトリアルコキシシリル、メチロール、および活性メチレン基等が挙げられる。
【0148】
ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタンも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。また、本発明において架橋基とは、上記化合物に限らず上記官能基が分解した結果反応性を示すものであってもよい。また、油分、気体、液体等に対しバリアー性の高いポリマーとしては、ポリビニルアルコールもしくはその誘導体、ポリ塩化ビニリデンもしくはその誘導体等が一般に知られている。特にポリビニルアルコールもしくはその誘導体は耐油性が高く、上層との密着性保持から好ましい。
【0149】
[高・中屈折率層]
本発明の反射防止膜が、多層膜の態様をとる場合、一般に、低屈折率層は、低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(即ち、前記の高屈折率層、中屈折率層)と共に用いられる。
【0150】
上記低屈折率層より高い屈折率を有する層を形成するための有機材料としては、熱可塑性皮膜(例、ポリスチレン、ポリスチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン以外の芳香環、複素環、脂環式環状基を有するポリマー、またはフッ素以外のハロゲン基を有するポリマー);熱低屈折率層形成組成物(例、メラミン皮膜、フェノール皮膜、またはエポキシ皮膜などを硬化剤とする皮膜組成物);ウレタン形成性組成物(例、脂環式または芳香族イソシアネートおよびポリオールの組み合わせ);およびラジカル重合性組成物(上記の化合物(ポリマー等)に二重結合を導入することにより、ラジカル硬化を可能にした変性皮膜またはプレポリマーを含む組成物)などを挙げることができる。高い皮膜形成性を有する材料が好ましい。上記より高い屈折率を有する層は、有機材料中に分散した無機系微粒子も使用することができる。上記に使用される有機材料としては、一般に無機系微粒子が高屈折率を有するため有機材料単独で用いられる場合よりも低屈折率のものも用いることができる。そのような材料として、上記に述べた有機材料の他、アクリル系を含むビニル系共重合体、ポリエステル、アルキド皮膜、繊維素系重合体、ウレタン皮膜およびこれらを硬化せしめる各種の硬化剤、硬化性官能基を有する組成物など、透明性があり無機系微粒子を安定に分散せしめる各種の有機材料を挙げることができる。
【0151】
さらに有機置換されたケイ素系化合物をこれに含めることができる。これらのケイ素系化合物は下記一般式で表される化合物、あるいはその加水分解生成物である。
【0152】
:RamRbnSiZ(4−m−n)
【0153】
(ここでRa及びRbは、それぞれアルキル基、アルケニル基、アリル基、またはハロゲン、エポキシ、アミノ、メルカプト、メタクリロイルまたはシアノで置換された炭化水素基を表し、Zは、アルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン原子〜アシルオキシ基から選ばれた加水分解可能な基を表し、m+nが1または2である条件下で、m及びnはそれぞれ0、1または2である。)
【0154】
これらに分散される無機系微粒子の好ましい無機化合物としては、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、アンチモンなどの金属元素の酸化物を挙げることができる。これらの化合物は、微粒子状で、即ち粉末または水および/またはその他の溶媒中へのコロイド状分散体として、市販されている。これらをさらに上記の有機材料または有機ケイ素化合物中に混合分散して使用する。
【0155】
上記より高い屈折率を有する層を形成する材料として、被膜形成性で溶剤に分散し得るか、それ自身が液状である無機系材料(例、各種元素のアルコキシド、有機酸の塩、配位性化合物と結合した配位化合物(例、キレート化合物)、無機ポリマー)を挙げることができる。これらの好適な例としては、活性メチレン化合物(例えば、ジケトン類、β−ケトエステル類等)とAl、Ti、Zr等の金属原子とのキレート化合物等が挙げられ、例えば、特開平11−106704号公報の段落番号[0044]〜[0046]に記載の化合物等が挙げられる。さらには炭素ジルコニルアンモニウムまたはジルコニウムを主成分とする無機ポリマー等を挙げることができる。上記に述べた他に、屈折率が比較的低いが上記の化合物と併用できるものとしてとくに各種のアルキルシリケート類またはその加水分解物、微粒子状シリカとくにコロイド状に分散したシリカゲルも使用することができる。
【0156】
高屈折率層の屈折率は、一般に1.70〜2.20である。屈折率は、アッペ屈折率計を用いる測定や、層表面からの光の反射率からの見積もりにより求めることができる。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましく、30nm〜0.5μmであることが最も好ましい。高屈折率層のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。具体的な高屈折率層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0157】
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。
高屈折率層に無機微粒子とポリマーを用い、中屈折率層は、高屈折率層よりも屈折率を低めに調節して形成することが特に好ましい。中屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましい。
【0158】
[その他の層]
反射防止膜には、さらに、ハードコート層、防湿層、帯電防止層、下塗り層や保護層を設けてもよい。ハードコート層は、透明支持体に耐傷性を付与するために設ける。ハードコート層は、透明支持体とその上の層との接着を強化する機能も有する。ハードコート層は、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、シリコン系ポリマーやシリカ系化合物を用いて形成することができる。顔料をハードコート層に添加してよい。アクリル系ポリマーは、多官能アクリレートモノマー(例、ポリオールアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート)の重合反応により合成することが好ましい。ウレタン系ポリマーの例には、メラミンポリウレタンが含まれる。シリコン系ポリマーとしては、シラン化合物(例、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン)と反応性基(例、エポキシ、メタクリル)を有するシランカップリング剤との共加水分解物が好ましく用いられる。二種類以上のポリマーを組み合わせて用いてもよい。シリカ系化合物としては、コロイダルシリカが好ましく用いられる。ハードコート層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で、H以上である好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。透明支持体の上には、ハードコート層に加えて、接着層、シールド層、滑り層や帯電防止層を設けてもよい。シールド層は、電磁波や赤外線を遮蔽するために設けられる。
【0159】
[透明支持体]
反射防止膜をCRT画像表示面やレンズ表面に直接設ける場合を除き、反射防止膜は透明支持体(透明基材)を有することが好ましい。透明支持体としては、ガラス板よりもプラスチックフィルムの方が好ましい。プラスチックフィルムの材料の例には、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4、4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレートおよびポリエーテルケトンが含まれる。トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが好ましい。透明支持体の光透過率は、80%以上であることが好ましく、86%以上であることがさらに好ましい。透明支持体のヘイズは、2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。透明支持体の屈折率は、1.4〜1.7であることが好ましい。透明支持体には、赤外線吸収剤あるいは紫外線吸収剤を添加してもよい。赤外線吸収剤の添加量は、透明支持体の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることがさらに好ましい。滑り剤として、不活性無機化合物の粒子を透明支持体に添加してもよい。無機化合物の例には、SiO2、TiO2、BaSO4、CaCO3、タルクおよびカオリンが含まれる。透明支持体に、表面処埋を実施してもよい。
【0160】
表面処理の例には、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が含まれる。グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましく、グロー放電処理と紫外線処理がさらに好ましい。
【0161】
[反射防止膜の形成]
反射防止膜が、単層又は前記のように多層の構成をとる場合は、各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書記載)により、塗布により形成することができる。二層以上を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。反射防止膜の反射率は低いほど好ましい。具体的には450〜650nmの波長領域での平均反射率が2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましく、0.7%以下であることが最も好ましい。反射防止膜(下記のアンチグレア機能がない場合)のヘイズは、3%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましく、0.5%以下であることが最も好ましい。反射防止膜の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で、H以上てある好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0162】
反射防止膜は、外光を散乱させるアンチグレア機能を有していてもよい。アンチグレア機能は、反射防止膜の表面に凹凸を形成することにより得られる。反射防止膜がアンチグレア機能を有する場合、反射防止膜のヘイズは、3〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがさらに好ましく、7〜20%であることが最も好ましい。
【0163】
反射防止膜表面に凹凸を形成する方法は、これらの表面形状を充分に保持できる方法であればいずれの方法でも適用できる。例えば、低屈折率層中に微粒子を使用し、それにより膜表面に凹凸を形成する方法(例えば、特開2000−271878号等)、低屈折率層の下層(高屈折率層、中屈折率層又はハードコート層)に比較的大きな粒子(粒径0.05〜2μm)を少量(0.1〜50質量%)添加して表面凹凸膜を形成し、その上にこれらの形状を維持して低屈折率層を設ける方法(例えば特開2000−281410号、同2000−95893号等)、低屈折率層表面に物理的に凹凸形状を転写(エンボス加工方法等)する方法(例えば特開平11−268800号)が挙げられる。
【0164】
反射防止膜は、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ〈ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に適用する。反射防止膜は、高屈折率層が画像表示装置の画像表示面側になるように配置する。
反射防止膜が透明支持体を有する場合は、透明支持体側を画像表示装置の画像表示面に接着する。反射防止膜は、さらに、ケースカバー、光学用レンズ、眼鏡用レンズ、ウインドウシールド、ライトカバーやヘルメットシールドにも利用できる。
【0165】
【実施例】
以下に本発明を実施例により例証するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0166】
<グラフト共重合体の合成>
グラフト共重合体(GP)の合成例1:グラフト共重合体(GP−1)
下記構造のパーフルオロオレフィン共重合体(FP−1)50g、下記構造の反応性ポリシロキサンオリゴマー(SP−1)7.5g及びキシレン93gの混合物を温度120℃に加温した後、ドデシルジメチルアミン0.01gを加えて、6時間攪拌した。室温に冷却後、石油エーテル500ml中に再沈して、沈殿物を補集し、減圧下に乾燥して、収量49gの生成物を得た。得られた重合体の質量平均分子量(ポリスチレン換算のG.P.C測定値))は5×104であった。
また、GPCヒストグラムで、オリゴマー(SP−1)に相当するピークは観察されなかった。
【0167】
【化16】
【0168】
グラフト共重合体(GP)の合成例2:グラフト共重合体(GP−2)
下記構造のパーフルオロオレフィン共重合体(FP−2)50g、下記構造の反応性シロキサンオリゴマー(SP−2)12.5g及びテトラヒドロフラン140gの混合物を攪拌下に溶解した。次に、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド2g、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン0.05g及びテトラヒドロフラン3gの混合溶液を10分間で滴下し、そのまま1時間攪拌し、その後、温度40℃に加温して、4時間攪拌した。
ギ酸1gを加えて2時間攪拌後、析出物をセライトを用いてろ過してろ別し、沈降物を補集した。減圧乾燥して収量53gの生成物を得た。Mwは7×104であった。
GPCヒストグラムで、オリゴマー(SP−2)相当のピークは観察されなかった。
【0169】
【化17】
【0170】
グラフト共重合体(GP)の合成例3:グラフト共重合体(GP−3)
下記構造のパーフルオロオレフィン共重合体(FP−3)50g、下記構造の反応性シロキサンオリゴマー(SP−3)10g、ジプテルスズジラウリレート0.01g及びトルエン140gの混合物を温度80℃で4時間攪拌した。反応物を減圧(20〜30mmHg)下において、溶媒のトルエン約80gを追い出して、濃縮した。
この反応物をn−ヘキサン500ml中に再沈し、沈降物を補集し減圧乾燥して、収量50gの生成物を得た。Mwは6×104であった。
得られたGPCヒストグラムにおいて、オリゴマー(SP−3)相当のピークは観察されなかった。
【0171】
【化18】
【0172】
グラフト共重合体(GP)の合成例4:グラフト共重合体(GP−4)
下記構造の反応性シリコンオリゴマー(SP−4)8.5g、メタンスルホン酸0.15g及びトルエン135gの混合物を室温(25℃)で1時間攪拌した。次にこの混合物に、下記構造のパーフルオロオレフィン共重合体(FP−4)50gを加えて、更に6時間攪拌した。
反応生成物をリグロイン750ml中に再沈し、沈降物を補集し減圧乾燥し収量50gの生成物を得た。Mwは7×104であった。
得られたGPCヒストグラムにおいて、オリゴマー(SP−4)相当のピークは観察されなかった。
【0173】
【化19】
【0174】
グラフト共重合体(GP)の合成例5:グラフト共重合体(GP−5)
前記グラフト共重合体(GP)の合成例4で得られたグラフト共重合体(GP−4)20g、2−〔2−(カルボキシエチルカルボニルオキソ)〕エチルメタクリレート2.5g及びテトラヒドロフラン37gの混合物を、室温で攪拌下に溶解した。これに、D.C.C. 1.0g、4−(N,N−ジメチルアミノピリジン0.01g及びテトラヒドロフラン3gの混合溶液を5分間で滴下し、そのまま2時間攪拌した。更に温度35℃に加温して3時間攪拌した。
ギ酸1gを加えて3時間攪拌した後、セライトろ過にて析出物をろ別した後、n−ヘキサン150ml中に再沈した。沈降物を補集し、減圧乾燥してMw7×104の生成物を15g得た。
【0175】
【化20】
【0176】
グラフト共重合体(GP)の合成例6〜10:グラフト共重合体(GP−6)〜(GP−10)
グラフト共重合体(GP)の合成例1において、反応性シロキサンオリゴマー(SP−1)7.5gの代わりに、下記表−A記載の各シロキサンオリゴマー(SP−6)〜(SP−10)7.5gを用いた他は、該合成例1と同様にして、各グラフト共重合体(GP−6)〜(GP−10)を得た。収量は48g〜50gであり、各生成物のMwは4.5〜5.5×104の範囲であった。
【0177】
【表1】
【0178】
グラフト共重合体(GP)の合成例11〜15:グラフト共重合体(GP−11)〜(GP−15)
グラフト共重合体(GP)の合成例1において、パーフルオロオレフィン共重合体(FP−1)50gの代わりに、各相当する各共重合体(FP)を50g用いた他は該合成例1と同様にして、表−Bに記載する通りのグラフト共重合体(GP−11)〜(GP−15)を合成した。収量は48g〜50gの範囲であり、各生成物のMwは4〜7×104の範囲であった。また、各生成物のGPCヒストグラムにおいてオリゴマー(SP−1)に相当するピークは観察されなかった。
【0179】
【表2】
【0180】
実施例1及び比較例1〜3
<ハードコート層用塗布液Aの調製>
JSR社製ハードコート素材デソライトZ7503のMEK溶液(固形分濃度72%、シリカ含量38%)625gを、375gのメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=50/50重量%の混合溶媒に溶解した。混合物を撹拌した後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターでろ過してハードコート層の塗布液Aを調製した。
【0181】
<中屈折率層用塗布液の調製>
シクロヘキサノン151.9gおよびメチルエチルケトン37.0gに、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)0.14gおよび光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.04gを溶解した。さらに、下記の二酸化チタン分散物6.1gおよびジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)2.4gを加え、室温で30分間撹拌した後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、中屈折率層用塗布液を調製した。
【0182】
(二酸化チタン分散物の調製)
二酸化チタン(一次粒子重量平均粒径:50nm、屈折率:2.70)30重量部、アニオン性ジアクリレートモノマー(PM21、日本化薬(株)製)4.5重量部、カチオン性メタクリレートモノマー(DMAEA、興人(株)製)、0.3重量部およびメチルエチルケトン65.2重量部を、サンドグライダーにより分散し、二酸化チタン分散物を調製した。
【0183】
<高屈折率層用塗布液の調製>
シクロヘキサノン1152.8gおよびメチルエチルケトン37.2gに、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)0.06gおよび光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.02gを溶解した。さらに、上記の二酸化チタン分散物13.13gおよびジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)0.76gを加え、室温で30分間撹拌した後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、高屈折率層用塗布液を調製した。
【0184】
<低屈折率層用塗布液の調製>
平均粒径15nmのシリカ微粒子のメタノール分散液(メタノールシリカゾル、日産化学(株)製)200gにシランカップリング剤(KBM−503、信越シリコーン(株)製)3gおよび0.1N塩酸2gを加え、室温で5時間撹拌した後、3日間室温で放置して、シランカップリング処理したシリカ微粒子の分散物を調製した。分散物35.04gにイソプロピルアルコール58.35gおよびジアセトンアルコール39.34gを加えた。また、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)1.02gおよび光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.51gを772.85gのイソプロピルアルコールに溶解した溶液を加え、さらに、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)25.6gを加えて溶解した。得られた溶液67.23gを、上記分散液、イソプロピルアルコールおよびジアセトンアルコールの混合液に添加した。混合物を20分間室温で攪拌し、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、低屈折率層用塗布液を調製した。
【0185】
<ポリマー層用塗布液(1−1)の調製>
市販のPMMA(重量平均分子量(Mw)60000)をメチルイソブチルケトンに濃度1%になるよう溶解し、ポリマー層用の塗布液を調製した。
【0186】
〔実施例1〕
<オーバーコート層用塗布液(OC−1)の調製>
本発明の前記グラフト共重合体(GP−1)2.7g、エポキシ系硬化剤DEX314(ナガセ化成工業(株)製)0.55g(固形分量として)、パラトルエンスルホン酸0.10g及びメチルエチルケトン200gの混合物として、オーバーコート層用塗布液(OC−1)を調製した。
【0187】
<反射防止膜(F−1)の作成>
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士写真フイルム(株)製)に、上記のハードコート層用塗布液Aをバーコーターを用いて塗布し、90℃で乾燥の後、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ6μmのハードコート層を形成した。その上に、上記中屈折率層用塗布液をバーコーターを用いて塗布し、60℃で乾燥の後、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、中屈折率層(屈折率1.72、厚さ0.081μm)を形成した。その上に、上記高屈折率層用塗布液をバーコーターを用いて塗布し、60℃で乾燥の後、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、高屈折率層(屈折率1.92、厚さ:0.053μm)を形成した。その上に、上記低屈折率層用塗布液をバーコーターを用いて塗布し、60℃で乾燥の後、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、低屈折率層(屈折率1.40、厚さ0.070μm)を形成した。形成した低屈折率層の空隙率は16体積%であった。その上に、上記ポリマー層用塗布液(1−1)をバーコーターを用いて#3バーで塗布し、120℃で5分乾燥した。その後、オーバーコート用塗布液(OC−1)を塗布量が15nmになるように調製しながら塗布し、120℃で10分乾燥し反射防止膜(F−1)を形成した。
【0188】
〔比較例1〕
実施例1において、OC層用塗布液(OC−1)の代わりに、下記内容の塗布液(OC−R1)を用いた他は、実施例1と同様に操作して、反射防止膜(FR−1)を作製した。
【0189】
<OC層用塗布液(OC−R1)の調製>
上記OC層用塗布液(OC−1)の調製において、グラフト共重合体(GP−1)2.7gの代わりに、前記グラフト共重合体(GP)の合成例1に記載のパーフルオロオレフィン共重合体(FP−1)2.3g及び反応性ポリシロキサンオリゴマー(SP−1)0.4gを用いた他は、上記塗布液(OC−1)と同様にしてOC層用塗布液(OC−R1)を調製した。
【0190】
〔比較例2〕
実施例1において、OC層用塗布液(OC−1)の代わりに、下記内容の塗布液(OC−R2)を用いた他は、実施例1と同様に操作して、反射防止膜(FR−2)を作製した。
【0191】
<OC層用塗布液(OC−R2)の調製>
上記OC層用塗布液(OC−1)の調製において、グラフト共重合体(GP−1)2.7gの代わりに、上記パーフルオロオレフィン共重合体(FP−1)2.7gを用いた他は、塗布液(OC−1)と同様にしてOC層用塗布液(OC−R2)を調製した。
【0192】
〔比較例3〕
実施例1において、OC層用塗布液(OC−1)の代わりに、下記内容の塗布液(OC−R3)を用いた他は、実施例1と同様に操作して、反射防止膜(FR−3)を作製した。
【0193】
<OC層用塗布液(OC−R3)の調製>
特開2000−284102号公報記載の下記化合物(P−9)(以下、比較用ポリマー(RP−1)と称する)を、同公報実施例記載の方法により合成し、OC層用塗布液(OC−R3)を調製した。
【0194】
【化21】
【0195】
(反射防止膜の評価)
こうして得られた各膜(実施例1及び比較例1〜3)について、下記性能評価を実施し、その結果を表−Cに記載した。
【0196】
(1)平均反射率
分光光度計(日本分光(株)製)を用いて、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における分光反射率を測定した。結果には450〜650nmの鏡面平均反射率を用いた。
【0197】
(2)鉛筆硬度評価
反射防止膜を温度25℃、湿度60%RHで2時間調湿した後、JIS K
5400に記載の鉛筆硬度評価を行った。
【0198】
(3)耐傷性試験
膜表面をスチールウール#0000を用いて、200gの荷重下で10回擦った後に、傷のつくレベルを確認した。判定は次の基準に従った。
全くつかない :○
細かい傷がつく:△
傷が著しい :×
【0199】
(4)水滴滑落性
反射防止膜を蒸留水中に浸し超音波洗浄機中で1分間洗浄した後、風乾し、25℃、65%RHの環境下で傾斜摩擦計HEIDON47L−388(新東科学(株)製)を用いて、サンプル表面に5μlの蒸留水の水滴を滴下し、水滴の転がる角度を測定した。
【0200】
(5)防汚性
サンプル表面に指紋を付着させてから、それをベンコットン(旭化成(株)製)で拭き取った時の状態を観察して、以下の基準で評価した。
◎:簡単に拭き取れる
○:しっかり擦れば拭き取れる
△:一部が拭き取れずに残る
【0201】
【表3】
【0202】
本発明の実施例1の反射防止膜の各特性は良好であった。即ち、膜の硬度、耐傷性も実用上充分な性能を示した。更に、微小水滴が表面に付着してもわずか5度の傾斜角度で滑り落ちた。この事は、液滴の耐付着性が極めて良好なことを示している。又、指紋等の油性汚れに対しても、極めて簡便に除去できた。
一方、本発明のグラフト共重合体(GP−1)の出発原料であるポリマー(FP−1)とポリシロキサン(SP−1)をブレンドして硬膜した比較例1はポリシロキサン成分が表面移行し、膜の強度が著しく低下してしまった。
また、ポリマー(FP−1)を硬膜した比較例2は、膜表面の防汚性は良好であったが、水滴滑落性は40度以上と極めて大きかった。
更に、比較用ポリマー(RP−1:側鎖にのみフッ素成分含有)を用いた比較例3は、膜強度は充分となったが、液滴滑落性は40度以上と大きく、また防汚性も不充分であった。
以上のことから、本発明のグラフト共重合体を硬化して形成された膜のみが優れた性能を示すことがわかる。
【0203】
実施例2〜7
実施例1のオーバーコート層用塗布液(OR−1)の塗布液において、グラフト共重合体(GP−1)2.7g、エポキシ系硬化剤(DEX314)0.55g及びパラトルエンスルホン酸0.10gの代わりに、下記表−D記載の各化合物を用いた他は、実施例1と同様にして各反射防止膜を作製した。
各膜のオーバーコート層の膜厚は20nmとなる様に調製した。
【0204】
【表4】
【0205】
得られた各膜について、実施例1と同様にして各性能を評価した。
実施例2〜7の各膜は、いずれも実施例1と同等の性能を示し良好であった。
【0206】
実施例8〜13
実施例1におけるOC層用塗布液(OC−1)において、グラフト共重合体(GP−1)2.7g、エポキシ系硬化剤(DEX314)0.55g及びパラトルエンスルホン酸0.10gの代わりに、下記表−E記載の各化合物を用いた他は実施例1と同様にして、塗布を行なった。続けて加熱の代わりに紫外線を照射した後、120℃で10分間加熱する操作を行ない、各反射防止膜を作製した。
【0207】
【表5】
【0208】
得られた反射防止膜について、実施例1に記載の試験項目について評価した。その結果は、実施例1と同等の性能を示し、良好であった。
【0209】
実施例14
<ハードコート層用塗布液Bの調製>
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)250gを、439gのメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=50/50重量%の混合溶媒に溶解した。得られた溶液に、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)7.5gおよび光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)5.0gを49gのメチルエチルケトンに溶解した溶液を加えた。なお、この溶液を塗布、紫外線硬化して塗膜の屈折率は1.53であった。さらにこの溶液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過してハードコート層の塗布液Bを調製した。
【0210】
<防眩性ハードコート層用塗布液Aの調製>
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)91g、粒径約30nmの酸化ジルコニウム超微粒子分散物含有ハードコート塗布液(デソライトZ−7041、JSR(株)製)199g、および粒径約30nmの酸化ジルコニウム超微粒子分散物含有ハードコート塗布液(デソライトZ−7042、JSR(株)製)19gを、52gのメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=54/46重量%の混合溶媒に溶解した。得られた溶液に、光重合開始剤(イルガキュア907、チバファインケミカルズ(株)製)10gを加えた。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.61であった。この溶液に、個数平均粒径1.99μm、粒径の標準偏差0.32μm(個数平均粒径の16%)の架橋ポリスチレン粒子(商品名:SX−200HS(SX−200Hの風力分級品)、総研化学(株)製)20gを80gのメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=54/46重量%の混合溶媒に高速ディスパにて5000rpmで1時間攪拌分散し、孔径10μm、3μm、1μmのポリプロピレン製フィルター(それぞれPPE−10、PPE−03、PPE−01、いずれも富士写真フイルム(株)製)にてろ過して得られた分散液29g(5.0μm以上の粗大粒子を含有する割合は0個/1×1010個)を添加、攪拌した後、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩性ハードコート層用塗布液Aを調製した。
【0211】
<低屈折率層用塗布液(Ln−2)の調製>
屈折率1.46の熱架橋性含フッ素ポリマー(商品名:JN−7221、JSR(株)製)200gにメチルイソブチルケトンを200g添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液(Ln−2)を調製した。
【0212】
<オーバーコート層用塗布液(OC−14)の調製>
下記構造のグラフト共重合体(GP−16)5.0g、メチルトリメトキシシラン2.5g、アセチルアセテートZr塩0.01g及びメチルエチルケトン300gの混合物を1時間攪拌した。その後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率用塗布液(Ln−14)を調製した。
【0213】
【化22】
【0214】
<反射防止膜(F−14)の作製>
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(商品名:TAC−TD80U、富士写真フイルム(株)製)に、上記のハードコート層用塗布液Bをバーコーターを用いて塗布し、120℃で乾燥の後、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ4μmのハードコート層を形成した。その上に、上記防眩層用塗布液Aをバーコーターを用いて塗布し、上記ハードコート層と同条件にて乾燥、紫外線硬化して、厚さ約1.5μmの防眩層を形成した。その上に、上記低屈折率層用塗布液(Ln−2)をバーコーターを用いて塗布し、風乾(1分間)の後、さらに120℃で10分間熱架橋し、厚さ0.096μmの低屈折率層を形成した。次に、上記オーバーコート層用塗布液(OC−14)をバーコータで厚さ0.020μmとなる様に調製して塗布し、120℃で10分間乾燥した。
得られた反射防止膜(F−14)を実施例1と同様にして、性能を評価した。その結果は、実施例2の膜と同等の性能を示した。
【0215】
実施例15
上記実施例1〜14の各反射防止膜を用いて防眩性反射防止偏光板を作成した。これらの各偏光板を用いて反射防止層を最表層に配置した液晶表示装置を作成した。各表示装置の何れも、外光の映り込みがないために優れたコントラストが得られ、防眩性により反射像が目立たず優れた視認性を有し、色むらも発生せず、指紋付も良好であった。
【0216】
【発明の効果】
本発明によれば、反射率が低く、低屈折率層の表面が汚れから保護され、かつ耐傷性も改善された反射防止膜を得ることができる。更に本発明の反射防止膜は、防汚性、耐傷性が良好で、生産性が良好である。
本発明の反射防止膜を設けることにより、反射が有効に防止された画像表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】反射防止膜の主な層構成例を示す断面模式図である。
【図2】本発明の好ましい態様における低屈折率層、ポリマー層とオーバーコート層を有する反射防止膜の断面模式図である。
【符号の説明】
1 透明支持体
2 低屈折率層
3 ポリマー層
4 オーバーコート層
5 ハードコート層
6 高屈折率層
7 中屈折率層
21 微粒子
22 バインダー
23 空隙
【発明の属する技術分野】
本発明は、防汚層又は保護層を有する反射防止膜およびそれを用いた画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
反射防止膜は、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような様々な画像表示装置に設けられている。反射防止膜としては、透明支持体上に金属酸化物を化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法により形成した透明薄膜を積層させた、光透過性に優れる反射防止膜、及び製造が容易で生産性が高い、塗布により形成された反射防止膜等が種々提案されている。これらの反射防止膜は、擦れ等による傷防止、手垢、指紋、汗等の付着しない耐防汚性、水分付着しにくい等の性能が求められる。
【0003】
基材表面を汚れから保護し、耐傷性を向上させるために、含フッ素化合物や含シリコーン化合物等を含む撥水性及び/又は撥油性の化合物を表面側に設ける対策が開示されている。
例えば、気相法による無機物積層の反射防止膜において、例えば、特開11−129382号公報記載のケイ素酸化物層をCVD法で設けるもの、特開平1−258405号公報、特開2002−144369号公報記載のフッ素系シラン化合物やフラクタル構造の金属酸化物の皮膜を設けるもの、特開2001−281412号公報、同2002−82205号公報記載のフッ素含有のシラン化合物や高分子の皮膜を設けたもの等が提案されている。
【0004】
また、塗布型反射防止膜の最上層として、例えば、特開平10−33321号公報記載のパーフルオロポリエーテル含有のシラン化合物から形成された皮膜、特開2000−75105号公報、同2001−100003号公報等に記載の側鎖にポリオルガノシロキサンを含有の含フッ素ポリマーや、特開2000−284102号公報記載の側鎖にパーフルオロポリエーテル含有の共重合体から形成される保護膜等が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年、上記の画像表示装置は、画面の大版化が進むと共に、携帯電話等のモバイル表示装置の普及が盛んとなっている。これら表示装置の保護フルムの最上層は、手垢、指紋、汗、化粧等の付着汚れに対して容易に取り除きができること、クリーニングの繰り返しで傷や剥がれを生じないこと等への要望が一層求められている。
【0006】
従って、本発明の目的は、低屈折率層の表面が汚れから保護され、かつ耐傷性も改善されている反射防止膜を提供することである。
本発明の他の目的は、防汚性、耐傷性が良好で、生産性良好な反射防止膜を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、以下に示す(1)〜(6)の構成により達成されることが見出された。
(1) 透明支持体および隣接する層の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層が積層されている反射防止膜であって、該低屈折率層の上に下記一般式(I)で示される各繰り返し単位(成分(A)、成分(B)及び成分(C))を、各々少なくとも一種含有するグラフト共重合体(GP)を含むオーバーコート層がさらに積層されていることを特徴とする反射防止膜。
【0008】
【化2】
【0009】
式(I)中、R0はフッ素原子又は炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を表す。Xは、主鎖とポリシロキサン成分を連結する2価の有機残基を表す。
R1及びR2は、同じでも異なってもよく、各々脂肪族基又はアリール基を表し、R3、R4及びR5は同じでも異なってもよく、各々一価の有機残基を表す。pは、10から500の整数を表す。
Aは、架橋反応に関与し得る反応性基を少なくとも1つ以上含有する側鎖を有する構成成分を表す。
a〜cは、それぞれ全重合体成分中の質量%を表し、aは40〜90質量%、bは1〜30質量%及びcは1〜30質量%を表す。
【0010】
(2)上記のグラフト共重合体(GP)が、オーバーコート層の形成後に架橋している上記(1)に記載の反射防止膜。
(3)低屈折率層が微粒子を含むことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の反射防止膜。
【0011】
(4)上記屈折率層と上記オーバーコート層の間にポリマー層が積層されていることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の反射防止膜。
(5)透明支持体の屈折率よりも高い屈折率を有する高屈折率層が、透明支持体と低屈折率層との間に設けられている上記(1)〜(4)のいずれかに記載の反射防止膜。
【0012】
(6)画像表示面上に、透明支持体および隣接する層の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層がこの順に積層されている画像表示装置であって、該画像表示面の最上層に上記(1)記載のグラフトポリマー(GP)を含有するオーバーコート層が積層されていることを特徴とする画像表示装置。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の反射防止膜に関して説明する。
本発明の反射防止膜は、透明支持体、および隣接する層の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層が積層されており、この「隣接する層」は透明支持体であってもよい。
【0014】
[反射防止膜の層構成]
本発明の反射防止膜の基本的な構成を図面を引用しながら説明する。
図1は、反射防止膜の主な層構成を示す断面模式図である。図1の(a)に示す態様は、透明支持体(1)、低屈折率層(2)、ポリマー層(3)、そしてオーバーコート層(4)の順序の層構成を有する。透明支持体(1)と低屈折率層(2)は、以下の関係を満足する屈折率を有する。
【0015】
低屈折率層の屈折率<透明支持体の屈折率
【0016】
図1の(b)に示す態様は、透明支持体(1)、ハードコート層(5)、低屈折率層(2)、ポリマー層(3)、そしてオーバーコート層(4)の順序の層構成を有する。透明支持体(1)と低屈折率層(2)は、以下の関係を満足する屈折率を有する。
【0017】
低屈折率層の屈折率<透明支持体の屈折率
【0018】
図1の(c)に示す態様は、透明支持体(1)、ハードコート層(5)、高屈折率層(6)、低屈折率層(2)、ポリマー層(3)、そしてオーバーコート層(4)の順序の層構成を有する。透明支持体(1)、高屈折率層(6)および低屈折率層(2)は、以下の関係を満足する屈折率を有する。
【0019】
低屈折率層の屈折率<透明支持体の屈折率<高屈折率層の屈折率
【0020】
図1の(c)のように、高屈折率層6と低屈折率層2とを有する反射防止膜では、特開昭59−50401号公報に記載されているように、高屈折率層が下記式(i)、低屈折率層が下記式(ii)をそれぞれ満足することが好ましい。
【0021】
【数1】
【0022】
式(i)中、mは正の整数(一般に1、2または3)であり、n1は高屈折率層の屈折率であり、そして、d1は高屈折率層の層厚(nm)である。
【0023】
【数2】
【0024】
式(ii)中、nは正の奇数(一般に1)であり、n2は低屈折率層の屈折率であり、そして、d2は低屈折率層の層厚(nm)である。
【0025】
図1の(d)に示す態様は、透明支持体(1)、ハードコート層(5)、中屈折率層(7)、高屈折率層(6)、低屈折率層(2)、ポリマー層(3)、そしてオーバーコート層(4)の順序の層構成を有する。透明支持体(1)、中屈折率層(7)、高屈折率層(6)および低屈折率層(2)は、以下の関係を満足する屈折率を有する。
【0026】
低屈折率層の屈折率<透明支持体の屈折率<中屈折率層の屈折率<高屈折率層の屈折率
【0027】
図1の(d)のように、中屈折率層7、高屈折率層6と低屈折率層2とを有する反射防止膜では、特開昭59−50401号公報に記載されているように、中屈折率層が下記式(iii)、高屈折率層が下記式(iv)、低屈折率層が下記式(v)をそれぞれ満足することが好ましい。
【0028】
【数3】
【0029】
式(iii)中、hは正の整数(一般に1、2または3)であり、n3は中屈折率層の屈折率であり、そして、d3は中屈折率層の層厚(nm)である。
【0030】
【数4】
【0031】
式(iv)中、jは正の整数(一般に1、2または3)であり、n4は高屈折率層の屈折率であり、そして、d4は高屈折率層の層厚(nm)である。
【0032】
【数5】
【0033】
式(v)中、kは正の奇数(一般に1)であり、n5は低屈折率層の屈折率であり、そして、d5は低屈折率層の層厚(nm)である。
【0034】
図2は、本発明の好ましい態様における低屈折率層とポリマー層、オーバーコート層を有する反射防止膜の断面模式図である。図2に示す低屈折率層(2)は、微粒子(21)およびバインダー(22)を含む。そして、微粒子(21)間に空隙(23)が形成されている。空隙は、微粒子の内部に存在していてもよい。この低屈折率層の上に、ポリマー層(3)が設けられていることが好ましい。このポリマー層は、粒径が10nm以上のポリマーの微粒子を用いる、分子量が20000以上のポリマーを用いる等の手段により、低屈折率層の空隙を維持したまま層を形成することができる。このポリマー層(3)により、低屈折率層(2)の空隙(23)の開口部が塞がれるため、ポリマー層(3)の形成後に上にオーバーコート層(4)を設けた時、防汚層成分が空隙に拡散せず、空隙が維持されていると推定される。
【0035】
[オーバーコート層]
本発明のオーバーコート層は、前記一般式(I)で表される、主鎖がフッ素原子を主成分とし、側鎖にポリシロキサン成分を有するグラフト共重合体(GP)を、必要に応じて硬化剤及び/又は硬化促進剤等とともに、硬化されたマトリックス層である。
本発明の一般式(I)で示されるグラフト共重合体(GP)について詳細に説明する。
【0036】
グラフト共重合体(GP)中の重合体成分(A)中、R0は、フッ素原子又は炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を表す。R0がパーフルオロアルキル基を表す場合には、成分(A)に相当する単量体の重合反応性の観点からは、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基が好ましい。
【0037】
成分(A)は、全重合体成分中の質量%(a)として、40〜90質量%であることが好ましく、更には45〜80質量%が好ましい。
【0038】
グラフト共重合体(GP)の重合体成分(B)について説明する。
成分(B)中、R1及びR2は、同じでも異なってもよく、好ましくは各々置換されてもよい炭素数1〜12の脂肪族基又は置換されてもよい炭素数6〜14のアリール基を表す。
【0039】
ここで、脂肪族基は、炭素数1〜12の直鎖または分岐状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等)、炭素数2〜12の直鎖または分岐状のアルケニル基(例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基等)、炭素数3〜12の直鎖または分岐状のアルキニル基(例えばプロピニイル基、ブテニイル基、シクロヘキシニイル基、オクチニイル基等)、炭素数7〜12のアラルキル基(例えばベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、2−ナフチルエチル基等)、炭素数5〜12の脂環式(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、トリシクロデシル基、ビシクロオクチル基、トリシクロドデシル基等)等が挙げられる。
アリール基は、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基等が挙げられる。
【0040】
これらの脂肪族基及びアリール基は、更に置換基を有していてもよく、水素原子を除く1価の非金属原子構成の残基であれば限定されるものではない。置換基として、フッ素原子、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)が好ましい。R1、R2としては、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基、トリフロロメチル基、2,2,2−トリフロロエチル基、ベンジル基、フェニル基が好ましい。
pは10〜500の整数を表し、好ましくは50〜300であり、特に好ましくは100〜250の場合である。
【0041】
R3、R4及びR5はそれぞれ同じでも異なっても良く、1価の有機基を表す。好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、オクチル基等)、炭素数1〜10のアルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等)、炭素数6〜20のアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基等)であり、特に好ましくは炭素数1〜5のアルキル基である。これらの基は更に置換基を有していてもよい。
【0042】
Xは、主鎖とポリシロキサン成分を連結する2価の有機残基を表し、好ましくは下記式で表される2価の有機残基を表す。
【0043】
【化3】
【0044】
ここで、r11及びr12はそれぞれ水素原子又はフッ素原子を表す。nは1〜12の整数を表し、好ましくは1〜8の整数である。L0は、酸素原子とポリシロキサン部とを連結する2価の連結基を表す。具体的には、
【0045】
【化4】
【0046】
2価の脂環式基(脂環式構造の炭化水素環としては、例えばシクロヘプタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、ビシクロペンタン環、トリシクロヘキサン環、ビシクロオクタン環、ビシクロノナン環、トリシクロデカン環、等)、2価のアリール環基(アリール環としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環、等)で示される基等の原子団の任意の組合せで構成されるものである。
【0047】
上記において、r1、r2は同じでも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、ハロゲン原子、臭素原子、ヨウ素原子)又は炭素数1〜6の置換されてもよいアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、トリフロロメチル基、メトキシエチル基、シアノエチル基、クロロエチル基等)を表し、r3は、水素原子又は炭素数1〜12の置換されてもよい炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ベンジル基、フェネチル基、フェニル基、クロロフェニル基、メトキシフェニル基、アセチルフェニル基、トリフロロフェニル基等)を表し、r4、r5は、同じでも異なってもよく、炭素数1〜12の置換されてもよい炭化水素基(具体的には上記r3と同一の内容を表す)を表す。
【0048】
一般式(I)における成分(B)において、Xは総原子数6以上(但し、上記各例において、炭素原子数、ケイ素原子又は窒素原子に直接結合する上記r1〜r5で示される水素原子又は置換基の原子は除く)の「連結基」であることが好ましい。
【0049】
成分(B)は、全重合体成分中の質量%(b)として、1〜30質量%であることが好ましく、更には5〜20質量%が好ましい。この範囲において、反応性ポリシロキサンオリゴマーの高分子反応が充分に進行し、得られる反射防止膜の膜強度、防汚性及び水滴滑落性が良好となる。
【0050】
成分(B)における「−X−(ポリシロキサン)」部分の具体例について下記に挙げる。但し、これに限定されるものではない。
【0051】
【化5】
【0052】
【化6】
【0053】
【化7】
【0054】
次に一般式(I)を構成する重合体成分(C)について説明する。
重合体成分(C)は、架橋反応に関与し得る反応性基を置換基中に含有する、重合体成分(A)と共重合可能な一官能性単量体に相当する繰り返し単位を表す。具体的には、例えば下記一般式(II)で示される成分が挙げられる。
【0055】
【化8】
【0056】
式(II)中、V1は、−O−、−OCO−、−COO−、−CONH−、又は下記の基を表す(ここでqは1〜12の整数を表す)。
【0057】
【化9】
【0058】
L1は、−V1−と−Yとを連結する2価の連結基又は直接結合を表す。2価の連結基としては、具体的には、前記式のL0と同一のものが挙げられる。
−[V1−L1]−の結合基は、水素原子を除く原子数の総和が1〜20個であることが好ましく、更には4〜8個が好ましい。この範囲において、硬化反応が速やかに進行するとともに、形成された膜の強度も充分に保持される。
【0059】
a1、a2及びa3は各々同じでも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等)又は炭素数1〜6の置換されてもよいアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、プロポキシカルボニルメチル基、トリフロロメチル基、2,2,2−トリフロロエチル基等)を表す。
【0060】
【化10】
【0061】
Yは、少なくとも1つの架橋反応に関与し得る反応性基を表す。
架橋反応に関与し得る反応性基(Y)としては例えば、活性水素原子を有する基(たとえば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、メルカプト基、β−ケトエステル基、ヒドロシリル基、シラノール基等)、カチオン重合可能な基(エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基、ビニルオキシ基等)、酸無水物、ラジカル重合可能な不飽和2重結合を有する基(アクリロイル基、メタクリロイル基等)、加水分解性シリル基(例えばアルコキシシリル基、アシルオキシシリル基等)、求核剤によって置換され得る基(活性ハロゲン原子、スルホン酸エステル等)、イソシアナート基(保護されており、加熱によりイソシアナート基を発生するブロックイソシアナート基でも良い)等が挙げられる。
これらの反応性基は、単量体段階から導入されてもよいし、高分子反応により導入してもよい。高分子反応は、従来公知の化学結合しうる官能性同志との組合せを適宜に選択して行なうことができる。例えば岩倉義男、栗田恵編「反応性高分子」(株)講談社刊、(1977年)等に記載されている方法が挙げられる。
【0062】
上記の架橋反応性基の中で、好ましくは水酸基、エポキシ基、ビニルオキシ基、(メタ)アクリロイル基または加水分解性シリル基である。
これらの架橋反応性基を有する共重合成分の含有量は、全重合体成分中1〜30質量%の範囲であることが好ましく、5〜25質量%の範囲であることがより好ましく、5〜20質量%の範囲であることが特に好ましい。この範囲において、硬化膜の強度、膜形成後の表面の防汚性等が好ましい。
【0063】
具体的な架橋反応に関与し得る重合単位を以下に例示する。但し、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0064】
【化11】
【0065】
【化12】
【0066】
【化13】
【0067】
【化14】
【0068】
本発明のグラフト共重合体(GP)は、前記成分(A)〜(C)の共重合成分の他に、前記共重合成分と共重合可能な単量体に相当する他の共重合成分を含有してもよい。
例えば、アルキルビニルエーテル(アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)、シクロヘキシルビニルエーテル、炭素数1〜30の含フッ素アルキルビニルエーテル[例えば−CF2CF3、−CH2(CF2)4H、−CH2(CF2)8CF3、−CH2CH2(CF2)4H等であっても、分岐構造{例えばCH(CF3)2、CH2CF(CF3)2,CH(CH3)CF2CF3、CH(CH3)(CF2)5CF2H等}を有していても良く、また脂環式構造(好ましくは5員環または6員環、例えばパーフルオロシクロヘキシル基、パーフルオロシクロペンチル基またはこれらで置換されたアルキル基等)を有していても良く、エーテル結合(例えばCH2OCH2CF2CF3、CH2CH2OCH2C4F8H、CH2CH2OCH2CH2C8F17、CH2CH2OCF2CF2OCF2CF2H等)を有していても良い。]、脂肪族カルボン酸のビニルエステル又はアリルエステル(例えば脂肪族カルボン酸として、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シクロヘキサンカルボン酸等)等が挙げられる。
これらの共重合成分の導入量は、全重合体成分中、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、5〜10質量%の範囲であることが特に好ましい。
硬度、基材への密着性、溶剤への溶解性、透明性等種々の観点から適宜選択することができる。
【0069】
a〜cは各構成成分の全重合体中における質量%を表す。具体的には、各構成成分の項で記載した通りである。但し、本発明のグラフト共重合体(GP)の質量組成比は以下の通りであることが好ましい。
【0070】
本発明のグラフト共重合体は、側鎖(グラフト部分)を構成するポリシロキサン成分の主鎖の片末端に反応性基(例えば、カルボキシル基、環状酸無水物基、水酸基、メルカプト基、アミノ基、イソシアナート基、エポキシ基、ホルミル基、ハロゲン原子(塩素、臭素、ヨウ素等)を結合した一官能性ポリシロキサン(SP)を該反応性基と化学結合する相対する反応性基を含有するパーフルオロオレフィン共重合体(FP)と高分子反応により製造される。
ここで、パーフルオロオレフィン共重合体(FP)100質量部に対して、反応性シロキサン(SP)x質量部を用いて高分子反応を行う。この際用いる共重合体(FP)は、本発明のグラフト共重合体(GP)中の重合体成分(A)をa′質量%、反応性シロキサン(SP)と高分子反応を生じない他の反応性基含有成分(C)をc′質量%とする。
【0071】
【数6】
【0072】
本発明のグラフト共重合体(GP)は、上記の如く、反応性ポリシロキサン(SP)の反応性基と、パーフルオロオレフィン共重合体(FP)中の反応性基とが化学結合する組み合わせで任意に製造される。例えば、活性水素原子を有する反応性基(水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基等)は、イソシアナート基、エポキシ基又は環状酸無水物基との組み合わせ、エポキシ基等の3員環基(例えば下記の基)は、上記の活性水素原子を有する反応性基又は環状酸無水物基との組み合わせ、カルボキシル基は水酸基、アミノ基、エポキシ基等の3員環基、イソシアナート基との組み合わせ等が挙げられる。
【0073】
【化15】
【0074】
反応を促進させるために触媒を併用するのが好ましい。用いる触媒は、従来公知の有機化学反応に基づく高分子反応の反応様式によって適宜選択する。
【0075】
得られたポリマーは、そのまま、本発明のオーバーコート層用組成物に供してもよいが(好ましくは、活性水素原子を有する反応性基とイソシアナート基、エポキシ基、あるいは環状酸無水物基との組合性等の付加反応系等)、ポリマーの貧溶媒中に再沈することが好ましい。
再沈溶媒としては、特に限定されないが、溶媒の乾燥除去が容易なことからメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ヘキサン、石油エーテル、リグロイン等が挙げられる。
【0076】
本発明のオーバーコート層形成組成物には、硬化剤及び硬化促進剤のうちの少なくとも一種が併用されることが好ましい。これらは、前記本発明のグラフト共重合体(GP)中の架橋反応性部位の硬化反応に応じて、従来公知のものを適宜選択して使用することができる。
例えば、山下晋三、金子東助編「架橋剤ハンドブック」大成社刊(1981年)高分子学会編「高分子データハンドブック 基礎編」培風舘(1986年)等に記載されている化合物を用いることができる。
例えば、有機シラン系化合物、ポリイソシアナート系化合物、ポリオール系化合物、ポリアミン系化合物、酸無水化合物類、ポリエポキシ基含有化合物及びエポキシ樹脂(例えば堀内弘編著「新エポキシ樹脂」昭晃堂(1985年刊)、橋本邦之編著「エポキシ樹脂」日刊工業新聞社(1969年刊)等に記載された化合物類)、メラミン樹脂(例えば、三輪一郎、松永英夫編著「ユリア・メラミン樹脂」日刊工業新聞社(1969年刊)、等に記載された化合物類)、ポリ(メタ)アクリレート系化合物(例えば、大河原信、三枝武夫、東村敏延編「オリゴマー」講談社(1976年)、大森英三「機能性アクリル系樹脂」テクノシステム(1985年刊)等に記載された化合物類が挙げられる。
【0077】
例えば一般式(I)のポリマーの成分(C)が加水分解性シリル基を硬化反応性部位として含有する場合には、ゾルゲル反応の触媒として公知の酸、塩基触媒または金属キレート化合物を硬化促進剤として用いることができる。
酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、または酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トリフロロメチルスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸等のブレンステッド酸、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラブトキシチタネート等のルイス酸が挙げられる。
塩基としては、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、テトラメチルエチレンジアミン等の無機・有機の化合物が挙げられる。
【0078】
金属キレート化合物としては、活性メチレン化合物(例えば、ジケトン類、β−ケトエステル類等)とAl、Ti、Zr等の金属原子とのキレート化合物等が挙げられる。例えば特開平11−106704号明細書中の段落番号「0044]〜[0046]中に記載の化合物等が挙げられる。
好ましくは、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムが挙げられる。
【0079】
これら硬化促進剤の使用量は化合物の種類、硬化反応性部位の違いによってまちまちであるが、一般的にはオーバーコート層形成組成物全固形分に対して0.1〜15質量%程度が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%程度である。
【0080】
また、オーバーコート層形成組成物の保存安定性の観点から、光の作用によって酸又は塩基等の硬化促進剤を発生する化合物を使用しても良い。これらの化合物を使用する場合には、活性エネルギー線の照射によって皮膜の硬化が可能になる。
光の作用により酸を発生する化合物としては、例えば有機エレクトロニクス材料研究会(ぶんしん出版)編「イメージング用有機材料」p187〜198、特開平10−282644号等に種々の例が記載されておりこれら公知の化合物を使用することができる。具体的には、RSO3 −(Rはアルキル基、アリール基を表す)、AsF6 −、SbF6 −、PF6 −、BF4 −等をカウンターイオンとするジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等の各種オニウム塩、トリハロメチル基が置換したオキサジアゾール誘導体やS−トリアジン誘導体等の有機ハロゲン化物、有機酸のo−ニトロベンジルエステル、ベンゾインエステル、イミノエステル、ジスルホン化合物等が挙げられ、好ましくは、オニウム塩類、特に好ましくはスルホニウム塩、ヨードニウム塩類である。光の作用で塩基を発生する化合物も公知のものを使用することができ、具体的にはニトロベンジルカルバメート類、ジニトロベンジルカルバメート類等を挙げることができる。
【0081】
本発明では特に光の作用により、上記記載の酸を発生する化合物を用いることが好ましい。これらの光の作用により、酸あるいは塩基を発生する化合物と併用して増感色素も好ましく用いることができる。本発明の光の作用によって硬化反応を促進する化合物の添加量としては、オーバーコート層形成組成物中の全固形分に対して0.1〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0082】
さらに硬化を促進する他の硬化促進剤として、脱水剤を使用しても良い。脱水剤としては、例えば、カルボン酸オルトエステル(オルト蟻酸メチル、オルト蟻酸エチル、オルト酢酸メチル等)、酸無水物(無水酢酸等)等を挙げることができる。
【0083】
また、硬化剤として有機シラン化合物を用いることが好ましい。
例えば、アルコキシシラン化合物、アシルオキシシラン化合物等であり、化合物の素材安定性から、アルコキシシラン化合物類が好ましい。
具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、CF3CH2CH2Si(OCH3)3、CF3(CF2)5CH2CH2Si(OCH3)3、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−トリメトキシシリルプロピルイソシアネート、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
更に好ましくは、一般式(R11)Si(OR21)3、一般式(R11)(R12)Si(OR21)2で示されるオルガノシランにおいて、R11及びR12のうちの少なくともいずれかの置換基がフッ素原子を含有する化合物が挙げられる。
ここで、R11は、炭素数1〜10の有機基であり、例えばCF3CH2−、(CF)2CH−、CF2=CF−、CF3CH2CH2CH2−、C2F5CH2CH2CH2−、C3F7CH2CH2CH2−、C2F5CH2CH2−、CF3OCH2CH2CH2−、C2F5OCH2CH2CH2−、C3F7OCH2CH2CH2−、(CF3)2CHOCH2CH2CH2−、C4F9CH2OCH2CH2CH2−、3−(パーフルオロシクロヘキシルオキシ)プロピル、H(CF2)4CH2OCH2CH2CH2−、H(CF2)4CH2CH2CH2−等が挙げられる。
【0085】
上記オルガノシラン中、R21は、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基であり、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、アセチル基などが挙げられる。又、(R12)は、炭素数1〜10の有機基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基等のアルキル基、そのほかγ−クロロプロピル基、ビニル基、γ−グリシドキシプロピル基、γ−メタクリルオキシプロピル基、γ−メルカプトプロピル基、フェニル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基等の有機基、又はR11と同一の内容のフッ素原子含有の有機基等が挙げられる。
【0086】
硬化剤としての上記シラン化合物は、グラフト共重合体(GP)100質量部当たり、0.5〜300質量部程度の添加量が好ましく、特に、グラフト共重合体100質量部当たり、5.0〜100質量部程度の添加量とすることが好ましい。
【0087】
一方、重合成分(C)の硬化反応性部位が水酸基、アミノ基、メルカプト基等の活性水素を有する基である場合に用いる硬化剤としては、例えばポリイソシアネート系、アミノプラスト、多塩基酸またはその無水物などを挙げることができる。
【0088】
ポリイソシアネート系としては、m−キシリレンジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物、メチルシリルトリイソシアネートなどのシリルイソシアネート化合物、およびこれらイソシアネート化合物の部分縮合物、多量体や、多価アルコール、低分子量ポリエステル皮膜などとの付加物、イソシアネート基をフェノールなどのブロック化剤でブロックしたブロックポリイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0089】
アミノプラストとしては、メラミン皮膜、グアナミン皮膜、尿素皮膜などが採用される。中でもメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの低級アルコールの1種または2種以上により少なくとも部分的にエーテル化されたメチロールメラミン(例えばヘキサメチルエーテル化メチロールメラミン、ヘキサブチルエーテル化メチロールメラミン、メチルブチル混合エーテル化メチロールメラミン、メチルエーテル化メチロールメラミン、ブチルエーテル化メチロールメラミン等)、又はこれらの縮合物などが挙げられる。
【0090】
多塩基酸またはその無水物としては、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、フタル酸、無水フタル酸などの芳香族多価カルボン酸またはその無水物やマレイン酸、無水マレイン酸、コハク酸、無水コハク酸などの脂肪族多価カルボン酸またはその無水物などが例示される。
【0091】
一方、ポリマーの硬化反応性基がエポキシ基、オキセタニル基の場合は、活性水素を有する反応性基(例えば水酸基、カルボキシル基、アミノ基)あるいは環状酸無水物含有基との化学反応により硬化させることができる。
この際、上記の両反応性基がグラフト共重合体(GP)中の共重合成分として含有される、あるいは各々の反応性基を少なくとも1種含有するグラフト共重合体(GP)を併用するのいずれでもよい。
この場合に、前記したと同様の酸、塩基、光及び/又は熱により、酸又は塩基を発生する化合物を硬化促進剤として用いる。
他の好ましい態様として、エポキシ基あるいはオキセタニル基と反応可能な上記の活性水素を有する反応性基又は環状酸無水物含有基を分子中に2ケ以上含有する多官能化合物からなる硬化剤が挙げられる。
【0092】
また、カチオン重合可能な基(カチオン重合性基:活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤の存在下に活性エネルギー線を照射したときに重合反応および/または架橋反応を生ずる反応性基)の場合は、カチオン重合性基の代表例としては、エポキシ基、オキセタン基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、ビニルエーテル基などを挙げることができる。本発明ではこれらカチオン重合性基含有化合物のうちの1種を用いてもまたは2種以上を用いてもよい。
【0093】
カチオン重合性化合物の具体例としては、エポキシ基含有の化合物(例えば、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂等)、環状アセタール化合物、環状ラクトン化合物、チイラン化合物、チエタン化合物、ビニルオキシ基含有のビニルエーテル化合物、エポキシ化合物とラクトンとの反応によって得られるスピロオルソエステル化合物等を挙げることができる。
【0094】
上記した中でも、本発明では、カチオン重合性有機化合物として、エポキシ基、ビニルオキシ基含有の化合物が好ましく用いられ、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物、1分子中に2個以上のビニルオキシ基を有するポリビニルオキシ化合物、1分子中に少なくともエポキシ基とビニルオキシ基を各々一個以上有する化合物、がより好ましく用いられる。特に、カチオン重合性有機化合物として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する脂環式ポリエポキシ化合物を含有し且つ該脂環式ポリエポキシ化合物の含有量がエポキシ化合物の全質量に基づいて30質量%以上、より好ましくは50質量%以上であるエポキシ化合物(エポキシ化合物の混合物)を用いると、カチオン重合速度、厚膜硬化性、解像度、紫外線透過性などが一層良好になり、しかも樹脂組成物の粘度が低くなって製膜が円滑に行われるようになる。
【0095】
上記した脂環族エポキシ樹脂としては、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル、或いは不飽和脂環族環(例えば、シクロヘキセン、シクロペンテン、ジシクロオクテン、トリシクロデセン等)含有化合物を過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化して得られるシクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物などを挙げることができる。
【0096】
また、上記した脂肪族エポキシ樹脂としては、例えば、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートのホモポリマー、コポリマーなどを挙げることができる。さらに、前記のエポキシ化合物以外にも、例えば、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエンなどを挙げることができる。信越シリコーン社製のK−62−722や東芝シリコーン社製のUV9300等のエポキシシリコーン、Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol.28, 497(1990)に記載されているシリコーン含有エポキシ化合物のような多官能エポキシ化合物を挙げることができる。
【0097】
また、上記した芳香族エポキシ樹脂としては、例えば少なくとも1個の芳香核を有する1価または多価フェノール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のモノまたはポリグリシジルエーテルを挙げることができる。
具体例として、例えば特開平11−242101号明細書中の段落番号[0084]〜[0086]記載の化合物等が挙げられる。
これらのエポキシドのうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシドおよび脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。本発明では、上記エポキシドの1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0098】
オキセタニル基を含有する化合物としては、分子中に含有されるオキセタニル基の数は1〜10、好ましくは1〜4である。これらの化合物は、エポキシ基含有化合物と併用することが好ましい。具体的には、例えば特開2000−239309号明細書中の段落番号[0024]〜[0025]に記載の化合物、J.V.CRIVELLO etal、J.M.S.−PUREAPPL. CHEM.、A30、pp.173〜187(1993)に記載のシリコン含有のオキセタン化合物等が挙げられる。
【0099】
ビシクロオルソエステル化合物としては、例えば特表2000−506908号公報等記載の化合物、1−フェニル−4−エチル−2,6,7−トリオキサビシクロ〔2,2,2〕オクタン、1−エチル−4−ヒドロキシメチル−2,6,7−トリオキサビシクロ〔2,2,2〕オクタン等の化合物を挙げることができる。
【0100】
スピロオルソカーボネート化合物としては、1,5,7,11−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、3,9−ジベンジル−1,5,7,11−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、1,4,6−トリオキサスピロ〔4,4〕ノナン、2−メチル−1,4,6−トリオキサスピロ〔4,4〕ノナン、1,4,6−トリオキサスピロ〔4,5〕デカン等の化合物を挙げることができる。
【0101】
ビニルオキシ化合物としては、2−メタクリロイルオキシエチルビニルエーテル、2−アクリロイルオキシエチルビニルエーテル等のアルケニルビニルエーテル化合物、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等のカチオン重合性窒素含有化合物、ブタンジオールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−ベンゼンジメタノールジビニルエーテル、ハイドロキノンジビニルエーテル、サゾルシノールジビニルエーテル等の多官能ビニル化合物、Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol.32, 2895(1994)に記戦されているプロペニル化合物、Journal of Polymer Science: Part A; Polymer Chemistry, Vol.33, 2493(1995)に記載されているアルコキシアレン化合物、Journa1 of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry,Vol.34, 1015(1996)に記載されているビニル化合物、Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol. 34, 2051(1996)に記載されているイソプロペニル化合物等を挙げることができる。具体例として、特開2002−29162号公報明細書中の段落番号[0022]〜[0029]記載の化合物等が挙げられる。
【0102】
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度を考慮すると、ジ又はトリビニルエーテル化合物が好ましい。本発明では、上記ビニルエーテル化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0103】
これらの硬化剤を添加する場合、上記グラフト共重合体(GP)100質量部当り、0.5〜300質量部程度の添加量が好ましく、特に、グラフト共重合体(GP)100質量部当り、5.0〜100質量部程度の添加量が好ましい。また、これらのカチオン重合性反応性基からなる硬化系は、酸もしくは光酸発生化合物を硬化促進剤として用いる。具体的には、シリル反応性基で記載と同様の化合物が挙げられる。
【0104】
一方、ポリマーの架橋反応性部位がラジカル重合可能な不飽和二重結合(アクリロイル基、メタクリロイル基等)を有する場合には硬化剤としてラジカル重合性化合物、そして硬化促進剤として光及び/又は熱でラジカルを発生する化合物を用いることが好ましい。ラジカル重合性化合物は、重合性基を2個〜10個含有する多官能性化合物が好ましく、更には2〜6個の多官能化合物が好ましい。
【0105】
ポリマー(GP)中に含有するラジカル重合性基と共重合性良好な重合性基を有する重合性化合物を硬化剤として適宜選択して組合せることが好ましい。
その共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基や、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類およびチオール類との付加反応物、さらに、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類およびチオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用する事も可能である。
【0106】
脂肪族多価アルコール化合物として、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサンジオール、シクロヘキシルジオール、シクロヘキサンジメタノール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール等と不飽和カルボン酸(クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等)とのモノ置換、あるいはポリ置換の重合性化合物が挙げられる。
その他のエステルの例として、例えばビニルメタクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、特公昭46−27926、特公昭51−47334、特開昭57−196231記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240、特開昭59−5241、特開平2−226149記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。
【0107】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等が挙げられる。
【0108】
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロヘキシレン構造を有するものを挙げることができる。
【0109】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有する水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有する。
【0110】
さらに、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有するラジカル重合性化合物類を用いても良い。
【0111】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。さらに日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0112】
更には、フッ素原子含有の単官能もしくは多官能の化合物も好ましく、例えば特開2000−275403号明細書中の段落番号[0059]〜[0066]記載の化合物等が挙げられる。
ラジカル重合開始剤としては熱の作用によりラジカルを発生するもの、又は光の作用によりラジカルを発生するもののいずれの形態も可能である。
【0113】
熱の作用によりラジカル重合を開始する化合物としては、有機又は無機過酸化物、有機アゾ、ジアゾ化合物、オニウム化合物等を用いることができる。
具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロペルオキシド、ブチルヒドロペルオキシド、無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、アゾ化合物として2−アゾ−ビス−イソブチロニトリル、2−アゾ−ビス−プロピオニトリル、2−アゾ−ビス−シクロヘキサンジニトリル等、ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等、オニウム化合物として前記シリル反応性基で記載したと同様の化合物等を挙げることができる。
【0114】
光の作用によりラジカル重合を開始する化合物を使用する場合は、活性エネルギー線の照射によって皮膜の硬化が行われる。
このような光ラジカル重合開始剤の例としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類がある。アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。これらの光ラジカル重合開始剤と併用して増感色素も好ましく用いることができる。
【0115】
熱または光の作用によってラジカル重合を開始する化合物の添加量としては、炭素−炭素二重結合の重合が開始する量であれば良いが、一般的にはオーバーコート層形成組成物中の全固形分に対して0.1〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0116】
これらの硬化剤を添加する場合も他の硬化剤と同様に、上記グラフト共重合体(GP)100質量部当り、0.5〜300質量部程度の添加量が好ましく、特に、グラフト共重合体(GP)100質量部当り、5.0〜100質量部程度の添加量が好ましい。
【0117】
本発明のオーバーコート層形成組成物は、通常本発明のグラフト共重合体(GP)を適当な溶剤に溶解して作製される。この際ポリマーの濃度は、用途に応じて適宜選択されるが一般的には0.01〜60質量%程度であり、好ましくは0.5〜50質量%、特に好ましくは1%〜20質量%程度である。
【0118】
上記溶剤としては、本発明のグラフト共重合体(GP)を含む組成物が沈殿を生じることなく、均一に溶解または分散されるものであれば特に制限はなく2種類以上の溶剤を併用することもできる。好ましい例としては、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、エーテル類(テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、水などを挙げることができる。
【0119】
本発明のオーバーコート層形成組成物にはさらに膜強度または塗布性の改良のためにコロイダル無機粒子を添加しても良い。このようなコロイダル無機粒子としては、粒子径は5〜50nmのものが用いられるが、好ましくは、5〜30nmのものであり、特に好ましくは、粒子径8〜20nmのものである。無機粒子としては、シリカ、アルミナ、フッ化マグネシウム等が挙げられる。好ましくはコロイダルシリカである。このようなコロイダルシリカは、例えばI.M.Thomas著、Appl. Opt. 25, 1481(1986)等に記載の手法に順じて、テトラアルコキシシランを原料としてアンモニア水等の触媒を用いて加水分解・重縮合することにより調整することができる。また市販のものでは、日産化学工業(株)製スノーテックスIPA−ST、同MEK−ST、日本エアロジル(株)製AEROSIL300、同AEROSIL130、同AEROSIL50(いずれも商品名)等を利用することもできる。
【0120】
コロイダル無機粒子の添加量は、オーバーコート層塗膜硬化後の全固形分の5〜95質量%の範囲であり、好ましくは10〜70質量%、特に好ましくは、20〜60質量%の場合である。
【0121】
その他オーバーコート層、オーバーコート層形成組成物には各種シランカップリング剤、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤などの添加剤を必要に応じて適宜添加しても良い。
【0122】
オーバーコート層は、前記のグラフト共重合体(GP)を主成分として形成されるが、膜形成方法は特に限定されるものではない。通常、グラフト共重合体(GP)を含む塗布液を、低屈折率層若しくはポリマー層の上に塗布して形成する。塗布方法は、従来公知の方法を用いることができる。本発明では、オーバーコート層の材料が低屈折率層の空隙を占有している割合を70体積%未満とすることが好ましい。オーバーコート層の材料が低屈折率層の空隙を占有している割合は、50体積%未満であることが好ましく、40体積%未満であることがより好ましく、30体積%未満であることがさらに好ましく、20体積%未満であることが最も好ましい。低屈折率層の空隙を残してオーバーコート層を形成するためには、後述するようにポリマー層を設けてその上に設ける方法が挙げられる。低屈折率層上に直接設ける設ける場合には、様々な手段が採用できる。例えば、前述したように低屈折率層の空隙を微粒子とバインダーポリマーで閉じた状態で形成すれば、オーバーコート層を塗布により形成しても低屈折率層の空隙が残存する。また、オーバーコート層の塗布液が低屈折率層の空隙に浸入しないように塗布液の粘度を高くしてもよい。具体的には、オーバーコート層中のグラフト共重合体(GP)を粒径10nm以上の微粒子とするか、オーバーコート層の塗布量を低屈折率層の空隙の80体積%以下となるように調整するか、あるいはオーバーコート層中のグラフト共重合体(GP)を重量平均分子量2万以上のポリマーとする。重量平均分子量2万以上のポリマーを用いる方法が特に好ましい。
【0123】
オーバーコート層中のグラフト共重合体(GP)を微粒子とする方法では、微粒子のサイズを低屈折率層の空隙の開口サイズよりも大きくなるように調製する。これにより、微粒子は低屈折率層表面の開口部を塞ぎ、オーバーコート層は低屈折率層の内部の空隙には拡散しない。微粒子の粒径は、10nm以上であることが好ましく、10乃至100nmであることがより好ましく、15乃至70nmであることがさらに好ましく、20乃至50nmであることが最も好ましい。含フッ素化合物の微粒子は、含フッ素化合物の溶液を乳化することにより形成できる。また、含フッ素化合物の溶液から微粒子を析出してもよい。オーバーコート層の塗布量を低屈折率層の空隙の80体積%以下となるように調整する方法では、オーバーコート層を表面に付着する程度の量とすることで、低屈折率層の空隙を維持する。オーバーコート層の塗布量は、オーバーコート層形成前の低屈折率層の空隙の70体積%以下であることがさらに好ましく、60体積%以下であることが特に好ましい。オーバーコート層の膜厚は、2〜50nmが好ましく、5〜30nmがより好ましい。
【0124】
[低屈折率層]
低屈折率層の屈折率は、1.20乃至1.55であることが好ましく、1.30乃至1.55であることがさらに好ましい。低屈折率層の厚さは、50乃至400nmであることが好ましく、50乃至200nmであることがさらに好ましい。このような低屈折率の層とするには、材料の屈折率を下げる(▲1▼フッ素原子を導入する、▲2▼密度を下げる(空隙を導入すること))、或いは▲3▼層内に微細な空隙を導入する等の方法が挙げられるが、本発明では限定されるものではない。具体的には、含フッ素化合物及び低屈折率の微粒子を少なくとも含有した硬化膜が好ましく用いられる。膜を形成する含フッ素化合物は予めポリマーとして、モノマーを製膜工程で重合し皮膜化する、或いは両者を併用するなどして用いられる。これら膜形成用の含フッ素化合物は、全重合成分の10質量%以上が好ましく、更には30〜85質量%である。
【0125】
低屈折率層形成のマトリックッスポリマーは、特に限定されるものではないが、飽和炭化水素を主鎖として有するポリマー、ポリエーテルを主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーであることがさらに好ましい。該ポリマーは膜形成後において架橋していることが好ましい。フッ素原子を主鎖または側鎖に含むポリマーが好ましく、フッ素原子を含むポリマーは、フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーの重合反応により合成される。フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーの例には、フルオロオレフィン、フッ素化ビニルエーテルおよびフッ素置換アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのエステル等が挙げられる。ポリマー中のフッ素原子の含有量の増加に伴い低下する。具体的には、特開平11−64401号明細書中の段落番号「0023」〜[0033]記載の化合物等が挙げられる。
【0126】
フッ素原子を含む繰り返し単位とフッ素原子を含まない繰り返し単位からなるコポリマーであってもよい。フッ素原子を含まない繰り返し単位は、特に制限はなく、上記フッ素モノマーと共重合可能なものが挙げられる。フッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーの例には、オレフィン、(メタ)アクリル酸エステル、スチレンおよびその誘導体、ビニルエステル、(メタ)アクリルアミド、およびアクリロニトリル等が挙げられる。具体的には、例えば特開平11−52103号明細書中の段落番号「0044」に記載の化合物等が挙げられる。
【0127】
膜形成後において架橋しているバインダーポリマーを得るためには、二以上の架橋性基を有する多官能性化合物を用いる、含フッ素ポリマー中に架橋性基を含有させる、或いは両者を併用することが好ましい。多官能性化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれでも良い。例えば、多価アルコールとエチレン性不飽和基含有のカルボン酸(例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等)とのエステル類、ポリアミンとエチレン性不飽和基含有のカルボン酸とのアミド類、ビニルベンゼンおよびその誘導体ビニルスルホン、ビニルオキシ基含有化合物等の多官能性モノマー、ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキ化合物の開環重合反応により合成することが好ましい。具体的には、後述のオーバーコート層に記載の化合物と同様のものが挙げられる。
【0128】
又、ポリマー中に含有する架橋性基の例には、重合性不飽和エチレン基、水酸基、アミノ基、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、ホルミル基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基、ジ若しくはトリアルコキシシリル基等が挙げられる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。また、本発明において架橋基とは、上記化合物に限らず上記官能基が分解した結果反応性を示すものであってもよい。架橋性基を含有する重合成分は、含フッ素ポリマー全重合成分100質量部中の0.5〜50質量%が好ましい。更には、1〜40質量%が好ましい。バインダーポリマーの重合反応および架橋反応に使用する重合開始剤は、架橋反応性基の種類により、従来公知の重合開始剤を適宜選択して用いることができる。好ましくは、光重合開始剤が挙げられる。光重合開始剤の例として、前述のオーバーコート層で記載の化合物と同様のものが挙げられる。
【0129】
又、モノオルガノシラン化合物及びジオルガノシラン化合物とカップリング反応性シリル基含有のポリマーで、且つこれらの3成分の少なくとも1つにフッ素原子を含有するものである化合物類を主として含む低屈折率層用組成物を塗布後に硬化するのゾル−ゲル硬化マトリックスバイダーの系も好ましい。上記オルガノシロキサン化合物及び反応性シリル基含有ポリマーの具体例として、例えば、特開平11−52103号明細書中の段落番号[0010]〜[0047]、同11−106704号明細書中の段落番号[0013]〜[0043]、特開2000−275403号明細書中の段落番号[0015]〜[0026]等に記載の化合物が挙げられる。
【0130】
低屈折率層には、無機微粒子あるいは有機微粒子の微粒子を含有することが好ましい。微粒子の平均粒径は、0.5乃至200nmであることが好ましく、1乃至100nmであることがより好ましく、3乃至70nmであることがさらに好ましい。微粒子の粒径は、なるべく均一(単分散)であることが好ましい。
【0131】
無機微粒子は、非晶質であることが好ましい。無機微粒子は、金属の酸化物、水酸化物、含水酸化物、窒化物、硫化物またはハロゲン化物からなることが好ましく、金属酸化物または金属ハロゲン化物からなることがさらに好ましく、金属酸化物または金属フッ化物からなることが最も好ましい。金属原子としては、Mg、Ca、Ba、Al、Zn、Fe、Cu、Ti、Sn、In、W、Y、Sb、Mn、Ga、V、Nb、Ta、Ag、Si、B、Bi、Mo、Ce、Cd、Be、PbおよびNiが好ましく、Mg、Ca、BおよびSiがさらに好ましい。二種類以上の金属を含む無機化合物を用いてもよい。特に好ましい無機化合物として、二酸化ケイ素、フッ化マグネシウムが挙げられる。又、これらの無機化合物の形状は特に限定されるものではないが、特開2001−188104号公報の段落番号「0018」に記載の短繊維状無機粒子も好ましい。
【0132】
有機微粒子も、非晶質であることが好ましい。有機微粒子は、モノマーの重合反応(例えば乳化重合法)により合成されるポリマー微粒子であることが好ましい。有機微粒子のポリマーはフッ素原子を含むことが好ましい。ポリマー中のフッ素原子の割合は、35乃至80重量%であることが好ましい。含フッ素ポリマーを構成する繰り返し単位に相当するフッ素原子を含むモノマーの例として、例えば特開平11−38202号公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の化合物等が挙げられる。
【0133】
本発明に供される微粒子は、粒子内にミクロボイドを内包していることも好ましい。
無機微粒子内ミクロボイドは、例えば、粒子を形成するシリカの分子を架橋させることにより形成することができる。シリカの分子を架橋させると体積が縮小し、粒子が多孔質になる。具体的には、特開平11−326601号公報の段落番号[0011]〜[0012]等に記載されているものが好ましい。
有機微粒子内にミクロボイドを内包するには、粒子を形成するポリマーを架橋させることにより体積が縮小し粒子を多孔質にする等が挙げられる。これらの中空粒子は、例えば特開平1−185311号、同6−248012号、同8−20604号等に記載の従来公知の乳化重合によって容易に合成できる。具体例として、特開平10−142402号公報等に記載の化合物等が挙げられる。
これらの微粒子は、上記した低屈折率層の屈折率の範囲の中で、任意に調節して用いることができる。例えば、低屈折率層全成分100質量部中の1〜90質量%、より好ましくは5〜75質量%である。
【0134】
空隙を利用した低屈折率層の場合には、オーバーコート層若しくはポリマー層及びオーバーコート層の形成前に空隙を有する層として形成し、オーバーコート層若しくはポリマー層及びオーバーコート層を塗布した後に、3乃至50体積%の空隙率を有する層とすることが好ましい。低屈折率層の空隙は、微粒子を用いて微粒子間または微粒子内のミクロボイドとして形成することができる。
【0135】
粒子間のミクロボイドは、微粒子を少なくとも2個以上積み重ねることにより形成することができる。微粒子を積み重ねてミクロボイドを形成と、微粒子の粒径を調整することで、粒子間ミクロボイドの大きさも適度の(光を散乱せず、低屈折率層の強度に問題が生じない)値に容易に調節できる。
【0136】
又、他のミクロボイド形成の方法として、特開平9−227713号公報の逆相乳化方法を用いる方法、同11−64601号公報の含フッ素ポリマーの析出凝集による方法、同10−282305号の昇華性化合物を利用する方法等も挙げられる。
【0137】
ミクロボイド内包の低屈折率層は、低屈折率層全成分100質量部中の5質量%〜90質量%が好ましく、更には10質量%〜70質量%が好ましい。又パリマーは、5乃至50重量%を含むことが好ましい。ポリマーは、微粒子を接着し、空隙を含む低屈折率層の構造を維持する機能を有する。ポリマーの使用量は、空隙を充填することなく低屈折率層の強度を維持できるように調整する。ポリマーで微粒子を接着するためには、(1)微粒子表面を、物理的表面処理(プラズマ放電処理やコロナ放電処理等)、或いはカップリング剤を使用する化学的に表面処理する方法として、特開平9−222502号公報、特開平11−153703号公報記載の内容を用いることができる。
【0138】
又、他の方法として、(2)微粒子をコアとして、その周囲にポリマーシェルを形成しバインダーポリマーとの親和性を向上する方法として、特開平10−319211号公報、同11−38202号公報等に記載の内容を用いることができる。
【0139】
シェルポリマーに架橋性官能基を導入して、シェルポリマーとバインダーポリマーとを架橋により化学的に結合させてもよい。シェルポリマーは、結晶性を有していてもよい。シェルポリマーのガラス転移温度(Tg)が低屈折率層の形成時の温度よりも高いと、低屈折率層内のミクロボイドの維持が容易である。ただし、Tgが低屈折率層の形成時の温度よりも高いと、微粒子が融着せず、低屈折率層が連続層として形成されない(その結果、強度が低下する)場合がある。その場合は、バインダーポリマーを併用し、バインダーポリマーにより低屈折率層を連続層として形成することが望ましい。微粒子の周囲にポリマーシェルを形成して、コアシェル微粒子が得られる。コアシェル微粒子中に無機微粒子からなるコアが5乃至90体積%含まれていることが好ましく、15乃至80体積%含まれていることがさらに好ましい。ポリマーシェルは、ラジカル重合法により形成することが好ましい。具体的には、乳化重合法または分散重合により実施することが好ましい。乳化重合については、室井宗一、高分子ラテックスの化学、高分子刊行会(1970)に記載がある。分散重合法については、Barrett, Keih E.J.、Dispersion Polymerization in Organic Media、JOHN WILLEY & SONS(1975)に記載がある。
【0140】
分散重合法では、表面処理された微粒子にポリマー分散剤を加え、モノマーと重合開始剤を溶解し、生成するポリマーは不溶である重合媒体中で重合反応を実施することが好ましい。重合媒体の例には、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、2−メトキシ−1−プロパノール、ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ネオペンタノール、シクロヘキサノール、1−メトキシ−2−プロパノール)、メチルエチルケトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸エチルが含まれる。水、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールが好ましい。二種類以上の重合媒体を併用してもよい。乳化重合法または分散重合法において、樹脂粒子の分子量を調整するために、従来公知の連鎖移動剤を使用してもよい。その使用量は、用いる全モノマー100質量部に対し、0〜15質量部が好ましく、0〜5質量部がより好ましい。二種類以上のコアシェル微粒子を併用してもよい。また、シェルのない無機微粒子とコアシェル粒子とを併用してもよい。
【0141】
前記(2)のシェルポリマーと併用する場合、バインダーポリマーのガラス転移温度(Tg)は、シェルポリマーのTgよりも低いことが好ましい。バインダーポリマーのTgとシェルポリマーのTgとの温度差は、5℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがさらに好ましい。バインダーポリマーは、低屈折率層の塗布液にモノマーを添加し、低屈折率層の塗布と同時または塗布後に重合反応(必要ならばさらに架橋反応)により形成することが好ましい。
低屈折率層の塗布液に、少量のポリマー(例、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、ニトロセルロース、ポリエステル、アルキド樹脂)を添加してもよい。
【0142】
本発明の反射防止膜のオーバーコート層は、気相法で形成される金属化合物から成る低屈折率層上にも設けられ、耐久性に優れた耐傷性、耐防汚性を示すことができる。
金属化合物から成る反射防止膜としては、例えば、技術情報協会編「反射防止膜の特性と最適設計・膜作製技術」第3章((株)技術情報協会、2001年刊行)、特開平11−258405号、特開2001−330704号等に記載のものが挙げられる。
【0143】
[ポリマー層]
本発明は、塗布型で形成される反射防止膜における低屈折率層とオーバーコート層の間にポリマー層を設けても良い。
本発明の空隙を有する低屈折率層上に設けるポリマー層は、低屈折率層の上に塗布して形成する。本発明では、ポリマー層の材料は低屈折率層の空隙を占有する割合が小さいほど好ましく、ポリマー層の材料が低屈折率層の空隙を占有している割合は、50体積%未満であることが好ましく、40体積%未満であることがより好ましく、30体積%未満であることがさらに好ましく、20体積%未満であることが最も好ましい。このようなポリマー層を用いることにより、低屈折率層の空隙率を3乃至50体積%に保存することができる。低屈折率層の空隙を残してポリマー層を形成するためには、様々な手段が採用できる。例えば、前述したように低屈折率層の空隙を微粒子とバインダーポリマーで閉じた状態で形成すれば、ポリマー層を塗布により形成しても低屈折率層の空隙が残存する。また、ポリマー層の塗布液が低屈折率層の空隙に浸入しないように塗布液の粘度を高くしてもよい。特に好ましい方法は、ポリマーを、粒径10nm以上の微粒子として付与する方法か、あるいは重量平均分子量2万以上のポリマーを含む層を塗布する方法である。これらの方法の内、重量平均分子量2万以上のポリマーを含む塗布液を塗布する方法が最も好ましい。
【0144】
ポリマー層の化合物を、微粒子として付与する方法は、低屈折率層の空隙の開口サイズより大きい粒子として付与するため、低屈折率層の内部の空隙には拡散せず、低屈折率層表面の開口部を塞ぐような形でオーバーコート層を付与できる。この微粒子のサイズとしては、粒径10nm以上とすることが好ましい。より好ましい粒径は10nm以上100nm以下、更に好ましくは15nm以上70nm以下、特に好ましくは20nm以上50nm以下である。これらのポリマー微粒子は、ポリマー化合物を含有した溶液の乳化・析出等による方法、ポリマーの乳化重合等によるラテックス化、等により得ることができる。また、市販のポリマー微粒子、ラテックス等も使用できる。また、これらのポリマー微粒子により付与された層は付与後の加熱等により、融着させて、連続層とすることがより好ましい。
【0145】
重量平均分子量2万以上のポリマーを含む層を付与する方法は、ポリマー溶液を空隙を有する低屈折率層上に付与する時、ポリマーの分子量が大きくなると、低屈折率層の内部の空隙中に拡散しなくなることを利用している。ポリマー層に含まれるポリマーの重量平均分子量としては、2万以上が好ましく、より好ましくは4万以上200万以下、特に好ましくは5万以上100万以下である。本発明のポリマー層は、その上層に防汚性を付与するためのオーバーコート層を塗布したとき、そのオーバーコート層の素材が低屈折率層に拡散しないようにする機能、表面の膜強度を付与するための機能を持たせるために付与している。これらの機能を持たせるためには、ポリマー層の膜厚は3nm以上あることが好ましい。また、このポリマー層は、空隙を有する低屈折率層に比べると、屈折率が高いため、厚くなると、低屈折率層による反射防止性を損なう。したがって、ポリマー層の厚さは30nm以下が好ましい。膜厚としてより好ましくは5nm以上25nm以下、特に好ましくは8nm以上20nm以下である。また、ポリマー層の屈折率は1.35以上1.80以下が好ましく、より好ましくは1.40以上1.70以下である。
【0146】
本発明のポリマー層に用いられるポリマーとしては、特に制限はないが、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロ二トリル誘導体、ポリビニルアルコールもしくはその誘導体、ポリオルガノシロキサン(例、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、アルキル変性ポリジメチルシロキサン)類等、また、各種アルコキシシランをゾル−ゲル法の手法により重合させたもの等を挙げることができる。
【0147】
本発明のポリマー層に用いるポリマーは、各種素材、特に油分等に対するバリアー性を持たせることが好ましい。これは、防汚層となるオーバーコート層を設ける時、そのオーバーコートの素材が低屈折率層に拡散することを防ぐ、また、防汚層塗布後に、指紋や、マジック等の油溶性の成分が付着したとき、その成分が低屈折率層の空隙に拡散することを抑えることができる。このようなバリアー性を付与するためにはポリマーを架橋する方法、バリアー性の高いポリマーを用いることによって可能である。ポリマーを架橋するためには架橋性基をポリマー中に導入する、ポリマーと反応できるような架橋性成分を添加する等の手段を用いることができる。架橋性官能基の例には、アクリロイル、メタクリロイル、アリル、ビニルオキシ、イソシアナート、エポキシ、アルコキシシリル、アジリジン、オキサゾリン、アルデヒド、カルボニル、ヒドラジン、カルボキシル、ジ若しくはトリアルコキシシリル、メチロール、および活性メチレン基等が挙げられる。
【0148】
ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタンも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。また、本発明において架橋基とは、上記化合物に限らず上記官能基が分解した結果反応性を示すものであってもよい。また、油分、気体、液体等に対しバリアー性の高いポリマーとしては、ポリビニルアルコールもしくはその誘導体、ポリ塩化ビニリデンもしくはその誘導体等が一般に知られている。特にポリビニルアルコールもしくはその誘導体は耐油性が高く、上層との密着性保持から好ましい。
【0149】
[高・中屈折率層]
本発明の反射防止膜が、多層膜の態様をとる場合、一般に、低屈折率層は、低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(即ち、前記の高屈折率層、中屈折率層)と共に用いられる。
【0150】
上記低屈折率層より高い屈折率を有する層を形成するための有機材料としては、熱可塑性皮膜(例、ポリスチレン、ポリスチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン以外の芳香環、複素環、脂環式環状基を有するポリマー、またはフッ素以外のハロゲン基を有するポリマー);熱低屈折率層形成組成物(例、メラミン皮膜、フェノール皮膜、またはエポキシ皮膜などを硬化剤とする皮膜組成物);ウレタン形成性組成物(例、脂環式または芳香族イソシアネートおよびポリオールの組み合わせ);およびラジカル重合性組成物(上記の化合物(ポリマー等)に二重結合を導入することにより、ラジカル硬化を可能にした変性皮膜またはプレポリマーを含む組成物)などを挙げることができる。高い皮膜形成性を有する材料が好ましい。上記より高い屈折率を有する層は、有機材料中に分散した無機系微粒子も使用することができる。上記に使用される有機材料としては、一般に無機系微粒子が高屈折率を有するため有機材料単独で用いられる場合よりも低屈折率のものも用いることができる。そのような材料として、上記に述べた有機材料の他、アクリル系を含むビニル系共重合体、ポリエステル、アルキド皮膜、繊維素系重合体、ウレタン皮膜およびこれらを硬化せしめる各種の硬化剤、硬化性官能基を有する組成物など、透明性があり無機系微粒子を安定に分散せしめる各種の有機材料を挙げることができる。
【0151】
さらに有機置換されたケイ素系化合物をこれに含めることができる。これらのケイ素系化合物は下記一般式で表される化合物、あるいはその加水分解生成物である。
【0152】
:RamRbnSiZ(4−m−n)
【0153】
(ここでRa及びRbは、それぞれアルキル基、アルケニル基、アリル基、またはハロゲン、エポキシ、アミノ、メルカプト、メタクリロイルまたはシアノで置換された炭化水素基を表し、Zは、アルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン原子〜アシルオキシ基から選ばれた加水分解可能な基を表し、m+nが1または2である条件下で、m及びnはそれぞれ0、1または2である。)
【0154】
これらに分散される無機系微粒子の好ましい無機化合物としては、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、アンチモンなどの金属元素の酸化物を挙げることができる。これらの化合物は、微粒子状で、即ち粉末または水および/またはその他の溶媒中へのコロイド状分散体として、市販されている。これらをさらに上記の有機材料または有機ケイ素化合物中に混合分散して使用する。
【0155】
上記より高い屈折率を有する層を形成する材料として、被膜形成性で溶剤に分散し得るか、それ自身が液状である無機系材料(例、各種元素のアルコキシド、有機酸の塩、配位性化合物と結合した配位化合物(例、キレート化合物)、無機ポリマー)を挙げることができる。これらの好適な例としては、活性メチレン化合物(例えば、ジケトン類、β−ケトエステル類等)とAl、Ti、Zr等の金属原子とのキレート化合物等が挙げられ、例えば、特開平11−106704号公報の段落番号[0044]〜[0046]に記載の化合物等が挙げられる。さらには炭素ジルコニルアンモニウムまたはジルコニウムを主成分とする無機ポリマー等を挙げることができる。上記に述べた他に、屈折率が比較的低いが上記の化合物と併用できるものとしてとくに各種のアルキルシリケート類またはその加水分解物、微粒子状シリカとくにコロイド状に分散したシリカゲルも使用することができる。
【0156】
高屈折率層の屈折率は、一般に1.70〜2.20である。屈折率は、アッペ屈折率計を用いる測定や、層表面からの光の反射率からの見積もりにより求めることができる。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましく、30nm〜0.5μmであることが最も好ましい。高屈折率層のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。具体的な高屈折率層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0157】
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。
高屈折率層に無機微粒子とポリマーを用い、中屈折率層は、高屈折率層よりも屈折率を低めに調節して形成することが特に好ましい。中屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましい。
【0158】
[その他の層]
反射防止膜には、さらに、ハードコート層、防湿層、帯電防止層、下塗り層や保護層を設けてもよい。ハードコート層は、透明支持体に耐傷性を付与するために設ける。ハードコート層は、透明支持体とその上の層との接着を強化する機能も有する。ハードコート層は、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、シリコン系ポリマーやシリカ系化合物を用いて形成することができる。顔料をハードコート層に添加してよい。アクリル系ポリマーは、多官能アクリレートモノマー(例、ポリオールアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート)の重合反応により合成することが好ましい。ウレタン系ポリマーの例には、メラミンポリウレタンが含まれる。シリコン系ポリマーとしては、シラン化合物(例、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン)と反応性基(例、エポキシ、メタクリル)を有するシランカップリング剤との共加水分解物が好ましく用いられる。二種類以上のポリマーを組み合わせて用いてもよい。シリカ系化合物としては、コロイダルシリカが好ましく用いられる。ハードコート層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で、H以上である好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。透明支持体の上には、ハードコート層に加えて、接着層、シールド層、滑り層や帯電防止層を設けてもよい。シールド層は、電磁波や赤外線を遮蔽するために設けられる。
【0159】
[透明支持体]
反射防止膜をCRT画像表示面やレンズ表面に直接設ける場合を除き、反射防止膜は透明支持体(透明基材)を有することが好ましい。透明支持体としては、ガラス板よりもプラスチックフィルムの方が好ましい。プラスチックフィルムの材料の例には、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4、4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレートおよびポリエーテルケトンが含まれる。トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが好ましい。透明支持体の光透過率は、80%以上であることが好ましく、86%以上であることがさらに好ましい。透明支持体のヘイズは、2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。透明支持体の屈折率は、1.4〜1.7であることが好ましい。透明支持体には、赤外線吸収剤あるいは紫外線吸収剤を添加してもよい。赤外線吸収剤の添加量は、透明支持体の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることがさらに好ましい。滑り剤として、不活性無機化合物の粒子を透明支持体に添加してもよい。無機化合物の例には、SiO2、TiO2、BaSO4、CaCO3、タルクおよびカオリンが含まれる。透明支持体に、表面処埋を実施してもよい。
【0160】
表面処理の例には、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が含まれる。グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましく、グロー放電処理と紫外線処理がさらに好ましい。
【0161】
[反射防止膜の形成]
反射防止膜が、単層又は前記のように多層の構成をとる場合は、各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書記載)により、塗布により形成することができる。二層以上を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。反射防止膜の反射率は低いほど好ましい。具体的には450〜650nmの波長領域での平均反射率が2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましく、0.7%以下であることが最も好ましい。反射防止膜(下記のアンチグレア機能がない場合)のヘイズは、3%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましく、0.5%以下であることが最も好ましい。反射防止膜の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で、H以上てある好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0162】
反射防止膜は、外光を散乱させるアンチグレア機能を有していてもよい。アンチグレア機能は、反射防止膜の表面に凹凸を形成することにより得られる。反射防止膜がアンチグレア機能を有する場合、反射防止膜のヘイズは、3〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがさらに好ましく、7〜20%であることが最も好ましい。
【0163】
反射防止膜表面に凹凸を形成する方法は、これらの表面形状を充分に保持できる方法であればいずれの方法でも適用できる。例えば、低屈折率層中に微粒子を使用し、それにより膜表面に凹凸を形成する方法(例えば、特開2000−271878号等)、低屈折率層の下層(高屈折率層、中屈折率層又はハードコート層)に比較的大きな粒子(粒径0.05〜2μm)を少量(0.1〜50質量%)添加して表面凹凸膜を形成し、その上にこれらの形状を維持して低屈折率層を設ける方法(例えば特開2000−281410号、同2000−95893号等)、低屈折率層表面に物理的に凹凸形状を転写(エンボス加工方法等)する方法(例えば特開平11−268800号)が挙げられる。
【0164】
反射防止膜は、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ〈ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に適用する。反射防止膜は、高屈折率層が画像表示装置の画像表示面側になるように配置する。
反射防止膜が透明支持体を有する場合は、透明支持体側を画像表示装置の画像表示面に接着する。反射防止膜は、さらに、ケースカバー、光学用レンズ、眼鏡用レンズ、ウインドウシールド、ライトカバーやヘルメットシールドにも利用できる。
【0165】
【実施例】
以下に本発明を実施例により例証するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0166】
<グラフト共重合体の合成>
グラフト共重合体(GP)の合成例1:グラフト共重合体(GP−1)
下記構造のパーフルオロオレフィン共重合体(FP−1)50g、下記構造の反応性ポリシロキサンオリゴマー(SP−1)7.5g及びキシレン93gの混合物を温度120℃に加温した後、ドデシルジメチルアミン0.01gを加えて、6時間攪拌した。室温に冷却後、石油エーテル500ml中に再沈して、沈殿物を補集し、減圧下に乾燥して、収量49gの生成物を得た。得られた重合体の質量平均分子量(ポリスチレン換算のG.P.C測定値))は5×104であった。
また、GPCヒストグラムで、オリゴマー(SP−1)に相当するピークは観察されなかった。
【0167】
【化16】
【0168】
グラフト共重合体(GP)の合成例2:グラフト共重合体(GP−2)
下記構造のパーフルオロオレフィン共重合体(FP−2)50g、下記構造の反応性シロキサンオリゴマー(SP−2)12.5g及びテトラヒドロフラン140gの混合物を攪拌下に溶解した。次に、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド2g、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン0.05g及びテトラヒドロフラン3gの混合溶液を10分間で滴下し、そのまま1時間攪拌し、その後、温度40℃に加温して、4時間攪拌した。
ギ酸1gを加えて2時間攪拌後、析出物をセライトを用いてろ過してろ別し、沈降物を補集した。減圧乾燥して収量53gの生成物を得た。Mwは7×104であった。
GPCヒストグラムで、オリゴマー(SP−2)相当のピークは観察されなかった。
【0169】
【化17】
【0170】
グラフト共重合体(GP)の合成例3:グラフト共重合体(GP−3)
下記構造のパーフルオロオレフィン共重合体(FP−3)50g、下記構造の反応性シロキサンオリゴマー(SP−3)10g、ジプテルスズジラウリレート0.01g及びトルエン140gの混合物を温度80℃で4時間攪拌した。反応物を減圧(20〜30mmHg)下において、溶媒のトルエン約80gを追い出して、濃縮した。
この反応物をn−ヘキサン500ml中に再沈し、沈降物を補集し減圧乾燥して、収量50gの生成物を得た。Mwは6×104であった。
得られたGPCヒストグラムにおいて、オリゴマー(SP−3)相当のピークは観察されなかった。
【0171】
【化18】
【0172】
グラフト共重合体(GP)の合成例4:グラフト共重合体(GP−4)
下記構造の反応性シリコンオリゴマー(SP−4)8.5g、メタンスルホン酸0.15g及びトルエン135gの混合物を室温(25℃)で1時間攪拌した。次にこの混合物に、下記構造のパーフルオロオレフィン共重合体(FP−4)50gを加えて、更に6時間攪拌した。
反応生成物をリグロイン750ml中に再沈し、沈降物を補集し減圧乾燥し収量50gの生成物を得た。Mwは7×104であった。
得られたGPCヒストグラムにおいて、オリゴマー(SP−4)相当のピークは観察されなかった。
【0173】
【化19】
【0174】
グラフト共重合体(GP)の合成例5:グラフト共重合体(GP−5)
前記グラフト共重合体(GP)の合成例4で得られたグラフト共重合体(GP−4)20g、2−〔2−(カルボキシエチルカルボニルオキソ)〕エチルメタクリレート2.5g及びテトラヒドロフラン37gの混合物を、室温で攪拌下に溶解した。これに、D.C.C. 1.0g、4−(N,N−ジメチルアミノピリジン0.01g及びテトラヒドロフラン3gの混合溶液を5分間で滴下し、そのまま2時間攪拌した。更に温度35℃に加温して3時間攪拌した。
ギ酸1gを加えて3時間攪拌した後、セライトろ過にて析出物をろ別した後、n−ヘキサン150ml中に再沈した。沈降物を補集し、減圧乾燥してMw7×104の生成物を15g得た。
【0175】
【化20】
【0176】
グラフト共重合体(GP)の合成例6〜10:グラフト共重合体(GP−6)〜(GP−10)
グラフト共重合体(GP)の合成例1において、反応性シロキサンオリゴマー(SP−1)7.5gの代わりに、下記表−A記載の各シロキサンオリゴマー(SP−6)〜(SP−10)7.5gを用いた他は、該合成例1と同様にして、各グラフト共重合体(GP−6)〜(GP−10)を得た。収量は48g〜50gであり、各生成物のMwは4.5〜5.5×104の範囲であった。
【0177】
【表1】
【0178】
グラフト共重合体(GP)の合成例11〜15:グラフト共重合体(GP−11)〜(GP−15)
グラフト共重合体(GP)の合成例1において、パーフルオロオレフィン共重合体(FP−1)50gの代わりに、各相当する各共重合体(FP)を50g用いた他は該合成例1と同様にして、表−Bに記載する通りのグラフト共重合体(GP−11)〜(GP−15)を合成した。収量は48g〜50gの範囲であり、各生成物のMwは4〜7×104の範囲であった。また、各生成物のGPCヒストグラムにおいてオリゴマー(SP−1)に相当するピークは観察されなかった。
【0179】
【表2】
【0180】
実施例1及び比較例1〜3
<ハードコート層用塗布液Aの調製>
JSR社製ハードコート素材デソライトZ7503のMEK溶液(固形分濃度72%、シリカ含量38%)625gを、375gのメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=50/50重量%の混合溶媒に溶解した。混合物を撹拌した後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターでろ過してハードコート層の塗布液Aを調製した。
【0181】
<中屈折率層用塗布液の調製>
シクロヘキサノン151.9gおよびメチルエチルケトン37.0gに、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)0.14gおよび光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.04gを溶解した。さらに、下記の二酸化チタン分散物6.1gおよびジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)2.4gを加え、室温で30分間撹拌した後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、中屈折率層用塗布液を調製した。
【0182】
(二酸化チタン分散物の調製)
二酸化チタン(一次粒子重量平均粒径:50nm、屈折率:2.70)30重量部、アニオン性ジアクリレートモノマー(PM21、日本化薬(株)製)4.5重量部、カチオン性メタクリレートモノマー(DMAEA、興人(株)製)、0.3重量部およびメチルエチルケトン65.2重量部を、サンドグライダーにより分散し、二酸化チタン分散物を調製した。
【0183】
<高屈折率層用塗布液の調製>
シクロヘキサノン1152.8gおよびメチルエチルケトン37.2gに、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)0.06gおよび光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.02gを溶解した。さらに、上記の二酸化チタン分散物13.13gおよびジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)0.76gを加え、室温で30分間撹拌した後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、高屈折率層用塗布液を調製した。
【0184】
<低屈折率層用塗布液の調製>
平均粒径15nmのシリカ微粒子のメタノール分散液(メタノールシリカゾル、日産化学(株)製)200gにシランカップリング剤(KBM−503、信越シリコーン(株)製)3gおよび0.1N塩酸2gを加え、室温で5時間撹拌した後、3日間室温で放置して、シランカップリング処理したシリカ微粒子の分散物を調製した。分散物35.04gにイソプロピルアルコール58.35gおよびジアセトンアルコール39.34gを加えた。また、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)1.02gおよび光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.51gを772.85gのイソプロピルアルコールに溶解した溶液を加え、さらに、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)25.6gを加えて溶解した。得られた溶液67.23gを、上記分散液、イソプロピルアルコールおよびジアセトンアルコールの混合液に添加した。混合物を20分間室温で攪拌し、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、低屈折率層用塗布液を調製した。
【0185】
<ポリマー層用塗布液(1−1)の調製>
市販のPMMA(重量平均分子量(Mw)60000)をメチルイソブチルケトンに濃度1%になるよう溶解し、ポリマー層用の塗布液を調製した。
【0186】
〔実施例1〕
<オーバーコート層用塗布液(OC−1)の調製>
本発明の前記グラフト共重合体(GP−1)2.7g、エポキシ系硬化剤DEX314(ナガセ化成工業(株)製)0.55g(固形分量として)、パラトルエンスルホン酸0.10g及びメチルエチルケトン200gの混合物として、オーバーコート層用塗布液(OC−1)を調製した。
【0187】
<反射防止膜(F−1)の作成>
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士写真フイルム(株)製)に、上記のハードコート層用塗布液Aをバーコーターを用いて塗布し、90℃で乾燥の後、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ6μmのハードコート層を形成した。その上に、上記中屈折率層用塗布液をバーコーターを用いて塗布し、60℃で乾燥の後、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、中屈折率層(屈折率1.72、厚さ0.081μm)を形成した。その上に、上記高屈折率層用塗布液をバーコーターを用いて塗布し、60℃で乾燥の後、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、高屈折率層(屈折率1.92、厚さ:0.053μm)を形成した。その上に、上記低屈折率層用塗布液をバーコーターを用いて塗布し、60℃で乾燥の後、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、低屈折率層(屈折率1.40、厚さ0.070μm)を形成した。形成した低屈折率層の空隙率は16体積%であった。その上に、上記ポリマー層用塗布液(1−1)をバーコーターを用いて#3バーで塗布し、120℃で5分乾燥した。その後、オーバーコート用塗布液(OC−1)を塗布量が15nmになるように調製しながら塗布し、120℃で10分乾燥し反射防止膜(F−1)を形成した。
【0188】
〔比較例1〕
実施例1において、OC層用塗布液(OC−1)の代わりに、下記内容の塗布液(OC−R1)を用いた他は、実施例1と同様に操作して、反射防止膜(FR−1)を作製した。
【0189】
<OC層用塗布液(OC−R1)の調製>
上記OC層用塗布液(OC−1)の調製において、グラフト共重合体(GP−1)2.7gの代わりに、前記グラフト共重合体(GP)の合成例1に記載のパーフルオロオレフィン共重合体(FP−1)2.3g及び反応性ポリシロキサンオリゴマー(SP−1)0.4gを用いた他は、上記塗布液(OC−1)と同様にしてOC層用塗布液(OC−R1)を調製した。
【0190】
〔比較例2〕
実施例1において、OC層用塗布液(OC−1)の代わりに、下記内容の塗布液(OC−R2)を用いた他は、実施例1と同様に操作して、反射防止膜(FR−2)を作製した。
【0191】
<OC層用塗布液(OC−R2)の調製>
上記OC層用塗布液(OC−1)の調製において、グラフト共重合体(GP−1)2.7gの代わりに、上記パーフルオロオレフィン共重合体(FP−1)2.7gを用いた他は、塗布液(OC−1)と同様にしてOC層用塗布液(OC−R2)を調製した。
【0192】
〔比較例3〕
実施例1において、OC層用塗布液(OC−1)の代わりに、下記内容の塗布液(OC−R3)を用いた他は、実施例1と同様に操作して、反射防止膜(FR−3)を作製した。
【0193】
<OC層用塗布液(OC−R3)の調製>
特開2000−284102号公報記載の下記化合物(P−9)(以下、比較用ポリマー(RP−1)と称する)を、同公報実施例記載の方法により合成し、OC層用塗布液(OC−R3)を調製した。
【0194】
【化21】
【0195】
(反射防止膜の評価)
こうして得られた各膜(実施例1及び比較例1〜3)について、下記性能評価を実施し、その結果を表−Cに記載した。
【0196】
(1)平均反射率
分光光度計(日本分光(株)製)を用いて、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における分光反射率を測定した。結果には450〜650nmの鏡面平均反射率を用いた。
【0197】
(2)鉛筆硬度評価
反射防止膜を温度25℃、湿度60%RHで2時間調湿した後、JIS K
5400に記載の鉛筆硬度評価を行った。
【0198】
(3)耐傷性試験
膜表面をスチールウール#0000を用いて、200gの荷重下で10回擦った後に、傷のつくレベルを確認した。判定は次の基準に従った。
全くつかない :○
細かい傷がつく:△
傷が著しい :×
【0199】
(4)水滴滑落性
反射防止膜を蒸留水中に浸し超音波洗浄機中で1分間洗浄した後、風乾し、25℃、65%RHの環境下で傾斜摩擦計HEIDON47L−388(新東科学(株)製)を用いて、サンプル表面に5μlの蒸留水の水滴を滴下し、水滴の転がる角度を測定した。
【0200】
(5)防汚性
サンプル表面に指紋を付着させてから、それをベンコットン(旭化成(株)製)で拭き取った時の状態を観察して、以下の基準で評価した。
◎:簡単に拭き取れる
○:しっかり擦れば拭き取れる
△:一部が拭き取れずに残る
【0201】
【表3】
【0202】
本発明の実施例1の反射防止膜の各特性は良好であった。即ち、膜の硬度、耐傷性も実用上充分な性能を示した。更に、微小水滴が表面に付着してもわずか5度の傾斜角度で滑り落ちた。この事は、液滴の耐付着性が極めて良好なことを示している。又、指紋等の油性汚れに対しても、極めて簡便に除去できた。
一方、本発明のグラフト共重合体(GP−1)の出発原料であるポリマー(FP−1)とポリシロキサン(SP−1)をブレンドして硬膜した比較例1はポリシロキサン成分が表面移行し、膜の強度が著しく低下してしまった。
また、ポリマー(FP−1)を硬膜した比較例2は、膜表面の防汚性は良好であったが、水滴滑落性は40度以上と極めて大きかった。
更に、比較用ポリマー(RP−1:側鎖にのみフッ素成分含有)を用いた比較例3は、膜強度は充分となったが、液滴滑落性は40度以上と大きく、また防汚性も不充分であった。
以上のことから、本発明のグラフト共重合体を硬化して形成された膜のみが優れた性能を示すことがわかる。
【0203】
実施例2〜7
実施例1のオーバーコート層用塗布液(OR−1)の塗布液において、グラフト共重合体(GP−1)2.7g、エポキシ系硬化剤(DEX314)0.55g及びパラトルエンスルホン酸0.10gの代わりに、下記表−D記載の各化合物を用いた他は、実施例1と同様にして各反射防止膜を作製した。
各膜のオーバーコート層の膜厚は20nmとなる様に調製した。
【0204】
【表4】
【0205】
得られた各膜について、実施例1と同様にして各性能を評価した。
実施例2〜7の各膜は、いずれも実施例1と同等の性能を示し良好であった。
【0206】
実施例8〜13
実施例1におけるOC層用塗布液(OC−1)において、グラフト共重合体(GP−1)2.7g、エポキシ系硬化剤(DEX314)0.55g及びパラトルエンスルホン酸0.10gの代わりに、下記表−E記載の各化合物を用いた他は実施例1と同様にして、塗布を行なった。続けて加熱の代わりに紫外線を照射した後、120℃で10分間加熱する操作を行ない、各反射防止膜を作製した。
【0207】
【表5】
【0208】
得られた反射防止膜について、実施例1に記載の試験項目について評価した。その結果は、実施例1と同等の性能を示し、良好であった。
【0209】
実施例14
<ハードコート層用塗布液Bの調製>
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)250gを、439gのメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=50/50重量%の混合溶媒に溶解した。得られた溶液に、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)7.5gおよび光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)5.0gを49gのメチルエチルケトンに溶解した溶液を加えた。なお、この溶液を塗布、紫外線硬化して塗膜の屈折率は1.53であった。さらにこの溶液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過してハードコート層の塗布液Bを調製した。
【0210】
<防眩性ハードコート層用塗布液Aの調製>
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)91g、粒径約30nmの酸化ジルコニウム超微粒子分散物含有ハードコート塗布液(デソライトZ−7041、JSR(株)製)199g、および粒径約30nmの酸化ジルコニウム超微粒子分散物含有ハードコート塗布液(デソライトZ−7042、JSR(株)製)19gを、52gのメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=54/46重量%の混合溶媒に溶解した。得られた溶液に、光重合開始剤(イルガキュア907、チバファインケミカルズ(株)製)10gを加えた。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.61であった。この溶液に、個数平均粒径1.99μm、粒径の標準偏差0.32μm(個数平均粒径の16%)の架橋ポリスチレン粒子(商品名:SX−200HS(SX−200Hの風力分級品)、総研化学(株)製)20gを80gのメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=54/46重量%の混合溶媒に高速ディスパにて5000rpmで1時間攪拌分散し、孔径10μm、3μm、1μmのポリプロピレン製フィルター(それぞれPPE−10、PPE−03、PPE−01、いずれも富士写真フイルム(株)製)にてろ過して得られた分散液29g(5.0μm以上の粗大粒子を含有する割合は0個/1×1010個)を添加、攪拌した後、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩性ハードコート層用塗布液Aを調製した。
【0211】
<低屈折率層用塗布液(Ln−2)の調製>
屈折率1.46の熱架橋性含フッ素ポリマー(商品名:JN−7221、JSR(株)製)200gにメチルイソブチルケトンを200g添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液(Ln−2)を調製した。
【0212】
<オーバーコート層用塗布液(OC−14)の調製>
下記構造のグラフト共重合体(GP−16)5.0g、メチルトリメトキシシラン2.5g、アセチルアセテートZr塩0.01g及びメチルエチルケトン300gの混合物を1時間攪拌した。その後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率用塗布液(Ln−14)を調製した。
【0213】
【化22】
【0214】
<反射防止膜(F−14)の作製>
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(商品名:TAC−TD80U、富士写真フイルム(株)製)に、上記のハードコート層用塗布液Bをバーコーターを用いて塗布し、120℃で乾燥の後、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ4μmのハードコート層を形成した。その上に、上記防眩層用塗布液Aをバーコーターを用いて塗布し、上記ハードコート層と同条件にて乾燥、紫外線硬化して、厚さ約1.5μmの防眩層を形成した。その上に、上記低屈折率層用塗布液(Ln−2)をバーコーターを用いて塗布し、風乾(1分間)の後、さらに120℃で10分間熱架橋し、厚さ0.096μmの低屈折率層を形成した。次に、上記オーバーコート層用塗布液(OC−14)をバーコータで厚さ0.020μmとなる様に調製して塗布し、120℃で10分間乾燥した。
得られた反射防止膜(F−14)を実施例1と同様にして、性能を評価した。その結果は、実施例2の膜と同等の性能を示した。
【0215】
実施例15
上記実施例1〜14の各反射防止膜を用いて防眩性反射防止偏光板を作成した。これらの各偏光板を用いて反射防止層を最表層に配置した液晶表示装置を作成した。各表示装置の何れも、外光の映り込みがないために優れたコントラストが得られ、防眩性により反射像が目立たず優れた視認性を有し、色むらも発生せず、指紋付も良好であった。
【0216】
【発明の効果】
本発明によれば、反射率が低く、低屈折率層の表面が汚れから保護され、かつ耐傷性も改善された反射防止膜を得ることができる。更に本発明の反射防止膜は、防汚性、耐傷性が良好で、生産性が良好である。
本発明の反射防止膜を設けることにより、反射が有効に防止された画像表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】反射防止膜の主な層構成例を示す断面模式図である。
【図2】本発明の好ましい態様における低屈折率層、ポリマー層とオーバーコート層を有する反射防止膜の断面模式図である。
【符号の説明】
1 透明支持体
2 低屈折率層
3 ポリマー層
4 オーバーコート層
5 ハードコート層
6 高屈折率層
7 中屈折率層
21 微粒子
22 バインダー
23 空隙
Claims (5)
- 透明支持体および隣接する層の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層が積層されている反射防止膜であって、該低屈折率層の上に下記一般式(I)で示される各繰り返し単位(成分(A)、成分(B)及び成分(C))を、各々少なくとも一種含有するグラフト共重合体(GP)を含むオーバーコート層がさらに積層されていることを特徴とする反射防止膜。
R1及びR2は、同じでも異なってもよく、各々脂肪族基又はアリール基を表し、R3、R4及びR5は同じでも異なってもよく、各々一価の有機残基を表す。pは、10から500の整数を表す。
Aは、架橋反応に関与し得る反応性基を少なくとも1つ以上含有する側鎖を有する構成成分を表す。
a〜cは、それぞれ全重合体成分中の質量%を表し、aは40〜90質量%、bは1〜30質量%及びcは1〜30質量%を表す。 - 上記のグラフト共重合体(GP)が、オーバーコート層の形成後に架橋している請求項1に記載の反射防止膜。
- 該低屈折率層と該オーバーコート層の間にポリマー層が積層されていることを特徴とする請求項1または2記載の反射防止膜。
- 透明支持体の屈折率よりも高い屈折率を有する高屈折率層が、透明支持体と低屈折率層との間に設けられている請求項1〜3のいずれかに記載の反射防止膜。
- 画像表示面上に、透明支持体および隣接する層の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層がこの順に積層されている画像表示装置であって、該画像表示面の最上層に請求項1記載のグラフトポリマー(GP)を含有するオーバーコート層が積層されていることを特徴とする画像表示装置。
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