JP4204170B2 - 防眩性反射防止フィルム、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、防眩性を有する反射防止フィルム、並びにそれを用いた偏光板及び液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
反射防止フィルムは、一般に、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)や液晶表示装置(LCD)のような画像表示装置において、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減するディスプレイの最表面に配置されている。
【0003】
しかしながら、透明支持体上にハードコート層と低屈折率層のみを有する反射防止フィルムでは、反射率を低減するために低屈折率層を十分に低屈折率化しなければならない。例えばトリアセチルセルロースを支持体とし、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのUV硬化被膜をハードコート層とする反射防止フィルムで450nmから650nmの範囲での平均反射率を1.6%以下にするためには、屈折率を1.40以下にしなければならない。
屈折率が1.40以下の素材としては、無機物ではフッ化マグネシウムやフッ化カルシウム等の含フッ素化合物、有機物ではフッ素含率の大きい含フッ素化合物が挙げられるが、これらの含フッ素化合物は凝集力がないためディスプレイの最表面に配置するフィルムとしては耐傷性が不足していた。従って、十分な耐傷性を有するためには1.43以上の屈折率を有する化合物が必要であった。
【0004】
特開平7−287102号公報には、ハードコート層の屈折率を大きくすることにより、反射率を低減させることが記載されている。しかしながら、このような高屈折率ハードコート層は支持体との屈折率差が大きいためにフィルムの色むらが発生し、反射率の波長依存性も大きく振幅してしまう。
【0005】
また特開平7−333404号公報には、ガスバリア性、防眩性、反射防止性に優れる防眩性反射防止膜が記載されているが、CVD法による酸化珪素膜が必須であるため、塗液を塗布して膜を形成するウェット塗布法と比較して生産性に劣る。
【0006】
特公平6−98703号公報、特開昭63−21601号公報には、アルコキシシラン化合物の加水分解部分縮合物からなる組成物をプラスチック基材表面に塗布して反射光を低減化させる技術が開示されている。これら公報に記載の技術ではゾルゲル法により無機膜がウェット塗布法により得られる。無機膜であるため非常に高い膜強度が期待されるが、上記無機膜は一般に多くの基材との密着性に乏しく、剥離故障が生じやすい欠点があった。さらに、硬化に長時間の加熱が必須であり、生産性に乏しい欠点もあった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、支持体上に防眩性ハードコート層と低屈折率層を形成するだけで、簡便かつ安価に製造可能であり、しかも十分な反射防止性能と耐傷性、さらには防汚性を有する防眩性反射防止フィルムを提供することにある。
本発明の他の目的は、外光の映り込みが十分に防止され、しかも防汚性、耐傷性に優れた偏光板及び液晶表示装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、下記構成の防眩性反射防止フィルム、偏光板及び液晶表示装置が提供され、上記目的が達成される。
1.透明基材上に防眩性ハードコート層と屈折率が1.35〜1.49の低屈折率層とがこの順序で設けられており、該防眩性ハードコート層がアルカリ処理されていることを特徴とする防眩性反射防止フィルム。
2.上記防眩性ハードコート層が平均粒径1μm以上の粒子を含み、該防眩性ハードコート層を形成するための組成物から該平均粒径1μm以上の粒子を除いて形成された膜の屈折率が、1.57〜2.00の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の防眩性反射防止フィルム。
3.上記低屈折率層が、オルガノシランの加水分解物および/またはその部分縮合物を含有する組成物から形成されたものであることを特徴とする上記1または2に記載の防眩性反射防止フィルム。
4.上記オルガノシランの加水分解物および/またはその部分縮合物が光硬化性であることを特徴とする上記3に記載の防眩性反射防止フィルム。
5.低屈折率層を形成するための上記組成物が、さらに含フッ素ポリマーを含有していることを特徴とする上記4に記載の防眩性反射防止フィルム。
6.透明支持体がトリアセチルセルロースからなることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の防眩性反射防止フィルム。
7.上記1〜6のいずれかに記載の防眩性反射防止フィルムを偏光板における偏光層の2枚の保護フィルムのうちの少なくとも一方に用いたことを特徴とする偏光板。
8.上記1〜6のいずれかに記載の防眩性反射防止フィルムまたは上記7に記載の防眩性反射防止偏光板の反射防止層をディスプレイの最表層に用いたことを特徴とする液晶表示装置。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態として好適な防眩性反射防止フィルムの基本的な構成を図面を参照しながら説明する。
図1に模式的に示される態様は本発明の防眩性反射防止フィルムの一例である。この場合、防眩性反射防止フィルム1は、透明支持体2、ハードコート層3、防眩性ハードコート層4、そして低屈折率層5の順序の層構成を有する。防眩性ハードコート層4には、粒子6が分散している。防眩性ハードコート層4の粒子6以外の部分の屈折率は1.57〜2.00の範囲にあることが好ましく、低屈折率層5の屈折率は1.35〜1.49の範囲にある。ハードコート層3は、必ずしも必要ではないが、フィルム強度付与のために塗設されることが好ましい。
【0010】
本発明の防眩性反射防止フィルムの透明支持体としては、プラスチックフィルムを用いることが好ましい。プラスチックフィルムを形成するポリマーとしては、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリスチレン、ポリオレフィン、アートン(商品名、JSR(株)製、物質名:ノルボルネン系ポリオレフィン樹脂)、ゼオネックス(商品名、日本ゼオン(株)製、物質名:ノルボルネン系ポリオレフィン樹脂)等が挙げられる。このうちトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アートン、ゼオネックスが好ましく、特にトリアセチルセルロースが好ましい。
液晶表示装置の偏光板の偏光層を保護する保護フィルムとして、通常トリアセチルセルロースが用いられているので、防眩性反射防止フィルムの透明支持体がトリアセチルセルロースフィルムであると、防眩性反射防止フィルムをそのまま保護フィルムに用いることができ、好ましい。この場合、防眩性反射防止フィルムの片面に粘着層を設ける等の手段により液晶表示装置のディスプレイの最表面に防眩性反射防止フィルムを保護フィルムとして配置することができる。
【0011】
本発明の防眩性反射防止フィルムは透明支持体上に防眩性ハードコート層を有し、さらにその上に低屈折率層を有するが、必要に応じ、防眩性ハードコート層の下層に平滑なハードコート層を設けることができる。
【0012】
防眩性ハードコート層は、バインダーポリマー中に平均粒径1μm以上の粒子が分散している屈折率不均一層であることが好ましい。防眩性ハードコート層を形成する上記粒子を除く成分からなる組成物から形成される膜、即ちバインダーポリマーあるいはこれに後述する粒径100nm以下の金属酸化物の微粒子成分が分散した分散体からなる膜の屈折率は、1.57〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.60〜1.80と高屈折率である。この値が小さすぎると反射防止性能が小さくなり、大きすぎると色味が大きくなりすぎてしまうことがある。
【0013】
この防眩性ハードコート層は、高屈折率層中に分散する粒径1μm以上の粒子によって、光の内部散乱が生じるために、防眩性ハードコート層での光学干渉の影響を生じない。上記粒径の粒子を有しない高屈折率防眩性ハードコート層では、防眩性ハードコート層と支持体との屈折率差による光学干渉のために、反射率の波長依存性において反射率の大きな振幅が見られ、結果として反射防止効果が悪化し、同時に色むらが発生する。
【0014】
バインダーポリマーとしては、飽和炭化水素鎖またはポリエーテル鎖を主鎖として有するポリマーが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するポリマーがさらに好ましい。
また、バインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。
飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、エチレン性不飽和モノマーの重合体が好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、かつ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。
高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含むことが好ましい。
【0015】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼンおよびその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが挙げられる。
【0016】
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4'−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。
【0017】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、上記粒子、及び光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤を含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化して防眩性ハードコート層を形成することができる。
【0018】
ポリエーテルを主鎖として有するポリマーとしては、多官能エポシキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポシキ化合物の開環重合は、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、多官能エポシキシ化合物、上記粒子、及び光酸発生剤あるいは熱酸発生剤を含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化して防眩性ハードコート層を形成することができる。
【0019】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりにまたはそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。このように、本発明において、架橋性官能基は、上記官能基に限らず、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
【0020】
防眩性ハードコート層には、防眩性付与と防眩性ハードコート層の干渉による反射率悪化防止、色むら防止の目的で、平均粒径が1μm以上、好ましくは1〜10μm、より好ましくは1.5〜7.0μmの粒子、例えば無機化合物の粒子または樹脂粒子が分散している。
上記粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO2粒子等の無機化合物の粒子;架橋アクリル粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも、シリカ粒子が好ましい。
粒子の形状は、真球ありは不定形のいずれも使用できる。
また、異なる2種以上の粒子を併用して用いてもよい。
上記粒子は、形成された防眩性ハードコート層中の粒子量が好ましくは10〜1000mg/m2、より好ましくは30〜100mg/m2となるように防眩性ハードコート層に含有される。
また、特に好ましい態様は、粒子としてシリカ粒子を用い、防眩性ハードコート層の膜厚の2分の1よりも大きい粒径のシリカ粒子が、該シリカ粒子全体の40〜100%を占める態様である。ここで、粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。
【0021】
防眩性ハードコート層には、層の屈折率を高めるために、上記の粒子に加えて、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、粒径が100nm以下、好ましくは50nm以下である無機微粒子が含有されることが好ましい。
無機微粒子の具体例としては、TiO2、ZrO2、Al2O3、In2O3、ZnO、SnO2、Sb2O3、ITO等の微粒子が挙げられる。
これらの無機微粒子の添加量は、平均粒径1μm以上の上記粒子を含んだ防眩性ハードコート層の全重量の10〜90重量%であることが好ましく、より好ましく20〜80重量%であり、特に好ましくは30〜60重量%である。
なお、このような微粒子は、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該微粒子が分散した分散体は光学的に均一な物質として振舞う。
【0022】
前記したように、防眩性ハードコート層を形成する平均粒径1μm以上の粒子を除いた成分、即ちバインダーポリマーからなる膜あるいはバインダーポリマーに上記した粒径100nm以下の金属酸化物の無機微粒子が分散した分散体からなる膜の屈折率は、1.57〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.60〜1.80である。屈折率を上記範囲とするには、バインダーポリマー及び金属酸化物の微粒子の種類及び量割合を適宜選択すればよい。どのように選択するかは、予め実験的に容易に知ることができる。
【0023】
防眩性ハードコート層の膜厚は1〜10μmが好ましく、1.2〜6μmがより好ましい。
【0024】
本発明の防眩性反射防止フィルムでは、平滑なハードコート層が、必要に応じて、フィルム強度向上の目的で透明支持体と防眩性ハードコート層の間に塗設される。
平滑なハードコート層の膜厚は1〜10μmが好ましく、1.2〜6μmがより好ましい。
平滑なハードコート層に用いる成分としては、平均粒径1μm以上の防眩性付与粒子を用いないこと以外は、防眩性ハードコート層において挙げたものを用いることができる。
【0025】
本発明では、防眩性ハードコート層を塗布、硬化させた後にアルカリ処理を施す。このことにより、該防眩性ハードコート層の上に塗設される低屈折率層との密着性が大きく改善され、膜強度が大きく改善される。
ここで行われるアルカリ処理は、本発明の防眩性反射防止フィルムが支持体としてトリアセチルセルロース(TAC)を用い、かつ該フィルムがLCD用途に用いられる場合に、TACと偏光板基体との接着性を得るために一般に行われるアルカリ処理をも兼ねることが、工程の負担が減らせるので、好ましい。
【0026】
アルカリ処理の方法としては、防眩性ハードコート層まで塗設したフィルムをアルカリ水溶液に浸す方法であれば特に限定されない。
アルカリ処理条件は、防眩層の表面形状が大きく変化しない範囲で適宜調整される。アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液などが使用可能であり、水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。アルカリ水溶液のアルカリ濃度(例えば水酸化ナトリウム濃度)は、0.1〜25重量%が好ましく、0.5〜15重量%がより好ましい。アルカリ処理温度は、10〜80℃、好ましくは20〜60℃である。アルカリ処理時間は、5秒〜5分、好ましくは30秒〜3分である。
アルカリ処理後のフィルムは酸性水で中和した後、十分に水洗いを行うことが好ましい。水洗処理後のフィルムは十分に乾燥した後、次の低屈折率層を塗設する工程に供される。
【0027】
本発明の防眩性反射防止フィルムの低屈折率層の屈折率は、1.35〜1.49、好ましくは1.35〜1.45の範囲にある。
さらに、低屈折率層は下記数式(I)を満たすことが良好な反射防止性能を得る上で好ましい。
【0028】
(mλ/4)×0.7<n1d1<(mλ/4)×1.3 …… 数式(I)
【0029】
式中、mは正の奇数であり、n1は低屈折率層の屈折率であり、そして、d1は低屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、500〜550(nm)の範囲の値である。
なお、上記数式(I)を満たすとは、上記波長の範囲において数式(I)を満たすm(正の奇数、通常1である)が存在することを意味している。
【0030】
低屈折率層を形成するために用いることができる素材としては、屈折率が1.35〜1.49の種々の素材が使用可能である。塗布膜、蒸着膜いずれも使用可能であるが、塗布膜がより好ましい。塗布型の低屈折率素材としては、含フッ素ポリマー、含フッ素オリゴマーの重合体、低屈折率無機微粒子(フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、シリカなど)/バインダー混合物、オルガノシランの加水分解物および/または部分縮合物の硬化物(いわゆるシリカゾルゲル膜)等が使用可能である。このうちオルガノシシランの加水分解物および/または部分縮合物の硬化物は膜強度が強く耐擦傷性が優れるため好ましく、より好ましくは光硬化性のオルガノシランの加水分解物および/または部分縮合物の硬化物である。
【0031】
本発明の低屈折率層が光硬化性のオルガノシランの加水分解物および/またはその部分縮合物、いわゆるゾルゲル成分(以後このように称する)の硬化物である場合、ゾルゲル成分及びその他の成分を含有する組成物が調製され、組成物を塗布、乾燥後、硬化して低屈折率層が形成される。
光硬化性ゾルゲル成分単独では硬化時の体積収縮が大きいために、密着性が低下し耐擦傷性が十分でないので、該組成物に無機微粒子を添加することにより硬化時の体積収縮を低減し、密着性を改善することにより耐擦傷性の低下を防ぐ。さらに該無機微粒子の硬さが、フィルム強度および耐擦傷性を向上させる。
さらに、含フッ素ポリマーを組成物に配合することが好ましく、含フッ素ポリマーの配合により防眩性反射防止フィルムの防汚性および滑り性が向上する。
含フッ素ポリマーとしては、含フッ素ビニルモノマーを重合して得られるポリマーが好ましく、さらにゾルゲル成分と共有結合可能な官能基を有するポリマーがゾルゲル成分との相溶性およびフィルム強度の観点から好ましい。
【0032】
光硬化性ゾルゲル成分は光照射により硬化する性質を有するゾルゲル成分であれば特に限定されず、市販または合成のもの、いずれも好ましく用いることができる。市販品としては、含フッ素ポリマーを含む光硬化ゾルゲル成分であるオプスターTM505、TM501A(JSR(株)製)等が好ましく挙げられる。
【0033】
光硬化性ゾルゲル成分は、例えば下記一般式(1)で表されオルガノシランの加水分解を行い、それに引き続く縮合反応により得ることができる。
【0034】
RxSi(OR')4−x …… 一般式(1)
【0035】
(式中、R、R'は、同一または異なって、水素原子、アルキル基、アリール基、アリル基、フルオロアルキル基を表す。ここで、アルキル基は、官能基として、エポキシ基、アミノ基、アクリル基、イソシアネート基、及び/又はメルカプト基を有していてもよい。xは0〜3の整数、好ましくは0〜2の整数である。)
【0036】
一般式(1)で表されるオルガノシランの具体例として下記のものを挙げることができるが、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。
x=0の場合:
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン等
x=1の場合:
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、CF3CH2CH2Si(OCH3)3、CF3(CF2)5CH2CH2Si(OCH3)3、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−トリメトキシシリルプロピルイソシアネート、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等
x=2の場合:
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等
また硬化膜の硬さ及び脆性の調節や官能基導入の目的で、異なる2種以上のオルガノシランを組み合わせて用いることができる。
【0037】
オルガノシランの加水分解・縮合反応は、無溶媒であるいは有機溶媒の存在下に行うことができる。
好ましい有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等を挙げることができる。ここで用いられる有機溶媒は、そのまま塗布液として用いられることが工程上好ましく、後に含フッ素ポリマーを添加する場合は、この含フッ素ポリマーを溶解するものが好ましい。
加水分解・縮合反応は、触媒の存在下で行われることが好ましい。触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸類;シュウ酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基類;トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基類;トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム等の金属アルコキシド類;該金属アルコキシド類と、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等との金属キレート化合物類等が挙げられる。
【0038】
加水分解・縮合反応は、オルガノシランのアルコキシ基1モルに対して0.3〜2モル、好ましくは0.5〜1モルの水を添加し、上記溶媒の存在下あるいは非存在下に、そして好ましくは触媒の存在下に、25〜100℃で、撹拌することにより行われる。
触媒の使用量は、アルコキシ基に対して0.01〜10モル%、好ましくは0.1〜5モル%である。
反応条件はオルガノシランの反応性により適宜調節されることが好ましい。
【0039】
この加水分解・縮合反応は、まずオルガノシランのアルコキシ基と水が反応してアルコキシ基が加水分解しシラノール基が生成する。引き続き2個のシラノール基が脱水縮合して、シロキサン結合を形成する。従って、この反応の生成物には、水の添加量及びその他の反応条件によって量割合が変化するが、未反応のアルコキシ基、シラノール基、シロキサン結合が混在している。
本発明でオルガノシランの部分縮合物とは、オルガノシランのすべてのアルコキシ基がシラノール基を経てシラノール結合を形成しておらず、アルコキシ基の一部がシラノール結合を形成し、残りは未反応あるいはシラノール基の状態にあるものをいう。
【0040】
低屈折率層に用いられる含フッ素ポリマーとしては、含フッ素ビニルポリマー、含フッ素ポリエーテル、含フッ素ポリシロキサン等が挙げられるが、なかでも含フッ素ビニルポリマーが好ましい。
上記含フッ素ビニルポリマーは、含フッ素ビニルモノマーをラジカル重合することにより得られる。含フッ素モノマーの具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等である。このうちヘキサフロオロプロピレン、フッ素化ビニルエーテル類が好ましい。
【0041】
さらに、含フッ素ビニルポリマーが反応性基を有し、この反応性基が光硬化性ゾルゲル成分と反応して共有結合を形成し得るものであればより好ましい。このことにより、低屈折率層において光硬化性ゾルゲル成分の硬化膜と含フッ素ポリマー成分が共有結合し、フィルム強度および透明性が向上する等の好ましい結果が得られる。
このような反応性基を有する含フッ素ビニルポリマーは、含フッ素ビニルモノマーと反応性基を有するビニルモノマーを共重合することにより得られる。
【0042】
光硬化性ゾルゲル成分と共有結合可能な反応性基を有するビニルモノマーについて以下に説明する。
オルガノシランの加水分解により生成するシラノール基と反応し得る好ましい反応性基として、アルコキシシリル基が挙げられる。含アルコキシシリル基ビニルモノマーとしてはγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
また、官能基を有するオルガノシランを加水分解・縮合反応することにより、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、あるいはメルカプト基等を光硬化性ゾルゲル成分に導入することができる。
これらの官能基と共有結合可能な反応性基としては、ヒドロキシ基、エポキシ基、カルボキシル基等が挙げられる。これらの反応性基を有するビニルモノマーとして下記のモノマーを挙げることができるが、これらに限定されない。
(1)ヒドロキシ基を有するモノマー:
2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等
(2)エポキシ基を有するモノマー:
グリシジルメタクリレート、グルシジルアクリレート、ビニルグリシジルエーテル等
(3)カルボキシル基を有するモノマー:
アクリル酸、メタクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、クロトン酸、イタコン酸、α−ビニル酢酸、フマル酸ビニル、マレイン酸ビニル等
【0043】
共重合に当たって、上記以外のビニルモノマーも共重合モノマーとして用いることができる。このようなモノマーとしては、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(メチルアクリレート、、エチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート)、メタクリル酸エステル類(メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロ二トリル誘導体等を挙げることができる。このうちビニルエーテル類が好ましい。
【0044】
共重合における各モノマーの使用割合としては、含フッ素ビニルモノマーが20〜80重量%、反応性基含有モノマーが0〜30重量%、それ以外のモノマーが0〜70重量%が好ましい。モノマーの共重合は、それ自体公知のラジカル重合法により行うことができる。
【0045】
上記した共重合による方法で含フッ素ビニルポリマーに反応性基を導入する方法に加えて、含フッ素ビニルポリマーが有する反応性基と反応して共有結合を形成可能な官能基を有するオルガノシランを反応させることにより、含フッ素ビニルポリマーにアルコキシシリル基を導入することができる。この方法でのアルコキシシリル基の導入は、低屈折率層を形成するための組成物の塗布液中で行うことができるので、簡便であり好ましい。
【0046】
防眩性反射防止フィルムの低屈折率層に光硬化性ゾルゲル成分が用いられる場合、硬化を促進するために、層を形成するための組成物が光の照射によって硬化反応促進剤を発生する化合物を含有していることが好ましい。具体的には光酸発生剤あるいは光塩基発生剤が好ましく、いずれも光硬化性ゾルゲル成分の縮合反応を促進し、硬化を速めることができる。
光酸発生剤の具体例としては、ベンゾイントシレート、トリ(ニトロベンジル)ホスフェート、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等を挙げることができる。
光塩基発生剤の具体例としては、ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、ジ(メトキシベンジル)ヘキサメチレンジカルバメート等を挙げることができる。
このうち光酸発生剤がより好ましく、特に好ましくはトリアリールスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩である。
これらの化合物と併用して増感色素も好ましく用いることができる。
【0047】
光の照射によって硬化反応促進剤を発生する上記化合物の配合量は、低屈折率層を形成するための組成物(全固形分)の、好ましくは0.1〜15重量%、より好ましくは0.5〜5重量%を占めるような量である。
【0048】
防眩性反射防止フィルムの低屈折率層に用いられる無機微粒子としては、非晶質のものが好ましく用いられ、金属の酸化物、窒化物、硫化物またはハロゲン化物からなることが好ましく、なかでも金属酸化物が特に好ましい。
金属原子としては、Na、K、Mg、Ca、Ba、Al、Zn、Fe、Cu、Ti、Sn、In、W、Y、Sb、Mn、Ga、V、Nb、Ta、Ag、Si、B、Bi、Mo、Ce、Cd、Be、PbおよびNiが好ましく、Mg、Ca、BおよびSiがさらに好ましい。2種以上の金属を含む無機微粒子を用いてもよい。特に好ましい無機微粒子は、二酸化ケイ素微粒子、すなわちシリカ微粒子である。
無機微粒子の平均粒径は0.001〜0.2μmであることが好ましく、0.005〜0.05μmであることがより好ましい。微粒子の粒径はなるべく均一(単分散)であることが好ましい。該無機微粒子の粒径は大きすぎるとフィルムが不透明になり、小さすぎるものは凝集しやすく合成および取り扱いが困難である。
【0049】
無機微粒子の配合量は、低屈折率層の全重量の3〜90重量%であることが好ましく、さらに好ましくは5〜70重量%であり、特に好ましくは7〜50重量%である。無機微粒子の添加量は多すぎるとバインダーである光硬化性ゾルゲル成分の連続層が形成できずに脆くなり、また少なすぎると微粒子の添加効果が得られない。
【0050】
無機微粒子は、表面処理を施して用いることも好ましい。表面処理法としてはプラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理とカップリング剤を使用する化学的表面処理があるが、カップリング剤の使用が好ましい。カップリング剤としては、オルガノアルコキシ金属化合物(例、チタンカップリング剤、シランカップリング剤等)が好ましく用いられる。無機微粒子がシリカの場合はシランカップリング剤による処理が特に有効である。
シランカップリング剤としては前述の一般式(1)で表されるオルガノシラン化合物が使用可能である。
【0051】
低屈折率層の膜厚は、好ましくは0.05〜0.2μm、より好ましくは0.08〜0.12μmである。
【0052】
低屈折率層の屈折率を前記した通りとし、しかも数式(I)を満たすようにするには、低屈折率層を形成するための各成分の種類及び量割合を適宜選択すればよい。各成分の種類及び量割合の選択は、予め実験的に知ることができる。
【0053】
防眩性反射防止フィルムは以下の方法で形成することができるが、この方法に制限されない。
即ち、まず、各層を形成するための成分を含有した塗液(組成物)が調製される。次に、防眩性ハードコート層を形成するための塗液を、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書参照)により透明支持体上に塗布し、加熱・乾燥する。その後、光照射あるいは加熱し、防眩性ハードコート層を形成するためのモノマーを重合して硬化する。これにより防眩性ハードコート層が形成される。このようにして形成された防眩性ハードコート層は、その表面がアルカリ処理される。
次に、同様にして低屈折率層を形成するための塗液を防眩性ハードコート層上に塗布し、加熱・乾燥した後、光照射して光硬化性ゾルゲル成分を硬化することにより低屈折率層が形成される。光照射後、必要に応じて加熱してもよい。
このようにして、本発明の防眩性反射防止フィルムが得られる。
【0054】
本発明の偏光板は、偏光層の2枚の保護フィルムのうち少なくとも1枚に上記防眩性反射防止フィルムを用いてなる。本発明の防眩性反射防止フィルムを最表層に使用することにより、外光の映り込み等が防止され、耐傷性、防汚性等も優れた偏光板とすることができる。また、本発明の偏光板において防眩性反射防止フィルムが保護フィルムを兼ねることで、製造コストを低減できる。
【0055】
本発明の防眩性反射防止フィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に適用することができる。本発明の防眩性反射防止フィルムは透明支持体を有しているので、透明支持体側を画像表示装置の画像表示面に接着して用いられる。
【0056】
【実施例】
以下に実施例に基づき本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
(防眩性ハードコート層用塗布液Aの調製)
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)250gをメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=50/50%の混合溶媒439gに溶解した。得られた溶液に、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)7.5gおよび光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)5.0gを49gのメチルエチルケトンに溶解した溶液を加えた。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.53であった。
さらにこの溶液に平均粒径3μmの不定形シリカ粒子(商品名:ミズカシルP−526、水澤化学工業(株)製)10gを添加して、高速ディスパにて5000rpmで1時間攪拌、分散した後、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩性ハードコート層の塗布液を調製した。
【0058】
(防眩性ハードコート層用塗布液Bの調製)
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)125g、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド(MPSMA、住友精化(株)製)125gを、439gのメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=50/50%の混合溶媒に溶解した。得られた溶液に、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)5.0gおよび光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)3.0gを49gのメチルエチルケトンに溶解した溶液を加えた。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.60であった。
さらにこの溶液に平均粒径2μmの架橋ポリスチレン粒子(商品名:SX−200H、綜研化学(株)製)10gを添加して、高速ディスパにて5000rpmで1時間攪拌、分散した後、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩性ハードコート層の塗布液を調製した。
【0059】
(防眩性ハードコート層用塗布液Cの調製)
シクロヘキサノン104.1g、メチルエチルケトン61.3gの混合溶媒に、エアディスパで攪拌しながら酸化ジルコニウム分散物含有ハードコート塗布液(KZ−7991、JSR(株)製)217.0g、を添加した。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.70であった。
さらにこの溶液に平均粒径2μmの架橋ポリスチレン粒子(商品名:SX−200H、綜研化学(株)製)5gを添加して、高速ディスパにて5000rpmで1時間攪拌、分散した後、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩性ハードコート層の塗布液を調製した。
【0060】
(防眩性ハードコート層用塗布液Dの調製)
シクロヘキサノン32.2gに、エアディスパで攪拌しながら酸化ジルコニウム分散物含有ハードコート塗布液(KZ−7118、JSR(株)製)303.3g、およびジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)123.4g、を添加した。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.61であった。
さらにこの溶液に平均粒径2μmの架橋ポリスチレン粒子(商品名:SX−200H、綜研化学(株)製)8.2gを添加して、高速ディスパにて5000rpmで1時間攪拌、分散した後、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩性ハードコート層の塗布液を調製した。
【0061】
(ハードコート層用塗布液Eの調製)
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)250gを、439gのメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=50/50%の混合溶媒に溶解した。得られた溶液に、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)7.5gおよび光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)5.0gを49gのメチルエチルケトンに溶解した溶液を加えた。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.53であった。
さらにこの溶液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過してハードコート層の塗布液を調製した。
【0062】
(低屈折率層用塗布液Aの調製)
屈折率1.41の含フッ素ポリマー含有光硬化性ゾルゲル化合物(オプスターTM501A、固形分濃度15%、JSR(株)製)50gにシリカ粒子メチルイソブチルケトン分散物(MIBK−ST、固形分濃度30%、日産化学製)2.8gおよびメチルイソブチルケトン147gを添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液を調製した。この塗布液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.42であった。
【0063】
(低屈折率層用塗布液Bの調製)
屈折率1.43の含フッ素ポリマー含有光硬化性ゾルゲル化合物(オプスターTM505、固形分濃度15%、JSR(株)製)50gにシリカ粒子メチルイソブチルケトン分散物(MIBK−ST、固形分濃度30%、日産化学製)2.8gおよびメチルイソブチルケトン147gを添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液を調製した。この塗布液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.43であった。
【0064】
(低屈折率層用塗布液Cの調製)
屈折率1.41の含フッ素ポリマー含有光硬化性ゾルゲル化合物(オプスターTM501A、固形分濃度15%、JSR(株)製)28gにメチルイソブチルケトン72gを添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液を調製した。この塗布液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.42であった。
【0065】
(低屈折率層用塗布液Dの調製)
屈折率1.43の含フッ素ポリマー含有光硬化性ゾルゲル化合物(オプスターTM505、固形分濃度15%、JSR(株)製)28gにメチルイソブチルケトン72gを添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液を調製した。この塗布液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.43であった。
【0066】
[実施例1]
(防眩性ハードコート層の塗設)
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフイルム(TAC−TD80U、富士写真フイルム(株)製)に、上記の防眩性ハードコート層用塗布液Aをバーコーターを用いて塗布し、120℃で乾燥の後、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ6μmの防眩性ハードコート層を形成し、防眩性ハードコートベースを作成した。
(アルカリ処理)
上記の防眩性ハードコートベースを、液温55℃の1.5 mol/L 水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸し、つづいて流水で15秒間水洗し、液温30℃の0.05 mol/L 硫酸に15秒間浸し、流水で15秒間水洗した後、70℃で3分間乾燥し、アルカリ処理防眩性ハードコートベースを作成した。
(低屈折率層の塗設)
上記のけん化処理防眩性ハードコートベース上に、低屈折率層用塗布液Aをバーコーターを用いて塗布し、60℃で乾燥した後、照度400mW/cm2、照射量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、さらに120℃で8分間加熱し、厚さ0.096μmの低屈折率層を形成した。
【0067】
[実施例2]
低屈折率層用塗布液Aの替わりに低屈折率層用塗布液Bを用いた以外は実施例1と同様にしてサンプルを作成した。
【0068】
[実施例3]
低屈折率層用塗布液Aの替わりに低屈折率層用塗布液Cを用いた以外は実施例1と同様にしてサンプルを作成した。
【0069】
[実施例4]
低屈折率層用塗布液Aの替わりに低屈折率層用塗布液Dを用いた以外は実施例1と同様にしてサンプルを作成した。
【0070】
[比較例1]
防眩性ハードコート層塗設後にアルカリ処理を行わない以外は実施例1と同様にして比較用サンプルを作成した。
【0071】
[比較例2]
防眩性ハードコート層塗設後にアルカリ処理を行わない以外は実施例2と同様にして比較用サンプルを作成した。
【0072】
[比較例3]
防眩性ハードコート層塗設後にアルカリ処理を行わない以外は実施例3と同様にして比較用サンプルを作成した。
【0073】
[比較例4]
防眩性ハードコート層塗設後にアルカリ処理を行わない以外は実施例4と同様にして比較用サンプルを作成した。
【0074】
[実施例5]
(ハードコート層の塗設)
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフイルム(TAC−TD80U、富士写真フイルム(株)製)に、ハードコート層用塗布液Eをバーコーターを用いて塗布し、120℃で乾燥の後、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ4μmのハードコート層を形成した。
(防眩性ハードコート層の塗設)
ハードコート層上に、防眩性ハードコート層用塗布液Bをバーコーターを用いて塗布し、上記ハードコート層と同条件にて乾燥、紫外線硬化して、厚さ約1.5μmの防眩性ハードコート層を形成し、防眩性ハードコートベースを作成した。
(アルカリ処理)
上記の防眩性ハードコートベースを、液温55℃の1.5 mol/L 水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸し、つづいて流水で15秒間水洗し、液温30℃の0.05 mol/L 硫酸に15秒間浸し、流水で15秒間水洗した後、70℃で3分間乾燥し、アルカリ処理防眩性ハードコートベースを作成した。
(低屈折率層の塗設)
アルカリ処理防眩性ハードコートベース上に、上記低屈折率層用塗布液Aをバーコーターを用いて塗布し、60℃で乾燥の後、照度400mW/cm2、照射量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させた後、さらに120℃で8分間加熱し、厚さ0.096μmの低屈折率層を形成した。
【0075】
[実施例6]
防眩性ハードコート層用塗布液Bの替わりに防眩性ハードコート層用塗布液Cを用いた以外は実施例5と同様にしてサンプルを作成した。
【0076】
[実施例7]
防眩性ハードコート層用塗布液Bの替わりに防眩性ハードコート層用塗布液Dを用いグラビアコーターを用いて塗布した以外は実施例5と同様にしてサンプルを作成した。
【0077】
[実施例8]
低屈折率層用塗布液Aの替わりに低屈折率層用塗布液Bを用いた以外は実施例6と同様にしてサンプルを作成した。
【0078】
[実施例9]
低屈折率層用塗布液Aの替わりに低屈折率層用塗布液Cを用いた以外は実施例6と同様にしてサンプルを作成した。
【0079】
[比較例5]
防眩性ハードコート層塗設後にアルカリ処理を行わない以外は実施例5と同様にして比較用サンプルを作成した。
【0080】
[比較例6]
防眩性ハードコート層塗設後にアルカリ処理を行わない以外は実施例6と同様にして比較用サンプルを作成した。
【0081】
(反射防止膜の評価)
得られたフィルムについて、以下の項目の評価を行った。
(1)平均反射率
分光光度計(日本分光(株)製)を用いて、380〜780nmの波長領域において、入射角5度における分光反射率を測定した。結果には450〜650nmの平均反射率を用いた。
(2)ヘイズ
得られたフィルムのヘイズをヘイズメーターMODEL 1001DP(日本電色工業(株)製)を用いて測定した。
(3)耐擦傷性評価:スチールウール試験
フイルムを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、#0000のスチールウールを接地面積1cm2、加重200gにて60往復した後、蛍光灯下で目視により傷を判定した。
傷が全く認められない :○
わずかに傷が認められる :△
傷が明らかに認められる :×
(4)耐汚染性
表面の耐汚染性の指標として、光学材料を温度25℃、湿度60%RHで2時間調湿した後、水に対する接触角を測定した。またこのサンプル表面に指紋を付着させてから、それをクリーニングクロスで拭き取ったときの状態を観察して、以下のように指紋付着性を評価した。
指紋が完全に拭き取れる :○
指紋がやや見える :△
指紋がほとんど拭き取れない :×
【0082】
(5)動摩擦係数測定
表面滑り性の指標として動摩擦係数にて評価した。動摩擦係数は試料を25℃、相対湿度60%で2時間調湿した後、HEIDON−14動摩擦測定機により5mmφステンレス鋼球、荷重100g、速度60cm/minにて測定した値を用いた。
(6)防眩性評価
作成した防眩性フィルムにルーバーなしのむき出し蛍光灯(8000cd/m2)を映し、その反射像のボケの程度を以下の基準で評価した。
蛍光灯の輪郭が全くわからない :◎
蛍光灯の輪郭がわずかにわかる :○
蛍光灯はぼけているが、輪郭は識別できる :△
蛍光灯がほとんどぼけない :×
(7)ギラツキ評価
作成した防眩性フィルムにルーバーありの蛍光灯拡散光を映し、表面のギラツキを以下の基準で評価した。
ほとんどギラツキが見られない :○
わずかにギラツキがある :△
目で識別できるサイズのギラツキがある :×
【0083】
表1に実施例および比較例の評価結果を示す。
実施例1〜9の防眩性反射防止フィルムはいずれも反射防止性能に優れ、耐擦傷性、指紋付着性、防眩性、ギラツキ等の防眩性反射防止フィルムに必要とする全ての性能は良好であった。
一方、比較例1〜6の防眩性反射防止フィルムは、いずれも防眩性ハードコート層のアルカリ処理を行っていないため耐擦傷性が不足していた。
【0084】
【表1】
【0085】
次に、実施例1から9のフィルムを用いて防眩性反射防止偏光板を作成した。この偏光板を用いて反射防止層を最表層に配置した液晶表示装置を作成したところ、外光の映り込みがないために優れたコントラストが得られ、防眩性により反射像が目立たず優れた視認性を有していた。
【0086】
【発明の効果】
本発明の防眩性反射防止フィルムは、反射防止性能が高く、防汚性、耐傷性に優れ、防眩性ハードコート層及び低屈折率層の形成により低コストで製造することができる。この防眩性反射防止フィルムを用いた偏光板及び液晶表示装置は、外光の映り込みが十分に防止されていることに加えて、防汚性、耐傷性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】防眩性反射防止フィルムの層構成を示す断面模式図である。
【符号の説明】
1 防眩性反射防止フィルム
2 透明支持体
3 ハードコート層
4 防眩性ハードコート層
5 低屈折率層
6 粒子
Claims (8)
- 透明基材上に防眩性ハードコート層と屈折率が1.35〜1.49の低屈折率層とがこの順序で設けられており、該防眩性ハードコート層がアルカリ処理されていることを特徴とする防眩性反射防止フィルム。
- 上記防眩性ハードコート層が平均粒径1μm以上の粒子を含み、該防眩性ハードコート層を形成するための組成物から該平均粒径1μm以上の粒子を除いて形成された膜の屈折率が、1.57〜2.00の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の防眩性反射防止フィルム。
- 上記低屈折率層が、オルガノシランの加水分解物および/またはその部分縮合物を含有する組成物から形成されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の防眩性反射防止フィルム。
- 上記オルガノシランの加水分解物および/またはその部分縮合物が光硬化性であることを特徴とする請求項3に記載の防眩性反射防止フィルム。
- 低屈折率層を形成するための上記組成物が、さらに含フッ素ポリマーを含有していることを特徴とする請求項4に記載の防眩性反射防止フィルム。
- 透明支持体がトリアセチルセルロースからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の防眩性反射防止フィルム。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の防眩性反射防止フィルムを偏光板における偏光層の2枚の保護フィルムのうちの少なくとも一方に用いたことを特徴とする偏光板。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の防眩性反射防止フィルムまたは請求項7に記載の防眩性反射防止偏光板の反射防止層をディスプレイの最表層に用いたことを特徴とする液晶表示装置。
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