JP2004130395A - ガラステクスチャー加工用研磨布及びそれを用いた磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】記録ディスクに用いるガラス基板へのテクスチャー加工において、ディスク基板表面に大きな傷をつけることなく、研磨効率が高くかつ安定的に高精度の仕上げを行うことが可能なテクスチャー加工用研磨布を提供すること。
【解決手段】平均繊度0.01〜0.2dtexのポリエステル極細短繊維束が3次元絡合した不織布と高分子弾性体とが一体構造となっており、少なくとも片面が立毛されたシートであり、該極細繊維束中の繊維数が10〜200であり、該シート中の繊維径のCV値が10%以下であり、該シートの密度が0.3〜0.5g/cm3であり、かつ該シート中の極細短繊維密度が0.2〜0.4g/cm3 であることを特徴とするガラステクスチャー加工用研磨布。
【選択図】なし
【解決手段】平均繊度0.01〜0.2dtexのポリエステル極細短繊維束が3次元絡合した不織布と高分子弾性体とが一体構造となっており、少なくとも片面が立毛されたシートであり、該極細繊維束中の繊維数が10〜200であり、該シート中の繊維径のCV値が10%以下であり、該シートの密度が0.3〜0.5g/cm3であり、かつ該シート中の極細短繊維密度が0.2〜0.4g/cm3 であることを特徴とするガラステクスチャー加工用研磨布。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記録ディスクに用いるガラス基板に対してテクスチャー加工を行う際に用いられる研磨布に関するものであり、特に従来は実現されていなかった、ガラス基板に対して高効率かつ高精度にテクスチャー加工仕上げするのに好適に用いられる研磨布に関するものである。また、本発明は、本発明にかかる該研磨布を用いた磁気記録用ディスクの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
記録ディスク等の磁気記録媒体において、近年、高容量化、高密度化に伴い、記録ディスクと磁気ヘッドとの間隔、つまり磁気ヘッドの浮上高さは加速度的に小さくなってきている。磁気ヘッドの浮上高さが著しく小さくなることにより、磁気ディスクの表面に突起があるとその突起と磁気ヘッドとが接触してヘッドクラッシュを起こし、ディスク表面に傷が発生する。また、ヘッドクラッシュには至らない程度の微小な突起でも、磁気ヘッドとの接触により情報の読み書きの際に発生するエラーの原因となる。記録ディスクについては、高容量化、高密度化と平行して小型化も進んできており、これに併せてスピンドル回転用のモーター等も小型化されてきている。
【0003】
このため、モーターのトルクが不足し、磁気ヘッドが記録ディスク表面とが密着し、浮上しなくなるというトラブルを引き起こす。この記録ディスクと磁気ヘッドとの密着を防止する手段として、記録ディスクの基板表面に微細な条痕を形成するテクスチャー加工という表面処理が行われている。
【0004】
従来、テクスチャー加工の方法としては、遊離砥粒のスラリーを研磨布表面に付着させて研削を行うスラリー研削等が用いられている。このテクスチャー加工によって、磁気ヘッドの低浮上を満足するための表面処理を行う場合、最近の急激な高記録容量化のための高記録密度化に対応するためには、(1)研磨後のうねりを低くし基板表面粗さを極めて小さくすること、(2)テクスチャー条痕の線密度に相当するラインデンシティを向上させること、(3)研磨後の表面に大きな傷(スクラッチ)をつけないことが要求され、その要求に対応しうる研磨布が求められている。
【0005】
基板素材としてはアルミニウム合金及びガラスが広く採用されている。アルミニウム合金基板に対するテクスチャー加工は、表面を鏡面加工した後にNi−P合金等の非磁性金属の無電解メッキ処理により形成される非磁性層に対し行われるのが一般的であり、前記非磁性層を形成したディスク表面へのテクスチャー加工用研磨布としては、最近では、0.03dtex以下の極細繊維絡合不織布と高分子弾性体とが一体構造となっている立毛人工皮革状物により構成された研磨布が提案されており、超高精度の仕上げでかつ安定的なテクスチャー加工を達成してきている(例えば、特許文献1)。
【0006】
一方、ガラス基板については、記録ディスク製造工程の効率化等の観点から、アルミニウム合金基板に用いられている非磁性金属の無電解メッキ処理を行わず、鏡面加工後に直接テクスチャー加工を行う方法が広く採用されており、本テクスチャー加工においては、高研削力を有し、かつ安定的に超高精度の仕上げを行える研磨布が求められている。
【0007】
かかるガラステクスチャー加工用研磨布としては、研削力が高い極細繊維よりなる織物が用いられてきたが、テクスチャー加工において、高記録密度化に対応できる基板表面粗さを得ることができず、研磨後の基板表面に大きな傷が発生する頻度が高いという問題があった。また、前記特許文献1の人工皮革により構成される研磨布を用いることも考えられるが、低繊度であるがゆえの研削力不足により、研磨効率が低いばかりでなく、精度の高いテクスチャー加工を行うことは極めて難しい状態にある。
【0008】
【特許文献1】特開2002−79472公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の問題点を解決するためになされたものであり、記録ディスクに用いるガラス基板へのテクスチャー加工において、ディスク基板表面に大きな傷をつけることなく、研磨効率が高くかつ安定的に高精度の仕上げを行うことが可能なテクスチャー加工用研磨布と、該研磨布を用いた磁気記録用ディスクの製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するために、次の構成を有する。
【0011】
すなわち、平均繊度0.01〜0.2dtexのポリエステル極細短繊維束が3次元絡合した不織布と高分子弾性体とが一体構造となっており、少なくとも片面が立毛されたシートからなり、該極細繊維束中の繊維数が10〜200本/束であり、該シート中の繊維径のCV値が10%以下であり、該シートの密度が0.3〜0.5g/cm3 であり、かつ該シート中の極細短繊維密度が0.2〜0.4g/cm3 であることを特徴とするガラステクスチャー加工用研磨布である。
【0012】
また、本発明の磁気記録用ディスクの製造方法は、平均繊度0.01〜0.2dtexのポリエステル極細短繊維束が3次元絡合した不織布と高分子弾性体とが一体構造となっており、少なくとも片面が立毛されているシートからなり、かつ、該極細繊維束中の繊維数が10〜200本/束、該シート中の繊維径CV値が10%以下、該シートの密度が0.3〜0.5g/cm3 、かつ該シート中の極細短繊維密度が0.2〜0.4g/cm3 である研磨布に、砥粒径0.3μm以下の遊離砥粒を付与し、該遊離砥粒の付与された研磨布を用いてガラス基板にテクスチャー加工を施すことを特徴とする磁気記録用ディスクの製造方法である。
【0013】
あるいはまた、本発明の磁気記録用ディスクの製造方法は、平均繊度0.05〜0.15dtexのポリエステル極細短繊維束が3次元絡合した不織布と高分子弾性体とが一体構造となっており、少なくとも片面が立毛されたシートからなり、かつ該極細繊維束中の繊維数が10〜200本/束、該シート中の繊維径CV値が10%以下、該シートの密度が0.3〜0.5g/cm3 、かつ該シート中の極細短繊維密度が0.2〜0.4g/cm3 である研磨布に、砥粒径0.3μm以下の遊離砥粒を付与し、該遊離砥粒の付与された研磨布を用いてガラス基板にテクスチャー加工を施すことを特徴とする磁気記録用ディスクの製造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のガラステクスチャー加工用研磨布と、該研磨布を用いた磁気記録用ディスクの製造方法について説明する。
【0015】
本発明のガラステクスチャー加工用研磨布は、上述の構成を有するものであり、製造するに当たっては、まず、ポリエステル極細短繊維からなる不織布を構成する。すなわち、ポリエステルを島成分とし、10〜200の島数を有する海島型パイプ口金を通して複合紡糸して、延伸後カットした原綿を強固に絡合させて不織布を構成し、次いで、該複合繊維の少なくとも1成分を溶解除去あるいは物理的、化学的作用により剥離、分割し、平均繊度0.01〜0.2dtexに極細化した後、高分子弾性体を付与し、該高分子弾性体を実質的に凝固、固化させた後、バッフィング処理することにより、シートの密度が0.3〜0.5g/cm3 であり、かつ極細繊維密度が0.2〜0.4g/cm3 の緻密な立毛面が形成されたガラステクスチャー加工用研磨布を得るものである。
【0016】
本発明における極細短繊維成分はポリエステルであることが特に重要である。これは、繊維剛性が高く、立毛面における繊維の均一分散性に優れるため、記録ディスクに用いられる硬度の高いガラス基板を高効率かつ高精度にテクスチャー加工を行うことができるからである。一方で、スラリーとの親和性に優れるポリアミドを用いることも考えられるが、ポリエステルに比べ繊維剛性が低く、基板表面との接触抵抗が弱すぎるために高硬度のガラス基板のテクスチャー加工には不適当である。
【0017】
ポリエステルの中でも繊維剛性及び繊維の均一分散性の観点からポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0018】
本発明において複合繊維の溶解除去あるいは物理的、化学的作用により剥離、分割される海成分を構成するポリマーとしては、上記のポリエステル類、ポリアミド類、ポリエチレン、ポリスチレン、共重合ポリスチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類を使用することができる。これらの中から極細短繊維の断面形成性、紡糸性、延伸性などを考慮して、海成分を選択して組み合わせればよいが、特にニードルパンチしたときの繊維の高絡合化による立毛繊維の高密度化を満足させる上から、海成分としては、ポリスチレン、共重合ポリスチレンが好ましく使用される。
【0019】
本発明において、ポリエステル極細短繊維の緻密性を上げるために、極細繊維化処理を行う前に、不織布シートの熱水収縮処理を行うことが好ましい。均一かつ高い収縮を得るためにも、海成分はポリスチレン、共重合ポリスチレンであることが好ましく、また緻密性と生産性を両立させる観点から、該成分重量比率は総重量に対し20〜70%であることが好ましい。
【0020】
本発明に用いる複合繊維の繊維絡合体としては、該複合繊維を短繊維化しカード・クロスラッパーもしくはランダムウエブなどを用いてウエブを形成せしめ、その後ニードルパンチ処理あるいはウオータージェットパンチ処理などの絡合処理を施すことによって、シート化した短繊維不織布が望ましく使用される。中でも、ニードルパンチ処理した短繊維不織布が、繊維の高絡合化による繊維の高密度化(緻密な立毛面形成)の観点から好ましく採用され、その場合のパンチング本数としては、繊維をシート表面の垂直方向に緻密に配向(緻密な立毛面形成)させる上から、2500〜4000本/cm2 であることが好ましい。2500本/cm2 未満では、立毛繊維の緻密性に劣り、4000本/cm2 を越えると、加工性の観点から好ましくない。
【0021】
ウエブを形成するという点においては、メルトブロー、スパンボンドなど紡糸から直接形成する長繊維不織布でもよいように考えられるが、とりわけ研磨布においては、極細繊維相互の絡合及び立毛繊維の緻密性が、短繊維不織布よりも著しく劣り、研磨後の基板表面に大きな傷が発生するため、極細長繊維不織布は研磨布としては使用することはできない。つまり、短繊維不織布は、該布帛の垂直方向に繊維が密集して、緻密に存在するので、該短繊維不織布を用いて研磨する際に均一な研磨が達成されるが、長繊維不織布では、立毛繊維の粗な部分に遊離砥粒が凝集し、不均一な研磨となりやすいのである。
【0022】
本発明では、上記の複合繊維を溶解除去あるいは物理的、化学的作用により剥離、分割した後の極細短繊維の平均繊度は0.01〜0.2dtexであることが特に重要であり、0.05〜0.15dtexであることがより好ましい。0.01dtex未満である場合には、繊維強度及び剛性が低く、研削不足になるばかりでなく、スラリー中の遊離砥粒の保持性、分散性に劣るため、基板表面に大きな傷が発生しやすいため好ましくない。0.2dtexを越える場合には、研磨布表面での立毛繊維の緻密性に劣り、高精度の仕上げを達成できないため好ましくない。
【0023】
本発明では、研磨布を構成する極細短繊維の繊維径のCV値が10%以下であることが特に重要である。ここで、繊維径のCV値とは極細繊維の繊維径分布の標準偏差を、極細繊維の繊維径の平均値で除した値のことである。10%を越える場合には、低繊度繊維と高繊度繊維との剛性差に起因する研磨布表面における立毛繊維の分布の偏りが生じ、高精度の仕上げを達成できないため好ましくない。
【0024】
前記した特徴を有する極細短繊維を得る方法としては、横断面変動を抑制するよう口金下吸引及び冷却装置を調整し、海島型パイプ口金を用いて複合紡糸した後に、該海成分を除去する方法が好ましく使用される。チップブレンド、ポリマーブレンド等の混合紡糸を用いることも考えられるが、複合繊維横断面における島成分の繊維径の内外周差が大きく、前記繊維径のCV値を達成するのは極めて難しいばかりでなく、海島型口金を用いた複合紡糸により得られる極細短繊維に比べ、部分的に極細短繊維同士が接着した束状となる状態になりやすく、繊維の均一分散性に劣るため、立毛繊維の粗な部分で砥粒の凝集が起こり、スクラッチが発生しやすい。
【0025】
海島型口金を用いた複合紡糸では、得られる極細短繊維束内での繊維間距離バラツキが小さいために、極細短繊維不織布を形成した際の表面繊維の均一分散性に優れており、基板の表面粗さの低減、基板表面の大きな傷の抑制を達成することができる。
【0026】
本発明では、極細短繊維束内の繊維数は10〜200本/束であることが特に重要である。好ましくは30〜150本/束である。10本/束未満である場合には、研磨布立毛面にけおける緻密性に劣り好ましくない。一方、200本/束を越えると、バッフィング処理を施した際に極細繊維の分散性が低下し、立毛面の繊維分布が不均一になり、テクスチャー加工ムラにつながるとともに、該研磨布にスラリーを付与した際に極細繊維が膠着しやすいため、傷の発生につながりやすく好ましくない。
【0027】
本発明の研磨布は、ポリアミド極細短繊維不織布に高分子弾性体を付与させることによって得られる。該高分子弾性体は、表面凹凸や振動吸収のためのクッション、繊維形態保持などの役割を有し、該ポリアミド極細短繊維不織布と一体化させることにより、被研磨物へのフィット性および被研磨物へのキズの抑制効果に優れるものである。かかる高分子弾性体としては、ポリウレタン、アクリロニトリル、ブタジエンラバー、天然ゴム、ポリ塩化ビニルなどを使用することができる。中でも、ポリウレタンが本発明方法の加工プロセスにおける加工性やクッション性が良好であることから好ましい。
【0028】
研磨時のクッション性およびフィット性は、研磨精度の上で重要であり、極細短繊維と高分子弾性体の割合や空隙率(見掛け密度でわかる)によって制御し、研磨精度や研磨目的によって調節される。
【0029】
高分子弾性体の含有量は、成型上、極細短繊維重量に対し20重量%〜80重量%であることが好ましく、含有量によって研磨布の表面状態、空隙率、クッション性、硬度、強度などを調節することができる。20重量%未満である場合、クッション性に劣るため、研磨後の表面に大きな傷が発生しやすいばかりでなく、シート強度が低いため伸びやすく加工ムラが発生しやすいことから、好ましくない場合がある。また、80重量%を越えると、加工性及び生産性に劣るとともに、表面上に高分子弾性体が露出しやすく、砥粒の凝集による基板表面の大きな傷を引き起こしやすいため、好ましくない場合がある。
【0030】
かかる高分子弾性体の付与方法としては、該高分子弾性体を塗布あるいは含浸後凝固させる方法、あるいはエマルジョン、ラテックス状で塗布あるいは含浸して乾燥、固着させる方法など種々の方法が採用することができる。
【0031】
本発明において、ポリアミド極細短繊維不織布を起毛処理することが特に重要である。ここでいう起毛処理とは、少なくとも片面が起毛された状態で、スエード調に仕上げられていてもよい。起毛処理は針布やサンドペーパーを使用して行うのが一般的である。とりわけ、高分子弾性体付与後、表面をサンドペーパーを使用して、起毛処理することにより均一で緻密な立毛を形成することができる。起毛処理を行わない場合、緻密な立毛面が得られないばかりでなく、研磨布表面に高分子弾性体が露出している状態になりやすく、研磨砥粒の凝集による基板表面の大きな傷の発生につながりやすいため好ましくない。
【0032】
本発明において、該研磨布を構成するシートの密度が0.3〜0.5g/cm3 でありかつ極細短繊維密度が0.2〜0.4g/cm3 であることが特に重要である。該シートの密度が0.3g/cm3 未満あるいは極細繊維密度が0.2g/cm3 未満であると、クッション性が低下することにより、傷や加工ムラの発生につながるばかりでなく、立毛繊維の緻密性に劣るため、超高精度の仕上げが達成できず好ましくない。該シートの密度が0.5g/cm3 を越えるかあるいは極細繊維密度が0.4g/cm3 を越えると、シートが硬くなり、研磨時の基板への接触抵抗が増大することにより傷の発生につながるため好ましくない。
【0033】
本発明において、高研削力の観点から、該極細繊維のヤング率は2500N/mm2 以上であることが好ましい。2500N/mm2 未満である場合、基板に対する接触抵抗が低く、研磨効率が悪いとともに、極細繊維同士が密着し束状になりやすく、立毛繊維密度の粗密ムラにつながり、加工ムラを発生しやすい場合があり好ましくない場合があるからである。特にポリエステル極細繊維においてヤング率2500N/mm2 以上を得る方法は、特に限定されないが、例えば、上記の複合繊維を超高速製糸法で紡糸機から直接引き取る方法等も可能であるが、本発明において最も好ましくは、島成分をポリエステル、海成分をポリスチレンまたは共重合ポリスチレンとする海島型複合繊維を紡糸して未延伸糸としていったん巻き取った後に、これを延伸することによって得る方法が用いられる。このときの延伸倍率は2.5倍以上であることが好ましい。
【0034】
本発明の研磨布において、研磨布の生産性及びクッション性、テープ伸びによる加工ムラ、傷の発生をおさえるためには、該シートの目付は100〜500g/m2 であることが好ましい。さらに好ましくは150〜300g/m2 である。
【0035】
本発明の研磨布において、該シートの長手方向の引張伸度は100%以下であることが好ましい。100%を越えるとテクスチャー加工時に張力をかけると、テープの伸びにより長手方向及び幅方向に立毛繊維密度の粗密ムラを生じ、基板表面粗さ、ラインデンシティの変動を引き起こすため好ましくない。
【0036】
本発明によって得られる研磨布は、記録ディスクに用いるガラス基板へのテクスチャー加工において、ディスク基板表面に大きな傷をつけることなく、研磨効率が高くかつ安定的に高精度の仕上げ、すなわち均一かつ微細で緻密なテクスチャー加工を実現することができるものである。
【0037】
本発明におけるテクスチャー加工は、Ni−P合金等の非磁性金属のメッキ処理を施していないガラス基板に所定の条痕パターンのテクスチャーを所望の加工精度で付与する加工である。加工精度は、本発明による研磨布を使用するほかに、遊離砥粒を含むスラリーの砥粒径、砥粒濃度、粘度などの条件、基板回転数、研磨布の送り速度、オシレーション振動数、研磨布押しつけ圧力などの加工条件を適宜調整することにより向上することができる。
【0038】
その中でも、特に研磨砥粒径条件が重要であり、0.3μm以下にすることが好ましい。
【0039】
上述したテクスチャー加工を施した後、金属磁性層、保護層等の処理を施すことにより、大容量ハードディスクドライブに搭載される磁気記録ディスクを得ることができる。
【0040】
【実施例】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。
(1)繊維径のCV値:
該研磨布を厚み方向にカットした断面を観察面として走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、任意の300カ所の極細繊維の繊維径を測定し、これを母集団とした標準偏差値及び平均値から算出した。
(2)テクスチャー加工試験:
該研磨布を、テクスチャー加工機に装着し、スラリー(平均粒径0.2μのダイヤモンド結晶と水系分散媒とからなる、0.20重量%)を用いて、ガラス基板を20秒間研磨した。
(3)基板表面粗さの評価:
研磨後のガラス基板の表面粗さは、原子間力顕微鏡(AFM)にて、基板表面粗さRa(オングストローム)を測定し、下記の基準に準拠して評価した。
【0041】
○:8オングストローム未満で良好。
【0042】
×:8オングストローム以上で不良。
(4)ラインデンシティの評価:
研磨後のガラス基板の表面粗さは、原子間力顕微鏡(AFM)にて、ラインデンシティ(本/μm)を測定し、下記基準に準拠して評価した。
【0043】
○:8本/μm以上で良好。
【0044】
×:8本/μm未満で不良。
実施例1
島成分としてポリエチレンテレフタレートと、海成分としてポリスチレンを用いて、成分比55/45で海島型パイプ口金を用いて複合紡糸し未延伸糸を得た。該未延伸糸を延伸倍率3.5倍で延伸し、捲縮を付与してカットし、島数36、複合繊度3.1dtex、島成分繊度0.05dtex、島成分ヤング率3000N/mm2 、繊維長51mmの海島型複合繊維の原綿を形成する。
【0045】
この海島型複合繊維の原綿を用いて、カード、クロスラッパー工程を経て積層ウエブを形成し、次いでプレパンチで、100本/cm2 のニードルパンチを行って不織布にした。
【0046】
次に、この不織布シートの上下から、3000本/cm2 の針本数でニードルパンチし、目付700g/m2 の不織布を形成した。この不織布シートを極細繊維化し、次いでポリウレタンを極細短繊維重量に対し25重量%含浸させ、水中で該ポリウレタンを凝固した後、このシートをバフ機にかけて立毛を形成させ、厚さ0.65mm、目付220g/m2 、密度0.36g/cm3 、極細短繊維密度0.27g/cm3 の本発明の研磨布を得た。尚、研磨布中の極細繊維の繊維径のCV値は8%であり、研磨布長手方向の引張伸度は80%であった。
【0047】
この研磨布を用いて、ガラス基板のテクスチャー加工を行ったところ、基板表面の大きな傷の発生がなく、基板表面粗さRaは7.7オングストロームと○評価であり、ラインデンシティは9.8本/μmと○評価であった。
比較例1
島成分としてナイロン6と、海成分として共重合ポリスチレンを用いて、島/海成分比40/60で海島型パイプ口金を用いて複合紡糸し未延伸糸を得た。該未延伸糸を延伸倍率3.0倍で延伸し、捲縮を付与してカットし、島数100、複合繊度4.7dtex、島成分繊度0.02dtex、島成分ヤング率2000N/mm2 、繊維長51mmの海島型複合繊維の原綿を形成する。
【0048】
この海島型複合繊維の原綿を用いて、カード、クロスラッパー工程を経て積層ウエブを形成し、次いで、プレパンチで100本/cm2 のニードルパンチを行って不織布にした。
【0049】
次に、この不織布シートの上下から、3000本/cm2 の針本数でニードルパンチし、目付700g/m2 の不織布を形成した。この不織布シートを極細繊維化し、次いでポリウレタンを極細短繊維重量に対し35重量%含浸させ、水中で該ポリウレタンを凝固した後、このシートをバフ機にかけて立毛を形成させ、厚さ0.55mm、目付180g/m2 、密度0.34g/cm3 、極細短繊維密度0.24g/cm3 の研磨布を得た。なお、研磨布中の極細繊維の繊維径のCV値は9%であり、研磨布長手方向の引張伸度は85%であった。
【0050】
この研磨布を用いて、ガラス基板のテクスチャー加工を行ったところ、基板表面の大きな傷の発生はないが、研削量が低いためにテクスチャー加工ムラが発生し、基板表面粗さRa、ラインデンシティは測定不可能であった。
比較例2
バッフィング処理を行わないこと以外は、実施例1と同様の製法で作製し、厚さ0.8mm、目付250g/m2 、極細短繊維密度0.25g/cm3 の研磨布を得た。
【0051】
なお、研磨布中の極細繊維の繊維径のCV値は8%であり、研磨布長手方向の引張伸度は90%であった。
【0052】
この研磨布を用いて、ガラス基板のテクスチャー加工を行ったところ、基板表面の大きな傷が発生し、加工性不良であり、基板表面粗さ、ラインデンシティは測定が不可能であった。
比較例3
不織布を作製する際のニードルパンチ本数を500本/cm2 とすること以外は、実施例1と同様の製法で作成し、厚さ0.65mm、目付150g/m2 、密度0.24g/cm3 、極細短繊維密度0.18g/cm3 の研磨布を得た。なお、研磨布中の極細繊維の繊維径のCV値は8%であり、研磨布長手方向の引張伸度は60%であった。
【0053】
この研磨布を用いて、被研磨物であるガラス基板のテクスチャー加工を行ったところ、基板表面の大きな傷が発生し、加工性不良であった。
比較例4
島成分としてポリエチレンテレフタレートと、海成分としてポリスチレンを用いて、島/海成分比57/43で海島型パイプ口金を用いて複合紡糸し未延伸糸を得た。該未延伸糸を延伸倍率2.5倍で延伸し、捲縮を付与してカットし、島数16、複合繊度4.2dtex、島成分繊度0.15dtex、島成分ヤング率2700N/mm2 、繊維長51mmの海島型複合繊維の原綿を形成する。
【0054】
この海島型複合繊維の原綿を用いて、カード、クロスラッパー工程を経て積層ウエブを形成し、次いでプレパンチで、100本/cm2 のニードルパンチを行って不織布にした。
【0055】
次に、この不織布シートの上下から、3000本/cm2 の針本数でニードルパンチし、目付530g/m2 の不織布を形成した。この不織布シートを極細繊維化し、次いでポリウレタンを極細短繊維重量に対し45重量%含浸させ、水中で該ポリウレタンを凝固した後、このシートをバフ機にかけて立毛を形成させ、厚さ0.8mm、目付230g/m2 、密度0.28g/cm3 、極細短繊維密度0.2g/cm3 の本発明の研磨布を得た。なお、研磨布中の極細繊維の繊維径のCV値は7%であり、研磨布長手方向の引張伸度は70%であった。
【0056】
この研磨布を用いて、ガラス基板のテクスチャー加工を行ったところ、基板表面の大きな傷の発生はないが、加工後のバリ発生数が多く加工ムラ大であった。基板表面粗さRaは7.7オングストロームと○評価であったが、ラインデンシティは7.4本/μmと×評価であった。
比較例5
島成分としてポリエチレンテレフタレート、海成分として共重合ポリスチレンを用いて成分比40/60で混合紡糸し未延伸糸を得た。該未延伸糸を延伸倍率2.5倍で延伸し、捲縮を付与してカットし、島数約400、複合繊度5.0dtex、島成分繊度0.005dtex、島成分ヤング率2500N/mm2 、繊維長51mmの複合繊維の原綿を形成する。
【0057】
該複合繊維の原綿を用いて、カード、クロスラッパー工程を経て積層ウエブを形成し、次いでプレパンチで100本/cm2 のニードルパンチを行って不織布にした。
【0058】
次に、不織布シートの上下から3000本/cm2 の針本数でニードルパンチし、目付570g/m2 の不織布を形成した。この不織布シートを極細繊維化し、次いでポリウレタンを極細短繊維重量に対し30重量%含浸させ、水中で該ポリウレタンを凝固した後、このシートをバフ機にかけて立毛を形成させ、厚さ0.6mm、目付200g/m2 、密度0.36g/cm3 、極細短繊維密度0.28g/cm3 の研磨布を得た。
【0059】
該研磨布中の極細繊維の繊維径のCV値は42%であり、研磨布長手方向の引張伸度は90%であった。
【0060】
この研磨布を用いて、被研磨物であるガラス基板のテクスチャー加工を行ったところ、基板表面の大きな傷が発生し、加工性不良であった。
【0061】
【発明の効果】
本発明の研磨布は、表面に存在する極細繊維の緻密性、均一性及び剛性に優れているため、(1)研磨後のうねりを低くし基板表面粗さを極めて小さくする、(2)テクスチャー条痕の線密度に相当するラインデンシティを向上させる、(3)研磨後の表面に大きな傷(スクラッチ)をつけず且つ高効率研削可能であるという記録ディスクの生産性と高記録容量化の両立を達成しうるものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記録ディスクに用いるガラス基板に対してテクスチャー加工を行う際に用いられる研磨布に関するものであり、特に従来は実現されていなかった、ガラス基板に対して高効率かつ高精度にテクスチャー加工仕上げするのに好適に用いられる研磨布に関するものである。また、本発明は、本発明にかかる該研磨布を用いた磁気記録用ディスクの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
記録ディスク等の磁気記録媒体において、近年、高容量化、高密度化に伴い、記録ディスクと磁気ヘッドとの間隔、つまり磁気ヘッドの浮上高さは加速度的に小さくなってきている。磁気ヘッドの浮上高さが著しく小さくなることにより、磁気ディスクの表面に突起があるとその突起と磁気ヘッドとが接触してヘッドクラッシュを起こし、ディスク表面に傷が発生する。また、ヘッドクラッシュには至らない程度の微小な突起でも、磁気ヘッドとの接触により情報の読み書きの際に発生するエラーの原因となる。記録ディスクについては、高容量化、高密度化と平行して小型化も進んできており、これに併せてスピンドル回転用のモーター等も小型化されてきている。
【0003】
このため、モーターのトルクが不足し、磁気ヘッドが記録ディスク表面とが密着し、浮上しなくなるというトラブルを引き起こす。この記録ディスクと磁気ヘッドとの密着を防止する手段として、記録ディスクの基板表面に微細な条痕を形成するテクスチャー加工という表面処理が行われている。
【0004】
従来、テクスチャー加工の方法としては、遊離砥粒のスラリーを研磨布表面に付着させて研削を行うスラリー研削等が用いられている。このテクスチャー加工によって、磁気ヘッドの低浮上を満足するための表面処理を行う場合、最近の急激な高記録容量化のための高記録密度化に対応するためには、(1)研磨後のうねりを低くし基板表面粗さを極めて小さくすること、(2)テクスチャー条痕の線密度に相当するラインデンシティを向上させること、(3)研磨後の表面に大きな傷(スクラッチ)をつけないことが要求され、その要求に対応しうる研磨布が求められている。
【0005】
基板素材としてはアルミニウム合金及びガラスが広く採用されている。アルミニウム合金基板に対するテクスチャー加工は、表面を鏡面加工した後にNi−P合金等の非磁性金属の無電解メッキ処理により形成される非磁性層に対し行われるのが一般的であり、前記非磁性層を形成したディスク表面へのテクスチャー加工用研磨布としては、最近では、0.03dtex以下の極細繊維絡合不織布と高分子弾性体とが一体構造となっている立毛人工皮革状物により構成された研磨布が提案されており、超高精度の仕上げでかつ安定的なテクスチャー加工を達成してきている(例えば、特許文献1)。
【0006】
一方、ガラス基板については、記録ディスク製造工程の効率化等の観点から、アルミニウム合金基板に用いられている非磁性金属の無電解メッキ処理を行わず、鏡面加工後に直接テクスチャー加工を行う方法が広く採用されており、本テクスチャー加工においては、高研削力を有し、かつ安定的に超高精度の仕上げを行える研磨布が求められている。
【0007】
かかるガラステクスチャー加工用研磨布としては、研削力が高い極細繊維よりなる織物が用いられてきたが、テクスチャー加工において、高記録密度化に対応できる基板表面粗さを得ることができず、研磨後の基板表面に大きな傷が発生する頻度が高いという問題があった。また、前記特許文献1の人工皮革により構成される研磨布を用いることも考えられるが、低繊度であるがゆえの研削力不足により、研磨効率が低いばかりでなく、精度の高いテクスチャー加工を行うことは極めて難しい状態にある。
【0008】
【特許文献1】特開2002−79472公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の問題点を解決するためになされたものであり、記録ディスクに用いるガラス基板へのテクスチャー加工において、ディスク基板表面に大きな傷をつけることなく、研磨効率が高くかつ安定的に高精度の仕上げを行うことが可能なテクスチャー加工用研磨布と、該研磨布を用いた磁気記録用ディスクの製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するために、次の構成を有する。
【0011】
すなわち、平均繊度0.01〜0.2dtexのポリエステル極細短繊維束が3次元絡合した不織布と高分子弾性体とが一体構造となっており、少なくとも片面が立毛されたシートからなり、該極細繊維束中の繊維数が10〜200本/束であり、該シート中の繊維径のCV値が10%以下であり、該シートの密度が0.3〜0.5g/cm3 であり、かつ該シート中の極細短繊維密度が0.2〜0.4g/cm3 であることを特徴とするガラステクスチャー加工用研磨布である。
【0012】
また、本発明の磁気記録用ディスクの製造方法は、平均繊度0.01〜0.2dtexのポリエステル極細短繊維束が3次元絡合した不織布と高分子弾性体とが一体構造となっており、少なくとも片面が立毛されているシートからなり、かつ、該極細繊維束中の繊維数が10〜200本/束、該シート中の繊維径CV値が10%以下、該シートの密度が0.3〜0.5g/cm3 、かつ該シート中の極細短繊維密度が0.2〜0.4g/cm3 である研磨布に、砥粒径0.3μm以下の遊離砥粒を付与し、該遊離砥粒の付与された研磨布を用いてガラス基板にテクスチャー加工を施すことを特徴とする磁気記録用ディスクの製造方法である。
【0013】
あるいはまた、本発明の磁気記録用ディスクの製造方法は、平均繊度0.05〜0.15dtexのポリエステル極細短繊維束が3次元絡合した不織布と高分子弾性体とが一体構造となっており、少なくとも片面が立毛されたシートからなり、かつ該極細繊維束中の繊維数が10〜200本/束、該シート中の繊維径CV値が10%以下、該シートの密度が0.3〜0.5g/cm3 、かつ該シート中の極細短繊維密度が0.2〜0.4g/cm3 である研磨布に、砥粒径0.3μm以下の遊離砥粒を付与し、該遊離砥粒の付与された研磨布を用いてガラス基板にテクスチャー加工を施すことを特徴とする磁気記録用ディスクの製造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のガラステクスチャー加工用研磨布と、該研磨布を用いた磁気記録用ディスクの製造方法について説明する。
【0015】
本発明のガラステクスチャー加工用研磨布は、上述の構成を有するものであり、製造するに当たっては、まず、ポリエステル極細短繊維からなる不織布を構成する。すなわち、ポリエステルを島成分とし、10〜200の島数を有する海島型パイプ口金を通して複合紡糸して、延伸後カットした原綿を強固に絡合させて不織布を構成し、次いで、該複合繊維の少なくとも1成分を溶解除去あるいは物理的、化学的作用により剥離、分割し、平均繊度0.01〜0.2dtexに極細化した後、高分子弾性体を付与し、該高分子弾性体を実質的に凝固、固化させた後、バッフィング処理することにより、シートの密度が0.3〜0.5g/cm3 であり、かつ極細繊維密度が0.2〜0.4g/cm3 の緻密な立毛面が形成されたガラステクスチャー加工用研磨布を得るものである。
【0016】
本発明における極細短繊維成分はポリエステルであることが特に重要である。これは、繊維剛性が高く、立毛面における繊維の均一分散性に優れるため、記録ディスクに用いられる硬度の高いガラス基板を高効率かつ高精度にテクスチャー加工を行うことができるからである。一方で、スラリーとの親和性に優れるポリアミドを用いることも考えられるが、ポリエステルに比べ繊維剛性が低く、基板表面との接触抵抗が弱すぎるために高硬度のガラス基板のテクスチャー加工には不適当である。
【0017】
ポリエステルの中でも繊維剛性及び繊維の均一分散性の観点からポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0018】
本発明において複合繊維の溶解除去あるいは物理的、化学的作用により剥離、分割される海成分を構成するポリマーとしては、上記のポリエステル類、ポリアミド類、ポリエチレン、ポリスチレン、共重合ポリスチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類を使用することができる。これらの中から極細短繊維の断面形成性、紡糸性、延伸性などを考慮して、海成分を選択して組み合わせればよいが、特にニードルパンチしたときの繊維の高絡合化による立毛繊維の高密度化を満足させる上から、海成分としては、ポリスチレン、共重合ポリスチレンが好ましく使用される。
【0019】
本発明において、ポリエステル極細短繊維の緻密性を上げるために、極細繊維化処理を行う前に、不織布シートの熱水収縮処理を行うことが好ましい。均一かつ高い収縮を得るためにも、海成分はポリスチレン、共重合ポリスチレンであることが好ましく、また緻密性と生産性を両立させる観点から、該成分重量比率は総重量に対し20〜70%であることが好ましい。
【0020】
本発明に用いる複合繊維の繊維絡合体としては、該複合繊維を短繊維化しカード・クロスラッパーもしくはランダムウエブなどを用いてウエブを形成せしめ、その後ニードルパンチ処理あるいはウオータージェットパンチ処理などの絡合処理を施すことによって、シート化した短繊維不織布が望ましく使用される。中でも、ニードルパンチ処理した短繊維不織布が、繊維の高絡合化による繊維の高密度化(緻密な立毛面形成)の観点から好ましく採用され、その場合のパンチング本数としては、繊維をシート表面の垂直方向に緻密に配向(緻密な立毛面形成)させる上から、2500〜4000本/cm2 であることが好ましい。2500本/cm2 未満では、立毛繊維の緻密性に劣り、4000本/cm2 を越えると、加工性の観点から好ましくない。
【0021】
ウエブを形成するという点においては、メルトブロー、スパンボンドなど紡糸から直接形成する長繊維不織布でもよいように考えられるが、とりわけ研磨布においては、極細繊維相互の絡合及び立毛繊維の緻密性が、短繊維不織布よりも著しく劣り、研磨後の基板表面に大きな傷が発生するため、極細長繊維不織布は研磨布としては使用することはできない。つまり、短繊維不織布は、該布帛の垂直方向に繊維が密集して、緻密に存在するので、該短繊維不織布を用いて研磨する際に均一な研磨が達成されるが、長繊維不織布では、立毛繊維の粗な部分に遊離砥粒が凝集し、不均一な研磨となりやすいのである。
【0022】
本発明では、上記の複合繊維を溶解除去あるいは物理的、化学的作用により剥離、分割した後の極細短繊維の平均繊度は0.01〜0.2dtexであることが特に重要であり、0.05〜0.15dtexであることがより好ましい。0.01dtex未満である場合には、繊維強度及び剛性が低く、研削不足になるばかりでなく、スラリー中の遊離砥粒の保持性、分散性に劣るため、基板表面に大きな傷が発生しやすいため好ましくない。0.2dtexを越える場合には、研磨布表面での立毛繊維の緻密性に劣り、高精度の仕上げを達成できないため好ましくない。
【0023】
本発明では、研磨布を構成する極細短繊維の繊維径のCV値が10%以下であることが特に重要である。ここで、繊維径のCV値とは極細繊維の繊維径分布の標準偏差を、極細繊維の繊維径の平均値で除した値のことである。10%を越える場合には、低繊度繊維と高繊度繊維との剛性差に起因する研磨布表面における立毛繊維の分布の偏りが生じ、高精度の仕上げを達成できないため好ましくない。
【0024】
前記した特徴を有する極細短繊維を得る方法としては、横断面変動を抑制するよう口金下吸引及び冷却装置を調整し、海島型パイプ口金を用いて複合紡糸した後に、該海成分を除去する方法が好ましく使用される。チップブレンド、ポリマーブレンド等の混合紡糸を用いることも考えられるが、複合繊維横断面における島成分の繊維径の内外周差が大きく、前記繊維径のCV値を達成するのは極めて難しいばかりでなく、海島型口金を用いた複合紡糸により得られる極細短繊維に比べ、部分的に極細短繊維同士が接着した束状となる状態になりやすく、繊維の均一分散性に劣るため、立毛繊維の粗な部分で砥粒の凝集が起こり、スクラッチが発生しやすい。
【0025】
海島型口金を用いた複合紡糸では、得られる極細短繊維束内での繊維間距離バラツキが小さいために、極細短繊維不織布を形成した際の表面繊維の均一分散性に優れており、基板の表面粗さの低減、基板表面の大きな傷の抑制を達成することができる。
【0026】
本発明では、極細短繊維束内の繊維数は10〜200本/束であることが特に重要である。好ましくは30〜150本/束である。10本/束未満である場合には、研磨布立毛面にけおける緻密性に劣り好ましくない。一方、200本/束を越えると、バッフィング処理を施した際に極細繊維の分散性が低下し、立毛面の繊維分布が不均一になり、テクスチャー加工ムラにつながるとともに、該研磨布にスラリーを付与した際に極細繊維が膠着しやすいため、傷の発生につながりやすく好ましくない。
【0027】
本発明の研磨布は、ポリアミド極細短繊維不織布に高分子弾性体を付与させることによって得られる。該高分子弾性体は、表面凹凸や振動吸収のためのクッション、繊維形態保持などの役割を有し、該ポリアミド極細短繊維不織布と一体化させることにより、被研磨物へのフィット性および被研磨物へのキズの抑制効果に優れるものである。かかる高分子弾性体としては、ポリウレタン、アクリロニトリル、ブタジエンラバー、天然ゴム、ポリ塩化ビニルなどを使用することができる。中でも、ポリウレタンが本発明方法の加工プロセスにおける加工性やクッション性が良好であることから好ましい。
【0028】
研磨時のクッション性およびフィット性は、研磨精度の上で重要であり、極細短繊維と高分子弾性体の割合や空隙率(見掛け密度でわかる)によって制御し、研磨精度や研磨目的によって調節される。
【0029】
高分子弾性体の含有量は、成型上、極細短繊維重量に対し20重量%〜80重量%であることが好ましく、含有量によって研磨布の表面状態、空隙率、クッション性、硬度、強度などを調節することができる。20重量%未満である場合、クッション性に劣るため、研磨後の表面に大きな傷が発生しやすいばかりでなく、シート強度が低いため伸びやすく加工ムラが発生しやすいことから、好ましくない場合がある。また、80重量%を越えると、加工性及び生産性に劣るとともに、表面上に高分子弾性体が露出しやすく、砥粒の凝集による基板表面の大きな傷を引き起こしやすいため、好ましくない場合がある。
【0030】
かかる高分子弾性体の付与方法としては、該高分子弾性体を塗布あるいは含浸後凝固させる方法、あるいはエマルジョン、ラテックス状で塗布あるいは含浸して乾燥、固着させる方法など種々の方法が採用することができる。
【0031】
本発明において、ポリアミド極細短繊維不織布を起毛処理することが特に重要である。ここでいう起毛処理とは、少なくとも片面が起毛された状態で、スエード調に仕上げられていてもよい。起毛処理は針布やサンドペーパーを使用して行うのが一般的である。とりわけ、高分子弾性体付与後、表面をサンドペーパーを使用して、起毛処理することにより均一で緻密な立毛を形成することができる。起毛処理を行わない場合、緻密な立毛面が得られないばかりでなく、研磨布表面に高分子弾性体が露出している状態になりやすく、研磨砥粒の凝集による基板表面の大きな傷の発生につながりやすいため好ましくない。
【0032】
本発明において、該研磨布を構成するシートの密度が0.3〜0.5g/cm3 でありかつ極細短繊維密度が0.2〜0.4g/cm3 であることが特に重要である。該シートの密度が0.3g/cm3 未満あるいは極細繊維密度が0.2g/cm3 未満であると、クッション性が低下することにより、傷や加工ムラの発生につながるばかりでなく、立毛繊維の緻密性に劣るため、超高精度の仕上げが達成できず好ましくない。該シートの密度が0.5g/cm3 を越えるかあるいは極細繊維密度が0.4g/cm3 を越えると、シートが硬くなり、研磨時の基板への接触抵抗が増大することにより傷の発生につながるため好ましくない。
【0033】
本発明において、高研削力の観点から、該極細繊維のヤング率は2500N/mm2 以上であることが好ましい。2500N/mm2 未満である場合、基板に対する接触抵抗が低く、研磨効率が悪いとともに、極細繊維同士が密着し束状になりやすく、立毛繊維密度の粗密ムラにつながり、加工ムラを発生しやすい場合があり好ましくない場合があるからである。特にポリエステル極細繊維においてヤング率2500N/mm2 以上を得る方法は、特に限定されないが、例えば、上記の複合繊維を超高速製糸法で紡糸機から直接引き取る方法等も可能であるが、本発明において最も好ましくは、島成分をポリエステル、海成分をポリスチレンまたは共重合ポリスチレンとする海島型複合繊維を紡糸して未延伸糸としていったん巻き取った後に、これを延伸することによって得る方法が用いられる。このときの延伸倍率は2.5倍以上であることが好ましい。
【0034】
本発明の研磨布において、研磨布の生産性及びクッション性、テープ伸びによる加工ムラ、傷の発生をおさえるためには、該シートの目付は100〜500g/m2 であることが好ましい。さらに好ましくは150〜300g/m2 である。
【0035】
本発明の研磨布において、該シートの長手方向の引張伸度は100%以下であることが好ましい。100%を越えるとテクスチャー加工時に張力をかけると、テープの伸びにより長手方向及び幅方向に立毛繊維密度の粗密ムラを生じ、基板表面粗さ、ラインデンシティの変動を引き起こすため好ましくない。
【0036】
本発明によって得られる研磨布は、記録ディスクに用いるガラス基板へのテクスチャー加工において、ディスク基板表面に大きな傷をつけることなく、研磨効率が高くかつ安定的に高精度の仕上げ、すなわち均一かつ微細で緻密なテクスチャー加工を実現することができるものである。
【0037】
本発明におけるテクスチャー加工は、Ni−P合金等の非磁性金属のメッキ処理を施していないガラス基板に所定の条痕パターンのテクスチャーを所望の加工精度で付与する加工である。加工精度は、本発明による研磨布を使用するほかに、遊離砥粒を含むスラリーの砥粒径、砥粒濃度、粘度などの条件、基板回転数、研磨布の送り速度、オシレーション振動数、研磨布押しつけ圧力などの加工条件を適宜調整することにより向上することができる。
【0038】
その中でも、特に研磨砥粒径条件が重要であり、0.3μm以下にすることが好ましい。
【0039】
上述したテクスチャー加工を施した後、金属磁性層、保護層等の処理を施すことにより、大容量ハードディスクドライブに搭載される磁気記録ディスクを得ることができる。
【0040】
【実施例】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。
(1)繊維径のCV値:
該研磨布を厚み方向にカットした断面を観察面として走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、任意の300カ所の極細繊維の繊維径を測定し、これを母集団とした標準偏差値及び平均値から算出した。
(2)テクスチャー加工試験:
該研磨布を、テクスチャー加工機に装着し、スラリー(平均粒径0.2μのダイヤモンド結晶と水系分散媒とからなる、0.20重量%)を用いて、ガラス基板を20秒間研磨した。
(3)基板表面粗さの評価:
研磨後のガラス基板の表面粗さは、原子間力顕微鏡(AFM)にて、基板表面粗さRa(オングストローム)を測定し、下記の基準に準拠して評価した。
【0041】
○:8オングストローム未満で良好。
【0042】
×:8オングストローム以上で不良。
(4)ラインデンシティの評価:
研磨後のガラス基板の表面粗さは、原子間力顕微鏡(AFM)にて、ラインデンシティ(本/μm)を測定し、下記基準に準拠して評価した。
【0043】
○:8本/μm以上で良好。
【0044】
×:8本/μm未満で不良。
実施例1
島成分としてポリエチレンテレフタレートと、海成分としてポリスチレンを用いて、成分比55/45で海島型パイプ口金を用いて複合紡糸し未延伸糸を得た。該未延伸糸を延伸倍率3.5倍で延伸し、捲縮を付与してカットし、島数36、複合繊度3.1dtex、島成分繊度0.05dtex、島成分ヤング率3000N/mm2 、繊維長51mmの海島型複合繊維の原綿を形成する。
【0045】
この海島型複合繊維の原綿を用いて、カード、クロスラッパー工程を経て積層ウエブを形成し、次いでプレパンチで、100本/cm2 のニードルパンチを行って不織布にした。
【0046】
次に、この不織布シートの上下から、3000本/cm2 の針本数でニードルパンチし、目付700g/m2 の不織布を形成した。この不織布シートを極細繊維化し、次いでポリウレタンを極細短繊維重量に対し25重量%含浸させ、水中で該ポリウレタンを凝固した後、このシートをバフ機にかけて立毛を形成させ、厚さ0.65mm、目付220g/m2 、密度0.36g/cm3 、極細短繊維密度0.27g/cm3 の本発明の研磨布を得た。尚、研磨布中の極細繊維の繊維径のCV値は8%であり、研磨布長手方向の引張伸度は80%であった。
【0047】
この研磨布を用いて、ガラス基板のテクスチャー加工を行ったところ、基板表面の大きな傷の発生がなく、基板表面粗さRaは7.7オングストロームと○評価であり、ラインデンシティは9.8本/μmと○評価であった。
比較例1
島成分としてナイロン6と、海成分として共重合ポリスチレンを用いて、島/海成分比40/60で海島型パイプ口金を用いて複合紡糸し未延伸糸を得た。該未延伸糸を延伸倍率3.0倍で延伸し、捲縮を付与してカットし、島数100、複合繊度4.7dtex、島成分繊度0.02dtex、島成分ヤング率2000N/mm2 、繊維長51mmの海島型複合繊維の原綿を形成する。
【0048】
この海島型複合繊維の原綿を用いて、カード、クロスラッパー工程を経て積層ウエブを形成し、次いで、プレパンチで100本/cm2 のニードルパンチを行って不織布にした。
【0049】
次に、この不織布シートの上下から、3000本/cm2 の針本数でニードルパンチし、目付700g/m2 の不織布を形成した。この不織布シートを極細繊維化し、次いでポリウレタンを極細短繊維重量に対し35重量%含浸させ、水中で該ポリウレタンを凝固した後、このシートをバフ機にかけて立毛を形成させ、厚さ0.55mm、目付180g/m2 、密度0.34g/cm3 、極細短繊維密度0.24g/cm3 の研磨布を得た。なお、研磨布中の極細繊維の繊維径のCV値は9%であり、研磨布長手方向の引張伸度は85%であった。
【0050】
この研磨布を用いて、ガラス基板のテクスチャー加工を行ったところ、基板表面の大きな傷の発生はないが、研削量が低いためにテクスチャー加工ムラが発生し、基板表面粗さRa、ラインデンシティは測定不可能であった。
比較例2
バッフィング処理を行わないこと以外は、実施例1と同様の製法で作製し、厚さ0.8mm、目付250g/m2 、極細短繊維密度0.25g/cm3 の研磨布を得た。
【0051】
なお、研磨布中の極細繊維の繊維径のCV値は8%であり、研磨布長手方向の引張伸度は90%であった。
【0052】
この研磨布を用いて、ガラス基板のテクスチャー加工を行ったところ、基板表面の大きな傷が発生し、加工性不良であり、基板表面粗さ、ラインデンシティは測定が不可能であった。
比較例3
不織布を作製する際のニードルパンチ本数を500本/cm2 とすること以外は、実施例1と同様の製法で作成し、厚さ0.65mm、目付150g/m2 、密度0.24g/cm3 、極細短繊維密度0.18g/cm3 の研磨布を得た。なお、研磨布中の極細繊維の繊維径のCV値は8%であり、研磨布長手方向の引張伸度は60%であった。
【0053】
この研磨布を用いて、被研磨物であるガラス基板のテクスチャー加工を行ったところ、基板表面の大きな傷が発生し、加工性不良であった。
比較例4
島成分としてポリエチレンテレフタレートと、海成分としてポリスチレンを用いて、島/海成分比57/43で海島型パイプ口金を用いて複合紡糸し未延伸糸を得た。該未延伸糸を延伸倍率2.5倍で延伸し、捲縮を付与してカットし、島数16、複合繊度4.2dtex、島成分繊度0.15dtex、島成分ヤング率2700N/mm2 、繊維長51mmの海島型複合繊維の原綿を形成する。
【0054】
この海島型複合繊維の原綿を用いて、カード、クロスラッパー工程を経て積層ウエブを形成し、次いでプレパンチで、100本/cm2 のニードルパンチを行って不織布にした。
【0055】
次に、この不織布シートの上下から、3000本/cm2 の針本数でニードルパンチし、目付530g/m2 の不織布を形成した。この不織布シートを極細繊維化し、次いでポリウレタンを極細短繊維重量に対し45重量%含浸させ、水中で該ポリウレタンを凝固した後、このシートをバフ機にかけて立毛を形成させ、厚さ0.8mm、目付230g/m2 、密度0.28g/cm3 、極細短繊維密度0.2g/cm3 の本発明の研磨布を得た。なお、研磨布中の極細繊維の繊維径のCV値は7%であり、研磨布長手方向の引張伸度は70%であった。
【0056】
この研磨布を用いて、ガラス基板のテクスチャー加工を行ったところ、基板表面の大きな傷の発生はないが、加工後のバリ発生数が多く加工ムラ大であった。基板表面粗さRaは7.7オングストロームと○評価であったが、ラインデンシティは7.4本/μmと×評価であった。
比較例5
島成分としてポリエチレンテレフタレート、海成分として共重合ポリスチレンを用いて成分比40/60で混合紡糸し未延伸糸を得た。該未延伸糸を延伸倍率2.5倍で延伸し、捲縮を付与してカットし、島数約400、複合繊度5.0dtex、島成分繊度0.005dtex、島成分ヤング率2500N/mm2 、繊維長51mmの複合繊維の原綿を形成する。
【0057】
該複合繊維の原綿を用いて、カード、クロスラッパー工程を経て積層ウエブを形成し、次いでプレパンチで100本/cm2 のニードルパンチを行って不織布にした。
【0058】
次に、不織布シートの上下から3000本/cm2 の針本数でニードルパンチし、目付570g/m2 の不織布を形成した。この不織布シートを極細繊維化し、次いでポリウレタンを極細短繊維重量に対し30重量%含浸させ、水中で該ポリウレタンを凝固した後、このシートをバフ機にかけて立毛を形成させ、厚さ0.6mm、目付200g/m2 、密度0.36g/cm3 、極細短繊維密度0.28g/cm3 の研磨布を得た。
【0059】
該研磨布中の極細繊維の繊維径のCV値は42%であり、研磨布長手方向の引張伸度は90%であった。
【0060】
この研磨布を用いて、被研磨物であるガラス基板のテクスチャー加工を行ったところ、基板表面の大きな傷が発生し、加工性不良であった。
【0061】
【発明の効果】
本発明の研磨布は、表面に存在する極細繊維の緻密性、均一性及び剛性に優れているため、(1)研磨後のうねりを低くし基板表面粗さを極めて小さくする、(2)テクスチャー条痕の線密度に相当するラインデンシティを向上させる、(3)研磨後の表面に大きな傷(スクラッチ)をつけず且つ高効率研削可能であるという記録ディスクの生産性と高記録容量化の両立を達成しうるものである。
Claims (12)
- 平均繊度0.01〜0.2dtexのポリエステル極細短繊維束が3次元絡合した不織布と高分子弾性体とが一体構造となっており、少なくとも片面が立毛されたシートからなり、該極細繊維束中の繊維数が10〜200本/束であり、該シート中の繊維径のCV値が10%以下であり、該シートの密度が0.3〜0.5g/cm3 であり、かつ該シート中の極細短繊維密度が0.2〜0.4g/cm3 であることを特徴とするガラステクスチャー加工用研磨布。
- 該ポリエステル極細短繊維の平均繊度が0.05〜0.15dtexであることを特徴とする請求項1記載のガラステクスチャー加工用研磨布。
- 該ポリエステル極細短繊維束中の極細繊維数が30〜150本/束であることを特徴とする請求項1または2記載のガラステクスチャー加工用研磨布。
- 該高分子弾性体が極細短繊維重量に対し20重量%以上80重量%以下で付与されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガラステクスチャー加工用研磨布。
- 該高分子弾性体がポリウレタンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガラステクスチャー加工用研磨布。
- 該極細短繊維成分がポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガラステクスチャー加工用研磨布。
- 該極細短繊維のヤング率が2500N/mm2 以上のものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のガラステクスチャー加工用研磨布。
- 該シートの長手方向の引張伸度が100%以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のガラステクスチャー加工用研磨布。
- 該シートの目付が100〜500g/m2 であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のガラステクスチャー加工用研磨布。
- 該シートの目付が150〜300g/m2 であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のガラステクスチャー加工用研磨布。
- 平均繊度0.01〜0.2dtexのポリエステル極細短繊維束が3次元絡合した不織布と高分子弾性体とが一体構造となっており、少なくとも片面が立毛されているシートからなり、かつ、該極細繊維束中の繊維数が10〜200本/束、該シート中の繊維径CV値が10%以下、該シートの密度が0.3〜0.5g/cm3 、かつ該シート中の極細短繊維密度が0.2〜0.4g/cm3 である研磨布に、砥粒径0.3μm以下の遊離砥粒を付与し、該遊離砥粒の付与された研磨布を用いてガラス基板にテクスチャー加工を施すことを特徴とする磁気記録用ディスクの製造方法。
- 平均繊度0.05〜0.15dtexのポリエステル極細短繊維束が3次元絡合した不織布と高分子弾性体とが一体構造となっており、少なくとも片面が立毛されたシートからなり、かつ該極細繊維束中の繊維数が10〜200本/束、該シート中の繊維径CV値が10%以下、該シートの密度が0.3〜0.5g/cm3 、かつ該シート中の極細短繊維密度が0.2〜0.4g/cm3 である研磨布に、砥粒径0.3μm以下の遊離砥粒を付与し、該遊離砥粒の付与された研磨布を用いてガラス基板にテクスチャー加工を施すことを特徴とする磁気記録用ディスクの製造方法。
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