JP2004123415A - 多孔質セラミック材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の多孔質セラミック材製造方法では、ケイ素を主体とする非酸化物セラミックの前駆体ポリマーが表面部の少なくとも一部に付与されている多孔質セラミック支持体(120)を用意し、その支持体に熱分解前処理を施し、その後、前記前駆体ポリマーを熱分解して前記支持体の表面部にミクロ細孔に富む多孔質非酸化物セラミック層を生成する。熱分解前処理では、前記支持体を略40℃以上であって前駆体ポリマーが実質的に熱分解しない温度で1時間以上保持する。或いは、加圧可能な容器(101)内に前記支持体を配置し、該容器内を0.12MPa以上に加圧するとともに前記前駆体ポリマーが実質的に熱分解しない温度で該支持体を保持する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】本発明は、ガス透過可能なサイズのミクロ細孔に富む多孔質セラミック材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ミクロ細孔に富む多孔質セラミック材は、特定化学物質の分離、回収、精製のような種々の化学処理プロセスにおいて使用されている。米国特許第5563212号、同第5643987号、同第5696217号、同第5872070号、同第5902759号には、粒状多孔質セラミック材およびその製造方法が開示されている。
【0003】
かかるミクロ細孔に富むセラミック材のなかでも特に膜タイプのものは、所定の反応系から特定のガス種を選択的に分離したり回収したりする用途に利用される。例えば、メタン、メタノール等の原料ガスを改質することによって水素を生成する改質器(リフォーマー)に備えられる水素分離膜として、改質ガスから水素を選択的に透過し得る(即ち、水素を透過させ易く窒素のような他のガス種は相対的に透過させ難いことをいう。以下同じ。)サイズのミクロ細孔を有するセラミック膜が用いられる。この種のガス分離膜として、特開2001−247385号公報には、所謂クヌッセン的分離が可能な寸法(細孔径:10nm未満)のミクロ細孔を有するセラミック膜が記載されている。
【0004】
上記改質器に備えられる水素分離膜のように、混合ガス中から特定のガス種(水素等)を選択的に分離する目的に使用するセラミック膜には、所望するサイズのミクロ細孔が豊富に存在する一方で、当該サイズのミクロ細孔よりも大きいサイズの孔や隙、すなわち目的とするガスの選択的分離を阻害する虞のあるメソ細孔や欠陥(ピンホール等)は実質的に存在しないか或いはその存在割合(容積)が実用上無視し得る程度に低いことが望ましい。
【0005】
従来、ミクロ細孔に富むセラミック材は、ポリカルボシラン、ポリシラン、ポリカルボシロキサン、ポリシラザン等の前駆体ポリマー(polymeric precursors)を例えば800℃又はそれ以上の高温で熱分解することによって製造されている(上記各公報が参考になる。)。これら前駆体物質から形成された非酸化物セラミック製の多孔質材は、耐熱性が高く、高温条件で使用される改質器等のガス分離材として好適に用いられる。
【0006】
ところで、これらケイ素を主体とする非酸化物セラミックの前駆体ポリマーを上述のような高温条件下で熱分解すると、水素、メタン等の炭化水素分子、低分子量の前駆体フラグメントその他のガス状分解物が生成し易い。これらのガスは、生成後すぐに大気中に放出されればよいが、熱分解過程中のセラミック前駆体マトリックスに残存する場合がある。さらに、マトリックスに残留したガスは、相互に合体して比較的大きな気泡を生じる場合がある。かかる気泡の残留は、ミクロ細孔に富むセラミック材を製造するうえで好ましくない。すなわち、かかる気泡がセラミック前駆体のマトリックスに存在すると、その存在部分において当該マトリックスが架橋・硬化していく過程で生じるはずのミクロ細孔の形成を阻み、代わりに当該気泡がコアとなってその部分にメソ細孔やピンホールの形成を促すからである。
従って、ガス分離等の用途に好適な多孔質セラミック材(即ち、ミクロ細孔に富みメソ細孔が実質的に存在しない多孔質セラミック材)を製造するため、セラミック前駆体が熱分解される過程においてかかる気泡が生じ難い製造方法の開発が望まれている。
【0007】
【特許文献1】米国特許第5563212号明細書
【特許文献2】米国特許第5643987号明細書
【特許文献3】米国特許第5696217号明細書
【特許文献4】米国特許第5872070号明細書
【特許文献5】米国特許第5902759号明細書
【特許文献6】特開2001−247385号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明はかかる要望に応えるべく創出されたものであり、その目的とするところは、セラミック前駆体が熱分解される過程においてメソ細孔形成の原因となり得る気泡の発生を抑止し得る多孔質セラミック材製造方法を提供することである。また、本発明の他の一つの目的は、所望するガスの選択的分離を効率的に行い得るサイズのミクロ細孔に富む一方でメソ細孔が実質的に存在しない(目的とするガス選択的分離を行うにあたり、殆ど無視し得る程度にしか存在しない場合を包含する。以下同じ。)多孔質セラミック材を提供することである。
また、本発明の他の一つの目的は、かかる製造技術により製造された多孔質セラミック材から構成されるガス分離材を提供することである。
また、本発明の他の一つの目的は、400℃以上の高温条件下においても水素の選択的透過性に優れる分離膜が形成されたガス分離材(水素分離材)及びそれを備えた装置(改質器等)を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】本発明によって提供される第1の製造方法は、(a)ケイ素を主体とする非酸化物セラミックの前駆体ポリマーが表面部の少なくとも一部に付与されている多孔質セラミック支持体を用意する工程と、(b)その支持体を略40℃以上であって前記前駆体ポリマーが実質的に熱分解しない温度(典型的には略40℃以上180℃未満の温度)で少なくとも1時間保持する工程と、(c)前記前駆体ポリマーを熱分解して、前記支持体の表面部にミクロ細孔に富む多孔質非酸化物セラミック層(以下「表面セラミック層」ともいう。)を生成する工程とを包含する。
本明細書において「ミクロ細孔」とは、孔径が概ね10nm以下のガス透過可能なサイズの孔をいう。また、「メソ細孔」とは、孔径がミクロ細孔よりも大きく50nm程度までの細孔をいう。それ以上の孔径の細孔を「マクロ細孔」という場合もあるが厳密な境界ではなく、本発明を説明するうえでメソ細孔とマクロ細孔を明確に区分することに意味はない。
また、本明細書において「非酸化物セラミックの前駆体ポリマー」とは、熱分解によって、基本骨格中に酸素を実質的に含まないセラミックが形成される種々のケイ素含有ポリマー及びオリゴマーをいう。
【0010】
本発明者は、熱分解の前にセラミック前駆体ポリマーを略40℃以上(即ち室温よりもやや高い温度をいい、40℃を少し下回る温度を厳密に排除するものではない。以下同じ。)であり前駆体ポリマーが実質的に熱分解しない温度(典型的には180℃未満の温度、例えば40℃以上100℃以下)で比較的長時間保持しておくことによって、その後の熱分解時に上記気泡の形成を抑止し得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の第1の製造方法では、熱分解の前処理として、上記多孔質セラミック支持体を少なくとも1時間(好ましくは10時間以上)、上記温度で保持する。このことにより、該支持体の表面部に存在する前駆体ポリマーの性状を変化(典型的には、凝集、重合及び/又は架橋の導入による硬化)させることができる。かかる熱分解前処理を行うことによって、熱分解時に上記気泡の形成頻度を著しく低減させることができる。従って、本発明の製造方法によると、メソ細孔が実質的に存在しない表面セラミック層を有する多孔質セラミック材を製造することができる。
【0011】
また、本発明によって提供される第2の製造方法は、(a)ケイ素を主体とする非酸化物セラミックの前駆体ポリマーが表面部の少なくとも一部に付与されている多孔質セラミック支持体を用意する工程と、(b)加圧可能な容器内に前記支持体を配置し、該容器内を0.12MPa以上に加圧するとともに、略40℃以上であって前記前駆体ポリマーが実質的に熱分解しない温度で該支持体を保持する工程と、(c)前記前駆体ポリマーを熱分解して、前記支持体の表面部にミクロ細孔に富む多孔質非酸化物セラミック層を生成する工程とを包含する。
【0012】
本発明者は、熱分解の前に、セラミック前駆体ポリマーを室温よりも高い温度(典型的には40℃以上)であって実質的に熱分解しない温度に加圧した状態で保持することによって、その後の熱分解時に上記気泡の形成を抑止し得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の第2の製造方法では、熱分解前処理として、上記多孔質セラミック支持体を加圧条件下(典型的には0.12MPa以上)で上記温度に保持する。このことにより、該支持体の表面部に存在する前駆体ポリマーの性状を変化(典型的には、凝集、重合及び/又は架橋の導入による硬化)させることができる。かかる熱分解前処理を行うことによって、熱分解時に上記気泡の形成頻度を著しく低減させることができる。従って、本発明の第2の製造方法によると、メソ細孔が実質的に存在しない表面セラミック層を有する多孔質セラミック材を製造することができる。
【0013】
本発明の第1又は第2の製造方法として好ましい一つの方法は、前記熱分解によって生成した多孔質非酸化物セラミック層の表面部の少なくとも一部に前記前駆体ポリマーを付与し、その後、前記(b)工程及び(c)工程を再度行うことを特徴とする。
このように、熱分解前処理及び熱分解処理を2回或いは3回以上繰り返すことにより、支持体上にミクロ細孔に富みメソ細孔が実質的に存在しない多孔質非酸化物セラミック層を積層することができる。かかる製造方法によると、ガス分離特性(例えば水素分離特性)に特に優れる多孔質セラミック材を製造することができる。
【0014】
また、本発明の第1又は第2の製造方法として好ましい他の一つの方法は、前記前駆体ポリマーがポリシラザン又はポリシラザンを基本骨格として構成されたケイ素化合物であることを特徴とする。
このような組成の前駆体ポリマーは、Si−N結合主体の繰返し構造(即ちシラザン骨格)を有している。このため、該ポリマーを用いることにより、高温条件下及び/又は水蒸気雰囲気でも構造安定性に優れたミクロ細孔に富むSi及びN主体のセラミック材を形成することができる。
【0015】
また、本発明の第1又は第2の製造方法として好ましい他の一つの方法は、前記(b)工程及び(c)工程が不活性ガス雰囲気又はアンモニアガス雰囲気中で行われることを特徴とする。
このような雰囲気中で、熱分解前処理およびその後の熱分解処理を行うと、メソ細孔の発生抑止効果が高い。
【0016】
また、本発明の第1又は第2の製造方法として好ましい他の一つの方法は、前記(c)工程において、500〜1000℃の範囲内に最高熱分解温度が設定され、且つ、200〜500℃の間に中間保持温度が設定され、加熱開始温度から中間保持温度まで50℃/分以下の昇温速度で加熱され、その中間保持温度で少なくとも1時間保持され、その後に最高熱分解温度まで25℃/分以下の昇温速度で加熱されることを特徴とする。
このような加熱プロセスを採用すると、前駆体ポリマーの焼分解過程における上記気泡の発生率を低下させることができる。
【0017】
また、本発明の第1又は第2の製造方法として特に好ましい一つの方法は、前記加熱プロセスに加えて、前記(c)工程で多孔質非酸化物セラミック層が生成された支持体を前記最高熱分解温度から5℃/分以下の冷却速度で100℃以下まで冷却することを特徴とする冷却プロセスを採用した方法である。
このような加熱プロセス及び冷却プロセスを採用すると、メソ細孔及びそれよりも大きい気孔や欠陥の生成を抑止し、ミクロ細孔に富む表面積の広い多孔質セラミック材を製造することができる。
【0018】
また、本発明によって、上述の熱分解前処理を含む製造方法によって製造された多孔質セラミック材が提供される。この多孔質セラミック材はガス分離材として好適に用いることができる。
例えば、本発明によって提供される多孔質セラミック材(ガス分離材)の好ましいものは、多孔質セラミック支持体と該表面部に形成されたケイ素を主体とする多孔質の非酸化物セラミック膜(層)とを有し、600℃における水素/窒素分離係数が少なくとも100であり、その温度での水素透過率が少なくとも1×10−7モル/m2・s・Paである。さらに好ましくは、上記温度よりも低い温度、例えば150℃における水素/窒素分離係数が少なくとも100であり、その温度での水素透過率が少なくとも1×10−7モル/m2・s・Paであることを特徴とする。このようなガス分離特性を有する多孔質セラミック材は、改質器等のガス分離材として特に好適である。
【0019】
本発明によって提供される多孔質セラミック材は、典型的には、セラミック膜の細孔径分布のピーク値及び/又は平均孔径は1nm以下である。好ましくは、上記非酸化物セラミック膜の表面に分布する細孔(開気孔をいう。以下同じ。)の半数以上(特に好ましくは90%以上)が孔径0.5nm以下のミクロ細孔である。
また、前記多孔質セラミック支持体が窒化ケイ素又はアルミナを主体に構成された多孔質セラミック材(ガス分離材)が特に好ましい。
このような構造の多孔質セラミック材は、高温条件下(最高焼成温度付近)でのガス分離処理や高性能濾過処理(分子篩い等)あるいは触媒担体として好適に用いることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している内容以外の技術的事項であって本発明の実施に必要な事項は、従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書及び図面によって開示されている技術内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0021】
先ず、本発明の実施にあたって使用する多孔質セラミック支持体について説明する。多孔質セラミック支持体は、最終製品である多孔質セラミック材の支持体に相当する材料であり、その材質の好適例としては、α−アルミナ、γ−アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、シリカ、ジルコニア、チタニア、カルシア、各種ゼオライト等が挙げられる。あるいは、これらセラミックに種々の金属成分(Pd、Ni、Ti、Al、W、Nb、Ta、Co、Ru等)やそれらの合金若しくは金属酸化物成分を適宜含有したものであってもよい。
このうち、機械的強度の保持、低熱膨張係数等の観点から、アルミナ、窒化ケイ素および炭化ケイ素が好ましい。支持体と膜とが共にSi及びNを主体に構成されるという構造上の共通性から窒化ケイ素が特に好ましい。
【0022】
使用する多孔質セラミック支持体の形状は特に限定されず、用途に応じて管形状、膜(薄板)形状、モノリス形状、ハニカム形状、多角形平板形状その他の立体形状であり得る。例えば、管形状の支持体は、ガス分離モジュール(特に水素分離モジュール)として改質器等のリアクターに適用し易く好適である。なお、所望する形状の支持体は、従来行われている周知の成形技法(押出し成形、鋳込み成形、テープ成形、CIP成形等)やセラミック焼成技法を実施することによって製造することができる。かかる成形技法自体は何ら本発明を特徴付けるものではなく、詳細な説明は省略する。
【0023】
また、多孔質セラミック支持体が有する細孔の孔径は特に限定されないが、製造した多孔質セラミック材を水素等のガス分離用途に用いる場合、その支持体の表面部に形成されるセラミック層(典型的には膜)の平均孔径よりも大きな平均孔径を有するものが適当である。例えば0.01μm〜10μm程度、特に0.01μm〜1μm程度の細孔径分布のピーク値及び/又は平均孔径を有するものが好ましい。また、機械的強度とガス透過性能とを高い次元で両立させるという観点から、支持体の孔隙率は30〜60%が適当であり、好ましくは35〜50%である。
また、多孔質セラミック支持体(支持層)の厚みは、所定の機械的強度を保持しつつ表面部のセラミック層を支持し得る限り、限定されない。例えば、セラミック層(膜)の厚みが0.1〜5μmである場合には、100μm〜10mm程度の厚みが好適である。なお、多孔質セラミック体の機械的強度は形状によって変化するし、当該機械的強度に対する要求も用途に応じて異なるため特に限定するものではないが、600〜800℃における3点曲げ強度(JIS R1601に準じる)が30MPa以上(より好ましくは60MPa以上、さらに好ましくは90MPa以上)である機械的強度を具備するように、支持体の平均孔径や孔隙率を設定するのが好ましい。
【0024】
使用する多孔質セラミック支持体としては、その全体が所定の材質(例えばアルミナ)から形成されたもの(典型的には対称構造体)であってもよいし、かかる構造体(本体)の表面に中間セラミック層が形成された二層構造(典型的には非対称構造体)のもの又はそのような中間セラミック層が二層以上形成された多層構造のものであってもよい。特に支持体本体の平均孔径が比較的大きな場合(例えば1μm以上)には、それよりも平均孔径の小さい中間セラミック層を形成することが、ガス分離等に適する平均孔径の小さい表面セラミック層を形成するうえで好ましい。
中間セラミック層は、支持体本体と同じ組成のもの、或いは、前駆体ポリマーの熱分解産物たる多孔質非酸化物セラミックと同じ組成のものが好ましい。
【0025】
製造する多孔質セラミック材をガス分離用途に用いる場合、かかる中間セラミック層の細孔径分布のピーク値及び/又は平均孔径は0.01〜1μm程度(典型的には0.05〜0.5μm)が好ましい。また、気孔率は20〜60%程度が適当であり、好ましくは30〜40%程度である。また、中間セラミック層の厚みは特に制限はないが、製造した多孔質セラミック材をガス分離材として使用する場合には、0.5〜200μm程度(典型的には10〜100μm)の厚みが好ましい。
このような中間セラミック層が予め形成された二層又は多層構造の多孔質セラミック基材を採用し、その表面に多孔質非酸化物セラミック層(表面セラミック層)を形成・積層することによって、多孔質セラミック材の細孔径を支持体中心から表面部にかけて傾斜的に小さくしていくことができる。かかる中間セラミック層は、従来と同様のプロセス(典型的には、セラミック材またはその前駆体材料を支持体に塗布し焼成する。)によって形成することができる。
【0026】
表面セラミック層及び必要に応じて中間セラミック層を形成するのに使用するケイ素を主体とする非酸化物セラミックの前駆体ポリマーとしては、基本骨格(又は主鎖)がSiを主体に構成された有機又は無機化合物であって、高温(例えば400〜800℃)で熱分解されることにより、Si−N結合、Si−C結合、Si−Si結合、Si−C−N結合、Si−N−B結合のようなSiを主体とする結合によってその基本骨格(主鎖)が構成される非酸化物セラミックを生成し得る化合物(ケイ素系セラミック前駆体)が好ましい。
【0027】
特に好ましくは、熱分解によって生成するセラミック中に存在するSi原子数に対するSi−N結合を形成しているSi原子数の割合が10%以上であり、好ましくは20%以上となるように、使用する前駆体の種類や存在比を調節する。かかるSi−N結合の形成割合が10%よりも低すぎると、耐熱性又は高温条件下における化学的安定性が低下するため、好ましくない。特に高温且つ水蒸気雰囲気下での使用に適さなくなる虞がある。なお、使用する前駆体は1種のみでもよく、或いは2種類以上の前駆体を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0028】
好適なケイ素系セラミック前駆体の具体例として、種々のポリシラザン、ポリカルボシラザン、ポリカルボシラン、ポリシラン、ポリ有機シロキサン、ポリシラスチレン等が挙げられる。
特に好ましい前駆体の一例は、一般式:
[R1 2SiNH]x[R2SiHNH]y[R3SiN]z
で示されるポリシラザンである。ここで式中のx、y及びzはx=y+z=0.5を満たす実数である。また、R1、R2及びR3はそれぞれが独立して炭素数1〜3の低級アルキルである。好ましくは、R1、R2及びR3がいずれもメチルである。
【0029】
なお、特に限定するものではないが、表面セラミック層を形成するのに好適なポリシラザンは、一例を挙げれば以下のように調製することができる。すなわち、ジハロシラン(R1SiHX2)或いは当該ジハロシランと他のジハロシラン(R2R3SiX2)との混合物をアンモニアと反応させることによってシラザンオリゴマーを得る。次いで、塩基性触媒の存在下で当該シラザンオリゴマーの脱水素反応を起こさせる。これにより、ケイ素原子に隣接する窒素原子の脱水素が行われ、結果、シラザンオリゴマーが相互に脱水素架橋して成るポリシラザンを生成することができる。なお、この生成プロセスに使用されるジハロシランの好ましいものは、上記R1、R2、R3が、それぞれ、水素、炭素数が1〜6の低級アルキル基、置換アリル基、非置換アリル基、炭素数が6〜10の非置換アリール基、トリアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基のいずれかである。或いは、R1は水素であり、R2およびR3が上記列挙した官能基のいずれかである。このときR1、R2およびR3は全て同じ基でもよく、相互に異なる基でもよい。なお、上記ジハロシランの式中のXはハロゲン基である。
また、市販されているポリシラザン(例えばチッソ(株)から購入できる)を好適に使用することができる。ポリシラザンの熱分解によって、Si−N結合主体の繰返し構造を基本骨格とする耐熱性の高い表面セラミック層を容易に形成することができる。
【0030】
なお、使用するポリシラザン等の前駆体ポリマーの分子量に特に制限はないが、粘性制御等の観点から、質量平均分子量で200〜100,000程度のものが好ましい。質量平均分子量が略1,000〜20,000の前駆体が特に好ましい。
【0031】
上述した多孔質セラミック支持体の表面部(多孔質セラミック体の外面及び表層部にある孔内面を包含する。)にポリシラザン等の前駆体を付与する方法としては、従来の薄膜形成プロセスにおいて用いられる各種の方法を採用することができる。例えば、ディップコーティング法、スピンコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法が挙げられる。
特にディップコーティング法は、前駆体ポリマーを含む溶液(焼成用材料)の多孔質セラミック支持体内部への浸透を抑制でき、キャピラリー圧力、焼成収縮等によるミクロ細孔構造の破壊を抑制するのに寄与し得る。このため、特にディップコーティング法は、実質的に欠陥の無いセラミック層(膜構造)を支持体表面部に直接的に形成するのに好適な手法である。
具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、或いはジオキサン、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル等のエーテル系溶媒にポリシラザンを分散したコーティング液中にアルミナ、窒化ケイ素等の多孔質支持体をディップ(浸漬)する。ディップ時間は、数秒〜1分程度でよい。5〜30秒程度が好ましい。このことによって前駆体ポリマーを支持体の表面部に均等に付与することができる。
なお、コーティング液の前駆体濃度は特に限定されないが、例えばポリシラザン等から成る被膜を形成する場合には、溶液中のポリシラザン濃度は0.1〜40質量%程度が適当であり、1〜25質量%程度が好ましい。
【0032】
次に、本発明の実施に際して行われる熱分解前処理について説明する。
好適な熱分解前処理の一つの形態は、上記ディップコーティング法等によって表面部に前駆体ポリマーが付与された支持体を少なくとも1時間、好ましくは10時間以上、略40℃以上であって前駆体ポリマーが実質的に熱分解しない温度(典型的には180℃未満)の温度に保持することである。かかる保持の間、温度変動幅は小さいことが好ましく(例えば設定温度±10℃、より好ましくは設定温度±5℃)、実質的に一定の温度で一定の時間保持することが特に好ましい。
例えば、ポリシラザン等の前駆体ポリマーが表面部に付与されたアルミナ、窒化ケイ素等の多孔質支持体を被処理材料とする場合、70〜90℃程度の温度で少なくとも1時間、好ましくは10時間以上、例えば24〜96時間、さらに好ましくは48〜72時間程度保持する。かかる熱分解前処理は、大気圧条件又はそれよりも若干加圧した条件(例えば0.1〜0.2MPa)、或いは減圧条件下で行うことができる。
特に限定しないが、この処理は、酸化反応性に乏しい雰囲気中、例えば窒素、希ガス等の不活性ガス雰囲気、或いは、アンモニア、水素等の酸素を含まない反応性ガス雰囲気中で実施するのが好ましい。例えば、所望する温度(70〜90℃)に加熱したオーブン(炉)内に被処理材料を配置し、不活性ガス又はアンモニア等の反応性ガスを適当な流量(例えば50〜200ml/分、好ましくは100〜150ml/分)でオーブン中に供給しつつ、10時間以上(例えば48〜72時間)その温度で保持する。
【0033】
また、好適な熱分解前処理の他の一つは、上記ディップコーティング法等によって表面部に前駆体ポリマーが付与された支持体を加圧可能な容器内に配置し、該容器内を加圧するとともに略40℃以上であって前記前駆体ポリマーが実質的に熱分解しない温度に該支持体を保持することである。ここで使用する容器は加圧及び加熱が可能なものであれば特に制限はなく、オーブン、オートクレーブ等を好適に用いることができる。
加圧の程度は前駆体ポリマーを熱分解する際に気泡の発生を抑止し得る目的に適うレベルであれば特に制限はない。典型的には、容器内を0.12MPa(即ち大気圧+約0.02MPa)程度に加圧するとよい。例えば、ポリシラザン等の前駆体ポリマーが表面部に付与されたアルミナ、窒化ケイ素等の多孔質支持体を被処理材料とする場合、容器内を0.12〜0.3MPa、好ましくは0.15〜0.2MPa程度に加圧する。
かかる加圧条件下、容器内を加熱し、略40℃以上であって実質的に熱分解しない温度で前駆体ポリマーを保持する。保持時間は、前駆体ポリマーの組成に応じて異なり得るものであり、特に限定されない。例えば、ポリシラザン等の前駆体ポリマーが表面部に付与された被処理材料の場合、容器内温度を典型的には100〜200℃に加熱し、10分〜2時間程度保持するとよい。
なお、かかる保持の間、温度変動幅は小さいことが好ましく(例えば設定温度±10℃、より好ましくは設定温度±5℃)、実質的に一定の温度で一定の時間保持することが好ましい。
【0034】
特に限定しないが、この形態の熱分解前処理を行う際にも、酸化反応性に乏しい雰囲気中、例えば不活性ガス雰囲気、或いは、アンモニア、水素等の酸素を含まない反応性ガス雰囲気中で実施するのが好ましい。例えば、所望する温度(例えば50〜300℃)に加熱した容器内に被処理材料を配置し、容器内が適当な加圧状態(例えば0.12〜0.2MPa)に保たれるように、不活性ガス又はアンモニア等の反応性ガスを適当な流量(例えば0.1〜100ml/分、好ましくは1〜10ml/分)で容器中に供給しつつ、好ましくは30分以上(例えば1〜10時間)その温度で保持する。
このような熱分解前処理を行うことによって、支持体の表面部に付与された前駆体ポリマーの性状を変化(典型的には、凝集、重合及び/又は架橋の導入による硬化、特に好ましくは架橋の導入)させることができる。かかるポリマーの性状変化によって、後述する熱分解処理時において、メソ細孔生成の原因となり得る気泡の形成頻度を著しく低減させることができる。
なお、熱分解前処理時の加熱手段は、特に限定されない。熱風を炉(容器)内に送り込む方式でもよいし、燃焼による熱、電流によるジュール熱、アーク放電、高周波誘導電流による発熱でもよい。また、オートクレーブを用いる場合は、熱水蒸気であってもよい。
【0035】
以上、二つの好適な熱分解前処理の実施形態を説明したが、かかる処理を行うことによって、支持体の表面部に付与された前駆体ポリマーの性状を変化(典型的には、凝集、重合及び/又は架橋の導入による硬化)させることができる。かかるポリマーの性状変化によって、熱分解処理時にメソ細孔生成の原因となり得る気泡の形成頻度を著しく低減させることができる。
【0036】
次に、支持体表面部にミクロ細孔に富む多孔質非酸化物セラミック層(典型的にはSi及びN主体のセラミック膜)を生成する処理(熱分解処理)について説明する。
かかる熱分解処理は、適当な加熱炉内に上記熱分解前処理の行われた支持体(被処理材料)を収容して行われる。例えば、被処理材料をアンモニア及び/又は水素を含有する雰囲気中或いは空気又は窒素雰囲気中で乾燥した後、適当な加熱炉内に収容する。而して、所定の焼成スケジュールに従って支持体ごと前駆体ポリマーを加熱する。このことにより、前駆体ポリマーが熱分解され、当該前駆体由来の焼成体即ちミクロ細孔に富むセラミック層(膜)を形成することができる。
【0037】
本発明の実施にあたっては、かかる熱分解処理の期間(典型的には加熱を開始したときから前駆体ポリマーの熱分解後に生成したセラミックの冷却が完了するまでの期間)中、或いは、少なくとも最高熱分解温度まで加熱して冷却を開始するまでの間、アンモニアガス(NH3)の存在下に被処理材料を配置する。かかる雰囲気中のアンモニアガスの濃度は少なくとも5mol%であり、典型的には10mol%以上である。20mol%以上が好ましく、50mol%以上(例えば99.99mol%又はそれ以上の純度のもの)が特に好ましい。アンモニアガスを含む雰囲気中で前駆体ポリマーを加熱し熱分解することにより、十分な表面積(実質的に欠陥の無い領域)とミクロ細孔に富むセラミック層(膜)を支持体表面部に形成することができる。
【0038】
また、焼成スケジュールは、ミクロ細孔に富むセラミック層が最終的に形成されればよく、その条件(例えば最高熱分解温度やその継続時間)は特に限定されない。好ましくは、最高熱分解温度をほぼ500〜1000℃の間に設定する。このとき、略200〜400℃の間に中間保持温度を設定してもよい。この場合、加熱開始温度(典型的には常温域)から中間保持温度まで50℃/分以下(さらに好ましくは10℃/分以下、特に好ましくは5℃/分以下)の昇温速度で加熱し、その中間保持温度で少なくとも1時間保持し、その後に最高加熱温度まで25℃/分以下(さらに好ましくは10℃/分以下、特に好ましくは5℃/分以下)の昇温速度で加熱するのが好ましい。このような条件で熱分解処理を行うことにより、全体に均質なミクロ細孔に富むセラミック層を安定的に形成することができる。
例えば、室温から650℃又はそれ以下の最高熱分解温度まで0.5〜1℃/分程度の平均昇温速度で被処理材料を加熱する場合、200〜400℃(前駆体ポリマーがポリシラザンの場合は概ね250±25℃が特に好適である。)の間に設定される中間保持温度で少なくとも1時間(好ましくは2〜12時間)当該被処理材料を保持する。
かかる中間温度域での保持は、1回に限られない。2回又は3回以上行ってもよい。例えば、最高熱分解温度を800℃に設定した場合、室温から250℃まで0.5〜1℃/分程度の平均昇温速度で被処理材料を加熱し、その温度で約3時間保持する。次いで、500℃まで0.5〜1℃/分程度の平均昇温速度で当該前駆体を加熱し、その温度で約3時間保持した後に最高温度まで同様又はやや遅い昇温速度で加熱していくのがよい。
【0039】
なお、本発明では上述の熱分解前処理によって熱分解時にメソ細孔発生の原因となる気泡の形成が抑えられる。このため、かかる中間保持温度を設定しない場合でも、メソ細孔が実質的に存在しないか或いはその存在割合(容積)が実用上無視し得る程度に低い多孔質セラミック材を容易に製造することができる。
【0040】
最高熱分解温度を650℃又はそれ以上に設定する場合には、加熱過程において昇温温度を変化させてもよい。高温になるほど昇温速度を遅くすることが好ましい。例えば、常温から500〜600℃(又は650℃)までは1〜2℃/分(好ましくは1℃/分)程度の昇温速度とし、600℃(又は650℃)を越えてからはそれまでの昇温速度の30〜70%(好ましくは40〜60%)の昇温速度が好ましい。例えば600℃(又は650℃)まで1℃/分程度の昇温速度で加熱した場合は、それ以降の高温域では0.3〜0.7℃/分(好ましくは0.4〜0.6℃/分)程度の昇温速度で加熱するとよい。このような昇温スケジュールによると、熱分解(即ちセラミック膜生成)の過程における欠陥の発生をより高率に回避することができる。
【0041】
而して、最高熱分解温度に達した後は、その温度域(典型的には最高温度±25℃)で被処理材料を所定時間保持する。これにより、熱分解の結果生じた生成物の緩やかな拡散を促すことができる。好ましい保持時間は、0.5〜5時間(典型的には1〜2時間)である。
最高熱分解温度域で所定の時間保持した後、100℃以下、典型的には室温(5〜35℃)まで、被処理材料(セラミック層が生成された支持体)を冷却する。実質的にメソ細孔の認められないミクロ細孔に富むセラミック層(膜)を得る場合、徐々に冷却するとよい。5℃/分以下、例えば0.2〜5.0℃/分程度の冷却速度が適当であり、0.5〜2℃/分(多少の誤差は許容される)の平均冷却速度が好ましい。
【0042】
上述した本発明の製造方法によって得られる多孔質セラミック材は、メソ細孔の発生が抑えられ、欠陥が無く、ミクロ細孔に富むため、ガス分離材として好適である。従って、本発明によると、改質器等に用いられるガス分離材(モジュール)が提供され得る。また、上述した熱分解前処理及び熱分解処理を実施して得られた多孔質非酸化物セラミック層の表面部に、ディップコーティング法等によって前駆体ポリマーを再度付与し、その後に同様の熱分解前処理及び熱分解処理を繰り返すことにより、ガス分離特性に特に優れるガス分離材を製造し得る。
例えば、本発明の製造方法によって形成された表面セラミック層(膜)は、典型的には、ガス吸着法(BET法等)に基づく細孔径分布のピーク値及び/又は平均孔径が1nm以下である。また、セラミック層(膜)の表面に分布する細孔の90%以上が孔径0.5nm以下のミクロ細孔であることが好ましい。さらに好ましくは、表面セラミック層における細孔径分布のピーク値又は平均孔径が0.2nm〜1nm(BET法等のガス吸着法)であり、少なくとも0.05cm3/g(さらに好ましくは0.1cm3/g以上)の細孔容積を有する。
細孔径分布のピーク値及び/又は平均孔径が1nm以下(例えば0.2〜0.5nm)のセラミック膜は、水素のような比較的小さいサイズ(動的分子直径:約0.29nm)の無極性分子を混合ガスから選択的に分離するのに特に効果的である。このような性状の微細孔に富む多孔質セラミック材は、改質ガスその他の混合ガスから水素を分離するのに使用する膜型水素分離材として好適に使用し得る。
【0043】
また、窒化ケイ素やアルミナから成る支持体の表面部にポリシラザン由来のセラミック層(膜)が形成された多孔質セラミック材は、400℃を超えるような高温条件下(典型的には600〜700℃)においてもそのミクロ細孔構造を安定に保つことができる。さらに、支持体と表面セラミック層(膜)との間で熱収縮率/熱膨張率に顕著な差異がなく、高い耐熱衝撃性を実現し得る。すなわち、急激な温度変化に曝された場合であっても、セラミック膜の熱的剥離やクラックの発生の頻度を顕著に低減させることができる。従って、耐熱性及び耐熱衝撃性に優れ、高温条件下や使用環境温度が変動するような条件下でのガス分離処理や高性能濾過処理(分子篩い等)に適している。
【0044】
本発明によって提供される多孔質セラミック材はガス分離材として好適に用いることができる。この場合、表面セラミック層(膜)の厚さは100μm以下が適当である。かかる膜厚が0.01〜10μmのものが好ましい。また、本発明によると、100〜500nm程度の膜厚であるにも拘わらず、優れたガス選択的透過性(例えば水素の選択的透過性)を示すガス分離材が提供され得る。
【0045】
例えば、400℃(好ましくは600℃、より好ましくは800℃)における水素/窒素分離係数が5以上(好ましくは10以上、特に好ましくは100以上)であり、同温度における水素透過率が少なくとも1×10−10モル/m2・s・Pa(好ましくは1×10−8モル/m2・s・Pa以上、特に好ましくは1×10−7モル/m2・s・Pa以上)となる膜厚のものが好ましい。かかる性状の多孔質セラミック材によると、高温腐食環境条件下においても比較的高い水素透過速度及び水素分離能(水素選択性)を保持しつつ、効率よく水素分離処理を行うことができる。
特に好適な水素分離膜は、600℃における水素/窒素分離係数が3.0以上(典型的には3.0〜200,000の範囲にある)であり、且つ、同温度における水素透過率が1×10−10モル/m2・s・Pa以上(典型的には1×10−10〜1×10−6の範囲にある)のものである。また、20℃〜800℃の温度条件における水素/窒素分離係数がいずれも3.0以上(典型的には3.0〜200,000の範囲にある)、且つ、同温度範囲における水素透過率がいずれも1×10−10モル/m2・s・Pa以上(典型的には1×10−10〜1×10−6の範囲にある)のものも好ましい。本発明によると、これらの条件を満たす水素分離材を提供することが可能である。
ここで「水素/窒素分離係数」とは、同条件下における水素透過率と窒素透過率との比率、即ち同条件下での水素ガス透過量の窒素ガス透過量に対する比(モル比)をいう。ここで「水素透過率(モル/m2・s・Pa)」及び「窒素透過率(モル/m2・s・Pa)」は、それぞれ、差圧(多孔質セラミック膜を挟んでガス供給側圧力とガス透過側圧力との差)が1Paであるときの単位時間(1秒)及び単位膜表面積(1m2)当りの水素ガス透過量(モル)および窒素ガス透過量(モル)で表される。
【0046】
本発明によって提供されるガス分離材は、用いる支持体の形状によって、種々の形態をとり得る。すなわち、セラミック支持体の形状を適宜変更することによって種々の形態の容器や装置にガス分離モジュールとして組み込むことができる。特に、膜型水素分離モジュールとして改質器(例えば高温型燃料電池用改質器)に組み込むことができる。このとき、セラミック支持体の形状を管形状とすることで管形状膜型水素分離モジュールが形成される(即ち管の内壁面及び/又は外壁面にセラミック膜が形成される。)。
また、窒化ケイ素等から成る多孔質セラミック支持体の形状をプレート形状に成形すれば、当該プレート形状の膜型水素分離モジュールが形成されるわけである。従って、本発明によると、特に高温型燃料電池システム用改質器やその他の種々の厳しい環境下で利用するリアクター(例えばNOx等の有害ガス分離用リアクター)を提供することができる。
【0047】
【実施例】以下に説明する実施例によって、本発明を更に詳細に説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0048】
<実施例1:ガス分離材の製造(1)>
3000質量部のアルミナ粉末(50%粒子径:約3μm)に100質量部の有機バインダーを添加して混合した。この混合物に60質量部のワックスエマルジョンと60質量部のポリエーテル系合成油(潤滑剤)と420質量部のイオン交換水を添加して混練し、押出し成形用坏土を得た。次いで、その坏土を押出成形機により押出し成形した後、マイクロ波で乾燥し、空気雰囲気で焼成することにより、管形状(外径:10mm、内径:7mm、長さ:50mm)の多孔質セラミック体(以下「基材」と略称する。)を得た。
次いで得られた基材の表面に中間セラミック層を形成した。すなわち、高純度α−アルミナ粒子(平均粒子径:約0.2μm)に蒸留水を加え、ボールミルで混合した。その混合物に、有機バインダーと可塑剤とを添加し、ボールミルでさらに混合して製膜用スラリーを得た。このスラリー中に上記基材を30秒間浸漬し、基材表面にスラリーを担持した。次いで、室温大気中で乾燥し、大気中で焼成することで、中間セラミック層が外表面に形成された管状アルミナ支持体(以下「支持体」と略称する。)を得た。なお、この中間セラミック層の平均細孔径は約60nmであった。
【0049】
一方、市販のポリシラザン含有スラリー(チッソ(株)製品「NCP201」、ポリシラザン60質量%、トルエン40質量%、ポリシラザンの数平均分子量:1300)を希釈し、超音波攪拌処理を約1時間行い、固形分濃度が20質量%であるポリシラザン溶液(コーティング液)を調製した。
【0050】
上記支持体とコーティング液とを用いて表面セラミック層の形成を行った。すなわち、上記アルミナ支持体をコーティング液に20秒間浸漬(ディップ)した。なお、このディップ処理の際には管形状アルミナ支持体の外周面にのみコーティング液が付着するように、当該支持体の両端開放部を合成樹脂フィルムでラップしておいた。
ディップコーティング後、一定の速度でアルミナ支持体をコーティング液から引き上げ、60℃で4時間乾燥した。
【0051】
次に、図1に示す多孔質セラミック材製造装置100を用いて熱分解前処理を行った。
この装置100は、円筒形状の焼成用加熱炉(マッフル炉)101を備えており、その炉内には不活性ガス(ここでは窒素ガス)及び/又は反応性ガス(ここではアンモニアガス)が連続的に所定の流量(流速)で供給される(図中の矢印参照)。すなわち、加熱炉101のガス導入側には、混合バルブ106を介して、窒素ガス供給源(ここでは窒素タンク)102とアンモニアガス供給源(ここではアンモニアタンク)104とが接続されている。これらガス供給源102,104にはそれぞれ電磁バルブ103a,103bと流量計108a,108bが接続されている。これら電磁バルブ103a,103bと流量計108a,108bは、制御部105と電気的に接続されている。一方、加熱炉101のガス排出側には、制御部105と電気的に接続されたポンプ110が接続されている。この構成によって本製造装置100では、制御部105を作動させ、流量計108a,108bからの入力データに基づいて各ガス供給源102,104からのガス流量を調整し(即ち電磁バルブ103a,103bの開閉制御を行う)、所定の流量(流速)の窒素ガス、アンモニアガス又はこれらの混合ガスを加熱炉101内に導入することができる。また、制御部105は加熱炉101に装備される加熱器101a(典型的にはガス燃焼装置)とも電気的に接続されており、制御部105からの操作信号によって加熱器101aをオンオフ制御して炉内の温度を適宜調節することができる。
【0052】
具体的には、上記乾燥後のポリシラザンコーティング支持体120を加熱炉101内に収容し、炉内を80℃に加熱した。その温度で72時間保持した。なお、圧力条件は大気圧とした。また、ポンプ110を作動させて窒素ガスを約150ml/分の流量で炉101内に供給し続け、窒素ガス雰囲気中でかかる熱分解前処理を行った。
【0053】
熱分解前処理後、炉101内に概ね100〜150ml/分(ここでは150ml/分)のアンモニアガスを供給しつつ、以下の焼成スケジュールで炉101内の被処理体(支持体)120を加熱し、支持体表面部にコーティングされたポリシラザンを熱分解した。
すなわち、(1).80℃から250℃まで1℃/分程度の平均昇温速度で約3時間加熱し、(2).250℃で3時間保持し、(3).250℃から650℃まで1℃/分程度の平均昇温速度で6.4時間加熱し、(4).650℃(最高温度)で1時間保持し、そして(5).650℃から室温まで約11時間かけて冷却した(平均冷却速度:約1℃/分)。
このようにして、ミクロ細孔に富むポリシラザン起源のセラミック層がアルミナ支持体表面部に形成された多孔質セラミック材(実施例1)を製造した。
【0054】
<実施例2:ガス分離材の製造(2)>
熱分解前処理における80℃の保持時間が40時間であること以外は、実施例1と同様の手順で、多孔質セラミック材(実施例2)を製造した。
【0055】
<実施例3:ガス分離材の製造(3)>
熱分解前処理における80℃の保持時間が24時間であること以外は、実施例1と同様の手順で、多孔質セラミック材(実施例3)を製造した。
【0056】
<実施例4:ガス分離材の製造(4)>
熱分解前処理における80℃の保持時間が10時間であること以外は、実施例1と同様の手順で、多孔質セラミック材(実施例4)を製造した。
【0057】
<実施例5:ガス分離材の製造(5)>
熱分解前処理における80℃の保持時間が2時間であること以外は、実施例1と同様の手順で、多孔質セラミック材(実施例5)を製造した。
【0058】
<実施例6:ガス分離材の製造(6)>
実施例1と同様の材料及び手順に従ってポリシラザンコーティング支持体を得た。
次いで、得られた支持体を直径12cm、内容積1.5リットルの円筒形オートクレーブに入れた。オートクレーブ内を100%アンモニアガスで充填して0.15MPaに加圧し、電気炉を用いて150℃に加熱した。その温度及び圧力で30分間保持し、その後、冷却及び減圧した。
かかる熱分解前処理後、支持体を上記製造装置(図1)の炉内に移した。而して、実施例1とほぼ同様の焼成スケジュールで支持体表面部にコーティングされたポリシラザンを熱分解した。
すなわち、(1).室温から250℃まで1℃/分程度の平均昇温速度で約3.5時間加熱し、(2).250℃で3時間保持し、(3).250℃から650℃まで1℃/分程度の平均昇温速度で6.4時間加熱し、(4).650℃(最高温度)で1時間保持し、そして(5).650℃から室温まで約11時間かけて冷却した(平均冷却速度:約1℃/分)。
このようにして、ミクロ細孔に富むポリシラザン起源のセラミック層がアルミナ支持体表面部に形成された多孔質セラミック材(実施例6)を製造した。
【0059】
<実施例7:ガス分離材の製造(7)>
上記アルミナ支持体に対し、実施例1と同様の材料・手順により上述のコーティング処理、熱分解前処理及び熱分解処理と続く一連の処理を2回繰返し行って、ミクロ細孔に富むポリシラザン起源のセラミック層がアルミナ支持体表面部に形成(積層)された多孔質セラミック材(実施例7)を製造した。
【0060】
<比較例1:ガス分離材の製造(6)>
熱分解前処理を実施しない他は実施例1と同様の材料・手順によって多孔質セラミック材(比較例1)を製造した。
【0061】
<試験例1>
実施例1〜4及び比較例1の多孔質セラミック材の表面セラミック層の細孔径分布をガス吸着法(BJH法)に基づく細孔径分布測定装置(マイクロメリティック社製品:商品名「ASAP2002」)を用いてそれぞれ測定した。
すなわち、窒素ガス吸着等温線を測定して、その結果をBJH法で計算することにより、表面セラミック層に存在する細孔分布を求めた。而して、表面セラミック層に分布する全細孔のうちの孔径0.1nm以上3nm未満の細孔の存在割合(%)、および孔径3nm以上50nm未満の細孔の存在割合(%)を表1に示す。
この表から明らかなように、各実施例の多孔質セラミック材に形成された表面セラミック層に存在する細孔の90%以上が孔径0.1nm以上3nm未満の細孔(孔径分布のピークが0.5nm)であった。一方、比較例1の多孔質セラミック材に形成された表面セラミック層では、孔径0.1〜3nmの細孔の存在比率が低く、90%を下回った。この結果は、本発明に係る熱分解前処理を実施することにより、孔径1nm以下(好ましくは0.5nm以下)のミクロ細孔の存在比率を向上させ得ることを示すものである。
【0062】
【表1】
【0063】
また、実施例1及び比較例1についての窒素(N2)脱着等温線より求めた細孔径分布曲線グラフ(横軸:孔径(nm)、縦軸:細孔容積(cm3/g−nm))を、それぞれ、図2及び図3に示す。これらのグラフから明らかなように、実施例1の表面セラミック層では、孔径10nmを超えるメソ細孔が実質的に存在しないことが認められる(図2)。一方、上述の熱分解前処理を行っていない比較例1の表面セラミック層では、孔径10nmを超える領域に一つのピークが有り、メソ細孔が比較的多く存在していることが認められる(図3)。
【0064】
また、図4及び図5に示すように、実施例6の多孔質セラミック材の表面セラミック層の表面(図4)ならびに比較例1の多孔質セラミック材の表面セラミック層の表面(図5)をそれぞれ電子顕微鏡(SEM)で観察した。図に示すように、比較例1の多孔質セラミック材では、メソ細孔およびマクロ細孔が表面セラミック層に多数存在するのが認められる。他方、実施例6の多孔質セラミック材の表面セラミック層には、メソ細孔およびマクロ細孔が殆ど認められない。
【0065】
<試験例2>
次に、実施例1、実施例3、実施例5、実施例7及び比較例1で得られた管形状多孔質セラミック材10(以下「ガス分離モジュール10」という。)を用いて改質器1をそれぞれ構築し、当該ガス分離モジュール10のガス分離特性、即ち水素透過率及び窒素透過率ならびに水素/窒素分離係数を評価した。
先ず、図6に示すような改質器1を作製した。この図に示すように、本試験例に係る改質器1は、大まかにいって、筒状のステンレス製チャンバー2と、ポリシラザン由来の表面セラミック層(多孔質セラミック膜)12を備えた多孔質支持体14を本体とするガス分離モジュール10と、改質用触媒18とから構成されている。
チャンバー2には、別途、ガス供給管3と、ガス排出管4とが設けられている。また、チャンバー2の周囲には図示しないヒーターおよび断熱材が設けられており、チャンバー2内部の温度を室温〜1200℃の範囲でコントロールすることができる。また、かかるチャンバー2の内部には、ガス分離モジュール10が配置されており、その周囲の空間部(改質器では水素生成部に相当する部位)20には、種々の改質用触媒18を充填することができる。なお、本評価試験では、触媒18をチャンバー2内に充填せずに行った。
【0066】
図示されるように、ガス分離モジュール10の一端は金属製キャップ5によってシールされており、当該端部から中空部16へのガスの流入を防止している。また、ガス分離モジュール10の他端側には、ジョイント管30が取り付けられている。図示するように、ジョイント管30の開口先端部(透過ガス排出口6)はチャンバー2の外部に露出した状態とした。さらに、ガス分離モジュール10の外周面における表面セラミック層(即ちガス分離膜)12の端の部分(即ちジョイント管取付部分の近傍)には、高温シール材を挿入してメカニカルシールした。
ジョイント管30の透過ガス排出口6と接続するガス排出側流路には図示しないガスクロマトグラフが装備されており、そこを流れるガス濃度を測定し、その測定データをコンピュータシステムによって自動バッチ処理で解析することができる。
チャンバー2のガス供給管3は外部ガス又は水蒸気等の供給源に接続しており、当該ガス供給管3を介してチャンバー内の空間部20に水素、窒素等の測定用ガスや水蒸気を供給することができる。なお、空間部20のガスはガス排出管4から外部に排出される。
【0067】
而して、かかる系において、ガス分離モジュール10の水素透過率ならびに水素/窒素分離係数を次のようにして評価した。
すなわち、図示しない水素供給源および窒素供給源から所定の流量で水素及び窒素をチャンバー2内に供給した。このとき、ガス分離膜12の内外の差圧が約2×104Pa(約0.2atm)となるようにした。なお、かかる評価試験はチャンバー2内の温度を150℃に上げて行った。このように温度を上げて試験することで、改質器1のガス分離モジュール10について高温時における水素分離特性を評価することができる。
【0068】
具体的には、適宜ヒーターを作動させてチャンバー2内の温度制御(室温〜150℃)を行いつつ、上記差圧を生じさせた状態で水素及び窒素をそれぞれチャンバー2内に供給した。而して、セッケン膜流量計(図示せず)によって透過側(即ち透過ガス排出口6と接続するガス排出側流路)の流速を測定した。なお、水素および窒素それぞれのガス透過率は次の式「Q=A/((Pr−Pp)・S・t)」から算出した。ここでQはガス透過率(permeation:モル/m2・s・Pa)、Aは透過量(mol)、Prは供給側即ちチャンバー2内の空間部20の圧力(Pa)、Ppは透過側即ちガス分離モジュール10の中空部16の圧力(Pa)、Sは断面積(m2)、tは時間(秒:s)を表す。また、水素/窒素分離係数(H2/N2 selectivity)は、水素透過率と窒素透過率との比率すなわち式「α=QH2/QN2」から算出できる。ここでαは水素/窒素分離係数(透過率比)、QH2は水素透過率、QN2は窒素透過率を表す。
【0069】
実施例1、実施例3、実施例5、実施例7及び比較例1について、150℃で測定した水素透過率および水素/窒素分離係数を表2に示す。
この表から明らかなように、各実施例に係るガス分離材(ガス分離モジュール)は、いずれも1×10−7モル/m2・s・Paを上回る水素透過率を示すとともに、4以上の水素/窒素分離係数を示した。特に実施例1のガス分離材は10〜20(ここでは19)の高い水素/窒素分離係数を示した。さらに実施例7のガス分離材は100以上(ここでは123)という極めて高い水素/窒素分離係数を示した。これらの結果は、本発明に係る多孔質セラミック材が150℃以上(例えば400℃以上、さらには600℃以上)の高温条件下でも高い水素ガス分離特性を有することを示すものである。
【0070】
【表2】
【0071】
<試験例3>
次に、試験例2で使用した改質器1(図6)を利用して、実施例7のガス分離材(ガス分離モジュール)の高温条件下におけるガス分離特性、即ち水素透過率及び窒素透過率ならびに水素/窒素分離係数を評価した。なお、本試験例では、チャンバー2内の温度を300℃、400℃、500℃、600℃と順次上げていき、各温度における水素透過率及び水素/窒素分離係数を求めた。結果を表3に示す。
表3から明らかなように、実施例7のガス分離材(ガス分離モジュール)は、300℃、400℃、500℃、600℃の各温度においても、150℃の場合と同様、1×10−7モル/m2・s・Paを上回る水素透過率を示すとともに、100以上の高い水素/窒素分離係数を示した。かかる結果より、本実施例に係るガス分離材が高い耐熱性を有しており、高温条件下において特に好適に使用され得るガス分離材であることが確かめられた。
【0072】
【表3】
【0073】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法を実施する為の製造装置の一例を模式的に示すブロック図である。
【図2】一実施例に係る多孔質セラミック材についての細孔径分布を示すグラフである。
【図3】一比較例に係る多孔質セラミック材についての細孔径分布を示すグラフである。
【図4】一実施例に係る多孔質セラミック材の膜表面を示す電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図5】一比較例に係る多孔質セラミック材の膜表面を示す電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図6】一実施例に係るガス分離材(モジュール)を備えた改質器の構造を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
1 改質器
2 チャンバー
10 ガス分離モジュール(管状多孔質セラミック材)
12 ガス分離膜
14 支持体
100 製造装置
101 加熱炉
101a 加熱器
102 窒素ガス供給源
104 アンモニアガス供給源
105 制御部
110 ポンプ
120 被処理体(ポリシラザンコーティング支持体)
Claims (10)
- 多孔質セラミック材を製造する方法であって、
(a)ケイ素を主体とする非酸化物セラミックの前駆体ポリマーが表面部の少なくとも一部に付与されている多孔質セラミック支持体を用意する工程と、
(b)その支持体を略40℃以上であって前記前駆体ポリマーが実質的に熱分解しない温度で少なくとも1時間保持する工程と、
(c)前記前駆体ポリマーを熱分解して、前記支持体の表面部にミクロ細孔に富む多孔質非酸化物セラミック層を生成する工程と、
を包含する製造方法。 - 多孔質セラミック材を製造する方法であって、
(a)ケイ素を主体とする非酸化物セラミックの前駆体ポリマーが表面部の少なくとも一部に付与されている多孔質セラミック支持体を用意する工程と、
(b)加圧可能な容器内に前記支持体を配置し、該容器内を0.12MPa以上に加圧するとともに、略40℃以上であって前記前駆体ポリマーが実質的に熱分解しない温度で該支持体を保持する工程と、
(c)前記前駆体ポリマーを熱分解して、前記支持体の表面部にミクロ細孔に富む多孔質非酸化物セラミック層を生成する工程と、
を包含する製造方法。 - 前記生成した多孔質非酸化物セラミック層の表面部の少なくとも一部に前記前駆体ポリマーを付与した後に、前記(b)工程及び(c)工程を再度行う、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 前記前駆体ポリマーは、ポリシラザン又はポリシラザンを基本骨格として構成されたケイ素化合物である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 前記(b)工程及び(c)工程は、不活性ガス雰囲気又はアンモニアガス雰囲気中で行われる、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 前記(c)工程において、500〜1000℃の範囲内に最高熱分解温度が設定され、且つ、200〜500℃の間に中間保持温度が設定され、加熱開始温度から中間保持温度まで50℃/分以下の昇温速度で加熱され、その中間保持温度で少なくとも1時間保持され、その後に最高熱分解温度まで25℃/分以下の昇温速度で加熱される、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
- 前記(c)工程で多孔質非酸化物セラミック層が生成された支持体を、前記最高熱分解温度から5℃/分以下の冷却速度で100℃以下まで冷却する、請求項6に記載の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法によって製造された多孔質セラミック材。
- 多孔質セラミック支持体と、該表面部に形成されたケイ素を主体とする多孔質の非酸化物セラミック膜とを有する多孔質セラミック材であって、
600℃における水素/窒素分離係数が少なくとも100であり、その温度での水素透過率が少なくとも1×10−7モル/m2・s・Paである、多孔質セラミック材。 - 150℃における水素/窒素分離係数が少なくとも100であり、その温度での水素透過率が少なくとも1×10−7モル/m2・s・Paである、請求項9に記載の多孔質セラミック材。
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