JP2004091750A - 導電性シリコーン粘着剤組成物 - Google Patents

導電性シリコーン粘着剤組成物 Download PDF

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Abstract

【解決手段】(A)平均組成式(1)
SiO(4−a)/2          (1)
(式中、Rは一価炭化水素基。)
で表されるオルガノポリシロキサン                100部
(B)一般式(2)
SiO1/2            (2)
(式中、Rは一価炭化水素基。)
で表される構造単位とSiO4/2単位を含有し、モル比が(R SiO1/2)/(SiO4/2)=0.5〜1.2であるオルガノポリシロキサン 50〜250部(C)無機粉体又は有機樹脂粉体からなる基材粉体の表面に還元作用を有するケイ素系高分子層又はそれをセラミック化した層が形成され、メッキによる金属で被覆してなる導電性粉体
(A)(B)成分の合計100部に対して3〜300部
(D)架橋剤
を含有する導電性シリコーン粘着剤組成物。
【効果】本発明の組成物によれば、シリコーンゴム等に対する良好な接着性を有し、安定な導電性と粘着性を有する硬化物となる導電性シリコーン粘着剤組成物を得ることができる。
【選択図】   なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、良好な接着性を有し、安定な導電性と粘着性、特にシリコーンゴムを使用する高温の環境下で、シリコーンゴムに対する密着性と導電性を有する硬化物となり、高信頼性の電子材料用に使用できる導電性シリコーン粘着剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の導電性粘着剤は、アクリル系樹脂又はアクリル樹脂とロジンとのブレンド物あるいは天然ゴムやブチルゴム等を粘着剤成分として、これに銅粉のような導電性粉体を混合した組成物を用いていた。これらの導電性粘着剤は、100℃以下という比較的低い温度範囲で架橋できるので、金属箔等の導電性支持体に直接塗付し、導電性支持体と一緒に加熱して導電性粘着層を架橋し、導電性粘着剤付き導電性テープを作製している。したがって、これら従来の導電性粘着剤は、使用可能温度領域が80〜120℃までで、これ以上の高温度下では、粘着層が軟化して粘着力が著しく低下するため、このような高温下での使用は不可能であった。
【0003】
一方、はんだ付けのできない金属にケーブルを接合する場合、導電性粘着剤付き金属箔テープを金属の面に貼付け、それにケーブルをはんだ付けして接地等の加工をすることがあるが、従来の粘着剤は、はんだの高温に耐えられずに、テープの粘着層が軟化して、テープの位置がずれたり、取り付けてある部品が脱落したり、テープごと剥がれて接地処理等ができないという問題があった。また、最近は、高導電性で耐熱性のあるゴムコネクタが使用されるようになってきており、こうしたゴムコネクタへ応用できる耐熱性のある導電性粘着剤の開発が望まれていた。
【0004】
かかる問題を解消するため、粘着剤として耐熱性を有する樹脂、例えばポリシロキサンを採用することが試みられている。シリコーン粘着剤としては、MeSiO1/2単位及びSiO4/2単位を有するポリシロキサンいわゆるMQレジンとジメチルシリコーン生ゴム、あるいはこの縮合物からなるシリコーン粘着剤が知られている。この粘着剤は、通常接着力や凝集力を高めるために150〜180℃といった高温で過酸化物による架橋が行われている。また、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、MQレジン及びSi−H基含有ポリシロキサンからなる低温硬化性付加型シリコーン粘着剤が提案された(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、こうしたシリコーン系粘着剤に金属粉を導電粉体として混合した導電性粘着剤組成物は、比重の高い導電性粉体を多量に配合しなければ十分な導電性を発現しないという欠点があり、この比重差からシリコーン成分と導電粉が分離し、必然的に導電性が悪く、粘度が高く作業性の悪いものであるという欠点があった。これに対して、有機溶剤で希釈して、組成物自体の粘度上昇を抑え、安定した加工性を有するシリコーン系粘着剤組成物とする方法が提案されている(特許文献2参照)とはいうものの、導電粉の沈降や分散不良のため、導電性が不安定になるという問題は未だに解決されているとはいえなかった。
【0006】
さらに、シリコーン系粘着剤組成物に金属粉を導電粉体として混合した導電性粘着剤は、導電性を付与・発現させる導電性粉体にも問題が存在していた。例えば、シリコーン樹脂の耐熱性は、空気中で200℃以上あるにもかかわらず、そうした温度での粘着剤の導電特性は、明らかに時間の経過とともに低下している。つまり、シリコーン樹脂が200℃以上の環境温度領域で安定であるにもかかわらず、こうした温度領域で安定した導電性を示さないという問題点があった。この原因は、導電性粉体を、熱により酸化し易い銅やニッケル等の金属粉としていたためであり、これらを高温雰囲気下におくと、金属粉等の導電性粉体がこの熱により酸化して、変色したり、導電性が低下するといった弊害が現れたものであった。高信頼性の電子材料用の導電性シリコーンゴムコネクタの固定保持用として、導電性粘着剤を用いる場合、こうした高温で保持したときの導電性の安定化を改善する必要があった。
【0007】
一方、特許文献3、4には、各種導電性粉体として金属粉と金属被覆粉体が開示されている。しかし、金属粉として金や白金等の貴金属は、高い耐熱性と導電性の両立が可能であるが、極めて高価である点と比重が高く、時間がたつと沈降してしまうという問題点があり、商業的には全く使用できていない。一方、極めて高い導電性が要求される分野では銀が、それ以外の分野では銅やニッケルが用いられることが多い。しかし、銅やニッケル粉は安価であるが、加熱される条件で使用されると、空気中の酸素や水分の影響により粉体表面に酸化膜を形成して導電性を悪化させるという問題点がある。そこで、通常は酸化されがたく導電性が高い銀粉、あるいは銅の表面を銀で被覆した金属粉等が、導電性粉体として使用されているが、こうした銀等もやはり比重が高く、時間がたつと沈降してしまうという欠点があり、十分満足できるものではなかった。
【0008】
金属被覆粉体としては、核となる粉体として低比重の粉体を選ぶことで、低い比重と導電性の両立が可能である。しかし、核となる粉体とそれを覆っている金属の間の密着性が極めて不充分であるため、とりわけ高温に曝された場合に核となる粉体から金属が剥離するという問題点があり、高信頼性を要求される電子材料用の導電性粘着剤に、実際には全く使用されていなかった。
【0009】
本発明者は、無機粉体又は有機樹脂粉体からなる基材粉体の表面を還元作用を有するケイ素系高分子で処理し、この上を無電解メッキによる金属で被覆された導電性粉体は、核となる粉体とそれを覆っている金属の間の密着性が極めて向上し、とりわけ高温に曝された場合に核となる粉体から金属が剥離するという問題がなくなるため、高信頼性を要求されるシリコーンゴム用の導電性粉体として使用できることを開示しているが、これは今まで粘着剤には使用されていなかった。
【0010】
【特許文献1】
特開昭63−22886号公報
【特許文献2】
特開平1−287169号公報
【特許文献3】
特許第2928944号公報
【特許文献4】
特開2001−146578号公報
【特許文献5】
特開2002−167512号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、シリコーンゴム等に対する良好な接着性を有し、シリコーンゴムの使用する温度領域で安定な導電性と粘着性を有する導電性シリコーン粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、オルガノポリシロキサンといわゆるMQレジンとを必須成分とするオルガノポリシロキサンのシリコーン組成物に特定の導電性粉体を分散させてなるシリコーン粘着剤組成物を用いることが有効であることを知見した。即ち、導電性粉体を、基材粉体の表面を還元作用を有するケイ素系高分子で処理し、この上をメッキによる金属で被覆した導電性粉体で、特に基材粉体の比重が3.5以下で、導電性粉体の最表面の金属として耐酸化性の貴金属を使用することにより、導電性粉体が粘着成分と分離せず、このシリコーン粘着剤組成物を高温中に置いた後でも、導電率の安定性が著しく向上し、シリコーンゴムの使用可能な環境温度領域において、良好な粘着特性を保持できることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0013】
従って、本発明は
(A)下記平均組成式(1)
SiO(4−a)/2          (1)
(式中、Rは同一又は異種の置換もしくは非置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基、aは1.95〜2.05の正数である。)
で表されるオルガノポリシロキサン              100重量部
(B)下記一般式(2)
SiO1/2            (2)
(式中、Rは同一又は異種の水酸基又は置換もしくは非置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基である。)
で表される構造単位とSiO4/2単位を含有し、これらのモル比が(R SiO1/2)/(SiO4/2)=0.5〜1.2であるオルガノポリシロキサン    50〜250重量部
(C)無機粉体又は有機樹脂粉体からなる基材粉体の表面に還元作用を有するケイ素系高分子層又はその一部もしくは全部をセラミック化した層が形成され、この層の表面上をメッキによる金属で被覆してなる導電性粉体
(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して3〜300重量部
(D)架橋剤                  (A)成分を硬化し得る量含有する導電性シリコーン粘着剤組成物を提供する。
【0014】
以下、本発明につきさらに詳しく説明する。
本発明の(A)成分は、下記平均組成式(1)
SiO(4−a)/2          (1)
(式中、Rは同一又は異種の置換もしくは非置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基、aは1.95〜2.05の正数である。)
で表されるオルガノポリシロキサンであり、本発明の組成物の主剤であって強度に大きな影響を与えるものである。
【0015】
Rは同一又は異種の置換もしくは非置換の炭素数1〜10、好ましくは1〜8の一価炭化水素基であるが、このような一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等や、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基等で置換した3−クロロプロピル基,3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロ置換アルキル基等の一価炭化水素基が例示され、特にメチル基、フェニル基が好ましい。また、aは1.95〜2.05の正数である。
【0016】
後述する架橋剤が、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金系触媒を用いる場合は、Rは脂肪族不飽和基(アルケニル基)を、特に2個以上有していることが必要であるが、R中の脂肪族不飽和基の含有量は0.01〜10.0モル%、特に0.025〜5.0モル%であることが好ましい。具体的なアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基が例示され、この中でビニル基が好ましい。アルケニル基の結合位置は特に限定されず、分子鎖末端、分子鎖側鎖又は分子鎖末端と分子鎖側鎖両方でもよい。
【0017】
脂肪族不飽和基(アルケニル基)を少なくとも2個有している(A)成分のオルガノポリシロキサンとしては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体が例示される。
【0018】
架橋剤が、有機過酸化物である場合は、上記と同様のアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンに加え、脂肪族不飽和基(アルケニル基)を含まないオルガノポリシロキサンが例示され、具体的には、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体が例示される。
【0019】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの分子構造は、直鎖状又は一部分岐を有する直鎖状が好ましい。なお、(A)成分のオルガノポリシロキサンは、1種を単独で又は重合度や分子構造の異なる2種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの重合度は、RSiO(4−a)/2単位として100以上が好ましく、特に200〜100,000が好ましい。重合度が100未満では粘着特性が悪く、本発明の目的を達しえない場合がある。
【0021】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの粘度としては、2,000センチポイズ以上が好ましく、特に1万センチポイズ以上が好ましい。具体的には通常シリコーン生ゴムと呼ばれる形態のオルガノポリシロキサンが好ましい。
【0022】
本発明の(B)成分は、下記一般式(2)
SiO1/2                 (2)
(式中、Rは同一又は異種の水酸基又は置換もしくは非置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基である。)
で表される構造単位とSiO4/2単位を含有し、これらのモル比が(R SiO1/2)/(SiO4/2)=0.5〜1.2であるオルガノポリシロキサンであり、粘着性を付与する成分であって、通常MQレジンと称されるものである。
【0023】
は同一又は異種の水酸基又は置換もしくは非置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基である。水酸基(シラノール基)は一価の炭化水素基と併存することが好ましい。一価の炭化水素基としては、上記Rで例示したものが挙げられるが、1分子中のRは全て同一でも、また異なるものがあってもよいが、メチル基とビニル基が好ましく、特に全R中の95モル%以上がメチル基であることが好ましい。
【0024】
SiO1/2単位とSiO4/2単位のモル比は(R SiO1/2)/(SiO4/2)=0.5〜1.2であり、特に0.65〜0.95が好ましい。この比が0.5未満では粘着力、タックが低下する場合があり、1.2を超えると凝集力が低下する場合がある。
【0025】
(B)成分としては、所望により本発明の粘着特性を損なわない範囲でR SiO2/2及びRSiO3/2単位を含有してもよい。また、(B)成分のオルガノポリシロキサンは、1種を単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
(B)成分の配合量は、(A)成分100部(重量部、以下同様)に対し、(B)成分50〜250部であり、特に100〜200部が好ましい。
【0027】
(C)成分は、無機粉体又は有機樹脂粉体からなる基材粉体の表面に還元作用を有するケイ素系高分子層又はその一部又は全部をセラミック化した層が形成され、この層の表面上をメッキによる金属で被覆してなる導電性粉体であり、導電性を付与する成分である。低比重、高耐熱性、高伝導性の金属被覆粉体を導電性粉体として用いることで高安定性となるため、高信頼性の電子材料用途に使用できる。
【0028】
核となる基材粉体としては、無機粉体又は有機樹脂粉体からなる基材粉体が選ばれるが、200℃以上の耐熱性を有するものが好ましい。
【0029】
基材粉体の形状は球状、棒状、針状、中空状その他不定形状であってもよく、外観上粒状又は粉状として扱われるものすべてを用いることができるが、分散性の点とコストを最小にする必要性から、表面の貴金属等を最小量にできる球状が好ましい。
【0030】
基材粉体の平均粒径は、0.1〜500μm、より好ましくは1〜100μmである。0.1μm未満では、比表面積が高くなるため、メッキ金属の量が多くなって高価となり、経済的に好ましくない。また、500μmを超えると母材に混合しにくくなり、硬化物の表面が凸凹となって、好ましくない。
【0031】
基材粉体の比重は3.5以下が好ましく、特に0.5〜3.5、さらに0.6〜3.0が好ましい。比重が0.5未満では、粒子の壁が薄くなるため機械的に破壊されやすくなる場合があり、3.5を超えると金属を被覆した場合の比重がポリシロキサンよりも高くなり、粘着剤組成物とした場合、経時で導電粉体が沈降分離しやすくなる場合がある。
【0032】
無機粉体としては、金属粉末、金属又は非金属の酸化物、アルミノ珪酸塩を含む金属珪酸塩、金属炭化物、金属窒化物、金属酸塩、金属ハロゲン化物又はカーボン等が挙げられ、例えばシリカ、アルミナ、ケイ酸アルミナ、タルク、マイカ、シラスバルーン、グラファイト、ガラスファイバー、シリコンファイバー、カーボンファイバー、アスベスト、チタン酸カリウムウィスカー、亜鉛華、窒化アルミ、酸化マグネシウム、窒化ホウ素等が挙げられる。
【0033】
有機樹脂粉体としては、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アクリルエステル樹脂、アクリルニトリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリジアリールフタレート樹脂、ポリキシレン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリカーボネートのような絶縁性樹脂粉体、ポリアニリン樹脂、ポリアセチレン樹脂、ポリチオフェン樹脂、ポリピロール樹脂のような低い導電性樹脂粉体等が挙げられ、必要に応じて熱処理を行い、炭素にしてもよい。
【0034】
特に高度な信頼性を要求される電子材料に使用するには、イオン性の金属を含まず、耐熱的にも安定な無機粉体が好ましく、特にケイ素系高分子化合物と相性のよい、シリカであることが好ましい。特に比表面積を低くするためには、表面に繋がる空洞を内部に持たないものが好ましく、溶融石英粉が好適に用いうる。
【0035】
また、オルガノポリシロキサンに分散させたとき比重差により沈降しない低比重導電性粉体の点からは、中空粒子が好ましく、無機中空粉体又は耐熱性のある有機中空粉体等が利用できる。ガラス中空粉体としては、Cel−star(東海工業製)、スコッチライト(住友3M製)、中空ガラスビーズ(東芝バロティーニ製)の名称で市販されており、アルミノシリケートからなる中空粉体は、E−Spheres(秩父小野田製)、Fillite(日本フィライト製)、シラスバルーン(丸中白土(株)製)等が挙げられる。耐熱性のある有機中空粉体としては、フェノール樹脂製のものが、Phenoset(巴工業製)として市販されている(以上商品名)。
【0036】
導電性粉体は、この基材粉体の表面に還元作用を有するケイ素系高分子層が形成され、ケイ素系高分子層の表面上をメッキによる金属で被覆されたものである。好ましくは、その後、ケイ素系高分子層の一部又は全部をセラミック化することによって得られた層である。基材粉体の表面に還元作用を有するケイ素系高分子層を形成することにより、基材粉体と金属の界面の接着安定性が向上する。基材粉体の表面に還元作用を有するケイ素系高分子層を形成する方法としては、基材粉体を還元性を有するケイ素系高分子で処理して、基材粉体の表面に還元性ケイ素系高分子の層を形成する方法が挙げられる。
【0037】
還元作用を持つケイ素系高分子としては、Si−Si結合又はSi−H結合を有するケイ素系高分子が挙げられ、このようなケイ素系高分子としては、ポリシラン、ポリカルボシラン、ポリシロキサン、ポリシラザン等が挙げられ、中でもポリシラン、Si原子に直接結合した水素原子を有するポリシロキサンが好適に用いられ、特に下記一般式(3)で表わされるポリシランが好適に用いられる。
【0038】
(R Si)          (3)
(式中、R、Rは水素原子又は置換もしくは非置換の一価炭化水素基、Xは、Rと同様の基、アルコキシ基、ハロゲン原子、酸素原子、又は窒素原子を示し、R、Rは同一であっても異なっていてもよい。b、c、及びdは、0.1≦b≦2、0≦c≦1、0≦d≦0.5、1≦b+c+d≦2.5を満足する数であり、eは、4≦e≦100,000を満足する整数である。)
【0039】
、Rは水素原子又は置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、一価炭化水素基としては、炭素数1〜12、好ましくは1〜6の脂肪族又は脂環式炭化水素基、炭素数6〜14、好ましくは6〜10の芳香族炭化水素基等が挙げられる。脂肪族又は脂環式炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ベンジル基等が挙げられる。なお、これらの水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、アミノアルキル基等で置換したもの、例えばモノフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、m−ジメチルアミノフェニル基等が挙げられる。
【0040】
Xは、Rと同様の基、アルコキシ基、ハロゲン原子、酸素原子、又は窒素原子であり、アルコキシ基としては、特に炭素数1〜4のメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられ、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。Xとしては、特に、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0041】
bは0.1≦b≦2、好ましくは0.5≦b≦1であり、cは0≦c≦1、好ましくは0.5≦c≦1であり、dは0≦d≦0.5、好ましくは0≦d≦0.2であり、かつ1≦b+c+d≦2.5、特に1.5≦b+c+d≦2を満足する数であり、eは4≦e≦100,000、好ましくは10≦e≦10,000の範囲の整数である。
【0042】
また、下記一般式(4)で表わされるポリシロキサンも好適に用いられる。
(R SiO       (4)
(式中、R、Rは水素原子又は置換もしくは非置換の一価炭化水素基、アルコキシ基又はハロゲン原子を示し、R、Rは同一であっても異なっていてもよい。fは、0.1≦f≦2、gは、0≦g≦1、hは、0.01≦h≦1、iは、0.5≦i≦1.95であり、かつ、2≦f+g+h+i≦3.5を満足する数、jは2≦j≦100,000を満足する整数である。)
【0043】
、Rは、水素原子又は置換もしくは非置換の一価炭化水素基、アルコキシ基又はハロゲン原子であり、一価炭化水素基としては、炭素数1〜12、好ましくは1〜6の脂肪族又は脂環式炭化水素基、炭素数6〜14、好ましくは6〜10の芳香族炭化水素基等が挙げられる。脂肪族又は脂環式炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ベンジル基等が挙げられる。なおこれらの水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、アミノアルキル基等で置換したもの、例えばモノフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、m−ジメチルアミノフェニル基等が挙げられる。アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜4のもの、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、通常メトキシ基、エトキシ基が用いられる。
【0044】
fは0.1≦f≦2、好ましくは0.5≦f≦1であり、gは0≦g≦1、好ましくは0.5≦g≦1であり、hは0.01≦h≦1、好ましくは0.1≦h≦1、であり、iは0.5≦i≦1.95、好ましくは1≦i≦1.5であり、かつ、2≦f+g+h+i≦3.5、好ましくは2≦f+g+h+i≦3.2を満足する数である。jは2≦j≦100,000、好ましくは10≦j≦10,000の範囲の整数である。
【0045】
ケイ素系高分子層の厚さは、0.0001〜1.0μmが好ましく、特に0.001〜0.5μmが好ましい。厚さが0.0001μm未満だと密着性に優れたメッキが良好に行われない場合があり、1.0μmを超えると高価となる割には特性の向上が見られない場合がある。
【0046】
被覆する金属としては、例えば、ニッケル、銅、銀、コバルト、タングステン、鉄、亜鉛、金、白金、パラジウム等の金属を含んでなるものが好適に用いられる。この単独の金属の他、合金、例えばNi−Co、Ni−W、Ni−Fe、Co−W、Co−Fe、Ni−Cu、Ni−P、Au−Pd、Au−Pt、Pd−Pt等から構成させることができる。かかる合金被膜を形成させるには所望に応じた複数の金属塩を使用したメッキ液を用いればよい。
【0047】
(C)成分の導電性粉体は、基材粉体の表面にケイ素系高分子層が形成され、ケイ素系高分子層の表面上を金属で被覆してなる金属層が形成された導電性粉体であるが、この場合、金属層は、第一金属層及び第二金属層が順次形成されていることが好ましく、特に最外表面にあたる第二金属層が貴金属層であることが好ましい。
【0048】
具体的には、第一金属層がニッケル、銅、銀、コバルトからなる群から選ばれる金属よりなり、第二金属層が銀、金、パラジウム、白金からなる群から選ばれる金属よりなる導電性粉体であることが好ましい。特に、第一金属層がニッケル、第二金属層が金であり、基材粉体−ケイ素系高分子層−ニッケル層−金層という4層構造を持つ金属被覆粉体が好ましい。これは、粉体の最表面となる第二金属層は、貴金属の中でも高い導電率を持ち、高温、多湿雰囲気下に長時間置かれても酸化や硫化により抵抗率が上がることのない金が好ましく、第一金属層は、低価格、耐食性、適度な硬度があり、第二金属層の下地層として安定に保持する層となるニッケルが好ましいからである。
【0049】
金属層の厚さは、0.01〜10.0μm、好ましくは0.1〜2.0μmである。0.01μm未満だと、粉体を完全に被いかつ十分な硬度や耐食性が得られにくくなる場合があり、一方10.0μmを超えると金属の量が多くなり、高価となりかつ比重が高くなるため、経済的に好ましくない。この場合、第一金属層の厚さは0.1〜1.9μm、第二金属層の厚さは0.01〜1.0μmが好ましい。また、(C)成分は、ケイ素系高分子層が部分的又は全部がセラミック化された層であることが好ましい。
【0050】
(C)成分の導電性粉体は、下記工程により得ることができる。
基材粉体をトルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素溶媒中にて還元性ケイ素系高分子化合物で処理し、粉体表面に該還元性ケイ素系高分子化合物の層を形成させ(第一工程)、得られた粉体を凝集のない状態で分散させ、次いでこの粉体を塩化パラジウムのような標準酸化還元電位0.54V以上の金属からなる金属塩で処理し、還元性ケイ素系高分子層上に金属コロイドを析出させて、金属コロイド被覆粉体を得(第二工程)、その後無電解メッキ液で処理して、上記粉体の表面に第一の金属層を析出させ、必要により無電解メッキ液、電気メッキ液で処理して第二の金属層を析出させる(第三工程)ことで導電性粉体を製造する。さらに、得られた導電性粉体を200℃以上の温度で熱処理して、還元性ケイ素系高分子化合物の一部又は全部をセラミック化することが好ましい。
【0051】
第三工程を具体的に説明すると、第二工程後、金属コロイド被覆粉体を無電解メッキ処理し、第一の金属層を形成する。無電解メッキ液は、必須成分であるメッキ金属塩液と還元剤液と任意成分である錯化剤、pH調整剤、界面活性剤等を含有する。
【0052】
メッキ金属塩液は、上記被覆金属として挙げられた金属の塩が含まれる。還元剤液としては、次亜リン酸ナトリウム、ホルマリン、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム等が挙げられ、pH調整剤としては酢酸ナトリウム等が挙げられ、錯化剤としてはフェニレンジアミンや酒石酸ナトリウムカリウム等が挙げられる。
【0053】
メッキ金属塩液と還元剤液の配合割合は、それらの組み合わせにより異なるため一様ではないが、還元剤は、酸化等による無効分解で消費されるため金属塩より過剰に用いられ、通常は金属塩の1.1〜5倍モルの還元剤が使用される。通常は無電解メッキ液として市販されており、安価に入手することができる。
【0054】
メッキ温度は、通常15〜100℃であるが、浴中の金属イオン拡散速度が速くメッキ金属のつきまわりが良く、かつ浴成分の揮発による減少、溶媒の減少等が比較的少ない40〜95℃が好ましく、特に65〜85℃が好ましい。40℃より低いとメッキ反応の進行が非常に遅く、実用的でない場合があり、95℃より高いと溶媒に水を用いていることから溶媒の蒸発が激しく、浴管理が難しくなる場合がある。
【0055】
このように第一の金属層を形成した後、この金属層が酸化されないうちにすぐに耐酸化性の貴金属からなる第二の金属層を形成させることが好ましい。かかる貴金属層を形成させるために用いる無電解メッキ液は、上記の方法により調製したものを用いればよいが、その際に使用する金属としては、例えば、金、白金、パラジウム、銀等の単独の金属の他、合金、例えばAu−Pd、Au−Pt、Pd−Pt等が挙げられる。この中で、金が安定性の面から、また銀が価格の面から最も好ましい。
【0056】
第一の金属層を形成させた粉体に対する第二の金属層の表面被膜を形成する方法としては、無電解メッキ、電気メッキ、置換メッキのいずれの方法でもよいが、無電解メッキの場合は、上記の第三工程と同様の方法で行うことができる。
【0057】
これらの工程終了後に、不要な金属塩、還元剤、錯化剤、界面活性剤等を除くため、十分な洗浄を行うとよい。
【0058】
最後に、得られた金属被覆粉体を、アルゴン、ヘリウム、窒素等の不活性気体、又は水素、アルゴン−水素、アンモニア等の還元性気体の存在下に150℃以上の温度で熱処理することが好ましい。不活性気体又は還元性気体処理条件は、通常200〜900℃、処理時間は1分〜24時間が好適に用いうる。より好ましくは、200〜500℃で処理時間は30分〜4時間である。これにより、粉体と金属層間にある還元性ケイ素系高分子の一部又は全部は、セラミックに変化し、より高い耐熱性と絶縁性と密着性を持つことになる。このときの雰囲気を水素のような還元系で行なうことにより、金属中の酸化物を減少させ、ケイ素系高分子を安定な構造に変えることで、粉体と金属が強固に結合し、高い導電性を安定的に示す粉体を得ることができる。
【0059】
(C)成分の導電性粉体の配合量は、(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して3〜300重量部、特に5〜200重量部の範囲とすることが好ましい。
【0060】
(D)成分は、(A)成分を硬化し得る量の架橋剤である。架橋剤としては、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金系触媒、又は有機過酸化物が好ましい。
【0061】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金系触媒は架橋剤として機能するもので、ケイ素原子に結合している水素原子が(A)成分のオルガノポリシロキサン中のアルケニル基とヒドロシリル化反応して架橋する。オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、
1分子中にケイ素原子に直接結合している水素原子を少なくとも2個含有するものが好ましく、下記平均組成式(5)
SiO(4−s−t)/2       (5)
(式中、RはRと同様の基で、好ましくは脂肪族不飽和結合を有さないものである。s、tは0≦s<3、0<t<3、0<s+t<3の数である。)
で表されるものが好ましく、特に、下記一般式で示されるものが挙げられる。尚、下記式中Meはメチル基を示す。
【0062】
【化1】
Figure 2004091750
(式中、k、m、n、p、q及びrは2以上の整数、oは3以上の整数を示す。)
【0063】
また、MeHSiO1/2単位及び/又はMeHSiO2/2単位を含み、さらにMeSiO1/2単位、MeSiO2/2単位、(CSiO2/2単位、MeSiO3/2単位、(C)SiO3/2単位及びSiO4/2単位から選ばれる少なくとも1種の単位を有するハイドロジェンポリシロキサンを使用することができる。
【0064】
これらの1種又は2種以上を選んで配合することができるが、その配合量はケイ素原子に直接結合した水素原子の全原子数(モル数)(H)と(A)成分のオルガノポリシロキサン中の全アルケニル基のモル数(Vi)の比(H)/(Vi)が0.1〜15、特に1〜10の範囲になるように配合することが好ましい。この比が0.1未満だと架橋密度が低くなって凝集力も低くなり、加熱すると(A)成分のクラッキングにより粘着剤が発泡する場合があり、一方15を超えるとタック及び粘着力が低くなると共に水素ガスによる発泡が生じ易くなる場合がある。
【0065】
白金系触媒はヒドロシリル化反応を促進する触媒で、金属白金でも白金化合物でもよい、具体的には塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィンとの錯体、塩化白金酸とビニルシロキサンとの錯体等が例示されるが、その添加量は(A)〜(C)成分の合計量に対して1〜5,000ppm、特に5〜2,000ppmが好ましい。配合量が1ppm未満だと架橋密度が低く凝集力が低下する場合があり、5,000ppmを超えるとタック及び粘着力が低くなると共に可使時間が短くなる場合があり、経済的にも不利になる。さらに、可使時間を長くする目的で、各種のエチニル化合物、アミン化合物、リン化合物等を付加反応(ヒドロシリル化反応)の抑制剤として配合することができる。
【0066】
有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、過酸化クミル、過酸化t−ブチルクミル、過酸化t−ブチル、過酸化2,4−ジクロロベンゾイル、過酸化t−ブチルイソブチレート、過酸化t−ブチルベンゾエート、過酸化t−ブチル−2−エチルヘキサレート、2,2−ビス過酸化t−ブチルオクタン、1,1−ビス過酸化t−ブチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ過酸化ベンゾイルヘキサン等が挙げられる。(D)成分の架橋剤は、これらの1種又は2種以上を選んで配合するが、その配合量は(A)〜(C)成分の合計量に対し、0.5〜5重量%、特に1〜3重量%とすることが好ましく、配合量が0.5重量%未満だと架橋密度が低く凝集力が低下する場合があり、5重量%を超えるとタック及び粘着力が低くなると共に過酸化物の分解残渣が残存しやすくなる場合がある。
【0067】
なお、本発明の組成物には上述の成分の他に、本発明の目的を損なわない範囲で、その他の成分として分散剤、難燃剤、耐熱性向上剤、着色剤等を必要に応じて添加することができる。
【0068】
本発明の粘着剤組成物は、まず(A)成分と(B)成分とを25〜150℃で1〜48時間混合・反応させる。この際アルカリ縮合触媒、希釈溶剤を用いてもよい。また、(A)、(B)成分は、単純に混合しただけでもよい。次いで得られた反応物又は混合物に(C)、(D)成分を混合して得ることができる。
【0069】
本発明の粘着剤組成物は、無溶剤下、又は塗工性改良や膜厚制御を目的として溶剤で希釈して用いることができる。溶剤としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0070】
このようにして得られた粘着剤組成物を、種々の基材の片面又は両面に塗布し硬化させて粘着層を形成させることにより、優れた接着特性が得られる。基材としては、シリコーンゴムシート、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド等のプラスチックフィルム、和紙、合成紙等の紙、布、グラスウール、金属箔等種々の材質の材料が使用できる。
【0071】
硬化条件は、(D)成分の架橋剤がオルガノハイドロジェンポリシロキサン及び白金系触媒の場合は、100〜130℃で1〜3分間、有機過酸化物の場合は、130〜200℃で1〜15分間が一般的に用いられる。
【0072】
本発明の導電性シリコーン粘着剤組成物によれば、シリコーンゴム等に対する良好な接着性を有し、かつシリコーンゴムを使用する温度領域で安定な導電性と粘着性を有する硬化物となる導電性シリコーン粘着剤組成物を得ることができる。特に本発明においては、低比重、高耐熱性、高導電性の金属被覆粉体を導電性粉体として用いていることで高安定性となるため、高信頼性の電子材料用途に使用できる。特に、導電性シリコーンゴムコネクタの固定に使用できる耐熱性粘着テープや面状発熱体との電気接続、電気・電子機器のデジタル装置から輻射する不要な漏洩電磁波のシールド用、面発熱体等の用途に好適である。
【0073】
【実施例】
以下、合成例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において部は重量部を示し、粘度は25℃における値、Meはメチル基である。
【0074】
[合成例1]
ケイ素系化合物(ポリシラン)の合成
フェニルハイドロジェンポリシラン(以下PPHSと略記する)を、以下の方法により製造した。
アルゴン置換したフラスコ内にビス(シクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウムのTHF溶液にメチルリチウムのジエチルエーテル溶液を添加し、30分室温で反応させた後、溶剤を減圧にて留去することで、系内で触媒を調製した。これに、フェニルトリヒドロシランを触媒の10,000倍モル添加し、100〜150℃で3時間、次いで200℃で8時間加熱撹拌を行った。得られた生成物をトルエンに溶解させ、塩酸水洗を行うことで、触媒を失活除去した。このトルエン溶液に硫酸マグネシウムを加え、水分を除去し、濾過した。これにより、ほぼ定量的に重量平均分子量1,200、ガラス転移点65℃のPPHSを得た。
【0075】
[合成例2]
中空粉体のケイ素系化合物処理(第一工程)
中空粉体としては、球状の中空ガラス粉セルスターPZ−6000(東海工業(株)製:平均粒径40μm:真比重0.75,商品名)を用いた。破砕して破片となったり中空になっていない粒子を沈殿させて除いてから用いた。
【0076】
PPHS0.5gをトルエン200gに溶解させ、この溶液を中空粉体100gに加え、1時間撹拌した。ロータリーエバポレーターにて、60℃の温度、45mmHgの圧力で、トルエンを留去させ、乾燥させた。このポリシラン処理粉体は疎水化されているので、界面活性剤として、サーフィノール504(日信化学工業(株)製界面活性剤,商品名)の0.5%水溶液50gに、このPPHS処理粉体100gを撹拌しながら投入し、水に分散させ、PPHS処理粉体の水分散体を得た。
【0077】
パラジウムコロイド析出粉体の製造(第二工程)
PPHS処理粉体の水分散体150gに対して、1%PdCl水溶液を70g(塩化パラジウムとして0.7g、パラジウムとして0.4g)添加して、30分撹拌後、ろ過し、水洗した。これらの処理により、粉体表面がパラジウムコロイドが付着した黒灰色に着色したパラジウムコロイド析出粉体が得られた。
【0078】
ニッケルメッキ化(第三工程)
得られたパラジウムコロイド析出粉体をろ過により単離し、水洗後直ちにメッキ化を行った。ニッケルメッキ用還元液として、イオン交換水で希釈した次亜リン酸ナトリウム2.0M、酢酸ナトリウム1.0M、グリシン0.5Mの混合溶液100gを用いた。
【0079】
パラジウムコロイド析出粉体を、KS−538(信越化学工業(株)製:消泡剤,商品名)0.5gと共にニッケルメッキ還元液中に分散させた。撹拌しながら液温を室温から65℃に上げた。イオン交換水で希釈した水酸化ナトリウム2.0Mを空気ガスにより同伴させながら滴下し、同時にイオン交換水で希釈した硫酸ニッケル1.0Mを窒素ガスにより同伴させながら、還元液中に滴下した。すると、細かい発泡とともに粉体が黒色となり、粉体表面に金属ニッケルが析出し、全面に金属ニッケルが析出した粉体が得られた(Ni−粉体と略記する)。
【0080】
銀メッキ化
得られたNi−粉体を、銀メッキ液S−700(高純度化学研究所製,商品名)100g中に分散させた。撹拌しながら液温を室温から70℃に上げると、細かい発泡とともに粉体が銀色となり、粉体表面に銀が析出した粉体が得られ、このメッキ溶液中に浮遊している粉体を、濾過、水洗、乾燥(50℃で30分)した後、水素で置換された電気炉にて200℃で1時間焼成し、粉体を得た(Ag−Ni粉体と略す)。
【0081】
得られたAg−Ni粉体は、実体顕微鏡観察により、粉体全表面が銀により覆われた粉体であることが分かった。この粉体は、顕微鏡により観察した外観は球状銀色、比重は1.1であった。金属の含有量は、銀10重量%、ニッケル30重量%であった。
【0082】
Ag−Ni粉体の導電性粉体の抵抗率は、4端子を持つ円筒状のセルに粉体を充填し、両末端の面積0.2cmの端子からSMU−257(ケースレ社製電流源)より1〜10mAの電流を流し、円筒の中央部に0.2cm離して設置した端子から、2000型ケースレ社製ナノボルトメーターで電圧降下を測定することで求めた。抵抗率は、3.5mΩ・cmであった。
【0083】
[合成例3]
銀メッキシリカ粉体の製造
中空粉体の代わりに球状シリカ粉体US−10(三菱レーヨン製:平均粒径10μm:真比重2.2,商品名)を分級により粒径を揃えたものを用いた。そのほかは合成例2と同様に操作したところ、速やかにメッキ反応が進行し、良好にメッキされた粉体を得た。
【0084】
この粉体は、外観は球状銀色、比重は2.9であった。金属の含有量は、銀12重量%、ニッケル20重量%で、抵抗率は、1.2mΩ・cmであった。
【0085】
[合成例4]
金メッキシリカ粉体の製造
銀メッキの代わりに金メッキ液として、金メッキ液K−24N(高純度化学研究所製,商品名)100gを希釈せず用いた。そのほかは合成例3と同様に操作した。全面に金属ニッケルが析出した粉体を、金メッキ液中に分散させた。撹拌しながら液温を室温から95℃に上げると、細かい発泡とともに粉体が金色となり、粉体表面に金が析出した粉体を得た。
この粉体は、顕微鏡により観察した外観は黄色、比重は3.1であった。金属の含有量は、金4重量%、ニッケル35重量%で抵抗率は、3.0mΩ・cmであった。
【0086】
[実施例、比較例]
下記の(1)〜(4)を用いて粘着剤組成物を調製した。
(1)両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキシ−ビニルメチルシロキシポリシロキサン共重合体(ビニル基含有量0.05モル%、相対粘度2.8)(以下シリコーン生ゴムと略記する)。
(2)MeSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなり、そのモル比が0.85であり、重量平均分子量が6,000であるメチルポリシロキサン共重合体(以下MQレジンと略記する)。
(3)導電性粉体は、銀メッキ中空ガラス粉体(合成例2)、銀メッキシリカ粉体(合成例3)、金メッキシリカ粉体(合成例4)、銀粉3050HD(三井金属鉱業(株)製:比重10.5,商品名)、銀メッキガラス粉(東芝タンガロイ社製:比重2.7)を用いた。
(4)架橋剤は、(4−1)分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(Si−H結合水素原子含有量=1.5重量%:平均組成式MeSiO(MeHSiO)38SiMe:粘度30センチポイズ)(以下Hシロキサンと略記する。)、(4−2)エチニルシクロヘキサノール(以下制御剤と略記する。)、(4−3)Cat−PL−50T(信越化学工業(株)製:塩化白金酸のジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液,商品名)(以下白金触媒と略記する。)、(4−4)C−1(信越化学工業(株)製:ベンゾイルパーオキサイド50%含有ポリシロキサン,商品名)(以下、有機過酸化物と略記する。)を用いた。
【0087】
[実施例1]
シリコーン生ゴム35部に、MQレジンの60%トルエン溶液72部(ポリシロキサンの純分として43部)、及びトルエン38部の混合物を110℃で6時間加熱撹拌した後、冷却して粘稠溶液を得た。
この溶液145部に対し、合成例4で得られた金メッキシリカ粉体20部を混合した。さらに、(4−1)Hシロキサン1.5部、(4−2)制御剤0.5部及び(4−3)白金触媒0.3部を混合して、不揮発分60%の導電性シリコーン粘着剤組成物を得た。
【0088】
得られた導電性シリコーン粘着剤組成物を厚み18μm、幅25mmの銅箔基材に乾燥膜厚が40μmになるように塗工した後、120℃で1分間加熱して硬化させ銅箔の粘着テープを作製した。以下の方法により、導電性シリコーン粘着剤組成物及びこの粘着テープを用いて、導電粘着剤としての加工性、粘着性、導電性を測定し、導電粘着剤としての特性評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
[実施例2]
実施例1と同じ条件で、Hシロキサン、制御剤及び白金触媒の代わりに(4−4)有機過酸化物2.0部(ベンゾイルパーオキサイド100%換算で1.0部)を混合して、不揮発分60%の導電性シリコーン粘着剤組成物を得た。
得られた導電性シリコーン粘着剤組成物を厚み18μm、幅25mmの銅箔基材に乾燥膜厚が40μmになるように塗工した後、165℃で5分間加熱で硬化させ銅箔の粘着テープを作製し、実施例1と同様の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0090】
[実施例3〜6、比較例1〜3]
表1の組成の導電性シリコーン粘着剤組成物及び粘着テープを、表1に記載の硬化条件とする他は、実施例1と同様の条件で作製し、実施例1と同様の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0091】
加工性(塗工性)
アプリケータを用いて塗工した場合の、製造直後及び1週間後の外観、分散の状態と製膜性について、下記評価基準に基づき4段階で評価した。
◎:完全分散しており良好
○:分散し、沈殿物があるが良好
△:沈殿物と上部分離がありやや不良
×:完全分離しており不良
導電性(抵抗率)
導電性シリコーン粘着剤組成物溶液を、厚み18μm、幅25mmの銅箔基材に硬化後の厚みが40μmとなるようにアプリケータを用いて塗工したのち、加熱硬化させ粘着テープを作製した。この粘着テープの粘着面に1辺10mm×10mmの金メッキ銅板電極の底面を貼りつけた。この電極と銅箔基材の背面(粘着剤を塗工しない面)との電気抵抗を4端子法で、−10〜10mAの電流を流したときの電圧を測定することで、抵抗値を測定した。この値から、電極の面積1cm、電極間距離40μmとして、抵抗率を算出した。
導電性(ゴムコンタクト抵抗値)
導電性シリコーン粘着剤組成物溶液を、厚み2mmのコネクト用導電性シリコーンゴムシート基材X−30−3323Aに硬化後の厚みが40μmとなるようにロッドコータを用いて塗工したのち硬化させ、粘着性シリコーンゴムシートを作製した。この粘着性シリコーンゴムシートの粘着面に1辺10mm×10mmの金メッキ銅板電極の底面を貼りつけた。この電極とゴムの背面(粘着剤を塗工しない面)との電気抵抗値を測定した。また、この粘着性シリコーンゴムシートの調製直後(初期)、200℃で保持した24時間後、100時間後、200時間後のゴムの抵抗値を測定した。なお、導電性シリコーン粘着剤組成物を塗布しない導電性シリコーンゴムシート基材X−30−3323Aのゴムの抵抗値は1.5mΩで、200℃で保持した200時間後でも変化しなかった。
粘着性(粘着力及び保持力)
導電性評価と同様の方法で粘着テープを作製し、この粘着テープをシリコーゴムシートに貼りつけ、ゴム層で被覆された重さ2kgのローラーを1往復させることにより圧着した。室温で約20時間放置したのち、引っ張り試験機を用いて300mm/分の速度、180゜の角度でテープをシリコーンゴムシートから引き剥がすのに要する力(N/25mm)を測定した。
また、この粘着テープをステンレス板の端部に粘着面積が25×25mmとなるように貼りつけ、ステンレス板を垂直に支持し粘着テープの下端に重さ1kgの荷重をかけ、250℃で1時間放置した後のずれ距離を読みとり、顕微鏡で測定した。
【0092】
【表1】
Figure 2004091750
シリコーン生ゴム:両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキシ−ビニルメチルシロキシポリシロキサン共重合体(ビニル基含有量0.05モル%、相対粘度2.8)
MQレジン:MeSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなり、そのモル比が0.85であるメチルポリシロキサン共重合体
金メッキシリカ粉体:(合成例4)
銀メッキシリカ粉体:(合成例3)
銀メッキ中空ガラス粉体:(合成例2)
銀粉:3050HD(三井金属鉱業(株)製:比重10.5)
銀メッキガラス粉:(東芝タンガロイ社製:比重2.7)
Hシロキサン:分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(Si−H結合水素原子含有量=1.5重量%:平均組成式MeSiO(MeHSiO)38SiMe:粘度30センチポイズ
制御剤:エチニルシクロヘキサノール
白金触媒:Cat−PL−50T(信越化学工業(株)製:塩化白金酸のジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液,商品名)、錯体中の白金金属が5ppmとなる量
有機過酸化物:C−1(信越化学工業(株)製:ベンゾイルパーオキサイド50%含有ポリシロキサン,商品名)
*1:総合評価
◎:非常に良好
○:良好
△:やや不良
×:不良
【0093】
4段階で評価した結果、実施例の導電性シリコーン粘着剤組成物は、加工性、粘着性、導電性の全てにおいて○又は◎であったが、比較例は、1つ以上の項目が×であった。
【0094】
【発明の効果】
本発明の導電性シリコーン粘着剤組成物によれば、シリコーンゴム等に対する良好な接着性を有し、かつシリコーンゴムの使用する温度領域で安定な導電性と粘着性を有する硬化物となる導電性シリコーン粘着剤組成物を得ることができる。本発明の導電性シリコーン粘着剤組成物は、高信頼性の電子材料用途に使用できる。

Claims (4)

  1. (A)下記平均組成式(1)
    SiO(4−a)/2          (1)
    (式中、Rは同一又は異種の置換もしくは非置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基、aは1.95〜2.05の正数である。)
    で表されるオルガノポリシロキサン              100重量部
    (B)下記一般式(2)
    SiO1/2            (2)
    (式中、Rは同一又は異種の水酸基又は置換もしくは非置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基である。)
    で表される構造単位とSiO4/2単位を含有し、これらのモル比が(R SiO1/2)/(SiO4/2)=0.5〜1.2であるオルガノポリシロキサン    50〜250重量部
    (C)無機粉体又は有機樹脂粉体からなる基材粉体の表面に還元作用を有するケイ素系高分子層又はその一部もしくは全部をセラミック化した層が形成され、この層の表面上をメッキによる金属で被覆してなる導電性粉体
    (A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して3〜300重量部
    (D)架橋剤                  (A)成分を硬化し得る量を含有する導電性シリコーン粘着剤組成物。
  2. (C)成分の導電性粉体が、基材粉体が比重が3.5以下の無機粉体であり、さらに最表面を貴金属で被覆してなる導電性粉体であることを特徴とする請求項1記載の導電性シリコーン粘着剤組成物。
  3. 貴金属が、銀、金、パラジウム、白金からなる群から選ばれる貴金属であることを特徴とする請求項2に記載の導電性シリコーン粘着剤組成物。
  4. (D)成分の架橋剤が、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金系触媒、又は有機過酸化物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の導電性シリコーン粘着剤組成物。
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