JP2004053799A - 光学フィルター用光吸収剤及び光学フィルター - Google Patents
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Abstract
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学フィルター用光吸収剤及び該光吸収剤を含有する光学フィルターに関し、詳しくは、画像表示装置、特にプラズマディスプレイパネル(PDP)に好適である特定の有機色素アニオンとカチオンとの塩化合物からなる光学フィルター用光吸収剤及びこれを含有する光学フィルターに関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
近年、多種の画像表示装置(ディスプレイ)、例えば、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)、蛍光表示管、電界放射型ディスプレイ等の開発が行なわれ、これらを組み込んだ機器が実用化されている。これらの各種画像表示装置の中でも、ハイビジョン用大型壁掛けテレビ、マルチメディア用大画面ディスプレイとしてカラープラズマディスプレイ(PDP)が注目を浴びている。
【0003】
これらの画像表示装置は、原則として、赤、青、緑の三原色の光の組合せでカラー画像を表示する。しかし、画像表示装置からは不必要な波長の光も発せられており、(近)赤外線リモコンの誤作動の原因となったり、表示画像の品質に影響を及ぼす等の問題が生じている。そこで、特開昭58−153904号公報、特開昭61−188501号公報、特開平3−231988号公報、特開平5−205643号公報、特開平9−145918号公報、特開平9−306366号公報、特開平10−186127号公報、特開平10−26709号公報、特開平11−101911号公報、特開平11−101912号公報、特開平11−109126号公報、特開平11−323121号公報、特開平11−323311号公報、特開2000−193820号公報、特開2000−241620号公報、特開2000−250420号公報、特開2000−266930号公報、特開2002−148430号公報等には、不必要な特定の波長の光を吸収する光学フィルターの使用が報告されている。
【0004】
光学フィルター用光吸収剤には、特定の波長に吸収を有する(ポリ)メチン系、ローダミン系、オキソノール系、キサンテン系、キノン系、アゾ系、フタロシアニン系、ジチオール金属錯体系の化合物が用いられている。しかしながら、これまで使用されてきた化合物は、耐光性が不十分であった。
【0005】
従って、本発明の目的は、光学フィルター用途に適する耐光性に優れた光吸収剤、及び該光吸収剤を含有する光学フィルターを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、検討を重ねた結果、対イオンに特定の分子構造を有するアニオンを用いた有機色素化合物が、上記課題を解決し得ることを知見し、本発明に到達した。
【0007】
即ち、本発明は、下記一般式(I)で表されるアニオンと有機色素カチオンとの塩化合物からなる光学フィルター用光吸収剤、及び該光吸収剤を含有する光学フィルターを提供するものである。
【0008】
【化6】
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0010】
本発明の光学フィルター用光吸収剤は、上記一般式(I)で表されるアニオンと有機色素カチオンとの塩化合物からなる。該有機色素カチオンは、特に制限を受けるものではなく、除去する光の波長により、任意に選択されるものである。本発明の光学フィルター用光吸収剤においては、該有機色素カチオンが(ポリ)メチンカチオン又はローダミンカチオンであると、光吸収特性が光学フィルター用途に適したものとなるので好ましい。
【0011】
有機色素カチオンとして(ポリ)メチンカチオンを用いた塩化合物としては、下記一般式(II)で表される両端に環構造を有するものが、シャープな光吸収を有し、吸光係数も大きいので、特定の波長の光を選択的に除去する光学フィルター用途として好ましい。
【0012】
【化7】
【0013】
【化8】
【0014】
上記一般式(I)及び(II)において、Y0で表される炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、3−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル等が挙げられ、炭素数6〜30のアリール基としては、フェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、4−第三ブチルフェニル、4−ヘキシルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル、4−オクチルフェニル、4−(2−エチルヘキシル)フェニル、4−ステアリルフェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,4−ジ第三ブチルフェニル、2,5−ジ第三ブチルフェニル、2,6−ジ−第三ブチルフェニル、2,4−ジ第三ペンチルフェニル、2,5−ジ第三アミルフェニル、2,5−ジ第三オクチルフェニル、2,4−ジクミルフェニル、シクロヘキシルフェニル、ビフェニル、2,4,5−トリメチルフェニル等が挙げられる。
【0015】
上記一般式(II)において、R1及びR1’で表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられ、炭素数6〜30のアリール基及び炭素数1〜8のアルキル基としては、上記Y0で記載のものが挙げられ、炭素数1〜8のアルコキシ基としては、メチルオキシ、エチルオキシ、イソプロピルオキシ、プロピルオキシ、ブチルオキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ等が挙げられる。R2及びR2’で表されるハロゲン原子、炭素数6〜30のアリール基及び炭素数1〜8のアルキル基としては、上記R1で記載のものが挙げられる。また、R3〜R9及びR3’〜R9’で表されるハロゲン原子及び炭素数1〜8で表されるアルキル基としては、上記R1で記載のものが挙げられ、隣の置換基と縮合環を形成する基により構成される縮合環としては、ベンゼン、ナフタレン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、メチルベンゼン、エチルベンゼン、メトキシベンゼン、エトキシベンゼン等の芳香族環;オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、イソオキサゾール環、ナフトオキサゾール環、インドレニン環、ベンゾインドレニン環、ナフトインドレニン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ナフトイミダゾール環、フラン環、ベンゾフラン環、ナフトフラン環、ピロール環、チオフエン環、ピリジン環、ピロロピリジン環、ピロール環、インドリジン環、インドール環、キノリン環、キノキサリン環、イミダゾキノキサリン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ナフトチアゾール環等の複素環;シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂肪族環が挙げられる。
【0016】
X及びX’で表される炭素数3〜6のシクロアルカン−1,1−ジイルとしては、シクロプロパン−1,1−ジイル、シクロブタン−1,1−ジイル、2,4−ジメチルシクロブタン−1,1−ジイル、3−ジメチルシクロブタン−1,1−ジイル、シクロペンタン−1,1−ジイル、シクロヘキサン−1,1−ジイル等が挙げられる。
【0017】
Y、Y’及びY2で表される炭素数1〜30の有機基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ペプタデシル、オクタデシル等のアルキル基、ビニル、1−メチルエテニル、2−メチルエテニル、プロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル、ぺンタデセニル、1−フェニルプロペン−3−イル等のアルケニル基、フェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、4−第三ブチルフェニル、4−ヘキシルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル、4−オクチルフェニル、4−(2−エチルヘキシル)フェニル、4−ステアリルフェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,4−ジ第三ブチルフェニル、シクロヘキシルフェニル等のアルキルアリール基、ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロパン−2−イル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル等のアリールアルキル基等、これらがエーテル結合、チオエーテル結合で中断されたもの、例えば、2−メトキシエチル、3−メトキシプロピル、4−メトキシブチル、2−ブトキシエチル、メトキシエトキシエチル、メトキシエトキシエトキシエチル、3−メトキシブチル、2−フェノキシエチル、3−フェノキシプロピル、2−メチルチオエチル、2−フェニルチオエチルが挙げられ、更にこれらの基は、アルコキシ基、アルケニル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。
【0018】
有機色素カチオンとして(ポリ)メチンカチオンを用いた上記塩化合物としては、上記一般式(II)において、環Aが(a)又は(d)で表される基であり、環A’が(a’)又は(d’)で表される基であるものが、吸光係数が大きいので好ましく、環Aが(a)で表される基であり、環A’が(a’)で表される基であるものがさらに好ましく、(a)中のX及び(a’)中のX’が、プロパン−2,2−ジイル、ブタン−2,2−ジイル、3−フェニルプロパン−1,1−ジイル、又はシクロヘキサン−1,1−ジイルであるものが最も好ましい。
【0019】
また、上記(ポリ)メチンカチオンにおいて、上記一般式(II)中の連結基Qは、除去する光の波長に合わせて適宜選択されるものである。例えば、除去する光の波長が500nm〜700nmの場合は、トリメチン鎖、テトラメチン鎖又はペンタメチン鎖を構成するものが選択され、700〜1200nmの場合は、ペンタメチン鎖、ヘキサメチン鎖又はヘプタメチン鎖を構成するものが選択される。また、これらの(ポリ)メチン鎖は、鎖中に環構造を含んでいてもよい。
【0020】
上記連結基Qとしては、下記群IIIの(1)〜(12)で表されるものが好ましい。下記群IIIの(1)〜(4)はトリメチン鎖を導入するものであり、(5)〜(8)はペンタメチン鎖を導入するものであり、(9)〜(12)はヘプタメチン鎖を導入するものである。
【0021】
【化9】
【0022】
上記群IIIの(1)〜(12)において、R10及びR11で表される炭素数6〜30のアリール基及び炭素数1〜8のアルキル基としては、前記R1で例示のものが挙げられ、Zで表される炭素数6〜30のアリール基及び炭素数1〜8のアルキル基としても同様に前記R1で例示のものが挙げられる。
【0023】
上記(ポリ)メチンカチオンの具体例としては、下記化合物No.1〜71が挙げられる。
【0024】
【化10】
【0025】
【化11】
【0026】
【化12】
【0027】
【化13】
【0028】
【化14】
【0029】
【化15】
【0030】
上記(ポリ)メチンカチオンと前記一般式(I)で表されるアニオンとの塩化合物は、その製造法により制限を受けることはなく、従来周知の方法に準じて製造することができる。例えば、(ポリ)メチンカチオンと既存のアニオン(塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、フッ素アニオン等のハロゲンアニオン;過塩素酸アニオン、塩素酸アニオン、チオシアン酸アニオン、六フッ化リンアニオン、六フッ化アンチモンアニオン、四フッ化ホウ素アニオン等の無機系アニオン;ベンゼンスルホン酸アニオン、トルエンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン等の有機スルホン酸アニオン;オクチルリン酸アニオン、ドデシルリン酸アニオン、オクタデシルリン酸アニオン、フェニルリン酸アニオン、ノニルフェニルリン酸アニオン、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスホン酸アニオン等の有機リン酸系アニオン;ベンゼンジスルホン酸アニオン、ナフタレンジスルホン酸アニオン等の二価のアニオン等)との塩化合物が入手できる場合は、ジフェニルアミン−4−スルホン酸ナトリウムを用いてアニオン交換することで得ることができ、(ポリ)メチンカチオンから製造する場合は、環構造を有する環状化合物と連結基鎖を導入するためのブリッジ剤化合物とを反応剤により反応させた後、アニオン交換を行うことで得ることができる。
【0031】
上記塩化合物を(ポリ)メチンカチオンから製造する方法としては、例えば、環Aが(a)であり、環A’が(a’)であり、連結基Qが(1)又は(2)の場合は、下記ルート▲1▼の製造方法が挙げられ、環Aが(d)であり、環A’が(d’)であり、連結基Qが(1)又は(2)の場合は、下記ルート▲2▼の製造方法が挙げられる。
【0032】
【化16】
【0033】
また、有機色素カチオンとしてローダミンカチオンを用いた塩化合物としては、下記一般式(III)で表される塩化合物が好ましい。
【0034】
【化17】
【0035】
上記一般式(III)において、R12〜R17で表される炭素数1〜8のアルキル基及び炭素数6〜30のアリール基としては、上記R1で例示のものが挙げられる。
【0036】
上記ローダミンカチオンの具体例としては、下記化合物No.72〜75が挙げられる。
【0037】
【化18】
【0038】
上記ローダミンカチオンと前記一般式(I)で表されるアニオンとの塩化合物は、その製造法によって制限を受けるものではなく、例えば、周知一般のローダミン化合物(ローダミンB、ローダミンBトーナー、ローダミンG、ローダミン6G、ローダミン6Gトーナー、ローダミン6Gレーキ等)から、ジフェニルアミン−4−スルホン酸ナトリウムを用いてアニオン交換することで得ることができる。
【0039】
本発明の光学フィルターは、本発明の光学フィルター用光吸収剤を含有するものであれば、その用途、構成等により特に制限を受けることはない。また、本発明の光学フィルター用光吸収剤の他に、補助的に他の光吸収性色素等を使用することもできる。これら、他の光吸収性色素としては、例えば、シアニン系、キノリン系、クマリン系、チアゾール系、オキソノール系、アズレン系、スクアリリウム系、アゾメチン系、アゾ系、ベンジリデン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ジチオール金属錯体系化合物等が挙げられる。
【0040】
また、本発明の光学フィルターにおいては、本発明の光学フィルター用光吸収剤や上記の他の光吸収性色素の、光あるいは熱に対する安定化を図る目的で、各種安定化剤を使用することができる。該安定化剤としては、例えば、ハイドロキノン誘導体(米国特許3935016号明細書、米国特許3982944号明細書)、ハイドロキノンジエーテル誘導体(米国特許4254216号明細書)、フェノール誘導体(特開昭54−21004号公報)、スピロインダン又はメチレンジオキシベンゼンの誘導体(英国特許出願公開2077455号明細書、英国特許2062888号明細書)、クロマン、スピロクロマン又はクマランの誘導体(米国特許3432300号明細書、米国特許3573050号明細書、米国特許3574627号明細書、米国特許3764337号明細書、特開昭52−152225号公報、特開昭53−20327号公報、特開昭53−17729号公報、特開昭61−90156号公報)、ハイドロキノンモノエーテル又はパラアミノフェノールの誘導体(英国特許1347556号明細書、英国特許2066975号明細書、特公昭54−12337号公報、特開昭55−6321号公報)、ビスフェノール誘導体(米国特許3700455号明細書、特公昭48−31625号公報)、金属錯体(米国特許4245018号明細書、特開昭60−97353号公報)、ニトロソ化合物(特開平2−300288号公報)、ジインモニウム化合物(米国特許465612号明細書)、ニッケル錯体(特開平4−146189号公報)、酸化防止剤(欧州特許820057号明細書)が挙げられる。また、本発明の光学フィルターは、一重項酸素等のクエンチャーとして、芳香族ニトロソ化合物、アミニウム化合物、イミニウム化合物、ビスイミニウム化合物、遷移金属キレート化合物等を含有してもよく、本発明の光学不ルター用光吸収剤の効果を阻害しない範囲において、ビスチオラート金属錯体アニオン等のクエンチャーアニオンを用いてもよい。
【0041】
本発明の光学フィルターは、画像表示装置用の光学フィルターとして好適に用いられる。画像表示装置用の光学フィルターには、例えば、表示品質向上のために不必要な波長の光を除くもの、リモコンの誤作動等を防止するもの、カラー表示のために用いられるもの(カラーフィルター)がある。上記画像表示装置としては、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置が挙げられる。本発明の光学フィルター用光吸収剤を含有してなる光学フィルターは、プラズマディスプレイパネル(PDP)のフィルターとして特に好適なものである。
【0042】
本発明の光学フィルターは、画像表示装置中においてディスプレイの前面に配置され、例えば、光学フィルターをディスプレイの表面に直接貼り付けることができ、また、ディスプレイの前に前面板が設けられている場合は、前面板の表側(外側)又は裏側(ディスプレイ側)に光学フィルターを貼り付けることができる。
【0043】
本発明の光学フィルターの代表的な構成としては、透明支持体に、必要に応じて、下塗り層、反射防止層、ハードコート層、潤滑層等の各層を設けたものが挙げられる。本発明の光学フィルター用光吸収剤、上記の他の光吸収性色素や各種安定剤を本発明の光学フィルターに含有させる方法としては、例えば、透明支持体又は任意の各層に含有させる方法、透明支持体又は任意の各層にコーティングする方法、各層間の接着剤に混入させる方法、各層とは別に本発明の光学フィルター用光吸収剤等を含有する光吸収層を設ける方法等が挙げられる。本発明の光学フィルター用光吸収剤は、各層間の接着剤に混入させる方法及び光吸収層を設ける方法に好適である。
【0044】
本発明の光学フィルター用光吸収剤の使用量は、光学フィルターの単位面積当たり、好ましくは1〜1000mg/m2、さらに好ましくは5〜100mg/m2である。1mg/m2未満の使用量では、光吸収効果を十分に発揮することができず、1000mg/m2を超えて使用した場合には、フィルターの色目が強くなりすぎて表示品質等を低下させるおそれがあり、さらには、明度が低下するおそれもあるため好ましくない。
【0045】
上記透明支持体の材料としては、例えば、ガラス等の無機材料;あるいは、例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース等のセルロースエステル;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリスチレン;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ポリメチルメタクリレート、等のアクリル系樹脂;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリエーテルイミド;ポリオキシエチレン等の高分子材料が挙げられる。透明支持体の透過率は80%以上であることが好ましく、86%以上であることがさらに好ましい。ヘイズは、2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。屈折率は、1.45〜1.70であることが好ましい。
【0046】
これらの透明支持体中には、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、無機微粒子等を添加することができ、また、これらの透明支持体には各種表面処理を施すことができる。
【0047】
上記無機微粒子としては、例えば、二酸化珪素、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、カオリン等の無機微粒子が挙げられる。
【0048】
上記各種表面処理としては、例えば、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理、オゾン酸化処理等が挙げられる。
【0049】
上記下塗り層は、本発明の光学フィルター用光吸収剤を含有する光吸収層を設ける場合に、透明支持体と光吸収層との間に用いる層である。上記下塗り層は、ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーを含む層、光吸収層側の表面が粗面である層又は光吸収層のポリマーと親和性を有するポリマーを含む層として形成される。なお、光吸収層が設けられていない透明支持体の面に下塗り層を設けて、透明支持体とその上に設けられる層(例えば、反射防止層、ハードコート層)との接着力を改善するのために設けてもよく、また、下塗り層は、光学フィルターと画像形成装置とを接着するための接着剤と光学フィルターとの親和性を改善するために設けてもよい。下塗り層の厚みは、2nm〜20μmが好ましく、5nm〜5μmがより好ましく、20nm〜2μmがさらに好ましく、50nm〜1μmがさらにまた好ましく、80nm〜300nmが最も好ましい。下塗り層が、ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーを含む層として形成されている場合、該下塗り層は、ポリマーの粘着性で、透明支持体と光吸収層とを接着する。ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーは、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ブタジエン、ネオプレン、スチレン、クロロプレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル又はメチルビニルエーテルの重合又はこれらの共重合により得ることができる。上記ガラス転移温度は、50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることがさらに好ましく、25℃以下であることがさらにまた好ましく、20℃以下であることが最も好ましい。下塗り層の25℃における弾性率は、1〜1000MPaであることが好ましく、5〜800MPaであることがさらに好ましく、10〜500MPaであることが最も好ましい。表面が粗面である下塗り層は、粗面の上に光吸収層を形成することで、透明支持体と光吸収層とを接着する。表面が粗面である下塗り層は、ポリマーラテックスの塗布により容易に形成することができる。ラテックスの平均粒径は、0.02〜3μmであることが好ましく、0.05〜1μmであることがさらに好ましい。光吸収層を形成するバインダーポリマーと親和性を有するポリマーとしては、アクリル樹脂、セルロース誘導体、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、ポリビニルアルコール、可溶性ナイロン、高分子ラテックス等が挙げられる。また、本発明の光学フィルターにおいては、二以上の下塗り層を設けてもよい。下塗り層には、透明支持体を膨潤させる溶剤、マット剤、界面活性剤、帯電防止剤、塗布助剤や硬膜剤等を添加してもよい。
【0050】
上記反射防止層中においては、低屈折率層が必須である。低屈折率層の屈折率は、上記透明支持体の屈折率よりも低い。低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.55であることが好ましく、1.30〜1.50であることがさらに好ましい。低屈折率層の厚さは、50〜400nmであることが好ましく、50〜200nmであることがさらに好ましい。低屈折率層は、屈折率の低い含フッ素ポリマーからなる層(特開昭57−34526号、特開平3−130103号、同6−115023号、同8−313702号、同7−168004号の各公報記載)、ゾルゲル法により得られる層(特開平5−208811号、同6−299091号、同7−168003号の各公報記載)、あるいは微粒子を含む層(特公昭60−59250号、特開平5−13021号、同6−56478号、同7−92306号、同9−288201号の各公報に記載)として形成することができる。微粒子を含む層では、微粒子間又は微粒子内のミクロボイドとして、低屈折率層に空隙を形成することができる。微粒子を含む層は、3〜50体積%の空隙率を有することが好ましく、5〜35体積%の空隙率を有することがさらに好ましい。
【0051】
広い波長領域の反射を防止するためには、上記反射防止層において、低屈折率層に加えて、屈折率の高い層(中・高屈折率層)を積層することが好ましい。高屈折率層の屈折率は、1.65〜2.40であることが好ましく、1.70〜2.20であることがさらに好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との中間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.90であることが好ましく、1.55〜1.70であることがさらに好ましい。中・高屈折率層の厚さは、5nm〜100μmであることが好ましく、10nm〜10μmであることがさらに好ましく、30nm〜1μmであることが最も好ましい。中・高屈折率層のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。中・高屈折率層は、比較的高い屈折率を有するポリマーバインダーを用いて形成することができる。屈折率が高いポリマーバインダーとしては、ポリスチレン、スチレン共重合体、ポリカーボネート、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、環状(脂環式又は芳香族)イソシアネートとポリオールとの反応で得られるポリウレタン等が挙げられる。その他の環状(芳香族、複素環式、脂環式)基を有するポリマーや、フッ素以外のハロゲン原子を置換基として有するポリマーも、屈折率が高い。二重結合を導入してラジカル硬化を可能にしたモノマーの重合反応により形成されたポリマーを用いることもできる。
【0052】
さらに高い屈折率を得るため、ポリマーバインダー中に無機微粒子を分散してもよい。無機微粒子の屈折率は、1.80〜2.80であることが好ましい。無機微粒子は、金属の酸化物又は硫化物から形成することが好ましい。金属の酸化物又は硫化物としては、酸化チタン(例えば、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛等が挙げられる。これらの中でも、酸化チタン、酸化錫及び酸化インジウムが特に好ましい。無機微粒子は、これらの金属の酸化物又は硫化物を主成分とし、さらに他の元素を含むことができる。ここで、主成分とは、無機微粒子を構成する成分の中で最も含有量(重量%)が多い成分を意味する。他の元素としては、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P、S等が挙げられる。また、被膜形成性で溶剤に分散し得るか、それ自身が液状である無機材料、例えば、各種元素のアルコキシド、有機酸の塩、配位性化合物と結合した配位化合物(例えばキレート化合物)、活性無機ポリマー等を用いて、中・高屈折率層を形成することもできる。
【0053】
上記反射防止層の表面には、アンチグレア機能(入射光を表面で散乱させて、膜周囲の景色が膜表面に移るのを防止する機能)を付与することができる。例えば、透明フィルムの表面に微細な凹凸を形成し、そしてその表面に反射防止層を形成するか、あるいは、反射防止層を形成後、エンボスロールにより表面に凹凸を形成することにより、アンチグレア機能を有する反射防止層を得ることができる。アンチグレア機能を有する反射防止層は、一般に3〜30%のヘイズを有する。
【0054】
上記ハードコート層は、透明支持体の硬度よりも高い硬度を有する。ハードコート層は、架橋しているポリマーを含むことが好ましい。ハードコート層は、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系等のポリマー、オリゴマー又はモノマー(例えば紫外線硬化型樹脂)を用いて形成することができる。また、シリカ系材料からハードコート層を形成することもできる。
【0055】
上記反射防止層(低屈折率層)の表面には潤滑層を形成してもよい。潤滑層は、低屈折率層表面に滑り性を付与し、耐傷性を改善する機能を有する。潤滑層は、ポリオルガノシロキサン(例えばシリコンオイル)、天然ワックス、石油ワックス、高級脂肪酸金属塩、フッ素系潤滑剤又はその誘導体を用いて形成することができる。潤滑層の厚さは、2〜20nmであることが好ましい。
【0056】
上記の各層とは別に本発明の光学フィルター用光吸収剤を含有する光吸収層を設ける場合は、本発明の光学フィルター用光吸収剤をそのまま使用することもでき、またバインダーを使用することもできる。バインダーとしては、例えば、ゼラチン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、アルギン酸等の天然高分子材料、あるいは、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド等の合成高分子材料が用いられる。
【0057】
上記の下塗り層、反射防止層、ハードコート層、潤滑層、光吸収層等は、一般的な塗布方法により形成することができる。塗布方法としては、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ホッパーを使用するエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書記載)等が挙げられる。二以上の層を同時塗布により形成してもよい。同時塗布法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書及び原崎勇次著「コーティング工学」253頁(1973年朝倉書店発行)に記載がある。
【0058】
【実施例】
以下、製造例、実施例、比較例及び評価例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
下記製造例1〜9は、本発明の光学フィルター用光吸収剤の製造例を示し、下記評価例1〜6は、本発明の光学フィルター用光吸収剤の実施例を示し、下記実施例1〜3は、本発明の光学フィルターの実施例を示す。また、下記比較例1〜8は、評価例1〜6に対する比較例を示す。
【0059】
[製造例1]化合物No.6のジフェニルアミン−4−スルホン酸塩の製造
窒素置換した反応フラスコにN−メチルニトロインドレニントルエンスルホン酸塩7.81g、ジフェニルホルムアミジン1.96g、ピリジン15.8g及び無水酢酸3.06gを仕込み、窒素気流下25℃で3時間撹拌した。これにクロロホルム50ml、ジフェニルアミン−4−スルホン酸ナトリウム8.14g及び水50mlを加え30分撹拌した後に、クロロホルム相を分離した。該クロロホルム相を水洗した後脱溶媒して得られた残渣をメタノールで再結晶し、結晶を4.52g(収率65.0%)得た。得られた結晶について各種分析を行い、構造等を確認した。分析結果を以下に示す。
【0060】
(分析結果)
▲1▼純度:HPLC測定;99.5%
▲2▼構造解析:1H−NMR測定
(ケミカルシフトppm;多重度;プロトン数)
(1.75;s;12)(3.71;s;6)(6.63−6.72;d;2)(6.79−6.84;t;1)(6.95−6.97;d;2)(7.07−7.08;d;2)(7.20−7.24;t;2)(7.40−7.45;d;2)(7.67−7.70;d;2)(8.23;s;1)(8.37−8.45;m;3)(8.57;s;2)
▲3▼光学的特性:メタノール溶媒でのUVスペクトル測定
λmax;562nm、ε;1.95×105
▲4▼熱分解開始温度:窒素気流中、10℃/分昇温での示差熱分析
269℃
【0061】
[製造例2]化合物No.7のジフェニルアミン−4−スルホン酸塩の合成
N−メチルニトロインドレニントルエンスルホン酸をN−[2−(4−イソプロポキシフェニル)エチル]ニトロインドレニントルエンスルホン酸に換えた以外は、上記製造例1と同様の方法により、目的物の結晶を得た。得られた結晶について各種分析を行なった。分析結果を以下に示す。
【0062】
(分析結果)
▲1▼純度:HPLC測定;99.7%
▲2▼構造解析:1H−NMR測定
(ケミカルシフトppm;多重度;プロトン数)
(1.06−1.10;d;12)(1.67;s;12)(3.01−3.05;t;4)(4.42−4.49;m;6)(6.43−6.47;d;2)(6.73−6.77;d;4)(6.79−6.84;t;1)(6.94−6.97;d;2)(7.05−7.08;d;2)(7.17−7.18;d;4)(7.20−7.24;t;2)(7.41−7.44;d;2)(7.52−7.55;d;2)(8.18−8;m;4)(8.56;s;2)
▲3▼光学的特性:メタノール溶媒でのUVスペクトル測定
λmax;573nm、ε;1.76×105
▲4▼熱分解開始温度:窒素気流中、10℃/分昇温での示差熱分析
271℃
【0063】
[製造例3]化合物No.8のジフェニルアミン−4−スルホン酸塩の合成
化合物No.8の過塩素酸塩5.0gに、クロロホルム50ml、ジフェニルアミン−4−スルホン酸ナトリウム3.8g及び水50mlを加え30分撹拌した後に、クロロホルム相を分離した。該クロロホルム相を水洗した後脱溶媒して得られた残渣をメタノールで再結晶し、結晶を5.90g(収率98.7%)を得た。得られた結晶について各種分析を行い、構造等を確認した。分析結果を以下に示す。
【0064】
(分析結果)
▲1▼純度:HPLC測定;99.9%
▲2▼構造解析:1H−NMR測定
(ケミカルシフトppm;多重度;プロトン数)
(1.72;s;12)(4.39−4.43;t;4)(4.66−4.69;t;4)(6.81−6.6.91;m;4)(6.89−6.92;d;1)(6.93−6.95;d;2)(6.96−6.97;d;2)(7.05−7.08;d;2)(7.18−7.23;m;4)(7.41−7.45;d;2)(7.81−7.84;d;2)(8.24;s;1)(8.38−8.41;d;2)(8.57;s;2)
▲3▼光学的特性:クロロホルム溶媒でのUVスペクトル測定
λmax;583nm、ε;2.12×105
▲4▼熱分解開始温度:窒素気流中、10℃/分昇温での示差熱分析
239℃
【0065】
[製造例4]化合物No.31のジフェニルアミン−4−スルホン酸塩の製造
窒素置換した反応フラスコにN−イソアミルベンゾインドレニントルエンスルホン酸塩9.03g、マロンジアルデヒドジアニリン塩酸塩2.596g、ピリジン15.8g及び無水酢酸3.06gを仕込み、窒素気流下25℃で3時間撹拌した。これにクロロホルム50ml、ジフェニルアミン−4−スルホン酸ナトリウム8.14g及び水50mlを加え30分撹拌した後に、クロロホルム相を分離した。該クロロホルム相を水洗した後脱溶媒して得られた残渣をメタノールで再結晶し、結晶を5.99g(収率71.0%)得た。得られた結晶について各種分析を行い、構造等を確認した。分析結果を以下に示す。
【0066】
(分析結果)
▲1▼純度:HPLC測定;99.6%
▲2▼構造解析:1H−NMR測定
(ケミカルシフトppm;多重度;プロトン数)
(0.95−1.01;d;12)(1.57−1.63;q;4)(1.73−1.84;m;2)(1.95;s;12)(4.18−4.23;t;4)(6.31−6.35;d;2)(6.62−6.69;t;1)(6.79−6.83;t;1)(6.91−6.99;d;2)(7.02−7.07;d;2)(7.17−7.24;t;2)(7.39−7.45;d;2)(7.47−7.53;t;2)(7.65−7.74;m;4)(8.00−8.10;t;4)(8.20−8.26;s+s;3)(8.43−8.50;t;2)
▲3▼光学的特性:メタノール溶媒でのUVスペクトル測定
λmax;680nm、ε;2.30×105
▲4▼熱分解開始温度:窒素気流中、10℃/分昇温での示差熱分析
248℃
【0067】
[製造例5]化合物No.32のジフェニルアミン−4−スルホン酸塩の合成
マロンジアルデヒドジアニリン塩酸塩をシアノマロンジアルデヒドジアニリン塩酸に換えた以外は、上記製造例4と同様の方法により、目的物の結晶を得た。得られた結晶について各種分析を行なった。分析結果を以下に示す。
【0068】
(分析結果)
▲1▼純度:HPLC測定;99.8%
▲2▼構造解析:1H−NMR測定
(ケミカルシフトppm;多重度;プロトン数)
(0.65−0.9;d;12)(1.29−1.36;q:4)(1.43−1.47;m;2)(1.62;s;12)(3.95−4.00;t;4)(5.99−6.03;d;2)(6.46−6.48;t;1)(6.59−6.61;d;2)(6.70−6.72;d;2)(6.84−6.88;d;2)(7.07−7.10;d;2)(7.21−7.26;t;2)(7.35−7.39;t;2)(7.52−7.55;d;2)(7.75−7.81;m;4)(7.89;s;1)(7.94−7.97;d;2)(8.35−8.39;d;2)
▲3▼光学的特性:メタノール溶媒でのUVスペクトル測定
λmax;652nm、ε;1.81×105
▲4▼熱分解開始温度:窒素気流中、10℃/分昇温での示差熱分析
255℃
【0069】
[製造例6]化合物No.36のジフェニルアミン−4−スルホン酸塩の合成
窒素置換した反応フラスコに2−ナフチルヒドラジン30.1g及びエタノール94.8gを仕込み、70℃まで加温してから、アセチルシクロヘキサン48.0gを5分で滴下した。更に硫酸39.2gを加え3時間反応させた後、エタノールを留去し、トルエン500ml及び20重量%水酸化ナトリウム水溶液200gを加え油水分離した。油相を洗浄水が中性になるまで水洗し、硫酸ナトリウムで乾燥後脱溶媒して得た残渣を60℃のトルエン94gで溶解させた溶液に、N−ヘキサン94gを加えて晶析を行い、結晶を濾取、乾燥して中間体(A)を27.2g得た。窒素置換した反応フラスコに、中間体(A)25.0gとヨウ化メチル17.1gを仕込み、110℃で4時間反応させた後、酢酸エチル102.4gを滴下し30分還流させ、冷却した。固相を濾取し、洗浄、乾燥を行い中間体(B)を27.2g得た。窒素置換した反応用フラスコに中間体(B)11.8g及びピリジン23.7gを仕込み50℃まで加温した系に、無水酢酸3.1gに下記原料化合物5.00gを溶解させた溶液を30分で滴下した後、70℃で2時間反応させた。この系にジフェニルアミン−4−スルホン酸ナトリウム5.10g及びメタノール35.6gを加え1時間還流させた。反応系を冷却後、析出した結晶を、メタノール及び水で洗浄した後乾燥させて、目的物の結晶を2.84g(収率35.3%)得た。得られた結晶について各種分析を行い、構造等を確認した。分析結果を以下に示す。
【0070】
【化19】
【0071】
(分析結果)
▲1▼純度:HPLC測定;99.6%
▲2▼構造解析:1H−NMR測定
(ケミカルシフトppm;多重度;プロトン数)
(1.73−1.92;m;6)(1.95;s;6)(1.99−2.08;m;2)(2.45−2,58;m;2)(3.69;s;3)(3.96;s;3)(6.27−6.32;d;1)(6.58−6.63;d;1)(6.69−6.76;t;1)(6.79−6.84;t;1)(6.91−6.97;d;2)(7.05−7.11;d;2)(7.19−7.24;t;2)(7.39−7.45;d;2)(7.46−7.53;q;2)(7.62−7.69;q;2)(7.71−7.75;d;1)(7.78−7.82;d;1)(8.02−8.11;m;4)(8.21−8.33;m;5)
▲3▼光学的特性:メタノール溶媒でのUVスペクトル測定
λmax;678nm、ε;1.98×105
▲4▼熱分解開始温度:窒素気流中、10℃/分昇温での示差熱分析
222℃
【0072】
[製造例7]化合物No.65のジフェニルアミン−4−スルホン酸塩の合成
窒素置換した反応フラスコに5−フルオロ−2−メチルインドール4.8g、1,1,3,3−テトラメトキシプロパン2.6g、p−トルエンスルホン酸一水和物3.3g及びジエチレングリコールジメチルエーテル16.2gを仕込み、70℃で7時間撹拌した。この系にクロロホルム50ml及び水100mlを加え30分撹拌し、固形物を濾取した。ジメチルホルムアミド30gに濾取した固形物を加熱溶解した後、メタノールを加え析出させた結晶を、メタノール洗浄、真空乾燥し、化合物No.65の過塩素酸塩を得た。得られた過塩素酸塩について製造例3と同様の方法でジフェニルアミン−4−スルホン酸ナトリウムを用いて塩交換を行い、目的物の結晶5.50g(収率59.3%)を得た。得られた結晶について各種分析を行い、構造等を確認した。分析結果を以下に示す。
【0073】
(分析結果)
▲1▼純度:HPLC測定;99.7%
▲2▼構造解析:1H−NMR測定
(ケミカルシフトppm;多重度;プロトン数)
(2.70−2.83;s;6)(7.20−7.27;t;2)(6.79−6.83;t;1)(6.91−6.99;d;2)(7.05−7.07;d;2)(7.17−7.23;t;2)(7.39−7.45;d;2)(7.51−7.55;m;2)(7.58−7.66;t;1)(7.90−7.93;s+d;3)(8.51−8.57;d;2)(13.50−13.52;s;2)
▲3▼光学的特性:メタノール溶媒でのUVスペクトル測定
λmax;519nm、ε;1.16×105
【0074】
[製造例8]化合物No.67のジフェニルアミン−4−スルホン酸塩の合成
窒素置換した反応フラスコに1−メチル−2−フェニルインドール17.4g、1,1,3,3−テトラメトキシプロパン6.6g、p−トルエンスルホン酸一水和物8.4g及びエタノール49.8gを仕込み、70℃で4時間撹拌した。脱溶媒後この系にジメチルホルムアミド60gを加え、加熱溶解した後、酢酸エチル60gを加え冷却し、析出した結晶を酢酸エチル洗浄、真空乾燥し、化合物No.65の過塩素酸塩を得た。得られた過塩素酸塩について製造例3と同様の方法でジフェニルアミン−4−スルホン酸ナトリウムを用いて塩交換を行い、目的物の結晶12.87g(収率59.3%)を得た。得られた結晶について各種分析を行い、構造等を確認した。分析結果を以下に示す。
【0075】
(分析結果)
▲1▼純度:HPLC測定;99.7%
▲2▼構造解析:1H−NMR測定
(ケミカルシフトppm;多重度;プロトン数)
(3.75−3.76;s;6)(6.79−6.83;t;1)(6.91−6.99;d;2)(7.05−7.07;d;2)(7.17−7.23;t;2)(7.39−7.45;d;2)(7.50−7.9;d+s+s+s+d;22)
▲3▼光学的特性:クロロホルム溶媒でのUVスペクトル測定
λmax;594.5nm、ε;1.17×105
【0076】
[製造例9]化合物No.74のジフェニルアミン−4−スルホン酸塩
ローダミン6G(東京化成社製)3.3gにクロロホルム50ml、ジフェニルアミン−4−スルホン酸ナトリウム2.8g及び水50mlを加え30分撹拌した後に、クロロホルム相を分離した。該クロロホルム相を水洗した後脱溶媒して得られた残渣をメタノールで再結晶し、結晶を3.2g(収率68%)得た。得られた結晶について各種分析を行い、構造等を確認した。分析結果を以下に示す。
【0077】
(分析結果)
▲1▼純度:HPLC測定;99.7%
▲2▼構造解析:1H−NMR測定
(ケミカルシフトppm;多重度;プロトン数)
(0.89−0.93;t;3)(1.34−1.38;t;6)(2.09−2.14;s;6)(3.50−3.56;q;4)(3.95−4.01;q;2)(6.87−6.92;s+t+s;5)(7.00−7.02;d;2)(7.03−7.12;d;2)(7.22−7.26;t;2)(7.39−7.41;d;1)(7.62−7.65;d;2)(7.78−7.88;t+t;2)(8.29−8.31;d;1)
▲3▼光学的特性:メタノール溶媒でのUVスペクトル測定
λmax;528nm、ε;1.07×105
【0078】
[評価例1〜6及び比較例1〜8]光吸収剤の耐光性試験
下記表1〜4に記載のカチオンとアニオンとからなる塩化合物それぞれの溶液を、溶液のλmaxでの吸光度が1.0になる濃度に調製した。これらの溶液それぞれをねじ口サンプルに入れ、密栓をし、キセノンランプにより55000ルクスの光を40時間照射した後、λmaxでの吸光度をそれぞれ測定した。照射前の溶液のλmaxでの吸光度に対する照射後の溶液のλmaxでの吸光度の比率(吸光度残率(%))を表1〜4に示す。
尚、評価例1〜4及び比較例1〜5においては、クロロホルムを用いて溶液をそれぞれ調製し、評価例5〜6及び比較例6〜8においては、エタノールを用いて溶液をそれぞれ調製した。
表1〜4から明らかなように、一般式(I)で表されるアニオンを用いた本発明の光学フィルター用光安定剤は、一般式(I)で表されるアニオン以外のアニオンを用いた光学フィルター用光安定剤に比べて高い吸光度残率を示し、耐光性に優れていることが確認された。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
[実施例1]
下記(配合1)にてUVワニスを作成し、易密着処理した188ミクロン厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに、該UVワニスをバーコーター#9により塗布し、80℃にて30秒乾燥した。その後、赤外線カットフィルムフィルター付き高圧水銀灯にて紫外線を100mJ照射し、硬化膜厚約5ミクロンの光吸収層を有する光学フィルターを得た。
得られた光学フィルターについて(株)日立製作所スペクトロフォトメーターU−3010でλmaxを測定した結果、λmaxは585nmであった。
【0084】
(配合1)
アデカオプトマーKRX−571−65 100g
(旭電化工業(株)製UV硬化樹脂、樹脂分80重量%)
光吸収剤 2.0g
(カチオン;化合物No.8、アニオン;ジフェニルアミン−4−スルホン酸)
メチルエチルケトン 60g
【0085】
[実施例2]
下記(配合2)をプラストミルで260℃にて5分間溶融混練した後、直径6mmのノズルから押出し水冷却ペレタイザーで色素含有ペレットを得た。このペレットを電気プレスを用いて250℃で0.25mm厚の薄板に成形し、光学フィルターとした。
得られた光学フィルターについて(株)日立製作所スペクトロフォトメーターU−3010でλmaxを測定した結果、λmaxは564nmであった。
【0086】
(配合2)
ユーピロンS−3000 100g
(三菱瓦斯化学(株)製;ポリカーボネート樹脂)
光吸収剤 0.5g
(カチオン;化合物No.6、アニオン;ジフェニルアミン−4−スルホン酸)
【0087】
[実施例3]
下記(配合3)〜(配合4)にてバインダー組成物をそれぞれ作成し、易密着処理した188ミクロン厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、該バインダー組成物をバーコーター#9により塗布し、80℃にて30秒乾燥した。その後、このフィルムを0.9mm厚アルカリガラス板に100℃で熱圧着し、ガラス板とPETフィルムとの間のバインダー層に光吸収剤を含有するPET保護ガラス板を作成し、光学フィルターとした。
得られた光学フィルターそれぞれについて(株)日立製作所スペクトロフォトメーターU−3010でλmaxを測定した結果、(配合3)にて作成したバインダー組成物を用いた場合のλmaxは654nmであり、(配合4)にて作成したバインダー組成物を用いた場合のλmaxは527nmであった。
【0088】
(配合3)
アデカアークルズR−103 100g
(旭電化工業(株)製アクリル樹脂系バインダー、樹脂分50重量%)
光吸収剤 0.05g
(カチオン;化合物No.32、アニオン;ジフェニルアミン−4−スルホン酸)
【0089】
(配合4)
アデカアークルズR−103 100g
(旭電化工業(株)製アクリル樹脂系バインダー、樹脂分50重量%)
光吸収剤 0.05g
(カチオン;化合物No.74、アニオン;ジフェニルアミン−4−スルホン酸)
【0090】
実施例1〜3における測定結果から明らかなように、耐光性に優れた本発明の光学フィルター用光吸収剤を含有してなる光学フィルターは、特定の波長の光を選択的に吸収することができ、画像表示装置から発せられる不必要な波長の光を吸収し得るものであった。
【0091】
【発明の効果】
本発明は、光学フィルター用途に適する耐光性に優れた光吸収剤及び該光吸収剤を含有する耐光性に優れた光学フィルターを提供できる。
Claims (8)
- 上記一般式(II)における上記環Aが、(a)又は(d)で表される基であり、上記環A’が、(a’)又は(d’)で表される基である請求項2記載の光学フィルター用光吸収剤。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の光学フィルター用光吸収剤を含有してなる光学フィルター。
- 画像表示装置用である請求項6記載の光学フィルター。
- 上記画像表示装置がプラズマディスプレイパネルである請求項7に記載の光学フィルター。
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