JP2004069952A - 光学フィルター用近赤外線吸収剤及び光学フィルター - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学フィルター用近赤外線吸収剤及びこれを含有する光学フィルターに関し、詳しくは、画像表示装置、特にプラズマディスプレイパネル(PDP)に好適である特定の金属錯体からなる光学フィルター用近赤外線吸収剤及びこれを含有する光学フィルターに関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
近年、多種の画像表示装置(ディスプレイ)、例えば、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)、蛍光表示管、電界放射型ディスプレイ等の開発が行われ、これらを組み込んだ機器が実用化されている。これらの各種画像表示装置の中でも、ハイビジョン用大型壁掛けテレビ、マルチメディア用大画面ディスプレイとしてカラープラズマディスプレイ(PDP)が注目を浴びている。
【0003】
これらの画像表示装置は、原則として、赤、青、緑の三原色の光の組合せでカラー画像を表示する。しかし、画像表示装置からは不必要な波長の光も発せられており、周辺電子機器の誤作動や、表示画像の品質に影響を及ぼす等の問題が生じている。特にプラズマディスプレイは、800〜1050nmのネオンガスの輝線を発しており、近赤外線リモコンを用いた機器の誤作動を招くという問題がある。
【0004】
上記問題に対し、特定の光を吸収する光吸収剤を含有した光学フィルターが使用されており、例えば、近赤外線を吸収する光学フィルターとしては、特開平9−230134号公報、特開平10−45785号公報、特開平11−73115号公報、特開平11−12425号公報、特開2000−206323号公報、特開2000−212546号公報等に、芳香族ジチオールニッケル化合物を光吸収剤として用いた光学フィルターが報告されている。
【0005】
光学フィルター用近赤外線吸収剤としては、近赤外線領域の波長光を選択的に吸収し、可視光線領域の光を透過するものが求められている。しかし、上記の芳香族ジチオールニッケル化合物は、吸収することが求められている波長領域において、900nm以上の長波長側の吸収が弱いという問題点を有していた。
【0006】
従って、本発明の目的は、長波長側の近赤外線吸収能力の大きい光学フィルター用近赤外線吸収剤及び該近赤外線吸収剤を含有する光学フィルターを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、検討を重ねた結果、特定の構造を有する金属錯体が、上記課題を解決し得ることを知見し、本発明に到達した。
【0008】
即ち、本発明は、下記一般式(I)で表される金属錯体からなる光学フィルター用近赤外線吸収剤、及び該近赤外線吸収剤を含有することを特徴とした光学フィルターを提供するものである。
【0009】
【化2】
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
上記一般式(I)で表される金属錯体からなる本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤は、近赤外線領域の光を吸収する特性を有するものである。上記一般式(I)におけるMは、ニッケル原子、パラジウム原子、又は白金原子を表すが、中でもMがニッケル原子である金属錯体が、コストも安く、吸光係数も大きいので、光学フィルター用近赤外線吸収剤として最も適している。
【0012】
上記一般式(I)において、R1〜R4は、(i)で表される基又は置換されていてもよいアリール基を表し、R1及びR2については、どちらか一方又は両方が(i)で表される基であり、R3及びR4についても同様である。
【0013】
上記一般式(I)で表される金属錯体からなる本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤は、光学フィルターを構成する樹脂に対する相溶性及び/又は分散性が良好であり、該金属錯体の溶液は光吸収特性として900nm以上にλmaxを有し、ここでのモル吸光係数εも大きい値を示すので、900〜1050nmの近赤外線の吸収剤として好適なものである。
【0014】
上記一般式(I)におけるR1〜R4で表される置換されてもよいアリール基としては、フェニル基、置換フェニル基、ナフチル基、置換ナフチル基等が挙げられ、これらの置換基としては、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル等のアルキル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、アミロキシ、2−メトキシエトキシ、2−ブトキシエトキシ、2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ等のアルコキシ基;アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジブチルアミノ等のアミノ基類等が挙げられ、置換数は任意である。
【0015】
上記一般式(I)におけるR5で表される炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル等が挙げられ、R5で表される炭素数6〜30のアリール基としては、フェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、4−第三ブチルフェニル、4−ヘキシルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル、4−オクチルフェニル、4−(2−エチルヘキシル)フェニル、4−ステアリルフェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,4−ジ第三ブチルフェニル、2,5−ジ第三ブチルフェニル、2,6−ジ−第三ブチルフェニル、2,4−ジ第三ペンチルフェニル、2,5−ジ第三アミルフェニル、2,5−ジ第三オクチルフェニル、2,4−ジクミルフェニル、シクロヘキシルフェニル、ビフェニル、2,4,5−トリメチルフェニル等が挙げられる。
【0016】
上記一般式(I)で表される金属錯体の好適な具体例としては、以下に示す化合物No.1〜16、化合物No.5’〜10’が挙げられる。尚、化合物No.5’〜10’は、化合物No.5〜10の構造異性体であるが、本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤を光学フィルターに含有させる際に、これらは区別せずに用いることができるので、分離せずに構造異性体の混合物として用いてもよい。
【0017】
【化3】
【0018】
【化4】
【0019】
【化5】
【0020】
また、本発明に係る前記一般式(I)で表される金属錯体の製造方法としては、両末端にR1、R2及びR3、R4を有するα−ヒドロキシエタノン誘導体、α−ケトエタノン誘導体又はエタノン誘導体と五硫化二燐とを反応させチオホスフェート中間体を合成し、これとハロゲン化ニッケル等の金属塩を反応させて得る方法等が挙げられる。また、これらのエタノン誘導体が入手できない場合は、R1〜R4を有するアルデヒド化合物(R1〜4−CHO)をカップリングさせてエタノン誘導体を合成すればよい。
【0021】
本発明の光学フィルターは、前記一般式(I)で表される金属錯体からなる本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤を含有するものであれば、その用途、構成等により特に制限を受けることはない。また、本発明の光学フィルターには、本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤の他に、補助的に他の光吸収性色素や各種安定剤等を含有させることもできる。
【0022】
本発明の光学フィルターに用いることができる上記の他の光吸収性色素としては、例えば、シアニン系、キノリン系、クマリン系、チアゾール系、オキソノール系、アズレン系、スクアリリウム系、アゾメチン系、アゾ系、ベンジリデン系、キサンテン系、フタロシアニン系、前記一般式(I)で表される金属錯体以外のジチオール金属錯体系化合物等が挙げられる。
【0023】
また、本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤や上記の他の光吸収性色素の、光あるいは熱に対する安定化を図る目的で使用される上記各種安定化剤としては、例えば、ハイドロキノン誘導体(米国特許3935016号明細書、米国特許3982944号明細書)、ハイドロキノンジエーテル誘導体(米国特許4254216号明細書)、フェノール誘導体(特開昭54−21004号公報)、スピロインダン又はメチレンジオキシベンゼンの誘導体(英国特許出願公開2077455号明細書、英国特許2062888号明細書)、クロマン、スピロクロマン又はクマランの誘導体(米国特許3432300号明細書、米国特許3573050号明細書、米国特許3574627号明細書、米国特許3764337号明細書、特開昭52−152225号公報、特開昭53−20327号公報、特開昭53−17729号公報、特開昭61−90156号公報)、ハイドロキノンモノエーテル又はパラアミノフェノールの誘導体(英国特許1347556号明細書、英国特許2066975号明細書、特公昭54−12337号公報、特開昭55−6321号公報)、ビスフェノール誘導体(米国特許3700455号明細書、特公昭48−31625号公報)、金属錯体(米国特許4245018号明細書、特開昭60−97353号公報)、ニトロソ化合物(特開平2−300288号公報)、ジインモニウム化合物(米国特許465612号明細書)、ニッケル錯体(特開平4−146189号公報)、酸化防止剤(欧州特許820057号明細書)が挙げられる。また、本発明の光学フィルターは、一重項酸素等のクエンチャーとして、芳香族ニトロソ化合物、アミニウム化合物、イミニウム化合物、ビスイミニウム化合物、遷移金属キレート化合物等を含有してもよく、本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤の効果を阻害しない範囲において、ビスチオラート金属錯体アニオン等のクエンチャーアニオンを用いてもよい。
【0024】
本発明の光学フィルターは、その用途については特に制限されるものではないが、画像表示装置用の光学フィルターとして好適である。画像表示装置用光学フィルターには、例えば、表示品質向上のために不必要な波長の光を除くもの、リモコンの誤作動等を防止するもの、カラー表示のために用いられるもの(カラーフィルター)がある。画像表示装置としては、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置が挙げられる。本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤を含有してなる光学フィルターは、プラズマディスプレイパネル(PDP)の近赤外線用フィルターとして特に有用なものである。
【0025】
本発明の光学フィルターは、画像表示装置においてディスプレイの前面に配置され、例えば、光学フィルターをディスプレイの表面に直接貼り付ける方法や、ディスプレイの前に前面板が設けられている場合は、前面板の表側(外側)又は裏側(ディスプレイ側)に光学フィルターを貼り付ける方法により配置することができる。
【0026】
本発明の光学フィルターの代表的な構成としては、透明支持体に、必要に応じて、下塗り層、反射防止層、ハードコート層、潤滑層等の各層を設けたものが挙げられる。本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤、上記の他の光吸収性色素や各種安定剤を本発明の光学フィルターに含有させる方法としては、例えば、透明支持体又は任意の各層に含有させる方法、透明支持体又は任意の各層にコーティングする方法、各層間のポリマーバインダーや接着剤に混入させる方法、本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤等を含有する近赤外線吸収層を上記の各層とは別に設ける方法等が挙げられる。本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤は、各層間のポリマーバインダーや接着剤に混入させる方法及び近赤外線吸収層を設ける方法に好適である。
【0027】
本発明の光学フィルター用近赤外線光吸収剤の使用量は、光学フィルターの単位面積当たり、1〜1000mg/m2、好ましくは5〜100mg/m2である。1mg/m2未満の使用量では、近赤外線吸収効果を十分に発揮することができず、1000mg/m2を超えて使用した場合には、フィルターの色目が強くなりすぎて表示品質等を低下させるおそれがあり、さらには、明度が低下するおそれもあるため好ましくない。
【0028】
上記透明支持体の材料としては、例えば、ガラス等の無機材料;あるいは、例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース等のセルロースエステル;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリスチレン;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリエーテルイミド;ポリオキシエチレン等の高分子材料が挙げられる。透明支持体の透過率は80%以上であることが好ましく、86%以上であることがさらに好ましい。ヘイズは、2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。屈折率は、1.45〜1.70であることが好ましい。
【0029】
これらの透明支持体中には、光吸収性色素、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、無機微粒子等を添加することができ、また、これらの透明支持体には各種の表面処理を施すことができる。
【0030】
上記無機微粒子としては、例えば、二酸化珪素、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、カオリン等の無機微粒子が挙げられる。
【0031】
上記各種表面処理としては、例えば、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理、オゾン酸化処理等が挙げられる。
【0032】
上記下塗り層は、本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤を含有する近赤外線吸収層を設ける場合に、透明支持体と近赤外線吸収層との間に用いる層である。上記下塗り層は、ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーを含む層、近赤外線吸収層側の表面が粗面である層又は近赤外線吸収層のポリマーと親和性を有するポリマーを含む層として形成される。なお、近赤外線吸収層が設けられていない透明支持体の面に下塗り層を設けて、透明支持体とその上に設けられる層(例えば、反射防止層、ハードコート層)との接着力を改善するのために設けてもよく、また、下塗り層は、光学フィルターと画像形成装置とを接着するための接着剤と光学フィルターとの親和性を改善するために設けてもよい。下塗り層の厚みは、2nm〜20μmが好ましく、5nm〜5μmがより好ましく、20nm〜2μmがさらに好ましく、50nm〜1μmがさらにまた好ましく、80nm〜300nmが最も好ましい。ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーを含む下塗り層は、ポリマーの粘着性で、透明支持体と近赤外線吸収層とを接着する。ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーは、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ブタジエン、ネオプレン、スチレン、クロロプレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル又はメチルビニルエーテルの重合又はこれらの共重合により得ることができる。上記ガラス転移温度は、50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることがさらに好ましく、25℃以下であることがさらにまた好ましく、20℃以下であることが最も好ましい。下塗り層の25℃における弾性率は、1〜1000MPaであることが好ましく、5〜800MPaであることがさらに好ましく、10〜500MPaであることが最も好ましい。表面が粗面である下塗り層は、粗面の上に近赤外線吸収層を形成することで、透明支持体と近赤外線吸収層とを接着する。表面が粗面である下塗り層は、ポリマーラテックスの塗布により容易に形成することができる。ラテックスの平均粒径は、0.02〜3μmであることが好ましく、0.05〜1μmであることがさらに好ましい。近赤外線吸収層のバインダーポリマーと親和性を有するポリマーとしては、アクリル樹脂、セルロース誘導体、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、ポリビニルアルコール、可溶性ナイロン、高分子ラテックス等が挙げられる。また、本発明の光学フィルターにおいては、二以上の下塗り層を設けてもよい。下塗り層には、透明支持体を膨潤させる溶剤、マット剤、界面活性剤、帯電防止剤、塗布助剤や硬膜剤等を添加してもよい。
【0033】
上記反射防止層中においては、低屈折率層が必須である。低屈折率層の屈折率は、上記透明支持体の屈折率よりも低い。低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.55であることが好ましく、1.30〜1.50であることがさらに好ましい。低屈折率層の厚さは、50〜400nmであることが好ましく、50〜200nmであることがさらに好ましい。低屈折率層は、屈折率の低い含フッ素ポリマーからなる層(特開昭57−34526号、特開平3−130103号、同6−115023号、同8−313702号、同7−168004号の各公報記載)、ゾルゲル法により得られる層(特開平5−208811号、同6−299091号、同7−168003号の各公報記載)、あるいは微粒子を含む層(特公昭60−59250号、特開平5−13021号、同6−56478号、同7−92306号、同9−288201号の各公報に記載)として形成することができる。微粒子を含む層では、微粒子間又は微粒子内のミクロボイドとして、低屈折率層に空隙を形成することができる。微粒子を含む層は、3〜50体積%の空隙率を有することが好ましく、5〜35体積%の空隙率を有することがさらに好ましい。
【0034】
広い波長領域の反射を防止するためには、上記反射防止層において、低屈折率層に加えて、屈折率の高い層(中・高屈折率層)を積層することが好ましい。高屈折率層の屈折率は、1.65〜2.40であることが好ましく、1.70〜2.20であることがさらに好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との中間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.90であることが好ましく、1.55〜1.70であることがさらに好ましい。中・高屈折率層の厚さは、5nm〜100μmであることが好ましく、10nm〜10μmであることがさらに好ましく、30nm〜1μmであることが最も好ましい。中・高屈折率層のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。中・高屈折率層は、比較的高い屈折率を有するポリマーバインダーを用いて形成することができる。屈折率が高いポリマーとしては、ポリスチレン、スチレン共重合体、ポリカーボネート、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、環状(脂環式又は芳香族)イソシアネートとポリオールとの反応で得られるポリウレタン等が挙げられる。その他の環状(芳香族、複素環式、脂環式)基を有するポリマーや、フッ素以外のハロゲン原子を置換基として有するポリマーも、屈折率が高い。二重結合を導入してラジカル硬化を可能にしたモノマーの重合反応により形成されたポリマーを用いることもできる。
【0035】
さらに高い屈折率を得るため、ポリマーバインダー中に無機微粒子を分散してもよい。無機微粒子の屈折率は、1.80〜2.80であることが好ましい。無機微粒子は、金属の酸化物又は硫化物から形成することが好ましい。金属の酸化物又は硫化物としては、酸化チタン(例えば、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛等が挙げられる。これらの中でも、酸化チタン、酸化錫及び酸化インジウムが特に好ましい。無機微粒子は、これらの金属の酸化物又は硫化物を主成分とし、さらに他の元素を含むことができる。ここで、主成分とは、無機微粒子を構成する成分の中で最も含有量(重量%)が多い成分を意味する。他の元素としては、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P、S等が挙げられる。また、被膜形成性で溶剤に分散し得るか、それ自身が液状である無機材料、例えば、各種元素のアルコキシド、有機酸の塩、配位性化合物と結合した配位化合物(例えばキレート化合物)、活性無機ポリマー等を用いて、中・高屈折率層を形成することもできる。
【0036】
上記反射防止層の表面には、アンチグレア機能(入射光を表面で散乱させて、膜周囲の景色が膜表面に移るのを防止する機能)を付与することができる。例えば、透明フィルムの表面に微細な凹凸を形成し、そしてその表面に反射防止層を形成するか、あるいは、反射防止層を形成後、エンボスロールにより表面に凹凸を形成することにより、アンチグレア機能を有する反射防止層を得ることができる。アンチグレア機能を有する反射防止層は、一般に3〜30%のヘイズを有する。
【0037】
上記ハードコート層は、透明支持体の硬度よりも高い硬度を有する。ハードコート層は、架橋しているポリマーを含むことが好ましい。ハードコート層は、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系のポリマー、オリゴマー又はモノマー(例えば紫外線硬化型樹脂)を用いて形成することができる。また、シリカ系材料からハードコート層を形成することもできる。
【0038】
上記反射防止層(低屈折率層)の表面には潤滑層を形成してもよい。潤滑層は、低屈折率層表面に滑り性を付与し、耐傷性を改善する機能を有する。潤滑層は、ポリオルガノシロキサン(例えばシリコンオイル)、天然ワックス、石油ワックス、高級脂肪酸金属塩、フッ素系潤滑剤又はその誘導体を用いて形成することができる。潤滑層の厚さは、2〜20nmであることが好ましい。
【0039】
上記の各層とは別に本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤を含有する近赤外線吸収層を設ける場合は、本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤をそのまま使用することもでき、またバインダーを使用することもできる。バインダーとしては、例えば、ゼラチン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、アルギン酸等の天然高分子材料、あるいは、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド等の合成高分子材料が用いられる。
【0040】
上記の下塗り層、反射防止層、ハードコート層、潤滑層、近赤外線吸収層等は、一般的な塗布方法により形成することができる。塗布方法としては、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ホッパーを使用するエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書記載)等が挙げられる。二以上の層を同時塗布により形成してもよい。同時塗布法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書及び原崎勇次著「コーティング工学」253頁(1973年朝倉書店発行)に記載がある。
【0041】
【実施例】
以下、製造例、評価例及び実施例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
下記製造例1〜3は、本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤の実施例を示し、下記実施例1〜3は、本発明の光学フィルターの実施例を示す。また、下記評価例1及び2においては、本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤の近赤外線領域の吸収特性を測定した。
【0042】
[製造例1]化合物No.1の製造
反応フラスコに1,2−ジチエニル−2−ヒドロキシエタノン46.6mmol及び1,4−ジオキサン150mlを仕込み、これに五硫化二リン62.4mmolを加え、加熱して30分還流させた。これを25℃まで冷却した後、水50gに二塩化ニッケル六水和物46.6mmolを溶かした水溶液を滴下し、滴下後、100℃で90分撹拌した。25℃まで冷却後、固相を濾取し、これを水、1,4−ジオキサン、メタノールの順で洗浄して、黒色結晶を収率24.4%で得た。得られた結晶について各種分析を行い、構造等を確認した。分析結果を以下に示す。
【0043】
(分析結果)
▲1▼元素分析;C/H/S/Ni(質量%)
42.3/2.21/43.1/10.0
(理論値;42.3/2.13/42.2/10.3)
▲2▼構造解析:IR測定(cm−1)
3070、2923、2854、1718、1701、1697、1685、1654、1506、1457、1409、1365、1315、1093、1070、1049、902、854、829、742
▲3▼光学的特性:クロロホルム溶媒でのUVスペクトル測定
λmax;313nm、ε;4.00×104
λmax;973nm、ε;2.88×104
▲4▼窒素気流中、10℃/分昇温での示差熱分析
264℃で分解
【0044】
[製造例2]化合物No.2の製造
1,2−ジチエニル−2−ヒドロキシエタノンに代えて1,2−ジ(メチルチエニル)−2−ヒドロキシエタノンを用いた以外は、製造例1と同様の方法により、化合物No.2を合成した。収率は45.7%であった。得られた固体について各種分析を行い、構造等を確認した。分析結果を以下に示す。
【0045】
(分析結果)
▲1▼元素分析;C/H/S/Ni(質量%)
46.3/3.21/41.8/9.38
(理論値;46.2/3.23/41.1/9.41)
▲2▼構造解析:IR測定(cm−1)
2920、2844、1655、1637、1618、1560、1540、1527、1437、1342、1342、1161、1085、964、835、825、798、520
▲3▼光学的特性:クロロホルム溶媒でのUVスペクトル測定
λmax;316nm、ε;3.72×104
λmax;1023nm、ε;2.47×104
▲4▼窒素気流中、10℃/分昇温での示差熱分析
237℃で分解
【0046】
[製造例3]化合物No.7(化合物No.7’)の製造
反応フラスコに1−ジチエニル−2−フェニル−エタン−1,2−ジオン46.6mmol及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン150mlを仕込み、これに五硫化二リン62.4mmolを加え、加熱して30分還流させた。これを25℃まで冷却した後、水50gに二塩化ニッケル六水和物46.6mmolを溶かした水溶液を滴下し、滴下後、100℃で90分撹拌した。25℃まで冷却後、固相を濾取し、これを水、1,4−ジオキサン、メタノールの順で洗浄して、黒色結晶を収率46.6%で得た。得られた結晶について各種分析を行い、構造等を確認した。分析結果を以下に示す。
【0047】
(分析結果)
▲1▼元素分析;C/H/S/Ni(質量%)
52.0/2.88/35.0/10.0
(理論値;51.9/2.90/34.6/10.6)
▲2▼構造解析:IR測定(cm−1)
2927、2854、1570、1500、1445、1409、1361、1328、1253、1213、1157、1106、1051、1027、871、858、750、694、518
▲3▼光学的特性:クロロホルム溶媒でのUVスペクトル測定
λmax;317nm、ε;4.06×104
λmax;931nm、ε;2.65×104
▲4▼窒素気流中、10℃/分昇温での示差熱分析
287℃で分解
【0048】
[評価例1、2]吸収特性の比較評価
本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤(化合物No.1、2及び7)並びに芳香族ジチオールニッケル(比較化合物1及び2)について、それぞれの溶液での近赤外線領域の吸収特性(λmax及びλmaxにおけるε)を測定した。これらの結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
上記表1の結果から、本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤は、長波長側の近赤外線領域にλmaxを有し、芳香族ジチオールニッケルよりも、900〜1050nmにおける吸収特性に優れることが明らかである。
【0051】
[実施例1]
下記(配合1)にてUVワニスを作成し、易密着処理した188ミクロン厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに、該UVワニスをバーコーター#9により塗布し、80℃にて30秒乾燥した。その後、赤外線カットフィルムフィルター付き高圧水銀灯にて紫外線を100mJ照射し、硬化膜厚約5ミクロンの近赤外線吸収層を有する光学フィルターを得た。
得られた光学フィルターについて(株)日立製作所スペクトロフォトメーターU−3010でλmaxを測定した結果、λmaxは973nmであった。
【0052】
(配合1)
アデカオプトマーKRX−571−65 100g
(旭電化工業(株)製UV硬化樹脂、樹脂分80重量%)
近赤外線吸収剤(化合物No.1) 2.0g
メチルエチルケトン 60g
【0053】
[実施例2]
下記(配合2)をプラストミルで260℃にて5分間溶融混練した後、直径6mmのノズルから押出し水冷却ペレタイザーで色素含有ペレットを得た。このペレットを電気プレスを用いて250℃で0.25mm厚の薄板に成形し、光学フィルターとした。
得られた光学フィルターについて(株)日立製作所スペクトロフォトメーターU−3010でλmaxを測定した結果、λmaxは1025nmであった。
【0054】
(配合2)
ユーピロンS−3000 100g
(三菱瓦斯化学(株)製;ポリカーボネート樹脂)
近赤外線吸収剤(化合物No.2) 0.5g
【0055】
[実施例3]
下記(配合3)〜(配合4)にてバインダー組成物をそれぞれ作成し、易密着処理した188ミクロン厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、該バインダー組成物をバーコーター#9により塗布し、80℃にて30秒乾燥した。その後、このフィルムを0.9mm厚アルカリガラス板に100℃で熱圧着し、ガラス板とPETフィルムとの間のバインダー層に近赤外線吸収剤を含有するPET保護ガラス板を作成し、光学フィルターとした。
得られた光学フィルターについて(株)日立製作所スペクトロフォトメーターU−3010でλmaxを測定した結果、(配合3)にて作成したバインダー組成物を用いた場合のλmaxは931nmであり、(配合4)にて作成したバインダー組成物を用いた場合のλmaxは1083nmであった。
【0056】
(配合3)
アデカアークルズR−103 100g
(旭電化工業(株)製アクリル樹脂系バインダー、樹脂分50重量%)
近赤外線吸収剤(化合物No.4) 0.05g
【0057】
(配合4)
アデカアークルズR−103 100g
(旭電化工業(株)製アクリル樹脂系バインダー、樹脂分50重量%)
近赤外線吸収剤(化合物No.8) 0.05g
【0058】
実施例1〜3における測定結果から明らかなように、本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤を含有してなる光学フィルターは、画像表示装置から発せられる長波長側の近赤外線領域の光を吸収し得るものであった。
【0059】
【発明の効果】
本発明は、長波長側の近赤外線吸収能力の大きい近赤外線吸収剤及び該近赤外線吸収剤を含有する光学フィルターを提供できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学フィルター用近赤外線吸収剤及びこれを含有する光学フィルターに関し、詳しくは、画像表示装置、特にプラズマディスプレイパネル(PDP)に好適である特定の金属錯体からなる光学フィルター用近赤外線吸収剤及びこれを含有する光学フィルターに関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
近年、多種の画像表示装置(ディスプレイ)、例えば、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)、蛍光表示管、電界放射型ディスプレイ等の開発が行われ、これらを組み込んだ機器が実用化されている。これらの各種画像表示装置の中でも、ハイビジョン用大型壁掛けテレビ、マルチメディア用大画面ディスプレイとしてカラープラズマディスプレイ(PDP)が注目を浴びている。
【0003】
これらの画像表示装置は、原則として、赤、青、緑の三原色の光の組合せでカラー画像を表示する。しかし、画像表示装置からは不必要な波長の光も発せられており、周辺電子機器の誤作動や、表示画像の品質に影響を及ぼす等の問題が生じている。特にプラズマディスプレイは、800〜1050nmのネオンガスの輝線を発しており、近赤外線リモコンを用いた機器の誤作動を招くという問題がある。
【0004】
上記問題に対し、特定の光を吸収する光吸収剤を含有した光学フィルターが使用されており、例えば、近赤外線を吸収する光学フィルターとしては、特開平9−230134号公報、特開平10−45785号公報、特開平11−73115号公報、特開平11−12425号公報、特開2000−206323号公報、特開2000−212546号公報等に、芳香族ジチオールニッケル化合物を光吸収剤として用いた光学フィルターが報告されている。
【0005】
光学フィルター用近赤外線吸収剤としては、近赤外線領域の波長光を選択的に吸収し、可視光線領域の光を透過するものが求められている。しかし、上記の芳香族ジチオールニッケル化合物は、吸収することが求められている波長領域において、900nm以上の長波長側の吸収が弱いという問題点を有していた。
【0006】
従って、本発明の目的は、長波長側の近赤外線吸収能力の大きい光学フィルター用近赤外線吸収剤及び該近赤外線吸収剤を含有する光学フィルターを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、検討を重ねた結果、特定の構造を有する金属錯体が、上記課題を解決し得ることを知見し、本発明に到達した。
【0008】
即ち、本発明は、下記一般式(I)で表される金属錯体からなる光学フィルター用近赤外線吸収剤、及び該近赤外線吸収剤を含有することを特徴とした光学フィルターを提供するものである。
【0009】
【化2】
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
上記一般式(I)で表される金属錯体からなる本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤は、近赤外線領域の光を吸収する特性を有するものである。上記一般式(I)におけるMは、ニッケル原子、パラジウム原子、又は白金原子を表すが、中でもMがニッケル原子である金属錯体が、コストも安く、吸光係数も大きいので、光学フィルター用近赤外線吸収剤として最も適している。
【0012】
上記一般式(I)において、R1〜R4は、(i)で表される基又は置換されていてもよいアリール基を表し、R1及びR2については、どちらか一方又は両方が(i)で表される基であり、R3及びR4についても同様である。
【0013】
上記一般式(I)で表される金属錯体からなる本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤は、光学フィルターを構成する樹脂に対する相溶性及び/又は分散性が良好であり、該金属錯体の溶液は光吸収特性として900nm以上にλmaxを有し、ここでのモル吸光係数εも大きい値を示すので、900〜1050nmの近赤外線の吸収剤として好適なものである。
【0014】
上記一般式(I)におけるR1〜R4で表される置換されてもよいアリール基としては、フェニル基、置換フェニル基、ナフチル基、置換ナフチル基等が挙げられ、これらの置換基としては、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル等のアルキル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、アミロキシ、2−メトキシエトキシ、2−ブトキシエトキシ、2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ等のアルコキシ基;アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジブチルアミノ等のアミノ基類等が挙げられ、置換数は任意である。
【0015】
上記一般式(I)におけるR5で表される炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル等が挙げられ、R5で表される炭素数6〜30のアリール基としては、フェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、4−第三ブチルフェニル、4−ヘキシルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル、4−オクチルフェニル、4−(2−エチルヘキシル)フェニル、4−ステアリルフェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,4−ジ第三ブチルフェニル、2,5−ジ第三ブチルフェニル、2,6−ジ−第三ブチルフェニル、2,4−ジ第三ペンチルフェニル、2,5−ジ第三アミルフェニル、2,5−ジ第三オクチルフェニル、2,4−ジクミルフェニル、シクロヘキシルフェニル、ビフェニル、2,4,5−トリメチルフェニル等が挙げられる。
【0016】
上記一般式(I)で表される金属錯体の好適な具体例としては、以下に示す化合物No.1〜16、化合物No.5’〜10’が挙げられる。尚、化合物No.5’〜10’は、化合物No.5〜10の構造異性体であるが、本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤を光学フィルターに含有させる際に、これらは区別せずに用いることができるので、分離せずに構造異性体の混合物として用いてもよい。
【0017】
【化3】
【0018】
【化4】
【0019】
【化5】
【0020】
また、本発明に係る前記一般式(I)で表される金属錯体の製造方法としては、両末端にR1、R2及びR3、R4を有するα−ヒドロキシエタノン誘導体、α−ケトエタノン誘導体又はエタノン誘導体と五硫化二燐とを反応させチオホスフェート中間体を合成し、これとハロゲン化ニッケル等の金属塩を反応させて得る方法等が挙げられる。また、これらのエタノン誘導体が入手できない場合は、R1〜R4を有するアルデヒド化合物(R1〜4−CHO)をカップリングさせてエタノン誘導体を合成すればよい。
【0021】
本発明の光学フィルターは、前記一般式(I)で表される金属錯体からなる本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤を含有するものであれば、その用途、構成等により特に制限を受けることはない。また、本発明の光学フィルターには、本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤の他に、補助的に他の光吸収性色素や各種安定剤等を含有させることもできる。
【0022】
本発明の光学フィルターに用いることができる上記の他の光吸収性色素としては、例えば、シアニン系、キノリン系、クマリン系、チアゾール系、オキソノール系、アズレン系、スクアリリウム系、アゾメチン系、アゾ系、ベンジリデン系、キサンテン系、フタロシアニン系、前記一般式(I)で表される金属錯体以外のジチオール金属錯体系化合物等が挙げられる。
【0023】
また、本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤や上記の他の光吸収性色素の、光あるいは熱に対する安定化を図る目的で使用される上記各種安定化剤としては、例えば、ハイドロキノン誘導体(米国特許3935016号明細書、米国特許3982944号明細書)、ハイドロキノンジエーテル誘導体(米国特許4254216号明細書)、フェノール誘導体(特開昭54−21004号公報)、スピロインダン又はメチレンジオキシベンゼンの誘導体(英国特許出願公開2077455号明細書、英国特許2062888号明細書)、クロマン、スピロクロマン又はクマランの誘導体(米国特許3432300号明細書、米国特許3573050号明細書、米国特許3574627号明細書、米国特許3764337号明細書、特開昭52−152225号公報、特開昭53−20327号公報、特開昭53−17729号公報、特開昭61−90156号公報)、ハイドロキノンモノエーテル又はパラアミノフェノールの誘導体(英国特許1347556号明細書、英国特許2066975号明細書、特公昭54−12337号公報、特開昭55−6321号公報)、ビスフェノール誘導体(米国特許3700455号明細書、特公昭48−31625号公報)、金属錯体(米国特許4245018号明細書、特開昭60−97353号公報)、ニトロソ化合物(特開平2−300288号公報)、ジインモニウム化合物(米国特許465612号明細書)、ニッケル錯体(特開平4−146189号公報)、酸化防止剤(欧州特許820057号明細書)が挙げられる。また、本発明の光学フィルターは、一重項酸素等のクエンチャーとして、芳香族ニトロソ化合物、アミニウム化合物、イミニウム化合物、ビスイミニウム化合物、遷移金属キレート化合物等を含有してもよく、本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤の効果を阻害しない範囲において、ビスチオラート金属錯体アニオン等のクエンチャーアニオンを用いてもよい。
【0024】
本発明の光学フィルターは、その用途については特に制限されるものではないが、画像表示装置用の光学フィルターとして好適である。画像表示装置用光学フィルターには、例えば、表示品質向上のために不必要な波長の光を除くもの、リモコンの誤作動等を防止するもの、カラー表示のために用いられるもの(カラーフィルター)がある。画像表示装置としては、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置が挙げられる。本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤を含有してなる光学フィルターは、プラズマディスプレイパネル(PDP)の近赤外線用フィルターとして特に有用なものである。
【0025】
本発明の光学フィルターは、画像表示装置においてディスプレイの前面に配置され、例えば、光学フィルターをディスプレイの表面に直接貼り付ける方法や、ディスプレイの前に前面板が設けられている場合は、前面板の表側(外側)又は裏側(ディスプレイ側)に光学フィルターを貼り付ける方法により配置することができる。
【0026】
本発明の光学フィルターの代表的な構成としては、透明支持体に、必要に応じて、下塗り層、反射防止層、ハードコート層、潤滑層等の各層を設けたものが挙げられる。本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤、上記の他の光吸収性色素や各種安定剤を本発明の光学フィルターに含有させる方法としては、例えば、透明支持体又は任意の各層に含有させる方法、透明支持体又は任意の各層にコーティングする方法、各層間のポリマーバインダーや接着剤に混入させる方法、本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤等を含有する近赤外線吸収層を上記の各層とは別に設ける方法等が挙げられる。本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤は、各層間のポリマーバインダーや接着剤に混入させる方法及び近赤外線吸収層を設ける方法に好適である。
【0027】
本発明の光学フィルター用近赤外線光吸収剤の使用量は、光学フィルターの単位面積当たり、1〜1000mg/m2、好ましくは5〜100mg/m2である。1mg/m2未満の使用量では、近赤外線吸収効果を十分に発揮することができず、1000mg/m2を超えて使用した場合には、フィルターの色目が強くなりすぎて表示品質等を低下させるおそれがあり、さらには、明度が低下するおそれもあるため好ましくない。
【0028】
上記透明支持体の材料としては、例えば、ガラス等の無機材料;あるいは、例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース等のセルロースエステル;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリスチレン;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリエーテルイミド;ポリオキシエチレン等の高分子材料が挙げられる。透明支持体の透過率は80%以上であることが好ましく、86%以上であることがさらに好ましい。ヘイズは、2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。屈折率は、1.45〜1.70であることが好ましい。
【0029】
これらの透明支持体中には、光吸収性色素、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、無機微粒子等を添加することができ、また、これらの透明支持体には各種の表面処理を施すことができる。
【0030】
上記無機微粒子としては、例えば、二酸化珪素、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、カオリン等の無機微粒子が挙げられる。
【0031】
上記各種表面処理としては、例えば、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理、オゾン酸化処理等が挙げられる。
【0032】
上記下塗り層は、本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤を含有する近赤外線吸収層を設ける場合に、透明支持体と近赤外線吸収層との間に用いる層である。上記下塗り層は、ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーを含む層、近赤外線吸収層側の表面が粗面である層又は近赤外線吸収層のポリマーと親和性を有するポリマーを含む層として形成される。なお、近赤外線吸収層が設けられていない透明支持体の面に下塗り層を設けて、透明支持体とその上に設けられる層(例えば、反射防止層、ハードコート層)との接着力を改善するのために設けてもよく、また、下塗り層は、光学フィルターと画像形成装置とを接着するための接着剤と光学フィルターとの親和性を改善するために設けてもよい。下塗り層の厚みは、2nm〜20μmが好ましく、5nm〜5μmがより好ましく、20nm〜2μmがさらに好ましく、50nm〜1μmがさらにまた好ましく、80nm〜300nmが最も好ましい。ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーを含む下塗り層は、ポリマーの粘着性で、透明支持体と近赤外線吸収層とを接着する。ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーは、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ブタジエン、ネオプレン、スチレン、クロロプレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル又はメチルビニルエーテルの重合又はこれらの共重合により得ることができる。上記ガラス転移温度は、50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることがさらに好ましく、25℃以下であることがさらにまた好ましく、20℃以下であることが最も好ましい。下塗り層の25℃における弾性率は、1〜1000MPaであることが好ましく、5〜800MPaであることがさらに好ましく、10〜500MPaであることが最も好ましい。表面が粗面である下塗り層は、粗面の上に近赤外線吸収層を形成することで、透明支持体と近赤外線吸収層とを接着する。表面が粗面である下塗り層は、ポリマーラテックスの塗布により容易に形成することができる。ラテックスの平均粒径は、0.02〜3μmであることが好ましく、0.05〜1μmであることがさらに好ましい。近赤外線吸収層のバインダーポリマーと親和性を有するポリマーとしては、アクリル樹脂、セルロース誘導体、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、ポリビニルアルコール、可溶性ナイロン、高分子ラテックス等が挙げられる。また、本発明の光学フィルターにおいては、二以上の下塗り層を設けてもよい。下塗り層には、透明支持体を膨潤させる溶剤、マット剤、界面活性剤、帯電防止剤、塗布助剤や硬膜剤等を添加してもよい。
【0033】
上記反射防止層中においては、低屈折率層が必須である。低屈折率層の屈折率は、上記透明支持体の屈折率よりも低い。低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.55であることが好ましく、1.30〜1.50であることがさらに好ましい。低屈折率層の厚さは、50〜400nmであることが好ましく、50〜200nmであることがさらに好ましい。低屈折率層は、屈折率の低い含フッ素ポリマーからなる層(特開昭57−34526号、特開平3−130103号、同6−115023号、同8−313702号、同7−168004号の各公報記載)、ゾルゲル法により得られる層(特開平5−208811号、同6−299091号、同7−168003号の各公報記載)、あるいは微粒子を含む層(特公昭60−59250号、特開平5−13021号、同6−56478号、同7−92306号、同9−288201号の各公報に記載)として形成することができる。微粒子を含む層では、微粒子間又は微粒子内のミクロボイドとして、低屈折率層に空隙を形成することができる。微粒子を含む層は、3〜50体積%の空隙率を有することが好ましく、5〜35体積%の空隙率を有することがさらに好ましい。
【0034】
広い波長領域の反射を防止するためには、上記反射防止層において、低屈折率層に加えて、屈折率の高い層(中・高屈折率層)を積層することが好ましい。高屈折率層の屈折率は、1.65〜2.40であることが好ましく、1.70〜2.20であることがさらに好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との中間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.90であることが好ましく、1.55〜1.70であることがさらに好ましい。中・高屈折率層の厚さは、5nm〜100μmであることが好ましく、10nm〜10μmであることがさらに好ましく、30nm〜1μmであることが最も好ましい。中・高屈折率層のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。中・高屈折率層は、比較的高い屈折率を有するポリマーバインダーを用いて形成することができる。屈折率が高いポリマーとしては、ポリスチレン、スチレン共重合体、ポリカーボネート、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、環状(脂環式又は芳香族)イソシアネートとポリオールとの反応で得られるポリウレタン等が挙げられる。その他の環状(芳香族、複素環式、脂環式)基を有するポリマーや、フッ素以外のハロゲン原子を置換基として有するポリマーも、屈折率が高い。二重結合を導入してラジカル硬化を可能にしたモノマーの重合反応により形成されたポリマーを用いることもできる。
【0035】
さらに高い屈折率を得るため、ポリマーバインダー中に無機微粒子を分散してもよい。無機微粒子の屈折率は、1.80〜2.80であることが好ましい。無機微粒子は、金属の酸化物又は硫化物から形成することが好ましい。金属の酸化物又は硫化物としては、酸化チタン(例えば、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛等が挙げられる。これらの中でも、酸化チタン、酸化錫及び酸化インジウムが特に好ましい。無機微粒子は、これらの金属の酸化物又は硫化物を主成分とし、さらに他の元素を含むことができる。ここで、主成分とは、無機微粒子を構成する成分の中で最も含有量(重量%)が多い成分を意味する。他の元素としては、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P、S等が挙げられる。また、被膜形成性で溶剤に分散し得るか、それ自身が液状である無機材料、例えば、各種元素のアルコキシド、有機酸の塩、配位性化合物と結合した配位化合物(例えばキレート化合物)、活性無機ポリマー等を用いて、中・高屈折率層を形成することもできる。
【0036】
上記反射防止層の表面には、アンチグレア機能(入射光を表面で散乱させて、膜周囲の景色が膜表面に移るのを防止する機能)を付与することができる。例えば、透明フィルムの表面に微細な凹凸を形成し、そしてその表面に反射防止層を形成するか、あるいは、反射防止層を形成後、エンボスロールにより表面に凹凸を形成することにより、アンチグレア機能を有する反射防止層を得ることができる。アンチグレア機能を有する反射防止層は、一般に3〜30%のヘイズを有する。
【0037】
上記ハードコート層は、透明支持体の硬度よりも高い硬度を有する。ハードコート層は、架橋しているポリマーを含むことが好ましい。ハードコート層は、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系のポリマー、オリゴマー又はモノマー(例えば紫外線硬化型樹脂)を用いて形成することができる。また、シリカ系材料からハードコート層を形成することもできる。
【0038】
上記反射防止層(低屈折率層)の表面には潤滑層を形成してもよい。潤滑層は、低屈折率層表面に滑り性を付与し、耐傷性を改善する機能を有する。潤滑層は、ポリオルガノシロキサン(例えばシリコンオイル)、天然ワックス、石油ワックス、高級脂肪酸金属塩、フッ素系潤滑剤又はその誘導体を用いて形成することができる。潤滑層の厚さは、2〜20nmであることが好ましい。
【0039】
上記の各層とは別に本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤を含有する近赤外線吸収層を設ける場合は、本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤をそのまま使用することもでき、またバインダーを使用することもできる。バインダーとしては、例えば、ゼラチン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、アルギン酸等の天然高分子材料、あるいは、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド等の合成高分子材料が用いられる。
【0040】
上記の下塗り層、反射防止層、ハードコート層、潤滑層、近赤外線吸収層等は、一般的な塗布方法により形成することができる。塗布方法としては、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ホッパーを使用するエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書記載)等が挙げられる。二以上の層を同時塗布により形成してもよい。同時塗布法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書及び原崎勇次著「コーティング工学」253頁(1973年朝倉書店発行)に記載がある。
【0041】
【実施例】
以下、製造例、評価例及び実施例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
下記製造例1〜3は、本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤の実施例を示し、下記実施例1〜3は、本発明の光学フィルターの実施例を示す。また、下記評価例1及び2においては、本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤の近赤外線領域の吸収特性を測定した。
【0042】
[製造例1]化合物No.1の製造
反応フラスコに1,2−ジチエニル−2−ヒドロキシエタノン46.6mmol及び1,4−ジオキサン150mlを仕込み、これに五硫化二リン62.4mmolを加え、加熱して30分還流させた。これを25℃まで冷却した後、水50gに二塩化ニッケル六水和物46.6mmolを溶かした水溶液を滴下し、滴下後、100℃で90分撹拌した。25℃まで冷却後、固相を濾取し、これを水、1,4−ジオキサン、メタノールの順で洗浄して、黒色結晶を収率24.4%で得た。得られた結晶について各種分析を行い、構造等を確認した。分析結果を以下に示す。
【0043】
(分析結果)
▲1▼元素分析;C/H/S/Ni(質量%)
42.3/2.21/43.1/10.0
(理論値;42.3/2.13/42.2/10.3)
▲2▼構造解析:IR測定(cm−1)
3070、2923、2854、1718、1701、1697、1685、1654、1506、1457、1409、1365、1315、1093、1070、1049、902、854、829、742
▲3▼光学的特性:クロロホルム溶媒でのUVスペクトル測定
λmax;313nm、ε;4.00×104
λmax;973nm、ε;2.88×104
▲4▼窒素気流中、10℃/分昇温での示差熱分析
264℃で分解
【0044】
[製造例2]化合物No.2の製造
1,2−ジチエニル−2−ヒドロキシエタノンに代えて1,2−ジ(メチルチエニル)−2−ヒドロキシエタノンを用いた以外は、製造例1と同様の方法により、化合物No.2を合成した。収率は45.7%であった。得られた固体について各種分析を行い、構造等を確認した。分析結果を以下に示す。
【0045】
(分析結果)
▲1▼元素分析;C/H/S/Ni(質量%)
46.3/3.21/41.8/9.38
(理論値;46.2/3.23/41.1/9.41)
▲2▼構造解析:IR測定(cm−1)
2920、2844、1655、1637、1618、1560、1540、1527、1437、1342、1342、1161、1085、964、835、825、798、520
▲3▼光学的特性:クロロホルム溶媒でのUVスペクトル測定
λmax;316nm、ε;3.72×104
λmax;1023nm、ε;2.47×104
▲4▼窒素気流中、10℃/分昇温での示差熱分析
237℃で分解
【0046】
[製造例3]化合物No.7(化合物No.7’)の製造
反応フラスコに1−ジチエニル−2−フェニル−エタン−1,2−ジオン46.6mmol及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン150mlを仕込み、これに五硫化二リン62.4mmolを加え、加熱して30分還流させた。これを25℃まで冷却した後、水50gに二塩化ニッケル六水和物46.6mmolを溶かした水溶液を滴下し、滴下後、100℃で90分撹拌した。25℃まで冷却後、固相を濾取し、これを水、1,4−ジオキサン、メタノールの順で洗浄して、黒色結晶を収率46.6%で得た。得られた結晶について各種分析を行い、構造等を確認した。分析結果を以下に示す。
【0047】
(分析結果)
▲1▼元素分析;C/H/S/Ni(質量%)
52.0/2.88/35.0/10.0
(理論値;51.9/2.90/34.6/10.6)
▲2▼構造解析:IR測定(cm−1)
2927、2854、1570、1500、1445、1409、1361、1328、1253、1213、1157、1106、1051、1027、871、858、750、694、518
▲3▼光学的特性:クロロホルム溶媒でのUVスペクトル測定
λmax;317nm、ε;4.06×104
λmax;931nm、ε;2.65×104
▲4▼窒素気流中、10℃/分昇温での示差熱分析
287℃で分解
【0048】
[評価例1、2]吸収特性の比較評価
本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤(化合物No.1、2及び7)並びに芳香族ジチオールニッケル(比較化合物1及び2)について、それぞれの溶液での近赤外線領域の吸収特性(λmax及びλmaxにおけるε)を測定した。これらの結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
上記表1の結果から、本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤は、長波長側の近赤外線領域にλmaxを有し、芳香族ジチオールニッケルよりも、900〜1050nmにおける吸収特性に優れることが明らかである。
【0051】
[実施例1]
下記(配合1)にてUVワニスを作成し、易密着処理した188ミクロン厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに、該UVワニスをバーコーター#9により塗布し、80℃にて30秒乾燥した。その後、赤外線カットフィルムフィルター付き高圧水銀灯にて紫外線を100mJ照射し、硬化膜厚約5ミクロンの近赤外線吸収層を有する光学フィルターを得た。
得られた光学フィルターについて(株)日立製作所スペクトロフォトメーターU−3010でλmaxを測定した結果、λmaxは973nmであった。
【0052】
(配合1)
アデカオプトマーKRX−571−65 100g
(旭電化工業(株)製UV硬化樹脂、樹脂分80重量%)
近赤外線吸収剤(化合物No.1) 2.0g
メチルエチルケトン 60g
【0053】
[実施例2]
下記(配合2)をプラストミルで260℃にて5分間溶融混練した後、直径6mmのノズルから押出し水冷却ペレタイザーで色素含有ペレットを得た。このペレットを電気プレスを用いて250℃で0.25mm厚の薄板に成形し、光学フィルターとした。
得られた光学フィルターについて(株)日立製作所スペクトロフォトメーターU−3010でλmaxを測定した結果、λmaxは1025nmであった。
【0054】
(配合2)
ユーピロンS−3000 100g
(三菱瓦斯化学(株)製;ポリカーボネート樹脂)
近赤外線吸収剤(化合物No.2) 0.5g
【0055】
[実施例3]
下記(配合3)〜(配合4)にてバインダー組成物をそれぞれ作成し、易密着処理した188ミクロン厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、該バインダー組成物をバーコーター#9により塗布し、80℃にて30秒乾燥した。その後、このフィルムを0.9mm厚アルカリガラス板に100℃で熱圧着し、ガラス板とPETフィルムとの間のバインダー層に近赤外線吸収剤を含有するPET保護ガラス板を作成し、光学フィルターとした。
得られた光学フィルターについて(株)日立製作所スペクトロフォトメーターU−3010でλmaxを測定した結果、(配合3)にて作成したバインダー組成物を用いた場合のλmaxは931nmであり、(配合4)にて作成したバインダー組成物を用いた場合のλmaxは1083nmであった。
【0056】
(配合3)
アデカアークルズR−103 100g
(旭電化工業(株)製アクリル樹脂系バインダー、樹脂分50重量%)
近赤外線吸収剤(化合物No.4) 0.05g
【0057】
(配合4)
アデカアークルズR−103 100g
(旭電化工業(株)製アクリル樹脂系バインダー、樹脂分50重量%)
近赤外線吸収剤(化合物No.8) 0.05g
【0058】
実施例1〜3における測定結果から明らかなように、本発明の光学フィルター用近赤外線吸収剤を含有してなる光学フィルターは、画像表示装置から発せられる長波長側の近赤外線領域の光を吸収し得るものであった。
【0059】
【発明の効果】
本発明は、長波長側の近赤外線吸収能力の大きい近赤外線吸収剤及び該近赤外線吸収剤を含有する光学フィルターを提供できる。
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