JP2004043670A - 複合分散体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】樹脂とゴムとを広い範囲で組み合わせても、樹脂で構成された連続相と加硫ゴムで構成された分散相とが強固に接合した複合分散体を提供する。
【解決手段】前記樹脂を、加硫活性剤を含有する樹脂又は架橋性基を有する樹脂(不飽和結合を有する樹脂など)で構成する。また、特定の樹脂とゴムとの組合せ(例えば、(a)樹脂と、加硫剤及び加硫活性剤を特定の割合で含む未加硫ゴムとの組合せ、(b)ポリアミド系樹脂と、加硫剤及びポリアルケニレンとを特定の割合で含む未加硫ゴムとの組合せ、(c)樹脂とシリコーン系未加硫ゴムとの組合せ、(d)ポリアルケニレンを含有するポリフェニレンエーテル系樹脂と、加硫剤として硫黄又は硫黄含有有機化合物を含有している未加硫ゴムとの組合せ)で前記複合分散体を構成してもよい。
【選択図】 なし
【解決手段】前記樹脂を、加硫活性剤を含有する樹脂又は架橋性基を有する樹脂(不飽和結合を有する樹脂など)で構成する。また、特定の樹脂とゴムとの組合せ(例えば、(a)樹脂と、加硫剤及び加硫活性剤を特定の割合で含む未加硫ゴムとの組合せ、(b)ポリアミド系樹脂と、加硫剤及びポリアルケニレンとを特定の割合で含む未加硫ゴムとの組合せ、(c)樹脂とシリコーン系未加硫ゴムとの組合せ、(d)ポリアルケニレンを含有するポリフェニレンエーテル系樹脂と、加硫剤として硫黄又は硫黄含有有機化合物を含有している未加硫ゴムとの組合せ)で前記複合分散体を構成してもよい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂及びゴムで構成され、かつ機械部品、自動車部品などとして有用な複合分散体(又は複合分散部材)及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高分子材料に対する要求品質が高くなるに伴い複数の特性、場合によっては相反する特性を複合して有する素材が求められている。特に工業用高分子素材の分野では高剛性と耐衝撃特性、柔軟性と耐薬品性、耐磨耗性と耐油性など特性を複合して有する素材が求められ、各種樹脂と加硫ゴム(又はゴム)とを複合化させた組成物の開発が期待された。
【0003】
しかし、一般に特性の異なる素材は相互に相溶せず、両者を単に混合するだけでは一方の成分が他方の成分に不均一に分散した混合物が得られるだけであり、両者の特性が複合した新たな特性を有する組成物を得る事は難しい。寧ろ、破断伸度や耐寒性などの工業用素材として重要な特性の低下を伴う事が多く、実用化できる技術とはなり得ない場合が多い。これらの欠点は両成分の混合において、両者の界面を確実に接合させ、実質的に両者が界面において相溶したのと同様の効果を得る事で解決される。
【0004】
これまでに樹脂部材とゴム部材を接合させた複合体を得る方法が多く提案されている。樹脂とゴムとの混合において、これらの複合体の技術を利用すれば一方の成分が他方に均一に分散し、かつ、両者の界面が十分に接合され、両者の特性が複合して発現する新たな組成物(複合分散体)を提供できると考えられる。
【0005】
ゴム部材と樹脂部材を接合した複合体を得る方法としては、例えば、接着剤を用いて、両者を接着する方法が知られている。しかし、接着剤を利用して複合分散体を得る場合、接着剤を樹脂/ゴム間に集中して介在させる必要があるが、3者の混合において、接着剤をゴム/樹脂間の界面だけに、また、その界面のすべてに介在させることが困難である。
【0006】
また、樹脂成形部材とゴム成形部材とを直接接合する方法が提案されている。例えば、特開昭50−25682号公報には、熱可塑性プラスチックとこの熱可塑性プラスチックと相溶性の加硫ゴムとを接触面で摩擦接触させ、プラスチック表面を溶融し、接触させた状態で熱可塑性樹脂成分とゴム成分とを凝固させ複合体を得ることが提案されている。しかし、この方法では、目的の複合分散体を得ることが困難である。
【0007】
特開平9−124803号公報には、アクリロニトリル含有熱可塑性樹脂(AS,ABS樹脂など)と、アクリロニトリル含有ゴムとを、熱可塑性樹脂とゴムとの相溶性を利用して加熱密着させて複合部材を得ることが提案されている。しかし、この方法では、アクリロニトリルを含有する樹脂及びゴムに制限され、実用性がかなり狭くなる。
【0008】
特開平8−156288号公報には、エポキシ基を含有する樹脂組成物と加硫されたカルボキシル基又は酸無水物基を有する弾性ゴムとを接触させて加硫し、エポキシ基とカルボキシル基との化学反応を利用することにより、樹脂とゴムとの接触面で接合する複合部材を得る方法が提案されている。しかし、この方法では、エポキシ基とカルボキシル基との化学反応を利用しているため、樹脂とゴムの種類が大きく制限され、幅広い範囲で複合分散体を得ることが困難である。
【0009】
特開平2−150439号公報、特開平3−133631号公報、特開平3−138114号公報には、ポリアミド系樹脂とゴム成分とを加硫系の存在下で加硫することにより複合体を製造する方法において、ゴム成分として、カルボキシル基又は酸無水物含有ゴムと過酸化物と加硫活性剤(エチレングリコールジメタクリレート、トリアリルイソシアヌレートなど)とアルコキシシラン化合物とを含むゴム成分を用いることが提案されている。これらの文献では、脂肪族ポリアミド系樹脂として主に末端カルボキシル基よりも末端アミノ基の多いポリアミド系樹脂が使用されている。すなわち、アミノ基とカルボキシル基又は酸無水物基との反応を利用している。そのため、樹脂及びゴムの種類が大きく制約され、幅広い範囲で樹脂とゴムとの複合分散体を得ることが困難である。
【0010】
特開平7−11013号公報には、ポリアミド成形体と、ゴムと、過酸化物加硫剤とシラン化合物とを含むゴムパウンドとを接触させて加硫することにより、ポリアミド成形体と加硫ゴムとの複合部材を得る方法が提案されている。
【0011】
しかし、この方法も、シラン化合物を必要とするばかりか、樹脂がポリアミド系樹脂に限定されるため汎用性がない。
【0012】
一方、特開2002−30221号公報には、熱可塑性樹脂(B)の連続相中に加硫したゴム(A)が粒子状に分散している熱可塑性樹脂組成物であって、前記ゴム(A)と熱可塑性樹脂(B)とが、熱可塑性樹脂(B)からなる樹脂成形物と未加硫のゴム(A)とを加圧・加熱下に接触させつつゴム(A)を加硫させた場合に、前記樹脂成形物とゴム(A)からなるゴム成形部とが剥離試験において凝集破壊が起きる程度の接着強度で接着可能な組合せからなる熱可塑性樹脂組成物が開示されている。
【0013】
この文献には、凝集破壊が起きる具体的な樹脂とゴムとの組合せとして、(1)SBR、NR、EPDM、酸変性エチレン−プロピレンゴム、及びエチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体ゴムから選択された少なくとも1種のゴムと、ポリフェニレンエーテル(PPE)又はその組成物との組合せ、(2)酸変性エチレン−プロピレンゴム、酸変性ニトリルゴム及びフッ素ゴムから選択された少なくとも1種のゴムと、アミノ基を有する熱可塑性樹脂との組合せが記載されている。さらに、前記PPE又はその組成物の組合せ(1)において、ゴムの加硫剤として有機過酸化物を用いることが多いこと、及びPPE組成物を、PPE100重量部と、ポリアルケニレン0〜30重量部と、スチレン系ゴム0〜30重量部とで構成できることが記載されている。また、この文献には、ゴム100重量部に対して、加硫促進剤(ベンゾチアゾール類、トリアリルイソシアヌレート、m−フェニレンビスマレイミド、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなど)0.1〜5重量部程度や、加工助剤としてのポリアルケニレン(ポリオクテニレンなど)0.5〜12重量部程度を添加することが記載されている。
【0014】
しかし、この文献の方法では、凝集破壊を伴う樹脂とゴムとの組合せを見いだすのが困難であり、樹脂とゴムとの組合せが大きく制限される。また、このような組合せを選択しても連続相と分散相との接着強度は十分でない場合が多い。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、樹脂とゴムとを広い範囲で組み合わせても、樹脂で構成された連続相と、加硫ゴムで構成された分散相とが強固に接合した複合分散体及びその製造方法を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、簡便な方法により、樹脂相と加硫ゴム相とが強固に接合した複合分散体を製造する方法を提供することにある。
【0017】
本発明のさらに他の目的は、樹脂マトリックスにゴムの特性を有効に付与できる複合分散体及びその製造方法を提供することにある。
【0018】
本発明の別の目的は、樹脂相と加硫ゴム相とが強固に接合した複合分散体で形成された成形品を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、樹脂相とゴム相とが接合した複合分散体において、(1)加硫活性剤を含有する樹脂又は架橋性の樹脂を使用したり、(2)特定の樹脂とゴムとを組み合わせると、樹脂相と加硫ゴム相とを確実にかつ強固に直接接合できることを見出し、本発明を完成した。
【0020】
すなわち、本発明の複合分散体(1)は、樹脂で構成された連続相と、未加硫ゴムが加硫した加硫ゴムで構成された分散相とが直接接合しており、前記連続相が、加硫活性剤を含有する樹脂、又は架橋性基を有する樹脂で構成されている。なお、「直接接合」とは、「接着剤を使用することなく樹脂相と加硫ゴム相とが接着しており、シート状の両相を機械的に剥離させたとき、ゴム相の凝集破壊を伴って剥離が進行すること」を意味する。
【0021】
前記架橋性基を有する樹脂は、例えば、不飽和結合を有する熱可塑性樹脂(例えば、熱可塑性樹脂1kgに対して不飽和結合0.01〜6.6モル程度を有する熱可塑性樹脂)などであってもよく、前記不飽和結合を有する樹脂は、(i)反応性基(A)及び不飽和結合を有する重合性化合物と、前記反応性基(A)に対して反応性の反応性基(B)を有する熱可塑性樹脂との反応により生成した樹脂、又は(ii)共重合又は共縮合により不飽和結合を導入した熱可塑性樹脂であってもよい。
【0022】
前記樹脂は、ポリアミド系樹脂(脂肪族ポリアミド系樹脂など)、ポリエステル系樹脂(芳香族ポリエステル系樹脂など)、ポリ(チオ)エーテル系樹脂(ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂など)、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ハロゲン含有樹脂、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂及び熱可塑性エラストマーから選択された少なくとも一種であってもよく、下記式(1)で表される軌道相互作用エネルギー係数Sが0.006以上である水素原子及び/又は硫黄原子を一分子中に少なくとも平均2つ有する樹脂であってもよい。
【0023】
S=(CHOMO,n)2/|Ec−EHOMO,n|+(CLUMO,n)2/|Ec−ELUMO,n| (1)
(式中、Ec、CHOMO,n、EHOMO,n、CLUMO,n、ELUMO,nは、いずれも半経験的分子軌道法MOPACPM3により算出された値であって、Ecはラジカル発生剤のラジカルの軌道エネルギー(eV)を示し、CHOMO,nは樹脂の基本単位を構成する第n番目の水素原子及び/又は硫黄原子の最高被占分子軌道(HOMO)の分子軌道係数を示し、EHOMO,nは前記HOMOの軌道エネルギー(eV)を示し、CLUMO,nは前記n番目の水素原子及び/又は硫黄原子の最低空分子軌道(LUMO)の分子軌道係数を示し、ELUMO,nは前記LUMOの軌道エネルギー(eV)を示す)
前記複合分散体(1)において、加硫ゴムは、ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、アクリル系ゴム、フッ素ゴム、シリコーン系ゴム、ウレタン系ゴムなどであってもよい。少なくとも未加硫ゴムが加硫剤(有機過酸化物、アゾ化合物、硫黄含有有機化合物などのラジカル発生剤、硫黄など)を含有していてもよく、加硫剤の割合が、未加硫ゴム100重量部に対して、0.1〜10重量部程度であってもよい。また、前記加硫活性剤は、一分子中に少なくとも2つの重合性不飽和結合を有する有機化合物及びマレイミド系化合物から選択された少なくとも1種であってもよく、加硫活性剤の割合は、樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部程度であってもよい。さらに、樹脂及び未加硫ゴムのうち少なくとも一方の成分が、ポリアルケニレンを含有していてもよく、ポリアルケニレンの割合は、樹脂又は未加硫ゴム100重量部に対して、1〜30重量部であってもよい。
【0024】
前記複合分散体(2)では、前記樹脂及び/又は未加硫ゴムが下記(a)〜(d)のいずれかの組合せであってもよい。なお、これらの組合せにおいて、樹脂が、前記軌道相互作用エネルギー係数Sが0.006以上である水素原子及び/又は硫黄原子を一分子中に少なくとも平均2つ有していてもよく、また、未加硫ゴムが、加硫活性剤やポリアルケニレンを含有していてもよい。
【0025】
(a)樹脂と、加硫剤及び加硫活性剤を含む未加硫ゴムとの組合せであって、前記加硫剤と加硫活性剤との割合(重量比)が、前者/後者=2/98〜70/30である組合せ
(b)ポリアミド系樹脂と、加硫剤及びポリアルケニレンを含む未加硫ゴムとの組合せであって、前記加硫剤とポリアルケニレンとの割合(重量比)が、前者/後者=2/98〜45/55であるの組合せ
(c)樹脂と、シリコーン系未加硫ゴムとの組合せ
(d)ポリアルケニレンを含有するポリフェニレンエーテル系樹脂と、加硫剤として硫黄又は硫黄含有有機化合物を含有している未加硫ゴムとの組合せ
本発明の複合分散体では、樹脂及び/又は未加硫ゴムが、分子量が1000以下であって、かつ前記軌道相互作用エネルギー係数Sが0.006以上である水素原子を一分子中に平均2個以上有する化合物、一分子中にカルボキシル基、酸無水物基又はイソシアネート基を1個以上有する化合物及びシランカップリング剤から選択された少なくとも1種を含有していてもよい。また、本発明の複合分散体は、連続相と分散相とで海島構造を形成していてもよく、連続相と分散相との割合(重量比)が、連続相/分散相=25/75〜98/2程度であってもよい。
【0026】
本発明は、樹脂と未加硫ゴムとを混練して前記複合分散体を製造する方法、及び前記複合分散体で形成された成形品を含む。
【0027】
なお、本発明において、樹脂は、ゴム成分を含むグラフト共重合体(例えば、HIPS、ABS樹脂など)を含むものとする。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明の複合分散体は、樹脂で構成された連続相(単に樹脂相と称する場合がある)と、未加硫ゴムが加硫した加硫ゴムで構成された分散相(単にゴム相と称する場合がある)とが直接接合している。本発明の一つの態様では、前記複合分散体において、樹脂として、加硫活性剤を含有する樹脂、又は架橋性基を有する樹脂を使用することにより、樹脂とゴムとを強固に接着させる。また、本発明の他の態様では、前記複合分散体を、特定の樹脂とゴムとを組合せて構成する。
【0029】
[樹脂]
連続相を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂などが使用できる。
【0030】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ(チオ)エーテル系樹脂(ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂など)、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂などの縮合系熱可塑性樹脂;ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ハロゲン含有樹脂、ビニル系樹脂(例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコールなど)などのビニル重合系熱可塑性樹脂;熱可塑性エラストマーなどが例示できる。
【0031】
これらの樹脂は、単独でまたは二種以上組合せて使用することができる。二種以上の樹脂を組合せて用いる場合、樹脂組成物はポリマーアロイなどの複合樹脂組成物を形成してもよい。
【0032】
(架橋性基を有する樹脂)
架橋性基を有する樹脂(以下、架橋性樹脂と称する場合がある)としては、例えば、不飽和結合(重合性又は架橋性不飽和結合)を有する熱可塑性樹脂が挙げられる。このような架橋性樹脂を用いると、ゴム成分の加硫において、架橋反応がゴム成分と樹脂成分との界面においても進行するため、ゴム成分として幅広い範囲のゴム成分を選択しても、樹脂相とゴム相(又は加硫ゴム相)とを強固に接合できる。
【0033】
不飽和結合を有する熱可塑性樹脂において、不飽和結合としては、加硫剤(ラジカル発生剤など)により活性化可能であれば特に限定されず、熱や光の付与により架橋性又は重合性を示す種々の結合(特に重合性不飽和結合)が例示できる。このような不飽和結合又は不飽和結合を有するユニットは、連結基(エステル結合(−OC(=O)−、−C(=O)O−)、アミド結合(−NHCO−,−CONH−)、イミノ結合(−NH−)、ウレタン結合(−NHC(=O)O−)、尿素結合、ビウレット結合など)を介して、熱可塑性樹脂に結合していてもよい。さらに、前記不飽和結合又はそのユニットは、樹脂の末端(主鎖末端)及び/又は側鎖に位置していてもよく、樹脂の主鎖に位置していてもよく、さらにはこれらの両者に位置していてもよい。
【0034】
不飽和結合を有する基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、アリル基、2−メチル−2−プロペニル基、2−ブテニル基などのC2−6アルケニル基;4−ビニルフェニル基、4−イソプロペニルフェニル基などのC2−6アルケニル−C6−20アリール基;スチリル基などのC6−20アリール−C2−6アルケニル基;エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、プロパルギル基、2−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基などのC2−6アルキニル基;ビニレン基、メチルビニレン基、エチルビニレン基、1,2−ジメチルビニレンなどのモノ又はジC1−6アルキルビニレン基、クロロビニレン基などのハロビニレン基などの置換基を有していてもよいビニレン基;ビニリデン基;エチニレン基などが例示できる。
【0035】
不飽和結合を有する熱可塑性樹脂の具体的な態様としては、例えば、下記(i)〜(iii)のような態様が例示できる。
【0036】
(i)反応性基(A)及び不飽和結合を有する重合性化合物と、前記反応性基(A)に対して反応性の反応性基(B)を有する熱可塑性樹脂との反応により生成した樹脂
(ii)共重合又は共縮合により不飽和結合を導入した熱可塑性樹脂
(iii)種々の有機反応(例えば、アセチレンを利用したレッペ反応によるビニル基の導入、ビニルリチウムなどの有機金属試薬を利用した不飽和結合の導入、カップリング反応による不飽和結合の導入など)により不飽和結合を導入した熱可塑性樹脂
これらの樹脂のうち、好ましい不飽和結合含有樹脂は樹脂(i)又は(ii)である。
【0037】
前記樹脂(i)において、少なくとも1つの反応性基(A)と少なくとも1つの不飽和結合とを有する重合性化合物と、前記重合性化合物の反応性基(A)に対して反応性の反応性基(B)を有する樹脂とを反応させることにより、樹脂に不飽和結合を導入できる。
【0038】
重合性化合物の代表的な反応性基(A)としては、(A1)ヒドロキシル基、(A2)カルボキシル基又はその酸無水物基、(A3)アミノ基、(A4)エポキシ基、(A5)イソシアネート基などが例示でき、重合性化合物の反応性基(A)と樹脂の反応性基(B)との組合せとしては、次のような組合せが例示できる。なお、括弧内は反応性基(A)と反応性基(B)との結合形式を示す。
【0039】
(A1)ヒドロキシル基:
(B)カルボキシル基又はその酸無水物基(エステル結合)、イソシアネート基(エステル結合)
(A2)カルボキシル基又はその無水物基:
(B)ヒドロキシル基(エステル結合)、アミノ基(アミド結合)、エポキシ基(エステル結合)、イソシアネート基(アミド結合)
(A3)アミノ基:
(B)カルボキシル基又はその酸無水物基(アミド結合)、エポキシ基(イミノ結合)、イソシアネート基(アミド結合)
(A4)エポキシ基:
(B)カルボキシル基又はその酸無水物基(エステル結合)、アミノ基(イミノ結合)
(A5)イソシアネート基:
(B)ヒドロキシル基(エステル結合)、カルボキシル基又はその酸無水物基(アミド結合)、アミノ基(アミド結合)
重合性化合物としては、ヒドロキシル基含有化合物[例えば、アリルアルコール、2−ブテン−1−オール、3−ブテン−2−オールなどのC3−6アルケノール、プロパルギルアルコールなどのC3−6アルキノール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレートなどのC2−6アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのポリオキシC2−6アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシ−α−メチルスチレンのなどのC2−6アルケニルフェノール、ジヒドロキシスチレン、ビニルナフトールなど]、カルボキシル基又は酸無水物基含有化合物[例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、3−ブテン酸などのC3−6アルケンカルボン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸などのC4−8アルケンジカルボン酸又はその無水物、ビニル安息香酸などの不飽和芳香族カルボン酸、ケイ皮酸など]、アミノ基含有化合物(例えば、アリルアミンなどのC3−6アルケニルアミン、4−アミノスチレン、ジアミノスチレンなど)、エポキシ基含有化合物(例えば、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートなど)、イソシアネート基含有化合物(例えば、ビニルイソシアネートなど)などが例示できる。
【0040】
なお、前記樹脂(i)において、反応性基(B)を導入することにより樹脂を改質してもよい。樹脂に反応性基(B)を導入する方法としては、(i−1)樹脂の製造において、反応性基(B)を有する単量体(例えば、前記例示の重合性化合物など)と、樹脂材料(又は樹脂の原料である単量体やオリゴマー)とを共重合させる方法、(i−2)酸化反応によるカルボキシル基の導入、ハロゲン化法、重合性単量体のグラフト法などの種々の有機反応が利用できる。なお、ビニル重合系樹脂では、通常、前記反応性基(B)を有する単量体を共重合成分として用いることにより前記反応性基(B)を導入する場合が多く、ビニル重合系樹脂を含めていずれの樹脂でも、前記反応性基を有する重合性化合物のグラフト反応により、前記反応性基(B)を容易に導入できる。
【0041】
前記樹脂(ii)において、不飽和結合の導入方法としては、例えば、縮合系樹脂(例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂など)の調製において、反応成分の一部(コモノマー)として、多官能性の不飽和結合を有する化合物[例えば、脂肪族不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸などのC4−10脂肪族不飽和ジカルボン酸など)などの不飽和多価カルボン酸;脂肪族不飽和ジオール(2−ブテン−1,4−ジオールなどのC4−10脂肪族不飽和ジオールなど)などの不飽和多価アルコールなど]を共縮合(又は共重合)させる方法などが例示できる。また、付加重合系樹脂(例えば、オレフィン系樹脂など)においては、反応成分の一部(コモノマー)として、共役不飽和結合を有する単量体(例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、クロロプレンなどの置換基を有していてもよい共役C4−10アルカジエンなど)を共重合させる方法などが例示できる。
【0042】
不飽和結合を含有する樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。また、不飽和結合を含有する樹脂は、不飽和結合を含有しない樹脂(a)を含んでいてもよい。樹脂(a)としては、特に限定されず、種々の熱可塑性樹脂[例えば、後述する熱可塑性樹脂(ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂など)など]が例示できる。
【0043】
前記樹脂(a)の割合は、例えば、不飽和結合を含有する樹脂100重量部に対して、樹脂(a)10〜3000重量部、好ましくは15〜2000重量部、さらに好ましくは30〜500重量部(例えば、50〜300重量部)程度であってもよい。
【0044】
不飽和結合の数は、例えば、樹脂一分子に対して、平均0.1個以上(例えば、0.1〜1000個程度)、好ましくは平均1個以上(例えば、1〜100個程度)、さらに好ましくは平均2個以上(例えば、2〜50個程度)である。また、不飽和結合の濃度は、例えば、樹脂1kgに対して、0.001〜6.6モル、好ましくは0.01〜4モル、さらに好ましくは0.02〜2モル程度である。
【0045】
(活性原子を有する樹脂)
本発明で使用する樹脂は、ラジカル発生剤に対して高い活性を示す原子(以下、活性原子と称する)を有していてもよい。このような活性原子は、加硫剤としてラジカル発生剤を使用する場合、加硫剤に対する樹脂の活性を高めることができ、樹脂/ゴム間の接着強度を向上できる。
【0046】
具体的には、樹脂は、ラジカル発生剤の種類に応じて選択でき、例えば、下記式(1)で表される軌道相互作用エネルギー係数Sが一定値(例えば、0.006、好ましくは0.008)以上の活性原子(例えば、活性水素原子、活性硫黄原子)を有していてもよい。好ましい活性原子の軌道相互作用エネルギー係数Sは、0.006〜0.06、好ましくは0.007〜0.05(特に0.01〜0.045)程度である。この活性原子の数は、活性原子を有する官能基の結合部位(末端、分岐鎖や主鎖など)に依存し、例えば、樹脂の一分子中、平均2個以上(2〜10000個程度)、好ましくは平均2.5個以上(2.5〜5000個程度)、さらに好ましくは平均3個以上(3〜1000個程度)である。樹脂一分子中の活性原子の数は、通常、2〜100個(好ましくは2.5〜50個、さらに好ましくは3〜25個、特に3〜20個)程度である。
【0047】
S=(CHOMO,n)2/|Ec−EHOMO,n|+(CLUMO,n)2/|Ec−ELUMO,n| (1)
(式中、Ec、CHOMO,n、EHOMO,n、CLUMO,n、ELUMO,nは、いずれも半経験的分子軌道法MOPACPM3により算出された値であって、Ecはラジカル発生剤のラジカルの軌道エネルギー(eV)を示し、CHOMO,nは樹脂の基本単位を構成する第n番目の水素原子及び/又は硫黄原子の最高被占分子軌道(HOMO)の分子軌道係数を示し、EHOMO,nは前記HOMOの軌道エネルギー(eV)を示し、CLUMO,nは前記n番目の水素原子及び/又は硫黄原子の最低空分子軌道(LUMO)の分子軌道係数を示し、ELUMO,nは前記LUMOの軌道エネルギー(eV)を示す)
式(1)のMOPACPM3とは、分子軌道法(MO)の一つである。分子軌道法は分子の電子状態を論ずる近似法のひとつであり、Huckel法などの経験的方法、Huckel法の近似を高めた半経験的方法、厳密に計算のみで分子軌道関数を求める非経験的方法の3つに大別できる。近年、コンピュータの発達に伴ない、半経験的方法および非経験的方法が主な方法になっている。分子軌道法は、分子構造とその化学反応性を関係づける最も有力な方法のひとつである。例えば、日本科学技術文献情報データベース(JOIS)における分子軌道法に関する登録件数は、キーワードを「分子軌道法」として検索した場合、約53000件(期間:1980年〜2000年5月)である。MOPACPM3は、前記半経験的方法の一つであるNDDO(Neglect of Diatomic Differential Overlap)法の核をなす方法である。
【0048】
MOPACPM3は、主として有機化合物の反応について考察する目的で用いられており、多くの文献や書籍[「分子軌道法MOPACガイドブック」(平野恒夫、田辺和俊偏、海文堂、1991年)、「三訂・量子化学入門」(米沢貞次郎他著、化学同人、1983年)、「計算化学ガイドブック」(大澤映二他訳、Tim Clark著、丸善、1985年)]などで解説されている。
【0049】
式(1)での基本単位とは、高分子の末端と、1〜3個程度の繰返し単位とで形成したモデル的な分子構造を意味する。すなわち、MOPACPM3で高分子化合物について計算する場合、分子を構成する原子の数が多すぎるため、分子そのものを対象として計算するのが困難である。そのため、高分子の末端と、2〜3個程度の繰り返し単位とで形成した分子構造モデル(基本単位)を対象にして計算を行ってもよい。例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)の分子構造(繰返単位)は、一般に、化学式−(CH2−CH2−CH2−CH2−O−C(=O)−C6H4−C(=O)−O)n−で表されるが、前記式(1)では、基本単位を、便宜的にHO−CH2−CH2−CH2−CH2−O−C(=O)−C6H4−C(=O)−OHとして計算してもよい。
【0050】
式(1)の軌道相互作用エネルギー係数Sは、反応性指数と称される場合もあり、種々の書籍等に定義され、解説されており、化学反応性を論じる場合に、極めて一般的に用いられるパラメータである。例えば、「入門フロンティア軌道論」(72頁、山辺信一、稲垣都士著、講談社サイエンティフィク、1989年)には、軌道相互作用エネルギー係数Sは、「2つの軌道が相互作用するとき、(a)エネルギー差が小さければ小さいほど、(b)重なりが大きければ大きいほど、相互作用が強くなる」という考え方を表した式であることが記載されている。式(1)は、ノーベル賞を受賞した故福井博士が1954年に発表したsuperdelocalozability(Sr)の考え方に基づいており(「分子軌道法を使うために」、71頁、井本稔、化学同人、1986年参照)、Srの考え方から式(1)と同様な式が、様々な書籍や文献において導出されている。
【0051】
ここで重要なことは、分子軌道法が分子構造とその化学反応性を論じるにあたって既に広く認知された方法であるということである。従って、式(1)で定義される軌道相互作用エネルギー係数S[1/eV]は、単なる概念的な数値ではなく、材料を特定するためのパラメータや物性値(分子量、官能基など)と同様の意味合いを有する数値である。
【0052】
なお、ラジカル発生剤のラジカルの軌道エネルギーEc(eV)は、ラジカルの分子構造に基づいて、MOPACPM3により計算するのが好ましいが、ラジカル発生剤の種類に基づいて、便宜上、所定の値を用いてもよい。例えば、ラジカル発生剤が有機過酸化物ではEc=−8eV、アゾ化合物ではEc=−5eV、硫黄を除く硫黄含有有機化合物ではEc=−6eVとして計算してもよい。
【0053】
軌道相互作用エネルギー係数Sが一定値(例えば、0.006)以上である水素原子(活性水素原子)としては、ラジカル発生剤が有機過酸化物の場合、アミノ(−NH2)基(例えば、末端アミノ基)、イミノ(−NH−)基(例えば、主鎖又は末端イミノ基、アミド結合の−NH−基など)、メチル(−CH3)基、メチレン(−CH2−)基(主鎖又は末端メチレン基)、メチリジン(−CH=)基(主鎖又は末端のメチリジン基)などの水素原子が挙げられる。
【0054】
また、軌道相互作用エネルギー係数Sが一定値(例えば、0.006)以上である硫黄原子(活性硫黄原子)としては、ラジカル発生剤が有機過酸化物の場合、チオ基(−S−)、メルカプト(−SH)基、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基などのC1−4アルキルチオ基など)、スルフィニル基(−SO−)などの硫黄原子が挙げられる。
【0055】
前記メチル基としては、例えば、アルキレン鎖、シクロアルキレン鎖又は芳香族環に結合するメチル基、酸素原子に結合するメチル基(メトキシ基のメチル基)などが例示できる。メチレン基としては、例えば、主鎖又は側鎖を形成する直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基のメチレン基、(ポリ)オキシメチレン単位、(ポリ)オキシエチレン単位などの(ポリ)オキシアルキレン単位のメチレン基、アミノ基やイミノ基などの窒素原子に隣接するメチレン基などが例示できる。メチリジン基としては、例えば、アミノ基又はイミノ基に隣接するα−位のメチリジン基、例えば、アミノシクロアルキル基のアミノ基に対するα−位のメチリジン基などが例示できる。
【0056】
活性原子を有する樹脂は、一分子中に複数(例えば、平均で2個以上)の活性原子を有していればよい。すなわち、樹脂は、一般に、単一分子ではなく、構造や鎖長などがいくらか異なる多数の分子の混合物である。そのため、全ての分子が複数の活性原子を有している必要はなく、予想される主たる複数の基本単位について計算したとき、一分子あたり平均の活性原子の数が2以上であればよい。例えば、繰返単位−(NH−(CH2)6−NH−C(=O)−(CH2)4−(C=O))n−を有するポリマー(ポリアミド66)に含まれる活性水素原子の数は、モデル基本単位NH2−(CH2)6−NH−C(=O)−(CH2)4−C(=O)−OHに基づいて計算でき、ラジカル発生剤が有機過酸化物のとき、末端NH2基の2つの水素原子が活性水素原子(すなわち、S≧0.006)である。この場合、ポリアミド66について一分子中の活性水素原子の平均数Nは、集合体としてのポリマー(ポリアミド66)の末端NH2基と末端COOH基との比率により下記式(2)に基づいて算出できる。
【0057】
N=2×A
(式中、Aは一分子中の平均の末端NH2基の数を示す)
例えば、末端NH2基/末端COOH基=1/1(モル比)の場合、一分子中の末端NH2基の数A=1個、一分子中の活性水素原子の数N=2個である。また、末端NH2基/末端COOH基=1/2(モル比)の場合、一分子中の末端NH2基の数A=2/3個、一分子中の活性水素原子の数N=4/3個である。
【0058】
なお、樹脂が異なる活性原子数を有する複数の樹脂で構成された混合樹脂である場合、混合樹脂の活性原子数は、各樹脂が有する活性原子数の平均値で表すこともできる。つまり、混合樹脂を構成する各樹脂の基本単位から活性原子数を個別に算出し、各樹脂の重量割合をもとにして活性原子数の平均を算出することにより、混合樹脂の見かけ上の活性原子数を算出できる。例えば、混合樹脂が、前記N=2個のポリアミド66(A)と、前記N=4/3個のポリアミド66(B)とで構成され、(A)/(B)=1/1(モル比)である場合、混合樹脂一分子中の活性原子数は、N=5/3個とみなすことができる。また、混合樹脂が、前記N=2個のポリアミド66(A)と、全末端がカルボキシル基(つまりN=0個)であるポリアミド66(C)とで構成され、(A)/(C)=3/1(モル比)である場合、混合樹脂一分子中の活性原子数は、N=3/2個とみなすことができる。
【0059】
このような活性原子を有する熱可塑性樹脂としては、前記例示の樹脂のうち、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、熱可塑性エラストマー、アミノ系樹脂などが例示できる。
【0060】
また、前記複数の活性原子を備えていない樹脂であっても、活性原子(アミノ基、オキシアルキレン基など)を導入した変性樹脂として使用してもよい。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、ビニル重合系樹脂[(メタ)アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂)、ポリアクリロニトリルなど)、スチレン系樹脂(ポリスチレン;AS樹脂、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体などのスチレン共重合体;HIPS,ABS樹脂などのスチレン系グラフト共重合体など)、ハロゲン含有単量体の単独又は共重合体(ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン共重合体など)、ビニル系樹脂(ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコールなど)など]、縮合系樹脂[ポリカーボネート(ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアリレート系樹脂など]が例示できる。
【0061】
前記ビニル重合系樹脂では、例えば、ビニル単量体と(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基又は酸無水物基含有単量体との共重合により、ビニル重合系樹脂にカルボキシル基又は酸無水物基を導入し、必要によりチオニルクロライドと反応させて酸クロライド基を生成させ、アンモニア、モノ置換アミン類(モノアルキルアミン、モノアリールアミンなど)や前記例示のジアミン類と反応させてアミノ基を導入することにより変性樹脂を生成させてもよい。さらに、(ポリ)オキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートや(ポリ)オキシアルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレートを前記ビニル単量体と共重合したり、ビニル重合系樹脂にグラフト重合したりすることにより、活性水素原子を導入して変性してもよい。
【0062】
さらに、ビニル重合系樹脂だけでなく縮合系樹脂でも、カルボキシル基又は酸無水物基含有単量体を樹脂にグラフト重合させて、樹脂にカルボキシル基又は酸無水物基を導入し、前記と同様にして、必要によりチオニルクロライドと反応させて酸クロライド基を生成させ、アンモニア、モノ置換アミン類や前記例示のジアミン類と反応させてアミノ基を導入して変性してもよい。
【0063】
また、樹脂は、前記活性原子を所定の濃度で含有する樹脂(又は変性樹脂)と他の樹脂との樹脂組成物で構成してもよい。他の熱可塑性樹脂には、前記変性樹脂に対応する未変性熱可塑性樹脂、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ハロゲン含有単量体の単独又は共重合体(フッ素樹脂など)、ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、液晶性ポリエステル樹脂などが含まれる。
【0064】
活性原子濃度の小さいラジカル重合などの付加重合系樹脂(例えば、不飽和ポリエステル、ビニルエステル系樹脂、ジアリルフタレート樹脂など)では、活性原子を有する単量体と共重合することにより活性原子を導入してもよい。活性原子を有する単量体としては、例えば、オキシC2−4アルキレン単位を有する単量体((ポリ)オキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)オキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)オキシエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレートなどの(ポリ)オキシアルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、多官能性単量体、例えば、(ポリ)オキシエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)オキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレートなど)、アミド結合を有する単量体(アクリルアミド、メチレン−ビス(メタ)アクリルアミド、1,1−ビスアクリルアミド−エタンなどのアクリルアミド類など)が挙げられる。
【0065】
活性原子を有する樹脂の割合は、樹脂成分全体に対して、30〜100重量%、好ましくは50〜100重量%、さらに好ましくは80〜100重量%程度であってもよい。
【0066】
以下に、本発明で使用できる樹脂を詳述する。
【0067】
(熱可塑性樹脂)
(1)ポリアミド系樹脂
ポリアミド系樹脂は、カルボキシル基とアミノ基との重縮合によるアミド結合を有し、例えば、脂肪族ポリアミド系樹脂、脂環族ポリアミド系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂などが挙げられ、通常、脂肪族ポリアミド系樹脂が使用される。脂肪族ポリアミド系樹脂としては、脂肪族ジアミン成分(テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのC4−10アルキレンジアミン)と脂肪族ジカルボン酸成分(アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などのC4−20アルキレンジカルボン酸など)との縮合物(例えば、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド1212など)、ラクタムの開環重合を用いた、ラクタム(ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのC4−20ラクタムなど)又はアミノカルボン酸(ω−アミノウンデカン酸などの炭素数C4−20アミノカルボン酸など)の単独又は共重合体(例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12など)、これらのポリアミド成分が共重合したコポリアミド(例えば、ポリアミド6/11,ポリアミド6/12,ポリアミド66/11,ポリアミド66/12など)などが挙げられる。
【0068】
脂環族ポリアミド系樹脂としては、前記脂肪族ジアミン成分及び/又は脂肪族ジカルボン酸成分のうち少なくとも一部を、脂環族ジアミン及び/又は脂環族ジカルボン酸に置き換えたポリアミドが挙げられる。脂環族ポリアミドには、例えば、前記脂肪族ジカルボン酸成分と脂環族ジアミン成分(シクロへキシルジアミンなどのC5−8シクロアルキルジアミン;ビス(アミノシクロへキシル)メタン、2,2−ビス(アミノシクロへキシル)プロパンなどのビス(アミノシクロへキシル)アルカン類など)との縮合体が含まれる。
【0069】
芳香族ポリアミド系樹脂には、前記脂肪族ジアミン成分及び脂肪族ジカルボン酸成分のうち少なくとも一方の成分が芳香族成分を有するポリアミドが挙げられる。芳香族ポリアミドは、例えば、ジアミン成分が芳香族成分を有するポリアミド[MXD−6などの芳香族ジアミン(メタキシリレンジアミンなど)と脂肪族ジカルボン酸との縮合体など]、ジカルボン酸成分が芳香族成分を有するポリアミド[脂肪族ジアミン(トリメチルヘキサメチレンジアミンなど)と芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸など)との縮合体など]、ジアミン成分及びジカルボン酸成分が共に芳香族成分を有するポリアミド[ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)などの全芳香族ポリアミド(アラミド)など]などが含まれる。
【0070】
ポリアミド系樹脂には、さらに、ダイマー酸をジカルボン酸成分とするポリアミド、少量の多官能性ポリアミン及び/又はポリカルボン酸成分を用い、分岐鎖構造を導入したポリアミド、変性ポリアミド(N−アルコキシメチルポリアミドなど)、変性ポリオレフィンを混合あるいはグラフト重合させた高耐衝撃性ポリアミド、ポリエーテルをソフトセグメントとするポリアミドエラストマーも含まれる。
【0071】
ポリアミド系樹脂において、例えば、末端アミノ基の水素原子や、末端アミノ基に対してα−位の炭素原子に結合する水素原子、アミド結合の−NH−基に隣接する炭素原子に結合する水素原子(メチレン基の水素原子やメチリジン基の水素原子など)、特に末端アミノ基の水素原子が活性水素原子を構成する。
【0072】
ポリアミド系樹脂において、末端NH2基と末端COOH基との割合は、特に限定されず、例えば、末端アミノ基の水素原子とα−炭素位の水素原子とで活性水素原子を構成する場合、末端アミノ基/末端カルボキシル基=10/90〜100/0(モル比)程度、好ましくは20/80〜95/5(モル比)程度、さらに好ましくは25/75〜95/5(モル比)程度の範囲から選択できる。また、末端アミノ基の水素原子だけで活性水素原子を構成する場合、末端アミノ基/末端カルボキシル基=50/50〜100/0(モル比)程度、好ましくは60/40〜95/5(モル比)程度、さらに好ましくは70/30〜95/5(モル比)程度であってもよい。
【0073】
また、ポリアミド系樹脂では、前記樹脂(i)として不飽和結合を導入する場合、例えば、残存するカルボキシル基やアミノ基を反応性基(B)として利用でき、また、前記樹脂(ii)として不飽和結合を導入する場合、前記不飽和多価カルボン酸(マレイン酸など)などを共重合成分の一部として用いてもよい。
【0074】
(2)ポリエステル系樹脂
ポリエステル系樹脂は、例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂が挙げられる。通常は、芳香族ポリエステル系樹脂、例えば、ポリアルキレンアリレート系樹脂又は飽和芳香族ポリエステル系樹脂が使用される。芳香族ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリC2−4アルキレンテレフタレート;このポリアルキレンテレフタレートに対応するポリC2−4アルキレンナフタレート(例えば、ポリエチレンナフタレートなど);1,4−シクロへキシルジメチレンテレフタレート(PCT))などが含まれる。ポリエステル系樹脂は、アルキレンアリレート単位を主成分(例えば、50重量%以上)として含むコポリエステルであってもよく、共重合成分には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールなどのC2−6アルキレングリコール、ポリオキシC2−4アルキレングリコール、フタル酸、イソフタル酸などの非対称芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸などが例示できる。さらに、少量のポリオール及び/又はポリカルボン酸を用い、線状ポリエステルに分岐鎖構造を導入してもよい。
【0075】
芳香族ポリエステル系樹脂が前記活性原子を所定の濃度で有しない場合、活性原子を有する変性化合物で変性した変性ポリエステル系樹脂(例えば、アミノ基及びオキシアルキレン基から選択された少なくとも一種を有する芳香族ポリエステル系樹脂)を用いてもよい。活性原子、特に活性水素原子を有する化合物としては、ポリアミン類(脂肪族ジアミン類、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタンなどの炭素数2〜10程度の直鎖又は分岐鎖状アルキレンジアミンなど;脂環族ジアミン類、例えば、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなど;芳香族ジアミン類、例えば、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなど)、ポリオール類(例えば、(ポリ)オキシエチレングリコール、(ポリ)オキシトリメチレングリコール、(ポリ)オキシプロピレングリコール、(ポリ)オキシテトラメチレングリコールなどの(ポリ)オキシC2−4アルキレングリコール類など)などが例示できる。変性は、例えば、ポリエステル樹脂と変性化合物とを加熱混合し、アミド化、エステル化又はエステル交換反応を利用して行うことができる。ポリエステル系樹脂の変性の程度は、前記化合物中の活性水素原子の量に応じて、ポリエステル系樹脂の官能基(ヒドロキシル基又はカルボキシル基)1モルに対して、例えば、変性化合物0.1〜2モル、好ましくは0.2〜1.5モル、さらに好ましくは0.3〜1モル程度であってもよい。エステル交換反応に用いる場合、(ポリ)オキシC2−4アルキレングリコール類の使用量は、ポリエステル系樹脂100重量部に対して1〜50重量部程度、好ましくは5〜30重量部程度であってもよい。
【0076】
ポリエステル系樹脂では、通常、(ポリ)オキシアルキレン単位のメチレン基の水素原子が活性水素原子を構成し、変性ポリエステル系樹脂では、通常、末端アミノ基の水素原子や、末端アミノ基に対してα−位の炭素原子に結合する水素原子、アミド結合の−NH−基に隣接する炭素原子に結合する水素原子(メチレン基の水素原子やメチリジン基の水素原子など)、特に末端アミノ基の水素原子が活性水素原子を構成する。
【0077】
また、ポリエステル系樹脂では、前記樹脂(i)として不飽和結合を導入する場合、例えば、残存するカルボキシル基やヒドロキシル基を反応性基(B)として利用でき、また、前記樹脂(ii)として不飽和結合を導入する場合、前記不飽和多価カルボン酸(マレイン酸など)や、前記不飽和多価アルコール(2−ブテン−1,4−ジオールなど)などを共重合成分の一部として用いてもよい。
【0078】
(3)ポリ(チオ)エーテル系樹脂
ポリエーテル系樹脂には、ポリオキシアルキレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂(ポリチオエーテル系樹脂)が含まれる。ポリオキシアルキレン系樹脂としては、ポリオキシメチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシテトラメチレングリコールなどのポリオキシC1−4アルキレングリコールなどが含まれる。好ましいポリエーテル系樹脂には、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂及びポリエーテルケトン系樹脂が含まれる。なお、前記樹脂(i)として不飽和結合を導入する場合、残存するヒドロキシル基、メルカプト基などを反応性基(B)として利用してもよい。
【0079】
(3a)ポリアセタール系樹脂
ポリアセタール系樹脂は、アセタール結合の規則的な繰り返しにより構成されているホモポリマー(ホルムアルデヒドの単独重合体)であってもよく、開環重合などにより得られるコポリマー(トリオキサンと、エチレンオキサイド及び/又は1,3−ジオキソランとの共重合体など)であってもよい。また、ポリアセタール系樹脂の末端は封鎖され安定化されていてもよい。ポリアセタール系樹脂では、例えば、オキシメチレン単位の水素原子、末端を封鎖したアルコキシ基(特にメトキシ基)の水素原子、特にオキシメチレン単位の水素原子が活性水素原子を構成する。また、ポリアセタール系樹脂では、前記樹脂(i)として不飽和結合を導入する場合、残存するヒドロキシル基などを反応性基(B)として利用してもよい。
【0080】
(3b)ポリフェニレンエーテル系樹脂
ポリフェニレンエーテル系樹脂には、2,6−ジメチルフェニレンオキサイドを主成分とする種々の樹脂、例えば、2,6−ジメチルフェニレンオキサイドとフェノール類との共重合体、スチレン系樹脂をブレンド又はグラフトした変性ポリフェニレンエーテル系樹脂などが含まれる。その他の変性ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、ポリフェニレンエーテル/ポリアミド系、ポリフェニレンエーテル/飽和ポリエステル系、ポリフェニレンエーテル/ポリフェニレンスルフィド系、ポリフェニレンエーテル/ポリオレフィン系などが挙げられる。スチレン系樹脂をブレンドしている場合、ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対するスチレン系樹脂の割合は、例えば、2〜150重量部、好ましくは3〜100重量部、さらに好ましくは5〜50重量部程度であってもよい。ポリフェニレンエーテル系樹脂では、例えば、ベンゼン環に結合するメチル基の水素原子が活性水素原子を構成する。
【0081】
(3c)ポリスルフィド系樹脂(ポリチオエーテル系樹脂)
ポリスルフィド系樹脂は、ポリマー鎖中にチオ基(−S−)を有する樹脂であれば特に限定されない。このような樹脂としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリジスルフィド樹脂、ポリビフェニレンスルフィド樹脂、ポリケトンスルフィド樹脂、ポリチオエーテルスルホン樹脂などが例示できる。また、ポリスルフィド系樹脂は、ポリ(アミノフェニレンスルフィド)のようにアミノ基などの置換基を有していてもよい。好ましいポリスルフィド系樹脂はポリフェニレンスルフィド樹脂である。ポリスルフィド系樹脂では、主鎖中のチオ基が活性硫黄原子を構成する。
【0082】
(3d)ポリエーテルケトン系樹脂
ポリエーテルケトン系樹脂には、ジハロゲノベンゾフェノン(ジクロロベンゾフェノンなど)とジヒドロベンゾフェノンとの重縮合により得られるポリエーテルケトン樹脂、ジハロゲノベンゾフェノンとヒドロキノンとの重縮合により得られるポリエーテルエーテルケトン樹脂などが例示できる。
【0083】
(4)ポリカーボネート系樹脂
ポリカーボネート系樹脂としては、脂肪族ポリカーボネート系樹脂であってもよいが、通常、芳香族ポリカーボネート系樹脂、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物(ビスフェノールA、ビスフェノールSなどのビスフェノール化合物など)と、ホスゲン又は炭酸ジエステル(ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネート、ジメチルカーボネートなどのジアルキルカーボネートなど)との反応により得られる芳香族ポリカーボネートなどが使用できる。ポリカーボネート系樹脂では、前記樹脂(i)として不飽和結合を導入する場合、残存するヒドロキシル基などを反応性基(B)として利用してもよい。
【0084】
(5)ポリイミド系樹脂
ポリイミド系樹脂には、熱可塑性ポリイミド系樹脂、例えば、芳香族テトラカルボン酸又はその無水物(ベンゾフェノンテトラカルボン酸など)と、芳香族ジアミン(ジアミノジフェニルメタンなど)との反応で得られるポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂などが含まれる。ポリイミド系樹脂では、前記樹脂(i)として不飽和結合を導入する場合、残存するカルボキシル基や酸無水物基、アミノ基、イミノ基などを反応性基(B)として利用できる。
【0085】
(6)ポリスルホン系樹脂
ポリスルホン系樹脂には、ジハロゲノジフェニルスルホン(ジクロロジフェニルスルホンなど)とビスフェノール類(ビスフェノールA又はその金属塩など)との重縮合により得られるポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂(商品名:RADEL)などが例示できる。
【0086】
(7)ポリウレタン系樹脂
ポリウレタン系樹脂は、ジイソシアネート類とポリオール類と必要により鎖伸長剤との反応により得ることができる。ジイソシアネート類としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート類、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート類、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ジイソシアネート類などが例示できる。ジイソシアネート類として、アルキル基(例えば、メチル基)が主鎖又は環に置換した化合物を使用してもよい。
【0087】
ジオール類としては、ポリエステルジオール(アジピン酸などのC4−12脂肪族ジカルボン酸成分、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのC2−12脂肪族ジオール成分、ε−カプロラクトンなどのC4−12ラクトン成分などから得られるポリエステルジオールなど)、ポリエーテルジオール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシテトラメチレングリコール、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加体など)、ポリエステルエーテルジオール(ジオール成分の一部として上記ポリエーテルジオールを用いたポリエステルジオール)などが利用できる。
【0088】
さらに、鎖伸長剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのC2−10アルキレンジオールの他、ジアミン類も使用できる。ジアミン類としては、脂肪族ジアミン類、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタンなどの炭素数2〜10程度の直鎖又は分岐鎖状アルキレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレントリアミンなどの直鎖又は分岐鎖状ポリアルキレンポリアミンなど;脂環族ジアミン類、例えば、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなど;芳香族ジアミン類、例えば、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなどが例示できる。
【0089】
ポリウレタン系樹脂では、例えば、ジイソシアネート類の主鎖又は環に結合するアルキル基の水素原子(特に、ベンジル位の水素原子)、ポリオール類やポリオキシアルキレングリコールのアルキレン基の水素原子、鎖伸長剤のアミノ基の水素原子などが活性水素原子を構成する。
【0090】
また、ポリウレタン系樹脂では、前記樹脂(i)として不飽和結合を導入する場合、例えば、残存するヒドロキシル基、アミノ基、イソシアネート基などを反応性基(B)として利用してもよく、また、前記樹脂(ii)として不飽和結合を導入する場合、前記不飽和多価カルボン酸(マレイン酸など)や、前記不飽和多価アルコール(2−ブテン−1,4−ジオールなど)などを共重合成分の一部として用いてもよい。
【0091】
(8)ポリオレフィン系樹脂
ポリオレフィン系樹脂には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(メチルペンテン−1)などのオレフィンの単独又は共重合体、オレフィンと共重合性単量体との共重合体(エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)が挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は単独で又は二種以上組合せて使用できる。
【0092】
好ましいポリオレフィン系樹脂には、プロピレン含量が50重量%以上(特に75〜100重量%)のポリプロピレン系樹脂、例えば、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン共重合体などが含まれる。また、ポリオレフィン系樹脂は結晶性であるのが好ましい。
【0093】
ポリオレフィン系樹脂では、例えば、ポリオレフィンの主鎖を構成するメチレン基の水素原子、前記主鎖から分岐するメチル基の水素原子などが活性水素原子を構成する。
【0094】
(9)ハロゲン含有樹脂
ハロゲン含有樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体などの塩素含有ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンと共重合性単量体との共重合体などのフッ素含有ビニル系樹脂などが例示できる。好ましいハロゲン含有樹脂は、フッ素含有ビニル系樹脂(例えば、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデンなど)である。
【0095】
(10)スチレン系樹脂
スチレン系樹脂としては、スチレン系単量体の単独又は共重合体(ポリスチレン、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−α−メチルスチレン共重合体など)、スチレン系単量体と共重合性単量体との共重合体(スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体などのスチレン共重合体;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−アクリル酸エステル−スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体(ACS樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)、アクリロニトリル−酢酸ビニル−スチレン共重合体(AXS樹脂)などのスチレン系グラフト共重合体など)などが挙げられる。
【0096】
(11)(メタ)アクリル系樹脂
(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体、(メタ)アクリル系単量体と共重合性単量体との共重合体などが挙げられる。(メタ)アクリル系単量体には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸C1−10アルキルエステル、メタクリル酸シクロヘキシルなどのメタクリル酸C5−10シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸C6−10アリールエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシC2−10アルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどが挙げられる。共重合性単量体には、酢酸ビニル、塩化ビニルなどのビニル系単量体、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体などが挙げられる。
【0097】
(メタ)アクリル系樹脂では、前記樹脂(i)として不飽和結合を導入する場合、反応性基(B)を有する単量体を共重合成分として用いることにより、前記反応性基(B)を導入できる。
【0098】
(12)熱可塑性エラストマー
熱可塑性エラストマーには、ポリアミド系エラストマー(ポリアミドを硬質相とし、脂肪族ポリエーテルを軟質相とする共重合体)、ポリエステル系エラストマー(ポリアルキレンアリレートを硬質相とし、脂肪族ポリエーテルや脂肪族ポリエステルを軟質相とする共重合体)、ポリウレタン系エラストマー(短鎖グリコールのポリウレタンを硬質相とし、脂肪族ポリエーテルや脂肪族ポリエステルを軟質相とする共重合体、例えば、ポリエステルウレタンエラストマー、ポリエーテルウレタンエラストマーなど)、ポリスチレン系エラストマー(ポリスチレンブロックを硬質相とし、ジエン重合体ブロック又はその水素添加ブロックを軟質相とするブロック共重合体)、ポリオレフィン系エラストマー(ポリスチレン又はポリプロピレンを硬質相とし、エチレン−プロピレンゴムやエチレン−プロピレン−ジエンゴムを軟質相とするエラストマー、結晶化度の異なる硬質相と軟質相とで構成されたオレフィン系エラストマーなど)、ポリ塩化ビニル系エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマーなどが含まれる。脂肪族ポリエーテルとしては、ポリエステル系樹脂およびポリウレタン系樹脂の項で述べた(ポリ)オキシC2−4アルキレングリコール類(特にポリオキシエチレングリコール)などが使用でき、脂肪族ポリエステルとしては、ポリウレタン系樹脂の項で述べたポリエステルジオールなどが使用できる。これらの熱可塑性エラストマーは単独で又は二種以上組合せて使用できる。
【0099】
熱可塑性エラストマーがブロック共重合体であるとき、ブロック構造は特に制限されず、トリブロック構造、マルチブロック構造、星形ブロック構造などであってもよい。
【0100】
好ましい熱可塑性エラストマーには、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマーが含まれる。
【0101】
熱可塑性エラストマーでは、例えば、軟質相を構成するオキシアルキレン単位の水素原子が活性水素原子を構成してもよい。
【0102】
また、ビニル重合系樹脂[例えば、(メタ)アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体など)及びスチレン系樹脂(ポリスチレン;AS樹脂などのスチレン共重合体;HIPS,ABS樹脂などのスチレン系グラフト共重合体など]では、2官能以上の多官能重合性化合物(例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなど)と構成モノマーとを共重合することにより架橋してもよい。
【0103】
[ゴム]
分散相を構成する加硫ゴムは、未加硫ゴムを加硫することによって得られる。前記ゴムは、特に制限されず、種々のゴムが使用できる。
【0104】
ゴムとしては、ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、アクリル系ゴム、フッ素ゴム、シリコーン系ゴム(シリコーンゴム)、ウレタン系ゴム、エピクロロヒドリンゴム(エピクロロヒドリン単独重合体CO、エピクロロヒドリンとエチレンオキサイドとの共重合体ECO、アリルグリシジルエーテルをさらに共重合させた共重合体など)、クロロスルホン化ポリエチレン、プロピレンオキシドゴム(GPO)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EAM)、ポリノルボルネンゴム、及びこれらの変性ゴム(酸変性ゴムなど)などが例示できる。これらのゴムは単独で又は二種以上組合せて使用できる。これらのゴムのうち、通常、ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、アクリル系ゴム、フッ素ゴム、シリコーン系ゴム、ウレタン系ゴムなどが実用的な観点から広く使用される
ジエン系ゴムには、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、イソブチレンイソプレンゴム(ブチルゴム)(IIR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)などのジエン系単量体の重合体;例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム)(NBR)、ニトリルクロロプレンゴム(NCR)、ニトリルイソプレンゴム(NIR)、アクリロニトリルイソプレンブタジエンゴム(NBIR)などのアクリロニトリル−ジエン共重合ゴム;スチレンブタジエンゴム(SBR、例えば、スチレンとブタジエンとのランダム共重合体、スチレンブロックとブタジエンブロックとで構成されたSBブロック共重合体など)、スチレンクロロプレンゴム(SCR)、スチレンイソプレンゴム(SIR)などのスチレン−ジエン共重合ゴムなどが含まれる。ジエン系ゴムには、水添ゴム、例えば、水素添加ニトリルゴム(HNBR)なども含まれる。なお、スチレン−ジエン共重合ゴムにおいて、スチレン成分の割合は、例えば、共重合体を構成するモノマー換算で、10〜80モル%、好ましくは20〜70モル%、さらに好ましくは30〜60モル%程度であってもよい。
【0105】
オレフィン系ゴムとしては、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDMなど)などが例示できる。
【0106】
アクリル系ゴムには、アクリル酸アルキルエステルを主成分とするゴム、例えば、アクリル酸アルキルエステルと塩素含有架橋性単量体との共重合体ACM、アクリル酸アルキルエステルとアクリロニトリルとの共重合体ANM、アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基及び/又はエポキシ基含有単量体との共重合体、エチレンアクリルゴムなどが例示できる。
【0107】
フッ素ゴムとしては、フッ素含有単量体を用いたゴム、例えば、フッ化ビニリデンとパーフルオロプロペンと必要により四フッ化エチレンとの共重合体FKM、四フッ化エチレンとプロピレンとの共重合体、四フッ化エチレンとパーフルオロメチルビニルエーテルとの共重合体FFKMなどが例示できる。
【0108】
シリコーン系ゴム(Q)は、式:RaSiO(4−a)/2で表される単位で構成されたオルガノポリシロキサンである。式中、Rは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのC1−10アルキル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基などのハロゲン化C1−10アルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基などのC2−10アルケニル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基などのC6−12アリール基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC3−10シクロアルキル基、ベンジル基、フェネチル基などのC6−12アリール−C1−4アルキル基などが挙げられる。式中、係数aは1.9〜2.1程度である。好ましいRは、メチル基、フェニル基、アルケニル基(ビニル基など)、フルオロC1−6アルキル基である。
【0109】
シリコーン系ゴムの分子構造は、通常、直鎖状であるが、一部分岐構造を有していてもよく、分岐鎖状であってもよい。シリコーンゴムの主鎖は、例えば、ジメチルポリシロキサン鎖、メチルビニルポリシロキサン鎖、メチルフェニルポリシロキサン鎖、これらのシロキサン単位の共重合体鎖[ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン共重合体鎖、ジメチルシロキサン−メチルフェニルシロキサン共重合体鎖、ジメチルシロキサン−メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサン共重合体鎖、ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン−メチルフェニルシロキサン共重合体鎖など]で構成できる。シリコーンゴムの両末端は、例えば、トリメチルシリル基、ジメチルビニルシリル基、シラノール基、トリC1−2アルコキシシリル基などであってもよい。
【0110】
シリコーン系ゴム(Q)には、例えば、メチルシリコーンゴム(MQ)、ビニルシリコーンゴム(VMQ)、フェニルシリコーンゴム(PMQ)、フェニルビニルシリコーンゴム(PVMQ)、フッ化シリコーンゴム(FVMQ)などが含まれる。さらに、シリコーン系ゴムには、上記高温加硫型HTV(High Temperature Vulcanizable)の固形ゴムに限らず、室温加硫型RTV(Room Temperature Vulcanizable)又は低温加硫型LTV(Low Temperature Vulcanizable)シリコーンゴム、例えば、液状又はペースト状ゴムも含まれる。
【0111】
シリコーンゴムが不飽和結合を有する場合、未加硫のシリコーンゴムを構成するシリコーンゴムの不飽和結合の数は、1分子当たり、平均2個以上(例えば、2〜10個)、好ましくは2.5〜7個、より好ましくは2.5〜5個(例えば、2.5〜4個)程度であってもよい。
【0112】
シリコーンゴム又はその組成物中のポリオルガノシロキサンとしては、二重結合濃度が2〜540ミリモル/kg、好ましくは3〜300ミリモル/kg、さらに好ましくは4〜100ミリモル/kg程度のポリオルガノシロキサンが使用される。ポリオルガノシロキサンは、単一のポリオルガノシロキサンで構成してもよく、複数のポリオルガノシロキサンの混合物(例えば、重合度が異なる複数のポリマーの混合物)であってもよい。
【0113】
複数のポリオルガノシロキサンを用いる場合、上記二重結合の濃度は、混合物を構成する複数のポリオルガノシロキサンの二重結合濃度と組成割合などから算出できる。ポリオルガノシロキサンの平均重合度は、適当に選択でき、重合度の低いポリオルガノシロキサンでは、例えば、平均重合度3〜500、好ましくは3〜200程度であってもよく、重合度の高いポリオルガノシロキサンでは、例えば、平均重合度500〜12000、好ましくは1000〜7000程度であってもよい。重合度の異なる複数のポリオルガノシロキサンを用いる場合、低重合度のポリオルガノシロキサンと高重合度のポリオルガノシロキサンとの割合は、加硫により生成するシリコーンゴム硬化物の特性の点から、前者/後者(重量比)=1/99〜50/50、好ましくは1/99〜10/90、さらに好ましくは2/98〜7/93程度である。
【0114】
さらに、シリコーンゴム組成物において、しばしば、ケイ素原子に直接結合した水素原子を一分子中に2個以上有するポリオルガノハイドロジエンシロキサンを添加することがある。このポリオルガノハイドロジエンシロキサンの添加量は、主たる成分であるポリオルガノシロキサン100重量部に対して、4重量部以下(例えば、0.1〜4重量部)、好ましくは3重量部以下、さらに好ましくは2重量部以下である。
【0115】
ウレタンゴム(U)としては、例えば、ポリエステル型ウレタンエラストマー、ポリエーテル型ウレタンエラストマーなどが含まれる。
【0116】
変性ゴムとしては、酸変性ゴム、例えば、カルボキシル化スチレンブタジエンゴム(X−SBR)、カルボキシル化ニトリルゴム(X−NBR)、カルボキシル化エチレンプロピレンゴム(X−EP(D)M)などのカルボキシル基又は酸無水物基を有するゴムが含まれる。
【0117】
なお、前記ゴム成分は、粉粒体の形態で使用してもよい。このゴム粉粒体の形状は、特に制限されず、例えば、無定形状、球状、楕円形状、棒状などであってもよい。ゴム粉粒体の平均粒子径は、例えば、0.1〜800μm、好ましくは0.5〜500μm、さらに好ましくは0.8〜300μm程度である。
【0118】
前記連続相(又は樹脂)と前記分散相(又は未加硫ゴム又は加硫ゴム)との割合は、複合分散体の特性を有効に発現できる範囲で適宜に設定することができ、例えば、連続相/分散相(重量比)=25/75〜98/2、好ましくは30/70〜90/10、さらに好ましくは40/60〜80/20(例えば、40/60〜65/35)程度であってもよい。
【0119】
[加硫剤]
加硫剤は、未加硫ゴムを加硫(又は架橋)するだけでなく、樹脂を活性化して(例えば、前記架橋性樹脂の架橋性基を活性化したり、活性原子を引き抜き、ラジカル化などにより活性化したりして)、樹脂とゴムとの接着性を向上させ、樹脂相とゴム相とを接合できる。加硫剤としては、前記樹脂やゴムの種類に応じて、ラジカル発生剤や硫黄が使用でき、前記ラジカル発生剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物、硫黄含有有機化合物などが例示できる。なお、本発明において、硫黄は、前記不飽和結合を有する樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂などに対して有効である場合が多い。前記加硫剤は単独で又は二種以上組合せて使用できる。
【0120】
加硫剤は、未加硫ゴム及び樹脂のうち少なくともいずれか一方の成分に添加してもよく、双方の成分に添加してもよい。
【0121】
有機過酸化物としては、過酸化ジアシル類(ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、4−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイドなど)、過酸化ジアルキル類(ジ−t−ブチルぺルオキシド、2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルへキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルへキセン−3、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルペルオキシドなど)、過酸化アルキル類(t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイドなど)、アルキリデンペルオキシド類(エチルメチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなど)、過酸エステル類(過酢酸t−ブチル、過ピバリン酸t−ブチルなど)などが挙げられる。
【0122】
アゾ化合物には、アゾビスイソブチロニトリルなどが含まれる。硫黄含有有機化合物としては、チウラム類(テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、モルフォリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィドなど)などが含まれる。
【0123】
硫黄としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などが例示できる。また、硫黄には、一塩化硫黄、二塩化硫黄などの塩化硫黄も含まれる。
【0124】
樹脂相とゴム相との接合において光照射可能であれば、ラジカル発生剤として光重合開始剤も利用できる。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン又はその誘導体(3,3’ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4,4−ジメトキシベンゾフェノンなど)、アルキルフェニルケトン又はその誘導体(アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(モルホリノフェニル)−ブタノンなど)、アントラキノン又はその誘導体(2−メチルアントラキノンなど)、チオキサントン又はその誘導体(2−クロロチオキサントン、アルキルチオキサントンなど)、ベンゾインエーテル又はその誘導体(ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテルなど)、ホスフィンオキシド又はその誘導体などが例示できる。さらに、ラジカル発生剤には、過硫酸塩(過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなど)も含まれる。
【0125】
これらの化合物のうち好ましい加硫剤は有機過酸化物である。加硫剤は、少なくとも未加硫ゴムが含有するのが好ましく、通常、未加硫ゴムが含有する場合が多い。
【0126】
加硫剤の割合は、例えば、未加硫ゴム及び/又は樹脂100重量部に対して、0.1〜15重量部程度の範囲から選択でき、通常、0.1〜10重量部程度、好ましくは0.1〜8重量部(例えば、1〜7重量部)程度である。
【0127】
[加硫活性剤]
加硫活性剤は、樹脂とゴムとの濡れを向上させて均一に接合できるとともに、加硫活性剤の種類によっては、加硫剤(例えば、ラジカル発生剤など)による未加硫ゴムの加硫(又は架橋)に伴って樹脂とゴムとを架橋して樹脂/ゴム間の架橋密度を向上させ、樹脂とゴムとを強固に直接接合又は接着できる。加硫活性剤は、樹脂(又は樹脂組成物)及び未加硫ゴム(又は未加硫ゴム組成物)のうちいずれか一方の成分に添加してもよく、双方の成分に添加してもよい。
【0128】
前記加硫活性剤としては、分子中に不飽和結合(炭素−炭素二重結合、炭素−窒素二重結合、炭素−酸素二重結合、炭素−硫黄二重結合など)を含有する化合物が挙げられる。前記不飽和結合含有化合物は、使用する加硫剤(例えば、ラジカル発生剤など)などに応じて選択でき、重合性不飽和結合を有する有機化合物〔例えば、ビニル系単量体(ジビニルベンゼンなど)、アリル系単量体(ジアリルフタレート、トリアリルホスフェート、トリアリル(イソ)シアヌレートなど)、(メタ)アクリル系単量体など〕、マレイミド化合物などが例示できる。これらの加硫活性剤は単独で又は二種以上組合せて使用できる。
【0129】
(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、二官能性(メタ)アクリレート類[エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのC2−10アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリC2−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのC2−4アルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレートなど]、三官能性又は多官能性(メタ)アクリレート類[グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなど]などが例示できる。
【0130】
マレイミド系化合物としては、複数のマレイミド基を有するマレイミド化合物が挙げられ、ポリアミンと無水マレイン酸との反応により得ることができる。マレイミド系化合物には、例えば、芳香族ビスマレイミド(N,N’−1,3−フェニレンジマレイミド、N,N’−1,4−フェニレンジマレイミド、N,N’−3−メチル−1,4−フェニレンジマレイミド、4,4’−ビス(N,N’−マレイミド)ジフェニルメタン、4,4’−ビス(N,N’−マレイミド)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(N,N’−マレイミド)ジフェニルエーテルなど)、脂肪族ビスマレイミド(N,N’−1,2−エチレンビスマレイミド、N,N’−1,3−プロピレンビスマレイミド、N,N’−1,4−テトラメチレンビスマレイミドなど)などが例示できる。
【0131】
好ましい加硫活性剤には、一分子中に複数(例えば、2〜6個、特に3〜6個程度)の炭素−炭素二重結合(重合性不飽和結合)を有する化合物、例えば、トリアリル(イソ)シアヌレート、二官能乃至多官能性(メタ)アクリレート(特に三官能性又は多官能性(メタ)アクリレート)、芳香族マレイミド化合物(例えば、ビスマレイミドなど)などが含まれる。
【0132】
加硫活性剤の使用量は、例えば、樹脂及び/又は未加硫ゴム100重量部に対して、0.1〜10重量部程度、好ましくは0.1〜5重量部程度、さらに好ましくは0.1〜3重量部程度の範囲から選択できる。
【0133】
また、未加硫ゴムが加硫剤及び加硫活性剤を含有する場合、加硫剤と加硫活性剤との割合(重量比)は、前者/後者=2/98〜70/30、好ましくは10/90〜60/40(例えば、20/80〜55/45)、さらに好ましくは30/70〜50/50程度であってもよい。このような割合で加硫活性剤を使用すると、未加硫ゴムを加硫剤に対して有効に活性化でき、樹脂とゴムとを強固に接着できる場合が多い。
【0134】
[ポリアルケニレン]
ポリアルケニレンは、ゴム成分(又は樹脂成分)の流動性を高めるため、樹脂(又は未加硫ゴム)に対するゴム(又は樹脂)の分散性を向上でき、樹脂相とゴム相との接着性を向上できる。また、ポリアルケニレンの添加(特に、ゴム成分への添加)により、前記複合分散体の製造プロセスで離型性を向上できる。ポリアルケニレンは、樹脂及び未加硫ゴムのうちいずれか一方の成分に添加してもよく、双方の成分に添加してもよい。
【0135】
ポリアルケニレンとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリペンテナマー、ポリヘプテナマー、ポリオクテナマー(ポリオクテニレン)、ポリ(3−メチルオクテナマー)、ポリデセナマー、ポリ(3−メチルデセナマー)、ポリドデセナマーなどのポリC4−15アルケニレンなどが例示できる。なお、前記ポリC4−15アルケニレンは、シクロオレフィン類(例えば、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロデセン、シクロドデセンなどの置換基を有していてもよいC5−20シクロオレフィンなど)のメタセシス重合、ポリアルケニレン(例えば、ポリブタジエンなど)の部分水素添加などにより得てもよい。ポリアルケニレンは、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0136】
ポリアルケニレンの添加割合は、例えば、樹脂又は未加硫ゴム100重量部に対して0.5〜40重量部、好ましくは1〜30重量部、さらに好ましくは2〜20重量部程度であってもよい。
【0137】
また、未加硫ゴムが加硫剤及びポリアルケニレンを含有する場合、加硫剤とポリアルケニレンとの割合(重量比)は、前者/後者=2/98〜45/55、好ましくは2/98〜40/60、さらに好ましくは2/98〜35/65(例えば、5/95〜35/65)程度であってもよい。このような割合で加硫剤とポリアルケニレンとを添加することにより、樹脂に対するゴムの接着性を効率的に向上できる場合が多い。
【0138】
さらに、未加硫ゴムが加硫剤を含有し、樹脂(例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂)がポリアルケニレンを含有する場合、加硫剤とポリアルケニレンの割合(重量比)は、前者/後者=2/98〜50/50、好ましくは3/97〜40/60、さらに好ましくは5/95〜30/70(例えば、5/95〜20/80)程度であってもよい。
【0139】
[加硫助剤]
本発明では、さらに加硫助剤を用いてもよい。加硫助剤は、未加硫ゴム(又は未加硫ゴム組成物)及び樹脂(又は樹脂組成物)のうち少なくともいずれか一方の成分に添加してもよく、双方の成分に添加してもよい。
【0140】
加硫助剤は、樹脂やゴムの種類に応じて選択でき、例えば、前記縮合系熱可塑性樹脂のオリゴマー[例えば、数平均分子量1000以下(例えば、100〜1000)程度のオリゴマーなど]、ポリアミン類(例えば、前記(2)ポリエステル系樹脂の項に記載のポリアミン類など)、ポリオール類(例えば、前記(2)ポリエステル系樹脂の項に記載のポリオール類など)、一分子中にカルボキシル基、酸無水物基又はイソシアネート基を1個以上有する化合物[例えば、ジカルボン酸(前記ポリアミド系樹脂又はポリエステル系樹脂の項に記載の脂肪族又は芳香族ジカルボン酸、前記樹脂(ii)の項に記載の不飽和ジカルボン酸など)などのモノ又は多価カルボン酸、ジカルボン酸無水物(無水マレイン酸、無水フタル酸などの脂肪族又は芳香族ジカルボン酸)などの多価カルボン酸無水物、ジイソシアネート(前記ポリウレタン系樹脂の項に記載のジイソシアネート類など)などの(ポリ)イソシアネート化合物など]、複数のアルデヒド基を有する化合物、エポキシ化合物、窒素含有樹脂(アミノ樹脂など)、メチロール基又はアルコキシメチル基を有する化合物などが例示できる。これらの加硫助剤は、単独で又は2種以上を組合せて使用してもよい。
【0141】
好ましい加硫助剤は、分子量1000以下であって、かつ前記式(1)で表される活性原子のうち、活性水素原子を一分子中に平均2個以上有する化合物、例えば、前記縮合系熱可塑性樹脂の数平均分子量1000以下のオリゴマー(例えば、前記ポリアミド系樹脂のオリゴマー、前記ポリエステル系樹脂のオリゴマーなど)、一分子中にカルボキシル基、酸無水物基又はイソシアネート基を1個以上有する化合物、前記ポリアミン類などが例示できる。
【0142】
加硫助剤の割合は、例えば、未加硫ゴム及び/又は樹脂100重量部に対し、0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部程度である。
【0143】
[シランカップリング剤]
本発明では、樹脂相と加硫ゴム相との密着性を向上させるために、シランカップリング剤を含んでいてもよい。シランカップリング剤は、未加硫ゴム(又は、未加硫ゴム組成物)及び樹脂(又は、樹脂組成物)のうちいずれか一方の成分に添加すればよく、双方の成分に添加してもよい。
【0144】
シランカップリング剤としては、反応性基(例えば、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ビニル基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、イソシアネート基、(メタ)アクリロイル基など)を有する化合物などが含まれる。
【0145】
例えば、アルコキシシラン(例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシランなどのトリC1−4アルコキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどテトラC1−4アルコキシシラン);
ビニル基を有するアルコキシシラン(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニルトリC1−4アルコキシシラン);
アミノ基を有するアルコキシシラン(例えば、2−アミノエチルトリメトキシシラン、2−アミノエチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどアミノC2−4アルキルトリC1−4アルコキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルエトキシシランなどのアミノジC2−4アルキルジC1−4アルコキシシラン);
エポキシ基を有するアルコキシシラン(例えば、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランなどのグリシジルオキシC2−4トリC1−4アルコキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシランなどの(エポキシシクロアルキル)C2−4アルキルトリC1−4アルコキシシラン);
メルカプト基を有するアルコキシシラン(例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトC1−4アルキルトリC1−4アルコキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのメルカプトジC1−4アルキルジC1−4アルコキシシラン);
カルボキシル基を有するアルコキシシラン(例えば、カルボキシメチルトリメトキシシラン、カルボキシメチルトリエトキシシラン、カルボキシエチルトリメトキシシラン、カルボキシプロピルトリメトキシシランなどのカルボキシC1−4アルキルトリC1−4アルコキシシラン);
イソシアネート基を有するアルコキシシラン(例えば、イソシアナトエチルトリメトキシシラン、イソシアナトエチルトリエトキシシラン、イソシアナトプロピルトリメトキシシランなどのイソシアナトC1−4アルキルトリC1−4アルコキシシラン);
(メタ)アクリロイル基を有するアルコキシシラン(例えば、N−(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン)などが挙げられる。
【0146】
シランカップリング剤の使用量は、通常、樹脂とゴムとの接着を促進可能な量、例えば、ゴム又は樹脂100重量部に対して、シランカップリング剤1〜10重量部程度、好ましくは2〜8重量部程度、さらに好ましくは2〜6重量部程度の範囲から選択できる。
【0147】
[他の添加剤]
前記樹脂(又は樹脂組成物)及び/又はゴム(又はゴム組成物)には、必要に応じて、種々の添加剤、例えば、フィラー、可塑剤又は軟化剤、共加硫剤(酸化亜鉛などの金属酸化物など)、老化防止剤(熱老化防止剤、オゾン劣化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、粘着付与剤、滑剤、着色剤(酸化チタン、カーボンブラックなど)、発泡剤、分散剤、難燃剤、帯電防止剤などを配合してもよい。
【0148】
前記フィラー(又は補強剤)には、例えば、粉粒状フィラー又は補強剤(マイカ、クレー、タルク、ケイ酸類、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カーボンブラック、フェライトなど)、繊維状フィラー又は補強剤(レーヨン、ナイロン、ビニロン、アラミドなどの有機繊維、炭素繊維、ガラス繊維などの無機繊維)などが含まれる。
【0149】
可塑剤としては、樹脂組成物又はゴム組成物に可塑性を付与可能である限り特に制限されず、慣用の可塑剤(フタル酸エステル、脂肪族ジカルボン酸エステル、ポリエステル系高分子可塑剤など)などが使用できる。また、ゴム組成物においては、慣用の軟化剤(リノール酸、オレイン酸、ひまし油、パーム油などの植物油;パラフィン、プロセスオイル、エキステンダーなどの鉱物油など)などが使用できる。
【0150】
滑剤としては、ワックス(例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックスなど)、脂肪酸(ステアリン酸など)、脂肪族アルコール類(ステアリルアルコールなど)、脂肪酸誘導体(ステアリン酸ブチルなどの脂肪酸エステル、ステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛などの脂肪酸金属塩など)などが例示できる。
【0151】
発泡剤としては、炭酸水素塩(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウムなど)などの無機系発泡剤;p,p−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジニトロソペンタメチレンテトラミンなどの有機系発泡剤などが例示できる。
【0152】
フィラーの含有量は、樹脂又はゴム100重量部に対して、例えば、0〜300重量部程度、好ましくは0〜200重量部(例えば、0〜100重量部)程度、さらに好ましくは0〜50重量部(例えば、0〜10重量部)程度であってもよい。可塑剤又は軟化剤の含有量は、樹脂又はゴム100重量部に対して、例えば、0〜200重量部程度、好ましくは0〜150重量部程度、さらに好ましくは0〜120重量部程度であってもよい。また、共加硫剤、老化防止剤、加工助剤又は滑剤、着色剤などの含有量は、有効量であればよく、例えば、共加硫剤の含有量は、樹脂又はゴム100重量部に対して、0〜20重量部程度、好ましくは0.5〜15重量部程度、さらに好ましくは1〜10重量部程度であってもよい。
【0153】
本発明の複合分散体は、樹脂相が連続相、加硫ゴム相が分散相を構成している。このような複合分散体では、樹脂の特性(剛性、強靱性などの機械的特性、耐熱性などの物理的特性など)を生かしつつ、加硫ゴムの特性(摩擦抵抗によるスリップ防止性、相手材に対する密着性、耐衝撃性など)を付与できる。
【0154】
複合分散体は、分散相が連続相に独立して分散した海島構造を有していてもよく、分散相の形状は、粒子状、楕円体状、球状、棒状、繊維状などであってもよい。分散相の好ましい形状は、球状であり、分散相は連続相に均一に分散しているのが好ましい。なお、分散相の平均粒子径としては、分散相の特性が発現できればよく、例えば、0.1〜1000μm、好ましくは1〜750μm、さらに好ましくは10〜500μm(例えば、50〜150μm)程度であってもよい。なお、ゴムとして架橋又は硬化粒子(加硫ゴム)を用いる場合には、前記分散相の平均粒子径は架橋又は硬化粒子の平均粒子径に対応している。
【0155】
さらに、分散相粒子は、複合分散体の表面に部分的に露出した状態で接合されていてもよい。このような複合分散体では、連続相である樹脂の特性(例えば、低い摩擦係数など)を有しつつ、表面にゴムの特性(例えば、高い柔軟性及び緩衝性など)を付与できる。
【0156】
また、得られた複合体は、前記複合分散体で構成されていればよく、複合分散体と他の成形体(例えば、樹脂成形体、加硫ゴム成形体など)とが、接触面で接合した複合体であってもよい。
【0157】
本発明の他の態様では、前述のように、特定の樹脂とゴムとの組合せで、複合分散体を構成することにより樹脂相とゴム相とを強固に直接接合できる。前記特定の組合せの具体例としては、例えば、下記(2a)〜(2d)の態様が例示できる。なお、これらの態様において、樹脂は、前記活性原子を有する樹脂であってもよく、また、樹脂及び/又は未加硫ゴムは、前記加硫活性剤やポリアルケニレンを含有していてもよい。
【0158】
(2a)樹脂と、加硫剤及び加硫活性剤を含む未加硫ゴムとの組合せであって、加硫剤と加硫活性剤との割合が、前記加硫活性剤の割合[例えば、加硫剤/加硫活性剤(重量比)=2/98〜70/30、好ましくは10/90〜60/40(例えば、20/80〜55/45)、さらに好ましくは30/70〜50/50程度]である組合せ
この態様(2a)の複合分散体では、樹脂がポリアミド系樹脂であり、未加硫ゴムが、未変性ゴム(例えば、NBR、SBR、HNBRなどのジエン系ゴム、EPDMなどのオレフィン系ゴム、FKMなどのフッ素ゴムなど)である複合分散体を含む。すなわち、本発明では、アミノ基とカルボキシル基との結合反応を利用することなく、加硫活性剤を前記割合で添加することにより、樹脂相とゴム相とを接着できる。
【0159】
(2b)樹脂(ポリアミド系樹脂など)と、加硫剤及びポリアルケニレンを含む未加硫ゴムとの組合せであって、加硫剤とポリアルケニレンとの割合が、前記ポリアルケニレンの割合[例えば、加硫剤/ポリアルケニレン(重量比)=2/98〜45/55、好ましくは2/98〜40/60、さらに好ましくは2/98〜35/65(例えば、5/95〜35/65)程度]である組合せ
この態様(2b)の複合分散体では、樹脂がポリアミド系樹脂であり、未加硫ゴムが、未変性ゴム(例えば、NBR、SBR、HNBRなどのジエン系ゴム、EPDMなどのオレフィン系ゴム、FKMなどのフッ素ゴムなど)である複合分散体を含む。この態様では、アミノ基とカルボキシル基との結合反応を利用することなく、前記特定の割合でポリアルケニレンを用いることにより、未加硫ゴムの流動性を向上させることができ、樹脂相とゴム相とを接着できる。
【0160】
(2c)樹脂と、シリコーン系未加硫ゴムとの組合せ
この態様(2c)の複合分散体としては、例えば、樹脂(ポリアミド系樹脂など)と、加硫活性剤やポリアルケニレンを含んでいてもよいシリコーン系ゴム(例えば、VMQ、PVMQ、FVMQなど)とが直接接合した複合分散体などが例示できる。すなわち、ゴム成分としてシリコーン系ゴムを使用すると、必ずしも、前記加硫活性剤を含有する樹脂や架橋性基を有する樹脂を使用しなくても、また、未加硫ゴムが特定の割合で加硫活性剤やポリアルケニレンを含有しなくても、樹脂相とゴム相とを強固に接合できる。
【0161】
(2d)ポリアルケニレンを含有する樹脂(例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂)と、加硫剤として硫黄又は硫黄含有有機化合物を含有している未加硫ゴムとの組合せ
この態様(2d)の複合分散体では、ポリアルケニレンを含有するポリフェニレンエーテル系樹脂と、加硫剤として硫黄又は硫黄含有有機化合物を含有する未加硫ゴムとが直接接合した複合分散体[特に、加硫剤とポリアルケニレンとの割合が、前記ポリアルケニレンの割合(例えば、加硫剤/ポリアルケニレン=2/98〜50/50、好ましくは3/97〜40/60、さらに好ましくは5/95〜30/70(例えば、5/95〜20/80)程度)である複合分散体]を含む。このような態様では、非有機過酸化物加硫であっても、ポリフェニレンエーテル系樹脂とゴムとの普遍的な組合せで連続相と分散相とを接着できる。
【0162】
[複合分散体の製造方法]
本発明では、樹脂とゴムとを混練することにより、樹脂で構成された樹脂相(連続相)と、未加硫ゴムが加硫した加硫ゴムで構成されたゴム相(分散相)とが直接接合した複合分散体を製造する。
【0163】
前記樹脂とゴムとの混練において使用するゴムは、未加硫ゴム又は加硫ゴムのいずれでもよいが、未加硫ゴムを使用する場合、通常、混練時に加硫が進行する。混練において、加硫剤は少なくとも未加硫ゴムに含まれていればよく、また、樹脂及び加硫ゴムの少なくとも一方を加硫活性剤やポリアルケニレンを含む組成物で形成してもよい。加硫剤及び/又は加硫活性剤は、樹脂及び/又はゴムに予め添加するのが好ましいが、必要に応じて混練過程で新たに添加してもよい。
【0164】
より具体的には、本発明の複合分散体は、例えば、加硫活性剤やポリアルケニレンを含有する樹脂(熱可塑性樹脂)と少なくとも加硫剤を含有する未加硫ゴム(未加硫ゴム組成物)とを加熱下に溶融混練し、冷却固化させることにより製造できる。混練の初期においては未加硫ゴム及び樹脂はいずれも可塑性を示すが、加硫の進行とともに未加硫ゴムは可塑性を失い、やがて未加硫ゴムは加硫ゴムとなって樹脂相中に分散し分散相を形成する。
【0165】
また、本発明の複合分散体は、樹脂と加硫ゴムとを混練して得ることもできる。この方法では、通常、加硫ゴムは予め冷凍粉砕、加硫剤を用いる重合方法により、加硫した粉粒体の形態で使用される。前記粉粒体の形状は、分散相に適した形状であれば特に制限されず、例えば、球状、楕円状、棒状などであってもよい。また、この方法において、樹脂(及び必要に応じて加硫ゴム)を、加硫剤、加硫活性剤、ポリアルケニレンなどを含む組成物で形成してもよい。
【0166】
混練は慣用の混練機(例えば、押出機、ニーダーなど)を用いて行うことが出来る。混練温度は、使用する樹脂の種類に応じて適宜設定でき、例えば50〜350℃、好ましくは100〜300℃、さらに好ましくは150〜250℃(例えば170〜230℃)程度である。
【0167】
溶融混練物の冷却固化は、適当な方法、例えば、押出機からストランドとして押出した溶融混練物を、水冷する方法などにより行うことができる。前記冷却固化した混練物は、ペレタイザーによりペレット(及び切断)加工されてもよい。
【0168】
本発明の複合分散体は、種々の成形品を形成でき、上記のようにして得られた複合分散体は、通常、加工用原料(例えば、ペレット)として保管された後、適当な加工方法(例えば射出成形、圧縮成形など)で再度加熱溶融させ、用途に即して成形される。複合分散体の再溶融温度は、複合分散体を構成する樹脂の種類によるが、例えば、50〜350℃、好ましくは100〜300℃、さらに好ましくは150〜250℃(例えば170〜230℃)程度である。
【0169】
なお、混練工程及び成形工程において、その加工温度がいずれも低温(例えば、150℃を下回る場合など)である場合には、使用する加硫剤や加硫活性剤の種類にもよるが、樹脂中に分散するゴムの加硫が十分に進まないなどの理由により、樹脂相とゴム相との接合が不十分となる事がある。そのため、成形工程における金型温度を150℃以上(例えば、150〜300℃)にする、あるいは、成形品を加熱炉などを用いて150℃以上で適当な時間加熱するなどして、ゴムの加硫や樹脂相とゴム相間の架橋を完結させてもよい。
【0170】
また、本発明の複合分散体で形成された成形品は、上記のように、ゴムと樹脂との混練工程と複合分散体の成形工程を分けて製造してもよく、両工程を複合させて製造してもよい。すなわち、ゴムと樹脂との混練後、溶融混合物を直接成形してもよい。このようにして得られる成形体としては、樹脂とゴムを混練する押出機から直接成形可能な異形品、例えば、フィルム、シート、チューブ、ロッド、レールなどが例示できる。
【0171】
このようにして得られた複合分散体は、樹脂相が連続相、未加硫ゴムの加硫により生成した加硫ゴムが分散相を構成した状態で強固に接合している。また、複合分散体の表面に、分散相粒子(加硫ゴム相)を部分的に露出できるため、樹脂とゴムとの特性を有効に発現できる。そのため、本発明の複合分散体は、種々の用途、例えば、自動車用部品(振動吸収ブッシュ、スプリングプレート、ラジエターマウントなど)、防振ゴム、バルブ、電気プラグなどの種々の部材として有利に利用できる。
【0172】
【発明の効果】
本発明では、特定の樹脂とゴムとを広い範囲で組み合わせても、樹脂で構成された連続相と、加硫ゴムで構成された分散相とが強固に接合した複合分散体を得ることができる。また、本発明では、簡便な方法により、樹脂相と加硫ゴム相とを接合できる。さらに、本発明では、樹脂相に加硫ゴム相を分散でき、かつ両相が強固に接合しているので、樹脂にゴムの特性を有効に付与できる。
【0173】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例では、以下の樹脂(又は樹脂組成物)及びゴム組成物を用いた。
【0174】
[樹脂(A)〜(F)]
樹脂A1〜A6
熱可塑製樹脂として、ポリアミド612(ヘキサメチレンジアミンとドデカンジカルボン酸の重縮合物)を製造し、下記の樹脂又は樹脂組成物(A1〜A6)を調製した。なお、MOPACPM3の計算は、下記基本単位に基づいて行った。
【0175】
NH2−(CH2)6−NH−C(=O)−(CH2)10−C(=O)−OH
樹脂(A1):
樹脂A1の調製:ヘキサメチレンジアミンとドデカンジカルボン酸の塩80重量%水溶液を窒素置換したオートクレーブ中で加圧(17.5kg/cm2(約1715kPa))下で加熱(220℃)し、窒素ガスと共に系内の水分を4時間要して系外に排出した。その後1時間を要して徐々に昇温(275℃)し水分の残渣を系外に排除した後オートクレーブの内圧を常圧に戻した。冷却後、ポリアミド612を得た。得られたポリマーは、分子量(Mn)20000〜25000、アミノ末端とカルボキシル末端の比率がほぼ1/1であり、加硫剤をラジカル発生剤とした場合の軌道相互作用エネルギー係数Sが0.006以上の活性水素の数は1分子あたり4個と計算された。このポリマーを単独で樹脂(A1)として用いた。
【0176】
樹脂(A2):
樹脂A2の調製:前記樹脂(A1)100重量部に対して、加硫活性剤(TRIM :トリメチロールプロパントリメタクリレート)3重量部を配合し、樹脂(A2)として用いた。
【0177】
樹脂(A3):
樹脂A3の調製:前記樹脂(A1)100重量部に対して、加硫活性剤(TRIM :トリメチロールプロパントリメタクリレート)3重量部、ポリオクテニレン(Degussa AG製 「Vestenamer 8012」)10重量部を配合し、樹脂(A3)として用いた。
【0178】
樹脂(A4):
樹脂A4の調製:前記樹脂(A1)と、後述する樹脂(A6)とを、1/1の重量比率で2軸押出機で混練し、分子量22000、アミノ末端とカルボキシル末端の比率がほぼ3/7のポリアミド612を得た。得られたポリマーは、加硫剤をラジカル発生剤とした場合の軌道相互作用エネルギー係数Sが0.006以上の活性水素原子は1分子あたり2.4個と計算された。このポリマーを樹脂(A4)として用いた。
【0179】
樹脂(A5):
樹脂A5の調製:前記樹脂(A4)100重量部に対して、加硫活性剤(TRIM :トリメチロールプロパントリメタクリレート)3重量部を配合し、樹脂(A5)として用いた。
【0180】
樹脂(A6):
樹脂A6の調製:ヘキサメチレンジアミンとドデカンジカルボン酸の塩80重量%水溶液に所定量のドデカンジカルボン酸を添加し、窒素置換したオートクレーブ中で加圧(17.5kg/cm2(約1715kPa))下に加熱(220℃)し、窒素ガスと共に系内の水分を4時間要して系外に排出した。その後1時間を要して徐々に昇温(275℃)し水分の残渣を系外に排除した後、オートクレーブの内圧を常圧に戻した。冷却後、ポリアミド612を得た。得られたポリマーは、分子量(Mn)約20000、アミノ末端とカルボキシル末端の比率がほぼ1/9であり、加硫剤をラジカル発生剤とした場合の軌道相互作用エネルギー係数Sが0.006以上の活性水素の数は1分子あたり0.8個と計算された。このポリマーを単独で樹脂(A6)として用いた。
【0181】
樹脂(B)
熱可塑性樹脂として、ポリアミド6を調製し、このポリアミド6に対して、加硫活性剤(TRIM :トリメチロールプロパントリメタクリレート)3重量部を配合し、樹脂(B)として用いた。なお、MOPACPM3の計算は、下記式に基づいて行った。
【0182】
NH2−(CH2)5−C(=O)−NH−(CH2)5−C(=O)−OH
ポリアミド6の調製:ε―カプロラクタムの80重量%水溶液を少量のリン酸の存在下、窒素置換したオートクレーブ中で250〜260℃に加熱し、窒素ガスと共に系内の水分を4時間要して系外に排出した。その後1時間を要して徐々に昇温(275℃)し、水分の残渣を系外に排除した後、冷却し、ポリアミド6を得た。得られたポリマーは、分子量(Mn)約20000〜25000、アミノ末端とカルボキシル末端の比率がほぼ1/1であり、加硫剤をラジカル発生剤とした場合の軌道相互作用エネルギー係数Sが0.006以上の活性水素の数は1分子あたり4個と計算された。
【0183】
樹脂(C)
熱可塑性樹脂として、脂環族ポリアミド[ビス(4−アミノシクロへキシル)メタンと、ドデカンジカルボン酸との重縮合物]を調製し、この脂環族ポリアミドに対して、加硫活性剤(TRIM :トリメチロールプロパントリメタクリレート)3重量部を配合し、樹脂(C)として用いた。なお、MOPACPM3の計算は、下記基本単位に基づいて行った。
【0184】
【化1】
【0185】
脂環族ポリアミドの調製:モノマーの組合せをビス(4−アミノシクロへキシル)メタンとドデカンジカルボン酸とする以外は前記樹脂(A1)と同様の調製方法で分子量(Mn)20000〜25000、アミノ末端とカルボキシル末端の比率がほぼ1/1のポリマーを得た。加硫剤をラジカル発生剤とした場合のこのポリマーの軌道相互作用エネルギー係数Sが0.006以上の活性水素の数は1分子あたり3個と計算された。
【0186】
樹脂(D1〜D4)
熱可塑性樹脂としてポリブチレンテレフタレートを製造し、樹脂又は樹脂組成物を調製した。なお、MOPACPM3の計算は、下記基本単位に基づいて行った。
【0187】
【化2】
【0188】
樹脂(D1):
樹脂D1の調製:蒸留精製したジメチルテレフタレート883gおよびブタンジオール819gに酢酸カルシウム1.82g、酸化アンチモン3.64gを加え、攪拌機、窒素ガス導入管、蒸留用側管を有し、且つ真空系に連結された重合管に入れた。この重合管を油浴により180℃に加熱し、ゆっくりと窒素ガスを通した。留出するメタノール量が理論値に達したところで攪拌を開始し、徐々に系の温度を250〜260℃にまで高めると共に真空度を徐々に上げ100Pa以下にまで到達させた。生成するブタンジオールを少量ずつ留出させながら、2〜3時間を要して縮合反応を進め、適宜テトラクロロエタン/フェノール=40/60の混合溶媒中の相対粘度を測定し、数平均分子量が10000に達した時点で反応を終結させた。得られたポリマー中の、加硫剤をラジカル発生剤とした場合の軌道相互作用エネルギー係数Sが0.006以上の活性水素の数は1分子あたり0個と計算された。この樹脂を単独で樹脂(D1)として用いた。
【0189】
樹脂(D2):
樹脂D2の調製:前記樹脂(D1)100重量部に対して、加硫活性剤(HVA2 :m−フェニレンビスマレイミド)1重量部を配合し、樹脂(D2)として用いた。
【0190】
樹脂(D3):
樹脂D3の調製:前記樹脂(D1)100重量部に対して、加硫活性剤(TRIM :トリメチロールプロパントリメタクリレート)3重量部を配合し、樹脂(D3)として用いた。
【0191】
樹脂(D4):
樹脂D4の調製:前記樹脂(D1)100重量部に対して、ポリオクテニレン(Degussa AG製 「Vestenamer 8012」)10重量部を配合し、樹脂(D4)として用いた。
【0192】
樹脂(E1〜E2)
架橋性樹脂として、不飽和結合を含有するポリブチレンテレフタレートを製造し、樹脂又は樹脂組成物を調製した。
【0193】
樹脂(E1):
樹脂E1の調製:前記樹脂(D)の製造においてブタンジオール819gをブタンジオール747gとブチレンジオール70.4gに変える以外は同様にして数平均分子量約10000のポリマーを得た。得られたポリマー中の、加硫剤をラジカル発生剤とした場合の軌道相互作用エネルギー係数Sが0.006以上の活性水素の数は1分子あたり0個と計算され、不飽和結合の濃度はポリマー1分子中に平均4個、0.4モル/kgであった。このポリマーを単独で樹脂(E1)として用いた。
【0194】
樹脂(E2):
樹脂E2の調製:前記樹脂(E1)100重量部に対して、加硫活性剤(TRIM:トリメチロールプロパントリメタクリレート)3重量部を配合し、樹脂(E2)として用いた。
【0195】
樹脂(F)
樹脂Fの調製:変性ポリフェニレンエーテル樹脂(日本ゼネラル・エレクトリック(株)製、ノリル731)100重量部に対して、ポリオクテニレン(Degussa AG製 「Vestenamer 8012」)10重量部を配合し、樹脂(F)として用いた。得られたポリマーにおいて、加硫剤をラジカル発生剤とした場合の1分子当たりの活性水素原子の数は4個以上であった。なお、MOPACPM3の計算は、下記基本単位に基づいて行った。
【0196】
【化3】
【0197】
[未加硫ゴム組成物(R)]
下記成分を所定の割合で配合し、未加硫ゴム組成物(R1〜R10)を調製した。
【0198】
ゴム組成物(R1)
(i)エチレンプロピレンジエンゴム(DMS(株)製 「ケルタン509×100」)100重量部
(ii)ラジカル発生剤[有機過酸化物(ジクミルパーオキサイド)]2.5重量部
(iii)フィラー(旭カーボン(株)製 「N582」)1重量部
(iv)可塑剤(出光興産(株)製 「ダイアナプロセスオイルNS100」)5重量部
(v)酸化亜鉛3重量部
(vi)ステアリン酸1重量部
ゴム組成物(R2)
(i)エチレンプロピレンジエンゴム(DMS(株)製 「ケルタン509×100」)100重量部
(ii)ラジカル発生剤[有機過酸化物(ジクミルパーオキサイド)]2.5重量部
(iii)加硫活性剤(TRIM:トリメチロールプロパントリメタクリレート)3重量部
(iv)フィラー(旭カーボン(株)製 「N582」)1重量部
(v)可塑剤(出光興産(株)製 「ダイアナプロセスオイルNS100」)5重量部
(vi)酸化亜鉛3重量部
(vii)ステアリン酸1重量部
ゴム組成物(R3)
(i)エチレンプロピレンジエンゴム(DMS(株)製 「ケルタン509×100」)100重量部
(ii)ラジカル発生剤[有機過酸化物(ジクミルパーオキサイド)]2.5重量部
(iii)ポリオクテニレン(Degussa AG製 「Vestenamer 8012」)5重量部
(iv)フィラー(旭カーボン(株)製 「N582」)1重量部
(v)可塑剤(出光興産(株)製 「ダイアナプロセスオイルNS100」)5重量部
(vi)酸化亜鉛3重量部
(vii)ステアリン酸1重量部
ゴム組成物(R4)
(i)エチレンプロピレンジエンゴム(DMS(株)製 「ケルタン509×100」)100重量部
(ii)ラジカル発生剤[有機過酸化物(ジクミルパーオキサイド)]2.5重量部
(iii)加硫活性剤(TRIM:トリメチロールプロパントリメタクリレート)3重量部
(iv)ポリオクテニレン(Degussa AG製 「Vestenamer 8012」)5重量部
(v)フィラー(旭カーボン(株)製 「N582」)1重量部
(vi)可塑剤(出光興産(株)製 「ダイアナプロセスオイルNS100」)5重量部
(vii)酸化亜鉛3重量部
(viii)ステアリン酸1重量部
ゴム組成物(R5)
(i)ビニルシリコーンゴム(東レダウコーニング(株)製 「シリコーンゴムSH851」)100重量部
(ii)ラジカル発生剤[有機過酸化物(ジクミルパーオキサイド)]2.5重量部
ゴム組成物(R6)
(i)ビニルシリコーンゴム(東レダウコーニング(株)製 「シリコーンゴムSH851」)100重量部
(ii)ラジカル発生剤[有機過酸化物(ジクミルパーオキサイド)]2.5重量部
(iii)加硫活性剤(TRIM:トリメチロールプロパントリメタクリレート)0.5重量部
ゴム組成物(R7)
(i)フッ素ゴム(FKM ダイキン工業(株)製 「Dai EL G902」)100重量部
(ii)ラジカル発生剤[有機過酸化物(ジクミルパーオキサイド)]2.5重量部
(iii)加硫活性剤(TAIC : トリアリルイソシアヌレート)3重量部
ゴム組成物(R8)
(i)カルボキシル化ニトリルゴム(X−NBR)(日本ゼオン(株)製 「Nipol 1072J」)100重量部
(ii)ラジカル発生剤[有機過酸化物(ジクミルパーオキサイド)]0.2重量部
(iii)ポリオクテニレン(Degussa AG製 「Vestenamer 8012」)5重量部
ゴム組成物(R9)
(i)スチレンブタジエンゴム[JSR(株)製 「JSR0202」 (スチレン含有量46%)]100重量部
(ii)フィラー(旭カーボン(株)製 「N582」)50重量部
(iii)硫黄2重量部
(iv)可塑剤(出光興産(株)製 「ダイアナプロセスオイルNS100」)10重量部
(v)酸化亜鉛5重量部
(vi)ステアリン酸1重量部
ゴム組成物R10
(i)スチレンブタジエンゴム[JSR(株)製 「JSR0202」 (スチレン含有量46%)]60重量部
(ii)天然ゴム(「タイ国 #3」)40重量部
フィラー(旭カーボン(株)製 「N582」)50重量部
(iii)硫黄2重量部
(iv)可塑剤(出光興産(株)製 「ダイアナプロセスオイルNS100」)10重量部
(v)酸化亜鉛5重量部
(vi)ステアリン酸1重量部
実施例1〜19及び比較例1〜5
(複合分散体の調製)
前記樹脂又は樹脂組成物を、樹脂の種類に応じて温調されたニーダーを用いて混合混練した。この混練物に、別途ロールを用いて準備しておいた前記未加硫ゴム組成物を表1に示した組合せで追添加し、混合混練しながらゴム成分の加硫を進行させ、複合分散体を得た。この時、未加硫ゴム組成物の添加量はニーダー中の樹脂組成物60重量部に対し40重量部とし、10重量部づつ4回に分け、計10分を要して添加した。なお、ニーダーの設定温度を、樹脂又は樹脂組成物が、樹脂A1〜A6、樹脂B、樹脂D1〜D4、樹脂E1〜E2及び樹脂Fの場合は240℃、樹脂Cの場合は270℃とした。
【0199】
(衝撃試験)
上記複合分散体を圧縮成形により厚み6mmの平板に成形し、次いでこれを切削して所定の形状の試験片を作成しアイゾット衝撃試験に供した。なお、比較のため、ポリアミド612,ポリブチレンテレフタレートにおいて樹脂単独の試験片を作成しアイゾット衝撃試験に供した(比較例1、4)。
【0200】
(延伸試験)
上記複合分散体を圧縮成形により厚み3mmの平板に成形した。次いでこれを幅15mmに裁断して引張試験片とし、50mm/分の引張試験に供した。この延伸試験の評価は、下記の基準に従って行った。
【0201】
A:200%以上の破断伸度があり、試験片が破断するまで試験片表面の乱れや層間剥離現象が無く、かつ破断面にも白化やフィブリル化が認められない
B:200%以上の破断伸度が得られるが、破断面周辺に白化やフィブリル化が認められる
C:破断伸度が200%に達せず延伸と共に層間剥離現象が現れる
(剥離試験)
ゴム/樹脂間の接合強度は次のようにして測定した。
【0202】
前記樹脂又は樹脂組成物を、2軸押出機により混合混練し、得られた混練物を射出成形機により厚み3mmの平板に成形した。一方、オープンロールを用いて各成分を混合することにより、前記未加硫ゴム組成物を得、次いで、前記樹脂平板の上部に、表1に示した組合せで未加硫ゴム組成物を乗せ、170℃に温調された圧縮成形機でゴム層の厚みを3mmに調整しながら10分間を要してゴム層を加硫し、両者を接合させた。このとき樹脂平板の1/3をアルミホイルで覆い、樹脂ゴムの直接接触を避け、この被覆部分をゴム樹脂間の剥離試験時の掴み代とした。このようにして得られた樹脂/ゴム複合体からなる平板を、上下幅30mmに裁断し、樹脂部ゴム部のそれぞれの掴み代を引張試験機のチャックに固定し、引張速度50mm/分で180度剥離試験に供した。この剥離試験の評価は、下記の基準に従って行った。
【0203】
A:剥離がゴム層の凝集破壊によって進行する
B:剥離がゴム層の凝集破壊と樹脂ゴム層間の界面剥離が複合して進行するが十分な接着強度が認められる
C:剥離が樹脂ゴム層間の界面剥離によってのみ進行し、十分な接着強度が認められない
結果を表1に示す。なお、表1において、「VA」とは、加硫活性剤を意味し、「VM」とは、ポリオクテニレンを意味する。
【0204】
【表1】
【0205】
表1から分かるように、実施例の複合分散体では、連続相と分散相とが強固に直接接合しており、かつ高い衝撃強度及び引っ張り強度を示した。
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂及びゴムで構成され、かつ機械部品、自動車部品などとして有用な複合分散体(又は複合分散部材)及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高分子材料に対する要求品質が高くなるに伴い複数の特性、場合によっては相反する特性を複合して有する素材が求められている。特に工業用高分子素材の分野では高剛性と耐衝撃特性、柔軟性と耐薬品性、耐磨耗性と耐油性など特性を複合して有する素材が求められ、各種樹脂と加硫ゴム(又はゴム)とを複合化させた組成物の開発が期待された。
【0003】
しかし、一般に特性の異なる素材は相互に相溶せず、両者を単に混合するだけでは一方の成分が他方の成分に不均一に分散した混合物が得られるだけであり、両者の特性が複合した新たな特性を有する組成物を得る事は難しい。寧ろ、破断伸度や耐寒性などの工業用素材として重要な特性の低下を伴う事が多く、実用化できる技術とはなり得ない場合が多い。これらの欠点は両成分の混合において、両者の界面を確実に接合させ、実質的に両者が界面において相溶したのと同様の効果を得る事で解決される。
【0004】
これまでに樹脂部材とゴム部材を接合させた複合体を得る方法が多く提案されている。樹脂とゴムとの混合において、これらの複合体の技術を利用すれば一方の成分が他方に均一に分散し、かつ、両者の界面が十分に接合され、両者の特性が複合して発現する新たな組成物(複合分散体)を提供できると考えられる。
【0005】
ゴム部材と樹脂部材を接合した複合体を得る方法としては、例えば、接着剤を用いて、両者を接着する方法が知られている。しかし、接着剤を利用して複合分散体を得る場合、接着剤を樹脂/ゴム間に集中して介在させる必要があるが、3者の混合において、接着剤をゴム/樹脂間の界面だけに、また、その界面のすべてに介在させることが困難である。
【0006】
また、樹脂成形部材とゴム成形部材とを直接接合する方法が提案されている。例えば、特開昭50−25682号公報には、熱可塑性プラスチックとこの熱可塑性プラスチックと相溶性の加硫ゴムとを接触面で摩擦接触させ、プラスチック表面を溶融し、接触させた状態で熱可塑性樹脂成分とゴム成分とを凝固させ複合体を得ることが提案されている。しかし、この方法では、目的の複合分散体を得ることが困難である。
【0007】
特開平9−124803号公報には、アクリロニトリル含有熱可塑性樹脂(AS,ABS樹脂など)と、アクリロニトリル含有ゴムとを、熱可塑性樹脂とゴムとの相溶性を利用して加熱密着させて複合部材を得ることが提案されている。しかし、この方法では、アクリロニトリルを含有する樹脂及びゴムに制限され、実用性がかなり狭くなる。
【0008】
特開平8−156288号公報には、エポキシ基を含有する樹脂組成物と加硫されたカルボキシル基又は酸無水物基を有する弾性ゴムとを接触させて加硫し、エポキシ基とカルボキシル基との化学反応を利用することにより、樹脂とゴムとの接触面で接合する複合部材を得る方法が提案されている。しかし、この方法では、エポキシ基とカルボキシル基との化学反応を利用しているため、樹脂とゴムの種類が大きく制限され、幅広い範囲で複合分散体を得ることが困難である。
【0009】
特開平2−150439号公報、特開平3−133631号公報、特開平3−138114号公報には、ポリアミド系樹脂とゴム成分とを加硫系の存在下で加硫することにより複合体を製造する方法において、ゴム成分として、カルボキシル基又は酸無水物含有ゴムと過酸化物と加硫活性剤(エチレングリコールジメタクリレート、トリアリルイソシアヌレートなど)とアルコキシシラン化合物とを含むゴム成分を用いることが提案されている。これらの文献では、脂肪族ポリアミド系樹脂として主に末端カルボキシル基よりも末端アミノ基の多いポリアミド系樹脂が使用されている。すなわち、アミノ基とカルボキシル基又は酸無水物基との反応を利用している。そのため、樹脂及びゴムの種類が大きく制約され、幅広い範囲で樹脂とゴムとの複合分散体を得ることが困難である。
【0010】
特開平7−11013号公報には、ポリアミド成形体と、ゴムと、過酸化物加硫剤とシラン化合物とを含むゴムパウンドとを接触させて加硫することにより、ポリアミド成形体と加硫ゴムとの複合部材を得る方法が提案されている。
【0011】
しかし、この方法も、シラン化合物を必要とするばかりか、樹脂がポリアミド系樹脂に限定されるため汎用性がない。
【0012】
一方、特開2002−30221号公報には、熱可塑性樹脂(B)の連続相中に加硫したゴム(A)が粒子状に分散している熱可塑性樹脂組成物であって、前記ゴム(A)と熱可塑性樹脂(B)とが、熱可塑性樹脂(B)からなる樹脂成形物と未加硫のゴム(A)とを加圧・加熱下に接触させつつゴム(A)を加硫させた場合に、前記樹脂成形物とゴム(A)からなるゴム成形部とが剥離試験において凝集破壊が起きる程度の接着強度で接着可能な組合せからなる熱可塑性樹脂組成物が開示されている。
【0013】
この文献には、凝集破壊が起きる具体的な樹脂とゴムとの組合せとして、(1)SBR、NR、EPDM、酸変性エチレン−プロピレンゴム、及びエチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体ゴムから選択された少なくとも1種のゴムと、ポリフェニレンエーテル(PPE)又はその組成物との組合せ、(2)酸変性エチレン−プロピレンゴム、酸変性ニトリルゴム及びフッ素ゴムから選択された少なくとも1種のゴムと、アミノ基を有する熱可塑性樹脂との組合せが記載されている。さらに、前記PPE又はその組成物の組合せ(1)において、ゴムの加硫剤として有機過酸化物を用いることが多いこと、及びPPE組成物を、PPE100重量部と、ポリアルケニレン0〜30重量部と、スチレン系ゴム0〜30重量部とで構成できることが記載されている。また、この文献には、ゴム100重量部に対して、加硫促進剤(ベンゾチアゾール類、トリアリルイソシアヌレート、m−フェニレンビスマレイミド、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなど)0.1〜5重量部程度や、加工助剤としてのポリアルケニレン(ポリオクテニレンなど)0.5〜12重量部程度を添加することが記載されている。
【0014】
しかし、この文献の方法では、凝集破壊を伴う樹脂とゴムとの組合せを見いだすのが困難であり、樹脂とゴムとの組合せが大きく制限される。また、このような組合せを選択しても連続相と分散相との接着強度は十分でない場合が多い。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、樹脂とゴムとを広い範囲で組み合わせても、樹脂で構成された連続相と、加硫ゴムで構成された分散相とが強固に接合した複合分散体及びその製造方法を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、簡便な方法により、樹脂相と加硫ゴム相とが強固に接合した複合分散体を製造する方法を提供することにある。
【0017】
本発明のさらに他の目的は、樹脂マトリックスにゴムの特性を有効に付与できる複合分散体及びその製造方法を提供することにある。
【0018】
本発明の別の目的は、樹脂相と加硫ゴム相とが強固に接合した複合分散体で形成された成形品を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、樹脂相とゴム相とが接合した複合分散体において、(1)加硫活性剤を含有する樹脂又は架橋性の樹脂を使用したり、(2)特定の樹脂とゴムとを組み合わせると、樹脂相と加硫ゴム相とを確実にかつ強固に直接接合できることを見出し、本発明を完成した。
【0020】
すなわち、本発明の複合分散体(1)は、樹脂で構成された連続相と、未加硫ゴムが加硫した加硫ゴムで構成された分散相とが直接接合しており、前記連続相が、加硫活性剤を含有する樹脂、又は架橋性基を有する樹脂で構成されている。なお、「直接接合」とは、「接着剤を使用することなく樹脂相と加硫ゴム相とが接着しており、シート状の両相を機械的に剥離させたとき、ゴム相の凝集破壊を伴って剥離が進行すること」を意味する。
【0021】
前記架橋性基を有する樹脂は、例えば、不飽和結合を有する熱可塑性樹脂(例えば、熱可塑性樹脂1kgに対して不飽和結合0.01〜6.6モル程度を有する熱可塑性樹脂)などであってもよく、前記不飽和結合を有する樹脂は、(i)反応性基(A)及び不飽和結合を有する重合性化合物と、前記反応性基(A)に対して反応性の反応性基(B)を有する熱可塑性樹脂との反応により生成した樹脂、又は(ii)共重合又は共縮合により不飽和結合を導入した熱可塑性樹脂であってもよい。
【0022】
前記樹脂は、ポリアミド系樹脂(脂肪族ポリアミド系樹脂など)、ポリエステル系樹脂(芳香族ポリエステル系樹脂など)、ポリ(チオ)エーテル系樹脂(ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂など)、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ハロゲン含有樹脂、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂及び熱可塑性エラストマーから選択された少なくとも一種であってもよく、下記式(1)で表される軌道相互作用エネルギー係数Sが0.006以上である水素原子及び/又は硫黄原子を一分子中に少なくとも平均2つ有する樹脂であってもよい。
【0023】
S=(CHOMO,n)2/|Ec−EHOMO,n|+(CLUMO,n)2/|Ec−ELUMO,n| (1)
(式中、Ec、CHOMO,n、EHOMO,n、CLUMO,n、ELUMO,nは、いずれも半経験的分子軌道法MOPACPM3により算出された値であって、Ecはラジカル発生剤のラジカルの軌道エネルギー(eV)を示し、CHOMO,nは樹脂の基本単位を構成する第n番目の水素原子及び/又は硫黄原子の最高被占分子軌道(HOMO)の分子軌道係数を示し、EHOMO,nは前記HOMOの軌道エネルギー(eV)を示し、CLUMO,nは前記n番目の水素原子及び/又は硫黄原子の最低空分子軌道(LUMO)の分子軌道係数を示し、ELUMO,nは前記LUMOの軌道エネルギー(eV)を示す)
前記複合分散体(1)において、加硫ゴムは、ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、アクリル系ゴム、フッ素ゴム、シリコーン系ゴム、ウレタン系ゴムなどであってもよい。少なくとも未加硫ゴムが加硫剤(有機過酸化物、アゾ化合物、硫黄含有有機化合物などのラジカル発生剤、硫黄など)を含有していてもよく、加硫剤の割合が、未加硫ゴム100重量部に対して、0.1〜10重量部程度であってもよい。また、前記加硫活性剤は、一分子中に少なくとも2つの重合性不飽和結合を有する有機化合物及びマレイミド系化合物から選択された少なくとも1種であってもよく、加硫活性剤の割合は、樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部程度であってもよい。さらに、樹脂及び未加硫ゴムのうち少なくとも一方の成分が、ポリアルケニレンを含有していてもよく、ポリアルケニレンの割合は、樹脂又は未加硫ゴム100重量部に対して、1〜30重量部であってもよい。
【0024】
前記複合分散体(2)では、前記樹脂及び/又は未加硫ゴムが下記(a)〜(d)のいずれかの組合せであってもよい。なお、これらの組合せにおいて、樹脂が、前記軌道相互作用エネルギー係数Sが0.006以上である水素原子及び/又は硫黄原子を一分子中に少なくとも平均2つ有していてもよく、また、未加硫ゴムが、加硫活性剤やポリアルケニレンを含有していてもよい。
【0025】
(a)樹脂と、加硫剤及び加硫活性剤を含む未加硫ゴムとの組合せであって、前記加硫剤と加硫活性剤との割合(重量比)が、前者/後者=2/98〜70/30である組合せ
(b)ポリアミド系樹脂と、加硫剤及びポリアルケニレンを含む未加硫ゴムとの組合せであって、前記加硫剤とポリアルケニレンとの割合(重量比)が、前者/後者=2/98〜45/55であるの組合せ
(c)樹脂と、シリコーン系未加硫ゴムとの組合せ
(d)ポリアルケニレンを含有するポリフェニレンエーテル系樹脂と、加硫剤として硫黄又は硫黄含有有機化合物を含有している未加硫ゴムとの組合せ
本発明の複合分散体では、樹脂及び/又は未加硫ゴムが、分子量が1000以下であって、かつ前記軌道相互作用エネルギー係数Sが0.006以上である水素原子を一分子中に平均2個以上有する化合物、一分子中にカルボキシル基、酸無水物基又はイソシアネート基を1個以上有する化合物及びシランカップリング剤から選択された少なくとも1種を含有していてもよい。また、本発明の複合分散体は、連続相と分散相とで海島構造を形成していてもよく、連続相と分散相との割合(重量比)が、連続相/分散相=25/75〜98/2程度であってもよい。
【0026】
本発明は、樹脂と未加硫ゴムとを混練して前記複合分散体を製造する方法、及び前記複合分散体で形成された成形品を含む。
【0027】
なお、本発明において、樹脂は、ゴム成分を含むグラフト共重合体(例えば、HIPS、ABS樹脂など)を含むものとする。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明の複合分散体は、樹脂で構成された連続相(単に樹脂相と称する場合がある)と、未加硫ゴムが加硫した加硫ゴムで構成された分散相(単にゴム相と称する場合がある)とが直接接合している。本発明の一つの態様では、前記複合分散体において、樹脂として、加硫活性剤を含有する樹脂、又は架橋性基を有する樹脂を使用することにより、樹脂とゴムとを強固に接着させる。また、本発明の他の態様では、前記複合分散体を、特定の樹脂とゴムとを組合せて構成する。
【0029】
[樹脂]
連続相を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂などが使用できる。
【0030】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ(チオ)エーテル系樹脂(ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂など)、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂などの縮合系熱可塑性樹脂;ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ハロゲン含有樹脂、ビニル系樹脂(例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコールなど)などのビニル重合系熱可塑性樹脂;熱可塑性エラストマーなどが例示できる。
【0031】
これらの樹脂は、単独でまたは二種以上組合せて使用することができる。二種以上の樹脂を組合せて用いる場合、樹脂組成物はポリマーアロイなどの複合樹脂組成物を形成してもよい。
【0032】
(架橋性基を有する樹脂)
架橋性基を有する樹脂(以下、架橋性樹脂と称する場合がある)としては、例えば、不飽和結合(重合性又は架橋性不飽和結合)を有する熱可塑性樹脂が挙げられる。このような架橋性樹脂を用いると、ゴム成分の加硫において、架橋反応がゴム成分と樹脂成分との界面においても進行するため、ゴム成分として幅広い範囲のゴム成分を選択しても、樹脂相とゴム相(又は加硫ゴム相)とを強固に接合できる。
【0033】
不飽和結合を有する熱可塑性樹脂において、不飽和結合としては、加硫剤(ラジカル発生剤など)により活性化可能であれば特に限定されず、熱や光の付与により架橋性又は重合性を示す種々の結合(特に重合性不飽和結合)が例示できる。このような不飽和結合又は不飽和結合を有するユニットは、連結基(エステル結合(−OC(=O)−、−C(=O)O−)、アミド結合(−NHCO−,−CONH−)、イミノ結合(−NH−)、ウレタン結合(−NHC(=O)O−)、尿素結合、ビウレット結合など)を介して、熱可塑性樹脂に結合していてもよい。さらに、前記不飽和結合又はそのユニットは、樹脂の末端(主鎖末端)及び/又は側鎖に位置していてもよく、樹脂の主鎖に位置していてもよく、さらにはこれらの両者に位置していてもよい。
【0034】
不飽和結合を有する基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、アリル基、2−メチル−2−プロペニル基、2−ブテニル基などのC2−6アルケニル基;4−ビニルフェニル基、4−イソプロペニルフェニル基などのC2−6アルケニル−C6−20アリール基;スチリル基などのC6−20アリール−C2−6アルケニル基;エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、プロパルギル基、2−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基などのC2−6アルキニル基;ビニレン基、メチルビニレン基、エチルビニレン基、1,2−ジメチルビニレンなどのモノ又はジC1−6アルキルビニレン基、クロロビニレン基などのハロビニレン基などの置換基を有していてもよいビニレン基;ビニリデン基;エチニレン基などが例示できる。
【0035】
不飽和結合を有する熱可塑性樹脂の具体的な態様としては、例えば、下記(i)〜(iii)のような態様が例示できる。
【0036】
(i)反応性基(A)及び不飽和結合を有する重合性化合物と、前記反応性基(A)に対して反応性の反応性基(B)を有する熱可塑性樹脂との反応により生成した樹脂
(ii)共重合又は共縮合により不飽和結合を導入した熱可塑性樹脂
(iii)種々の有機反応(例えば、アセチレンを利用したレッペ反応によるビニル基の導入、ビニルリチウムなどの有機金属試薬を利用した不飽和結合の導入、カップリング反応による不飽和結合の導入など)により不飽和結合を導入した熱可塑性樹脂
これらの樹脂のうち、好ましい不飽和結合含有樹脂は樹脂(i)又は(ii)である。
【0037】
前記樹脂(i)において、少なくとも1つの反応性基(A)と少なくとも1つの不飽和結合とを有する重合性化合物と、前記重合性化合物の反応性基(A)に対して反応性の反応性基(B)を有する樹脂とを反応させることにより、樹脂に不飽和結合を導入できる。
【0038】
重合性化合物の代表的な反応性基(A)としては、(A1)ヒドロキシル基、(A2)カルボキシル基又はその酸無水物基、(A3)アミノ基、(A4)エポキシ基、(A5)イソシアネート基などが例示でき、重合性化合物の反応性基(A)と樹脂の反応性基(B)との組合せとしては、次のような組合せが例示できる。なお、括弧内は反応性基(A)と反応性基(B)との結合形式を示す。
【0039】
(A1)ヒドロキシル基:
(B)カルボキシル基又はその酸無水物基(エステル結合)、イソシアネート基(エステル結合)
(A2)カルボキシル基又はその無水物基:
(B)ヒドロキシル基(エステル結合)、アミノ基(アミド結合)、エポキシ基(エステル結合)、イソシアネート基(アミド結合)
(A3)アミノ基:
(B)カルボキシル基又はその酸無水物基(アミド結合)、エポキシ基(イミノ結合)、イソシアネート基(アミド結合)
(A4)エポキシ基:
(B)カルボキシル基又はその酸無水物基(エステル結合)、アミノ基(イミノ結合)
(A5)イソシアネート基:
(B)ヒドロキシル基(エステル結合)、カルボキシル基又はその酸無水物基(アミド結合)、アミノ基(アミド結合)
重合性化合物としては、ヒドロキシル基含有化合物[例えば、アリルアルコール、2−ブテン−1−オール、3−ブテン−2−オールなどのC3−6アルケノール、プロパルギルアルコールなどのC3−6アルキノール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレートなどのC2−6アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのポリオキシC2−6アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシ−α−メチルスチレンのなどのC2−6アルケニルフェノール、ジヒドロキシスチレン、ビニルナフトールなど]、カルボキシル基又は酸無水物基含有化合物[例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、3−ブテン酸などのC3−6アルケンカルボン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸などのC4−8アルケンジカルボン酸又はその無水物、ビニル安息香酸などの不飽和芳香族カルボン酸、ケイ皮酸など]、アミノ基含有化合物(例えば、アリルアミンなどのC3−6アルケニルアミン、4−アミノスチレン、ジアミノスチレンなど)、エポキシ基含有化合物(例えば、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートなど)、イソシアネート基含有化合物(例えば、ビニルイソシアネートなど)などが例示できる。
【0040】
なお、前記樹脂(i)において、反応性基(B)を導入することにより樹脂を改質してもよい。樹脂に反応性基(B)を導入する方法としては、(i−1)樹脂の製造において、反応性基(B)を有する単量体(例えば、前記例示の重合性化合物など)と、樹脂材料(又は樹脂の原料である単量体やオリゴマー)とを共重合させる方法、(i−2)酸化反応によるカルボキシル基の導入、ハロゲン化法、重合性単量体のグラフト法などの種々の有機反応が利用できる。なお、ビニル重合系樹脂では、通常、前記反応性基(B)を有する単量体を共重合成分として用いることにより前記反応性基(B)を導入する場合が多く、ビニル重合系樹脂を含めていずれの樹脂でも、前記反応性基を有する重合性化合物のグラフト反応により、前記反応性基(B)を容易に導入できる。
【0041】
前記樹脂(ii)において、不飽和結合の導入方法としては、例えば、縮合系樹脂(例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂など)の調製において、反応成分の一部(コモノマー)として、多官能性の不飽和結合を有する化合物[例えば、脂肪族不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸などのC4−10脂肪族不飽和ジカルボン酸など)などの不飽和多価カルボン酸;脂肪族不飽和ジオール(2−ブテン−1,4−ジオールなどのC4−10脂肪族不飽和ジオールなど)などの不飽和多価アルコールなど]を共縮合(又は共重合)させる方法などが例示できる。また、付加重合系樹脂(例えば、オレフィン系樹脂など)においては、反応成分の一部(コモノマー)として、共役不飽和結合を有する単量体(例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、クロロプレンなどの置換基を有していてもよい共役C4−10アルカジエンなど)を共重合させる方法などが例示できる。
【0042】
不飽和結合を含有する樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。また、不飽和結合を含有する樹脂は、不飽和結合を含有しない樹脂(a)を含んでいてもよい。樹脂(a)としては、特に限定されず、種々の熱可塑性樹脂[例えば、後述する熱可塑性樹脂(ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂など)など]が例示できる。
【0043】
前記樹脂(a)の割合は、例えば、不飽和結合を含有する樹脂100重量部に対して、樹脂(a)10〜3000重量部、好ましくは15〜2000重量部、さらに好ましくは30〜500重量部(例えば、50〜300重量部)程度であってもよい。
【0044】
不飽和結合の数は、例えば、樹脂一分子に対して、平均0.1個以上(例えば、0.1〜1000個程度)、好ましくは平均1個以上(例えば、1〜100個程度)、さらに好ましくは平均2個以上(例えば、2〜50個程度)である。また、不飽和結合の濃度は、例えば、樹脂1kgに対して、0.001〜6.6モル、好ましくは0.01〜4モル、さらに好ましくは0.02〜2モル程度である。
【0045】
(活性原子を有する樹脂)
本発明で使用する樹脂は、ラジカル発生剤に対して高い活性を示す原子(以下、活性原子と称する)を有していてもよい。このような活性原子は、加硫剤としてラジカル発生剤を使用する場合、加硫剤に対する樹脂の活性を高めることができ、樹脂/ゴム間の接着強度を向上できる。
【0046】
具体的には、樹脂は、ラジカル発生剤の種類に応じて選択でき、例えば、下記式(1)で表される軌道相互作用エネルギー係数Sが一定値(例えば、0.006、好ましくは0.008)以上の活性原子(例えば、活性水素原子、活性硫黄原子)を有していてもよい。好ましい活性原子の軌道相互作用エネルギー係数Sは、0.006〜0.06、好ましくは0.007〜0.05(特に0.01〜0.045)程度である。この活性原子の数は、活性原子を有する官能基の結合部位(末端、分岐鎖や主鎖など)に依存し、例えば、樹脂の一分子中、平均2個以上(2〜10000個程度)、好ましくは平均2.5個以上(2.5〜5000個程度)、さらに好ましくは平均3個以上(3〜1000個程度)である。樹脂一分子中の活性原子の数は、通常、2〜100個(好ましくは2.5〜50個、さらに好ましくは3〜25個、特に3〜20個)程度である。
【0047】
S=(CHOMO,n)2/|Ec−EHOMO,n|+(CLUMO,n)2/|Ec−ELUMO,n| (1)
(式中、Ec、CHOMO,n、EHOMO,n、CLUMO,n、ELUMO,nは、いずれも半経験的分子軌道法MOPACPM3により算出された値であって、Ecはラジカル発生剤のラジカルの軌道エネルギー(eV)を示し、CHOMO,nは樹脂の基本単位を構成する第n番目の水素原子及び/又は硫黄原子の最高被占分子軌道(HOMO)の分子軌道係数を示し、EHOMO,nは前記HOMOの軌道エネルギー(eV)を示し、CLUMO,nは前記n番目の水素原子及び/又は硫黄原子の最低空分子軌道(LUMO)の分子軌道係数を示し、ELUMO,nは前記LUMOの軌道エネルギー(eV)を示す)
式(1)のMOPACPM3とは、分子軌道法(MO)の一つである。分子軌道法は分子の電子状態を論ずる近似法のひとつであり、Huckel法などの経験的方法、Huckel法の近似を高めた半経験的方法、厳密に計算のみで分子軌道関数を求める非経験的方法の3つに大別できる。近年、コンピュータの発達に伴ない、半経験的方法および非経験的方法が主な方法になっている。分子軌道法は、分子構造とその化学反応性を関係づける最も有力な方法のひとつである。例えば、日本科学技術文献情報データベース(JOIS)における分子軌道法に関する登録件数は、キーワードを「分子軌道法」として検索した場合、約53000件(期間:1980年〜2000年5月)である。MOPACPM3は、前記半経験的方法の一つであるNDDO(Neglect of Diatomic Differential Overlap)法の核をなす方法である。
【0048】
MOPACPM3は、主として有機化合物の反応について考察する目的で用いられており、多くの文献や書籍[「分子軌道法MOPACガイドブック」(平野恒夫、田辺和俊偏、海文堂、1991年)、「三訂・量子化学入門」(米沢貞次郎他著、化学同人、1983年)、「計算化学ガイドブック」(大澤映二他訳、Tim Clark著、丸善、1985年)]などで解説されている。
【0049】
式(1)での基本単位とは、高分子の末端と、1〜3個程度の繰返し単位とで形成したモデル的な分子構造を意味する。すなわち、MOPACPM3で高分子化合物について計算する場合、分子を構成する原子の数が多すぎるため、分子そのものを対象として計算するのが困難である。そのため、高分子の末端と、2〜3個程度の繰り返し単位とで形成した分子構造モデル(基本単位)を対象にして計算を行ってもよい。例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)の分子構造(繰返単位)は、一般に、化学式−(CH2−CH2−CH2−CH2−O−C(=O)−C6H4−C(=O)−O)n−で表されるが、前記式(1)では、基本単位を、便宜的にHO−CH2−CH2−CH2−CH2−O−C(=O)−C6H4−C(=O)−OHとして計算してもよい。
【0050】
式(1)の軌道相互作用エネルギー係数Sは、反応性指数と称される場合もあり、種々の書籍等に定義され、解説されており、化学反応性を論じる場合に、極めて一般的に用いられるパラメータである。例えば、「入門フロンティア軌道論」(72頁、山辺信一、稲垣都士著、講談社サイエンティフィク、1989年)には、軌道相互作用エネルギー係数Sは、「2つの軌道が相互作用するとき、(a)エネルギー差が小さければ小さいほど、(b)重なりが大きければ大きいほど、相互作用が強くなる」という考え方を表した式であることが記載されている。式(1)は、ノーベル賞を受賞した故福井博士が1954年に発表したsuperdelocalozability(Sr)の考え方に基づいており(「分子軌道法を使うために」、71頁、井本稔、化学同人、1986年参照)、Srの考え方から式(1)と同様な式が、様々な書籍や文献において導出されている。
【0051】
ここで重要なことは、分子軌道法が分子構造とその化学反応性を論じるにあたって既に広く認知された方法であるということである。従って、式(1)で定義される軌道相互作用エネルギー係数S[1/eV]は、単なる概念的な数値ではなく、材料を特定するためのパラメータや物性値(分子量、官能基など)と同様の意味合いを有する数値である。
【0052】
なお、ラジカル発生剤のラジカルの軌道エネルギーEc(eV)は、ラジカルの分子構造に基づいて、MOPACPM3により計算するのが好ましいが、ラジカル発生剤の種類に基づいて、便宜上、所定の値を用いてもよい。例えば、ラジカル発生剤が有機過酸化物ではEc=−8eV、アゾ化合物ではEc=−5eV、硫黄を除く硫黄含有有機化合物ではEc=−6eVとして計算してもよい。
【0053】
軌道相互作用エネルギー係数Sが一定値(例えば、0.006)以上である水素原子(活性水素原子)としては、ラジカル発生剤が有機過酸化物の場合、アミノ(−NH2)基(例えば、末端アミノ基)、イミノ(−NH−)基(例えば、主鎖又は末端イミノ基、アミド結合の−NH−基など)、メチル(−CH3)基、メチレン(−CH2−)基(主鎖又は末端メチレン基)、メチリジン(−CH=)基(主鎖又は末端のメチリジン基)などの水素原子が挙げられる。
【0054】
また、軌道相互作用エネルギー係数Sが一定値(例えば、0.006)以上である硫黄原子(活性硫黄原子)としては、ラジカル発生剤が有機過酸化物の場合、チオ基(−S−)、メルカプト(−SH)基、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基などのC1−4アルキルチオ基など)、スルフィニル基(−SO−)などの硫黄原子が挙げられる。
【0055】
前記メチル基としては、例えば、アルキレン鎖、シクロアルキレン鎖又は芳香族環に結合するメチル基、酸素原子に結合するメチル基(メトキシ基のメチル基)などが例示できる。メチレン基としては、例えば、主鎖又は側鎖を形成する直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基のメチレン基、(ポリ)オキシメチレン単位、(ポリ)オキシエチレン単位などの(ポリ)オキシアルキレン単位のメチレン基、アミノ基やイミノ基などの窒素原子に隣接するメチレン基などが例示できる。メチリジン基としては、例えば、アミノ基又はイミノ基に隣接するα−位のメチリジン基、例えば、アミノシクロアルキル基のアミノ基に対するα−位のメチリジン基などが例示できる。
【0056】
活性原子を有する樹脂は、一分子中に複数(例えば、平均で2個以上)の活性原子を有していればよい。すなわち、樹脂は、一般に、単一分子ではなく、構造や鎖長などがいくらか異なる多数の分子の混合物である。そのため、全ての分子が複数の活性原子を有している必要はなく、予想される主たる複数の基本単位について計算したとき、一分子あたり平均の活性原子の数が2以上であればよい。例えば、繰返単位−(NH−(CH2)6−NH−C(=O)−(CH2)4−(C=O))n−を有するポリマー(ポリアミド66)に含まれる活性水素原子の数は、モデル基本単位NH2−(CH2)6−NH−C(=O)−(CH2)4−C(=O)−OHに基づいて計算でき、ラジカル発生剤が有機過酸化物のとき、末端NH2基の2つの水素原子が活性水素原子(すなわち、S≧0.006)である。この場合、ポリアミド66について一分子中の活性水素原子の平均数Nは、集合体としてのポリマー(ポリアミド66)の末端NH2基と末端COOH基との比率により下記式(2)に基づいて算出できる。
【0057】
N=2×A
(式中、Aは一分子中の平均の末端NH2基の数を示す)
例えば、末端NH2基/末端COOH基=1/1(モル比)の場合、一分子中の末端NH2基の数A=1個、一分子中の活性水素原子の数N=2個である。また、末端NH2基/末端COOH基=1/2(モル比)の場合、一分子中の末端NH2基の数A=2/3個、一分子中の活性水素原子の数N=4/3個である。
【0058】
なお、樹脂が異なる活性原子数を有する複数の樹脂で構成された混合樹脂である場合、混合樹脂の活性原子数は、各樹脂が有する活性原子数の平均値で表すこともできる。つまり、混合樹脂を構成する各樹脂の基本単位から活性原子数を個別に算出し、各樹脂の重量割合をもとにして活性原子数の平均を算出することにより、混合樹脂の見かけ上の活性原子数を算出できる。例えば、混合樹脂が、前記N=2個のポリアミド66(A)と、前記N=4/3個のポリアミド66(B)とで構成され、(A)/(B)=1/1(モル比)である場合、混合樹脂一分子中の活性原子数は、N=5/3個とみなすことができる。また、混合樹脂が、前記N=2個のポリアミド66(A)と、全末端がカルボキシル基(つまりN=0個)であるポリアミド66(C)とで構成され、(A)/(C)=3/1(モル比)である場合、混合樹脂一分子中の活性原子数は、N=3/2個とみなすことができる。
【0059】
このような活性原子を有する熱可塑性樹脂としては、前記例示の樹脂のうち、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、熱可塑性エラストマー、アミノ系樹脂などが例示できる。
【0060】
また、前記複数の活性原子を備えていない樹脂であっても、活性原子(アミノ基、オキシアルキレン基など)を導入した変性樹脂として使用してもよい。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、ビニル重合系樹脂[(メタ)アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂)、ポリアクリロニトリルなど)、スチレン系樹脂(ポリスチレン;AS樹脂、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体などのスチレン共重合体;HIPS,ABS樹脂などのスチレン系グラフト共重合体など)、ハロゲン含有単量体の単独又は共重合体(ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン共重合体など)、ビニル系樹脂(ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコールなど)など]、縮合系樹脂[ポリカーボネート(ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアリレート系樹脂など]が例示できる。
【0061】
前記ビニル重合系樹脂では、例えば、ビニル単量体と(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基又は酸無水物基含有単量体との共重合により、ビニル重合系樹脂にカルボキシル基又は酸無水物基を導入し、必要によりチオニルクロライドと反応させて酸クロライド基を生成させ、アンモニア、モノ置換アミン類(モノアルキルアミン、モノアリールアミンなど)や前記例示のジアミン類と反応させてアミノ基を導入することにより変性樹脂を生成させてもよい。さらに、(ポリ)オキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートや(ポリ)オキシアルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレートを前記ビニル単量体と共重合したり、ビニル重合系樹脂にグラフト重合したりすることにより、活性水素原子を導入して変性してもよい。
【0062】
さらに、ビニル重合系樹脂だけでなく縮合系樹脂でも、カルボキシル基又は酸無水物基含有単量体を樹脂にグラフト重合させて、樹脂にカルボキシル基又は酸無水物基を導入し、前記と同様にして、必要によりチオニルクロライドと反応させて酸クロライド基を生成させ、アンモニア、モノ置換アミン類や前記例示のジアミン類と反応させてアミノ基を導入して変性してもよい。
【0063】
また、樹脂は、前記活性原子を所定の濃度で含有する樹脂(又は変性樹脂)と他の樹脂との樹脂組成物で構成してもよい。他の熱可塑性樹脂には、前記変性樹脂に対応する未変性熱可塑性樹脂、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ハロゲン含有単量体の単独又は共重合体(フッ素樹脂など)、ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、液晶性ポリエステル樹脂などが含まれる。
【0064】
活性原子濃度の小さいラジカル重合などの付加重合系樹脂(例えば、不飽和ポリエステル、ビニルエステル系樹脂、ジアリルフタレート樹脂など)では、活性原子を有する単量体と共重合することにより活性原子を導入してもよい。活性原子を有する単量体としては、例えば、オキシC2−4アルキレン単位を有する単量体((ポリ)オキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)オキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)オキシエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレートなどの(ポリ)オキシアルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、多官能性単量体、例えば、(ポリ)オキシエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)オキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレートなど)、アミド結合を有する単量体(アクリルアミド、メチレン−ビス(メタ)アクリルアミド、1,1−ビスアクリルアミド−エタンなどのアクリルアミド類など)が挙げられる。
【0065】
活性原子を有する樹脂の割合は、樹脂成分全体に対して、30〜100重量%、好ましくは50〜100重量%、さらに好ましくは80〜100重量%程度であってもよい。
【0066】
以下に、本発明で使用できる樹脂を詳述する。
【0067】
(熱可塑性樹脂)
(1)ポリアミド系樹脂
ポリアミド系樹脂は、カルボキシル基とアミノ基との重縮合によるアミド結合を有し、例えば、脂肪族ポリアミド系樹脂、脂環族ポリアミド系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂などが挙げられ、通常、脂肪族ポリアミド系樹脂が使用される。脂肪族ポリアミド系樹脂としては、脂肪族ジアミン成分(テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのC4−10アルキレンジアミン)と脂肪族ジカルボン酸成分(アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などのC4−20アルキレンジカルボン酸など)との縮合物(例えば、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド1212など)、ラクタムの開環重合を用いた、ラクタム(ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのC4−20ラクタムなど)又はアミノカルボン酸(ω−アミノウンデカン酸などの炭素数C4−20アミノカルボン酸など)の単独又は共重合体(例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12など)、これらのポリアミド成分が共重合したコポリアミド(例えば、ポリアミド6/11,ポリアミド6/12,ポリアミド66/11,ポリアミド66/12など)などが挙げられる。
【0068】
脂環族ポリアミド系樹脂としては、前記脂肪族ジアミン成分及び/又は脂肪族ジカルボン酸成分のうち少なくとも一部を、脂環族ジアミン及び/又は脂環族ジカルボン酸に置き換えたポリアミドが挙げられる。脂環族ポリアミドには、例えば、前記脂肪族ジカルボン酸成分と脂環族ジアミン成分(シクロへキシルジアミンなどのC5−8シクロアルキルジアミン;ビス(アミノシクロへキシル)メタン、2,2−ビス(アミノシクロへキシル)プロパンなどのビス(アミノシクロへキシル)アルカン類など)との縮合体が含まれる。
【0069】
芳香族ポリアミド系樹脂には、前記脂肪族ジアミン成分及び脂肪族ジカルボン酸成分のうち少なくとも一方の成分が芳香族成分を有するポリアミドが挙げられる。芳香族ポリアミドは、例えば、ジアミン成分が芳香族成分を有するポリアミド[MXD−6などの芳香族ジアミン(メタキシリレンジアミンなど)と脂肪族ジカルボン酸との縮合体など]、ジカルボン酸成分が芳香族成分を有するポリアミド[脂肪族ジアミン(トリメチルヘキサメチレンジアミンなど)と芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸など)との縮合体など]、ジアミン成分及びジカルボン酸成分が共に芳香族成分を有するポリアミド[ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)などの全芳香族ポリアミド(アラミド)など]などが含まれる。
【0070】
ポリアミド系樹脂には、さらに、ダイマー酸をジカルボン酸成分とするポリアミド、少量の多官能性ポリアミン及び/又はポリカルボン酸成分を用い、分岐鎖構造を導入したポリアミド、変性ポリアミド(N−アルコキシメチルポリアミドなど)、変性ポリオレフィンを混合あるいはグラフト重合させた高耐衝撃性ポリアミド、ポリエーテルをソフトセグメントとするポリアミドエラストマーも含まれる。
【0071】
ポリアミド系樹脂において、例えば、末端アミノ基の水素原子や、末端アミノ基に対してα−位の炭素原子に結合する水素原子、アミド結合の−NH−基に隣接する炭素原子に結合する水素原子(メチレン基の水素原子やメチリジン基の水素原子など)、特に末端アミノ基の水素原子が活性水素原子を構成する。
【0072】
ポリアミド系樹脂において、末端NH2基と末端COOH基との割合は、特に限定されず、例えば、末端アミノ基の水素原子とα−炭素位の水素原子とで活性水素原子を構成する場合、末端アミノ基/末端カルボキシル基=10/90〜100/0(モル比)程度、好ましくは20/80〜95/5(モル比)程度、さらに好ましくは25/75〜95/5(モル比)程度の範囲から選択できる。また、末端アミノ基の水素原子だけで活性水素原子を構成する場合、末端アミノ基/末端カルボキシル基=50/50〜100/0(モル比)程度、好ましくは60/40〜95/5(モル比)程度、さらに好ましくは70/30〜95/5(モル比)程度であってもよい。
【0073】
また、ポリアミド系樹脂では、前記樹脂(i)として不飽和結合を導入する場合、例えば、残存するカルボキシル基やアミノ基を反応性基(B)として利用でき、また、前記樹脂(ii)として不飽和結合を導入する場合、前記不飽和多価カルボン酸(マレイン酸など)などを共重合成分の一部として用いてもよい。
【0074】
(2)ポリエステル系樹脂
ポリエステル系樹脂は、例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂が挙げられる。通常は、芳香族ポリエステル系樹脂、例えば、ポリアルキレンアリレート系樹脂又は飽和芳香族ポリエステル系樹脂が使用される。芳香族ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリC2−4アルキレンテレフタレート;このポリアルキレンテレフタレートに対応するポリC2−4アルキレンナフタレート(例えば、ポリエチレンナフタレートなど);1,4−シクロへキシルジメチレンテレフタレート(PCT))などが含まれる。ポリエステル系樹脂は、アルキレンアリレート単位を主成分(例えば、50重量%以上)として含むコポリエステルであってもよく、共重合成分には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールなどのC2−6アルキレングリコール、ポリオキシC2−4アルキレングリコール、フタル酸、イソフタル酸などの非対称芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸などが例示できる。さらに、少量のポリオール及び/又はポリカルボン酸を用い、線状ポリエステルに分岐鎖構造を導入してもよい。
【0075】
芳香族ポリエステル系樹脂が前記活性原子を所定の濃度で有しない場合、活性原子を有する変性化合物で変性した変性ポリエステル系樹脂(例えば、アミノ基及びオキシアルキレン基から選択された少なくとも一種を有する芳香族ポリエステル系樹脂)を用いてもよい。活性原子、特に活性水素原子を有する化合物としては、ポリアミン類(脂肪族ジアミン類、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタンなどの炭素数2〜10程度の直鎖又は分岐鎖状アルキレンジアミンなど;脂環族ジアミン類、例えば、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなど;芳香族ジアミン類、例えば、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなど)、ポリオール類(例えば、(ポリ)オキシエチレングリコール、(ポリ)オキシトリメチレングリコール、(ポリ)オキシプロピレングリコール、(ポリ)オキシテトラメチレングリコールなどの(ポリ)オキシC2−4アルキレングリコール類など)などが例示できる。変性は、例えば、ポリエステル樹脂と変性化合物とを加熱混合し、アミド化、エステル化又はエステル交換反応を利用して行うことができる。ポリエステル系樹脂の変性の程度は、前記化合物中の活性水素原子の量に応じて、ポリエステル系樹脂の官能基(ヒドロキシル基又はカルボキシル基)1モルに対して、例えば、変性化合物0.1〜2モル、好ましくは0.2〜1.5モル、さらに好ましくは0.3〜1モル程度であってもよい。エステル交換反応に用いる場合、(ポリ)オキシC2−4アルキレングリコール類の使用量は、ポリエステル系樹脂100重量部に対して1〜50重量部程度、好ましくは5〜30重量部程度であってもよい。
【0076】
ポリエステル系樹脂では、通常、(ポリ)オキシアルキレン単位のメチレン基の水素原子が活性水素原子を構成し、変性ポリエステル系樹脂では、通常、末端アミノ基の水素原子や、末端アミノ基に対してα−位の炭素原子に結合する水素原子、アミド結合の−NH−基に隣接する炭素原子に結合する水素原子(メチレン基の水素原子やメチリジン基の水素原子など)、特に末端アミノ基の水素原子が活性水素原子を構成する。
【0077】
また、ポリエステル系樹脂では、前記樹脂(i)として不飽和結合を導入する場合、例えば、残存するカルボキシル基やヒドロキシル基を反応性基(B)として利用でき、また、前記樹脂(ii)として不飽和結合を導入する場合、前記不飽和多価カルボン酸(マレイン酸など)や、前記不飽和多価アルコール(2−ブテン−1,4−ジオールなど)などを共重合成分の一部として用いてもよい。
【0078】
(3)ポリ(チオ)エーテル系樹脂
ポリエーテル系樹脂には、ポリオキシアルキレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂(ポリチオエーテル系樹脂)が含まれる。ポリオキシアルキレン系樹脂としては、ポリオキシメチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシテトラメチレングリコールなどのポリオキシC1−4アルキレングリコールなどが含まれる。好ましいポリエーテル系樹脂には、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂及びポリエーテルケトン系樹脂が含まれる。なお、前記樹脂(i)として不飽和結合を導入する場合、残存するヒドロキシル基、メルカプト基などを反応性基(B)として利用してもよい。
【0079】
(3a)ポリアセタール系樹脂
ポリアセタール系樹脂は、アセタール結合の規則的な繰り返しにより構成されているホモポリマー(ホルムアルデヒドの単独重合体)であってもよく、開環重合などにより得られるコポリマー(トリオキサンと、エチレンオキサイド及び/又は1,3−ジオキソランとの共重合体など)であってもよい。また、ポリアセタール系樹脂の末端は封鎖され安定化されていてもよい。ポリアセタール系樹脂では、例えば、オキシメチレン単位の水素原子、末端を封鎖したアルコキシ基(特にメトキシ基)の水素原子、特にオキシメチレン単位の水素原子が活性水素原子を構成する。また、ポリアセタール系樹脂では、前記樹脂(i)として不飽和結合を導入する場合、残存するヒドロキシル基などを反応性基(B)として利用してもよい。
【0080】
(3b)ポリフェニレンエーテル系樹脂
ポリフェニレンエーテル系樹脂には、2,6−ジメチルフェニレンオキサイドを主成分とする種々の樹脂、例えば、2,6−ジメチルフェニレンオキサイドとフェノール類との共重合体、スチレン系樹脂をブレンド又はグラフトした変性ポリフェニレンエーテル系樹脂などが含まれる。その他の変性ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、ポリフェニレンエーテル/ポリアミド系、ポリフェニレンエーテル/飽和ポリエステル系、ポリフェニレンエーテル/ポリフェニレンスルフィド系、ポリフェニレンエーテル/ポリオレフィン系などが挙げられる。スチレン系樹脂をブレンドしている場合、ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対するスチレン系樹脂の割合は、例えば、2〜150重量部、好ましくは3〜100重量部、さらに好ましくは5〜50重量部程度であってもよい。ポリフェニレンエーテル系樹脂では、例えば、ベンゼン環に結合するメチル基の水素原子が活性水素原子を構成する。
【0081】
(3c)ポリスルフィド系樹脂(ポリチオエーテル系樹脂)
ポリスルフィド系樹脂は、ポリマー鎖中にチオ基(−S−)を有する樹脂であれば特に限定されない。このような樹脂としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリジスルフィド樹脂、ポリビフェニレンスルフィド樹脂、ポリケトンスルフィド樹脂、ポリチオエーテルスルホン樹脂などが例示できる。また、ポリスルフィド系樹脂は、ポリ(アミノフェニレンスルフィド)のようにアミノ基などの置換基を有していてもよい。好ましいポリスルフィド系樹脂はポリフェニレンスルフィド樹脂である。ポリスルフィド系樹脂では、主鎖中のチオ基が活性硫黄原子を構成する。
【0082】
(3d)ポリエーテルケトン系樹脂
ポリエーテルケトン系樹脂には、ジハロゲノベンゾフェノン(ジクロロベンゾフェノンなど)とジヒドロベンゾフェノンとの重縮合により得られるポリエーテルケトン樹脂、ジハロゲノベンゾフェノンとヒドロキノンとの重縮合により得られるポリエーテルエーテルケトン樹脂などが例示できる。
【0083】
(4)ポリカーボネート系樹脂
ポリカーボネート系樹脂としては、脂肪族ポリカーボネート系樹脂であってもよいが、通常、芳香族ポリカーボネート系樹脂、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物(ビスフェノールA、ビスフェノールSなどのビスフェノール化合物など)と、ホスゲン又は炭酸ジエステル(ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネート、ジメチルカーボネートなどのジアルキルカーボネートなど)との反応により得られる芳香族ポリカーボネートなどが使用できる。ポリカーボネート系樹脂では、前記樹脂(i)として不飽和結合を導入する場合、残存するヒドロキシル基などを反応性基(B)として利用してもよい。
【0084】
(5)ポリイミド系樹脂
ポリイミド系樹脂には、熱可塑性ポリイミド系樹脂、例えば、芳香族テトラカルボン酸又はその無水物(ベンゾフェノンテトラカルボン酸など)と、芳香族ジアミン(ジアミノジフェニルメタンなど)との反応で得られるポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂などが含まれる。ポリイミド系樹脂では、前記樹脂(i)として不飽和結合を導入する場合、残存するカルボキシル基や酸無水物基、アミノ基、イミノ基などを反応性基(B)として利用できる。
【0085】
(6)ポリスルホン系樹脂
ポリスルホン系樹脂には、ジハロゲノジフェニルスルホン(ジクロロジフェニルスルホンなど)とビスフェノール類(ビスフェノールA又はその金属塩など)との重縮合により得られるポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂(商品名:RADEL)などが例示できる。
【0086】
(7)ポリウレタン系樹脂
ポリウレタン系樹脂は、ジイソシアネート類とポリオール類と必要により鎖伸長剤との反応により得ることができる。ジイソシアネート類としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート類、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート類、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ジイソシアネート類などが例示できる。ジイソシアネート類として、アルキル基(例えば、メチル基)が主鎖又は環に置換した化合物を使用してもよい。
【0087】
ジオール類としては、ポリエステルジオール(アジピン酸などのC4−12脂肪族ジカルボン酸成分、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのC2−12脂肪族ジオール成分、ε−カプロラクトンなどのC4−12ラクトン成分などから得られるポリエステルジオールなど)、ポリエーテルジオール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシテトラメチレングリコール、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加体など)、ポリエステルエーテルジオール(ジオール成分の一部として上記ポリエーテルジオールを用いたポリエステルジオール)などが利用できる。
【0088】
さらに、鎖伸長剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのC2−10アルキレンジオールの他、ジアミン類も使用できる。ジアミン類としては、脂肪族ジアミン類、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタンなどの炭素数2〜10程度の直鎖又は分岐鎖状アルキレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレントリアミンなどの直鎖又は分岐鎖状ポリアルキレンポリアミンなど;脂環族ジアミン類、例えば、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなど;芳香族ジアミン類、例えば、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなどが例示できる。
【0089】
ポリウレタン系樹脂では、例えば、ジイソシアネート類の主鎖又は環に結合するアルキル基の水素原子(特に、ベンジル位の水素原子)、ポリオール類やポリオキシアルキレングリコールのアルキレン基の水素原子、鎖伸長剤のアミノ基の水素原子などが活性水素原子を構成する。
【0090】
また、ポリウレタン系樹脂では、前記樹脂(i)として不飽和結合を導入する場合、例えば、残存するヒドロキシル基、アミノ基、イソシアネート基などを反応性基(B)として利用してもよく、また、前記樹脂(ii)として不飽和結合を導入する場合、前記不飽和多価カルボン酸(マレイン酸など)や、前記不飽和多価アルコール(2−ブテン−1,4−ジオールなど)などを共重合成分の一部として用いてもよい。
【0091】
(8)ポリオレフィン系樹脂
ポリオレフィン系樹脂には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(メチルペンテン−1)などのオレフィンの単独又は共重合体、オレフィンと共重合性単量体との共重合体(エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)が挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は単独で又は二種以上組合せて使用できる。
【0092】
好ましいポリオレフィン系樹脂には、プロピレン含量が50重量%以上(特に75〜100重量%)のポリプロピレン系樹脂、例えば、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン共重合体などが含まれる。また、ポリオレフィン系樹脂は結晶性であるのが好ましい。
【0093】
ポリオレフィン系樹脂では、例えば、ポリオレフィンの主鎖を構成するメチレン基の水素原子、前記主鎖から分岐するメチル基の水素原子などが活性水素原子を構成する。
【0094】
(9)ハロゲン含有樹脂
ハロゲン含有樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体などの塩素含有ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンと共重合性単量体との共重合体などのフッ素含有ビニル系樹脂などが例示できる。好ましいハロゲン含有樹脂は、フッ素含有ビニル系樹脂(例えば、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデンなど)である。
【0095】
(10)スチレン系樹脂
スチレン系樹脂としては、スチレン系単量体の単独又は共重合体(ポリスチレン、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−α−メチルスチレン共重合体など)、スチレン系単量体と共重合性単量体との共重合体(スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体などのスチレン共重合体;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−アクリル酸エステル−スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体(ACS樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)、アクリロニトリル−酢酸ビニル−スチレン共重合体(AXS樹脂)などのスチレン系グラフト共重合体など)などが挙げられる。
【0096】
(11)(メタ)アクリル系樹脂
(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体、(メタ)アクリル系単量体と共重合性単量体との共重合体などが挙げられる。(メタ)アクリル系単量体には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸C1−10アルキルエステル、メタクリル酸シクロヘキシルなどのメタクリル酸C5−10シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸C6−10アリールエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシC2−10アルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどが挙げられる。共重合性単量体には、酢酸ビニル、塩化ビニルなどのビニル系単量体、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体などが挙げられる。
【0097】
(メタ)アクリル系樹脂では、前記樹脂(i)として不飽和結合を導入する場合、反応性基(B)を有する単量体を共重合成分として用いることにより、前記反応性基(B)を導入できる。
【0098】
(12)熱可塑性エラストマー
熱可塑性エラストマーには、ポリアミド系エラストマー(ポリアミドを硬質相とし、脂肪族ポリエーテルを軟質相とする共重合体)、ポリエステル系エラストマー(ポリアルキレンアリレートを硬質相とし、脂肪族ポリエーテルや脂肪族ポリエステルを軟質相とする共重合体)、ポリウレタン系エラストマー(短鎖グリコールのポリウレタンを硬質相とし、脂肪族ポリエーテルや脂肪族ポリエステルを軟質相とする共重合体、例えば、ポリエステルウレタンエラストマー、ポリエーテルウレタンエラストマーなど)、ポリスチレン系エラストマー(ポリスチレンブロックを硬質相とし、ジエン重合体ブロック又はその水素添加ブロックを軟質相とするブロック共重合体)、ポリオレフィン系エラストマー(ポリスチレン又はポリプロピレンを硬質相とし、エチレン−プロピレンゴムやエチレン−プロピレン−ジエンゴムを軟質相とするエラストマー、結晶化度の異なる硬質相と軟質相とで構成されたオレフィン系エラストマーなど)、ポリ塩化ビニル系エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマーなどが含まれる。脂肪族ポリエーテルとしては、ポリエステル系樹脂およびポリウレタン系樹脂の項で述べた(ポリ)オキシC2−4アルキレングリコール類(特にポリオキシエチレングリコール)などが使用でき、脂肪族ポリエステルとしては、ポリウレタン系樹脂の項で述べたポリエステルジオールなどが使用できる。これらの熱可塑性エラストマーは単独で又は二種以上組合せて使用できる。
【0099】
熱可塑性エラストマーがブロック共重合体であるとき、ブロック構造は特に制限されず、トリブロック構造、マルチブロック構造、星形ブロック構造などであってもよい。
【0100】
好ましい熱可塑性エラストマーには、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマーが含まれる。
【0101】
熱可塑性エラストマーでは、例えば、軟質相を構成するオキシアルキレン単位の水素原子が活性水素原子を構成してもよい。
【0102】
また、ビニル重合系樹脂[例えば、(メタ)アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体など)及びスチレン系樹脂(ポリスチレン;AS樹脂などのスチレン共重合体;HIPS,ABS樹脂などのスチレン系グラフト共重合体など]では、2官能以上の多官能重合性化合物(例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなど)と構成モノマーとを共重合することにより架橋してもよい。
【0103】
[ゴム]
分散相を構成する加硫ゴムは、未加硫ゴムを加硫することによって得られる。前記ゴムは、特に制限されず、種々のゴムが使用できる。
【0104】
ゴムとしては、ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、アクリル系ゴム、フッ素ゴム、シリコーン系ゴム(シリコーンゴム)、ウレタン系ゴム、エピクロロヒドリンゴム(エピクロロヒドリン単独重合体CO、エピクロロヒドリンとエチレンオキサイドとの共重合体ECO、アリルグリシジルエーテルをさらに共重合させた共重合体など)、クロロスルホン化ポリエチレン、プロピレンオキシドゴム(GPO)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EAM)、ポリノルボルネンゴム、及びこれらの変性ゴム(酸変性ゴムなど)などが例示できる。これらのゴムは単独で又は二種以上組合せて使用できる。これらのゴムのうち、通常、ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、アクリル系ゴム、フッ素ゴム、シリコーン系ゴム、ウレタン系ゴムなどが実用的な観点から広く使用される
ジエン系ゴムには、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、イソブチレンイソプレンゴム(ブチルゴム)(IIR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)などのジエン系単量体の重合体;例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム)(NBR)、ニトリルクロロプレンゴム(NCR)、ニトリルイソプレンゴム(NIR)、アクリロニトリルイソプレンブタジエンゴム(NBIR)などのアクリロニトリル−ジエン共重合ゴム;スチレンブタジエンゴム(SBR、例えば、スチレンとブタジエンとのランダム共重合体、スチレンブロックとブタジエンブロックとで構成されたSBブロック共重合体など)、スチレンクロロプレンゴム(SCR)、スチレンイソプレンゴム(SIR)などのスチレン−ジエン共重合ゴムなどが含まれる。ジエン系ゴムには、水添ゴム、例えば、水素添加ニトリルゴム(HNBR)なども含まれる。なお、スチレン−ジエン共重合ゴムにおいて、スチレン成分の割合は、例えば、共重合体を構成するモノマー換算で、10〜80モル%、好ましくは20〜70モル%、さらに好ましくは30〜60モル%程度であってもよい。
【0105】
オレフィン系ゴムとしては、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDMなど)などが例示できる。
【0106】
アクリル系ゴムには、アクリル酸アルキルエステルを主成分とするゴム、例えば、アクリル酸アルキルエステルと塩素含有架橋性単量体との共重合体ACM、アクリル酸アルキルエステルとアクリロニトリルとの共重合体ANM、アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基及び/又はエポキシ基含有単量体との共重合体、エチレンアクリルゴムなどが例示できる。
【0107】
フッ素ゴムとしては、フッ素含有単量体を用いたゴム、例えば、フッ化ビニリデンとパーフルオロプロペンと必要により四フッ化エチレンとの共重合体FKM、四フッ化エチレンとプロピレンとの共重合体、四フッ化エチレンとパーフルオロメチルビニルエーテルとの共重合体FFKMなどが例示できる。
【0108】
シリコーン系ゴム(Q)は、式:RaSiO(4−a)/2で表される単位で構成されたオルガノポリシロキサンである。式中、Rは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのC1−10アルキル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基などのハロゲン化C1−10アルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基などのC2−10アルケニル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基などのC6−12アリール基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC3−10シクロアルキル基、ベンジル基、フェネチル基などのC6−12アリール−C1−4アルキル基などが挙げられる。式中、係数aは1.9〜2.1程度である。好ましいRは、メチル基、フェニル基、アルケニル基(ビニル基など)、フルオロC1−6アルキル基である。
【0109】
シリコーン系ゴムの分子構造は、通常、直鎖状であるが、一部分岐構造を有していてもよく、分岐鎖状であってもよい。シリコーンゴムの主鎖は、例えば、ジメチルポリシロキサン鎖、メチルビニルポリシロキサン鎖、メチルフェニルポリシロキサン鎖、これらのシロキサン単位の共重合体鎖[ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン共重合体鎖、ジメチルシロキサン−メチルフェニルシロキサン共重合体鎖、ジメチルシロキサン−メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサン共重合体鎖、ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン−メチルフェニルシロキサン共重合体鎖など]で構成できる。シリコーンゴムの両末端は、例えば、トリメチルシリル基、ジメチルビニルシリル基、シラノール基、トリC1−2アルコキシシリル基などであってもよい。
【0110】
シリコーン系ゴム(Q)には、例えば、メチルシリコーンゴム(MQ)、ビニルシリコーンゴム(VMQ)、フェニルシリコーンゴム(PMQ)、フェニルビニルシリコーンゴム(PVMQ)、フッ化シリコーンゴム(FVMQ)などが含まれる。さらに、シリコーン系ゴムには、上記高温加硫型HTV(High Temperature Vulcanizable)の固形ゴムに限らず、室温加硫型RTV(Room Temperature Vulcanizable)又は低温加硫型LTV(Low Temperature Vulcanizable)シリコーンゴム、例えば、液状又はペースト状ゴムも含まれる。
【0111】
シリコーンゴムが不飽和結合を有する場合、未加硫のシリコーンゴムを構成するシリコーンゴムの不飽和結合の数は、1分子当たり、平均2個以上(例えば、2〜10個)、好ましくは2.5〜7個、より好ましくは2.5〜5個(例えば、2.5〜4個)程度であってもよい。
【0112】
シリコーンゴム又はその組成物中のポリオルガノシロキサンとしては、二重結合濃度が2〜540ミリモル/kg、好ましくは3〜300ミリモル/kg、さらに好ましくは4〜100ミリモル/kg程度のポリオルガノシロキサンが使用される。ポリオルガノシロキサンは、単一のポリオルガノシロキサンで構成してもよく、複数のポリオルガノシロキサンの混合物(例えば、重合度が異なる複数のポリマーの混合物)であってもよい。
【0113】
複数のポリオルガノシロキサンを用いる場合、上記二重結合の濃度は、混合物を構成する複数のポリオルガノシロキサンの二重結合濃度と組成割合などから算出できる。ポリオルガノシロキサンの平均重合度は、適当に選択でき、重合度の低いポリオルガノシロキサンでは、例えば、平均重合度3〜500、好ましくは3〜200程度であってもよく、重合度の高いポリオルガノシロキサンでは、例えば、平均重合度500〜12000、好ましくは1000〜7000程度であってもよい。重合度の異なる複数のポリオルガノシロキサンを用いる場合、低重合度のポリオルガノシロキサンと高重合度のポリオルガノシロキサンとの割合は、加硫により生成するシリコーンゴム硬化物の特性の点から、前者/後者(重量比)=1/99〜50/50、好ましくは1/99〜10/90、さらに好ましくは2/98〜7/93程度である。
【0114】
さらに、シリコーンゴム組成物において、しばしば、ケイ素原子に直接結合した水素原子を一分子中に2個以上有するポリオルガノハイドロジエンシロキサンを添加することがある。このポリオルガノハイドロジエンシロキサンの添加量は、主たる成分であるポリオルガノシロキサン100重量部に対して、4重量部以下(例えば、0.1〜4重量部)、好ましくは3重量部以下、さらに好ましくは2重量部以下である。
【0115】
ウレタンゴム(U)としては、例えば、ポリエステル型ウレタンエラストマー、ポリエーテル型ウレタンエラストマーなどが含まれる。
【0116】
変性ゴムとしては、酸変性ゴム、例えば、カルボキシル化スチレンブタジエンゴム(X−SBR)、カルボキシル化ニトリルゴム(X−NBR)、カルボキシル化エチレンプロピレンゴム(X−EP(D)M)などのカルボキシル基又は酸無水物基を有するゴムが含まれる。
【0117】
なお、前記ゴム成分は、粉粒体の形態で使用してもよい。このゴム粉粒体の形状は、特に制限されず、例えば、無定形状、球状、楕円形状、棒状などであってもよい。ゴム粉粒体の平均粒子径は、例えば、0.1〜800μm、好ましくは0.5〜500μm、さらに好ましくは0.8〜300μm程度である。
【0118】
前記連続相(又は樹脂)と前記分散相(又は未加硫ゴム又は加硫ゴム)との割合は、複合分散体の特性を有効に発現できる範囲で適宜に設定することができ、例えば、連続相/分散相(重量比)=25/75〜98/2、好ましくは30/70〜90/10、さらに好ましくは40/60〜80/20(例えば、40/60〜65/35)程度であってもよい。
【0119】
[加硫剤]
加硫剤は、未加硫ゴムを加硫(又は架橋)するだけでなく、樹脂を活性化して(例えば、前記架橋性樹脂の架橋性基を活性化したり、活性原子を引き抜き、ラジカル化などにより活性化したりして)、樹脂とゴムとの接着性を向上させ、樹脂相とゴム相とを接合できる。加硫剤としては、前記樹脂やゴムの種類に応じて、ラジカル発生剤や硫黄が使用でき、前記ラジカル発生剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物、硫黄含有有機化合物などが例示できる。なお、本発明において、硫黄は、前記不飽和結合を有する樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂などに対して有効である場合が多い。前記加硫剤は単独で又は二種以上組合せて使用できる。
【0120】
加硫剤は、未加硫ゴム及び樹脂のうち少なくともいずれか一方の成分に添加してもよく、双方の成分に添加してもよい。
【0121】
有機過酸化物としては、過酸化ジアシル類(ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、4−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイドなど)、過酸化ジアルキル類(ジ−t−ブチルぺルオキシド、2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルへキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルへキセン−3、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルペルオキシドなど)、過酸化アルキル類(t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイドなど)、アルキリデンペルオキシド類(エチルメチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなど)、過酸エステル類(過酢酸t−ブチル、過ピバリン酸t−ブチルなど)などが挙げられる。
【0122】
アゾ化合物には、アゾビスイソブチロニトリルなどが含まれる。硫黄含有有機化合物としては、チウラム類(テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、モルフォリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィドなど)などが含まれる。
【0123】
硫黄としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などが例示できる。また、硫黄には、一塩化硫黄、二塩化硫黄などの塩化硫黄も含まれる。
【0124】
樹脂相とゴム相との接合において光照射可能であれば、ラジカル発生剤として光重合開始剤も利用できる。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン又はその誘導体(3,3’ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4,4−ジメトキシベンゾフェノンなど)、アルキルフェニルケトン又はその誘導体(アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(モルホリノフェニル)−ブタノンなど)、アントラキノン又はその誘導体(2−メチルアントラキノンなど)、チオキサントン又はその誘導体(2−クロロチオキサントン、アルキルチオキサントンなど)、ベンゾインエーテル又はその誘導体(ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテルなど)、ホスフィンオキシド又はその誘導体などが例示できる。さらに、ラジカル発生剤には、過硫酸塩(過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなど)も含まれる。
【0125】
これらの化合物のうち好ましい加硫剤は有機過酸化物である。加硫剤は、少なくとも未加硫ゴムが含有するのが好ましく、通常、未加硫ゴムが含有する場合が多い。
【0126】
加硫剤の割合は、例えば、未加硫ゴム及び/又は樹脂100重量部に対して、0.1〜15重量部程度の範囲から選択でき、通常、0.1〜10重量部程度、好ましくは0.1〜8重量部(例えば、1〜7重量部)程度である。
【0127】
[加硫活性剤]
加硫活性剤は、樹脂とゴムとの濡れを向上させて均一に接合できるとともに、加硫活性剤の種類によっては、加硫剤(例えば、ラジカル発生剤など)による未加硫ゴムの加硫(又は架橋)に伴って樹脂とゴムとを架橋して樹脂/ゴム間の架橋密度を向上させ、樹脂とゴムとを強固に直接接合又は接着できる。加硫活性剤は、樹脂(又は樹脂組成物)及び未加硫ゴム(又は未加硫ゴム組成物)のうちいずれか一方の成分に添加してもよく、双方の成分に添加してもよい。
【0128】
前記加硫活性剤としては、分子中に不飽和結合(炭素−炭素二重結合、炭素−窒素二重結合、炭素−酸素二重結合、炭素−硫黄二重結合など)を含有する化合物が挙げられる。前記不飽和結合含有化合物は、使用する加硫剤(例えば、ラジカル発生剤など)などに応じて選択でき、重合性不飽和結合を有する有機化合物〔例えば、ビニル系単量体(ジビニルベンゼンなど)、アリル系単量体(ジアリルフタレート、トリアリルホスフェート、トリアリル(イソ)シアヌレートなど)、(メタ)アクリル系単量体など〕、マレイミド化合物などが例示できる。これらの加硫活性剤は単独で又は二種以上組合せて使用できる。
【0129】
(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、二官能性(メタ)アクリレート類[エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのC2−10アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリC2−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのC2−4アルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレートなど]、三官能性又は多官能性(メタ)アクリレート類[グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなど]などが例示できる。
【0130】
マレイミド系化合物としては、複数のマレイミド基を有するマレイミド化合物が挙げられ、ポリアミンと無水マレイン酸との反応により得ることができる。マレイミド系化合物には、例えば、芳香族ビスマレイミド(N,N’−1,3−フェニレンジマレイミド、N,N’−1,4−フェニレンジマレイミド、N,N’−3−メチル−1,4−フェニレンジマレイミド、4,4’−ビス(N,N’−マレイミド)ジフェニルメタン、4,4’−ビス(N,N’−マレイミド)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(N,N’−マレイミド)ジフェニルエーテルなど)、脂肪族ビスマレイミド(N,N’−1,2−エチレンビスマレイミド、N,N’−1,3−プロピレンビスマレイミド、N,N’−1,4−テトラメチレンビスマレイミドなど)などが例示できる。
【0131】
好ましい加硫活性剤には、一分子中に複数(例えば、2〜6個、特に3〜6個程度)の炭素−炭素二重結合(重合性不飽和結合)を有する化合物、例えば、トリアリル(イソ)シアヌレート、二官能乃至多官能性(メタ)アクリレート(特に三官能性又は多官能性(メタ)アクリレート)、芳香族マレイミド化合物(例えば、ビスマレイミドなど)などが含まれる。
【0132】
加硫活性剤の使用量は、例えば、樹脂及び/又は未加硫ゴム100重量部に対して、0.1〜10重量部程度、好ましくは0.1〜5重量部程度、さらに好ましくは0.1〜3重量部程度の範囲から選択できる。
【0133】
また、未加硫ゴムが加硫剤及び加硫活性剤を含有する場合、加硫剤と加硫活性剤との割合(重量比)は、前者/後者=2/98〜70/30、好ましくは10/90〜60/40(例えば、20/80〜55/45)、さらに好ましくは30/70〜50/50程度であってもよい。このような割合で加硫活性剤を使用すると、未加硫ゴムを加硫剤に対して有効に活性化でき、樹脂とゴムとを強固に接着できる場合が多い。
【0134】
[ポリアルケニレン]
ポリアルケニレンは、ゴム成分(又は樹脂成分)の流動性を高めるため、樹脂(又は未加硫ゴム)に対するゴム(又は樹脂)の分散性を向上でき、樹脂相とゴム相との接着性を向上できる。また、ポリアルケニレンの添加(特に、ゴム成分への添加)により、前記複合分散体の製造プロセスで離型性を向上できる。ポリアルケニレンは、樹脂及び未加硫ゴムのうちいずれか一方の成分に添加してもよく、双方の成分に添加してもよい。
【0135】
ポリアルケニレンとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリペンテナマー、ポリヘプテナマー、ポリオクテナマー(ポリオクテニレン)、ポリ(3−メチルオクテナマー)、ポリデセナマー、ポリ(3−メチルデセナマー)、ポリドデセナマーなどのポリC4−15アルケニレンなどが例示できる。なお、前記ポリC4−15アルケニレンは、シクロオレフィン類(例えば、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロデセン、シクロドデセンなどの置換基を有していてもよいC5−20シクロオレフィンなど)のメタセシス重合、ポリアルケニレン(例えば、ポリブタジエンなど)の部分水素添加などにより得てもよい。ポリアルケニレンは、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0136】
ポリアルケニレンの添加割合は、例えば、樹脂又は未加硫ゴム100重量部に対して0.5〜40重量部、好ましくは1〜30重量部、さらに好ましくは2〜20重量部程度であってもよい。
【0137】
また、未加硫ゴムが加硫剤及びポリアルケニレンを含有する場合、加硫剤とポリアルケニレンとの割合(重量比)は、前者/後者=2/98〜45/55、好ましくは2/98〜40/60、さらに好ましくは2/98〜35/65(例えば、5/95〜35/65)程度であってもよい。このような割合で加硫剤とポリアルケニレンとを添加することにより、樹脂に対するゴムの接着性を効率的に向上できる場合が多い。
【0138】
さらに、未加硫ゴムが加硫剤を含有し、樹脂(例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂)がポリアルケニレンを含有する場合、加硫剤とポリアルケニレンの割合(重量比)は、前者/後者=2/98〜50/50、好ましくは3/97〜40/60、さらに好ましくは5/95〜30/70(例えば、5/95〜20/80)程度であってもよい。
【0139】
[加硫助剤]
本発明では、さらに加硫助剤を用いてもよい。加硫助剤は、未加硫ゴム(又は未加硫ゴム組成物)及び樹脂(又は樹脂組成物)のうち少なくともいずれか一方の成分に添加してもよく、双方の成分に添加してもよい。
【0140】
加硫助剤は、樹脂やゴムの種類に応じて選択でき、例えば、前記縮合系熱可塑性樹脂のオリゴマー[例えば、数平均分子量1000以下(例えば、100〜1000)程度のオリゴマーなど]、ポリアミン類(例えば、前記(2)ポリエステル系樹脂の項に記載のポリアミン類など)、ポリオール類(例えば、前記(2)ポリエステル系樹脂の項に記載のポリオール類など)、一分子中にカルボキシル基、酸無水物基又はイソシアネート基を1個以上有する化合物[例えば、ジカルボン酸(前記ポリアミド系樹脂又はポリエステル系樹脂の項に記載の脂肪族又は芳香族ジカルボン酸、前記樹脂(ii)の項に記載の不飽和ジカルボン酸など)などのモノ又は多価カルボン酸、ジカルボン酸無水物(無水マレイン酸、無水フタル酸などの脂肪族又は芳香族ジカルボン酸)などの多価カルボン酸無水物、ジイソシアネート(前記ポリウレタン系樹脂の項に記載のジイソシアネート類など)などの(ポリ)イソシアネート化合物など]、複数のアルデヒド基を有する化合物、エポキシ化合物、窒素含有樹脂(アミノ樹脂など)、メチロール基又はアルコキシメチル基を有する化合物などが例示できる。これらの加硫助剤は、単独で又は2種以上を組合せて使用してもよい。
【0141】
好ましい加硫助剤は、分子量1000以下であって、かつ前記式(1)で表される活性原子のうち、活性水素原子を一分子中に平均2個以上有する化合物、例えば、前記縮合系熱可塑性樹脂の数平均分子量1000以下のオリゴマー(例えば、前記ポリアミド系樹脂のオリゴマー、前記ポリエステル系樹脂のオリゴマーなど)、一分子中にカルボキシル基、酸無水物基又はイソシアネート基を1個以上有する化合物、前記ポリアミン類などが例示できる。
【0142】
加硫助剤の割合は、例えば、未加硫ゴム及び/又は樹脂100重量部に対し、0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部程度である。
【0143】
[シランカップリング剤]
本発明では、樹脂相と加硫ゴム相との密着性を向上させるために、シランカップリング剤を含んでいてもよい。シランカップリング剤は、未加硫ゴム(又は、未加硫ゴム組成物)及び樹脂(又は、樹脂組成物)のうちいずれか一方の成分に添加すればよく、双方の成分に添加してもよい。
【0144】
シランカップリング剤としては、反応性基(例えば、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ビニル基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、イソシアネート基、(メタ)アクリロイル基など)を有する化合物などが含まれる。
【0145】
例えば、アルコキシシラン(例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシランなどのトリC1−4アルコキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどテトラC1−4アルコキシシラン);
ビニル基を有するアルコキシシラン(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニルトリC1−4アルコキシシラン);
アミノ基を有するアルコキシシラン(例えば、2−アミノエチルトリメトキシシラン、2−アミノエチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどアミノC2−4アルキルトリC1−4アルコキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルエトキシシランなどのアミノジC2−4アルキルジC1−4アルコキシシラン);
エポキシ基を有するアルコキシシラン(例えば、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランなどのグリシジルオキシC2−4トリC1−4アルコキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシランなどの(エポキシシクロアルキル)C2−4アルキルトリC1−4アルコキシシラン);
メルカプト基を有するアルコキシシラン(例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトC1−4アルキルトリC1−4アルコキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのメルカプトジC1−4アルキルジC1−4アルコキシシラン);
カルボキシル基を有するアルコキシシラン(例えば、カルボキシメチルトリメトキシシラン、カルボキシメチルトリエトキシシラン、カルボキシエチルトリメトキシシラン、カルボキシプロピルトリメトキシシランなどのカルボキシC1−4アルキルトリC1−4アルコキシシラン);
イソシアネート基を有するアルコキシシラン(例えば、イソシアナトエチルトリメトキシシラン、イソシアナトエチルトリエトキシシラン、イソシアナトプロピルトリメトキシシランなどのイソシアナトC1−4アルキルトリC1−4アルコキシシラン);
(メタ)アクリロイル基を有するアルコキシシラン(例えば、N−(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン)などが挙げられる。
【0146】
シランカップリング剤の使用量は、通常、樹脂とゴムとの接着を促進可能な量、例えば、ゴム又は樹脂100重量部に対して、シランカップリング剤1〜10重量部程度、好ましくは2〜8重量部程度、さらに好ましくは2〜6重量部程度の範囲から選択できる。
【0147】
[他の添加剤]
前記樹脂(又は樹脂組成物)及び/又はゴム(又はゴム組成物)には、必要に応じて、種々の添加剤、例えば、フィラー、可塑剤又は軟化剤、共加硫剤(酸化亜鉛などの金属酸化物など)、老化防止剤(熱老化防止剤、オゾン劣化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、粘着付与剤、滑剤、着色剤(酸化チタン、カーボンブラックなど)、発泡剤、分散剤、難燃剤、帯電防止剤などを配合してもよい。
【0148】
前記フィラー(又は補強剤)には、例えば、粉粒状フィラー又は補強剤(マイカ、クレー、タルク、ケイ酸類、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カーボンブラック、フェライトなど)、繊維状フィラー又は補強剤(レーヨン、ナイロン、ビニロン、アラミドなどの有機繊維、炭素繊維、ガラス繊維などの無機繊維)などが含まれる。
【0149】
可塑剤としては、樹脂組成物又はゴム組成物に可塑性を付与可能である限り特に制限されず、慣用の可塑剤(フタル酸エステル、脂肪族ジカルボン酸エステル、ポリエステル系高分子可塑剤など)などが使用できる。また、ゴム組成物においては、慣用の軟化剤(リノール酸、オレイン酸、ひまし油、パーム油などの植物油;パラフィン、プロセスオイル、エキステンダーなどの鉱物油など)などが使用できる。
【0150】
滑剤としては、ワックス(例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックスなど)、脂肪酸(ステアリン酸など)、脂肪族アルコール類(ステアリルアルコールなど)、脂肪酸誘導体(ステアリン酸ブチルなどの脂肪酸エステル、ステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛などの脂肪酸金属塩など)などが例示できる。
【0151】
発泡剤としては、炭酸水素塩(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウムなど)などの無機系発泡剤;p,p−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジニトロソペンタメチレンテトラミンなどの有機系発泡剤などが例示できる。
【0152】
フィラーの含有量は、樹脂又はゴム100重量部に対して、例えば、0〜300重量部程度、好ましくは0〜200重量部(例えば、0〜100重量部)程度、さらに好ましくは0〜50重量部(例えば、0〜10重量部)程度であってもよい。可塑剤又は軟化剤の含有量は、樹脂又はゴム100重量部に対して、例えば、0〜200重量部程度、好ましくは0〜150重量部程度、さらに好ましくは0〜120重量部程度であってもよい。また、共加硫剤、老化防止剤、加工助剤又は滑剤、着色剤などの含有量は、有効量であればよく、例えば、共加硫剤の含有量は、樹脂又はゴム100重量部に対して、0〜20重量部程度、好ましくは0.5〜15重量部程度、さらに好ましくは1〜10重量部程度であってもよい。
【0153】
本発明の複合分散体は、樹脂相が連続相、加硫ゴム相が分散相を構成している。このような複合分散体では、樹脂の特性(剛性、強靱性などの機械的特性、耐熱性などの物理的特性など)を生かしつつ、加硫ゴムの特性(摩擦抵抗によるスリップ防止性、相手材に対する密着性、耐衝撃性など)を付与できる。
【0154】
複合分散体は、分散相が連続相に独立して分散した海島構造を有していてもよく、分散相の形状は、粒子状、楕円体状、球状、棒状、繊維状などであってもよい。分散相の好ましい形状は、球状であり、分散相は連続相に均一に分散しているのが好ましい。なお、分散相の平均粒子径としては、分散相の特性が発現できればよく、例えば、0.1〜1000μm、好ましくは1〜750μm、さらに好ましくは10〜500μm(例えば、50〜150μm)程度であってもよい。なお、ゴムとして架橋又は硬化粒子(加硫ゴム)を用いる場合には、前記分散相の平均粒子径は架橋又は硬化粒子の平均粒子径に対応している。
【0155】
さらに、分散相粒子は、複合分散体の表面に部分的に露出した状態で接合されていてもよい。このような複合分散体では、連続相である樹脂の特性(例えば、低い摩擦係数など)を有しつつ、表面にゴムの特性(例えば、高い柔軟性及び緩衝性など)を付与できる。
【0156】
また、得られた複合体は、前記複合分散体で構成されていればよく、複合分散体と他の成形体(例えば、樹脂成形体、加硫ゴム成形体など)とが、接触面で接合した複合体であってもよい。
【0157】
本発明の他の態様では、前述のように、特定の樹脂とゴムとの組合せで、複合分散体を構成することにより樹脂相とゴム相とを強固に直接接合できる。前記特定の組合せの具体例としては、例えば、下記(2a)〜(2d)の態様が例示できる。なお、これらの態様において、樹脂は、前記活性原子を有する樹脂であってもよく、また、樹脂及び/又は未加硫ゴムは、前記加硫活性剤やポリアルケニレンを含有していてもよい。
【0158】
(2a)樹脂と、加硫剤及び加硫活性剤を含む未加硫ゴムとの組合せであって、加硫剤と加硫活性剤との割合が、前記加硫活性剤の割合[例えば、加硫剤/加硫活性剤(重量比)=2/98〜70/30、好ましくは10/90〜60/40(例えば、20/80〜55/45)、さらに好ましくは30/70〜50/50程度]である組合せ
この態様(2a)の複合分散体では、樹脂がポリアミド系樹脂であり、未加硫ゴムが、未変性ゴム(例えば、NBR、SBR、HNBRなどのジエン系ゴム、EPDMなどのオレフィン系ゴム、FKMなどのフッ素ゴムなど)である複合分散体を含む。すなわち、本発明では、アミノ基とカルボキシル基との結合反応を利用することなく、加硫活性剤を前記割合で添加することにより、樹脂相とゴム相とを接着できる。
【0159】
(2b)樹脂(ポリアミド系樹脂など)と、加硫剤及びポリアルケニレンを含む未加硫ゴムとの組合せであって、加硫剤とポリアルケニレンとの割合が、前記ポリアルケニレンの割合[例えば、加硫剤/ポリアルケニレン(重量比)=2/98〜45/55、好ましくは2/98〜40/60、さらに好ましくは2/98〜35/65(例えば、5/95〜35/65)程度]である組合せ
この態様(2b)の複合分散体では、樹脂がポリアミド系樹脂であり、未加硫ゴムが、未変性ゴム(例えば、NBR、SBR、HNBRなどのジエン系ゴム、EPDMなどのオレフィン系ゴム、FKMなどのフッ素ゴムなど)である複合分散体を含む。この態様では、アミノ基とカルボキシル基との結合反応を利用することなく、前記特定の割合でポリアルケニレンを用いることにより、未加硫ゴムの流動性を向上させることができ、樹脂相とゴム相とを接着できる。
【0160】
(2c)樹脂と、シリコーン系未加硫ゴムとの組合せ
この態様(2c)の複合分散体としては、例えば、樹脂(ポリアミド系樹脂など)と、加硫活性剤やポリアルケニレンを含んでいてもよいシリコーン系ゴム(例えば、VMQ、PVMQ、FVMQなど)とが直接接合した複合分散体などが例示できる。すなわち、ゴム成分としてシリコーン系ゴムを使用すると、必ずしも、前記加硫活性剤を含有する樹脂や架橋性基を有する樹脂を使用しなくても、また、未加硫ゴムが特定の割合で加硫活性剤やポリアルケニレンを含有しなくても、樹脂相とゴム相とを強固に接合できる。
【0161】
(2d)ポリアルケニレンを含有する樹脂(例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂)と、加硫剤として硫黄又は硫黄含有有機化合物を含有している未加硫ゴムとの組合せ
この態様(2d)の複合分散体では、ポリアルケニレンを含有するポリフェニレンエーテル系樹脂と、加硫剤として硫黄又は硫黄含有有機化合物を含有する未加硫ゴムとが直接接合した複合分散体[特に、加硫剤とポリアルケニレンとの割合が、前記ポリアルケニレンの割合(例えば、加硫剤/ポリアルケニレン=2/98〜50/50、好ましくは3/97〜40/60、さらに好ましくは5/95〜30/70(例えば、5/95〜20/80)程度)である複合分散体]を含む。このような態様では、非有機過酸化物加硫であっても、ポリフェニレンエーテル系樹脂とゴムとの普遍的な組合せで連続相と分散相とを接着できる。
【0162】
[複合分散体の製造方法]
本発明では、樹脂とゴムとを混練することにより、樹脂で構成された樹脂相(連続相)と、未加硫ゴムが加硫した加硫ゴムで構成されたゴム相(分散相)とが直接接合した複合分散体を製造する。
【0163】
前記樹脂とゴムとの混練において使用するゴムは、未加硫ゴム又は加硫ゴムのいずれでもよいが、未加硫ゴムを使用する場合、通常、混練時に加硫が進行する。混練において、加硫剤は少なくとも未加硫ゴムに含まれていればよく、また、樹脂及び加硫ゴムの少なくとも一方を加硫活性剤やポリアルケニレンを含む組成物で形成してもよい。加硫剤及び/又は加硫活性剤は、樹脂及び/又はゴムに予め添加するのが好ましいが、必要に応じて混練過程で新たに添加してもよい。
【0164】
より具体的には、本発明の複合分散体は、例えば、加硫活性剤やポリアルケニレンを含有する樹脂(熱可塑性樹脂)と少なくとも加硫剤を含有する未加硫ゴム(未加硫ゴム組成物)とを加熱下に溶融混練し、冷却固化させることにより製造できる。混練の初期においては未加硫ゴム及び樹脂はいずれも可塑性を示すが、加硫の進行とともに未加硫ゴムは可塑性を失い、やがて未加硫ゴムは加硫ゴムとなって樹脂相中に分散し分散相を形成する。
【0165】
また、本発明の複合分散体は、樹脂と加硫ゴムとを混練して得ることもできる。この方法では、通常、加硫ゴムは予め冷凍粉砕、加硫剤を用いる重合方法により、加硫した粉粒体の形態で使用される。前記粉粒体の形状は、分散相に適した形状であれば特に制限されず、例えば、球状、楕円状、棒状などであってもよい。また、この方法において、樹脂(及び必要に応じて加硫ゴム)を、加硫剤、加硫活性剤、ポリアルケニレンなどを含む組成物で形成してもよい。
【0166】
混練は慣用の混練機(例えば、押出機、ニーダーなど)を用いて行うことが出来る。混練温度は、使用する樹脂の種類に応じて適宜設定でき、例えば50〜350℃、好ましくは100〜300℃、さらに好ましくは150〜250℃(例えば170〜230℃)程度である。
【0167】
溶融混練物の冷却固化は、適当な方法、例えば、押出機からストランドとして押出した溶融混練物を、水冷する方法などにより行うことができる。前記冷却固化した混練物は、ペレタイザーによりペレット(及び切断)加工されてもよい。
【0168】
本発明の複合分散体は、種々の成形品を形成でき、上記のようにして得られた複合分散体は、通常、加工用原料(例えば、ペレット)として保管された後、適当な加工方法(例えば射出成形、圧縮成形など)で再度加熱溶融させ、用途に即して成形される。複合分散体の再溶融温度は、複合分散体を構成する樹脂の種類によるが、例えば、50〜350℃、好ましくは100〜300℃、さらに好ましくは150〜250℃(例えば170〜230℃)程度である。
【0169】
なお、混練工程及び成形工程において、その加工温度がいずれも低温(例えば、150℃を下回る場合など)である場合には、使用する加硫剤や加硫活性剤の種類にもよるが、樹脂中に分散するゴムの加硫が十分に進まないなどの理由により、樹脂相とゴム相との接合が不十分となる事がある。そのため、成形工程における金型温度を150℃以上(例えば、150〜300℃)にする、あるいは、成形品を加熱炉などを用いて150℃以上で適当な時間加熱するなどして、ゴムの加硫や樹脂相とゴム相間の架橋を完結させてもよい。
【0170】
また、本発明の複合分散体で形成された成形品は、上記のように、ゴムと樹脂との混練工程と複合分散体の成形工程を分けて製造してもよく、両工程を複合させて製造してもよい。すなわち、ゴムと樹脂との混練後、溶融混合物を直接成形してもよい。このようにして得られる成形体としては、樹脂とゴムを混練する押出機から直接成形可能な異形品、例えば、フィルム、シート、チューブ、ロッド、レールなどが例示できる。
【0171】
このようにして得られた複合分散体は、樹脂相が連続相、未加硫ゴムの加硫により生成した加硫ゴムが分散相を構成した状態で強固に接合している。また、複合分散体の表面に、分散相粒子(加硫ゴム相)を部分的に露出できるため、樹脂とゴムとの特性を有効に発現できる。そのため、本発明の複合分散体は、種々の用途、例えば、自動車用部品(振動吸収ブッシュ、スプリングプレート、ラジエターマウントなど)、防振ゴム、バルブ、電気プラグなどの種々の部材として有利に利用できる。
【0172】
【発明の効果】
本発明では、特定の樹脂とゴムとを広い範囲で組み合わせても、樹脂で構成された連続相と、加硫ゴムで構成された分散相とが強固に接合した複合分散体を得ることができる。また、本発明では、簡便な方法により、樹脂相と加硫ゴム相とを接合できる。さらに、本発明では、樹脂相に加硫ゴム相を分散でき、かつ両相が強固に接合しているので、樹脂にゴムの特性を有効に付与できる。
【0173】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例では、以下の樹脂(又は樹脂組成物)及びゴム組成物を用いた。
【0174】
[樹脂(A)〜(F)]
樹脂A1〜A6
熱可塑製樹脂として、ポリアミド612(ヘキサメチレンジアミンとドデカンジカルボン酸の重縮合物)を製造し、下記の樹脂又は樹脂組成物(A1〜A6)を調製した。なお、MOPACPM3の計算は、下記基本単位に基づいて行った。
【0175】
NH2−(CH2)6−NH−C(=O)−(CH2)10−C(=O)−OH
樹脂(A1):
樹脂A1の調製:ヘキサメチレンジアミンとドデカンジカルボン酸の塩80重量%水溶液を窒素置換したオートクレーブ中で加圧(17.5kg/cm2(約1715kPa))下で加熱(220℃)し、窒素ガスと共に系内の水分を4時間要して系外に排出した。その後1時間を要して徐々に昇温(275℃)し水分の残渣を系外に排除した後オートクレーブの内圧を常圧に戻した。冷却後、ポリアミド612を得た。得られたポリマーは、分子量(Mn)20000〜25000、アミノ末端とカルボキシル末端の比率がほぼ1/1であり、加硫剤をラジカル発生剤とした場合の軌道相互作用エネルギー係数Sが0.006以上の活性水素の数は1分子あたり4個と計算された。このポリマーを単独で樹脂(A1)として用いた。
【0176】
樹脂(A2):
樹脂A2の調製:前記樹脂(A1)100重量部に対して、加硫活性剤(TRIM :トリメチロールプロパントリメタクリレート)3重量部を配合し、樹脂(A2)として用いた。
【0177】
樹脂(A3):
樹脂A3の調製:前記樹脂(A1)100重量部に対して、加硫活性剤(TRIM :トリメチロールプロパントリメタクリレート)3重量部、ポリオクテニレン(Degussa AG製 「Vestenamer 8012」)10重量部を配合し、樹脂(A3)として用いた。
【0178】
樹脂(A4):
樹脂A4の調製:前記樹脂(A1)と、後述する樹脂(A6)とを、1/1の重量比率で2軸押出機で混練し、分子量22000、アミノ末端とカルボキシル末端の比率がほぼ3/7のポリアミド612を得た。得られたポリマーは、加硫剤をラジカル発生剤とした場合の軌道相互作用エネルギー係数Sが0.006以上の活性水素原子は1分子あたり2.4個と計算された。このポリマーを樹脂(A4)として用いた。
【0179】
樹脂(A5):
樹脂A5の調製:前記樹脂(A4)100重量部に対して、加硫活性剤(TRIM :トリメチロールプロパントリメタクリレート)3重量部を配合し、樹脂(A5)として用いた。
【0180】
樹脂(A6):
樹脂A6の調製:ヘキサメチレンジアミンとドデカンジカルボン酸の塩80重量%水溶液に所定量のドデカンジカルボン酸を添加し、窒素置換したオートクレーブ中で加圧(17.5kg/cm2(約1715kPa))下に加熱(220℃)し、窒素ガスと共に系内の水分を4時間要して系外に排出した。その後1時間を要して徐々に昇温(275℃)し水分の残渣を系外に排除した後、オートクレーブの内圧を常圧に戻した。冷却後、ポリアミド612を得た。得られたポリマーは、分子量(Mn)約20000、アミノ末端とカルボキシル末端の比率がほぼ1/9であり、加硫剤をラジカル発生剤とした場合の軌道相互作用エネルギー係数Sが0.006以上の活性水素の数は1分子あたり0.8個と計算された。このポリマーを単独で樹脂(A6)として用いた。
【0181】
樹脂(B)
熱可塑性樹脂として、ポリアミド6を調製し、このポリアミド6に対して、加硫活性剤(TRIM :トリメチロールプロパントリメタクリレート)3重量部を配合し、樹脂(B)として用いた。なお、MOPACPM3の計算は、下記式に基づいて行った。
【0182】
NH2−(CH2)5−C(=O)−NH−(CH2)5−C(=O)−OH
ポリアミド6の調製:ε―カプロラクタムの80重量%水溶液を少量のリン酸の存在下、窒素置換したオートクレーブ中で250〜260℃に加熱し、窒素ガスと共に系内の水分を4時間要して系外に排出した。その後1時間を要して徐々に昇温(275℃)し、水分の残渣を系外に排除した後、冷却し、ポリアミド6を得た。得られたポリマーは、分子量(Mn)約20000〜25000、アミノ末端とカルボキシル末端の比率がほぼ1/1であり、加硫剤をラジカル発生剤とした場合の軌道相互作用エネルギー係数Sが0.006以上の活性水素の数は1分子あたり4個と計算された。
【0183】
樹脂(C)
熱可塑性樹脂として、脂環族ポリアミド[ビス(4−アミノシクロへキシル)メタンと、ドデカンジカルボン酸との重縮合物]を調製し、この脂環族ポリアミドに対して、加硫活性剤(TRIM :トリメチロールプロパントリメタクリレート)3重量部を配合し、樹脂(C)として用いた。なお、MOPACPM3の計算は、下記基本単位に基づいて行った。
【0184】
【化1】
【0185】
脂環族ポリアミドの調製:モノマーの組合せをビス(4−アミノシクロへキシル)メタンとドデカンジカルボン酸とする以外は前記樹脂(A1)と同様の調製方法で分子量(Mn)20000〜25000、アミノ末端とカルボキシル末端の比率がほぼ1/1のポリマーを得た。加硫剤をラジカル発生剤とした場合のこのポリマーの軌道相互作用エネルギー係数Sが0.006以上の活性水素の数は1分子あたり3個と計算された。
【0186】
樹脂(D1〜D4)
熱可塑性樹脂としてポリブチレンテレフタレートを製造し、樹脂又は樹脂組成物を調製した。なお、MOPACPM3の計算は、下記基本単位に基づいて行った。
【0187】
【化2】
【0188】
樹脂(D1):
樹脂D1の調製:蒸留精製したジメチルテレフタレート883gおよびブタンジオール819gに酢酸カルシウム1.82g、酸化アンチモン3.64gを加え、攪拌機、窒素ガス導入管、蒸留用側管を有し、且つ真空系に連結された重合管に入れた。この重合管を油浴により180℃に加熱し、ゆっくりと窒素ガスを通した。留出するメタノール量が理論値に達したところで攪拌を開始し、徐々に系の温度を250〜260℃にまで高めると共に真空度を徐々に上げ100Pa以下にまで到達させた。生成するブタンジオールを少量ずつ留出させながら、2〜3時間を要して縮合反応を進め、適宜テトラクロロエタン/フェノール=40/60の混合溶媒中の相対粘度を測定し、数平均分子量が10000に達した時点で反応を終結させた。得られたポリマー中の、加硫剤をラジカル発生剤とした場合の軌道相互作用エネルギー係数Sが0.006以上の活性水素の数は1分子あたり0個と計算された。この樹脂を単独で樹脂(D1)として用いた。
【0189】
樹脂(D2):
樹脂D2の調製:前記樹脂(D1)100重量部に対して、加硫活性剤(HVA2 :m−フェニレンビスマレイミド)1重量部を配合し、樹脂(D2)として用いた。
【0190】
樹脂(D3):
樹脂D3の調製:前記樹脂(D1)100重量部に対して、加硫活性剤(TRIM :トリメチロールプロパントリメタクリレート)3重量部を配合し、樹脂(D3)として用いた。
【0191】
樹脂(D4):
樹脂D4の調製:前記樹脂(D1)100重量部に対して、ポリオクテニレン(Degussa AG製 「Vestenamer 8012」)10重量部を配合し、樹脂(D4)として用いた。
【0192】
樹脂(E1〜E2)
架橋性樹脂として、不飽和結合を含有するポリブチレンテレフタレートを製造し、樹脂又は樹脂組成物を調製した。
【0193】
樹脂(E1):
樹脂E1の調製:前記樹脂(D)の製造においてブタンジオール819gをブタンジオール747gとブチレンジオール70.4gに変える以外は同様にして数平均分子量約10000のポリマーを得た。得られたポリマー中の、加硫剤をラジカル発生剤とした場合の軌道相互作用エネルギー係数Sが0.006以上の活性水素の数は1分子あたり0個と計算され、不飽和結合の濃度はポリマー1分子中に平均4個、0.4モル/kgであった。このポリマーを単独で樹脂(E1)として用いた。
【0194】
樹脂(E2):
樹脂E2の調製:前記樹脂(E1)100重量部に対して、加硫活性剤(TRIM:トリメチロールプロパントリメタクリレート)3重量部を配合し、樹脂(E2)として用いた。
【0195】
樹脂(F)
樹脂Fの調製:変性ポリフェニレンエーテル樹脂(日本ゼネラル・エレクトリック(株)製、ノリル731)100重量部に対して、ポリオクテニレン(Degussa AG製 「Vestenamer 8012」)10重量部を配合し、樹脂(F)として用いた。得られたポリマーにおいて、加硫剤をラジカル発生剤とした場合の1分子当たりの活性水素原子の数は4個以上であった。なお、MOPACPM3の計算は、下記基本単位に基づいて行った。
【0196】
【化3】
【0197】
[未加硫ゴム組成物(R)]
下記成分を所定の割合で配合し、未加硫ゴム組成物(R1〜R10)を調製した。
【0198】
ゴム組成物(R1)
(i)エチレンプロピレンジエンゴム(DMS(株)製 「ケルタン509×100」)100重量部
(ii)ラジカル発生剤[有機過酸化物(ジクミルパーオキサイド)]2.5重量部
(iii)フィラー(旭カーボン(株)製 「N582」)1重量部
(iv)可塑剤(出光興産(株)製 「ダイアナプロセスオイルNS100」)5重量部
(v)酸化亜鉛3重量部
(vi)ステアリン酸1重量部
ゴム組成物(R2)
(i)エチレンプロピレンジエンゴム(DMS(株)製 「ケルタン509×100」)100重量部
(ii)ラジカル発生剤[有機過酸化物(ジクミルパーオキサイド)]2.5重量部
(iii)加硫活性剤(TRIM:トリメチロールプロパントリメタクリレート)3重量部
(iv)フィラー(旭カーボン(株)製 「N582」)1重量部
(v)可塑剤(出光興産(株)製 「ダイアナプロセスオイルNS100」)5重量部
(vi)酸化亜鉛3重量部
(vii)ステアリン酸1重量部
ゴム組成物(R3)
(i)エチレンプロピレンジエンゴム(DMS(株)製 「ケルタン509×100」)100重量部
(ii)ラジカル発生剤[有機過酸化物(ジクミルパーオキサイド)]2.5重量部
(iii)ポリオクテニレン(Degussa AG製 「Vestenamer 8012」)5重量部
(iv)フィラー(旭カーボン(株)製 「N582」)1重量部
(v)可塑剤(出光興産(株)製 「ダイアナプロセスオイルNS100」)5重量部
(vi)酸化亜鉛3重量部
(vii)ステアリン酸1重量部
ゴム組成物(R4)
(i)エチレンプロピレンジエンゴム(DMS(株)製 「ケルタン509×100」)100重量部
(ii)ラジカル発生剤[有機過酸化物(ジクミルパーオキサイド)]2.5重量部
(iii)加硫活性剤(TRIM:トリメチロールプロパントリメタクリレート)3重量部
(iv)ポリオクテニレン(Degussa AG製 「Vestenamer 8012」)5重量部
(v)フィラー(旭カーボン(株)製 「N582」)1重量部
(vi)可塑剤(出光興産(株)製 「ダイアナプロセスオイルNS100」)5重量部
(vii)酸化亜鉛3重量部
(viii)ステアリン酸1重量部
ゴム組成物(R5)
(i)ビニルシリコーンゴム(東レダウコーニング(株)製 「シリコーンゴムSH851」)100重量部
(ii)ラジカル発生剤[有機過酸化物(ジクミルパーオキサイド)]2.5重量部
ゴム組成物(R6)
(i)ビニルシリコーンゴム(東レダウコーニング(株)製 「シリコーンゴムSH851」)100重量部
(ii)ラジカル発生剤[有機過酸化物(ジクミルパーオキサイド)]2.5重量部
(iii)加硫活性剤(TRIM:トリメチロールプロパントリメタクリレート)0.5重量部
ゴム組成物(R7)
(i)フッ素ゴム(FKM ダイキン工業(株)製 「Dai EL G902」)100重量部
(ii)ラジカル発生剤[有機過酸化物(ジクミルパーオキサイド)]2.5重量部
(iii)加硫活性剤(TAIC : トリアリルイソシアヌレート)3重量部
ゴム組成物(R8)
(i)カルボキシル化ニトリルゴム(X−NBR)(日本ゼオン(株)製 「Nipol 1072J」)100重量部
(ii)ラジカル発生剤[有機過酸化物(ジクミルパーオキサイド)]0.2重量部
(iii)ポリオクテニレン(Degussa AG製 「Vestenamer 8012」)5重量部
ゴム組成物(R9)
(i)スチレンブタジエンゴム[JSR(株)製 「JSR0202」 (スチレン含有量46%)]100重量部
(ii)フィラー(旭カーボン(株)製 「N582」)50重量部
(iii)硫黄2重量部
(iv)可塑剤(出光興産(株)製 「ダイアナプロセスオイルNS100」)10重量部
(v)酸化亜鉛5重量部
(vi)ステアリン酸1重量部
ゴム組成物R10
(i)スチレンブタジエンゴム[JSR(株)製 「JSR0202」 (スチレン含有量46%)]60重量部
(ii)天然ゴム(「タイ国 #3」)40重量部
フィラー(旭カーボン(株)製 「N582」)50重量部
(iii)硫黄2重量部
(iv)可塑剤(出光興産(株)製 「ダイアナプロセスオイルNS100」)10重量部
(v)酸化亜鉛5重量部
(vi)ステアリン酸1重量部
実施例1〜19及び比較例1〜5
(複合分散体の調製)
前記樹脂又は樹脂組成物を、樹脂の種類に応じて温調されたニーダーを用いて混合混練した。この混練物に、別途ロールを用いて準備しておいた前記未加硫ゴム組成物を表1に示した組合せで追添加し、混合混練しながらゴム成分の加硫を進行させ、複合分散体を得た。この時、未加硫ゴム組成物の添加量はニーダー中の樹脂組成物60重量部に対し40重量部とし、10重量部づつ4回に分け、計10分を要して添加した。なお、ニーダーの設定温度を、樹脂又は樹脂組成物が、樹脂A1〜A6、樹脂B、樹脂D1〜D4、樹脂E1〜E2及び樹脂Fの場合は240℃、樹脂Cの場合は270℃とした。
【0199】
(衝撃試験)
上記複合分散体を圧縮成形により厚み6mmの平板に成形し、次いでこれを切削して所定の形状の試験片を作成しアイゾット衝撃試験に供した。なお、比較のため、ポリアミド612,ポリブチレンテレフタレートにおいて樹脂単独の試験片を作成しアイゾット衝撃試験に供した(比較例1、4)。
【0200】
(延伸試験)
上記複合分散体を圧縮成形により厚み3mmの平板に成形した。次いでこれを幅15mmに裁断して引張試験片とし、50mm/分の引張試験に供した。この延伸試験の評価は、下記の基準に従って行った。
【0201】
A:200%以上の破断伸度があり、試験片が破断するまで試験片表面の乱れや層間剥離現象が無く、かつ破断面にも白化やフィブリル化が認められない
B:200%以上の破断伸度が得られるが、破断面周辺に白化やフィブリル化が認められる
C:破断伸度が200%に達せず延伸と共に層間剥離現象が現れる
(剥離試験)
ゴム/樹脂間の接合強度は次のようにして測定した。
【0202】
前記樹脂又は樹脂組成物を、2軸押出機により混合混練し、得られた混練物を射出成形機により厚み3mmの平板に成形した。一方、オープンロールを用いて各成分を混合することにより、前記未加硫ゴム組成物を得、次いで、前記樹脂平板の上部に、表1に示した組合せで未加硫ゴム組成物を乗せ、170℃に温調された圧縮成形機でゴム層の厚みを3mmに調整しながら10分間を要してゴム層を加硫し、両者を接合させた。このとき樹脂平板の1/3をアルミホイルで覆い、樹脂ゴムの直接接触を避け、この被覆部分をゴム樹脂間の剥離試験時の掴み代とした。このようにして得られた樹脂/ゴム複合体からなる平板を、上下幅30mmに裁断し、樹脂部ゴム部のそれぞれの掴み代を引張試験機のチャックに固定し、引張速度50mm/分で180度剥離試験に供した。この剥離試験の評価は、下記の基準に従って行った。
【0203】
A:剥離がゴム層の凝集破壊によって進行する
B:剥離がゴム層の凝集破壊と樹脂ゴム層間の界面剥離が複合して進行するが十分な接着強度が認められる
C:剥離が樹脂ゴム層間の界面剥離によってのみ進行し、十分な接着強度が認められない
結果を表1に示す。なお、表1において、「VA」とは、加硫活性剤を意味し、「VM」とは、ポリオクテニレンを意味する。
【0204】
【表1】
【0205】
表1から分かるように、実施例の複合分散体では、連続相と分散相とが強固に直接接合しており、かつ高い衝撃強度及び引っ張り強度を示した。
Claims (24)
- 樹脂で構成された連続相と、未加硫ゴムが加硫した加硫ゴムで構成された分散相とが直接接合した複合分散体であって、前記樹脂が、加硫活性剤を含有する樹脂、又は架橋性基を有する樹脂である複合分散体。
- 架橋性基を有する樹脂が、不飽和結合を有する熱可塑性樹脂又は架橋性官能基を有する熱硬化性樹脂である請求項1記載の複合分散体。
- 不飽和結合を有する熱可塑性樹脂が、下記(i)又は(ii)である請求項2記載の複合体。
(i)反応性基(A)及び不飽和結合を有する重合性化合物と、前記反応性基(A)に対して反応性の反応性基(B)を有する熱可塑性樹脂との反応により生成した樹脂
(ii)共重合又は共縮合により不飽和結合を導入した熱可塑性樹脂 - 不飽和結合を含有する樹脂が、熱可塑性樹脂1kgに対して不飽和結合0.01〜6.6モルを有する請求項2記載の複合体。
- 樹脂が、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ(チオ)エーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ハロゲン含有樹脂、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂及び熱可塑性エラストマーから選択された少なくとも一種である請求項1記載の複合分散体。
- 樹脂が、脂肪族ポリアミド系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂及びポリスルフィド系樹脂から選択された少なくとも一種である請求項1記載の複合分散体。
- 樹脂が、下記式(1)
S=(CHOMO,n)2/|Ec−EHOMO,n|+(CLUMO,n)2/|Ec−ELUMO,n| (1)
(式中、Ec、CHOMO,n、EHOMO,n、CLUMO,n、ELUMO,nは、いずれも半経験的分子軌道法MOPACPM3により算出された値であって、Ecはラジカル発生剤のラジカルの軌道エネルギー(eV)を示し、CHOMO,nは樹脂の基本単位を構成する第n番目の水素原子及び/又は硫黄原子の最高被占分子軌道(HOMO)の分子軌道係数を示し、EHOMO,nは前記HOMOの軌道エネルギー(eV)を示し、CLUMO,nは前記n番目の水素原子及び/又は硫黄原子の最低空分子軌道(LUMO)の分子軌道係数を示し、ELUMO,nは前記LUMOの軌道エネルギー(eV)を示す)
で表される軌道相互作用エネルギー係数Sが0.006以上である水素原子及び/又は硫黄原子を一分子中に少なくとも平均2つ有する請求項1記載の複合分散体。 - 加硫ゴムが、ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、アクリル系ゴム、フッ素ゴム、シリコーン系ゴム、及びウレタン系ゴムから選択された少なくとも一種である請求項1記載の複合分散体。
- 樹脂及び未加硫ゴムのうち少なくとも未加硫ゴムが、ラジカル発生剤及び硫黄から選択された少なくとも一種の加硫剤を含む請求項1記載の複合分散体。
- ラジカル発生剤が、有機過酸化物、アゾ化合物、硫黄含有有機化合物から選択された少なくとも一種である請求項9記載の複合分散体。
- 加硫剤の割合が、未加硫ゴム100重量部に対して、0.1〜10重量部である請求項9記載の複合分散体。
- 加硫活性剤が、一分子中に少なくとも2つの重合性不飽和結合を有する有機化合物及びマレイミド系化合物から選択された少なくとも1種である請求項1記載の複合分散体。
- 加硫活性剤の割合が、樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部である請求項1記載の複合分散体。
- 樹脂及び未加硫ゴムのうち少なくとも一方の成分が、ポリアルケニレンを含有する請求項1記載の複合分散体。
- ポリアルケニレンの割合が、樹脂又は未加硫ゴム100重量部に対して、1〜30重量部である請求項14記載の複合分散体。
- 樹脂で構成された連続相と、未加硫ゴムが加硫した加硫ゴムで構成された分散相とが直接接合した複合分散体であって、前記樹脂及び/又は未加硫ゴムが下記(a)〜(d)のいずれかの組合せである複合分散体。
(a)樹脂と、加硫剤及び加硫活性剤を含む未加硫ゴムとの組合せであって、前記加硫剤と加硫活性剤との割合(重量比)が、前者/後者=2/98〜70/30である組合せ
(b)ポリアミド系樹脂と、加硫剤及びポリアルケニレンを含む未加硫ゴムとの組合せであって、前記加硫剤とポリアルケニレンとの割合(重量比)が、前者/後者=2/98〜45/55であるの組合せ
(c)樹脂と、シリコーン系未加硫ゴムとの組合せ
(d)ポリアルケニレンを含有するポリフェニレンエーテル系樹脂と、加硫剤として硫黄又は硫黄含有有機化合物を含有している未加硫ゴムとの組合せ - 樹脂が、請求項7記載の軌道相互作用エネルギー係数Sが0.006以上である水素原子及び/又は硫黄原子を一分子中に少なくとも平均2つ有する請求項16記載の複合分散体。
- 未加硫ゴムが、加硫活性剤を含有する請求項16記載の複合分散体。
- 未加硫ゴムが、ポリアルケニレンを含有する請求項16記載の複合分散体。
- 樹脂及び/又は未加硫ゴムが、分子量が1000以下であって、かつ請求項7記載の軌道相互作用エネルギー係数Sが0.006以上である水素原子を一分子中に平均2個以上有する化合物、一分子中にカルボキシル基、酸無水物基又はイソシアネート基を1個以上有する化合物、及びシランカップリング剤から選択された少なくとも1種を含有する請求項1又は16記載の複合分散体。
- 連続相と分散相とで海島構造を形成している請求項1又は16記載の複合分散体。
- 連続相と分散相との割合(重量比)が、連続相/分散相=25/75〜98/2である請求項1又は16記載の複合分散体。
- 樹脂と、未加硫ゴムとを混練して請求項1又は16記載の複合分散体を製造する方法。
- 請求項1又は16記載の複合分散体で形成された成形品。
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Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20061121 |