JP2004042486A - 複合体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】幅広い組合せにおいて樹脂部材と加硫ゴム部材とが強固に接合した複合体を得る。
【解決手段】加硫剤(有機過酸化物などのラジカル発生剤)を含有する未加硫ゴム層を介して、未加硫ゴム組成物、半加硫ゴム部材および加硫ゴム部材から選択されたゴムエレメントと、未成形樹脂組成物、半成形樹脂部材および成形樹脂部材から選択された樹脂エレメントとを加圧接触下で加熱して成形し、加硫ゴム層を介して、加硫ゴム部材と樹脂部材とが接合した樹脂/ゴム複合体を製造する。樹脂部材は、熱可塑性樹脂又は架橋性基を有する樹脂であってもよく、活性原子(水素原子及び硫黄原子)を有する樹脂であってもよい。加硫ゴム層を形成するための未加硫ゴム組成物と樹脂部材のうち少なくとも一方の成分が、複数の重合性基を有する多官能重合性化合物を含有してもよい。
【選択図】 なし
【解決手段】加硫剤(有機過酸化物などのラジカル発生剤)を含有する未加硫ゴム層を介して、未加硫ゴム組成物、半加硫ゴム部材および加硫ゴム部材から選択されたゴムエレメントと、未成形樹脂組成物、半成形樹脂部材および成形樹脂部材から選択された樹脂エレメントとを加圧接触下で加熱して成形し、加硫ゴム層を介して、加硫ゴム部材と樹脂部材とが接合した樹脂/ゴム複合体を製造する。樹脂部材は、熱可塑性樹脂又は架橋性基を有する樹脂であってもよく、活性原子(水素原子及び硫黄原子)を有する樹脂であってもよい。加硫ゴム層を形成するための未加硫ゴム組成物と樹脂部材のうち少なくとも一方の成分が、複数の重合性基を有する多官能重合性化合物を含有してもよい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂と加硫ゴムとが一体に接合し、かつ機械部品、自動車部品などとして有用な複合体(又は複合部材)及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂成形部材とゴム成形部材とを複合一体化する方法として、接着剤を用いて樹脂成形体とゴム成形体とを接着する方法が知られている。しかし、接着剤を用いる方法は、工程が複雑で工程管理が煩雑であり、コストが高くなるだけでなく、耐熱性、耐水性などの特性が低下し、必ずしも十分な接着性を得られない。
【0003】
樹脂とゴムとが直接接合した複合体が提案されている。例えば、特開昭50−25682号公報には、ポリホルムアルデヒドやオレフィン重合体などの熱可塑性プラスチック成分と、この熱可塑性プラスチック成分と相溶性の加硫したゴム成分とを摩擦接触させてプラスチック表面を溶融し、プラスチック成分とゴム成分とを接触させたまま凝固させる複合体の製造方法が開示されている。
【0004】
熱可塑性樹脂とゴムとの相溶性を利用して複合体を製造する方法として、特開昭61−204260号公報には、ポリフェニレンエーテル系樹脂と合成ゴムとを加硫系の存在下に熱処理する方法が開示されている。特開平9−124803号公報には、アクリロニトリル含有熱可塑性樹脂と、アクリロニトリル含有ゴムとを加熱密着させて複合部材を得ることが提案されている。
【0005】
熱可塑性樹脂とゴムとの化学的な反応を利用して複合体を製造する方法として、特開平2−150439号公報、特開平3−133631号公報、特開平3−138114号公報には、ポリアミド系樹脂と、ゴム成分として、カルボキシル基又は酸無水物基含有ゴムと過酸化物と加硫活性化剤とを含むゴム成分を用いることが提案されている。特開平8−156188号公報には、エポキシ基含有樹脂部材と、カルボキシル基又は酸無水物基含有ゴム部材とを密着させて加硫することにより複合部材を得ることが提案されている。
【0006】
さらに、特定の添加剤を用いることにより複合体を得る方法として、特開平7−11013号公報には、ポリアミド成形体と、ゴムと過酸化物加硫剤とシラン化合物と必要により加硫活性剤とを含むゴムコンパウンドとを接触させて加硫する方法が開示されている。さらに、硬質成分として熱可塑性ポリエステルを用い、軟質成分として、ゴムと過酸化物加硫剤と二官能又は多官能マレイミドと必要により加硫活性剤とを含むゴム成分を用いること(特開平7−304880号公報)、ゴムと過酸化物加硫剤とシラン化合物と必要により加硫活性剤とを含むゴム成分を用いること(特開平7−166043号公報)が提案されている。
【0007】
しかし、これらの方法では、高い接着強度を得るためには、熱可塑性樹脂およびゴムの種類が制限される。特に、反応性の乏しい加硫ゴムと熱可塑性樹脂との複合体を得ることは困難である。
【0008】
特開平10−58605号公報には、基材フィルム(ポリエステルフィルムなど)と、接着性改良剤として多官能性メタクリレートを含むゴムフィルム(シリコーンゴム、エチレンプロピレン系ゴムなど)を積層して加硫することにより複合フィルムを得る方法が開示されている。しかし、この方法では、基材フィルムとの十分な接着強度を得るためには多量の接着性改良剤を含有したゴムを使用する必要があり、かつ基材フィルムはコロナ放電処理又は易接着処理する必要がある。さらに、この文献の実施例では、接着に際しては高エネルギー線である電子線を照射を利用することが記載されており、厚みが大きく立体的なゴム成形体と樹脂成形体との接合に利用することが困難である。
【0009】
このように、樹脂部材とゴム部材とを高い接着強度で接合するための汎用性の高い技術は知られていない。特に、ゴムの種類や処方によって接合強度が大きく変動し、ゴム処方の大きな変更が必要となったり、ゴム処方を変更しても高い接合強度が得られない場合がある。例えば、ゴム部材の性能の点から、充填剤,フィラー、可塑剤などの添加剤の添加量を多くせざるを得ないゴム処方や、加硫剤の種類が制約されるゴム処方(例えば、硫黄加硫剤を必要とするゴム処方)では、接合強度を高めるための処方の選択幅が大きく制限される。さらに、ゴム処方を変更することは、実質的に困難である場合が多い。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、広範囲の組合せにおいて樹脂成形体と加硫ゴム成形体とを強固に接合できる複合体及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、樹脂成形体の表面を易接着処理することなく、樹脂成形体と加硫ゴム成形体とが強固に接合した複合体及びその製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、加硫ゴム部材のゴム処方を変更することなく、樹脂部材と強固に接合できる複合体とその製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明の別の目的は、三次元的構造であっても強固に接合できる複合体及びその製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ゴムとゴムとが接合しやすいことを利用して、ゴム部材と樹脂部材との間に加硫剤を含む未加硫ゴム層を介在させ、この未加硫ゴム層を加熱などの手段により加硫すると、広範囲の組合せにおいて、前記ゴム部材と樹脂部材とを強固に一体化でき、樹脂/ゴム複合体を効率よく得ることができることを見いだし、本発明を完成した。
【0015】
すなわち、本発明の複合体は、加硫剤により加硫した加硫ゴム層を介して、加硫ゴム部材と樹脂部材とが接合し、樹脂/ゴム複合体を形成している。本発明では加硫剤の種類に拘わらず接合強度を向上できるので、前記加硫剤は、硫黄系加硫剤(硫黄や硫黄化合物など)又は過酸化物系加硫剤(有機過酸化物などのラジカル発生剤系加硫剤)であってもよい。前記樹脂部材は、熱可塑性樹脂および架橋性基を有する樹脂から選択された少なくとも一種で構成でき、架橋性基を有する樹脂は、熱硬化性樹脂及び/又は不飽和結合を有する熱可塑性樹脂であってもよい。さらに、加硫ゴム層を形成するための未加硫ゴム組成物と樹脂部材は、下記条件(i)〜(iii)のうち少なくとも一つの条件を満足する場合が多い。
【0016】
(i)樹脂部材が、下記式(1)で表される軌道相互作用エネルギー係数Sが0.006以上である活性原子(水素原子および硫黄原子から選択された少なくとも一種の活性原子)を一分子中に少なくとも平均2つ有する熱可塑性樹脂で構成されている
S=(CHOMO,n)2/|EC−EHOMO,n|+(CLUMO,n)2/|EC−ELUMO,n|
(1)
(式中、EC、CHOMO,n、EHOMO,n、CLUMO,n、ELUMO,nは、いずれも半経験的分子軌道法MOPACPM3により算出された値であって、ECは加硫剤としてのラジカル発生剤のラジカルの軌道エネルギー(eV)を示し、CHOMO,nは熱可塑性樹脂の基本単位を構成する第n番目の水素原子の最高被占分子軌道(HOMO)の分子軌道係数を示し、EHOMO,nは前記HOMOの軌道エネルギー(eV)を示し、CLUMO,nは前記n番目の水素原子の最低空分子軌道(LUMO)の分子軌道係数を示し、ELUMO,nは前記LUMOの軌道エネルギー(eV)を示す)
(ii)未加硫ゴム組成物及び樹脂部材のうち少なくとも一方の成分が、複数の重合性基を有する多官能重合性化合物を含有する
(iii)樹脂部材が、熱硬化性樹脂、又は分子中に不飽和結合を有する樹脂で構成され、未加硫ゴム組成物が複数の重合性基を有する多官能重合性化合物を含有する
前記複合体において、前記加硫ゴム層、加硫ゴム部材および樹脂部材の少なくとも1つは、加硫活性剤を含む組成物で形成してもよい。例えば、加硫ゴム層を、加硫剤および加硫活性剤を含有する未加硫ゴム組成物で形成し、加硫ゴム部材および樹脂部材の少なくとも一方の部材を、加硫活性剤を含む組成物で形成してもよい。また、加硫ゴム層を、硫黄系加硫剤で加硫されたスチレン−ジエン系ゴムで構成し、樹脂部材を、ポリフェニレンエーテル系樹脂で構成してもよい。
【0017】
本発明の方法では、加硫剤を含有する未加硫ゴム層を介して、未加硫ゴム組成物、半加硫ゴム部材および加硫ゴム部材から選択されたゴムエレメントと、未成形樹脂組成物、半成形樹脂部材および成形樹脂部材から選択された樹脂エレメントとを接触させ、未加硫ゴム又は半加硫ゴムを加硫し、前記未加硫ゴム層が加硫した加硫ゴム層を介して、前記ゴムエレメントの加硫ゴム部材と樹脂エレメントの樹脂部材とが接合した樹脂/ゴム複合体を製造する。この方法において、未加硫ゴム又は半加硫ゴムを加硫し、必要によりゴムエレメントと樹脂エレメントとを成形してもよい。また、ゴムエレメント及び樹脂エレメントの接合面のうち少なくとも一方の接合面に、加硫剤を含有する未加硫ゴム組成物の層を形成し、この未加硫ゴム組成物層を介して前記ゴムエレメントと樹脂エレメントとを加圧接触下で加熱してもよい。また、加硫剤を含有する未加硫ゴム組成物の層は、未加硫ゴム組成物のフィルム又は塗布剤で形成してもよい。さらに、加硫剤を含むゴムエレメントと、樹脂エレメントとの間に、有機過酸化物と、複数の重合性基を有する多官能重合性化合物とを含有する未加硫ゴム組成物の層を介在させて加圧下で加熱して成形してもよい。さらには、ゴムエレメント及び樹脂エレメントのうち少なくとも一方のエレメントは、複数の重合性基を有する多官能重合性化合物を含んでいてもよい。
【0018】
【発明の実施の形態】
[樹脂部材]
本発明の複合体において、樹脂部材は、熱可塑性樹脂および架橋性基を有する樹脂から選択された少なくとも一種(以下、単に樹脂と称することがある)で構成されている。
【0019】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂(ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂など)、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂などの縮合系熱可塑性樹脂;ポリオレフィン系樹脂、ハロゲン含有ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂などのビニル重合系熱可塑性樹脂;熱可塑性エラストマーなどが例示できる。これらの樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。二種以上の樹脂を組み合わせて用いる場合、樹脂組成物はポリマーアロイなどの複合樹脂組成物を形成してもよい。
【0020】
(1)ポリアミド系樹脂
ポリアミド系樹脂としては、脂肪族ポリアミド系樹脂、脂環族ポリアミド系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂などが挙げられる。脂肪族ポリアミド系樹脂としては、脂肪族ジアミン成分(テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのC4−10アルキレンジアミン)と脂肪族ジカルボン酸成分(アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの炭素数4〜20程度のアルキレンジカルボン酸など)との縮合物(例えば、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612など)、ラクタム(ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどの炭素数4〜20程度のラクタムなど)又はアミノカルボン酸(ω−アミノウンデカン酸などの炭素数4〜20程度のアミノカルボン酸など)の単独又は共重合体(例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12など)、これらのポリアミド成分が共重合したコポリアミド(例えば、ポリアミド6/11,ポリアミド6/12,ポリアミド66/11,ポリアミド66/12など)などが挙げられる。
【0021】
脂環族ポリアミド系樹脂としては、前記脂肪族ジアミン成分及び/又は脂肪族ジカルボン酸成分の少なくとも一部として、脂環族ジアミン及び/又は脂環族ジカルボン酸を用いたポリアミドが挙げられる。脂環族ポリアミドには、例えば、前記脂肪族ジカルボン酸成分と脂環族ジアミン成分(シクロへキシルジアミンなどのC5−8シクロアルキルジアミン;ビス(アミノシクロへキシル)メタン、2,2−ビス(アミノシクロへキシル)プロパンなどのビス(アミノシクロへキシル)アルカン類など)との縮合体が含まれる。
【0022】
芳香族ポリアミド系樹脂には、前記脂肪族ジアミン成分及び脂肪族ジカルボン酸成分のうち少なくとも一方の成分が芳香族成分であるポリアミド、例えば、ジアミン成分が芳香族成分であるポリアミド[MXD−6などの芳香族ジアミン(メタキシリレンジアミンなど)と脂肪族ジカルボン酸との縮合体など]、ジカルボン酸成分が芳香族成分であるポリアミド[脂肪族ジアミン(トリメチルヘキサメチレンジアミンなど)と芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸など)との縮合体など]、ジアミン成分及びジカルボン酸成分が芳香族成分であるポリアミド[ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)などの全芳香族ポリアミド(アラミド)など]などが含まれる。
【0023】
ポリアミド系樹脂には、さらに、ダイマー酸をジカルボン酸成分とするポリアミド、少量の多官能性ポリアミン及び/又はポリカルボン酸成分を用い、分岐鎖構造を導入したポリアミド、変性ポリアミド(N−アルコキシメチルポリアミドなど)、変性ポリオレフィンを混合あるいはグラフト重合させた高耐衝撃性ポリアミドも含まれる。
【0024】
ポリアミド系樹脂において、末端NH2基と末端COOH基との割合は、特に限定されず、例えば、末端アミノ基の水素原子とα−炭素位の水素原子とで活性水素原子を構成する場合、末端アミノ基/末端カルボキシル基=10/90〜100/0(モル比)程度、好ましくは20/80〜95/5(モル比)程度、さらに好ましくは25/75〜95/5(モル比)程度の範囲から選択できる。また、末端アミノ基の水素原子だけで活性水素原子を構成する場合、末端アミノ基/末端カルボキシル基=50/50〜100/0(モル比)程度、好ましくは60/40〜95/5(モル比)程度、さらに好ましくは70/30〜95/5(モル比)程度であってもよい。
【0025】
(2)ポリエステル系樹脂
ポリエステル系樹脂は、脂肪族ポリエステル系樹脂であってもよいが、通常、芳香族ポリエステル系樹脂、例えば、ポリ(アルキレン)アリレート系樹脂又は飽和芳香族ポリエステル系樹脂が使用される。芳香族ポリエステル系樹脂としては、ポリアルキレンアリレート系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリC2−4アルキレンテレフタレート;このポリアルキレンテレフタレートに対応するポリC2−4アルキレンナフタレート(例えば、ポリエチレンナフタレートなど);ポリ1,4−シクロへキシルジメチレンテレフタレート(PCT));ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)と、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸など)との重縮合により得られるポリアリレート系樹脂(例えば、ポリアリレート樹脂など);全芳香族又は液晶性芳香族ポリエステル(例えば、パラオキシ安息香酸を用いた液晶性ポリエステルなど)などが含まれる。ポリエステル系樹脂は、アルキレンアリレート単位を主成分(例えば、50重量%以上)として含むコポリエステルであってもよく、共重合成分には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールなどのC2−6アルキレングリコール、ポリオキシC2−4アルキレングリコール、フタル酸、イソフタル酸などの非対称芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸などが例示できる。さらに、少量のポリオール及び/又はポリカルボン酸を用い、線状ポリエステルに分岐鎖構造を導入してもよい。
【0026】
芳香族ポリエステル系樹脂が前記活性原子を所定の濃度で有しない場合、活性原子を有する変性化合物で変性した変性ポリエステル系樹脂(例えば、アミノ基及びオキシアルキレン基から選択された少なくとも一種を有する芳香族ポリエステル系樹脂)を用いてもよい。活性原子、特に活性水素原子を有する化合物としては、ポリアミン類(脂肪族ジアミン類、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタンなどの炭素数2〜10程度の直鎖又は分岐鎖状アルキレンジアミンなど;脂環族ジアミン類、例えば、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなど;芳香族ジアミン類、例えば、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなど)、ポリオール類(例えば、(ポリ)オキシエチレングリコール、(ポリ)オキシトリメチレングリコール、(ポリ)オキシプロピレングリコール、(ポリ)オキシテトラメチレングリコールなどの(ポリ)オキシC2−4アルキレングリコール類など)などが例示できる。変性は、例えば、ポリエステル系樹脂と変性化合物とを加熱混合し、アミド化、エステル化又はエステル交換反応を利用して行うことができる。ポリエステル系樹脂の変性の程度は、前記化合物中の活性水素原子の量に応じて、ポリエステル系樹脂の官能基(ヒドロキシル基又はカルボキシル基)1モルに対して、例えば、変性化合物0.1〜2モル、好ましくは0.2〜1.5モル、さらに好ましくは0.3〜1モル程度であってもよい。エステル交換反応に用いる場合、(ポリ)オキシC2−4アルキレングリコール類の使用量は、ポリエステル系樹脂100重量部に対して1〜50重量部程度、好ましくは5〜30重量部程度であってもよい。
【0027】
(3)ポリ(チオ)エーテル系樹脂
ポリ(チオ)エーテル系樹脂には、ポリオキシアルキレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂(ポリチオエーテル系樹脂)、ポリエーテルケトン系樹脂が含まれる。ポリオキシアルキレン系樹脂としては、ポリオキシメチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシテトラメチレングリコールなどのポリオキシC1−4アルキレングリコールなどが含まれる。好ましいポリエーテル系樹脂には、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂及びポリエーテルケトン系樹脂が含まれる。
【0028】
(3a)ポリアセタール系樹脂
ポリアセタール系樹脂は、ホモポリマー(ホルムアルデヒドの単独重合体)であってもよく、コポリマー(トリオキサンと、エチレンオキサイド及び/又は1,3−ジオキソランとの共重合体など)であってもよい。また、ポリアセタール系樹脂の末端は封鎖され安定化されていてもよい。
【0029】
(3b)ポリフェニレンエーテル系樹脂
ポリフェニレンエーテル系樹脂には、2,6−ジメチルフェニレンオキサイドを主成分とする種々の樹脂、例えば、2,6−ジメチルフェニレンオキサイドとフェノール類との共重合体、スチレン系樹脂をブレンド又はグラフトした変性樹脂などが含まれる。他の変性ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、ポリフェニレンエーテル/ポリアミド系、ポリフェニレンエーテル/飽和ポリエステル系、ポリフェニレンエーテル/ポリフェニレンスルフィド系、ポリフェニレンエーテル/ポリオレフィン系などが挙げられる。
【0030】
なお、スチレン系樹脂による変性は、ポリフェニレンエーテル系樹脂の耐熱性を低下させ、加硫過程での加熱により変形する場合がある。さらに、スチレン系樹脂の添加は、ゴムとポリフェニレンエーテル系樹脂との接着性にも悪影響を及ぼす場合があり、スチレン系樹脂の過剰の添加は好ましくない。一方、ポリフェニレンエーテル系樹脂は溶融流動性が低く、スチレン系樹脂と組み合わせることなく用いると、成形性が低下する。これらの点から、スチレン系樹脂の割合は、ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対して、2〜150重量部、好ましくは3〜100重量部、さらに好ましくは5〜50重量部程度である。
【0031】
(3c)ポリスルフィド系樹脂(ポリチオエーテル系樹脂)
ポリスルフィド系樹脂は、ポリマー鎖中にチオ基(−S−)を有する樹脂であれば特に限定されない。このような樹脂としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリジスルフィド樹脂、ポリビフェニレンスルフィド樹脂、ポリケトンスルフィド樹脂、ポリチオエーテルスルホン樹脂などが例示できる。また、ポリスルフィド系樹脂は、ポリ(アミノフェニレンスルフィド)のようにアミノ基などの置換基を有していてもよい。好ましいポリスルフィド系樹脂はポリフェニレンスルフィド樹脂である。
【0032】
(3d)ポリエーテルケトン系樹脂
ポリエーテルケトン系樹脂には、ジハロゲノベンゾフェノン(ジクロロベンゾフェノンなど)とジヒドロベンゾフェノンとの重縮合により得られるポリエーテルケトン樹脂、ジハロゲノベンゾフェノンとヒドロキノンとの重縮合により得られるポリエーテルエーテルケトン樹脂などが例示できる。
【0033】
(4)ポリカーボネート系樹脂
ポリカーボネート系樹脂としては、脂肪族ポリカーボネート系樹脂であってもよいが、通常、芳香族ポリカーボネート系樹脂、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物(ビスフェノールA、ビスフェノールSなどのビスフェノール化合物など)と、ホスゲン又は炭酸ジエステル(ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネート、ジメチルカーボネートなどのジアルキルカーボネートなど)との反応により得られる芳香族ポリカーボネートなどが使用できる。
【0034】
(5)ポリイミド系樹脂
ポリイミド系樹脂には、熱可塑性ポリイミド系樹脂、例えば、芳香族テトラカルボン酸又はその無水物(ベンゾフェノンテトラカルボン酸など)と、芳香族ジアミン(ジアミノジフェニルメタンなど)との反応で得られるポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂などが含まれる。
【0035】
(6)ポリスルホン系樹脂
ポリスルホン系樹脂には、ジハロゲノジフェニルスルホン(ジクロロジフェニルスルホンなど)とビスフェノール類(ビスフェノールA又はその金属塩など)との重縮合により得られるポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂(商品名:RADEL)などが例示できる。
【0036】
(7)ポリウレタン系樹脂
ポリウレタン系樹脂は、ジイソシアネート類とポリオール類と必要により鎖伸長剤との反応により得ることができる。ジイソシアネート類としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート類、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート類、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ジイソシアネート類などが例示できる。ジイソシアネート類として、アルキル基(例えば、メチル基)が主鎖又は環に置換した化合物を使用してもよい。
【0037】
ジオール類としては、ポリエステルジオール(アジピン酸などのC4−12脂肪族ジカルボン酸成分、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのC2−12脂肪族ジオール成分、ε−カプロラクトンなどのC4−12ラクトン成分などから得られるポリエステルジオールなど)、ポリエーテルジオール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシテトラメチレングリコール、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加体など)、ポリエステルエーテルジオール(ジオール成分の一部として上記ポリエーテルジオールを用いたポリエステルジオール)などが利用できる。
【0038】
さらに、鎖伸長剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのC2−10アルキレンジオールの他、ジアミン類も使用できる。ジアミン類としては、脂肪族ジアミン類、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタンなどの炭素数2〜10程度の直鎖又は分岐鎖状アルキレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレントリアミンなどの直鎖又は分岐鎖状ポリアルキレンポリアミンなど;脂環族ジアミン類、例えば、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなど;芳香族ジアミン類、例えば、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなどが例示できる。
【0039】
(8)ポリオレフィン系樹脂
ポリオレフィン系樹脂には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(メチルペンテン−1)などのオレフィンの単独又は共重合体、オレフィンと共重合性単量体との共重合体(エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)が挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0040】
好ましいポリオレフィン系樹脂には、プロピレン含量が50重量%以上(特に75〜100重量%)のポリプロピレン系樹脂、例えば、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン共重合体などが含まれる。また、ポリオレフィン系樹脂は結晶性であるのが好ましい。
【0041】
(9)ハロゲン含有ビニル系樹脂
ハロゲン含有ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体などの塩素含有ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンと共重合性単量体との共重合体などのフッ素含有ビニル系樹脂などが例示できる。好ましいハロゲン含有ビニル系樹脂は、フッ素含有ビニル系樹脂(例えば、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデンなど)である。
【0042】
(10)スチレン系樹脂
スチレン系樹脂としては、スチレン系単量体の単独又は共重合体(ポリスチレン、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−α−メチルスチレン共重合体など)、スチレン系単量体と共重合性単量体との共重合体(スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体などのスチレン共重合体;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−アクリル酸エステル−スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体(ACS樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)、アクリロニトリル−酢酸ビニル−スチレン共重合体(AXS樹脂)などのスチレン系グラフト共重合体など)などが挙げられる。
【0043】
(11)(メタ)アクリル系樹脂
(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体、(メタ)アクリル系単量体と共重合性単量体との共重合体などが挙げられる。(メタ)アクリル系単量体には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸C1−10アルキルエステル、メタクリル酸シクロヘキシルなどのメタクリル酸C5−10シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸C6−10アリールエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシC2−10アルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどが挙げられる。共重合性単量体には、酢酸ビニル、塩化ビニルなどのビニル系単量体、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体などが挙げられる。
【0044】
(12)熱可塑性エラストマー
熱可塑性エラストマーには、ポリアミド系エラストマー(ポリアミドを硬質相とし、脂肪族ポリエーテルを軟質相とする共重合体)、ポリエステル系エラストマー(ポリアルキレンアリレートを硬質相とし、脂肪族ポリエーテルや脂肪族ポリエステルを軟質相とする共重合体)、ポリウレタン系エラストマー(短鎖グリコールのポリウレタンを硬質相とし、脂肪族ポリエーテルや脂肪族ポリエステルを軟質相とする共重合体、例えば、ポリエステルウレタンエラストマー、ポリエーテルウレタンエラストマーなど)、ポリスチレン系エラストマー(ポリスチレンブロックを硬質相とし、ジエン重合体ブロック又はその水素添加ブロックを軟質相とするブロック共重合体)、ポリオレフィン系エラストマー(ポリスチレン又はポリプロピレンを硬質相とし、エチレン−プロピレンゴムやエチレン−プロピレン−ジエンゴムを軟質相とするエラストマー、結晶化度の異なる硬質相と軟質相とで構成されたオレフィン系エラストマーなど)、ポリ塩化ビニル系エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマーなどが含まれる。脂肪族ポリエーテルとしては、(ポリ)オキシC2−4アルキレングリコール類(例えば、(ポリ)オキシエチレングリコール、(ポリ)オキシトリメチレングリコール、(ポリ)オキシプロピレングリコール、(ポリ)オキシテトラメチレングリコール、特にポリオキシエチレングリコール)などが使用でき、脂肪族ポリエステルとしては、ポリウレタン系樹脂の項で述べたポリエステルジオールなどが使用できる。これらの熱可塑性エラストマーは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0045】
熱可塑性エラストマーがブロック共重合体であるとき、ブロック構造は特に制限されず、トリブロック構造、マルチブロック構造、星形ブロック構造などであってもよい。
【0046】
好ましい熱可塑性エラストマーには、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマーが含まれる。
【0047】
(架橋性基を有する樹脂)
架橋性基を有する樹脂は、不飽和結合(重合性又は架橋性不飽和結合)を有する熱可塑性樹脂と、架橋性官能基を有する熱硬化性樹脂とに大別でき、架橋性樹脂は前記不飽和結合と架橋性官能基とを有していてもよい。
【0048】
(不飽和結合を有する熱可塑性樹脂)
本発明は、ラジカルに対して活性な不飽和結合を所定の濃度で含有する種々の熱可塑性樹脂とゴムとの接合にも利用できる。そのため、熱可塑性樹脂が不飽和結合を有しない樹脂や不飽和結合濃度が所定の濃度に達しない樹脂である場合には、不飽和結合を導入した変性樹脂又は改質樹脂として使用してもよい。前記不飽和結合は、加硫剤(ラジカル発生剤など)により活性化可能であれば特に限定されず、熱や光の付与により架橋性又は重合性を示す種々の結合(例えば、重合性不飽和結合)であってもよい。このような不飽和結合又は不飽和結合を有するユニットは、連結基(エーテル結合(−O−)、エステル結合(−OC(=O)−、−C(=O)O−)、アミド結合(−NHCO−,−CONH−)、イミノ結合(−NH−)、ウレタン結合(−NHC(=O)O−)、尿素結合、ビウレット結合など)を介して、熱可塑性樹脂に結合していてもよい。さらに、前記不飽和結合又はそのユニットは、樹脂の末端(主鎖末端)及び/又は側鎖に位置していてもよく、樹脂の主鎖に位置していてもよく、さらにはこれらを組み合わせた異なる部位に位置していてもよい。
【0049】
不飽和結合を有する基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、アリル基、2−メチル−2−プロペニル基、2−ブテニル基などのC2−6アルケニル基;4−ビニルフェニル基、4−イソプロペニルフェニル基などのC2−6アルケニル−C6−20アリール基;スチリル基などのC6−20アリール−C2−6アルケニル基;エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、プロパルギル基、2−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基などのC2−6アルキニル基;ビニレン基、メチルビニレン基、エチルビニレン基、1,2−ジメチルビニレンなどのモノ又はジC1−6アルキルビニレン基、クロロビニレン基などのハロビニレン基などの置換基を有していてもよいビニレン基;ビニリデン基;エチニレン基などが例示できる。
【0050】
不飽和結合を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、(1)反応性基(A)及び不飽和結合とを有する化合物と、前記反応性基(A)に対して反応可能な反応性基(B)を有する樹脂(熱可塑性樹脂など)との反応により生成する樹脂、(2)共重合又は共縮合により不飽和結合を導入した熱可塑性樹脂、(3)不飽和結合を有する樹脂と樹脂とで形成されたポリマーブレンド、(4)種々の有機反応(例えば、アセチレンを利用したレッペ反応によるビニル基の導入、ビニルリチウムなどの有機金属試薬を利用した不飽和結合の導入、カップリング反応による不飽和結合の導入など)により不飽和結合を導入した熱可塑性樹脂などが例示できる。好ましい樹脂は、前記樹脂(1)、(2)、又は(3)である。
【0051】
前記態様(1)において、少なくとも1つの反応性基(A)および少なくとも1つの不飽和結合を有する重合性化合物と、前記重合性化合物の反応性基(A)に対して反応性の反応性基(B)を有する樹脂とを反応させることにより、樹脂に不飽和結合を導入できる。
【0052】
重合性化合物の代表的な反応性基(A)としては、(A1)ヒドロキシル基、(A2)カルボキシル基又はその酸無水物基、(A3)アミノ基、(A4)エポキシ基、(A5)イソシアネート基などが例示でき、重合性化合物の反応性基(A)と樹脂の反応性基(B)との組み合わせとしては、次のような組み合わせが例示できる。なお、括弧内は反応性基(A)と反応性基(B)との結合形式を示す。
【0053】
(A1)ヒドロキシル基:
(B)カルボキシル基又はその酸無水物基(エステル結合)、イソシアネート基(エステル結合)
(A2)カルボキシル基又はその無水物基:
(B)ヒドロキシル基(エステル結合)、アミノ基(アミド結合)、エポキシ基(エステル結合)、イソシアネート基(アミド結合)
(A3)アミノ基:
(B)カルボキシル基又はその酸無水物基(アミド結合)、エポキシ基(イミノ結合)、イソシアネート基(アミド結合)
(A4)エポキシ基:
(B)カルボキシル基又はその酸無水物基(エステル結合)、アミノ基(イミノ結合)
(A5)イソシアネート基:
(B)ヒドロキシル基(エステル結合)、カルボキシル基又はその酸無水物基(アミド結合)、アミノ基(アミド結合)
前記樹脂の反応性基(B)に関し、ポリアミド系樹脂では、例えば、残存するカルボキシル基やアミノ基を反応性基(B)として利用でき、ポリエステル系樹脂では、例えば、残存するカルボキシル基やヒドロキシル基を反応性基(B)として利用できる。ポリ(チオ)エーテル系樹脂では、残存するヒドロキシル基、メルカプト基などを反応性基(B)として利用してもよく、ポリアセタール系樹脂では、残存するヒドロキシル基を反応性基(B)として利用できる。さらに、ポリカーボネート系樹脂では、残存するヒドロキシル基を反応性基(B)として利用でき、ポリイミド系樹脂では、残存するカルボキシル基や酸無水物基、アミノ基、イミノ基などを反応性基(B)として利用できる。さらに、ポリウレタン系樹脂では、例えば、残存するヒドロキシル基、アミノ基、イソシアネート基などを反応性基(B)として利用してもよく、(メタ)アクリル系樹脂では、反応性基(B)を有する単量体を共重合成分として用いることにより、前記反応性基(B)を導入できる。
【0054】
重合性化合物としては、ヒドロキシル基含有化合物[例えば、アリルアルコール、2−ブテン−1−オール、3−ブテン−2−オールなどのC3−6アルケノール、プロパルギルアルコールなどのC3−6アルキノール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレートなどのC2−6アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのポリオキシC2−6アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシ−α−メチルスチレンのなどのC2−6アルケニルフェノール、ジヒドロキシスチレン、ビニルナフトールなど]、カルボキシル基又は酸無水物基含有化合物[例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、3−ブテン酸などのC3−6アルケンカルボン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸などのC4−8アルケンジカルボン酸又はその無水物、ビニル安息香酸などの不飽和芳香族カルボン酸、ケイ皮酸など]、アミノ基含有化合物(例えば、アリルアミンなどのC3−6アルケニルアミン、4−アミノスチレン、ジアミノスチレンなど)、エポキシ基含有化合物(例えば、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートなど)、イソシアネート基化合物(例えば、ビニルイソシアネートなど)などが例示できる。
【0055】
なお、前記態様(1)において、樹脂として反応性基(B)を有していない樹脂や、反応性基(B)の濃度が低い樹脂を用いる場合、反応性基(B)を導入することにより樹脂を改質又は変性してもよい。樹脂に反応性基(B)を導入する方法としては、(i)樹脂の製造において、反応性基(B)を有する単量体(例えば、前記例示の重合性化合物など)と、樹脂材料(又は樹脂の原料である単量体やオリゴマー)とを共重合させる方法、(ii)酸化反応によるカルボキシル基の導入、ハロゲン化法、重合性単量体のグラフト法などの種々の有機反応が利用できる。なお、ビニル重合系樹脂では、通常、前記反応性基(B)を有する単量体を共重合成分として用いることにより前記反応性基(B)を導入する場合が多く、ビニル重合系樹脂を含めていずれの樹脂でも、前記反応性基を有する重合性化合物のグラフト反応により、前記反応性基(B)を容易に導入できる。
【0056】
前記態様(2)において、不飽和結合の導入方法としては、例えば、縮合系樹脂(例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂など)の調製において、反応成分の一部(コモノマー)として、多官能性の不飽和結合を有する化合物[例えば、脂肪族不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸などのC4−10脂肪族不飽和ジカルボン酸など)などの不飽和多価カルボン酸;脂肪族不飽和ジオール(2−ブテン−1,4−ジオールなどのC4−10脂肪族不飽和ジオールなど)などの不飽和多価アルコールなど]を共縮合(又は共重合)させる方法などが例示できる。また、付加重合系樹脂(例えば、オレフィン系樹脂など)においては、反応成分の一部(コモノマー)として、共役不飽和結合を有する単量体(例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、クロロプレンなどの置換基を有していてもよい共役C4−10アルカジエンなど)を共重合させる方法などが例示できる。
【0057】
前記態様(3)では、熱可塑性樹脂(A)と、不飽和結合を有する樹脂(B)とを混合してポリマーブレンド(又は樹脂組成物)を形成させることにより熱可塑性樹脂に不飽和結合を導入できる。
【0058】
前記熱可塑性樹脂(A)としては、特に限定されず、種々の熱可塑性樹脂[例えば、後述する熱可塑性樹脂(ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂など)など]が例示できる。また、熱可塑性樹脂(A)は、不飽和結合を有さない飽和樹脂であってもよく、不飽和結合を有する樹脂であってもよい。
【0059】
不飽和結合を有する樹脂(B)としては、前記樹脂(1)、(2)又は(4)などの不飽和結合が導入された熱可塑性樹脂、不飽和結合含有ゴム(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリペンテナマー、ポリヘプテナマー、ポリオクテナマー、ポリ(3−メチルオクテナマー)、ポリデセナマー、ポリ(3−メチルデセナマー)、ポリドデセナマーなどのポリC4−15アルケニレン、ブタジエン−イソプレン共重合体などのC4−15アルカジエンの共重合体、ブタジエン変性ポリエチレンなどのゴム変性ポリオレフィンなど)などが例示できる。なお、前記ポリC4−15アルケニレンは、シクロオレフィン類(例えば、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロデセン、シクロドデセンなどの置換基を有していてもよいC5−20シクロオレフィンなど)のメタセシス重合、ポリアルケニレン(例えば、ポリブタジエンなど)の部分水素添加などにより得てもよい。
【0060】
前記態様(4)において、前記樹脂(B)の割合は、ポリマーブレンドに所定の濃度で不飽和結合を導入できる範囲、例えば、樹脂(A)/樹脂(B)(重量比)=5/95〜95/5、好ましくは30/70〜95/5、さらに好ましくは50/50〜95/5程度である。また、樹脂(B)として不飽和結合含有ゴム(例えば、ポリオクテニレンなど)を用いる場合、樹脂(B)の割合は、樹脂(A)の性質を損なわない範囲で選択でき、例えば、樹脂(A)/樹脂(B)(重量比)=50/50〜95/5、好ましくは60/40〜95/5、さらに好ましくは70/30〜95/5程度である。
【0061】
なお、前記態様(4)の樹脂組成物において、樹脂(A)と樹脂(B)とが、ポリマーアロイ(海島構造を有するポリマーアロイなど)を形成していてもよい。
【0062】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂(ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂など)、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂などの縮合系熱可塑性樹脂;ポリオレフィン系樹脂、ハロゲン含有ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂などのビニル重合系熱可塑性樹脂;熱可塑性エラストマーなどが例示できる。これらの樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。二種以上の樹脂を組み合わせて用いる場合、樹脂組成物はポリマーアロイなどの複合樹脂組成物を形成してもよい。
【0063】
不飽和結合の割合は、樹脂の種類、不飽和結合の活性化の程度などにもよるが、例えば、樹脂一分子に対して、例えば、平均0.1個以上(例えば、0.1〜1000個)、好ましくは平均1個以上(例えば、1〜100個)、さらに好ましくは平均2個以上(例えば、2〜50程度)である。また、不飽和結合の濃度は、例えば、樹脂1kgに対して、0.001〜6.6モル、好ましくは0.01〜4モル(例えば、0.01〜1モル)、さらに好ましくは0.02〜2モル(例えば、0.05〜0.5モル)程度である。
【0064】
なお、ポリマーフレンドによる不飽和結合の導入において、不飽和結合の数は、各樹脂の重量分率に応じて不飽和結合を平均値として算出できるが、樹脂組成物中の不飽和結合の数を濃度モル/kgとして算出するのが便利である。
【0065】
(架橋性官能基を有する熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂としては、架橋剤(又は硬化剤)などの存在下で架橋性又は硬化性を示す官能基(例えば、メチロール基、アルコキシメチル基、エポキシ基、イソシアネート基など)を有する樹脂が挙げられる。このような熱硬化性樹脂としては、重縮合又は付加縮合系樹脂(フェノール樹脂、アミノ系樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド系樹脂、熱硬化性ポリウレタン系樹脂、シリコーン樹脂など)、付加重合系樹脂(不飽和ポリエステル系樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂など)が例示できる。熱硬化性樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0066】
(13)フェノール樹脂
フェノール樹脂には、ノボラック樹脂、レゾール樹脂などが含まれるが、通常ノボラック樹脂が用いられる。ノボラック樹脂は、酸触媒の存在下、フェノール類とアルデヒド類との反応により得られる。フェノール類としては、例えば、フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、2,5−、3,5−又は3,4−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、エチルフェノール、プロピルフェノールなどのC1−4アルキルフェノール、ジヒドロキシベンゼン、レゾルシノール、ナフトールなどが例示できる。これらのフェノール類は単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドなどの脂肪族アルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒドなどの芳香族アルデヒドなどが例示できる。これらのアルデヒド類は単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0067】
(14)アミノ系樹脂
アミノ系樹脂は、通常、アミノ基含有化合物とアルデヒド類(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドなどの脂肪族アルデヒド、フェニルアセトアルデヒドなどの芳香族アルデヒドなど)との反応により得られる。アミノ系樹脂には、尿素樹脂(尿素とアルデヒド類との反応により得られる尿素樹脂など)、アニリン樹脂(アニリン、ナフチルアミン、トルイジン、キシリジン、N,N−ジメチルアニリン、ベンジジンなどのアニリン類と、アルデヒド類との反応により得られるアニリン樹脂など)、メラミン樹脂(メラミンとアルデヒド類との反応により得られるメラミン樹脂など)、グアナミン樹脂(ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ホルモグアナミンなどのグアナミン類と、アルデヒド類との反応により得られるグアナミン樹脂など)などが含まれる。
【0068】
(15)エポキシ系樹脂
エポキシ系樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、アミン系エポキシ樹脂などが含まれる。
【0069】
ビスフェノール型エポキシ樹脂を構成するビスフェノールとしては、例えば、4,4−ビフェノール、2,2−ビフェノール、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールAなどのグリシジルエーテル類が例示できる。
【0070】
ノボラック型エポキシ樹脂を構成するノボラック樹脂としては、例えば、前記ノボラック樹脂の項に記載のフェノール類とアルデヒド類との反応により得られるノボラック樹脂などが例示できる。
【0071】
アミン系エポキシ樹脂を構成するアミン成分としては、例えば、アニリン、トルイジンなどの芳香族アミン、ジアミノベンゼン、キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン、アミノヒドロキシベンゼン、ジアミノジフェニルメタンなどが例示できる。
【0072】
(16)熱硬化性ポリイミド系樹脂
熱硬化性ポリイミド系樹脂には前記ポリイミド系樹脂の項で記載の樹脂(例えば、閉環可能な複数のイミド基を有する硬化性樹脂組成物)が含まれる。
【0073】
(17)熱硬化性ポリウレタン系樹脂
熱硬化性ポリウレタン系樹脂には前記ポリウレタン系樹脂の項で記載の樹脂(例えば、複数の遊離のイソシアネート基を有するプレポリマーと、ポリエステルポリオールなどのポリオール成分とで構成された硬化性樹脂組成物)が含まれる。
【0074】
(18)シリコーン樹脂
シリコーン樹脂には、式:RaSiO(4−a)/2で表される単位(式中、係数aは1.9〜2.1程度)と、式:RbSiO(4−b)/2で表される単位(式中、係数bは0.9〜1.1程度)とで構成されたシリコーン樹脂などが含まれる。式中、Rは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのC1−10アルキル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基などのハロゲン化C1−10アルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基などのC2−10アルケニル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基などのC6−12アリール基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC3−10シクロアルキル基、ベンジル基、フェネチル基などのC6−12アリール−C1−4アルキル基などが挙げられる。
【0075】
(19)不飽和ポリエステル系樹脂
不飽和ポリエステル系樹脂としては、前記ポリエステル系樹脂において、ジカルボン酸成分として、不飽和ジカルボン酸又はその無水物(例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸など)を用いた不飽和ポリエステルなどが挙げられる。
【0076】
(20)ビニルエステル樹脂
ビニルエステル樹脂としては、前記エポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸との反応により得られる重合体、多価フェノール類とグリシジル(メタ)アクリレートとの反応により得られる重合体などが挙げられる。
【0077】
(21)ジアリルフタレート樹脂
ジアリルフタレート樹脂には、ジアリルオルソフタレート、ジアリルイソフタレートなどのジアリルフタレートモノマーから得られる樹脂などが含まれる。
【0078】
(22)熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂
熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂には、前記(メタ)アクリル系樹脂の項で記載の樹脂(ヒドロキシル基などの反応性基を有する(メタ)アクリル系樹脂と硬化剤とで構成された樹脂組成物など)が含まれる。
【0079】
なお、樹脂が熱可塑性樹脂および架橋性基を有する樹脂(特に熱硬化性樹脂を除く架橋性樹脂)である場合、ラジカルに対して高い活性を示す複数の水素原子(活性水素原子)又は硫黄原子(活性硫黄原子)(以下、これらの水素原子及び硫黄原子を活性原子と称することがある)を有していてもよい。樹脂は前記活性水素原子、活性硫黄原子から選択された少なくとも一方の活性原子を有していればよく、活性水素原子と活性硫黄原子の双方の活性原子を有していてもよい。
【0080】
前記活性原子を有する樹脂を用いると、加硫ゴム層、ひいては加硫ゴム部材との接合をより強固にできる。すなわち、活性原子を有する樹脂は、下記式で表される軌道相互作用エネルギー係数Sが一定値(例えば、0.006、好ましくは0.008)以上の活性原子を有していてもよい。好ましい活性原子の軌道相互作用エネルギー係数Sは、0.006〜0.06、好ましくは0.007〜0.05(特に0.01〜0.045)程度である。この活性原子の数は、活性原子を有する官能基の結合部位(末端、分岐鎖や主鎖など)に依存し、例えば、樹脂の一分子中、平均2個以上(2〜10000個程度)、好ましくは平均2.5個以上(2.5〜5000個程度)、さらに好ましくは平均3個以上(3〜1000個程度)]であってもよい。
【0081】
S=(CHOMO,n)2/|Ec−EHOMO,n|+(CLUMO,n)2/|Ec−ELUMO,n|
(1)
(式中、Ec、CHOMO,n、EHOMO,n、CLUMO,n、ELUMO,nは、いずれも半経験的分子軌道法MOPACPM3により算出された値であって、Ecはラジカル発生剤のラジカルの軌道エネルギー(eV)を示し、CHOMO,nは熱可塑性樹脂の基本単位を構成する第n番目の活性原子(水素原子又は硫黄原子)の最高被占分子軌道(HOMO)の分子軌道係数を示し、EHOMO,nは前記HOMOの軌道エネルギー(eV)を示し、CLUMO,nは前記n番目の活性原子(水素原子又は硫黄原子)の最低空分子軌道(LUMO)の分子軌道係数を示し、ELUMO,nは前記LUMOの軌道エネルギー(eV)を示す)
式(1)での基本単位とは、高分子の末端と、1〜3個程度の繰返単位とで形成したモデル的な分子構造を意味する。すなわち、MOPACPM3で高分子化合物について計算する場合、分子を構成する原子の数が多すぎるため、分子そのものを対象として計算するのが困難である。そのため、高分子の末端と、2〜3個程度の繰り返し単位とで形成した分子構造モデル(基本単位)を対象にして計算を行ってもよい。例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)の分子構造(繰返単位)は、一般に、化学式−(CH2−CH2−CH2−CH2−O−C(=O)−C6H4−C(=O)−O)n−で表されるが、前記式(1)では、基本単位を、便宜的にHO−CH2−CH2−CH2−CH2−O−C(=O)−C6H4−C(=O)−OHとして計算してもよい。
【0082】
なお、ラジカル発生剤のラジカルの軌道エネルギーEc(eV)は、ラジカルの分子構造に基づいて、MOPACPM3により計算するのが好ましいが、ラジカル発生剤の種類に基づいて、便宜上、所定の値を用いてもよい。例えば、ラジカル発生剤が有機過酸化物ではEc=−8eV、アゾ化合物ではEc=−5eV、硫黄を除く硫黄含有有機化合物ではEc=−6eVとして計算してもよい。
【0083】
軌道相互作用エネルギー係数Sが所定値(例えば、0.006)以上である水素原子(活性水素原子)としては、ラジカル発生剤が有機過酸化物の場合、アミノ(−NH2)基(例えば、末端アミノ基)、イミノ(−NH−)基(例えば、主鎖又は末端イミノ基、アミド結合の−NH−基など)、メルカプト(−SH)基、メチル(−CH3)基、メチレン(−CH2−)基(電子吸引性基に隣接するメチレン基、すなわち活性メチレン基)、メチリジン(−CH=)基(主鎖又は末端のメチリジン基)などの水素原子が挙げられる。
【0084】
また、軌道相互作用エネルギー係数Sが所定値(例えば、0.006)以上である硫黄原子(活性硫黄原子)としては、ラジカル発生剤が有機過酸化物の場合、チオ基(−S−)、メルカプト(−SH)基、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基などのC1−4アルキルチオ基など)、スルフィニル基(−SO−)などの硫黄原子が挙げられる。
【0085】
前記メチル基としては、例えば、アルキレン鎖、シクロアルキレン鎖又は芳香族環に結合するメチル基、酸素原子に結合するメチル基(メトキシ基のメチル基)などが例示できる。メチレン基としては、例えば、(ポリ)オキシメチレン単位、(ポリ)オキシエチレン単位などの(ポリ)オキシアルキレン単位の酸素原子に隣接するメチレン基の他、アミノ基やイミノ基などの窒素原子に隣接するメチレン基などが例示できる。メチリジン基としては、例えば、アミノ基又はイミノ基に隣接するα−位のメチリジン基、例えば、アミノシクロアルキル基のアミノ基に対するα−位のメチリジン基などが例示できる。
【0086】
活性原子数は、樹脂が、一般に単一分子ではなく、構造や鎖長などがいくらか異なる多数の分子の混合物であるため、予想される主たる複数の基本単位について計算すればよい。例えば、繰返単位−(NH−(CH2)6−NH−C(=O)−(CH2)4−(C=O))n−を有するポリマー(ポリアミド66)に含まれる活性水素原子の数は、モデル基本単位NH2−(CH2)6−NH−C(=O)−(CH2)4−C(=O)−OHに基づいて計算でき、ラジカル発生剤が有機過酸化物のとき、末端NH2基の2つの水素原子が活性水素原子(すなわち、S≧0.006)である。この場合、ポリアミド66について一分子中の活性水素原子の平均数Nは、集合体としてのポリマー(ポリアミド66)の末端NH2基と末端COOH基との比率により下記式(2)に基づいて算出できる。
【0087】
N=2×A (2)
(式中、Aは一分子中の平均の末端NH2基の数を示す)
例えば、末端NH2基/末端COOH基=1/1(モル比)の場合、一分子中の末端NH2基の数A=1個、一分子中の活性水素原子の数N=2個である。また、末端NH2基/末端COOH基=1/2(モル比)の場合、一分子中の末端NH2基の数A=2/3個、一分子中の活性水素原子の数N=4/3個である。
【0088】
なお、樹脂が異なる活性原子数を有する複数の樹脂で構成された混合樹脂である場合、混合樹脂の活性原子数は、各樹脂が有する活性原子数の平均値で表すこともできる。つまり、混合樹脂を構成する各樹脂の基本単位から活性原子数を個別に算出し、各樹脂の重量割合をもとにして活性原子数の平均を算出することにより、混合樹脂の見かけ上の活性原子数を算出できる。例えば、混合樹脂が、前記N=2個のポリアミド66(A)と、前記N=4/3個のポリアミド66(B)とで構成され、(A)/(B)=1/1(モル比)である場合、混合樹脂一分子中の活性原子数は、N=5/3個とみなすことができる。また、混合樹脂が、前記N=2個のポリアミド66(A)と、全末端がカルボキシル基(つまりN=0個)であるポリアミド66(C)とで構成され、(A)/(C)=3/1(モル比)である場合、混合樹脂一分子中の活性原子数は、N=3/2個とみなすことができる。
【0089】
前記例示の樹脂のうち、このような活性原子を有する樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、熱可塑性エラストマー、アミノ系樹脂、エポキシ樹脂などが含まれる。
【0090】
ポリアミド系樹脂において、例えば、末端アミノ基の水素原子や、末端アミノ基に対してα−位の炭素原子に結合する水素原子、アミド結合の−NH−基に隣接する炭素原子に結合する水素原子(メチレン基の水素原子やメチリジン基の水素原子など)、特に末端アミノ基の水素原子が活性水素原子を構成する。
【0091】
ポリエステル系樹脂では、通常、(ポリ)オキシアルキレン単位の酸素原子に隣接するメチレン基の水素原子が活性水素原子を構成し、変性ポリエステル系樹脂では、通常、末端アミノ基の水素原子や、末端アミノ基に対してα−位の炭素原子に結合する水素原子、アミド結合の−NH−基に隣接する炭素原子に結合する水素原子(メチレン基の水素原子やメチリジン基の水素原子など)、特に末端アミノ基の水素原子が活性水素原子を構成する。
【0092】
ポリアセタール系樹脂では、例えば、オキシメチレン単位の水素原子、末端を封鎖したアルコキシ基(特にメトキシ基)の水素原子、特にオキシメチレン単位の水素原子が活性水素原子を構成し、ポリフェニレンエーテル系樹脂では、例えば、ベンゼン環に結合するメチル基の水素原子が活性水素原子を構成し、ポリスルフィド系樹脂では、例えば、主鎖中のチオ基がそれぞれ活性原子を構成する。
【0093】
ポリウレタン系樹脂では、例えば、ジイソシアネート類の主鎖又は環に結合するアルキル基の水素原子(特に、ベンジル位の水素原子)、ポリオール類やポリオキシアルキレングリコールのアルキレン基の水素原子、鎖伸長剤のアミノ基の水素原子などが活性水素原子を構成する。
【0094】
ポリウレタン系樹脂では、例えば、ジイソシアネート類の主鎖又は環に結合するアルキル基の水素原子(特に、ベンジル位の水素原子)、ポリオール類やポリオキシアルキレングリコールのアルキレン基の水素原子、鎖伸長剤のアミノ基の水素原子などが活性水素原子を構成する。ポリオレフィン系樹脂では、例えば、ポリオレフィンの主鎖を構成するメチレン基の水素原子、前記主鎖から分岐するメチル基の水素原子などが活性水素原子を構成する。熱可塑性エラストマーでは、例えば、軟質相を構成するオキシアルキレン単位の水素原子が活性水素原子を構成してもよい。
【0095】
アミノ系樹脂では、例えば、アミノ基(例えば、メラミン、グアナミンなどを構成するアミノ基など)などが活性水素原子を構成する。エポキシ系樹脂では、例えば、エポキシ基を構成する炭素原子に結合する水素原子などが活性水素原子を構成する。
【0096】
樹脂部材を形成するための樹脂組成物(特に架橋性基を有する樹脂)は、架橋を促進するための架橋促進剤を含んでいてもよい。架橋促進剤は樹脂の種類に応じて選択することができ、例えば、樹脂が架橋性官能基を有する樹脂である場合には、酸類、塩基類や硬化剤(有機系硬化剤、無機系硬化剤など)などを用いると架橋(又は硬化)を著しく促進できる。
【0097】
このような架橋促進剤には、ラジカル発生剤(後述するラジカル発生剤など)、酸類(酢酸などの脂肪酸類、p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸類、安息香酸などの芳香族脂肪酸類などの有機酸類、塩酸などの無機酸類など)、塩基類(トリエチルアミンなどの脂肪族アミン、アニリンなどの芳香族アミン、ピリジンなどのヘテロ環式アミンなど)、有機系硬化剤[多価カルボン酸又はその酸無水物(例えば、グリオキザール、マロンジアルデヒド、グルタルアルデヒド、テレフタルアルデヒドなど)、複数のアルデヒド基を有する化合物、エポキシ化合物(例えば、アルキレングリコールジグリシジルエーテル、ポリオキシアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどの複数のエポキシ基を有する化合物など)、窒素含有化合物(例えば、尿素樹脂、グアナミン樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂、前記(7)ポリウレタン系樹脂の項に記載のジアミン類など)、メチロール基又はアルコキシメチル基を有する化合物(例えば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド基を有する重合体など)、ポリイソシアネートなど]、無機系硬化剤[ホウ酸又はホウ酸塩(ホウ砂など)、ジルコニウム化合物、チタニウム化合物、アルミニウム化合物、リン化合物、シランカップリング剤など]、硬化触媒(有機スズ化合物、有機アルミニウム化合物など)などが含まれる。これらの架橋促進剤は単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
【0098】
また、樹脂部材を形成するための樹脂組成物は、種々の添加剤、例えば、フィラー又は補強剤、安定剤(紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤)、着色剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤などを含んでいてもよい。
【0099】
[ゴム部材(加硫ゴム部材)]
(ゴム)
ゴム部材(加硫ゴム部材)は、加硫剤とゴムとを含有するゴム組成物を成形(加硫)することにより得られる。本発明では種々のゴムを強固に接合できるので、前記ゴムの種類は特に制限されない。
【0100】
ゴムとしては、ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、アクリル系ゴム、フッ素ゴム、シリコーン系ゴム、ウレタン系ゴム、エピクロロヒドリンゴム(エピクロロヒドリン単独重合体CO、エピクロロヒドリンとエチレンオキサイドとの共重合体ECO、アリルグリシジルエーテルをさらに共重合させた共重合体など)、クロロスルホン化ポリエチレン、プロピレンオキシドゴム(GPO)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EAM)、ポリノルボルネンゴム、及びこれらの変性ゴム(酸変性ゴムなど)などが例示できる。これらのゴムは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのゴムのうち、通常、ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、アクリル系ゴム、フッ素ゴム、シリコーン系ゴム、ウレタン系ゴムなどが実用的な観点から広く使用される。
【0101】
ジエン系ゴムには、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、イソブチレンイソプレンゴム(ブチルゴム)(IIR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)などのジエン系単量体の重合体;例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム)(NBR)、ニトリルクロロプレンゴム(NCR)、ニトリルイソプレンゴム(NIR)などのアクリロニトリル−ジエン共重合ゴム;スチレンブタジエンゴム(SBR、例えば、スチレンとブタジエンとのランダム共重合体、スチレンブロックとブタジエンブロックとで構成されたSBブロック共重合体など)、スチレンクロロプレンゴム(SCR)、スチレンイソプレンゴム(SIR)などのスチレン−ジエン共重合ゴムなどが含まれる。ジエン系ゴムには、水添ゴム、例えば、水素添加ニトリルゴム(HNBR)なども含まれる。スチレン−ジエン共重合ゴムはランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。スチレン−ジエン共重合ゴム中のスチレン成分の割合は、例えば、10〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、さらに好ましくは30〜60重量%(例えば、40〜50重量%)程度であってもよい。
【0102】
オレフィン系ゴムとしては、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDMなど)、ポリオクテニレンゴムなどが例示できる。
【0103】
アクリル系ゴムには、アクリル酸アルキルエステルを主成分とするゴム、例えば、アクリル酸アルキルエステルと塩素含有架橋性単量体との共重合体ACM、アクリル酸アルキルエステルとアクリロニトリルとの共重合体ANM、アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基及び/又はエポキシ基含有単量体との共重合体、エチレンアクリルゴムなどが例示できる。
【0104】
フッ素ゴムとしては、フッ素含有単量体を用いたゴム、例えば、フッ化ビニリデンとパーフルオロプロペンと必要により四フッ化エチレンとの共重合体FKM、四フッ化エチレンとプロピレンとの共重合体、四フッ化エチレンとパーフルオロメチルビニルエーテルとの共重合体FFKMなどが例示できる。
【0105】
シリコーンゴム(Q)は、式:RaSiO(4−a)/2で表される単位で構成されたオルガノポリシロキサンである。式中、Rは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのC1−10アルキル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基などのハロゲン化C1−10アルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基などのC2−10アルケニル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基などのC6−12アリール基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC3−10シクロアルキル基、ベンジル基、フェネチル基などのC6−12アリール−C1−4アルキル基などが挙げられる。式中、係数aは1.9〜2.1程度である。好ましいRは、メチル基、フェニル基、アルケニル基(ビニル基など)、フルオロC1−6アルキル基である。
【0106】
シリコーンゴムの分子構造は、通常、直鎖状であるが、一部分岐構造を有していてもよく、分岐鎖状であってもよい。シリコーンゴムの主鎖は、例えば、ジメチルポリシロキサン鎖、メチルビニルポリシロキサン鎖、メチルフェニルポリシロキサン鎖、これらのシロキサン単位の共重合体鎖[ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン共重合体鎖、ジメチルシロキサン−メチルフェニルシロキサン共重合体鎖、ジメチルシロキサン−メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサン共重合体鎖、ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン−メチルフェニルシロキサン共重合体鎖など]で構成できる。シリコーンゴムの両末端は、例えば、トリメチルシリル基、ジメチルビニルシリル基、シラノール基、トリC1−2アルコキシシリル基などであってもよい。
【0107】
シリコーンゴム(Q)には、例えば、メチルシリコーンゴム(MQ)、ビニルシリコーンゴム(VMQ)、フェニルシリコーンゴム(PMQ)、フェニルビニルシリコーンゴム(PVMQ)、フッ化シリコーンゴム(FVMQ)などが含まれる。さらに、シリコーン系ゴムには、上記高温加硫型HTV(High Temperature Vulcanizable)の固形ゴムに限らず、室温加硫型RTV(Room Temperature Vulcanizable)又は低温加硫型LTV(Low Temperature Vulcanizable)シリコーンゴム、例えば、液状又はペースト状ゴムも含まれる。
【0108】
ウレタンゴム(U)としては、例えば、ポリエステル型ウレタンエラストマー、ポリエーテル型ウレタンエラストマーなどが含まれる。
【0109】
変性ゴムとしては、酸変性ゴム、例えば、カルボキシル化スチレンブタジエンゴム(X−SBR)、カルボキシル化ニトリルゴム(X−NBR)、カルボキシル化エチレンプロピレンゴム(X−EP(D)M)などのカルボキシル基又は酸無水物基を有するゴムが含まれる。
【0110】
(加硫剤)
前記ゴムは種々の加硫剤で加硫でき、加硫剤の種類は特に制限されない。例えば、加硫剤としては、硫黄、硫黄含有化合物などの硫黄系加硫剤、非硫黄系加硫剤(例えば、有機過酸化物などのラジカル発生剤系加硫剤)のいずれも使用できる。硫黄としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などが例示できる。
【0111】
硫黄系加硫剤のうち硫黄含有化合物には、例えば、塩化硫黄(一塩化硫黄、二塩化硫黄など)、ジチオ複素環化合物(4,4’−ジチオモルホリンなどのジチオ基含有化合物)、メルカプト基含有トリアジン類(2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−S−トリアジン、2,4,6−トリメルカプト−S−トリアジンなどのメルカプト基含有化合物など)、チウラム類(テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)など)、ジチオカルバミン酸塩類(ジメチルジチオカルバミン酸、ジエチルジチオカルバミン酸などのジC1−4アルキルジチオカルバミン酸と、ナトリウム、カリウム、鉄、銅、亜鉛、セレン又はテルルとの塩など)、チアゾール類(2−メルカプトベンゾチアゾ−ル、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなど)などが含まれる。
【0112】
好ましい加硫剤は、広範囲の樹脂部材との組合せが可能なラジカル発生剤系加硫剤である。この加硫剤は、ラジカル発生剤として機能し、ゴムを活性化して強固な接合を形成する。
【0113】
加硫剤としてのラジカル発生剤としては、種々のラジカル発生剤が使用でき、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物、硫黄を除く硫黄含有有機化合物などから選択できる。なお、硫黄は、イオン的な反応を引き起こし、ラジカルの発生効率がかなり低いだけでなく、発生したラジカルをトラップするため、ラジカル発生剤には含まれない。前記ラジカル発生剤は単独で又は二種以上組合せて使用できる。
【0114】
有機過酸化物としては、過酸化ジアシル類(ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、4−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイドなど)、過酸化ジアルキル類(ジ−t−ブチルぺルオキシド、2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルへキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルへキセン−3,1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルペルオキシドなど)、過酸化アルキル類(t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイドなど)、アルキリデンペルオキシド類(エチルメチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなど)、過酸エステル類(過酢酸t−ブチル、過ピバリン酸t−ブチルなど)などが挙げられる。
【0115】
アゾ化合物には、アゾビスイソブチロニトリルなどが含まれる。なお、前記硫黄含有有機化合物のうち、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類、チアゾ−ル類はラジカル発生剤として機能させることもできる。
【0116】
光照射可能であれば、ラジカル発生剤として光重合開始剤も利用できる。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン又はその誘導体(3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4,4−ジメトキシベンゾフェノンなど)、アルキルフェニルケトン又はその誘導体(アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(モルホリノフェニル)−ブタノンなど)、アントラキノン又はその誘導体(2−メチルアントラキノンなど)、チオキサントン又はその誘導体(2−クロロチオキサントン、アルキルチオキサントンなど)、ベンゾインエーテル又はその誘導体(ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテルなど)、ホスフィンオキシド又はその誘導体などが例示できる。さらに、ラジカル発生剤には、過硫酸塩(過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなど)も含まれる。
【0117】
これらの化合物のうち好ましいラジカル発生剤は有機過酸化物である。
【0118】
加硫剤の割合は、例えば、未加硫ゴム100重量部に対して、0.5〜15重量部程度の範囲から選択でき、通常、1〜10重量部程度、好ましくは1〜8重量部(例えば、2〜7重量部)程度、さらに好ましくは3〜5重量部程度である。
【0119】
ラジカル発生剤の割合は、未加硫ゴム100重量部に対して、例えば、0.5〜15重量部程度の範囲から選択でき、通常、1〜10重量部程度、好ましくは1〜8重量部(例えば、2〜7重量部)程度である。
【0120】
なお、加硫剤(例えば、硫黄系加硫剤)は、種々の化合物、例えば、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉛などの多価金属酸化物)、キノンジオキシム(p−キノンジオキシム、p,p’−ベンゾイルキノンジオキシムなど)、ポリp−ジニトロベンゼン、変性フェノール樹脂(アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂など)などと組み合わせて使用してもよい。
【0121】
[加硫ゴム層(又は中間層)]
本発明では、加硫ゴム部材と樹脂部材とを、加硫剤により加硫した加硫ゴム層(加硫剤を含む未加硫ゴム組成物の加硫ゴム層又は中間層)を介して接合している。このような構成では、ゴムとゴムとが接着しやすいことを利用して、前記加硫ゴム部材のゴムの種類や処方などが異なっても、幅広い樹脂と確実かつ強固に接合できる。このことは、既に実用化されているゴム部材について、その処方を変更することなく、加硫ゴム部材と樹脂部材とが強固に接合した複合体を容易かつ確実に製造できることを意味している。
【0122】
加硫ゴム層のゴムとしては、前記加硫ゴム部材と同様に広い範囲、例えば、ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、アクリル系ゴム、フッ素ゴム、シリコーン系ゴム、ウレタン系ゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、プロピレンオキシドゴム(GPO)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EAM)、ポリノルボルネンゴム、これらの変性ゴム(酸変性ゴムなど)などから選択できる。これらのゴムは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0123】
加硫ゴム層のゴムとして、加硫ゴム部材のゴムと同系統(好ましくは同種)のゴムを用いると、確実に接合強度を向上できる。例えば、ゴム部材が硫黄加硫系ジエン系ゴム(IIR,NBR,SBRなど)であっても、加硫ゴム層のゴムとして同系統(分子構造が類似するゴム、例えば、EPDMなどのオレフィン系ゴムなど)のゴムを使用でき、同一のゴムでなくとも同種(ジエン系ゴム)のゴムを使用すると、より高い接合強度が得られる。
【0124】
加硫剤としては、硫黄系加硫剤(硫黄や硫黄含有化合物)、ラジカル発生剤系加硫剤(有機過酸化物などの過酸化物系加硫剤など)のいずれであってもよいが、加硫ゴム部材の加硫に利用される加硫剤と同系統(特に同種)の加硫剤を選択するのが好ましい。硫黄系加硫剤及びラジカル発生剤系加硫剤としては、前記と同様の化合物が例示できる。好ましい加硫剤は、広範囲の樹脂との接合が可能なラジカル発生剤系加硫剤(特に有機過酸化物)である。
【0125】
ラジカル発生剤系加硫剤の割合は、未加硫ゴム100重量部に対して、例えば、0.5〜15重量部程度の範囲から選択でき、通常、1〜10重量部程度、好ましくは1〜8重量部(例えば、2〜7重量部)程度である。
【0126】
[加硫活性剤]
加硫ゴム部材と樹脂部材とを確実に接合するため、加硫ゴム層、加硫ゴム部材および樹脂部材の少なくとも1つの層又は部材は、加硫活性剤を含む組成物で形成するのが有利である。すなわち、前記加硫ゴム層を形成するための未加硫ゴム組成物、加硫ゴム部材及び樹脂部材のうち少なくとも1つの成分は、加硫活性剤を含んでいてもよい。加硫活性剤は、通常、少なくとも未加硫ゴム組成物(中間層用組成物)又は樹脂部材のいずれか一方に含有されていてもよい。特に、少なくとも未加硫ゴム組成物(中間層用組成物)にラジカル発生剤系加硫剤と共に加硫活性剤(硬化剤などと称する場合もある)を含有させると、加硫活性剤が、ゴムの加硫を促進するのみならず、中間層のゴム分子と樹脂部材の樹脂分子との架橋を促進するため、加硫ゴム部材と樹脂部材との接合をより容易にする。例えば、樹脂がポリアミド系樹脂であるとき、ラジカル発生剤と加硫活性剤とを組み合わせて用いると、中間層を介して樹脂部材と加硫ゴム部材との間で架橋反応が進行し、両者を確実かつ強固に結合できる。なお、加硫活性剤は、ゴムの加硫促進とゴムと樹脂との間の架橋形成に必要な量が存在すればよく、必要以上の添加はゴムや樹脂の物性の低下を招く場合があるので、適宜、適正な添加量を選択できる。
【0127】
前記加硫活性剤としては、炭素−炭素二重結合(重合性不飽和結合)を有する有機化合物〔例えば、ビニル系単量体(ジビニルベンゼンなど)、アリル系単量体(ジアリルフタレート、トリアリルホスフェート、トリアリル(イソ)シアヌレートなど)、(メタ)アクリル系単量体など〕、マレイミド系化合物などが挙げられる。これらの加硫活性剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。加硫活性剤としては、通常、2以上の複数の重合性不飽和結合を有する多官能性の加硫活性剤が使用される。
【0128】
(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、二官能性(メタ)アクリレート類[エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのC2−10アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリC2−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのC2−4アルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレートなど〕、三官能性又は多官能性(メタ)アクリレート類[グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなど]などが例示できる。
【0129】
複数のマレイミド基を有するマレイミド化合物は、ポリアミンと無水マレイン酸との反応により得ることができる。マレイミド系化合物には、例えば、芳香族ビスマレイミド(N,N’−1,3−フェニレンジマレイミド、N,N’−1,4−フェニレンジマレイミド、N,N’−3−メチル−1,4−フェニレンジマレイミド、4,4’−ビス(N,N’−マレイミド)ジフェニルメタン、4,4’−ビス(N,N’−マレイミド)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(N,N’−マレイミド)ジフェニルエーテルなど)、脂肪族ビスマレイミド(N,N’−1,2−エチレンビスマレイミド、N,N’−1,3−プロピレンビスマレイミド、N,N’−1,4−テトラメチレンビスマレイミドなど)などが例示できる。
【0130】
好ましい加硫活性剤は、一分子中に複数(例えば、2〜6個、特に3〜6個程度)の炭素−炭素二重結合(重合性不飽和結合)を有する化合物、例えば、トリアリル(イソ)シアヌレート、二官能乃至多官能性(メタ)アクリレート(特に三官能性又は多官能性(メタ)アクリレート)、芳香族マレイミド化合物などが含まれる。
【0131】
本発明において加硫活性剤の添加は必須ではない。例えば、架橋性基を有する樹脂や架橋性基の数、使用するゴム材料の種類によっては、加硫活性剤が存在しなくても両部材の接合は可能である。しかし、多くの場合、ゴム部材と樹脂部材とを確実に接合するため、加硫活性剤を添加する方が有利である。加硫活性剤は、中間層の未加硫ゴム(又は未加硫ゴム組成物)及び樹脂(又は樹脂組成物)のうち少なくともいずれか一方の成分に添加する場合が多く、双方の成分に添加してもよい。さらに、前記加硫ゴム部材を形成するためのゴム(未加硫ゴム)に加硫活性剤を添加してもよい。なお、樹脂が、架橋性不飽和結合含有基を有する樹脂である場合は、樹脂成分に加硫活性剤を添加することにより、樹脂−ゴム間の架橋を活性化させ、樹脂部材と中間層との接合を強固にできる場合が多い。
【0132】
加硫活性剤の使用量は、使用する加硫活性剤の種類や、添加する成分の種類(未加硫ゴム及び/又は樹脂)によって異なるが、通常、樹脂とゴムとの接着を促進可能な量、例えば、ゴム及び樹脂から選択された少なくとも一種の成分100重量部に対して、加硫活性剤0.1〜10重量部程度、好ましくは0.1〜5重量部程度、さらに好ましくは0.1〜3重量部程度の範囲から選択できる。例えば、加硫活性剤が多価アルコールのメタクリル酸エステルである場合、加硫活性剤の添加量は、ゴム及び樹脂から選択された少なくとも一種の成分100重量部に対して0.1〜10重量部程度、好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜3重量部、実用的には0.1〜1.9重量部(例えば0.5重量部や1.0重量部)である。また、ゴムと樹脂の双方に添加する場合、樹脂に対する添加量は少量であってもよく、樹脂100重量部に対して、加硫活性剤0.1〜7重量部程度、好ましくは0.1〜5重量部程度、さらに好ましくは0.1〜3重量部程度であってもよい。
【0133】
なお、加硫活性剤の添加は、ゴム成分への添加であっても、樹脂成分への添加であっても、被添加材(ゴム又は樹脂)100重量部に対して10重量部を超えることは好ましくなく、5重量部以上の添加は注意を要し、事前に被添加材への影響を検討する必要がある。被添加材への影響に特段の配慮をすることなく、ゴム部材と樹脂部材との十分な接合強度を得るには、加硫活性剤の添加量は、被添加材がゴムの場合、ゴム100重量部に対して、2重量部以下、例えば、0.1〜1.9重量部(例えば、0.5〜1.9重量部)程度であり、被添加材が樹脂の場合、樹脂100重量部に対して、5重量部以下、例えば、0.1〜5重量部(例えば、3〜5重量部)程度である。
【0134】
なお、加硫活性剤をゴムに添加する場合、加硫剤(特にラジカル発生剤系加硫剤)と加硫活性剤との割合は、例えば、前者/後者=0.3/1〜20/1(例えば、0.5/1〜20/1)(重量比)程度、好ましくは0.4/1〜15/1(例えば、1/1〜15/1)(重量比)程度、さらに好ましくは0.5/1〜10/1(例えば、2/1〜10/1)(重量比)程度であってもよい。
【0135】
[加硫助剤]
本発明では、接着の効率を高めるため、さらに加硫助剤を用いてもよい。ゴムや樹脂の種類によっては、加硫助剤を添加することにより、ゴム部材と樹脂部材の接合をより強固にできる。加硫助剤は、中間層の未加硫ゴム(又は未加硫ゴム組成物)、加硫ゴム部材の未加硫ゴム(又は未加硫ゴム組成物)及び樹脂(又は樹脂組成物)のうち少なくともいずれかの成分に添加すればよく、全ての成分や、中間層の未加硫ゴム(又は未加硫ゴム組成物)及び樹脂(又は樹脂組成物)の双方の成分に添加してもよい。通常、加硫助剤は、中間層の未加硫ゴム(又は未加硫ゴム組成物)及び樹脂(又は樹脂組成物)のうち少なくとも一方の成分(特に樹脂又は樹脂組成物)に添加する場合が多い。この場合、必要であれば、加硫ゴム部材の未加硫ゴムに加硫助剤を添加してもよい。
【0136】
加硫助剤は、樹脂やゴムの種類に応じて選択でき、例えば、縮合系熱可塑性樹脂のオリゴマー(例えば、前記ポリアミド系樹脂のオリゴマー、前記ポリエステル系樹脂のオリゴマーなどの数平均分子量100〜1000程度のオリゴマーなど。但し、加硫助剤として用いる場合、オリゴマーは必ずしも前述のような架橋性基を有している必要はない。),ポリアミン類(例えば、前記(7)ポリウレタン系樹脂の項に記載のジアミン類など)、ポリオール類(例えば、前記(2)ポリエステル系樹脂の項に記載のポリオール類など)、多価カルボン酸又はその酸無水物、複数のアルデヒド基を有する化合物、エポキシ化合物、窒素含有樹脂(アミノ樹脂など)、メチロール基又はアルコキシメチル基を有する化合物、ポリイソシアネートなどが例示できる。これらの加硫助剤は、単独で又は2種以上を組合せて使用してもよい。
【0137】
好ましい加硫助剤は、前記式(1)で表される活性原子のうち、活性水素原子を一分子中に平均2個以上有する化合物、例えば、縮合系熱可塑性樹脂(例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂など)のオリゴマー、前記ポリアミン類などが例示できる。
【0138】
加硫助剤の割合は、例えば、ゴム及び/又は樹脂100重量部に対し、0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部程度である。
【0139】
[他の添加剤]
前記加硫ゴム部材や中間層を形成するためのゴム組成物には、必要に応じて、種々の添加剤、例えば、フィラー、可塑剤又は軟化剤、共加硫剤(酸化亜鉛などの金属酸化物など)、加硫促進剤(ヘキサメチレンテトラミンとアセトアルデヒド・アンモニアなどのアルデヒドとアンモニアとの反応生成物、アルデヒドとアミンとの縮合生成物、グアニジン類、チオウレア類、チアゾール類、スルフェンアミド類、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類、キサントゲン酸塩類など)、老化防止剤(熱老化防止剤、オゾン劣化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、粘着付与剤、加工助剤、滑剤(ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、ワックスなど)、着色剤、発泡剤、分散剤、難燃剤、帯電防止剤などを配合してもよい。
【0140】
前記フィラー(又は補強剤)には、例えば、粉粒状フィラー又は補強剤(マイカ、クレー、タルク、ケイ酸類、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カーボンブラック、フェライトなど)、繊維状フィラー又は補強剤(レーヨン、ナイロン、ビニロン、アラミドなどの有機繊維、炭素繊維、ガラス繊維などの無機繊維)などが含まれる。
【0141】
ゴムがシリコーンゴムである場合、補強剤として添加される最も一般的なフィラーはシリカ粉末である。一般的にシリコーンゴムに使用されるシリカ粉末には、湿式で製造される湿式シリカと、乾式で製造される乾式シリカの二種に大別される。シリコーンゴムに適するシリカ粉末は、乾式シリカであり、乾式シリカを用いると、樹脂部材とゴム部材との高い接合強度が得られ易い。湿式シリカの場合、シリカ粉末中に含まれる水分が樹脂部材とゴム部材間の架橋を阻害するものと考えられる。但し、湿式シリカであっても致命的にゴム部材と樹脂部材の接合を阻害するものではなく、使用する樹脂や使用するシリコーンゴムの種類、加硫活性剤の種類やその使用量、成形条件などにより、湿式シリカであっても使用できる場合がある。乾式シリカと湿式シリカとの混合使用なども許容される。
【0142】
可塑剤としては、ゴム組成物に可塑性を付与可能である限り特に制限されず、慣用の軟化剤(リノール酸、オレイン酸、ひまし油、パーム油などの植物油;パラフィン、プロセスオイル、エキステンダーなどの鉱物油など)、可塑剤(フタル酸エステル、脂肪族ジカルボン酸エステル、硫黄含有可塑剤、ポリエステル系高分子可塑剤など)などが使用できる。
【0143】
フィラーの含有量は、ゴム100重量部に対して、例えば、0〜300重量部程度、好ましくは0〜200重量部程度、さらに好ましくは0〜100重量部程度であってもよい。可塑剤又は軟化剤の含有量は、ゴム100重量部に対して、例えば、0〜200重量部程度、好ましくは0〜150重量部程度、さらに好ましくは0〜120重量部程度であってもよい。また、共加硫剤、老化防止剤、加工剤又は滑剤、着色剤などの含有量は、有効量であればよく、例えば、共加硫剤の含有量は、ゴム100重量部に対して、0〜20重量部程度、好ましくは0.5〜15重量部程度、さらに好ましくは1〜10重量部程度であってもよい。
【0144】
さらに、加硫活性剤などの活性成分を含む系(中間層用未加硫ゴム組成物、加硫ゴム部材用未加硫ゴム組成物、樹脂部材用組成物、特に樹脂部材用組成物)では、安定剤と組み合わせることにより、加熱混合過程(例えば、樹脂と加硫活性剤との混練過程など)において重合性不飽和結合を有する加硫活性剤を用いてもゲル(又はブツ)の発生を抑制又は阻止できる。そのため、前記複合体の強度低下や外観を損ねることなく、加硫活性剤を有効に機能させて樹脂とゴムとを確実にかつ強固に接合又は接着できる。このような点から、前記安定剤は、樹脂又はゴムを安定化してもよいが、少なくとも加硫活性剤を安定化するのが好ましい。
【0145】
安定剤としては、酸化防止剤(耐熱加工安定剤を含む)、光安定剤などが使用でき、熱重合禁止剤(ヒドロキノン、メチルヒドロキノンなどのヒドロキノン類など)であってもよい。酸化防止剤には、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ヒドロキノン系酸化防止剤、キノリン系酸化防止剤、ケトンアミン樹脂などが含まれる。
【0146】
フェノール系酸化防止剤には、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、例えば、モノフェノール類、ビスフェノール類、多価フェノール類などが含まれる。モノフェノール類としては、置換基を有していてもよいモノ又はジ−t−ブチルフェノール[例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノールなどのC1−4アルキル−ジ−t−ブチルフェノール;2−t−ブチル−4−メトキシフェノール、3−t−ブチル−4−メトキシフェノールなどのC1−4アルコキシ−モノ又はジ−t−ブチルフェノール;ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのC10−20アルキル−(ジ−t−ブチル−ヒドロキシフェニル)C2−6カルボキシレート;2−エチルヘキシル−(2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオ)アセテートなどのC3−10アルキル−(ジ−t−ブチル−ヒドロキシベンジルチオ)C2−6カルボキシレート;ジステアリル−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネートなどのジC10−20アルキル−(ジ−分岐C2−6アルキル−ヒドロキシベンジル)ホスホネートなど]、C4−10アルキルチオ基を有するフェノール[2,4−ジ(オクチルチオ)メチル−6−メチルフェノール(Irganox 1520 チバガイギー(株)製)など]、ビスフェノール類と(メタ)アクリル酸とのモノエステル[例えば、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルベンジル)−4−メチル−6−t−ブチルフェニルアクリレート(スミライザーGM 住友化学工業(株)製)、2−[1−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)エチル]−4−メチル−6−t−ブチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ(t−ペンチル)フェニルアクリレート(スミライザーGS 住友化学工業(株)製)などのC1−4アルキレンビス(モノ又はジ−t−ブチルフェノール)と(メタ)アクリル酸とのモノエステルなど]などが例示できる。
【0147】
ビスフェノール類としては、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2′−エチリデンビス[4,6−ジ(t−ペンチル)フェノール]、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)などのC1−6アルキレンビス(モノ又はジ−t−ブチルフェノール);4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)などのチオビス(モノ又はジ−t−ブチルフェノール);ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]−1,6−ヘキサンジオールエステル、ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]−トリエチレングリコールエステル(Irganox 245 チバガイギー(株)製)などの(モノ又はジ−t−ブチル−ヒドロキシフェニル)C2−6カルボン酸−モノ乃至テトラC2−4アルキレングリコールエステル;ヒドラゾビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナモイル)(Irganox MD−1024 チバガイギー(株)製)、N,N′−トリメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナムアミド)、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナムアミド)などの(モノ又はジ−t−ブチル−ヒドロキシフェニル)C3−6カルボン酸とC0−8アルキレンジアミンとのジアミド;3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(スミライザーGA80 住友化学工業(株)製)などの(モノ又はジ−t−ブチル−ヒドロキシフェニル)C3−6カルボン酸とジヒドロキシヘテロ環式スピロ化合物とのジエステルなどが例示できる。
【0148】
多価フェノール類には、トリスフェノール類{例えば、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(アデカスタブAO−330 旭電化工業(株)製)などのトリス(モノ又はジ−t−ブチル−ヒドロキシベンジル)C6−10アレーン;1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタンなどのトリス(モノ又はジ−t−ブチル−ヒドロキシフェニル)C1−6アルカン;トリス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]グリセリンエステルなどのモノ又はジ−t−ブチル−ヒドロキシフェニルC2−6カルボン酸とC3−6アルカントリオールとのトリエステル;1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン(アデカスタブAO−20 旭電化工業(株)製)、1,3,5−トリス(2’,6’−ジメチル−3’−ヒドロキシ−4’−t−ブチルベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオンなどのトリス(モノ又はジ−t−ブチル−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−トリオンなど}、テトラフェノール類{例えば、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(Irganox 1010 チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)などのモノ又はジ−t−ブチル−ヒドロキシフェニルC3−6カルボン酸とC3−6アルカンテトラオールとのテトラエステル;ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)酪酸]グリコールエステルなどのジ(モノ又はジ−t−ブチル−ヒドロキシフェニル)C3−6カルボン酸−モノ乃至テトラC2−4アルキレングリコールエステル}などが含まれる。
【0149】
アミン系酸化防止剤には、芳香族アミン類、例えば、フェニル−1−ナフチルアミン、フェニル−2−ナフチルアミン、N,N′−ジフェニル−1,4−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−シクロヘキシル−1,4−フェニレンジアミンなどが含まれる
リン系酸化防止剤には、例えば、トリイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(アデカスタブ2112 旭電化工業(株)製)、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジノニルフェニルビス(ノニルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト(アデカスタブHP−10 旭電化工業(株)製)、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ジトリデシルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2−t−ブチルフェニル)フェニルホスファイト、トリス[2−(1,1−ジメチルプロピル)フェニル]ホスファイト、トリス[2,4−(1,1−ジメチルプロピル)フェニル]ホスファイト、トリス(2−シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−フェニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジフォスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト(アデカスタブPEP−8 旭電化工業(株)製)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(アデカスタブPEP−24G 旭電化工業(株)製)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト(アデカスタブPEP−36 旭電化工業(株)製)などのホスファイト化合物;トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ジフェニルビニルホスフィン、アリルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、メチルフェニル−p−アニシルホスフィン、p−アニシルジフェニルホスフィン、p−トリルジフェニルホスフィン、ジ−p−アニシルフェニルホスフィン、ジ−p−トリルフェニルホスフィン、トリ−m−アミノフェニルホスフィン、トリ−2,4−ジメチルフェニルホスフィン、トリ−2,4,6−トリメチルフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリ−o−アニシルホスフィン、トリ−p−アニシルホスフィン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンなどのホスフィン化合物などが含まれる。
【0150】
イオウ系酸化防止剤には、例えば、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジ(トリデシル)3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル2,2−チオジアセテート、ジミリスチル3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3−チオジプロピオネートなどのチオジC2−4カルボン酸ジC10−20アルキルエステル;3,9−ジ(ラウリルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどが含まれる。
【0151】
ヒドロキノン系酸化防止剤には、例えば、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノンなどが含まれ、キノリン系酸化防止剤には、例えば、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンなどが含まれる。
【0152】
光安定剤には、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、クエンチャーなどが含まれる。ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)には、例えば、置換基を有していてもよいテトラメチルピペリジン(例えば、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのC1−4アルコキシ−テトラメチルピペリジン;4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのC6−10アリールオキシ−テトラメチルピペリジン;4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのC6−10アロイルオキシ−テトラメチルピペリジン;4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(アデカスタブLA−87 旭電化工業(株)製)、4−メタクリロイルオキシ−N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(アデカスタブLA−82 旭電化工業(株)製)などの(メタ)アクリロイルオキシ−テトラメチルピペリジンなど)、置換基を有していてもよいアルカン二酸ジピペリジルエステル[例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(アデカスタブLA−77 旭電化工業(株)製)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(サノールLS−765 三共(株)製)などのC2−10アルカン二酸ビス(テトラメチルピペリジル)エステルなど]、置換基を有していてもよい芳香族ジカルボン酸ジピペリジルエステル[例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)テレフタレートなどのC6−10芳香族ジカルボン酸ビス(テトラメチルピペリジル)エステルなど]、置換基を有していてもよいジ(ピペリジルオキシ)アルカン[1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)エタンなどのジ(テトラメチルピペリジルオキシ)C1−4アルカンなど];ジ(ピペリジルオキシカルボニル)ヒドロキシフェニルアルカン{例えば、1−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニル)ペンタン(Tinuvin 144 チバガイギー(株)製)などのジ(テトラメチルピペリジルオキシカルボニル)−ヒドロキシフェニルアルカンなど}、テトラカルボン酸ジ乃至テトラピペリジルエステル[例えば、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)エステル(アデカスタブLA−57 旭電化工業(株)製)などのテトラカルボン酸テトラキス(テトラメチルピペリジル)エステル;1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ビス(トリデシル)エステル(アデカスタブLA−67 旭電化工業(株)製)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸ビス(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ビス(トリデシル)エステル(アデカスタブLA−62 旭電化工業(株)製)などのテトラカルボン酸ビス(テトラメチルピペリジル)−ビス(トリC8−20アルキル)エステル]、C1−4アルキレンビス(テトラアルキルピペラジノン)[1,1’−エチレンビス(3,3,3’,3’,5,5,5’,5’−オクタメチルピペラジン−2,2’−ジオン)(Goodrite UV−3034 Goodrich(株)製)などのC1−4アルキレンビス(テトラメチルピペラジノン)など]、高分子型HALS[例えば、Chimassorb 944LD(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製)、Tinuvin 622LD(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製)、アデカスタブLA−63(旭電化工業(株)製)、アデカスタブLA−68(旭電化工業(株)製)など]が含まれる。
【0153】
クエンチャーとしては、ニッケルビス(オクチルフェニル)スルフィド、[2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノラート)]−n−ブチルアミンニッケル、ニッケルコンプレックス−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル−リン酸モノエチレート、ニッケルジブチルチオカーバメート、1−フェニル−3−メチル−4−デカノニルピラゾレート)ニッケルなどの有機ニッケル錯体;コバルトジシクロヘキシルジチオフォスフェートなどの有機コバルト錯体などが例示できる。
【0154】
これらの安定剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。好ましい安定剤には、フェノール系酸化防止剤、HALSなどのラジカル捕捉能を有する安定剤が含まれる。また、このようなラジカル捕捉能を有する安定剤と他の安定剤とを組み合わせて使用してもよく、このような組合せには、例えば、フェノール系酸化防止剤とイオウ系酸化防止剤との組合せ、フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤との組合せなどが含まれる。
【0155】
安定剤の使用量は、例えば、樹脂又はゴム100重量部に対して、0.01〜15重量部(例えば、0.01〜10重量部)、好ましくは0.05〜10重量部(例えば、0.05〜8重量部)、さらに好ましくは0.1〜7重量部(例えば、0.1〜5重量部)程度であってもよい。
【0156】
また、ラジカル捕捉能を有する安定剤(フェノール系酸化防止剤、HALSなど)と、他の安定剤(リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤など)とを組み合わせて使用する場合、これらの安定剤の割合は、前者/後者(重量比)=99/1〜20/80(例えば、95/5〜40/60)程度であってもよい。
【0157】
また、加硫活性剤と安定剤との割合は、加硫活性剤又は安定剤の種類、混合混練温度などに応じて選択でき、前者/後者(重量比)=99/1〜25/75、好ましくは98/2〜35/65、さらに好ましくは97/3〜45/55(例えば、97/3〜60/40)程度であってもよい。
【0158】
[樹脂部材と加硫ゴム部材との組合せ]
本発明では、樹脂部材と加硫ゴム部材との間に前記加硫ゴム層が介在するので、樹脂部材と加硫ゴム部材とを広い範囲で組み合わせても、確実かつ強固に接合でき、一体性の高い複合体を得ることができる。また、加硫系が硫黄加硫系であっても非硫黄加硫系であっても、樹脂部材と加硫ゴム部材との接合強度を向上できる。そのため、樹脂部材と加硫ゴム部材との組合せは特に制限されず、前記樹脂とゴムとを適当に組み合わせることができる。
【0159】
樹脂部材と加硫ゴム部材との接合において、接合強度を高めるためには、加硫ゴム層、加硫ゴム部材および樹脂部材の少なくとも1つを、加硫活性剤を含む組成物で形成するのが有利である。例えば、加硫ゴム層を、加硫剤および加硫活性剤を含有する未加硫ゴム組成物で形成し、加硫ゴム部材および樹脂部材の少なくとも一方の部材(特に少なくとも樹脂部材)を、加硫活性剤を含む組成物で形成すると、極めて高い接合強度で樹脂部材と加硫ゴム部材とを接合できる。
【0160】
なお、樹脂部材の熱可塑性樹脂又はその組成物がポリフェニレンエーテル系樹脂で構成され、加硫ゴム層の未加硫ゴム又はその組成物がスチレン−ジエン共重合ゴムで構成されている場合、加硫ゴム層は、ラジカル発生剤(有機過酸化物など)で加硫しても硫黄系加硫剤で加硫しても、高い接合強度で加硫ゴム部材と接合できる。この場合、ポリフェニレンエーテル系樹脂はスチレン系樹脂で変性又は改質されていてもよい。
【0161】
また、硫黄系加硫剤でスチレン−ジエン共重合ゴムを加硫する場合、硫黄系加硫剤の使用量は、ゴム成分100重量部に対して、1〜10重量部、好ましくは2〜7重量部、さらに好ましくは3〜5重量部程度である。
【0162】
[複合体の製造方法]
本発明では、加硫剤を含有する未加硫ゴム層を介して、ゴムエレメントと樹脂エレメントとを接触させ、未加硫ゴム又は半加硫ゴムを加硫するとともに、ゴムエレメントと樹脂エレメントとを成形することにより、前記複合体(すなわち、前記未加硫ゴム層が加硫した加硫ゴム層を介して、前記ゴムエレメントの加硫ゴム部材と樹脂エレメントの樹脂部材とが接合した樹脂/ゴム複合体)を製造する。代表的には、加硫剤を含有する未加硫ゴム層を介して加硫ゴム部材と樹脂部材を接触させ、前記未加硫ゴム層を加熱などの手段を用いて加硫することにより加硫ゴム部材と樹脂部材とが接合した複合体を得ることができる。
【0163】
前記加硫ゴム部材を構成するゴムエレメント(ゴム材)は、加硫を完了したゴム材であってもよく、未加硫ゴム材(未加硫ゴム組成物)又は半加硫ゴム材(半加硫ゴム部材)であってもよい。ゴムエレメント(ゴム材)が未加硫ゴム組成物や半加硫ゴム部材である場合には、未加硫ゴム層の加硫工程で共に加硫される。また、樹脂部材を構成する樹脂エレメント(樹脂材)も、未成形樹脂組成物、半成形樹脂部材又は成形樹脂部材であってもよい。
【0164】
なお、「加硫ゴム部材」「ゴム部材」「樹脂部材」とは、最終部材としての所定形状に成形された部材を意味し、「未加硫ゴム組成物」「未成形樹脂組成物」とは、特定の形状を備えていない組成物を意味する。さらに、「半加硫ゴム材」「半加硫ゴム部材」「半成形樹脂部材」とは、加工処理が施されているものの形状及び/又は成分が最終部材の形態を備えていない部材を意味し、未加硫ゴム、活性な加硫剤、加硫活性剤や未架橋樹脂などを含んでいてもよい予備成形体も含む。
【0165】
前記のように、ゴムエレメント(特に未加硫組成物及び半加硫ゴム部材)は、少なくとも加硫剤(特にラジカル発生剤系加硫剤)を含んでいる。さらに、中間層との接合強度を高めるため、ゴムエレメント(特に未加硫組成物及び半加硫ゴム部材)は、加硫活性剤(複数の重合性不飽和結合を有する多官能重合性化合物)を含んでいてもよい。各成分の割合は前記の通りである。
【0166】
樹脂エレメント(特に架橋性基を有する樹脂)は、前記のように、架橋促進剤を含んでいてもよい。さらに樹脂エレメント(熱可塑性樹脂や架橋性基を有する樹脂)は、前記のように、加硫活性剤(複数の重合性不飽和結合を有する重合性化合物)を含んでいてもよい。なお、加硫ゴム部材と樹脂部材との接合強度を高めるため、複数の重合性基を有する多官能重合性化合物は、ゴムエレメント及び樹脂エレメントのうち少なくとも一方に含有させるのが好ましく、双方に含有させてもよい。これらの成分の割合も前記の通りである。
【0167】
前記未加硫ゴム層を形成するための未加硫ゴム組成物は、少なくとも加硫剤(特に有機過酸化物などのラジカル発生剤系加硫剤)を含んでいればよいが、好ましくはさらに加硫活性剤(複数の重合性基を有する多官能重合性化合物)を含んでいる。未加硫ゴム組成物において、加硫剤、加硫活性剤の含有量は前記の通りである。
【0168】
好ましい態様では、(i)樹脂部材を構成する樹脂は前記特定の活性原子(活性水素原子及び/又は活性硫黄原子)を有する樹脂で構成される。(ii)未加硫ゴム組成物及び樹脂部材のうち少なくとも一方の成分が、複数の重合性基を有する多官能重合性化合物を含有する。さらに、(iii)樹脂部材が、熱硬化性樹脂、又は分子中に不飽和結合を有する樹脂で構成され、未加硫ゴム組成物が複数の重合性基を有する多官能重合性化合物を含有する。
【0169】
前記未加硫ゴム層は、ゴムエレメント及び樹脂エレメントの接合面のうち少なくとも一方の接合面に形成すればよい。なお、未加硫ゴム層は、ほぼ均一な層である場合が多いが、加硫ゴム部材と樹脂部材との接合を損なわない限り、実質的に均一である必要はない。例えば、未加硫ゴム層は厚みが不均一な層(例えば、凹凸な層や点在した層など)であってもよい。
【0170】
加硫成形は、通常、前記未加硫ゴム層を介してゴムエレメントと樹脂エレメントとを加圧接触下で、光照射、特に加熱することにより行われる。この過程で、未加硫ゴム組成物の加硫とともに、加硫ゴム部材用のゴム組成物や半加硫ゴム部材も加硫される。また、加熱に伴って、未成形樹脂組成物や半成形樹脂部材も成形され、架橋性基を有する樹脂は架橋し硬化させることができる。
【0171】
前記未加硫ゴム層は、ゴムエレメント及び/又は樹脂エレメントの接合面に介在する未加硫ゴム組成物のフィルム(シート)に限らず、塗布剤により形成された塗布層であってもよい。例えば、塗布剤としての液状未加硫ゴム組成物(例えば、未加硫ゴム組成物の溶液、分散液(エマルジョン、サスペンジョン)など)を、ゴムエレメント及び/又は樹脂エレメントの接合面に塗布し、必要に応じて乾燥することにより未加硫ゴム層を形成できる。なお、未加硫ゴム組成物のフィルムやシートは、前記のように、成形方法に応じて、予め形成していてもよく、加硫ゴム部材用の組成物や樹脂部材用の組成物とともに、未加硫ゴム組成物の共押し出しにより形成してもよい。
【0172】
より具体的には、本発明の方法には、樹脂組成物と中間層の未加硫ゴム組成物と加硫ゴム部材の未加硫ゴム組成物とをそれぞれ成形しながら、成形過程で樹脂組成物と中間層と未加硫ゴム組成物とを接触又は合流させて、中間層を介して樹脂部材と加硫ゴム部材とを接合又は接着する方法(一段階法)、樹脂エレメント及びゴムエレメントのうち一方のエレメントを成形し(例えば、前記樹脂部材及び加硫ゴム部材のうち一方の部材を予め予備成形又は最終部材の形態に成形し)、成形された一方の成形エレメントと、中間層の未加硫ゴム組成物と、他方の未成形エレメント(未成形樹脂組成物又は未加硫ゴム組成物)とを接触させ、未加硫ゴム組成物を成形しながら架橋又は加硫させて、中間層を介して樹脂部材と加硫ゴム部材とを接合又は接着する方法(二段階法)、中間層用未加硫ゴム組成物を介在させた状態で、成形樹脂エレメント(予め予備成形又は最終部材の形態に成形された成形樹脂部材)と、成形ゴムエレメント(予め予備成形又は最終部材の形態に成形された成形ゴム部材)とを接触させ、架橋又は加硫させて、中間層を介して樹脂部材と加硫ゴム部材とを接合又は接着する方法(三段階法)などが含まれる。
【0173】
より具体的には、一段階法では、例えば、慣用の多色成形機(多色射出成形機、多層押出機など)を利用し、樹脂組成物と中間層の未加硫ゴム組成物と加硫ゴム部材の未加硫ゴム組成物とをそれぞれ溶融混練しつつ所定形状の成形型に射出又は押出成形し、樹脂組成物及び未加硫ゴムを成形過程又は成形後に架橋又は加硫することにより複合成形体を得ることができる。なお、樹脂組成物と未加硫ゴム組成物との接触界面領域では、樹脂組成物と未加硫ゴム組成物とが混在していてもよい。
【0174】
また、二段階法において、成形樹脂エレメントの成形には、慣用の成形機(射出成形機、押出成形機、熱プレス成形機など)が使用でき、成形ゴムエレメントの成形には、慣用の成形機(射出成形機、プレス成形機、トランスファ成形機、押出成形機など)が使用できる。例えば、複合体の形状に対応する型(又はキャビティー)に成形樹脂エレメントを収容し、この樹脂エレメントに対して中間層用未加硫ゴム組成物と加硫ゴム部材用未加硫ゴム組成物を射出又は押出し、未加硫ゴム組成物を架橋又は加硫することにより、加硫ゴム部材と樹脂部材とを中間層を介して接着してもよい。また、複合体が二次元的な拡がりを有する板状又はシート状部材である場合、前記型(又はキャビティー)を用いることなく、成形樹脂エレメントに対して、中間層用の未加硫ゴム組成物のフィルムやシートと、加硫ゴム部材を形成するための板状又はシート状未加硫ゴム組成物を積層し、架橋又は加硫させることにより複合体を製造してもよい。なお、成形樹脂エレメントと未加硫ゴム組成物とを接触(密着など)させる場合、未加硫ゴム組成物中の揮発性分やガス成分を除去するため、熱プレス成形や射出成形などを利用して、適宜加圧してもよく、減圧雰囲気下で加圧成形してもよい。
【0175】
三段階法では、未加硫ゴム組成物のフィルム(シート)を介して、成形樹脂エレメントと成形ゴムエレメントとを接触させ、架橋又は加硫させることにより複合体を得てもよく、成形樹脂エレメント及び成形ゴムエレメントの少なくとも一方のエレメントの接合面に未加硫ゴム組成物の塗布液を塗布して未加硫ゴム層を形成し、成形樹脂エレメントと成形ゴムエレメントとを未加硫ゴム層を介して加圧して加熱成形することにより複合体を得てもよい。
【0176】
未加硫ゴム組成物のフィルム(シート)の厚みは特に制限されず、例えば、0.1〜10mm、好ましくは0.5〜5mm、さらに好ましくは0.5〜3mm程度であってもよい。また、接触面又は接合面での塗布剤の塗布量(固形分換算)は、例えば、0.1〜500g/m2程度、好ましくは10〜300g/m2程度、特に50〜100g/m2程度であってもよい。
【0177】
成形樹脂材及び成形ゴム材の架橋(又は加硫)温度(又はゴム部材と樹脂部材との接合温度)は、例えば、70〜250℃、好ましくは100〜230℃、さらに好ましくは150〜200℃程度の範囲から選択できる。ゴム/樹脂間に作用する圧力は、例えば、0〜350MPa、好ましくは1〜150MPa、さらに好ましくは2〜100MPa程度の範囲から選択できる。
【0178】
なお、塗布剤の溶媒は、低分子量のゴム(例えば、液状ゴム)を用いる場合必ずしも必要ではないが、溶剤としては、炭化水素類(脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素)、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、スルホキシド類、アミド類やこれらの混合溶剤などから適当に選択できる。
【0179】
このようにして得られた複合体は、加硫によりゴム部材と樹脂部材とが著しく高い強度で接着している。そのため、樹脂の特性とゴムの特性とを有効に発現でき、種々の用途、例えば、自動車用部品(振動吸収ブッシュ、スプリングプレート、ドアロック部材、ラジエターマウントなど)、防振ゴム、バルブ、電気プラグなどの種々の部材として有利に利用できる。
【0180】
【発明の効果】
本発明では、樹脂部材と加硫ゴム部材との間に、加硫剤を含む未加硫ゴム組成物の加硫層を介在させるので、広範囲の組合せにおいて樹脂成形体と加硫ゴム成形体とが強固に接合した複合体を得ることができる。また、樹脂成形体の表面を易接着処理することなく、樹脂成形体と加硫ゴム成形体とが強固に接合できる。さらに、ゴム処方を変更することなく、硫黄加硫系のゴム部材であっても樹脂部材と強固に接合できる。また、樹脂部材と加硫ゴム部材との間に前記未加硫ゴム組成物の加硫層が介在するので、三次元的構造であっても樹脂部材と加硫ゴム部材とを強固に接合できる。
【0181】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0182】
[樹脂部材の組成]
PA612(A1):ポリアミド612(NH2末端/COOH末端=1/1(モル比))単独
PA612(A1)の調製:ヘキサメチレンジアミンとドデカンジカルボン酸の塩80重量%水溶液を窒素置換したオートクレーブ中で加圧(17.5kg/cm2)下で加熱(220℃)し、窒素ガスと共に系内の水分を4時間を要して系外に排出した。その後1時間を要して徐々に昇温(275℃)し水分を系外に排除した後、オートクレーブの内圧を常圧に戻し、冷却することによりポリアミド612を得た。得られたポリマーは、分子量(Mn)20000〜25000、アミノ基末端とカルボキシル基末端の比率=1/1(モル比)であった。このポリマーを単独で樹脂組成物PA612(A1)として用いた。加硫剤を有機過酸化物とした場合、PA612(A1)の活性水素の数は1分子当たり4個である。
【0183】
PA612(A2):ポリアミド612(NH2末端/COOH末端=3/7(モル比))単独
PA612(A2)の調製:上記樹脂組成物PA612(A1)と下記樹脂組成物(A3)とを1/1の重量比で2軸押出機を用いて混練した。これを樹脂組成物PA612(A2)として単独で用いた。PA612(A2)の活性水素の数は1分子当たり2.4個である。
【0184】
PA612(A3):ポリアミド612(NH2末端/COOH末端=1/9(モル比))単独
PA612(A3)の調製:ヘキサメチレンジアミンとドデカンジカルボン酸の塩80重量%水溶液に所定量のドデカンジカルボン酸を添加し、窒素置換したオートクレーブ中で加圧(17.5kg/cm2)下に加熱(220℃)し、窒素ガスと共に系内の水分を4時間を要して系外に排出した。その後1時間を要して徐々に昇温(275℃)し水分を系外に排除した後、オートクレーブの内圧を常圧に戻した。冷却後、ポリアミド612を得た。得られたポリマーは、分子量(Mn)約20000、アミノ基末端とカルボキシル基末端の比率=1/9であった。このポリマーを単独で樹脂組成物PA612(A3)として用いた。PA612(A3)の活性水素の数は1分子当たり0.8である。
【0185】
PPE(B1):ポリフェニレンエーテル樹脂
デグサ(Degussa)社製のVestoran1900を使用した。1分子当たりの活性水素の数は6個以上である。
【0186】
PPS(C1):ポリフェニレンスルフィド樹脂
ポリプラスチックス(株)製 フォートロン0220A9を使用した。1分子当たりの活性硫黄の数は6以上である。
【0187】
m−PBT(D1):変性PBT樹脂
m−PBT(D1)の調製:蒸留精製したジメチルテレフタレート883gおよびブタンジオール747gとブチレンジオール70.4gに酢酸カルシウム1.82g、酸化アンチモン3.64gを加え、攪拌機、窒素ガス導入管、蒸留用側管を有し、且つ真空系に連結された重合管に入れた。この重合管を油浴により180℃に加熱し、ゆっくりと窒素ガスを通しながら、留出するメタノール量が理論値に達したところで攪拌を開始し、徐々に系の温度を250〜260℃にまで高めると共に真空度を徐々に上げ100Pa以下にまで到達させた。生成するブタンジオールを少量ずつ留出させながら、2〜3時間を要して縮合反応を進め、適宜テトラクロロエタン/フェノール=40/60の混合溶媒中の相対粘度を測定し、数平均分子量が10000に達した時点で反応を終結させた。得られたポリマー中の不飽和結合の濃度はポリマー1分子当たり平均4個、0.4mol/kgであった。このポリマーを単独で変性PBT樹脂組成物(D1)として用いた。
【0188】
不飽和PES(E1):不飽和ポリエステル樹脂
不飽和PES(E1)の調製:無水マレイン酸604g、プロピレングリコール507gをハイドロキノンモノメチルエーテル0.22g及びエステル化触媒ジブチル錫オキサイド0.6gの存在下、常圧の窒素気流中、180〜190℃で脱水縮合させ、重量平均分子量5800の不飽和ポリエステルを得た。この不飽和ポリエステルにナフテン酸コバルト3.4gを加え、600gのエチルメタクリレート及び100gのスチレンで溶解希釈した。この希釈液100重量部に対し、有機過酸化物(日本油脂(株)パーブチルオー)3重量部を加えて攪拌した後、80℃条件下で硬化させ、厚み3mmの平板を得た。これを不飽和ポリエステル樹脂組成物(E1)の試料として用いた。
【0189】
メラミン(F1):メラミン樹脂
住友ベークライト(株)製「スミコンMMC−50」(黒着色品)を用い、厚み4mmの平板を作製し、メラミン樹脂組成物(F1)の試料として用いた。
【0190】
TRIM:トリメチロールプロパントリメタクリレート
[加硫ゴム層の組成]
SBR:JSR株式会社製「JSR0202」(スチレン含有量46%)
EPDM:DMS社製「ケルタン509×100」
NR:タイ国産#3
NBR:日本ゼオン(株)製「Nipol 1042」
VMQ−1
(A)ジメチルクロロシラン(CH3)2SiCl2と(B)メチルビニルクロロシラン(CH3)CH2=CH−SiCl2とをモル比率99.98:0.02で用い、(C1)環状ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン4量体を得た。この(C1)4量体100モルに対して、水酸化カリウム0.0011モルを添加し、155℃、窒素雰囲気下で重合を行った。得られた重合体(シロキサンA)の極限粘度[η](25℃、cSt)がlogη=7.7であり、この極限粘度の値から平均分子量290000、重合度4000程度のポリシロキサンであると判断した。また、得られた重合体中のビニル量については、1H−NMRにより定量したところ、100繰り返し単位のうち平均0.02個のビニル基、すなわち、平均して1分子あたり0.8個の二重結合を有していた。
【0191】
また、(A)ジメチルクロロシランと(B)メチルビニルクロロシランとのモル比率を、50:50として(C2)環状ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン4量体を得た。この(C2)4量体100モルに対して、水酸化カリウム0.45モルを添加して重合した。得られた重合体(シロキサンB)をガスクロマトグラフィー(キャピラリーカラム:J&W社 DURABOND DB−1701、注入温度:クールオンカラム方式50℃/30秒で270℃まで昇温、キャリアーガス:ヘリウム30ml/min、検出器:FID)により分析したところ、重合度は約10であり、1H−NMRによる分析から、100繰り返し単位のうち平均50個のビニル基、すなわち平均して1分子当たり5個の二重結合を有していた。
【0192】
これらシロキサンAとシロキサンBをモル比で47:53の比率で混合し、平均して1分子当たりの二重結合量が3個のVMQ−1として用いた。
【0193】
FKM:フッ素ゴム ダイキン工業株式会社製 Dai EL G 902
DCP:ジクミルパーオキサイド 日本油脂(株)製「パークミルD」
S:硫黄粉末 鶴見化学工業(株)製「#325」
[ゴム部材の組成]
EPDM:上記EPDM100重量部、Vestenamer8012(Degussa社製)3重量部、カーボンブラック[N582](旭カーボン(株)製)3重量部、珪酸マグネシウム「ミストロンベーパー」(日本ミストロン(株)製)25重量部、ナフテン系オイル「ダイアナプロセスオイルNS100」(出光興産(株)製)5重量部、パラフィンオイル「ダイアナプロセスオイル PW380」(出光興産(株)製)14重量部、ポリエチレングリコール(4000)1重量部、ステアリン酸0.5重量部、酸化亜鉛3重量部。
【0194】
SBR60/NBR40:上記SBR60重量部、上記NBR40重量部、カーボンブラック「N582」(旭カーボン(株)製)50重量部、ナフテン系オイル「ダイアナプロセスオイルNS100」(出光興産(株)製)10重量部、ステアリン酸1重量部、酸化亜鉛5重量部、安定剤「ノンフレックスRD」(精工化学(株)製)1重量部、安定剤「サンタイトZ」(精工化学(株)製)1重量部、安定剤「サントガードPVI」(フレキシス(株)製)0.2重量部、加硫促進剤「ノクセラ−CZ」(大内新興(株)製)1重量部、加硫促進剤「ノクセラ−TS」(大内新興(株)製)0.3重量部。
【0195】
SBR60/NR40:上記SBR60重量部、上記NR40重量部、カーボンブラック「旭#70」(旭カーボン(株)製)45重量部、ナフテン系オイル「ダイアナプロセスオイルNS100」(出光興産(株)製)10重量部、安定剤「ノクラックODA」(大内新興(株)製)1.5重量部、安定剤「ノクラック224」(大内新興(株)製)1.5重量部、加硫促進剤「ノクセラ−DM」(大内新興(株)製)0.6重量部、「ノクセラ−CZ」(大内新興(株)製)0.3重量部、「ノクセラ−TS」(大内新興(株)製)0.3重量部、ステアリン酸1.5重量部、酸化亜鉛5重量部。
【0196】
VMQ−2:東レダウコーニング(株)製「シリコーンゴムSH851」
FKM:フッ素ゴム「Dai EL G902」(ダイキン工業(株)製)100重量部、カーボンブラック「Thermax N990」Cancarb社製10重量部
BR:ブタジエンゴム「BUNA CB100」(バイエル社製)100重量部、ナフテン系オイル「ダイアナプロセスオイルNS−24」(出光興産(株)製)10重量部、カーボンブラック「ショウブラックN330T」(昭和キャボット(株)製)50重量部、安定剤「Vulkanox 4010NA」(バイエル社製)1.5重量部、加硫促進剤「ノクセラ−CZ」(大内新興(株)製)1重量部、ステアリン酸2重量部、酸化亜鉛5重量部。
【0197】
DCP:ジクミルパーオキサイド 日本樹脂(株)製「パークミルD」
S:硫黄粉末 鶴見化学工業(株)製「#325」
TAIC:トリアリルイソシアヌレート
[試験方法]
上記各樹脂組成物を射出成形法又は圧縮成形法により成形し、肉厚4mmの平板を得た。
【0198】
この平板の一方の面に下記方法により調製したゴム溶液をバーコーターを利用して厚み100μmに塗布した。ゴム溶液を塗布した後、1時間放置し、溶剤を風乾させ、未加硫ゴム層を形成した。この未加硫ゴム層を有する樹脂平板を、未加硫ゴム層を上面として170℃に温調された金型に入れ、未加硫ゴム層の上に上記ゴム部材を構成する未加硫ゴム組成物を所定量乗せ、ゴム部材の肉厚が3mmとなるように圧縮成形しながら、未加硫ゴム層と未加硫のゴム部材を加硫接着させた。加熱時間はおおよそ15分であった。
【0199】
なお、樹脂平板と未加硫ゴム層と加硫ゴム部材との組合せを表1に示す。表中、実施例2,3及び実施例10及び11において、「*」は、樹脂平板に未加硫ゴム層を形成した後、この未加硫ゴム層を一旦加硫した後に、加硫ゴム層の上部にゴム部材用未加硫ゴム組成物を乗せて170℃で加硫したことを示す。
【0200】
[ゴム溶液の調製]
表に示す成分割合(重量部)のゴム層用ゴム100重量部を、酢酸エチルとMEKとトルエンとを1:1:1の割合で含む混合溶媒400重量部に溶解し、この溶液に、表に示す割合で加硫剤及びトリメチロールプロパントリメタクリレート(TRIM)を加え、ゴム溶液を調製した。
【0201】
[接着性の評価]
上記方法で得られた樹脂/ゴム層/ゴム部材の平板状複合体を幅30mmに切断し、得られた試験片を180°剥離試験に供した。この剥離試験において、接着性を次のような基準で評価した。
【0202】
「A」:剥離界面が、ゴム層又はゴム部材内で発生し(凝集破壊し)、その破壊が100%凝集破壊である
「B」:50%以上が凝集破壊である
「C」:充分な粘着性が認められる、剥離の50%以上が、樹脂/ゴム層界面、若しくはゴム層/ゴム部材界面で発生する
「D」:樹脂/ゴム層、若しくはゴム層/ゴム部材界面で容易に剥離する
結果を表1に示す。なお、表中、各成分の割合は重量部である。
【0203】
【表1】
【0204】
表1から明らかなように、実施例で得られた複合体は高い接合強度を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂と加硫ゴムとが一体に接合し、かつ機械部品、自動車部品などとして有用な複合体(又は複合部材)及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂成形部材とゴム成形部材とを複合一体化する方法として、接着剤を用いて樹脂成形体とゴム成形体とを接着する方法が知られている。しかし、接着剤を用いる方法は、工程が複雑で工程管理が煩雑であり、コストが高くなるだけでなく、耐熱性、耐水性などの特性が低下し、必ずしも十分な接着性を得られない。
【0003】
樹脂とゴムとが直接接合した複合体が提案されている。例えば、特開昭50−25682号公報には、ポリホルムアルデヒドやオレフィン重合体などの熱可塑性プラスチック成分と、この熱可塑性プラスチック成分と相溶性の加硫したゴム成分とを摩擦接触させてプラスチック表面を溶融し、プラスチック成分とゴム成分とを接触させたまま凝固させる複合体の製造方法が開示されている。
【0004】
熱可塑性樹脂とゴムとの相溶性を利用して複合体を製造する方法として、特開昭61−204260号公報には、ポリフェニレンエーテル系樹脂と合成ゴムとを加硫系の存在下に熱処理する方法が開示されている。特開平9−124803号公報には、アクリロニトリル含有熱可塑性樹脂と、アクリロニトリル含有ゴムとを加熱密着させて複合部材を得ることが提案されている。
【0005】
熱可塑性樹脂とゴムとの化学的な反応を利用して複合体を製造する方法として、特開平2−150439号公報、特開平3−133631号公報、特開平3−138114号公報には、ポリアミド系樹脂と、ゴム成分として、カルボキシル基又は酸無水物基含有ゴムと過酸化物と加硫活性化剤とを含むゴム成分を用いることが提案されている。特開平8−156188号公報には、エポキシ基含有樹脂部材と、カルボキシル基又は酸無水物基含有ゴム部材とを密着させて加硫することにより複合部材を得ることが提案されている。
【0006】
さらに、特定の添加剤を用いることにより複合体を得る方法として、特開平7−11013号公報には、ポリアミド成形体と、ゴムと過酸化物加硫剤とシラン化合物と必要により加硫活性剤とを含むゴムコンパウンドとを接触させて加硫する方法が開示されている。さらに、硬質成分として熱可塑性ポリエステルを用い、軟質成分として、ゴムと過酸化物加硫剤と二官能又は多官能マレイミドと必要により加硫活性剤とを含むゴム成分を用いること(特開平7−304880号公報)、ゴムと過酸化物加硫剤とシラン化合物と必要により加硫活性剤とを含むゴム成分を用いること(特開平7−166043号公報)が提案されている。
【0007】
しかし、これらの方法では、高い接着強度を得るためには、熱可塑性樹脂およびゴムの種類が制限される。特に、反応性の乏しい加硫ゴムと熱可塑性樹脂との複合体を得ることは困難である。
【0008】
特開平10−58605号公報には、基材フィルム(ポリエステルフィルムなど)と、接着性改良剤として多官能性メタクリレートを含むゴムフィルム(シリコーンゴム、エチレンプロピレン系ゴムなど)を積層して加硫することにより複合フィルムを得る方法が開示されている。しかし、この方法では、基材フィルムとの十分な接着強度を得るためには多量の接着性改良剤を含有したゴムを使用する必要があり、かつ基材フィルムはコロナ放電処理又は易接着処理する必要がある。さらに、この文献の実施例では、接着に際しては高エネルギー線である電子線を照射を利用することが記載されており、厚みが大きく立体的なゴム成形体と樹脂成形体との接合に利用することが困難である。
【0009】
このように、樹脂部材とゴム部材とを高い接着強度で接合するための汎用性の高い技術は知られていない。特に、ゴムの種類や処方によって接合強度が大きく変動し、ゴム処方の大きな変更が必要となったり、ゴム処方を変更しても高い接合強度が得られない場合がある。例えば、ゴム部材の性能の点から、充填剤,フィラー、可塑剤などの添加剤の添加量を多くせざるを得ないゴム処方や、加硫剤の種類が制約されるゴム処方(例えば、硫黄加硫剤を必要とするゴム処方)では、接合強度を高めるための処方の選択幅が大きく制限される。さらに、ゴム処方を変更することは、実質的に困難である場合が多い。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、広範囲の組合せにおいて樹脂成形体と加硫ゴム成形体とを強固に接合できる複合体及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、樹脂成形体の表面を易接着処理することなく、樹脂成形体と加硫ゴム成形体とが強固に接合した複合体及びその製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、加硫ゴム部材のゴム処方を変更することなく、樹脂部材と強固に接合できる複合体とその製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明の別の目的は、三次元的構造であっても強固に接合できる複合体及びその製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ゴムとゴムとが接合しやすいことを利用して、ゴム部材と樹脂部材との間に加硫剤を含む未加硫ゴム層を介在させ、この未加硫ゴム層を加熱などの手段により加硫すると、広範囲の組合せにおいて、前記ゴム部材と樹脂部材とを強固に一体化でき、樹脂/ゴム複合体を効率よく得ることができることを見いだし、本発明を完成した。
【0015】
すなわち、本発明の複合体は、加硫剤により加硫した加硫ゴム層を介して、加硫ゴム部材と樹脂部材とが接合し、樹脂/ゴム複合体を形成している。本発明では加硫剤の種類に拘わらず接合強度を向上できるので、前記加硫剤は、硫黄系加硫剤(硫黄や硫黄化合物など)又は過酸化物系加硫剤(有機過酸化物などのラジカル発生剤系加硫剤)であってもよい。前記樹脂部材は、熱可塑性樹脂および架橋性基を有する樹脂から選択された少なくとも一種で構成でき、架橋性基を有する樹脂は、熱硬化性樹脂及び/又は不飽和結合を有する熱可塑性樹脂であってもよい。さらに、加硫ゴム層を形成するための未加硫ゴム組成物と樹脂部材は、下記条件(i)〜(iii)のうち少なくとも一つの条件を満足する場合が多い。
【0016】
(i)樹脂部材が、下記式(1)で表される軌道相互作用エネルギー係数Sが0.006以上である活性原子(水素原子および硫黄原子から選択された少なくとも一種の活性原子)を一分子中に少なくとも平均2つ有する熱可塑性樹脂で構成されている
S=(CHOMO,n)2/|EC−EHOMO,n|+(CLUMO,n)2/|EC−ELUMO,n|
(1)
(式中、EC、CHOMO,n、EHOMO,n、CLUMO,n、ELUMO,nは、いずれも半経験的分子軌道法MOPACPM3により算出された値であって、ECは加硫剤としてのラジカル発生剤のラジカルの軌道エネルギー(eV)を示し、CHOMO,nは熱可塑性樹脂の基本単位を構成する第n番目の水素原子の最高被占分子軌道(HOMO)の分子軌道係数を示し、EHOMO,nは前記HOMOの軌道エネルギー(eV)を示し、CLUMO,nは前記n番目の水素原子の最低空分子軌道(LUMO)の分子軌道係数を示し、ELUMO,nは前記LUMOの軌道エネルギー(eV)を示す)
(ii)未加硫ゴム組成物及び樹脂部材のうち少なくとも一方の成分が、複数の重合性基を有する多官能重合性化合物を含有する
(iii)樹脂部材が、熱硬化性樹脂、又は分子中に不飽和結合を有する樹脂で構成され、未加硫ゴム組成物が複数の重合性基を有する多官能重合性化合物を含有する
前記複合体において、前記加硫ゴム層、加硫ゴム部材および樹脂部材の少なくとも1つは、加硫活性剤を含む組成物で形成してもよい。例えば、加硫ゴム層を、加硫剤および加硫活性剤を含有する未加硫ゴム組成物で形成し、加硫ゴム部材および樹脂部材の少なくとも一方の部材を、加硫活性剤を含む組成物で形成してもよい。また、加硫ゴム層を、硫黄系加硫剤で加硫されたスチレン−ジエン系ゴムで構成し、樹脂部材を、ポリフェニレンエーテル系樹脂で構成してもよい。
【0017】
本発明の方法では、加硫剤を含有する未加硫ゴム層を介して、未加硫ゴム組成物、半加硫ゴム部材および加硫ゴム部材から選択されたゴムエレメントと、未成形樹脂組成物、半成形樹脂部材および成形樹脂部材から選択された樹脂エレメントとを接触させ、未加硫ゴム又は半加硫ゴムを加硫し、前記未加硫ゴム層が加硫した加硫ゴム層を介して、前記ゴムエレメントの加硫ゴム部材と樹脂エレメントの樹脂部材とが接合した樹脂/ゴム複合体を製造する。この方法において、未加硫ゴム又は半加硫ゴムを加硫し、必要によりゴムエレメントと樹脂エレメントとを成形してもよい。また、ゴムエレメント及び樹脂エレメントの接合面のうち少なくとも一方の接合面に、加硫剤を含有する未加硫ゴム組成物の層を形成し、この未加硫ゴム組成物層を介して前記ゴムエレメントと樹脂エレメントとを加圧接触下で加熱してもよい。また、加硫剤を含有する未加硫ゴム組成物の層は、未加硫ゴム組成物のフィルム又は塗布剤で形成してもよい。さらに、加硫剤を含むゴムエレメントと、樹脂エレメントとの間に、有機過酸化物と、複数の重合性基を有する多官能重合性化合物とを含有する未加硫ゴム組成物の層を介在させて加圧下で加熱して成形してもよい。さらには、ゴムエレメント及び樹脂エレメントのうち少なくとも一方のエレメントは、複数の重合性基を有する多官能重合性化合物を含んでいてもよい。
【0018】
【発明の実施の形態】
[樹脂部材]
本発明の複合体において、樹脂部材は、熱可塑性樹脂および架橋性基を有する樹脂から選択された少なくとも一種(以下、単に樹脂と称することがある)で構成されている。
【0019】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂(ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂など)、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂などの縮合系熱可塑性樹脂;ポリオレフィン系樹脂、ハロゲン含有ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂などのビニル重合系熱可塑性樹脂;熱可塑性エラストマーなどが例示できる。これらの樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。二種以上の樹脂を組み合わせて用いる場合、樹脂組成物はポリマーアロイなどの複合樹脂組成物を形成してもよい。
【0020】
(1)ポリアミド系樹脂
ポリアミド系樹脂としては、脂肪族ポリアミド系樹脂、脂環族ポリアミド系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂などが挙げられる。脂肪族ポリアミド系樹脂としては、脂肪族ジアミン成分(テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのC4−10アルキレンジアミン)と脂肪族ジカルボン酸成分(アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの炭素数4〜20程度のアルキレンジカルボン酸など)との縮合物(例えば、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612など)、ラクタム(ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどの炭素数4〜20程度のラクタムなど)又はアミノカルボン酸(ω−アミノウンデカン酸などの炭素数4〜20程度のアミノカルボン酸など)の単独又は共重合体(例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12など)、これらのポリアミド成分が共重合したコポリアミド(例えば、ポリアミド6/11,ポリアミド6/12,ポリアミド66/11,ポリアミド66/12など)などが挙げられる。
【0021】
脂環族ポリアミド系樹脂としては、前記脂肪族ジアミン成分及び/又は脂肪族ジカルボン酸成分の少なくとも一部として、脂環族ジアミン及び/又は脂環族ジカルボン酸を用いたポリアミドが挙げられる。脂環族ポリアミドには、例えば、前記脂肪族ジカルボン酸成分と脂環族ジアミン成分(シクロへキシルジアミンなどのC5−8シクロアルキルジアミン;ビス(アミノシクロへキシル)メタン、2,2−ビス(アミノシクロへキシル)プロパンなどのビス(アミノシクロへキシル)アルカン類など)との縮合体が含まれる。
【0022】
芳香族ポリアミド系樹脂には、前記脂肪族ジアミン成分及び脂肪族ジカルボン酸成分のうち少なくとも一方の成分が芳香族成分であるポリアミド、例えば、ジアミン成分が芳香族成分であるポリアミド[MXD−6などの芳香族ジアミン(メタキシリレンジアミンなど)と脂肪族ジカルボン酸との縮合体など]、ジカルボン酸成分が芳香族成分であるポリアミド[脂肪族ジアミン(トリメチルヘキサメチレンジアミンなど)と芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸など)との縮合体など]、ジアミン成分及びジカルボン酸成分が芳香族成分であるポリアミド[ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)などの全芳香族ポリアミド(アラミド)など]などが含まれる。
【0023】
ポリアミド系樹脂には、さらに、ダイマー酸をジカルボン酸成分とするポリアミド、少量の多官能性ポリアミン及び/又はポリカルボン酸成分を用い、分岐鎖構造を導入したポリアミド、変性ポリアミド(N−アルコキシメチルポリアミドなど)、変性ポリオレフィンを混合あるいはグラフト重合させた高耐衝撃性ポリアミドも含まれる。
【0024】
ポリアミド系樹脂において、末端NH2基と末端COOH基との割合は、特に限定されず、例えば、末端アミノ基の水素原子とα−炭素位の水素原子とで活性水素原子を構成する場合、末端アミノ基/末端カルボキシル基=10/90〜100/0(モル比)程度、好ましくは20/80〜95/5(モル比)程度、さらに好ましくは25/75〜95/5(モル比)程度の範囲から選択できる。また、末端アミノ基の水素原子だけで活性水素原子を構成する場合、末端アミノ基/末端カルボキシル基=50/50〜100/0(モル比)程度、好ましくは60/40〜95/5(モル比)程度、さらに好ましくは70/30〜95/5(モル比)程度であってもよい。
【0025】
(2)ポリエステル系樹脂
ポリエステル系樹脂は、脂肪族ポリエステル系樹脂であってもよいが、通常、芳香族ポリエステル系樹脂、例えば、ポリ(アルキレン)アリレート系樹脂又は飽和芳香族ポリエステル系樹脂が使用される。芳香族ポリエステル系樹脂としては、ポリアルキレンアリレート系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリC2−4アルキレンテレフタレート;このポリアルキレンテレフタレートに対応するポリC2−4アルキレンナフタレート(例えば、ポリエチレンナフタレートなど);ポリ1,4−シクロへキシルジメチレンテレフタレート(PCT));ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)と、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸など)との重縮合により得られるポリアリレート系樹脂(例えば、ポリアリレート樹脂など);全芳香族又は液晶性芳香族ポリエステル(例えば、パラオキシ安息香酸を用いた液晶性ポリエステルなど)などが含まれる。ポリエステル系樹脂は、アルキレンアリレート単位を主成分(例えば、50重量%以上)として含むコポリエステルであってもよく、共重合成分には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールなどのC2−6アルキレングリコール、ポリオキシC2−4アルキレングリコール、フタル酸、イソフタル酸などの非対称芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸などが例示できる。さらに、少量のポリオール及び/又はポリカルボン酸を用い、線状ポリエステルに分岐鎖構造を導入してもよい。
【0026】
芳香族ポリエステル系樹脂が前記活性原子を所定の濃度で有しない場合、活性原子を有する変性化合物で変性した変性ポリエステル系樹脂(例えば、アミノ基及びオキシアルキレン基から選択された少なくとも一種を有する芳香族ポリエステル系樹脂)を用いてもよい。活性原子、特に活性水素原子を有する化合物としては、ポリアミン類(脂肪族ジアミン類、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタンなどの炭素数2〜10程度の直鎖又は分岐鎖状アルキレンジアミンなど;脂環族ジアミン類、例えば、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなど;芳香族ジアミン類、例えば、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなど)、ポリオール類(例えば、(ポリ)オキシエチレングリコール、(ポリ)オキシトリメチレングリコール、(ポリ)オキシプロピレングリコール、(ポリ)オキシテトラメチレングリコールなどの(ポリ)オキシC2−4アルキレングリコール類など)などが例示できる。変性は、例えば、ポリエステル系樹脂と変性化合物とを加熱混合し、アミド化、エステル化又はエステル交換反応を利用して行うことができる。ポリエステル系樹脂の変性の程度は、前記化合物中の活性水素原子の量に応じて、ポリエステル系樹脂の官能基(ヒドロキシル基又はカルボキシル基)1モルに対して、例えば、変性化合物0.1〜2モル、好ましくは0.2〜1.5モル、さらに好ましくは0.3〜1モル程度であってもよい。エステル交換反応に用いる場合、(ポリ)オキシC2−4アルキレングリコール類の使用量は、ポリエステル系樹脂100重量部に対して1〜50重量部程度、好ましくは5〜30重量部程度であってもよい。
【0027】
(3)ポリ(チオ)エーテル系樹脂
ポリ(チオ)エーテル系樹脂には、ポリオキシアルキレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂(ポリチオエーテル系樹脂)、ポリエーテルケトン系樹脂が含まれる。ポリオキシアルキレン系樹脂としては、ポリオキシメチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシテトラメチレングリコールなどのポリオキシC1−4アルキレングリコールなどが含まれる。好ましいポリエーテル系樹脂には、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂及びポリエーテルケトン系樹脂が含まれる。
【0028】
(3a)ポリアセタール系樹脂
ポリアセタール系樹脂は、ホモポリマー(ホルムアルデヒドの単独重合体)であってもよく、コポリマー(トリオキサンと、エチレンオキサイド及び/又は1,3−ジオキソランとの共重合体など)であってもよい。また、ポリアセタール系樹脂の末端は封鎖され安定化されていてもよい。
【0029】
(3b)ポリフェニレンエーテル系樹脂
ポリフェニレンエーテル系樹脂には、2,6−ジメチルフェニレンオキサイドを主成分とする種々の樹脂、例えば、2,6−ジメチルフェニレンオキサイドとフェノール類との共重合体、スチレン系樹脂をブレンド又はグラフトした変性樹脂などが含まれる。他の変性ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、ポリフェニレンエーテル/ポリアミド系、ポリフェニレンエーテル/飽和ポリエステル系、ポリフェニレンエーテル/ポリフェニレンスルフィド系、ポリフェニレンエーテル/ポリオレフィン系などが挙げられる。
【0030】
なお、スチレン系樹脂による変性は、ポリフェニレンエーテル系樹脂の耐熱性を低下させ、加硫過程での加熱により変形する場合がある。さらに、スチレン系樹脂の添加は、ゴムとポリフェニレンエーテル系樹脂との接着性にも悪影響を及ぼす場合があり、スチレン系樹脂の過剰の添加は好ましくない。一方、ポリフェニレンエーテル系樹脂は溶融流動性が低く、スチレン系樹脂と組み合わせることなく用いると、成形性が低下する。これらの点から、スチレン系樹脂の割合は、ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対して、2〜150重量部、好ましくは3〜100重量部、さらに好ましくは5〜50重量部程度である。
【0031】
(3c)ポリスルフィド系樹脂(ポリチオエーテル系樹脂)
ポリスルフィド系樹脂は、ポリマー鎖中にチオ基(−S−)を有する樹脂であれば特に限定されない。このような樹脂としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリジスルフィド樹脂、ポリビフェニレンスルフィド樹脂、ポリケトンスルフィド樹脂、ポリチオエーテルスルホン樹脂などが例示できる。また、ポリスルフィド系樹脂は、ポリ(アミノフェニレンスルフィド)のようにアミノ基などの置換基を有していてもよい。好ましいポリスルフィド系樹脂はポリフェニレンスルフィド樹脂である。
【0032】
(3d)ポリエーテルケトン系樹脂
ポリエーテルケトン系樹脂には、ジハロゲノベンゾフェノン(ジクロロベンゾフェノンなど)とジヒドロベンゾフェノンとの重縮合により得られるポリエーテルケトン樹脂、ジハロゲノベンゾフェノンとヒドロキノンとの重縮合により得られるポリエーテルエーテルケトン樹脂などが例示できる。
【0033】
(4)ポリカーボネート系樹脂
ポリカーボネート系樹脂としては、脂肪族ポリカーボネート系樹脂であってもよいが、通常、芳香族ポリカーボネート系樹脂、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物(ビスフェノールA、ビスフェノールSなどのビスフェノール化合物など)と、ホスゲン又は炭酸ジエステル(ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネート、ジメチルカーボネートなどのジアルキルカーボネートなど)との反応により得られる芳香族ポリカーボネートなどが使用できる。
【0034】
(5)ポリイミド系樹脂
ポリイミド系樹脂には、熱可塑性ポリイミド系樹脂、例えば、芳香族テトラカルボン酸又はその無水物(ベンゾフェノンテトラカルボン酸など)と、芳香族ジアミン(ジアミノジフェニルメタンなど)との反応で得られるポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂などが含まれる。
【0035】
(6)ポリスルホン系樹脂
ポリスルホン系樹脂には、ジハロゲノジフェニルスルホン(ジクロロジフェニルスルホンなど)とビスフェノール類(ビスフェノールA又はその金属塩など)との重縮合により得られるポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂(商品名:RADEL)などが例示できる。
【0036】
(7)ポリウレタン系樹脂
ポリウレタン系樹脂は、ジイソシアネート類とポリオール類と必要により鎖伸長剤との反応により得ることができる。ジイソシアネート類としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート類、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート類、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ジイソシアネート類などが例示できる。ジイソシアネート類として、アルキル基(例えば、メチル基)が主鎖又は環に置換した化合物を使用してもよい。
【0037】
ジオール類としては、ポリエステルジオール(アジピン酸などのC4−12脂肪族ジカルボン酸成分、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのC2−12脂肪族ジオール成分、ε−カプロラクトンなどのC4−12ラクトン成分などから得られるポリエステルジオールなど)、ポリエーテルジオール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシテトラメチレングリコール、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加体など)、ポリエステルエーテルジオール(ジオール成分の一部として上記ポリエーテルジオールを用いたポリエステルジオール)などが利用できる。
【0038】
さらに、鎖伸長剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのC2−10アルキレンジオールの他、ジアミン類も使用できる。ジアミン類としては、脂肪族ジアミン類、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタンなどの炭素数2〜10程度の直鎖又は分岐鎖状アルキレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレントリアミンなどの直鎖又は分岐鎖状ポリアルキレンポリアミンなど;脂環族ジアミン類、例えば、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなど;芳香族ジアミン類、例えば、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなどが例示できる。
【0039】
(8)ポリオレフィン系樹脂
ポリオレフィン系樹脂には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(メチルペンテン−1)などのオレフィンの単独又は共重合体、オレフィンと共重合性単量体との共重合体(エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)が挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0040】
好ましいポリオレフィン系樹脂には、プロピレン含量が50重量%以上(特に75〜100重量%)のポリプロピレン系樹脂、例えば、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン共重合体などが含まれる。また、ポリオレフィン系樹脂は結晶性であるのが好ましい。
【0041】
(9)ハロゲン含有ビニル系樹脂
ハロゲン含有ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体などの塩素含有ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンと共重合性単量体との共重合体などのフッ素含有ビニル系樹脂などが例示できる。好ましいハロゲン含有ビニル系樹脂は、フッ素含有ビニル系樹脂(例えば、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデンなど)である。
【0042】
(10)スチレン系樹脂
スチレン系樹脂としては、スチレン系単量体の単独又は共重合体(ポリスチレン、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−α−メチルスチレン共重合体など)、スチレン系単量体と共重合性単量体との共重合体(スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体などのスチレン共重合体;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−アクリル酸エステル−スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体(ACS樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)、アクリロニトリル−酢酸ビニル−スチレン共重合体(AXS樹脂)などのスチレン系グラフト共重合体など)などが挙げられる。
【0043】
(11)(メタ)アクリル系樹脂
(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体、(メタ)アクリル系単量体と共重合性単量体との共重合体などが挙げられる。(メタ)アクリル系単量体には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸C1−10アルキルエステル、メタクリル酸シクロヘキシルなどのメタクリル酸C5−10シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸C6−10アリールエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシC2−10アルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどが挙げられる。共重合性単量体には、酢酸ビニル、塩化ビニルなどのビニル系単量体、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体などが挙げられる。
【0044】
(12)熱可塑性エラストマー
熱可塑性エラストマーには、ポリアミド系エラストマー(ポリアミドを硬質相とし、脂肪族ポリエーテルを軟質相とする共重合体)、ポリエステル系エラストマー(ポリアルキレンアリレートを硬質相とし、脂肪族ポリエーテルや脂肪族ポリエステルを軟質相とする共重合体)、ポリウレタン系エラストマー(短鎖グリコールのポリウレタンを硬質相とし、脂肪族ポリエーテルや脂肪族ポリエステルを軟質相とする共重合体、例えば、ポリエステルウレタンエラストマー、ポリエーテルウレタンエラストマーなど)、ポリスチレン系エラストマー(ポリスチレンブロックを硬質相とし、ジエン重合体ブロック又はその水素添加ブロックを軟質相とするブロック共重合体)、ポリオレフィン系エラストマー(ポリスチレン又はポリプロピレンを硬質相とし、エチレン−プロピレンゴムやエチレン−プロピレン−ジエンゴムを軟質相とするエラストマー、結晶化度の異なる硬質相と軟質相とで構成されたオレフィン系エラストマーなど)、ポリ塩化ビニル系エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマーなどが含まれる。脂肪族ポリエーテルとしては、(ポリ)オキシC2−4アルキレングリコール類(例えば、(ポリ)オキシエチレングリコール、(ポリ)オキシトリメチレングリコール、(ポリ)オキシプロピレングリコール、(ポリ)オキシテトラメチレングリコール、特にポリオキシエチレングリコール)などが使用でき、脂肪族ポリエステルとしては、ポリウレタン系樹脂の項で述べたポリエステルジオールなどが使用できる。これらの熱可塑性エラストマーは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0045】
熱可塑性エラストマーがブロック共重合体であるとき、ブロック構造は特に制限されず、トリブロック構造、マルチブロック構造、星形ブロック構造などであってもよい。
【0046】
好ましい熱可塑性エラストマーには、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマーが含まれる。
【0047】
(架橋性基を有する樹脂)
架橋性基を有する樹脂は、不飽和結合(重合性又は架橋性不飽和結合)を有する熱可塑性樹脂と、架橋性官能基を有する熱硬化性樹脂とに大別でき、架橋性樹脂は前記不飽和結合と架橋性官能基とを有していてもよい。
【0048】
(不飽和結合を有する熱可塑性樹脂)
本発明は、ラジカルに対して活性な不飽和結合を所定の濃度で含有する種々の熱可塑性樹脂とゴムとの接合にも利用できる。そのため、熱可塑性樹脂が不飽和結合を有しない樹脂や不飽和結合濃度が所定の濃度に達しない樹脂である場合には、不飽和結合を導入した変性樹脂又は改質樹脂として使用してもよい。前記不飽和結合は、加硫剤(ラジカル発生剤など)により活性化可能であれば特に限定されず、熱や光の付与により架橋性又は重合性を示す種々の結合(例えば、重合性不飽和結合)であってもよい。このような不飽和結合又は不飽和結合を有するユニットは、連結基(エーテル結合(−O−)、エステル結合(−OC(=O)−、−C(=O)O−)、アミド結合(−NHCO−,−CONH−)、イミノ結合(−NH−)、ウレタン結合(−NHC(=O)O−)、尿素結合、ビウレット結合など)を介して、熱可塑性樹脂に結合していてもよい。さらに、前記不飽和結合又はそのユニットは、樹脂の末端(主鎖末端)及び/又は側鎖に位置していてもよく、樹脂の主鎖に位置していてもよく、さらにはこれらを組み合わせた異なる部位に位置していてもよい。
【0049】
不飽和結合を有する基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、アリル基、2−メチル−2−プロペニル基、2−ブテニル基などのC2−6アルケニル基;4−ビニルフェニル基、4−イソプロペニルフェニル基などのC2−6アルケニル−C6−20アリール基;スチリル基などのC6−20アリール−C2−6アルケニル基;エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、プロパルギル基、2−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基などのC2−6アルキニル基;ビニレン基、メチルビニレン基、エチルビニレン基、1,2−ジメチルビニレンなどのモノ又はジC1−6アルキルビニレン基、クロロビニレン基などのハロビニレン基などの置換基を有していてもよいビニレン基;ビニリデン基;エチニレン基などが例示できる。
【0050】
不飽和結合を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、(1)反応性基(A)及び不飽和結合とを有する化合物と、前記反応性基(A)に対して反応可能な反応性基(B)を有する樹脂(熱可塑性樹脂など)との反応により生成する樹脂、(2)共重合又は共縮合により不飽和結合を導入した熱可塑性樹脂、(3)不飽和結合を有する樹脂と樹脂とで形成されたポリマーブレンド、(4)種々の有機反応(例えば、アセチレンを利用したレッペ反応によるビニル基の導入、ビニルリチウムなどの有機金属試薬を利用した不飽和結合の導入、カップリング反応による不飽和結合の導入など)により不飽和結合を導入した熱可塑性樹脂などが例示できる。好ましい樹脂は、前記樹脂(1)、(2)、又は(3)である。
【0051】
前記態様(1)において、少なくとも1つの反応性基(A)および少なくとも1つの不飽和結合を有する重合性化合物と、前記重合性化合物の反応性基(A)に対して反応性の反応性基(B)を有する樹脂とを反応させることにより、樹脂に不飽和結合を導入できる。
【0052】
重合性化合物の代表的な反応性基(A)としては、(A1)ヒドロキシル基、(A2)カルボキシル基又はその酸無水物基、(A3)アミノ基、(A4)エポキシ基、(A5)イソシアネート基などが例示でき、重合性化合物の反応性基(A)と樹脂の反応性基(B)との組み合わせとしては、次のような組み合わせが例示できる。なお、括弧内は反応性基(A)と反応性基(B)との結合形式を示す。
【0053】
(A1)ヒドロキシル基:
(B)カルボキシル基又はその酸無水物基(エステル結合)、イソシアネート基(エステル結合)
(A2)カルボキシル基又はその無水物基:
(B)ヒドロキシル基(エステル結合)、アミノ基(アミド結合)、エポキシ基(エステル結合)、イソシアネート基(アミド結合)
(A3)アミノ基:
(B)カルボキシル基又はその酸無水物基(アミド結合)、エポキシ基(イミノ結合)、イソシアネート基(アミド結合)
(A4)エポキシ基:
(B)カルボキシル基又はその酸無水物基(エステル結合)、アミノ基(イミノ結合)
(A5)イソシアネート基:
(B)ヒドロキシル基(エステル結合)、カルボキシル基又はその酸無水物基(アミド結合)、アミノ基(アミド結合)
前記樹脂の反応性基(B)に関し、ポリアミド系樹脂では、例えば、残存するカルボキシル基やアミノ基を反応性基(B)として利用でき、ポリエステル系樹脂では、例えば、残存するカルボキシル基やヒドロキシル基を反応性基(B)として利用できる。ポリ(チオ)エーテル系樹脂では、残存するヒドロキシル基、メルカプト基などを反応性基(B)として利用してもよく、ポリアセタール系樹脂では、残存するヒドロキシル基を反応性基(B)として利用できる。さらに、ポリカーボネート系樹脂では、残存するヒドロキシル基を反応性基(B)として利用でき、ポリイミド系樹脂では、残存するカルボキシル基や酸無水物基、アミノ基、イミノ基などを反応性基(B)として利用できる。さらに、ポリウレタン系樹脂では、例えば、残存するヒドロキシル基、アミノ基、イソシアネート基などを反応性基(B)として利用してもよく、(メタ)アクリル系樹脂では、反応性基(B)を有する単量体を共重合成分として用いることにより、前記反応性基(B)を導入できる。
【0054】
重合性化合物としては、ヒドロキシル基含有化合物[例えば、アリルアルコール、2−ブテン−1−オール、3−ブテン−2−オールなどのC3−6アルケノール、プロパルギルアルコールなどのC3−6アルキノール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレートなどのC2−6アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのポリオキシC2−6アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシ−α−メチルスチレンのなどのC2−6アルケニルフェノール、ジヒドロキシスチレン、ビニルナフトールなど]、カルボキシル基又は酸無水物基含有化合物[例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、3−ブテン酸などのC3−6アルケンカルボン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸などのC4−8アルケンジカルボン酸又はその無水物、ビニル安息香酸などの不飽和芳香族カルボン酸、ケイ皮酸など]、アミノ基含有化合物(例えば、アリルアミンなどのC3−6アルケニルアミン、4−アミノスチレン、ジアミノスチレンなど)、エポキシ基含有化合物(例えば、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートなど)、イソシアネート基化合物(例えば、ビニルイソシアネートなど)などが例示できる。
【0055】
なお、前記態様(1)において、樹脂として反応性基(B)を有していない樹脂や、反応性基(B)の濃度が低い樹脂を用いる場合、反応性基(B)を導入することにより樹脂を改質又は変性してもよい。樹脂に反応性基(B)を導入する方法としては、(i)樹脂の製造において、反応性基(B)を有する単量体(例えば、前記例示の重合性化合物など)と、樹脂材料(又は樹脂の原料である単量体やオリゴマー)とを共重合させる方法、(ii)酸化反応によるカルボキシル基の導入、ハロゲン化法、重合性単量体のグラフト法などの種々の有機反応が利用できる。なお、ビニル重合系樹脂では、通常、前記反応性基(B)を有する単量体を共重合成分として用いることにより前記反応性基(B)を導入する場合が多く、ビニル重合系樹脂を含めていずれの樹脂でも、前記反応性基を有する重合性化合物のグラフト反応により、前記反応性基(B)を容易に導入できる。
【0056】
前記態様(2)において、不飽和結合の導入方法としては、例えば、縮合系樹脂(例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂など)の調製において、反応成分の一部(コモノマー)として、多官能性の不飽和結合を有する化合物[例えば、脂肪族不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸などのC4−10脂肪族不飽和ジカルボン酸など)などの不飽和多価カルボン酸;脂肪族不飽和ジオール(2−ブテン−1,4−ジオールなどのC4−10脂肪族不飽和ジオールなど)などの不飽和多価アルコールなど]を共縮合(又は共重合)させる方法などが例示できる。また、付加重合系樹脂(例えば、オレフィン系樹脂など)においては、反応成分の一部(コモノマー)として、共役不飽和結合を有する単量体(例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、クロロプレンなどの置換基を有していてもよい共役C4−10アルカジエンなど)を共重合させる方法などが例示できる。
【0057】
前記態様(3)では、熱可塑性樹脂(A)と、不飽和結合を有する樹脂(B)とを混合してポリマーブレンド(又は樹脂組成物)を形成させることにより熱可塑性樹脂に不飽和結合を導入できる。
【0058】
前記熱可塑性樹脂(A)としては、特に限定されず、種々の熱可塑性樹脂[例えば、後述する熱可塑性樹脂(ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂など)など]が例示できる。また、熱可塑性樹脂(A)は、不飽和結合を有さない飽和樹脂であってもよく、不飽和結合を有する樹脂であってもよい。
【0059】
不飽和結合を有する樹脂(B)としては、前記樹脂(1)、(2)又は(4)などの不飽和結合が導入された熱可塑性樹脂、不飽和結合含有ゴム(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリペンテナマー、ポリヘプテナマー、ポリオクテナマー、ポリ(3−メチルオクテナマー)、ポリデセナマー、ポリ(3−メチルデセナマー)、ポリドデセナマーなどのポリC4−15アルケニレン、ブタジエン−イソプレン共重合体などのC4−15アルカジエンの共重合体、ブタジエン変性ポリエチレンなどのゴム変性ポリオレフィンなど)などが例示できる。なお、前記ポリC4−15アルケニレンは、シクロオレフィン類(例えば、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロデセン、シクロドデセンなどの置換基を有していてもよいC5−20シクロオレフィンなど)のメタセシス重合、ポリアルケニレン(例えば、ポリブタジエンなど)の部分水素添加などにより得てもよい。
【0060】
前記態様(4)において、前記樹脂(B)の割合は、ポリマーブレンドに所定の濃度で不飽和結合を導入できる範囲、例えば、樹脂(A)/樹脂(B)(重量比)=5/95〜95/5、好ましくは30/70〜95/5、さらに好ましくは50/50〜95/5程度である。また、樹脂(B)として不飽和結合含有ゴム(例えば、ポリオクテニレンなど)を用いる場合、樹脂(B)の割合は、樹脂(A)の性質を損なわない範囲で選択でき、例えば、樹脂(A)/樹脂(B)(重量比)=50/50〜95/5、好ましくは60/40〜95/5、さらに好ましくは70/30〜95/5程度である。
【0061】
なお、前記態様(4)の樹脂組成物において、樹脂(A)と樹脂(B)とが、ポリマーアロイ(海島構造を有するポリマーアロイなど)を形成していてもよい。
【0062】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂(ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂など)、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂などの縮合系熱可塑性樹脂;ポリオレフィン系樹脂、ハロゲン含有ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂などのビニル重合系熱可塑性樹脂;熱可塑性エラストマーなどが例示できる。これらの樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。二種以上の樹脂を組み合わせて用いる場合、樹脂組成物はポリマーアロイなどの複合樹脂組成物を形成してもよい。
【0063】
不飽和結合の割合は、樹脂の種類、不飽和結合の活性化の程度などにもよるが、例えば、樹脂一分子に対して、例えば、平均0.1個以上(例えば、0.1〜1000個)、好ましくは平均1個以上(例えば、1〜100個)、さらに好ましくは平均2個以上(例えば、2〜50程度)である。また、不飽和結合の濃度は、例えば、樹脂1kgに対して、0.001〜6.6モル、好ましくは0.01〜4モル(例えば、0.01〜1モル)、さらに好ましくは0.02〜2モル(例えば、0.05〜0.5モル)程度である。
【0064】
なお、ポリマーフレンドによる不飽和結合の導入において、不飽和結合の数は、各樹脂の重量分率に応じて不飽和結合を平均値として算出できるが、樹脂組成物中の不飽和結合の数を濃度モル/kgとして算出するのが便利である。
【0065】
(架橋性官能基を有する熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂としては、架橋剤(又は硬化剤)などの存在下で架橋性又は硬化性を示す官能基(例えば、メチロール基、アルコキシメチル基、エポキシ基、イソシアネート基など)を有する樹脂が挙げられる。このような熱硬化性樹脂としては、重縮合又は付加縮合系樹脂(フェノール樹脂、アミノ系樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド系樹脂、熱硬化性ポリウレタン系樹脂、シリコーン樹脂など)、付加重合系樹脂(不飽和ポリエステル系樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂など)が例示できる。熱硬化性樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0066】
(13)フェノール樹脂
フェノール樹脂には、ノボラック樹脂、レゾール樹脂などが含まれるが、通常ノボラック樹脂が用いられる。ノボラック樹脂は、酸触媒の存在下、フェノール類とアルデヒド類との反応により得られる。フェノール類としては、例えば、フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、2,5−、3,5−又は3,4−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、エチルフェノール、プロピルフェノールなどのC1−4アルキルフェノール、ジヒドロキシベンゼン、レゾルシノール、ナフトールなどが例示できる。これらのフェノール類は単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドなどの脂肪族アルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒドなどの芳香族アルデヒドなどが例示できる。これらのアルデヒド類は単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0067】
(14)アミノ系樹脂
アミノ系樹脂は、通常、アミノ基含有化合物とアルデヒド類(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドなどの脂肪族アルデヒド、フェニルアセトアルデヒドなどの芳香族アルデヒドなど)との反応により得られる。アミノ系樹脂には、尿素樹脂(尿素とアルデヒド類との反応により得られる尿素樹脂など)、アニリン樹脂(アニリン、ナフチルアミン、トルイジン、キシリジン、N,N−ジメチルアニリン、ベンジジンなどのアニリン類と、アルデヒド類との反応により得られるアニリン樹脂など)、メラミン樹脂(メラミンとアルデヒド類との反応により得られるメラミン樹脂など)、グアナミン樹脂(ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ホルモグアナミンなどのグアナミン類と、アルデヒド類との反応により得られるグアナミン樹脂など)などが含まれる。
【0068】
(15)エポキシ系樹脂
エポキシ系樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、アミン系エポキシ樹脂などが含まれる。
【0069】
ビスフェノール型エポキシ樹脂を構成するビスフェノールとしては、例えば、4,4−ビフェノール、2,2−ビフェノール、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールAなどのグリシジルエーテル類が例示できる。
【0070】
ノボラック型エポキシ樹脂を構成するノボラック樹脂としては、例えば、前記ノボラック樹脂の項に記載のフェノール類とアルデヒド類との反応により得られるノボラック樹脂などが例示できる。
【0071】
アミン系エポキシ樹脂を構成するアミン成分としては、例えば、アニリン、トルイジンなどの芳香族アミン、ジアミノベンゼン、キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン、アミノヒドロキシベンゼン、ジアミノジフェニルメタンなどが例示できる。
【0072】
(16)熱硬化性ポリイミド系樹脂
熱硬化性ポリイミド系樹脂には前記ポリイミド系樹脂の項で記載の樹脂(例えば、閉環可能な複数のイミド基を有する硬化性樹脂組成物)が含まれる。
【0073】
(17)熱硬化性ポリウレタン系樹脂
熱硬化性ポリウレタン系樹脂には前記ポリウレタン系樹脂の項で記載の樹脂(例えば、複数の遊離のイソシアネート基を有するプレポリマーと、ポリエステルポリオールなどのポリオール成分とで構成された硬化性樹脂組成物)が含まれる。
【0074】
(18)シリコーン樹脂
シリコーン樹脂には、式:RaSiO(4−a)/2で表される単位(式中、係数aは1.9〜2.1程度)と、式:RbSiO(4−b)/2で表される単位(式中、係数bは0.9〜1.1程度)とで構成されたシリコーン樹脂などが含まれる。式中、Rは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのC1−10アルキル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基などのハロゲン化C1−10アルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基などのC2−10アルケニル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基などのC6−12アリール基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC3−10シクロアルキル基、ベンジル基、フェネチル基などのC6−12アリール−C1−4アルキル基などが挙げられる。
【0075】
(19)不飽和ポリエステル系樹脂
不飽和ポリエステル系樹脂としては、前記ポリエステル系樹脂において、ジカルボン酸成分として、不飽和ジカルボン酸又はその無水物(例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸など)を用いた不飽和ポリエステルなどが挙げられる。
【0076】
(20)ビニルエステル樹脂
ビニルエステル樹脂としては、前記エポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸との反応により得られる重合体、多価フェノール類とグリシジル(メタ)アクリレートとの反応により得られる重合体などが挙げられる。
【0077】
(21)ジアリルフタレート樹脂
ジアリルフタレート樹脂には、ジアリルオルソフタレート、ジアリルイソフタレートなどのジアリルフタレートモノマーから得られる樹脂などが含まれる。
【0078】
(22)熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂
熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂には、前記(メタ)アクリル系樹脂の項で記載の樹脂(ヒドロキシル基などの反応性基を有する(メタ)アクリル系樹脂と硬化剤とで構成された樹脂組成物など)が含まれる。
【0079】
なお、樹脂が熱可塑性樹脂および架橋性基を有する樹脂(特に熱硬化性樹脂を除く架橋性樹脂)である場合、ラジカルに対して高い活性を示す複数の水素原子(活性水素原子)又は硫黄原子(活性硫黄原子)(以下、これらの水素原子及び硫黄原子を活性原子と称することがある)を有していてもよい。樹脂は前記活性水素原子、活性硫黄原子から選択された少なくとも一方の活性原子を有していればよく、活性水素原子と活性硫黄原子の双方の活性原子を有していてもよい。
【0080】
前記活性原子を有する樹脂を用いると、加硫ゴム層、ひいては加硫ゴム部材との接合をより強固にできる。すなわち、活性原子を有する樹脂は、下記式で表される軌道相互作用エネルギー係数Sが一定値(例えば、0.006、好ましくは0.008)以上の活性原子を有していてもよい。好ましい活性原子の軌道相互作用エネルギー係数Sは、0.006〜0.06、好ましくは0.007〜0.05(特に0.01〜0.045)程度である。この活性原子の数は、活性原子を有する官能基の結合部位(末端、分岐鎖や主鎖など)に依存し、例えば、樹脂の一分子中、平均2個以上(2〜10000個程度)、好ましくは平均2.5個以上(2.5〜5000個程度)、さらに好ましくは平均3個以上(3〜1000個程度)]であってもよい。
【0081】
S=(CHOMO,n)2/|Ec−EHOMO,n|+(CLUMO,n)2/|Ec−ELUMO,n|
(1)
(式中、Ec、CHOMO,n、EHOMO,n、CLUMO,n、ELUMO,nは、いずれも半経験的分子軌道法MOPACPM3により算出された値であって、Ecはラジカル発生剤のラジカルの軌道エネルギー(eV)を示し、CHOMO,nは熱可塑性樹脂の基本単位を構成する第n番目の活性原子(水素原子又は硫黄原子)の最高被占分子軌道(HOMO)の分子軌道係数を示し、EHOMO,nは前記HOMOの軌道エネルギー(eV)を示し、CLUMO,nは前記n番目の活性原子(水素原子又は硫黄原子)の最低空分子軌道(LUMO)の分子軌道係数を示し、ELUMO,nは前記LUMOの軌道エネルギー(eV)を示す)
式(1)での基本単位とは、高分子の末端と、1〜3個程度の繰返単位とで形成したモデル的な分子構造を意味する。すなわち、MOPACPM3で高分子化合物について計算する場合、分子を構成する原子の数が多すぎるため、分子そのものを対象として計算するのが困難である。そのため、高分子の末端と、2〜3個程度の繰り返し単位とで形成した分子構造モデル(基本単位)を対象にして計算を行ってもよい。例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)の分子構造(繰返単位)は、一般に、化学式−(CH2−CH2−CH2−CH2−O−C(=O)−C6H4−C(=O)−O)n−で表されるが、前記式(1)では、基本単位を、便宜的にHO−CH2−CH2−CH2−CH2−O−C(=O)−C6H4−C(=O)−OHとして計算してもよい。
【0082】
なお、ラジカル発生剤のラジカルの軌道エネルギーEc(eV)は、ラジカルの分子構造に基づいて、MOPACPM3により計算するのが好ましいが、ラジカル発生剤の種類に基づいて、便宜上、所定の値を用いてもよい。例えば、ラジカル発生剤が有機過酸化物ではEc=−8eV、アゾ化合物ではEc=−5eV、硫黄を除く硫黄含有有機化合物ではEc=−6eVとして計算してもよい。
【0083】
軌道相互作用エネルギー係数Sが所定値(例えば、0.006)以上である水素原子(活性水素原子)としては、ラジカル発生剤が有機過酸化物の場合、アミノ(−NH2)基(例えば、末端アミノ基)、イミノ(−NH−)基(例えば、主鎖又は末端イミノ基、アミド結合の−NH−基など)、メルカプト(−SH)基、メチル(−CH3)基、メチレン(−CH2−)基(電子吸引性基に隣接するメチレン基、すなわち活性メチレン基)、メチリジン(−CH=)基(主鎖又は末端のメチリジン基)などの水素原子が挙げられる。
【0084】
また、軌道相互作用エネルギー係数Sが所定値(例えば、0.006)以上である硫黄原子(活性硫黄原子)としては、ラジカル発生剤が有機過酸化物の場合、チオ基(−S−)、メルカプト(−SH)基、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基などのC1−4アルキルチオ基など)、スルフィニル基(−SO−)などの硫黄原子が挙げられる。
【0085】
前記メチル基としては、例えば、アルキレン鎖、シクロアルキレン鎖又は芳香族環に結合するメチル基、酸素原子に結合するメチル基(メトキシ基のメチル基)などが例示できる。メチレン基としては、例えば、(ポリ)オキシメチレン単位、(ポリ)オキシエチレン単位などの(ポリ)オキシアルキレン単位の酸素原子に隣接するメチレン基の他、アミノ基やイミノ基などの窒素原子に隣接するメチレン基などが例示できる。メチリジン基としては、例えば、アミノ基又はイミノ基に隣接するα−位のメチリジン基、例えば、アミノシクロアルキル基のアミノ基に対するα−位のメチリジン基などが例示できる。
【0086】
活性原子数は、樹脂が、一般に単一分子ではなく、構造や鎖長などがいくらか異なる多数の分子の混合物であるため、予想される主たる複数の基本単位について計算すればよい。例えば、繰返単位−(NH−(CH2)6−NH−C(=O)−(CH2)4−(C=O))n−を有するポリマー(ポリアミド66)に含まれる活性水素原子の数は、モデル基本単位NH2−(CH2)6−NH−C(=O)−(CH2)4−C(=O)−OHに基づいて計算でき、ラジカル発生剤が有機過酸化物のとき、末端NH2基の2つの水素原子が活性水素原子(すなわち、S≧0.006)である。この場合、ポリアミド66について一分子中の活性水素原子の平均数Nは、集合体としてのポリマー(ポリアミド66)の末端NH2基と末端COOH基との比率により下記式(2)に基づいて算出できる。
【0087】
N=2×A (2)
(式中、Aは一分子中の平均の末端NH2基の数を示す)
例えば、末端NH2基/末端COOH基=1/1(モル比)の場合、一分子中の末端NH2基の数A=1個、一分子中の活性水素原子の数N=2個である。また、末端NH2基/末端COOH基=1/2(モル比)の場合、一分子中の末端NH2基の数A=2/3個、一分子中の活性水素原子の数N=4/3個である。
【0088】
なお、樹脂が異なる活性原子数を有する複数の樹脂で構成された混合樹脂である場合、混合樹脂の活性原子数は、各樹脂が有する活性原子数の平均値で表すこともできる。つまり、混合樹脂を構成する各樹脂の基本単位から活性原子数を個別に算出し、各樹脂の重量割合をもとにして活性原子数の平均を算出することにより、混合樹脂の見かけ上の活性原子数を算出できる。例えば、混合樹脂が、前記N=2個のポリアミド66(A)と、前記N=4/3個のポリアミド66(B)とで構成され、(A)/(B)=1/1(モル比)である場合、混合樹脂一分子中の活性原子数は、N=5/3個とみなすことができる。また、混合樹脂が、前記N=2個のポリアミド66(A)と、全末端がカルボキシル基(つまりN=0個)であるポリアミド66(C)とで構成され、(A)/(C)=3/1(モル比)である場合、混合樹脂一分子中の活性原子数は、N=3/2個とみなすことができる。
【0089】
前記例示の樹脂のうち、このような活性原子を有する樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、熱可塑性エラストマー、アミノ系樹脂、エポキシ樹脂などが含まれる。
【0090】
ポリアミド系樹脂において、例えば、末端アミノ基の水素原子や、末端アミノ基に対してα−位の炭素原子に結合する水素原子、アミド結合の−NH−基に隣接する炭素原子に結合する水素原子(メチレン基の水素原子やメチリジン基の水素原子など)、特に末端アミノ基の水素原子が活性水素原子を構成する。
【0091】
ポリエステル系樹脂では、通常、(ポリ)オキシアルキレン単位の酸素原子に隣接するメチレン基の水素原子が活性水素原子を構成し、変性ポリエステル系樹脂では、通常、末端アミノ基の水素原子や、末端アミノ基に対してα−位の炭素原子に結合する水素原子、アミド結合の−NH−基に隣接する炭素原子に結合する水素原子(メチレン基の水素原子やメチリジン基の水素原子など)、特に末端アミノ基の水素原子が活性水素原子を構成する。
【0092】
ポリアセタール系樹脂では、例えば、オキシメチレン単位の水素原子、末端を封鎖したアルコキシ基(特にメトキシ基)の水素原子、特にオキシメチレン単位の水素原子が活性水素原子を構成し、ポリフェニレンエーテル系樹脂では、例えば、ベンゼン環に結合するメチル基の水素原子が活性水素原子を構成し、ポリスルフィド系樹脂では、例えば、主鎖中のチオ基がそれぞれ活性原子を構成する。
【0093】
ポリウレタン系樹脂では、例えば、ジイソシアネート類の主鎖又は環に結合するアルキル基の水素原子(特に、ベンジル位の水素原子)、ポリオール類やポリオキシアルキレングリコールのアルキレン基の水素原子、鎖伸長剤のアミノ基の水素原子などが活性水素原子を構成する。
【0094】
ポリウレタン系樹脂では、例えば、ジイソシアネート類の主鎖又は環に結合するアルキル基の水素原子(特に、ベンジル位の水素原子)、ポリオール類やポリオキシアルキレングリコールのアルキレン基の水素原子、鎖伸長剤のアミノ基の水素原子などが活性水素原子を構成する。ポリオレフィン系樹脂では、例えば、ポリオレフィンの主鎖を構成するメチレン基の水素原子、前記主鎖から分岐するメチル基の水素原子などが活性水素原子を構成する。熱可塑性エラストマーでは、例えば、軟質相を構成するオキシアルキレン単位の水素原子が活性水素原子を構成してもよい。
【0095】
アミノ系樹脂では、例えば、アミノ基(例えば、メラミン、グアナミンなどを構成するアミノ基など)などが活性水素原子を構成する。エポキシ系樹脂では、例えば、エポキシ基を構成する炭素原子に結合する水素原子などが活性水素原子を構成する。
【0096】
樹脂部材を形成するための樹脂組成物(特に架橋性基を有する樹脂)は、架橋を促進するための架橋促進剤を含んでいてもよい。架橋促進剤は樹脂の種類に応じて選択することができ、例えば、樹脂が架橋性官能基を有する樹脂である場合には、酸類、塩基類や硬化剤(有機系硬化剤、無機系硬化剤など)などを用いると架橋(又は硬化)を著しく促進できる。
【0097】
このような架橋促進剤には、ラジカル発生剤(後述するラジカル発生剤など)、酸類(酢酸などの脂肪酸類、p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸類、安息香酸などの芳香族脂肪酸類などの有機酸類、塩酸などの無機酸類など)、塩基類(トリエチルアミンなどの脂肪族アミン、アニリンなどの芳香族アミン、ピリジンなどのヘテロ環式アミンなど)、有機系硬化剤[多価カルボン酸又はその酸無水物(例えば、グリオキザール、マロンジアルデヒド、グルタルアルデヒド、テレフタルアルデヒドなど)、複数のアルデヒド基を有する化合物、エポキシ化合物(例えば、アルキレングリコールジグリシジルエーテル、ポリオキシアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどの複数のエポキシ基を有する化合物など)、窒素含有化合物(例えば、尿素樹脂、グアナミン樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂、前記(7)ポリウレタン系樹脂の項に記載のジアミン類など)、メチロール基又はアルコキシメチル基を有する化合物(例えば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド基を有する重合体など)、ポリイソシアネートなど]、無機系硬化剤[ホウ酸又はホウ酸塩(ホウ砂など)、ジルコニウム化合物、チタニウム化合物、アルミニウム化合物、リン化合物、シランカップリング剤など]、硬化触媒(有機スズ化合物、有機アルミニウム化合物など)などが含まれる。これらの架橋促進剤は単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
【0098】
また、樹脂部材を形成するための樹脂組成物は、種々の添加剤、例えば、フィラー又は補強剤、安定剤(紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤)、着色剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤などを含んでいてもよい。
【0099】
[ゴム部材(加硫ゴム部材)]
(ゴム)
ゴム部材(加硫ゴム部材)は、加硫剤とゴムとを含有するゴム組成物を成形(加硫)することにより得られる。本発明では種々のゴムを強固に接合できるので、前記ゴムの種類は特に制限されない。
【0100】
ゴムとしては、ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、アクリル系ゴム、フッ素ゴム、シリコーン系ゴム、ウレタン系ゴム、エピクロロヒドリンゴム(エピクロロヒドリン単独重合体CO、エピクロロヒドリンとエチレンオキサイドとの共重合体ECO、アリルグリシジルエーテルをさらに共重合させた共重合体など)、クロロスルホン化ポリエチレン、プロピレンオキシドゴム(GPO)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EAM)、ポリノルボルネンゴム、及びこれらの変性ゴム(酸変性ゴムなど)などが例示できる。これらのゴムは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのゴムのうち、通常、ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、アクリル系ゴム、フッ素ゴム、シリコーン系ゴム、ウレタン系ゴムなどが実用的な観点から広く使用される。
【0101】
ジエン系ゴムには、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、イソブチレンイソプレンゴム(ブチルゴム)(IIR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)などのジエン系単量体の重合体;例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム)(NBR)、ニトリルクロロプレンゴム(NCR)、ニトリルイソプレンゴム(NIR)などのアクリロニトリル−ジエン共重合ゴム;スチレンブタジエンゴム(SBR、例えば、スチレンとブタジエンとのランダム共重合体、スチレンブロックとブタジエンブロックとで構成されたSBブロック共重合体など)、スチレンクロロプレンゴム(SCR)、スチレンイソプレンゴム(SIR)などのスチレン−ジエン共重合ゴムなどが含まれる。ジエン系ゴムには、水添ゴム、例えば、水素添加ニトリルゴム(HNBR)なども含まれる。スチレン−ジエン共重合ゴムはランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。スチレン−ジエン共重合ゴム中のスチレン成分の割合は、例えば、10〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、さらに好ましくは30〜60重量%(例えば、40〜50重量%)程度であってもよい。
【0102】
オレフィン系ゴムとしては、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDMなど)、ポリオクテニレンゴムなどが例示できる。
【0103】
アクリル系ゴムには、アクリル酸アルキルエステルを主成分とするゴム、例えば、アクリル酸アルキルエステルと塩素含有架橋性単量体との共重合体ACM、アクリル酸アルキルエステルとアクリロニトリルとの共重合体ANM、アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基及び/又はエポキシ基含有単量体との共重合体、エチレンアクリルゴムなどが例示できる。
【0104】
フッ素ゴムとしては、フッ素含有単量体を用いたゴム、例えば、フッ化ビニリデンとパーフルオロプロペンと必要により四フッ化エチレンとの共重合体FKM、四フッ化エチレンとプロピレンとの共重合体、四フッ化エチレンとパーフルオロメチルビニルエーテルとの共重合体FFKMなどが例示できる。
【0105】
シリコーンゴム(Q)は、式:RaSiO(4−a)/2で表される単位で構成されたオルガノポリシロキサンである。式中、Rは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのC1−10アルキル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基などのハロゲン化C1−10アルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基などのC2−10アルケニル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基などのC6−12アリール基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC3−10シクロアルキル基、ベンジル基、フェネチル基などのC6−12アリール−C1−4アルキル基などが挙げられる。式中、係数aは1.9〜2.1程度である。好ましいRは、メチル基、フェニル基、アルケニル基(ビニル基など)、フルオロC1−6アルキル基である。
【0106】
シリコーンゴムの分子構造は、通常、直鎖状であるが、一部分岐構造を有していてもよく、分岐鎖状であってもよい。シリコーンゴムの主鎖は、例えば、ジメチルポリシロキサン鎖、メチルビニルポリシロキサン鎖、メチルフェニルポリシロキサン鎖、これらのシロキサン単位の共重合体鎖[ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン共重合体鎖、ジメチルシロキサン−メチルフェニルシロキサン共重合体鎖、ジメチルシロキサン−メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサン共重合体鎖、ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン−メチルフェニルシロキサン共重合体鎖など]で構成できる。シリコーンゴムの両末端は、例えば、トリメチルシリル基、ジメチルビニルシリル基、シラノール基、トリC1−2アルコキシシリル基などであってもよい。
【0107】
シリコーンゴム(Q)には、例えば、メチルシリコーンゴム(MQ)、ビニルシリコーンゴム(VMQ)、フェニルシリコーンゴム(PMQ)、フェニルビニルシリコーンゴム(PVMQ)、フッ化シリコーンゴム(FVMQ)などが含まれる。さらに、シリコーン系ゴムには、上記高温加硫型HTV(High Temperature Vulcanizable)の固形ゴムに限らず、室温加硫型RTV(Room Temperature Vulcanizable)又は低温加硫型LTV(Low Temperature Vulcanizable)シリコーンゴム、例えば、液状又はペースト状ゴムも含まれる。
【0108】
ウレタンゴム(U)としては、例えば、ポリエステル型ウレタンエラストマー、ポリエーテル型ウレタンエラストマーなどが含まれる。
【0109】
変性ゴムとしては、酸変性ゴム、例えば、カルボキシル化スチレンブタジエンゴム(X−SBR)、カルボキシル化ニトリルゴム(X−NBR)、カルボキシル化エチレンプロピレンゴム(X−EP(D)M)などのカルボキシル基又は酸無水物基を有するゴムが含まれる。
【0110】
(加硫剤)
前記ゴムは種々の加硫剤で加硫でき、加硫剤の種類は特に制限されない。例えば、加硫剤としては、硫黄、硫黄含有化合物などの硫黄系加硫剤、非硫黄系加硫剤(例えば、有機過酸化物などのラジカル発生剤系加硫剤)のいずれも使用できる。硫黄としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などが例示できる。
【0111】
硫黄系加硫剤のうち硫黄含有化合物には、例えば、塩化硫黄(一塩化硫黄、二塩化硫黄など)、ジチオ複素環化合物(4,4’−ジチオモルホリンなどのジチオ基含有化合物)、メルカプト基含有トリアジン類(2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−S−トリアジン、2,4,6−トリメルカプト−S−トリアジンなどのメルカプト基含有化合物など)、チウラム類(テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)など)、ジチオカルバミン酸塩類(ジメチルジチオカルバミン酸、ジエチルジチオカルバミン酸などのジC1−4アルキルジチオカルバミン酸と、ナトリウム、カリウム、鉄、銅、亜鉛、セレン又はテルルとの塩など)、チアゾール類(2−メルカプトベンゾチアゾ−ル、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなど)などが含まれる。
【0112】
好ましい加硫剤は、広範囲の樹脂部材との組合せが可能なラジカル発生剤系加硫剤である。この加硫剤は、ラジカル発生剤として機能し、ゴムを活性化して強固な接合を形成する。
【0113】
加硫剤としてのラジカル発生剤としては、種々のラジカル発生剤が使用でき、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物、硫黄を除く硫黄含有有機化合物などから選択できる。なお、硫黄は、イオン的な反応を引き起こし、ラジカルの発生効率がかなり低いだけでなく、発生したラジカルをトラップするため、ラジカル発生剤には含まれない。前記ラジカル発生剤は単独で又は二種以上組合せて使用できる。
【0114】
有機過酸化物としては、過酸化ジアシル類(ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、4−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイドなど)、過酸化ジアルキル類(ジ−t−ブチルぺルオキシド、2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルへキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルへキセン−3,1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルペルオキシドなど)、過酸化アルキル類(t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイドなど)、アルキリデンペルオキシド類(エチルメチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなど)、過酸エステル類(過酢酸t−ブチル、過ピバリン酸t−ブチルなど)などが挙げられる。
【0115】
アゾ化合物には、アゾビスイソブチロニトリルなどが含まれる。なお、前記硫黄含有有機化合物のうち、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類、チアゾ−ル類はラジカル発生剤として機能させることもできる。
【0116】
光照射可能であれば、ラジカル発生剤として光重合開始剤も利用できる。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン又はその誘導体(3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4,4−ジメトキシベンゾフェノンなど)、アルキルフェニルケトン又はその誘導体(アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(モルホリノフェニル)−ブタノンなど)、アントラキノン又はその誘導体(2−メチルアントラキノンなど)、チオキサントン又はその誘導体(2−クロロチオキサントン、アルキルチオキサントンなど)、ベンゾインエーテル又はその誘導体(ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテルなど)、ホスフィンオキシド又はその誘導体などが例示できる。さらに、ラジカル発生剤には、過硫酸塩(過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなど)も含まれる。
【0117】
これらの化合物のうち好ましいラジカル発生剤は有機過酸化物である。
【0118】
加硫剤の割合は、例えば、未加硫ゴム100重量部に対して、0.5〜15重量部程度の範囲から選択でき、通常、1〜10重量部程度、好ましくは1〜8重量部(例えば、2〜7重量部)程度、さらに好ましくは3〜5重量部程度である。
【0119】
ラジカル発生剤の割合は、未加硫ゴム100重量部に対して、例えば、0.5〜15重量部程度の範囲から選択でき、通常、1〜10重量部程度、好ましくは1〜8重量部(例えば、2〜7重量部)程度である。
【0120】
なお、加硫剤(例えば、硫黄系加硫剤)は、種々の化合物、例えば、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉛などの多価金属酸化物)、キノンジオキシム(p−キノンジオキシム、p,p’−ベンゾイルキノンジオキシムなど)、ポリp−ジニトロベンゼン、変性フェノール樹脂(アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂など)などと組み合わせて使用してもよい。
【0121】
[加硫ゴム層(又は中間層)]
本発明では、加硫ゴム部材と樹脂部材とを、加硫剤により加硫した加硫ゴム層(加硫剤を含む未加硫ゴム組成物の加硫ゴム層又は中間層)を介して接合している。このような構成では、ゴムとゴムとが接着しやすいことを利用して、前記加硫ゴム部材のゴムの種類や処方などが異なっても、幅広い樹脂と確実かつ強固に接合できる。このことは、既に実用化されているゴム部材について、その処方を変更することなく、加硫ゴム部材と樹脂部材とが強固に接合した複合体を容易かつ確実に製造できることを意味している。
【0122】
加硫ゴム層のゴムとしては、前記加硫ゴム部材と同様に広い範囲、例えば、ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、アクリル系ゴム、フッ素ゴム、シリコーン系ゴム、ウレタン系ゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、プロピレンオキシドゴム(GPO)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EAM)、ポリノルボルネンゴム、これらの変性ゴム(酸変性ゴムなど)などから選択できる。これらのゴムは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0123】
加硫ゴム層のゴムとして、加硫ゴム部材のゴムと同系統(好ましくは同種)のゴムを用いると、確実に接合強度を向上できる。例えば、ゴム部材が硫黄加硫系ジエン系ゴム(IIR,NBR,SBRなど)であっても、加硫ゴム層のゴムとして同系統(分子構造が類似するゴム、例えば、EPDMなどのオレフィン系ゴムなど)のゴムを使用でき、同一のゴムでなくとも同種(ジエン系ゴム)のゴムを使用すると、より高い接合強度が得られる。
【0124】
加硫剤としては、硫黄系加硫剤(硫黄や硫黄含有化合物)、ラジカル発生剤系加硫剤(有機過酸化物などの過酸化物系加硫剤など)のいずれであってもよいが、加硫ゴム部材の加硫に利用される加硫剤と同系統(特に同種)の加硫剤を選択するのが好ましい。硫黄系加硫剤及びラジカル発生剤系加硫剤としては、前記と同様の化合物が例示できる。好ましい加硫剤は、広範囲の樹脂との接合が可能なラジカル発生剤系加硫剤(特に有機過酸化物)である。
【0125】
ラジカル発生剤系加硫剤の割合は、未加硫ゴム100重量部に対して、例えば、0.5〜15重量部程度の範囲から選択でき、通常、1〜10重量部程度、好ましくは1〜8重量部(例えば、2〜7重量部)程度である。
【0126】
[加硫活性剤]
加硫ゴム部材と樹脂部材とを確実に接合するため、加硫ゴム層、加硫ゴム部材および樹脂部材の少なくとも1つの層又は部材は、加硫活性剤を含む組成物で形成するのが有利である。すなわち、前記加硫ゴム層を形成するための未加硫ゴム組成物、加硫ゴム部材及び樹脂部材のうち少なくとも1つの成分は、加硫活性剤を含んでいてもよい。加硫活性剤は、通常、少なくとも未加硫ゴム組成物(中間層用組成物)又は樹脂部材のいずれか一方に含有されていてもよい。特に、少なくとも未加硫ゴム組成物(中間層用組成物)にラジカル発生剤系加硫剤と共に加硫活性剤(硬化剤などと称する場合もある)を含有させると、加硫活性剤が、ゴムの加硫を促進するのみならず、中間層のゴム分子と樹脂部材の樹脂分子との架橋を促進するため、加硫ゴム部材と樹脂部材との接合をより容易にする。例えば、樹脂がポリアミド系樹脂であるとき、ラジカル発生剤と加硫活性剤とを組み合わせて用いると、中間層を介して樹脂部材と加硫ゴム部材との間で架橋反応が進行し、両者を確実かつ強固に結合できる。なお、加硫活性剤は、ゴムの加硫促進とゴムと樹脂との間の架橋形成に必要な量が存在すればよく、必要以上の添加はゴムや樹脂の物性の低下を招く場合があるので、適宜、適正な添加量を選択できる。
【0127】
前記加硫活性剤としては、炭素−炭素二重結合(重合性不飽和結合)を有する有機化合物〔例えば、ビニル系単量体(ジビニルベンゼンなど)、アリル系単量体(ジアリルフタレート、トリアリルホスフェート、トリアリル(イソ)シアヌレートなど)、(メタ)アクリル系単量体など〕、マレイミド系化合物などが挙げられる。これらの加硫活性剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。加硫活性剤としては、通常、2以上の複数の重合性不飽和結合を有する多官能性の加硫活性剤が使用される。
【0128】
(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、二官能性(メタ)アクリレート類[エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのC2−10アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリC2−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのC2−4アルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレートなど〕、三官能性又は多官能性(メタ)アクリレート類[グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなど]などが例示できる。
【0129】
複数のマレイミド基を有するマレイミド化合物は、ポリアミンと無水マレイン酸との反応により得ることができる。マレイミド系化合物には、例えば、芳香族ビスマレイミド(N,N’−1,3−フェニレンジマレイミド、N,N’−1,4−フェニレンジマレイミド、N,N’−3−メチル−1,4−フェニレンジマレイミド、4,4’−ビス(N,N’−マレイミド)ジフェニルメタン、4,4’−ビス(N,N’−マレイミド)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(N,N’−マレイミド)ジフェニルエーテルなど)、脂肪族ビスマレイミド(N,N’−1,2−エチレンビスマレイミド、N,N’−1,3−プロピレンビスマレイミド、N,N’−1,4−テトラメチレンビスマレイミドなど)などが例示できる。
【0130】
好ましい加硫活性剤は、一分子中に複数(例えば、2〜6個、特に3〜6個程度)の炭素−炭素二重結合(重合性不飽和結合)を有する化合物、例えば、トリアリル(イソ)シアヌレート、二官能乃至多官能性(メタ)アクリレート(特に三官能性又は多官能性(メタ)アクリレート)、芳香族マレイミド化合物などが含まれる。
【0131】
本発明において加硫活性剤の添加は必須ではない。例えば、架橋性基を有する樹脂や架橋性基の数、使用するゴム材料の種類によっては、加硫活性剤が存在しなくても両部材の接合は可能である。しかし、多くの場合、ゴム部材と樹脂部材とを確実に接合するため、加硫活性剤を添加する方が有利である。加硫活性剤は、中間層の未加硫ゴム(又は未加硫ゴム組成物)及び樹脂(又は樹脂組成物)のうち少なくともいずれか一方の成分に添加する場合が多く、双方の成分に添加してもよい。さらに、前記加硫ゴム部材を形成するためのゴム(未加硫ゴム)に加硫活性剤を添加してもよい。なお、樹脂が、架橋性不飽和結合含有基を有する樹脂である場合は、樹脂成分に加硫活性剤を添加することにより、樹脂−ゴム間の架橋を活性化させ、樹脂部材と中間層との接合を強固にできる場合が多い。
【0132】
加硫活性剤の使用量は、使用する加硫活性剤の種類や、添加する成分の種類(未加硫ゴム及び/又は樹脂)によって異なるが、通常、樹脂とゴムとの接着を促進可能な量、例えば、ゴム及び樹脂から選択された少なくとも一種の成分100重量部に対して、加硫活性剤0.1〜10重量部程度、好ましくは0.1〜5重量部程度、さらに好ましくは0.1〜3重量部程度の範囲から選択できる。例えば、加硫活性剤が多価アルコールのメタクリル酸エステルである場合、加硫活性剤の添加量は、ゴム及び樹脂から選択された少なくとも一種の成分100重量部に対して0.1〜10重量部程度、好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜3重量部、実用的には0.1〜1.9重量部(例えば0.5重量部や1.0重量部)である。また、ゴムと樹脂の双方に添加する場合、樹脂に対する添加量は少量であってもよく、樹脂100重量部に対して、加硫活性剤0.1〜7重量部程度、好ましくは0.1〜5重量部程度、さらに好ましくは0.1〜3重量部程度であってもよい。
【0133】
なお、加硫活性剤の添加は、ゴム成分への添加であっても、樹脂成分への添加であっても、被添加材(ゴム又は樹脂)100重量部に対して10重量部を超えることは好ましくなく、5重量部以上の添加は注意を要し、事前に被添加材への影響を検討する必要がある。被添加材への影響に特段の配慮をすることなく、ゴム部材と樹脂部材との十分な接合強度を得るには、加硫活性剤の添加量は、被添加材がゴムの場合、ゴム100重量部に対して、2重量部以下、例えば、0.1〜1.9重量部(例えば、0.5〜1.9重量部)程度であり、被添加材が樹脂の場合、樹脂100重量部に対して、5重量部以下、例えば、0.1〜5重量部(例えば、3〜5重量部)程度である。
【0134】
なお、加硫活性剤をゴムに添加する場合、加硫剤(特にラジカル発生剤系加硫剤)と加硫活性剤との割合は、例えば、前者/後者=0.3/1〜20/1(例えば、0.5/1〜20/1)(重量比)程度、好ましくは0.4/1〜15/1(例えば、1/1〜15/1)(重量比)程度、さらに好ましくは0.5/1〜10/1(例えば、2/1〜10/1)(重量比)程度であってもよい。
【0135】
[加硫助剤]
本発明では、接着の効率を高めるため、さらに加硫助剤を用いてもよい。ゴムや樹脂の種類によっては、加硫助剤を添加することにより、ゴム部材と樹脂部材の接合をより強固にできる。加硫助剤は、中間層の未加硫ゴム(又は未加硫ゴム組成物)、加硫ゴム部材の未加硫ゴム(又は未加硫ゴム組成物)及び樹脂(又は樹脂組成物)のうち少なくともいずれかの成分に添加すればよく、全ての成分や、中間層の未加硫ゴム(又は未加硫ゴム組成物)及び樹脂(又は樹脂組成物)の双方の成分に添加してもよい。通常、加硫助剤は、中間層の未加硫ゴム(又は未加硫ゴム組成物)及び樹脂(又は樹脂組成物)のうち少なくとも一方の成分(特に樹脂又は樹脂組成物)に添加する場合が多い。この場合、必要であれば、加硫ゴム部材の未加硫ゴムに加硫助剤を添加してもよい。
【0136】
加硫助剤は、樹脂やゴムの種類に応じて選択でき、例えば、縮合系熱可塑性樹脂のオリゴマー(例えば、前記ポリアミド系樹脂のオリゴマー、前記ポリエステル系樹脂のオリゴマーなどの数平均分子量100〜1000程度のオリゴマーなど。但し、加硫助剤として用いる場合、オリゴマーは必ずしも前述のような架橋性基を有している必要はない。),ポリアミン類(例えば、前記(7)ポリウレタン系樹脂の項に記載のジアミン類など)、ポリオール類(例えば、前記(2)ポリエステル系樹脂の項に記載のポリオール類など)、多価カルボン酸又はその酸無水物、複数のアルデヒド基を有する化合物、エポキシ化合物、窒素含有樹脂(アミノ樹脂など)、メチロール基又はアルコキシメチル基を有する化合物、ポリイソシアネートなどが例示できる。これらの加硫助剤は、単独で又は2種以上を組合せて使用してもよい。
【0137】
好ましい加硫助剤は、前記式(1)で表される活性原子のうち、活性水素原子を一分子中に平均2個以上有する化合物、例えば、縮合系熱可塑性樹脂(例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂など)のオリゴマー、前記ポリアミン類などが例示できる。
【0138】
加硫助剤の割合は、例えば、ゴム及び/又は樹脂100重量部に対し、0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部程度である。
【0139】
[他の添加剤]
前記加硫ゴム部材や中間層を形成するためのゴム組成物には、必要に応じて、種々の添加剤、例えば、フィラー、可塑剤又は軟化剤、共加硫剤(酸化亜鉛などの金属酸化物など)、加硫促進剤(ヘキサメチレンテトラミンとアセトアルデヒド・アンモニアなどのアルデヒドとアンモニアとの反応生成物、アルデヒドとアミンとの縮合生成物、グアニジン類、チオウレア類、チアゾール類、スルフェンアミド類、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類、キサントゲン酸塩類など)、老化防止剤(熱老化防止剤、オゾン劣化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、粘着付与剤、加工助剤、滑剤(ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、ワックスなど)、着色剤、発泡剤、分散剤、難燃剤、帯電防止剤などを配合してもよい。
【0140】
前記フィラー(又は補強剤)には、例えば、粉粒状フィラー又は補強剤(マイカ、クレー、タルク、ケイ酸類、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カーボンブラック、フェライトなど)、繊維状フィラー又は補強剤(レーヨン、ナイロン、ビニロン、アラミドなどの有機繊維、炭素繊維、ガラス繊維などの無機繊維)などが含まれる。
【0141】
ゴムがシリコーンゴムである場合、補強剤として添加される最も一般的なフィラーはシリカ粉末である。一般的にシリコーンゴムに使用されるシリカ粉末には、湿式で製造される湿式シリカと、乾式で製造される乾式シリカの二種に大別される。シリコーンゴムに適するシリカ粉末は、乾式シリカであり、乾式シリカを用いると、樹脂部材とゴム部材との高い接合強度が得られ易い。湿式シリカの場合、シリカ粉末中に含まれる水分が樹脂部材とゴム部材間の架橋を阻害するものと考えられる。但し、湿式シリカであっても致命的にゴム部材と樹脂部材の接合を阻害するものではなく、使用する樹脂や使用するシリコーンゴムの種類、加硫活性剤の種類やその使用量、成形条件などにより、湿式シリカであっても使用できる場合がある。乾式シリカと湿式シリカとの混合使用なども許容される。
【0142】
可塑剤としては、ゴム組成物に可塑性を付与可能である限り特に制限されず、慣用の軟化剤(リノール酸、オレイン酸、ひまし油、パーム油などの植物油;パラフィン、プロセスオイル、エキステンダーなどの鉱物油など)、可塑剤(フタル酸エステル、脂肪族ジカルボン酸エステル、硫黄含有可塑剤、ポリエステル系高分子可塑剤など)などが使用できる。
【0143】
フィラーの含有量は、ゴム100重量部に対して、例えば、0〜300重量部程度、好ましくは0〜200重量部程度、さらに好ましくは0〜100重量部程度であってもよい。可塑剤又は軟化剤の含有量は、ゴム100重量部に対して、例えば、0〜200重量部程度、好ましくは0〜150重量部程度、さらに好ましくは0〜120重量部程度であってもよい。また、共加硫剤、老化防止剤、加工剤又は滑剤、着色剤などの含有量は、有効量であればよく、例えば、共加硫剤の含有量は、ゴム100重量部に対して、0〜20重量部程度、好ましくは0.5〜15重量部程度、さらに好ましくは1〜10重量部程度であってもよい。
【0144】
さらに、加硫活性剤などの活性成分を含む系(中間層用未加硫ゴム組成物、加硫ゴム部材用未加硫ゴム組成物、樹脂部材用組成物、特に樹脂部材用組成物)では、安定剤と組み合わせることにより、加熱混合過程(例えば、樹脂と加硫活性剤との混練過程など)において重合性不飽和結合を有する加硫活性剤を用いてもゲル(又はブツ)の発生を抑制又は阻止できる。そのため、前記複合体の強度低下や外観を損ねることなく、加硫活性剤を有効に機能させて樹脂とゴムとを確実にかつ強固に接合又は接着できる。このような点から、前記安定剤は、樹脂又はゴムを安定化してもよいが、少なくとも加硫活性剤を安定化するのが好ましい。
【0145】
安定剤としては、酸化防止剤(耐熱加工安定剤を含む)、光安定剤などが使用でき、熱重合禁止剤(ヒドロキノン、メチルヒドロキノンなどのヒドロキノン類など)であってもよい。酸化防止剤には、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ヒドロキノン系酸化防止剤、キノリン系酸化防止剤、ケトンアミン樹脂などが含まれる。
【0146】
フェノール系酸化防止剤には、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、例えば、モノフェノール類、ビスフェノール類、多価フェノール類などが含まれる。モノフェノール類としては、置換基を有していてもよいモノ又はジ−t−ブチルフェノール[例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノールなどのC1−4アルキル−ジ−t−ブチルフェノール;2−t−ブチル−4−メトキシフェノール、3−t−ブチル−4−メトキシフェノールなどのC1−4アルコキシ−モノ又はジ−t−ブチルフェノール;ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのC10−20アルキル−(ジ−t−ブチル−ヒドロキシフェニル)C2−6カルボキシレート;2−エチルヘキシル−(2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオ)アセテートなどのC3−10アルキル−(ジ−t−ブチル−ヒドロキシベンジルチオ)C2−6カルボキシレート;ジステアリル−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネートなどのジC10−20アルキル−(ジ−分岐C2−6アルキル−ヒドロキシベンジル)ホスホネートなど]、C4−10アルキルチオ基を有するフェノール[2,4−ジ(オクチルチオ)メチル−6−メチルフェノール(Irganox 1520 チバガイギー(株)製)など]、ビスフェノール類と(メタ)アクリル酸とのモノエステル[例えば、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルベンジル)−4−メチル−6−t−ブチルフェニルアクリレート(スミライザーGM 住友化学工業(株)製)、2−[1−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)エチル]−4−メチル−6−t−ブチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ(t−ペンチル)フェニルアクリレート(スミライザーGS 住友化学工業(株)製)などのC1−4アルキレンビス(モノ又はジ−t−ブチルフェノール)と(メタ)アクリル酸とのモノエステルなど]などが例示できる。
【0147】
ビスフェノール類としては、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2′−エチリデンビス[4,6−ジ(t−ペンチル)フェノール]、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)などのC1−6アルキレンビス(モノ又はジ−t−ブチルフェノール);4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)などのチオビス(モノ又はジ−t−ブチルフェノール);ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]−1,6−ヘキサンジオールエステル、ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]−トリエチレングリコールエステル(Irganox 245 チバガイギー(株)製)などの(モノ又はジ−t−ブチル−ヒドロキシフェニル)C2−6カルボン酸−モノ乃至テトラC2−4アルキレングリコールエステル;ヒドラゾビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナモイル)(Irganox MD−1024 チバガイギー(株)製)、N,N′−トリメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナムアミド)、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナムアミド)などの(モノ又はジ−t−ブチル−ヒドロキシフェニル)C3−6カルボン酸とC0−8アルキレンジアミンとのジアミド;3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(スミライザーGA80 住友化学工業(株)製)などの(モノ又はジ−t−ブチル−ヒドロキシフェニル)C3−6カルボン酸とジヒドロキシヘテロ環式スピロ化合物とのジエステルなどが例示できる。
【0148】
多価フェノール類には、トリスフェノール類{例えば、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(アデカスタブAO−330 旭電化工業(株)製)などのトリス(モノ又はジ−t−ブチル−ヒドロキシベンジル)C6−10アレーン;1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタンなどのトリス(モノ又はジ−t−ブチル−ヒドロキシフェニル)C1−6アルカン;トリス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]グリセリンエステルなどのモノ又はジ−t−ブチル−ヒドロキシフェニルC2−6カルボン酸とC3−6アルカントリオールとのトリエステル;1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン(アデカスタブAO−20 旭電化工業(株)製)、1,3,5−トリス(2’,6’−ジメチル−3’−ヒドロキシ−4’−t−ブチルベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオンなどのトリス(モノ又はジ−t−ブチル−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−トリオンなど}、テトラフェノール類{例えば、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(Irganox 1010 チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)などのモノ又はジ−t−ブチル−ヒドロキシフェニルC3−6カルボン酸とC3−6アルカンテトラオールとのテトラエステル;ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)酪酸]グリコールエステルなどのジ(モノ又はジ−t−ブチル−ヒドロキシフェニル)C3−6カルボン酸−モノ乃至テトラC2−4アルキレングリコールエステル}などが含まれる。
【0149】
アミン系酸化防止剤には、芳香族アミン類、例えば、フェニル−1−ナフチルアミン、フェニル−2−ナフチルアミン、N,N′−ジフェニル−1,4−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−シクロヘキシル−1,4−フェニレンジアミンなどが含まれる
リン系酸化防止剤には、例えば、トリイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(アデカスタブ2112 旭電化工業(株)製)、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジノニルフェニルビス(ノニルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト(アデカスタブHP−10 旭電化工業(株)製)、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ジトリデシルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2−t−ブチルフェニル)フェニルホスファイト、トリス[2−(1,1−ジメチルプロピル)フェニル]ホスファイト、トリス[2,4−(1,1−ジメチルプロピル)フェニル]ホスファイト、トリス(2−シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−フェニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジフォスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト(アデカスタブPEP−8 旭電化工業(株)製)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(アデカスタブPEP−24G 旭電化工業(株)製)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト(アデカスタブPEP−36 旭電化工業(株)製)などのホスファイト化合物;トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ジフェニルビニルホスフィン、アリルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、メチルフェニル−p−アニシルホスフィン、p−アニシルジフェニルホスフィン、p−トリルジフェニルホスフィン、ジ−p−アニシルフェニルホスフィン、ジ−p−トリルフェニルホスフィン、トリ−m−アミノフェニルホスフィン、トリ−2,4−ジメチルフェニルホスフィン、トリ−2,4,6−トリメチルフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリ−o−アニシルホスフィン、トリ−p−アニシルホスフィン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンなどのホスフィン化合物などが含まれる。
【0150】
イオウ系酸化防止剤には、例えば、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジ(トリデシル)3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル2,2−チオジアセテート、ジミリスチル3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3−チオジプロピオネートなどのチオジC2−4カルボン酸ジC10−20アルキルエステル;3,9−ジ(ラウリルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどが含まれる。
【0151】
ヒドロキノン系酸化防止剤には、例えば、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノンなどが含まれ、キノリン系酸化防止剤には、例えば、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンなどが含まれる。
【0152】
光安定剤には、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、クエンチャーなどが含まれる。ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)には、例えば、置換基を有していてもよいテトラメチルピペリジン(例えば、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのC1−4アルコキシ−テトラメチルピペリジン;4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのC6−10アリールオキシ−テトラメチルピペリジン;4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのC6−10アロイルオキシ−テトラメチルピペリジン;4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(アデカスタブLA−87 旭電化工業(株)製)、4−メタクリロイルオキシ−N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(アデカスタブLA−82 旭電化工業(株)製)などの(メタ)アクリロイルオキシ−テトラメチルピペリジンなど)、置換基を有していてもよいアルカン二酸ジピペリジルエステル[例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(アデカスタブLA−77 旭電化工業(株)製)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(サノールLS−765 三共(株)製)などのC2−10アルカン二酸ビス(テトラメチルピペリジル)エステルなど]、置換基を有していてもよい芳香族ジカルボン酸ジピペリジルエステル[例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)テレフタレートなどのC6−10芳香族ジカルボン酸ビス(テトラメチルピペリジル)エステルなど]、置換基を有していてもよいジ(ピペリジルオキシ)アルカン[1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)エタンなどのジ(テトラメチルピペリジルオキシ)C1−4アルカンなど];ジ(ピペリジルオキシカルボニル)ヒドロキシフェニルアルカン{例えば、1−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニル)ペンタン(Tinuvin 144 チバガイギー(株)製)などのジ(テトラメチルピペリジルオキシカルボニル)−ヒドロキシフェニルアルカンなど}、テトラカルボン酸ジ乃至テトラピペリジルエステル[例えば、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)エステル(アデカスタブLA−57 旭電化工業(株)製)などのテトラカルボン酸テトラキス(テトラメチルピペリジル)エステル;1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ビス(トリデシル)エステル(アデカスタブLA−67 旭電化工業(株)製)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸ビス(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ビス(トリデシル)エステル(アデカスタブLA−62 旭電化工業(株)製)などのテトラカルボン酸ビス(テトラメチルピペリジル)−ビス(トリC8−20アルキル)エステル]、C1−4アルキレンビス(テトラアルキルピペラジノン)[1,1’−エチレンビス(3,3,3’,3’,5,5,5’,5’−オクタメチルピペラジン−2,2’−ジオン)(Goodrite UV−3034 Goodrich(株)製)などのC1−4アルキレンビス(テトラメチルピペラジノン)など]、高分子型HALS[例えば、Chimassorb 944LD(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製)、Tinuvin 622LD(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製)、アデカスタブLA−63(旭電化工業(株)製)、アデカスタブLA−68(旭電化工業(株)製)など]が含まれる。
【0153】
クエンチャーとしては、ニッケルビス(オクチルフェニル)スルフィド、[2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノラート)]−n−ブチルアミンニッケル、ニッケルコンプレックス−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル−リン酸モノエチレート、ニッケルジブチルチオカーバメート、1−フェニル−3−メチル−4−デカノニルピラゾレート)ニッケルなどの有機ニッケル錯体;コバルトジシクロヘキシルジチオフォスフェートなどの有機コバルト錯体などが例示できる。
【0154】
これらの安定剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。好ましい安定剤には、フェノール系酸化防止剤、HALSなどのラジカル捕捉能を有する安定剤が含まれる。また、このようなラジカル捕捉能を有する安定剤と他の安定剤とを組み合わせて使用してもよく、このような組合せには、例えば、フェノール系酸化防止剤とイオウ系酸化防止剤との組合せ、フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤との組合せなどが含まれる。
【0155】
安定剤の使用量は、例えば、樹脂又はゴム100重量部に対して、0.01〜15重量部(例えば、0.01〜10重量部)、好ましくは0.05〜10重量部(例えば、0.05〜8重量部)、さらに好ましくは0.1〜7重量部(例えば、0.1〜5重量部)程度であってもよい。
【0156】
また、ラジカル捕捉能を有する安定剤(フェノール系酸化防止剤、HALSなど)と、他の安定剤(リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤など)とを組み合わせて使用する場合、これらの安定剤の割合は、前者/後者(重量比)=99/1〜20/80(例えば、95/5〜40/60)程度であってもよい。
【0157】
また、加硫活性剤と安定剤との割合は、加硫活性剤又は安定剤の種類、混合混練温度などに応じて選択でき、前者/後者(重量比)=99/1〜25/75、好ましくは98/2〜35/65、さらに好ましくは97/3〜45/55(例えば、97/3〜60/40)程度であってもよい。
【0158】
[樹脂部材と加硫ゴム部材との組合せ]
本発明では、樹脂部材と加硫ゴム部材との間に前記加硫ゴム層が介在するので、樹脂部材と加硫ゴム部材とを広い範囲で組み合わせても、確実かつ強固に接合でき、一体性の高い複合体を得ることができる。また、加硫系が硫黄加硫系であっても非硫黄加硫系であっても、樹脂部材と加硫ゴム部材との接合強度を向上できる。そのため、樹脂部材と加硫ゴム部材との組合せは特に制限されず、前記樹脂とゴムとを適当に組み合わせることができる。
【0159】
樹脂部材と加硫ゴム部材との接合において、接合強度を高めるためには、加硫ゴム層、加硫ゴム部材および樹脂部材の少なくとも1つを、加硫活性剤を含む組成物で形成するのが有利である。例えば、加硫ゴム層を、加硫剤および加硫活性剤を含有する未加硫ゴム組成物で形成し、加硫ゴム部材および樹脂部材の少なくとも一方の部材(特に少なくとも樹脂部材)を、加硫活性剤を含む組成物で形成すると、極めて高い接合強度で樹脂部材と加硫ゴム部材とを接合できる。
【0160】
なお、樹脂部材の熱可塑性樹脂又はその組成物がポリフェニレンエーテル系樹脂で構成され、加硫ゴム層の未加硫ゴム又はその組成物がスチレン−ジエン共重合ゴムで構成されている場合、加硫ゴム層は、ラジカル発生剤(有機過酸化物など)で加硫しても硫黄系加硫剤で加硫しても、高い接合強度で加硫ゴム部材と接合できる。この場合、ポリフェニレンエーテル系樹脂はスチレン系樹脂で変性又は改質されていてもよい。
【0161】
また、硫黄系加硫剤でスチレン−ジエン共重合ゴムを加硫する場合、硫黄系加硫剤の使用量は、ゴム成分100重量部に対して、1〜10重量部、好ましくは2〜7重量部、さらに好ましくは3〜5重量部程度である。
【0162】
[複合体の製造方法]
本発明では、加硫剤を含有する未加硫ゴム層を介して、ゴムエレメントと樹脂エレメントとを接触させ、未加硫ゴム又は半加硫ゴムを加硫するとともに、ゴムエレメントと樹脂エレメントとを成形することにより、前記複合体(すなわち、前記未加硫ゴム層が加硫した加硫ゴム層を介して、前記ゴムエレメントの加硫ゴム部材と樹脂エレメントの樹脂部材とが接合した樹脂/ゴム複合体)を製造する。代表的には、加硫剤を含有する未加硫ゴム層を介して加硫ゴム部材と樹脂部材を接触させ、前記未加硫ゴム層を加熱などの手段を用いて加硫することにより加硫ゴム部材と樹脂部材とが接合した複合体を得ることができる。
【0163】
前記加硫ゴム部材を構成するゴムエレメント(ゴム材)は、加硫を完了したゴム材であってもよく、未加硫ゴム材(未加硫ゴム組成物)又は半加硫ゴム材(半加硫ゴム部材)であってもよい。ゴムエレメント(ゴム材)が未加硫ゴム組成物や半加硫ゴム部材である場合には、未加硫ゴム層の加硫工程で共に加硫される。また、樹脂部材を構成する樹脂エレメント(樹脂材)も、未成形樹脂組成物、半成形樹脂部材又は成形樹脂部材であってもよい。
【0164】
なお、「加硫ゴム部材」「ゴム部材」「樹脂部材」とは、最終部材としての所定形状に成形された部材を意味し、「未加硫ゴム組成物」「未成形樹脂組成物」とは、特定の形状を備えていない組成物を意味する。さらに、「半加硫ゴム材」「半加硫ゴム部材」「半成形樹脂部材」とは、加工処理が施されているものの形状及び/又は成分が最終部材の形態を備えていない部材を意味し、未加硫ゴム、活性な加硫剤、加硫活性剤や未架橋樹脂などを含んでいてもよい予備成形体も含む。
【0165】
前記のように、ゴムエレメント(特に未加硫組成物及び半加硫ゴム部材)は、少なくとも加硫剤(特にラジカル発生剤系加硫剤)を含んでいる。さらに、中間層との接合強度を高めるため、ゴムエレメント(特に未加硫組成物及び半加硫ゴム部材)は、加硫活性剤(複数の重合性不飽和結合を有する多官能重合性化合物)を含んでいてもよい。各成分の割合は前記の通りである。
【0166】
樹脂エレメント(特に架橋性基を有する樹脂)は、前記のように、架橋促進剤を含んでいてもよい。さらに樹脂エレメント(熱可塑性樹脂や架橋性基を有する樹脂)は、前記のように、加硫活性剤(複数の重合性不飽和結合を有する重合性化合物)を含んでいてもよい。なお、加硫ゴム部材と樹脂部材との接合強度を高めるため、複数の重合性基を有する多官能重合性化合物は、ゴムエレメント及び樹脂エレメントのうち少なくとも一方に含有させるのが好ましく、双方に含有させてもよい。これらの成分の割合も前記の通りである。
【0167】
前記未加硫ゴム層を形成するための未加硫ゴム組成物は、少なくとも加硫剤(特に有機過酸化物などのラジカル発生剤系加硫剤)を含んでいればよいが、好ましくはさらに加硫活性剤(複数の重合性基を有する多官能重合性化合物)を含んでいる。未加硫ゴム組成物において、加硫剤、加硫活性剤の含有量は前記の通りである。
【0168】
好ましい態様では、(i)樹脂部材を構成する樹脂は前記特定の活性原子(活性水素原子及び/又は活性硫黄原子)を有する樹脂で構成される。(ii)未加硫ゴム組成物及び樹脂部材のうち少なくとも一方の成分が、複数の重合性基を有する多官能重合性化合物を含有する。さらに、(iii)樹脂部材が、熱硬化性樹脂、又は分子中に不飽和結合を有する樹脂で構成され、未加硫ゴム組成物が複数の重合性基を有する多官能重合性化合物を含有する。
【0169】
前記未加硫ゴム層は、ゴムエレメント及び樹脂エレメントの接合面のうち少なくとも一方の接合面に形成すればよい。なお、未加硫ゴム層は、ほぼ均一な層である場合が多いが、加硫ゴム部材と樹脂部材との接合を損なわない限り、実質的に均一である必要はない。例えば、未加硫ゴム層は厚みが不均一な層(例えば、凹凸な層や点在した層など)であってもよい。
【0170】
加硫成形は、通常、前記未加硫ゴム層を介してゴムエレメントと樹脂エレメントとを加圧接触下で、光照射、特に加熱することにより行われる。この過程で、未加硫ゴム組成物の加硫とともに、加硫ゴム部材用のゴム組成物や半加硫ゴム部材も加硫される。また、加熱に伴って、未成形樹脂組成物や半成形樹脂部材も成形され、架橋性基を有する樹脂は架橋し硬化させることができる。
【0171】
前記未加硫ゴム層は、ゴムエレメント及び/又は樹脂エレメントの接合面に介在する未加硫ゴム組成物のフィルム(シート)に限らず、塗布剤により形成された塗布層であってもよい。例えば、塗布剤としての液状未加硫ゴム組成物(例えば、未加硫ゴム組成物の溶液、分散液(エマルジョン、サスペンジョン)など)を、ゴムエレメント及び/又は樹脂エレメントの接合面に塗布し、必要に応じて乾燥することにより未加硫ゴム層を形成できる。なお、未加硫ゴム組成物のフィルムやシートは、前記のように、成形方法に応じて、予め形成していてもよく、加硫ゴム部材用の組成物や樹脂部材用の組成物とともに、未加硫ゴム組成物の共押し出しにより形成してもよい。
【0172】
より具体的には、本発明の方法には、樹脂組成物と中間層の未加硫ゴム組成物と加硫ゴム部材の未加硫ゴム組成物とをそれぞれ成形しながら、成形過程で樹脂組成物と中間層と未加硫ゴム組成物とを接触又は合流させて、中間層を介して樹脂部材と加硫ゴム部材とを接合又は接着する方法(一段階法)、樹脂エレメント及びゴムエレメントのうち一方のエレメントを成形し(例えば、前記樹脂部材及び加硫ゴム部材のうち一方の部材を予め予備成形又は最終部材の形態に成形し)、成形された一方の成形エレメントと、中間層の未加硫ゴム組成物と、他方の未成形エレメント(未成形樹脂組成物又は未加硫ゴム組成物)とを接触させ、未加硫ゴム組成物を成形しながら架橋又は加硫させて、中間層を介して樹脂部材と加硫ゴム部材とを接合又は接着する方法(二段階法)、中間層用未加硫ゴム組成物を介在させた状態で、成形樹脂エレメント(予め予備成形又は最終部材の形態に成形された成形樹脂部材)と、成形ゴムエレメント(予め予備成形又は最終部材の形態に成形された成形ゴム部材)とを接触させ、架橋又は加硫させて、中間層を介して樹脂部材と加硫ゴム部材とを接合又は接着する方法(三段階法)などが含まれる。
【0173】
より具体的には、一段階法では、例えば、慣用の多色成形機(多色射出成形機、多層押出機など)を利用し、樹脂組成物と中間層の未加硫ゴム組成物と加硫ゴム部材の未加硫ゴム組成物とをそれぞれ溶融混練しつつ所定形状の成形型に射出又は押出成形し、樹脂組成物及び未加硫ゴムを成形過程又は成形後に架橋又は加硫することにより複合成形体を得ることができる。なお、樹脂組成物と未加硫ゴム組成物との接触界面領域では、樹脂組成物と未加硫ゴム組成物とが混在していてもよい。
【0174】
また、二段階法において、成形樹脂エレメントの成形には、慣用の成形機(射出成形機、押出成形機、熱プレス成形機など)が使用でき、成形ゴムエレメントの成形には、慣用の成形機(射出成形機、プレス成形機、トランスファ成形機、押出成形機など)が使用できる。例えば、複合体の形状に対応する型(又はキャビティー)に成形樹脂エレメントを収容し、この樹脂エレメントに対して中間層用未加硫ゴム組成物と加硫ゴム部材用未加硫ゴム組成物を射出又は押出し、未加硫ゴム組成物を架橋又は加硫することにより、加硫ゴム部材と樹脂部材とを中間層を介して接着してもよい。また、複合体が二次元的な拡がりを有する板状又はシート状部材である場合、前記型(又はキャビティー)を用いることなく、成形樹脂エレメントに対して、中間層用の未加硫ゴム組成物のフィルムやシートと、加硫ゴム部材を形成するための板状又はシート状未加硫ゴム組成物を積層し、架橋又は加硫させることにより複合体を製造してもよい。なお、成形樹脂エレメントと未加硫ゴム組成物とを接触(密着など)させる場合、未加硫ゴム組成物中の揮発性分やガス成分を除去するため、熱プレス成形や射出成形などを利用して、適宜加圧してもよく、減圧雰囲気下で加圧成形してもよい。
【0175】
三段階法では、未加硫ゴム組成物のフィルム(シート)を介して、成形樹脂エレメントと成形ゴムエレメントとを接触させ、架橋又は加硫させることにより複合体を得てもよく、成形樹脂エレメント及び成形ゴムエレメントの少なくとも一方のエレメントの接合面に未加硫ゴム組成物の塗布液を塗布して未加硫ゴム層を形成し、成形樹脂エレメントと成形ゴムエレメントとを未加硫ゴム層を介して加圧して加熱成形することにより複合体を得てもよい。
【0176】
未加硫ゴム組成物のフィルム(シート)の厚みは特に制限されず、例えば、0.1〜10mm、好ましくは0.5〜5mm、さらに好ましくは0.5〜3mm程度であってもよい。また、接触面又は接合面での塗布剤の塗布量(固形分換算)は、例えば、0.1〜500g/m2程度、好ましくは10〜300g/m2程度、特に50〜100g/m2程度であってもよい。
【0177】
成形樹脂材及び成形ゴム材の架橋(又は加硫)温度(又はゴム部材と樹脂部材との接合温度)は、例えば、70〜250℃、好ましくは100〜230℃、さらに好ましくは150〜200℃程度の範囲から選択できる。ゴム/樹脂間に作用する圧力は、例えば、0〜350MPa、好ましくは1〜150MPa、さらに好ましくは2〜100MPa程度の範囲から選択できる。
【0178】
なお、塗布剤の溶媒は、低分子量のゴム(例えば、液状ゴム)を用いる場合必ずしも必要ではないが、溶剤としては、炭化水素類(脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素)、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、スルホキシド類、アミド類やこれらの混合溶剤などから適当に選択できる。
【0179】
このようにして得られた複合体は、加硫によりゴム部材と樹脂部材とが著しく高い強度で接着している。そのため、樹脂の特性とゴムの特性とを有効に発現でき、種々の用途、例えば、自動車用部品(振動吸収ブッシュ、スプリングプレート、ドアロック部材、ラジエターマウントなど)、防振ゴム、バルブ、電気プラグなどの種々の部材として有利に利用できる。
【0180】
【発明の効果】
本発明では、樹脂部材と加硫ゴム部材との間に、加硫剤を含む未加硫ゴム組成物の加硫層を介在させるので、広範囲の組合せにおいて樹脂成形体と加硫ゴム成形体とが強固に接合した複合体を得ることができる。また、樹脂成形体の表面を易接着処理することなく、樹脂成形体と加硫ゴム成形体とが強固に接合できる。さらに、ゴム処方を変更することなく、硫黄加硫系のゴム部材であっても樹脂部材と強固に接合できる。また、樹脂部材と加硫ゴム部材との間に前記未加硫ゴム組成物の加硫層が介在するので、三次元的構造であっても樹脂部材と加硫ゴム部材とを強固に接合できる。
【0181】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0182】
[樹脂部材の組成]
PA612(A1):ポリアミド612(NH2末端/COOH末端=1/1(モル比))単独
PA612(A1)の調製:ヘキサメチレンジアミンとドデカンジカルボン酸の塩80重量%水溶液を窒素置換したオートクレーブ中で加圧(17.5kg/cm2)下で加熱(220℃)し、窒素ガスと共に系内の水分を4時間を要して系外に排出した。その後1時間を要して徐々に昇温(275℃)し水分を系外に排除した後、オートクレーブの内圧を常圧に戻し、冷却することによりポリアミド612を得た。得られたポリマーは、分子量(Mn)20000〜25000、アミノ基末端とカルボキシル基末端の比率=1/1(モル比)であった。このポリマーを単独で樹脂組成物PA612(A1)として用いた。加硫剤を有機過酸化物とした場合、PA612(A1)の活性水素の数は1分子当たり4個である。
【0183】
PA612(A2):ポリアミド612(NH2末端/COOH末端=3/7(モル比))単独
PA612(A2)の調製:上記樹脂組成物PA612(A1)と下記樹脂組成物(A3)とを1/1の重量比で2軸押出機を用いて混練した。これを樹脂組成物PA612(A2)として単独で用いた。PA612(A2)の活性水素の数は1分子当たり2.4個である。
【0184】
PA612(A3):ポリアミド612(NH2末端/COOH末端=1/9(モル比))単独
PA612(A3)の調製:ヘキサメチレンジアミンとドデカンジカルボン酸の塩80重量%水溶液に所定量のドデカンジカルボン酸を添加し、窒素置換したオートクレーブ中で加圧(17.5kg/cm2)下に加熱(220℃)し、窒素ガスと共に系内の水分を4時間を要して系外に排出した。その後1時間を要して徐々に昇温(275℃)し水分を系外に排除した後、オートクレーブの内圧を常圧に戻した。冷却後、ポリアミド612を得た。得られたポリマーは、分子量(Mn)約20000、アミノ基末端とカルボキシル基末端の比率=1/9であった。このポリマーを単独で樹脂組成物PA612(A3)として用いた。PA612(A3)の活性水素の数は1分子当たり0.8である。
【0185】
PPE(B1):ポリフェニレンエーテル樹脂
デグサ(Degussa)社製のVestoran1900を使用した。1分子当たりの活性水素の数は6個以上である。
【0186】
PPS(C1):ポリフェニレンスルフィド樹脂
ポリプラスチックス(株)製 フォートロン0220A9を使用した。1分子当たりの活性硫黄の数は6以上である。
【0187】
m−PBT(D1):変性PBT樹脂
m−PBT(D1)の調製:蒸留精製したジメチルテレフタレート883gおよびブタンジオール747gとブチレンジオール70.4gに酢酸カルシウム1.82g、酸化アンチモン3.64gを加え、攪拌機、窒素ガス導入管、蒸留用側管を有し、且つ真空系に連結された重合管に入れた。この重合管を油浴により180℃に加熱し、ゆっくりと窒素ガスを通しながら、留出するメタノール量が理論値に達したところで攪拌を開始し、徐々に系の温度を250〜260℃にまで高めると共に真空度を徐々に上げ100Pa以下にまで到達させた。生成するブタンジオールを少量ずつ留出させながら、2〜3時間を要して縮合反応を進め、適宜テトラクロロエタン/フェノール=40/60の混合溶媒中の相対粘度を測定し、数平均分子量が10000に達した時点で反応を終結させた。得られたポリマー中の不飽和結合の濃度はポリマー1分子当たり平均4個、0.4mol/kgであった。このポリマーを単独で変性PBT樹脂組成物(D1)として用いた。
【0188】
不飽和PES(E1):不飽和ポリエステル樹脂
不飽和PES(E1)の調製:無水マレイン酸604g、プロピレングリコール507gをハイドロキノンモノメチルエーテル0.22g及びエステル化触媒ジブチル錫オキサイド0.6gの存在下、常圧の窒素気流中、180〜190℃で脱水縮合させ、重量平均分子量5800の不飽和ポリエステルを得た。この不飽和ポリエステルにナフテン酸コバルト3.4gを加え、600gのエチルメタクリレート及び100gのスチレンで溶解希釈した。この希釈液100重量部に対し、有機過酸化物(日本油脂(株)パーブチルオー)3重量部を加えて攪拌した後、80℃条件下で硬化させ、厚み3mmの平板を得た。これを不飽和ポリエステル樹脂組成物(E1)の試料として用いた。
【0189】
メラミン(F1):メラミン樹脂
住友ベークライト(株)製「スミコンMMC−50」(黒着色品)を用い、厚み4mmの平板を作製し、メラミン樹脂組成物(F1)の試料として用いた。
【0190】
TRIM:トリメチロールプロパントリメタクリレート
[加硫ゴム層の組成]
SBR:JSR株式会社製「JSR0202」(スチレン含有量46%)
EPDM:DMS社製「ケルタン509×100」
NR:タイ国産#3
NBR:日本ゼオン(株)製「Nipol 1042」
VMQ−1
(A)ジメチルクロロシラン(CH3)2SiCl2と(B)メチルビニルクロロシラン(CH3)CH2=CH−SiCl2とをモル比率99.98:0.02で用い、(C1)環状ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン4量体を得た。この(C1)4量体100モルに対して、水酸化カリウム0.0011モルを添加し、155℃、窒素雰囲気下で重合を行った。得られた重合体(シロキサンA)の極限粘度[η](25℃、cSt)がlogη=7.7であり、この極限粘度の値から平均分子量290000、重合度4000程度のポリシロキサンであると判断した。また、得られた重合体中のビニル量については、1H−NMRにより定量したところ、100繰り返し単位のうち平均0.02個のビニル基、すなわち、平均して1分子あたり0.8個の二重結合を有していた。
【0191】
また、(A)ジメチルクロロシランと(B)メチルビニルクロロシランとのモル比率を、50:50として(C2)環状ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン4量体を得た。この(C2)4量体100モルに対して、水酸化カリウム0.45モルを添加して重合した。得られた重合体(シロキサンB)をガスクロマトグラフィー(キャピラリーカラム:J&W社 DURABOND DB−1701、注入温度:クールオンカラム方式50℃/30秒で270℃まで昇温、キャリアーガス:ヘリウム30ml/min、検出器:FID)により分析したところ、重合度は約10であり、1H−NMRによる分析から、100繰り返し単位のうち平均50個のビニル基、すなわち平均して1分子当たり5個の二重結合を有していた。
【0192】
これらシロキサンAとシロキサンBをモル比で47:53の比率で混合し、平均して1分子当たりの二重結合量が3個のVMQ−1として用いた。
【0193】
FKM:フッ素ゴム ダイキン工業株式会社製 Dai EL G 902
DCP:ジクミルパーオキサイド 日本油脂(株)製「パークミルD」
S:硫黄粉末 鶴見化学工業(株)製「#325」
[ゴム部材の組成]
EPDM:上記EPDM100重量部、Vestenamer8012(Degussa社製)3重量部、カーボンブラック[N582](旭カーボン(株)製)3重量部、珪酸マグネシウム「ミストロンベーパー」(日本ミストロン(株)製)25重量部、ナフテン系オイル「ダイアナプロセスオイルNS100」(出光興産(株)製)5重量部、パラフィンオイル「ダイアナプロセスオイル PW380」(出光興産(株)製)14重量部、ポリエチレングリコール(4000)1重量部、ステアリン酸0.5重量部、酸化亜鉛3重量部。
【0194】
SBR60/NBR40:上記SBR60重量部、上記NBR40重量部、カーボンブラック「N582」(旭カーボン(株)製)50重量部、ナフテン系オイル「ダイアナプロセスオイルNS100」(出光興産(株)製)10重量部、ステアリン酸1重量部、酸化亜鉛5重量部、安定剤「ノンフレックスRD」(精工化学(株)製)1重量部、安定剤「サンタイトZ」(精工化学(株)製)1重量部、安定剤「サントガードPVI」(フレキシス(株)製)0.2重量部、加硫促進剤「ノクセラ−CZ」(大内新興(株)製)1重量部、加硫促進剤「ノクセラ−TS」(大内新興(株)製)0.3重量部。
【0195】
SBR60/NR40:上記SBR60重量部、上記NR40重量部、カーボンブラック「旭#70」(旭カーボン(株)製)45重量部、ナフテン系オイル「ダイアナプロセスオイルNS100」(出光興産(株)製)10重量部、安定剤「ノクラックODA」(大内新興(株)製)1.5重量部、安定剤「ノクラック224」(大内新興(株)製)1.5重量部、加硫促進剤「ノクセラ−DM」(大内新興(株)製)0.6重量部、「ノクセラ−CZ」(大内新興(株)製)0.3重量部、「ノクセラ−TS」(大内新興(株)製)0.3重量部、ステアリン酸1.5重量部、酸化亜鉛5重量部。
【0196】
VMQ−2:東レダウコーニング(株)製「シリコーンゴムSH851」
FKM:フッ素ゴム「Dai EL G902」(ダイキン工業(株)製)100重量部、カーボンブラック「Thermax N990」Cancarb社製10重量部
BR:ブタジエンゴム「BUNA CB100」(バイエル社製)100重量部、ナフテン系オイル「ダイアナプロセスオイルNS−24」(出光興産(株)製)10重量部、カーボンブラック「ショウブラックN330T」(昭和キャボット(株)製)50重量部、安定剤「Vulkanox 4010NA」(バイエル社製)1.5重量部、加硫促進剤「ノクセラ−CZ」(大内新興(株)製)1重量部、ステアリン酸2重量部、酸化亜鉛5重量部。
【0197】
DCP:ジクミルパーオキサイド 日本樹脂(株)製「パークミルD」
S:硫黄粉末 鶴見化学工業(株)製「#325」
TAIC:トリアリルイソシアヌレート
[試験方法]
上記各樹脂組成物を射出成形法又は圧縮成形法により成形し、肉厚4mmの平板を得た。
【0198】
この平板の一方の面に下記方法により調製したゴム溶液をバーコーターを利用して厚み100μmに塗布した。ゴム溶液を塗布した後、1時間放置し、溶剤を風乾させ、未加硫ゴム層を形成した。この未加硫ゴム層を有する樹脂平板を、未加硫ゴム層を上面として170℃に温調された金型に入れ、未加硫ゴム層の上に上記ゴム部材を構成する未加硫ゴム組成物を所定量乗せ、ゴム部材の肉厚が3mmとなるように圧縮成形しながら、未加硫ゴム層と未加硫のゴム部材を加硫接着させた。加熱時間はおおよそ15分であった。
【0199】
なお、樹脂平板と未加硫ゴム層と加硫ゴム部材との組合せを表1に示す。表中、実施例2,3及び実施例10及び11において、「*」は、樹脂平板に未加硫ゴム層を形成した後、この未加硫ゴム層を一旦加硫した後に、加硫ゴム層の上部にゴム部材用未加硫ゴム組成物を乗せて170℃で加硫したことを示す。
【0200】
[ゴム溶液の調製]
表に示す成分割合(重量部)のゴム層用ゴム100重量部を、酢酸エチルとMEKとトルエンとを1:1:1の割合で含む混合溶媒400重量部に溶解し、この溶液に、表に示す割合で加硫剤及びトリメチロールプロパントリメタクリレート(TRIM)を加え、ゴム溶液を調製した。
【0201】
[接着性の評価]
上記方法で得られた樹脂/ゴム層/ゴム部材の平板状複合体を幅30mmに切断し、得られた試験片を180°剥離試験に供した。この剥離試験において、接着性を次のような基準で評価した。
【0202】
「A」:剥離界面が、ゴム層又はゴム部材内で発生し(凝集破壊し)、その破壊が100%凝集破壊である
「B」:50%以上が凝集破壊である
「C」:充分な粘着性が認められる、剥離の50%以上が、樹脂/ゴム層界面、若しくはゴム層/ゴム部材界面で発生する
「D」:樹脂/ゴム層、若しくはゴム層/ゴム部材界面で容易に剥離する
結果を表1に示す。なお、表中、各成分の割合は重量部である。
【0203】
【表1】
【0204】
表1から明らかなように、実施例で得られた複合体は高い接合強度を示す。
Claims (14)
- 加硫剤により加硫した加硫ゴム層を介して、加硫ゴム部材と樹脂部材とが接合している樹脂/ゴム複合体。
- 加硫剤が、硫黄系加硫剤又は過酸化物系加硫剤である請求項1記載の複合体。
- 加硫剤が、有機過酸化物である請求項1記載の複合体。
- 樹脂部材が、熱可塑性樹脂および架橋性基を有する樹脂から選択された少なくとも一種で構成されている請求項1記載の複合体。
- 架橋性基を有する樹脂が、熱硬化性樹脂及び不飽和結合を有する熱可塑性樹脂から選択された少なくとも一種である請求項4記載の複合体。
- 加硫ゴム層を形成するための未加硫ゴム組成物と樹脂部材とが、下記条件(i)〜(iii)のうち少なくとも一つの条件を満足する請求項1記載の複合体。
(i)樹脂部材が、下記式(1)で表される軌道相互作用エネルギー係数Sが0.006以上であり、かつ水素原子及び硫黄原子から選択された少なくとも一種の活性原子を一分子中に少なくとも平均2つ有する熱可塑性樹脂で構成されている
S=(CHOMO,n)2/|EC−EHOMO,n|+(CLUMO,n)2/|EC−ELUMO,n|
(1)
(式中、EC、CHOMO,n、EHOMO,n、CLUMO,n、ELUMO,nは、いずれも半経験的分子軌道法MOPACPM3により算出された値であって、ECは加硫剤としてのラジカル発生剤のラジカルの軌道エネルギー(eV)を示し、CHOMO,nは熱可塑性樹脂の基本単位を構成する第n番目の活性原子の最高被占分子軌道(HOMO)の分子軌道係数を示し、EHOMO,nは前記HOMOの軌道エネルギー(eV)を示し、CLUMO,nは前記n番目の活性原子の最低空分子軌道(LUMO)の分子軌道係数を示し、ELUMO,nは前記LUMOの軌道エネルギー(eV)を示す)
(ii)未加硫ゴム組成物及び樹脂部材のうち少なくとも一方の成分が、複数の重合性基を有する多官能重合性化合物を含有する
(iii)樹脂部材が、熱硬化性樹脂、又は分子中に不飽和結合を有する樹脂で構成され、未加硫ゴム組成物が複数の重合性基を有する多官能重合性化合物を含有する - 加硫ゴム層、加硫ゴム部材および樹脂部材の少なくとも1つが、加硫活性剤を含む組成物で形成されている請求項1記載の樹脂/ゴム複合体。
- 加硫ゴム層が、加硫剤および加硫活性剤を含有する未加硫ゴム組成物で形成され、加硫ゴム部材および樹脂部材の少なくとも一方の部材が、加硫活性剤を含む組成物で形成されている請求項1記載の樹脂/ゴム複合体。
- 加硫ゴム層が硫黄系加硫剤で加硫されたスチレン−ジエン系ゴムで構成され、樹脂部材がポリフェニレンエーテル系樹脂で構成されている請求項1記載の樹脂/ゴム複合体。
- 加硫剤を含有する未加硫ゴム層を介して、未加硫ゴム組成物、半加硫ゴム部材および加硫ゴム部材から選択されたゴムエレメントと、未成形樹脂組成物、半成形樹脂部材および成形樹脂部材から選択された樹脂エレメントとを接触させ、未加硫ゴム又は半加硫ゴムを加硫し、加硫ゴム層を介して、加硫ゴム部材と樹脂部材とが接合した樹脂/ゴム複合体を製造する方法。
- ゴムエレメント及び樹脂エレメントの接合面のうち少なくとも一方の接合面に、加硫剤を含有する未加硫ゴム組成物の層を形成し、この未加硫ゴム組成物層を介して前記ゴムエレメントと樹脂エレメントとを加圧接触下で加熱する請求項10記載の方法。
- 加硫剤を含有する未加硫ゴム組成物の層を、未加硫ゴム組成物のフィルム又は塗布剤で形成する請求項11記載の方法。
- 加硫剤を含むゴムエレメントと、樹脂エレメントとの間に、有機過酸化物と、複数の重合性基を有する多官能重合性化合物とを含有する未加硫ゴム組成物の層を介在させて加圧下で加熱して成形する請求項10記載の方法。
- ゴムエレメント及び樹脂エレメントのうち少なくとも一方が、複数の重合性基を有する多官能重合性化合物を含む請求項13記載の方法。
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