JP2007154076A - ジエン系ゴム接着用水添スチレン系エラストマー成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】ジエン系ゴムとの接着性と力学物性に優れるジエン系ゴム接着用水添スチレン系エラストマー成形体を提供する。
【解決手段】ビニル芳香族化合物単位からなる重合体ブロック(i)を2個以上、および共役ジエン化合物単位からなり、炭素−炭素不飽和二重結合の90モル%以上が水素添加されている重合体ブロック(ii)を1個以上有するブロック共重合体(A)からなる成形体の少なくとも一部の表面に、有機過酸化物(B)またはそれを含有する組成物を塗布、積層等の方法により、実質的に存在させてなるジエン系ゴム接着用水添スチレン系エラストマー成形体。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ジエン系ゴムとの接着性に優れる水添スチレン系エラストマー成形体に関する。
近年、高分子材料に対する要求品質が高くなるに伴い、複数の特性(例えば、引張強さ、引張弾性、硬さ、耐磨耗性、耐熱性、耐寒性、耐油性、耐薬品性、耐候性、成形加工性など)を有する材料が期待されている。例えばゴムの特性と、そのゴムの特性と異なる特性(例えば、樹脂の特性である高弾性など)とを有する材料が要求されている。そこで、樹脂成形部材とゴム成形部材とを接合し一体化することにより、樹脂とゴムとの特性を有する成形体として利用されることがある。
芳香族ビニル化合物からなる重合体ブロックと、水素添加(以下、「水添」と記載することがある)された共役ジエン化合物からなる重合体ブロックを有するブロック共重合体は、水添スチレン系エラストマーとして一般に知られている。一般的にジエン系ゴムよりも耐候性に優れるほか、化学的な架橋構造を有していないため種々の成形法により成形することが可能であり、所謂一般的なゴムとは異なる特性を有することが知られている。
しかしながら、水添スチレン系エラストマーとゴム、例えばジエン系ゴムとを成形体として用いる場合、水添スチレン系熱可塑性エラストマーとジエン系ゴムとの間には接着性が乏しく、実用的に十分な接着強度を有しているとは言い難い。
上記の接着性を改善したものとしては、例えば、ラジカル発生剤などの加硫剤を含有する未加硫ゴム層を介して、未加硫ゴム組成物、半加硫ゴム部材、加硫ゴム部材から選択されたゴムエレメントと、未成形樹脂組成物、半成形樹脂部材、成形樹脂部材から選択された樹脂エレメントとを接着する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)が、本発明者らによる当該発明の追試の結果、接着性は依然不十分であり、実用上問題の無いレベルの接着強度であるとは言い難い。
特開2004−42486号公報
本発明の目的は、ジエン系ゴムとの接着性に優れる水添スチレン系エラストマー成形体を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の要件を満たす水添スチレン系エラストマー成形体が、ジエン系ゴムとの接着性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
ビニル芳香族化合物単位からなる重合体ブロック(i)を2個以上、および共役ジエン化合物単位からなり、炭素−炭素不飽和二重結合の90モル%以上が水素添加されている重合体ブロック(ii)を1個以上有するブロック共重合体(A)からなる成形体の少なくとも一部の表面に、有機過酸化物(B)が実質的に存在してなるジエン系ゴム接着用水添スチレン系エラストマー成形体に関する。
本発明によれば、ジエン系ゴムとの接着性に優れる水添スチレン系エラストマー成形体が提供される。
本発明のジエン系ゴム接着用水添スチレン系エラストマー成形体は、ビニル芳香族化合物単位からなる重合体ブロック(i)を2個以上、および共役ジエン化合物単位からなり、炭素−炭素不飽和二重結合の90モル%以上が水素添加されている重合体ブロック(ii)を1個以上有するブロック共重合体(A)を用いる。
本発明において、ブロック共重合体(A)の重合体ブロック(i)の形成に用いられるビニル芳香族化合物の例としては、例えば、スチレン、4−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等の芳香環に置換基を有していてもよいスチレン系化合物、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、1,1−ジフェニルエチレン等のα−置換スチレン系化合物、4,α−ジメチルスチレンなどのα位と芳香環が置換基を有するスチレン系化合物等が挙げられる。中でも工業的経済性、および重合の容易性の観点から、スチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレンが好ましく、得られる水添スチレン系エラストマー成形体の耐熱性の観点からα−メチルスチレンであることがより好ましい。
本発明において、ブロック共重合体(A)の重合体ブロック(ii)の形成に用いられる共役ジエン系化合物の例としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、3,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン等が挙げられる。中でも入手容易性、工業的経済性の観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。また本発明の効果を損なわない範囲であれば、例えばスチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレンなどのビニル芳香族化合物が共重合されていてもよい。また、重合体ブロック(ii)に含まれる炭素−炭素不飽和二重結合は、その90モル%以上が水素添加されていることが必要であり、95%以上であることが、得られる水添スチレン系エラストマー成形体の力学物性の観点から好ましい。
ブロック共重合体(A)は、重合体ブロック(i)を2個以上、および重合体ブロック(ii)を1個以上有している限り、そのブロック連鎖に制限はなく、(i)−(ii)−(i)のトリブロック体、(i)−(ii)−(i)−(ii)のテトラブロック体、(i)−(ii)−(i)−(ii)−(i)又は(ii)−(i)−(ii)−(i)−(ii)のペンタブロック体等が挙げられる。これらの中でも、製造容易性の観点から(i)−(ii)−(i)のトリブロック体が好ましい。
本発明において、ブロック共重合体(A)におけるビニル芳香族化合物からなる重合体ブロック(i)の質量分率に特に制限はないが、熱可塑性エラストマーとしての性能の観点から、5〜60質量%の範囲内であることが好ましく、10〜50質量%の範囲内であることがより好ましい。重合体ブロック(i)の質量分率が5質量%未満の場合には、エラストマーとしての強度に劣るため好ましくなく、60質量%を超える場合には、樹脂的性質が強くなりエラストマーとしての特徴が乏しくなり好ましくない。
ブロック共重合体(A)の分子量に特に制限はないが、好ましくは10,000〜2,000,000、より好ましくは30,000〜1,000,000の範囲である。分子量が10,000以下の場合には、力学物性が不十分となり好ましくなく、一方、2,000,000以上の場合には成形性に劣るため好ましくない。なお、ここで言う分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される数平均分子量(Mn)を指す。
本発明におけるブロック共重合体(A)の製造方法については特に制限はなく、例えば、リビングアニオン重合法を用いて製造することができる。この場合、アルキルリチウム化合物等のアニオン重合開始剤の存在下、n−ヘキサンやシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の不活性有機溶媒中で、ビニル芳香族化合物、共役ジエン化合物を逐次重合させて得ることができる。
リビングアニオン重合によりブロック共重合体を製造するにあたり、反応を円滑に進行させるために分子内にアニオン種と反応する官能基(水酸基、カルボニル基等)を持たず、酸素原子、窒素原子などの複素原子を有する極性化合物を、不活性有機溶媒に共存させて用いてもよい。その際の極性化合物としては、通常のリビングアニオン重合で採用されている手法に準じて適当なものを選択することができ、ジエチルエーテル、モノグライム、ジグライム、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなどを挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。
またリビングアニオン重合によりブロック共重合体を製造するにあたり、必要に応じて多官能性カップリング剤を用いてもよい。多官能性カップリング剤としては、通常のリビングアニオン重合で採用されている手法に準じて適当なものを選択することができ、安息香酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸エチル、酢酸メチル、ピバリン酸メチル、ピバリン酸フェニル、ピバリン酸エチル、α,α’−ジクロロ−o−キシレン、α,α’−ジクロロ−m−キシレン、α,α’−ジクロロ−p−キシレン、ビス(クロロメチル)エーテル、ジブロモメタン、ジヨードメタン、フタル酸ジメチル、ジクロロジメチルシラン、ジクロロジフェニルシラン、トリクロロメチルシラン、テトラクロロシラン、ジビニルベンゼン等を挙げることができる。
またリビングアニオン重合によりブロック共重合体を製造するにあたり、必要に応じて官能性キャッピング剤を用いてブロック共重合体末端に官能基を導入してもよい。官能性キャッピング剤としては、通常のリビングアニオン重合で採用される手法に準じて適当なものを選択することができ、水酸基を導入できるキャッピング剤(エチレンオキシド等のアルキレンオキシド類等)、カルボキシル基を導入できるキャッピング剤(二酸化炭素等)、アミノ基を導入できるキャッピング剤(エチレンイミン等のイミン化合物等)、メルカプト基を導入できるキャッピング剤(二硫化炭素、硫黄原子、およびエチレンスルフィド等のアルキレンスルフィド類等)等を挙げることができる。
ブロック共重合体の共役ジエン系化合物に由来する炭素−炭素二重結合の水素添加の方法としては特に限定されないが、例えばNi/Al系チーグラー触媒の存在下にブロック共重合体と水素とを反応させる方法等が挙げられる。
本発明における有機過酸化物(B)は、加硫剤としてのラジカル発生源となり得るものであれば特に制限は無いが、例えば、ジイソブチリルパーオキシド、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボナート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジサクシニックアシッドパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジベンソイルパーオキシド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4’−ジ−(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキシド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、p−メンタンヒドロパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシドなどが挙げられる。これらの中でも、取扱いの容易性、水添スチレン系エラストマー成形体の保存安定性の観点から、1分間半減期温度が100℃以上の有機過酸化物が好ましく、1分間半減期温度が150℃以上の有機過酸化物がより好ましい。
本発明において、有機過酸化物(B)の使用量としては特に制限はないが、本発明のジエン系ゴム接着用水添スチレン系エラストマー成形体とジエン系ゴムとの間の接着面積1cmあたり、接着性、および工業的経済性の観点から、0.01mg〜100mgの範囲内であることが好ましく、0.1mg〜10mgの範囲内であることがより好ましい。
本発明のジエン系ゴム接着用水添スチレン系エラストマー成形体を製造する方法としては、ブロック共重合体(A)からなる成形体の少なくとも一部の表面に有機過酸化物(B)が実質的に存在している限り特に制限は無く、例えば以下の方法等が挙げられる。
<1>有機過酸化物(B)またはその希釈物、溶液、分散液等をブロック共重合体(A)からなる成形体の表面に塗布する方法。この方法で有機過酸化物(B)の希釈物、溶液、分散液等の希釈媒体、溶媒、分散媒等が、揮発性や蒸発性である場合には、適宜それらを除去するものとする。
<2>ブロック共重合体(A)に有機過酸化物(B)を配合した組成物をフィルム状に成形し、これをブロック共重合体(A)からなる成形体上に積層する方法。この方法での有機過酸化物(B)を含有するフィルムまたは成形体上に積層された該組成物からなる層の厚さは、例えば1μm〜2mmとすることができる。
<3>ブロック共重合体(A)からなる成形体に有機過酸化物(B)またはそれを含有する粉体を振りかけるなどの方法で直接付着させ、必要に応じて圧着等をする方法。
上記の方法の中でも安定的に一定量の有機過酸化物(B)を成形体表面に存在させることの容易な<1>又は<2>の方法が好ましい。
本発明のジエン系ゴム接着用水添スチレン系エラストマー成形体を構成するブロック共重合体(A)には、一般のスチレン系エラストマーで行われるように、他の熱可塑性樹脂、軟化剤、無機充填剤、染顔料、添加剤等を含有させてもよい。
本発明のジエン系ゴム接着用水添スチレン系エラストマー成形体に用いることのできる熱可塑性樹脂としては、本発明の効果を実質的に損なわないものであれば特に制限は無く、例えばポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミド6・10、ポリアミド11、ポリアミド12等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂、スチレン単独重合体、α−メチルスチレン単独重合体、スチレン・α−メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂等のスチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート、スチレン−メチルメタクリレート共重合体等の(メタ)アクリレート系樹脂、天然ゴム、合成イソプレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、塩化ビニル樹脂、軟質塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1等のポリオレフィン系樹脂等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。
本発明のジエン系ゴム接着用水添スチレン系エラストマー成形体に用いることのできる軟化剤としては、例えば、パラフィンオイル、ナフテンオイル、アロマオイル等の炭化水素系オイル等が挙げられる。
本発明のジエン系ゴム接着用水添スチレン系エラストマー成形体に用いることのできる無機充填剤や染顔料としては、例えば、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、クレー、酸化チタン等を挙げることができる。
本発明のジエン系ゴム接着用スチレン系エラストマー成形体に用いることのできる添加剤としては、滑剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、シリコンオイル、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、発泡剤、香料等が挙げられる。
本発明のジエン系ゴム接着用水添スチレン系エラストマー成形体の引張破断強度について特に制限はないが、実用的強度の観点から20MPa以上であることが好ましい。引張破断強度が20MPa以下である場合には、エラストマーとしての強度が劣り好ましくない。引張破断伸びについて特に制限はないが、エラストマーとしての機能の観点から100%以上であることが好ましく、より好ましくは200%以上である。引張破断伸びが100%以下である場合には、樹脂的性質が強くなりエラストマーとしての性能に劣ることから好ましくない。
本発明のジエン系ゴム接着用水添スチレン系エラストマー成形体のジエン系ゴムへの接着力は例えば、JIS K6256に従い剥離強さを測定することにより求めることができる。ジエン系ゴム接着用水添スチレン系エラストマーと加硫ジエン系ゴムとを接着してなる成形体が十分な実用的強度を有するとの観点から、水添スチレン系エラストマー成形体と加硫ジエン系ゴムの剥離強さは、好ましくは2.5N/mm以上、より好ましくは3N/mm以上である。剥離強さが2.5N/mm未満である場合には、成形体の実用的強度が劣るため好ましくない。上記の剥離とは、水添スチレン系エラストマー成形体とジエン系ゴムとの接着面での界面剥離に加えて、どちらか片方の材料破壊をも含むものとする。
上記したジエン系ゴムとは、天然ゴム、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、スチレンイソプレンゴム、スチレン−ブタジエン−イソプレンゴム、ニトリルブタジエンゴムから選ばれる1種類以上のジエン系ゴムと加硫剤を少なくとも含有してなるジエン系ゴム組成物を指す。ジエン系ゴム組成物には、上記したジエン系ゴムと加硫剤に加え、カーボンブラック、シリカ等の無機充填剤、ナフテンオイル等の軟化剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤、加硫促進助剤、ステアリン酸、亜鉛華、シランカップリング剤等が目的に応じ適宜配合されていてもよい。
本発明のジエン系ゴム接着性水添スチレン系エラストマー成形体とジエン系ゴムの接着方法はとしては、例えば必要に応じて加硫剤を含む未加硫または半加硫のジエン系ゴム組成物を用い、本発明の成形体の有機過酸化物が存在している面が未加硫または半加硫のジエン系ゴムと接触するように配置し、加硫接着する方法、加硫ジエン系ゴム組成物を用い、本発明の成形体の有機過酸化物の存在している面が加硫ジエン系ゴムと接触するように配置し加硫接着する方法等が挙げられる。これらのうちでも、工程の容易性から未加硫のジエン系ゴム組成物を用い加硫接着を行う方法を採用することが好ましい。
以下、本発明を実施例等により具体的に説明するが、本発明はそれにより何ら限定されるものではない。また、以下の実施例、比較例において用いた測定機器および測定方法、使用材料を示す。
(1)核磁気共鳴スペクトル(1H−NMRスペクトル)によるブロック共重合体の分子構造の解析
機器 : 日本電子社製核磁気共鳴装置(JNM−LA)
溶媒 : 重クロロホルム
(2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)の測定
機器 : 東ソー社製ゲルパーミエーションクロマトグラフ(HLC−8020)
カラム : 東ソー社製TSKgel GMHXL、G4000HXLおよびG5000HXLを直列に連結
溶離液 : テトラヒドロフラン、流量1.0ml/分
カラム温度 : 40℃
検量線 : 標準ポリスチレンを用いて作成
検出方法 : 示差屈折率(RI)
(3)引張破断強度、引張破断伸びの測定
作製した水添スチレン系エラストマー成形体シートからダンベル状3号形試験片を打ち抜いて作製し、JIS K6251に準拠して、万能材料試験機(インストロンジャパン社製「TM−MS−134」)を用い、500mm/分の条件下で測定した。
(4)ジエン系ゴムとの接着性試験
表1に示した割合で各種材料を配合して作製した厚さ2mmの未加硫ゴムシートと、作製した水添スチレン系エラストマー成形体シートを有機過酸化物が存在する面が未加硫ゴムシート側に接触するように重ね合わせ、170℃で15分間加硫接着を行った。接着したサンプルを25mm幅の短冊状に切り出し、JIS K6256に準拠して、万能材料試験機(インストロンジャパン社製「TM−MS−134」)を用い、90°、500mm/分の条件下で剥離強さを測定した。
Figure 2007154076
《参考製造例1》 ブロック共重合体(A−1)の製造
(1)窒素置換を十分に行ったオートクレーブ中に、α−メチルスチレン152g、シクロヘキサン221g、ヘキサン38.5gおよびテトラヒドロフラン9.6gを投入した。
(2)続いてsec−ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液10mL(sec−ブチルリチウムとして10ミリモル)を投入し、−10℃で3時間重合反応を行った。重合開始5時間後のポリα−メチルスチレン(重合体ブロック(i)に相当)のMn、Mw/MnをGPCにより測定したところ、Mn=10500、Mw/Mn=1.05であり、α−メチルスチレンの重合転化率は90%であった。
(3)次に、1,3−ブタジエン10gを加え30分間攪拌した後、10℃まで昇温しシクロヘキサン109gを加えて重合溶液を希釈した。続いて重合溶液317gを抜き取り、さらにシクロヘキサン524gを加えた。
(4)次に、1,3−ブタジエン128gを加え、50℃で2時間重合を行った。この時点のサンプリングで得られたポリマーのMn、Mw/MnをGPCにより測定したところ、Mn=59700、Mw/Mn=1.05、H−NMR測定から求めたポリブタジエン部の1,4−結合量は60モル%であった。
(5)続いて、安息香酸フェニルのシクロヘキサン溶液10mL(安息香酸フェニルとして2.64ミリモル)をゆっくりと加え50℃にて1時間攪拌した。攪拌終了後、少量の脱気したメタノールを加えて重合を完結させた。得られたポリマーの数平均分子量をGPCにより測定したところ、Mn=119600、Mw/Mn=1.06であった。H−NMR測定から求めたα−メチルスチレン重合体ブロックの質量分率は30質量%、ブタジエン重合体ブロックの1,4−結合量は60モル%であった。
(6)オクチル酸ニッケルとトリイソブチルアルミニウムの反応生成物を水添触媒として上記(5)で得られた溶液に添加し、水素をオートクレーブ内に導入することで水添反応を行った。水添反応は水添触媒導入後、1時間かけて50℃まで昇温した後、7時間行った。得られた溶液をクエン酸と過酸化水素の水溶液、水で十分に洗浄して水添触媒を除去した後、有機層をアセトン/メタノール混合溶媒に注いでブロック共重合体を沈殿させた。得られたブロック共重合体をメタノールにて十分に洗浄し、0.1質量部の酸化防止剤(チバ・スペシャリティーズ・ケミカル社製「Irganox1010」)を添加し、60℃で真空乾燥してブロック共重合体(A−1)を得た。
《参考製造例2》 ブロック共重合体(A−2)の製造
上記参考製造例1において、工程(6)における水添反応の時間を4時間に変更すること以外は同様の操作を行いブロック共重合体(A−2)を得た。ブロック共重合体(A−2)の分子構造を表2に示す。
《参考製造例3》 ブロック共重合体(A−3)の製造
上記参考製造例1において、工程(5)において安息香酸フェニルを用いなかったこと以外は同様の操作を行い水添スチレン系エラストマー(A−3)を得た。ブロック共重合体(A−3)の分子構造を表2に示す。
ブロック共重合体(A−4)として、以下の製品を用いた。
ブロック共重合体(A−4) : クラレ社製 セプトン8007 ポリスチレン−水添ブタジエン−スチレン、スチレン含量30質量%
Figure 2007154076
ラジカル発生剤(B−1)〜(B−5)として、以下の製品を用いた。
ラジカル発生剤(B−1) : 日本油脂社製 パーヘキシン25B 2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3 1分間半減期温度 194.3℃ シクロヘキサンに溶解させて使用
ラジカル発生剤(B−2) : 日本油脂社製 パーメンタH p−メンタンヒドロパーオキシドのトルエン溶液 1分間半減期温度 199.5℃
ラジカル発生剤(B−3) : 日本油脂社製 パークミルP ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシドの酢酸エチル溶液 1分間半減期温度 232.5℃
ラジカル発生剤(B−4) : 和光純薬社製 アゾビスイソブチロニトリルのシクロヘキサン溶液
ラジカル発生剤(B−5) : 粉末硫黄のシクロヘキサン分散液
《比較例1、2》 水添スチレン系エラストマー
ブロック共重合体(A)としてブロック共重合体(A−1)又は(A−4)の縦15cm、横15cm、厚さ2mmのシートを圧縮成形により作製した。作製したシートについて引張破断強度、引張破断伸び、ジエン系ゴムとの接着性を評価したところ表3および表4に示すとおりであった。
《実施例1〜4および比較例3〜6》 ジエン系ゴム接着用水添スチレン系エラストマー成形体の製造
ブロック共重合体(A)としてブロック共重合体(A−1)又は(A−4)の縦15cm、横15cm、厚さ2mmのシート状成形体を圧縮成形により作製し、片側の表面にラジカル発生剤(B−1)〜(B−5)を、その使用量が0.67mg/cm(ラジカル発生剤を0.15g使用)となるように刷毛で塗布した。得られたジエン系ゴム接着用水添スチレン系エラストマー成形体について引張破断強度、引張破断伸び、ジエン系ゴムとの接着性を評価したところ表3および表4に示すとおりであった。
《実施例5、6》 ジエン系ゴム接着用水添スチレン系エラストマー成形体の製造
ブロック共重合体(A−1)又は(A−4)のシクロヘキサン溶液にラジカル発生剤(B−1)を0.15g加えてガラス基板上に流延して乾燥することにより縦15cm、横15cm、厚さ0.2mmのフィルムを作製した。このフィルムを、別途圧縮成形により作製したブロック共重合体(A−1)の縦15cm、横15cm、厚さ2mmのシート状成形体の上に重ね合わせることでジエン系ゴム接着用水添スチレン系エラストマー成形体を製造した。得られたジエン系ゴム接着用水添スチレン系エラストマー成形体について引張破断強度、引張破断伸び、ジエン系ゴムとの接着性を評価したところ表3に示すとおりであった。
Figure 2007154076
Figure 2007154076
表3および表4より、本発明の構成要件である有機過酸化物を含有しない比較例1および比較例2においては、有機過酸化物を含有する実施例1および実施例4に比べ、ジエン系ゴムへの接着力が不十分である。
表3および表4より、ブロック共重合体(A)として、本発明の要件を満たしていないブロック共重合体(A−2)を用いた比較例3では、ブロック共重合体(A)として、本発明の要件を満たすブロック共重合体(A−1)、(A−4)を用いた実施例1および実施例4に比べ、引張破断強度が不十分である。
表3および表4より、ブロック共重合体(A))として、本発明の要件を満たしていないブロック共重合体(A−3)を用いた比較例4では、ブロック共重合体(A)として、本発明の要件を満たすブロック共重合体(A−1)、(A−4)を用いた実施例1および実施例4に比べ、引張破断強度、およびジエン系ゴムとの接着性が不十分である。
表3および表4より、ラジカル発生剤として有機過酸化物ではないラジカル発生剤を用いた比較例5、6では、有機過酸化物を用いた実施例1〜3に比べ、ジエン系ゴムとの接着性が不十分である。
本発明により、ジエン系ゴムとの接着性と力学物性に優れる水添スチレン系エラストマー成形体が提供される。

Claims (4)

  1. ビニル芳香族化合物単位からなる重合体ブロック(i)を2個以上、および共役ジエン化合物単位からなり、炭素−炭素不飽和二重結合の90モル%以上が水素添加されている重合体ブロック(ii)を1個以上有するブロック共重合体(A)からなる成形体の少なくとも一部の表面に、有機過酸化物(B)が実質的に存在してなるジエン系ゴム接着用水添スチレン系エラストマー成形体。
  2. ブロック共重合体(A)の重合体ブロック(i)を構成するビニル芳香族化合物単位がα−メチルスチレン単位である、請求項1に記載のジエン系ゴム接着用水添スチレン系エラストマー成形体。
  3. ブロック共重合体(A)からなる成形体の少なくとも一部の表面に、有機過酸化物(B)を塗布することにより付着させた、請求項1又は2に記載のジエン系ゴム接着用水添スチレン系エラストマー成形体。
  4. ブロック共重合体(A)からなる成形体の少なくとも一部の表面に、有機過酸化物(B)とブロック共重合体(A)との組成物からなる層を有する、請求項1又は2に記載のジエン系ゴム接着用水添スチレン系エラストマー成形体。
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