JP5116644B2 - 熱可塑性重合体組成物 - Google Patents
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Description
このようなブロック共重合体の耐熱性の改良を目的として、例えば、スチレン系ブロック共重合体と、ポリフェニレンエーテル系樹脂をブレンドした熱可塑性エラストマー組成物(特許文献1及び2参照)や、スチレン系ブロック共重合体と、エチレン−α−オレフィン共重合体をブレンドした熱可塑性エラストマー組成物(特許文献3参照)等が開示されている。
また、(a)ポリオレフィン系樹脂と、(b)α−メチルスチレン単位を主体とする重合体ブロックA及び共役ジエン単位を主体とする重合体ブロックBを有するブロック共重合体、好ましくは水素添加ブロック共重合体を含むポリオレフィン系樹脂組成物(特許文献5参照)が開示されている。このポリオレフィン系樹脂組成物は、柔軟性、耐熱性及び成形性のバランス特性に優れている。
本発明は、かかる状況下になされたもので、流動性(成形加工性)、引張り破断強度及びウエルド強度のいずれも優れる、熱可塑性重合体組成物を提供することを目的とする。
(a)α−メチルスチレン単位を主体とする重合体ブロックAと、共役ジエン単位を主体とする重合体ブロックBとを有するブロック共重合体及び/又はその水素添加物、及び(b)α−メチルスチレン単位以外の芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロックA’と、共役ジエン単位を主体とする重合体ブロックB’とを有するブロック共重合体の水素添加物、を含む熱可塑性重合体組成物であって、
前記(a)ブロック共重合体及び/又はその水素添加物の数平均分子量が30,000〜350,000であり、かつ(b)ブロック共重合体の水素添加物の数平均分子量が100,000〜500,000であることを特徴とする熱可塑性重合体組成物
を提供するものである。
本発明の熱可塑性重合体組成物においては、(a)成分として、α−メチルスチレン単位を主体とする重合体ブロックAと、共役ジエン単位を主体とする重合体ブロックBとを有するブロック共重合体及び/又はその水素添加物が用いられる。
(重合体ブロックA)
当該(a)成分を構成する重合体ブロックAは、α−メチルスチレン単位を主体とする。該重合体ブロックA中のα−メチルスチレンの含有量は、得られる熱可塑性重合体組成物の耐熱性及び機械的強度の観点から50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。
重合体ブロックAは、本発明の目的を損なわない範囲内で、通常は50質量%以下の範囲内で他の単量体を共重合していてもよく、一般的にアニオン重合可能な単量体であれば限定はない。例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ジフェニルエチレン、1−ビニルナフタレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン等の芳香族ビニル化合物;1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等の共役ジエン化合物が好ましく、特にスチレン、p−メチルスチレンが好適である。重合体ブロックAに他の単量体を共重合する場合の形態は、ランダム、テーパード状のいずれでもよい。
(a)ブロック共重合体における重合体ブロックAの含有量は、5〜70質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましく、20〜50質量%が更に好ましく、25〜40質量%が特に好ましい。重合体ブロックAの含有量が5質量%未満の場合には、得られる熱可塑性重合体組成物の力学的強度が劣り、また高温下での良好な圧縮永久歪みが得られず耐熱性が劣る傾向となり、一方、70質量%を超える場合には、(a)ブロック共重合体の溶融粘度が高くなり過ぎ、他の成分との溶融混合が難しくなるばかりか、熱可塑性重合体組成物とした場合に、柔軟性が乏しくなり、また後述のゴム用軟化剤を併用する場合、ブリードが生じる傾向となる。
当該(a)成分を構成する重合体ブロックBは、共役ジエン単位を主体とする。該共役ジエン単位を形成する共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。共役ジエン化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、1,3−ブタジエン、イソプレン、又は1,3−ブタジエンとイソプレンの混合物が好ましい。2種以上を併用する場合の形態は、ランダム、ブロック、テーパード状のいずれでもよい。
更に、重合体ブロックBは、本発明の目的を損なわない範囲内で、通常は30質量%以下、好ましくは10質量%以下の範囲内で、共役ジエン化合物以外の他のアニオン重合性の単量体を共重合していてもよい。該共重合可能な他の単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ジフェニルエチレン、1−ビニルナフタレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン等の芳香族ビニル化合物が挙げられる。芳香族ビニル化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を共重合する場合の形態は、ランダム、テーパード状のいずれでもよい。
重合体ブロックBの数平均分子量は通常10,000〜349,000であり、20,000〜320,000の範囲が好ましく、30,000〜300,000の範囲がより好ましい。重合体ブロックBの数平均分子量が10,000未満の場合、得られる熱可塑性重合体組成物の耐熱性に劣り、数平均分子量が349,000を越える場合、(a)ブロック共重合体の溶融粘度が高くなり過ぎ、他の成分との混合が困難となって加工性が劣る。
(a)ブロック共重合体における重合体ブロックAと重合体ブロックBの結合様式は、線状、分岐状、放射状、あるいはこれらの任意の組み合わせであってもよい。例えば、重合体ブロックAをAで、重合体ブロックBをBで表したとき、A−Bジブロック共重合体、A−B−A型トリブロック共重合体、A−B−A−B型テトラブロック共重合体、(A−B)nX型共重合体(Xはカップリング剤残基を表し、nは3以上の整数を表す)等が挙げられる。これらのブロック共重合体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、A−B−A型トリブロック共重合体、又はA−B−A型トリブロック共重合体とA−B型ジブロック共重合体の混合物が好ましい。
ここで、本願明細書においては、同種の重合体ブロックが2価のカップリング剤等を介して直線状に結合している場合、結合している重合体ブロック全体は一つの重合体ブロックとして取り扱われる。これに従い、上記例示も含め、本来厳密にはY−X−Y(Xはカップリング残基を表す)と表記されるべき重合体ブロックは、特に単独の重合体ブロックYと区別する必要がある場合を除き、全体としてYと表示される。本明細書においては、カップリング剤残基を含むこの種の重合体ブロックを上記のように取り扱うので、例えば、カップリング剤残基を含み、厳密にはY−Z−X−Z−Y(Xはカップリング剤残基を表す)と表記されるべきブロック共重合体は、Y−Z−Yと表記され、トリブロック共重合体の一例として取り扱われる。
また、本発明に用いる(a)ブロック共重合体には、本発明の目的を損なわない範囲内で、メタクリル酸メチル、スチレン等の他の単量体からなる重合体ブロックCを共重合させてもよい。この場合、ブロック共重合体の構造としては、A−B−C型トリブロック共重合体、A−B−C−A型テトラブロック共重合体、A−B−A−C型テトラブロック共重合体等が挙げられる。
更に、(a)ブロック共重合体は、耐熱性、耐候性の向上等の観点から水素添加されていることが好ましい。水素添加の割合は、特に限定されるものではないが、少なくとも(a)ブロック共重合体中の共役ジエン単位に基づく炭素−炭素二重結合の30%以上が水素添加されているのが好ましく、50%以上が水素添加されているのがより好ましく、80%以上が水素添加されているのが更に好ましく、90%以上が水素添加されているのが特に好ましい。
(a)ブロック共重合体は、本発明の目的を損なわない限り、分子鎖中に、又は分子末端に、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基等の官能基を含有していてもよい。
<重合>
当該ブロック共重合体は、アニオン重合法によって製造することができ、次のような具体的な合成例が示される。
(1)テトラヒドロフラン溶媒中でジアニオン系開始剤を用いて共役ジエン化合物を重合後に、−78℃の温度条件下でα−メチルスチレンを逐次重合させ、A−B−A型ブロック共重合体を得る方法(Macromolecules,2巻,453-458頁(1969年)参照)。
(2)α−メチルスチレンをアニオン系開始剤を用いてバルク重合を行なった後に、共役ジエンを逐次重合させ、その後テトラクロロシラン等のカップリング剤によりカップリング反応を行い、(A−B)nX型ブロック共重合体を得る方法(Kautsch.Gummi,Kunstst.,37巻,377-379頁(1984年);Polym.Bull.,12巻,71-77頁(1984年)参照)。
(3)非極性溶媒中、有機リチウム化合物を重合開始剤として用い、0.1〜10質量%の濃度の極性化合物の存在下、−30〜30℃の温度にて、5〜50質量%の濃度のα−メチルスチレンを重合させ、得られるリビングポリマーに共役ジエンを重合させた後、カップリング剤を添加して、A−B−A型ブロック共重合体を得る方法。
(4)非極性溶媒中、有機リチウム化合物を重合開始剤として用い、0.1〜10質量%の濃度の極性化合物の存在下、−30〜30℃の温度にて、5〜50質量%の濃度のα−メチルスチレンを重合させ、得られるリビングポリマーに共役ジエン化合物を重合させ、得られるα−メチルスチレン重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックからなるブロック共重合体のリビングポリマーにα−メチルスチレン以外のアニオン重合性モノマーを重合させA−B−C型ブロック共重合体を得る方法。
上記方法の中では、(3)及び(4)の方法が好ましく、(3)の方法がより好ましい。
α−メチルスチレンの重合時に使用される溶媒は非極性溶媒であり、例えばシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ヘキサン、n−ペンタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
α−メチルスチレンの重合時に使用される極性化合物とは、アニオン種と反応する官能基(水酸基、カルボニル基等)を有しない、分子内に酸素原子、窒素原子等の複素原子を有する化合物であり、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル、モノグライム、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
反応系中における極性化合物の濃度は、α−メチルスチレンを高い転化率で重合させ、この後の共役ジエン化合物を重合させる際に、共役ジエン重合体ブロツク部の1,4−結合量を制御する観点から、0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜3質量%の範囲がより好ましい。
なお、上記の転化率とは、未重合のα−メチルスチレンが重合によりブロック共重合体へと転化された割合を意味し、本発明においてその程度は70%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。
α−メチルスチレンの重合時の温度条件は、α−メチルスチレンの天井温度(重合反応が平衡状態に達して実質的に進行しなくなるときの温度)、α−メチルスチレンの重合速度、リビング性等の点から−30〜30℃が好ましく、より好ましくは−20〜10℃、更に好ましくは−15〜0℃である。重合温度を30℃以下とすることにより、α−メチルスチレンを高い転化率で重合させることができ、更に生成するリビングポリマーが失活する割合も小さく、得られるブロック共重合体中にホモポリα−メチルスチレンが混入するのを抑え、物性が損なわれず、また、重合温度を−30℃以上とすることにより、α−メチルスチレンの重合後期において反応溶液が高粘度化することなく攪拌でき、低温状態を維持するのに必要な費用がかさむこともないため、経済的にも好ましい。
有機リチウムを重合開始剤に用いたα−メチルスチレンの重合によりリビングポリα−メチルスチリルリチウムが生成するので、次いでこのものに共役ジエン化合物を重合させる。共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられ、これらの化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。この中でも好ましい共役ジエン化合物は1,3−ブタジエン又はイソプレンである。
共役ジエン化合物を溶媒に希釈して添加する方法としては、共役ジエン化合物を加えた後、溶媒で希釈するか、又は共役ジエン化合物と溶媒を同時に投入するか、又は溶媒で希釈した後に共役ジエン化合物を加えてもよい。好適には、リビングポリα−メチルスチリルリチウムに対して1〜100モル当量、好ましくは5〜50モル当量に相当する量の共役ジエン化合物を添加してリビング活性末端を変種した後、溶媒で希釈し、続いて残りの共役ジエン化合物を投入し、30℃を超える温度、好ましくは40〜80℃で重合反応を行う方法が推奨される。
リビングポリα−メチルスチリルリチウムの活性末端を変種するに際し、共役ジエン化合物の代りにスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1−ジフェニルエチレン等のビニル芳香族化合物を用いてもよい。
ここで希釈に用いることができる溶媒としては、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を挙げることができる。
このようにして得られた(a)ブロック共重合体は、重合反応液をメタノール等に注ぐことにより凝固させた後、加熱又は減圧乾燥させるか、重合反応液を沸騰水中に注ぎ、溶媒を共沸させて除去するいわゆるスチームストリッピングを施した後、加熱又は減圧乾燥することにより取得することができる。
α−メチルスチレン重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックからなる(a)ブロック重合体は、耐熱性及び耐候性が良好なものとなる点から、そのブロック共重合体における共役ジエン単位に基づく炭素−炭素二重結合の少なくとも一部(70%以上)が水素添加されていることが好ましい。
この場合のブロック共重合体は、多官能性カップリング剤の使用量を調整することにより得られる、ジブロック、トリブロック、ラジアルテレブロック型のブロック共重合体を任意の割合で含む混合物であってもよい。多官能性カップリング剤としては、安息香酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、ピバリン酸メチル、ピバリン酸エチル、ピバリン酸フェニル、α,α'−ジクロロ−o−キシレン、α,α'−ジクロロ−m−キシレン、α,α'−ジクロロ−p−キシレン、ビス(クロロメチル)エーテル、ジブロモメタン、ジヨードメタン、フタル酸ジメチル、ジクロロジメチルシラン、ジクロロジフェニルシラン、トリクロロメチルシラン、テトラクロロシラン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
また、α−メチルスチレン重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックからなる(a)ブロック共重合体を水素添加する場合にも、リビングポリα−メチルスチリルリチウムに共役ジエン化合物を重合させた後、アルコール類、カルボン酸類、水等の活性水素化合物を添加して重合反応を停止させ、公知の方法にしたがって不活性有機溶媒中で水添触媒の存在下に水添して、水添された(a)ブロック共重合体とすることができる。
未水添のブロック共重合体は共役ジエン重合体ブロック中の共役ジエン単位に基づく炭素−炭素二重結合の70%以上、特に好ましくは90%以上が飽和されるまで水添されることが望ましく、これによりブロック共重合体の耐候性を高めることができる。水添されたブロック共重合体における共役ジエン重合体ブロック中の炭素−炭素二重結合の水添率は、ヨウ素価滴定法、赤外分光スペクトル測定、核磁気共鳴スペクトル(1H−NMRスペクトル)測定等の分析手段を用いて算出することができる。
本発明の熱可塑性重合体組成物において、(a)成分として用いるブロック共重合体及び/又はその水素添加物の数平均分子量は、30,000〜350,000の範囲にあることを要する。この数平均分子量が上記の範囲にあれば、得られる当該組成物は、流動性(成形加工性)、引張り破断強度及びウエルド強度のいずれにも優れたものにすることができる。この数平均分子量は、好ましくは40,000〜200,000である。
上記(a)ブロック共重合体中の重合体ブロックb1の数平均分子量は1,000〜30,000が好ましく、より好ましくは2,000〜25,000で、かつ重合体ブロックb1の1,4−結合量は30モル%未満であることが好ましい。更に、上記ブロック共重合体中の重合体ブロックb2の数平均分子量は10,000〜348,000が好ましく、より好ましくは20,000〜300,000で、かつ重合体ブロックb2の1,4−結合量は30モル%以上であることが好ましく、より好ましくは35モル%〜95モル%、更に好ましくは40モル%〜80モル%である。
[(b)成分]
本発明の熱可塑性重合体組成物においては、(b)成分として、α−メチルスチレン単位以外の芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロックA’1個以上と、共役ジエン単位を主体とする重合体ブロックB’1個以上とを有するブロック共重合体の水素添加物が用いられる。
当該(b)成分を構成する重合体ブロックA’は、α−メチルスチレン単位以外の芳香族ビニル化合物単位を主体とする。該重合体ブロックA’を構成するα−メチルスチレン単位以外の芳香族ビニル化合物単位としては、例えばスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、p−プロピルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−シクロヘキシルスチレン、p−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、p−(フェニルブチル)スチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、インデン等に基づく単位を挙げることができ、これらの1種又は2種以上の単位を有することができる。これらの中でもスチレンに基づく単位が好ましい。
当該(b)成分を構成する重合体ブロックB’は、共役ジエン単位を主体とする。該重合体ブロックB’を構成する共役ジエン単位としては、例えばイソプレン、ブタジエン、ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等に基づく単位を挙げることができる。重合体ブロックB’は、これらの共役ジエン化合物に基づく単位の1種のみから構成されていても又は2種以上から構成されていてもよく、中でもブタジエン、イソプレン、又はブタジエンとイソプレンの混合物に基づく単位から構成されているのが好ましい。重合体ブロックB’が2種以上の共役ジエン化合物に基づく構造単位を有している場合は、それらの結合形態はランダム、ブロック、テーパード状、又はそれらの2種以上の組み合わせからなっていることができる。
また、(b)ブロック共重合体において、重合体ブロックB’は、耐候性、耐熱性等の観点から重合体ブロックB’中の炭素−炭素二重結合の一部又は全部が水素添加(水添)されていることが必要である。その際の重合体ブロックB’の水添率は60モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることが更に好ましい。
(b)ブロック共重合体における重合体ブロックB’の水素添加率は、重合体ブロックB’中の炭素−炭素二重結合の含有量を、ヨウ素価測定法、赤外分光法、核磁気共鳴法等によって測定し、該測定値から求めることができる。
重合体ブロックB’の構成ブロックとなり得る上記したポリブタジエンブロックでは、その水素添加前には、そのブタジエン単位の70〜10モル%、特に65〜20モル%が2−ブテン−1,4−ジイル基(−CH2−CH=CH−CH2−;1,4−結合ブタジエン単位)であり、30〜90モル%、特に35〜80モル%がビニルエチレン基[−CH(CH=CH)−CH2−;1,2−結合ブタジエン単位]であることが好ましい。ポリブタジエンブロックにおける1,4−結合量が上記した70〜10モル%の範囲内であると、ゴム弾性が良好になる。
重合体ブロックA’をA’、重合体ブロックB’をB’で表すと、(b)ブロック共重合体は、A’−B’で表されるジブロック共重合体、A’−B’−A’、B’−A’−B’で表されるトリブロック共重合体、A’−B’−A’−B’、A’−B’−A’−B’−A’、(A’−B’)p(pは3以上の整数を示す)、(A’−B’)q−A’(qは2以上の整数を示す)、(B’−A’)r−B’(rは2以上の整数を示す)、(A’−B’)n−X(nは3以上の整数、Xはカップリング剤残基を示す)等で表される種々のマルチブロック共重合体の水素添加物等であり、それらのいずれであってもよい。その中でも、(b)ブロック共重合体は、特にA’−B’−A’で表されるトリブロック共重合体の水素添加物であることが、物性改善の効果が高く、得られる熱可塑性重合体組成物の耐熱性がより優れたものとなることから好ましい。
また、このブロック共重合体の水素添加物は、重合体ブロックA’の数平均分子量が2,500〜75,000、好ましくは5,000〜50,000の範囲内にあり、重合体ブロックB’の数平均分子量が10,000〜450,000、好ましくは30,000〜350,000の範囲内にあることが望ましい。
<重合>
(b)ブロック共重合体の製造方法はなんら限定されず、例えばアニオン重合やカチオン重合等のイオン重合法、ラジカル重合法等の公知の重合方法を行うことによって製造することができる。例えばアニオン重合法による場合、アルキルリチウム化合物等を開始剤として、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の重合反応に不活性な有機溶媒中で、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物を逐次重合させてブロック共重合体を形成する。
上記で得られたブロック共重合体の水素添加反応は、例えば、該ブロック共重合体をシクロヘキサン等の飽和炭化水素系溶媒中で、ラネーニッケル;Pt、Pd、Ru、Rh、Ni等の金属をカーボン、アルミナ、硅藻土等の担体に担持させた不均一触媒;ニッケル、コバルト等の第8〜10族の金属からなる有機金属化合物とトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物又は有機リチウム化合物等の組み合わせからなるチーグラー系の触媒;チタン、ジルコニウム、ハフニウム等の遷移金属のビス(シクロペンタジエニル)化合物とリチウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、亜鉛又はマグネシウム等の有機金属化合物の組み合わせからなるメタロセン系触媒等の水素添加触媒の存在下で、通常、反応温度として20〜100℃の範囲で、水素圧力0.1〜10MPaの範囲の条件下で行うことができ、該ブロック共重合体の水素添加物を得ることができる。
0.01≦W(a)/[W(a)+W(b)]≦0.6 (1)
[式中、W(a)及びW(b)は、それぞれ当該組成物における(a)成分及び(b)成分の含有量(質量基準)を示す。]
このW(a)/[W(a)+W(b)]の値が上記範囲にあれば、得られる当該組成物は、流動性(成形加工性)、引張り破断強度及びウエルド強度のいずれにも優れたものにすることができる。W(a)/[W(a)+W(b)]の値は、0.02〜0.5の範囲にあることがより好ましい。
[(c)ゴム用軟化剤]
本組成物においては、柔軟性付与効果をもたらすために、必要に応じて、(c)成分としてゴム用軟化剤を含有させることができる。このゴム用軟化剤としては、柔軟性付与効果の観点から、非芳香族系のものが好ましく、従来公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
非芳香族系ゴム用軟化剤としては、例えばパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、ホワイトオイル、ミネラルオイル、エチレンとα−オレフィンのオリゴマー、パラフィンワックス、流動パラフィン、ポリブテン、低分子量ポリブタジエン、低分子量ポリイソプレン、低分子量スチレン−ブタジエンブロック共重合体、低分子量スチレン−イソプレンブロック共重合体、水素添加低分子量ポリブタジエン、水素添加低分子量ポリイソプレン、水素添加低分子量スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素添加低分子量スチレン−イソプレンブロック共重合体等が挙げられる。これらの中でもパラフィン系プロセスオイルが好ましい。パラフィン系プロセスオイルとしては、例えば出光興産(株)が上市してる商品名「ダイアナプロセスオイル」シリーズ等が挙げられる。
前記ゴム用軟化剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、本組成物におけるゴム用軟化剤の含有量は、前述した(a)成分と(b)成分との合計量100質量部に対して、50〜300質量部の範囲であることが好ましく、70〜200質量部の範囲であることがより好ましい。この含有量が50質量部未満では、柔軟性付与効果が充分に発揮されず、一方300質量部を超えると、ブリードが生じたり、高温下での良好な圧縮永久歪みが得られない場合がある。
本組成物においては、成形加工性を改良する目的で、必要に応じて、(d)成分としてオレフィン系重合体を含有させることができる。
このオレフィン系重合体としては、例えばホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、これらの無水マレイン酸変性物等のポリプロピレン系樹脂;高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレン(LDPE)のようなエチレン単独重合体;エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−ヘプテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−ノネン共重合体及びエチレン・1−デセン共重合体等のようなエチレン・α−オレフィン共重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、これらの無水マレイン酸変性物等が挙げられる。
オレフィン系重合体は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本組成物におけるオレフィン系重合体の含有量は、前述した(a)成分と(b)成分との合計量100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましい。この含有量が100質量部を超えると、当該組成物の柔軟性が損なわれる場合がある。また、成形加工性の改良効果の観点からは、該含有量は5質量部以上であることが好ましい。該含有量は80質量部以下であることがより好ましい。
本発明の熱可塑性重合体組成物においては、前記の(c)成分や(d)成分以外の任意成分として、必要に応じ、当該組成物の特性を損なわない範囲で、他の重合体、無機充填材、架橋剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑材、着色剤、抗菌剤、難燃剤、発泡剤等を適宜含有させることができる。
(他の重合体)
前記他の重合体としては、例えばポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミド6・10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6・12、ポリヘキサメチレンジアミンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンジアミンイソフタルアミド、キシレン基含有ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリアクリル酸メチルやポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂;ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂;スチレン単独重合体、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂等のスチレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;エチレン・プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合ゴム(EPDM);スチレン・ブタジエン共重合体ゴム、スチレン・イソプレン共重合体ゴム又はその水素添加物又はその変性物;天然ゴム;合成イソプレンゴム、液状ポリイソプレンゴム及びその水素添加物又は変性物;クロロプレンゴム;アクリルゴム;ブチルゴム;アクリロニトリル・ブタジエンゴム;エピクロロヒドリンゴム;シリコーンゴム;フッ素ゴム;クロロスルホン化ポリエチレン;ウレタンゴム;ポリウレタン系エラストマー;ポリアミド系エラストマー;ポリエステル系エラストマー;軟質塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
なお、他の重合体を含有させる場合、その含有量は、得られる熱可塑性重合体組成物の力学的特性が損なわれない範囲が好ましく、(a)成分と(b)成分との合計量100質量部に対して200質量部以下であるのが好ましい。
無機充填材としては、例えば炭酸カルシウム、タルク、クレー、合成珪素、酸化チタン、カーボンブラック、硫酸バリウム、マイカ、ガラス繊維、ウィスカー、炭素繊維、炭酸マグネシウム、ガラス粉末、金属粉末、カオリン、グラファイト、二硫化モリブデン、酸化亜鉛等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を含有することができる。無機充填材を含有する場合、その含有量は、本発明の目的が損なわれない範囲であるのが好ましく、一般的には、(a)成分と(b)成分との合計量100質量部に対して50質量部以下であるのが好ましい。
(架橋剤)
本組成物は、必要に応じて架橋剤を含有させ、架橋して使用することもできる。
架橋剤としては、例えばジクミルペルオキシド、ジt−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド等の有機過酸化物等が挙げられる。その際に架橋助剤を併用してもよい。
本発明の熱可塑性重合体組成物を調製する方法としては、通常の熱可塑性樹脂組成物や熱可塑性エラストマー組成物の調製に用いられている方法を採用することができる。具体的には単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、加熱ロール、各種ニーダー等の溶融混練機を用い、前述した(a)成分と(b)成分、及び必要に応じて用いられる(c)成分のゴム用軟化剤や(d)成分のオレフィン系重合体、更には各種添加成分からなる混合物を溶融混練することにより、調製することができる。
前記のようにして調製された本組成物は、流動性(成形加工性)、引張り破断強度及びウエルド強度のいずれにも優れており、シート、フィルム、チューブ、中空成形体、型成形体、その他各種成形体に成形し、種々の用途に用いることができる。
成形方法としては、従来公知の方法、例えば押出成形、射出成形、中空成形、圧縮成形、プレス成形、カレンダー成形等の方法を採用することができる。また、二色成形法により、他の部材、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系エラストマー、ABS樹脂、ポリアミド等の高分子部材、金属、木材、布等と複合化することもできる。
(1)破断強度、破断伸度
実施例及び比較例で得られた熱可塑性重合体組成物を230℃で射出成形することによって厚さ2mmのシートを得た。このシートよりJIS K 6251に準拠したダンベル3号型の試験片を打ち抜いて作製し、引張試験を23℃の温度条件及び500mm/minの引張速度条件下で実施して破断強度、破断伸度を測定した。
なお、試験片として、ウエルドのあるものと、ないものを作製し、ウエルドのあるものは、引張り破断強度のみを測定し、ウエルドのないものは、引張り破断強度と引張り破断伸びを測定した。
また、JIS K 7113に準拠したダンベル1号型の金型に、2つのゲートから溶融した熱可塑性重合体組成物を供給して試験片を射出成形し、上記同様に測定した値を、ウエルド部有りの力学強度の指標とした。
(2)硬度
実施例及び比較例で得られた熱可塑性重合体組成物を230℃で射出成形することによって厚さ2mmのシートを得た。このシートを用いて、JIS K 6253に準拠してJIS−A硬度を測定し、柔軟性の指標とした。
(3)MFR
実施例及び比較例で得られた熱可塑性重合体組成物を用いて、JIS K 7210に準拠して200℃もしくは230℃、21N荷重条件でのMFR(g/10分)を測定し、流動特性の指標とした。
カラム:商品名:TSKgel G4000H xl、東ソー株式会社製(カラム温度:40℃)
移動相:テトラヒドロフラン(流速:1ml/min)
検出器:示差屈折計(なお、多波長検出器(検出波長:254nm)をさらに連結させた。)
標準物質:TSK標準ポリスチレン 東ソー株式会社製
試料濃度:0.06質量%
製造例1((a)ブロック共重合体水素添加物-Iの製造)
窒素置換した攪拌装置付き耐圧容器に、α−メチルスチレン90.9g、シクロヘキサン138g、メチルシクロヘキサン15.2g及びテトラヒドロフラン3.1gを仕込んだ。この混合液にsec−ブチルリチウム(1.3Mシクロヘキサン溶液)9.4mlを添加し、−10℃で3時間重合させた。重合開始3時間後のポリα−メチルスチレン(重合体ブロックA)の数平均分子量をGPCにより測定したところ、ポリスチレン換算で6,600であり、α−メチルスチレンの重合転化率は89%であった。
次いで、この反応混合液にブタジエン23gを添加し、−10℃で30分間攪拌して、ブロックb1の重合を行った後、シクロヘキサン930gを加えた。この時点でのα−メチルスチレンの重合転化率は89%であり、ポリブタジエンブロック(b1)の数平均分子量(GPC測定、ポリスチレン換算)は3,700であり、1H−NMR測定から求めた1,4−結合量は19モル%であった。
次に、この反応液にさらにブタジエン141.3gを加え、50℃で2時間重合反応を行った。この時点のサンプリングで得られたブロック共重合体(構造:A−b1−b2)のポリブタジエンブロック(b2)の数平均分子量(GPC測定、ポリスチレン換算)は29,800であり、1H−NMR測定から求めた1,4−結合量は60モル%であった。
製造例1において、テトラヒドロフランを5.7g、sec−ブチルリチウム(1.3Mシクロヘキサン溶液)2.1ml、ブタジエンの総使用量を162.4g、ジクロロジメチルシラン(0.5Mトルエン溶液)2.7mlに変えて製造例1と同様にして反応を行い、ブロック共重合体を得た。
性状は以下のとおり、ポリα−メチルスチレン(重合体ブロックA)の数平均分子量30,000、重合転化率は89%、ポリブタジエンブロック(b1)の数平均分子量は4,000であり、1H−NMR測定から求めた1,4−結合量は17モル%、ブロック共重合体(構造:A−b1−b2)のポリブタジエンブロック(b2)の数平均分子量は129,000であり、1H−NMR測定から求めた1,4−結合量は53モル%であった。カップリング効率、92質量%であった1H-NMR解析の結果、ブロックの含有量は33質量%であり、ポリブタジエンブロック(重合体ブロックB)全体の1,4−結合量は51モル%であった。Mt(ピークトップ分子量)=326,000、Mn(数平均分子量)=320,000、Mw(重量平均分子量)=327,000、Mw/Mn=1.02、GPCにおけるUV(254nm)吸収の面積比から、カップリング体は92質量%。1H-NMR測定により、ポリブタジエンブロック(重合体ブロックB)の水素添加率は99モル%であった。
製造例1において、sec−ブチルリチウム(1.3Mシクロヘキサン溶液)5.7ml、ブタジエンの総使用量を80.9g、ジクロロジメチルシラン(0.5Mトルエン溶液)7.4mlに変えて参考例1と同様にして反応を行い、ブロック共重合体を得た。
性状は以下のとおり、ポリα−メチルスチレン(重合体ブロックA)の数平均分子量11,000、重合転化率は89%、ポリブタジエンブロック(b1)の数平均分子量は3,700であり、1H−NMR測定から求めた1,4−結合量は19モル%、ブロック共重合体(構造:A−b1−b2)のポリブタジエンブロック(b2)の数平均分子量は29,800であり、1H−NMR測定から求めた1,4−結合量は60モル%であった。。カップリング効率、94質量%であった1H-NMR解析の結果、ブロックの含有量は50質量%であり、ポリブタジエンブロック(重合体ブロックB)全体の1,4−結合量は55モル%であった。Mt(ピークトップ分子量)=80,000、Mn(数平均分子量)=78,600、Mw(重量平均分子量)=79,400、Mw/Mn=1.02、GPCにおけるUV(254nm)吸収の面積比から、カップリング体は94質量%。1H-NMR測定により、ポリブタジエンブロック(重合体ブロックB)の水素添加率は99モル%であった。
窒素置換した攪拌装置付き耐圧容器に、スチレン81g及びシクロヘキサン1,100gを仕込んだ。この溶液に、sec−ブチルリチウム(1.3M、シクロヘキサン溶液)2.4mlを加え、50℃で1時間重合させた。次いで、この反応混合物にイソプレン/ブタジエン=50/50(質量比)を189gを加え、50℃で1時間重合を行った。その後、この反応混合物にさらにジクロロジメチルシラン(0.5M、トルエン溶液)3.1mlを加えて50℃で1時間攪拌することにより、ポリスチレン−ポリイソプレン/ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体を含む反応混合液を得た。この反応混合物にオクチル酸ニッケル/トリエチルアルミニウムからなる水素添加触媒を添加して、水素圧力0.8MPaで、80℃で5時間の水素添加反応を行い、ポリスチレン−ポリイソプレン/ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(数平均分子量290,000)を得た。
製造例4において、sec−ブチルリチウム(1.3M、シクロヘキサン溶液)7.6ml、ジクロロジメチルシラン(0.5M、トルエン溶液)9.9ml)に変えて、製造例4と同様にして反応を行い、ブロック共重合体を得た(数平均分子量92,000)。
製造例6((b)ブロック共重合体水素添加物-IIIの製造)
製造例4においてテトラヒドロフラン3.1g、sec−ブチルリチウム(1.3M、シクロヘキサン溶液)9.4ml、イソプレン/ブタジエンの変わりにブタジエン164.3g、ジクロロジメチルシラン(0.5M、トルエン溶液)12.2mlに変えて製造例4と同様にして反応を行い、ブロック共重合体を得た(数平均分子量85,000)。
表2及び表3に示す各成分を下記の表2及び表3に示す配合にしたがって、ヘンシェルミキサーを使用して予め一括して混合し、二軸押出機(東芝機械株式会社製、TEM−35B)に供給して230℃で混練した後、ストランド状に押出し、切断して、ペレット状の熱可塑性重合体組成物を調製した。得られた熱可塑性重合体組成物のMFRを測定し、測定結果を表2及び表3に示した。次に得られた熱可塑性重合体組成物から、射出成形機(東芝機械株式会社製、IS−55EPN)を使用して、シリンダー温度230℃、金型温度40℃の条件下で所定の成形体を作製し、引張破断強度、硬度、比重を上記した方法で測定した。結果を表2及び3に示す。
一方、後者の高硬度タイプのものは、MFRが大きく、流動性に優れており、また、ウエルドがあるものについては、引張り破断強度が高い。
Claims (6)
- (a)α−メチルスチレン単位を主体とする重合体ブロックAと、共役ジエン単位を主体とする重合体ブロックBとを有するブロック共重合体の水素添加物、及び(b)α−メチルスチレン単位以外の芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロックA’と、共役ジエン単位を主体とする重合体ブロックB’とを有するブロック共重合体の水素添加物、を含む熱可塑性重合体組成物であって、
前記(a)ブロック共重合体の水素添加物の数平均分子量が30,000〜350,000であり、かつ(b)ブロック共重合体の水素添加物の数平均分子量が100,000〜500,000であることを特徴とする熱可塑性重合体組成物。 - (a)ブロック共重合体の水素添加物が、数平均分子量1,000〜50,000の重合体ブロックA、及び数平均分子量が1,000〜30,000の重合体ブロックであって、該ブロックを構成する共役ジエン単位の1,4−結合量が30モル%未満である重合体ブロックb1と、数平均分子量が10,000〜348,000の重合体ブロックであって、該ブロックを構成する共役ジエン単位の1,4−結合量が30モル%以上である重合体ブロックb2とを含む重合体ブロックBを有し、(A−b1−b2)構造を含むα−メチルスチレン系ブロック共重合体の水素添加物の中から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の熱可塑性重合体組成物。
- (a)ブロック共重合体の水素添加物の数平均分子量が40,000〜200,000であり、かつ(b)ブロック共重合体の水素添加物の数平均分子量が200,000〜500,000である、請求項1又は2に記載の熱可塑性重合体組成物。
- (a)ブロック共重合体の水素添加物と、(b)ブロック共重合体の水素添加物とを、下記式(1)を満足する割合で含む、請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性重合体組成物。
0.01≦W(a)/[W(a)+W(b)]≦0.6 (1)
[式中、W(a)及びW(b)は、それぞれ当該組成物における(a)成分及び(b)成分の含有量(質量基準)を示す。] - 更に、(c)ゴム用軟化剤を含み、(c)ゴム用軟化剤の含有量が、(a)成分と(b)成分との合計量100質量部に対して、50〜300質量部である、請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性重合体組成物。
- 更に、(d)オレフィン系重合体を含み、(d)オレフィン系重合体の含有量が、(a)成分と(b)成分との合計量100質量部に対して、100質量部以下である請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性重合体組成物。
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