JP2011105856A - 熱可塑性重合体組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】柔軟性、流動性(成形加工性)、透明性および耐熱性に優れる熱可塑性重合体組成物を提供すること。
【解決方法】主としてα−メチルスチレン単位からなる重合体ブロックAと主として共役ジエン単位からなる重合体ブロックBとを有する数平均分子量30,000〜500,000のα−メチルスチレン系ブロック共重合体および/またはその水素添加物(a)、およびα−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂(b)を含有する熱可塑性重合体組成物。
【選択図】なし
【解決方法】主としてα−メチルスチレン単位からなる重合体ブロックAと主として共役ジエン単位からなる重合体ブロックBとを有する数平均分子量30,000〜500,000のα−メチルスチレン系ブロック共重合体および/またはその水素添加物(a)、およびα−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂(b)を含有する熱可塑性重合体組成物。
【選択図】なし
Description
本発明は、熱可塑性重合体組成物に関し、詳しくは、柔軟性、流動性(成形加工性)、透明性および耐熱性に優れる熱可塑性重合体組成物に関するものである。
α−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂は、透明性、延伸性、ヒートシール性、耐油性、弾力性、耐屈曲性、強靭性、機械的強度、塗装性、接着性、成形性などに優れ、各種包装材料、自動車部品、スキー靴などに利用されている。しかし、比較的融点が低いことから耐熱性に劣り、また硬度が高いという欠点を有している。上記問題の改良方法として、種々の検討がなされており、以下の1)から5)の組成物が提案されている。
1)軟質アイオノマー樹脂、すなわちオレフィン系化合物、不飽和モノカルボン酸およびアクリル酸エステルなどの不飽和モノマーからなる3元共重合体の塩を配合する方法(特許文献1参照)
2)特定のエチレン−アクリル酸エチル共重合体のケン化物を配合する方法(特許文献2参照)
3)芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水添物およびエチレンとα,β−エチレン型不飽和カルボン酸からなる共重合体を配合する方法(特許文献3参照)
4)無水マレイン酸等によって変性された熱可塑性エラストマーを配合する方法(特許文献4参照)
5)分子末端に水酸基を有する芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体またはその水添物を配合する方法(特許文献5参照)
1)軟質アイオノマー樹脂、すなわちオレフィン系化合物、不飽和モノカルボン酸およびアクリル酸エステルなどの不飽和モノマーからなる3元共重合体の塩を配合する方法(特許文献1参照)
2)特定のエチレン−アクリル酸エチル共重合体のケン化物を配合する方法(特許文献2参照)
3)芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水添物およびエチレンとα,β−エチレン型不飽和カルボン酸からなる共重合体を配合する方法(特許文献3参照)
4)無水マレイン酸等によって変性された熱可塑性エラストマーを配合する方法(特許文献4参照)
5)分子末端に水酸基を有する芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体またはその水添物を配合する方法(特許文献5参照)
しかしながら、上記特許文献1および2に記載された組成物からなる成形体は、柔軟性において十分に満足できるものではない。また、上記3に記載された樹脂組成物は柔軟性に優れた成形体を与えるが、靭性、力学的強度、耐摩耗性、耐油性に劣り、満足の行く成形体が得られない。また、上記4に記載された無水マレイン酸によって変性された熱可塑性エラストマーを用いる樹脂組成物では、ゲル化や着色の問題を有している。さらに、上記5における分子末端に水酸基を有する芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体を用いる樹脂組成物では、柔軟性に優れた成形体を与えるが、耐熱性においては記載されておらず、十分満足いくものではない。
本発明の目的は、柔軟性、流動性(成形加工性)、透明性、耐熱性に優れる熱可塑性重合体組成物を提供することにある。
すなわち、本発明は、主としてα−メチルスチレン単位からなる重合体ブロックAと主として共役ジエン単位からなる重合体ブロックBと有する数平均分子量30,000〜500,000のα−メチルスチレン系ブロック共重合体および/またはその水素添加物(a)(以下、単にブロック共重合体(a)と略称する)、およびα−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂(b)(以下、単にアイオノマー樹脂(b)と略称する)を含有する熱可塑性重合体組成物を提供する。
本発明の、好適な実施態様は、前記ブロック共重合体および/またはその水素添加物(a)と前記アイオノマー樹脂(b)との組成比が、(a)/(b)=1/99〜99/1(質量比)であることを特徴とする上記した熱可塑性重合体組成物を包含する。
本発明の好適な実施態様は、ブロック共重合体(a)が、数平均分子量1,000〜50,000の重合体ブロックA、および数平均分子量が1,000〜30,000の重合体ブロックであって、該ブロックを構成する共役ジエン単位の1,4−結合量が30モル%未満であるブロックb1と、数平均分子量が10,000〜400,000の重合体ブロックであって、該ブロックを構成する共役ジエン単位の1,4−結合量が30モル%以上であるブロックb2とを含む重合体ブロックBを有し、(A−b1−b2)構造を含むα−メチルスチレン系ブロック共重合体並びにその水素添加物から選ばれる少なくとも1種である熱可塑性重合体組成物である。
本発明の熱可塑性重合体組成物は、柔軟性、流動性(成形加工性)、透明性、および耐熱性に優れる。従って、本発明の熱可塑性重合体組成物からは、優れた柔軟性、透明性および耐熱性を示す成形品が得られる。
本発明の熱可塑性重合体組成物の成分の一つであるブロック共重合体(a)は、主としてα−メチルスチレン単位からなる重合体ブロックAと主として共役ジエン単位からなる重合体ブロックBとを有するα−メチルスチレン系ブロック共重合体およびその水素添加物から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体である。なお上記水素添加物において上記重合体ブロックAおよび重合体ブロックBはそれぞれ水素添加されうるが、本明細書においては特に区別しない限り、水素添加されていない重合体ブロックAおよび水素添加された重合体ブロックAを単に「重合体ブロックA」と総称し、水素添加されていない重合体ブロックBおよび水素添加された重合体ブロックBを単に「重合体ブロックB」と総称するものとし、これらの重合体ブロックを構成する後述する構造単位は水素添加された構造単位も包含するものとする。
主としてα−メチルスチレン単位からなる重合体ブロックAと主として共役ジエン単位からなる重合体ブロックBとを有するα−メチルスチレン系ブロック共重合体の数平均分子量は、柔軟性、流動性(成形加工性)、透明性および、耐熱性の観点から、30,000〜500,000の範囲であることが重要であり、35,000〜480,000であることが好ましく、40,000〜440,000であることがより好ましい。また、上記水素添加物の数平均分子量は、α−メチルスチレン系ブロック共重合体の分子構造や水素添加率にもよるが、30,000〜500,000の範囲であることが好ましく、35,000〜480,000であることがより好ましく、40,000〜440,000であることがさらに好ましい。従って、これらのブロック共重合体の少なくとも1種から構成されるブロック共重合体(a)の数平均分子量も、30,000〜500,000である。ブロック共重合体(a)の数平均分子量が30,000未満である場合には、得られる熱可塑性重合体組成物の柔軟性、耐熱性が低下し、一方、500,000を超える場合には、得られる熱可塑性重合体組成物の流動性(成形加工性)が低下する。
ブロック共重合体(a)を構成する重合体ブロックAは、主としてα−メチルスチレン単位からなり、α−メチルスチレン単位が主成分であるものであれば特に限定されないが、得られる熱可塑性重合体組成物の柔軟性および力学的特性の観点から、その90質量%以上がα−メチルスチレンに由来する構造単位で構成されているのが好ましく、α−メチルスチレンに由来する構造単位のみで構成されているのがより好ましい。
重合体ブロックAは、本発明の目的および効果の妨げにならない限り、α−メチルスチレン以外の他の不飽和単量体、例えば、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、イソブチレン、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、メタクリル酸メチル、メチルビニルエーテル、N−ビニルカルバゾール、β−ピネン、8,9−p−メンテン、ジペンテン、メチレンノルボルネン、2−メチレンテトラヒドロフランなどに由来する構造単位の1種または2種以上を含有していてもよい。これらのα−メチルスチレン以外の他の不飽和単量体に由来する構造単位は、重合体ブロックAに対する割合として少量、望ましくは10質量%以下の範囲で含まれるのが得られる熱可塑性重合体組成物の柔軟性および力学的特性の観点から好ましい。重合体ブロックAがα−メチルスチレン単位以外の他の構造単位を含有する場合の形態は、ランダム、ブロック、テーパード状のいずれでもよい。
ブロック共重合体(a)の重合体ブロックAの数平均分子量は、特に限定されないが、水素添加前の数平均分子量として、1,000〜50,000の範囲内であるのが好ましく、2,000〜40,000の範囲内であるのがより好ましい。重合体ブロックAの数平均分子量(水素添加前)が1,000未満の場合は、得られる熱可塑性重合体組成物の柔軟性、耐熱性が低下する傾向があり、数平均分子量(水素添加前)が50,000を越える場合は、得られる熱可塑性重合体組成物の流動性(成形加工性)、透明性が低下する傾向がある。なお、本明細書でいう数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の分子量であり、具体的には、後述する実施例に記載する方法を採用することができる。
ブロック共重合体(a)における重合体ブロックAの含有量は、10〜70質量%の範囲内であるのが好ましい。重合体ブロックAの含有量が10質量%未満の場合には、得られる熱可塑性重合体組成物の耐熱性が低下する傾向があり、一方、70質量%を越える場合には、得られる熱可塑性重合体組成物の柔軟性が低下する傾向がある。なお、ブロック共重合体(a)における重合体ブロックAの含有量は、例えば1H−NMRスペクトルなどにより求めることができる。
ブロック共重合体(a)を構成する重合体ブロックBは、主として共役ジエン単位からなり、共役ジエン単位が主成分であるものであれば特に限定されないが、得られる熱可塑性重合体組成物の柔軟性、流動性、透明性の観点から、その90質量%以上が共役ジエンに由来する構造単位で構成されているのが好ましく、共役ジエンに由来する構造単位のみで構成されているのがより好ましい。重合体ブロックBを構成する共役ジエン単位としては、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどに由来する構造単位が挙げられる。これらの共役ジエンは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、重合体ブロックBは、ブタジエン単位、イソプレン単位、またはブタジエン単位とイソプレン単位の両方で構成されているのが好ましい。
重合体ブロックBは、本発明の趣旨を損なわない限り、少量、好ましくは重合体ブロックBに対する割合として10質量%以下の範囲で、共役ジエン以外の他のアニオン重合可能な単量体、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、メタクリル酸メチル、メチルビニルエーテル、N−ビニルカルバゾール、β−ピネン、8,9−p−メンテン、ジペンテン、メチレンノルボルネン、2−メチレンテトラヒドロフランなどに由来する構造単位を含有していてもよい。重合体ブロックBがこれらの構造単位を含有する場合の形態は、ランダム、ブロック、テーパード状のいずれでもよい。
重合体ブロックBの数平均分子量は、特に限定されないが、水素添加前の数平均分子量として、10,000〜500,000の範囲内であるのが好ましく、20,000〜400,000の範囲内であるのがより好ましく、30,000〜300,000の範囲内であるのがさらに好ましい。重合体ブロックBの数平均分子量(水素添加前)が10,000未満の場合には、得られる熱可塑性重合体組成物の耐熱性が低下する傾向があり、数平均分子量(水素添加前)が500,000を越える場合には、得られる熱可塑性重合体組成物の流動性(成形加工性)が低下する傾向がある。
ブロック共重合体(a)における重合体ブロックBは、耐熱性、耐候性の観点から、共役ジエン単位に基づく炭素−炭素二重結合の50モル%以上が水素添加(水添)されているのが好ましく、70モル%以上が水添されているのがより好ましく、90モル%以上が水添されているのがさらに好ましい。なお、上記の水素添加率は、重合体ブロックB中の共役ジエン単位に基づく炭素−炭素二重結合の含有量を、水素添加の前後において、ヨウ素価測定、赤外分光光度計、1H−NMRなどによって測定し、その測定値から求めることができる。
ブロック共重合体(a)において、重合体ブロックAと重合体ブロックBとは、それらが結合している限りは、その結合様式は限定されず、直鎖状、分岐状、放射状またはそれらの2つ以上が組み合わさった結合形式のいずれでもよい。それらのうちでも、重合体ブロックAと重合体ブロックBの結合形式は直鎖状であるのが好ましい。このようなブロック共重合体(a)の例としては重合体ブロックAをAと表し、重合体ブロックBをBと表したとき、A−B−Aで示されるトリブロック共重合体、A−B−A−Bで示されるテトラブロック共重合体、A−B−A−B−Aで示されるペンタブロック共重合体、(A−B)nX型共重合体(Xはカップリング剤残基を表し、nは2以上の整数を表す)などが挙げられる。これらのブロック共重合体は、1種を単独で用いても、2種以上の混合物を用いてもよい。中でも、ブロック共重合体(a)の製造の容易性、柔軟性などの点から、A−B−Aで示されるトリブロック共重合体が好ましく用いられる。
また、ブロック共重合体(a)は、熱可塑性重合体組成物としての特性を広い温度範囲において優れたものとするために、数平均分子量1,000〜50,000の重合体ブロックA、および数平均分子量が1,000〜30,000のブロックであって、該ブロックを構成する共役ジエン単位の1,4−結合量が30モル%未満であるブロックb1と、数平均分子量が10,000〜400,000のブロックであって、該ブロックを構成する共役ジエン単位の1,4−結合量が30モル%以上であるブロックb2とを含む重合体ブロックBを有し、(A−b1−b2)構造を含むα−メチルスチレン系ブロック共重合体並びにその水素添加物から選ばれる少なくとも1種[以下、ブロック共重合体(a’)と称する場合がある]であることが好ましい。ブロック共重合体(a’)としては、A−b1−b2−b2−b1−A型共重合体(分子中にさらにカップリング剤残基を有していてもよい)、A−b1−b2−b2−b1−A型共重合体(分子中にさらにカップリング剤残基を有していてもよい)とA−b1−b2型共重合体(分子中にさらにカップリング剤残基を有していてもよい)の混合物、(A−b1−b2)nX型共重合体(Xはカップリング剤残基を表す、nは2以上の整数である)などが挙げられる。
上記ブロック共重合体(a’)中の重合体ブロックb1の数平均分子量は、好ましくは1,000〜30,000の範囲内、より好ましくは2,000〜25,000の範囲内であり、しかも、重合体ブロックb1を構成する共役ジエン単位の1,4−結合量は、好ましくは、30モル%未満である。また、重合体ブロックb2の数平均分子量は、好ましくは10,000〜400,000の範囲内、より好ましくは20,000〜400,000の範囲内であり、しかも、重合体ブロックb2を構成する共役ジエン単位の1,4−結合量は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは35〜95モル%、さらに好ましくは40〜80モル%である。なお、当該共役ジエン単位には、上記のとおり、水素添加された共役ジエン単位が包含される。
ブロック共重合体(a)は、本発明の趣旨を損なわない限り、分子鎖中または分子末端に、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基などの官能基を1種または2種以上含有していてもよい。また、ブロック共重合体(a)として、前記した官能基を有するブロック共重合体(a)と官能基を有しないブロック共重合体(a)を混合して使用してもよい。
ブロック共重合体(a)は、アニオン重合法によって製造することができ、例えば、以下の<1>〜<4>のいずれかの方法を含む製造方法で製造することができる:
<1>テトラヒドロフランなどの極性溶媒中で1,4−ジリチオ−1,1,4,4−テトラフェニルブタンなどのジアニオン系開始剤を用いて共役ジエンを重合させた後に、低温(例えば−78℃程度の温度下)でα−メチルスチレンを逐次重合させ、ブロック共重合体(例えば、A−B−Aで示されるトリブロック共重合体等)を得る方法(例えば、マクロモレキュールズ(Macromolecules),2巻,453−458頁(1969年)等を参照);
<2>シクロヘキサンなどの非極性溶媒中でα−メチルスチレンをsec−ブチルリチウムなどのアニオン重合系開始剤で重合させた後、共役ジエンを重合させ、その後テトラクロロシラン、ジフェニルジクロロシランなどのカップリング剤(α,α’−ジクロロ−p−キシレン、安息香酸フェニルなどを用いることもできる)を添加してカップリング反応を行い、ブロック共重合体(例えば、(A−B)nX型ブロック共重合体等)を得る方法(例えば、カウチュック グミ クンストストッフェ(Kautsch.Gummi.Kunstst.),37巻,377−379頁(1984年);ポリマー ブリティン(Polym.Bull.),12巻,71−77頁(1984年)等を参照);
<3>非極性溶媒中、有機リチウム化合物を開始剤として用い、極性化合物の存在下、α−メチルスチレンを重合させ、得られるリビングポリマーに共役ジエンを重合させた後、カップリング剤を添加して、ブロック共重合体(例えば、A−B−A型ブロック共重合体等)を得る方法;および
<4>非極性溶媒中、有機リチウム化合物を開始剤として用い、極性化合物の存在下、α−メチルスチレンを重合させ、得られるリビングポリマーに共役ジエンを重合させ、得られる主としてα−メチルスチレン単位からなる重合体ブロックと主として共役ジエン単位からなる重合体ブロックからなるブロック共重合体のリビングポリマーにα−メチルスチレンや共役ジエン以外のアニオン重合性モノマーを重合させブロック共重合体(例えば、A−B−C型ブロック共重合体等;なお、Cは重合体ブロックAおよび重合体ブロックB以外のブロックを表す)を得る方法。
<1>テトラヒドロフランなどの極性溶媒中で1,4−ジリチオ−1,1,4,4−テトラフェニルブタンなどのジアニオン系開始剤を用いて共役ジエンを重合させた後に、低温(例えば−78℃程度の温度下)でα−メチルスチレンを逐次重合させ、ブロック共重合体(例えば、A−B−Aで示されるトリブロック共重合体等)を得る方法(例えば、マクロモレキュールズ(Macromolecules),2巻,453−458頁(1969年)等を参照);
<2>シクロヘキサンなどの非極性溶媒中でα−メチルスチレンをsec−ブチルリチウムなどのアニオン重合系開始剤で重合させた後、共役ジエンを重合させ、その後テトラクロロシラン、ジフェニルジクロロシランなどのカップリング剤(α,α’−ジクロロ−p−キシレン、安息香酸フェニルなどを用いることもできる)を添加してカップリング反応を行い、ブロック共重合体(例えば、(A−B)nX型ブロック共重合体等)を得る方法(例えば、カウチュック グミ クンストストッフェ(Kautsch.Gummi.Kunstst.),37巻,377−379頁(1984年);ポリマー ブリティン(Polym.Bull.),12巻,71−77頁(1984年)等を参照);
<3>非極性溶媒中、有機リチウム化合物を開始剤として用い、極性化合物の存在下、α−メチルスチレンを重合させ、得られるリビングポリマーに共役ジエンを重合させた後、カップリング剤を添加して、ブロック共重合体(例えば、A−B−A型ブロック共重合体等)を得る方法;および
<4>非極性溶媒中、有機リチウム化合物を開始剤として用い、極性化合物の存在下、α−メチルスチレンを重合させ、得られるリビングポリマーに共役ジエンを重合させ、得られる主としてα−メチルスチレン単位からなる重合体ブロックと主として共役ジエン単位からなる重合体ブロックからなるブロック共重合体のリビングポリマーにα−メチルスチレンや共役ジエン以外のアニオン重合性モノマーを重合させブロック共重合体(例えば、A−B−C型ブロック共重合体等;なお、Cは重合体ブロックAおよび重合体ブロックB以外のブロックを表す)を得る方法。
上記方法において、α−メチルスチレンを重合する際には、必要に応じて上記したα−メチルスチレン以外の他の不飽和単量体を共重合させることができる。また、上記方法において、共役ジエンを重合する際には、必要に応じて上記した共役ジエン以外の他のアニオン重合可能な単量体を共重合させることができる。
上記の方法の中でも、重合条件(温度、溶液粘度等)の温和さ、共役ジエン部のミクロ構造(1,4−結合量)の制御の観点から、<3>または<4>の方法が好ましく、<3>の方法がより好ましい。
以下、上記<3>および<4>の方法についてさらに詳細に説明する。
<3>および<4>の方法においては、重合開始剤として有機リチウム化合物が用いられる。かかる有機リチウム化合物としては、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムなどのモノリチウム化合物、およびテトラメチレンジリチウムなどのジリチウム化合物が挙げられる。これらの化合物は1種を単独で用いても、2種以上を混合して使用してもよい。
α−メチルスチレンの重合時に使用される非極性溶媒としては、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を混合して使用してもよい。
α−メチルスチレンの重合時に使用される極性化合物とは、アニオン種と反応する官能基(水酸基、カルボニル基など)を有さず、分子内に酸素原子、窒素原子などを有する化合物であり、例えば、ジエチルエーテル、テトラメチルエチレンジアミン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなどを挙げることができる。これらの化合物は1種を単独で用いても、2種以上を混合して使用してもよい。
反応系中における極性化合物の濃度は、α−メチルスチレンを高い転化率で重合させ、この後の共役ジエンを重合させる際に、主として共役ジエン単位からなる重合体ブロック部における共役ジエン単位の1,4−結合量を制御する観点から、好ましくは0.1〜10質量%の範囲内、より好ましくは0.5〜3質量%の範囲内である。なお、当該極性化合物の濃度は、所期の重合体ブロックを得る観点からブロック共重合体(a)の製造時に非極性溶媒を添加するなどして変化させることができる。
反応系中におけるα−メチルスチレン濃度は、α−メチルスチレンを高い転化率で重合させ、また重合後期における反応溶液の粘度の点から、重合開始時において好ましくは5〜50質量%の範囲内、より好ましくは25〜40質量%の範囲内である。
なお、上記の転化率とは、未重合のα−メチルスチレンが重合により重合体へと転化された割合を意味し、本発明においてその程度は70質量%以上であるのが好ましく、85質量%以上であるのがより好ましい。
α−メチルスチレンの重合時の温度条件は、α−メチルスチレンの天井温度(重合反応が平衡状態に達して実質的に進行しなくなるときの温度)、α−メチルスチレンの重合速度、リビング性などの点から−30〜30℃の範囲内であるのが好ましく、より好ましくは−20〜10℃、さらに好ましくは−15〜0℃である。重合温度を30℃以下とすることにより、α−メチルスチレンを高い転化率で重合させることができ、さらに生成するリビングポリマーが失活する割合も小さく、得られるブロック共重合体中にホモポリα−メチルスチレンが混入するのが抑制され、物性が損なわれにくくなる。また、重合温度を−30℃以上とすることにより、α−メチルスチレンの重合後期において反応溶液が高粘度化することなく撹拌でき、低温状態を維持するのに必要な費用がかさむこともないため、経済的にも好ましい。
上記の方法においては、主としてα−メチルスチレン単位からなる重合体ブロック(重合体ブロックA)の特性が損なわれない限り、α−メチルスチレンの重合時に、重合体ブロックAが有していてもよい他の構造単位を与える先に例示した不飽和単量体を共存させ、これをα−メチルスチレンと共重合させてもよい。該不飽和単量体は1種を単独で用いても、2種以上を使用してもよい。
これまでに説明した有機リチウム化合物を開始剤とするα−メチルスチレンの重合により、リビングポリα−メチルスチリルリチウムが生成する。次いでこのリビングポリマーに共役ジエンを重合させる。共役ジエンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。これらの化合物は1種を単独で用いても、2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でもブタジエンまたはイソプレンが好ましく、これらは混合して用いてもよい。
共役ジエンは、反応系に添加することにより重合に供させることができる。共役ジエンを反応系に添加する方法としては、特に制限はなく、リビングポリα−メチルスチリルリチウム溶液に直接添加しても、非極性溶媒で希釈して添加してもよい。また、共役ジエンを加えた後、非極性溶媒で希釈してもよいし、共役ジエンと非極性溶媒を同時に投入してもよいし、リビングポリα−メチルスチリルリチウム溶液を非極性溶媒で希釈した後に共役ジエンを加えてもよい。好適には、リビングポリα−メチルスチリルリチウムに対して1〜100モル当量、好ましくは5〜50モル当量に相当する量の共役ジエンを添加して、主として共役ジエン単位からなる重合体ブロック(以下、これを重合体ブロックb1’と称することがある)を形成してリビング活性末端を変種した後、非極性溶媒で希釈し、続いて残りの共役ジエンを投入し、30℃を超える温度、好ましくは40〜80℃の温度範囲で重合反応を行い、主として共役ジエン単位からなる重合体ブロックをさらに形成(以下、当該残りの共役ジエンの投入後に形成された重合体ブロックを重合体ブロックb2’と称することがある)させる方法が推奨される。リビングポリα−メチルスチリルリチウムの活性末端を変種するに際し、共役ジエンの代りにスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1−ジフェニルエチレンなどのビニル芳香族化合物を用いてもよい。
上記非極性溶媒としては、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などを挙げることができる。これらの溶媒は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
リビングポリα−メチルスチリルリチウムに共役ジエンを共重合させて得られる、主としてα−メチルスチレン単位からなる重合体ブロックと主として共役ジエン単位からなる重合体ブロックとを有するブロック共重合体のリビングポリマーに、例えば、カップリング剤を反応させることにより、トリブロックまたはラジアルテレブロック型のブロック共重合体(a)を製造することができる。この場合のブロック共重合体は、カップリング剤の使用量を調整することにより得られる、ジブロック、トリブロック、ラジアルテレブロック型のブロック共重合体を任意の割合で含む混合物であってもよい。カップリング剤としては、安息香酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸エチル、酢酸メチル、ピバリン酸メチル、ピバリン酸フェニル、ピバリン酸エチル、α,α’−ジクロロ−o−キシレン、α,α’−ジクロロ−m−キシレン、α,α’−ジクロロ−p−キシレン、ビス(クロロメチル)エーテル、ジブロモメタン、ジヨードメタン、フタル酸ジメチル、ジクロロジメチルシラン、ジクロロジフェニルシラン、トリクロロメチルシラン、テトラクロロシラン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。なお、カップリング剤の使用量は、ブロック共重合体(a)の数平均分子量に応じて適宜調整すればよく、厳密な意味での制限はない。
主としてα−メチルスチレン単位からなる重合体ブロックと主として共役ジエン単位からなる重合体ブロックとを有するブロック共重合体のリビングポリマーに、カップリング剤を反応させることにより得られるトリブロックまたはラジアルテレブロック型のブロック共重合体(a)を水素添加(水添)する場合には、必要に応じてアルコール類、カルボン酸類、水などの活性水素化合物を添加してカップリング反応を停止させた後、後述する公知の方法にしたがって不活性有機溶媒中で水添触媒の存在下に水添することにより、水添されたブロック共重合体(a)を製造することができる。
また、水添されたブロック共重合体(a)は、リビングポリα−メチルスチリルリチウムに共役ジエンを重合させた後、アルコール類、カルボン酸類、水などの活性水素化合物を添加して重合反応を停止させ、後述する公知の方法にしたがって不活性有機溶媒中で水添触媒の存在下に水添することにより製造することもできる。
主としてα−メチルスチレン単位からなる重合体ブロックと主として共役ジエン単位からなる重合体ブロックとを有する未水添のブロック共重合体、または主としてα−メチルスチレン単位からなる重合体ブロックと主として共役ジエン単位からなる重合体ブロックとを有するブロック共重合体のリビングポリマーに、カップリング剤を反応させることにより得られる未水添のトリブロックまたはラジアルテレブロック型ブロック共重合体(いずれも本発明で使用するブロック共重合体(a)に包含される)は、その製造に使用された溶媒を置換することなく、そのまま水素添加に供することができる。
水添反応は、ラネーニッケル;Pt、Pd、Ru、Rh、Ni等の金属をカーボン、アルミナ、珪藻土等の担体に担持させた不均一触媒;遷移金属化合物(オクチル酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトナート、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、コバルトアセチルアセトナート等)と、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物または有機リチウム化合物等との組み合わせからなるチーグラー系触媒;チタン、ジルコニウム、ハフニウム等の遷移金属のビス(シクロペンタジエニル)化合物と、リチウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、亜鉛またはマグネシウム等からなる有機金属化合物との組み合わせからなるメタロセン系触媒などの水添触媒の存在下に、反応温度20〜100℃、水素圧力0.1〜10MPaの条件下で行うことができる。未水添のブロック共重合体(a)は、主として共役ジエン単位からなる重合体ブロック中の炭素−炭素二重結合の50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上が飽和されるまで水添されることが望ましく、これによりブロック共重合体(a)の耐候性を高めることができる。
本発明に用いるブロック共重合体(a)としては、上記した方法で得られたものが好ましく用いられ、特に、非極性溶媒中、有機リチウム化合物を開始剤として用い、0.1〜10質量%の濃度の極性化合物の存在下、−30〜30℃の温度にて5〜50質量%の濃度のα−メチルスチレンを重合させ、次いで共役ジエンの重合に際して、まずリビングポリα−メチルスチリルリチウムに対して1〜100モル当量の共役ジエンを重合させて重合体ブロックb1’を形成し、次いで反応系を30℃を超える温度として、共役ジエンを追加して重合させて重合体ブロックb2’を形成せしめる方法を含む製造方法によって得られたものであることが、熱可塑性重合体組成物としての特性を広い温度範囲において優れたものとするという観点から望ましい。すなわち、この場合、重合体ブロックBは、重合体ブロックb1’および重合体ブロックb2’よりなる。また、当該製造方法により、上記したブロック共重合体(a’)を容易に製造することができ、通常は、重合体ブロックb1’はブロック共重合体(a’)のブロックb1に、重合体ブロックb2’はブロック共重合体(a’)のブロックb2にそれぞれ相当するものとなる。
次に本発明の熱可塑性重合体組成物を構成するもう1つの成分であるアイオノマー樹脂(b)について説明する。アイオノマー樹脂(b)としては、炭素数2〜8のα−オレフィンと不飽和カルボン酸とを必須成分として共重合させ、かつ分子中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンにより中和されたα−オレフィン系共重合体が用いられる。
前記炭素数2〜8のα−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンなどの直鎖状α−オレフィン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテンなどの分岐状α−オレフィンなどが挙げられるが、これらの中でもエチレンが望ましい。これらのα−オレフィンは1種で、あるいは2種以上を組み合わせてもよい。
不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸;、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などのジカルボン酸やそのモノエステルなどが挙げられるが、これらの中でもアクリル酸および、メタクリル酸が望ましい。これらの不飽和カルボン酸は、1種で、あるいは2種以上を組み合わせてもよい。
また前記α−オレフィンと不飽和カルボン酸とともに、共重合可能な他の単量体、例えば、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレートなどのアクリル酸またはメタクリル酸のエステル;、酢酸ビニルやプロピオン酸ビニルなどの飽和カルボン酸のビニルエステル;、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸などの酸無水物;、アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのα,β−不飽和ニトリル;、さらにアクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミドなどを共重合させたものを使用することができる。これらの単量体の中でも、アクリル酸またはメタクリル酸のエステルが好ましい。
このα−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の結合様式については、特に制限はなく、例えば、ランダム型、ブロック型、グラフト型が挙げられ、またこれらを組み合わせてもよい。
アイオノマー樹脂(b)は、前記したα−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体および共重合可能な他の単量体と共重合させて得られた共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部が金属イオンにより中和されていることが必要である。この金属イオンによって中和されたカルボキシル基を構成する金属イオンとしては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどのアルカリ金属イオン;カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属イオン;マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、鉛などの遷移金属イオンなどが挙げられ、これらの金属イオンは1種で、あるいは2種以上を組み合わせてもよい。このような金属イオンにより中和されたカルボキシル基を含有するα−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂は、α−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体に前記金属カチオンを作用させて、イオン架橋することにより製造することができる。α−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂は1種を単独で使用しても、2種以上併用してもよい。
本発明の熱可塑性重合体組成物は、ブロック共重合体(a)および、アイオノマー樹脂(b)の質量比が、(a)/(b)=1/99〜99/1の範囲であることが必要であり、好ましくは(a)/(b)=3/97〜90/10であり、より好ましくは5/95〜80/20であり、さらに好ましくは7/93〜70/30である。上記範囲をはずれた場合には、柔軟性、流動性、成形加工性、透明性および耐熱性のバランスのとれた熱可塑性樹脂組成物を得ることができない。
本発明の熱可塑性重合体組成物のメルトフローレート(MFR)は、成形加工性の観点nから、JIS K 7210に準拠して230℃、21N荷重条件で測定したときに、好ましくは、1g/10分以上、より好ましくは3g/10分以上、さらに好ましくは6g/10分以上である。
本発明の熱可塑性重合体組成物においては、前記ブロック共重合体(a)やアイオノマー樹脂(b)以外の任意成分として、必要に応じ、当該組成物の特性を損なわない範囲で、他の重合体、ゴム用軟化剤、無機充填材、架橋剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑材、着色剤、抗菌剤、難燃剤、発泡剤等を適宜含有させることができる。
他の重合体としては、例えばオレフィン系重合体が挙げられる。かかるオレフィン系重合体としては、例えばホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレン(LDPE)のようなエチレン単独重合体;エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−ヘプテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−ノネン共重合体およびエチレン・1−デセン共重合体等のようなエチレン・α−オレフィン共重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体、これらの変性物等が挙げられる。変性剤の具体例としては、例えば、マレイン酸、シトラコン酸、ハロゲン化マレイン酸、イタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンド−シス−ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等の不飽和ジカルボン酸;不飽和ジカルボン酸のエステル、アミドまたはイミド;無水マレイン酸、無水シトラコン酸、ハロゲン化無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、無水エンド−シス−ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;不飽和モノカルボン酸のエステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等)、アミドまたはイミドなどが挙げられる。
また、他の重合体として、スチレン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。かかるスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、α−メチルスチレン単位以外の芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロック1個以上と、共役ジエン単位を主体とする重合体ブロック1個以上とを有するブロック共重合体および/またはその水添物が挙げられる。α−メチルスチレン単位以外の芳香族ビニル化合物単位としては、例えばスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、p−プロピルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−シクロヘキシルスチレン、p−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、p−(フェニルブチル)スチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、インデン等に基づく単位を挙げることができ、これらの中でもスチレンに基づく単位が好ましい。共役ジエン単位としては、例えばイソプレン、ブタジエン、ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等に基づく単位を挙げることができる。中でもブタジエン、イソプレン、またはブタジエンとイソプレンの混合物に基づく単位から構成されているのが好ましい。上記したブロック共重合体および/またはその水添物は、官能基で変性されたブロック共重合体でもよい。かかる官能基で変性されたブロック共重合体は、ブロック共重合体にカルボキシル基、酸無水物基、ヒドロキシル基、エポキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、イソシアネート基、スルホニル基およびスルホネート基の群から選ばれた少なくとも1種の官能基を含有してなるものである。官能基で変性されたブロック共重合体の製造法としては、公知の方法が特に制限なく利用でき、例えば次のようなアニオン重合法を挙げることができる。すなわち、アルキルリチウム化合物などを開始剤として不活性有機溶媒中で、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物を逐次重合させ、所望の分子構造および分子量に到達した時点でエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド等を付加させ、次いでアルコール類、カルボン酸類、水等の活性水素含有化合物を添加して重合を停止し、末端に水酸基を付加する方法や、押出し機などを用いて過酸化物存在下で無水マレイン酸、グリシジルメタクリレートや2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のメタクリレート化合物、アクリレート化合物等を付加する方法などを挙げることができる。ブロック共重合体に官能基を付加する単量体の好ましい例としては、前記したエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドに加えて、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、ヒドロキシエチレンメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどが挙げられる。また、前記したスチレン系熱可塑性エラストマーとウレタン系熱可塑性エラストマーからなるブロック共重合体なども挙げられる。
さらに、他の重合体として、オレフィン系熱可塑性エラストマー、架橋型熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー、シリコーン系熱可塑性エラストマー等などの熱可塑性エラストマー;ノルボルネン、シクロペンテンなどの環状オレフィンを重合して得られる環状オレフィン系ポリマー、さらにエチレンを共重合した環状オレフィン系コポリマー;
硬質、軟質塩化ビニル樹脂;ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミド6・10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6・12、ポリヘキサメチレンジアミンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンジアミンイソフタルアミド、キシレン基含有ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;液晶ポリマー;ポリアクリル酸メチルやポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂;ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂;スチレン単独重合体、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン樹脂、スチレン・メチルメタクリレート樹脂、スチレン・ブタジエン・メチルメタクリレート樹脂、スチレン・無水マレイン酸樹脂等のスチレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;エチレン・プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合ゴム(EPDM);スチレン・ブタジエン共重合体ゴム、スチレン・イソプレン共重合体ゴムまたはその水素添加物またはその変性物;天然ゴム;合成イソプレンゴム、液状ポリイソプレンゴムおよびその水素添加物または変性物;クロロプレンゴム;アクリルゴム;ブチルゴム;アクリロニトリル・ブタジエンゴム;エピクロロヒドリンゴム;シリコーンゴム;フッ素ゴム;クロロスルホン化ポリエチレン;ウレタンゴムなどが挙げられる。
硬質、軟質塩化ビニル樹脂;ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミド6・10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6・12、ポリヘキサメチレンジアミンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンジアミンイソフタルアミド、キシレン基含有ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;液晶ポリマー;ポリアクリル酸メチルやポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂;ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂;スチレン単独重合体、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン樹脂、スチレン・メチルメタクリレート樹脂、スチレン・ブタジエン・メチルメタクリレート樹脂、スチレン・無水マレイン酸樹脂等のスチレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;エチレン・プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合ゴム(EPDM);スチレン・ブタジエン共重合体ゴム、スチレン・イソプレン共重合体ゴムまたはその水素添加物またはその変性物;天然ゴム;合成イソプレンゴム、液状ポリイソプレンゴムおよびその水素添加物または変性物;クロロプレンゴム;アクリルゴム;ブチルゴム;アクリロニトリル・ブタジエンゴム;エピクロロヒドリンゴム;シリコーンゴム;フッ素ゴム;クロロスルホン化ポリエチレン;ウレタンゴムなどが挙げられる。
ゴム用軟化剤としては、例えばプロセスオイル、植物油脂、またはこれらの混合物などが挙げられる。プロセスオイルとしては、非芳香族系ゴム用軟化剤として、例えばパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、ホワイトオイル、ミネラルオイル、エチレンとα−オレフィンのオリゴマー、パラフィンワックス、流動パラフィン、ポリブテン、低分子量ポリブタジエン、低分子量ポリイソプレン、低分子量スチレン−ブタジエンブロック共重合体、低分子量スチレン−イソプレンブロック共重合体、水素添加低分子量ポリブタジエン、水素添加低分子量ポリイソプレン、水素添加低分子量スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素添加低分子量スチレン−イソプレンブロック共重合体等が挙げられる。また、芳香族系プロセスオイルなども挙げられる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、サフラワー油、桐油などが挙げられる。
無機充填材としては、例えば炭酸カルシウム、タルク、クレー、合成珪素、酸化チタン、カーボンブラック、硫酸バリウム、マイカ、ガラス繊維、ウィスカー、炭素繊維、炭酸マグネシウム、ガラス粉末、金属粉末、カオリン、グラファイト、二硫化モリブデン、酸化亜鉛等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を含有することができる。
架橋剤としては、例えばジクミルペルオキシド、ジt−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド等の有機過酸化物等が挙げられる。その際に架橋助剤を併用してもよい。
[熱可塑性重合体組成物の調製]
本発明の熱可塑性重合体組成物を調製する方法としては、通常の熱可塑性樹脂組成物や熱可塑性エラストマー組成物の調製に用いられている方法を採用することができる。具体的には単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、加熱ロール、各種ニーダー等の溶融混練機を用い、ブロック共重合体(a)とアイオノマー樹脂(b)、および必要に応じて他の重合体、更には各種添加成分からなる混合物を溶融混練することにより、調製することができる。このようにして得られる本発明の熱可塑性重合体組成物は、柔軟性、流動性(成形加工性)、透明性、耐熱性に優れており、シート、フィルム、チューブ、中空成形体、型成形体、その他各種成形体に成形し、種々の用途に用いることができる。
成形方法としては、従来公知の方法、例えば押出成形、射出成形、中空成形、圧縮成形、プレス成形、カレンダー成形等の方法を採用することができる。また、二色成形法により、他の部材、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系エラストマー、ABS樹脂、ポリアミド等の高分子部材、金属、木材、布等と複合化することもできる。
本発明の熱可塑性重合体組成物を調製する方法としては、通常の熱可塑性樹脂組成物や熱可塑性エラストマー組成物の調製に用いられている方法を採用することができる。具体的には単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、加熱ロール、各種ニーダー等の溶融混練機を用い、ブロック共重合体(a)とアイオノマー樹脂(b)、および必要に応じて他の重合体、更には各種添加成分からなる混合物を溶融混練することにより、調製することができる。このようにして得られる本発明の熱可塑性重合体組成物は、柔軟性、流動性(成形加工性)、透明性、耐熱性に優れており、シート、フィルム、チューブ、中空成形体、型成形体、その他各種成形体に成形し、種々の用途に用いることができる。
成形方法としては、従来公知の方法、例えば押出成形、射出成形、中空成形、圧縮成形、プレス成形、カレンダー成形等の方法を採用することができる。また、二色成形法により、他の部材、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系エラストマー、ABS樹脂、ポリアミド等の高分子部材、金属、木材、布等と複合化することもできる。
得られた成形体は、その特性を活かして、例えば、インストルメントパネル、ラック&オピニオンブーツ、サスペンションブーツ、等速ジョイントブーツ、バンパー、サイドモール、ウェザーストリップ、マットガード、エンブレム、レザーシート、フロアーマット、アームレスト、エアバッグカバー、ステアリングホイール被覆、ベルトラインモール、フラッシュマウント、ギア類、ノブ類等の自動車内外装材部品;耐圧ホース、消防ホース、塗装用ホース、洗濯機ホース、燃料チューブ、油・空圧チューブ、透析用チューブ等のホース、チューブ;各種製品(例えば、はさみ、ドライバー、歯ブラシ、ペン、カメラなど)用のグリップ材;冷蔵庫ガスケット、掃除機バンパー、携帯電話保護フィルム、防水ボディー等の家電部品;コピー機送りローラー、巻き取りローラー等の事務機部品;ソファー、チェア−シート等の家具;スイッチカバー、キャスター、ストッパー、足ゴム等の部品;被覆鋼板、被覆合板等の建材;水中眼鏡、スノーケル、スキーストック、スキーブーツ、スノーボードブーツ、スキー板・スノーボード表皮材等のスポーツ用品;シリンジガスケット、ローリングチューブ等の医療用品;コンベアーベルト、電動ベルト、ペレタイザーロール等の工業資材;紙おむつ、ハップ剤、包帯等の衛生材料の伸縮部材;ヘアーバンド、リストバンド、時計バンド、眼鏡バンドなどのバンド用途;床材、スノーチェーン、電線被覆材、トレイ、フィルム、シート、文房具、玩具、日用雑貨などの幅広い用途に有効に使用することができる。
次に、本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。なお、各例における物性評価は、以下に示す方法で行った。
(1)硬度
実施例および比較例で得られた熱可塑性重合体組成物を230℃で射出成形することによって厚さ2mmのシートを得た。このシートを用いて、JIS K 6253に準拠してJIS−A硬度を測定し、柔軟性の指標とした。
実施例および比較例で得られた熱可塑性重合体組成物を230℃で射出成形することによって厚さ2mmのシートを得た。このシートを用いて、JIS K 6253に準拠してJIS−A硬度を測定し、柔軟性の指標とした。
(2)柔軟性(曲げ弾性率)
実施例および比較例で得られた熱可塑性重合体組成物を230℃で射出成形してシート(縦80mm×横10mm×厚み4mm)を作製し、これを用いてJIS K 7171に準拠して曲げ弾性率を測定し、その値を柔軟性の指標とした。
実施例および比較例で得られた熱可塑性重合体組成物を230℃で射出成形してシート(縦80mm×横10mm×厚み4mm)を作製し、これを用いてJIS K 7171に準拠して曲げ弾性率を測定し、その値を柔軟性の指標とした。
(3)MFR
実施例および比較例で得られた熱可塑性重合体組成物を用いて、JIS K 7210に準拠して230℃、21N荷重条件でのMFR(g/10分)を測定し、流動性(成形加工性)の指標とした。
実施例および比較例で得られた熱可塑性重合体組成物を用いて、JIS K 7210に準拠して230℃、21N荷重条件でのMFR(g/10分)を測定し、流動性(成形加工性)の指標とした。
(4)透明性
実施例および比較例で得られた熱可塑性重合体組成物を230℃で射出成形することによって厚さ2mmのシートを得た。このシートを用いてヘイズ値を測定して、透明性の指標とした。
実施例および比較例で得られた熱可塑性重合体組成物を230℃で射出成形することによって厚さ2mmのシートを得た。このシートを用いてヘイズ値を測定して、透明性の指標とした。
(5)引張破断強度、引張破断伸度
実施例および比較例で得られた熱可塑性重合体組成物を230℃で射出成形することによって厚さ2mmのシートを得た。このシートよりJIS K 6251に準拠したダンベル5号型の試験片を打ち抜いて作製し、引張試験を23℃および60℃の温度条件および500mm/minの引張速度条件下で実施して引張破断強度、引張破断伸度を測定した。
実施例および比較例で得られた熱可塑性重合体組成物を230℃で射出成形することによって厚さ2mmのシートを得た。このシートよりJIS K 6251に準拠したダンベル5号型の試験片を打ち抜いて作製し、引張試験を23℃および60℃の温度条件および500mm/minの引張速度条件下で実施して引張破断強度、引張破断伸度を測定した。
(6)圧縮永久歪み
実施例および比較例で得られた熱可塑性重合体組成物を230℃で射出成形することによって厚さ2mmのシートを得た。このシートより、プレス成形機を使用して230℃、10MPaの圧力で、3分間加熱プレス成形することにより、直径29.0mm×厚さ12.5mmの圧縮永久歪み測定用の試験片を作製し、JIS K 6262に準じて、70℃の条件下で、圧縮変形量25%で24時間放置した後の圧縮永久歪みを測定し、耐熱性の指標とした。
実施例および比較例で得られた熱可塑性重合体組成物を230℃で射出成形することによって厚さ2mmのシートを得た。このシートより、プレス成形機を使用して230℃、10MPaの圧力で、3分間加熱プレス成形することにより、直径29.0mm×厚さ12.5mmの圧縮永久歪み測定用の試験片を作製し、JIS K 6262に準じて、70℃の条件下で、圧縮変形量25%で24時間放置した後の圧縮永久歪みを測定し、耐熱性の指標とした。
また、以下の参考例における各数平均分子量は、以下の条件でGPC測定を行い、標準ポリスチレン換算の値として求めた。
カラム:商品名:TSKgel G4000H xl、東ソー株式会社製(カラム温度:40℃)
移動相:テトラヒドロフラン(流速:1ml/min)
検出器:示差屈折計(なお、多波長検出器(検出波長:254nm)をさらに連結させた。)
標準物質:TSK標準ポリスチレン 東ソー株式会社製
試料濃度:0.06質量%
カラム:商品名:TSKgel G4000H xl、東ソー株式会社製(カラム温度:40℃)
移動相:テトラヒドロフラン(流速:1ml/min)
検出器:示差屈折計(なお、多波長検出器(検出波長:254nm)をさらに連結させた。)
標準物質:TSK標準ポリスチレン 東ソー株式会社製
試料濃度:0.06質量%
実施例および比較例で用いた各成分は次のとおりである。
製造例1(ブロック共重合体水素添加物(a)の製造)
窒素置換した攪拌装置付き耐圧容器に、α−メチルスチレン90.9g、シクロヘキサン138g、メチルシクロヘキサン15.2gおよびテトラヒドロフラン3.1gを仕込んだ。この混合液にsec−ブチルリチウム(1.3Mシクロヘキサン溶液)9.4mlを添加し、−10℃で3時間重合させた。重合開始3時間後のポリα−メチルスチレン(重合体ブロックA)の数平均分子量をGPCにより測定したところ、ポリスチレン換算で6,600であり、α−メチルスチレンの重合転化率は89%であった。
次いで、この反応混合液にブタジエン23gを添加し、−10℃で30分間攪拌して、ブロックb1の重合を行った後、シクロヘキサン930gを加えた。この時点でのα−メチルスチレンの重合転化率は89%であり、ポリブタジエンブロック(b1)の数平均分子量(GPC測定、ポリスチレン換算)は3,700であり、1H−NMR測定から求めた1,4−結合量は19モル%であった。
次に、この反応液にさらにブタジエン141.3gを加え、50℃で2時間重合反応を行った。この時点のサンプリングで得られたブロック共重合体(構造:A−b1−b2)のポリブタジエンブロック(b2)の数平均分子量(GPC測定、ポリスチレン換算)は29,800であり、1H−NMR測定から求めた1,4−結合量は60モル%であった。
製造例1(ブロック共重合体水素添加物(a)の製造)
窒素置換した攪拌装置付き耐圧容器に、α−メチルスチレン90.9g、シクロヘキサン138g、メチルシクロヘキサン15.2gおよびテトラヒドロフラン3.1gを仕込んだ。この混合液にsec−ブチルリチウム(1.3Mシクロヘキサン溶液)9.4mlを添加し、−10℃で3時間重合させた。重合開始3時間後のポリα−メチルスチレン(重合体ブロックA)の数平均分子量をGPCにより測定したところ、ポリスチレン換算で6,600であり、α−メチルスチレンの重合転化率は89%であった。
次いで、この反応混合液にブタジエン23gを添加し、−10℃で30分間攪拌して、ブロックb1の重合を行った後、シクロヘキサン930gを加えた。この時点でのα−メチルスチレンの重合転化率は89%であり、ポリブタジエンブロック(b1)の数平均分子量(GPC測定、ポリスチレン換算)は3,700であり、1H−NMR測定から求めた1,4−結合量は19モル%であった。
次に、この反応液にさらにブタジエン141.3gを加え、50℃で2時間重合反応を行った。この時点のサンプリングで得られたブロック共重合体(構造:A−b1−b2)のポリブタジエンブロック(b2)の数平均分子量(GPC測定、ポリスチレン換算)は29,800であり、1H−NMR測定から求めた1,4−結合量は60モル%であった。
続いて、この重合反応溶液に、ジクロロジメチルシラン(0.5Mトルエン溶液)12.2mlを加え、50℃にて1時間攪拌し、ポリα−メチルスチレン−ポリブタジエン−ポリα−メチルスチレントリブロック共重合体を得た。このときのカップリング効率を、カップリング体(ポリα−メチルスチレン−ポリブタジエン−ポリα−メチルスチレントリブロック共重合体:A−b1−b2−X−b2−b1−A;式中Xはカップリング剤残基(−Si(Me2)−)を表す、数平均分子量81,000)と、未反応ブロック共重合体(ポリα−メチルスチレン−ポリブタジエンブロック共重合体:A−b1−b2、数平均分子量41,000)のGPCにおけるUV吸収の面積比から算出すると94質量%であった(カップリング体と未反応ブロック共重合体全体の数平均分子量78,600)。また、1H-NMR解析の結果、ポリα−メチルスチレン−ポリブタジエン−ポリα−メチルスチレントリブロック共重合体中のポリα−メチルスチレンブロックの含有量は33質量%であり、ポリブタジエンブロック(重合体ブロックB)全体(すなわち、ブロックb1およびブロックb2)の1,4−結合量は56モル%であった。
上記で得られた重合反応溶液中に、オクチル酸ニッケルおよびトリエチルアルミニウムから形成されるチーグラー系水素添加触媒を水素雰囲気下に添加し、水素圧力0.8MPa、80℃で5時間の水素添加反応を行ない、ポリα−メチルスチレン−ポリブタジエンブロック共重合体の水素添加物(以下、これをブロック共重合体(a)と略称する)を得た。得られたブロック共重合体(a)をGPC測定した結果、主成分はMt(ピークトップ分子量)=81,000、Mn(数平均分子量)=78,700、Mw(重量平均分子量)=79,500、Mw/Mn=1.01であるポリα−メチルスチレン−ポリブタジエン−ポリα−メチルスチレントリブロック共重合体の水添物(カップリング体)であり、GPCにおけるUV(254nm)吸収の面積比から、カップリング体は94質量%含まれることが判明した。また、1H-NMR測定により、ブロックb1およびブロックb2から構成されるポリブタジエンブロック(重合体ブロックB)の水素添加率は99モル%であった。
製造例2 (ブロック共重合体水素添加物(I)の製造)
窒素置換した攪拌装置付き耐圧容器に、スチレン81gおよびシクロヘキサン1,100gを仕込んだ。この溶液に、sec−ブチルリチウム(1.3M、シクロヘキサン溶液)9.4mlを加え、50℃で1時間重合させた。次いで、この反応混合物にテトラヒドロフラン3.1g、ブタジエン164.3gを加え、50℃で1時間重合を行った。その後、この反応混合物にさらにジクロロジメチルシラン(0.5M、トルエン溶液)12.2mlを加えて50℃で1時間攪拌することにより、ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレントリブロック共重合体を含む反応混合液を得た。この反応混合物にオクチル酸ニッケル/トリエチルアルミニウムからなる水素添加触媒を添加して、水素圧力0.8MPaで、80℃で5時間の水素添加反応を行い、ポリスチレン−ポリイソプレン/ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(以下、これをブロック共重合体(I)と略称する)を得た。水素添加前のブロック共重合体(I)中のスチレン含有量、数平均分子量は製造例1と同様にして測定した。
窒素置換した攪拌装置付き耐圧容器に、スチレン81gおよびシクロヘキサン1,100gを仕込んだ。この溶液に、sec−ブチルリチウム(1.3M、シクロヘキサン溶液)9.4mlを加え、50℃で1時間重合させた。次いで、この反応混合物にテトラヒドロフラン3.1g、ブタジエン164.3gを加え、50℃で1時間重合を行った。その後、この反応混合物にさらにジクロロジメチルシラン(0.5M、トルエン溶液)12.2mlを加えて50℃で1時間攪拌することにより、ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレントリブロック共重合体を含む反応混合液を得た。この反応混合物にオクチル酸ニッケル/トリエチルアルミニウムからなる水素添加触媒を添加して、水素圧力0.8MPaで、80℃で5時間の水素添加反応を行い、ポリスチレン−ポリイソプレン/ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(以下、これをブロック共重合体(I)と略称する)を得た。水素添加前のブロック共重合体(I)中のスチレン含有量、数平均分子量は製造例1と同様にして測定した。
アイオノマー樹脂(b):三井・デュポン ポリケミカル社製 商品名「ハイミラン1605」 MFR(190℃、21.18N)=2.8g/10分
実施例1〜3および比較例1〜4
表1に示す各成分を下記の表2に示す配合にしたがって、ヘンシェルミキサーを使用して予め一括して混合し、二軸押出機(東芝機械株式会社製、TEM−35B)に供給して230℃で混練した後、ストランド状に押出し、切断して、ペレット状の熱可塑性重合体組成物を調製した。得られた熱可塑性重合体組成物のMFRを測定し、測定結果を表2に示した。次に得られた熱可塑性重合体組成物から、射出成形機(東芝機械株式会社製、IS−55EPN)を使用して、シリンダー温度230℃、金型温度40℃の条件下で所定の成形体を作製し、硬度、曲げ弾性率、透明性、引張破断強度、引張破断伸度、圧縮永久歪みを上記した方法で測定した。結果を表2に示す。
表1に示す各成分を下記の表2に示す配合にしたがって、ヘンシェルミキサーを使用して予め一括して混合し、二軸押出機(東芝機械株式会社製、TEM−35B)に供給して230℃で混練した後、ストランド状に押出し、切断して、ペレット状の熱可塑性重合体組成物を調製した。得られた熱可塑性重合体組成物のMFRを測定し、測定結果を表2に示した。次に得られた熱可塑性重合体組成物から、射出成形機(東芝機械株式会社製、IS−55EPN)を使用して、シリンダー温度230℃、金型温度40℃の条件下で所定の成形体を作製し、硬度、曲げ弾性率、透明性、引張破断強度、引張破断伸度、圧縮永久歪みを上記した方法で測定した。結果を表2に示す。
表2の実施例1〜3、比較例1〜3はいずれも比較例4に比べて柔軟性と耐熱性が改良されている。その中で、実施例1の熱可塑性重合体組成物は、比較例1の組成物に比べて、柔軟性、流動性、耐熱性の改良効果に優れる。また実施例2〜3の熱可塑性重合体組成物は、比較例2〜3の組成物に比べて、流動性、引張破断強度、引張破断伸度、耐熱性の改良効果に優れる。
本発明の熱可塑性重合体組成物は、柔軟性、流動性(成形加工性)、透明性および耐熱性に優れており、自動車内装材、外装材、床材、家電、オーディオ機器、OA機器等の部品、各種スイッチ、医療用具、光ケーブル、スポーツ用品、靴、建材、各種パッキン、シーリング材、緩衝材、玩具、文具等の幅広い用途に有効に使用することができる。
Claims (3)
- 主としてα−メチルスチレン単位からなる重合体ブロックAと主として共役ジエン単位からなる重合体ブロックBとを有する数平均分子量30,000〜500,000のα−メチルスチレン系ブロック共重合体および/またはその水素添加物(a)、およびα−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂(b)を含有する熱可塑性重合体組成物。
- 前記α−メチルスチレン系ブロック共重合体および/またはその水素添加物(a)と前記α−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂(b)との組成比が、(a)/(b)=1/99〜99/1(質量比)にあることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性重合体組成物。
- 前記α−メチルスチレン系ブロック共重合体および/またはその水素添加物(a)が、数平均分子量1,000〜50,000の重合体ブロックA、および数平均分子量が1,000〜30,000の重合体ブロックであって、該ブロックを構成する共役ジエン単位の1,4−結合量が30モル%未満であるブロックb1と、数平均分子量が10,000〜400,000の重合体ブロックであって、該ブロックを構成する共役ジエン単位の1,4−結合量が30モル%以上であるブロックb2とを含む重合体ブロックBを有し、(A−b1−b2)構造を含むα−メチルスチレン系ブロック共重合体並びにその水素添加物から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2記載の熱可塑性重合体組成物。
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