JP2004009954A - 四輪駆動車の動力伝達装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】更なる燃料消費率の低減を図ることのできる四輪駆動車の動力伝達装置を提供する。
【解決手段】四輪駆動車10のプロペラシャフト31は、フロントギア機構30及びリアギア機構34を介してフロントディファレンシャル20及びリアディファレンシャル40に接続されている。プロペラシャフト31に設けられた多板クラッチ機構33により、フロントギア機構30とリアギア機構34との駆動連結を切断するとともに、フロントアクスル15R上に設けられたドッグクラッチ26により、フロントディファレンシャル20のデフケース21とフロントギア機構30のリングギア30aとの駆動連結を切断することで、二輪駆動モードを設定する。
【選択図】 図1
【解決手段】四輪駆動車10のプロペラシャフト31は、フロントギア機構30及びリアギア機構34を介してフロントディファレンシャル20及びリアディファレンシャル40に接続されている。プロペラシャフト31に設けられた多板クラッチ機構33により、フロントギア機構30とリアギア機構34との駆動連結を切断するとともに、フロントアクスル15R上に設けられたドッグクラッチ26により、フロントディファレンシャル20のデフケース21とフロントギア機構30のリングギア30aとの駆動連結を切断することで、二輪駆動モードを設定する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、動力源と各車輪との動力伝達を行う四輪駆動車の動力伝達装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
四輪駆動車では、四輪のすべてにエンジンの駆動力が分配されるため、難路での走破性能は二輪駆動車に比して非常に高くなる。しかしながら、四輪のすべてにエンジンの駆動力を分配させる必要から、動力伝達装置の構成が複雑となり、動力損失が増大してしまう。そのため、四輪駆動車の平坦路での燃料消費率は、二輪駆動車に比して高いものとなっている。
【0003】
そこで、エンジンの駆動力を四輪すべてに分配可能な四輪駆動モードと、前輪側又は後輪側のいずれか二輪を動力伝達経路から完全に切り離して、エンジンの駆動力を常に二輪のみに分配する二輪駆動モードとの2つの駆動モードを状況に応じて切替える方式の四輪駆動車が実用されている。こうした方式の四輪駆動車では、状況に応じて2つの駆動モードを適宜に切替えることで、上記四輪駆動車のディメリットを抑制しつつ、そのメリットを存分に発揮できる。
【0004】
そして従来、主に横置型のエンジン搭載方式が採用された四輪駆動車において、そうした駆動モードの切替えを実現する四輪駆動車の動力伝達装置の一例として、図6に示すような装置が提案され、実用されている。
【0005】
同図6の四輪駆動車の動力伝達装置は、前輪用及び後輪用の2つのディファレンシャル(差動機)52,53と、それら両ディファレンシャル52,53に対して、ベベルギア(傘歯車)等により構成されたギア機構54,55を介してそれぞれ接続されるプロペラシャフト56とを備えている。
【0006】
プロペラシャフト56上には、多板クラッチ機構等により構成された動力切断機構57が設けられている。そしてその動力切断機構57によって、プロペラシャフト56を介した前輪側ギア機構54と後輪側ギア機構55との駆動連結が任意に断接されるようになっている。
【0007】
こうした動力伝達装置においてエンジンの駆動力は、トランスミッションを介して前輪用ディファレンシャル52に伝達され、その前輪用ディファレンシャル52から左右のフロントホイール50L,50Rにそれぞれ分配される。
【0008】
ここで動力切断機構57が接続されていれば、エンジンより前輪用ディファレンシャル52に伝達された駆動力は、前輪側ギア機構54、プロペラシャフト56、及び後輪側ギア機構55を介して後輪用ディファレンシャル53にも伝達される。そしてその伝達された駆動力は、後輪用ディファレンシャル53から更に左右のリアホイール51L,51Rにそれぞれ伝達される。これにより、四輪のすべてにエンジンからの動力が分配可能となり、上記四輪駆動モードでの走行が可能となる。
【0009】
一方、動力切断機構57を切断すると、すなわちプロペラシャフト56を介した前輪側ギア機構54と後輪側ギア機構55との駆動連結を切断すると、エンジンから後輪用ディファレンシャル53への動力伝達が完全に遮断される。これにより、常に左右のフロントホイール50L,50Rのみを駆動させる二輪駆動モードでの走行が可能となる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
このように動力切断機構57を切断することで二輪駆動モードを設定すれば、エンジンからの動力伝達系路から後輪側の駆動系が遮断されて、その分の動力損失が低減されるため、燃料消費率をある程度に低減することはできる。しかしながら、以下に述べるように、そうした態様での二輪駆動モードの設定では、未だ十分に動力損失の低減がなされているとは云えず、燃料消費率の向上の面で更なる改善の余地がある。
【0011】
すなわち、上記動力伝達装置では、二輪駆動モードの設定時においても、前輪側ギア機構54は、左右のフロントホイール50L,50Rの駆動には一切寄与しないにも拘わらず、それらフロントホイール50L,50Rの回転に伴い連れ回りされることとなる。一方、後輪側においても、左右のリアホイール51L,51Rの回転に伴って後輪側ギア機構55が連れ回されてしまう。
【0012】
これらギア機構54,55は、伝達されるトルクが大きいため、非常に質量の大きいギアが採用されている。またそれらギア機構54,55のギアは通常、潤滑油が充填されたケース内に収容されており、ギアの回転に伴い撹拌される潤滑油の流動抵抗も大きいものとなる。そのため、それらギア機構54,55の駆動に伴う動力損失は無視し難いものとなっており、燃料消費率の低減を妨げる要因となっている。
【0013】
このように従来の四輪駆動車の動力伝達装置では、後輪側の駆動系をエンジンからの動力伝達経路から切り離したときにも、上記2つのギア機構54,55が不必要に駆動されてしまうため、二輪駆動モードの設定に応じた燃料消費率の抑制効果は自ずと制限されたものとなっていた。
【0014】
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、更なる燃料消費率の低減を図ることのできる四輪駆動車の動力伝達装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果を記載する。
請求項1に記載の発明は、四輪駆動車の動力伝達装置であって、左右前輪の回転差を許容する前輪用差動機と、左右後輪の回転差を許容する後輪用差動機と、前記前輪用差動機に対して前輪側ギア機構を介して接続されるとともに前記後輪用差動機に対して後輪側ギア機構を介して接続されるプロペラシャフトと、前記プロペラシャフトを介した前記前輪側ギア機構と前記後輪側ギア機構との駆動連結を断接する第1の動力切断機構と、前記左右前輪の車軸と前記前輪側ギア機構との駆動連結、及び前記左右後輪の車軸と前記後輪側ギア機構との駆動連結の少なくとも一方を断接する第2の動力切断機構と、を備えるようにしたものである。
【0016】
上記構成では、第1の動力切断機構を切断すること、すなわちプロペラシャフトを介した前輪側ギア機構と後輪側ギア機構との駆動連結を切断させることで、四輪駆動車の前輪側と後輪側との駆動連結を断って、左右前輪又は左右後輪のみを駆動して走行する二輪駆動モードを設定可能となる。こうした二輪駆動モードの設定時に、更に第2の動力切断機構も切断すれば、左右前輪の車軸と前輪側ギアとの駆動連結、及び左右後輪の車軸と後輪側ギアとの駆動連結の少なくとも一方が遮断される。そしてそれにより、左右前輪の回転に伴う前輪側ギアの駆動、左右後輪の駆動に伴う後輪側ギアの回転の少なくとも一方が停止させられるようになる。したがって、上記構成によれば、二輪駆動モードの設定時に、前後輪の回転に伴うギア機構の不必要な駆動を停止可能となり、そうしたギア機構の駆動にかかる動力伝達装置の動力損失を抑止できるため、更なる燃料消費率の低減を図ることができる。
【0017】
また請求項2に記載の発明は、四輪駆動車の動力伝達装置であって、左右前輪の回転差を許容する前輪用差動機と、左右後輪の回転差を許容する後輪用差動機と、前記前輪用差動機に対して前輪側ギア機構を介して接続されるとともに前記後輪用差動機に対して後輪側ギア機構を介して接続されるプロペラシャフトと、前記プロペラシャフトを介した前記前輪側ギア機構と前記後輪側ギア機構との駆動連結を断接する第1の動力切断機構と、前記前輪用差動機と前記前輪側ギア機構との駆動連結を断接する第2の動力切断機構と、を備えるようにしたものである。
【0018】
上記構成では、第1の動力切断機構を切断すること、すなわち前輪側ギア機構と後輪側ギア機構との駆動連結を切断させることで、四輪駆動車の前輪側と後輪側との駆動連結が遮断され、二輪駆動モードが設定される。こうした二輪駆動モードの設定時に、第2の動力切断機構についても切断すれば、更に前輪用差動機と前輪側ギア機構との駆動連結についても遮断され、前輪側ギア機構は左右前輪及び左右後輪のいずれからも完全に遮断されるようになる。したがって、上記構成によれば、二輪駆動モードの設定時に前輪側ギア機構の駆動を停止でき、その分、動力伝達装置の動力損失を低減できるため、更なる燃料消費率の低減を図ることができる。
【0019】
更に請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の四輪駆動車の動力伝達装置において、当該四輪駆動車の動力源及び前記前輪側ギア機構にそれぞれ接続される第1要素と前記左右前輪にそれぞれ接続される第2要素及び第3要素との3つの要素を有するものとして前記前輪用差動機を構成するとともに、前記前輪用差動機の第1要素と前記前輪側ギア機構との駆動連結を断接するように前記第2の動力切断機構を構成したものである。
【0020】
上記構成では、車両の動力源の動力は、前輪用差動機の第1要素からその第2要素及び第3要素を介して左右前輪に伝達される。ここで、第1及び第2の動力切断機構が共に接続されていれば、前輪用差動機の第1要素に伝達された駆動力が、前輪側ギア機構、プロペラシャフト、及び後輪側ギア機構を経て後輪用差動機に伝達され、そこから更に左右後輪に伝達されるようになる。
【0021】
一方、第1の動力切断機構を切断すれば、上記プロペラシャフト等を介した前輪側から後輪側への動力伝達が遮断され、左右前輪のみを駆動しての二輪駆動モードが設定される。これとともに、第2の動力切断機構についても切断すれば、前輪用差動機の第1要素と前輪側ギア機構との駆動連結が切断されるようになる。そのため、前輪側ギア機構は左右前輪及び左右後輪のいずれからも完全に遮断され、前後輪の回転に伴う前輪側ギア機構の駆動が完全に停止される。したがって上記構成によれば、二輪駆動モードの設定時に前輪側ギア機構の駆動を停止でき、その分、動力伝達装置の動力損失を低減できるため、更なる燃料消費率の低減を図ることができる。
【0022】
また請求項4に記載の発明は、四輪駆動車の動力伝達装置であって、左右前輪の回転差を許容する前輪用差動機と、左右後輪の回転差を許容する後輪用差動機と、前記前輪用差動機に対して前輪側ギア機構を介して接続されるとともに前記後輪用差動機に対して後輪側ギア機構を介して接続されるプロペラシャフトと、前記プロペラシャフトを介した前記前輪側ギア機構と前記後輪側ギア機構との駆動連結を断接する第1の動力切断機構と、前記左右後輪のいずれか一方と前記後輪用差動機との駆動連結を断接する第2の動力切断機構とを備えるようにしたものである。
【0023】
上記構成では、第1の動力切断機構を切断すること、すなわち前輪側ギア機構と後輪側ギア機構との駆動連結を切断させることで、四輪駆動車の前輪側と後輪側との駆動連結が遮断され、二輪駆動モードが設定される。こうした二輪駆動モードの設定時に、第2の動力切断機構も切断すれば、更に左右後輪のいずれか一方と後輪用差動機との駆動連結についても遮断され、左右後輪の回転に伴う後輪側ギア機構の駆動が停止される。したがって上記構成によれば、後輪側ギア機構の駆動に要する分の動力伝達装置の動力損失を低減でき、更なる燃料消費率の低減を図ることができる。
【0024】
更に請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の四輪駆動車の動力伝達装置において、前記後輪側ギア機構に接続される第1要素と、前記左右後輪の一方及び他方にそれぞれ接続される第2要素及び第3要素との3つの要素を有するものとして前記後輪用差動機を構成するとともに、前記第2要素とその第2要素に接続された前記左右後輪のいずれか一方との駆動連結を断接するものとして前記第2の動力切断機構を構成したものである。
【0025】
上記構成では、第1及び第2の動力切断機構が共に接続されていれば、車両の動力源から伝達された駆動力が、前輪用差動機、前輪側ギア機構、プロペラシャフト、及び後輪側ギア機構を経て後輪用差動機の第1要素に伝達されるようになる。そしてその後輪用差動機の第1要素に伝達された駆動力は、更にその後輪用差動機の第2及び第3の要素を経て、左右後輪に伝達されるようになる。
【0026】
一方、第1の動力切断機構を切断すれば、前輪側から後輪側への動力伝達が遮断される。これとともに、第2の動力切断機構についても切断すれば、第2要素とその第2要素に駆動連結された左右後輪のいずれか一方との駆動連結も遮断される。このとき、左右後輪の回転に伴い後輪用差動機の第3要素が回転しても、駆動連結が遮断されてフリーとなったその第2要素が差動回転されるため、後輪側ギア機構に接続されたその第1要素は回転されないようになる。したがって上記構成によれば、二輪駆動モードの設定時に後輪側ギア機構の駆動を停止し、それにより更なる燃料消費率の低減を図ることができる。
【0027】
また請求項6に記載の発明は、四輪駆動車の動力伝達装置において、左右前輪の回転差を許容する前輪用差動機と、左右後輪の回転差を許容する後輪用差動機と、前記前輪用差動機に対して前輪側ギア機構を介して接続されるとともに前記後輪用差動機に対して後輪側ギア機構を介して接続されるプロペラシャフトと、前記プロペラシャフトを介した前記前輪側ギア機構と前記後輪側ギア機構との駆動連結を断接する第1の動力切断機構と、前記左右後輪と前記後輪用差動機との駆動連結を共に断接する第2の動力切断機構と、を備えるようにしたものである。
【0028】
上記構成では、第1の動力切断機構を切断すること、すなわち前輪側ギア機構と後輪側ギア機構との駆動連結を切断させることで、四輪駆動車の前輪側と後輪側との駆動連結が遮断され、二輪駆動モードが設定される。このとき第2の動力切断機構も切断すれば、更に左右後輪と後輪用差動機との駆動連結についても遮断され、後輪用差動機と後輪側ギア機構とは、左右前輪及び左右後輪のいずれからも完全に遮断されるようになる。したがって上記構成によれば、二輪駆動モードの設定時に、前後輪の回転に伴う後輪用差動機及び後輪側ギア機構の駆動を停止して、それらの駆動に要する分の動力伝達装置の動力損失を低減できるため、更なる燃料消費率の低減を図ることができる。
【0029】
更に請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の四輪駆動車の動力伝達装置において、前記後輪側ギア機構に接続される第1要素と、前記左後輪に接続される第2要素と、前記右後輪に接続される第3要素との3つの要素を有するものとして前記後輪用差動機を構成するとともに、前記左後輪と前記第2要素との駆動連結、及び前記右後輪と前記第3要素との駆動連結を共に断接するものとして前記第2の動力切断機構を構成したものである。
【0030】
上記構成では、第1及び第2の動力切断機構が共に接続されていれば、車両の動力源から伝達された駆動力が、前輪用差動機、前輪側ギア機構、プロペラシャフト、及び後輪側ギア機構を経て後輪用差動機の第1要素に伝達されるようになる。そしてその後輪用差動機の第1要素に伝達された駆動力は、更にその後輪用差動機の第2及び第3の要素を経て、左右後輪に伝達されるようになる。
【0031】
一方、第1の動力切断機構を切断すれば、前輪側から後輪側への動力伝達が遮断される。これとともに、第2の動力切断機構についても切断すれば、更に後輪用差動機の第2及び第3要素とそれらにそれぞれ駆動連結された左右後輪との間の駆動連結も遮断される。そしてそれにより、後輪側ギア機構と後輪用差動機とは、前後輪のいずれからも完全に遮断されるようになる。したがって上記構成によれば、二輪駆動モードの設定時に後輪側ギア機構の駆動を停止し、それにより更なる燃料消費率の低減を図ることができる。
【0032】
更に請求項8に記載の発明は、請求項4〜7のいずれかに記載の四輪駆動車の動力伝達装置において、当該四輪駆動車の動力源及び前記前輪側ギア機構にそれぞれ接続される第1要素と前記左右前輪にそれぞれ接続される第2要素及び第3要素との3つの要素を有するものとして前記前輪用差動機を構成したものである。
【0033】
上記構成では、動力源の動力は、前輪用差動機の第1要素からその第2要素及び第3要素を介して左右前輪に伝達される。そして第1及び第2の動力切断機構が共に接続されていれば、前輪用差動機に伝達された動力源の動力は、前輪側ギア機構、プロペラシャフト、後輪側ギア機構を経て後輪用差動機に伝達される。また、第1の動力切断機構を切断すれば、動力源と後輪側との駆動連結を遮断して、左右前輪のみによる二輪駆動モードを設定できる。
【0034】
また更に請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の四輪駆動車の動力伝達装置において、前記第2の動力切断機構をドッグクラッチとしたものである。
【0035】
上記構成によれば、ドッグクラッチ(噛み合わせクラッチ)の採用することで、上記のように更なる燃料消費率の低減が可能な四輪駆動車の動力伝達装置を、比較的簡易な構成の追加のみにより容易に実現できる。
【0036】
一方、請求項10に記載の発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の四輪駆動車の動力伝達装置において、前記駆動連結の接続に際して、その接続させる両者の回転を同期させる機能を更に有するものとして前記第2の動力切断機構を構成したものである。
【0037】
上記構成のように第2の動力切断機構に同期を行う機能を付与すれば、走行中においても同動力切断機構を円滑に接続させることができる。そのため、四輪駆動車の停車中、走行中を問わず、二輪駆動モードから四輪駆動モードへの切替えを実施可能となる。
【0038】
ちなみに前後輪の回転差がなければ、そうした第2の動力切断機構の同期に伴って、第1の動力切断機構でも同期がとれるようになる。そのため、第1の動力伝達機構には、同期を行う機能が付与されていなくとも、四輪駆動車の停車中、走行中のいずれにも二輪駆動モードから四輪駆動モードへの切替えは実施可能である。
【0039】
更に請求項11に記載の発明は、請求項1〜10のいずれかに記載の四輪駆動車の動力伝達装置において、該動力切断機構における前記前輪側ギア機構側の回転と前記後輪側ギア機構側の回転とを同期させる機能を更に有するものとして前記第1の動力切断機構を構成したものである。
【0040】
上記構成のように第1の動力切断機構に同期を行う機能を付与すれば、走行中においても、同動力切断機構を円滑に接続させられる。そのため、停車中のみならず、四輪駆動車の走行中にも二輪駆動モードから四輪駆動モードへの切替えを実施可能となる。ちなみに前後輪の回転差がなければ、そうした第1の動力切断機構の同期に伴って、第2の動力切断機構でも同期がとれるようになる。そのため、第1の動力伝達機構には同期を行う機能を付与せずとも、四輪駆動車の停車中、走行中を問わず、二輪駆動モードから四輪駆動モードへの切替えが可能となる。そのため、上述のような第2の動力切断機構にドッグクラッチを採用する構成においても、車両走行中の二輪駆動モードから四輪駆動モードへの切替えを実現できる。
【0041】
なお、各動力切断機構の切断には、同期を取る必要がないため、上記請求項10及び11の各構成のように、動力切断機構に同期を行う機能が付与されていなくとも、四輪駆動モードから二輪駆動モードへの切替えは、四輪駆動車の停車中、走行中のいずれにも実施可能である。
【0042】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態について、図1〜図3を参照して詳細に説明する。図1は、本実施の形態にかかる四輪駆動車の動力伝達装置の概略構成を示している。
【0043】
図1に示される四輪駆動車10の車両前方には、その動力源であるエンジン11と、そのエンジン11の出力する回転を変速するトランスミッション12とが配設されている。なお、この四輪駆動車10は、車体前方において横置型の搭載方式でエンジン11が搭載された、いわゆるFF車ベースの四輪駆動車となっている。
【0044】
こうした四輪駆動車10の動力伝達装置は、大きくはフロントディファレンシャル(フロントデフ)20、フロントギア機構30、プロペラシャフト31、リアギア機構34、及びリアディファレンシャル(リアデフ)40等を備えて構成されている。
【0045】
トランスミッション12のファイナルギア13は、フロントディファレンシャル20に連結されている。またフロントディファレンシャル20は、左右のフロントホイール(前輪)14L,14Rにそれぞれ接続された左右一対のフロントアクスル(左右前輪の車軸)15L,15Rに連結されている。
【0046】
フロントディファレンシャル20は、左右のフロントホイール14L,14R間の差動回転を許容する差動機であり、デフケース21、2個のピニオンギア22、及び左右一対のサイドギア23L,23Rを備えて構成されている。デフケース21は、フロントアクスル15L,15Rの回転軸上に同軸を有して回転可能に配設されており、トランスミッション12のファイナルギア13に駆動連結されている。またデフケース21には、各ピニオンギア22の回転軸が回転可能に支持されている。各ピニオンギア22は、左右の両サイドギア23L,23Rに噛み合わされている。両サイドギア23L,23Rは、左右のフロントアクスル15L,15Rにそれぞれ一体回転可能に連結されている。
【0047】
こうしたフロントディファレンシャル20では、ピニオンギア22が自転することなく、デフケース21の回転に応じてフロントアクスル15L,15Rの回転軸上を公転して、左右のサイドギア23L,23Rを回転させることで、フロントディファレンシャル20の全体が一体となって回転する。このときの左右のフロントホイール14L,14Rは、共に等速で回転される。一方、上記ピニオンギア22が公転しつつ自転することで、両サイドギア23L,23Rの回転速度に差が生じる。これにより、左右のフロントホイール14L,14Rの差動回転が許容されるようになっている。
【0048】
ちなみに本実施の形態では、このフロントディファレンシャル20が上記前輪用差動機に相当する構成となっている。また、デフケース21及びピニオンギア22が上記前輪用差動機の第1要素に、左右のサイドギア23L,23Rがその第2要素及び第3要素にそれぞれ対応している。
【0049】
一方、フロントディファレンシャル20のデフケース21は、フロントギア機構30を介してプロペラシャフト31に連結されている。フロントギア機構30は、車体の左右方向に延びるフロントアクスル15L,15R回りのデフケース21の回転を、車体の前後方向に延びるプロペラシャフト31回りの回転に変換して伝達している。
【0050】
詳しくは、フロントギア機構30は、デフケース21に連結されるリングギア30aと、プロペラシャフト31の車両前方側の端部に取り付けられたピニオンギア30bとからなる一対のギアによって構成されている。フロントギア機構30のリングギア30aは、右フロントアクスル15R上に同軸を有して相対回転可能に配設されている。またフロントギア機構30のリングギア30aは、内部に同フロントアクスル15Rが挿通された中空状のシャフト21aを介してフロントディファレンシャル20のデフケース21に一体回転可能に連結されるようになっている。本実施の形態では、こうしたフロントギア機構30が上記前輪側ギア機構に対応する構成となっている。
【0051】
なお本実施の形態の動力伝達装置では、デフケース21とフロントギア機構30との間には、ドッグクラッチ26が介設されている。そしてこのドッグクラッチ26により、上記デフケース21とフロントギア機構30との駆動連結が選択的に断接されるようになっている。
【0052】
より詳しくは、上記中空状のシャフト21aは、フロントディファレンシャル20のデフケース21とフロントギア機構30のリングギア30aとの中間で2つに分割されている。そして、上記ドッグクラッチ26により、その分割されたシャフト21aの両部分を一体に連結したり、その連結を解除したりすることで、上記駆動連結の断接がなされるようになっている。よって本実施の形態では、こうしたドッグクラッチ26が、前輪用差動機と前輪側ギア機構との駆動連結を断接する上記第2の動力切断機構に相当する構成となっている。
【0053】
さて、上記のようにフロントギア機構30に連結されたプロペラシャフト31は、その車両後方側にて、多板クラッチ機構33に接続され、更にその多板クラッチ機構33からリアギア機構34を介してリアディファレンシャル40に連結されている。
【0054】
多板クラッチ機構33は、交互に配設された複数のクラッチプレート及びクラッチディスクを有している。そして、それらクラッチプレートとクラッチディスクとの圧着により、プロペラシャフト31のフロントギア機構30側とリアギア機構34側とが一体に連結され、その圧着の開放により、そうした連結が解除されるようになっている。すなわち、多板クラッチ機構33によって、プロペラシャフト31を介したフロントギア機構30、リアギア機構34間の駆動連結が選択的に断接されるようになっている。よって本実施の形態では、この多板クラッチ機構33が上記第1の動力切断機構に相当する構成となっている。
【0055】
なお、本実施の形態では、そうした多板クラッチ機構33として、クラッチプレートとクラッチディスクとの圧着及びその開放を作動油圧の制御により行う油圧駆動式の多板クラッチ機構が採用されている。
【0056】
この多板クラッチ機構33では、作動油圧の制御に基づく上記クラッチプレートとクラッチディスクと間に作用する摩擦力の調整により、プロペラシャフト31を介したフロントギア機構30からリアギア機構34へのトルクの伝達率が変更されている。これにより、本実施形態の多板クラッチ機構33は、フロントホイール側とリアホイール側とのトルク分配率を可変とする機能も兼ね備えている。
【0057】
更に本実施の形態では、多板クラッチ機構33は、上記駆動連結に際し、プロペラシャフト31のフロントギア機構30側の回転とリアギア機構34側の回転とを同期させる機能も有している。具体的には、この多板クラッチ機構33では、上記駆動連結時に、クラッチプレートとクラッチディスクとを完全に圧着させる前に、それらプレート、ディスク間の押圧力を適宜に調整することで、それらの間に作用する摩擦力で回転速度差を縮小させるようにしている。ここでは、そうした同期時の上記押圧力の調整は、多板クラッチ機構33の作動油圧の調整を通じて行われている。これにより、プロペラシャフト31のフロントギア機構30側とリアギア機構34側とが異なる回転速度の状態にあるときにも、それらを駆動連結させられるようになっている。
【0058】
一方、リアギア機構34は、上記フロントギア32と同様に、リアディファレンシャル40に連結されたリングギア34aと、プロペラシャフト31の車両後方側の端部に取り付けられたピニオンギア34bとの一対のギアにより構成されている。このリアギア機構34は、車体前後方向に延びるプロペラシャフト31回りの回転を、車体左右方向に延びるリアアクスル16回りの回転に変換して伝達する。本実施の形態では、このリアギア機構34が上記後輪側ギア機構に相当する構成となっている。
【0059】
ちなみに、本実施の形態のフロントギア機構30及びリアギア機構34には、歯にねじれ角の付けられたスパイラル型のベベルギア(傘歯ギア)がそれぞれ採用されている。また本実施の形態のフロントギア機構30及びリアギア機構34には、ピニオンギア30b、34bの回転軸心を、リングギア30a,34aの回転軸心に対して車体下方側にオフセットさせた構成のギアが採用されている。なお、フロントギア機構30及びリアギア機構34は、摩耗防止や冷却のため、潤滑油の充填されたケース内にそれぞれ収容されている。
【0060】
一方、リアディファレンシャル40は、上記フロントディファレンシャル20と同様に、デフケース41、2個のピニオンギア42、及び左右一対のサイドギア43L,43Rを備えて構成されている。リアディファレンシャル40のデフケース41は、リアアクスル17L,17Rの回転軸上に同軸を有して回転可能に配設され、リアギア機構34を介してプロペラシャフト31に駆動連結されている。そのデフケース41に回転軸の支持された各ピニオンギア42は、左右のサイドギア43L,43Rに噛み合わされている。左右のサイドギア43L,43Rは、左右のリアホイール16L,16Rにそれぞれ接続された左右一対のリアアクスル17L,17Rにそれぞれ一体回転可能に接続されている。こうしたリアディファレンシャル40によって、左右のリアホイール16L,16Rの差動回転が許容されるようになっている。本実施形態では、このリアディファレンシャル40が上記後輪用差動機に相当する構成となっている。
【0061】
<動力伝達装置の電気的構成>
続いて、以上のように構成された四輪駆動車の動力伝達装置について、その制御系の電気的構成を説明する。
【0062】
本実施の形態の動力伝達装置において、上記ドッグクラッチ26及び多板クラッチ機構33の駆動制御は、同図1に示される電子制御ユニット(ECU)18により行われている。
【0063】
電子制御ユニット18は、四輪駆動車10の各種制御にかかる制御プログラムやデータ等の記憶されたROMや、その制御プログラムに基づく演算処理を実施するCPU、制御中に算出される演算結果等を一時的に記憶するRAM等を有して構成されている。また電子制御ユニット18は外部と間で信号の入出力を行うための入力ポート及び出力ポートが設けられている。
【0064】
電子制御ユニット18の入力ポートには、例えば前後左右の各ホイール14L,14R,16L,16Rの回転速度をそれぞれ検出する回転速度センサ等、四輪駆動車10の走行状況を検出する各種センサ類が接続されており、それらセンサ類の検出信号が入力されるようになっている。また電子制御ユニット18の出力ポートには、上記ドッグクラッチ26及び多板クラッチ機構33等の駆動回路が接続されている。
【0065】
なお、四輪駆動車10の運転室内には、車両の駆動モードを選択すべく運転者により操作されるモード切替スイッチ(SW)が設けられている。そしてモード切替スイッチの操作に応じて、左右のフロントホイール14L,14Rのみにエンジン11の動力を分配する二輪駆動モードと、前後左右の四輪のすべてにエンジン11の動力を分配可能な四輪駆動モードとのいずれかを選択可能となっている。
【0066】
上記電子制御ユニット18の入力ポートには、こうしたモード切替スイッチも接続されている。そして電子制御ユニット18は、モード切替スイッチの操作状況に応じて、上記ドッグクラッチ26及び多板クラッチ機構33を駆動制御して、四輪駆動車10の駆動モードの設定を行っている。
【0067】
<駆動モードの切替制御>
続いて、そうした駆動モードの切替えにかかる電子制御ユニット18の制御について説明する。
【0068】
まず、四輪駆動モードから二輪駆動モードへの切替えは、以下の手順で行われる。
すなわち、モード切替スイッチより、そうした四輪駆動モードから二輪駆動モードへの切替えを要求する旨の信号が入力されると、電子制御ユニット18は、多板クラッチ機構33を切断させる。これにより、プロペラシャフト31を介したフロントギア機構30とリアギア機構34との駆動連結が遮断される。またこれとともに電子制御ユニット18は、ドッグクラッチ26も切断させ、フロントディファレンシャル20のデフケース21とフロントギア機構30のリングギア30aとの駆動連結についても遮断させる。以上により、四輪駆動モードから二輪駆動モードへの切替えが完了する。
【0069】
一方、二輪駆動モードから四輪駆動モードへの切替えは、以下の手順で行われる。
電子制御ユニット18は、モード切替スイッチにより、そうした二輪駆動モードから四輪駆動モードへの切替えを要求する旨の信号が入力されると、まずは多板クラッチ機構33を接続させる。
【0070】
こうして多板クラッチ機構33が接続されると、クラッチプレート、クラッチディスク間の摩擦力により、プロペラシャフト31のフロントギア機構30側の回転とリアギア機構34側の回転とが同期されるようになる。そしてそれらフロントギア機構30側とリアギア機構34側との回転速度差が所定値以下となり、それらの回転の同期が完了すると、電子制御ユニット18は、ドッグクラッチ26を接続させている。そして以上により、二輪駆動モードから四輪駆動モードへの切替えが完了される。
【0071】
なお、上記多板クラッチ機構33による同期が完了すれば、フロントディファレンシャル20のデフケース21の回転とフロントギア機構30のリングギア30aの回転との同期も自動的になされることとなる。そのため本実施の形態では、ドッグクラッチ26自体には、同期を行う機能が具備されていないにも拘わらず、ドッグクラッチ26を四輪駆動車10の走行中に接続させられるようになっている。
【0072】
以上が、本実施の形態での駆動モードの切替えにかかる処理手順の詳細である。
このように、本実施の形態の四輪駆動車10では、ドッグクラッチ26と多板クラッチ機構33とを共に切断した状態とすることで、エンジン11の駆動力を左右のフロントホイール14L,14Rのみに分配する二輪駆動モードが設定されている。またドッグクラッチ26と多板クラッチ機構33とを共に接続した状態とすることで、エンジン11の駆動力を四輪のすべてに分配可能な四輪駆動モードが設定されている。
【0073】
<各駆動モードでの動力伝達装置の動作>
次に、こうした本実施の形態での各駆動モードでの動力伝達装置の動作を説明する。
【0074】
図2は、本実施の形態の動力伝達装置における四輪駆動モード設定時の動力伝達経路の状態を示している。
同図2に示されるように、四輪駆動モードの設定時には、エンジン11の駆動力は、トランスミッション12を介してフロントディファレンシャル20のデフケース21に伝達される。デフケース21に伝達された駆動力は、ピニオンギア22、サイドギア23L,23R、及びフロントアクスル15L,15Rを経て、左右のフロントホイール14L,14Rに伝達される。
【0075】
更に、四輪駆動モードの設定時にはドッグクラッチ26が接続されているため、デフケース21に伝達された駆動力は、フロントギア機構30を介してプロペラシャフト31にも伝達される。そして駆動力は、そのプロペラシャフト31からリアギア機構34、リアディファレンシャル40、及びリアアクスル17L,17Rを経て、左右のリアホイール16L,16Rにも伝達されるようになる。
【0076】
なお、こうした四輪駆動モードの設定時には、電子制御ユニット18によって、フロントホイール14L,14R側とリアホイール16L,16R側との差動に応じて、前後輪間のトルク配分が適宜になされるように多板クラッチ機構33の差動油圧が制御されている。
【0077】
一方、図3は、本実施の形態の動力伝達装置における二輪駆動モード設定時の動力伝達系路の状態を示している。
同図3に示されるように、二輪駆動モードの設定時においても、エンジン11の駆動力は、トランスミッション12を介してフロントディファレンシャル20のデフケース21に伝達される。そしてデフケース21に伝達された駆動力は、ピニオンギア22、サイドギア23L,23R、及びフロントアクスル15L,15Rを経て、左右のフロントホイール14L,14Rに伝達される。
【0078】
ただし、二輪駆動モードの設定時には、ドッグクラッチ26が切断されている。そのため、デフケース21に伝達された駆動力は、フロントギア機構30やプロペラシャフト31等に伝達されることはなく、リアホイール16L,16Rに伝達されることは勿論ない。
【0079】
更に二輪駆動モードの設定時には、多板クラッチ機構33も切断された状態となっている。そのため、フロントギア機構30、及びプロペラシャフト31の多板クラッチ機構33よりもフロントギア機構30側の部分は、フロントホイール14L,14R、及びリアホイール16L,16Rのいずれからも、完全に切断された状態となっている。したがって本実施の形態では、二輪駆動モードの設定時には、フロントギア機構30は、いずれのホイールの回転によっても連れ回されることなく、停止されるようになる。
【0080】
以上説明した本実施の形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1) 本実施の形態にかかる四輪駆動車の動力伝達装置は、プロペラシャフト31を介したフロントギア機構30とリアギア機構34との駆動連結を断接する多板クラッチ機構33と、フロントディファレンシャル20とフロントギア機構30との駆動連結を断接するドッグクラッチ26とを備えている。そして、多板クラッチ機構33とドッグクラッチ26とを共に切断することで、エンジン11の駆動力を左右のフロントホイール14L,14Rのみに分配する二輪駆動モードを設定している。こうした本実施の形態では、二輪駆動モードの設定時に、フロントギア機構30は、4つのホイール14L,14R,16L,16Rのいずれからも完全に遮断されるようになる。したがって、本実施の形態によれば、二輪駆動モードの設定時にフロントギア機構30の駆動を完全に停止させることができる。そして、そうしたフロントギア機構30の駆動分の動力損失を低減することで、更なる燃料消費率の低減を図ることができる。
【0081】
(2) 更に本実施の形態の多板クラッチ機構33は、そのフロントギア機構30側の回転とリアギア機構34側の回転とを同期させることもできるようになっている。そのため、たとえ四輪駆動車の走行中においても、多板クラッチ機構33を円滑に接続させることができる。また、そうした多板クラッチ機構33での同期に応じて、ドッグクラッチ26においても同期がとれるようになる。したがって、四輪駆動車10の走行中においても二輪駆動モードから四輪駆動モードへの切替えを実現できる。ちなみに、多板クラッチ機構33及びドッグクラッチ26の切断には同期が不要なため、四輪駆動モードから二輪駆動モードへの切替えについては、上記多板クラッチ機構33の同期機能の如何に拘わらず、四輪駆動車10の走行中にも円滑に行える。
【0082】
(3) また上記のように多板クラッチ機構33での同期により、併せて同期を取ることができるため、フロントディファレンシャル20とフロントギア機構30との駆動連結を断接する機構には、同期を行う機能を備えていないドッグクラッチ26を採用して、構成の簡易化が図られている。
【0083】
(4) 更に本実施の形態では、プロペラシャフト31を介したフロントギア機構30とリアギア機構34との駆動連結を断接する機構として、前輪側と後輪側とのトルク分配率を可変とする機構として従来から多くの四輪駆動車で採用されている多板クラッチ機構33を用いている。多板クラッチ機構33は、上記動力を切断する機能、及びトルク分配率を可変とする機能に加え、同期を行う機能も兼ね備えている。したがって、上記のような四輪駆動車の動力伝達装置を、より少ない設計の変更で実現することができる。
【0084】
(第2の実施の形態)
続いて、本発明を具体化した第2の実施の形態について、上記第1の実施の形態との相違点を中心として、図4を参照して詳細に説明する。
【0085】
本実施の形態の動力伝達装置は、上記第1実施の形態の動力伝達装置に対し、そのドッグクラッチ26の取付位置を変更した構成となっている。そしてそうした構成により、二輪駆動モードの設定時に、リアギア機構34の駆動を停止させるようにしたものである。
【0086】
図4に示されるように本実施の形態では、フロントディファレンシャル20とフロントギア機構30との間にはドッグクラッチ26は設けられておらず、フロントディファレンシャル20のデフケース21とフロントギア機構30のリングギア30aとが一体に連結される構成となっている。
【0087】
一方、本実施の形態では、右リアアクスル17Rに、ドッグクラッチ76が設けられており、そのドッグクラッチ76により、リアディファレンシャル40の右サイドギア43Rと右リアホイール16Rとの駆動連結を断接可能となっている。
【0088】
よって本実施形態では、このドッグクラッチ76が、左右後輪のいずれか一方と後輪用差動機との駆動連結を断接する上記第2の動力切断機構に相当する構成となっている。また本実施の形態では、リアディファレンシャル40のデフケース41及びピニオンギア42が上記後輪用差動機の第1要素に対応している。また、リアディファレンシャル40の右サイドギア43Rが上記後輪側差動機の第2要素に、その左サイドギア43Lがその第3要素にそれぞれ対応する構成となっている。
【0089】
こうした本実施の形態では、多板クラッチ機構33及びそのドッグクラッチ76を共に接続させることで、四輪駆動モードを設定することができる。このときの動力伝達装置の動作は、上記第1の実施の形態と同様である。
【0090】
また本実施の形態では、多板クラッチ機構33及びそのドッグクラッチ76を共に切断させることで、二輪駆動モードを設定するようにしている。
こうした二輪駆動モードの設定時には、エンジン、トランスミッション(同図では図示略)よりフロントディファレンシャル20のデフケース21に伝達された駆動力は、左右のフロントホイール14L,14Rに分配されるとともに、フロントギア機構30にも伝達される。したがって、二輪駆動モードの設定時に、フロントホイール14L,14Rの駆動に伴い、フロントギア機構30は駆動されてしまうこととなる。
【0091】
一方、このときの多板クラッチ機構33は切断されているため、フロントギア機構30に伝達された駆動力は、リアギア機構34には伝達されなくなる。
更に本実施の形態では、リアディファレンシャル40の左サイドギア43Lは左リアホイール16Lに連結されているものの、ドッグクラッチ76によって右サイドギア43Rと右リアホイール16Rとの連結は解除されている。そのため、両リアホイール16L,16Rの回転によっては、左サイドギア43Lのみが回転されることとなる。
【0092】
このときの右サイドギア43Rは、ドッグクラッチ76によって右リアホイール16Rとの駆動連結が絶たれ、その回転抵抗は非常に小さい。そのため、左リアホイール16Lにより左サイドギア43Lが回転されようとも、ピニオンギア42及び右サイドギア43Rが差動回転されるだけで、デフケース41は静止したままとなる。よって、本実施の形態の動力伝達装置では、二輪駆動モードの設定時にリアギア機構34は、4つのホイール14L,14R,16L,16Rのいずれによっても連れ回されることはない。
【0093】
なお、こうした本実施の形態においても、多板クラッチ機構33での同期に応じて、ドッグクラッチ76においても同期がとれるため、走行中にも二輪駆動モードから四輪駆動モードへの切替えを実現できる。
【0094】
以上説明した本実施の形態によれば、上記(2)〜(4)と同様或いはそれに準じた効果に加え、更に以下の効果を奏することができる。
(5) 本実施の形態にかかる四輪駆動車の動力伝達装置は、プロペラシャフト31を介したフロントギア機構30とリアギア機構34との駆動連結を断接する多板クラッチ機構33に加え、リアディファレンシャル40と右リアホイール16Rとの駆動連結を断接するドッグクラッチ76を備えている。そして多板クラッチ機構33とドッグクラッチ76とを共に切断することで、エンジン11の駆動力を左右のフロントホイール14L,14Rのみに分配する二輪駆動モードを設定している。そのため本実施の形態では、二輪駆動モードの設定時にリアギア機構34は、4つのホイール14L,14R,16L,16Rのいずれによっても連れ回されないようになる。したがって、本実施の形態によれば、二輪駆動モードの設定時にリアギア機構34の駆動を完全に停止させることができる。そして、そうしたリアギア機構34の駆動分の動力損失を低減することで、更なる燃料消費率の低減を図ることができる。
【0095】
(第3の実施の形態)
続いて、本発明を具体化した第3の実施の形態について、上記第2の実施の形態との相違点を中心として、図5を参照して詳細に説明する。
【0096】
本実施の形態にかかる動力伝達装置は、上記第2の実施の形態の動力伝達装置に対して、更にもう一つのドッグクラッチを追加した構成となっている。そしてそうした構成により、二輪駆動モード設定時に、リアディファレンシャル40のすべての要素の回転を停止させ、更なる燃料消費率の低減を図るようにしたものである。
【0097】
図5に示されるように本実施の形態では、右リアアクスル17Rに配設されたドッグクラッチ76Rに加え、左リアアクスル17Lにもドッグクラッチ76Lが設けられている。そして、それら2つのドッグクラッチ76R,76Lにより、右サイドギア43Rと右リアホイール16Rとの駆動連結、及び左サイドギア43Lと左リアホイール16Lとの駆動連結が、それぞれ断接されるようになっている。よって本実施の形態では、これらのドッグクラッチ76R,76Lが、左右後輪と後輪用差動機との駆動連結を共に断接する上記第2の動力切断機構に相当する構成となっている。
【0098】
こうした本実施の形態では、多板クラッチ機構33及びそのドッグクラッチ76L,76Rのすべてを接続させることで、四輪駆動モードが設定される。このときの動力伝達装置の動作は、上記実施の形態と同様である。
【0099】
また本実施の形態では、多板クラッチ機構33及びドッグクラッチ76L,76Rのすべてを切断させることで、二輪駆動モードが設定されている。
こうした二輪駆動モードの設定時には、2つのドッグクラッチ76L,76Rによって、左右のリアホイール16L,16Rとリアディファレンシャル40との駆動連結は、ともに切断されている。また、多板クラッチ機構33によって、プロペラシャフト31を介したフロントギア機構30とリアギア機構34との駆動連結も切断されている。そのため、本実施の形態では、二輪駆動モードの設定時には、リアギア機構34及びリアディファレンシャル40は、4つのホイール14L,14R,16L,16Rのいずれからも完全に遮断されるようになる。
【0100】
こうした本実施の形態によれば、上記(2)〜(4)と同様或いはそれに準じた効果に加え、更に次の効果を奏することができる。
(6) 本実施の形態にかかる四輪駆動車の動力伝達装置は、上記多板クラッチ機構33に加え、更にリアディファレンシャル40と左右のリアホイール16L,16Rとの駆動連結をそれぞれ断接するドッグクラッチ76L,76Rを備えている。そして多板クラッチ機構33及びドッグクラッチ76L,76Rのすべてを切断することで、エンジン11の駆動力を左右のフロントホイール14L,14Rのみに分配する二輪駆動モードを設定している。そのため本実施の形態では、二輪駆動モードの設定時にリアギア機構34及びリアディファレンシャル40は、4つのホイール14L,14R,16L,16Rのいずれからも遮断される。したがって、本実施の形態によれば、二輪駆動モードの設定時にリアギア機構34の駆動を完全に停止させることができる。またそれに加え、リアディファレンシャル40の各要素、すなわちデフケース41、ピニオンギア42、及び左右のサイドギア43L,43Rの駆動も停止させることができる。したがって、更なる燃料消費率の低減を図ることができる。
【0101】
以上説明した実施の形態は次のように変更することもできる。
・上記第2の実施の形態のドッグクラッチ76を、左リアホイール16L側に配設し、左リアホイール16Lと左サイドギア43Lとの駆動連結を断接させるようにしても良い。
【0102】
・上記各実施の形態では、運転者の手動により、四輪駆動車10の駆動モードを切り替える構成を説明したが、四輪駆動車10の走行状況等に応じて電子制御ユニット18が自動的に駆動モードを切り替えるようにしても良い。
【0103】
・上記各実施の形態では、プロペラシャフト31を介したフロントギア機構30とリアギア機構34との駆動連結を断接する多板クラッチ機構33として、油圧駆動式の機構を採用している。こうした多板クラッチ機構33として、クラッチプレートとクラッチディスクとの圧着及びその開放を電磁石の電磁力により行う電磁駆動式の多板クラッチ機構を採用しても良い。こうした電磁駆動式の多板クラッチ機構において、プロペラシャフト31を介したフロントギア機構30からリアギア機構34へのトルク伝達率を変更は、電磁石に対する通電制御により行うことができる。
【0104】
・また上記各実施の形態では、そうした第1の動力切断機構に、同期を行う機能やトルク分配率を可変とする機能も兼ね備えたものを採用しているが、そうした機能は必ずしも具備していなくても良い。例えば二輪駆動モードから四輪駆動モードへの切替えを四輪駆動車10の走行中に行う必要がなければ、同期を行う機能は不要であるし、四輪駆動モードの設定時にフロントホイール側とリアホイール側とのトルク分配率を可変とする必要がなければ、そうした機能はなくても良い。そうした場合にも、プロペラシャフト31を介したフロントギア機構30とリアギア機構34との駆動連結を断接さえできれば、ドッグクラッチ26,76,76L,76Rとの協働により、二輪駆動モードの設定時のフロントギア機構30又はリアギア機構34の駆動を停止させることはできる。
【0105】
更に、こうした第1の動力切断機構は、プロペラシャフト31を介したフロントギア機構30とリアギア機構34との駆動連結を切断した状態を保持可能なものでなくても良い。すなわち、フロントホイール側とリアホイール側との差動に応じて、自動的にトルク分配率を可変とする回転速度感応式のカップリング等を多板クラッチ機構33に替えて採用しても良い。このような駆動連結を切断した状態を保持できない機構では、それ単独では上記のような二輪駆動モードを設定することはできない。ただし、ドッグクラッチ26、又はドッグクラッチ76、或いはドッグクラッチ76L,76Rといった第2の動力切断機構が設けられていれば、それらの切断により二輪駆動モードを設定可能となる。
【0106】
要は、少なくともプロペラシャフト31を介したフロントギア機構30とリアギア機構34との駆動連結の断接が可能な機構であれば良く、例えばビスカスカップリングやドッグクラッチ等によっても、第1の動力切断機構を構成することができる。
【0107】
・上記各実施の形態にあって上記第2の動力切断機構に対応するドッグクラッチ26,76,86L,76Rを、他の動力切断機構に変更しても良い。その場合にも、対象とする要素間の駆動連結を断接可能な機構を採用すれば、上記各実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0108】
・また、そうした第2の動力切断機構に、同期を行う機能を付加するようにしても良い。そうした場合、第2の動力切断機構を、それ単体で、走行中に接続させることができるようになる。またその場合、第2の動力切断機構での同期により、第1の動力切断機構でも同期がとれるようになるため、第1の動力伝達機構に同期を行う機能が付与されていなくとも、四輪駆動車の走行中の二輪駆動モードから四輪駆動モードへの切替えが実施可能となる。
【0109】
・上記各実施形態では、車体前方にエンジン11が搭載された四輪駆動車10を例に説明したが、車体後方にエンジンの搭載された四輪駆動車にも上記各実施形態に準じた動力伝達装置を適用することはできる。その場合、その動力伝達装置の構成は、上記各実施形態の動力伝達装置の車体前後方向を逆にしたものとなる。勿論、そうした構成でも、上記各実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0110】
・上記各実施形態では、動力源としてエンジン11を備える四輪駆動車10について説明したが、電動モータ等の他の動力源を備える四輪駆動車についても上記各実施形態の動力伝達装置は適用できる。そして勿論、そうした場合にも、上記各実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0111】
以上の各実施の形態から把握される技術的思想を、以下に記載する。
(イ) 左右前輪の回転差を許容する前輪用差動機と、左右後輪の回転差を許容する後輪用差動機と、前記前輪用差動機に対して前輪側ギア機構を介して接続されるとともに前記後輪用差動機に対して後輪側ギア機構を介して接続されるプロペラシャフトと、前記プロペラシャフトにおいて前記前輪側ギア機構と前記後輪側ギア機構との駆動連結を断接する第1の動力切断機構と、前記後輪用差動機と前記後輪側ギア機構との駆動連結を断接する第2の動力切断機構と、を備えることを特徴とする四輪駆動車の動力伝達装置。
【0112】
(ロ) 前記後輪用差動機は、当該四輪駆動車の動力源及び前記後輪側ギア機構にそれぞれ接続される第1要素と前記左右後輪にそれぞれ接続される第2要素及び第3要素との3つの要素を有してなり、前記第2の動力切断機構は、前記後輪用差動機の第1要素と前記前輪側ギア機構との駆動連結を断接するものである上記(イ)に記載の四輪駆動車の動力伝達装置。
【0113】
(ハ) 左右前輪の回転差を許容する前輪用差動機と、左右後輪の回転差を許容する後輪用差動機と、前記前輪用差動機に対して前輪側ギア機構を介して接続されるとともに前記後輪用差動機に対して後輪側ギア機構を介して接続されるプロペラシャフトと、前記プロペラシャフトにおいて前記前輪側ギア機構と前記後輪側ギア機構との駆動連結を断接する第1の動力切断機構と、前記左右前輪のいずれか一方と前記前輪用差動機との駆動連結を断接する第2の動力切断機構と、を備えることを特徴とする四輪駆動車の動力伝達装置。
【0114】
(ニ) 前記前輪用差動機は、前記前輪側ギア機構に駆動連結される第1要素と、前記左右前輪にそれぞれ駆動連結される第2要素及び第3要素との3つの要素を有してなり、前記第2の動力切断機構は、前記左右前輪のいずれか一方とそのいずれか一方の前輪に接続された第2要素及び第3要素のいずれか一方との駆動連結を断接するものである上記(ハ)に記載の四輪駆動車の動力伝達装置。
【0115】
(ホ) 左右前輪の回転差を許容する前輪用差動機と、左右後輪の回転差を許容する後輪用差動機と、前記前輪用差動機に対して前輪側ギア機構を介して接続されるとともに前記後輪用差動機に対して後輪側ギア機構を介して接続されるプロペラシャフトと、前記プロペラシャフトにおいて前記前輪側ギア機構と前記後輪側ギア機構との駆動連結を断接する第1の動力切断機構と、前記左右前輪と前記前輪用差動機との駆動連結を共に断接する第2の動力切断機構と、を備えることを特徴とする四輪駆動車の動力伝達装置。
【0116】
(ヘ) 前記前輪用差動機は、前記前輪側ギア機構に接続される第1要素と、前記左後輪に接続される第2要素と、前記右前輪に接続される第3要素との3つの要素を有してなり、前記第2の動力切断機構は、前記左後輪と前記第2要素との駆動連結、及び前記右後輪と前記第3要素との駆動連結を共に断接することで前記動力伝達の断接を行う上記(ホ)に記載の四輪駆動車の動力伝達装置。
【0117】
(ト) 前記後輪用差動機は、当該四輪駆動車の動力源及び前記後輪側ギア機構にそれぞれ接続される第1要素と前記左右後輪にそれぞれ接続される第2要素及び第3要素との3つの要素を有してなる上記(イ)〜(ヘ)のいずれかに記載の四輪駆動車の動力伝達装置。
【0118】
(チ) 前記第2の動力切断機構は、ドッグクラッチである上記(イ)〜(ト)のいずれかに記載の四輪駆動車の動力伝達装置。
(リ) 前記第2の動力切断機構は、該動力切断機構における前記前輪側ギア機構側の回転と前記後輪側ギア機構側の回転とを同期させる機能を更に有してなる上記(イ)〜(ト)のいずれかに記載の四輪駆動車の動力伝達装置。
【0119】
(ヌ) 前記第1の動力切断機構は、その前輪側と後輪側との回転とを同期させる機能を更に有してなる上記(イ)〜(リ)のいずれかに記載の四輪駆動車の動力伝達装置。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態についてその全体構造の模式図。
【図2】第1実施形態の四輪駆動モード時の動力伝達態様を示すブロック図。
【図3】第1実施形態の二輪駆動モード時の動力伝達態様を示すブロック図。
【図4】本発明の第2実施の形態についてその全体構造の模式図。
【図5】本発明の第3実施の形態についてその全体構造の模式図。
【図6】従来の四輪駆動車の動力伝達装置の模式図。
【符号の説明】
10…四輪駆動車、11…エンジン(動力源)、12…トランスミッション、13…ファイナルギア、14L,50L…左フロントホイール(左前輪)、14R,50R…右フロントホイール(右前輪)、15L…左フロントアクスル(左前輪の車軸)、15R…右フロントアクスル(右前輪の車軸)、16L,51L…左リアホイール(左後輪)、16R,51R…右リアホイール(右後輪)、17L…左リアアクスル(左後輪の車軸)、17R…右リアアクスル(右後輪の車軸)、18…電子制御ユニット(ECU)、20,52…フロントディファレンシャル(前輪用差動機:21…デフケース、22…ピニオンギア、23L…左サイドギア、23R…右サイドギア)、26,76,76L,76R…ドッグクラッチ(第2の動力切断機構)、30,54…フロントギア機構(前輪側ギア機構:30a…リングギア、30b…ピニオンギア)、31,56…プロペラシャフト、33…多板クラッチ機構(第1の動力切断機構)、34,55…リアギア機構(後輪側ギア機構:34a…リングギア、34b…ピニオンギア)、40…リアディファレンシャル(後輪用差動機:41…デフケース、42…ピニオンギア、43L…左サイドギア、43R…右サイドギア)、57…動力切断機構。
【発明の属する技術分野】
本発明は、動力源と各車輪との動力伝達を行う四輪駆動車の動力伝達装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
四輪駆動車では、四輪のすべてにエンジンの駆動力が分配されるため、難路での走破性能は二輪駆動車に比して非常に高くなる。しかしながら、四輪のすべてにエンジンの駆動力を分配させる必要から、動力伝達装置の構成が複雑となり、動力損失が増大してしまう。そのため、四輪駆動車の平坦路での燃料消費率は、二輪駆動車に比して高いものとなっている。
【0003】
そこで、エンジンの駆動力を四輪すべてに分配可能な四輪駆動モードと、前輪側又は後輪側のいずれか二輪を動力伝達経路から完全に切り離して、エンジンの駆動力を常に二輪のみに分配する二輪駆動モードとの2つの駆動モードを状況に応じて切替える方式の四輪駆動車が実用されている。こうした方式の四輪駆動車では、状況に応じて2つの駆動モードを適宜に切替えることで、上記四輪駆動車のディメリットを抑制しつつ、そのメリットを存分に発揮できる。
【0004】
そして従来、主に横置型のエンジン搭載方式が採用された四輪駆動車において、そうした駆動モードの切替えを実現する四輪駆動車の動力伝達装置の一例として、図6に示すような装置が提案され、実用されている。
【0005】
同図6の四輪駆動車の動力伝達装置は、前輪用及び後輪用の2つのディファレンシャル(差動機)52,53と、それら両ディファレンシャル52,53に対して、ベベルギア(傘歯車)等により構成されたギア機構54,55を介してそれぞれ接続されるプロペラシャフト56とを備えている。
【0006】
プロペラシャフト56上には、多板クラッチ機構等により構成された動力切断機構57が設けられている。そしてその動力切断機構57によって、プロペラシャフト56を介した前輪側ギア機構54と後輪側ギア機構55との駆動連結が任意に断接されるようになっている。
【0007】
こうした動力伝達装置においてエンジンの駆動力は、トランスミッションを介して前輪用ディファレンシャル52に伝達され、その前輪用ディファレンシャル52から左右のフロントホイール50L,50Rにそれぞれ分配される。
【0008】
ここで動力切断機構57が接続されていれば、エンジンより前輪用ディファレンシャル52に伝達された駆動力は、前輪側ギア機構54、プロペラシャフト56、及び後輪側ギア機構55を介して後輪用ディファレンシャル53にも伝達される。そしてその伝達された駆動力は、後輪用ディファレンシャル53から更に左右のリアホイール51L,51Rにそれぞれ伝達される。これにより、四輪のすべてにエンジンからの動力が分配可能となり、上記四輪駆動モードでの走行が可能となる。
【0009】
一方、動力切断機構57を切断すると、すなわちプロペラシャフト56を介した前輪側ギア機構54と後輪側ギア機構55との駆動連結を切断すると、エンジンから後輪用ディファレンシャル53への動力伝達が完全に遮断される。これにより、常に左右のフロントホイール50L,50Rのみを駆動させる二輪駆動モードでの走行が可能となる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
このように動力切断機構57を切断することで二輪駆動モードを設定すれば、エンジンからの動力伝達系路から後輪側の駆動系が遮断されて、その分の動力損失が低減されるため、燃料消費率をある程度に低減することはできる。しかしながら、以下に述べるように、そうした態様での二輪駆動モードの設定では、未だ十分に動力損失の低減がなされているとは云えず、燃料消費率の向上の面で更なる改善の余地がある。
【0011】
すなわち、上記動力伝達装置では、二輪駆動モードの設定時においても、前輪側ギア機構54は、左右のフロントホイール50L,50Rの駆動には一切寄与しないにも拘わらず、それらフロントホイール50L,50Rの回転に伴い連れ回りされることとなる。一方、後輪側においても、左右のリアホイール51L,51Rの回転に伴って後輪側ギア機構55が連れ回されてしまう。
【0012】
これらギア機構54,55は、伝達されるトルクが大きいため、非常に質量の大きいギアが採用されている。またそれらギア機構54,55のギアは通常、潤滑油が充填されたケース内に収容されており、ギアの回転に伴い撹拌される潤滑油の流動抵抗も大きいものとなる。そのため、それらギア機構54,55の駆動に伴う動力損失は無視し難いものとなっており、燃料消費率の低減を妨げる要因となっている。
【0013】
このように従来の四輪駆動車の動力伝達装置では、後輪側の駆動系をエンジンからの動力伝達経路から切り離したときにも、上記2つのギア機構54,55が不必要に駆動されてしまうため、二輪駆動モードの設定に応じた燃料消費率の抑制効果は自ずと制限されたものとなっていた。
【0014】
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、更なる燃料消費率の低減を図ることのできる四輪駆動車の動力伝達装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果を記載する。
請求項1に記載の発明は、四輪駆動車の動力伝達装置であって、左右前輪の回転差を許容する前輪用差動機と、左右後輪の回転差を許容する後輪用差動機と、前記前輪用差動機に対して前輪側ギア機構を介して接続されるとともに前記後輪用差動機に対して後輪側ギア機構を介して接続されるプロペラシャフトと、前記プロペラシャフトを介した前記前輪側ギア機構と前記後輪側ギア機構との駆動連結を断接する第1の動力切断機構と、前記左右前輪の車軸と前記前輪側ギア機構との駆動連結、及び前記左右後輪の車軸と前記後輪側ギア機構との駆動連結の少なくとも一方を断接する第2の動力切断機構と、を備えるようにしたものである。
【0016】
上記構成では、第1の動力切断機構を切断すること、すなわちプロペラシャフトを介した前輪側ギア機構と後輪側ギア機構との駆動連結を切断させることで、四輪駆動車の前輪側と後輪側との駆動連結を断って、左右前輪又は左右後輪のみを駆動して走行する二輪駆動モードを設定可能となる。こうした二輪駆動モードの設定時に、更に第2の動力切断機構も切断すれば、左右前輪の車軸と前輪側ギアとの駆動連結、及び左右後輪の車軸と後輪側ギアとの駆動連結の少なくとも一方が遮断される。そしてそれにより、左右前輪の回転に伴う前輪側ギアの駆動、左右後輪の駆動に伴う後輪側ギアの回転の少なくとも一方が停止させられるようになる。したがって、上記構成によれば、二輪駆動モードの設定時に、前後輪の回転に伴うギア機構の不必要な駆動を停止可能となり、そうしたギア機構の駆動にかかる動力伝達装置の動力損失を抑止できるため、更なる燃料消費率の低減を図ることができる。
【0017】
また請求項2に記載の発明は、四輪駆動車の動力伝達装置であって、左右前輪の回転差を許容する前輪用差動機と、左右後輪の回転差を許容する後輪用差動機と、前記前輪用差動機に対して前輪側ギア機構を介して接続されるとともに前記後輪用差動機に対して後輪側ギア機構を介して接続されるプロペラシャフトと、前記プロペラシャフトを介した前記前輪側ギア機構と前記後輪側ギア機構との駆動連結を断接する第1の動力切断機構と、前記前輪用差動機と前記前輪側ギア機構との駆動連結を断接する第2の動力切断機構と、を備えるようにしたものである。
【0018】
上記構成では、第1の動力切断機構を切断すること、すなわち前輪側ギア機構と後輪側ギア機構との駆動連結を切断させることで、四輪駆動車の前輪側と後輪側との駆動連結が遮断され、二輪駆動モードが設定される。こうした二輪駆動モードの設定時に、第2の動力切断機構についても切断すれば、更に前輪用差動機と前輪側ギア機構との駆動連結についても遮断され、前輪側ギア機構は左右前輪及び左右後輪のいずれからも完全に遮断されるようになる。したがって、上記構成によれば、二輪駆動モードの設定時に前輪側ギア機構の駆動を停止でき、その分、動力伝達装置の動力損失を低減できるため、更なる燃料消費率の低減を図ることができる。
【0019】
更に請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の四輪駆動車の動力伝達装置において、当該四輪駆動車の動力源及び前記前輪側ギア機構にそれぞれ接続される第1要素と前記左右前輪にそれぞれ接続される第2要素及び第3要素との3つの要素を有するものとして前記前輪用差動機を構成するとともに、前記前輪用差動機の第1要素と前記前輪側ギア機構との駆動連結を断接するように前記第2の動力切断機構を構成したものである。
【0020】
上記構成では、車両の動力源の動力は、前輪用差動機の第1要素からその第2要素及び第3要素を介して左右前輪に伝達される。ここで、第1及び第2の動力切断機構が共に接続されていれば、前輪用差動機の第1要素に伝達された駆動力が、前輪側ギア機構、プロペラシャフト、及び後輪側ギア機構を経て後輪用差動機に伝達され、そこから更に左右後輪に伝達されるようになる。
【0021】
一方、第1の動力切断機構を切断すれば、上記プロペラシャフト等を介した前輪側から後輪側への動力伝達が遮断され、左右前輪のみを駆動しての二輪駆動モードが設定される。これとともに、第2の動力切断機構についても切断すれば、前輪用差動機の第1要素と前輪側ギア機構との駆動連結が切断されるようになる。そのため、前輪側ギア機構は左右前輪及び左右後輪のいずれからも完全に遮断され、前後輪の回転に伴う前輪側ギア機構の駆動が完全に停止される。したがって上記構成によれば、二輪駆動モードの設定時に前輪側ギア機構の駆動を停止でき、その分、動力伝達装置の動力損失を低減できるため、更なる燃料消費率の低減を図ることができる。
【0022】
また請求項4に記載の発明は、四輪駆動車の動力伝達装置であって、左右前輪の回転差を許容する前輪用差動機と、左右後輪の回転差を許容する後輪用差動機と、前記前輪用差動機に対して前輪側ギア機構を介して接続されるとともに前記後輪用差動機に対して後輪側ギア機構を介して接続されるプロペラシャフトと、前記プロペラシャフトを介した前記前輪側ギア機構と前記後輪側ギア機構との駆動連結を断接する第1の動力切断機構と、前記左右後輪のいずれか一方と前記後輪用差動機との駆動連結を断接する第2の動力切断機構とを備えるようにしたものである。
【0023】
上記構成では、第1の動力切断機構を切断すること、すなわち前輪側ギア機構と後輪側ギア機構との駆動連結を切断させることで、四輪駆動車の前輪側と後輪側との駆動連結が遮断され、二輪駆動モードが設定される。こうした二輪駆動モードの設定時に、第2の動力切断機構も切断すれば、更に左右後輪のいずれか一方と後輪用差動機との駆動連結についても遮断され、左右後輪の回転に伴う後輪側ギア機構の駆動が停止される。したがって上記構成によれば、後輪側ギア機構の駆動に要する分の動力伝達装置の動力損失を低減でき、更なる燃料消費率の低減を図ることができる。
【0024】
更に請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の四輪駆動車の動力伝達装置において、前記後輪側ギア機構に接続される第1要素と、前記左右後輪の一方及び他方にそれぞれ接続される第2要素及び第3要素との3つの要素を有するものとして前記後輪用差動機を構成するとともに、前記第2要素とその第2要素に接続された前記左右後輪のいずれか一方との駆動連結を断接するものとして前記第2の動力切断機構を構成したものである。
【0025】
上記構成では、第1及び第2の動力切断機構が共に接続されていれば、車両の動力源から伝達された駆動力が、前輪用差動機、前輪側ギア機構、プロペラシャフト、及び後輪側ギア機構を経て後輪用差動機の第1要素に伝達されるようになる。そしてその後輪用差動機の第1要素に伝達された駆動力は、更にその後輪用差動機の第2及び第3の要素を経て、左右後輪に伝達されるようになる。
【0026】
一方、第1の動力切断機構を切断すれば、前輪側から後輪側への動力伝達が遮断される。これとともに、第2の動力切断機構についても切断すれば、第2要素とその第2要素に駆動連結された左右後輪のいずれか一方との駆動連結も遮断される。このとき、左右後輪の回転に伴い後輪用差動機の第3要素が回転しても、駆動連結が遮断されてフリーとなったその第2要素が差動回転されるため、後輪側ギア機構に接続されたその第1要素は回転されないようになる。したがって上記構成によれば、二輪駆動モードの設定時に後輪側ギア機構の駆動を停止し、それにより更なる燃料消費率の低減を図ることができる。
【0027】
また請求項6に記載の発明は、四輪駆動車の動力伝達装置において、左右前輪の回転差を許容する前輪用差動機と、左右後輪の回転差を許容する後輪用差動機と、前記前輪用差動機に対して前輪側ギア機構を介して接続されるとともに前記後輪用差動機に対して後輪側ギア機構を介して接続されるプロペラシャフトと、前記プロペラシャフトを介した前記前輪側ギア機構と前記後輪側ギア機構との駆動連結を断接する第1の動力切断機構と、前記左右後輪と前記後輪用差動機との駆動連結を共に断接する第2の動力切断機構と、を備えるようにしたものである。
【0028】
上記構成では、第1の動力切断機構を切断すること、すなわち前輪側ギア機構と後輪側ギア機構との駆動連結を切断させることで、四輪駆動車の前輪側と後輪側との駆動連結が遮断され、二輪駆動モードが設定される。このとき第2の動力切断機構も切断すれば、更に左右後輪と後輪用差動機との駆動連結についても遮断され、後輪用差動機と後輪側ギア機構とは、左右前輪及び左右後輪のいずれからも完全に遮断されるようになる。したがって上記構成によれば、二輪駆動モードの設定時に、前後輪の回転に伴う後輪用差動機及び後輪側ギア機構の駆動を停止して、それらの駆動に要する分の動力伝達装置の動力損失を低減できるため、更なる燃料消費率の低減を図ることができる。
【0029】
更に請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の四輪駆動車の動力伝達装置において、前記後輪側ギア機構に接続される第1要素と、前記左後輪に接続される第2要素と、前記右後輪に接続される第3要素との3つの要素を有するものとして前記後輪用差動機を構成するとともに、前記左後輪と前記第2要素との駆動連結、及び前記右後輪と前記第3要素との駆動連結を共に断接するものとして前記第2の動力切断機構を構成したものである。
【0030】
上記構成では、第1及び第2の動力切断機構が共に接続されていれば、車両の動力源から伝達された駆動力が、前輪用差動機、前輪側ギア機構、プロペラシャフト、及び後輪側ギア機構を経て後輪用差動機の第1要素に伝達されるようになる。そしてその後輪用差動機の第1要素に伝達された駆動力は、更にその後輪用差動機の第2及び第3の要素を経て、左右後輪に伝達されるようになる。
【0031】
一方、第1の動力切断機構を切断すれば、前輪側から後輪側への動力伝達が遮断される。これとともに、第2の動力切断機構についても切断すれば、更に後輪用差動機の第2及び第3要素とそれらにそれぞれ駆動連結された左右後輪との間の駆動連結も遮断される。そしてそれにより、後輪側ギア機構と後輪用差動機とは、前後輪のいずれからも完全に遮断されるようになる。したがって上記構成によれば、二輪駆動モードの設定時に後輪側ギア機構の駆動を停止し、それにより更なる燃料消費率の低減を図ることができる。
【0032】
更に請求項8に記載の発明は、請求項4〜7のいずれかに記載の四輪駆動車の動力伝達装置において、当該四輪駆動車の動力源及び前記前輪側ギア機構にそれぞれ接続される第1要素と前記左右前輪にそれぞれ接続される第2要素及び第3要素との3つの要素を有するものとして前記前輪用差動機を構成したものである。
【0033】
上記構成では、動力源の動力は、前輪用差動機の第1要素からその第2要素及び第3要素を介して左右前輪に伝達される。そして第1及び第2の動力切断機構が共に接続されていれば、前輪用差動機に伝達された動力源の動力は、前輪側ギア機構、プロペラシャフト、後輪側ギア機構を経て後輪用差動機に伝達される。また、第1の動力切断機構を切断すれば、動力源と後輪側との駆動連結を遮断して、左右前輪のみによる二輪駆動モードを設定できる。
【0034】
また更に請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の四輪駆動車の動力伝達装置において、前記第2の動力切断機構をドッグクラッチとしたものである。
【0035】
上記構成によれば、ドッグクラッチ(噛み合わせクラッチ)の採用することで、上記のように更なる燃料消費率の低減が可能な四輪駆動車の動力伝達装置を、比較的簡易な構成の追加のみにより容易に実現できる。
【0036】
一方、請求項10に記載の発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の四輪駆動車の動力伝達装置において、前記駆動連結の接続に際して、その接続させる両者の回転を同期させる機能を更に有するものとして前記第2の動力切断機構を構成したものである。
【0037】
上記構成のように第2の動力切断機構に同期を行う機能を付与すれば、走行中においても同動力切断機構を円滑に接続させることができる。そのため、四輪駆動車の停車中、走行中を問わず、二輪駆動モードから四輪駆動モードへの切替えを実施可能となる。
【0038】
ちなみに前後輪の回転差がなければ、そうした第2の動力切断機構の同期に伴って、第1の動力切断機構でも同期がとれるようになる。そのため、第1の動力伝達機構には、同期を行う機能が付与されていなくとも、四輪駆動車の停車中、走行中のいずれにも二輪駆動モードから四輪駆動モードへの切替えは実施可能である。
【0039】
更に請求項11に記載の発明は、請求項1〜10のいずれかに記載の四輪駆動車の動力伝達装置において、該動力切断機構における前記前輪側ギア機構側の回転と前記後輪側ギア機構側の回転とを同期させる機能を更に有するものとして前記第1の動力切断機構を構成したものである。
【0040】
上記構成のように第1の動力切断機構に同期を行う機能を付与すれば、走行中においても、同動力切断機構を円滑に接続させられる。そのため、停車中のみならず、四輪駆動車の走行中にも二輪駆動モードから四輪駆動モードへの切替えを実施可能となる。ちなみに前後輪の回転差がなければ、そうした第1の動力切断機構の同期に伴って、第2の動力切断機構でも同期がとれるようになる。そのため、第1の動力伝達機構には同期を行う機能を付与せずとも、四輪駆動車の停車中、走行中を問わず、二輪駆動モードから四輪駆動モードへの切替えが可能となる。そのため、上述のような第2の動力切断機構にドッグクラッチを採用する構成においても、車両走行中の二輪駆動モードから四輪駆動モードへの切替えを実現できる。
【0041】
なお、各動力切断機構の切断には、同期を取る必要がないため、上記請求項10及び11の各構成のように、動力切断機構に同期を行う機能が付与されていなくとも、四輪駆動モードから二輪駆動モードへの切替えは、四輪駆動車の停車中、走行中のいずれにも実施可能である。
【0042】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態について、図1〜図3を参照して詳細に説明する。図1は、本実施の形態にかかる四輪駆動車の動力伝達装置の概略構成を示している。
【0043】
図1に示される四輪駆動車10の車両前方には、その動力源であるエンジン11と、そのエンジン11の出力する回転を変速するトランスミッション12とが配設されている。なお、この四輪駆動車10は、車体前方において横置型の搭載方式でエンジン11が搭載された、いわゆるFF車ベースの四輪駆動車となっている。
【0044】
こうした四輪駆動車10の動力伝達装置は、大きくはフロントディファレンシャル(フロントデフ)20、フロントギア機構30、プロペラシャフト31、リアギア機構34、及びリアディファレンシャル(リアデフ)40等を備えて構成されている。
【0045】
トランスミッション12のファイナルギア13は、フロントディファレンシャル20に連結されている。またフロントディファレンシャル20は、左右のフロントホイール(前輪)14L,14Rにそれぞれ接続された左右一対のフロントアクスル(左右前輪の車軸)15L,15Rに連結されている。
【0046】
フロントディファレンシャル20は、左右のフロントホイール14L,14R間の差動回転を許容する差動機であり、デフケース21、2個のピニオンギア22、及び左右一対のサイドギア23L,23Rを備えて構成されている。デフケース21は、フロントアクスル15L,15Rの回転軸上に同軸を有して回転可能に配設されており、トランスミッション12のファイナルギア13に駆動連結されている。またデフケース21には、各ピニオンギア22の回転軸が回転可能に支持されている。各ピニオンギア22は、左右の両サイドギア23L,23Rに噛み合わされている。両サイドギア23L,23Rは、左右のフロントアクスル15L,15Rにそれぞれ一体回転可能に連結されている。
【0047】
こうしたフロントディファレンシャル20では、ピニオンギア22が自転することなく、デフケース21の回転に応じてフロントアクスル15L,15Rの回転軸上を公転して、左右のサイドギア23L,23Rを回転させることで、フロントディファレンシャル20の全体が一体となって回転する。このときの左右のフロントホイール14L,14Rは、共に等速で回転される。一方、上記ピニオンギア22が公転しつつ自転することで、両サイドギア23L,23Rの回転速度に差が生じる。これにより、左右のフロントホイール14L,14Rの差動回転が許容されるようになっている。
【0048】
ちなみに本実施の形態では、このフロントディファレンシャル20が上記前輪用差動機に相当する構成となっている。また、デフケース21及びピニオンギア22が上記前輪用差動機の第1要素に、左右のサイドギア23L,23Rがその第2要素及び第3要素にそれぞれ対応している。
【0049】
一方、フロントディファレンシャル20のデフケース21は、フロントギア機構30を介してプロペラシャフト31に連結されている。フロントギア機構30は、車体の左右方向に延びるフロントアクスル15L,15R回りのデフケース21の回転を、車体の前後方向に延びるプロペラシャフト31回りの回転に変換して伝達している。
【0050】
詳しくは、フロントギア機構30は、デフケース21に連結されるリングギア30aと、プロペラシャフト31の車両前方側の端部に取り付けられたピニオンギア30bとからなる一対のギアによって構成されている。フロントギア機構30のリングギア30aは、右フロントアクスル15R上に同軸を有して相対回転可能に配設されている。またフロントギア機構30のリングギア30aは、内部に同フロントアクスル15Rが挿通された中空状のシャフト21aを介してフロントディファレンシャル20のデフケース21に一体回転可能に連結されるようになっている。本実施の形態では、こうしたフロントギア機構30が上記前輪側ギア機構に対応する構成となっている。
【0051】
なお本実施の形態の動力伝達装置では、デフケース21とフロントギア機構30との間には、ドッグクラッチ26が介設されている。そしてこのドッグクラッチ26により、上記デフケース21とフロントギア機構30との駆動連結が選択的に断接されるようになっている。
【0052】
より詳しくは、上記中空状のシャフト21aは、フロントディファレンシャル20のデフケース21とフロントギア機構30のリングギア30aとの中間で2つに分割されている。そして、上記ドッグクラッチ26により、その分割されたシャフト21aの両部分を一体に連結したり、その連結を解除したりすることで、上記駆動連結の断接がなされるようになっている。よって本実施の形態では、こうしたドッグクラッチ26が、前輪用差動機と前輪側ギア機構との駆動連結を断接する上記第2の動力切断機構に相当する構成となっている。
【0053】
さて、上記のようにフロントギア機構30に連結されたプロペラシャフト31は、その車両後方側にて、多板クラッチ機構33に接続され、更にその多板クラッチ機構33からリアギア機構34を介してリアディファレンシャル40に連結されている。
【0054】
多板クラッチ機構33は、交互に配設された複数のクラッチプレート及びクラッチディスクを有している。そして、それらクラッチプレートとクラッチディスクとの圧着により、プロペラシャフト31のフロントギア機構30側とリアギア機構34側とが一体に連結され、その圧着の開放により、そうした連結が解除されるようになっている。すなわち、多板クラッチ機構33によって、プロペラシャフト31を介したフロントギア機構30、リアギア機構34間の駆動連結が選択的に断接されるようになっている。よって本実施の形態では、この多板クラッチ機構33が上記第1の動力切断機構に相当する構成となっている。
【0055】
なお、本実施の形態では、そうした多板クラッチ機構33として、クラッチプレートとクラッチディスクとの圧着及びその開放を作動油圧の制御により行う油圧駆動式の多板クラッチ機構が採用されている。
【0056】
この多板クラッチ機構33では、作動油圧の制御に基づく上記クラッチプレートとクラッチディスクと間に作用する摩擦力の調整により、プロペラシャフト31を介したフロントギア機構30からリアギア機構34へのトルクの伝達率が変更されている。これにより、本実施形態の多板クラッチ機構33は、フロントホイール側とリアホイール側とのトルク分配率を可変とする機能も兼ね備えている。
【0057】
更に本実施の形態では、多板クラッチ機構33は、上記駆動連結に際し、プロペラシャフト31のフロントギア機構30側の回転とリアギア機構34側の回転とを同期させる機能も有している。具体的には、この多板クラッチ機構33では、上記駆動連結時に、クラッチプレートとクラッチディスクとを完全に圧着させる前に、それらプレート、ディスク間の押圧力を適宜に調整することで、それらの間に作用する摩擦力で回転速度差を縮小させるようにしている。ここでは、そうした同期時の上記押圧力の調整は、多板クラッチ機構33の作動油圧の調整を通じて行われている。これにより、プロペラシャフト31のフロントギア機構30側とリアギア機構34側とが異なる回転速度の状態にあるときにも、それらを駆動連結させられるようになっている。
【0058】
一方、リアギア機構34は、上記フロントギア32と同様に、リアディファレンシャル40に連結されたリングギア34aと、プロペラシャフト31の車両後方側の端部に取り付けられたピニオンギア34bとの一対のギアにより構成されている。このリアギア機構34は、車体前後方向に延びるプロペラシャフト31回りの回転を、車体左右方向に延びるリアアクスル16回りの回転に変換して伝達する。本実施の形態では、このリアギア機構34が上記後輪側ギア機構に相当する構成となっている。
【0059】
ちなみに、本実施の形態のフロントギア機構30及びリアギア機構34には、歯にねじれ角の付けられたスパイラル型のベベルギア(傘歯ギア)がそれぞれ採用されている。また本実施の形態のフロントギア機構30及びリアギア機構34には、ピニオンギア30b、34bの回転軸心を、リングギア30a,34aの回転軸心に対して車体下方側にオフセットさせた構成のギアが採用されている。なお、フロントギア機構30及びリアギア機構34は、摩耗防止や冷却のため、潤滑油の充填されたケース内にそれぞれ収容されている。
【0060】
一方、リアディファレンシャル40は、上記フロントディファレンシャル20と同様に、デフケース41、2個のピニオンギア42、及び左右一対のサイドギア43L,43Rを備えて構成されている。リアディファレンシャル40のデフケース41は、リアアクスル17L,17Rの回転軸上に同軸を有して回転可能に配設され、リアギア機構34を介してプロペラシャフト31に駆動連結されている。そのデフケース41に回転軸の支持された各ピニオンギア42は、左右のサイドギア43L,43Rに噛み合わされている。左右のサイドギア43L,43Rは、左右のリアホイール16L,16Rにそれぞれ接続された左右一対のリアアクスル17L,17Rにそれぞれ一体回転可能に接続されている。こうしたリアディファレンシャル40によって、左右のリアホイール16L,16Rの差動回転が許容されるようになっている。本実施形態では、このリアディファレンシャル40が上記後輪用差動機に相当する構成となっている。
【0061】
<動力伝達装置の電気的構成>
続いて、以上のように構成された四輪駆動車の動力伝達装置について、その制御系の電気的構成を説明する。
【0062】
本実施の形態の動力伝達装置において、上記ドッグクラッチ26及び多板クラッチ機構33の駆動制御は、同図1に示される電子制御ユニット(ECU)18により行われている。
【0063】
電子制御ユニット18は、四輪駆動車10の各種制御にかかる制御プログラムやデータ等の記憶されたROMや、その制御プログラムに基づく演算処理を実施するCPU、制御中に算出される演算結果等を一時的に記憶するRAM等を有して構成されている。また電子制御ユニット18は外部と間で信号の入出力を行うための入力ポート及び出力ポートが設けられている。
【0064】
電子制御ユニット18の入力ポートには、例えば前後左右の各ホイール14L,14R,16L,16Rの回転速度をそれぞれ検出する回転速度センサ等、四輪駆動車10の走行状況を検出する各種センサ類が接続されており、それらセンサ類の検出信号が入力されるようになっている。また電子制御ユニット18の出力ポートには、上記ドッグクラッチ26及び多板クラッチ機構33等の駆動回路が接続されている。
【0065】
なお、四輪駆動車10の運転室内には、車両の駆動モードを選択すべく運転者により操作されるモード切替スイッチ(SW)が設けられている。そしてモード切替スイッチの操作に応じて、左右のフロントホイール14L,14Rのみにエンジン11の動力を分配する二輪駆動モードと、前後左右の四輪のすべてにエンジン11の動力を分配可能な四輪駆動モードとのいずれかを選択可能となっている。
【0066】
上記電子制御ユニット18の入力ポートには、こうしたモード切替スイッチも接続されている。そして電子制御ユニット18は、モード切替スイッチの操作状況に応じて、上記ドッグクラッチ26及び多板クラッチ機構33を駆動制御して、四輪駆動車10の駆動モードの設定を行っている。
【0067】
<駆動モードの切替制御>
続いて、そうした駆動モードの切替えにかかる電子制御ユニット18の制御について説明する。
【0068】
まず、四輪駆動モードから二輪駆動モードへの切替えは、以下の手順で行われる。
すなわち、モード切替スイッチより、そうした四輪駆動モードから二輪駆動モードへの切替えを要求する旨の信号が入力されると、電子制御ユニット18は、多板クラッチ機構33を切断させる。これにより、プロペラシャフト31を介したフロントギア機構30とリアギア機構34との駆動連結が遮断される。またこれとともに電子制御ユニット18は、ドッグクラッチ26も切断させ、フロントディファレンシャル20のデフケース21とフロントギア機構30のリングギア30aとの駆動連結についても遮断させる。以上により、四輪駆動モードから二輪駆動モードへの切替えが完了する。
【0069】
一方、二輪駆動モードから四輪駆動モードへの切替えは、以下の手順で行われる。
電子制御ユニット18は、モード切替スイッチにより、そうした二輪駆動モードから四輪駆動モードへの切替えを要求する旨の信号が入力されると、まずは多板クラッチ機構33を接続させる。
【0070】
こうして多板クラッチ機構33が接続されると、クラッチプレート、クラッチディスク間の摩擦力により、プロペラシャフト31のフロントギア機構30側の回転とリアギア機構34側の回転とが同期されるようになる。そしてそれらフロントギア機構30側とリアギア機構34側との回転速度差が所定値以下となり、それらの回転の同期が完了すると、電子制御ユニット18は、ドッグクラッチ26を接続させている。そして以上により、二輪駆動モードから四輪駆動モードへの切替えが完了される。
【0071】
なお、上記多板クラッチ機構33による同期が完了すれば、フロントディファレンシャル20のデフケース21の回転とフロントギア機構30のリングギア30aの回転との同期も自動的になされることとなる。そのため本実施の形態では、ドッグクラッチ26自体には、同期を行う機能が具備されていないにも拘わらず、ドッグクラッチ26を四輪駆動車10の走行中に接続させられるようになっている。
【0072】
以上が、本実施の形態での駆動モードの切替えにかかる処理手順の詳細である。
このように、本実施の形態の四輪駆動車10では、ドッグクラッチ26と多板クラッチ機構33とを共に切断した状態とすることで、エンジン11の駆動力を左右のフロントホイール14L,14Rのみに分配する二輪駆動モードが設定されている。またドッグクラッチ26と多板クラッチ機構33とを共に接続した状態とすることで、エンジン11の駆動力を四輪のすべてに分配可能な四輪駆動モードが設定されている。
【0073】
<各駆動モードでの動力伝達装置の動作>
次に、こうした本実施の形態での各駆動モードでの動力伝達装置の動作を説明する。
【0074】
図2は、本実施の形態の動力伝達装置における四輪駆動モード設定時の動力伝達経路の状態を示している。
同図2に示されるように、四輪駆動モードの設定時には、エンジン11の駆動力は、トランスミッション12を介してフロントディファレンシャル20のデフケース21に伝達される。デフケース21に伝達された駆動力は、ピニオンギア22、サイドギア23L,23R、及びフロントアクスル15L,15Rを経て、左右のフロントホイール14L,14Rに伝達される。
【0075】
更に、四輪駆動モードの設定時にはドッグクラッチ26が接続されているため、デフケース21に伝達された駆動力は、フロントギア機構30を介してプロペラシャフト31にも伝達される。そして駆動力は、そのプロペラシャフト31からリアギア機構34、リアディファレンシャル40、及びリアアクスル17L,17Rを経て、左右のリアホイール16L,16Rにも伝達されるようになる。
【0076】
なお、こうした四輪駆動モードの設定時には、電子制御ユニット18によって、フロントホイール14L,14R側とリアホイール16L,16R側との差動に応じて、前後輪間のトルク配分が適宜になされるように多板クラッチ機構33の差動油圧が制御されている。
【0077】
一方、図3は、本実施の形態の動力伝達装置における二輪駆動モード設定時の動力伝達系路の状態を示している。
同図3に示されるように、二輪駆動モードの設定時においても、エンジン11の駆動力は、トランスミッション12を介してフロントディファレンシャル20のデフケース21に伝達される。そしてデフケース21に伝達された駆動力は、ピニオンギア22、サイドギア23L,23R、及びフロントアクスル15L,15Rを経て、左右のフロントホイール14L,14Rに伝達される。
【0078】
ただし、二輪駆動モードの設定時には、ドッグクラッチ26が切断されている。そのため、デフケース21に伝達された駆動力は、フロントギア機構30やプロペラシャフト31等に伝達されることはなく、リアホイール16L,16Rに伝達されることは勿論ない。
【0079】
更に二輪駆動モードの設定時には、多板クラッチ機構33も切断された状態となっている。そのため、フロントギア機構30、及びプロペラシャフト31の多板クラッチ機構33よりもフロントギア機構30側の部分は、フロントホイール14L,14R、及びリアホイール16L,16Rのいずれからも、完全に切断された状態となっている。したがって本実施の形態では、二輪駆動モードの設定時には、フロントギア機構30は、いずれのホイールの回転によっても連れ回されることなく、停止されるようになる。
【0080】
以上説明した本実施の形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1) 本実施の形態にかかる四輪駆動車の動力伝達装置は、プロペラシャフト31を介したフロントギア機構30とリアギア機構34との駆動連結を断接する多板クラッチ機構33と、フロントディファレンシャル20とフロントギア機構30との駆動連結を断接するドッグクラッチ26とを備えている。そして、多板クラッチ機構33とドッグクラッチ26とを共に切断することで、エンジン11の駆動力を左右のフロントホイール14L,14Rのみに分配する二輪駆動モードを設定している。こうした本実施の形態では、二輪駆動モードの設定時に、フロントギア機構30は、4つのホイール14L,14R,16L,16Rのいずれからも完全に遮断されるようになる。したがって、本実施の形態によれば、二輪駆動モードの設定時にフロントギア機構30の駆動を完全に停止させることができる。そして、そうしたフロントギア機構30の駆動分の動力損失を低減することで、更なる燃料消費率の低減を図ることができる。
【0081】
(2) 更に本実施の形態の多板クラッチ機構33は、そのフロントギア機構30側の回転とリアギア機構34側の回転とを同期させることもできるようになっている。そのため、たとえ四輪駆動車の走行中においても、多板クラッチ機構33を円滑に接続させることができる。また、そうした多板クラッチ機構33での同期に応じて、ドッグクラッチ26においても同期がとれるようになる。したがって、四輪駆動車10の走行中においても二輪駆動モードから四輪駆動モードへの切替えを実現できる。ちなみに、多板クラッチ機構33及びドッグクラッチ26の切断には同期が不要なため、四輪駆動モードから二輪駆動モードへの切替えについては、上記多板クラッチ機構33の同期機能の如何に拘わらず、四輪駆動車10の走行中にも円滑に行える。
【0082】
(3) また上記のように多板クラッチ機構33での同期により、併せて同期を取ることができるため、フロントディファレンシャル20とフロントギア機構30との駆動連結を断接する機構には、同期を行う機能を備えていないドッグクラッチ26を採用して、構成の簡易化が図られている。
【0083】
(4) 更に本実施の形態では、プロペラシャフト31を介したフロントギア機構30とリアギア機構34との駆動連結を断接する機構として、前輪側と後輪側とのトルク分配率を可変とする機構として従来から多くの四輪駆動車で採用されている多板クラッチ機構33を用いている。多板クラッチ機構33は、上記動力を切断する機能、及びトルク分配率を可変とする機能に加え、同期を行う機能も兼ね備えている。したがって、上記のような四輪駆動車の動力伝達装置を、より少ない設計の変更で実現することができる。
【0084】
(第2の実施の形態)
続いて、本発明を具体化した第2の実施の形態について、上記第1の実施の形態との相違点を中心として、図4を参照して詳細に説明する。
【0085】
本実施の形態の動力伝達装置は、上記第1実施の形態の動力伝達装置に対し、そのドッグクラッチ26の取付位置を変更した構成となっている。そしてそうした構成により、二輪駆動モードの設定時に、リアギア機構34の駆動を停止させるようにしたものである。
【0086】
図4に示されるように本実施の形態では、フロントディファレンシャル20とフロントギア機構30との間にはドッグクラッチ26は設けられておらず、フロントディファレンシャル20のデフケース21とフロントギア機構30のリングギア30aとが一体に連結される構成となっている。
【0087】
一方、本実施の形態では、右リアアクスル17Rに、ドッグクラッチ76が設けられており、そのドッグクラッチ76により、リアディファレンシャル40の右サイドギア43Rと右リアホイール16Rとの駆動連結を断接可能となっている。
【0088】
よって本実施形態では、このドッグクラッチ76が、左右後輪のいずれか一方と後輪用差動機との駆動連結を断接する上記第2の動力切断機構に相当する構成となっている。また本実施の形態では、リアディファレンシャル40のデフケース41及びピニオンギア42が上記後輪用差動機の第1要素に対応している。また、リアディファレンシャル40の右サイドギア43Rが上記後輪側差動機の第2要素に、その左サイドギア43Lがその第3要素にそれぞれ対応する構成となっている。
【0089】
こうした本実施の形態では、多板クラッチ機構33及びそのドッグクラッチ76を共に接続させることで、四輪駆動モードを設定することができる。このときの動力伝達装置の動作は、上記第1の実施の形態と同様である。
【0090】
また本実施の形態では、多板クラッチ機構33及びそのドッグクラッチ76を共に切断させることで、二輪駆動モードを設定するようにしている。
こうした二輪駆動モードの設定時には、エンジン、トランスミッション(同図では図示略)よりフロントディファレンシャル20のデフケース21に伝達された駆動力は、左右のフロントホイール14L,14Rに分配されるとともに、フロントギア機構30にも伝達される。したがって、二輪駆動モードの設定時に、フロントホイール14L,14Rの駆動に伴い、フロントギア機構30は駆動されてしまうこととなる。
【0091】
一方、このときの多板クラッチ機構33は切断されているため、フロントギア機構30に伝達された駆動力は、リアギア機構34には伝達されなくなる。
更に本実施の形態では、リアディファレンシャル40の左サイドギア43Lは左リアホイール16Lに連結されているものの、ドッグクラッチ76によって右サイドギア43Rと右リアホイール16Rとの連結は解除されている。そのため、両リアホイール16L,16Rの回転によっては、左サイドギア43Lのみが回転されることとなる。
【0092】
このときの右サイドギア43Rは、ドッグクラッチ76によって右リアホイール16Rとの駆動連結が絶たれ、その回転抵抗は非常に小さい。そのため、左リアホイール16Lにより左サイドギア43Lが回転されようとも、ピニオンギア42及び右サイドギア43Rが差動回転されるだけで、デフケース41は静止したままとなる。よって、本実施の形態の動力伝達装置では、二輪駆動モードの設定時にリアギア機構34は、4つのホイール14L,14R,16L,16Rのいずれによっても連れ回されることはない。
【0093】
なお、こうした本実施の形態においても、多板クラッチ機構33での同期に応じて、ドッグクラッチ76においても同期がとれるため、走行中にも二輪駆動モードから四輪駆動モードへの切替えを実現できる。
【0094】
以上説明した本実施の形態によれば、上記(2)〜(4)と同様或いはそれに準じた効果に加え、更に以下の効果を奏することができる。
(5) 本実施の形態にかかる四輪駆動車の動力伝達装置は、プロペラシャフト31を介したフロントギア機構30とリアギア機構34との駆動連結を断接する多板クラッチ機構33に加え、リアディファレンシャル40と右リアホイール16Rとの駆動連結を断接するドッグクラッチ76を備えている。そして多板クラッチ機構33とドッグクラッチ76とを共に切断することで、エンジン11の駆動力を左右のフロントホイール14L,14Rのみに分配する二輪駆動モードを設定している。そのため本実施の形態では、二輪駆動モードの設定時にリアギア機構34は、4つのホイール14L,14R,16L,16Rのいずれによっても連れ回されないようになる。したがって、本実施の形態によれば、二輪駆動モードの設定時にリアギア機構34の駆動を完全に停止させることができる。そして、そうしたリアギア機構34の駆動分の動力損失を低減することで、更なる燃料消費率の低減を図ることができる。
【0095】
(第3の実施の形態)
続いて、本発明を具体化した第3の実施の形態について、上記第2の実施の形態との相違点を中心として、図5を参照して詳細に説明する。
【0096】
本実施の形態にかかる動力伝達装置は、上記第2の実施の形態の動力伝達装置に対して、更にもう一つのドッグクラッチを追加した構成となっている。そしてそうした構成により、二輪駆動モード設定時に、リアディファレンシャル40のすべての要素の回転を停止させ、更なる燃料消費率の低減を図るようにしたものである。
【0097】
図5に示されるように本実施の形態では、右リアアクスル17Rに配設されたドッグクラッチ76Rに加え、左リアアクスル17Lにもドッグクラッチ76Lが設けられている。そして、それら2つのドッグクラッチ76R,76Lにより、右サイドギア43Rと右リアホイール16Rとの駆動連結、及び左サイドギア43Lと左リアホイール16Lとの駆動連結が、それぞれ断接されるようになっている。よって本実施の形態では、これらのドッグクラッチ76R,76Lが、左右後輪と後輪用差動機との駆動連結を共に断接する上記第2の動力切断機構に相当する構成となっている。
【0098】
こうした本実施の形態では、多板クラッチ機構33及びそのドッグクラッチ76L,76Rのすべてを接続させることで、四輪駆動モードが設定される。このときの動力伝達装置の動作は、上記実施の形態と同様である。
【0099】
また本実施の形態では、多板クラッチ機構33及びドッグクラッチ76L,76Rのすべてを切断させることで、二輪駆動モードが設定されている。
こうした二輪駆動モードの設定時には、2つのドッグクラッチ76L,76Rによって、左右のリアホイール16L,16Rとリアディファレンシャル40との駆動連結は、ともに切断されている。また、多板クラッチ機構33によって、プロペラシャフト31を介したフロントギア機構30とリアギア機構34との駆動連結も切断されている。そのため、本実施の形態では、二輪駆動モードの設定時には、リアギア機構34及びリアディファレンシャル40は、4つのホイール14L,14R,16L,16Rのいずれからも完全に遮断されるようになる。
【0100】
こうした本実施の形態によれば、上記(2)〜(4)と同様或いはそれに準じた効果に加え、更に次の効果を奏することができる。
(6) 本実施の形態にかかる四輪駆動車の動力伝達装置は、上記多板クラッチ機構33に加え、更にリアディファレンシャル40と左右のリアホイール16L,16Rとの駆動連結をそれぞれ断接するドッグクラッチ76L,76Rを備えている。そして多板クラッチ機構33及びドッグクラッチ76L,76Rのすべてを切断することで、エンジン11の駆動力を左右のフロントホイール14L,14Rのみに分配する二輪駆動モードを設定している。そのため本実施の形態では、二輪駆動モードの設定時にリアギア機構34及びリアディファレンシャル40は、4つのホイール14L,14R,16L,16Rのいずれからも遮断される。したがって、本実施の形態によれば、二輪駆動モードの設定時にリアギア機構34の駆動を完全に停止させることができる。またそれに加え、リアディファレンシャル40の各要素、すなわちデフケース41、ピニオンギア42、及び左右のサイドギア43L,43Rの駆動も停止させることができる。したがって、更なる燃料消費率の低減を図ることができる。
【0101】
以上説明した実施の形態は次のように変更することもできる。
・上記第2の実施の形態のドッグクラッチ76を、左リアホイール16L側に配設し、左リアホイール16Lと左サイドギア43Lとの駆動連結を断接させるようにしても良い。
【0102】
・上記各実施の形態では、運転者の手動により、四輪駆動車10の駆動モードを切り替える構成を説明したが、四輪駆動車10の走行状況等に応じて電子制御ユニット18が自動的に駆動モードを切り替えるようにしても良い。
【0103】
・上記各実施の形態では、プロペラシャフト31を介したフロントギア機構30とリアギア機構34との駆動連結を断接する多板クラッチ機構33として、油圧駆動式の機構を採用している。こうした多板クラッチ機構33として、クラッチプレートとクラッチディスクとの圧着及びその開放を電磁石の電磁力により行う電磁駆動式の多板クラッチ機構を採用しても良い。こうした電磁駆動式の多板クラッチ機構において、プロペラシャフト31を介したフロントギア機構30からリアギア機構34へのトルク伝達率を変更は、電磁石に対する通電制御により行うことができる。
【0104】
・また上記各実施の形態では、そうした第1の動力切断機構に、同期を行う機能やトルク分配率を可変とする機能も兼ね備えたものを採用しているが、そうした機能は必ずしも具備していなくても良い。例えば二輪駆動モードから四輪駆動モードへの切替えを四輪駆動車10の走行中に行う必要がなければ、同期を行う機能は不要であるし、四輪駆動モードの設定時にフロントホイール側とリアホイール側とのトルク分配率を可変とする必要がなければ、そうした機能はなくても良い。そうした場合にも、プロペラシャフト31を介したフロントギア機構30とリアギア機構34との駆動連結を断接さえできれば、ドッグクラッチ26,76,76L,76Rとの協働により、二輪駆動モードの設定時のフロントギア機構30又はリアギア機構34の駆動を停止させることはできる。
【0105】
更に、こうした第1の動力切断機構は、プロペラシャフト31を介したフロントギア機構30とリアギア機構34との駆動連結を切断した状態を保持可能なものでなくても良い。すなわち、フロントホイール側とリアホイール側との差動に応じて、自動的にトルク分配率を可変とする回転速度感応式のカップリング等を多板クラッチ機構33に替えて採用しても良い。このような駆動連結を切断した状態を保持できない機構では、それ単独では上記のような二輪駆動モードを設定することはできない。ただし、ドッグクラッチ26、又はドッグクラッチ76、或いはドッグクラッチ76L,76Rといった第2の動力切断機構が設けられていれば、それらの切断により二輪駆動モードを設定可能となる。
【0106】
要は、少なくともプロペラシャフト31を介したフロントギア機構30とリアギア機構34との駆動連結の断接が可能な機構であれば良く、例えばビスカスカップリングやドッグクラッチ等によっても、第1の動力切断機構を構成することができる。
【0107】
・上記各実施の形態にあって上記第2の動力切断機構に対応するドッグクラッチ26,76,86L,76Rを、他の動力切断機構に変更しても良い。その場合にも、対象とする要素間の駆動連結を断接可能な機構を採用すれば、上記各実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0108】
・また、そうした第2の動力切断機構に、同期を行う機能を付加するようにしても良い。そうした場合、第2の動力切断機構を、それ単体で、走行中に接続させることができるようになる。またその場合、第2の動力切断機構での同期により、第1の動力切断機構でも同期がとれるようになるため、第1の動力伝達機構に同期を行う機能が付与されていなくとも、四輪駆動車の走行中の二輪駆動モードから四輪駆動モードへの切替えが実施可能となる。
【0109】
・上記各実施形態では、車体前方にエンジン11が搭載された四輪駆動車10を例に説明したが、車体後方にエンジンの搭載された四輪駆動車にも上記各実施形態に準じた動力伝達装置を適用することはできる。その場合、その動力伝達装置の構成は、上記各実施形態の動力伝達装置の車体前後方向を逆にしたものとなる。勿論、そうした構成でも、上記各実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0110】
・上記各実施形態では、動力源としてエンジン11を備える四輪駆動車10について説明したが、電動モータ等の他の動力源を備える四輪駆動車についても上記各実施形態の動力伝達装置は適用できる。そして勿論、そうした場合にも、上記各実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0111】
以上の各実施の形態から把握される技術的思想を、以下に記載する。
(イ) 左右前輪の回転差を許容する前輪用差動機と、左右後輪の回転差を許容する後輪用差動機と、前記前輪用差動機に対して前輪側ギア機構を介して接続されるとともに前記後輪用差動機に対して後輪側ギア機構を介して接続されるプロペラシャフトと、前記プロペラシャフトにおいて前記前輪側ギア機構と前記後輪側ギア機構との駆動連結を断接する第1の動力切断機構と、前記後輪用差動機と前記後輪側ギア機構との駆動連結を断接する第2の動力切断機構と、を備えることを特徴とする四輪駆動車の動力伝達装置。
【0112】
(ロ) 前記後輪用差動機は、当該四輪駆動車の動力源及び前記後輪側ギア機構にそれぞれ接続される第1要素と前記左右後輪にそれぞれ接続される第2要素及び第3要素との3つの要素を有してなり、前記第2の動力切断機構は、前記後輪用差動機の第1要素と前記前輪側ギア機構との駆動連結を断接するものである上記(イ)に記載の四輪駆動車の動力伝達装置。
【0113】
(ハ) 左右前輪の回転差を許容する前輪用差動機と、左右後輪の回転差を許容する後輪用差動機と、前記前輪用差動機に対して前輪側ギア機構を介して接続されるとともに前記後輪用差動機に対して後輪側ギア機構を介して接続されるプロペラシャフトと、前記プロペラシャフトにおいて前記前輪側ギア機構と前記後輪側ギア機構との駆動連結を断接する第1の動力切断機構と、前記左右前輪のいずれか一方と前記前輪用差動機との駆動連結を断接する第2の動力切断機構と、を備えることを特徴とする四輪駆動車の動力伝達装置。
【0114】
(ニ) 前記前輪用差動機は、前記前輪側ギア機構に駆動連結される第1要素と、前記左右前輪にそれぞれ駆動連結される第2要素及び第3要素との3つの要素を有してなり、前記第2の動力切断機構は、前記左右前輪のいずれか一方とそのいずれか一方の前輪に接続された第2要素及び第3要素のいずれか一方との駆動連結を断接するものである上記(ハ)に記載の四輪駆動車の動力伝達装置。
【0115】
(ホ) 左右前輪の回転差を許容する前輪用差動機と、左右後輪の回転差を許容する後輪用差動機と、前記前輪用差動機に対して前輪側ギア機構を介して接続されるとともに前記後輪用差動機に対して後輪側ギア機構を介して接続されるプロペラシャフトと、前記プロペラシャフトにおいて前記前輪側ギア機構と前記後輪側ギア機構との駆動連結を断接する第1の動力切断機構と、前記左右前輪と前記前輪用差動機との駆動連結を共に断接する第2の動力切断機構と、を備えることを特徴とする四輪駆動車の動力伝達装置。
【0116】
(ヘ) 前記前輪用差動機は、前記前輪側ギア機構に接続される第1要素と、前記左後輪に接続される第2要素と、前記右前輪に接続される第3要素との3つの要素を有してなり、前記第2の動力切断機構は、前記左後輪と前記第2要素との駆動連結、及び前記右後輪と前記第3要素との駆動連結を共に断接することで前記動力伝達の断接を行う上記(ホ)に記載の四輪駆動車の動力伝達装置。
【0117】
(ト) 前記後輪用差動機は、当該四輪駆動車の動力源及び前記後輪側ギア機構にそれぞれ接続される第1要素と前記左右後輪にそれぞれ接続される第2要素及び第3要素との3つの要素を有してなる上記(イ)〜(ヘ)のいずれかに記載の四輪駆動車の動力伝達装置。
【0118】
(チ) 前記第2の動力切断機構は、ドッグクラッチである上記(イ)〜(ト)のいずれかに記載の四輪駆動車の動力伝達装置。
(リ) 前記第2の動力切断機構は、該動力切断機構における前記前輪側ギア機構側の回転と前記後輪側ギア機構側の回転とを同期させる機能を更に有してなる上記(イ)〜(ト)のいずれかに記載の四輪駆動車の動力伝達装置。
【0119】
(ヌ) 前記第1の動力切断機構は、その前輪側と後輪側との回転とを同期させる機能を更に有してなる上記(イ)〜(リ)のいずれかに記載の四輪駆動車の動力伝達装置。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態についてその全体構造の模式図。
【図2】第1実施形態の四輪駆動モード時の動力伝達態様を示すブロック図。
【図3】第1実施形態の二輪駆動モード時の動力伝達態様を示すブロック図。
【図4】本発明の第2実施の形態についてその全体構造の模式図。
【図5】本発明の第3実施の形態についてその全体構造の模式図。
【図6】従来の四輪駆動車の動力伝達装置の模式図。
【符号の説明】
10…四輪駆動車、11…エンジン(動力源)、12…トランスミッション、13…ファイナルギア、14L,50L…左フロントホイール(左前輪)、14R,50R…右フロントホイール(右前輪)、15L…左フロントアクスル(左前輪の車軸)、15R…右フロントアクスル(右前輪の車軸)、16L,51L…左リアホイール(左後輪)、16R,51R…右リアホイール(右後輪)、17L…左リアアクスル(左後輪の車軸)、17R…右リアアクスル(右後輪の車軸)、18…電子制御ユニット(ECU)、20,52…フロントディファレンシャル(前輪用差動機:21…デフケース、22…ピニオンギア、23L…左サイドギア、23R…右サイドギア)、26,76,76L,76R…ドッグクラッチ(第2の動力切断機構)、30,54…フロントギア機構(前輪側ギア機構:30a…リングギア、30b…ピニオンギア)、31,56…プロペラシャフト、33…多板クラッチ機構(第1の動力切断機構)、34,55…リアギア機構(後輪側ギア機構:34a…リングギア、34b…ピニオンギア)、40…リアディファレンシャル(後輪用差動機:41…デフケース、42…ピニオンギア、43L…左サイドギア、43R…右サイドギア)、57…動力切断機構。
Claims (11)
- 左右前輪の回転差を許容する前輪用差動機と、
左右後輪の回転差を許容する後輪用差動機と、
前記前輪用差動機に対して前輪側ギア機構を介して接続されるとともに前記後輪用差動機に対して後輪側ギア機構を介して接続されるプロペラシャフトと、
前記プロペラシャフトを介した前記前輪側ギア機構と前記後輪側ギア機構との駆動連結を断接する第1の動力切断機構と、
前記左右前輪の車軸と前記前輪側ギア機構との駆動連結、及び前記左右後輪の車軸と前記後輪側ギア機構との駆動連結の少なくとも一方を断接する第2の動力切断機構と、
を備える四輪駆動車の動力伝達装置。 - 左右前輪の回転差を許容する前輪用差動機と、
左右後輪の回転差を許容する後輪用差動機と、
前記前輪用差動機に対して前輪側ギア機構を介して接続されるとともに前記後輪用差動機に対して後輪側ギア機構を介して接続されるプロペラシャフトと、
前記プロペラシャフトを介した前記前輪側ギア機構と前記後輪側ギア機構との駆動連結を断接する第1の動力切断機構と、
前記前輪用差動機と前記前輪側ギア機構との駆動連結を断接する第2の動力切断機構と、
を備えることを特徴とする四輪駆動車の動力伝達装置。 - 前記前輪用差動機は、当該四輪駆動車の動力源及び前記前輪側ギア機構にそれぞれ駆動連結される第1要素と前記左右前輪にそれぞれ駆動連結される第2要素及び第3要素との3つの要素を有してなり、
前記第2の動力切断機構は、前記前輪用差動機の第1要素と前記前輪側ギア機構との駆動連結を断接するものである
請求項2に記載の四輪駆動車の動力伝達装置。 - 左右前輪の回転差を許容する前輪用差動機と、
左右後輪の回転差を許容する後輪用差動機と、
前記前輪用差動機に対して前輪側ギア機構を介して接続されるとともに前記後輪用差動機に対して後輪側ギア機構を介して接続されるプロペラシャフトと、
前記プロペラシャフトを介した前記前輪側ギア機構と前記後輪側ギア機構との駆動連結を断接する第1の動力切断機構と、
前記左右後輪のいずれか一方と前記後輪用差動機との駆動連結を断接する第2の動力切断機構と、
を備えることを特徴とする四輪駆動車の動力伝達装置。 - 前記後輪用差動機は、前記後輪側ギア機構に接続される第1要素と、前記左右後輪の一方及び他方にそれぞれ接続される第2要素及び第3要素との3つの要素を有してなり、
前記第2の動力切断機構は、前記第2要素とその第2要素に接続された前記左右後輪のいずれか一方との駆動連結を断接するものである
請求項4に記載の四輪駆動車の動力伝達装置。 - 左右前輪の回転差を許容する前輪用差動機と、
左右後輪の回転差を許容する後輪用差動機と、
前記前輪用差動機に対して前輪側ギア機構を介して接続されるとともに前記後輪用差動機に対して後輪側ギア機構を介して接続されるプロペラシャフトと、
前記プロペラシャフトを介した前記前輪側ギア機構と前記後輪側ギア機構との駆動連結を断接する第1の動力切断機構と、
前記左右後輪と前記後輪用差動機との駆動連結を共に断接する第2の動力切断機構と、
を備えることを特徴とする四輪駆動車の動力伝達装置。 - 前記後輪用差動機は、前記後輪側ギア機構に接続される第1要素と、前記左後輪に接続される第2要素と、前記右後輪に接続される第3要素との3つの要素を有してなり、
前記第2の動力切断機構は、前記左後輪と前記第2要素との駆動連結、及び前記右後輪と前記第3要素との駆動連結を共に断接するものである
請求項6に記載の四輪駆動車の動力伝達装置。 - 前記前輪用差動機は、当該四輪駆動車の動力源及び前記前輪側ギア機構にそれぞれ接続される第1要素と前記左右前輪にそれぞれ接続される第2要素及び第3要素との3つの要素を有してなる請求項4〜7のいずれかに記載の四輪駆動車の動力伝達装置。
- 前記第2の動力切断機構は、ドッグクラッチである請求項1〜8のいずれかに記載の四輪駆動車の動力伝達装置。
- 前記第2の動力切断機構は、前記駆動連結の接続に際して、その接続させる両者の回転を同期させる機能を更に有してなる請求項1〜8のいずれかに記載の四輪駆動車の動力伝達装置。
- 前記第1の動力切断機構は、該動力切断機構における前記前輪側ギア機構側の回転と前記後輪側ギア機構側の回転とを同期させる機能を更に有してなる請求項1〜10のいずれかに記載の四輪駆動車の動力伝達装置。
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