JP2004002825A - ポリオレフィン系樹脂製積層フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂製基材層の少なくとも片面側に、有機ジイソシアネート、高分子量ポリオール、鎖延長剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂(A)20〜60重量%とラジカル重合性不飽和単量体及び/またはその重合物からなるアクリル成分(B)80〜40重量%とを共重合して得られるアクリル変性ポリウレタン樹脂を含有する塗膜層1が積層されたポリオレフィン系樹脂製積層フィルム。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医療用や工業用の粘着フィルム(テープ)、看板や各種部品等への貼り付けを目的とするステッカーやマーキングフィルム等の装飾用粘着フィルム(テープ)向けのポリオレフィン系樹脂製積層フィルムに関するものであり、更に詳しくは、曲面追従性、耐傷付き性、耐候性等の長期耐久性能、密着性、耐溶剤性及び塗膜追従性等の諸性能に優れ、使用後に簡単な焼却設備で焼却し得るポリオレフィン系樹脂製積層フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、医療用や工業用の粘着フィルム(テープ)、看板や各種部品等への貼り付けを目的とするステッカーやマーキングフィルム等の装飾用粘着フィルム(テープ)向けのフィルムとしては柔軟性、耐傷付性、耐候性等が優れるポリ塩化ビニル系樹脂製フィルムが多用されてきた。
【0003】
しかし、ポリ塩化ビニル系樹脂製フィルムは、焼却・廃棄に際し、塩化水素ガス等が発生する危険性があるため、簡単な焼却設備では処理することができず、更に、焼却設備の耐久性を低下させるという問題があった。
【0004】
そこで、近年、ポリオレフィン系樹脂製フィルムを基材として用いることにより焼却負担を軽減する方法が試みられているが、従来のポリ塩化ビニル系樹脂製フィルムを基材としたものに比べて柔軟性、耐傷付性等が十分ではなく、特にポリ塩化ビニル系樹脂製フィルムと同等の曲面追従性と耐傷付性の両者、更には長期耐久性能を満足する製品を得ることは困難であった。
【0005】
例えば、上記ポリオレフィン系樹脂製フィルムの片面側に粘着剤層を積層して粘着テープ類として使用する場合、被着体に沿って該粘着テープを貼り付ける過程での均一伸び特性及び貼られた後の応力緩和特性が最も重要な性能となるが、ポリオレフィン系樹脂製フィルムは部分的に永久変形を起こしてネッキング現象を生じやすく、又施工時に傷が付きやすいという問題がある。
【0006】
これを改善する方法として各種エラストマーを用いる軟質系ポリオレフィン系樹脂製フィルムが提案されているが、耐傷付き性が充分でなく、他に耐溶剤性、施工時の作業性が悪いという問題があった。
【0007】
耐傷付性は基材フィルムの表面に架橋塗膜(ハードコート)を積層する方法で改善することが知られているが、公知の架橋塗膜(例えば、分子量約10000程度のアクリルポリオ−ルと有機ジイソシアネ−トを架橋して得られる塗膜)は耐ブロッキング、密着性を考慮してハ−ドセグメント部分の多い硬質塗膜となる故に軟質系ポリオレフィン基材に積層した場合、塗膜追従性、密着性に欠け、変形によるストレスで容易にクラックを生じやすい欠点があった。
【0008】
このように、ポリ塩化ビニル樹脂フィルムと同等の適度な柔軟性を維持し、且つ耐傷付き性等の優れた性能を有する長期耐久用のポリオレフィン系樹脂製フィルムはいまだ完成されていなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術の問題点を改善し、簡単な焼却設備で処理可能であり、更に適度な柔軟性を有して曲面及び折り曲げに対する施工性(曲面追従性)が良好で、且つ施工時等の耐傷付き性に優れ、密着性、耐溶剤性、耐候性及び塗膜追従性等の諸性能に優れたポリオレフィン系樹脂フィルムを提供するにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の要旨とするところは、(1)ポリオレフィン系樹脂製基材層の少なくとも片面側に、有機ジイソシアネート、高分子量ポリオール、鎖延長剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂(A)20〜60重量%とラジカル重合性不飽和単量体及び/またはその重合物からなるアクリル成分(B)80〜40重量%とを共重合して得られるアクリル変性ポリウレタン樹脂を含有する塗膜層1が積層されたポリオレフィン系樹脂製積層フィルム、(2)ポリオレフィン系樹脂製基材層の一方の面側に、有機ジイソシアネート、高分子量ポリオール、鎖延長剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂(A)20〜60重量%とラジカル重合性不飽和単量体及び/またはその重合物からなるアクリル成分(B)80〜40重量%とを共重合して得られるアクリル変性ポリウレタン樹脂を含有する塗膜層1が積層され、他方の面側にポリカーボネートポリウレタン樹脂を主成分とするポリウレタン樹脂を含有する塗膜層2が積層されたポリオレフィン系樹脂製積層フィルム、(3)高分子量ポリオールが分子量1000〜3000のポリカーボネートポリオールである上記(1)または(2)に記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルム、(4)アクリル変性ポリウレタン樹脂が水酸基を有し、かつ該アクリル変性ポリウレタン樹脂の水酸基価が5〜30KOHmg/gである上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルム、(5)ポリカーボネートポリウレタン樹脂が、ポリカーボネートジオールと脂肪族及び/または脂環族ジイソシアネートとの重合物であって分子末端に水酸基を有する重量平均分子量が15,000〜150,000のポリカーボネートポリウレタンを主成分とする、上記(2)〜(4)のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルム、(6) 塗膜層2が、ポリカーボネートポリウレタン樹脂と、
(a)脂肪族、脂環族及び芳香族ジイソシアネートのアダクト体並びに
(b)イソシアヌレート重合体
からなる群から選ばれる少なくとも1種とを反応させてなり、かつ塗膜層2の引張弾性率が300MPa以下である上記(2)〜(5)のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルム、(7)塗膜層1及び/または塗膜層2が、メチルエチルケトン可溶の紫外線吸収剤及び/またはヒンダードアミン系光安定剤を1〜30重量%含有する上記(1)〜(6)のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルム、(8)塗膜層1及び/または塗膜層2が、平均粒子径1〜10μmのポリアクリル樹脂粒子を1〜30重量%含有する上記(1)〜(7)のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルム、(9)ポリオレフィン系樹脂製基材層が、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、水素添加スチレン−ブタジエン共重合ゴム及び密度が0.900g/cm3以下の低密度メタロセン系ポリエチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種と、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレンとを含有する上記(1)〜(8)のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルム、(10)ポリオレフィン系樹脂製基材層が、多段重合法により共重合されたポリオレフィン系樹脂を50〜100重量%含有する層を有する上記(1)〜(9)のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルム、(11)多段重合法により共重合されたポリオレフィン系樹脂が、メルトフローレートが0.1〜30、23℃におけるキシレン可溶分の割合が30〜75重量%、かつ曲げ弾性率が50〜500MPaである、上記(10)に記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルム、(12) ポリオレフィン系樹脂製基材層が平均粒子径0.1〜10μmの無機系充填材を含有する上記(1)〜(11)のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルム、(13)ポリオレフィン系樹脂製基材層が、内層、中間層及び外層の少なくとも3つの層を有する上記(1)〜(12)のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルム、(14)中間層が多段重合法により共重合されたポリオレフィン系樹脂を50〜100重量%含有する層であり、かつ内層及び/または外層が、多段重合法により共重合されたポリオレフィン系樹脂以外のポリオレフィン系樹脂を含有する上記(13)に記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルム、(15)ポリオレフィン系樹脂製基材層の中間層が着色剤を含有する上記(13)または(14)に記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルム、(16)ポリオレフィン系樹脂製基材層が中間層のみに平均粒子径0.1〜10μmの無機系充填材を含有する上記(13)〜(15)のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルム、(17)ポリオレフィン系樹脂製基材層において、内層の引張弾性率(E1)と、内層を除いた残りの層の引張弾性率(E2)とが、E1≧E2の関係を満たす上記(13)〜(16)のいずれかに記載の積層フィルム、(18)ポリオレフィン系樹脂製基材層の引張弾性率が200〜900MPaである上記(1)〜(17)のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルム及び(19)上記(1)〜(18)のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルムの片面側に粘着剤層が積層されてなるポリオレフィン系樹脂製粘着フィルム、に存する。
【0011】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のポリオレフィン系樹脂製基材層(以下、「基材層」と記す)は、主としてポリオレフィン系樹脂から構成される。基材のポリオレフィン系樹脂の含有量は50〜100重量%であるのが曲面への追従性等の諸性能が良好となるので好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0013】
ポリエチレン系樹脂としては、エチレンの単独重合体、エチレンを主成分とするエチレンと共重合可能な他の単量体との共重合体(低密度ポリエチレン(LDPE)、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセン系触媒を用いて重合して得られたエチレン−α−オレフィン共重合体(メタロセン系ポリエチレン)等)及びこれらの混合物等が例示できる。
【0014】
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレンの共重合体、リアクター型のポリプロピレン系熱可塑性エラストマー及びこれらの混合物等が例示できる。また、本発明に用いるポリプロピレン系樹脂としては、曲げ弾性率が50〜500Mpa、特に100〜400MPaのものが好ましい。
【0015】
前記プロピレンの共重合体としてはプロピレンとエチレンまたは他のα−オレフィンとのランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)、またはブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)、ゴム成分を含むブロック共重合体あるいはグラフト共重合体等が挙げられる。前記プロピレンと共重合可能な他のα−オレフィンとしては、炭素原子数が4〜12のものが好ましく、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセン等が挙げられ、その1種または2種以上の混合物が用いられる。通常、α−オレフィンの混合割合はプロピレンに対して1〜10重量%程度である。
【0016】
リアクター型のポリプロピレン系熱可塑性エラストマーとしては、結晶融解熱(ΔH)が100g/J以下である低結晶性プロピレン単独重合体(出光石油化学(株)製 出光TPO、宇部興産(株)製 CAP、宇部レキセン社製 UT2115等)や、多段重合法により製造されたポリプロピレン系熱可塑性エラストマー((サンアロマー(株)製 キャタロイ、三菱化学(株)製 ゼラス、(株)トクヤマ P.E.R.等)が挙げられる。
【0017】
なお、結晶融解熱(ΔH)とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて、樹脂を一度融解点以上にして溶融した後、10℃/分の速度で冷却した時のDSCチャート上の結晶ピーク面積より計算した値のことである。
【0018】
また、本発明において、多段重合法とは、重合が1回で終了するのではなく、2段階以上の多段重合を行うことにより、複数の種類のポリマーを連続して製造することができる重合法を意味し、機械的な手法を用いて異種類のポリマーからなる混合樹脂を得るところの、所謂、通常のポリマーブレンド法とは全く異なる手法である。当該方法により、分子レベルでのブレンドタイプの共重合樹脂を生成することが可能である。このような重合法を採用すれば、例えばポリプロピレンに対して、第2成分を約80〜95重量%まで含有させることが可能となり、可塑化ポリ塩化ビニル樹脂と同等の物性を持たせることが初めて可能となる。通常の押出機等を用いたブレンド法では、分子量の高いゴム成分を用いると、溶融粘度が高いため、本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂のような微分散モルホロジーを有する樹脂は作成し得ないのである。
【0019】
多段重合法によって得られるポリプロピレン系熱可塑性エラストマーは、反応器中で(i)ハードセグメントと、(ii)ソフトセグメントとが2段階以上で多段重合されてなる共重合体である。(i)ハードセグメントとしては、プロピレン単独重合体ブロックや、あるいはプロピレンとα−オレフィンとの共重合体ブロック、例えば、プロピレン/エチレン、プロピレン/1−ブテン、プロピレン/エチレン/1−ブテン等の2元又は3元共重合体ブロックが挙げられる。また、(ii)ソフトセグメントとしては、エチレン単独重合体ブロックや、あるいはエチレンとα−オレフィンとの共重合体ブロック、例えば、エチレン/プロピレン、エチレン/1−ブテン、エチレン/プロピレン/1−ブテン等の2元又は3元共重合体ブロックが挙げられる。このような特定の重合法により共重合されたポリオレフィン系樹脂は、例えば特開平4−224809号公報に開示されているが、実際の市販品として、トクヤマ製(商品名=PER)、サンアロマー社製(商品名=キャタロイ)、三菱化学(株)製(商品名=ゼラス)等が挙げられる。
【0020】
本発明においては、多段重合法により製造されたポリプロピレン系熱可塑性エラストマーのうち、特に、メルトフローレート(MFR)が0.1〜30であり、かつ23℃におけるキシレン可溶分の割合が30〜75重量%、好ましくは40〜60重量%であるポリプロピレン系樹脂が好ましい。ここで、MFRは、JIS K 7210に従って測定した値である。キシレン可溶分の割合は以下のようにして求める。サンプル1gを油浴槽中のキシレン300ミリリットルに入れ、140℃で攪拌下に溶解させる。サンプルの添加から1時間後より、サンプルとキシレンとの混合物を、攪拌を続けながら1時間以内に100℃まで降温させる。その後、サンプルとキシレンとの混合物を急冷用油浴槽に移し、攪拌を続けながら23℃±2℃まで急冷し、その温度に20分間以上保持する。得られた析出物を濾紙で自然乾燥して除去する。濾液をエバポレーターを用いて蒸発乾固させ、得られた固形分を120℃で2時間減圧乾燥させ、その後常温まで放冷する。固形分の重量を測定し室温キシレン可溶分を算出する。
また、ポリエチレン系樹脂及び/またはポリプロピレン系樹脂に他の合成樹脂を混合することもできる。混合する他の樹脂として、例えばイソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、プロピレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム及びアクリロニトリル−イソプレンゴム等のジエン系ゴム(エラストマー)、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン非共役ジエンゴム、エチレン−ブタジエン共重合ゴム等の上記リアクター型のポリプロピレン系熱可塑性エラストマー以外のポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)やスチレン−ブタジエンブロック共重合体等のスチレン−ブタジエン系熱可塑性エラストマー及びスチレン−イソプレン共重合ゴム等のスチレン系熱可塑性エラストマー(これらの水素添加物を含む)が挙げられる。
【0021】
これらエラストマー成分は、ポリエチレン系樹脂及び/またはポリプロピレン系樹脂100〜40重量部に対し0〜60重量部配合することができる。
【0022】
基材層としてはポリプロピレン系樹脂を主体としたものが好ましく、ポリプロピレン系樹脂50〜100重量部に対しポリプロピレン系樹脂以外の樹脂を50〜0重量部含有するものが好ましい。ポリプロピレン系樹脂以外の樹脂としては上記したポリエチレン系樹脂、エラストマー等が挙げられるが、中でも密度が0.900g/cm3以下の低密度メタロセン系ポリエチレン、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー及び水素添加スチレン−ブタジエン共重合ゴムから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0023】
基材層は単層でも、少なくとも内層、中間層及び外層を有する多層でもよい。この場合、内層の引張弾性率(E1)と、内層を除いた層の引張弾性率(E2)とが、E1≧E2の関係を有する層(これは、3以上の層からなる基材層から内層のみを取り出すことを想定した場合、内層のみから構成されるフィルム1の引張弾性率(E1)と、内層を除いた層から構成されるフィルム2の引張弾性率(E2)とが、E1≧E2の関係にあることを意味する)であるのが好ましい。なお、内層とは、基材層が粘着フィルム用に後加工された場合に、粘着剤層が積層される側の層を意味し、その反対側の層を外層という。
【0024】
また、基材層が少なくとも内層、中間層及び外層を有する多層である場合、中間層の厚さが該基材層全体の厚さの50%以上であるものが好ましい。
【0025】
なお、基材層は、内層と中間層の間及び外層と中間層の間に、少なくとも1つの別の層を有していてもよい。この場合、該別の層は、ポリオレフィン系樹脂を含有していてもよいが、それ以外の樹脂、例えば、内層(及び/又は外層)と中間層との接着性を高めるような樹脂、を含有していてもよい。
【0026】
基材層の好ましい態様としては、具体的には例えば、(1)ホモポリプロピレン0〜100重量%及びランダムポリプロピレン100〜0重量%からなるポリプロピレン系樹脂95〜50重量%と水素添加スチレン−ブタジエン共重合ゴム5〜50重量%とを含有する層、(2)ホモポリプロピレン0〜100重量%及びランダムポリプロピレン100〜0重量%からなるポリプロピレン系樹脂90〜20重量%とポリオレフィン系熱可塑性エラストマー及び/または密度が0.900g/cm3以下の低密度メタロセン系ポリエチレン10〜80重量%とを含有する層、(3)ホモポリプロピレン及び/またはリアクター型のポリプロピレン系熱可塑性エラストマー50〜100重量%を含有する層、(4)多段重合法により共重合されたポリオレフィン系樹脂を50〜100重量%含有する層を有する層、(5)少なくとも内層、中間層及び外層を有し、中間層が多段重合法により共重合されたポリオレフィン系樹脂を50〜100重量%含有する層であり、かつ内層及び/または外層が、多段重合法により共重合されたポリオレフィン系樹脂以外のポリオレフィン系樹脂を含有層、すなわち内層及び/または外層が多段重合法により共重合されたポリオレフィン系樹脂に代えて他のポリオレフィン系樹脂を含有する層、または多段重合法により共重合されたポリオレフィン系樹脂に加えて他のポリオレフィン系樹脂を含有する層、等が挙げられる。
【0027】
基材層は引張弾性率が100〜1200MPa程度であるが、200〜900MPaであるものが基材層の加工性が良好となるので好ましく、更に300〜900MPaであるのが好ましい。
【0028】
基材層は耐候性の観点から、紫外線吸収剤及び/またはヒンダードアミン系光安定剤(HALS)等の光安定剤を含有することが好ましい。
【0029】
紫外線吸収剤としては、例えばサリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系及びトリアジン系等の紫外線吸収剤が挙げられる。その中でも特に、トリアジン系紫外線吸収剤、分子量が400以上のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。
【0030】
具体的には、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤としては、サリチル酸フェニル、4−t−ブチル−フェニル−サリシレート等が挙げられる。
【0031】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン等の2,2’−ジヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンゾイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−クロルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホンベンゾフェノン等の2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤類、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス−(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン等が挙げられる。
【0032】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール(分子量388)、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(分子量448)、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール](分子量659)等が挙げられる。
【0033】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、2−エチル−ヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、オクチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0034】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシフェニル)1,3,5−トリアジン、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−((ヘキシル)オキシ)−フェノール、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(オクチロキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(オクチロキシ)フェノール、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシロシキ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−((メチル)オキシ)フェノールが挙げられる。中でも、経時後基材層表面へ吹き出しにくいという点で、ベンゾトリアゾール系またはトリアジン系の紫外線吸収剤でかつ、分子量が300以上であるものが好ましい。紫外線吸収剤の配合量は、特に制限されるものではなく基材層から吹き出さない範疇であれば良く、基材層中の樹脂成分100重量部に対して通常0.01〜10重量部程度、好ましくは0.05〜5重量部である。
【0035】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジル−4−ベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ホスファイト(チバ・ガイギー(株)製「キマソープ944」)、1,3,8−トリアザ−7,7,9,9−テトラメチル−3−n−オクチルピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン(チバ・ガイギー(株)製「チヌビン144」)、1,2,3,4−テトラ(4−カルボニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)−ブタン、1,3,8−トリアザ−7,7,9,9−テトラメチル−2,4−ジオキソ−スピロ[4,5]デカン、トリ(4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)アミン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェニルカルバモイルオキシ−2,2,6,6テトラメチルピペリジン、4−p−トルエンスルホニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)テレフタレート等が挙げられる。中でも経時後基材層表面へ吹き出しにくいという点や長期耐候性が良好であるということから分子量が1000以上のものを用いることが好ましく、特に、ポリオレフィンにヒンダードアミン骨格を有する化合物を共重合させたものが吹き出しにくく好ましい。該分子量が1000以上のヒンダードアミン系光安定剤としては、 例えば、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N‘―ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物、N,N’,N“N”‘−テトラメキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、またはポリエチレン系樹脂にヒンダードアミン系光安定剤を共重合させたもの等があり、これらは単独または2種以上を混合させて用いても良い。
【0036】
配合量は、特に制限されるものではなく基材層から吹き出さない範疇であれば良く、基材層中の樹脂成分100重量部に対して0.01〜10重量部程度、好ましくは0.05〜5重量部である。
【0037】
基材には、その他必要に応じて、酸化防止剤、着色剤、充填材、スリップ剤(滑剤)、アンチブロッキング剤等をその目的・性能を損なわない範囲内で添加することが出来る。
【0038】
酸化防止剤としては、酸化防止剤としては、フェノール系、サルファイド系、リン系、イソシアヌレート系酸化防止剤等が挙げられる。中でも、フェノール系酸化防止剤が酸化防止効果に優れるので好ましく、更にフェノール系とリン系酸化防止剤を併用すると熱安定性が良好となるので特に好ましい。
【0039】
着色剤としては、一般的な有機及び無機顔料が挙げられ、ポリオレフィン系樹脂の通常の成形温度である300℃前後の温度で耐熱性を有するものであればその目的に応じて適宜選択可能であり、例えば、(ポリ)アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系、キナクリドン系、ジオキサジン系などの各種有機顔料、酸化チタンなどの酸化物系、クロム酸モリブデン酸系、硫化物・セレン化物系、フェロシアン化物系、炭酸カルシウム、カーボンブラックなどの各種無機顔料が挙げられる。配合量は基材層中の樹脂成分100重量部に対して通常1〜30重量部程度である。
【0040】
また、基材層が少なくとも内層、中間層及び外層を有する多層構造からなる場合は、着色剤を中間層に配合するのが、フィルム(基材層)の成形加工時に着色剤がプレートアウトし難くフィルムの外観が損なわれることがなく、またフィルムの色相が安定するので好ましい。
【0041】
充填材としては、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、クレー、マイカ、硫酸バリウム、ウィスカー、水酸化マグネシウム等の無機充填材が一般に用いられるが、中でもタルクを用いることが好ましい。無機系充填材の平均粒子径は、特に制限がないが、0.1〜10μmが好ましい。また、基材層が少なくとも内層、中間層及び外層を有する多層構造からなる場合は、無機系充填材は中間層のみに含有されていてもよい。
【0042】
無機系充填材の含有量は通常基材層中の樹脂成分100重量部当たり1〜100重量部である。
【0043】
滑剤としては、ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸アミド、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミドが挙げられる。中でもエルカ酸アミドが好ましい。
【0044】
滑剤の添加量は通常基材層中の樹脂成分100重量部当たり0.01〜10重量部である。
【0045】
アンチブロッキング剤としては、ポリウレタン樹脂ビーズ、ポリアクリル樹脂ビーズ、ポリカーボネート樹脂ビーズ等の有機系粉末や、カーボンブラック等の顔料、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、シリカアルミナ、クレー、タルク、酸化チタン等の無機系粉末が挙げられる。アンチブロッキング剤の添加量は通常基材層中の樹脂成分100重量部当たり0.01〜10重量部である。
【0046】
基材層を成形する方法としては、例えば、Tダイ成形法等の押出し成形法、インフレーション成形法及びカレンダー成形法等一般に公知のフィルム成形法が挙げられる。
基材層が内層、中間層及び外層を有する等、多層フィルムである場合、各層を積層する方法として、成形した個々のフィルム(層)をラミネーターで貼り合わせる方法やフィルム成形と同時に圧着ラミネートする方法を用いることが出来るが、多層Tダイ押出法によって成形と同時に積層フィルムを作成する方法が工程数も減らすことができて好ましい。
【0047】
基材層の厚さは、樹脂組成、隠蔽性及び曲面の追従性を考慮して適宜選択されるが、通常30〜500μm、好ましくは40〜200μmである。
【0048】
本発明の基材層は、塗膜層や粘着剤層との密着性を高める為に、フィルムの表面に易接着処理を施すのが好ましい。
【0049】
易接着処理としては、公知のコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、火炎処理等の方法が挙げられるが、処理条件はポリオレフィン系樹脂製フィルムの組成及びヌレ指数(JIS K 6768)の減衰率を考慮し適宜選択することが必要で、プライマー処理時のポリオレフィン系樹脂フィルムの易接着処理面のヌレ指数を最低でも37mN/mに確保する様調整すれば良い。
【0050】
本発明のポリオレフィン系樹脂製積層フィルムは、基材層の少なくとも片面側に、有機ジイソシアネート、高分子量ポリオール、鎖延長剤及び必要に応じて末端停止剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂(A)20〜60重量%とラジカル重合性不飽和単量体及び/またはその重合物からなるアクリル成分(B)80〜40重量%とを共重合して得られるアクリル変性ポリウレタン樹脂を含有する、好ましくは該アクリル変性ポリウレタン樹脂と脂肪族、脂環族あるいは芳香族ジイソシアネートの重合体またはそのアダクト体のいずれか1種以上からなる架橋剤との架橋体を含有する塗膜層1が積層されている。
【0051】
塗膜層1の該アクリル変性ポリウレタン樹脂またはその架橋体の含有量は、60〜100重量%であるのが好ましい。
【0052】
該アクリル変性ポリウレタン樹脂としては、有機ジイソシアネート、高分子量ポリオール、1個以上の活性水素と1個のラジカル重合性二重結合とを同一分子内に有するラジカル重合性二重結合含有化合物、鎖延長剤及び必要に応じて末端停止剤とから得られるラジカル重合性二重結合を含有するポリウレタン樹脂とラジカル重合性不飽和単量体とを共重合した有機溶媒に可溶であるアクリル変性ポリウレタン樹脂が分子構造を安定的に制御できる点で特に好ましい。また、該塗膜層1がポリオレフィン系樹脂製積層フィルムの表面層となる場合には、該アクリル変性ポリウレタン樹脂が前記ジイソシアネートの重合体またはそのアダクト体によって架橋されていると塗膜の耐傷付き性、耐溶剤性、ブロッキング性が更に良好となるので好ましい。
【0053】
アクリル変性ポリウレタン樹脂に用いられる有機ジイソシアネート成分としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、ω,ω′−ジイソシアネートジメチルシクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート等及びこれら2種類以上の混合物が挙げられる。
【0054】
これらの中でも、機械強度を重視する場合には、MDI等の芳香族ジイソシアネート、耐候性を重視する場合にはIPDI等の脂環族ジイソシアネート、水添MDI等が好ましい。
【0055】
高分子量ポリオール成分としては、ポリカーボネートグリコール、ポリエーテルグリコール、ポリエステルグリコール、ポリエーテルエステルグリコール、ポリオレフィングリコール等のポリオレフィンポリオール、シリコンポリオール等が挙げられ、中でもポリカーボネートグリコールが好ましい。ポリカーボネートグリコールとしては低分子量ジオールとアルキレンカーボネートまたはジアルキルカーボネートとから脱グリコールまたは脱アルコールによって得られるポリブチレンカーボネート、ポリヘキサメチレンカーボネート、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。ポリエーテルグリコールとしては環状エーテルを開環重合して得られるもの、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。ポリエステルグリコールとしてはジカルボン酸(コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸等)またはその無水物と低分子量ジオール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等)との重縮合によって得られるもの、例えばポリエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリブチレンセバケート等、低分子量ジオールへのラクトンの開環重合によって得られるもの、例えばポリカプロラクトン、ポリメチルバレロラクトン等が挙げられる。ポリエーテルエステルグリコールとしてはポリエステルグリコールに環状エーテルを開環重合したもの、ポリエーテルグリコールとジカルボン酸とを重縮合したもの、例えばポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペート等が挙げられる。ポリオレフィンポリオールとしてはポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等が挙げられる。シリコンポリオールとしてはポリジメチルシロキサンポリオール等が挙げられる。
【0056】
高分子量ポリオールは上記したものを2種類以上混合して用いても良い。
【0057】
高分子量ポリオールの重量平均分子量は通常200〜10000、好ましくは500〜6000、より好ましくは1000〜3000である。分子量が小さすぎると柔軟性が乏しく、分子量が大きすぎると密着性が低下する傾向にある。
【0058】
有機ジイソシアネートと高分子量ポリオールの反応仕込み量はNCO/OH(モル比)で通常、1.01〜10、好ましくは1.5〜5である。この比が小さすぎるとハードセグメント量が少なくなり耐傷付き性が低下する。一方、大きすぎると溶解性が乏しく、粘度も高くなりすぎる傾向にあるので好ましくない。
【0059】
鎖延長剤としては、ポリエステルポリオールの原料として用いられる通常、分子量500未満の低分子ジオール化合物、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチルテレフタレート、ビスフェノール−A等の芳香族系ジオール、N−メチルジエタノールアミン等のジアルカノールアミン等が挙げられる。更に、2,4−もしくは2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4’−ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−もしくは2,4,4−トリメチルヘキサンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、イソホロンジアミン等の脂肪族ジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDA)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン(水添MDA)、イソプロピリデンシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、トリシクロデカンジアミン等の脂環式ジアミン等の低分子ジアミン化合物が挙げられる。これら鎖延長剤は2種類以上の混合物として用いることも可能である。また、トリメチロールプロパン、グリセリン等のポリオール類も一部併用することができる。
【0060】
また、必要により使用される末端停止剤としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のモノアルコール、モノエチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン等のモノアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン等が挙げられる。
【0061】
1個以上の活性水素と1個のラジカル重合性二重結合とを同一分子内に有するラジカル重合性二重結合含有化合物としては、アリルアルコール、アリルアミン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、グリセリンモノアクリレート、グリセリンモノメタアクリレート、グリセリンモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンモノアクリレート、トリメチロールプロパンモノメタアクリレート等、及びこれらのε−カプロラクトン付加物、γ−メチルバレロラクトン付加物、エチレンオキシド付加物、プロピレンオキシド付加物等が挙げられる。また、これらの2種類以上の混合物でもよい。中でも2個以上の活性水素と1個のラジカル重合性二重結合とを同一分子内に有する化合物を用いることにより、ポリウレタン樹脂主鎖中にペンダント状のラジカル重合性二重結合を導入することができ、ポリウレタン鎖にポリマーがペンダント状にグラフト鎖として導入することが可能となり、ポリウレタン樹脂本来の性質を生かして欠点を他のポリマーで補うのに有効である。
【0062】
ラジカル重合性二重結合のポリウレタン樹脂中における含有量は通常、1〜200μeq/g、好ましくは10〜150μeq/g、更に好ましくは20〜100μeq/gである。二重結合の含有量が1μeq/g未満、すなわち分子量1000000当たりに1個未満では相溶性が不十分で溶液性状、塗膜性状が不良となる場合がある。また、二重結合の含有量が200μeq/gを超える場合、すなわち分子量5000当たりに1個より多いと、反応上2官能の比率が高く、ラジカル重合時に3次元化しやすくなる傾向がある。
【0063】
アクリル変性ポリウレタン樹脂における本発明におけるポリウレタン樹脂の製造は公知の方法に従い、ワンショット法、プレポリマー化法等によって行われる。ポリウレタン樹脂を製造する際の溶媒としては、通常、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン等の炭化水素類、ダイアセトンアルコール、イソプロパノール、第二ブタノール、第三ブタノール等一部のアルコール類、塩化メチレン、ジクロルエタン等の塩化物類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒類等及びこれらの2種類以上の混合物が用いられる。ポリウレタン樹脂を製造する際の触媒としては通常のウレタン化反応触媒が用いられる。例えばジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジオクトエート、スタナスオクトエート等の錫系、鉄アセチルアセトナート、塩化第二鉄等の鉄系、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の三級アミン系等が挙げられる。本発明における上記ポリウレタン樹脂の重量平均分子量としては通常、5000〜200000の範囲である。好ましくは10000〜150000、更に好ましくは15000〜100000である。この重量平均分子量が小さすぎると得られるアクリル変性ポリウレタン樹脂の塗膜物性が劣る傾向にある。また、重量平均分子量が大きすぎるとアクリル成分との相溶性が乏しく、溶液性状が低下する。さらに溶液粘度が高くなるため塗装作業性が劣る傾向にある。
アクリル変性ポリウレタン樹脂のアクリル成分を構成するのラジカル重合性不飽和単量体としては、アクリル酸、メタアクリル酸(以下、併せて「(メタ)アクリル酸」と記す)、(メタ)アクリル酸の誘導体及びこれらの混合物等が挙げられ、具体的には(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル系モノマー等及びこれらの2種類以上の混合物が挙げられる。
【0064】
本発明のアクリル変性ポリウレタン樹脂の製造は例えば、特開平4−159318、特公平5−43756、特公平7−78105、特開平9−268215等に例示されるようにラジカル重合性二重結合を含有するポリウレタン樹脂にラジカル重合性不飽和単量体をグラフト共重合する方法、特開平5−262846、特開平5−262847に例示されるように活性水素を有するアクリル系マクロマーをポリウレタン樹脂に付加重合する方法、特開平2−229873に例示されるように分子中に少なくとも一個のジアゾ結合を有するポリウレタン樹脂の存在下でラジカル重合性不飽和単量体を重合する方法等によればよい。更に上記ラジカル重合性不飽和単量体のラジカル重合物をポリウレタン樹脂原料と反応することによっても共重合することが可能である。例えば、特開平5−262847号公報では、2つの水酸基及び1つのメルカプト基を有するメルカプタン系連鎖移動剤を用いて末端ジヒドロキシマクロモノマーを有機ジイソシアネート化合物と反応する方法が紹介されている。この場合のメルカプタン系連鎖移動剤としては1−メルカプト−1,1−メタンジオール、1−メルカプト−1,1−エタンジオール、チオグリセリン、2−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプト−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプト−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1−メルカプト−2,2−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。また、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等のラジカル重合性不飽和結合とイソシアネート基とを有するモノマーを予め重合しマクロマーとして用いることも可能である。
ポリウレタン樹脂とアクリル成分との共重合は通常の溶液重合法により、窒素等の不活性ガス気流下、有機溶媒中、重合開始剤を添加し加熱して行われる。用いられる有機溶媒としてはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン等の炭化水素類、メタノール、エタノール、ブタノール、ダイアセトンアルコール、イソプロパノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のアルコール類、塩化メチレン、ジクロルエタン等の塩化物類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒類等及びこれらの2種類以上の混合物が挙げられる。
重合時の樹脂固形分濃度は通常、5〜95重量%、好ましくは10〜80重量%である。重合開始剤としてはアゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジt−ブチル、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。重合開始剤の添加量はラジカル重合性単量体に対して通常、0.001〜10重量%である。また、重合温度は10〜160℃、好ましくは30〜140℃である。
【0065】
アクリル変性ポリウレタン樹脂を構成するポリウレタン樹脂(A)とアクリル成分(B)の重量比率はポリウレタン樹脂(A)/アクリル成分(B)=20/80〜60/40である。ポリウレタン樹脂(A)が多いと耐傷付き性が著しく劣る。一方、アクリル成分(B)が多いと塗膜追従性が極端に劣り、クラック発生の原因となるので好ましくない。
【0066】
アクリル変性ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、通常15000〜200000、さらに好ましくは20000〜100000である。また、上記アクリル変性ポリウレタン樹脂の水酸基価は、5〜30KOHmg/gであるのが好ましい。水酸基価が5KOHmg/g未満では架橋密度が上がらず耐傷付き性、耐溶剤性、ブロッキング性が不十分となる恐れがあり、30KOHmg/gを超えても架橋密度が比例的に向上せず、逆に架橋塗膜物性の経日変化が著しくなり長期耐候性等を悪化させる恐れがある。
【0067】
本発明において、アクリル変性ポリウレタン樹脂の塗膜強度を向上する目的で必要に応じ用いられる架橋剤としては、前述したように脂肪族、脂環族あるいは芳香族ジイソシアネート重合体または該ジイソシアネート重合体のアダクト体が挙げられら、これらのいずれか1種以上を用いることができる。該架橋剤として具体的には、上記のポリウレタン樹脂の説明において挙げた有機ジイソシアネート中の脂肪族、脂環族または芳香族ジイソシアネートのイソシアヌレート重合体が挙げられ、アダクト体としては、これら脂肪族、脂環族または芳香族ジイソシアネートとエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパントリメタクリレート等とを付加重合したアダクト体が挙げられる。
【0068】
アクリル変性ポリウレタン樹脂(主剤)と、架橋剤との混合比は、通常主剤100重量部に対し架橋剤を5〜50重量部、好ましくは10〜30重量部使用する。
【0069】
主剤のポリオール中の水酸基と架橋剤中のイソシアネート基とのモル当量比が、1:0.5〜1:10の範囲であることが好ましい。
【0070】
また、これらの主剤及び架橋剤は溶剤に溶解させて用い、更に希釈溶剤等を用いて適当な濃度に混合して用いるのが通常である。
【0071】
更に本発明の積層フィルムにおいては、基材層の両方の面側に、上記特定のアクリル変性ポリウレタン樹脂を含有する塗膜層1(以下、「塗膜層1」と記す)を積層してもよく、これにより本発明の目的である非カール性、耐傷付き性及び耐ブロッキング性、耐候性等が良好な積層フィルムを提供することができる。また、本発明の積層フィルムにおいては、基材層の一方の面側に塗膜層1を積層し、他方の面側(本発明においては通常、接着剤層が積層される側)に、塗膜層1構成する樹脂成分と異なる樹脂成分からなる塗膜層、例えばポリカーボネートポリウレタン樹脂を主成分とするポリウレタン樹脂を含有する、好ましくは50〜100重量%、更に好ましくは60〜100重量%含有する塗膜層2(以下、「塗膜層2」と記す)を積層してもよい。この場合、ポリカーボネートポリウレタン樹脂の割合はポリウレタン樹脂中55〜100重量%であるのが好ましく、特に70〜100重量%であるのが好ましい。該基材層の一方の面側に塗膜層1を積層し、他方の面側に塗膜層2を積層してなる積層フィルムは、該積層フィルムの片面側に粘着剤層を積層して粘着フィルムとした際、耐傷付き性が優れる塗膜層1が粘着フィルム使用時の表面側となり、塗膜層2が粘着剤層側となるように用いるのが好ましいが、それとは逆の層構成、すなわち塗膜層1が粘着剤層を積層する側となり、その反対側が塗膜層2となるように用いてもよい。
【0072】
ポリカーボネートポリウレタン樹脂としては、ポリカーボネートジオールと脂肪族及び/または脂環族ジイソシアネートとの重合物であって分子末端に水酸基を有する重量平均分子量が15,000〜150,000のポリカーボネートポリウレタン(以下、「ポリカーボネートポリウレタン1」と記す)、例えばラッカータイプのもの)を主成分とするものが好ましい。該ポリカーボネートポリウレタン1はポリカーボネートポリウレタン樹脂中50〜100重量%であるのが好ましく、特に70〜100重量%であるのが好ましい。
【0073】
ポリカーボネートポリウレタン1の重量平均分子量が15,000未満だと、乾燥性を良くする為に過剰量の架橋剤が必要となる結果、ポリカーボネートポリウレタン1の架橋度が高くなり過ぎて柔軟な硬化膜が得られ難くなり、巻物状態での塗膜層のブロッキング性、UVインキ密着性及び曲面追随性が劣る傾向となる。
【0074】
一方、ポリカーボネートポリウレタン1の重量平均分子量が150,000を超えるとプライマー塗工時の溶液粘度が高くなり、作業性、乾燥性が悪くなる他、溶剤の過剰残存、気泡の発生頻度が高くなり、基材となるフィルムとの密着性を低下する原因となるので好ましくない。
【0075】
ポリカーボネートジオールは、下記一般式(1)で示されるものである。
【0076】
【化1】
HO−[−R−O−COO−]n−R−OH ・・・・(1)
(Rは脂肪族系、または脂環族系置換基)
ポリカーボネートジオールは、例えばアルキレンカーボネート、ジアリールカーボネート、ジアルキルカーボネートからなる群から選ばれる1種または2種以上の化合物とジオール類及び/またはポリエーテルポリオール類を反応させて得られる。
【0077】
アルキレンカーボネートの例としては、エチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート等があげられる。
【0078】
ジアリールカーボネートの例としては、ジフェニルカーボネート、フェニル−ナフチルカーボネート、ジナフチルカーボネート、4−メチルジフェニルカーボネート、4−エチルジフェニルカーボネート、4−プロピルジフェニルカーボネート、4,4’−ジメチル−ジフェニルカーボネート、4,4’−ジエチル−ジフェニルカーボネート、4,4’−ジプロピル−ジフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0079】
ジアルキルカーボネートの例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート、ジ−n−アミルカーボネート、ジイソアミルカーボネート等が挙げられる。
【0080】
これらカーボネート類に対する共反応物質として、まずジオール類の例としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−ペンタンジオール、3−メチル−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、2,3,5−トリメチルペンタンジオール等が挙げられる。
【0081】
また、ポリエーテルポリオール類の例としては、例えばテトラヒドロフランの開環重合により得られるポリテトラメチレングリコール、ジオール類のアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。ここで用いるジオール類の例として、たとえばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、異性体ペンタンジオール類、異性体ヘキサンジオール類またはオクタンジオール類例えば2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサノン、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサノン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサノン、トリメチロールプロパン、グリセリン等をあげることができ、アルキレンオキサイドの例として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン等が挙げられ、これらは2種以上混合して使用することも可能である。
【0082】
上述のジオール類及びポリエーテルポリオール類は1種単独でも、あるいはこれらを2種以上混合して使用しても差し支えない。これらはいずれも公知の方法で前述のアルキレンカーボネート、ジアリールカーボネート、ジアルキルカーボネートから選ばれる1種または2種以上の化合物と反応してポリカーボネートジオールを形成することができる。
【0083】
ポリカーボネートジオールの重量平均分子量は500〜4000、好ましくは1000〜3000であり、500より小さいと耐チッピング性が低下し、4000を越えると塗膜の外観上ちぢみ、うねり等の現象を起こし好ましくない。
【0084】
次に、ジイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート及びキシレンジイソシアネート等の脂肪族、脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。
【0085】
ポリカーボネートポリウレタンは、ポリカーボネートジオールにジイソシアネート化合物をモル比でポリカーボネートジオール:ジイソシアネート化合物=1:0.7〜1:5程度の割合で反応させることにより、公知の方法で製造することができる。このような方法としては、予めプレポリマー化した後、架橋剤または鎖延長剤を用いて高分子量ポリウレタンを製造する方法、または全成分を一段で反応させて高分子量ポリウレタンを製造する方法等の公知の方法が挙げられる。
【0086】
何れの方法で製造するにしても、ゴム弾性を有する塗膜層を形成する目的からポリカーボネートポリウレタンの分子構造は、直鎖状構造を主体とする構造であることが好ましい。
【0087】
本発明に用いるポリカーボネートポリウレタン樹脂を含有するプライマーは、架橋剤を添加せずに一液型塗工剤として使用することが可能であるが、必要に応じてポリカーボネートポリウレタン樹脂成分を主剤として、更に少量の架橋剤(硬化剤)を混合使用することもできる。
【0088】
混合する架橋剤としては、脂肪族、脂環族あるいは芳香族ジイソシアネートのいずれか1種類以上とエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパントリメタクリレート等とを付加重合して得られる、脂肪族、脂環族あるいは芳香族ジイソシアネートのアダクト体や、脂肪族、脂環族あるいは芳香族ジイソシアネート等を重合して得られるイソシアヌレート重合体が挙げられる。
【0089】
主剤/架橋剤の混合割合は、通常主剤のポリカーボネートポリウレタン樹脂100重量部に対し架橋剤を5〜40重量部、好ましくは10〜30重量部配合する。
【0090】
本発明の積層フィルムは屋外での長期及び過酷な条件下での耐候性を付与する目的で塗膜層に紫外線吸収剤及び/またはヒンダードアミン系光安定剤等の光安定剤を配合するのが好ましい。紫外線吸収剤及び光安定剤としては、前述の基材フィルムの説明において挙げられたものに加え、下記のものを使用することができる。
【0091】
紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−3’ラウリル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、メチル−3−[3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート−ポリエチレングリコールの縮合物、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール誘導体等が挙げられ、ヒンダードアミン系光安定剤としては、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物等が挙げられる。
【0092】
紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系としては中でも、メチルエチルケトン可溶のもの、特に常温で液状の紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤が塗膜形成用の塗工液への分散性、樹脂との相容性が良い点で好ましい。
【0093】
紫外線吸収剤またはヒンダードアミン系光安定剤の配合量は、各々単独または併用した場合でも、塗膜層中の樹脂成分100重量部に対し1〜70重量部添加することができ、塗膜層中1〜30重量%であるのが好ましい。紫外線吸収剤と光安定剤併用した場合、その添加割合は特に限定するものではないが、通常、紫外線吸収剤/ヒンダードアミン系光安定剤=1/3〜3/1(重量比)程度である。
【0094】
紫外線吸収剤及び/またはヒンダードアミン系光安定剤の配合量が少ないと、過酷な耐候試験(例えばスーパーUV試験により紫外線を600時間照射)で塗膜の微小クラックや陥没または脱落がみられ光沢が低下する恐れがあり好ましくない。一方、配合量が多すぎると塗膜の架橋度の低下を伴って、耐溶剤性、耐傷付き性能が低下するので好ましくない。
【0095】
更に塗膜層には、光沢制御、耐傷付き性向上、意匠性向上、巻物状態及び印刷工程でのブロッキング防止、インキ転移性の向上等の目的で、塗膜層に有機系及び/または無機系粉末を添加してもよい。
【0096】
有機系粉末としては、平均粒子径1〜10μmの架橋または未架橋のポリウレタン樹脂粒子及びポリアクリル樹脂粒子、ポリカーボネート樹脂粒子、ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸アミド、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミドが挙げられる。
【0097】
無機系粉末としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、シリカアルミナ、クレー、タルク、酸化チタン、カーボンブラックやメタリック調金属粉末等が挙げられる。
【0098】
塗膜層1には、上記の有機系及び無機系粉末の中でも、耐傷付き性を向上する点でポリアクリル樹脂粒子を添加することが好ましい。また塗膜層2には平均粒子径0.1〜5μmのシリカ粉末を使用することが好ましい。
【0099】
有機系及び/または無機系粉末の添加量は、塗膜層各々について、塗膜層中の樹脂成分100重量部に対し通常1〜100重量部程度使用でき、塗膜層中で1〜30重量%となるように使用するのが好ましいが、所望する透明性、表面光沢、非ブロッキング性、色相、耐傷付き性及び耐候性等を考慮して適量使用すればよい。
【0100】
例えば、シリカ粉末の場合には、添加量が20重量部を超えると耐候試験後にチョーキングや塗膜層の微細クラックを起こし易くなり、印刷インキとの密着不良原因となるので好ましくない。また本発明の積層フィルムを、透明用途に適用する場合は、塗膜層中のシリカ粉末の添加量を透明性に悪影響を与えない程度に抑えて使用すれば良い。通常、シリカ粉末の添加量は1〜20重量部であるのがより好ましい。
【0101】
また、塗膜層には必要に応じて4級アンモニウム塩基を有する帯電防止剤等を塗膜層各々について、塗膜層を構成する樹脂成分100重量部に対し、0.5〜5重量部添加することができる。添加量が0.5重量部未満であると、帯電防止効果が低く印刷前の搬送工程でのブロッキングトラブル、印刷工程での異物付着等を起こす恐れがある。一方、添加量が5重量部を超えると、インキの非転移性を悪化させる他、インキ密着性を阻害する原因になるので好ましくない。4級アンモニウム塩基を有する帯電防止剤としては、炭素原子数1〜20の、アルキルジメチルアミンやアルキルジエチルアミン等のジメチルまたはジエチル硫酸塩が挙げられ、特にアルキル基中の水素の代わりに水酸基を有するものが好ましい。
【0102】
基材層への塗膜層の形成は、アクリル変性ポリウレタン樹脂等の樹脂成分またはそれに必要に応じ架橋剤を加えた混合物を公知の有機溶剤に溶解し、更に必要に応じ希釈剤等を用いて適当な濃度に調製し、基材層に、ナイフコート、ロールコートまたはグラビアロールコート等の公知の方法で塗工し、次いで熱風乾燥機等を用いて、通常50〜200℃で数秒間〜数分加熱して乾燥及び硬化させることにより行う。
【0103】
乾燥後の塗膜層の厚さは、0.3〜5μm程度、好ましくは1〜3μmである。厚さが薄いと塗膜強度が不充分で、耐傷付き性、耐溶剤性、耐候性が満足されない恐れがある。一方、厚いと柔軟性または曲面追従性の悪化を招く恐れがあるので好ましくない。
【0104】
塗膜層が基材層の両面側に設けられた場合、積層フィルムの粘着剤層を積層する側の塗膜層はプライマーの役割を担うためその厚さは0.1〜1μmであるのが好ましい。
【0105】
塗膜層2は引張弾性率が300MPa以下であるのが好ましい。なお、本発明における塗膜層の引張弾性率の値は、塗膜層(フィルム)を作成し、該フィルムを室温23℃、相対湿度50%の条件下で1ヶ月間保管した後にJIS K 7127に従って測定して得られた値である。
【0106】
このようにして得られた本発明の積層フィルムの塗膜層を積層した側表面に印刷を施し、反対面(片面側にのみ塗膜層が形成されている場合はその反対の面)に必要に応じてコロナ放電処理やアンカーコートを施した後、粘着剤層を設けることにより、医療用や工業用の粘着フィルム(テープ)、看板、各種部品等への貼り付けを目的とするステッカーやマーキングフィルム等の装飾用粘着フィルム(テープ)が得られる。
【0107】
粘着剤の種類は特に限定されるものではなく、例えば、天然ゴム系、合成ゴム系、アクリル系、ウレタン系、ビニルエーテル系、シリコーン系、アミド系、スチレン系粘着剤、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エチレン系不飽和カルボン酸やその無水物でグラフト変性された酸変性オレフィン樹脂等の各種粘着剤が好適に用いられ、又、その形態は、溶液型、エマルジョン型、ホットメルト型等いずれであってもよい。前記粘着剤層には、粘着特性の制御等を目的に必要に応じて、例えばα−ピネンやβ−ピネン重合体、ジテルペン重合体、α−ピネン・フェノール共重合体等のテルペン系樹脂、脂肪族系や芳香族系、脂肪族・芳香族共重合体系等の炭化水素系樹脂、その他ロジン系樹脂やクマロンインデン系樹脂、(アルキル)フェノール樹脂やキシレン系樹脂など適当な粘着付与剤を配合できる。更に、液状ポリマーやパラフィン系オイルなどの軟化剤、充填剤、顔料、老化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤など、用途等に応じて必要な種々の添加剤を配合できる。
【0108】
【実施例】
以下に、本発明の実施形態を実施例を用いて詳述するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
<評価方法>
(1)塗工剤(主剤)の重量平均分子量
東ソー(株)製 HLC8020型ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置を用いて、溶媒にテトラヒドロフラン(THF)を使用し、昭和電工(株)製カラム KF806Lにて展開した。
【0109】
得られた結果を、ポリスチレン標準サンプルを基準とした重量平均分子量(Mw)で表した。
(2)引張弾性率
JIS K 7127に従って、フィルムの引張弾性率を測定した。
【0110】
但し、ダンベルは1号、引張速度は50mm/分で実施した。
(3)ネッキング特性
巾10mmの短冊状試験片を用い、前述の引張試験条件にて100%伸び変形下で10分間保持後、荷重を取り除き、取り出した。
【0111】
フィルムの変形率((試験後のフィルムの長さ−試験前のフィルムの長さ)×100/試験前のフィルムの長さ)(%)、変形状態及び塗膜の剥がれの有無を顕微鏡等で観察し下記ランク付けで判定した。
【0112】
○:均一に変形しており、除重後の変形率が30%未満である。
【0113】
塗膜剥がれなし。
【0114】
△:僅かにクビレあり、除重後の変形率が30〜50%である。
【0115】
×:クビレ著しく、除重後の変形率が50%を超える。
【0116】
微細クラックが発生、塗膜剥がれがある。
(4)塗膜追従性
上記ネッキング特性と同様の試験法で変形量のみ変更し、10%伸び変形下で保持した状態で粘着基材に固定した試験片を作成した。その試験片を顕微鏡(100倍)で観察し、塗膜の剥がれ及び微細クラック発生の有無を判定した。
【0117】
○:変化無く良好。
【0118】
△:微細クラックが僅かに認められるが実用上問題ない。
【0119】
×:微細クラックの発生があり、塗膜の剥がれが認められる。
(5)耐傷付き性
新東科学(株)製表面性測定機を用い、先端部が直径20mmの圧子にかなきん3号の綿布をセットし、積層フィルムの架橋塗膜表面を1kgの一定荷重下で200往復(速度120cm/分)摩擦した。
【0120】
試験後の表面状態を目視観察し、下記1〜5のランク付けで評価した。
【0121】
5:殆ど傷が無い。
【0122】
4:スクラッチ状の傷が僅かに認められる。
【0123】
3:スクラッチ状の傷が認められるが、目立たない。
【0124】
2:スクラッチ状の傷があり、目立つ。
【0125】
1:スクラッチ状の傷が著しく、実用上問題となる。
(6)耐候性
スーパーUV試験とサンシャインウェザーロメーター試験を実施した。
【0126】
スーパーUV試験は岩崎電気(株)製SUV−W11型を用い295〜450nmの紫外線強度85mW/cm2、ブラックパネル温度63℃、湿度70%で紫外線照射5時間/結露1時間とを交互に行った。
【0127】
サンシャインウェザーロメーター(SWOM)試験はスガ試験機製WEL−SUN−HC型を用い、ブラックパネル温度63℃、水噴霧を60分おきに12分間実施した。
【0128】
表−1に記載した照射時間での外観(グロス、クラック有無、汚れ)変化を判定した。
【0129】
<ポリオレフィン系樹脂製基材フィルムの製造>
(a)融点160℃、曲げ弾性率1400MPaのホモポリプロピレン35重量部、融点138℃、曲げ弾性率700MPaのプロピレン−エチレンランダム共重合体(:ランダムポリプロピレン)35重量部、水素添加スチレン−ブタジエン共重合ゴム(スチレン含有量10wt%、MFR3.5g/10分、水素添加率>90%)30重量部、ヒンダードアミン系光安定剤(チバ・スぺシャルティ・ケミカルズ(株)製 キマソーブ944)4重量部を混合した樹脂組成物をベースとし、カーボンブラック顔料5重量部を混合して調製した着色ポリプロピレン系樹脂組成物を用いて、三菱重工(株)製押出成型機により、厚さ0.1mmのポリオレフィン系樹脂製基材フィルムを作成した。
【0130】
次に、ポリオレフィン系樹脂製基材フィルムの両面をコロナ処理して、両面コロナ処理の基材フィルム(a)を得た。
【0131】
(b)融点160℃、曲げ弾性率1400MPaのホモポリプロピレン60重量部、融点140℃、曲げ弾性率200MPa、キシレン可溶分が60重量%である、多段重合法により共重合されたエチレン−プロピレン共重合体40重量部、ヒンダードアミン系光安定剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製キマソーブ944)0.1重量部を混合した樹脂組成物をベースとし、カーボンブラック顔料1重量部を混合して調製した着色ポリプロピレン系樹脂組成物を用いて、上記(a)と同様に、三菱重工(株)製押出成型機により厚さ0.1mmのポリオレフィン系樹脂製基材フィルムを作成し、次いでポリオレフィン系樹脂製基材フィルムの両面をコロナ処理して、両面コロナ処理の基材フィルム(b)を得た。
【0132】
(c)融点160℃、曲げ弾性率1400MPaのホモポリプロピレン40重量部、融点138℃、曲げ弾性率700MPaのプロピレン−エチレンランダム共重合体(:ランダムポリプロピレン)40重量部、融点160℃の低結晶性プロピレン単独重合体(結晶融解熱量△H;50g/J、曲げ弾性率;500MPa)20重量部、ヒンダードアミン系光安定剤(チバ・ガイギー(株)製 キマソープ944)0.1重量部を混合したポリプロピレン系樹脂組成物をベースとし、カーボンブラック顔料1重量部を混合して調製した着色ポリプロピレン系樹脂組成物を用いて、三菱重工(株)製押出成型機により、厚さ0.1mmのポリオレフィン系樹脂製基材フィルムを作成した。
【0133】
次に、該ポリオレフィン系樹脂製基材フィルムの両面をコロナ処理して、両面コロナ処理の基材フィルム(c)を得た。
【0134】
(d)融点140℃、曲げ弾性率200MPa、キシレン可溶分が60重量%である、多段重合法により共重合されたエチレン−プロピレン共重合体100重量部にヒンダードアミン系光安定剤としてポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]を0.5重量部混合したポリオレフィン系樹脂組成物、及び更に該組成物に酸化チタン60%濃度のマスターバッチを30重量部混合したポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、三菱重工(株)製押出成型機により、厚さ0.1mmのポリオレフィン系樹脂製基材フィルムを作製した。
【0135】
次に、該ポリオレフィン系樹脂製基材フィルムの両面をコロナ処理して、両面コロナ処理の基材フィルム(d)を得た。
実施例1
<アクリル変性ポリウレタン樹脂塗工液主剤の製造>
攪拌器、環流冷却器、滴下漏斗、温度計を取り付けた4ッ口フラスコ中にイソホロンジイソシアネート31.4重量部を仕込み、90℃に加熱し、攪拌しながら溶融したポリカーボネートジオール(プラクセルCD220、水酸基価56.1KOHmg/g、ダイセル化学工業(株)製)128.4重量部、グリセリンモノメタアクリレート(ブレンマーGLM、日本油脂(株)製)2.2重量部、メチルハイドロキノン0.02重量部を約1時間で滴下した。内温を90℃に保ち4時間反応させた後、メチルエチルケトン208.9重量部を添加し60℃で1時間攪拌して希釈した。次に攪拌下イソホロンジアミン8.7重量部、イソプロパノール52.2重量部の溶液を1時間で滴下し、更にジ−n−ブチルアミン3.3重量部を添加して末端を封鎖した。続いてメチルメタアクリレート157.9重量部、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート16.1重量部、メチルエチルケトン385.4重量部を仕込み窒素気流下で70℃に加熱してアゾビスイソブチロニトリル5.2重量部を3分割して1時間間隔で添加し、更に10時間反応した。得られたアクリル変性ポリウレタン樹脂溶液(主剤溶液)は樹脂固形分濃度35重量%、該樹脂溶液の粘度500mPa・s、樹脂の重量平均分子量47000であった。
【0136】
<アクリル変性ポリウレタン樹脂塗工液の調製>
上記で製造した主剤溶液100重量部に付き、架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネート重合体の75重量%溶液を7重量部、溶剤成分としてメチルエチルケトンを80重量部、更に紫外線吸収剤としてメチル−3−[3−t−ブチル−5−(2H−ベンソトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート−ポリエチレングリコールの縮合物を2.5重量部、ヒンダードアミン系光安定剤としてビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケートを2.5重量部混合し、固形分濃度約21重量%の塗工液を調製した。
【0137】
<ポリオレフィン系樹脂製基材フィルムの塗工処理>
ポリオレフィン系樹脂製基材フィルム(a)の片面(表面側)のコロナ処理面上に上記のアクリル変性ポリウレタン樹脂塗工液を、リバースロールコーターを使用して塗工後、連続して100℃の熱風乾燥機内で20秒間加熱処理し、積層フィルムを得た。積層フィルムを冷却後巻物状態で巻き取った。
【0138】
なお、乾燥後の塗膜層の厚さは2μm、塗膜重量を測定した結果は、2.0g/m2 であった。
【0139】
得られた積層フィルムの各種評価結果を表−1に示す。
実施例2〜7
実施例1と同様の装置を用い、表−1に示す量の原料を用いて実施例1と同様にしてアクリル変性ポリウレタン樹脂を製造した。得られたアクリル変性ポリウレタン樹脂溶液(主剤溶液)は樹脂固形分濃度35重量%、該樹脂溶液の粘度及び樹脂の重量平均分子量は表−1に示すとおりである。
【0140】
次に各主剤溶液を用いて実施例1と同様にして塗工液を調製し、実施例1と同様にしてポリオレフィン形樹脂製基材フィルム(ただし、実施例2〜5においては(a)、実施例6においては(b)、実施例7においては(c)を用いた)に塗工処理を施し、積層フィルムを得た。積層フィルムを冷却後巻物状態で巻き取った。
【0141】
なお、乾燥後の塗膜層の厚さは2μm、塗膜重量を測定した結果は、2.0g/m2 であった。
【0142】
得られた積層フィルムの各種評価結果を表−1に示す。
実施例8
実施例1で得られた樹脂固形分濃度35重量%の主剤液100重量部に対し、平均粒径2μmのポリアクリル樹脂粒子(架橋ポリメチルメタクリレート樹脂粒子)5重量部(約12重量%)を混合し分散させアクリル変性ポリウレタン樹脂溶液(主剤溶液)を得た。
【0143】
次に該主剤溶液を用いて実施例1と同様にして塗工液を調製し、実施例1と同様にしてポリオレフィン形樹脂製基材フィルム(a)に塗工処理を施し、積層フィルムを得た。積層フィルムを冷却後巻物状態で巻き取った。
【0144】
なお、乾燥後の塗膜層の厚さは2μm、塗膜重量を測定した結果は、2.0g/m2 であった。
【0145】
得られた積層フィルムの各種評価結果を表−1に示す。
実施例9
ポリオレフィン系樹脂製基材フィルム(d)の両面コロナ処理面上に実施例1で使用したアクリル変性ポリウレタン樹脂塗工液を、リバースロールコーターを使用して塗工後、連続して100℃の熱風乾燥機内で20秒間加熱処理し、積層フィルムを得た。積層フィルムを冷却後巻物状態で巻き取った。
【0146】
なお、乾燥後の各塗膜層の厚さは2μm、塗膜重量を測定した結果は、2.0g/m2 であった。
【0147】
得られた積層フィルムの各種評価結果を表−1に示す。
比較例1、3
実施例1と同様の装置を用い、表−1に示す量の原料を用いて実施例1と同様にしてアクリル変性ポリウレタン樹脂を製造した。得られたアクリル変性ポリウレタン樹脂溶液(主剤溶液)は樹脂固形分濃度35重量%、該樹脂溶液の粘度及び樹脂の重量平均分子量は表−1に示すとおりである。
【0148】
次に該主剤溶液を用いて実施例1と同様にして塗工液を調製し、実施例1と同様にしてポリオレフィン形樹脂製基材フィルム(a)に塗工処理を施し、積層フィルムを得た。積層フィルムを冷却後巻物状態で巻き取った。
【0149】
なお、乾燥後の塗膜層の厚さは2μm、塗膜重量を測定した結果は、2.0g/m2 であった。
【0150】
得られた積層フィルムの各種評価結果を表−1に示す。
比較例2
攪拌器、環流冷却器、滴下漏斗、温度計を取り付けた4ッ口フラスコ中にメチルメタアクリレート280重量部、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート35重量部、2−エチルヘキシルアクリレート35重量部、メチルエチルケトン585重量部を仕込み窒素気流下で80℃に加熱してアゾビスイソブチロニトリル4.2重量部を添加し、10時間反応させた。
【0151】
得られたアクリル樹脂溶液(主剤溶液)は樹脂固形分濃度35重量%、該樹脂溶液の粘度300mPa・s、樹脂の重量平均分子量16000であった。
【0152】
次に該主剤溶液を用いて実施例1と同様にして塗工液を調製し、実施例1と同様にしてポリオレフィン形樹脂製基材フィルム(a)に塗工処理を施し、積層フィルムを得た。積層フィルムを冷却後巻物状態で巻き取った。
【0153】
なお、乾燥後の塗膜層の厚さは2μm、塗膜重量を測定した結果は、2.0g/m2 であった。
【0154】
【表1】
【発明の効果】
本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムは、ポリ塩化ビニル樹脂フィルムと同様の加工及び取り扱いができ、曲面追従性、耐傷付き性、耐溶剤性(耐ガソリン性)、耐候性の何れの諸性能も優れており、医療用や工業用の粘着フィルム(テープ)、看板、各種部品等への貼り付けを目的とするステッカーやマーキングフィルム等の装飾用粘着フィルム(テープ)用のフィルムとして好適に使用できる。
Claims (19)
- ポリオレフィン系樹脂製基材層の少なくとも片面側に、有機ジイソシアネート、高分子量ポリオール、鎖延長剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂(A)20〜60重量%とラジカル重合性不飽和単量体及び/またはその重合物からなるアクリル成分(B)80〜40重量%とを共重合して得られるアクリル変性ポリウレタン樹脂を含有する塗膜層1が積層されたポリオレフィン系樹脂製積層フィルム。
- ポリオレフィン系樹脂製基材層の一方の面側に、有機ジイソシアネート、高分子量ポリオール、鎖延長剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂(A)20〜60重量%とラジカル重合性不飽和単量体及び/またはその重合物からなるアクリル成分(B)80〜40重量%とを共重合して得られるアクリル変性ポリウレタン樹脂を含有する塗膜層1が積層され、他方の面側にポリカーボネートポリウレタン樹脂を主成分とするポリウレタン樹脂を含有する塗膜層2が積層されたポリオレフィン系樹脂製積層フィルム。
- 高分子量ポリオールが分子量1000〜3000のポリカーボネートポリオールである請求項1または2に記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルム。
- アクリル変性ポリウレタン樹脂が水酸基を有し、かつ該アクリル変性ポリウレタン樹脂の水酸基価が5〜30KOHmg/gである請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルム。
- ポリカーボネートポリウレタン樹脂が、ポリカーボネートジオールと脂肪族及び/または脂環族ジイソシアネートとの重合物であって分子末端に水酸基を有する重量平均分子量が15,000〜150,000のポリカーボネートポリウレタンを主成分とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルム。
- 塗膜層2が、ポリカーボネートポリウレタン樹脂と、
(a)脂肪族、脂環族及び芳香族ジイソシアネートのアダクト体並びに
(b)イソシアヌレート重合体
からなる群から選ばれる少なくとも1種とを反応させてなり、かつ塗膜層2の引張弾性率が300MPa以下である請求項2〜5のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルム。 - 塗膜層1及び/または塗膜層2が、メチルエチルケトン可溶の紫外線吸収剤及び/またはヒンダードアミン系光安定剤を1〜30重量%含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルム。
- 塗膜層1及び/または塗膜層2が、平均粒子径1〜10μmのポリアクリル樹脂粒子を1〜30重量%含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルム。
- ポリオレフィン系樹脂製基材層が、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、水素添加スチレン−ブタジエン共重合ゴム及び密度が0.900g/cm3以下の低密度メタロセン系ポリエチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種と、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレンとを含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルム。
- ポリオレフィン系樹脂製基材層が、多段重合法により共重合されたポリオレフィン系樹脂を50〜100重量%含有する層を有する請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルム。
- 多段重合法により共重合されたポリオレフィン系樹脂が、メルトフローレートが0.1〜30、23℃におけるキシレン可溶分の割合が30〜75重量%、かつ曲げ弾性率が50〜500MPaである、請求項10に記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルム。
- ポリオレフィン系樹脂製基材層が平均粒子径0.1〜10μmの無機系充填材を含有する請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルム。
- ポリオレフィン系樹脂製基材層が、内層、中間層及び外層の少なくとも3つの層を有する請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルム。
- ポリオレフィン系樹脂製基材層の中間層が多段重合法により共重合されたポリオレフィン系樹脂を50〜100重量%含有する層であり、かつ内層及び/または外層が、多段重合法により共重合されたポリオレフィン系樹脂以外のポリオレフィン系樹脂を含有する請求項13に記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルム。
- ポリオレフィン系樹脂製基材層の中間層が着色剤を含有する請求項13または14に記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルム。
- ポリオレフィン系樹脂製基材層が中間層のみに平均粒子径0.1〜10μmの無機系充填材を含有する請求項13〜15のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルム。
- ポリオレフィン系樹脂製基材層において、内層の引張弾性率(E1)と、内層を除いた残りの層の引張弾性率(E2)とが、E1≧E2の関係を満たす請求項13〜16のいずれか1項に記載の積層フィルム。
- ポリオレフィン系樹脂製基材層の引張弾性率が200〜900MPaである請求項1〜17のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルム。
- 請求項1〜18のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂製積層フィルムの片面側に粘着剤層が積層されてなるポリオレフィン系樹脂製粘着フィルム。
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