JP2010215738A - 帯電防止性絵柄印刷用ポリエステルフィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】 高度な隠蔽性、反射特性、静電気防止性を有し、各種反射部材として有用なフィルムを提供する。
【解決手段】 少なくとも一方のフィルム表面に表面固有抵抗値が1×106〜1×1012Ωである塗布層を有し、当該塗布層が、分子中に3級アミノ基を有する鎖延長剤の3級アミノ基を4級化した化合物とポリカーボネートポリオールとを構成成分として含むポリウレタン樹脂(A)と、カチオン性高分子帯電防止剤(B)とを含有し、フィルムの透過濃度が0.5〜5.0であることを特徴とする帯電防止性絵柄印刷用ポリエステルフィルム。
【選択図】 なし
【解決手段】 少なくとも一方のフィルム表面に表面固有抵抗値が1×106〜1×1012Ωである塗布層を有し、当該塗布層が、分子中に3級アミノ基を有する鎖延長剤の3級アミノ基を4級化した化合物とポリカーボネートポリオールとを構成成分として含むポリウレタン樹脂(A)と、カチオン性高分子帯電防止剤(B)とを含有し、フィルムの透過濃度が0.5〜5.0であることを特徴とする帯電防止性絵柄印刷用ポリエステルフィルム。
【選択図】 なし
Description
本発明は、絵柄印刷用ポリエステルフィルムに関するものである。さらに詳しくは、家具、建材、住宅機器などの各種商品の基材表面に貼合され、かつその表面に絵柄印刷層を配置して使用される装飾材料(表面材料)として好適なフィルムに関するものである。
従来、絵柄印刷用フィルム材料としては、塩化ビニル樹脂フィルムが一般的である。しかしながら、塩化ビニル樹脂フィルムを使用した場合、当該シートに配合された可塑剤が貼り合わせ面の接着剤層に移行して接着不良の原因となる。また焼却時の環境問題から、塩化ビニル樹脂フィルムを使用しない絵柄印刷用フィルム材料の要望が強まっている。
一方、ポリエチレンテレフタレートに代表される二軸延伸ポリエステルフィルムは、その優れた特性から、絵柄印刷用フィルム材料として使用されることが提案されている。例えば、後述の特許文献1には、装飾材の表面部材としてポリエステルフィルムを使用することが提案されている。また、特許文献2には、基材と絵柄印刷層との間にポリエステルフィルムを使用することが提案されている。
ところで、ポリエステルフィルムは、塩化ビニル樹脂フィルムと比較した場合、各種材料との接着性に劣る傾向がある。したがって、高意匠の絵柄を印刷してフィルム表面に形成するに際し、印刷適性が劣る、インクの濡れが悪い、積層印刷の密着が弱く、印刷が剥離する、といった問題が挙げられる。
また、ポリエステルフィルムが帯電すると、絵柄の印刷工程において、はじきが発生してムラとなったり、工程内でスパークが発生したりして、安全面での大きな問題に至ることが懸念される。さらに絵柄印刷後のフィルムとしても、ブロッキングや汚れ防止の観点から、帯電しにくい材料が望まれている。
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その解決課題は、高意匠の絵柄印刷が可能であり、ブロッキングや汚れ付着の問題がない、帯電防止性絵柄印刷用フィルムを提供することにある。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するフィルムによれば、上記課題が容易に解決されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、少なくとも一方のフィルム表面に表面固有抵抗値が1×106〜1×1012Ωである塗布層を有し、当該塗布層が、分子中に3級アミノ基を有する鎖延長剤の3級アミノ基を4級化した化合物とポリカーボネートポリオールとを構成成分として含むポリウレタン樹脂(A)と、カチオン性高分子帯電防止剤(B)とを含有し、フィルムの透過濃度が0.5〜5.0であることを特徴とする帯電防止性絵柄印刷用ポリエステルフィルムに存する。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルとしては、代表的には、例えば、構成単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートであるポリエチレンテレフタレート、構成単位の80モル%以上がエチレン−2,6−ナフタレートであるポリエチレン−2,6−ナフタレート、構成単位の80モル%以上が1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートであるポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられる。その他にも、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルとしては、代表的には、例えば、構成単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートであるポリエチレンテレフタレート、構成単位の80モル%以上がエチレン−2,6−ナフタレートであるポリエチレン−2,6−ナフタレート、構成単位の80モル%以上が1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートであるポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられる。その他にも、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
上記の優位構成成分以外の共重合成分としては、例えば、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール成分、イソフタル酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸およびオキシモノカルボン酸などのエステル形成性誘導体を使用することができる。また、ポリエステルとしては、単独重合体または共重合体のほかに、他の樹脂との小割合のブレンドも使用することができる。
本発明のポリエステルフィルムは、絵柄印刷後に様々な色調を有する基材に貼合することが目的とされる。したがって、基材の色調によって印刷した絵柄の色調が変化して意匠性が損なわれることがないように、高度の隠蔽性を要する。本発明においては、ポリエステルフィルムの透過濃度が0.5〜5.0であることが必要であり、好ましくは1.0〜4.0の範囲内である。透過濃度が0.5より小さい場合には、ポリエステルフィルムが貼り合わされる基材の色調が、フィルム表面の絵柄の色調に影響を及ぼし、好ましくない。一方、透過濃度を5.0より大きくするためには、フィルム中の添加物(主には顔料成分)を多くする必要があり、フィルム製造時に破断が頻発する、所定の機械的強度を保持できない、と言う問題が発生する。
上記の透過濃度で示される隠蔽性は、一般にフィルム中に無機もしくは有機顔料粒子を含有させることによって得られる。粒子としては従来公知のものを使用することができ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、二酸化珪素、カーボンブラック、酸化鉄、酸化クロム等が例示されるが、使用される粒子の種類は上記例に限定されるものではない。
本発明で用いる無機顔料の平均粒子径は、通常0.1〜1.0μmであり、より好ましくは0.2〜0.6μmである。無機顔料の平均粒子径が小さすぎると、ポリエステルフィルムの隠蔽性が不足する傾向がある。一方、無機顔料の平均粒子径が大きすぎると、ポリエステルフィルムの表面から粒子が脱落する傾向がある。ここで、無機顔料は1種単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
本発明のポリエステルフィルムの色調は、印刷される絵柄の色に合わせて選択される。例えば木質系の絵柄を施す場合は、木肌の色調に合わせて、ベージュ、茶色(薄茶〜焦げ茶)のフィルムが、白色系の印刷を施す場合は、白色フィルムが好んで使用される。フィルムの色調は、主に添加する顔料成分の配合比により調整することができる。
本発明のポリエステルフィルムは、帯電による印刷工程でのはじき、ムラを防止すること、スパーク発生による引火の危険を防止すること、また製品同士のブロッキング防止や汚れ防止等の効果を得るため、表面固有抵抗値が1×107〜1×1012Ωの範囲であることが必要である。表面固有抵抗値が1×1012Ωを超える場合、帯電防止の効果が不足する。好ましい表面固有抵抗値は1×1011Ω以下であり、さらに好ましくは1×1010Ω以下である。一方表面固有抵抗値が1×107Ω未満の場合、効果が飽和しているうえ、帯電防止剤を多量に添加することが必要となり、塗布層の耐久性が不足する傾向がある。好ましい表面固有抵抗値(下限)は1×108Ω以上であり、さらに好ましくは1×109Ω以上である。
本発明のポリエステルフィルムの厚さは特に限定されるわけではないが、フィルムの加工適性として、適度の腰強度を有することが好ましく、通常20〜150μmの範囲であり、好ましくは25〜100μmの範囲内である。
本発明のポリエステルフィルムには、上記の顔料粒子以外にも、必要に応じて従来公知の酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、蛍光増白剤、染料、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤等の添加剤を添加することができる。
本発明のポリエステルフィルムは、少なくとも片面に、下記成分a1およびa2を構成単位として含むポリウレタン樹脂(A)とカチオン性高分子帯電防止剤(B)とを含有する塗布層を有することが必要である。
a1:ポリカーボネートポリオール
a2:分子中に3級アミノ基を有する鎖延長剤の3級アミノ基を4級化した化合物
a2:分子中に3級アミノ基を有する鎖延長剤の3級アミノ基を4級化した化合物
本発明で用いるポリウレタン樹脂(A)は、ポリオールとしてポリカーボネート単位を含むことが必要である。ポリカーボネートポリオールを含むポリウレタン樹脂を用いることで、絵柄印刷層との接着性が良好となる。
本発明のポリウレタン樹脂(A)で使用するa1は、例えばジエチルカーボネートなどの低級ジアルキレンカーボネートや、あるいはジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルと、ジオールとのエステル交換反応を用いるか、ジオールに直接ホスゲンを反応させることで得られるものが挙げられる。本発明では、ジオールとして、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン等を用いたポリカーボネートポリオールを使用することができる。また、上記のポリカーボネートジオールは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量で、300〜4000であることが好ましい。さらに、これらのポリカーボネートポリオールの添加量は、ポリウレタン樹脂(A)に対して40〜80重量%の範囲で選ぶことができる。
本発明のポリウレタン樹脂(A)で使用するポリイソシアネートには、公知の脂肪族、脂環族、芳香族等のポリイソシアネートを挙げることができる。
脂肪族ポリイソシアネートの具体例として、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート等を挙げることができる。
脂環族ポリイソシアネートの具体例としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’−シクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、例えば、トリレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート等を挙げることができる。またこれらのポリイソシアネートは単独で使用してもよいが、2種以上混合して使用することもできる。
本発明で用いるポリウレタン樹脂(A)は、接着性の向上のため、上記のa1(ポリカーボネートポリオール)と共に、ポリオール成分としてポリオキシアルキレングリコールを共存させることができる。ポリウレタン(A)に含有させるポリオキシアルキレングリコールの具体例としては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシブタンジオール、ポリオキシエチレングリコール−ポリオキシプロピレングリコールブロック共重合体等を挙げることができる。
またこれらのポリオキシアルキレングリコールの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリオキシエチレングリコール換算の数平均分子量で、200〜3000であることが好ましい。さらに、これらのポリオキシアルキレングリコールの添加量は、ポリウレタン樹脂(A)に対して3〜10重量%の範囲で選ぶことができる。
本発明においては、ポリウレタン樹脂(A)は、a2(分子中に3級アミノ基を有する鎖延長剤の3級アミノ基を4級化した化合物)を構成単位として含むことが必要である。
これによりポリウレタン樹脂(A)は自己乳化性となり、特に乳化剤を添加しなくとも、水を主体とする媒体中で安定した分散体となすことが可能となる。また、ポリウレタン樹脂(A)は、後述するカチオン性高分子帯電防止剤(B)と同じカチオン性高分子であるので、両者を混合しても、分子間のイオン凝集が発生しない。
これによりポリウレタン樹脂(A)は自己乳化性となり、特に乳化剤を添加しなくとも、水を主体とする媒体中で安定した分散体となすことが可能となる。また、ポリウレタン樹脂(A)は、後述するカチオン性高分子帯電防止剤(B)と同じカチオン性高分子であるので、両者を混合しても、分子間のイオン凝集が発生しない。
本発明のポリウレタン樹脂(A)で使用する鎖延長剤としては、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン等のN−アルキルジアルカノールアミン、N−メチルジアミノエチルアミン、N−エチルジアミノエチルアミン等のN−アルキルジアミノアルキルアミン、トリエタノールアミン等を挙げることができる。これらの3級アミノ基を有する鎖延長剤は単独または2種以上併用して用いることができる。また、これらの鎖延長剤の添加量は、ポリウレタン樹脂(A)に対して5〜15重量%の範囲から選ぶことができる。
本発明においては、上記ポリウレタン樹脂に導入された上記3級アミノ基を有する鎖延長剤を、酸で中和するか、あるいは4級化剤で4級化した化合物を含むカチオン性ポリウレタン樹脂とする必要がある。3級アミノ基を酸で中和する場合には、酸として、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、マロン酸、アジピン酸等の有機酸、および塩酸、燐酸、硝酸等の無機酸を挙げることができる。これらの酸は単独または2種以上併用して用いることができる。また、3級アミノ基を4級化剤で4級化する場合には、4級化剤として、ベンジルクロライド、メチルクロライド等のハロゲン化アルキル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル等の硫酸エステル等を挙げることができる。これらの4級化剤は単独または2種以上併用して用いることができる。
本発明で用いるポリウレタン樹脂(A)は、ポリイソシアネートとポリカーボネートポリオールと分子中に3級アミノ基を有する鎖延長剤を添加して反応させた後、4級化させることで得られるが、初めから4級化された化合物を鎖延長剤として反応させることもできる。
本発明のポリエステルフィルムは、その少なくとも片面に有する塗布層にカチオン性高分子帯電防止剤(B)を含むことが必要である。ポリウレタン樹脂(A)とカチオン性高分子帯電防止剤(B)とは、同じカチオン性高分子であるので、両者を混合した塗布剤には、分子間のイオン凝集が発生しない。また帯電防止剤としてカチオン性高分子を用いるので、アニオン性やノニオン性の帯電防止剤よりも良好な帯電防止性能や、フィルム延伸後の塗膜の透明性を得やすい点で好ましい。また低分子帯電防止剤でしばしば問題となる転着現象も生じることはない。
本発明で用いるカチオン性高分子帯電防止剤(B)は、4級化された窒素を含むユニットを繰り返し単位として含有するポリマーが好適であるが、特に下記式(I)または(II)式で示される主鎖にピロリジニウム環を有するユニットを主たる繰り返し単位として含有するカチオンポリマーであることが、優れた帯電防止性能が得られる点で好ましい。
上記(I)式あるいは(II)式の構造において、R1、R2は、炭素数が1〜4のアルキル基もしくは水素であることが好ましく、これらは同一基でもよいし異なっていてもよい。またR1、R2のアルキル基は、ヒドロキシル基、アミド基、アミノ基、エーテル基で置換されていてもよい。さらに、R1とR2とが化学的に結合していて、環構造を有するものであってもよい。また、(I)式あるいは(II)式のX−は、ハロゲンイオン、硝酸イオン、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、モノメチル硫酸イオン、モノエチル硫酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオンの何れかである。
上述の、主鎖にピロリジニウム環を有するユニットを主たる繰り返し単位として含有するカチオンポリマーの中でも、特に(I)式の構造で、X−が塩素イオンである場合には、帯電防止性能が優れると同時に、帯電防止性能の湿度依存性が小さく、低湿度下でも帯電防止性能の低下が少なくなる点で好ましい。また、帯電性易接着にハロゲンイオンを使用できない場合においては、塩素イオンの代わりにメタンスルホン酸あるいはモノメチル硫酸イオンを使用することで、塩素イオンの場合に近い帯電防止性能を得ることができる。
(I)式のユニットを繰り返し単位とするポリマーは、次の(III)式で示されるジアリルアンモニウム塩を単量体として、水を主とする媒体中で、ラジカル重合で閉環させながら重合することで得られる。また、(II)式のユニットを繰り返し単位とするポリマーは、(III)式の単量体を、二酸化硫黄を媒体とする系で環化重合させることにより得られる。
また、(I)式または(II)式に示すユニットを繰り返し単位とするポリマーは、単一のユニットから構成されるホモポリマーである場合が、より良好な帯電防止性能を得ることができるが、後述するように、カチオンポリマーを含む塗布液をポリエステルフィルムに塗布した後に、さらにポリエステルフィルムを延伸する場合に、塗布層の透明性を改善するために、(I)式または(II)式で示されるユニットの0.1〜50モル%が、共重合可能な他の成分で置き換えられてもよい。
共重合成分として用いる単量体成分としては、(III)式のジアリルアンモニウム塩と共重合可能な炭素−炭素不飽和結合を有する化合物を1種あるいは2種以上を選ぶことが
できる。
できる。
これらは具体的には、アクリル酸およびその塩、メタクリル酸およびその塩、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、マレイン酸およびその塩あるいは無水マレイン酸、フマル酸およびその塩あるいは無水フマル酸、モノアリルアミンおよびその4級化物、アクリルニトリル、酢酸ビニル、スチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルジアルキルアミンおよびその4級化物、(メタ)アクリロイルオキシプロピルジアルキルアミンおよびその4級化物、(メタ)アクリロイルアミノエチルジアルキルアミンおよびその4級化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジアルキルアミンおよびその4級化物などを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
本発明の塗布層中のカチオン性高分子帯電防止剤(B)は、上記(I)または(II)式で示される主鎖にピロリジニウム環を繰り返し単位として含有するカチオンポリマーの代わりに、例えば(IV)式または(V)式で示されるユニットを繰り返し単位とするカチオンポリマーであってもよい。
(IV)式あるいは(V)式の構造において、R3、R8はそれぞれ水素またはメチル基であり、R4、R9は、それぞれが炭素数2〜6のアルキル基であることが好ましく、またR5、R6、R7、R10、R11、R12はメチル基あるいはヒドロキシエチル基もしくは水素であり、これらは同一基でもよいし異なっていてもよい。さらに(IV)式あるいは(V)式のX−は、ハロゲンイオン、硝酸イオン、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、モノメチル硫酸イオン、モノエチル硫酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオンの何れかである。
(IV)式あるいは(V)式で示されるユニットを繰り返し単位とするカチオンポリマーは、例えば、それぞれのユニットが対応するアクリル酸モノマーまたはメタクリル酸モノマーを、水を主とする媒体中でラジカル重合することで得ることができるが、これに限定されるわけではない。
本発明で用いるカチオンポリマーの平均分子量(数平均分子量)は、通常1000〜500000、さらには5000〜100000の範囲であることが好ましい。平均分子量が1000未満であると、フィルムを巻き取った時に重なり合う面にカチオンポリマーが転着したり、ブロッキングしたりするなどの原因となり、逆に平均分子量が500000を超えると、これを含む塗布液の粘度が高くなり、フィルム面に均一に塗布することが困難となることがある。
本発明における二軸延伸ポリエステルフィルムの塗布層は、前述のポリウレタン樹脂(A)と、カチオン性高分子帯電防止剤(B)とを含有することが必要であるが、その重量比(A)/(B)は、40/60〜90/10の範囲が好ましく、さらに好ましくは50/50〜80/20の範囲である。重量比(A)/(B)が40/60よりも小さい場合には、塗布層の帯電防止効果は十分であるが、レンズ層などの接着性が不十分となる傾向にある。一方で90/10よりも大きい場合には、塗布層の接着性は十分であるが、帯電防止効果が不十分となる傾向にある。
また、塗布層中のポリウレタン樹脂(A)とカチオン性高分子帯電防止剤(B)との重量合計は、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上であり、最大で100%であってもよい。
本発明における二軸延伸ポリエステルフィルムの塗布層は、前述のポリウレタン樹脂(A)およびカチオン性高分子帯電防止剤(B)の他に、塗膜の耐熱性や耐湿性、耐ブロッキング性の向上などを目的として、架橋剤を添加することができる。この架橋剤には、メチロール化あるいはアルコキシメチロール化したメラミン系化合物やベンゾグアナミン系化合物、もしくは尿素系化合物、もしくはアクリルアミド系化合物の他、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物、シランカップリング剤系化合物、チタンカップリング剤系化合物などから選ばれた少なくとも1種類を含有させることが好ましい。これらの架橋剤の添加量は、塗布層全体に対して通常1〜50重量%、好ましくは3〜40重量%の割合とすることができる。
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、塗布層表面の滑り性の付与や耐ブロッキング性の向上を目的として、無機や有機の微粒子を添加することができる。この微粒子としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、シリカ−アルミナ複合体、シリカ−酸化チタン複合体、架橋アクリル樹脂、架橋ポリスチレン樹脂などの微粒子、あるいは酸化スズ、インジウム−スズ複合酸化物微粒子、アンチモン−スズ複合酸化物微粒子などの導電性微粒子から選ばれた少なくとも1種以上を含有させることが好ましい。添加する微粒子は、平均粒子径が5〜200nmであることが好ましく、その添加量も塗布層全体に対して10重量%以下であることが好ましい。
本発明における二軸延伸ポリエステルフィルムの塗布層には、界面活性剤を添加することができる。この界面活性剤には、塗布液のヌレ性の改善を目的に、アルキレンオキサイド付加重合物で置換されたアセチレグリコール誘導体などのノニオン系界面活性剤を好ましく用いることができる。また、フィルムと共に塗布層が延伸される工程での塗布層の透明性の維持を目的として、グリセリンのポリアルキレンオキサイド付加物、あるいはポリグリセリンのポリアルキレンオキサイド付加物などを用いることができる。
その他塗布層には、必要に応じて上記で述べた成分以外に、例えば、消泡剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料等を添加することもできる。これらの添加剤は単独で用いてもよいが、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
また、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムの塗布層には、ポリウレタン樹脂(A)を含むことが必要だが、これ以外のバインダー樹脂として、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、(A)以外のポリウレタン樹脂等を、本発明の効果を損なわない範囲で共存させることもできる。
本発明における二軸延伸ポリエステルフィルムの塗布層は、その塗工量としては、乾燥・固化された後の、あるいは二軸延伸・熱固定等を施された後の最終的な乾燥皮膜として、0.005〜1.0g/m2、さらには0.01〜0.5g/m2の範囲とするのが好ましい。この塗工量が0.005g/m2未満では、帯電防止性能や接着性が不十分となることがあり、1.0g/m2を超える場合には、もはや帯電防止性能や接着性は飽和しており、逆にブロッキングの発生等の弊害が発生しやすくなる傾向がある。
本発明における二軸延伸ポリエステルフィルムの塗布層は、通常、主として水を媒体とした塗布液としてポリエステルフィルム上に塗工される。塗工されるポリエステルフィルムは、予め二軸延伸されたものでもよいが、塗工した後に少なくとも一方向に延伸され、さらに熱固定をする、いわゆるインラインコーティング法を用いることが好ましい。インラインコーティング法によれば、通常200℃以上の高温でポリエステルフィルムと塗布層が同時に熱固定されるため、塗布層の熱架橋反応が十分に進行すると共に、ポリエステルフィルムとの密着性がさらに向上する。
また塗布液は、その保存安定性の向上、あるいは塗布性や塗布膜特性の改善を目的に、水以外に、通常10重量%以下の量で水との相溶性のある有機溶剤の1種または2種以上を加えることが可能である。この有機溶剤としては、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール類、エチルセルソルブ、t−ブチルセルソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラハイドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジメチルエタノールアミン、トリメタノールアミン等のアミン類、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類等を例示することができる。
ポリエステルフィルムに塗布液を塗布する方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような塗布技術を用いることができる。具体的には、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、カレンダコーター、押出コーター、バーコーター等のような技術が挙げられる。
なお、塗布剤のフィルムへの塗布性、接着性を改良するため、塗布前にフィルムに化学処理やコロナ放電処理、プラズマ処理等を施してもよい。
ここで二軸延伸を用いた場合の一例を詳細に説明するが、本発明の要旨を超えない限り、本発明は以下の例に限定されるものではない。
まず、ポリエステルフィルムを構成する原料を押出機へ供給し、溶融混練後、押し出す。(積層フィルムの場合は、異なる押出機から供給された原料⇒溶融ポリマーをTダイ内でスリット状に積層してから押し出す。)次に、ダイから押し出された溶融シートを、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面均一性、冷却効果を向上させるためには、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法が好ましく採用される。次いで、得られたシートを二軸方向に延伸してフィルム化する。まず、通常70〜150℃、好ましくは75〜130℃の延伸温度、通常2.0〜6.0倍、好ましくは2.5〜5.0倍の延伸倍率の条件下、前記未延伸シートを一方向(縦方向)に延伸する。かかる延伸にはロールおよびテンター方式の延伸機を使用することができる。ここで縦延伸後のフィルムに、上述の通り、塗布層を設けることが好ましい。次いで、通常75〜150℃、好ましくは80〜140℃の延伸温度で、通常2.0〜6.0倍、好ましくは2.5〜5.0倍の延伸倍率の条件下、一段目と直交する方向(横方向)に延伸を行い、二軸配向フィルムを得る。かかる延伸には、テンター方式の延伸機を使用することができる。
上記の一方向の延伸を2段階以上で行う方法も採用することができるが、その場合も最終的な延伸倍率が上記した範囲に入ることが好ましい。次いで、テンター内熱処理を、通常180〜240℃、好ましくは200〜235℃で、1秒〜5分間行う。この熱処理工程では、熱処理の最高温度のゾーンおよび/または熱処理出口直前の冷却ゾーンにおいて、横方向および/または縦方向に0.1〜20%の弛緩を行うことが、熱寸法安定性付与の点で好ましい。本発明において、ポリエステルフィルム上に塗布層を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては特に限定されるわけではないが、通常、塗布後の後工程において、70〜280℃で3〜200秒間を目安として熱処理を行うのがよい。
本発明によれば、焼却時に環境問題を生じることなく、また貼り合わせる基材の色調に影響を受けることもなく、高意匠の絵柄模様の印刷が可能で、かつ印刷層の密着性および加工適性、印刷後の防汚性に優れる帯電防止性絵柄印刷用ポリエステルフィルムを提供することができ、本発明の工業的価値は非常に大きい。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。なお、本発明における各種の物性およびその測定方法、定義は下記のとおりである。
(1)白色顔料の平均粒子径(μm)
(株)島津製作所製遠心沈降式粒度分布測定装置SA−CP3型を用いて、ストークスの抵抗則に基づく沈降法によって粒子の大きさを測定した。測定により得られた粒子の等価球形分布における積算(体積基準)50%の値を用いて平均粒径とした。
(株)島津製作所製遠心沈降式粒度分布測定装置SA−CP3型を用いて、ストークスの抵抗則に基づく沈降法によって粒子の大きさを測定した。測定により得られた粒子の等価球形分布における積算(体積基準)50%の値を用いて平均粒径とした。
(2)塗布層に用いる微粒子の平均粒子径(nm)
微粒子の分散液を、マイクロトラックUPA(日機装社製)にて、個数平均の50%平均径を測定し、これを平均粒子径とした。
微粒子の分散液を、マイクロトラックUPA(日機装社製)にて、個数平均の50%平均径を測定し、これを平均粒子径とした。
(3)固有粘度(dl/g)
ポリエステル1gに対し、フェノール/テトラクロロエタン:50/50(重量比)の混合溶媒を100mlの比で加えて溶解させ、30℃で測定した。
ポリエステル1gに対し、フェノール/テトラクロロエタン:50/50(重量比)の混合溶媒を100mlの比で加えて溶解させ、30℃で測定した。
(4)透過濃度
マクベス濃度計TD−904型を用いて、フィルムを単枚で測定した。(この値が大きいほど、高い隠蔽性を表す。)
マクベス濃度計TD−904型を用いて、フィルムを単枚で測定した。(この値が大きいほど、高い隠蔽性を表す。)
(5)色調(L、a、b)
日本電色工業製色差計ZE2000タイプを用いて、反射法によりフィルム表面の測定を行った。2°視野、C光源を用い、表色系はLab(CIE1976)とした。
日本電色工業製色差計ZE2000タイプを用いて、反射法によりフィルム表面の測定を行った。2°視野、C光源を用い、表色系はLab(CIE1976)とした。
(6)表面固有抵抗(Ω)
横河ヒューレット・パッカード社の同心円型電極「16008A(商品名)」(内側電極50mm、外側電極70mm径)に23℃、50%RHの雰囲気下、試料フィルムを設置し、100Vの電圧を印加し、同社の高抵抗計「4329A(商品名)」でフィルム表面(A層側)の表面抵抗を測定した。
横河ヒューレット・パッカード社の同心円型電極「16008A(商品名)」(内側電極50mm、外側電極70mm径)に23℃、50%RHの雰囲気下、試料フィルムを設置し、100Vの電圧を印加し、同社の高抵抗計「4329A(商品名)」でフィルム表面(A層側)の表面抵抗を測定した。
(7)絵柄印刷層の加工適性
(7−1)印刷層の接着性
藍色のセロカラー用印刷インキ(東洋インキ製造社製「CCST39」)を使用し、印刷後の塗布厚さが1.5μmとなる様にフィルム表面に塗布し、80℃で1分間熱風乾燥し評価用フィルムとする。印刷インキの表面に碁盤目のクロスカット(4mm2の升目を100個)を施し、その上にインキ表面塗布面に24mm幅のニチバン製セロテープ(登録商標)を気泡が入らない様に7cmの長さ貼り、貼った上を3kgの手動式荷重ロールを往復させて密着させる。次いで、評価用フィルムを垂直方向に配置された基板上に固定し、テープの上側一端に45cmの糸で500gの錘を結びつける。そしてテープの上側一端と同じ高さから錘を落下させる。錘が45cmの距離自然落下した後、180°方向への剥離試験が開始される。
評価5:テープ面にインキが全く剥離しない
評価4:10%未満のインキがテープ側に剥離する
評価3:10〜50%のインキがテープ側に剥離する
評価2:50%を超えるインキがテープ側に剥離する
評価1:全てのインキがテープ側に剥離する
上記評価で5および4を合格と判定した。
(7−1)印刷層の接着性
藍色のセロカラー用印刷インキ(東洋インキ製造社製「CCST39」)を使用し、印刷後の塗布厚さが1.5μmとなる様にフィルム表面に塗布し、80℃で1分間熱風乾燥し評価用フィルムとする。印刷インキの表面に碁盤目のクロスカット(4mm2の升目を100個)を施し、その上にインキ表面塗布面に24mm幅のニチバン製セロテープ(登録商標)を気泡が入らない様に7cmの長さ貼り、貼った上を3kgの手動式荷重ロールを往復させて密着させる。次いで、評価用フィルムを垂直方向に配置された基板上に固定し、テープの上側一端に45cmの糸で500gの錘を結びつける。そしてテープの上側一端と同じ高さから錘を落下させる。錘が45cmの距離自然落下した後、180°方向への剥離試験が開始される。
評価5:テープ面にインキが全く剥離しない
評価4:10%未満のインキがテープ側に剥離する
評価3:10〜50%のインキがテープ側に剥離する
評価2:50%を超えるインキがテープ側に剥離する
評価1:全てのインキがテープ側に剥離する
上記評価で5および4を合格と判定した。
(7−2)印刷表面の防汚性
7−1で作成した印刷済みの評価用フィルムを、一般の室内机上に並べておき、1カ月後の塵埃(異物)等による汚れ付着状況を比較した。汚れの付着がないものを○、(帯電防止)塗布層を設けなかった比較例1と比べて汚れの付着が低減していたものを△、比較例1と同等もしくは以下のもの×として評価した。
7−1で作成した印刷済みの評価用フィルムを、一般の室内机上に並べておき、1カ月後の塵埃(異物)等による汚れ付着状況を比較した。汚れの付着がないものを○、(帯電防止)塗布層を設けなかった比較例1と比べて汚れの付着が低減していたものを△、比較例1と同等もしくは以下のもの×として評価した。
比較例1:
ベント付二軸押出機を使用し、IV=0.66で粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートからなるポリエステル原料(A)に、粒子径0.3μmのルチル型二酸化チタン41重量%、粒子径0.5μmの亜鉄酸亜鉛(ZnO・Fe2O3)18重量%、粒子径0.01μmのカーボンブラック0.05重量%を練込み、マスターバッチ原料(B)を作成した。同様にベント付二軸押出機を使用し、粒子径4.2μmの不定形シリカを3重量%練込み、マスターバッチ原料(C)を作成した。なお上記の亜鉄酸亜鉛は、酸化鉄と酸化亜鉛とを1:1の重量比で混合した後に焼成して得られる黄色顔料である。
ベント付二軸押出機を使用し、IV=0.66で粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートからなるポリエステル原料(A)に、粒子径0.3μmのルチル型二酸化チタン41重量%、粒子径0.5μmの亜鉄酸亜鉛(ZnO・Fe2O3)18重量%、粒子径0.01μmのカーボンブラック0.05重量%を練込み、マスターバッチ原料(B)を作成した。同様にベント付二軸押出機を使用し、粒子径4.2μmの不定形シリカを3重量%練込み、マスターバッチ原料(C)を作成した。なお上記の亜鉄酸亜鉛は、酸化鉄と酸化亜鉛とを1:1の重量比で混合した後に焼成して得られる黄色顔料である。
原料(A)60重量%、原料(B)16重量%、原料(C)24重量%をそれぞれ配合した後、ベント付二軸押出機に投入して270℃で溶融、混練し、得られた溶融体をスリット状に押出し、30℃の冷却ドラム上に静電印加法により密着、冷却させて無延伸シートを得た。次いで当該無延伸シートを縦方向に82℃で2.7倍延伸した後、さらに横方向に115℃で3.6倍延伸し、段階的に昇温後、220℃で3秒間熱処理した。次いで190℃の雰囲気下、幅方向に1%の弛緩処理(テンターレール幅を狭める)を行った。最終的にフィルム厚さ45μmの二軸配向フィルムを得た。当該フィルムは帯電防止コートを実施しておらず、表面固有抵抗が高いことから静電気を帯びやすく、環境下の異物を吸着しやすいフィルムであった。
実施例1〜3および比較例2〜4:
上記比較例1において、縦延伸後のフィルムの両表面に、別表の水性塗布液をバーコート方式で塗布した。
上記比較例1において、縦延伸後のフィルムの両表面に、別表の水性塗布液をバーコート方式で塗布した。
比較例5:
実施例1において、ポリウレタン樹脂A1の代わりに、ポリカーボネートポリオール構造を有するアニオン系水性ポリウレタン(三井化学ポリウレタン社製 商品名タケラックW−6010)を用いて塗布液を配合した。塗布液は作成後直ちに沈殿が発生してしまい、フィルムに塗布することができなかった。
実施例1において、ポリウレタン樹脂A1の代わりに、ポリカーボネートポリオール構造を有するアニオン系水性ポリウレタン(三井化学ポリウレタン社製 商品名タケラックW−6010)を用いて塗布液を配合した。塗布液は作成後直ちに沈殿が発生してしまい、フィルムに塗布することができなかった。
実施例4:
実施例1において、ポリエステルフィルムの原料配合を原料(A)68重量%、原料(B)8重量%、原料(C)24重量%に変更する以外は同様にして、塗布も同様に行い、最終的にフィルム厚さ45μmの二軸配向フィルムを得た。
実施例1において、ポリエステルフィルムの原料配合を原料(A)68重量%、原料(B)8重量%、原料(C)24重量%に変更する以外は同様にして、塗布も同様に行い、最終的にフィルム厚さ45μmの二軸配向フィルムを得た。
比較例6:
実施例1において、ポリエステルフィルムの原料配合を原料(A)72重量%、原料(B)4重量%、原料(C)24重量%に変更する以外は同様にして、塗布も同様に行い、最終的にフィルム厚さ45μmの二軸配向フィルムを得た。当該フィルムは透過濃度が不足し、絵柄印刷用ポリエステルフィルムとしての適性を満たさないものであった。
実施例1において、ポリエステルフィルムの原料配合を原料(A)72重量%、原料(B)4重量%、原料(C)24重量%に変更する以外は同様にして、塗布も同様に行い、最終的にフィルム厚さ45μmの二軸配向フィルムを得た。当該フィルムは透過濃度が不足し、絵柄印刷用ポリエステルフィルムとしての適性を満たさないものであった。
下記表1に、各々のフィルムに用いた塗布層の組成および塗布層を有するポリエステルフィルムの評価結果を示す。
各塗布層を構成する化合物は以下のとおりである。
・ポリウレタン樹脂A1:
1,6−ヘキサンジオールとジエチルカーボネートとの反応により得られるポリカーボネートポリオール(GPCでの数平均分子量約1000)を76.7重量部、ポリエチレングリコール(第一工業製薬社製、商品名PEG600、分子量600)を6.4重量部、トリメチロールプロパンを2.0重量部、N−メチル−N,N−ジエタノールアミンを19.9重量部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを86.7重量部と、MEK87重量部を反応容器に取り、70〜75℃で反応を行い、ウレタンプレポリマーを得た。このウレタンプレポリマーにジメチル硫酸を16.8重量部添加し、50〜60℃で反応させて、カチオン性ウレタンポリマーを得た。これに水623重量部を添加して乳化させた後、MEKを回収することにより、ポリウレタン樹脂A1の水分散体を得た。
・ポリウレタン樹脂A1:
1,6−ヘキサンジオールとジエチルカーボネートとの反応により得られるポリカーボネートポリオール(GPCでの数平均分子量約1000)を76.7重量部、ポリエチレングリコール(第一工業製薬社製、商品名PEG600、分子量600)を6.4重量部、トリメチロールプロパンを2.0重量部、N−メチル−N,N−ジエタノールアミンを19.9重量部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを86.7重量部と、MEK87重量部を反応容器に取り、70〜75℃で反応を行い、ウレタンプレポリマーを得た。このウレタンプレポリマーにジメチル硫酸を16.8重量部添加し、50〜60℃で反応させて、カチオン性ウレタンポリマーを得た。これに水623重量部を添加して乳化させた後、MEKを回収することにより、ポリウレタン樹脂A1の水分散体を得た。
・ポリウレタン樹脂A2:
ポリテトラメチレングリコール(三菱化学社製、商品名PTMG1000、分子量1000)を300重量部、ポリエチレングリコール(第一工業製薬社製、商品名PEG600、分子量600)を6.0重量部、トリメチロールプロパンを2.5重量部、N−メチル−N,N−ジエタノールアミンを16.0重量部、イソホロンジイソシアネートを71.7重量部と、MEK89重量部を反応容器に取り、70〜75℃で反応を行い、ウレタンプレポリマーを得た。このウレタンプレポリマーにジメチル硫酸を13.4重量部添加し、50〜60℃で反応させて、カチオン性ウレタンポリマーを得た。これに水457重量部を添加して乳化させた後、MEKを回収することにより、ポリウレタン樹脂A2の水分散体を得た。
ポリテトラメチレングリコール(三菱化学社製、商品名PTMG1000、分子量1000)を300重量部、ポリエチレングリコール(第一工業製薬社製、商品名PEG600、分子量600)を6.0重量部、トリメチロールプロパンを2.5重量部、N−メチル−N,N−ジエタノールアミンを16.0重量部、イソホロンジイソシアネートを71.7重量部と、MEK89重量部を反応容器に取り、70〜75℃で反応を行い、ウレタンプレポリマーを得た。このウレタンプレポリマーにジメチル硫酸を13.4重量部添加し、50〜60℃で反応させて、カチオン性ウレタンポリマーを得た。これに水457重量部を添加して乳化させた後、MEKを回収することにより、ポリウレタン樹脂A2の水分散体を得た。
・カチオン性高分子帯電防止剤B:ジアリルジメチルアンモニウムクロライドを用いた4級アンモニウム塩含有カチオンポリマー((I)式のピロリジニウム環含有ポリマー)平均分子量約30000
・架橋剤C:2−イソプロペニル−2−オキサゾリンとアクリル系モノマーとの共重合ポリマー型架橋剤水溶液(日本触媒社製 商品名エポクロスWS−500)、オキサゾリン基量=4.5mmol/g
・微粒子D:コロイダルシリカ微粒子(平均粒径0.07μm)
比較例2では、塗布層にポリカーボネートポリオールを含まないポリウレタン樹脂が用いられているため、インキ層との接着性が不十分であった。比較例3では、塗布層にポリウレタン樹脂(A)が存在しないため、インキ層との接着性が発現されなかった。一方比較例4では、塗布層にカチオン性高分子帯電防止剤(B)を含有しないため、帯電防止性能が不十分であった。また比較例5では、用いたポリウレタン樹脂が、分子中に3級アミノ基を有する鎖延長剤の3級アミノ基を4級化した化合物を含有していないため、カチオン性高分子帯電防止剤との混合でイオン凝集による沈殿を生成してしまった。
表1中、(A)/(B)比率とは、塗布層中の「ポリウレタン樹脂(A)/カチオン性高分子帯電防止剤(B)」(重量比)を表す。
本発明のフィルムは、絵柄印刷用フィルムとして、より具体的には、例えば、家具、建材、住宅機器などの各種商品の基材表面に貼合される装飾材料として好適に使用することができる。
Claims (1)
- 少なくとも一方のフィルム表面に表面固有抵抗値が1×106〜1×1012Ωである塗布層を有し、当該塗布層が、分子中に3級アミノ基を有する鎖延長剤の3級アミノ基を4級化した化合物とポリカーボネートポリオールとを構成成分として含むポリウレタン樹脂(A)と、カチオン性高分子帯電防止剤(B)とを含有し、フィルムの透過濃度が0.5〜5.0であることを特徴とする帯電防止性絵柄印刷用ポリエステルフィルム。
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