JP2008064882A - 反射防止フィルム用積層ポリエステルフィルム - Google Patents

反射防止フィルム用積層ポリエステルフィルム Download PDF

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Abstract

【課題】 外光の反射による干渉ムラが軽減され、各種の光学用途において好適な反射防止フィルム用積層ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 少なくとも一軸方向に延伸されたポリエステルフィルムの少なくとも片面に、少なくとも1種のカチオンポリマーおよび少なくとも1種のバインダーポリマーを含有する塗布層を有し、フィルムのヘイズが2.0%以下であることを特徴とする反射防止フィルム用積層ポリエステルフィルム。
【選択図】 なし

Description

本発明は、反射防止フィルム用積層ポリエステルフィルムに関するものであり、例えば、液晶ディスプレイ(以下、LCDと略記する)、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと略記する)、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略記する)等、表示部材製造用等の用途に好適な積層ポリエステルフィルムに関するものである。
従来、ポリエステルフィルムを基板とする光学用フィルムが、LCD、PDP、有機EL等の表示部材製造用等をはじめ、各種光学用途等に使用されている。これらの光学用フィルムには、優れた透明性、視認性が要求される。
これらの光学用フィルムは、プラスチックフィルムにハードコート層、反射防止層等の表面機能層を積層させて使用されている。プラスチックフィルムとしては、透明なポリエステルフィルムが一般的に使用され、基材のポリエステルフィルムと表面機能層との密着性を向上させるために、これらの中間層として易接着の塗布層が設けられる場合が一般的である。
反射防止フィルムとしては、一般的には、表面機能層として高屈折率層と低屈折率層を交互に積層させることで、光の干渉現象を利用し、外光の反射防止を行う。
近年、LCD、PDPなどの表示部材等の用途では、さらなる大画面化、高画質化が求められ、それに伴って特に蛍光灯下での虹彩状色彩(干渉ムラ)の抑制に対する要求レベルが高くなってきている。また、蛍光灯は昼光色の再現性のため3波長形が主流となってきており、より干渉ムラが出やすくなっている。さらに、コストダウン等を達成するために反射防止の層構成の簡素化への要求も高くなってきており、より高屈折率な表面機能層に対応するため、ポリエステルフィルム上に積層する塗布層の光学設計がより重要になってきている。
しかしながら、近年の各種光学用途に用いられるハードコートは、高機能化を実現するために高屈折率化されていることもあり、ポリエステル樹脂やアクリル樹脂やウレタン樹脂等のような従来の樹脂および塗布量による塗布層では、屈折率が1.50前後に固定されてしまうため、十分な光学特性が得られず、近年の反射防止フィルムを設計する際、反射防止の性能が制限され、外光反射による干渉ムラの発生を十分に抑えられない場合がある。外光反射による干渉ムラが顕著に発生しているフィルムを、LCD、PDP、有機EL等の表示部材として使用すると、視認性の悪化による各種不具合がさらに顕在化する傾向にある。また、干渉ムラの顕著な発生は視認性を悪化させるばかりでなく、目の疲労や健康障害を起こす要因になることも考えられる。
また、ポリエステルフィルムは一般のプラスチックフィルム同様、静電気が発生しやすいという問題を抱えている。そのため、フィルムに静電気がたまり、放電による塗布欠陥が発生する場合や、塗布層上へハードコート層や反射防止層等の表面機能層を設ける過程において工程中の塵埃が付着し、精度の高い表面機能層が得られない場合がある。そのため帯電防止能を付与させた積層ポリエステルフィルムが望まれている。
特開平10−119215号公報 特開2000−246855号公報
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、外光反射による干渉ムラが軽減された各種光学用途に好適な反射防止フィルム用積層ポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明者らは、上記実状に鑑み、鋭意検討した結果、特定の構成からなる積層ポリエステルフィルムを用いれば、上述の課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨は、少なくとも一軸方向に延伸されたポリエステルフィルムの少なくとも片面に、少なくとも1種のカチオンポリマーおよび少なくとも1種のバインダーポリマーを含有する塗布層を有し、フィルムのヘイズが2.0%以下であることを特徴とする反射防止フィルム用積層ポリエステルフィルムに存する。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムは単層構成であっても多層構成であってもよく、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。
本発明において使用するポリエステルは、芳香族ポリエステルであり、芳香族を有するモノマーを少なくとも1種類以上、重合成分として含有するものであり、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。カルボン酸成分およびグリコール成分が共に芳香族を含有しない場合は、ポリエステルフィルムにしたときに屈折率が低下し、積層フィルム全体としての光学設計がうまくできず、反射防止フィルムとしての性能が低下する問題が発生する可能性危険性がある。
また、フィルムの耐候性の向上、PDPのカラーフィルター等に用いられる色素の劣化防止のために、ポリエステルフィルム中に紫外線吸収剤を含有させてもよい。紫外線吸収剤は、紫外線吸収能を有する化合物で、ポリエステルフィルムの製造工程で付加される熱に耐えうるものであれば特に限定されない。
紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤があるが、透明性の観点からは有機系紫外線吸収剤が好ましい。有機系紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、環状イミノエステル系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系などが挙げられる。耐久性の観点からは環状イミノエステル系、ベンゾトリアゾール系がより好ましい。また、紫外線吸収剤を2種類以上併用して用いることも可能である。
ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤としては、下記に限定されるものではないが、例えば、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチル−3’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5'−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−ニトロ−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
環状イミノエステル系の紫外線吸収剤としては、下記に限定されるものではないが、例えば、2−メチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−ブチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−フェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(1−または2−ナフチル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(4−ビフェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−m−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−ベンゾイルフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−メトキシフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−o−メトキシフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−シクロヘキシル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−(またはm−)フタルイミドフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、N−フェニル−4−(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)フタルイミド、N−ベンゾイル−4−(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)アニリン、N−ベンゾイル−N−メチル−4−(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)アニリン、2−(p−(N−メチルカルボニル)フェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2,2’−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−エチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−テトラメチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−デカメチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン 、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6−または1,5−ナフチレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−メチル−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−ニトロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−クロロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(1,4−シクロヘキシレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、1,3,5−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ベンゼン、1,3,5−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレン、2,4,6−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレン、2,8−ジメチル−4H,6H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d’)ビス(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、2,7−ジメチル−4H,9H−ベンゾ(1,2−d;4,5−d’)ビス(1,3 )−オキサジン−4,9−ジオン、2,8−ジフェニル−4H,8H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d’)ビス(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、2,7−ジフェニル−4H,9H−ベンゾ(1,2−d;4,5−d’)ビス(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、6,6’−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ビス(2−エチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−エチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−エチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ブチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ブチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−オキシビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−オキシビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−スルホニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−スルホニルビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−カルボニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−カルボニルビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−エチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−オキシビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−スルホニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−カルボニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7’−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7’−ビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン 、6,7’−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7’−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などが挙げられる。
上記化合物のうち、色調を考慮した場合、ポリエステルフィルムに黄色味が付きにくいベンゾオキサジノン系の化合物が好適に用いられ、その例としては、下記の一般式(1)で表されるものがより好適に用いられる。
Figure 2008064882
上記式中、Rは2価の芳香族炭化水素基を表しXおよびXはそれぞれ独立して水素または以下の官能基群から選ばれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
官能基群:アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、アルコキシル基、アリールオキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基、ニトロ基
上記構造式で表される化合物の中でも、本発明においては、2、2’−(1、4−フェニレン)ビス[4H−3、1−ベンゾオキサジン−4−オン]が特に好ましい。
なお、本発明の反射防止フィルム用積層ポリエステルフィルムにおいては、フィルム中に加え、塗布層に紫外線吸収剤を通常10.0重量%以下、好ましくは0.3〜1.8重量%の範囲で含有させることもできる。10.0重量%を超える量の紫外線吸収剤を含有させた場合は、表面に紫外線吸収剤がブリードアウトし、接着性低下等、表面機能性の悪化を招くおそれがある。
また、共押出法による多層構造のフィルムの場合、少なくとも3層構造のものが好ましく、紫外線吸収剤は、その中間層に配合することが好ましい。中間層に紫外線吸収剤を配合することにより、当該化合物がフィルム表面へブリードアウトしてくるのを防ぐことができ、その結果、フィルムの接着性等の特性を維持することができる。
本発明の反射防止フィルム用積層芳香族ポリエステルフィルムを紫外線吸収が必要とする用途に用いる場合には、波長380nmの光線透過率が5.0%以下であることが好ましく、より好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下である。波長380nmの光線透過率が5.0%より大きくなると、ポリエステルフィルムを透過する紫外線によって、フィルタ中の色素が劣化するのを防ぐのに十分とは言えない場合がある。
さらにフィルム加工中の熱履歴等により、フィルム中に含有しているオリゴマーがフィルムの表面に析出し、生産ラインの汚染やフィルムヘイズの悪化等によるフィルムの視認性の悪化を招く場合があるため、多層構造フィルムの最外層に低オリゴマー化したポリエステルを用いることが好ましい。ポリエステル中のオリゴマー量を低減する方法としては、従来公知の固相重合を用いることができる。
本発明のフィルムのポリエステル層中には、易滑性付与及び各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することが好ましい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.01〜3μm、好ましくは0.01〜2μmの範囲である。平均粒径が0.01μm未満の場合には、粒子が凝集しやすく、分散性が不十分な場合があり、一方、3μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、後工程において種々の表面機能層を塗設させる場合等に不具合が生じる場合がある。
さらにポリエステル層中の粒子含有量は、通常0.001〜5重量%、好ましくは0.005〜3重量%の範囲である。粒子含有量が0.001重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、5重量%を超えて添加する場合にはフィルムの透明性が不十分な場合がある。
ポリエステル層中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後に添加するのが良い。
また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常10〜300μm、好ましくは50〜250μmの範囲である。
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
また、本発明においては積層芳香族ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルム製造に関しては同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
次に本発明における積層芳香族ポリエステルフィルムを構成する塗布層の形成について説明する。塗布層に関しては、上述のインラインコーティングによりポリエステルフィルム上に設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、いわゆるオフラインコーティングを採用してもよく、両者を併用してもよい。なお、製造が安価に対応可能であり、延伸と同時に塗布が可能になると共に、塗布層の厚みを延伸倍率により変化させることができるという点でインラインコーティングの方が好ましく用いられる。
インラインコーティングについては、以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては、特に縦延伸が終了した横延伸前にコーティング処理を施すことができる。インラインコーティングによりポリエステルフィルム上に塗布層が設けられる場合には、製膜と同時に塗布が可能になると共に塗布層を高温で処理することができ、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造できる。
本発明においては、少なくとも一軸方向に延伸された芳香族ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、カチオンポリマーおよびバインダーポリマーを含有する塗布層を有することを必須の要件とするものである。
カチオンポリマーとは、分子中の主鎖や側鎖にカチオン部位を有するポリマーである。カチオン部位としては、4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられ、バインダーポリマーとの共存状態の安定性の観点から4級アンモニウム塩が好適に用いられる。
4級アンモニウム塩としては例えば、ピロリジニウム環、アルキルアミンの4級化物、さらにこれらをアクリル酸やメタクリル酸と共重合したもの、N−アルキルアミノアクリルアミドの4級化物、ビニルベンジルトリメチルアンモニウム塩、2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩等を挙げることができる。さらに、これらを組み合わせて、あるいは他の樹脂と共重合させても構わない。また、これらの4級アンモニウム塩の対イオンとなるアニオンとしては例えば、ハロゲンイオン、スルホナート、ホスファート、ニトラート、アルキルスルホナート、カルボキシラート等のイオンが挙げられる。
上記4級アンモニウム塩の中でも帯電防止能、耐熱安定性が優れているという点で、ピロリジニウム環を有するカチオンポリマーが好ましい。
ピロリジニウム環を有するカチオンポリマーとしては、例えば下記式(2)あるいは(3)の構造を有するポリマーである。
Figure 2008064882
Figure 2008064882
上記式(2)および(3)中、R、Rはそれぞれ独立してアルキル基、フェニル基等であり、これらのアルキル基、フェニル基が以下に示す基で置換されていてもよい。置換可能な基は、例えば、ヒドロキシル基、アミド基、エステル基、アルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、チオアルコキシ、チオフェノキシ基、シクロアルキル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、シアノ基、ハロゲンである。また、RおよびRは化学的に結合していてもよく、例えば、−(CH−(m=2〜5の整数)、−CH(CH)CH(CH)−、−CH=CH−CH=CH−、−CH=CH−CH=N−、−CH=CH−N=C−、−CHOCH−、−(CHO(CH−などが挙げられる。式中のXは、ハロゲンイオン、スルホナート、ホスファート、ニトラート、アルキルスルホナート、カルボキシラート等を示す。
本発明において、上記(2)式のポリマーは、下記式(4)で表される化合物を、ラジカル重合触媒を用いて環化重合させることにより得られる。また、(3)式のポリマーは、(4)式の化合物を、二酸化硫黄を溶媒とする系で環化重合させることにより得られる。重合は、溶媒として水あるいはメタノール、エタノール、イソプロパノール、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、アセトニトリル、二酸化硫黄などの極性溶媒中で過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、第3級ブチルパーオキサイド等の重合開始剤により、公知の方法で実施できるが、これらに限定するものではない。本発明における4級アンモニウム塩を有するカチオンポリマーは、(4)式の化合物と重合性のある炭素―炭素不飽和結合を有する化合物を共重合成分としていてもよい。
Figure 2008064882
またカチオンポリマーの数平均分子量は通常は1000〜500000、好ましくは2000〜100000、さらに好ましくは5000〜50000である。分子量が1000未満の場合は塗膜の強度が弱かったり、耐熱安定性に劣ったりする場合がある。また分子量が500000を超える場合は、塗布液の粘度が高くなり、取扱い性や塗布性が悪化する場合がある。
本発明における積層芳香族ポリエステルフィルムにおいては、塗布面上に種々の表面機能層が積層されたときの反射防止能の向上や透明性の向上、種々の表面機能層との密着性を向上させるために少なくとも1種のバインダーポリマーを使用する。
本発明において使用する「バインダーポリマー」とは高分子化合物安全性評価フロースキーム(昭和60年11月 化学物質審議会主催)に準じて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による数平均分子量(Mn)が1000以上の高分子化合物で、かつ造膜性を有するものと定義する。
バインダーポリマーの具体例としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられ、通常、塗布剤として用いられるものであれば特に限定はない。カチオンポリマーと混合させたときの塗布液の安定性や表面機能層との接着性を向上させるという点において、ノニオン性あるいはカチオン性のアクリル樹脂あるいはウレタン樹脂あるいはポリエステル樹脂が好ましい。これらのバインダーポリマーは、インラインコーティングを考えた場合、そのモノマーの一成分としてノニオンまたはカチオンの親水性成分を共重合することで親水性を付与し、水に分散させることができる。また、ノニオンまたはカチオンの界面活性剤を用いて、いわゆる強制乳化させることにより分散させたり、ノニオンまたはカチオンの界面活性剤を用いて乳化重合させ分散体としたりすることもできる。
さらに塗布層中には本発明の主旨を損なわない範囲において、架橋剤を使用してもよく、種々公知の樹脂が使用できるが、メラミン化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。塗布性が良好であり、反射防止能を向上させるという点で、メラミン化合物がより好ましい。
本発明におけるメラミン化合物としては、アルキロール化またはアルコキシアルキロール化したメラミン系化合物であるメトキシメチル化メラミン、ブトキシメチル化メラミン等が例示され、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できる。
また、塗布層の固着性、滑り性改良を目的として、不活性粒子を含有してもよく、具体例としてはシリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン、有機粒子等が挙げられる。
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料等が含有されてもよい。
本発明における積層芳香族ポリエステルフィルムを構成する塗布層中のカチオンポリマーの割合は、重量比で通常50〜90%の範囲である。50%未満の場合は帯電防止能が十分でない場合がある。また、塗布層中のバインダーポリマーの割合は、重量比で通常10〜50%の範囲である。10%未満の場合は、表面機能層との接着性が低下する場合がある。
上述の一連の化合物を溶液または分散体として、固形分濃度を通常0.1〜50重量%とした塗布液をポリエステルフィルム上に塗布する要領にて積層ポリエステルフィルムを製造するのが好ましい。
さらにインラインコーティングの場合は、上述の一連の化合物を水溶液または水分散体として、固形分濃度を通常0.1〜50重量%とした塗布液をポリエステルフィルム上に塗布する要領にて積層ポリエステルフィルムを製造するのが好ましい。また、本発明の主旨を損なわない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。
塗布層表面における波長400〜800nmの光線の絶対反射率の平均値は通常5.5〜6.5%の範囲であり、より好ましくは5.7〜6.3%である。絶対反射率の平均値がこの範囲から外れると、塗布層とポリエステルフィルムの界面からの反射が多くなり、積層する表面機能層によっては十分な性能を発揮できない可能性がある。
本発明における積層ポリエステルフィルムに関して、ポリエステルフィルム上に設けられる塗布層の塗布量(乾燥後)は、通常0.001〜0.05g/m、好ましくは0.005〜0.03g/mの範囲である。塗布量が0.001g/m未満の場合には、塗布厚みの均一性が不十分な場合があり、他方、0.05g/mを超える場合には、塗布層とポリエステルフィルムとの界面での反射光と、塗布層と積層する表面機能層との界面での反射光の相互干渉が起こる波長領域が可視光領域となる。つまり、積層する表面機能層によっては、塗布層にわずかな塗布厚ムラなどがあった場合に、フィルムの反射光強度の波長分布が可視光領域で発生することになり、反射光の着色の原因となるおそれがある。特に滑り性、固着防止の目的で入れている粒子が存在する箇所は、塗布厚の厚みムラが発生しやすく、これが反射防止フィルムとした後でも目視で確認できるような反射色の局所的な着色となる場合があり、反射防止フィルムとして十分な性能を発揮できない可能性がある。
本発明において、塗布層を設ける方法はリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。塗工方式に関しては、「コーティング方式」槇書店 原崎勇次著 1979年発行に記載例がある。
本発明において、ポリエステルフィルム上に塗布層を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、例えば、オフラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、80〜200℃で3〜40秒間、好ましくは100〜180℃で3〜40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
一方、インラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、70〜280℃で3〜200秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムには予め、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
本発明の反射防止フィルム用積層芳香族ポリエステルフィルムのヘイズは2.0%以下、好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1.0%以下である。ヘイズが2.0%より大きくなると反射防止フィルムとした場合に、フィルムが白っぽくなり、PDP等の表示部材等に使用する場合に明瞭な画像が映し出されない場合がある。
本発明の反射防止フィルム用積層芳香族ポリエステルフィルムによれば、種々の表面機能層を積層した際に反射防止能の優れた反射防止フィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
(1)ポリエステルの固有粘度の測定
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
(2)平均粒径(d50:μm)の測定
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA−CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
(3)ヘイズの測定
JIS K7136に準じて、ヘイズ測定装置(村上色彩技術研究所製HAZE METER HM−150)を使用して測定した。
(4)ポリエステルフィルムにおける一方の表面の絶対反射率平均値の測定方法
あらかじめ、ポリエステルフィルムの測定裏面に黒テープ(ニチバン株式会社製ビニールテープVT―50)を貼り、分光光度計(日本分光株式会社製 紫外可視分光光度計 V−570 および自動絶対反射率測定装置 AM−500N)を使用して同期モード、入射角5°、N偏光レスポンス Fast、データ取区間幅1.0nm、バンド幅10nm、走査速度1000m/minで塗布層面を波長範囲400〜800nm、の絶対反射率を測定した。得られた波長1nmごとの絶対反射率値から、その平均値を算出した。
(5)波長380nmの透過率の測定
分光光度計(株式会社島津製作所社製UV−3100PC型)により、スキャン速度を低速、サンプリングピッチを2nm、波長300〜700nm領域で連続的に光線透過率を測定し、380nm波長での光線透過率を検出した。
(6)表面固有抵抗の測定および評価方法
日本ヒューレット・パッカード社製高抵抗測定器:HP4339Bおよび測定電極:HP16008Bを使用し、23℃、50%RHの測定雰囲気でサンプルを充分調湿後、印可電圧100Vで1分後の塗布層の表面固有抵抗値を測定した。
(7)密着性の測定方法
積層芳香族ポリエステルフィルムの塗布層側に、日本合成化学工業株式会社製の紫光(登録商標)を塗布し、80℃で1分間乾燥し溶剤を除去した。次いで、フィルムを送り速度10m/分で走行させながら、水銀ランプを用いて照射エネルギー120W/cm、照射距離10cmの条件下で紫外線を照射し、表面機能層を有するフィルムを得た。当該フィルムに碁盤目のクロスカット(1mmの升目を100個)を施し、その上に18mm幅のテープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標)CT−18)を貼り付け、180度の剥離角度で急激にはがした後、剥離面を観察し、剥離面積が20%未満ならば○、20%以上50%未満なら△、50%以上ならば×とした。
(8)反射防止能の評価方法
積層芳香族ポリエステルフィルムの塗布層側に、日本合成化学工業株式会社製の紫光(登録商標)を塗布し、80℃で1分間乾燥し溶剤を除去した。次いで、フィルムを送り速度10m/分で走行させながら、水銀ランプを用いて照射エネルギー120W/cm、照射距離10cmの条件下で紫外線を照射し、厚さ5μmの表面機能層を有するフィルムを得た。さらに当該表面機能層の上に、パーフルオロブテニルビニルエーテルの重合体のパーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)溶液を使用し、乾燥後の塗布厚さが100nmとなるようにマイクログラビア方式で塗工し、120℃で10分間乾燥し、反射防止層を積層した。得られたフィルムを3波長光域型蛍光灯下で目視にて、干渉ムラを観察し、視認性が良好ならば○、視認性の悪化が確認できれば×とした。
(9)ポリエステル層の厚み測定
フィルム小片をエポキシ樹脂にて固定成形した後、ミクロトームで切断し、フィルムの断面を透過型電子顕微鏡写真にて観察した。その断面のうちフィルム表面とほぼ平行に2本、明暗によって界面が観察される。その2本の界面とフィルム表面までの距離を10枚の写真から測定し、平均値を層厚さとした。
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
<ポリエステル(A)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04部を添加した後、三酸化アンチモン0.04部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(A)の極限粘度は0.63であった。
<ポリエステル(B)の製造方法>
ポリエステル(A)を、予め160℃で予備結晶化させた後、温度220℃の窒素雰囲気下で固相重合し、極限粘度0.75ポリエステル(B)を得た。
<ポリエステル(C)の製造方法>
ポリエステル(A)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04部を添加後、エチレングリコールに分散させた平均粒子径1.6μmのシリカ粒子を0.2部、三酸化アンチモン0.04部を加えて、極限粘度0.65に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(C)を得た。得られたポリエステル(C)は、極限粘度0.65であった。
<ポリエステル(D)の製造方法>
ポリエステル(A)をベント付き二軸押出機に供して、紫外線吸収剤として2,2−(1,4−フェニレン)ビス[4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン](CYTEC社製 CYASORB UV−3638 分子量369 ベンゾオキサジノン系)を10重量%濃度となるように供給して溶融混練りしてチップ化を行い、紫外線吸収剤を含有するポリエステル(D)を作成した。得られたポリエステル(D)の極限粘度は、0.59であった。
塗布層を構成する化合物例は以下のとおりである。
(化合物例)
・カチオンポリマー:(a1)
ジアリルジメチルアンモニウムクロライドを用いた4級アンモニウム塩含有カチオンポリマー
平均分子量約30000。
・カチオンポリマー:(a2)
ジアリルモノメチルアンモニウムメチルスルホナートを用いた4級アンモニウム塩含有カチオンポリマー
平均分子量約30000。
・バインダーポリマー:(b1)
下記の方法で得られたノニオン性ウレタン樹脂を使用した。すなわち、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸:イソフタル酸=1:1からなるポリエステルポリオール(モル比1.0)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(モル比1.4)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート三量体1モルに対し、分子量1000のポリエチレングリコールモノメチルエーテルを1/3モル反応させたノニオン性基を導入したジイソシアネート化合物(モル比0.1)を窒素気流下で、90℃-2時間反応させてプレポリマーを得た。次いで分子量4200および分子量15500のポリプロピレングリコールのエチレンオキサイド付加物の重量比1:1の混合物からなるノニオン性界面活性剤1重量%水溶液に、上記で得られたプレポリマーを滴下、攪拌し、さらに鎖延長剤としてエチレンジアミンを滴下、攪拌し、ノニオン性ウレタン樹脂を得た。
・バインダーポリマー:(b2)
カチオン系ウレタン樹脂(大日本インキ化学工業製ハイドラン)
・バインダーポリマー:(b3)
アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルを共重合し、ノニオン系乳化剤で分散させたアクリル樹脂(日本カーバイド工業製ニカゾール)
・架橋剤:(c)
アルキロールメラミン/尿素共重合の架橋性樹脂(大日本インキ化学工業製ベッカミン)
実施例1:
ポリエステル(B)、(C)をそれぞれ90%、10%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)、(D)をそれぞれ90%、10%の割合で混合した混合原料を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、この縦延伸フィルムの両面に、下記表1に示す塗布液1を塗布し、テンターに導き、横方向に120℃で4.0倍延伸し、225℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、塗工量(乾燥後)が0.01g/mの塗布層を有する厚さ100μm(表層5μm、中間層90μm)のポリエステルフィルムを得た。
でき上がった積層芳香族ポリエステルフィルムの絶対反射率の平均値は6.0%であった。表面機能層を積層後の反射防止能を観察したところ、視認性は良好であった。このフィルムの特性を下記表2に示す。
実施例2〜実施例5:
実施例1において、表1、2に示す塗布量および塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、積層芳香族ポリエステルフィルムを得た。でき上がったポリエステルフィルムは表2に示すとおりであった。
比較例1〜3:
実施例1において、表2に示す塗布量および塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、積層芳香族ポリエステルフィルムを得た。でき上がった積層芳香族ポリエステルフィルムを評価したところ、表2に示すとおりであった。
Figure 2008064882
Figure 2008064882
本発明のフィルムは、例えば、LCD、PDP、有機EL等、表示部材製造用等の外光反射による干渉ムラが抑制された反射防止フィルム用積層芳香族ポリエステルフィルムを提供することができる。

Claims (1)

  1. 少なくとも一軸方向に延伸されたポリエステルフィルムの少なくとも片面に、少なくとも1種のカチオンポリマーおよび少なくとも1種のバインダーポリマーを含有する塗布層を有し、フィルムのヘイズが2.0%以下であることを特徴とする反射防止フィルム用積層ポリエステルフィルム。
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