JP2003226933A - 低炭素快削鋼 - Google Patents
低炭素快削鋼Info
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Abstract
性を有する低炭素硫黄快削鋼を提供する。 【解決手段】質量%で、C:0.05〜0.19、Mn:0.4〜2.0
%、S:0.21〜1.0%、Ti:0.03〜0.30%、Si:1.0%以
下、P:0.001〜0.3%、Al:0.2%以下、O(酸素):
0.0010〜0.050%およびN:0.0001〜0.0200%を含有
し、残部がFeおよび不純物からなり、TiとSの含有量が
下記式を満たし、MnとSの原子比が下記式を満た
し、かつ、鋼中にTi硫化物または/およびTi炭硫化物が
内在するMnSを含有することを特徴とする低炭素硫黄快
削鋼。 Ti(質量%)/S(質量%)<1 ・・・ Mn/S≧1 ・・・ 上記の成分に加えてさらに、Se、Te、Bi、Sn、Zr、Ca、
Mgおよび希土類元素からなる群、ならびにCu、Ni、Cr、
Mo、VおよびNbからなる群の一方または両方から選んだ
1種以上の成分を含有してもよい。
Description
しかも従来の鉛快削鋼および鉛と他の快削元素を併用し
た複合快削鋼に優る被削性と熱間加工性を有する低炭素
快削鋼に関する。
小物部品には生産性向上のため被削性に優れた鋼材、い
わゆる快削鋼が用いられている。最も良く知られている
快削鋼は、Sを多量に添加してMnSにより被削性を改善
した硫黄快削鋼、Pbを添加した鉛快削鋼、およびSとPb
の両者を含む複合快削鋼である。特に、Pbを含む快削鋼
は、切屑切断性に優れ、工具寿命の延長に寄与する。さ
らに被削性改善の目的でTe(テルル)やBi(ビスマス)
等を含有する快削鋼もある。これらは、自動車部品、パ
ソコン周辺器機部品をはじめ、電気機器部品や金型等の
各種機械部品に大量に使用されている。
業の高速度化が可能になった。それにともなって、上記
のような部品の素材となる鋼材にも、高速切削加工時の
被削性向上が望まれている。
るための被削性とともに、切屑の分断性、つまり切屑処
理性が重要視される。この切屑処理性は、加工ラインの
自動化に欠かせないものであり、生産性向上のためには
必須だからである。
併用した複合快削鋼は、上記の被削性に最も優れている
とされてきた。しかし、Pbを含む鋼材は、その製造過程
において大がかりな排気設備を必要とする。また、環境
保全のためにPbの使用を抑制する動きが高まるとともに
Pbを含有しない快削鋼が強く望まれている。
るものとして低炭素硫黄快削鋼においてはS含有量を増
やし、鋼中のMnS量を増やすことで被削性を改善する技
術などが提案されている。しかし、S含有量の増加は鋼
の熱間加工性を悪化させる。また、高S快削鋼でも、切
削速度が150m/min以上というような高速切削時において
は、工具寿命の延長効果が乏しく、鉛快削鋼に匹敵する
被削性は得られていない。
るSを含有させてMnSを増量した、Pbを添加しない低炭
素硫黄系快削鋼が開示されている。このような鋼では、
ある程度の工具寿命の改善は認められるが、高速切削加
工時にはその効果が小さい。また、その鋼は、工具寿命
と共に被削性の要素として重要視される切屑処理性が改
善されたものではなく、従来の硫黄快削鋼の性能を大き
く変えるものではない。
C、0.3〜0.75%のS、0.1〜0.5%のTiを含有する鋼で
あって、Ti量がS量を超えないという硫黄快削鋼が開示
されている。この鋼は、硫化鉄を主に活用し、これにTi
を添加することで硫化鉄中にTiとMnを固溶させて被削性
を改善したというものである。しかし、この鋼のC含有
量は、実施例の記載から明らかなように、0.24%以上で
ある。同公報には、Cが0.19%以下の低炭素鋼において
硫化物の組成形態を制御することで格段の被削性が得ら
れることについての記載は一切ない。また、適量のTi及
びMnを固溶した硫化鉄を主体として被削性改善を図って
いるが、後述する本願発明鋼のような低炭素系快削鋼や
複合快削鋼と比較して、十分な被削性を有するものでは
ない。さらに、上記公報に開示される鋼は、硫化鉄の組
成制御が困難であって十分な熱間加工性が得られないた
めに、連続鋳造設備等で製造するのは困難であって実用
的でない。
2%、Si:0.10〜0.60%、Mn:0.5〜1.75%、P:0.005
〜0.15%、S:0.15〜0.40%、O(酸素):0.001〜0.0
10%、Ti:0.0005〜0.020%、N:0.003〜0.03%を含有
し、超硬工具に対する被削性が優れる快削鋼が開示され
ている。この組成範囲にすることによって、ある程度の
工具寿命の改善を図ることは可能であるが、Ti量の上限
が0.02%と少ないために、十分な工具寿命が得られない
ばかりでなく、工具寿命と共に重要視される優れた切屑
処理性が確保できない。
1-152281号、同152282号および同152283号の各公報に
は、主要成分としてC:0.05%未満、Mn:0.1〜4.0%、
S:0.15超〜0.5%、Cr:0.5%未満、Ti:0.003〜0.3
%、B:0.0003〜0.004%を含有させた鋼が開示されて
いる。その鋼では、硫化物の周囲にBを偏析させること
により切屑処理性を向上させるとともに、Cを0.05%未
満とすることで被削性を改善した快削鋼である。しか
し、Cが0.05%未満であるために切削中にむしれを起こ
して仕上げ面が悪く、十分な被削性が得られない。
0.15%、Mn:0.3〜1.8%、S:0.2〜0.5%を含有し、更
に、Ti:0.1〜0.6%とZr:0.1〜0.6%のうち少なくとも
1種を含有し、且つ「Ti+Zrが0.3〜0.6%で、かつ(Ti
+Zr)/Sが1.1〜1.5である快削鋼が開示されている。
この鋼は、上記の組成にすることによって熱間での変形
抵抗の高いTiやZrの硫化物を生成させ、機械的異方性や
被削性を改善したものである。しかし、変形抵抗の高い
硫化物では切削時に硫化物による擬似的な潤滑効果は得
難く、切削抵抗が高くなり、被削性の改善効果には限界
がある。
含有せず、しかも、これまでの鉛快削鋼および鉛と他の
被削性改善元素を含む複合添加快削鋼以上の被削性を有
し、かつ熱間加工性にも優れた低炭素硫黄快削鋼を提供
することを課題としてなされたものである。
Pbを含有しない低炭素硫黄快削鋼について被削性を改善
するために、Ti添加による介在物の形態と被削性の関係
を詳細に調査した。その結果、次に述べるような新しい
知見が得られた。
よい。
とSの原子比が、Mn/S≧1の条件を満たし、かつ、S
含有量(質量%)を超えない範囲でTiを含有させた場合
には、大部分の硫化物は、Ti硫化物でも硫化鉄でもな
く、MnSになる。
て、Tiは、MnS中にほとんど固溶せず、Mn・Ti硫化物、
即ち、(Mn,Ti)Sを形成することはない。そして、Ti硫
化物やTi炭硫化物としてMnSとは別の相として存在す
る。このTi系介在物(硫化物、炭硫化物)の多くは、MnS
中に内在した形態で存在する。
物が存在する鋼材は、高速切削において優れた被削性を
示す。即ち、例えば100m/min以上の高速度で旋削を行う
と、工具表面にMnSが付着すると共に、硬質の層状を呈
するTiNが形成される。このTiNが工具を保護すること
によって、これまで最も被削性に優れるとされてきたJI
S SUM22L〜24Lの複合快削鋼と比較しても、遙かに優れ
た工具寿命を得ることができる。また、上記の規定範囲
内でTiを添加することによって、硫化物は微細に生成
し、個数が増大する。これらの硫化物が切削中に応力集
中源となって亀裂伝播を助長するので、これまでの硫黄
快削鋼やPbとの複合快削鋼に比べ、優れた切屑処理性を
も同時に得ることができる。更に、この鋼は熱間加工性
に全く問題がないことから、連続鋳造設備等によって製
造する場合にも何ら支障をきたすことがなく、実用性に
優れている。
金成分以外の成分についても作用効果を詳細に検討して
なされたもので、その要旨は下記(1)〜(4)の快削鋼にあ
る。
0.4〜2.0%、S:0.21〜1.0%、Ti:0.03〜0.30%、S
i:1.0%以下、P:0.001〜0.3%、Al:0.2%以下、O
(酸素):0.0010〜0.050%およびN:0.0001〜0.0200
%を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、TiとSの
含有量が下記式を満たし、MnとSの原子比が下記式
を満たし、かつ、鋼中にTi硫化物または/およびTi炭硫
化物が内在するMnSを含有することを特徴とする低炭素
硫黄快削鋼。
1〜0.01%、Te:0.001〜0.01%、Bi:0.005〜0.3%、S
n:0.005〜0.3%、Ca:0.0005〜0.01%、Mg:0.0005〜
0.01%および希土類元素:0.0005〜0.01%からなる群か
ら選んだ1種または2種以上を含有し、上記式および
式を満たすことを特徴とする低炭素硫黄快削鋼。
に、Cu:0.01〜1.0%、Ni:0.01〜2.0%、Cr:0.01〜2.
5%、Mo:0.01〜1.0%、V:0.005〜0.5%およびNb:0.
005〜0.1%からなる群から選んだ1種または2種以上を
含有し、上記式および式を満たことを特徴とする低
炭素硫黄快削鋼。
に、Se:0.001〜0.01%、Te:0.001〜0.01%、Bi:0.00
5〜0.3%、Sn:0.005〜0.3%、Ca:0.0005〜0.01%、M
g:0.0005〜0.01%および希土類元素:0.0005〜0.01%
からなる群から選んだ1種または2種以上と、Cu:0.01
〜1.0%、Ni:0.01〜2.0%、Cr:0.01〜2.5%、Mo:0.0
1〜1.0%、V:0.005〜0.5%およびNb:0.005〜0.1%か
らなる群から選んだ1種または2種以上を含有し、上記
式および式を満たすことを特徴とする低炭素硫黄快
削鋼。
0.1質量%未満であることが望ましい。
硫化物が内在するMnSについて 本発明の快削鋼の大きな特徴の一つは、「Ti硫化物また
は/およびTi炭硫化物が内在するMnS」を含むことであ
る。
として存在し得るが、そのMnS中に固溶するTi量は微量
であるから、この硫化物は実質的にMnSである。一方、
このようなMnSとは明らかにその組成が異なり、TiSま
たはTi4C2S2の化学式で表されるTi硫化物またはTi
炭硫化物が存在する。これらの多くは、MnS中にMnSと
は明白に相分離して存在する。
は、鋼材から切り出したミクロ試験片に対してEPMA(電
子線マイクロアナライザー)やEDX(エネルギー分散型
X線分析装置)等によって面分析及び定量分析を行うこ
とにより把握できる。
をEPMAによって面分析をした結果を示すものである。
(a)に示すのが1個の介在物であり、(b)〜(d)はその
介在物中のTi、MnおよびSの存在を示す。
またはTi炭硫化物は、1個の硫化物の周辺付近に存在し
たり、MnSに取り囲まれる形で存在する等、その存在形
態は多様である。このように1個のMnSと共にTi硫化物
または/およびTi炭硫化物が相分離して存在し、かつ1
個の硫化物中のMnSが占める面積率が50%以上である硫
化物を、本発明では「Ti硫化物または/およびTi炭硫化
物が内在するMnS」と定義する。
炭硫化物の組成および面積率は、前記EPMAまたはEDXに
よって確認できる。また、鋼中の「Ti硫化物または/お
よびTi炭硫化物が内在するMnS」も同じ方法で確認で
き、その個数も測定することができる。複数の視野で測
定した個数を1mm2当たりの個数に換算し、その平均値
が10個/1mm2以上であれば、優れた被削性が得られ
る。
するMnSを含む鋼を切削すると、軟質なMnSが被削材と
工具との接触面において擬似的な潤滑作用をなし、工具
表面にはTiNが形成されて工具を保護する。即ち、切削
中に被削材と接触する工具の表面にMnSと共にTi硫化物
もしくはTi炭硫化物が付着し、さらに切削中の摩擦によ
る温度上昇によってこれらのTi系硫化物が雰囲気中のN
(窒素)と反応し、厚さ数μmから数十μmの層状を呈
する硬質のTiNが形成されるものと考えられる。その存
在は、切削終了後に炭素系汚染(油分等)をArスパッタ
リング゛等で除去した工具表面について、AES(オージェ
電子分光分析)やEPMAによる面分析および点分析を行う
ことによって確認することができる。
のTiN膜の表面積は被削材と工具との接触面積のおよそ
10〜80%にわたって存在し、残りの部分にはMnSやFeが
付着しているか、または付着物のない工具素地のままで
あった。このように工具表面に形成された硬質のTiN膜
が大きな工具保護効果をもたらし、工具の耐摩耗性が向
上し、その寿命が長くなるのである。この工具寿命の改
善効果は、硫黄快削鋼やPbを含む複合快削鋼より格段に
大きい。
びTi炭硫化物が内在するMnS」の外に、MnS、Ti硫化物
およびTi炭硫化物が微細な介在物として存在する。即
ち、全介在物個数が著しく多く、これが切削時に生成す
る切屑中の応力集中点として作用し、亀裂伝播を助長す
るために切屑分断性も向上するのである。
って、鋼中の「Ti硫化物または/およびTi炭硫化物が内
在するMnS」を存在させることができる。なお、このMn
Sを安定して存在させるためには、鋳造後、1000℃以上
の十分に高い温度に加熱し、十分に保持した後に鍛造す
るか、または同じく高温で焼準するといった熱履歴を与
えることが望ましい。
説明する。なお、成分含有量についての%は質量%を意
味する。
る。被削性が重要視される用途の鋼材の場合、C含有量
が0.19%を超えると鋼材の強度が高くなって被削性が劣
化する。しかし、C含有量が0.05%未満の場合は、鋼材
が軟質になり過ぎ、切削中にむしれを生じて、かえって
工具摩耗を促進するうえに切り屑処理性が劣化する。よ
ってCを0.05〜0.19%の範囲に限定した。なお、さらに
良い被削性を得るためのC量のより適正な範囲は0.05〜
0.17%である。
な影響を及ぼす重要な元素である。0.40%未満では硫化
物としての絶対量が不足して満足な被削性を得ることが
できない。また、2.0%を超えると、鋼材の強度が上昇
するために切削抵抗が高くなるのに加え、工具寿命を低
下させる。さらに切削抵抗の低減、工具寿命の向上、切
り屑処理性の向上、熱間加工性の改善を図るためにもS
量との関係が重要である。即ち、その量は、原子比でMn
/S≧1の関係を維持しなければならない。なお、これ
らの性能を確実に得るためにはMn含有量は0.6〜1.8%と
することが好ましい。
して被削性を改善するのに有効な必須添加元素である。
特にMnSによる被削性向上効果はその生成量に応じて向
上する。しかし、0.21%未満では十分な量の硫化物系介
在物が得られず、満足な被削性は期待できない。通常、
Sの含有量が0.35%を超えると鋼の熱間加工性を劣化さ
せ、鋼塊中央部でのS偏析が生じ、鍛造時に割れを誘発
する。しかし、本発明で定める組成を維持すれば、この
ような弊害なしに、S含有量の上限を1.0%まで高める
ことができる。製造時の歩留りを考慮すれば、S含有量
の好ましい上限は0.70%である。
し、これらがMnSに内在する形態で存在することにより
鋼の被削性および熱間加工性改善する。従って、本発明
鋼においては重要な必須の元素である。Tiは、Mnと比較
しても強力な硫化物生成元素であり、含有量が0.03%以
上であればTi硫化物またはTi炭硫化物を形成し、MnS中
に内在する形態で存在するので被削性を改善する効果は
十分に得られる。0.03%未満ではその効果は不十分であ
る。一方、Tiが0.30%を超えると硫化物とし硬質なTi硫
化物またはTi炭硫化物が多くなり、切削抵抗を高めて被
削性を劣化させる。より望ましいTi含有量の上限は、0.
10%である。
ある。しかし、その含有量が1.0%を超えると鋼の熱間
加工性を劣化させ、また、フェライト相を固溶強化する
ために切削抵抗が高くなって被削性を損なう。従って、
Si含有量の上限を1.0%とするが、0.1%未満に抑えるの
が一層望ましい。なお、脱酸のためには、Si含有量は0.
001%以上であるのが望ましいが、実質的に0(零)%
であっても、後述するAlの添加などで鋼中酸素量が適切
な範囲に調整できれば、被削性の劣化は生じない。
加工性を劣化させる。従って、含有量の上限を0.3%と
した。他方、Pは被削性改善効果を有する元素であるか
ら、この効果が得るために下限を0.001%とした。より
好ましいPの含有量は0.01〜0.15%である。
されていてもよい。しかし脱酸によって生成する酸化物
は硬質であって、Al含有量が0.2%を超えると硬質酸化
物が大量に生成し、被削性を劣化させる。より好ましい
のは、0.1%以下とすることである。なお、前記のSiに
よって十分な脱酸が可能な場合には、Alの添加は不必要
であり、その含有量は実質的に0(零)%であってもよ
い。
中に固溶して圧延によるMnSの延伸を防ぎ、機械的性質
の異方性を小さくする。さらに被削性および熱間加工性
の改善にも寄与し、Sの偏析防止にも有効である。従っ
て、酸素は0.0010%以上含有させるのがよい。しかし、
0.05%を超えると溶製時における耐火物の劣損を招く等
の弊害がある。よって上限を0.05%とした。上記の効果
を適切に得るためのより好ましい範囲は0.005〜0.02%
である。
化物は結晶粒を微細化する効果を有する。この効果はN
の含有量が0.0001%以上で生じる。これらの窒化物が大
量に存在すると被削性が劣化し、また、切削工具の摩耗
が大きくなるが、本発明鋼の切削時には工具表面にTiN
が形成されて工具を保護するため、鋼中にある程度の量
の窒化物が存在していてもその被削性を劣化させること
はない。しかし、N量が0.0200%を超えるとその効果が
薄れる。より長い工具寿命を得るためには、0.0150%以
下とすることが好ましい。さらなる工具寿命の延長を望
む場合には0.0100%以下とすればよい。
がFeと不純物からなるものである。
次に述べる第1群の元素または/および第2群の元素の
1種以上を含む鋼である。
よび希土類元素からなり、これらは鋼の被削性をさらに
改善するものである。第2群元素は、Cu、Ni、Cr、Mo、
VおよびNbからなり、これらは鋼の機械的性質を改善す
るものである。
成し、被削性改善に有効な元素である。これらは、それ
ぞれ0.001%未満では効果が乏しい。一方、Se、Teとも
に0.01%を超えるとその効果が飽和するばかりでなく、
経済的でなくなる上に熱間加工性が劣化する。
果を発揮し、被削性を改善する。その効果は、それぞれ
0.005%以上で顕著になる。但し、その含有量がそれぞ
れ0.3%を超えると効果が飽和するばかりでなく、熱間
加工性が劣化する。
有するのでこれらと硫化物または酸化物を形成すると同
時にMnS中に固溶して(Mn,Ca)Sや(Mn,Mg)Sとして存在
する。また、これらの酸化物を生成核としてMnSが晶出
するために、MnSの延伸を抑制する効果を有する。この
ように、CaおよびMgは、硫化物の形態を制御して被削性
を改善するので、必要に応じて添加しても良い。この効
果を確実に得たい場合には、Ca、Mgともにそれぞれ0.00
05%以上含有させればよい。ただし、0.01%を超えて含
有させても効果は飽和する。また、CaもMgも添加歩留り
が低いので、含有量を多くするには多量の添加を要し、
製造コストの面からも好ましくない。従って、含有量の
上限はそれぞれ0.01%とした。
ある。これを添加する場合には、通常、これらを主要成
分とするミッシュメタル等を用いる。本発明では希土類
元素の含有量は、希土類元素の中の1種または2種以上
の元素の合計含有量で表す。希土類元素は、Sおよび酸
素と共に硫化物または酸化物を形成すると同時に、硫化
物の形態を制御して被削性を向上させる。その効果を確
実に得るためには0.0005%以上含有させればよい。しか
し、含有量が0.01%を超えると効果は飽和するばかりで
なく、CaおよびMgと同じく添加歩留りが低いので多量に
含有させるのは経済的でない。
合には0.01%以上含有させると良い。しかし、含有量が
1.0%を超えると鋼の熱間加工性が劣化し、また被削性
の低下を招く。
あり、また、焼入れ性の向上や靭性向上の効果もある。
この効果を確実に得るためにはその含有量を0.01%以上
とすることが望ましい。しかし、2.0%を超えると被削
性の劣化を招くと共に熱間加工性も劣化する。
得るには0.01%以上の含有が好ましいが、2.5%を超え
ると被削性を劣化させる。
る。その効果を確実に得るためには含有量を0.01%以上
とすることが望ましい。但し、1.0%を超えると効果が
飽和し、鋼の製造コストが上昇する。
鋼の強度を高める。その効果を確実に得るためには、そ
れぞれ0.005%以上の含有量とすることが望ましい。し
かし、Vは0.5%、Nbは0.1%をそれぞれ超えると、上記
の効果が飽和するばかりでなく、窒化物や炭化物が過剰
に生成し、被削性の劣化をきたす。
下のとおりである。
化物またはTi炭硫化物を形成する。その傾向は、Mn硫化
物の生成傾向も大きい。Tiの効果は、前述したとおり、
Ti系介在物によって切削時に工具表面にTiNを形成する
ことによる工具寿命の向上である。ところが、Ti硫化物
やTi炭硫化物は、MnSに比べると変形抵抗の大きい硬い
介在物である。従って、Tiの含有量がS含有量以上とな
る組成では、MnSの生成量が少なくなってTi硫化物やTi
炭硫化物が主体となり、切削時に工具と被削材間の硫化
物による擬似的な潤滑効果が得られず、切削抵抗が急激
に上昇してしまう。切削抵抗が上昇すると工具寿命が短
くなるだけでなく、細径の材料を切削する場合に被削材
が振動を起こす等の不具合が生じる。
(質量%)/S(質量%)」が1よりも小さくなるよう
に調整することによって、Ti硫化物やTi炭硫化物が主要
な硫化物にはならず、硫化物の主体はMnSとなる。この
場合には、上記のようにTi硫化物やTi炭硫化物が主要硫
化物となった場合に生ずる切削抵抗が上昇するなどの不
具合が無く、工具寿命や切屑処理性を向上させることが
できる。
理由は以下のとおりである。
あるが、原子比にてMn/S≧1となる組成を維持すれ
ば、SはMn硫化物として晶出し、熱間加工性に悪影響を
及ぼさない。
量を前記式を満たすように調整すれば、Ti系硫化物が
生成し、熱間加工性を改善できる。しかし、その場合に
は、前記のように切削抵抗の増大、工具寿命の短縮等の
不具合が生じる。さらに、Mn/Sが1未満であって、Ti
をS含有量を超えない範囲で含有させた場合、即ち、前
記式は満たすが式を満足しない組成とした場合、介
在物の主体は、FeSがMnSおよびTiSに多く固溶した硫
化物となる。これらの硫化物は、FeSを多く固溶するた
めに鋼の熱間加工性を悪化させ、連続鋳造法などによっ
て製造する場合には操業条件の制御が難しくなる。
誘導炉を用いて溶製し、直径220mmで150kgの鋼塊を作製
した。これらの鋳塊を、「Ti硫化物または/およびTi炭
硫化物が内在するMnS」を安定して生成させるために、
1200℃の高温まで加熱して2時間以上保持した後、1000
℃以上で仕上げる鍛造を行い、空冷(AC)して直径65mm
の丸棒を得た。この丸棒に950℃で1時間保持して空冷
(AC)する焼準を施した。
部分の縦断面方向からミクロ観察用試験片を切り出し、
研磨した後、EPMAおよびEDXによって面分析と定量分析
を行った。その結果、No.1からNo.29までの鋼には、Ti
硫化物または/およびTi炭硫化物が内在するMnSが平均
10個/mm2以上存在することが確認された。
削試験に供した。なお、熱間加工性が悪いために鍛造に
よって割れを生じたものについては割れが生じた時点で
そのまま950℃で1時間保持する焼準を行い空冷(AC)
した後、切削によって60mmφまで外削して供試材とし
た。
されていないJIS P種の超硬工具を用いて行った。切削
は乾式(潤滑油無し)の旋削で、その条件は、切削速
度:150m/min、送り:0.10mm/rev、切り込み:2.0mm、で
ある。
平均逃げ面摩耗量(VB)を測定した。なお、30分以内に
平均逃げ面摩耗量が200μm以上に到達した供試材につい
ては、その到達時間とその時の平均逃げ面摩耗量(VB)
を測定した。また、平均逃げ面摩耗量(VB)が100μmに
達する時間を工具寿命の目安として評価した。試験途中
で耐摩耗性に優れ、摩耗進行速度が極めて小さいために
供試材が不足したものについては旋削時間−工具摩耗量
曲線から平均逃げ面摩耗量(VB)が100μmに達する時間
を回帰により算出した。また切屑処理性は、排出された
切屑のうちの代表的なものを200個以上採取し、その重
量を測定した上で単位重量当たりの個数を算出して評価
した。
設備による製造条件を模擬するために、前述と同様に作
製した150kg鋼塊の表面部に近いDi/8(Diは鋼塊の直
径)の位置を中心として、鋼塊高さ方向から直径10mm、
長さ130mmの高温引張試験片を採取した。これを、固定
間隔を110mmとした上で直接通電によって1250℃まで加
熱し、5分保持後、10℃/秒の冷却速度で1100℃まで冷
却し、さらに10秒保持した後、歪み速度10−3/秒にて
引張試験を行った。その際、破断部の絞りを測定して熱
間加工性を評価した。
また、図2に切り屑処理性と工具寿命との関係、図3に
熱間引張試験の絞り値と工具寿命の関係をそれぞれ示
す。
は硫黄快削鋼で、これまで被削性に最も優れるものとさ
れていた鋼(JIS SUM23LまたはSUM23相当材)である。
表3、表4および図2から明らかなように、これらと比
較しても本発明鋼は格段に優れた工具摩耗抑制効果を有
している。 さらに、鋼No.1〜29の本発明鋼では鍛造時
に割れを起こすことが一切なく、連続鋳造設備等による
実用的な製造を模擬した高温引張試験による絞りも、表
3に示すとおり、複合快削鋼や硫黄快削鋼と同等以上で
あって実用的には何ら問題がない。
る条件の一つでも外れているものは、熱間延性、工具寿
命、切屑処理性のうち少なくとも一つが本発明鋼に比べ
て劣っている。なお、鋼No.41と42ではMnとSが前記
式を満たさないために熱間加工性が劣悪となっている。
かかわらず、従来の鉛快削鋼および複合快削鋼のいずれ
にも勝る被削性を有している。この鋼は、熱間加工性に
も優れ、連続鋳造法によって安価に製造できる。従っ
て、各種機械部品の素材として好適である。
Ti炭硫化物が内在するMnSのEPMA分析結果を示す図であ
る。
7)における切り屑処理性と工具寿命との関係を示す図
である。
〜47)における熱間延性試験による絞りと工具寿命との
関係を示す図
Claims (5)
- 【請求項1】質量%で、C:0.05〜0.19%、Mn:0.4〜
2.0%、S:0.21〜1.0%、Ti:0.03〜0.30%、Si:1.0
%以下、P:0.001〜0.3%、Al:0.2%以下、O(酸
素):0.0010〜0.050%およびN:0.0001〜0.0200%を
含有し、残部がFeおよび不純物からなり、TiとSの含有
量が下記式を満たし、MnとSの原子比が下記式を満
たし、かつ、Ti硫化物または/およびTi炭硫化物が内在
するMnSを含有することを特徴とする低炭素硫黄快削
鋼。 Ti(質量%)/S(質量%)<1 ・・・ Mn/S≧1 ・・・ - 【請求項2】質量%で、C:0.05〜0.19%、Mn:0.4〜
2.0%、S:0.21〜1.0%、Ti:0.03〜0.30%、Si:1.0
%以下、P:0.001〜0.3%、Al:0.2%以下、O(酸
素):0.0010〜0.050%、N:0.0001〜0.0200%、なら
びにSe:0.001〜0.01%、Te:0.001〜0.01%、Bi:0.00
5〜0.3%、Sn:0.005〜0.3%、Ca:0.0005〜0.01%、M
g:0.0005〜0.01%および希土類元素:0.0005〜0.01%
からなる群から選んだ1種または2種以上を含有し、残
部がFeおよび不純物からなり、TiとSの含有量が下記
式を満たし、MnとSの原子比が下記式を満たし、か
つ、Ti硫化物または/およびTi炭硫化物が内在するMnS
を含有することを特徴とする低炭素硫黄快削鋼。 Ti(質量%)/S(質量%)<1 ・・・ Mn/S≧1 ・・・ - 【請求項3】質量%で、C:0.05〜0.19%、Mn:0.4〜
2.0%、S:0.21〜1.0%、Ti:0.03〜0.30%、Si:1.0
%以下、P:0.001〜0.3%、Al:0.2%以下、O(酸
素):0.0010〜0.050%、N:0.0001〜0.0200%、なら
びにCu:0.01〜1.0%、Ni:0.01〜2.0%、Cr:0.01〜2.
5%、Mo:0.01〜1.0%、V:0.005〜0.5%およびNb:0.
005〜0.1%からなる群から選んだ1種または2種以上を
含有し、残部がFeおよび不純物からなり、TiとSの含有
量が下記式を満たし、MnとSの原子比が下記式を満
たし、かつ、Ti硫化物または/およびTi炭硫化物が内在
するMnSを含有することを特徴とする低炭素硫黄快削
鋼。 Ti(質量%)/S(質量%)<1 ・・・ Mn/S≧1 ・・・ - 【請求項4】質量%で、C:0.05〜0.19%、Mn:0.4〜
2.0%、S:0.21〜1.0%、Ti:0.03〜0.30%、Si:1.0
%以下、P:0.001〜0.3%、Al:0.2%以下、O(酸
素):0.0010〜0.050%、N:0.0001〜0.0200%、なら
びにSe:0.001〜0.01%、Te:0.001〜0.01%、Bi:0.00
5〜0.3%、Sn:0.005〜0.3%、Ca:0.0005〜0.01%、M
g:0.0005〜0.01%および希土類元素:0.0005〜0.01%
からなる群から選んだ1種または2種以上と、Cu:0.01
〜1.0%、Ni:0.01〜2.0%、Cr:0.01〜2.5%、Mo:0.0
1〜1.0%、V:0.005〜0.5%およびNb:0.005〜0.1%か
らなる群から選んだ1種または2種以上を含有し、残部
がFeおよび不純物からなり、TiとSの含有量が下記式
を満たし、MnとSの原子比が下記式を満たし、かつ、
Ti硫化物または/およびTi炭硫化物が内在するMnSを含
有することを特徴とする低炭素硫黄快削鋼。 Ti(質量%)/S(質量%)<1 ・・・ Mn/S≧1 ・・・ - 【請求項5】Si含有量が0.1質量%未満である請求項1
から4までのいずれかに記載の低炭素硫黄快削鋼。
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