JP2011530004A - 環境に優しい無鉛快削鋼及びその製造方法 - Google Patents

環境に優しい無鉛快削鋼及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、重量%で、C:0.03〜0.13%、Si:0.1%以下、Mn:0.7〜2.0%、P:0.05〜0.15%、S:0.2〜0.5%、B:0.001〜0.01%、Cr:0.1〜0.5%、Ti:0.05〜0.4%、N:0.005〜0.015%、及びO:0.03%以下、並びに残部Fe及びその他の不可避不純物を含む無鉛快削鋼に関し、上記無鉛快削鋼は、線材の圧延方向の断面において、粒子サイズ5μm以上のMnS介在物が300〜1,000個/mmの範囲で存在することができる。また、本発明は、鋼材製造段階において全酸素量を段階別に適切に制御して環境に優しい無鉛快削鋼を製造する方法に関する。

Description

本発明は、切削性に優れた環境に優しい無鉛快削鋼及びその製造方法に関し、より詳細には、(1)Ti、Cr、N等を適量添加して非金属介在物及び析出物を形成させ、(2)成分中のMn/Sの比率を3.5以上に制御し、(3)全酸素(T.[O])量を300ppm以下に制限しながら、(4)圧延方向の断面において、面積5μm以上のMnSが300〜1,000個/mmの範囲で存在するようにMnS介在物の数を調節することで、切削性及び熱間圧延特性を向上させた、環境に優しい無鉛快削鋼及びその製造方法に関する。
快削鋼とは、所謂切削性と呼ばれる鋼材の被削性を高度に向上させた鋼を意味する。このような快削鋼は、自動車の油圧部品、プリンター等に用いられるOA機器のシャフト(shaft)、切削部品等の素材として広く用いられており、その用途や需要は次第に増加する傾向にある。
快削鋼は、基本的に優れた切削性、特に機械的切削性を有しており、このため、従来は、多様な合金元素を添加したり内部に介在物を形成させたりする方法で切削性を向上させた。切削性の向上のための機構としては、特に非金属性の介在物が用いられており、非金属介在物のうちよく知られているものがMnSである。
快削鋼の切削性は、MnSのサイズ、形状、分布等を制御することで得られ、より詳細には、旋盤等の機械加工装置を利用して鋼材を切削する際に、工具の先端部(tip)と鋼材とが接触する部位で、MnS等の非金属介在物が応力集中源(stress concentration source)として作用し、それら非金属介在物とマトリックス(matrix)との界面でボイド(void)が生成され、当該ボイドで亀裂(crack)成長が促進されることによって、切削に必要な力を減少させる原理で作用する。
したがって、快削鋼の切削性の向上のためには、基本的に(1)MnSが多量に残存すべきであり、(2)無作為(random)に分布すべきであり、(3)MnSのサイズが大きく、特にその形状が球状に近いほど良い。
快削鋼に存在するMnSの形状は、連続鋳造タンディッシュ(tundish)の酸素量に応じて大きく変わり、当該形状は大きく3つの形態、即ち、球状(Type I)、樹脂状(Type II)及び不規則な形態(Type III)等に区分される。
MnSが球状(Type I)に近いほど快削鋼の切削性は向上すると知られており、タンディッシュの全酸素(T.[O])量が数百ppm程度と高い場合は、高温の溶湯が凝固されながら脱酸過程と並行してMn(O、S)等の複合硫化物として晶出される。これに対し、樹脂状(Type II)構造のMnSは、タンディッシュのT.[O]量が数十ppm程度と比較的低い場合、溶湯の凝固時に溶湯から晶出されることなく、1次結晶粒界に沿って析出され、その後、鋼材の熱間圧延過程で圧延方向に沿って容易に延伸されることで、材料の異方性を大きく劣化させる。
上記樹脂状構造は、快削鋼を除外した一般鋼の凝固時に生成される形態であって、鋼の機械的物性を大きく劣化させるため、精錬工程においてはMnSの析出を抑制させるためにSの含量を数ppm程度と極端に減らす等の、多くの努力が行われている。
上記不規則な形態(Type III)のMnSは、溶湯中のタンディッシュのT.[O]量が数ppm程度と低く、溶解アルミニウム成分が高い場合、主に高温でMnS単独介在物として生成される特徴を有し、アルミニウム脱酸鋼では角形で存在すると知られている。
快削鋼に対する従来技術としては、C、Si、Mn、S、P、Nb及びO等の元素を特定範囲に限定すると共に、微細組織としてポリゴナルフェライト(polygonal ferrite)の面積率を5%以上に限定したものがある。しかしながら、当該従来技術は、Nb、Mo、Zr等の高価な合金元素を多量添加させたにもかかわらず、快削鋼におけるこれら合金鉄の役割を明確に提示してはいなかった。また、ポリゴナルフェライトの面積率を所期の範囲に限定しながらも、その測定方法を具体的に提示していなかったという問題点がある。
快削鋼に対する他の従来技術としては、C、Si、Mn、S、O、Bi等の合金元素を一定量添加し、圧延方向の断面1mm当たりのBi介在物の個数とBi含量の比率を一定値以上に限定したものがある。しかしながら、当該従来技術は、Bi介在物の個数とBi含量の比率を限定してはいるが、実際の快削鋼の製造過程においてその比率を制御することは困難である。さらに、当該従来技術は、酸素を0.003重量%以下添加することを特徴としているが、このような酸素量ではMnSの形状をType I、即ち、球状に制御する、切削性に優れた高酸素快削鋼を提供するのが困難である。
快削鋼の製造に対するさらに他の従来技術は、従来の造塊法で製造した快削鋼と同等水準の切削性を有する硫黄系連続鋳造快削鋼に関し、炭素(C)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)、窒素(N)及び酸素(O)を一定量含み、MnS介在物の平均サイズを50μm以下とすることを特徴とする。しかしながら、当該従来技術は、MnSに関する内容を開示してはいるが、その粒子のサイズのみを提案しているだけであり、MnSの形状が切削性に及ぼす影響については説明していない。
快削鋼に対するさらに他の従来技術は、炭素(C)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)、窒素(N)及び酸素(O)を基本成分とし、Siを0.1重量%以下、Alを0.009重量%以下に制限し、また、20〜150ppmの範囲のNと酸化物系介在物との質量合計が50%以上であることを特徴とする。しかしながら、快削鋼鋼材において酸化物系介在物の質量を測定することが現実的には困難であるという事実を勘案すると、測定しにくい値を一定範囲に制御した当該発明は、その実効性と現実性において問題があるものと判断される。
快削鋼に対するさらに他の従来技術は、Bi−S系快削鋼の製造方法に関し、優れた物性の快削鋼及びオーステナイト結晶粒度を一定サイズに調整して高温延性を増大させることを特徴としている。即ち、重量%で、炭素:0.05〜0.15%、マンガン:0.5〜2.0%、硫黄:0.15〜0.40%、リン:0.01〜0.10%、酸素:0.003〜0.020%、ビスマス:0.03〜0.30%、シリコン:0.01%以下、及びアルミニウム:0.0009%以下、並びに残部が鉄及び不可避不純物を含み、MnSとビスマスが吸着されたMnS系介在物の剪断面率が0.5〜2.0%であり、かつビスマスの剪断面率が0.030〜0.30%である、Bi−S系快削鋼を提案している。しかしながら、これは、Bi−S系快削鋼に関し、本発明のようなMnS形状の制御に関する方法を提供してはいない。
上述した従来技術の問題点又は従来技術が明確に指摘していない快削鋼の問題点は補完されるべきであり、環境規制強化基準に適し且つ切削性、熱間圧延性等の特性に優れた無鉛快削鋼が提案される必要がある。
重量%で、C:0.03〜0.13%、Si:0.1%以下、Mn:0.7〜2.0%、P:0.05〜0.15%、S:0.2〜0.5%、B:0.001〜0.01%、Cr:0.1〜0.5%、Ti:0.003〜0.2%、及びN:0.005〜0.015%、O:0.03%以下、並びに残部Fe及びその他の不可避不純物を含む無鉛快削鋼が提供され、線材の圧延方向の断面において、粒子サイズが5μm以上のMnS介在物が、300〜1,000個/mmの範囲で存在することができる。この場合、上記MnとSの重量比率は、Mn/S≧3.5であることができる。
さらに、転炉内の溶湯に酸素を超音速で吹き込んで遊離酸素が400〜1,000ppmの際に酸素の吹き込みを終了する転炉精錬段階と、酸素の吹き込みが完了された溶湯を未脱酸状態で取鍋(teeming ladle)に出鋼する出鋼段階と、上記取鍋を取鍋精錬炉(LF)に移送させた後に溶湯の遊離酸素濃度が100〜200ppmの範囲になるまでLF精錬する溶湯の加熱段階と、鋳造時間の10〜50%の時点で遊離酸素濃度が50〜150ppmとなるように溶湯をビレットに鋳造する連続鋳造段階と、上記ビレットを1,200〜1,350℃の温度に加熱炉で2〜5時間維持しながら線材に圧延する線材圧延段階とを含む、無鉛快削鋼の製造方法が提供される。上記連続鋳造段階の場合、溶湯をブルームに製造した後、鋼片圧延によって再びビレットに製造することもでき、この際、上記ブルームを加熱炉で1,250℃以上の温度に4〜10時間維持しながらビレットに圧延する鋼片圧延段階をさらに含むことができる。
なお、上記無鉛快削鋼は、重量%で、C:0.03〜0.13%、Si:0.1%以下、Mn:0.7〜2.0%、P:0.05〜0.15%、S:0.2〜0.5%、B:0.001〜0.01%、Cr:0.1〜0.5%、Ti:0.003〜0.2%、N:0.005〜0.015%、及びO:0.03%以下、並びに残部Fe及びその他の不可避不純物を含み、線材の圧延方向の断面において、粒子サイズが5μm以上のMnS介在物が、300〜1,000個/mmの範囲で存在することができる。特に、上記連続鋳造段階では、モールド電子攪拌装置及び軽圧下(soft reduction)装置の少なくとも一つの装置を利用することができ、上記MnとSの重量比率は、Mn/S≧3.5であることができる。
上述したように、本発明の無鉛快削鋼及びその製造方法によると、製鋼及び連続鋳造工程でS快削鋼を容易に製造することができる上、製鋼段階で球状のMnSを多量晶出して切削性を大きく向上させながらも、優れた熱間圧延性を有する環境に優しい無鉛快削鋼が提供されることができる。
MnS介在物の態様を示す顕微鏡写真である。 高酸素快削鋼においてCr、Ti、N及びS系析出物がMnS介在物と共存する態様を示す顕微鏡写真である。 本発明の環境に優しい無鉛快削鋼の製造工程を概略的に示す図面である。 本発明の条件を満足する実験例と比較例の工具寿命を比較するグラフである。 本発明の条件を満足する実験例と比較例の表面粗度を比較するグラフである。
上述した目的を達成するために、本発明者らは、(1)Ti、Cr、N等を適量添加して非金属介在物及び析出物を形成させ、(2)成分中のMn/Sの比率を3.5以上に制御し、(3)全酸素(T.[O])量を300ppm以下に制限しながら、(4)圧延方向断面において、面積5μm以上のMnSが、300〜1,000個/mmの範囲で存在するようにMnS介在物の数を調節して、無鉛快削鋼を製造した。
上記MnS介在物は、図1に示されるような形状で快削鋼内に存在し、特に、上述した技術的構成によってTi、Cr、Nを適切に制限する場合は、凝固時にサイズ0.1〜5μmの範囲の(Cr、Ti)S系又は(Cr、Ti)N系微細析出物が、図2に示されるように結晶粒界(grain boundary)に多量に析出されるため、(1)部品の機械加工作業中に加工硬化が起こることを防止して切削性を向上させると共に、(2)鋼材の破壊靭性を向上させて構成刃先(Build−Up Edge、BUE)の生成を抑制しチップ(chip)の分節性を良くして快削鋼の切削性を向上させることができるようになる。これにより、工具寿命が増えると共に、鋼の表面粗度において優れた効果を示すことができる。
以下、上記無鉛快削鋼を構成する成分系について、より詳細に説明する。
炭素(C):0.03〜0.13重量%
Cは、炭化物を形成して素材の強度及び硬度を増加させる元素であり、快削鋼においては一部がパーライト(pearlite)として存在して鋼材の切削時に工具に構成刃先(Build−Up Edge、以下、BUEという)が生じることを抑制する役割をする。Cの含量が0.03%未満の場合は、素材の硬度を所期の範囲に増加させるのが困難になり、構成刃先を抑制する効果がない。これに対し、Cの含量が0.13%を超える場合は、素材の硬度が増加し過ぎて工具寿命が大きく短縮されるため、本発明ではCの含量を0.03〜0.13%の範囲に限定する。
シリコン(Si):0.1重量%以下
Siは、銑鉄や脱酸剤によって素材に残留される元素であり、酸化物、即ち、SiOを形成しなければ、殆どがフェライトに固溶されるため、一般的な快削鋼の機械的性質には大きな影響を及ぼさないものと知られていた。しかしながら、本発明者らの実験によると、高酸素快削鋼においてSiの含量が0.1%を超えると、SiOが生成されて快削鋼の機械加工時に工具寿命を顕著に落とすため、本発明ではSiを添加しないことを原則とする。しかしながら、製鋼過程において、合金鉄、耐火物等から不可避にSiが流入されることがあるため、本発明の快削鋼に存在するSiの含量を0.1%以下に制御した。
マンガン(Mn):0.7〜2.0重量%
Mnは、鋼材の被削性を与えるための非金属介在物であるMnSを形成させるのに重要な合金元素であり、0.7%以上添加した場合に、MnS介在物を効果的に晶出させることができる。さらに、熱間圧延時、鋼片の表面欠陥が増加することを抑制することができる。しかしながら、Mnの含量が多すぎて2.0%を超えると、鋼材の硬度が増加して工具寿命が却って落ちることがある。なお、Mnの含量が0.7〜2.0%の範囲の場合は、一部のMnが酸素と結合してMnOを生成するが、これは、凝固過程においてMnS生成の核として作用して、球状のMnS介在物の生成を促進する役割をする。
リン(P):0.05〜0.15重量%
Pは、切削工具の先端に形成されやすい構成刃先を抑制するための元素であり、Pの含量が0.05%未満の場合は、構成刃先生成の抑制効果を期待するのが困難になり、0.15%を超える場合は、構成刃先生成の抑制効果は優れるが、鋼材の硬度が増加して切削工具寿命が短縮される恐れがあるため、本発明ではPの含量を0.05〜0.15%の範囲に限定する。
硫黄(S):0.2〜0.5重量%
快削鋼においてSは、凝固時にMnS介在物を形成するのに用いられる。MnSは、前述したように、鋼材の切削性を向上させて切削工具の磨耗を減らし、被削材の表面粗度を改善する役割をするため、本発明において非常に重要である。このような目的のため、Sは、0.2%以上添加される。しかしながら、本発明者らの実験によると、過量のS添加は、結晶粒界への網状のFeSの析出を促進し、このようなFeSは非常に脆弱で融点が低いため、熱間圧延性が大きく低下することがある。また、Sの含量が必要以上に増加すると、鋼材の表面欠陥が増加すると共に、鋼材靭性と延性が顕著に落ちるため、Sの含量は0.5%を超えるべきではない。
ホウ素(B):0.001〜0.01重量%
Bは、鋼材において焼入れ性を増加させる役割をし、このため、本発明は10〜100ppm添加する。Bが10ppm未満添加される場合は、適切な焼入れ性増加効果を得るのが困難になり、本発明者らの実験によると、Bの含量が100ppmを超える場合は、焼入れ性を十分に得ることができるが、高温延性が低下して熱間圧延が困難になるため、その範囲を制限する。
クロム(Cr):0.1〜0.5重量%
Crは、炭素鋼においてオーステナイト領域を拡張させる役割をする元素であって、低コストであり、且つ多量添加しても脆化を起こさない炭化物を形成させる特性を有する重要で普遍的な合金元素である。Crの添加時、粗大な(Cr、Mn)S系非金属介在物が形成され、圧延時、このような非金属介在物の変形を抑制させて、母材上に均一な分布を有するようにする。本発明では、切削性の向上を目的にCrを添加し、本発明者らの実験によると、Crを0.1%未満添加する場合は、被削性の向上効果が大きくなく、0.5%を超える場合は、被削性が限界値に達してこれ以上改善されなかったため、Cr添加量を0.1〜0.5%に限定した。好ましくは、0.2〜0.4%添加することができる。
チタニウム(Ti):0.003〜0.2重量%
Tiは、O、N、C、S及びH等のいずれの元素とも強い親和力を示し、特に脱酸、脱窒、脱硫反応等にも用いられる。また、Tiは、炭化物を容易に形成し、結晶粒を微細化させる役割をする。本発明に関する実験においてもTiを0.003%以上添加すると、結晶粒の微細化によって切削性が大きく向上することが確認された。また、Ti添加時、硬度の増加によってBUEの形成を抑制させるため、切削性が向上する。しかしながら、0.2%を超えて添加する場合、切削性の改善効果は限界に達し、素材に形成された多量の微細析出物とTiOによって却って硬度が増加し過ぎて切削工具寿命が短縮される問題点を示すため、Tiの含量は0.003〜0.2%、好ましくは0.008〜0.15%に制限する。
窒素(N):0.005〜0.015重量%
Nは、切削工具における構成刃先の形成及び切削部品の表面粗度に影響を及ぼす元素である。窒素量が0.005重量%未満の場合は、構成刃先の生成が増加し表面粗度が落ちるため、良くない。また、窒素量が増加するほど構成刃先の生成は減少するが、窒素量が0.015%を超える場合は、鋳造が完了された快削鋼の鋼片の表面欠陥が増加して問題となることがあるため、本発明ではNの含量を0.005〜0.015%に限定する。
酸素(O):0.03重量%以下
酸素(O)は、快削鋼の鋳造時、溶湯の凝固初期にモールドで微細なMnOを形成し、当該MnOは、MnSを晶出させる核生成サイトとして作用するようになる。ここで、上記酸素は、鋳造が完了された鋳片(又は鋼片)の全酸素(T.[O]、Total Oxygen)量を意味する。前述したように、酸素が数十ppm又はそれ以下の場合は、溶湯の凝固時にType II又はType IIIのMnSが析出され、このような形状のMnSは快削鋼の切削性を劣化させるため、問題となる。本発明は、切削性を極大化させるために、Type I、即ち、球状のMnSの晶出を目的とするものであって、実験結果によると、酸素量が高いほど球状のMnSが効果的に晶出される傾向を示すが、その含量が多すぎて0.03%を超えると、凝固が完了された鋳片においてピンホール(pin hole)、ブローホール(blow hole)等の表面欠陥が大きく増加することがあるため、その上限を制限する。
硫黄(S)とマンガン(Mn)との重量比率:Mn/S≧3.5
上述した成分含量規制以外にも、本発明による高温での延性に優れた快削鋼を提供するために、上記MnとSの関係を、重量%を基準としてMn/S比率が3.5以上を満足するように制御する。これは、MnをSと結合させてFeSによる熱間脆性を避けるためであり、一定量以上のMn量を確保することが重要である。特に、Mn/Sの比率が3.5未満の場合は、熱間圧延性が低下して本発明が求める快削鋼を製造するのが困難になる。
MnS個数:圧延方向の断面において5μm以上のサイズのMnSが300〜1,000個/mm
上記無鉛快削鋼は、鋼の内部に残存する非金属介在物であるMnSのサイズと分布によって切削性が大きく変わる。一般的に、MnSのサイズが大きく個数が多いほど鋼材の切削性はより優れていると知られており、本発明者らの光学顕微鏡観察及び切削性評価結果によると、圧延方向、即ち、L方向断面において、5μmを超えるサイズのMnSが300〜1,000個/mmの範囲で存在する場合に、鋼材の切削性に最も優れていることを示した。MnSが300個未満の場合は、切削性の低下によって工具寿命が減少し、加工された部品の表面粗度も劣ることになる。これに対し、1,000個を超える場合は、工具寿命は増えることができるが、チップ(chip)処理性は不良であることを示したため、MnSの個数は300〜1,000個に制御することが好ましい。
以下、前述した合金成分を含み、且つ合金成分を発明の目的に効率的に利用することができる快削鋼の製造方法を、図3を参照してより詳細に説明する。
転炉精錬段階
まず、転炉内の溶湯に酸素を超音速で吹き込んで溶湯に含まれた不純物であるC、Si、Mn、P等を大気又はスラグによって除去する。転炉精錬は、転炉内の溶湯の遊離酸素が400〜1,000ppmの範囲の際に酸素の吹き込みを終了する。酸素が400ppm未満の場合は、溶湯の炭素量が本発明の組成範囲を超えて炭素成分の制御が困難になり、1,000ppmを超える場合は、転炉、取鍋等の耐火物の過多侵食をもたらすことがあり、不利である。
未脱酸出鋼段階
次に、酸素の吹き込みが完了された溶湯を脱酸しない状態、即ち、未脱酸状態で取鍋に出鋼(流出)する段階を経、必要な場合は出鋼段階の途中で合金鉄等の副原料を添加することができる。このような合金鉄等の副原料の添加は、溶湯及びスラグを適正範囲にするためのものである。
溶湯の加熱段階(LF Heating)
出鋼が終了すると、取鍋をLFに移送させ、溶湯の加熱を行う。溶湯の加熱は、予めLFに形成された炭素電極棒を介して電気アークを溶湯に供給することで、溶湯の温度が上昇する。加熱を行う途中で必要な場合は合金鉄等の副原料を添加し、場合によっては溶湯試料を採取、または溶湯の酸素濃度を測定する。溶湯を加熱する過程中、電気アークによってスラグ中の酸素化合物や大気中の酸素が分解されて溶湯に流入されるため、酸素濃度が増加する。LFにおいては、溶湯の遊離酸素濃度が100〜200ppmの範囲の際、LF精錬を終了することが好ましい。遊離酸素濃度が100ppm未満の際にLF精錬を終了すると、所望のMnSを形成させるのが困難になり、200ppmを超える際に終了すると、次の工程において溶湯成分の変動を予測するのが困難になり成分の制御が容易でなくなるため、LF精錬が終了される時点の遊離酸素濃度を100〜200ppmの範囲に制御する。
ブルーム連続鋳造段階
加熱によってLF精錬が完了された溶湯を連続鋳造機に移送し連続鋳造を行う。連続鋳造が開始されてから溶湯の遊離酸素濃度を測定するが、これは、鋳造される快削鋼の切削性の良否を予め把握するためである。遊離酸素濃度は、総鋳造時間の10〜50%時点に測定するが、この際の遊離酸素濃度は、50〜150ppmの範囲であれば良い。鋳造時間が10%時点未満の場合に遊離酸素を測定すると、タンディッシュ耐火物やタンディッシュ保温材等の影響によって正確な遊離酸素濃度を得るのが困難になり、50%時点を超えて測定すると、酸素濃度を制御できる機会を失うことになるため、不利である。また、実験によると、測定された遊離酸素濃度が50ppm未満の場合は、切削性が相対的に不良であり、150ppmを超えると、鋳片においてピンホール、ブローホールが多少増加して良くない。なお、上記快削鋼を鋳造する上で、モールド電子攪拌装置、即ち、モールドEMS装置及び軽圧下(soft reduction)装置を稼働すれば、より優れた鋳片を得ることができるが、モールドEMS装置の場合は球状で大きいサイズのMnS介在物を得るのに有利であり、軽圧下装置の場合は鋳片の中心偏析を減少させて、鋳片の表面でのピンホール、ブローホール等の表面欠陥を低減させるのに非常に有利である。快削鋼の連続鋳造において、300mm×400mm、400mm×500mm等のブルームや120mm×120mm、160mm×160mm等のビレットに連続鋳造するのは、基本的にすべて可能な方法である。但し、ブルームに鋳造する場合は、鋼片圧延工程、即ち、ビレットに製造する工程を経れば良く、ビレットに圧延する場合は、鋼片圧延工程を省略し、線材圧延を行えば良い。
鋼片圧延段階
連続鋳造段階においてビレット鋳造ではなくブルーム鋳造を行った場合は、次にブルームをビレットに圧延する過程がさらに含まれる。300mm×400mm又は400mm×500mmのブルームを用いて、120mm×120mm又は160mm×160mmのビレットに圧延することを一般的に鋼片圧延又はビレット圧延(billetizing)といい、このような鋼片圧延過程で最も重要なことは、鋼片(ブルーム)の温度及び加熱炉維持時間である。鋼片(ブルーム)の温度が低い状態で圧延を行うと、製造されたビレットの表面がひどく損傷されることがあるため、本発明では鋼片(ブルーム)の温度を1,250℃以上に加熱炉で4〜10時間維持することに制限する。若し、鋼片(ブルーム)の温度が1,250℃未満の場合は、加熱炉で長時間維持させても製造されたビレットの表面品質が不良となり、鋼片(ブルーム)の温度を1,250℃以上に維持しても加熱炉での維持時間が4時間未満の場合は、同様にビレットの表面品質が不良となり、ブルームの温度を1,250℃以上に加熱炉で10時間を超えて維持する場合は、生産性が大きく減少しながらもビレットの表面品質が4〜10時間を維持した場合と同等の水準に過ぎないということが実験によって確認されたため、本発明では加熱炉維持時間を4〜10時間に限定する。
線材圧延段階
快削鋼をビレットに鋳造するか又はブルームに鋳造した後に鋼片圧延を行ってビレットを製造したら、次にビレットを線材(wire rod)に圧延する。本段階において、快削鋼ビレットから線材を製造する上で、最も重要な要素は、ビレットの温度及び加熱炉維持時間である。表面品質に優れた快削鋼線材を得るためには、加熱炉でビレットの温度を1,200〜1,350℃の範囲に2〜5時間維持させることが好ましい。ビレットの温度が1,200℃未満の場合は、加熱炉維持時間を長くしても良好な線材の表面品質を得るのが困難であり、1,350℃を超える場合は、1,200〜1,350℃に比べて相対的により優れた線材の表面品質を得るのが困難であった。また、加熱炉維持時間が2時間未満の場合は、上記温度範囲で良好な線材の表面品質を得るのが困難であり、5時間を超える場合も、2〜5時間に比べてより良好な線材の表面品質を得るのが困難であるという結論に達した。
以下、実施例を参照してより詳細に説明する。
[実施例1]
本実施例では、200kg級の高周波大気誘導溶解炉で下記表1の実験例及び比較例(SUM24L)組成物の鋼片を製造した。ここで、比較例は現在最も広く用いられているPb快削鋼、即ち、SUM24Lであり、実験例及び比較例は同一の実験設備と製造過程を経て鋼片を製造し、製造された鋼片のサイズは230mm×230mm×350mmであった。
Figure 2011530004
上記鋼片を加熱炉で1,300℃に加熱し、パイロット圧延機を用いて厚さ30mmの板材に圧延した。次に、圧延方向に30mm×30mmのサイズの四角形に切断した後、旋盤で直径25mmの丸棒に加工した。次いで、CNC旋盤で上記直径25mmの丸棒に対して切削性評価実験を行って工具寿命及び切削面の表面粗度を測定した。上記切削性評価実験では、切削速度100m/min、切削深さ1.0mm及び移送速度0.1mm/revの切削条件を採択して行い、切削油を用いないドライ(dry)コンディションを維持した。
上記実験において、工具寿命としては一般的に広く用いられる切削時間による側面磨耗(flank wear)を測定し、表面粗度としては切削時間による表面粗度を測定し、フランク磨耗及び表面粗度の単位はμmであり、その値が小さいほど表面特性に優れていることを意味する。図4は、本発明の実験例と比較例の工具寿命を示すグラフであり、本発明の実験例は比較例と同等の水準の工具寿命を示す。さらに、図5では、表面特性においてもPb快削鋼と同等の水準であるか又はより優れていることを確認することができた。
本発明が人体に有害なPbの代わりに所定量のCr、Ti及びNを添加することで、工具寿命はもちろん表面粗度もPb快削鋼と同等又は優れた水準を示すことができる理由は、S:0.2〜0.5%の範囲の高酸素快削鋼にCr:0.1〜0.5%、Ti:0.003〜0.2%及びN:0.005〜0.015%を添加する場合、溶湯の凝固時、粗大な(Cr、Mn)S系、1μm(マイクロメートル)前後のサイズの(Cr、Ti)S系及び(Cr、Ti)N系微細析出物が結晶粒界(grain boundary)に多量析出され、このような析出物によって、部品の機械加工作業中における鋼材の加工硬化防止、鋼材の破壊靭性(fracture toughness)低下等の効果が示され、構成刃先生成の抑制、チップ分節性の向上が可能になるためであると判断される。
[実施例2]
連続鋳造が完了された300×400mmのサイズの快削鋼ブルームを鋼片圧延工程を経て160×160mmのサイズのビレットに圧延し、次に当該ビレットを線材圧延工程を経て直径25mmの線材(wire rod)に圧延した。この際の鋼片及びビレットは、通常の快削鋼圧延条件で加熱及び冷却が行われた。圧延が完了された線材からサンプルを採取し、N/O分析器で全酸素量、光学顕微鏡でMnSの面積及び形状を観察した。一方、線材圧延が完了された線材に対して冷間伸線を行って23mmの丸棒(CD Bar)に製造し、同一の条件でCNC旋盤を用いて切削実験を行った後、工具寿命を測定した。下記表2は、上記実験を介して得られた線材の全酸素量(ppm)、面積5μm以上のMnSの1mm当たりの個数、及び工具寿命をまとめたものである。下記表2中の工具寿命は、一つの切削工具で切削加工可能な相対的な部品個数を意味する。
Figure 2011530004
上記表2を参照すると、線材の全酸素量が本発明の限定範囲300ppm以下の場合、単位面積当たりのMnS数が300〜1,000個であれば(実験例6〜9)、工具寿命が快削鋼部品のクライアントが要求する5,000回以上と示された。これに対し、比較例2及び3のように全酸素量が本発明の範囲に属するにもかかわらず、単位面積当たりのMnSが300個未満の場合は、工具寿命が5,000回に達していない。これは、比較的大面積のMnSが不足しているために、切削時のクラックの発生及び伝播が相対的に少なく行われて生じた現象であると思われる。一方、比較例4及び5の場合は、単位面積当たりのMnS数が本発明の限定範囲に含まれ、切削工具寿命も基準値である5,000回を超えたが、鋳片からCDバー(Cold−Drawn Bar)までの回収率が80%未満の理由は、全酸素量が300ppmを超えて過度に高かったため、鋳片の表面にピンホール、ブローホール等が残存し、その後の鋼片圧延及び線材圧延でもこれ以上改善されなかったためである。したがって、全酸素量が過度に高い場合は、多数の表面欠陥、低い回収率及びコスト増加によって本発明が求める目的を達成するのが困難になる。

Claims (8)

  1. 重量%で、C:0.03〜0.13%、Si:0.1%以下、Mn:0.7〜2.0%、P:0.05〜0.15%、S:0.2〜0.5%、B:0.001〜0.01%、Cr:0.1〜0.5%、Ti:0.003〜0.2%、N:0.005〜0.015%、及びO:0.03%以下、並びに残部Fe及びその他の不可避不純物を含む、無鉛快削鋼。
  2. 線材の圧延方向の断面において、粒子サイズ5μm以上のMnS介在物が、300〜1,000個/mmの範囲で存在する、請求項1に記載の無鉛快削鋼。
  3. 前記MnとSの重量比率は、Mn/S≧3.5である、請求項1に記載の無鉛快削鋼。
  4. 転炉内の溶湯に酸素を超音速で吹き込んで、遊離酸素が400〜1,000ppmの際に酸素の吹き込みを終了する転炉精錬段階と、
    酸素の吹き込みが完了した溶湯を、未脱酸状態で取鍋に出鋼する出鋼段階と、
    前記取鍋を取鍋精錬炉(LF)に移送した後に、溶湯の遊離酸素濃度が100〜200ppmの範囲となるまでLF精錬する溶湯の加熱段階と、
    鋳造時間の10〜50%の時点で、遊離酸素濃度が50〜150ppmとなるように溶湯をビレットに鋳造する連続鋳造段階と、
    前記ビレットを1,200〜1,350℃の温度に加熱炉で2〜5時間維持しながら線材に圧延する線材圧延段階
    とを含む、無鉛快削鋼を製造する方法であって、
    前記無鉛快削鋼は、重量%で、C:0.03〜0.13%、Si:0.1%以下、Mn:0.7〜2.0%、P:0.05〜0.15%、S:0.2〜0.5%、B:0.001〜0.01%、Cr:0.1〜0.5%、Ti:0.003〜0.2%、N:0.005〜0.015%、及びO:0.03%以下、並びに残部Fe及びその他の不可避不純物を含む、方法。
  5. 前記線材の圧延方向の断面において、粒子サイズ5μm以上のMnS介在物が、300〜1,000個/mmの範囲で存在する、請求項4に記載の方法。
  6. 前記連続鋳造段階は、
    溶湯をブルームに鋳造する段階と、
    前記ブルームを1,250℃以上の温度に加熱炉で4〜10時間維持しながらビレットに圧延する鋼片圧延段階
    とを含む、請求項4に記載の方法。
  7. 前記連続鋳造段階は、モールド電子攪拌装置、軽圧下装置、またはモールド電子攪拌装置及び軽圧下装置を使用する、請求項4又は6に記載の方法。
  8. 前記MnとSの重量比率は、Mn/S≧3.5である、請求項4に記載の方法。
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