JP2003055743A - 被削性にすぐれた冷間ダイス金型用鋼 - Google Patents

被削性にすぐれた冷間ダイス金型用鋼

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JP2003055743A
JP2003055743A JP2001248064A JP2001248064A JP2003055743A JP 2003055743 A JP2003055743 A JP 2003055743A JP 2001248064 A JP2001248064 A JP 2001248064A JP 2001248064 A JP2001248064 A JP 2001248064A JP 2003055743 A JP2003055743 A JP 2003055743A
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cold die
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Tatsumi Urita
龍実 瓜田
Toshimitsu Fujii
利光 藤井
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Daido Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 冷間ダイス金型用鋼において、必要とされる
靭性などの特性を確保した上で、従来品より被削性がす
ぐれたものを提供する。 【解決手段】 重量%で、C:0.6〜2.0%、S
i:0.1〜1.2%、Mn:0.1〜1.0%、S:
0.005〜0.15%、Cr:6.5〜15.0%、
MoおよびWを単独または複合で2Mo+W:1.0〜
5.0%、V:0.05〜1.0%、Al:0.001
〜0.02%、Ca:0.0005〜0.02%、O:
0.0005〜0.01%およびN:0.04%以下を
含有し、残部が実質的にFeからなる鋼において、Ca
O含有量が8〜62%の酸化物系介在物と接して存在す
る1.0%以上のCaを含有する硫化物系介在物の占有
面積が、視野面積3.5mmあたり2.0×10−4mm
以上である冷間ダイス金型用鋼。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、冷間ダイス金型用
鋼において、被削性がすぐれている快削鋼と、その製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、冷間金型用鋼としては、JISに
定めるSKD11鋼(C:1.4〜1.6%、Si:
0.40%以下、Mn:0.6%以下、P:0.030
%以下、S:0.030%以下、Cr:11.0〜1
3.0%、Mo:0.80〜1.20%、V:0.20
〜0.50%、残部Fe)が多く用いられていた。しか
しこの鋼は、C含有量が高いため、焼鈍硬さが高くて被
削性に乏しく、かつ、溶接性が悪い。また、焼入れ・焼
戻し後の放電加工性もよくない。それは、硬さを高く得
るために低温焼戻しをするが、残留応力が残っており、
かつ、靱性が低いため、放電加工時に割れが発生しやす
いからである。
【0003】SKD11鋼のこうした欠点を改善した冷
間金型用鋼として、C:0.9〜1.3%、Si:0.
5〜2.0%、Mn:0.1〜2.0%、Cr:5.0
〜11.0%、Mo:1.30〜4.0%およびV:
0.10〜0.35%を含有し、さらに必要に応じて
S:0.020%以下、Pb:0.4%以下、Bi:
0.50%以下およびCa:0.002〜0.010%
の1種または2種以上を含有し、残部が実質的にFeか
らなる冷間ダイス鋼が知られている(特公昭64−51
00)。
【0004】この冷間金型用鋼は、高温で焼入れした
後、高温で焼戻しすることにより、焼入れ時の残留応力
が除去されて、組織が安定化するとともに二次硬化硬さ
が増大していて、硬さも靭性も、ともにすぐれた鋼であ
る。放電加工により熱応力が発生する場合にも割れを生
じることがなく、放電加工性は大幅に向上している。こ
の鋼から製造した工具を使用するときにも、かじりを起
こすことがなく、長い工具寿命を享受することができ
る。この冷間金型用鋼の唯一の欠点は、焼なまし後の硬
さが高い(HRB96)ため、被削性が悪いことであ
る。
【0005】そこで、上記の冷間金型用鋼の被削性を改
善することを意図して、快削元素を含有させるとともに
C含有量を減少させることが必要である、という見地か
ら開発した鋼は、C:0.7〜0.8%、Si:0.1
〜0.6%、Mn:0.1〜1.0%、Cr:6.5〜
7.5%、MoおよびWを単独または複合で2Mo+
W:1.0〜3.0%、V:0.1〜0.8%、S:
0.03〜0.10%、O:0.005%以下および
N::0.02%以下を含有し、残部が実質的にFeか
らなる組成を有する(特開2000−355737)。
【0006】この鋼は、低温焼戻しをすると焼入れ時の
応力が残留するとともにオーステナイトが5%以上残留
し、放電加工時に割れが発生し、一方、高温焼戻しをす
ると高温焼入れ時の残留応力が除去されて安定な組織が
得られ、放電加工による割れを防止できる、という事実
にかんがみて、高温焼戻しを選択した場合にも、C,C
r,MoおよびVのバランスを適切に選べば、HRC5
8〜61という比較的高い硬度を得ることができる、と
いう新しい知見を得て発明されたものである。
【0007】しかしながら、C量を低減した場合、一次
炭化物の量が減少して、耐摩耗性が低くなることがあ
る。また、Sなどの快削元素を増加していくと、とくに
T方向(鍛造や圧延の方向に対して横断的な方向)の靭
性をはじめとする、機械的性質が低下する。つまり、高
いS量に依存した快削化には、限界がある。そのため、
C量をあまり低減することなく、しかも、多量のSの添
加に依存しない被削性改善策が強く望まれていた。
【0008】発明者らは、種々の研究を重ねた結果、構
造用鋼に関して、Caの形態を硫化物中でコントロール
して介在物を「二重構造」のものにすることにより、被
削性にすぐれ、かつ、被削性のばらつきが小さい快削鋼
が得られることを知った。この快削構造用鋼は、すでに
特開2000−34538、特開2000−21993
6に開示されている。二重構造の介在物とは、酸化物を
主体とする介在物が芯となり、その周囲を、硫化物を主
体とする介在物が取り囲んでいる構造の介在物である。
【0009】さらに研究を進めた発明者らは、この知見
を冷間ダイス金型用鋼に応用して、ほぼ同様の成功を収
めた。実は、上記した介在物のコントロールを冷間ダイ
ス金型用鋼において実施することは、原理的に困難であ
ると予想された。すなわち、上記のような介在物のコン
トロールが可能なのは、鋼のC含有量が最高0.8%ま
でであり、それを超えるC量では、靭性や被削性が悪く
なって発明の目的が達成できない、というのがこれまで
の認識であった。
【0010】ところが、実際には、この困難は克服され
た。よく調べてみると、冷間ダイス金型用鋼の場合、マ
トリックスに残存するCはこの0.8%の限度をあまり
超えない量に止まり、限度を超えるCは一次炭化物を形
成していること、また、0.8%の限度を多少超える高
いC含有量においても、二重構造介在物は存在すること
が確認された。0.8%を超えるCが存在する冷間ダイ
ス用鋼も、その靭性は、冷間ダイス金型用の鋼にとって
満足できる水準であることもわかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述
した二重構造介在物の利益が構造用鋼のみならず冷間ダ
イス金型用鋼においても得られる、という発明者らの新
しい知見を活用し、冷間ダイス金型用鋼として必要な特
性は損なうことなく、すなわち、靭性の低下などを最小
限に抑えて、比較的高いC量と抑制されたS量をもっ
て、従来のものより被削性がすぐれている冷間ダイス金
型用鋼を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の被削性にすぐれ
た冷間ダイス金型用鋼は、基本的な合金組成として、重
量%で(以下同じ)、C:0.6〜2.0%、Si:0.
1〜1.2%、Mn:0.1〜1.0%、S:0.00
5〜0.15%、Cr:6.5〜15.0%、Moおよ
びWを単独または複合で2Mo+W:1.0〜5.0
%、V:0.05〜1.0%、Al:0.001〜0.
02%、Ca:0.0005〜0.02%、O:0.0
005〜0.01%およびN:0.04%以下を含有
し、残部が実質的にFeからなる合金組成を有し、か
つ、CaO含有量が8〜62%の酸化物系介在物と接し
て存在する1.0%以上のCaを含有する硫化物系介在
物の占有面積が、視野面積3.5mmあたり2.0×1
−4mm以上であることを特徴とする、被削性にすぐ
れた冷間ダイス金型用鋼である。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の被削性にすぐれた冷間ダ
イス金型用鋼は、上記した基本的な合金組成を構成する
各成分に加えて、下記のグループに属する合金成分を、
一つまたは二つ含有することができる。 I)Ni:2.0%以下、Ta:0.02〜2.0%お
よびNb:0.02〜2.0%の1種または2種以上、
および II)Zr:0.5%以下、Pb:0.4%以下、Bi:
0.4%以下、Te:0.1%以下およびSe:0.5
%以下の1種または2種以上。
【0014】本発明の被削性にすぐれた冷間ダイス金型
用鋼を製造する方法は、前記した基本組成の、またはそ
れに上記の任意添加成分I)およびII)の一方または両
方を含有する組成の合金を溶製し、その際、下記の条件 [S]/[O]:8〜40 [Ca]×[S]:1×10−5〜1×10−3 [Ca]/[S]:0.01〜20 かつ [Al]:0.001〜0.020% を満たす操業を行なうことを特徴とする。
【0015】本発明の冷間ダイス金型用鋼がすぐれた被
削性を発揮する機構について、発明者らは、つぎのよう
に理解している。すなわち鋼中の硫化物系介在物中を構
成するCa量を調整することにより、前述した「二重構
造介在物」、すなわち酸化物主体の介在物を芯として、
それを硫化物主体の介在物が取り囲んでいる構造の介在
物が形成され、これが切削時に工具表面において工具保
護膜となり、工具寿命が大幅に向上する、という機構で
ある。
【0016】通常のイオウ快削鋼においては、被削性を
高めるためにMnS介在物を利用するが、MnSは工具
表面において潤滑性を示す一方、皮膜の安定性がいまひ
とつ低いし、熱拡散摩耗に対しては無力である。一方、
Caを添加したカルシウム快削鋼は、CaO・Al
・2SiO(鉱物名「アノルサイト」)なる介在物
を生じる。この介在物は安定な皮膜を形成して熱拡散摩
耗を防ぐが、潤滑性には乏しい。これに対し本発明の二
重構造介在物は、安定な皮膜を形成して熱拡散摩耗を効
果的に防止するとともに、よりよい潤滑性を示す。本発
明の鋼を特徴づける二重構造介在物CaO−Al
/(Ca,Mn)Sは、従来のイオウ快削鋼の介在物で
あるMnSと、従来のカルシウム快削鋼の介在物である
アノルサイトとの、それぞれの利点を併せもつものとい
うことができる。
【0017】次に、本発明の冷間ダイス金型用鋼を構成
する各成分の作用と、その含有量を上記のように限定し
た理由を説明する。
【0018】C:0.6〜2.0% Cは、マルテンサイトの硬さを高め、高温焼戻し時に特
殊炭化物を形成して二次硬化に寄与し、さらにCr,M
o,Wと炭化物を形成して、耐摩耗性に寄与する。これ
らの効果を得るためには、Cを0.6%以上含有させる
必要があるが、2.0%を超えると焼なまし後の硬さが
高くなり過ぎる結果、被削性が悪くなるばかりか、高温
焼戻し後の硬さが高くなり過ぎて、金型の変形を修正す
る加工が困難になるとともに、溶接性も悪くなる。
【0019】Si:0.1〜1.2% Siは、脱酸剤として役立つほかに、高温焼戻し硬さの
向上に有効な元素である。これらの効果を得るために
は、少なくとも0.1%のSiを含有させる必要がある
が、1.2%を超えて含有させると、熱間加工性および
靭性が低下するとともに、カーバイド構成成分としてS
iが加わるため、生成するカーバイド量が多くなって、
被削性が悪くなる。
【0020】Mn:0.1〜1.0% Mnは脱酸剤として働くほか、焼入れ性を高めて、硬度
および強度を向上させる。こうした効果を確保するため
には、Mnを0.1%以上存在させる必要があるが、
1.0%を超える存在は熱間加工性を低下させる。
【0021】S:0.005〜0.15% Sは、被削性を向上させるために不可欠な元素であっ
て、MnSとして、またCaSとして、工具寿命の延長
に寄与する。下限の0.005%に達しない添加量では
効果が乏しく、上限の0.15%を超える添加は、靭性
の著しい低下を引き起こす。本発明の鋼は、従来のイオ
ウ快削鋼にくらべて、同等の被削性を得るために必要な
S量が1/5程度で足りるから、溶接性や放電加工性に
与えるSの影響は小さい。
【0022】Cr:6.5〜15.0% Crは、焼入れ時にマトリックス中に固溶して焼入性を
高めるとともに、Cr炭化物を形成して、耐摩耗性を向
上させる。これらの効果は、6.5%以上の添加で得ら
れるが、15.0%を超える添加は、焼きなまし後およ
び高温焼戻し後の硬度を高くし過ぎるとともに、炭化物
を粗大にして好ましくない。
【0023】2Mo+W:1.0〜5.0% MoもWも、焼入れ時にマトリックスに固溶するととも
に、炭化物を形成して耐摩耗性を向上させ、焼入れ焼戻
し軟化抵抗性を高める。2Mo+Wとして1.0%以上
含有させることにより、この効果が得られる、5.0%
を超えて含有させると、熱間加工性および靭性が低下す
る。
【0024】V:0.05〜1.0% Vは、マトリックスのオーステナイト結晶粒の粗大化を
防止するとともに、微細な炭化物を形成して、耐摩耗性
および焼入性の向上に寄与する。これらの効果を得るに
は0.05%以上含有させる必要があるが、1.0%を
超えて含有させると、熱間加工性および被削性が低下す
る。
【0025】Al:0.001〜0.02% Alは、強力な脱酸剤であるが、本発明の鋼において
は、さらに工具寿命向上の効果をもたらす。すなわち、
酸化物系介在物の組成を適切に調整する上でAlは必要
であり、少なくとも0.001%を添加する。多量にす
ぎると、硬質のアルミナクラスターが生成して、鋼の被
削性を低下させる。
【0026】Ca:0.0005〜0.02% Caは、本発明の鋼にとって不可欠な成分である。前述
のように、硫化物中に存在して切削工具の保護膜となる
物質を形成する。この効果は0.0005%という微量
の存在で認められる。0.02%を超えると、保護膜の
形成にとって過剰な分が、高融点の化合物CaSを形成
して、これが鋳造工程においてノズルを閉鎖するなどの
障害をもたらす。
【0027】O:0.0005〜0.01% 従来Oは、AlやSiOなどの酸化物を生成
し、それが靱性を低下させるため、その量を低く抑えて
いた(たとえば特開平1−58579)。しかし本発明に
おいては、Oを積極的に利用して、硫化物晶出の核とな
る酸化物(CaO,Alなど)を生成させる。O
が0.0005%に満たない少量であると、高融点のC
a硫化物が多量に生成して、溶解時の注湯性を低下させ
る。一方、0.01%を超える過大な量になると、硬質
の酸化物が多量に生成して、肝心の被削性を低下させ
る。はなはだしい場合は、すべてのCaが酸化物を形成
するようになって、硫化物を生成しなくなる。そのよう
な条件は、Al量の増大を招き、これが、被削性
を低下させるだけでなく、靱性低下の原因となる。好ま
しい範囲は、0.001〜0.004%である。本発明
で規定する適切な合金組成において形成された酸化物
は、周囲を粘性の高い硫化物が覆うため、靱性低下の原
因になることは少ない。
【0028】N:0.04%以下 Nは、C,Cr,Mo,Vなどと結合して炭窒化物を生
成し、結晶粒を微細にする働きがあるので、適量存在さ
せる。0.04%を超えると、炭窒化物の量が多くなり
過ぎて、被削性および靭性を低下させる。
【0029】上記の基本的成分に対し、任意に添加する
合金成分の作用と組成範囲の限定理由は、つぎのとおり
である。
【0030】Ni:2.0%以下 Niは、焼入性を高め、衝撃遷移温度を高めることによ
る、靭性向上の効果が認められる添加元素である。とく
にC含有量が高い領域における靭性維持の効果が、溶接
性の低下を防止する。そこで、適量、好ましくは0.1
%以上であって2.0%以下の範囲で含有させる。2.
0%の上限を超えると、被削性が悪くなる。
【0031】Zr:0.5%以下 Zrは、結晶粒を微細化して靱性を向上させるのに有効
な元素である。これに加えて、MnSの伸長に起因する
異方性を軽減する効果がある。0.5%を超えて含有さ
せても効果が飽和するため、この範囲内で、必要に応じ
て適量を添加するとよい。
【0032】Pb:0.4%以下 Bi:0.4%以下 Pbは、よく知られた被削性改善元素である。Pbは単
独で、または硫化物の外周に付着した形態で鋼中に存在
し、それ自身が被削性を向上させる効果を有する。0.
4%を上回る添加は、Pbの鋼への溶解度を超えるとと
もに、その大きな比重のため、過剰なPbが凝集、沈殿
して鋼中の欠陥をつくる。Biは、Pbと類似した性質
を有する被削性改善元素である。BiもPbと同様に、
0.4%を超えて添加すると、凝集、沈殿してしまう。
【0033】Te:0.1%以下 Se:0.5%以下 Teもまた、よく知られた被削性改善元素である。多量
に添加すると熱間加工性を低下させて加工時に割れが発
生しやすくなるため、上限を0.1%とした。Seもよ
く使用される被削性改善元素である。過剰に添加する
と、Teと同様に熱間加工性を悪くして割れを引き起こ
すので、0.5%を添加量の上限とする。
【0034】Ta:0.02〜2.0% Nb:0.02〜2.0% TaとNbとは、結晶粒の成長を抑制し組織を微細に保
つために添加する。その効果はともに、下限の0.02
%以上の添加で認められる。上限の2.0%を超える
と、固溶しにくい一次炭化物の量が増大して焼入れ温度
を上昇させ、靭性および被削性を低下させる。
【0035】CaO含有量が8〜62重量%の酸化物系
介在物と接して存在する、1.0重量%以上のCaを含
有する硫化物形介在物の占有面積が、視野面積3.5mm
あたり2.0×10−4mm以上本発明で意図した工
具寿命比5以上、すなわちエンドミルによる加工を行な
ったときに、本発明により得られる工具寿命が、S含有
量が同一の在来イオウ快削鋼が示す工具寿命の5倍以上
であるという成績は、この条件が満たされたときに得ら
れる。
【0036】
【実施例】表1および表2に示す化学組成を有する鋼
を、150kg高周波真空誘導炉で溶製し、鋳造して、得
られた鋼塊を直径60mmの角棒に鍛造した。この角材を
860℃に1時間加熱した後、炉冷することにより焼き
なましをした。焼きなましした角材から試験片を切り出
し、硬さと被削性とを測定した。被削性の測定条件は後
記するとおりである。
【0037】比較のため、本発明の要件を満たしていな
い合金組成の鋼についても、同様に溶製、鋳造および試
験を行なった。実験番号が大文字AまたはBで始まるも
のは実施例であり、小文字aまたはbで始まるものは比
較例である。対応する(数字の番号が同じ)各実施例の
鋼と比較例の鋼とは、同一の硬さに処理した。A−aの
シリーズは、主要成分が同等で、Ca、Oなどの含有量
が異なる鋼を比較したものであり、枝番号(たとえばa
1−1)付きのものは、前者がCaを含有しないもの、
後者が低酸素で[S]/[O]:8〜40の条件を満た
さないものを、それぞれ示す。B−bのシリーズは、比
較例が従来の常識に従ってS量やC量を増加したものを
比較した。比較例は被削性が同等にならないばかりか、
S量が高いため介在物量が多く、靭性、溶接性などが劣
ることを示す。
【0038】[被削性試験]被削性を評価するために、
表1および表2の鋼種について、それぞれ表3および表
4に示す熱処理を施した後、つぎの条件でエンドミルに
より加工した。 工 具: 超硬M20(φ32) 速 度: 200m/min 送 り: 0.2mm/rev 切込み: 1mm×4mm 切削油: なし 工具寿命判定基準: 横逃げ面平均摩耗0.2mm 得られた工具寿命時間について、実施例ごとに、比較例
の工具寿命時間を1としたときの工具寿命時間の比率を
算出し、それぞれの工具寿命比とした。
【0039】[硫化物評価]硫化物を評価するために、
各旋削試験材について鏡検試料を用意し、EPMAによ
り視野面積3.5mm当たりCaO含有量が8〜62重
量%の酸化物系介在物と接して存在する,1.0重量%
以上のCaを含有する硫化系介在物の占有面積を調査し
た。
【0040】[衝撃値評価]前記の焼きなましをした角
材から、硬さ、シャルピー衝撃試験片(ノッチ10R)、
溶接性および放電加工性を測定する試験片を切り出し
た。1030℃に15分間加熱したのち空冷して焼入れ
をし、表3に示す温度で1時間加熱したのち空冷する焼
戻しを、2回行なった。この熱処理を施した試験片の硬
さおよびシャルピー衝撃試験値を、表3および表4に示
す。
【0041】[溶接性評価]JIS Z3158に規定
する斜めY型溶接試験を下記の条件で実施して、溶接性
を測定した。その結果を下記表3および表4に示す。 溶接方法: TIG手動 予熱方法: バーナー加熱 予熱温度400℃ 溶接電流: 110〜120A/三相交流 試験結果の評価: ○ 割れなし △ 割れの長さが30%未満 × 割れの長さが30%以上
【0042】[放電加工性]200mm角で厚さ40mmの
試験片に、放電加工により、図1のa,b,c,dおよ
びeの各寸法で示す形状の孔をあけ、そのときのクラッ
ク発生の有無で、次のように評価した。 ○:クラックなし △:わずかにクラックあり
×:クラックあり
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【発明の効果】本発明の冷間ダイス金型用の快削鋼に
は、高い被削性をもたらす二重構造介在物が、最適の形
態で存在するから、エンドミル加工において、在来のイ
オウ快削鋼に対して工具寿命が5倍以上という目標を容
易に達成することができる、すぐれた被削性が実現し
た。
【0052】これまで、種々の鋼種において、良好な被
削性を与える介在物の形態に関しては、ある程度の考察
が行なわれていたが、そのような介在物を高い再現性を
もって作り出す手段に関しては、いまひとつ満足できな
いのが実状であった。これに対し本発明は、従来技術を
一歩進めたものであって、前記した特定の操業条件を満
たす製造を行なうことにより、常にすぐれた被削性をも
つ冷間ダイス金型用鋼を製造することを可能にした。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例において、放電加工性を試験
するために製作した試験片の形状と各部の寸法を示す斜
視図。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で(以下同じ)、C:0.6〜2.
    0%、Si:0.1〜1.2%、Mn:0.1〜1.0
    %、S:0.005〜0.15%、Cr:6.5〜1
    5.0%、MoおよびWを単独または複合で2Mo+
    W:1.0〜5.0%、V:0.05〜1.0%、A
    l:0.001〜0.02%、Ca:0.0005〜
    0.02%、O:0.0005〜0.01%およびN:
    0.04%以下を含有し、残部が実質的にFeからな
    り、かつ、CaO含有量が8〜62%の酸化物系介在物
    と接して存在する1.0%以上のCaを含有する硫化物
    系介在物の占有面積が、視野面積3.5mmあたり2.
    0×10−4mm以上であることを特徴とする、被削性
    にすぐれた冷間ダイス金型用鋼。
  2. 【請求項2】 請求項1に規定した合金成分に加えて、
    Ni:2.0%以下、Ta:0.02〜2.0%および
    Nb:0.02〜2.0%の1種または2種以上を含有
    する冷間ダイス金型用鋼。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に規定した合金成分に
    加えて、Zr:0.5%以下、Pb:0.4%以下、B
    i:0.4%以下、Te:0.1%以下およびSe:
    0.5%以下の1種または2種以上を含有する冷間ダイ
    ス金型用鋼。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれかに記載の冷
    間ダイス金型用鋼を製造する方法であって、請求項1な
    いし3のいずれかに規定した組成の合金を溶製し、その
    際、下記の条件 [S]/[O]:8〜40 [Ca]×[S]:1×10−5〜1×10−3 [Ca]/[S]:0.01〜20 かつ [Al]:0.001〜0.020% を満たす操業を行なうことを特徴とする被削性にすぐれ
    た冷間ダイス金型用鋼の製造方法。
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