JP2003168495A - 光電気セルおよび光触媒 - Google Patents

光電気セルおよび光触媒

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JP2003168495A JP2001367414A JP2001367414A JP2003168495A JP 2003168495 A JP2003168495 A JP 2003168495A JP 2001367414 A JP2001367414 A JP 2001367414A JP 2001367414 A JP2001367414 A JP 2001367414A JP 2003168495 A JP2003168495 A JP 2003168495A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 光増感材吸着量が高く、光増感材との反応性
が高く半導体膜内の電子移動がスムーズで、かつ光電変
換効率の向上した光電気セルを提供する。 【解決手段】 表面に電極層(1)を有し、かつ該電極層
(1)表面に光増感材を吸着した金属酸化物半導体膜(2)が
形成されてなる基板と、表面に電極層(3)を有する基板と
が、前記電極層(1)および電極層(3)が対向するように配
置してなり、 金属酸化物半導体膜(2)と電極層(3)との間
に電解質層を設けてなる光電気セルにおいて、少なくと
も一方の基板および電極が透明性を有し、金属酸化物半
導体膜(2)が管状酸化チタン粒子を含んでなることを特
徴とする光電気セル。前記管状酸化チタン粒子が、外径
(Dout)が5〜40nmの範囲にあり、内径(Din)が4〜30nmの
範囲にあり、管の厚みが1〜20nmの範囲にあり、長さ(L)が
25〜1000nmの範囲にあり、この長さ(L)と前記外径(Dout)
との比(L)/(Dout)が5〜200の範囲にある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の技術分野】本発明は、光電気セル用金属酸化物
半導体膜に管状酸化チタン粒子を用いた光電気セルに関
する。また管状酸化チタン粒子を用いた光触媒にも関す
る。さらに詳しくは、金属酸化物半導体膜への光増感材
の吸着が高く、電解質の拡散性に優れ、アルカリ金属の
含有量が極めて少ないために光電変換効率等の向上した
光電気セルに関する。また、アルカリ金属の含有量が極
めて少なく、反応物、生成物等の拡散性に優れた高活性
の光触媒に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】酸化チタン粒子、酸化チタン系複
合酸化物粒子はその化学的特性を利用した用途が広く、
たとえば酸素と適当な結合力を有するとともに耐酸性を
有するため、酸化還元触媒あるいは担体、紫外線の遮蔽
力を利用した化粧材料またはプラスチックの表面コート
剤、さらには高屈折を利用した反射防止コート材、導電
性を利用した帯電防止材として用いられたり、これらの
効果を組み合わせて機能性ハードコート材に用いられた
り、さらに光触媒作用を使用した防菌剤、防汚剤、超親
水性被膜などに用いられている。さらに近年、酸化チタ
ンは、高いバンドギャップを有することから光触媒、さ
らには光エネルギーを電気エネルギーに変換する、いわ
ゆる光電変換材料として好適に用いられるようになって
いる。また、リチウムバッテリーのような2次電池、水
素吸蔵材料、プロトン導電材料等にも利用されるように
なってきている。
【0003】光電変換材料は光エネルギーを電気エネル
ギーとして連続して取り出せる材料であり、電極間の電
気化学反応を利用して光エネルギーを電気エネルギーに
変換する材料である。光電変換材料に光を照射すると、
一方の電極側で電子が発生し、対電極に移動し、対電極
に移動した電子は、電解質中をイオンとして移動して一
方の電極に戻る。このようなエネルギー変換は連続的に
行われるため、たとえば、太陽電池などに利用されてい
る。
【0004】一般的な太陽電池は、まず透明性導電膜を
コートしたガラス板などの支持体上に光電変換材料用半
導体の膜を形成して電極とし、つぎに、対電極として別
の透明性導電膜をコートしたガラス板などの支持体を備
え、これらの電極間に電解質を封入して構成されてい
る。光電変換材料用半導体に吸着した光増感材に太陽光
を照射すると、光増感材は可視領域の光を吸収し、光増
感材中の電子が励起され、励起された電子は半導体に移
動し、ついで、透明導電性ガラス電極を通って対電極に
移動し、対電極に移動した電子は電解質中の酸化還元系
を還元する。一方、半導体に電子を移動させた光増感材
は、酸化体の状態になっているが、この酸化体は電解質
中の酸化還元系によって還元され、元の状態に戻る。こ
のようにして電子が連続的に流れることから光電変換材
料用半導体を用いた太陽電池として機能する。
【0005】このような光電変換材料としては、半導体
表面に可視光領域に吸収を持つ光増感色素を吸着させた
ものが用いられている。たとえば、特開平1−2203
80号公報には、金属酸化物半導体の表面に、遷移金属
錯体などの発色剤層を有する太陽電池を記載している。
また、特表平5−504023号公報には、金属イオン
でドープした酸化チタン半導体層の表面に、遷移金属錯
体などの光増感色素層を有する太陽電池を記載してい
る。
【0006】上記のような太陽電池では、光を吸収して
励起した光増感色素層からチタニア膜へ電子の移動が迅
速に行われることが光変換効率向上に重要であり、迅速
に電子移動が行われないと再度ルテニウム錯体と電子の
再結合が起こり光変換効率が低下する問題がある。本願
出願人は、このような問題点を解決するために特開平1
1−339867号公報に特定範囲の細孔容積の金属酸
化物半導体膜を用いることを提案している。特開200
0−77691号公報、特開平13−155791号公
報にコアセル構造を有する金属酸化物粒子を用いた光電
気セルを開示している。また、特願平13−12306
5号にて金属酸化物半導体膜に多孔質金属酸化物半導体
膜と非孔質金属酸化物半導体膜を併用することを提案し
ている。
【0007】しかしながら、現状では光電変換効率が充
分でなく用途に制限があり、さらに改良が望まれてい
た。また、最近、チタニアの光触媒作用を利用した製品
が注目を集めている。たとえば、表面にチタニア膜を形
成したタイル、チタニアを含有したカーテン、活性炭や
ゼオライトにチタニアを担持した脱臭剤などが市販され
評判を集めている。
【0008】これらは、いずれもチタニアの光触媒作用
により、表面に付着した汚染物、微生物あるいは臭気物
質が分解されることによる防汚、防菌あるいは脱臭効果
をねらったものである。このチタニアの光触媒作用は、
チタニア粒子に紫外線が照射されると粒子内部で電子ま
たはホールが発生し、これが粒子表面に拡散されて酸化
剤または還元剤として作用し、この酸化作用または還元
作用によるものといわれている。
【0009】このような光触媒作用を有するチタニア被
膜は、光触媒活性を高めるため、膜厚を厚くする必要が
ある。また、光を照射したときに粒子内部に発生した電
子またはホールが被膜の表面まで速やかに移動するため
には、被膜が緻密であることが必要である。このため、
通常、製膜時に高温で処理することによって、粒子間の
融着を促進して被膜の緻密化を図るとともに、被膜の硬
度を高めているが、被膜の処理温度を高くすると、チタ
ニアの結晶構造がアナターゼ型からルチル型に変化し、
光触媒活性が低くなるという問題があった。
【0010】また、このような光触媒作用を有するチタ
ニア被膜は、製膜時に高温で処理するため、耐熱性のな
いガラス、プラスチック、木材、繊維、布などの上に形
成するのが困難であるという問題点もあった。このた
め、高温処理したチタニア粒子を用いて被膜形成用塗布
液を調製し、この塗布液を基材上に塗布して被膜を形成
することによって、比較的低温で硬化被膜を形成するこ
とが試みられている。
【0011】しかしながら、高温処理されたチタニア粒
子は、一般に粒子径が大きく、屈折率が高いため、被膜
中でのチタニア粒子による光の散乱が大きく、高透明性
の被膜が得られないという欠点があった。
【0012】
【発明の目的】本発明は、光増感材吸着量が高く、光増
感材との反応性が高く半導体膜内の電子移動がスムーズ
で、かつ光電変換効率の向上した光電気セル、および反
応物・生成物等の拡散性に優れた高活性の光触媒を提供
することを目的としている。
【0013】
【発明の概要】本発明に係る光電気セルは、表面に電極
層(1)を有し、かつ該電極層(1)表面に光増感材を
吸着した金属酸化物半導体膜(2)が形成されてなる基
板と、表面に電極層(3)を有する基板とが、前記電極
層(1)および電極層(3)が対向するように配置して
なり、金属酸化物半導体膜(2)と電極層(3)との間
に電解質層を設けてなる光電気セルにおいて、少なくと
も一方の基板および電極が透明性を有し、金属酸化物半
導体膜(2)が管状酸化チタン粒子を含んでなることを
特徴としている。
【0014】前記管状酸化チタン粒子が、外径(Dou
t)が5〜40nmの範囲にあり、内径(Din)が4〜
30nmの範囲にあり、管の厚みが1〜20nmの範囲
にあり、長さ(L)が25〜1000nmの範囲にあ
り、この長さ(L)と前記外径(Dout)との比(L)
/(Dout)が5〜200の範囲にあることが好まし
い。前記管状酸化チタン粒子中のアルカリ金属含有量が
500ppm以下であることが好ましい。
【0015】前記金属酸化物半導体膜(2)が、さらに
無定型酸化チタンバインダー成分を含んでなることが好
ましい。本発明に係る光触媒は、外径(Dout)が5〜
40nmの範囲にあり、内径(Din)が4〜30nmの
範囲にあり、管の厚みが1〜20nmの範囲にあり、長
さ(L)が25〜1000nmの範囲にあり、この長さ
(L)と前記外径(Dout)との比(L)/(Dout)が
5〜200の範囲にある管状酸化チタン粒子を用いてな
ることを特徴としている。
【0016】前記管状酸化チタン粒子中のアルカリ金属
含有量が500ppm以下であることが好ましい。
【0017】
【発明の具体的説明】以下、本発明に係る光電気セルお
よび光触媒について説明する。 [光電気セル]本発明に係る光電気セルは、表面に電極
層(1)を有し、かつ該電極層(1)表面に光増感材を
吸着した金属酸化物半導体膜(2)が形成されてなる基
板と、表面に電極層(3)を有する基板とが、前記電極
層(1)および電極層(3)が対向するように配置して
なり、金属酸化物半導体膜(2)と電極層(3)との間
に電解質層を設けてなる光電気セルにおいて、少なくと
も一方の基板および電極が透明性を有し、金属酸化物半
導体膜(2)が管状酸化チタン粒子を含んでなることを
特徴としている。
【0018】このような光電気セルとして、たとえば、
図1に示すものが挙げられる。図1は、本発明に係る光
電気セルの一実施例を示す概略断面図であり、透明基板
5表面に透明電極層1を有し、かつ該透明電極層1表面
に光増感材を吸着した金属酸化物半導体膜2が形成され
てなる基板と、基板6表面に還元触媒能を有する電極層
3を有する基板とが、前記電極層1および3が対向する
ように配置され、さらに金属酸化物半導体膜2と電極層
3との間に電解質4が封入されている。
【0019】透明基板5としてはガラス基板、PET等
の有機ポリマー基板等の透明でかつ絶縁性を有する基板
を用いることができる。また、基板6としては使用に耐
える強度を有していれば特に制限はなく、ガラス基板、
PET等の有機ポリマーからなる基板といった絶縁性基
板の他に金属チタン、金属アルミ、金属銅、金属ニッケ
ルなどの導電性基板を使用することができる。
【0020】透明基板5表面に形成された透明電極層1
としては、酸化錫、Sb、FまたはPがドーピングされ
た酸化錫、Snおよび/またはFがドーピングされた酸
化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、貴金属等の
従来公知の電極を使用することができる。このような透
明電極層1は、熱分解法、CVD法等の従来公知の方法
により形成することができる。
【0021】また、基板6表面に形成された電極層3と
しては、白金、ロジウム、ルテニウム金属、ルテニウム
酸化物等の電極材料、酸化錫、Sb、FまたはPがドー
ピングされた酸化錫、Snおよび/またはFがドーピン
グされた酸化インジウム、酸化アンチモンなどの導電性
材料の表面に前記電極材料をメッキあるいは蒸着した電
極、カーボン電極など従来公知の電極を用いることがで
きる。
【0022】このような電極層3は、基板6上に前記電
極を直接コーティング、メッキあるいは蒸着させて、導
電性材料を熱分解法、CVD法等の従来公知の方法によ
り導電層を形成した後、該導電層上に前記電極材料をメ
ッキあるいは蒸着するなど従来公知の方法により形成す
ることができる。なお、基板6は、透明基板5と同様に
透明なものであってもよく、また電極層3は、透明電極
層1と同様に透明電極であってもよい。
【0023】このような透明基板5と透明電極層1の可
視光透過率は高い方が好ましく、具体的には50%以
上、特に好ましくは90%以上であることが望ましい。
可視光透過率が50%未満の場合は光電変換効率が低く
なることがある。これら透明電極層1および電極層3の
抵抗値は、各々100Ω/cm2以下であることが好ま
しい。電極層の抵抗値が100Ω/cm2を超えて高く
なると光電変換効率が低くなることがある。
【0024】金属酸化物半導体膜2は、前記透明基板5
上に形成された透明電極層1上に形成されている。なお
金属酸化物半導体膜2は、基板6上に形成された電極層
3上に形成されていてもよい。この金属酸化物半導体膜
2の膜厚は、0.1〜50μm、さらには2〜20μm
の範囲にあることが好ましい。
【0025】このような金属酸化物半導体膜2中には、
管状酸化チタン粒子が含まれている。管状酸化チタン粒
子は、外径(Dout)が5〜40nm、好ましくは10
〜30nmの範囲にあり、内径(Din)が4〜30n
m、好ましくは5〜20nmの範囲にあり、管の厚みが
1〜20nm、好ましくは2〜15nmの範囲にあり、
長さ(L)が25〜1000nm、好ましくは50〜6
00nmの範囲にあり、この長さ(L)と前記外径(D
out)との比(L)/(Dout)が5〜200、好ましく
は10〜100の範囲にあることが望ましい。
【0026】上記外径(Dout)、内径(Din)、長さ
(L)等は透過型電子顕微鏡写真を撮影し、100個の
粒子について各値を測定し、この平均値としてもとめ
る。また、内径(Din)は、外径を求める線の内側に認
められるコントラストの境をなす線より求めることがで
きる。管状酸化チタン粒子の外径(Dout)が5nm未
満の場合は、これに対応して内径が4nm未満となり、
後述する電解質の拡散が不充分となり充分な光電変換効
率が得られないことがある。
【0027】管状酸化チタン粒子の外径(Dout)が4
0nmを越えるものは得ることが困難である。また、管
状酸化チタン粒子の内径(Din)が4nm未満の場合
は、前述したように充分な光電変換効率が得られないこ
とがある。管状酸化チタン粒子の内径(Din)が30n
mを越えるものは得ることが困難であり、また、金属酸
化物半導体膜中の酸化チタンの密度が低下し、充分な光
電変換効率が得られないことがあるまた、このとき管の
厚みが1nm未満の場合は、結晶層の厚みが小さく、半
導体機能が不充分となり、充分な光電変換効率が得られ
ないことがある。
【0028】管の厚みが20nmを越えると、従来の結
晶性酸化チタンに比べて比表面積が高いという特徴(効
果)が小さくなり、これに対応して分光増感色素の吸着
量も充分高いとはいえず、光電変換効率を高める効果が
不充分となることがある。さらに、管状酸化チタン粒子
の長さ(L)が25nm未満の場合は、金属酸化物半導
体膜中における粒子数が多くなり、粒界抵抗が増大する
ので充分な光電変換効率が得られないことがある。
【0029】管状酸化チタン粒子の長さ(L)が100
0nmを越えると、管の内径にもよるが、電解質の拡散
が不充分となり充分な光電変換効率が得られないことが
ある。上記において、管状酸化チタン粒子の長さ(L)
と外径(Dout)との比(L)/(Dout)が5未満の場
合は、得られる金属酸化物半導体膜の電極層との密着性
が低下し、膜の強度も不充分となることがある。(L)
/(Dout)が200を越えると、光の散乱が増大した
り、電解質の拡散が不充分となり充分な光電変換効率が
得られないことがある。
【0030】つぎに、管状酸化チタン粒子中のアルカリ
金属含有量が500ppm以下、さらには200ppm
以下、特に100ppmであることが好ましい。アルカ
リ金属含有量が500ppmを越えると、半導体機能が
低下するとともに、経時的に光電変換効率が低下する傾
向にある。本発明の光電気セルに用いる管状酸化チタン
粒子は無定型酸化チタンであってもよいが、アナタース
型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン、ルチル型酸
化チタンおよびこれらの混晶体、共晶体など結晶性の酸
化チタンが好ましく、特にアナタース型酸化チタン、ブ
ルッカイト型酸化チタンはバンドギャップが高いので好
ましい。
【0031】このようなアナターゼ型酸化チタン、ブル
ッカイト型酸化チタンの結晶子径は、1〜50nm、好
ましくは5〜30nmの範囲にあることが好ましい。な
お、アナターゼ型酸化チタン1次粒子の結晶子径は、
(1.0.1)面のピークの半値幅を測定し、ブルッカイ
ト型酸化チタン1次粒子の結晶子径は、X線解折により
(1.1.1)面のピークの半値幅を測定し、Debye-Sche
rrerの式により計算によって求めることができる。この
ブルッカイト型酸化チタン1次粒子およびアナターゼ型
酸化チタン1次粒子の結晶子径が1nm未満の場合には
粒子内の電子移動性が低下し、50nmを超えて大きい
場合は光増感材の吸着量が低下し、光電変換効率が低下
することがある。
【0032】共晶体の場合は、電界放射型透過型電子顕
微鏡写真(FE−TEM)測定により、結晶格子定数、
結晶形、結晶子径を測定することができる。管状酸化チタン粒子の製造方法 つぎに、このような管状酸化チタン粒子の製造方法につ
いて説明する。本発明に用いる管状酸化チタン粒子の製
造方法としては、前記した管状酸化チタン粒子が得られ
れば特に制限はないが、本発明に係る管状酸化チタン粒
子の製造方法は、(i)酸化チタン粒子および/または(i
i)酸化チタン系複合酸化物粒子が水に分散してなる水分
散ゾルを、アルカリ金属水酸化物存在下で水熱処理す
る。
【0033】酸化チタン粒子および酸化チタン系複合酸
化物粒子 本発明で使用される酸化チタン粒子および酸化チタン系
複合酸化物粒子としては、平均粒子径が2〜100n
m、好ましくは5〜80nmの範囲にある酸化チタン粒
子および/または酸化チタンと酸化チタン以外の酸化物
からなる酸化チタン系複合酸化物粒子の水分散ゾルを用
いる。
【0034】平均粒子径が前記範囲内にあれば、安定な
水分散ゾルが得られ、非常に高い収率でしかも単分散性
に優れた管状酸化チタン粒子を製造することができる。
なお平均粒子径が前記範囲を外れて小さいと、安定な水
分散ゾルを得ること自体が困難である。また、平均粒子
径が前記範囲を外れて大きくなっても、得られる管状酸
化チタンの収率、単分散性などの点でより優れた管状酸
化チタン粒子を得ることが困難であり、粒子自体の分散
性が低下したり、また粒子およびゾルの調製に時間と手
間を要すことがある。
【0035】本発明では、前記粒子が水に分散して水分
散ゾルを使用するが、このゾル中には必要に応じてアル
コール等の有機溶媒が含まれていてもよい。前記酸化チ
タン粒子および/または酸化チタンと酸化チタン以外の
酸化物からなる酸化チタン系複合酸化物粒子の水分散ゾ
ルの濃度としては特に制限はないが、酸化物として2〜
50重量%、さらには5〜40重量%の範囲にあること
が好ましい。このような濃度範囲にあれば、ゾルは安定
であり、アルカリ処理時に粒子が凝集することもなく、
効率的に管状酸化チタン粒子を製造することができる。
なお、前記濃度が前記範囲を外れて少ないと、濃度が低
すぎてしまい管状酸化チタンの生成に長時間を要した
り、得られる管状酸化チタンの収率が低く効率的でな
く、前記濃度が前記範囲を外れて大きいと水分散ゾルの
安定性が低下したり、アルカリ処理時の濃度が高いため
に得られる管状酸化チタンが凝集することがある。
【0036】酸化チタン粒子を単独で使用しても、ま
た、酸化チタンと酸化チタン以外の酸化物からなる酸化
チタン系複合酸化物粒子を使用しても、あるいは双方を
混合して使用してもよい。酸化チタン以外の酸化物とし
ては周期律表の第Ia族、第Ib族、第IIa族、第IIb族、第
IIIa族、第IIIb族、第IVa族、第IVb族、第Va族、第Vb
族、第VIa族、第VIb族、第VIIa族、第VIII族から選ばれ
る元素の1種以上の酸化物であることが好ましく、具体
的にはSiO2、ZrO2、ZnO、Al23、CeO2、Y2
3、Nd23、WO3、Fe23、Sb25、CeO2、Cu
O、AgO、AuO、Li2O、SrO、BaO、RuO2等を
挙げることができる。
【0037】このような酸化物が含まれていると、酸化
物がアルカリ可溶の酸化物の場合には管状酸化チタン粒
子が特に生成しやすく、またアルカリ難溶の酸化物であ
ると、該酸化物が得られる管状酸化チタン粒子中に残留
し、複合酸化物としての機能たとえば固体酸触媒機能、
イオン交換機能等を、得られる管状酸化チタン粒子に付
与することができる。
【0038】本発明ではこれらの酸化物のうち、特に、
SiO2、ZrO2、ZnO、Al23、CeO2、Y23、N
d23、WO3、Fe23、Sb25が好適である。これら
の酸化物が含まれていると、管状酸化チタンの収率が極
めて高く、またこれらの酸化物が残存することにより得
られる環状酸化チタン粒子の紫外線吸収領域、誘電率、
光触媒活性、プロトン導電性、固体酸特性等を調節する
ことができ、さらに熱的安定性や化学的安定性等を調節
することもできる。
【0039】前記酸化チタン系複合酸化物粒子(酸化チ
タンと酸化物チタン系複合酸化物粒子との混合物を使用
する場合は、複合酸化物粒子)中の酸化チタン以外の酸
化物の含有量は、酸化物がアルカリ可溶性であるか、ア
ルカリ難溶性であるかなどによって異なるが、1〜50
重量%、さらには2〜25重量%の範囲にあることが好
ましい。このような範囲にあると、高い収率で管状酸化
チタン粒子を製造することができる。
【0040】また、酸化チタン以外の酸化物の含有量が
上記範囲の上限よりも大きいと、酸化物がアルカリ可溶
の酸化物であっても管状酸化チタンの収率が低下した
り、球状や針状の粒子が生成することがあり、酸化物が
アルカリ難溶である場合は管状酸化チタンが生成しない
ことがある。以上のような粒子が分散した水分散ゾルの
製造方法としては、特に制限はないが、本願出願人の出
願による特開昭62−283817号公報、特開昭63
−185820号公報、特開平2−255532号公報
等に開示した酸化チタンゾル、酸化チタン系複合酸化物
ゾルを好適に用いることができる。
【0041】たとえば、チタニアゾルまたはチタニアゲ
ルに過酸化水素を加えてチタニアゾルまたはチタニアゲ
ルを溶解し、ついで得られた溶液に酸化チタンゾルある
いは水酸化チタンゾルまたは酸化チタン以外の無機酸化
物ゾルあるいは無機水酸化物ゾルを混合した後加熱する
ことによって製造することができる。本発明の管状酸化
チタン粒子の製造方法に用いる酸化チタン粒子、酸化チ
タン系複合酸化物粒子の製造には、酸化チタン源として
ペルオキソチタン酸に由来する酸化チタンを用いること
が好ましい。ペルオキソチタン酸を用いて得られる酸化
チタン粒子、酸化チタン系複合酸化物粒子は平均粒子径
が均一で、安定な水分散ゾルを得ることができる。
【0042】ペルオキソチタン酸を用いる酸化チタン粒
子の水分散液(ゾル)、酸化チタン系複合酸化物粒子の
水分散液(ゾル)の製造方法としては以下のような方法
を例示することができる。(a)オルソチタン酸のゲルまたはゾルの調製工程 まず、従来公知の方法によってチタン化合物を加水分解
してオルソチタン酸のゾルまたはゲルを調製する。
【0043】オルソチタン酸のゲルは、チタン化合物と
して塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニルなどのチタ
ン塩を使用し、この水溶液にアルカリを加えて中和し、
洗浄することによって得ることができる。また、オルソ
チタン酸のゾルは、チタン塩の水溶液をイオン交換樹脂
に通して陰イオンを除去するか、あるいはチタンテトラ
メトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトライ
ソプロポキシドなどのチタンアルコキシドの水および/
または有機溶媒に酸またはアルカリを加えて加水分解す
ることによって得ることができる。
【0044】中和あるいは加水分解する際のチタン化合
物溶液のpHは7〜13の範囲にあることが好ましい。
チタン化合物溶液のpHが上記範囲にない場合は後述す
るゲルまたはゾルの比表面積が低すぎることがあり、管
状酸化チタン、特に結晶性酸化チタンの生成が低下する
傾向がある。さらに、中和あるいは加水分解する際の温
度は0〜40℃の範囲にあることが好ましく、特に好ま
しい範囲は0〜30℃の範囲である。中和あるいは加水
分解する際の温度が上記範囲を外れると管状酸化チタ
ン、特に結晶性管状酸化チタンの生成が低下する傾向が
ある。
【0045】得られたゲルまたはゾル中のオルソチタン
酸粒子は、非晶質であることが好ましい。(b)酸化チタン微粒子の水分散ゾルの調製工程 つぎに、オルソチタン酸のゲルまたはゾルあるいはこれ
らの混合物に、過酸化水素を添加してオルソチタン酸を
溶解してペルオキソチタン酸水溶液を調製する。ついで
さらに高温で熟成して酸化チタン微粒子の水分散ゾルを
調製する。
【0046】ペルオキソチタン酸水溶液を調製するに際
しては、オルソチタン酸のゲルまたはゾルあるいはこれ
らの混合物を、必要に応じて約50℃以上に加熱した
り、攪拌したりすることが好ましい。また、この際、オ
ルソチタン酸の濃度が高くなるすぎると、その溶解に長
時間を必要とし、さらに未溶解のゲルが沈殿したり、あ
るいは得られるペルオキソチタン酸水溶液が粘調になる
ことがある。このため、TiO2濃度としては、約10重
量%以下であることが好ましく、さらに約5重量%以下
であることが望ましい。
【0047】添加する過酸化水素の量は、H22/Ti
2(オルソチタン酸はTiO2に換算)重量比で1以上で
あれば、オルソチタン酸を完全に溶解することができ
る。H22/TiO2重量比が1未満であると、オルソチ
タン酸が完全には溶解せず、未反応のゲルまたはゾルが
残存することがある。また、H22/TiO2重量比は大
きいほど、オルソチタン酸の溶解速度は大きく反応時間
は短時間で終了するが、あまり過剰に過酸化水素を用い
ても、未反応の過酸化水素が系内に残存するだけであ
り、経済的でない。前記した量で過酸化水素を用いる
と、オルソチタン酸は0.5〜20時間程度で溶解す
る。
【0048】ついでさらに50℃以上の高温で熟成して
酸化チタン微粒子の水分散ゾルを調製することができ
る。さらに、得られた酸化チタン微粒子の水分散ゾル
は、必要に応じて水酸化アンモニウムおよび/または有
機塩基の存在下、50〜300℃、好ましくは80℃〜
250℃の温度範囲で水熱処理することができる。有機
塩基としては後述する有機塩基と同様のものを用いるこ
とができる。
【0049】水酸化アンモニウムおよび/または有機塩
基の使用量は、分散液のpHが室温基準で8〜14、さ
らには10〜13.5となるように添加することが好ま
しい。上記温度範囲および分散液のpH範囲で水熱処理
すると、最終的に得られる管状酸化チタンの結晶性およ
び収率が向上する傾向にある。
【0050】なお、上記(a),(b)工程において、チタン
化合物として水素化チタン微粉体を使用することによっ
てペルオキソチタン酸水溶液、ついで酸化チタン微粒子
の水分散ゾルを調製することもできる。この場合、この
ような水素化チタン微粉体を水に分散させれば、上記
(a)工程で調製したオルソチタン酸のゲルまたはゾルの
代わりとなる。
【0051】水酸化チタン微粉体を水に分散させる際
に、TiO2濃度としては、約10重量%以下であること
が好ましく、さらに好ましい範囲は約5重量%以下であ
ることが望ましい。また、オルソチタン酸の代わりに、
水素化チタン微粉体を用いる場合であっても、添加する
過酸化水素の量は、同様にH22/TiO2(水素化チタ
ンはTiO2に換算)重量比で1以上であればよい。この
とき、水素化チタン微粉体の水分散体を、必要に応じて
約50℃以上に加熱したり、攪拌したりしてもよい。
【0052】なお、酸化チタン系複合酸化物粒子の水分
散液(ゾル)を調製するには前記オルソチタン酸のゲル
またはゾルあるいはこれらの混合物に、過酸化水素を添
加してオルソチタン酸を溶解したペルオキソチタン酸水
溶液にたとえばチタン以外の元素の無機化合物粒子(た
とえば、シリカ粒子、シリカゾル、アルミナ粒子、ジル
コニア粒子)、アルコキシシラン、金属アルコキシド、
塩化ジルコニウム、塩化マグネシウムなどの塩を混合し
て加熱し、さらに必要に応じて前記工程(b)と同様にし
て水酸化アンモニウムおよび/または有機塩基の存在
下、50〜300℃、好ましくは80℃〜250℃の温
度範囲で水熱処理することによって調製することができ
る。
【0053】水熱処理工程 このようにして調製した(i)酸化チタン粒子および/ま
たは(ii)酸化チタン系複合酸化物粒子の水分散ゾルをア
ルカリ金属水酸化物の存在下で水熱処理する。アルカリ
金属水酸化物としてはLiOH、NaOH、KOH、Rb
OH、CsOHおよびこれらの混合物を用いることがで
き、特にNaOH、KOHおよびこれらの混合物は管状
酸化チタン粒子の収率が高く好適である。
【0054】このときのアルカリ金属水酸化物の添加量
は、ゾル中の酸化チタン粒子または酸化チタン系複合酸
化物粒子中のTiO2のモル数(TM)とアルカリ金属水
酸化物のモル数(AM)とのモル比(AM)/(TM)が
1〜30、さらには2〜25の範囲にあることが好まし
い。(AM)/(TM)が前記範囲内にあれば、効率よく
管状酸化チタン粒子を製造することができる。モル比
(AM)/(TM)が前記範囲の下限より少ない場合は、
酸化チタン粒子または酸化チタン系複合酸化物粒子の結
晶性化自体が起きにくいので、管状酸化チタン粒子が得
られず、またモル比(AM)/(TM)が前記範囲の上限
を越えていると板状の酸化チタン粒子が増加して管状酸
化チタン粒子の収率が低下する傾向にある。
【0055】本発明では、アルカリ金属水酸化物ととも
に、水酸化アンモニウムおよび/または有機塩基との共
存下に水熱処理をしてもよい。また、有機塩基として
は、テトラメチルアンモニウム塩などの第4級アンモニ
ウム塩または水酸化物、モノエタノールアミン、ジエタ
ノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類を
挙げることができる。
【0056】このような水酸化アンモニウムおよび/ま
たは有機塩基を共存させる場合、これらの添加量は、水
酸化アンモニウムおよび/または有機塩基のモル数(O
M)と(AM)との合計モル数とTiO2のモル数
(TM)との比(AM)+(OBM)/(TM)が1〜3
0、好ましくは2〜25となるように添加することが望
ましい。また、水酸化アンモニウムおよび/または有機
塩基が共存している場合、A M:OBMモル比は、0:1
より多く1:1まで、好ましくは0:1より多く0.
5:1までの範囲にあることが望ましい。このように水
酸化アンモニウムおよび/または有機塩基を共存させる
と、アルカリ金属水酸化物の使用量を少なくすることが
できるので、管状酸化チタン微粒子中に含まれるアルカ
リ金属不純物の量を少なくすることができる。このた
め、このような管状酸化チタン粒子を触媒や光触媒とし
て好適に使用することが可能となる。
【0057】上記のようなアルカリ金属水酸化物および
必要に応じて水酸化アンモニウムおよび/または有機塩
基の存在下で、酸化チタン粒子および/または酸化チタ
ン系複合酸化物粒子の水分散ゾルを50〜350℃、好
ましくは80℃〜250℃の温度範囲で水熱処理する。
このような温度範囲にあれば、効率よく管状酸化チタン
粒子を製造することができる。なお水熱処理温度が前記
温度範囲未満では、管状酸化チタン微粒子の生成に長時
間を要し、また管状酸化チタン微粒子の収率が低く、水
熱処理温度が上記温度範囲を越えても管状酸化チタン微
粒子の生成速度が速くなったり、収率がさらに高くなる
こともなく、余計に熱エネルギーを使用することにな
る。
【0058】得られた管状酸化チタン微粒子は、つい
で、必要に応じて洗浄してもよい。洗浄方法としてはア
ルカリ金属等を低減できれば特に制限はなく、従来公知
の脱水濾過法、限外濾過膜法、イオン交換樹脂法、電気
透析、逆浸透法等を採用することができる。また、塩
酸、硝酸などの酸を用いて洗浄することもできる。本発
明では、以上のようなアルカリ金属水酸化物および必要
に応じて水酸化アンモニウムおよび/または有機塩基の
共存下に水熱処理した後、必要に応じて洗浄し、得られ
た粒子分散液に、さらにアルカリ金属カチオン以外のカ
チオン(プロトンを含む)存在下で水熱処理をしてもよ
い。
【0059】すなわち、他の管状酸化チタン粒子の製造
方法としては、前記した(i)酸化チタン粒子および/ま
たは(ii)酸化チタンと酸化チタン以外の酸化物の水分散
ゾルを、アルカリ金属水酸化物の存在下、および必要に
応じて水酸化アンモニウムおよび/または有機塩基の共
存下に水熱処理した後(1段目)、さらにアルカリ金属
カチオン以外のカチオン(プロトンを含む)存在下で水
熱処理する(2段目)ことを特徴としている。
【0060】1段目で水熱処理において、使用される金
属水酸化物、水酸化アンモニウム、有機塩基の種類、量
および処理条件は前記と同様である。1段目のアルカリ
金属水酸化物の存在下に水熱処理したのち、必要に応じ
て分散液を、洗浄し、分散液・粒子表面の遊離アルカリ
金属不純物を除去してもよい。また、2段目の水熱処理
では、アルカリ金属カチオン以外のカチオン(プロトン
を含む)存在下で水熱処理する。カチオン源としては、
酸、アルカリ金属を含まない塩、有機塩基などが挙げら
れる。
【0061】具体的には、硫酸などの鉱酸、クエン酸、
ギ酸、酒石酸、マレイン酸、安息香酸等の有機酸が挙げ
られる。中でも有機酸は結晶性がアルカリ金属の低下と
共に結晶性を高く保つことができる。またアルカリ金属
を含まない塩としては、塩化アンモニウム、硝酸アンモ
ニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、六フッ
化チタンアンモニウムなどのアンモニウム塩が挙げられ
る。有機塩基としては水酸化アンモニウム、テトラメチ
ルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩または当
該アンモニウムイオンを含む水酸化物、モノエタノール
アミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンな
どのアミン類等をあげることができる。
【0062】このような酸、アルカリ金属を含まない
塩、有機塩基の使用量は、酸化チタン粒子または酸化チ
タン系複合酸化物粒子中のTiO2のモル数(TM)と前記
酸、アルカリ金属を含まない塩、有機塩基のモル数(P
M)とのモル比(PM/TM)が1〜30、さらに2〜1
5の範囲にあることが好ましい。このような条件で水熱
処理すると、高温で焼成することなく得られる管状酸化
チタンの結晶性が向上させることができる。
【0063】さらには、酸化チタン粒子中のアルカリ金
属残存量も減少するので、触媒、触媒担体、光触媒、化
粧材料、光学材料、光電変換材料など等に用いるに際し
て結晶性の高い結晶性管状酸化チタン粒子を製造するこ
とができる。2段目で行うアルカリ金属カチオン以外の
カチオンの存在下でも、水熱処理は、さらに複数回繰り
返してもよい。
【0064】なお、2段目の水熱処理で得られる管状酸
化チタン粒子と、1段目の水熱処理で得られる管状酸化
チタン粒子は、粒子中に不純物として含まれるアルカリ
金属量が、2段目の方が少なく、結晶制が高くなること
を除いて、粒子形状、比表面積などは変化しない。つぎ
に、前記金属酸化物半導体膜2は、管状酸化チタン粒子
とともに酸化チタンバインダー成分を含んでいる。
【0065】このような酸化チタンバインダー成分とし
ては、ゾル・ゲル法などで得られたオルソチタン酸のゲ
ルまたはゾルに過酸化水素を加えて含水チタン酸を溶解
したペルオキソチタン酸などが挙げられる。このうち、
特にペルオキソチタン酸の加水分解・縮重合物が好まし
く使用される。
【0066】このような酸化チタンバインダー成分は、
管状酸化チタン粒子の表面に緻密かつ均一な吸着層を形
成する。このため得られる金属酸化物半導体膜は電極と
の密着性を高めることができる。さらに、このような酸
化チタンバインダー成分を使用すると、管状酸化チタン
粒子同士の接触面積が増加し、電子移動性を向上させる
ことが可能となり、また、光増感材の吸着量を増大させ
ることができる。
【0067】金属酸化物半導体膜2中の酸化チタンバイ
ンダー成分と管状酸化チタン粒子の比率は、酸化物換算
重量比(酸化チタンバインダー成分/管状酸化チタン粒
子)で0.03〜0.50、好ましくは0.1〜0.3の範
囲にあることが望ましい。重量比が0.03未満では、
可視光領域の光の吸収が不充分であり、さらに光増感材
の吸着量の増加しない場合がある。重量比が0.50を
超えて高い場合は多孔質な半導体膜が得られない場合が
あり、さらに光増感材吸着量が増加しないことがある。
【0068】金属酸化物半導体膜2は、細孔容積が0.
1〜0.8ml/g、平均細孔径が2〜250nmの範
囲にあることが好ましい。細孔容積が0.1ml/gよ
り小さい場合は光増感材吸着量が低くなり、また0.8
ml/gを超えて高い場合には膜内の電子移動性が低下
して光電変換効率を低下させることがある。また平均細
孔径が2nm未満の場合は光増感材の吸着量が低下し、
250nmを超えて高い場合は電子移動性が低下し光電
変換効率が低下することもある。
【0069】このような金属酸化物半導体膜2は、後述
する光電気セル用金属酸化物半導体膜形成用塗布液を用
いて作製することができる。本発明では、金属酸化物半
導体膜2は光増感材を吸着している。光増感材として
は、可視光領域および/または赤外光領域の光を吸収し
て励起するものであれば特に制限はなく、たとえば有機
色素、金属錯体などを用いることができる。
【0070】有機色素としては、分子中にカルボキシル
基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基、スルホン
基、カルボキシアルキル基等の官能基を有する従来公知
の有機色素が使用できる。具体的には、キサンテン、ク
マリン、アクリジン、テトラフェニルメタン、キノン、
エオシンY、ジブロモフルオレセイン、フルオレセイ
ン、フルオレシン、メタルフリーフタロシアニン、シア
ニン系色素、メタロシアニン系色素、トリフェニルメタ
ン系色素およびウラニン、エオシン、ローズベンガル、
ローダミンB、ジブロムフルオレセイン等のキサンテン
系色素等が挙げられる。これらの有機色素は金属酸化物
半導体膜への吸着速度が早いという特性を有している。
【0071】また、金属錯体としては、特開平1-220380
号公報、特表平5-504023号公報などに記載された銅フタ
ロシアニン、チタニルフタロシアニンなどの金属フタロ
シアニン、クロロフィル、ヘミン、ルテニウム-トリス
(2,2'-ビスピリジル-4,4'-ジカルボキシラート)、シス-
(SCN-)-ビス(2,2'-ビピリジル-4,4'-ジカルボキシレ
ート)ルテニウム、ルテニウム-シス-ジアクア-ビス(2,
2'-ビピリジル-4,4'-ジカルボキシラート)などのルテニ
ウム-シス-ジアクア-ビピリジル錯体、亜鉛-テトラ(4-
カルボキシフェニル)ポルフィンなどのポルフィリン、
鉄-ヘキサシアニド錯体等のルテニウム、オスミウム、
鉄、亜鉛などの錯体を挙げることができる。これらの金
属錯体は分光増感の効果や耐久性に優れている。
【0072】上記の有機色素および金属錯体は単独で用
いてもよく、2種以上を混合して用いてもよく、さらに
有機色素と金属錯体とを併用してもよい。このような光
増感材の吸着方法は、特に制限はなく、光増感材を溶媒
に溶解した溶液を、ディッピング法、スピナー法、スプ
レー法等の方法により金属酸化物半導体膜に吸収させ、
ついで乾燥する等の一般的な方法が採用できる。さらに
必要に応じて前記吸収工程を繰り返してもよい。また、
光増感材溶液を加熱環流しながら前記基板と接触させて
光増感材を金属酸化物半導体膜に 吸着させることもで
きる。光増感材を溶解させる溶媒としては、光増感材を
溶解するものであればよく、具体的には、水、アルコー
ル類、トルエン、ジメチルホルムアミド、クロロホル
ム、エチルセルソルブ、N−メチルピロリドン、テトラ
ヒドロフラン等を用いることができる。
【0073】金属酸化物半導体膜に吸着させる光増感材
の量は、金属酸化物半導体膜の比表面積1cm2あたり
50μg以上であることが好ましい。光増感材の量が5
0μg未満の場合、光電変換効率が不充分となることが
ある。本発明に係る光電気セルは、金属酸化物半導体膜
2と透明電極層3とを対向して配置し、側面を樹脂など
でシールし、電極間に電解質4を封入して形成される。
【0074】電解質4としては、電気化学的に活性な塩
とともに酸化還元系を形成する少なくとも1種の化合物
との混合物が使用される。電気化学的に活性な塩として
は、テトラプロピルアンモニウムアイオダイドなどの4
級アンモニウム塩が挙げられる。酸化還元系を形成する
化合物としては、キノン、ヒドロキノン、沃素(I-
3 -)、沃化カリウム、臭素(Br-/Br3 -)、臭化カ
リウム等が挙げられる。
【0075】さらに、本発明では電解質として固体電解
質を用いることができる。固体電解質としては、Cu
I、CuBr、CuSCN、ポリアニリン、ポリピロー
ル、ポリチオフェン、アリールアミン系ポリマー、アク
リル基および/またはメタクリル基を有するポリマー、
ポリビニルカルバゾール、トリフェニルジアミンポリマ
ー、L-valine誘導体低分子ゲル、ポリオリゴエチレング
リコールメタクリレート、poly(o-methoxy aniline)、p
oly(epichlorohydrin-Co-ethylene oxide)、2,2',7,7'-
tetorakis(N,N-di-P-methoxyphenyl-amine)-9,9'-spiro
bifluorene、パーフルオロスルフォネートなどのような
プロトン伝導性を有するフッ素系のイオン交換樹脂、パ
ーフルオロカーボン共重合体、パーフルオロカーボンス
ルホン酸等の他、ポリエチレンオキサイドや、イオンゲ
ル法としてたとえばイミダゾールカチオンとBr-、B
4 -、N-(SO2CF3)2で対イオンを形成し、これにビ
ニルモノマー、PMMAモノマーを加えて重合させたも
のも好適に用いることができる。
【0076】このような固体電解質を用いると、液体電
解質と異なり電解質の逸散がなく、このため長期使用に
よっても光電変換効率が低下することがなく、また腐食
等の原因になることもない。また本発明では、前記電解
質4には必要に応じて溶媒を用いて電解液として用いる
こともできる。このとき使用される溶媒は金属酸化物半
導体膜に吸着した光増感材が脱着して溶解することのな
い程度に光増感材の溶解度の低いものが望ましい。溶媒
として、具体的には水、アルコール類、オリゴエーテル
類、プロピオンカーボネート等のカーボネート類、燐酸
エステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキ
シド、N-メチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、スル
ホラン66の硫黄化合物、炭酸エチレン、アセトニトリ
ル等が挙げられる。
【0077】[光電気セル用金属酸化物半導体膜形成用
塗布液]本発明の金属酸化物半導体膜2の形成には、酸
化チタンバインダー成分の前駆体としてのペルオキソチ
タン酸および/または平均粒子径が20nm以下の酸化
チタン粒子分散ゾルと管状酸化チタン粒子と分散媒から
なる光電気セル用金属酸化物半導体膜形成用塗布液を用
いる。
【0078】ペルオキソチタン酸は、チタン化合物の水
溶液、または水和酸化チタンのゾルまたはゲルに過酸化
水素を加え、加熱することによって調製される。水和酸
化チタンのゾルまたはゲルは、チタン化合物の水溶液に
酸またはアルカリを加えて加水分解し、必要に応じて洗
浄、加熱、熟成することによって得られる。使用される
チタン化合物としては特に制限はないが、ハロゲン化チ
タン、硫酸チタニル等のチタン塩、テトラアルコキシチ
タン等のチタンアルコキシド、水素化チタン等のチタン
化合物を用いることができる。
【0079】酸化チタン粒子分散ゾルは、たとえば前記
ペルオキソチタン酸をさらに加熱、熟成することによっ
て調製される。本発明に用いる光電気セル用金属酸化物
半導体膜形成用塗布液中のペルオキソチタン酸および/
または平均粒子径が20nm以下の酸化チタン粒子分散
ゾルと管状酸化チタン粒子の比率は、酸化物換算の重量
比(酸化チタンバインダー成分/管状酸化チタン粒子)
で0.03〜0.50、好ましくは0.1〜0.3の範囲に
あることが望ましい。重量比が0.03未満では、可視
光領域の光の吸収が不充分であり、さらに光増感材の吸
着量の増加しない場合がある。重量比が0.50を超え
て高い場合は緻密な半導体膜が得られない場合があり、
さらに電子移動性が向上しないことがある。
【0080】このようなペルオキソチタン酸および/ま
たは平均粒子径が20nm以下の酸化チタン粒子分散ゾ
ルと管状酸化チタン粒子は、光電気セル用金属酸化物半
導体膜形成用塗布液中に、酸化物換算で1〜30重量
%、好ましくは2〜20重量%の濃度で含まれているこ
とが望ましい。分散媒としては、ペルオキソチタン酸お
よび/または平均粒子径が20nm以下の酸化チタン粒
子分散ゾルに管状酸化チタン粒子が分散でき、かつ乾燥
した際に除去できるものであれば特に制限はなく使用す
ることができるが、特にアルコール類が好ましい。
【0081】さらにまた、本発明に用いる光電気セル用
金属酸化物半導体膜形成用塗布液には、必要に応じて膜
形成助剤が含まれていてもよい。膜形成助剤としてはポ
リエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロ
キシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、ポリビニル
アルコール等が挙げられる。このような膜形成助剤が塗
布液中に含まれていると、塗布液の粘度が高くなり、こ
れにより均一に乾燥した膜が得られ、さらに管状酸化チ
タン粒子が緻密に充填して、嵩密度が高くなり、電極と
の密着性の高い金属酸化物半導体膜を得ることができ
る。
【0082】本発明に係る光電気セル用金属酸化物半導
体膜の製造方法は、このような光電気セル用金属酸化物
半導体膜形成用塗布液を基材上に塗布し、乾燥した後、
硬化させることを特徴としている。塗布液は最終的に形
成される金属酸化物半導体膜の膜厚が0.1〜50μm
の範囲となるように塗布されることが好ましい。塗布液
の塗布方法としては、ディッピング法、スピナー法、ス
プレー法、ロールコーター法、フレキソ印刷、スクリー
ン印刷など従来公知の方法で塗布することができる。
【0083】乾燥温度は分散媒を除去できる温度であれ
ばよい。本発明では、特に塗膜に紫外線を照射して、硬
化させることが好ましい。紫外線の照射量はペルオキソ
チタン酸の含有量などによって異なるが、ペルオキソチ
タン酸が分解して硬化するに必要な量を照射すればよ
い。なお、塗布液中に膜成形助剤が含まれている場合に
は、塗膜硬化後、加熱処理して膜成形助剤を分解しても
よい。
【0084】本発明では、紫外線照射して塗膜を硬化さ
せた後に、O2、N2、H2、ネオン、アルゴン、クリプ
トンなど周期律表第0族の不活性ガスから選択される少
なくとも1種のガスのイオンを照射した後、アニーリン
グすることが好ましい。イオン照射の方法はIC、LS
Iを製造する際にシリコンウエハーへホウ素やリンを一
定量、一定深さに注入する方法等として公知の方法を採
用することができる。アニーリングは、200〜500
℃、好ましくは250〜400℃の温度で、10分〜2
0時間加熱することによって行われる。
【0085】これらのガスのイオンの照射によって、酸
化チタン膜内にこれらのイオンが残留することがなく、
チタニア粒子表面に欠陥が多く生成し、アニーリング後
のブルッカイト型を含む酸化チタン結晶の結晶性が向上
するとともに粒子同士の接合が促進され、このため光増
感材との結合力が高まるとともに吸着量が増加し、さら
に粒子の接合の促進により電子移動性が向上することに
よって光電変換効率が向上することができる。
【0086】こうして得られた金属酸化物半導体膜の膜
厚は、0.1〜50μmの範囲にあることが好ましい。
[光触媒]本発明に係る光触媒は、前記した管状酸化チタ
ン粒子を使用してなる。なお、光触媒は、前記した管状
酸化チタン粒子をそのまま用いることもできるし、他の
活性成分を管状酸化チタン粒子に担持あるいはドーピン
グしたり、これら管状酸化チタン粒子を混合して用いる
こともできる。さらに必要に応じてバインダー成分前駆
体を含んでいても良い。
【0087】このような光触媒の使用形態としては特に
制限はなく、たとえば、上記管状酸化チタン粒子をその
まま水等の溶媒に分散させて用いることができるし、バ
インダー成分前駆体と混合して光触媒層形成用塗布液と
し、ガラス、PET、金属、セラミックスなどの基材に
塗布・乾燥して所望の膜厚の触媒層を形成して用いるこ
ともできる。さらに、球状、ペレット状、ハニカム状等
に成形して用いることもできる。
【0088】上記他の活性成分としては、Ag、Cu、
Zn等の抗菌、防黴目的に用いられる金属成分の他、P
t、Pd、Rh、Ru、Os、Ir、Au、Fe等の酸
化還元性能を有する金属成分が挙げられる。これら金属
成分の担持、ドーピング方法は従来公知の方法を採用す
ることができ、たとえば管状酸化チタン粒子の分散液に
金属成分の可溶性塩の水溶液を添加したり、必要に応じ
て加水分解させて析出させることによって調製すること
ができる。
【0089】光触媒層形成用塗布液としては、前記金属
酸化物半導体膜形成用塗布液と同じものを用いることが
できる。また、前記バインダー成分前駆体として無機金
属塩、有機金属化合物、具体的には四塩化ケイ素、四塩
化チタン、塩化ジルコニウム、塩化亜鉛、塩化スズ、テ
トラエトキシシラン、テトライソプロポキシチタン、テ
トライソプロポキシジルコニウム、テトライソプロポキ
シ亜鉛、テトライソプロポキシインジウム、テトライソ
プロポキシスズ等の他これらの部分加水分解物、加水分
解縮重合物を用いることができる。
【0090】本発明の光触媒に用いられる管状酸化チタ
ン粒子は、前記した管状酸化チタン粒子が好適に用いら
れる。この管状酸化チタン粒子は、外径(Dout)が5
〜40nm、好ましくは10〜30nmの範囲にあり、
内径(Din)が4〜30nm、好ましくは5〜20nm
の範囲にあり、管の厚みが1〜20nm、好ましくは2
〜15nmの範囲にあり、長さ(L)が25〜1000
nm、好ましくは50〜600nmの範囲にあり、この
長さ(L)と前記外径(Dout)との比(L)/(Dou
t)が5〜200、好ましくは10〜100の範囲にあ
ることが望ましい。
【0091】管状酸化チタン粒子の外径(Dout)が5
nm未満の場合は、これに対して内径が小さく、反応の
種類によっては反応物の拡散が不充分となり充分な活性
が得られないことがある。管状酸化チタン粒子の外径
(Dout)が40nmを越えると、光の散乱を起こすよ
うになり、光利用率が低下するとともに充分な活性が得
られないことがある。
【0092】また、管状酸化チタン粒子の内径(Din)
が4nm未満の場合は、前記したように反応の種類によ
っては反応物の拡散が不充分となり充分な活性が得られ
ないことがある。管状酸化チタン粒子の内径(Din)が
30nmを越えるものは得ることが困難であり、得られ
たとしても連動して外径(Dout)が40nmを越える
ようになり、光の散乱のより充分な活性が得られないこ
とがある。
【0093】また、このとき管の厚みが1nm未満の場
合は、結晶層の厚みが小さく、電子ホールの生成が不充
分なためか充分な活性が得られないことがある。管の厚
みが20nmを越えると、従来の結晶性酸化チタンに比
べて比表面積が高いという特徴が小さくなり、有効な活
性点、反応物の吸着の場などが充分多いとはいえず、光
触媒活性を高める効果が不充分となることがある。
【0094】さらに、管状酸化チタン粒子の長さ(L)
が25nm未満の場合は、反応の種類にもよるが、反応
律速の反応の場合などには充分な活性が得られないこと
がある。管状酸化チタン粒子の長さ(L)が1000n
mを越えると、管の内径にもよるが、反応の種類によっ
ては反応物の拡散が不充分となり充分な活性が得られな
いことがある。
【0095】上記において、管状酸化チタン粒子の長さ
(L)と外径(Dout)との比(L)/(Dout)が5未
満の場合は、基材上に触媒膜を形成して用いる場合など
に、基材との密着性や、膜の強度が不充分となることが
ある。(L)/(Dout)が200を越えると、反応の
種類によっては反応物の拡散が不充分となり充分な光触
媒活性が得られないことがある。
【0096】また、管状酸化チタン粒子中のアルカリ金
属含有量が500ppm以下、さらには200ppm以
下、特に100ppmであることが好ましい。アルカリ
金属含有量が500ppmを越えると、電子ホールの生
成や移動を低下させ、充分な光触媒活性が得られないこ
とがある。本発明の光触媒が用いられる触媒反応として
は、窒素酸化物の還元、二酸化炭素の還元固定化、汚濁
排水中の有機質、環境ホルモン等の分解、オレフィンの
異性化、水の光分解、防汚、防黴、抗菌、脱臭反応等が
挙げられる。
【0097】本発明では、管状酸化チタン粒子を光触媒
として使用する場合、(b-1)チタン過酸化物または(b-2)
複合チタン過酸化物と、(b-3)有機高分子化合物とから
なるバインダー[B]を使用して、管状酸化チタン粒子[A]
とバインダー[B]とからなる被膜を基材表面に形成して
もよい。チタン過酸化物(b-1)とは、通常TiO3・nH2
Oで表される化合物である。このようなチタン過酸化物
(b-1)は、四塩化チタンなどの塩、水酸化チタン、チタ
ンアルコキシドまたはアセチルアセトナートのチタン錯
体などのチタン化合物と、過酸化水素などの過酸化物と
を反応させることによって得ることができる。
【0098】また、複合チタン過酸化物(b-2)は、Ti
と、Cu,Ag,Zn,Cd,Al,Zr,Si,Sn,V,Nb,Sb,B
i,Cr,Mo,W,MnおよびFeからなる群から選ばれる1
種または2種以上の元素(以下、チタン以外の元素(b)
という)とからなる複合金属の過酸化物であり、前記チ
タン過酸化物(b-1)の一部のTiをチタン以外の元素(b)
で置換したものである。
【0099】このような複合チタン過酸化物(b-2)は、
前記チタン化合物と、チタン以外の元素の塩、水酸化
物、アルコキシドまたはアセチルアセトナート錯体など
の化合物と、過酸化水素などの過酸化物とを反応させる
ことによって得ることができる。たとえば、イソプロポ
キシチタンとイソプロポキシジルコニウムの水−アルコ
ール溶液に過酸化水素を添加し、加熱処理すると、チタ
ンとジルコニウムの複合過酸化物が得られる。このよう
なチタン過酸化物(b-1)または複合チタン過酸化物(b-2)
は、通常溶液状態にある。
【0100】このようなチタン過酸化物(b-1)または複
合チタン過酸化物(b-2)は、前記環状酸化チタン粒子同
程度の屈折率を有しているので、被膜構成成分による光
散乱が少なく、透明性に優れた被膜を形成することがで
きる。特に、チタン過酸化物または複合チタン過酸化物
として、Tiと、Zrおよび/またはSiとの複合過酸化
物を用いると、基材との密着性および有機溶媒との親和
性などが大幅に向上するので好ましい。
【0101】また、上記チタン過酸化物または複合チタ
ン過酸化物は、有機アミンまたはアセチルアセトンなど
と反応させて使用してもよい。上記のような過酸化物を
バインダーとして含む塗布液を用いて透明被膜を形成す
ると、形成工程の加熱処理において過酸化物が分解し
て、被膜の緻密化を促進することができる。また、バイ
ンダーとして、上記のようなチタン過酸化物または複合
チタン過酸化物を含んでいると、バインダー自体が光触
媒活性および導電性を有することになるため、光触媒活
性が促進され、被膜の光触媒活性を高くすることができ
る。さらに、バインダーの屈折率が複合酸化チタン微粒
子の屈折率とほぼ同じであるため、透明性が高く、ヘイ
ズが小さい被膜を形成することが可能である。さらにま
た約150℃程度の低温度で処理しても、被膜の高硬度
化が可能なため、ガラス、プラスチックなどの基材との
密着性に優れた被膜を形成することが可能であり、かつ
約1μm程度の厚膜がワンコートで容易に形成すること
ができる。
【0102】バインダー中に含まれる有機高分子化合物
(b-3)としては、キトサン、セルローズなどの多糖類が
好ましい。バインダー中にこのような有機高分子化合物
(b-3)を含んでいると、被膜形成時の乾燥工程での被膜
の収縮に伴う応力が緩和され、被膜のクラックが防止さ
れ、厚膜化が可能となる。また、基材に対する塗布液の
濡れ性が向上し、しかも塗布液の粘度が上昇するため塗
布時の作業性を向上することができる。
【0103】基材表面に上記した被膜を形成し光触媒を
作製する際には、上記環状酸化チタン微粒子[A]とバイ
ンダー[B]とを、水および/または有機溶媒からなる溶
媒に溶解または分散させて調製透明被膜形成用塗布液を
ガラス、プラスチック、セラミックまたは繊維などの基
材の表面に、スピナー法、バーコーター法、スプレー
法、ディップ法あるいはフレキソ法などの通常の方法で
塗布したのち乾燥し、150〜400℃で加熱硬化すれ
ばよい。硬化処理は、紫外線照射などの方法を併用する
ことも可能である。透明被膜の膜厚は、約0.1〜10
μm、好ましくは0.2〜5μmの範囲にあることが望
ましい。
【0104】なお、本発明で使用される管状酸化チタン
粒子は前述したような構成をしており、比表面積が20
0〜600m2/gと高く、センサー分子を多量に吸着
させることができるので微弱な光であっても光センサー
の感知部として好適に用いることができる。また、前記
範囲の(L)/(Dout)と管の厚みを有しているの
で、微細な酸化チタン粒子を用いた場合と異なり、光透
過性がよく、電子ホールの移動が速やかに起こるため感
知精度の高い光センサーを得ることができる。
【0105】また、管状酸化チタン粒子は前述したよう
な構成をしており、これにLiを導入するとバッテリー
の負極材料としても有用である。
【0106】
【発明の効果】本発明によれば、金属酸化物半導体膜に
前記した管状酸化チタン粒子を用いているので金属酸化
物半導体膜への光増感材の吸着が高く、電解質の拡散性
に優れ、アルカリ金属の含有量が極めて少ないために光
電変換効率等の向上した、種々の光電変換の用途に有用
な光電気セルを得ることができる。また、アルカリ金属
の含有量が極めて少なく、反応物、生成物等の拡散性に
優れた高活性の光触媒を得ることができる。
【0107】また、光電気セル、光触媒のほかバッテリ
ーの負極材料、光センサーの感知部等としても有用であ
る。
【0108】
【実施例】以下、実施例により説明するが、本発明はこ
れらの実施例により限定されるものではない。
【0109】
【製造実施例1】酸化チタン粒子(T-1)分散液の調製 塩化チタン水溶液を純水で希釈してTiO2として濃度5
重量%の塩化チタン水溶液を調製した。この水溶液を、
温度を5℃に調節した濃度15重量%のアンモニア水に
添加して中和・加水分解した。塩化チタン水溶液添加後
のpHは10.5であった。ついで、生成したゲルを濾
過洗浄し、TiO2として濃度9重量%のオルソチタン酸
のゲルを得た。
【0110】このオルソチタン酸のゲル100gを純水
2900gに分散させた後、濃度35重量%の過酸化水
素水800gを加え、攪拌しながら、85℃で3時間加
熱し、ペルオキソチタン酸水溶液を調製した。得られた
ペルオキソチタン酸水溶液のTiO2として濃度は0.5
重量%であった。ついで95℃で10時間加熱して酸化
チタン粒子分散液とし、この酸化チタン粒子分散液に分
散液中のTiO2に対するモル比が0.016となるよう
にテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH
MW=149.2)を添加した。このときの分散液のpHは11
であった。ついで、230℃で5時間水熱処理して酸化
チタン粒子(T-1)分散液を調製した。酸化チタン粒子
(T-1)の平均粒子径は30nmであった。
【0111】管状酸化チタン粒子(PT-1)の調製 上記の酸化チタン粒子(T-1)分散液に、濃度40重量
%のNaOH水溶液70gを、TiO2のモル数(TM)と
アルカリ金属水酸化物のモル数(AM)とのモル比(AM
/TM)が10となるように添加し、150℃で10時
間水熱処理した。得られた粒子は純水にて充分洗浄し
た。ついで陽イオン交換樹脂にてアルカリを低減した管
状酸化チタン粒子(PT-1-1)を調製した。このときのN
a2O残存量は0.15重量%であった。
【0112】ついで、管状酸化チタン粒子(PT-1-1)の
水分散液(TiO2としての濃度5重量%)に有機塩基と
してテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMA
H)をTiO2に対するモル比が0.1となるように添加し
た。このときのpHは13.2であった。この分散液を
110℃で5時間水熱処理して管状酸化チタン粒子(PT
-1)を調製した。
【0113】得られた管状酸化チタン粒子(PT-1)につ
いて水洗し、ついで乾燥し、アルカリを分析し、また粒
子のTEM写真を撮影して平均粒子長(L)と平均管外
径(Dout)および平均管内径(Din)を求め、また粒
子の比表面積および結晶性を評価した。結果を表1に示
す。 結晶性の評価基準 格子定数d=1.89のピークの高さを基に評価し、 管状酸化チタン粒子(PT-1-1)より明らかに高い:◎ 管状酸化チタン粒子(PT-1-1)と同程度 :○ 管状酸化チタン粒子(PT-1-1)より明らかに低い:△ 実質的に無定型 :× なおPT-1-1の結晶性はアナターゼであった。
【0114】
【製造実施例2】管状酸化チタン粒子(PT-2)の調製 実施例1において、管状酸化チタン粒子(PT-1-1)の水
分散液(TiO2としての濃度5重量%)にTMAHの代わり
にクエン酸をTiO2に対するモル比が0.1となるよう
に添加した以外は実施例1と同様にして管状酸化チタン
粒子(PT-2)を調製した。
【0115】得られた管状酸化チタン粒子(PT-2)につ
いて水洗ついで乾燥し、アルカリを分析し、また粒子の
TEM写真を撮影して平均粒子長(L)と平均管外径
(Dout)および平均管内径(Din)を求め、また粒子
の比表面積および結晶性を評価した。結果を表1に示
す。
【0116】
【製造実施例3】管状酸化チタン粒子(PT-3)の調製 上記と同様にして調製した酸化チタン粒子(T-1)分散
液に、濃度40重量%のNaOH水溶液40gと、濃度
25重量%のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサ
イド(TMAH)水溶液358gとをTiO2のモル数(TM
に対するアルカリ金属水酸化物のモル数(AM)と有機
塩基のモル数(OBM)の合計モル数とのモル比(AM
OBM)/(TM)が10となるように添加し、150℃
で2時間水熱処理した。得られた粒子は純水にて充分洗
浄した。ついで陽イオン交換樹脂にてアルカリを低減し
た管状酸化チタン粒子(PT-2-1)を調製した。このとき
のNa2O残存量は0.12量%であった。
【0117】ついで、管状酸化チタン粒子(PT-2-1)の
水分散液(TiO2としての濃度5重量%)にクエン酸を
TiO2に対するモル比が0.1となるように添加した。
このときのpHは3.0であった。この分散液を150
℃で15時間水熱処理して管状酸化チタン粒子(PT-3)
を調製した。得られた管状酸化チタン粒子(PT-3)につ
いて水洗ついで乾燥し、アルカリを分析し、また粒子の
TEM写真を撮影して平均粒子長(L)と平均管外径
(Dout)および平均管内径(Din)を求め、また粒子
の比表面積および結晶性を評価した。結果を表1に示
す。
【0118】
【製造実施例4】酸化チタン粒子(T-2)分散液の調製 上記と同様にしてTiO2として濃度が0.5重量%ペル
オキソチタン酸水溶液3800gを調製した。これにシ
リカゾル(触媒化成工業(株)製:SI-350、SiO
2濃度30重量%、平均粒子径8nm)7.0gを混合
し、95℃で3時間加熱し、TiO2・SiO2 としての濃
度が0.56重量%の酸化チタン粒子(T-2)分散液を調
製した。酸化チタン粒子(T-2)の平均粒子径は20nm
であった。
【0119】管状酸化チタン粒子(PT-4)の調製 ついで、酸化チタン粒子(T-2)分散液に、濃度40重
量%のNaOH水溶液70gを、TiO2のモル数(TM
とアルカリ金属水酸化物のモル数(AM)とのモル比
(AM/TM)が10となるように添加し、150℃で1
0時間水熱処理した。得られた粒子は純水にて充分洗浄
した。ついで陽イオン交換樹脂にてアルカリを低減した
管状酸化チタン粒子(PT-4-1)を調製した。このときの
Na2O残存量は0.45重量%であった。
【0120】ついで、管状酸化チタン粒子(PT-4-1)の
水分散液(TiO2・SiO2としての濃度3重量%)にク
エン酸TiO2に対するモル比が0.1となるように添加
した。このときのpHは3.0であった。この分散液を
150℃で15時間水熱処理して管状酸化チタン粒子
(PT-4)を調製した。得られた管状酸化チタン粒子(PT
-4)について水洗ついで乾燥し、アルカリおよびSiO2
を分析し、また粒子のTEM写真を撮影して平均粒子長
(L)と平均管外径(Dout)および平均管内径(Di
n)を求め、また粒子の比表面積および結晶性を評価し
た。結果を表1に示す。
【0121】
【製造実施例5】酸化チタン粒子(T-3)分散液の調製 上記と同様にしてTiO2として濃度が0.5重量%ペル
オキソチタン酸水溶液3800gを調製した。これにシ
リカゾル(触媒化成工業(株)製:SI-550、SiO
2濃度30重量%、平均粒子径8nm)15.8gを混合
し、95℃で3時間加熱し、TiO2・SiO2 としての濃
度が0.62重量%の酸化チタン粒子(T-3)分散液を調
製した。酸化チタン粒子(T-3)の平均粒子径は10nm
であった。
【0122】管状酸化チタン粒子(PT-5)の調製 ついで、酸化チタン粒子(T-3)分散液に、濃度40重
量%のNaOH水溶液70gを、TiO2のモル数(TM
とアルカリ金属水酸化物のモル数(AM)とのモル比
(AM/TM)が10となるように添加し、150℃で2
時間水熱処理した。得られた粒子は純水にて充分洗浄し
た。ついで陽イオン交換樹脂にてアルカリを低減した管
状酸化チタン粒子(PT-5-1)を調製した。このときのNa
2O残存量は0.50重量%であった。
【0123】ついで、管状酸化チタン粒子(PT-5-1)の
水分散液(TiO2・SiO2としての濃度3重量%)にク
エン酸をTiO2に対するモル比が0.1となるように添
加した。このときのpHは3.0であった。この分散液
を150℃で15時間水熱処理して管状酸化チタン粒子
(PT-5)を調製した。得られた管状酸化チタン粒子(PT
-5)について水洗ついで乾燥し、アルカリおよびSiO2
を分析し、また粒子のTEM写真を撮影して平均粒子長
(L)と平均管外径(Dout)および平均管内径(Di
n)を求め、また粒子の比表面積および結晶性を評価し
た。結果を表1に示す。
【0124】
【製造実施例6】酸化チタン粒子(T-4)分散液の調製 上記と同様にしてTiO2として濃度が0.5重量%ペル
オキソチタン酸水溶液3800gを調製した。これにア
ルミナゾル(触媒化成工業(株)製:AS-2、Al23
濃度10重量%)21gを混合し、95℃で3時間加熱
し、TiO2・Al23としての濃度が0.55重量%の酸
化チタン粒子(T-4)分散液を調製した。酸化チタン粒子
(T-4)の平均粒子径は20nmであった。
【0125】管状酸化チタン粒子(PT-6)の調製 ついで、酸化チタン粒子(T-4)分散液に、濃度40重
量%のNaOH水溶液70gを、TiO2のモル数(TM
とアルカリ金属水酸化物のモル数(AM)とのモル比
(AM/TM)が10となるように添加し、150℃で1
0時間水熱処理した。得られた粒子は純水にて充分洗浄
した。ついで陽イオン交換樹脂にてアルカリを低減した
管状酸化チタン粒子(PT-6-1)を調製した。このときの
Na2O残存量は0.50重量%であった。
【0126】ついで、管状酸化チタン粒子(PT-6-1)の
水分散液(TiO2・Al23としての濃度3重量%)にク
エン酸をTiO2に対するモル比が0.1となるように添
加した。このときのpHは3.0であった。ついで分散
液を150℃で15時間水熱処理して管状酸化チタン粒
子(PT-6)を調製した。得られた管状酸化チタン粒子
(PT-6)について水洗ついで乾燥し、アルカリおよびA
l23を分析し、また粒子のTEM写真を撮影して平均
粒子長(L)と平均管外径(Dout)および平均管内径
(Din)を求め、また粒子の比表面積および結晶性を評
価した。結果を表1に示す。
【0127】
【製造実施例7】酸化チタン粒子(T-5)分散液の調製 上記と同様にしてTiO2として濃度が0.5重量%ペル
オキソチタン酸水溶液(酸化チタン粒子(T-1)分散
液)3800gを調製した。これに下記のようにして調
製したジルコニアゾル19gを混合し、95℃で3時間
加熱し、TiO2・ZrO2としての濃度が0.52重量%の
酸化チタン粒子(T-5)分散液を調製した。酸化チタン粒
子(T-5)の平均粒子径は10nmであった。
【0128】ジルコニアゾルの調製 塩化ジルコニウムとして0.036重量%を含む塩化ジ
ルコニウム水溶液5Kgを乾留器付きフラスコに入れ、
よく撹拌しながら0.1Nのアンモニア水290gを徐
々に添加した。さらにこの液を95℃で50時間加熱し
て、ZrO2としての濃度が0.034重量%、pH1.8
の乳白色ゾルを得た。さらに0.1Nのアンモニア水を
添加してpH4.8とした後、イオン交換水で濾液に塩
素イオンが検出されなくなるまで洗浄し、分散液として
ZrO2濃度5重量%のジルコニアゾル(平均粒子径50
nm)を調製した。
【0129】管状酸化チタン粒子(PT-7)の調製 上記酸化チタン粒子(T-5)分散液に、濃度40重量%
のNaOH水溶液70gを、TiO2のモル数(TM)とア
ルカリ金属水酸化物のモル数(AM)とのモル比(AM
M)が10となるように添加し、150℃で10時間
水熱処理した。得られた粒子は純水にて充分洗浄した。
ついで陽イオン交換樹脂にてアルカリを低減した管状酸
化チタン粒子(PT-7-1)を調製した。このときのNa2
残存量は0.3重量%であった。
【0130】ついで、管状酸化チタン粒子(PT-7-1)の
水分散液(TiO2・ZrO2としての濃度3重量%)にク
エン酸をTiO2に対するモル比が0.1となるように添
加した。このときのpHは3.0であった。この分散液
を150℃で15時間水熱処理して管状酸化チタン粒子
(PT-7)を調製した。得られた管状酸化チタン粒子(PT
-7)について水洗ついで乾燥し、アルカリおよびZrO2
を分析し、また粒子のTEM写真を撮影して平均粒子長
(L)と平均管外径(Dout)および平均管内径(Di
n)を求め、また粒子の比表面積および結晶性を評価し
た。結果を表1に示す。
【0131】
【製造比較例1】酸化チタン粒子(T-6)分散液の調製 上記と同様にして調製した酸化チタン粒子(T-1)分散
液を乾燥し、ついで600℃で2時間焼成し、これを粉
砕して平均粒子径200nmの酸化チタン粉体とした。
ついで、水に分散してTiO2としての濃度10重量%の
酸化チタン粒子(T-6)分散液を調製した。
【0132】管状酸化チタン粒子(PT-8)の調製 酸化チタン粒子(T-6)分散液に、濃度40重量%のNa
OH水溶液70gを、TiO2のモル数(TM)とアルカ
リ金属水酸化物のモル数(AM)とのモル比(A M
M)が10となるように添加し、150℃で2時間水
熱処理した。得られた粒子は純水にて充分洗浄した。つ
いで陽イオン交換樹脂にてアルカリを低減した管状酸化
チタン粒子(PT-8-1)を調製した。 このときのNa2O残
存量は0.60重量%であった。
【0133】ついで、管状酸化チタン粒子(PT-8-1)の
水分散液(TiO2としての濃度3重量%)に有機塩基と
してテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMA
H)をTiO2に対するモル比が0.1となるように添加し
た。このときのpHは13.2であった。ついで分散液
を110℃で5時間水熱処理して管状酸化チタン粒子
(PT-8)を調製した。
【0134】得られた管状酸化チタン粒子(PT-8)につ
いて水洗ついで乾燥し、アルカリを分析し、また粒子の
TEM写真を撮影した。多くの粒子は凝集しており、一
部の管状酸化チタンについて粒子長(L)と管外径(D
out)および管内径(Din)を求め、また粒子の比表面
積および結晶性を評価した。結果を表1に示す。
【0135】
【製造比較例2】酸化チタン粒子(T-7)分散液の調製 上記と同様にして調製した酸化チタン粒子(T-3)分散
液を乾燥し、ついで600℃で2時間焼成し、これを粉
砕して平均粒子径300nmの酸化チタン粉体とした。
ついで、水に分散してTiO2・SiO2としての濃度10
重量%の酸化チタン粒子(T-7)分散液を調製した。
【0136】管状酸化チタン粒子(PT-9)の調製 酸化チタン粒子(T-7)分散液に、濃度40重量%のNa
OH水溶液70gを、TiO2のモル数(TM)とアルカ
リ金属水酸化物のモル数(AM)とのモル比(AM)/
(TM)が10となるように添加し、150℃で1時間
水熱処理した。得られた粒子は純水にて充分洗浄した。
ついで陽イオン交換樹脂にてアルカリを低減した管状酸
化チタン粒子(PT-9-1)を調製した。このときのNa2
残存量は0.70重量%であった。
【0137】ついで、管状酸化チタン粒子(PT-9-1)の
水分散液(TiO2としての濃度3重量%)に有機塩基と
してテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMA
H)をTiO2に対するモル比が0.1となるように添加し
た。このときのpHは13.2であった。ついで分散液
を150℃で15時間水熱処理して管状酸化チタン粒子
(PT-9)を調製した。
【0138】得られた管状酸化チタン粒子(PT-9)につ
いて水洗ついで乾燥し、アルカリおよびSiO2を分析
し、また粒子のTEM写真を撮影した。多くの粒子は凝
集しており、一部の管状酸化チタンについて粒子長
(L)と管外径(Dout)および管内径(Din)を求
め、また粒子の比表面積および結晶性を評価した。結果
を表1に示す。
【0139】
【製造比較例3】管状酸化チタン粒子(PT-10)の調製 製造比較例2において、管状酸化チタン粒子(PT-9-1)
の水分散液(TiO2としての濃度5重量%)に、TMAHの
代わりにクエン酸をTiO2に対するモル比が0.1とな
るように添加した以外は製造比較例2と同様にして管状
酸化チタン粒子(PT-10)を調製した。
【0140】得られた管状酸化チタン粒子(PT-10)につ
いて水洗ついで乾燥し、アルカリを分析し、また粒子の
TEM写真を撮影して平均粒子長(L)と平均管外径
(Dout)および平均管内径(Din)を求め、また粒子
の比表面積および結晶性を評価した。結果を表1に示
す。
【0141】
【実施例1】金属酸化物半導体膜(A) 10gの水素化チタン粉末を純水2Lに懸濁し、これに
濃度5重量%の過酸化水素水800gを30分間で添加
し、ついで、80℃に加熱し、ペルオキソチタン酸の溶
液を調製した。
【0142】酸化物としての濃度が10%の管状酸化チ
タン次粒子(PT-1)の分散液を調製し、前記ペルオキソチ
タン酸溶液と管状酸化チタン次粒子(PT-1)の酸化物換算
の重量比(ペルオキソチタン酸/管状酸化チタン次粒子
(PT-1))が0.1となるように混合し、この混合液中の
全酸化物の重量が30重量%となるように膜形成助剤と
してヒドロキシプロピルセルロースを添加して半導体膜
形成用塗布液を調製した。
【0143】ついで、フッ素ドープした酸化スズが電極
層として形成された透明ガラス基板上に前記塗布液を塗
布し、自然乾燥し、引き続き低圧水銀ランプを用いて6
000mJ/cm2の紫外線を照射してペルオキソ酸を
分解させ、塗膜を硬化させた。塗膜を300℃で30分
間加熱してヒドロキシプロピルセルロースの分解および
アニーリングを行って膜厚15μmの金属酸化物半導体
膜(A)を形成した。
【0144】得られた金属酸化物半導体膜(A)の窒素
吸着法によって求めた細孔容積と平均細孔径を表1に示
す。光増感材の吸着 つぎに、光増感材としてシス-(SCN-)-ビス(2,2'-ビ
ピリジル-4,4'-ジカルボキシレート)ルテニウム(II)で
表されるルテニウム錯体の濃度3×10-4モル/リット
ルのエタノール溶液を調製した。この光増感材溶液を、
rpm100スピナーを用いて、金属酸化物半導体膜(A)上
へ塗布して乾燥した。この塗布および乾燥工程を5回行
った。得られた金属酸化物半導体膜の光増感材の吸着量
を表1に示す。
【0145】光電気セルの作成 アセトニトリルと炭酸エチレンとを体積比(アセトニト
リル:炭酸エチレン)が1:4となるように混合した溶
媒に、テトラプロピルアンモニウムアイオダイドを0.
46モル/リットル、ヨウ素を0.06モル/リットル
の濃度となるように溶解して電解質溶液を調製した。
【0146】前記で調製した電極を一方の電極とし、他
方の電極としてフッ素ドープした酸化スズを電極として
形成し、その上に白金を担持した透明ガラス基板を対向
して配置し、側面を樹脂にてシールし、電極間に上記の
電解質溶液を封入し、さらに電極間をリード線で接続し
て光電気セル(A)を作成した。光電気セル(A)は、
ソーラーシュミレーターで100W/m2の強度の光を
照射して、Voc(開回路状態の電圧)、Joc(回路を短
絡したときに流れる電流の密度)、FF(曲線因子)お
よびη(変換効率)を測定し結果を表に示した。
【0147】光触媒の調製 電極層が形成されてない透明ガラス基板を用い、塗膜を
硬化させた後、塗膜を450℃で30分間加熱した以外
は金属酸化物半導体膜(A)と同様にして光触媒(A
C)を調製した。活性評価 石英セル製の容器(光学測定用:10×10×45m
m)に濃度10ppmのメチレンブルー溶液を充填し、
これに光触媒(AC)を浸漬し、Xeランプ(2KW、分
光波長範囲209〜706nm)を照射し、5時間後の
波長460nmにおける吸光度を測定した。Xeランプ
照射前の溶液の吸光度を1とした。なお、吸光度が低い
ほど反応が進んで、メチレンブルーが減少していること
を示す。
【0148】結果を表1に示す。
【0149】
【実施例2〜7、比較例1〜3】光電気セル(B)〜
(H)の作成 管状酸化チタン粒子(PT-2)〜(PT-10)をそれぞれ用いた
以外は実施例1と同様にして光電気セル(B)〜(K)
を作成し、Voc、Joc、FFおよびηを測定した。
【0150】結果を表1に示す。光触媒(BC)〜(HC)の調製 管状酸化チタン粒子(PT-2)〜(PT-10)をそれぞれ用いた
以外は実施例1と同様にして光触媒(BC)〜(HC)
を調製し、活性を評価した。
【0151】結果を表1に示す。
【0152】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る光電気セルの一実施例を示す概
略断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・透明電極層 2・・・・・金属酸化物半導体膜 3・・・・・電極層 4・・・・・電解質 5・・・・・透明基板 6・・・・・基板
フロントページの続き (72)発明者 田 中 敦 福岡県北九州市若松区北湊町13番2号 触 媒化成工業株式会社若松工場内 (72)発明者 小 松 通 郎 福岡県北九州市若松区北湊町13番2号 触 媒化成工業株式会社若松工場内 Fターム(参考) 4G069 AA12 BA04A BA04B BA05B BA14A BA14B BA17 BA22A BA48A BB06A BC16A BC22A BC25A BC26A BC31A BC32A BC35A BC36A BC51A BC54A BC55A BC58A BC59A BC62A BC66A BD05A CD10 EA07 EA11 EB19 EB20 5F051 AA14 FA03 FA06 GA03 5H032 AA06 AS06 AS16 CC16 EE02 EE12 HH01 HH04

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】表面に電極層(1)を有し、かつ該電極層
    (1)表面に光増感材を吸着した金属酸化物半導体膜
    (2)が形成されてなる基板と、 表面に電極層(3)を有する基板とが、 前記電極層(1)および電極層(3)が対向するように
    配置してなり、 金属酸化物半導体膜(2)と電極層(3)との間に電解
    質層を設けてなる光電気セルにおいて、 少なくとも一方の基板および電極が透明性を有し、 金属酸化物半導体膜(2)が管状酸化チタン粒子を含ん
    でなることを特徴とする光電気セル。
  2. 【請求項2】前記管状酸化チタン粒子が、外径(Dou
    t)が5〜40nmの範囲にあり、内径(Din)が4〜
    30nmの範囲にあり、管の厚みが1〜20nmの範囲
    にあり、長さ(L)が25〜1000nmの範囲にあ
    り、この長さ(L)と前記外径(Dout)との比(L)
    /(Dout)が5〜200の範囲にあることを特徴とす
    る請求項1に記載の光電気セル。
  3. 【請求項3】前記管状酸化チタン粒子中のアルカリ金属
    含有量が500ppm以下であることを特徴とする請求
    項1または2に記載の光電気セル。
  4. 【請求項4】前記金属酸化物半導体膜(2)が、さらに
    無定型酸化チタンバインダー成分を含んでなることを特
    徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光電気セル。
  5. 【請求項5】外径(Dout)が5〜40nmの範囲にあ
    り、内径(Din)が4〜30nmの範囲にあり、管の厚
    みが1〜20nmの範囲にあり、長さ(L)が25〜1
    000nmの範囲にあり、この長さ(L)と前記外径
    (Dout)との比(L)/(Dout)が5〜200の範囲
    にある管状酸化チタン粒子を用いた光触媒。
  6. 【請求項6】前記管状酸化チタン粒子中のアルカリ金属
    含有量が500ppm以下であることを特徴とする請求
    項5に記載の光触媒。
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