JP4561073B2 - 光電変換素子および電子装置 - Google Patents

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Description

この発明は、光電変換素子および電子装置に関し、例えば、半導体微粒子からなる半導体電極を用いた太陽電池に適用して好適なものである。
従来、太陽電池としては様々な材質のものが検討されているが、シリコンを用いたものが多数市販されており、これらは大別して、単結晶シリコンまたは多結晶シリコンを用いた結晶シリコン系太陽電池と、非晶質(アモルファス)シリコン系太陽電池とに分けられる。
しかし、結晶シリコン系太陽電池では、光(太陽)エネルギーを電気エネルギーに変換する性能を表す光電変換効率が、アモルファスシリコン系太陽電池に比べて高いものの、結晶の成長に多くのエネルギーと時間とを要するため生産性が低く、コスト面で不利であった。
また、アモルファスシリコン系太陽電池は、結晶シリコン系太陽電池と比べて光吸収性が高く、基板の選択範囲が広い、大面積化が容易である等の特徴があるが、光電変換効率が結晶シリコン系太陽電池より低い。さらに、アモルファスシリコン系太陽電池は、生産性は結晶シリコン系太陽電池に比べて高いが、結晶シリコン系太陽電池と同様に、製造に真空プロセスが必要であり、設備面での負担は未だに大きい。
一方、上記のような課題を解決する方法として、有機材料を用いた太陽電池も長く検討されてきたが、多くは、光電変換効率が1%程度と低く、実用化には至らなかった。
その中で、非特許文献1で発表された色素増感型太陽電池は、現在までに10%という高い光電変換効率を実現可能であることが示されており、かつ、安価に製造することができると考えられることから注目されている。色素増感型太陽電池の一般的構造は、例えば特許文献1に記載されている。
Nature 353,737,(1991) 特開平1−220380号公報
この色素増感型太陽電池の対極(対向電極)としては、従来より、レドックス対の酸化還元過電圧が小さい白金(Pt)が主に用いられているが、カーボンを用いる方法(非特許文献2)や熱重合によって合成した導電性高分子を用いる方法(非特許文献3)も報告されている。
2002年電気化学会春季大会予稿集、井元等、3I19 2002年電気化学会秋季大会予稿集、柳田等、2E30
なお、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)からなる対極を熱重合法あるいは電気化学重合法により形成する方法が知られている(非特許文献4)。また、重合を磁界中で行う方法が知られている(非特許文献5)。
電気化学会第70回大会3P29 Journal of Electroanalytical Chemistry 507(2001)198
また、酸化チタン(TiO2 )微粒子が分散されたTiO2 ペーストの作製方法が知られている(非特許文献6)。
荒川裕則「色素増感太陽電池の最新技術」(シーエムシー) p.45-47(2001)
また、光散乱粒子の粒径について、特許文献2,3に30〜1000nm、より好ましくは100〜500nmと記載されている。
特開2001−93591号公報 特開2002−222968号公報
上述のように、色素増感型太陽電池の対極としてはPtが主に用いられているが、Pt上での電荷移動速度は必ずしも十分ではない。さらに、Ptには、資源的制約や高価であるといった問題点があるため、これを他の材料で置き換えることが望まれている。
このための手法として上記の非特許文献2,3で報告された手法があるが、カーボンや導電性高分子からなる対極は、レドックス対との間で迅速な電荷移動を実現することができるものの、黒色であり半導体層に吸収されずに対極まで到達した太陽光を吸収してしまうことから、Pt対極のように、対極による反射光を利用することができないため、増感色素の吸収端に近い、太陽光のうち比較的長波長側の光(例えば、増感色素として広く用いられているTBA719の場合、600nmより長波長側の光)を十分に利用することができず、期待されるような光電変換特性を実現することができなかった。
従って、この発明が解決しようとする課題は、太陽光の利用効率が極めて高く、良好な光電変換特性を有する光電変換素子および電子装置を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その概要について説明すると次のとおりである。
本発明者は、鋭意検討の結果、カーボン系材料や導電性高分子あるいはそれらのハイブリッド材料を用いた対極の有する、レドックス対との間で迅速な電荷移動が可能であるという特徴を生かして、良好な光電変換特性が得られる色素増感型太陽電池の実現手法として、この対極と光散乱粒子を含む半導体電極とを組み合わせるという方法を案出した。すなわち、適切な粒径の光散乱粒子を含む半導体電極を用いることによって、この半導体電極に太陽光が入射したとき、その中の光散乱粒子による光散乱により、その長波長側の光の光路長が増加するため、Pt等を対極に用いた場合の、この対極による反射光の寄与が小さくなる。このことは、反射光を利用することができない、カーボン系材料や導電性高分子あるいはそれらのハイブリッド材料を用いた対極のデメリットを大幅に低減することができることを意味し、トータルな特性として良好な光電変換特性が実現される。
この発明は、本発明者による上記の検討に基づいて案出されたものである。
すなわち、上記課題を解決するために、この発明の第1の発明は、
光散乱粒子を含む半導体電極と、
導電性高分子および/またはカーボン系材料を用いた対極とを有する
ことを特徴とする光電変換素子である。
この光電変換素子においては、典型的には、半導体電極と対極とが所定の間隔をもって互いに対向して設けられ、それらの間に電解質層が設けられる。この光電変換素子は、典型的には、色素増感型太陽電池として構成される。ただし、光電変換素子は、色素増感型太陽電池以外の太陽電池や、太陽電池以外の光電変換素子であってもよい。
半導体電極は、典型的には半導体微粒子からなる。この半導体微粒子の材料としては、シリコンに代表される元素半導体のほかに、各種の化合物半導体、酸化物半導体等を使用することができる。これらの半導体は、光励起下で伝導帯電子がキャリアーとなり、アノード電流を与えるn型半導体であることが好ましい。これらの半導体は、具体的に例示すると、TiO2 ,MgO,ZnO,WO3 ,Nb2 5 ,TiSrO3 ,SnO2 等の金属酸化物であり、これらのうち、TiO2 (特にアナターゼ型構造のもの)が特に好ましい。ただし、半導体の種類はこれらに限定されるものではなく、これらを2種類以上混合あるいは複合化して用いることもできる。
半導体電極を構成する半導体微粒子は、典型的には、互いに異なる粒径を有する光吸収粒子と光散乱粒子とからなり、通常、光散乱粒子の粒径は光吸収粒子の粒径よりも大きく選ばれる。光吸収粒子は、より多くの光を吸収するためにその表面積を大きくすることが好ましい。このため、この光吸収粒子の粒径は、一次粒子の平均粒径で1〜200nmが好ましく、より好ましくは5〜100nm、さらに好ましくは5〜30nmである。一方、光散乱粒子は、半導体電極に入射する光のうち散乱させたい波長の光、特に太陽光の比較的長波長側の光を十分に散乱させることにより光路長を増加させ、量子収率を向上させるために必要な粒径とするのが好ましい。このため、この光散乱粒子の粒径は、例えば、20〜1000nmが好ましく、より好ましくは20〜500nm、さらに好ましくは100〜500nmである。これらの光吸収粒子および光散乱粒子において、粒度分布は単一のピークを有するものであっても、2つ以上のピークやブロードな粒度分布を持つものであっても構わない。また、光散乱粒子は光吸収粒子と同一の材料からなるものであっても、光吸収粒子と異なる材料からなるものであってもよい。光散乱粒子は、例えばルチル型TiO2 などの高屈折率材料により構成することもできる。
半導体微粒子に担持させる増感色素としては、増感作用をもたらすものである限り、いかなるものを使用することもできるが、具体的には、例えば、ビピリジン、フェナントリン誘導体、ローダミンB、ローズベンガル、エオシン、エリスロシン等のキサンテン系色素、キノシアニン、クリプトシアニン等のシアニン系色素、フェノサフラニン、カブリブルー、チオシン、メチレンブルー等の塩基性染料、クロロフィル、亜鉛ポルフィリン、マグネシウムポルフィリン等のポルフィリン系化合物、アゾ染料、フタロシアニン化合物、クマリン系化合物、アントラキノン系色素、多環キノン系色素等が挙げられる。増感色素としては、ルテニウム(Ru)、亜鉛(Zn)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)といった金属と錯体を形成したものを用いてもよい。これらの中でも、Ruビピリジン錯化合物は量子収率が高く特に好ましい。増感色素としては、これらのものを2種類以上同時に用いることもできる。
上記の増感色素の半導体微粒子層への担持方法に特に制限はないが、例えば上記増感色素をアルコール類、ニトリル類、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ジメチルスルホキシド、アミド類、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、エステル類、炭酸エステル類、ケトン類、炭化水素、水等の溶媒に溶解させ、これに半導体微粒子層を浸漬し、もしくは色素溶液を半導体微粒子層に塗布する方法が一般的である。また、上記増感色素を半導体微粒子の分散されたペーストへ溶解させ、予め増感色素が担持された状態の半導体微粒子を塗布、プレス成型する方法を用いることもできる。この場合、1半導体微粒子に対する増感色素分子の吸着量は1〜100000分子であり、1〜10000分子がさらに好ましい。増感色素同士の会合を低減する目的でデオキシコール酸等のカルボン酸類を添加してもよい。また、紫外線吸収剤を併用することもできる。
対極に用いる導電性高分子としては、一般的に知られているものはおよそ使用することができ、具体的には、例えば、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリアセン、ポリアズレン、ポリインドールあるいはそれらの誘導体を用いることができるが、これらに限られるものではない。特に好適な導電性高分子として、PEDOTやポリアルキルチオフェン類等が挙げられる。
対極に導電性高分子を用いる場合、その対極を形成する方法には特に制限はないが、例えば、熱重合法あるいは電気化学重合法といった一般的に用いられる方法によって容易に形成することができる。具体的には、例えば、非特許文献4に述べられているように、ITO基板にエチレンジオキシチオフェン(EDOT)、Fe(III)p−toluenesuofonate、イミダゾールのn−BuOH溶液をスピンコートし、100℃で5分間熱重合させた後、MeOHで洗浄することによってポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)対極を得ることができる。あるいは、電解溶液としてEDOT0.02M,LiClO4 0.2Mプロピレンカーボネート(PC)溶液、対極にPt、参照極にAg/Ag+ 、作用極にITOを用い、定電流電解法によって100μA/cm2 で電解重合することによりITO上にPEDOT対極を形成することができる。
上記の電解重合には、定電流法だけでなく、定電位法、電位掃引法、パルス電流法等の一般に知られている方法を用いることもできる。また、特定のモルフォロジーを持たせるために液晶中で重合するといった手法も適宜用いることが可能である。非特許文献5に述べられているような磁界中で重合する方法を用いることも可能である。この場合、磁界の強度は、所望の目的を実現できるものであれば特に問わない。導電性高分子の重合溶媒としては、水、CH3 CN、プロピレンカーボネート等の有機溶媒のほか、高分子固体電解質やその前駆体、常温溶融塩等を、単独、あるいは混合して用いることができる。
また、導電性高分子を溶解した溶液をキャストあるいはスピンコートする方法によって対極を形成しても構わない。ポリマー溶液としては、PEDOT/PSS(ポリスチレンスルホン酸)水分散溶液等が挙げられる。
導電性高分子を用いた対極を形成する基板としては、典型的には導電性基板が用いられる。この導電性基板は、全体が導電性の単体基板であっても、導電性または非導電性の支持基板上に導電膜を形成したものであってもよい。この基板の材質は、具体的には、ITO、フッ素ドープSnO2 (FTO)、SnO2 といった透明導電材料や、金属、カーボン等の良電導性材料であれば特に問わないが、電解質溶液に対して化学的、電気化学的に安定であることが望ましい。さらに、多孔質のカーボン電極や金属担持カーボン電極、白金黒、金属微粒子、エッチングしたITO等と組み合わせるといった方法も、用いることが可能である。
対極に用いるカーボン系材料の形態は特に問わず、種々のものであってよいが、具体的には、針状炭素、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブ(カーボンナノホーンを含む)等である。これらの各種の形態のカーボンは、ポリマー化あるいは官能基の導入により、さらに良好な効果を発現する可能性がある。このカーボンの比表面積は、対極上での電荷移動速度を向上させるために大きいことが望ましく、一般的には少なくとも100m2 /g以上、好適には300m2 /g以上に選ばれる。このカーボンを用いて作製される対極の表面積は、投影面積の100倍以上であることが知られている。このカーボンの粒径は一般に100nm以下であるが、対極の成形性向上を目的として粒径がより大きいカーボンを混合することも可能である。この粒径がより大きいカーボンの粒径に特に制限はないが、例えば、対極の厚さが最大で20〜30μmである場合を考えると、最大で1〜数μm程度である。
上記のカーボン系材料には、対極上での迅速な電荷移動を実現するため、好適には金属が担持される。この金属は、例えば、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)および金(Au)からなる群より選ばれた少なくとも一種類の金属であり、これらの混合物あるいは化合物も含まれる。カーボンに金属を担持させることによってカーボン単体の場合よりも良好な電極特性を得ることができ、金属の担持量を増加させることによってより電極特性が向上するが、カーボン単体に比べて特性の改善効果を明確に得るためには、カーボンへの金属の担持量はこのカーボンに対して少なくとも5重量%(wt%)以上とすることが望ましい。一方、担持させる金属として貴金属のPtを用いる場合、低コスト化を重視する観点からは、その使用量をできるだけ抑えることが望ましいため、例えば50wt%以下とすることが望ましい。
上記のカーボン系材料は、典型的にはバインダーと複合化される。このバインダーとしては、公知の材料、例えば、各種のピッチ、ラバー、合成樹脂等を用いることができる。このバインダーは電解液に不溶であることが好ましい。このバインダーは、具体的には、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオルエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)、等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系フッ素ゴム(TFE−P系フッ素ゴム)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル系フッ素ゴム、熱可塑性フッ素ゴム(例えば、ダイキン工業製ダイエルサーモプラスチック)、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)等のセルロース類を使用することができる。これらのうち、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)は、特に溶剤によって溶解することができ、スラリーとの混合が容易である、また、光熱等に対する安定性に優れている点で好ましい。バインダーとしては上記のものを2種類以上混合して用いてもよい。
上記バインダーは通常、粉末状のバインダー材料を溶媒を用いて、溶解あるいは分散した状態で使用されるが、溶媒を用いずに粉末のまま使用される場合もある。使用する溶媒は特に限定されず、水、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、トルエン等の各種溶剤を目的に応じて選択すればよい。
バインダーの添加量は、その後の製造プロセスや使用時に必要とされる基材に対する必要な付着性が得られる限り特に制限はないが、一般的には、カーボンに対して5wt%以上、特に好ましくは15wt%以上である。バインダーが少なすぎると基材に対する接着性が不十分となり、バインダーが多すぎると電極の特性が不十分となる。
対極にカーボン系材料を用いる場合、その対極を形成する方法には特に制限はないが、以下のような方法によって容易に形成することが可能である。すなわち、例えば、Pt等の金属を担持したカーボンにNMPとPVDFとを加え、これらを均一になるまで混合し、スクリーン印刷法、ブレードコーティング法等によって、ガラス、ポリマーフィルム、金属等からなる導電性基板上に塗布し、これを加熱、減圧、あるいはその両方を用いて乾燥させ、 必要に応じてプレスすることにより、金属担持カーボンからなる対極を形成することができる。ここで、ガラス、ポリマーフィルム、金属上には、ITO,FTO等の透明導電体層、Pt,Ru,Ni等の金属層やカーボン層等が形成されていても構わず、これらが積層されていても構わない。また、プレスする際に加熱を併用しても構わない。この時の温度は、用いるPVDFのガラス転移点以上であることが望ましい。
また、バインダーとしては、セルロース、PTFE等の水溶性ポリマーを用いることもできる。この場合は、水とイソプロパノールとを徐々に加えながら、カーボンに対して50wt%のバインダーポリマーを均一になるまで混合し、スクリーン印刷法、ブレードコーティング法等によって、ガラス、ポリマーフィルム、金属等からなる導電性基板上に塗布し、これを加熱、減圧、あるいはその両方を用いて乾燥させ、 プレスすることにより対極を形成することができる。またこの場合、加熱を併用する時の温度は、用いるバインダーのガラス転移点以上であることが望ましい。
カーボン系材料を用いた対極を形成する基板としては、導電性高分子を用いた対極を形成する場合と同様な基板を用いることができる。
電解質層は、電解質中に、少なくとも1種類の可逆的に酸化/還元の状態変化を起こす物質系(酸化還元系)が溶解されたものである。酸化還元系の例としては、例えば、I−/I3 −、Br−/Br2 といったハロゲン類、キノン/ハイドロキノン、SCN−/(SCN)2 といった擬ハロゲン類、鉄(II)イオン/鉄(III)イオン、銅(I)イオン/銅(II) イオン等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
電解質は、液体電解質であってもよいし、これを高分子物質中に含有させたゲル状電解質、高分子固体電解質、無機の固体電解質等であってもよい。電解質としては、具体的には、ヨウ素(I2 )と金属ヨウ化物もしくは有機ヨウ化物との組み合わせ、臭素(Br2 )と金属臭化物あるいは有機臭化物との組み合わせのほか、フェロシアン酸塩/フェリシアン酸塩やフェロセン/フェリシニウムイオン等の金属錯体、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール/アルキルジスルフィド等のイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン/キノン等を用いることができる。上記金属化合物のカチオンとしては、Li,Na,K,Mg,Ca,Cs等、上記有機化合物のカチオンとしてはテトラアルキルアンモニウム類、ピリジニウム類、イミダゾリウム類等の4級アンモニウム化合物が好適であるが、これらに限定されるものではなく、これらを2種類以上混合して用いてもよい。この中でも、I2 とLiI、NaIやイミダゾリウムヨーダイド等の4級アンモニウム化合物を組み合わせた電解質が好適である。電解質塩の濃度は、溶媒に対して0.05M〜5Mが好ましく、さらに好ましくは0.2M〜1Mである。I2 やBr2 の濃度は0.0005M〜1Mが好ましく、さらに好ましくは0.001〜0.1Mである。また、開放電圧を向上させる目的で4−tert−ブチルピリジンやカルボン酸等の各種添加剤を加えることもできる。
電解質層の溶媒としては、例えば、アセトニトリル等のニトリル系、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等のカーボネート系、ガンマブチロラクトン、ピリジン、ジメチルアセトアミド、その他の極性溶媒、メチルプロピルイミダゾリウム−ヨウ素(DMPII)といった常温溶融塩あるいはそれらの混合物を使用することができる。より一般的には、電解質層の溶媒としては、水、アルコール類、エーテル類、エステル類、炭酸エステル類、ラクトン類、カルボン酸エステル類、リン酸トリエステル類、複素環化合物類、ニトリル類、ケトン類、アミド類、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、炭化水素等を用いることができ、これらを2種類以上混合して用いることもできる。また、溶媒としてテトラアルキル系、ピリジニウム系、イミダゾリウム系4級アンモニウム塩のイオン性液体を用いることも可能である。
また、電解質中には必要に応じて支持電解質を加えてもよい。支持電解質としては、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウムといった無機塩や、イミダゾリウム、4級アンモニウムといった溶融塩が挙げられる。
光電変換素子の製造方法は特に限定されないが、例えば電解質組成物が液状、もしくは光電変換素子内部でゲル化させることが可能であり、導入前は液状の電解質組成物の場合、半導体電極と対極とを向かい合わせ、2つの電極が接しないように半導体電極が形成されていない基板部分を封止する。このとき、半導体電極と対極との隙間の大きさに特に制限はないが、通常1〜100μmであり、より好ましくは1〜50μmである。この電極間の距離が長すぎると、導電率の低下から光電流が減少してしまう。封止方法は特に制限されないが、対光性、絶縁性、防湿性を備えた材料が好ましく、種々の溶接法、エポキシ樹脂、紫外線硬化樹脂、アクリル系接着剤、EVA(エチレンビニルアセテート) 、アイオノマー樹脂、セラミック、熱融着フィルム等を用いることができる。また、電解質組成物の溶液を注液する注入口が必要であるが、半導体電極層およびそれに対向する部分の対極上でなければ、注入口の場所は特に限定されない。注液方法に特に制限はないが、予め封止され、溶液の注入口を開けられた上記セルの内部に注液を行う方法が好ましい。この場合、注入口に溶液を数滴垂らし、毛細管現象により注液する方法が簡便である。また、必要に応じて減圧もしくは加熱下で注液の操作を行うこともできる。完全に溶液が注入された後、注入口に残った溶液を除去し、注入口を封止する。この封止方法にも特に制限はないが、必要であればガラス板やプラスチック基板を封止剤で貼り付けて封止することもできる。また、ポリマー等を用いたゲル状電解質、全固体型の電解質の場合、色素を担持した半導体電極上で電解質組成物と可塑剤を含むポリマー溶液をキャスト法により揮発除去させる。可塑剤を完全に除去した後、上記方法と同様に封止を行う。この封止は真空シーラー等を用いて、不活性ガス雰囲気下、もしくは減圧中で行うことが好ましい。封止を行った後、電解質を半導体微粒子層へ充分に含侵させるため、必要に応じて加熱、加圧の操作を行うことも可能である。
光電変換素子はその用途に応じて様々な形状で作製することが可能であり、その形状は特に限定されない。
光散乱粒子を含む半導体電極と、導電性高分子および/またはカーボン系材料を用いた対極とを組み合わせる上記の手法は、光電変換素子のみならず、およそ半導体電極とその対極とを用いる電子装置全般に適用することができるものである。
そこで、この発明の第2の発明は、
光散乱粒子を含む半導体電極と、
導電性高分子および/またはカーボン系材料を用いた対極とを有する
ことを特徴とする電子装置である。
第1の発明に関連して述べた上記のことは、その性質に反しない限り、この第2の発明にも同様に成立する。
上述のように構成されたこの発明によれば、半導体電極が光散乱粒子を含むことにより入射光、特に太陽光のうち比較的長波長側の光が効果的に散乱されて光吸収が良好に行われるとともに、対極に導電性高分子および/またはカーボン系材料を用いていることにより対極上の電荷移動速度の大幅な向上を図ることができる。
この発明によれば、太陽光の利用効率が極めて高く、良好な光電変換特性を有する色素増感型太陽電池等の光電変換素子を実現することができる。
以下、この発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1はこの発明の一実施形態による色素増感型太陽電池を示す。
図1に示すように、この色素増感型太陽電池においては、透明基板1上に透明電極2および金属酸化物半導体層3(半導体電極)が順次形成されたものと、基板4上に電極5(集電層)および対極6が順次形成されたものとが、それらの金属酸化物半導体層3および対極6が所定の間隔をもって互いに対向するように配置されており、それらの間の空間に電解質層7が設けられている。そして、これらの全体がケース8内に収納され、封止されている。ただし、ケース8内に収納する代わりに、これら全体を樹脂封止してもよい。透明電極2と対極6とは導線で互いに接続されており、アンメータ9付きの電流回路10が形成されている。この場合、透明基板1側から金属酸化物半導体層3に光があたる構造となっている。
電極5は、必要に応じて省略してもよい。また、対極6と電極5との密着性、あるいは電極5を省略する場合には対極6と基板4との密着性を向上させるために、例えばCr等からなる層をそれらの間に介在させたり、電極5あるいは基板4の表面に微細な凹凸を形成するようにしてもよい。さらに、電極5および対極6は一体に形成してもよい。電極5の材料としては、例えば、ガラス、透明導電性ガラス、金属、ポリマーフィルム等が用いられるが、これらに限られない。ただし、電極5の材料は、対極6にピンホールが存在した場合等に電解質層7と触れても反応しないものであることが望ましい。
透明基板1および基板4は、例えば、すでに挙げたものの中から必要に応じて選ぶことができ、具体的には例えばガラス基板、透明プラスチック基板等からなる。
透明電極2は透明導電性物質からなる。この透明電極2は、具体的には、例えば、最も広く知られている透明導電性物質であるITOの単独膜であっても、これにZr,Hf,Te,F等の元素をドープしたものであっても、他の透明導電性物質の膜と積層構造を形成したものであったりしてもよい。この積層構造としては、例えばITO膜間にAu,Ag,Cuといった金属の膜を積層させたものや、酸化物層間に窒化物層を積層させる構造等を用いることができるが、これらに限られるものではない。
金属酸化物半導体層3は、例えば、金属酸化物半導体微粒子が透明電極2上に焼結されてなる。この場合、この金属酸化物半導体微粒子には、光吸収粒子と、より粒径が大きい光散乱粒子とが含まれており、光吸収粒子の粒径は例えば1〜200nm、光散乱粒子の粒径は例えば20〜1000nmである。この金属酸化物半導体層3の材料としては、例えば、すでに挙げたものの中から必要に応じて選ぶことができる。
また、金属酸化物半導体層3を構成する金属酸化物半導体微粒子には増感色素(図示せず)が担持されており、この増感色素によって増感されている。この増感色素としては、例えば、すでに挙げたものの中から必要に応じて選ぶことができる。
電解質層7の電解質、酸化還元系、溶媒等としては、例えば、すでに挙げたものの中から必要に応じて選ぶことができる。また、電解質7中には、必要に応じて支持電解質を加えてもよい。この支持電解質も、例えば、すでに挙げたものの中から必要に応じて選ぶことができる。
対極6としては、導電性高分子からなるもの、あるいは、カーボン、特に金属を担持したカーボンとバインダーポリマーとからなるものが用いられる。導電性高分子としては、例えば、すでに挙げたものの中から必要に応じて選ぶことができる。また、金属を担持したカーボンの形態は、基本的にはいかなる形態であってもよいが、好適には、比表面積が大きいカーボンナノチューブ(カーボンナノホーンを含む)、針状炭素、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等である。カーボンに担持させる金属としては、Pt,Ru,Co,Ti,Ni,AlおよびAuからなる群より選ばれた少なくとも一種類の金属を使用することができ、その担持量はカーボンに対して例えば5wt%以上である。また、バインダーポリマーとしては、例えば、すでに挙げたものの中から必要に応じて選ぶことができる。また、カーボンあるいは金属担持カーボンと導電性高分子とを混合あるいは複合化して用いることもできる。
この色素増感型太陽電池の動作メカニズムは次のとおりである。
透明基板1側より入射した光が、金属酸化物半導体層3に担持された増感色素を励起し、この励起された増感色素は金属酸化物半導体層3に電子を速やかに渡す。一方、電子を失った増感色素は、キャリア移動層である電解質層7のイオンから電子を受け取る。電子を渡した分子は、再び対極6で電子を受け取る。このようにして両極間に電流が流れるようになる。上述のように、透明電極2と対極6とは電流回路10によって接続されているので、発生した電子は金属酸化物半導体層3を通じて対極6へ流れる。これによって、透明電極2と対極6との間から電気エネルギーを取り出すことができる。
以上のように、この一実施形態によれば、半導体電極として粒径が20〜1000nmの光散乱粒子を含む金属酸化物半導体層3を用いていることにより、入射光、特に太陽光のうち比較的長波長側の光が効果的に散乱されて光吸収が効率良く行われるとともに、導電性高分子、あるいは、カーボン、特に金属を担持したカーボンとバインダーポリマーとからなる対極6を用いていることにより、対極6上の電荷移動速度の大幅な向上を図ることができる。このため、光電変換特性が良好な色素増感型太陽電池を実現することができる。
〈実施例1〉
半導体微粒子としてTiO2 微粒子を用いた。TiO2 ペーストを非特許文献6を参考にして以下のように作製した。
まず、125mlのチタンイソプロポキシドを、750mlの0.1M硝酸水溶液に室温で撹拌しながらゆっくり滴下した。滴下が終了したら、この溶液を80℃の恒温槽に移し、8時間撹拌して、白濁した半透明のゾル溶液を得た。このゾル溶液を室温まで放冷し、ガラスフィルターでろ過した後、700mlにメスアップした。得られたゾル溶液をオートクレーブへ移し、220℃で12時間水熱処理を行った後、1時間超音波処理を行うことにより分散処理した。次いでこの溶液をエバポレーターにより40℃で濃縮し、TiO2 の含有量が11wt%になるように調製した。このTiO2 の粒径は10〜30nm程度、例えば20nm程度である。ここに、粒径300nmのTiO2 を上記のTiO2 に対して30wt%添加し、均一になるまで混合した。この濃縮ゾル溶液に分子量が50万のポリエチレンオキシド(PEO)を添加し、遊星ボールミルで均一に混合し、増粘したTiO2 ペーストを得た。
また、透明電極2としてFTOを用い、上記のようにして得られたTiO2 ペーストを、このFTO上にスクリーン印刷法で0.7cm×0.7cmの大きさで塗布した後、窒素雰囲気下450℃に60分間保持し、ナノポーラスTiO2 電極をFTO基板(シート抵抗15Ω/□)上に焼結した。
次いで、0.5mMのシス−ビス(イソチオシアナート)−N,N−ビス(2,2’−ジピリジル−4,4’−ジカルボン酸)−ルテニウム(II)二水和物および20mMのデオキシコール酸を溶解した脱水エタノール溶液に12時間浸漬させ、増感色素を吸着させた。この電極を4−tert−ブチルピリジンのエタノール溶液、脱水エタノールの順で洗浄し、暗所で乾燥させた。
対極6は以下の方法で作製した。
Ptを40wt%担持したカーボンに、カーボンに対して50wt%のPVDFを加え、さらに同じくカーボンに対して20倍の重量のNMPを徐々に加え、均一になるまで混合した。これをブレードコーティング法によって塗布ギャップ250μmで塗布し、160℃で8時間真空加熱することによって乾燥させた。これを120℃に加熱しながら、300kg/cm2 の圧力で3分間プレスすることによって、Pt担持カーボンとバインダーポリマーとからなる対極6を得た。
また、アセトニトリル30.5gにヨウ化リチウム(LiI)2g、1−プロピル−2.3−ジメチルイミダゾリウムヨーダイド5g、ヨウ素(I2 )0.5g、4−tert−ブチルピリジン2gを溶解させ、電解液を調製した。
上記電解液を金属酸化物半導体層3上に滴下し、シリコンゴムスペーサー(厚さ30μm)を介して上記対極6と組み合わせることにより、色素増感型太陽電池を作製した。
〈実施例2〉
Pt−Ruを重量比1:1で40wt%担持したカーボンを用い、実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を作製し、I−V特性を評価した。
〈実施例3〉
対極6を形成するためのプレスを常温で行い、実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を作製し、I−V特性を評価した。
〈実施例4〉
本実施例では、ゲル状の電解質を用いて色素増感型太陽電池を作製し、I−V特性を評価した。
ガンマブチロラクトン30.5gにヨウ化リチウム(LiI)2g、1−プロピル−2.3−ジメチルイミダゾリウムヨーダイド5g、ヨウ素(I2 )0.5g、4−tert−ブチルピリジン2gを溶解させて電解液を調製した。この電解液に希釈剤としてジメチルカーボネートを150g加え、70℃に加熱した後、分子量30万のポリ(フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン)共重合体を8g溶解させることにより、ゾル状のゲル状電解質前駆体を得た。ここで、ポリ(フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン)共重合体は、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとを95:5の比率で共重合させたものを用いた。
そして、このゾル状のゲル状電解質前駆体をブレードコーティング法により、実施例1と同様にしてSnO2 被覆ITO上に形成された、増感色素を吸着した金属酸化物半導体層3上に塗布し、50℃で5分間乾燥することによってジメチルカーボネートを除き、ゲル状電解質付き金属酸化物半導体層3を作製した。
同様に、ゾル状のゲル状電解質前駆体をブレードコーティング法により、実施例1と同様にして形成されたPt担持カーボンからなる対極6上に塗布し、50℃で5分間乾燥することによってジメチルカーボネートを除き、ゲル状電解質付き対極6を作製した。
上記のゲル状電解質付き金属酸化物半導体層3とゲル状電解質付き対極6とを用い、実施例1と同様にして、シリコンゴムスペーサーを介してこれらを組み合わせることにより、色素増感型太陽電池を作製した。
〈実施例5〉
本実施例では、導電性高分子からなる対極6を以下のようにして作製した。
EDOT0.02M、LiClO4 0.1M、PC溶液を、作用極にITO、対極にPt、参照極にAg/Ag+ を用い、0.1mA/cm2 で20分間定電流電解することによりITO上にPEDOT電極を形成した。
このPEDOT電極を対極6として用い、実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を作製し、I−V特性を評価した。
〈実施例6〉
本実施例では、導電性高分子からなる対極6を以下のようにして作製した。
ピロール0.01M、LiClO4 0.1M、PC溶液を、作用極にITO、対極にPt、参照極にAg/Ag+ を用い、0.1mA/cm2 で20分間定電流電解することによりITO上にポリピロール( PPy) 電極を形成した。
このPPy電極を対極6として用い、実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を作製し、I−V特性を評価した。
〈比較例1〉
対極6にスパッタリング法により成膜された厚さ100nmのPt膜を用い、実施例1と同様に色素増感型太陽電池を作製し、I−V特性を評価した。
〈比較例2〉
対極6にスパッタリング法により成膜された厚さ100nmのPt膜を用い、粒径300nmのTiO2 をペースト中に加えないこと以外は実施例1と同様の方法で色素増感型太陽電池を作製し、I−V特性を評価した。
〈比較例3〉
粒径300nmのTiO2 をペースト中に加えないこと以外は実施例1と同様の方法で色素増感型太陽電池を作製し、I−V特性を評価した。
〈比較例4〉
粒径300nmのTiO2 をペースト中に加えないこと以外は実施例4と同様の方法で色素増感型太陽電池を作製し、I−V特性を評価した。
〈比較例5〉
粒径300nmのTiO2 をペースト中に加えないこと以外は実施例5と同様の方法で色素増感型太陽電池を作製し、I−V特性を評価した。
〈比較例6〉
粒径300nmのTiO2 をペースト中に加えないこと以外は実施例6と同様の方法で色素増感型太陽電池を作製し、I−V特性を評価した。
I−V特性の評価
以上のようにして作製された各色素増感型太陽電池について、光電変換特性の評価を行った。
光電変換効率は、各色素増感型太陽電池における透明基板1と対極6とに、それぞれワニ口クリップを接続し、色素増感型太陽電池に光を照射して発生した電流を電流電圧測定装置にて測定した。この測定で得られた最高出力と光照射強度との比を光電変換効率とした。なお、光の照射は光源としてキセノンランプを用いて行い、色素増感型太陽電池上での光強度を100mW/cm2 とした。
光電変換特性の評価結果を表1に示す。
表1
−−−−−−−−−−−−−−−−
光電変換効率
−−−−−−−−−−−−−−−−
実施例1 6.0%
実施例2 6.0%
実施例3 5.8%
実施例4 5.9%
実施例5 6.2%
実施例6 5.0%
−−−−−−−−−−−−−−−−
比較例1 5.9%
比較例2 5.3%
比較例3 5.2%
比較例4 5.2%
比較例5 5.6%
比較例6 4.3%
−−−−−−−−−−−−−−−−
表1から明らかなように、光散乱粒子を含む金属酸化物半導体層3とPt担持カーボンあるいは導電性高分子を用いた対極6とを有する実施例1〜6の太陽電池は、比較例1〜6に比べて高い光電変換効率が得られている。
以上、この発明の一実施形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態および実施例において挙げた数値、構造、形状、材料、原料、プロセス等はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、形状、材料、原料、プロセス等を用いてもよい。
この発明の一実施形態による色素増感型太陽電池の要部の断面図である。
符号の説明
1…透明基板、2…透明電極、3…金属酸化物半導体層、4…基板、5…電極、6…対極、7…電解質層

Claims (10)

  1. 600nmより長波長側の光を散乱する光散乱粒子と、上記波長の光を吸収する光吸収粒子とが混在する半導体電極と、
    導電性高分子および/またはカーボン系材料を用いた対極とを有する光電変換素子。
  2. 上記半導体電極は互いに異なる粒径を有する光吸収粒子と上記光散乱粒子とからなる請求項1記載の光電変換素子。
  3. 上記光散乱粒子の粒径は上記光吸収粒子の粒径よりも大きい請求項2記載の光電変換素子。
  4. 上記光散乱粒子の粒径は20nm以上1000nm以下である請求項2記載の光電変換素子。
  5. 上記光散乱粒子は上記光吸収粒子と同一の材料からなる請求項2記載の光電変換素子。
  6. 上記光散乱粒子は上記光吸収粒子と異なる材料からなる請求項2記載の光電変換素子。
  7. 上記半導体電極と上記対極との間に電解質層が設けられている請求項1記載の光電変換素子。
  8. 上記光吸収粒子に増感色素が担持されている請求項2記載の光電変換素子。
  9. 色素増感型太陽電池として構成されている請求項1記載の光電変換素子。
  10. 600nmより長波長側の光を散乱する光散乱粒子と、上記波長の光を吸収する光吸収粒子とが混在する半導体電極と、
    導電性高分子および/またはカーボン系材料を用いた対極とを有する電子装置。
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