JP4507834B2 - 色素増感光電変換素子およびその製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、結晶シリコン系太陽電池では、光(太陽)エネルギーを電気エネルギーに変換する性能を表す光電変換効率が、アモルファスシリコン系太陽電池に比べて高いものの、結晶の成長に多くのエネルギーと時間とを要するため生産性が低く、コスト面で不利であった。
その中で、非特許文献1で発表された色素増感太陽電池は、現在までに10%という高い光電変換効率を実現可能であることが示されており、かつ、安価に製造することができると考えられることから注目されている。色素増感太陽電池の一般的構造は、例えば特許文献1に記載されている。
Nature 353,737,(1991)
荒川裕則「色素増感太陽電池の最新技術」(シーエムシー)p.45-47(2001)
従って、この発明が解決しようとする課題は、逆電子移動を防止しつつ、半導体電極に予め吸着させておく色素の溶出を防止することができ、光電変換効率の経時劣化を抑えることができる色素増感太陽電池等の色素増感光電変換素子およびその製造方法を提供することである。
図6は従来の色素増感太陽電池の製造工程を示す。図6を参照して、電解液封入後に、半導体電極の表面に予め吸着させていた色素が溶出するメカニズムとして本発明者らが考えたものを説明する。図6Aに示すように、透明導電性基板101上に半導体微粒子焼結体からなる半導体電極102を形成した後、この半導体電極102の表面に色素103を吸着させる。次に、図6Bに示すように、色素103が吸着した半導体電極102と対極104とを対向させ、それらの間に添加剤105を加えた電解液106を封入する。ところが、電解液106の封入後、時間の経過とともに、図6Cに示すように、電解液106中の添加剤105が半導体電極102の表面に次々と吸着する結果、色素103が半導体電極102の表面から脱離し、電解液106中に溶出してしまう。
表面に色素が吸着した半導体電極と対極との間に電解液を有する色素増感光電変換素子において、
色素の間の隙間の部分の半導体電極の表面に添加剤が吸着しており、かつ電解液に添加剤が含まれていない
ことを特徴とするものである。
表面に色素が吸着した半導体電極を添加剤を含む溶液に浸漬することにより色素の間の隙間の部分の半導体電極の表面に添加剤を吸着させる工程と、
色素および添加剤が吸着した半導体電極と対極との間に添加剤を含まない電解液を封入する工程とを有する
ことを特徴とする色素増感光電変換素子の製造方法である。
半導体電極は、典型的には、半導体微粒子接合体からなる。ここで、半導体微粒子接合体とは、半導体微粒子焼結体のほか、マイクロ波等の電磁波の照射によって作製された半導体微粒子集合体、静電相互作用による半導体微粒子集合体、あるいはバインダーポリマーやろう材等の結着剤を介して形成される半導体微粒子集合体等を指すが、これらに限られるものではない。半導体電極の厚さや表面粗さに特に制限はない。
半導体電極または半導体微粒子接合体は、典型的には透明導電性基板上に設けられる。この透明導電性基板は、導電性または非導電性の透明支持基板上に透明導電膜を形成したものであっても全体が導電性の透明基板であっても良い。この透明支持基板の材質は特に制限されず、透明であれば種々の基材を用いることができる。この透明支持基板は、色素増感光電変換素子外部から侵入する水分やガスの遮断性、耐溶剤性、耐候性等に優れているものが好ましく、具体的には、石英、ガラス等の透明無機基板、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフッ化ビニリデン、テトラアセチルセルロース、ブロム化フェノキシ、アラミド類、ポリイミド類、ポリスチレン類、ポリアリレート類、ポリスルフォン類、ポリオレフィン類等の透明プラスチック基板が挙げられるが、これらに限定されるものではない。この透明支持基板としては、加工性、軽量性等を考慮すると透明プラスチック基板を用いるのが好ましい。また、この透明支持基板の厚さは特に制限されず、光の透過率、色素増感光電変換素子内部と外部との遮断性等によって自由に選択することができる。
バインダーの添加量は、その後の製造プロセスや使用時に必要とされる基材に対する必要な付着性が得られる限り特に制限はないが、一般的には、カーボンに対して5wt%以上、特に好ましくは15wt%以上である。バインダーが少なすぎると基材に対する接着性が不十分となり、バインダーが多すぎると電極の特性が不十分となる。
カーボン系材料を用いた対極を形成する基板としては、導電性高分子を用いた対極を形成する場合と同様な基板を用いることができる。
導電性高分子を用いた対極を形成する基板としては、典型的には導電性基板が用いられる。この導電性基板は、全体が導電性の単体基板であっても、導電性または非導電性の支持基板上に導電膜を形成したものであってもよい。この基板の材質は、具体的には、ITO、フッ素ドープSnO2 (FTO)、SnO2 といった透明導電材料や、金属、カーボン等の良電導性材料であれば特に問わないが、電解質溶液に対して化学的、電気化学的に安定であることが望ましい。さらに、多孔質のカーボン電極や金属担持カーボン電極、白金黒、金属微粒子、エッチングしたITO等と組み合わせるといった方法も、用いることが可能である。
電解液は、例えば、ヨウ素−ヨウ素塩(ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム等)等をアセトニトリル、炭酸プロピレン、メトキシプロピオニトリル等の溶媒に溶解させたものを用いることができる。
色素増感光電変換素子はその用途に応じて様々な形状で作製することが可能であり、その形状は特に限定されない。
図1はこの発明の一実施形態による色素増感太陽電池を示す。
図1に示すように、この色素増感太陽電池においては、透明導電性基板1上にTiO2 、ZnO2 等の半導体微粒子焼結体層からなる半導体電極2を形成し、その表面に色素を吸着させたものと、基板3上に対極4を形成したものとが、それらの半導体電極2および対極4が所定の間隔をもって互いに対向するように配置され、それらの間の空間に電解液5が封入され、これらの全体がケース6内に収納されて封止されている。ただし、ケース6内に収納する代わりにこれら全体を樹脂封止してもよい。透明導電性基板1と対極4とは導線で互いに接続されており、アンメータ7付きの電流回路8が形成されている。この場合、透明導電性基板1側から半導体電極2に光があたる構造となっている。
対極4と基板3との密着性を向上させるために、例えばCr等からなる層をそれらの間に介在させたり、基板3の表面に微細な凹凸を形成するようにしてもよい。
電解液5の電解質、溶媒等としては、例えば、すでに挙げたものの中から必要に応じて選ぶことができる。また、電解液5中には、必要に応じて支持電解質を加えてもよい。
まず、透明導電性基板1上に半導体微粒子が分散されたペーストを所定のギャップ(厚さ)に塗布する。次に、この透明導電性基板1を所定温度に加熱して半導体微粒子を焼結し、半導体微粒子焼結体からなる半導体電極2を形成する。
次に、図3Bに示すように、容器11内に、添加剤10を溶媒に溶かした溶液12を入れておき、この溶液12中に半導体電極2が形成された透明導電性基板1を浸漬し、さらに容器11に蓋13をし、半導体電極2の表面に添加剤10を吸着させる。
一方、基板3上に対極4を形成したものを別途用意する。そして、図3Dに示すように、上記の透明導電性基板1とこの基板3とを、それらの半導体電極2および対極4が所定の間隔、例えば1〜100μm、好ましくは1〜50μmの間隔をおいて互いに対向するように配置するとともに、所定の封止部材を用いて電解液5が封入される空間を作り、この空間に予め形成された注液口から電解液5を注入する。その後、この注液口を塞ぐ。これによって、色素増感太陽電池が製造される。
透明導電性基板1側より入射した光が、半導体電極2に吸着された色素9を励起し、この励起された色素9は半導体電極2に電子を速やかに渡す。一方、電子を失った色素9は、キャリア移動層である電解液5のイオンから電子を受け取る。電子を渡した分子は、再び対極4で電子を受け取る。このようにして両極間に電流が流れるようになる。上述のように、透明導電性基板1と対極4とは電流回路8によって接続されているので、発生した電子は半導体電極2を通じて対極4へ流れる。これによって、透明導電性基板1と対極4との間から電気エネルギーを取り出すことができる。
半導体微粒子としてアナターゼTiO2 微粒子を用いた。TiO2 ペーストを非特許文献2を参考にして以下のように作製した。
まず、平均1次粒径15nmのアナターゼTiO2 が15wt%、ポリエチレングリコール(PEG)(分子量=500000)が5wt%、水が80wt%となるように混合し、これを遊星ボールミルを用いて混合することにより、均一なTiO2 ペーストを得た。
次に、このTiO2 ペーストが塗布されたFTO基板を、電気炉において450℃で30分間加熱焼成し、TiO2 からなる半導体微粒子接合体層を形成し、半導体電極2とした。この後、この半導体電極2に紫外光を照射してTiO2 の光触媒効果により残留有機物を除去した。
次に、添加剤の入っていない電解液、具体的には、ヨウ化ナトリウム0.1M、DMP II 0.6M、ヨウ素0.05Mのメトキシアセトニトリル溶液からなる電解液5を調製した。
次に、半導体電極2と対極4とを対向させ、半導体電極2が形成されていない基板部分を封止し、半導体電極2と対極4との間の空間に上記電解液5を注入することにより、色素増感太陽電池を作製した。
例えば、上述の実施形態および実施例において挙げた数値、構造、形状、材料、原料、プロセス等はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、形状、材料、原料、プロセス等を用いてもよい。
Claims (6)
- 表面に色素が吸着した半導体電極と対極との間に電解液を有し、
上記色素の間の隙間の部分の上記半導体電極の表面に上記半導体電極の表面の露出を抑える添加剤が吸着しており、かつ上記電解液には上記添加剤が含まれていない色素増感光電変換素子。 - 上記半導体電極が半導体微粒子接合体からなる請求項1記載の色素増感光電変換素子。
- 上記色素増感光電変換素子が色素増感太陽電池である請求項1記載の色素増感光電変換素子。
- 表面に色素が吸着した半導体電極を上記半導体電極の表面の露出を抑える添加剤を含む溶液に浸漬することにより上記色素の間の隙間の部分の上記半導体電極の表面に上記添加剤を吸着させる工程と、
上記色素および上記添加剤が吸着した上記半導体電極と対極との間に上記添加剤を含まない電解液を封入する工程とを有する色素増感光電変換素子の製造方法。 - 上記半導体電極が半導体微粒子接合体からなる請求項4記載の色素増感光電変換素子の製造方法。
- 上記色素増感光電変換素子が色素増感太陽電池である請求項4記載の色素増感光電変換素子の製造方法。
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