JP2007128757A - 色素増感太陽電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】温度変化に伴う膨張と収縮等による電解質層と対極界面の剥離を防ぎ、光電変換効率および高温耐久性に優れた色素増感太陽電池を提供する。
【解決手段】対向電極と電解質層との間の触媒層兼剥離防止層として、一般式(1)で表されるチオフェンもしくはチオフェン誘導体の重合体、又はこれらの群から選ばれる少なくとも1種をモノマー成分とする共重合体からなる多孔質導電性高分子層を有する。
Figure 2007128757

(式中、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、シアノ基、チオシアノ基、ハロゲン基、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基、又はホスホニウム基を示す。)
【選択図】なし

Description

本発明は、色素増感太陽電池に関するものであり、詳しくはゲル電解質および固体電解質を用いた色素増感太陽電池に関する。
近年、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換素子として、種々の太陽電池が提案されている。その中で、1991年にスイスのローザンヌ大学のグレッツェルらによって「Nature」1991,353,p737〜740等で発表された色素増感太陽電池は、使用する材料が安価であること、比較的シンプルなプロセスで製造できること等の利点からその実用化が期待されている。
色素増感太陽電池は、一般に導電性基材上に色素を吸着した半導体からなる光電変換層を持つ半導体電極と、該半導体電極に対向して設けられた導電性基材上に触媒層を設けた対向電極と、これら半導体電極と対向電極との間に保持された電解質層(電荷輸送層)から構成されている。
一般的に色素増感太陽電池の電解質にはヨウ素系酸化還元対を溶媒に溶かしたものを使用しているが、液体であるために電解液の漏洩、揮発などによる耐久性低下が問題となっている。それに対し、電解質をゲル状または固体状の電解質で形成することが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
しかしながら、このような従来のゲル状または固体状の電解質を用いた色素増感太陽電池の場合、加熱と冷却の繰り返し等による電解質層の膨張と収縮、あるいは電解液のゲル化にともなう電解質層の容積変化により、対向電極と電解液層の剥離が起こり、その結果、高温耐久性が低下するという問題があった。
特許文献4には、対向電極にカーボンペーストやPt等の導電性樹脂を使用し、さらに作用電極層、ゲル電解質層、対向電極層とを積層して順次組み上げる工程を有する光電変換素子の製造方法が開示されている。この方法によると、ゲル化による電解質の容積変化や形状変化による対向電極面と電解質との密着性低下を防ぐ事ができると記載されている。
特開2002−289271号公報 特開2002−289272号公報 特開2002−289273号公報 特開2003−157914号公報
しかしながら、特許文献4に記載の導電性樹脂を対向電極に用いた太陽電池においては、素子の組み立て、すなわちゲル化に伴う対向電極と電解質層との界面剥離は防止できるものの、実使用時の素子の温度変化に伴う界面剥離に関しては記述がない。特に、太陽電池の実使用では、例えばアモルファスシリコン太陽電池の場合、JIS規格(JIS C 8938)では85±2℃×1000±12時間、EU規格では80℃×1000時間の熱耐久性が求められている。よって、色素増感太陽電池の場合においても、少なくとも80℃までの耐熱性が求められるが、特許文献4では80℃以上の高温条件における耐久性の記述がなく、また実施例においても30℃での耐久性評価を実施しているのみである。よって当特許文献4は擬固体太陽電池素子における高温耐久性を改善するものではなく、高温条件で高い耐久性を有する色素増感太陽電池が求められている。
本発明は上記した実情に鑑み、温度変化による電解質層と対向電極界面との剥離を防ぎ、光電変換効率および高温耐久性に優れた色素増感太陽電池を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、ゲル電解質もしくは固体電解質を有する色素増感太陽電池において、対向電極上に対向電極と電解質層との触媒層兼剥離防止層として、特定のチオフェン誘導体の重合体からなる導電性高分子層を設けることで、高い素子性能を保持したまま、素子の加熱による界面剥離および耐久性低下を防ぐことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の色素増感太陽電池は、電極基体上に、光増感作用を有する色素を含む光透過性の半導体電極と、酸化還元対となる化学種を含むゲル状もしくは固体状の電解質層とを有する色素増感太陽電池において、前記電解質層を介して前記半導体電極に対向配置される対向電極を有し、前記対向電極と電解質層との間の触媒層兼剥離防止層として、下記一般式(1)で表されるチオフェンもしくはチオフェン誘導体の重合体、又は前記チオフェン及びチオフェン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種をモノマー成分とする共重合体からなる多孔質導電性高分子層を有することを特徴とするものである。
Figure 2007128757
(式(1)中、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、シアノ基、チオシアノ基、ハロゲン基、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基、又はホスホニウム基を示し、RとRは連結して環を形成していてもよい。)
本発明に係る色素増感太陽電池において、前記触媒層兼剥離防止層として、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)からなる導電性高分子で構成されていることが好ましい。
また、本発明に係る色素増感太陽電池において、前記チオフェン誘導体からなる導電性高分子層がイソシアネート基と化学結合を形成できる官能基を有することが好ましい。
また、本発明に係る色素増感太陽電池において、前記多孔質導電性高分子層を形成する基板として、実表面積/投影面積比が10以上である表面凹凸が大きい基体から構成されていることが好ましい。
本発明の触媒層兼剥離防止層を擬固体型もしくは固体型色素増感太陽電池に備えることにより、優れた光電変換効率を有するとともに、その性能を低下させることなく、素子の高温耐久性を向上させることが出来る。
本発明の剥離防止層により素子の高温耐久性を向上させることができる理由としては次のようなことが考えられる。
上記の剥離防止層は多孔質の導電性高分子から構成されており、これを擬固体型もしくは固体型太陽電池素子に使用した場合、剥離防止層の多孔質内部まで電解質層が侵入することができ、その結果、物理的なアンカー効果により層間の剥離を抑制することができる。また、電解質層と触媒層兼剥離防止層との接触界面が増加するため、仮に剥離が起こったとしてもその影響を低減させることが出来る。
さらに、ゲルポリマーが例えば特許文献1、2、3に開示されているような、イソシアネート基を有する化合物と、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等の官能基を有する化合物を架橋してなる網目構造体から構成される場合、上記のイソシアネート基と化学結合を形成できる官能基を有する導電性高分子を使用することにより、化学結合により電解質層と対向電極層を連結させることができる。その結果さらに界面剥離を抑制することが出来、それに伴い熱耐久性を向上させることが出来る。
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面をもとに詳細に説明する。
図1は、本発明の色素増感太陽電池10の一例を表す模式断面図である。図1において、符号1は透明基体、符号2は透明導電膜、符号3は多孔質金属酸化物半導体層、符号4は増感色素、符号5は電解質層、符号6は触媒層兼剥離防止層、符号7は符号6を担持する電極基材、符号8は電極基体、符号9は対向電極をそれぞれ示す。
透明基体1とその上に形成された透明導電膜2からなる電極基体8の表面に、多孔質金属酸化物半導体層3が形成され、さらに該多孔質金属酸化物半導体層3の表面には、増感色素4が吸着されている。そして、電解質層5を介して、電極基材7の表面に本発明の触媒層兼剥離防止層6が形成された対向電極9が対向して配置され、色素増感太陽電池10を形成している。
以下、本発明の色素増感太陽電池(以下、太陽電池と略記することがある)10の各構成材料について、好適な形態を説明する。
[透明基体]
電極基体8を構成する透明基体1は、可視光を透過するものが使用でき、透明なガラスが好適に使用できる。また、ガラス表面を加工して入射光を散乱させるようにしたものも使用できる。また、ガラスに限らず、光を透過するものであればプラスチック板やプラスチックフィルム等の使用できる。透明基体1の厚さは、太陽電池の形状や使用条件により異なるため特に限定はされないが、例えばガラスやプラスチックなどを用いた場合では、実使用時の耐久性を考慮して1mm〜1cm程度が好ましく、フレキシブル性が必要とされるプラスチックフィルムなどを使用した場合は、1μm〜1mm程度が好ましい。
[透明導電膜]
透明導電膜2としては、可視光を透過して、かつ導電性を有するものが使用できる。このような材料としては、例えば金属酸化物が挙げられる。特に限定はされないが、例えばフッ素をドープした酸化スズ(以下、「FTO」と略記する。)や、酸化インジウム、酸化スズと酸化インジウムの混合体(以下、「ITO」と略記する。)アンチモンをドープした酸化スズ、酸化亜鉛などが好適に用いることができる。
また、分散させるなどの処理により可視光が透過すれば、不透明な導電性材料を用いることもできる。このような材料としては炭素材料や金属が挙げられる。炭素材料としては、特に限定はされないが、例えば黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック、グラッシーカーボン、カーボンナノチューブやフラーレンなどが挙げられる。また、金属としては、特に限定はされないが、例えば白金、金、銀、ルテニウム、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、クロム、鉄、モリブデン、チタン、タンタル、およびそれらの合金などが挙げられる。
したがって、透明導電膜2としては、上述の導電性材料のうち少なくとも1種類以上からなる導電材料を、透明基体1の表面に設けて形成することができる。あるいは透明基体1を構成する材料の中へ上記導電性材料を組み込んで、透明基体1と透明導電膜2を一体化して電極基体8とすることも可能である。
透明基体1上に透明導電膜2を形成する方法として、金属酸化物を使用する場合は、ゾルゲル法などの液層法や、スパッタやCVDなどの気相法、分散ペーストのコーティングなどがある。また、不透明な導電性材料を使用する場合は、紛体などを、透明なバインダーなどとともに固着させる方法が挙げられる。
透明基体1と透明導電膜2とを一体化させるには、透明基体1の成型時に導電性のフィラーとして上記導電膜材料を混合させるなどがある。
透明導電膜2の厚さは、用いる材料により導電性が異なるため特には限定されないが、一般的に使用されるFTO被膜付ガラスでは、0.01〜5μmであり、好ましくは0.1〜1μmである。また、必要とされる導電性は、使用する電極の面積により異なり、広い電極ほど低抵抗であることが求められるが、一般的に100Ω/□以下、好ましくは10Ω/□以下、より好ましくは5Ω/□以下である。
透明基体1及び透明導電膜2から構成される電極基体8、又は透明基体1と透明導電膜2とを一体化した電極基体8の厚さは、上述のように色素増感太陽電池10の形状や使用条件により異なるため特に限定はされないが、一般的に1μm〜1cm程度である。
[多孔質金属酸化物半導体]
多孔質金属酸化物半導体3としては、特に限定はされないが、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズなどが挙げられ、特に二酸化チタン、さらにはアナターゼ型二酸化チタンが好適である。また、電気抵抗値を下げるため、金属酸化物の粒界は少ないことが望ましい。また、増感色素をより多く吸着させるために、当該半導体層は比表面積の大きなものが望ましく、具体的には10〜200m/gが望ましい。また、増感色素の光吸収量を増加させるため、使用する酸化物の粒径に幅を持たせて光を散乱させることが望ましい。
このような多孔質金属酸化物半導体3は、特に限定されず既知の方法で透明導電膜2上に設けることができる。例えば、ゾルゲル法や、分散体ペーストの塗布、また、電析や電着させる方法がある。
このような半導体層3の厚さは、用いる酸化物により最適値が異なるため特には限定されないが、0.1〜50μm、好ましくは5〜30μmである。
[増感色素]
増感色素4としては、太陽光により励起されて前記金属酸化物半導体層3に電子注入できるものであればよく、一般的に色素増感太陽電池に用いられている色素を用いることができるが、変換効率を向上させるためには、その吸収スペクトルが太陽光スペクトルと広波長域で重なっていて、耐光性が高いことが望ましい。特に限定はされないが、ルテニウム錯体、特にルテニウムポリピリジン系錯体が望ましく、さらに望ましいのは、Ru(L)2(X)2で表されるルテニウム錯体が望ましい。ここでLは4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン、もしくはその4級アンモニウム塩、およびカルボキシル基が導入されたポリピリジン系配位子であり、また、XはSCN、Cl、CNである。例えばビス(4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン)ジイソチオシアネートルテニウム錯体などが挙げられる。
他の色素としては、ルテニウム以外の金属錯体色素、例えば鉄錯体、銅錯体などが挙げられる。さらに、シアン系色素、ポルフィリン系色素、ポリエン系色素、クマリン系色素、シアニン系色素、スクアリン酸系色素、スチリル系色素、エオシン系色素などの有機色素が挙げられる。これらの色素には、該金属酸化物半導体層への電子注入効率を向上させるため、該金属酸化物半導体層との結合基を有していることが望ましい。該結合基としては、特に限定はされないが、カルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシル基などが望ましい。
多孔質金属酸化物半導体3へ増感色素4を吸着させる方法は、特には限定されるものではなく、例としては室温条件、大気圧下において、色素を溶解させた溶液中に前記多孔質金属酸化物半導体3を形成させた電極基体8を浸漬する方法が挙げられる。浸漬時間は使用する半導体、色素、溶媒の種類、色素の濃度により、半導体層に均一に色素の単分子膜が形成されるよう、適宜調節することが好ましい。なお、吸着を効果的に行うには加熱下での浸漬を行えばよい。
増感色素4を溶解するために用いる溶媒の例としては、エタノールなどのアルコール類、アセトニトリルなどの窒素化合物、アセトンなどのケトン類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、クロロホルムなどのハロゲン化脂肪族炭化水素、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素,ベンゼンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチルなどのエステル類などが上げられる。溶液中の色素濃度は,使用する色素及び溶媒の種類により適宜調整することができ、半導体表面に十分吸着させるためには、ある程度高濃度である方が望ましい。例えば、4×10−5mol/L以上の濃度が望ましい。
[電解質層]
電解質層5は、本発明においては、ポリオキシアルキレン鎖を持つ化合物でゲル化又は固体化されたアルキレンオキサイド系のゲル状又は固体状電解質からなる。
ここで、ゲル状電解質とは、ゲル化剤が架橋反応することで形成された網目構造体に、酸化還元対及びこれを溶解可能な溶媒が保持されているものであり、例えば,酸化還元対及びこれを溶解可能な溶媒を含む電解液を、上記化合物を含むゲル化剤を用いてゲル化させることにより得られる。また、溶媒とゲル化剤を含有する溶媒溶液をゲル化させた後、酸化還元対を含む最終組成の電解液中で液交換することにより、同様のゲル状電解質を得ることも出来る。
また、固体状電解質とは、上記化合物を含む固体化剤に酸化還元対を溶解させたものを架橋反応させることで得られるものであり、固体化剤が架橋反応することで形成された網目構造体に上記酸化還元対が保持されてなる高分子固体電解質である。
上記のゲル化剤又は固体化剤としては、ポリオキシアルキレン鎖を持つ化合物を含み、電解質をゲル化又は固体化できるものであれば特に限定されず、通常はポリオキシアルキレン鎖を持つポリマー前駆体(ポリマーゲル化剤)が用いられる。例えば、(1)特開平5−109311号公報や特開平11−176452号公報に開示された、三官能性末端アクリロイル変性アルキレンオキサイド重合体や、四官能性末端アクリロイル変性アルキレンオキサイド重合体などのアルキレンオキサイド重合体鎖を有するアクリロイル変性高分子化合物が挙げられる。また、(2)少なくとも一種類のイソシアネート基を有する化合物Aと、少なくとも一種のイソシアネート基と反応性のある化合物Bとを含み、化合物Aと化合物Bのうち少なくとも一種類がポリオキシアルキレン鎖を持つものが挙げられる(上記特許文献1〜3参照)。前記ポリオキシアルキレン鎖を持つ化合物としては、分子量500〜50,000の高分子構造を有する化合物が好適に用いられる。
上記(1)の三官能性もしくは四官能性末端アクリロイル変性アルキレンオキサイド重合体は、例えば、三官能性の場合はグリセロールやトリメチロールプロパン等を、
四官能性の場合にはジグリセリンやペンタエリスリトール等を、それぞれ出発物質として、これらにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加させ、さらにアクリル酸、メタクリル酸などの不飽和有機酸をエステル化反応させるか、またはアクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド等の酸クロリド類を脱塩酸反応させることによって得られる化合物である。
上記(2)の化合物Aとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族イソシアネートが挙げられ、これらの二量体、三量体などの多量体又は変性体であってもよい。また、低分子アルコールとこれらイソシアネートのアダクト体、さらには、ポリオキシアルキレンとこれらイソシアネートをあらかじめ負荷反応させた化合物が挙げられる。
化合物Bとしては、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基などの活性水素基を有する化合物が挙げられ、より具体的には、カルボキシル基を有する化合物としては、ヘキサン酸、アジピン酸、フタル酸、アゼライン酸などのカルボン酸;ヒドロキシル基を有する化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ショ糖などのアルコール;アミノ基を有する化合物としては、エチレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、ジエチレントリアミンなどのアミンなどがそれぞれ挙げられる。また、化合物Bとしては、上記のような活性水素基を一分子中に一つ以上有し、かつポリオキシアルキレン鎖を有する化合物も挙げられる。
電解質層5を構成する酸化還元対としては、一般に電池や太陽電池などにおいて使用することの出来るものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ハロゲン二原子分子とハロゲン化物塩との組み合わせ、チオシアン酸アニオンとチオシアン酸二分子の組み合わせ、ポリピリジルコバルト錯体、やハイドロキノンなどの有機レドックスが挙げられる。この中では特にヨウ素分子とヨウ化物との組み合わせが好適である。酸化還元対の濃度は通常0.1〜10mol/Lであり、より好ましくは0.1〜5mol/Lである。
電解質に用いる溶媒としては、酸化還元対を溶解できる化合物であれば特に制限はなく、非水性有機溶媒、常温溶融塩、水やプロトン性有機溶媒などから任意に選択できる。例えば有機溶媒として、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、バレロニトリル、メトキシプロピオニトリルなどのニトリル化合物、γ−ブチルラクトンやバレロラクトンなどのラクトン化合物、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物、ジオキサンやジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテルなどのエーテル類、メタノール、エタノール等のアルコール類、さらにはジメチルホルムアミドやイミダゾール類などが挙げられ、中でもアセトニトリル、バレロニトリル、メトキシプロピオニトリル、プロピレンカーボネートなどを好適に用いることができる。なお、これらはそれぞれ単独で、又は2種以上混合して用いることが出来る。
また、上記溶媒としては、イオン性液体、すなわち溶融塩を使用することも出来る。イオン性液体としては、「Inorg.Chem」1996,35,p1168〜1178,「Electrochemistry」2002,2,p130〜136、特表平9−507334号公報、特開平8−259543号公報などに開示されている公知の電池や太陽電池などにおいて、一般的に使用することが出来るものであれば特に限定されないが、室温(25℃)より低い融点を有する塩か、または室温よりも高い融点を有しても、他の溶融塩や溶融塩以外の添加物を溶解させることにより室温で液状化する塩が好ましく用いられる。
具体的には、溶融塩のカチオンとしては、アンモニウム、イミダゾリウム、オキサゾリウム、チアゾリウム、オキサジアゾリウム、トリアゾリウム、ピロリジニウム、ピリジニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、トリアジニウム、ホスホニウム、スルホニウム、カルバゾリウム、インドリウム及びこれらの誘導体が好ましく、特にアンモニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、スルホニウムが好適である。
また、溶融塩のアニオンとしては、AlCl 、AlCl などの金属塩化物、PF 、BF 、CFSO 、N(CFSO 、F(HF)n、CFCOOなどのフッ素含有物、NO3 、CHCOO、C11COO、CHOSO 、CHOS 、CHSO 、CHSO 、(CHO)PO 、SCNなどの非フッ素化合物、ヨウ素、臭素などのハロゲン化物などが挙げられる。
電解質層5にはさらに支持電解質として、リチウム塩やイミダゾリウム塩、4級アンモニウム塩など、添加剤として、t−ブチルピリジン、n−メチルイミダゾールなどの塩基やグアニジウムチオシアネート等のチオシアネート類、水等を添加することが出来る。これらの添加剤濃度はそれぞれ用いる溶媒、半導体電極および色素などにより最適な濃度が異なるため、特には限定されないが、1〜5mol/L程度が好適である。
[対向電極]
対向電極9は、電極基材7の表面に本発明の触媒層兼剥離防止層6が形成された構造をしている。該電極基材7は、触媒層兼剥離防止層6の支持体兼集電体として用いられるため、また、該対向電極基体表面に触媒層兼剥離防止層6として多孔質導電性高分子層を電気化学的に重合させる場合には、少なくとも導電性高分子層を形成させる表面部分は導電性を有していなければならない。
このような材質としては、例えば導電性を有する金属や金属酸化物、炭素材料や導電性高分子などが好適に用いられる。金属としては、例えば白金、金、銀、ルテニウム、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、クロム、鉄、モリブデン、チタン、タンタル、およびそれらの合金などが挙げられる。炭素材料としては、特に限定はされないが、例えば黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック、グラッシーカーボン、カーボンナノチューブ、フラーレンなどが挙げられる。また、FTO、ITO、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化アンチモンなどの金属酸化物を用いた場合、透明または半透明であるため増感色素層への入射光量を増加させることができ、好適に用いることができる。
また、少なくとも電極基材7の表面が導電性を有するように処理すれば、例えばガラスやプラスチックなどの絶縁体を用いても構わない。このような絶縁体に導電性を保持させる処理方法としては、上記の導電性材料にて、該絶縁性材料表面の一部もしくは全面を被覆する方法、例えば金属を用いる場合、メッキや電析などの溶液法、また、スパッタ法や真空蒸着等の気相法が挙げられ、金属酸化物を用いる場合はゾルゲル法などが用いることができる。また、上記導電性材料の粉末などを一種もしくは複数用いて絶縁性材料と混和させるなどの方法が挙げられる。
さらに、本発明では電極基材7として絶縁性材料を用いた場合でも、該基体上に直接導電性高分子層を触媒層兼剥離防止層として設けることができ、その場合、該導電性高分子層が単独で集電体と触媒層兼剥離防止層との双方の機能を果たすことになる。
また、電極基材7の形状は、色素増感太陽電池10の形状に応じて変更することができるため特には限定されず、板状としてもフィルム状で湾曲できるものでも構わない。さらに、該電極基体は透明でも不透明でも構わないが、増感色素層への入射光量を増加させることができるため、また、場合によっては意匠性が向上できるため透明または半透明であることが望ましい。
電極基材7としては、一般的には、FTO被膜付ガラスやITO膜付PET、ITO膜付PENフィルムが用いられているが、用いる材料により導電性が異なるため、導電層の厚さについて特には限定されない。例えば、FTO被膜付ガラスでは、0.01〜5μmであり、好ましくは0.1〜1μmである。また、必要とされる導電性は、使用する電極の面積により異なり、広い電極ほど低抵抗であることが求められるが、一般的に100Ω/□以下、好ましくは10Ω/□以下、より好ましくは5Ω/□以下である。
電極基材7の厚さは、上述のように太陽電池10の形状や使用条件により異なるため特に限定はされないが、一般的に1μm〜1cm程度である。
また、前記多孔質導電性高分子層を形成する基体として、特に表面に凹凸の大きい基体を好適に用いることが出来る。表面粗さの程度は、実表面積/投影面積比が10以上であるのが好ましく、より好ましくは20以上である。表面凹凸を大きくする方法は、既知の方法であれば特に限定されないが、例として、対向電極9のFTOやITO導電性膜の王水等による化学処理、やすりなどによる機械的処理等があげられる。また、FTOやITO導電性膜の形成条件を調節することにより表面凹凸を大きくすることもできる。さらに、すりガラスのような表面凹凸の大きい基体に導電性膜を被膜する方法も挙げられる。なお、実表面積/投影面積比は触針式三次元表面粗さ測定装置を用いて一定の投影面積を有する基板の実表面積を測定し、その比より算出した。
[剥離防止層・導電性高分子層]
本発明の触媒層兼剥離防止層6に用いる多孔質導電性高分子層としては、チオフェンもしくはチオフェン誘導体の重合物、もしくはチオフェン及びチオフェン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種をモノマー成分とする共重合体が適当である。
該チオフェン誘導体を用いるに当たっては、重合した高分子が導電性を有していれば特に限定されないが、あるチオフェン誘導体単独での高分子膜が導電性を有さずとも、チオフェンもしくは、他のチオフェン誘導体との共重合体とすることで導電性を有していればかまわない。
触媒層兼剥離防止層6で用いる重合体のモノマー成分として、2種以上のチオフェン誘導体を使用してもよい。
使用するモノマーの具体例として、下記一般式(1)で示されるチオフェン化合物が挙げられる。
Figure 2007128757
(式(1)中、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基又はアルコキシ基、炭素原子数6〜12のアリール基、シアノ基、チオシアノ基、ハロゲン基、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基、又はホスホニウム基を示し、RとRは連結して環を形成していてもよい。)
中でも、チオフェン、テトラデシルチオフェン、イソチアナフテン、3−フェニルチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェンなどが好ましく使用でき、特に3,4−エチレンジオキシチオフェンを好ましく使用することができる。
さらに、その中でも上記チオフェン誘導体の置換基として、イソシアネート基と化学結合を形成できる官能基、例えばヒドロキシル基、カルボキシル基またはアミノ基を有する導電性高分子で構成されていることが特に好ましい。具体例としては、ヒドロキシメチル−3,4−エチレンジオキシチオフェン、ヒドロキシ−3,4−プロピレンジオキシチオフェン、アミノメチル−3,4−エチレンジオキシチオフェン、アミノ−3,4−プロピレンジオキシチオフェン等が挙げられる。なお、官能基を含む導電性高分子の作成法として、上記の方法のほか、導電性高分子層を作製した後、化学処理により官能基を形成させる方法もとることが出来る。
多孔質導電性高分子層を形成するのに用いるモノマーは、重合した膜としての電導度が10−9S/cm以上を示すものが望ましい。
また、多孔質導電性高分子層には、電導度を向上させるためにドーパントを添加することが望ましい。このドーパントとしては、特に限定はされず、公知の材料が使用できる。ドーパントの具体例として、ヨウ素、臭素、塩素等のハロゲンアニオン、ヘキサフロロリン、ヘキサフロロヒ素、ヘキサフロロアンチモン、テトラフロロホウ素、過塩素酸等のハロゲン化物アニオン、メタンスルホン酸、ドデシルスルホン酸等のアルキル基置換有機スルホン酸アニオン、カンファースルホン酸等の環状スルホン酸アニオン、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸等のアルキル基置換または無置換のベンゼンモノまたはジスルホン酸アニオン、2−ナフタレンスルホン酸、1,7−ナフタレンジスルホン酸等のスルホン酸基1〜3を置換させたナフタレンスルホン酸のアルキル基置換または無置換アニオン、アントラセンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、アルキルビフェニルスルホン酸、ビフェニルジスルホン酸等のアルキル基置換または無置換のビフェニルスルホン酸イオン、ポリスチレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合体等の高分子スルホン酸アニオン、置換または無置換の芳香族スルホン酸アニオン、ビスサルチレートホウ素、ビスカテコレートホウ素等のホウ素化合物アニオン、あるいはモリブドリン酸、タングストリン酸、タングストモリブドリン酸等のヘテロポリ酸アニオン等が挙げられる。ドーパントは1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記ドーパントの脱離を抑制するため、無機酸アニオンよりも有機酸アニオンであるドーパントが望ましく、熱分解などが起きにくいことが望ましい。
多孔質導電性高分子層におけるドーパントの使用量は、使用するドーパント種により最適値が異なるため特に限定されないが、好ましくは5〜60質量%、さらに好ましくは10〜45質量%である。
このようなドーパントは多孔質導電性高分子層を形成させる際に、導電性高分子のモノマーと共存させておくことができる。
前記多孔質導電性高分子層は、電極基材7上に形成される。形成方法は特に限定されないが、例えば、導電性高分子を溶融状態もしくは溶解させた溶液から成膜する方法が挙げられる。
また、より大きな表面積を有する多孔質状態であることが望ましいため、導電性高分子のモノマーを含む溶液と電極基材7を接触させた状態で、モノマーを化学的もしくは電気化学的に酸化重合する方法が挙げられる。
また、導電性高分子粉末を、ペースト状、もしくはエマルジョン状、もしくは高分子溶液およびバインダーを含む混合物形態に処理した後に、該電極基体上へスクリーン印刷、スプレー塗布、刷毛塗りなどにより形成させる方法も可能である。
前記多孔質導電性高分子層の形成方法としては、上記の中でも電解重合法もしくは化学重合法が好適に利用できる。化学重合法は、酸化剤を用いて重合モノマーを酸化重合させる方法である。一方、電解重合法は、重合モノマーを含む溶液中で電解酸化を行うことにより金属などの電極上に導電性高分子の膜を形成する方法である。
化学重合法に用いられる酸化剤としては、ヨウ素、臭素、ヨウ化臭素、二酸化塩素、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、亜塩素酸等のハロゲン化物、五フッ化アンチモン、五塩化リン、五フッ化リン、塩化アルミニウム、塩化モリブデン等の金属ハロゲン化物、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、無水クロム酸、第二鉄塩、第二銅塩等の高原子価金属塩、硫酸、硝酸、トリフルオロメタン硫酸等のプロトン酸、三酸化硫黄、二酸化窒素等の酸素化合物、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過ホウ酸ナトリウム等のペルオキソ酸またはその塩、あるいはモリブドリン酸、タングストリン酸、タングストモリブドリン酸等のヘテロポリ酸またはその塩などがあり、これらの少なくとも1種を用いることができる。
上記の化学重合法は大量生産向きであるものの、芳香族化合物モノマーを含有する溶液中で酸化剤と作用させると、得られる高分子は粒子状もしくは塊状の形態になってしまい、所望の多孔性を発現させ、電極形状に成型することは困難である。したがって、電極基体を芳香族化合物モノマーもしくは酸化剤のどちらかを含む溶液に浸漬するか、それらに該溶液を塗布した後、続いてもう一方の成分を溶解させた溶液に浸漬もしくは塗布するなどして、上記電極基体表面で重合が進行するようにし、導電性高分子を形成させることが望ましい。
もしくは、モノマーと重合開始剤を混ぜた溶液に重合速度を軽減させる添加剤を加え、室温で重合が起こらない条件下で膜化した後、加熱反応させることで多孔質導電性高分子膜を作製することが出来る。膜化の方法については特に限定されないが、例としてスピンコート法、キャスト法、スキージ法、スクリーンプリント法などが挙げられる。
重合速度を軽減させる添加剤については、公知文献「Synthetic Metals」 66,(1994)263によると、重合開始剤が高原子価金属塩、例えばFe(III )塩の場合、Fe(III)塩の酸化電位がpHによって変化するため、塩基を加えることで重合速度を遅くさせることができる。塩基の例としては、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
前記モノマーと重合開始剤、添加剤を溶解・混合させる溶媒は用いる化合物を溶解し、電極基体および重合物を溶かさないものであれば特に制限はないが、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ノルマルブタノールなどのアルコール類が挙げられる。
前記モノマーと重合開始剤、添加剤の混合比は用いる化合物、目的とする重合度、重合速度により変化するが、好適な混合比はモル比でモノマー:重合開始剤で1:0.3〜1:3、重合開始剤:添加剤で1:0.05〜1:4の間である。
また、前記混合溶液を塗布した後加熱重合する場合の加熱条件は用いるモノマー、重合触媒、添加剤の種類およびそれらの混合比、濃度、塗布膜厚などにより異なるが、好適な条件としては空気中加熱で加熱温度が25〜120℃、加熱時間が1分から12時間の間である。
また、別途作製した導電性高分子粒子分散液やペーストなどを用いて、電極基材もしくは導電膜付きの電極基材表面に導電性高分子膜を形成後、上記化学重合を行って導電性高分子粒子を成長させる方法を行うこともできる。
一方、電解重合法では比較的電導度の高い導電性高分子が膜状で得られ、かつ、その合成方法も簡便であり、電極材料の作製方法として好適に利用できる。電解重合を電極基材もしくは導電膜付きの電極基材上に直接行っても、別途電解重合により作製した多孔性導電性高分子膜を剥離した後、使用する電極基材もしくは導電膜付きの電極基材上に張り合わせても構わない。
電解重合法に用いられる電解重合溶媒としては、芳香族化合物を溶解でき、芳香族化合物の電解重合電位においても、安定していれば特に限定はされないが、例えば、水、アセトニトリルなどのニトリル系、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール、アセトンなどのケトン系、プロピレンカルボナートなどのカルボナート系、テトラヒドロフランなどを用いることができる。またこれらは単独、もしくは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。前記のうち、ある程度の極性を有した有機溶媒、例えば、アセトニトリル、メタノール、プロピレンカルボナート、テトラヒドロフランなどが好適に利用できる。さらに、前記ドーパントを添加する場合は、ドーパントも溶解できることが望ましい。
電解重合条件としては、予め上記芳香族化合物を溶解させた電解重合液中に、前記集電体を浸漬させ、同じ電解溶液中に設置した対向電極との間に任意の電圧を印加することで重合を進行させる。このときの芳香族化合物濃度としては、芳香族化合物の種類により最適値が異なるため特には限定されないが、一般的に0.01〜10mol/L範囲が望ましい。
また、ドーパントを共存させる場合は、ドーパントの濃度としては、芳香族化合物濃度に対して1/10〜100倍の範囲が望ましい。また、重合する際の印加電流密度としては、芳香族化合物の種類により最適値が異なるため特には限定されないが、0.01〜100mA/cmの範囲であることが望ましい。
本発明の触媒層兼剥離防止層における多孔質導電性高分子層の厚さは、5nm〜5μmが適当であり、特に好ましくは100nm〜2μmである。
以上説明したような各構成要素材料を準備した後、従来公知の方法で金属酸化物半導体電極と触媒電極とを電解質を介して対向させるように組み上げ、色素増感太陽電池を完成させる。
以下、本発明を実施例に基づいて、より詳細に説明するが、本発明はこれらによりなんら限定されるものではない。
〈実施例1〉
[半導体電極の作製]
ガラスからなる透明基体1上にSnOからなる透明導電膜2を真空蒸着により形成した透明導電膜2上に、以下の方法で多孔質金属酸化物半導体層3を形成した。
SnOからなる透明導電膜2が形成された透明基体1としてFTOガラス(日本板ガラス製)を用い、その表面に市販の酸化チタンペースト(Solaronix社製、商品名Ti−Nanoxide D−SP)をスクリーン印刷法で15μm程度の膜厚、5mm×10mm程度の面積で、透明導電膜2側に印刷し、450℃で30分間、大気中で焼成した。その結果、膜厚が15μm程度の酸化チタン膜3が得られ、多孔質酸化チタン半導体電極が形成された。
[増感色素の吸着]
増感色素4として、一般にN719dyeと呼ばれるビス(4−カルボキシ−4’−テトラブチルアンモニウムカルボキシ−2,2’−ビピリジン、)ジイソチオシアネートルテニウム錯体(Solaronix社製)を使用した。前記多孔質酸化チタン半導体電極を色素濃度0.4mol/Lの無水エタノール溶液中に浸漬し、遮光下1晩静置した。その後無水エタノールにて余分な色素を洗浄してから風乾することで太陽電池の半導体電極を作製した。
[対向電極の作製]
電極基材7としてFTO被膜付きガラス(旭硝子製、〜10Ω/□)を用いた。有機溶媒中で超音波洗浄した電極基体に、モノマーである3,4−エチレンジオキシチオフェン、トリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)、ジメチルスルホキシドを8:1:1の重量比でn−ブタノールに溶解させた反応溶液をスピンコート法にて塗布した。スピンコートの回転条件は1000rpmで30秒の条件で行い、溶液における3,4−エチレンジオキシチオフェンの濃度は0.48Mであった。つづいて、溶液を塗布した電極基材を110℃に保持した恒温槽に入れ、5分間加熱させることで重合を行い、触媒層兼剥離防止層6を作成した。形成された多孔質導電性高分子層の膜厚は約0.5μmであった。
[電解液の調製、太陽電池素子の組み立て]
次に、ゲル電解質層5に保持させる電解液を調製した。溶媒としてメトキシプロピオニトリルを95重量部と、分子量約8000の3官能アルキレンオキサイド系アクリレートマクロモノマーであり、加熱硬化可能なポリマー硬化物前駆体である(第一工業製薬株式会社製の商品名「エレクセルTA−140」)ゲル化剤1を5重量部と、開始材としてAIBNを20000ppm含有する溶媒溶液を調製し、前記のように作製した透明導電膜2を具備した透明基体1上の酸化チタン膜3からなる半導体電極と、多孔質導電性高分子層を具備した電極基材7上の触媒層兼剥離防止層6からなる対向電極9とを対向するよう配置し、電解質を毛管現象にて両電極間に含浸させた。次に、60℃で120分間加熱することにより加熱硬化させた後、0.5mol/Lのヨウ化リチウムと0.05mol/Lのヨウ素、0.6mol/Lの1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイド、0.5mol/Lの4−t−ブチルピリジンを含む最終組成の電解液溶液中での液交換を実施することにより、ゲル電解質層5を具備した太陽電池を作成した。なお、液交換の条件は50℃×4時間とした。電池を形成後、エポキシ樹脂にて外界との接触を避ける封止を実施した。
〈実施例2〉
ゲル電解質層5の作製方法において、溶媒としてメトキシプロピオニトリルを用い、0.5mol/Lのヨウ化リチウムと0.05mol/Lのヨウ素、0.6mol/Lの1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイド、0.5mol/Lの4−t−ブチルピリジンを溶解させたものを電解液とした。この電解液に5重量%のゲル化剤2を入れたものを電解質として用いた。実施例1と同様の方法で作成した作用極と対極9を対向するよう設置し、電解質を毛管現象にて両電極間に含浸させた後、60℃で120分間加熱することによりゲル電解質層5を具備した太陽電池を作製した。電池を形成後、エポキシ樹脂にて外界との接触を避ける封止を実施した。
上記ゲル化剤2について以下に説明する。
・ゲル化剤2:反応容器中に出発物質としてのグリセリン92g、触媒としての水酸化カリウム30gを仕込み、130℃で10時間反応させた後、中和脱水処理を行って、分子量8000のエチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体を得た。得られた化合物100gにトリレンジイソシアネート6.6gと触媒としてのジブチルチンジラウレート0.05gを加え、80℃で3時間反応を行い、分子量8520の化合物を得た。これを化合物A(末端にイソシアネート官能基を有するアルキレンオキシド)とする。そして、化合物Bはジエチルトルエンジアミンとして、これら化合物AとBを官能基濃度で1.2:1(化合物Aのイソシアネート官能基モル数/化合物Bのアミンの官能基モル数=1.2)で混合したものである。
〈実施例3〉
ゲル化剤として、実施例2に示した化合物Bのかわりに、ポリエーテルアミン(HUNTSMAN社製、商品名ジェファーミン JT−3000)(ゲル化剤3)を使用した以外は実施例2と同様に太陽電池を作製した。
〈実施例4〉
ゲル化剤として、ポリテトラメチレングリコール(三菱化成工業株式会社製、商品名「PTMG2000」100gに対して、トリレンジイソシアネート18gと触媒としてのジブチルチンジラウレート0.05gを加え、80℃で反応を行い、得た分子量2350の化合物Aを6gと、化合物Bとしてポリエーテル変性ポリカーボネートジオール(ダイセル化学工業株式会社製、商品名「プラクセルCD−221」5g、触媒としてトリエチレンジアミン0.005gを混合したもの(ゲル化剤4)を使用した以外は実施例2と同様に太陽電池を作製した。
〈実施例5〉
ゲル化剤として、ポリエステルポリオール(東邦理化株式会社製、商品名「ファントール PL−2010」)53.4gとトリレンジイソシアネート34.8gとを混合し、触媒としてジブチルチンジラウレート0.05gを加えて80℃で反応を行い、得られた化合物Aを2gと、化合物Bとしてカルボキシル基変性ポリシロキサン(信越化学工業株式会社製、商品名「X−22−16C」)10g、触媒としてスタナスオクトエート0.01gを混合したもの(ゲル化剤5)を使用した以外は実施例2と同様に太陽電池を作製した。
〈実施例6〉
対向電極9の作成法において、モノマーをヒドロキシメチル−3,4−エチレンジオキシチオフェンとした以外は実施例3と同様に太陽電池セルを作製した。形成した多孔質導電性高分子層の膜厚は約0.4μmであった。
〈実施例7〉
対向電極9の作成法において、モノマーをアミノメチル−3,4−エチレンジオキシチオフェンとした以外は実施例3と同様に太陽電池セルを作製した。形成した多孔質導電性高分子層の膜厚は約0.6μmであった。
〈実施例8〉
対向電極9の作成法において、触媒層兼剥離防止層6を具備した電極基材7として30分王水処理、または紙やすり(#600)を用いて表面凹凸を実表面積/投影面積比約27に増加させたFTOガラス(旭硝子製)を用いた以外は実施例3と同様に太陽電池セルを作製した。
〈実施例9〉
対向電極9の作成法において、触媒層兼剥離防止層6を具備した電極基材7として30分王水処理、または紙やすり(#600)を用いて表面凹凸を実表面積/投影面積比約27に増加させたFTOガラス(旭硝子製)を用いた以外は実施例6と同様に太陽電池セルを作製した。
〈実施例10〉
対向電極9の作成法において、触媒層兼剥離防止層6を具備した電極基材7として30分王水処理、または紙やすり(#600)を用いて表面凹凸を実表面積/投影面積比約27に増加させたFTOガラス(旭硝子製)を用いた以外は実施例7と同様に太陽電池セルを作製した。
〈実施例11〉
対向電極9の替わりに、電極基材7として30分王水処理、または紙やすり(#600)を用いて表面凹凸を実表面積/投影面積比約27に増加させたFTO被膜付きガラスの上に既報の方法に従って塩化白金酸の熱分解により形成した電極(白金膜厚:〜0.1μm)を用いた以外は実施例3と同様に太陽電池セルを作製した。
〈比較例1〜5〉
実施例1〜5において、対向電極9の替わりに、ITO導電性基板上に白金をスパッタ法により形成した電極(ジオマテック製、白金膜厚0.25μm)を用いた素子をそれぞれ比較例1〜5として作製した。
〈比較例6〉
対向電極9の替わりに、FTO導電性基板上に白金層を既報の方法に従って塩化白金酸の熱分解により形成した電極(白金膜厚〜0.1μm)を用いた以外は実施例3と同様に太陽電池セルを作製した。
[太陽電池の耐久性評価]
実施例、比較例で作成した太陽電池の評価を以下の手法で実施した。
性能評価には、AMフィルターを具備したキセノンランプのソーラーシュミレーターXES−502S(関西科学機械株式会社製)にて、AM1.5Gのスペクトル調整後、100mW/cmの照射条件下で、ポテンシオスタットによる負荷特性(I−V特性)を評価した。太陽電池の評価値は、開放電圧Voc(V)、短絡電流密度Jsc(mA/cm)、形状因子FF(−)、変換効率η(%)が挙げられるが、最終的な太陽電池の性能の良否は、変換効率ηの大小で評価した。
熱耐久性評価は、セル作成直後の初期の変換効率ηと、80℃に保持した恒温槽中で24時間保持後、室温まで冷却した素子の変換効率ηを測定し、再度恒温槽中に24時間保持するというサイクルを計10回繰り返した。さらに合計240h加熱前後での太陽電池性能保持率(%)も算出した。なお、恒温槽中に保持した太陽電池の状態は、開放状態とした。その結果を表1に示す。
Figure 2007128757
表1の通り、導電性高分子で構成される触媒層兼剥離防止層6を設けることにより、比較例に示した従来の白金対極を用いた擬固体型太陽電池と比べて、太陽電池性能を下げることなく、かつ熱耐久性が大きく改善されていることがわかる。特に、凹凸の大きな導電性薄膜上にヒドロキシ基、アミノ基を有するチオフェン誘導体をモノマーに使用した実施例9,10は熱処理後の性能保持率が100%と高い耐久性を示している。これは凹凸の大きな導電性薄膜の使用により、加熱時の剥離防止層6と電極基材7との界面剥離を防ぐと共に、剥離防止層6とゲル電解質層5とが化学結合を形成することが出来るために、加熱と冷却の繰り返しによる膨張と収縮に伴う剥離を防止していると考えられる。なお、比較例6については、熱分解法で作製した白金対極を使用しており、これらは表面凹凸性がスパッタ法で作製した白金対極に比べ高いことが知られているため、比較例1〜5と比べると高い熱耐久性を示しているが、実施例と比べるとまだ劣っている。これは熱分解法で作製した白金粒子の密着性が低いことが理由として挙げられる。
また、実施例11は比較例6よりも性能保持率は向上しており、同じ白金対極を使用した場合でも、電極基材の表面凹凸を増加させることによる電解質層と対向電極の界面剥離抑制効果が確認できる。しかし、実施例8〜10と比較すると性能保持率は劣っており、本発明の剥離防止層が白金対極よりも層間剥離防止の点で優れていることがわかる。
これらのことより、本発明の触媒層兼剥離防止層を使用することにより、従来の材料で構成されている太陽電池素子と比べて高い耐久性を達成することが出来ることがわかる。
本発明にかかる光電変換素子は、屋外使用に耐えうる高温耐久性を有する色素増感太陽電池として好適に用いられるものであり、さらに太陽電池だけでなく、光センサーなどとしても利用することが出来る。
実施形態の色素増感太陽電池の基本構造を示す模式断面図である。
符号の説明
1・・・透明基体
2・・・透明導電膜
3・・・多孔質金属酸化物半導体層
4・・・増感色素
5・・・電解質層
6・・・触媒層兼剥離防止層
7・・・電極基材
8・・・電極基体
9・・・対向電極
10・・・色素増感太陽電池

Claims (4)

  1. 電極基体上に、光増感作用を有する色素を含む光透過性の半導体電極と、酸化還元対となる化学種を含むゲル状もしくは固体状の電解質層とを有する色素増感太陽電池において、前記電解質層を介して前記半導体電極に対向配置される対向電極を有し、前記対向電極と電解質層との間の触媒層兼剥離防止層として、下記一般式(1)で表されるチオフェンもしくはチオフェン誘導体の重合体、又は前記チオフェン及びチオフェン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種をモノマー成分とする共重合体からなる多孔質導電性高分子層を有することを特徴とする色素増感太陽電池。
    Figure 2007128757
    (式(1)中、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、シアノ基、チオシアノ基、ハロゲン基、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基、又はホスホニウム基を示し、RとRは連結して環を形成していてもよい。)
  2. 前記多孔質導電性高分子層がポリ(エチレンジオキシチオフェン)からなることを特徴とする請求項1に記載の色素増感太陽電池。
  3. 前記チオフェン誘導体からなる多孔質導電性高分子層がイソシアネート基と化学結合を形成できる官能基を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の色素増感太陽電池。
  4. 前記多孔質導電性高分子層を形成する基板として、実表面積/投影面積比が10以上である基体からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の色素増感太陽電池。
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