JP2014177384A - 酸化チタン分散液、酸化チタン塗布液、及び光触媒塗膜 - Google Patents

酸化チタン分散液、酸化チタン塗布液、及び光触媒塗膜 Download PDF

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Abstract

【課題】分散性及び分散安定性に優れ、塗布・乾燥することにより速やかに且つ優れた光触媒能を発現する光触媒塗膜を形成することができる酸化チタン分散液を提供する。
【解決手段】本発明の酸化チタン分散液は、遷移金属化合物担持酸化チタン粒子(A)、水溶性チタン錯体からなる分散剤(B)、及び溶媒(C)を含有する。遷移金属化合物担持酸化チタン粒子(A)としては、鉄化合物担持酸化チタン粒子が好ましい。分散剤(B)における水溶性チタン錯体としては、ヒドロキシカルボン酸又はアミン系化合物を配位子とするチタン錯体が好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、光触媒能を有する塗膜を形成するための酸化チタン分散液、前記酸化チタン分散液を含む酸化チタン塗布液、前記酸化チタン塗布液を用いて形成された光触媒塗膜及び光触媒塗装体に関する。
酸化チタン粒子は紫外線を吸収すると強い酸化作用を発揮するため、近年、様々な用途に光触媒として利用されている(例えば、下記(1)〜(5))。
(1)自動車の排気ガス等から排出される窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)等の環境汚染物質を分解することによる大気浄化
(2)アンモニア、アセトアルデヒド、硫化水素、メチルメルカプタン等の悪臭物質を分解することによる脱臭
(3)テトラクロロエチレンやトリハロメタン等の有機塩素化合物を分解することによる浄水
(4)殺菌し、更にその死骸を分解することによる抗菌
(5)油分を分解することにより、油分に砂や垢が付着して生じる汚れを防止する防汚
酸化チタン粒子は溶液に懸濁させて用いる場合と、基材に担持した状態で用いる場合がある。一般的に、その表面積の大きさが光触媒能に比例するため前者の方がより活性が高いが、実用性の観点から後者が採用される場合が多い。後者を採用する場合は、主に、分散剤を使用して高分散した酸化チタン粒子をバインダー成分を使用して基材に密着させる方法が採用される。
分散剤としては、ポリカルボン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリエチレングリコール等の有機高分子系化合物や、ヘキサメタリン酸塩、ピロリン酸塩、リン酸塩、蓚酸塩等の無機化合物を使用することが知られている(特許文献1〜3)。分散剤を使用すると酸化チタン粒子を高分散し、その比表面積を大きくすることにより光触媒能を向上させる効果が得られるが、酸化チタン粒子の表面に分散剤が存在すると、酸化チタン光触媒の表面を覆う部分の分散剤に優先的に酸化作用が働き、見かけ上の光触媒効果が低減される。特に、酸化チタン粒子の光触媒作用によって分解されにくい無機化合物を分散剤として使用した場合は、本来の光触媒効果を発現することができなくなることが問題であった。更に、分散剤として無機化合物を使用すると、初期の分散性には優れるが、長時間にわたって高分散状態を維持することは困難であり、分散安定性が低いことが問題であった。
一方、分散剤として有機高分子化合物を使用すると、酸化チタン粒子表面に存在する分散剤が優先的に分解されるため、酸化チタン粒子を高分散するのに十分な量の有機高分子化合物を使用すると本来の光触媒効果を発現するまでの待機時間が長くかかることが問題であった。また、有機高分子化合物の分子量を小さくすると光触媒能を発現するまでの待機時間を短縮することは可能であるが、分散剤としての効果が得難くなることが問題であった。
特開2007−252987号公報 特開2009−056348号公報 特開2010−222444号公報
従って、本発明の目的は、分散性及び分散安定性に優れ、塗布・乾燥することにより速やかに且つ優れた光触媒能を発現する光触媒塗膜を形成することができる酸化チタン分散液、及び酸化チタン塗布液を提供することにある。
本発明の他の目的は、優れた光触媒能を発現する光触媒塗膜、及び前記光触媒塗膜が設けられた光触媒塗装体を提供することにある。
本発明者等は上記目的を達成するため鋭意検討した結果、分散剤として水溶性チタン錯体を使用すると少量の使用で遷移金属化合物担持酸化チタン粒子を長時間に亘って高分散することができること、水溶性チタン錯体はそれ自体が光触媒能を有するため、分散剤を使用することにより生じる本来の光触媒作用を発現するまでの待機時間を極めて短くすることができ、塗布・乾燥後、速やかに優れた光触媒効果を発現することができることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
すなわち、本発明は、遷移金属化合物担持酸化チタン粒子(A)、水溶性チタン錯体からなる分散剤(B)、及び溶媒(C)を含有する酸化チタン分散液を提供する。
本発明は、また、分散剤(B)における水溶性チタン錯体が、ヒドロキシカルボン酸又はアミン系化合物を配位子とするチタン錯体である前記の酸化チタン分散液を提供する。
本発明は、また、遷移金属化合物担持酸化チタン粒子(A)が、鉄化合物担持酸化チタン粒子である前記の酸化チタン分散液を提供する。
本発明は、また、遷移金属化合物担持酸化チタン粒子(A)が、酸化チタン粒子の酸化反応面に遷移金属化合物を担持する粒子である前記の酸化チタン分散液を提供する。
本発明は、また、遷移金属化合物担持酸化チタン粒子(A)における酸化チタン粒子が、ルチル型酸化チタン粒子である前記の酸化チタン分散液を提供する。
本発明は、また、前記の酸化チタン分散液と、過酸化チタン、ケイ素系化合物、及びフッ素系樹脂から選択される少なくとも1種のバインダー成分(D)を含む酸化チタン塗布液を提供する。
本発明は、また、バインダー成分(D)が過酸化チタンを少なくとも含む前記の酸化チタン塗布液を提供する。
本発明は、また、前記の酸化チタン塗布液を用いて形成された光触媒塗膜を提供する。
本発明は、また、基材の表面に前記の光触媒塗膜が設けられた光触媒塗装体を提供する。
本発明の酸化チタン分散液は上記構成を有するため、分散安定性に優れ、長期間に亘って高分散状態を維持することができる。また、本発明の酸化チタン分散液を用いて形成された光触媒塗膜は、光触媒能を発現するまでの待機時間が短く、優れた光触媒能を速やかに発現することができる。また、基材(被塗装体)表面に対して優れた接着性を長期間に亘って発揮することができ、耐久性に優れる。
図1は分散剤として水溶性チタン錯体を使用して得られた光触媒塗膜と、無機化合物を使用して得られた光触媒塗膜の光触媒能を示す図である。
[遷移金属化合物担持酸化チタン粒子(A)]
本発明では、光触媒として遷移金属化合物担持酸化チタン粒子(A)を用いる。遷移金属化合物担持酸化チタン粒子(A)は、紫外線域から可視光線域までの広い波長範囲に応答性を有し、太陽光や白熱灯、蛍光灯等の通常の生活空間における光源下でも高い触媒活性を発揮することができる。
遷移金属化合物担持酸化チタン粒子(A)における「酸化チタン粒子」としては、例えば、ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型酸化チタン粒子等を挙げることができる。本発明においては、なかでも、ルチル型酸化チタン粒子が好ましい。
前記遷移金属化合物は、遷移金属イオン、遷移金属単体、遷移金属塩、遷移金属酸化物、遷移金属水酸化物、遷移金属錯体等のいずれの状態で酸化チタン粒子に担持されていてもよい。
前記遷移金属化合物としては、可視光領域に吸収スペクトルを有し、励起状態で伝導帯に電子を注入することができるものが好ましく、例えば、周期表第3〜第11族元素化合物、なかでも周期表第8〜第11族元素化合物が好ましく、特に鉄化合物[とりわけ、三価の鉄化合物]が好ましい。鉄化合物の酸化チタン粒子への担持においては、三価の鉄化合物は吸着しやすく、二価の鉄化合物は吸着しにくい特性を有するため、その特性を利用することにより容易に面選択性を付与することができるからである。
遷移金属化合物の担持量としては、酸化チタン粒子に対して重量基準で、例えば50ppm以上、好ましくは100ppm以上、更に好ましくは200ppm以上、特に好ましくは300ppm以上、最も好ましくは500ppm以上である。遷移金属化合物の担持量の上限は、例えば5000ppm程度、好ましくは3000ppm、特に好ましくは2000ppmである。遷移金属化合物の担持量が上記範囲を上回ると、励起電子が有効に作用せず、光触媒能が低下する傾向がある。一方、遷移金属化合物の担持量が少なすぎると、可視光線応答性が低下する傾向がある。
遷移金属化合物は、酸化チタン粒子の露出結晶面における酸化反応面又は還元反応面のうち一方の面(特に、酸化反応面)に選択的に担持されることが、酸化反応と還元反応の反応場を空間的により大きく引き離すことができ、それにより励起電子とホールの分離性を高め、励起電子とホールの再結合及び逆反応の進行を極めて低いレベルにまで抑制することができ、より高い光触媒作用を発揮することができる点で好ましい。
酸化チタン粒子のうち、ルチル型酸化チタン粒子の主な露出結晶面としては、例えば、(110)(001)(111)(011)面等を挙げることができる。ルチル型酸化チタン粒子としては、例えば、(110)(111)面を有するルチル型酸化チタン粒子、(110)(011)面を有するルチル型酸化チタン粒子、(001)(110)(111)面を有するルチル型酸化チタン粒子等を挙げることができる。本発明においては、なかでも、酸化反応と還元反応の反応場を空間的により大きく引き離すことができ、励起電子とホールとの再結合及び逆反応の進行を抑制することができる点で、(110)(111)面を有するルチル型酸化チタン粒子、(001)(110)(111)面を有するルチル型酸化チタン粒子が好ましい。前記(111)面と(001)面は酸化反応面であり、(110)面は還元反応面である。
従って、本発明における遷移金属化合物担持酸化チタン粒子としては、なかでも、(110)(111)面を有し、前記(111)面に遷移金属化合物が担持されたルチル型酸化チタン、及び/又は(110)(111)(001)面を有し、前記(001)(111)面に遷移金属化合物が担持されたルチル型酸化チタン粒子が好ましい。
なお、本発明において、「遷移金属化合物が選択的に担持」とは、露出結晶面を有する酸化チタン粒子に担持する遷移金属化合物の50%を超える量(好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上)が2面以上の露出結晶面のうち、全ての面ではなく、特定の面(例えば、特定の1面又は2面等)に担持されていることをいう。遷移金属化合物の担持は、透過型電子顕微鏡(TEM)やエネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)を使用し、露出結晶面上の遷移金属化合物由来のシグナルを確認することで判定できる。
酸化チタン粒子としては、公知の方法により製造されたものを使用することができる。
また、酸化チタン粒子のうち、(110)(111)面を有するルチル型酸化チタン粒子や、(001)(110)(111)面を有するルチル型酸化チタン粒子は、例えば、チタン化合物を、水性媒体(例えば水、又は水と水溶性有機溶媒との混合液)中で水熱処理[例えば100〜200℃、3〜48時間(好ましくは6〜12時間)]することにより合成することができる。
前記チタン化合物としては、3価のチタン化合物、4価のチタン化合物を挙げることができる。3価のチタン化合物としては、例えば、三塩化チタンや三臭化チタン等のトリハロゲン化チタン等を挙げることができる。3価のチタン化合物としては、なかでも安価で、入手が容易な点で三塩化チタン(TiCl3)が好ましい。
また、4価のチタン化合物としては、例えば、下記式(1)で表される化合物等を挙げることができる。
Ti(OR1t4-t (1)
(式中、R1は炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示す。tは0〜3の整数を示す)
1における炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等のC1-4脂肪族炭化水素基等を挙げることができる。
Xにおけるハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素原子等を挙げることができる。
このような4価のチタン化合物としては、例えば、TiCl4、TiBr4、TiI4等のテトラハロゲン化チタン;Ti(OCH3)Cl3、Ti(OC25)Cl3、Ti(OC49)Cl3、Ti(OC25)Br3、Ti(OC49)Br3等のトリハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH32Cl2、Ti(OC252Cl2、Ti(OC492Cl2、Ti(OC252Br2等のジハロゲン化ジアルコキシチタン;Ti(OCH33Cl、Ti(OC253Cl、Ti(OC493Cl、Ti(OC253Br等のモノハロゲン化トリアルコキシチタン等を挙げることができる。本発明における4価のチタン化合物としては、なかでも安価で、入手が容易な点で、テトラハロゲン化チタンが好ましく、特に四塩化チタン(TiCl4)が好ましい。
特に、前記チタン化合物として4価のチタン化合物を使用する場合は、反応温度110〜220℃(好ましくは130〜220℃)、その反応温度における飽和蒸気圧以上の圧力下、水性媒体中で2時間以上(好ましくは5〜15時間)水熱処理を施すことにより(110)(111)面を有するルチル型酸化チタン粒子、及び/又は(001)(110)(111)面を有するルチル型酸化チタン粒子を合成することができる。
(001)(110)(111)面を有するルチル型酸化チタンは、その他、(110)(111)面を有するルチル型酸化チタン粒子を硫酸(好ましくは50重量%以上の高濃度の硫酸、特に好ましくは濃硫酸)中に投入し、加熱下で撹拌することにより、酸化チタン粒子の稜又は頂点の部位を浸食(溶解)して合成することもできる。
上記方法により得られた酸化チタン粒子は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
酸化チタン粒子の比表面積としては、例えば10m2/g以上、好ましくは10〜200m2/g、より好ましくは10〜150m2/g、更に好ましくは30〜150m2/g、特に好ましくは50〜100m2/g、最も好ましくは60〜100m2/gである。酸化チタン粒子の比表面積が上記範囲を下回ると、反応物質を吸着する能力が低下して光触媒能が低下する傾向があり、一方、酸化チタン粒子の比表面積が上記範囲を上回ると、励起電子とホールの分離性が低下し、光触媒能が低下する傾向がある。
酸化チタン粒子の形状は、特に限定されないが、棒状或いは針状が好ましく、酸化チタン粒子の平均アスペクト比(長径/短径)は例えば1.5以上、好ましくは1.5〜100、より好ましくは1.5〜50、特に好ましくは1.5〜20、最も好ましくは2〜15である。平均アスペクト比が上記範囲である酸化チタン粒子は、バインダー成分(D)と混合した際に、球形に近い酸化チタン粒子を使用した場合と比べて粗く充填されるため、光触媒塗膜に多数の細孔を形成することができ、表面積を大きく広げ、塗膜表面への光触媒の露出量を増やすことができるため、光触媒能を向上することができる。
尚、本発明において平均アスペクト比は下記調整方法で得られたサンプルについて、下記測定方法で求めた値である。
<サンプル調製方法>
1.少量(耳かきサイズのスパチュラで半分程度)の酸化チタン粒子を9mLのガラス製サンプル瓶に入れ、エタノールを7mL入れ、超音波洗浄器にて超音波を5分間かけてエタノール中に分散させエタノール分散液を得る。
2.得られたエタノール分散液をガラス製スポイドで1滴取り、SEM用試料台の上に落として自然乾燥させた後、30秒間白金蒸着を行う。
<測定方法>
電界放出型走査電子顕微鏡(商品名「FE-SEM JSM-6700F」、日本電子(株)製、加速電圧:15kV、WD:約3mm、倍率:20万倍)を使用して結晶粒子をランダムに観察し、代表的な3カ所を抽出し、抽出されたSEM写真全体の中で、見た目に極端に大きく又は小さくなく、平均的な大きさの粒子を中心に輪郭がはっきりしている粒子30個を抽出してOHPシートに写し、それらの粒子について、画像解析ソフトウェア(商品名「WinROOF Version5.6」、三谷商事(株)製)を用いて各短径(最大長径に直交する幅)を求め、それらの値を平均して平均短径とした。また、同様の方法で平均長径(最大長径)を求め、これらの比(平均長径/平均短径)を平均アスペクト比とした。
遷移金属化合物の酸化チタン粒子への担持は、例えば、酸化チタン粒子に遷移金属化合物を含浸する含浸法により行うことができる。
含浸は、具体的には、酸化チタン粒子の水分散液中に遷移金属化合物を添加することにより行うことができ、例えば、遷移金属化合物として三価の鉄化合物を使用する場合は、鉄化合物(例えば、硝酸鉄(III)、硫酸鉄(III)、塩化鉄(III)等)を添加することにより行うことができる。
含浸時間としては、例えば30分から24時間程度、好ましくは1〜10時間である。
そして、酸化チタン粒子に遷移金属化合物を含浸する際には励起光を照射することが好ましい。励起光を照射すると、酸化チタン粒子の価電子帯の電子が伝導帯に励起し、価電子帯にホール、伝導帯に励起電子が生成し、これらは粒子表面へ拡散し、各露出結晶面の特性に従って励起電子とホールとが分離されて酸化反応面と還元反応面とを形成する。この状態で遷移金属化合物として、例えば三価の鉄化合物の含浸を行うと、三価の鉄化合物は酸化反応面には吸着するが、還元反応面では三価の鉄化合物は二価の鉄化合物に還元され、二価の鉄化合物は吸着しにくい特性を有するため溶液中に溶出し、結果として酸化反応面にのみ鉄化合物が担持された遷移金属化合物担持酸化チタン粒子を得ることができる。
励起光の照射方法としては、バンドギャップエネルギー以上のエネルギーを有する光を照射することができればよく、例えば、紫外線を照射することにより行うことができる。紫外線照射手段としては、例えば、中・高圧水銀灯、UVレーザー、UV−LED、ブラックライト等の紫外線を効率よく生成する光源を使用した紫外線露光装置等を使用することができる。励起光の照射量としては、例えば0.1〜300mW/cm2程度、好ましくは1〜5mW/cm2である。
さらに、本発明においては、含浸の際に犠牲剤を添加してもよい。犠牲剤を添加することにより、酸化チタン粒子表面において、特定の露出結晶面に高い選択率で遷移金属化合物を担持することができる。犠牲剤としては、それ自体が電子を放出しやすい有機化合物を使用することが好ましく、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール;酢酸等のカルボン酸;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、トリエタノールアミン(TEA)等のアミン等を挙げることができる。
犠牲剤の添加量としては、適宜調整することができ、例えば、酸化チタン溶液の0.5〜5.0重量%程度、好ましくは1.0〜2.0重量%である。犠牲剤は過剰量を使用してもよい。
上記方法により得られた遷移金属化合物担持酸化チタン粒子は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
[分散剤(B)]
本発明では、分散剤として水溶性チタン錯体を使用することを特徴とする。前記水溶性チタン錯体としては、例えば、ヒドロキシカルボン酸を配位子とするチタン錯体、アミン系化合物を配位子とするチタン錯体等を挙げることができる。
前記ヒドロキシカルボン酸を配位子とするチタン錯体におけるヒドロキシカルボン酸としては、例えば、下記式(2)で表されるα−ヒドロキシカルボン酸等を挙げることができる。
Figure 2014177384
式(2)中、R2、R3は同一又は異なって、水素原子、カルボキシル基及び/又はヒドロキシル基を有していてもよい炭素数1〜5の直鎖状又は分岐差状のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基である。
前記素数1〜5の直鎖状又は分岐差状のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル基等を挙げることができる。
前記炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。
式(2)で表されるα−ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリセリン酸、2−ヒドロキシ酪酸、ロイシン酸(=2−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸)、キナ酸、マンデル酸(=2−ヒドロキシ−2−フェニル酢酸)、グリコール酸、乳酸等を挙げることができる。
前記アミン系化合物を配位子とするチタン錯体におけるアミン系化合物としては、例えば、(2−ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸、ジ(2−ヒドロキシエチル)グリシン、等のモノアミン系化合物;1,3−プロパンジアミン四酢酸、(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸、1,2−ジアミノプロパン四酢酸、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸等のジアミン系化合物等を挙げることができる。
本発明の水溶性チタン錯体としては、なかでも、着色を抑制することができ且つカルボキシル基1個当たりの分子量が小さく、酸化チタン粒子の分散に必要な添加量を少なくすることができる点で、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等のヒドロキシカルボン酸を配位子とするチタン錯体が好ましい。
水溶性チタン錯体は水に溶解しやすいため、水溶性チタン錯体を分散剤として使用すると酸化チタン分散液や酸化チタン塗布液を簡易な操作で容易に調製することができる。また、カルボキシル基1個当たりの分子量が小さいため、酸化チタン塗布液から形成される光触媒塗膜中の有機基の量(濃度)を低減でき、遷移金属化合物担持酸化チタン粒子が分散剤を分解して本来の光触媒効果を発現するまでの待機時間を短くすることができる。その上、水溶性チタン錯体自体も紫外線照射により光触媒効果を発揮することができる。そのため、光触媒効果の即効性を担保できる。また、有機高分子系分散剤を使用する場合と比べて分散剤の分解によるアセトアルデヒド等のVOC(揮発性有機化合物)の発生量を低減できるので、臭気の発生を抑制することができる。さらに、分散剤として水溶性チタン錯体を使用する酸化チタン塗布液から形成される光触媒塗膜は高い硬度を有するので、塗膜に傷が付きにくいという利点もある。
[溶媒(C)]
溶媒(C)としては、水、有機溶媒、又はこれらの混合溶媒を使用できる。前記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン等のアルコール;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の鎖状又は環状エーテル;アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル等のケトン等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
[バインダー成分(D)]
本発明におけるバインダー成分(D)は、上記遷移金属化合物担持酸化チタン粒子(A)を基材(被塗装体)に固定する働きを有するものであり、過酸化チタン(=ペルオキソチタン酸)、ケイ素系化合物、及びフッ素系樹脂から選択される少なくとも1種を使用することができる。
過酸化チタンは、下記式(3)で表される二核錯体であると考えられる。
Ti25(OH)x (2-x) (3)
(式中、xは1〜6の整数を示す)
過酸化チタンは、例えば、塩基性物質(例えば、アンモニア水、水酸化ナトリウム等)の存在下で、TiCl4等のチタン化合物の水溶液に過酸化水素水を添加することにより合成することができる。
ケイ素系化合物としては、例えば、テトラブロモシラン、テトラクロロシラン、トリブロモシラン、トリクロロシラン、ジブロモシラン、ジクロロシラン、モノブロモシラン、モノクロロシラン、ジクロロジメチルシラン、ジクロロジエチルシラン、ジクロロメチルシラン、ジクロロエチルシラン、クロロトリメチルシラン、クロロトリエチルシラン、クロロジメチルシラン、クロロジエチルシラン、クロロメチルシラン、クロロエチルシラン、t−ブチルクロロジメチルシラン、t−ブチルクロロジエチルシラン等のハロゲン化シラン化合物;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、メトキシシラン、エトキシシラン、ジメトキシメチルシラン、ジエトキシメチルシラン、ジメトキシエチルシラン、ジエトキシエチルシラン、メトキシジメチルシラン、エトキシジメチルシラン、メトキシジエチルシラン、エトキシジエチルシラン等のアルコキシシラン化合物等を挙げることができる。
フッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、パーフルオロシクロポリマー、ビニルエーテル−フルオロオレフィンコポリマー、ビニルエステル−フルオロオレフィンコポリマー、テトラフルオロエチレン−ビニルエーテルコポリマー、クロロトリフルオロエチレン−ビニルエーテルコポリマー、テトラフルオロエチレンウレタン架橋体、テトラフルオロエチレンエポキシ架橋体、テトラフルオロエチレンアクリル架橋体、テトラフルオロエチレンメラミン架橋体等を挙げることができる。
本発明のバインダー成分(D)としては、なかでも、過酸化チタンを少なくとも含むことが好ましく、バインダー成分(D)全量に占める過酸化チタンの割合は、10重量%以上であることが好ましく、より好ましくは20重量%以上、更に好ましくは30重量%以上、特に好ましくは50重量%以上、最も好ましくは75重量%以上である。過酸化チタンは成膜性が高く、塗布、乾燥することにより、優れた接着性を有する塗膜を速やかに形成することができ、しかも、酸化チタン粒子の光触媒作用によっても分解されることがないため、耐久性に優れ、長期に亘って、基材(被塗装体)表面に酸化チタン粒子を固定することができるからである。
[酸化チタン分散液]
本発明の酸化チタン分散液は、上記遷移金属化合物担持酸化チタン粒子(A)、水溶性チタン錯体からなる分散剤(B)、及び溶媒(C)を含む。
分散剤(B)の使用量(固形分換算)は、例えば、遷移金属化合物担持酸化チタン粒子(A)100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは1〜15重量部、特に好ましくは5〜10重量部である。分散剤(B)の使用量が上記範囲を下回ると、遷移金属化合物担持酸化チタン粒子(A)の分散性が低下する傾向がある。一方、分散剤(B)の使用量が上記範囲を上回ると、遷移金属化合物担持酸化チタン粒子(A)の分散性が低下する傾向がある。また、可視光応答性が低下する傾向がある。
また、本発明の酸化チタン分散液は水溶性チタン錯体以外の分散剤を含有していてもよいが、本発明の酸化チタン分散液に含まれる全分散剤に占める水溶性チタン錯体からなる分散剤(B)の割合は、25重量%以上、好ましくは50重量%以上、特に好ましくは75重量%以上である。他の分散剤の含有量が上記範囲を上回ると、分散性及び分散安定性が得難くなり、光触媒効果の即効性を担保することが困難となる傾向がある。
溶媒(C)の使用量は用途に応じて適宜調整することができる。
酸化チタン分散液の調製方法としては、特に限定されず、遷移金属化合物担持酸化チタン粒子(A)と分散剤(B)と溶媒(C)とを混合することにより調製できる。各成分の添加順序は特に制限はないが、例えば、遷移金属化合物担持酸化チタン粒子(A)と溶媒(C)とを含むスラリー溶液に分散剤(B)を加え、ビーズミル、ジェットミル、ロールミル、ハンマーミル、振動ミル、ボールミル、サンドミル、パールミル、スパイクミル、アジテータミル、コボールミル等の分散機(特に、メディア撹拌型分散機)を用いて混合することにより、酸化チタン分散液を調製することができる。
本発明の酸化チタン分散液は、分散剤として水溶性チタン錯体を使用するため、分散性及び分散安定性に優れる。また、本発明の酸化チタン分散液を使用して得られる光触媒塗膜は、速やかに且つ優れた光触媒能を発現することができる。
[酸化チタン塗布液]
本発明の酸化チタン塗布液は、上記酸化チタン分散液と、過酸化チタン、ケイ素系化合物、及びフッ素系樹脂から選択される少なくとも1種のバインダー成分(D)を含有する。
バインダー成分(D)の使用量(固形分換算)は、遷移金属化合物担持酸化チタン粒子(A)100重量部に対して、例えば1〜50重量部、好ましくは3〜30重量部、特に好ましくは5〜25重量部である。バインダー成分(D)の使用量が上記範囲を上回ると、光触媒能が低下する傾向がある。一方、バインダー成分(D)の使用量が上記範囲を下回ると、基材(被塗装体)に対する接着性、基材(被塗装体)の劣化防止性が低下する傾向がある。
酸化チタン塗布液中の全固形分濃度は、塗布作業性等を損なわない範囲内において適宜選択することができ、例えば0.1〜50重量%、好ましくは0.2〜40重量%、さらに好ましくは1〜30重量%である。また、酸化チタン塗布液中の遷移金属化合物担持酸化チタン粒子(A)の含有量は、例えば0.1〜15重量%、好ましくは1〜10重量%である。
酸化チタン塗布液は、例えば、上記酸化チタン分散液にバインダー成分(D)を加え、ビーズミル、ジェットミル、ロールミル、ハンマーミル、振動ミル、ボールミル、サンドミル、パールミル、スパイクミル、アジテータミル、コボールミル等の分散機(特に、メディア撹拌型分散機)を用いて混合することにより、調製することができる。
本発明の酸化チタン塗布液には、上記酸化チタン分散液とバインダー成分(D)以外に、他の成分(例えば、塗布助剤等の通常光触媒塗料に配合される成分)を必要に応じて適宜配合することができる。他の成分の配合量としては、本発明の効果を損なわない範囲内であればよく、例えば、酸化チタン塗布液全量の10重量%以下程度である。
本発明の酸化チタン塗布液は、分散性及び分散安定性に優れる。また、基材表面等に塗布・乾燥することにより速やかに且つ優れた光触媒能を発現する光触媒塗膜を形成することができる。
[光触媒塗膜及び光触媒塗装体]
本発明の光触媒塗膜は前記酸化チタン塗布液を用いて形成される。また、本発明の光触媒塗装体では、基材(被塗装体)の表面に前記光触媒塗膜が設けられている。本発明の光触媒塗膜及び光触媒塗装体は、例えば、基材の表面(シート状の基材の場合は、少なくとも一方の表面)に前記酸化チタン塗布液を塗布し、乾燥することにより製造することができる。
本発明の光触媒塗装体を構成する基材の素材としては、特に限定されることがなく、各種プラスチック材料[例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα−オレフィンをモノマー成分とするオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);酢酸ビニル系樹脂;ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等]、ゴム材料(例えば、天然ゴム、合成ゴム、シリコンゴム等)、金属材料(例えば、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス等)、紙質材料(例えば、紙、紙類似物質等)、木質材料(例えば、木材、MDF等の木質ボード、合板等)、繊維材料(例えば、不織布、織布等)、革材料、無機材料(例えば、石、コンクリート等)、ガラス材料、磁器材料等の各種の素材を挙げることができる。これらのなかでも、前記基材として、プラスチック製基材(プラスチック製シート等)が好ましい。
用途からみた基材としては特に制限されることがなく、例えば、レンズ(眼鏡やカメラのレンズ等)、プリズム、自動車や鉄道車両等の乗物部材(窓ガラス、照明灯カバー、バックミラー等)、建築部材(外壁材、内壁材、窓枠、窓ガラス等)、機械構成部材、交通標識等の各種表示装置、広告塔、遮音壁(道路用、鉄道用等)、橋梁、ガードレ−ル、トンネル、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、照明器具、浴室用品、浴室部材(鏡、浴槽等)、台所用品、台所部材(キッチンパネル、流し台、レンジフード、換気扇等)、空調、トイレ用品、トイレ部材(便器等)等の抗菌防カビ、脱臭、大気浄化、水質浄化、防汚効果が期待される物品や、前記物品表面に貼着させるためのフィルム、シート、シール等を挙げることができる。
基材への酸化チタン塗布液の塗布は、例えば、スプレー、刷毛、ローラー、グラビア印刷等により行うことができる。基材表面に塗布した後は、乾燥(溶媒を蒸発)させることよって、速やかに塗膜を形成することができる。乾燥方法としては、室温で乾燥させてもよく、加熱して乾燥させてもよい。
酸化チタン塗布液の塗布量は、遷移金属化合物担持酸化チタン粒子(A)の含有量が、例えば0.1g/m2以上(好ましくは0.1〜5.0g/m2、特に好ましくは0.1〜3.0g/m2)である。酸化チタン塗布液の塗布量が上記範囲を下回ると、光触媒能が低下する傾向がある。
酸化チタン塗布液は、基材表面に直接塗布してもよく、基材表面に予めバインダー成分(例えば、過酸化チタン)を含むコーティング剤を塗布することにより下塗り層を設け、その上に酸化チタン塗布液を塗布してもよい。下塗り層を設けた場合、基材と光触媒塗膜とが下塗り層により完全に隔てられるため、基材として有機素材からなる基材を使用しても、光触媒作用が完全にブロックされ、基材を損傷から保護することができる。基材表面に下塗り層を設ける場合、その厚みとしては、例えば0.01〜5.0μm、好ましくは0.1〜2.0μmである。
こうして形成された光触媒塗膜及び光触媒塗装体は、光触媒能を発現するまでの待機時間が短く、高い光触媒能を速やかに発揮することができる。また、基材(被塗装体)表面に対して優れた接着性を有し、耐久性に優れる。
また、本発明の光触媒塗膜及び光触媒塗装体は、光の照射によって有害化学物質を水や二酸化炭素にまで分解することが可能である。そのため、抗菌・防かび、脱臭、大気浄化、水質浄化、防汚等の様々な用途に使用することができる。更に、従来の酸化チタン光触媒は紫外線の少ない室内では機能が充分に発揮できず、室内用途への応用はなかなか進まなかったが、本発明の光触媒塗膜及び光触媒塗装体は、紫外線域から可視光線域までの広い波長範囲に応答性を有し、太陽光や白熱灯、蛍光灯等の通常の生活空間における光を吸収して、高い触媒活性を発揮することができる。そのため、室内等の低照度環境でも高いガス分解性能や抗菌作用を示し、室内の壁紙や家具をはじめ家庭内や病院、学校等の公共施設内での環境浄化、家電製品の高機能化等、広範囲への応用が可能である。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
調製例1
(粗酸化チタン水分散液の調製)
室温(25℃)にて、四塩化チタン水溶液(Ti濃度:16.5重量%±0.5重量%、塩素イオン濃度:31重量%±2重量%、東邦チタニウム(株)製)をTi濃度が5.6重量%になるように純水で希釈した。希釈後の四塩化チタン水溶液5650gを容量10Lのタンタルライニングのオートクレーブに入れ密閉した。熱媒を用い、2時間かけて上記オートクレーブ内温度を140℃まで昇温した。その後、撹拌しつつ、温度:140℃、圧力:その温度における蒸気圧の条件下で10時間保持した後、熱媒を冷却することによりオートクレーブを冷却した。オートクレーブ内温度が40℃以下になったことを確認して、粗酸化チタン水分散液5650gを取り出した。
(クロスフロー方式による膜濾過処理(1))
得られた粗酸化チタン水分散液を、中空糸型限外濾過膜(商品名「FS03−FC−FUS03C1」、材質:PES、公称分画分子量:3万、ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製)を用い、室温(25℃)、濾過圧力0.02MPaにて、透過液量と同量の純水を加えながらクロスフロー方式による濾過処理を行うことにより、酸化チタン水分散液を得た。酸化チタン水分散液の一部を常圧下、105℃で1時間乾燥したところ、(110)(111)面を有する棒状ルチル型酸化チタンと、(110)(111)(001)面を有する棒状ルチル型酸化チタンの混合物であった。
(鉄化合物担持処理)
上記で得られた酸化チタン水分散液に塩化鉄水溶液(35重量%)7.5gを添加し、室温(25℃)にて30分撹拌した。その後、メタノール95g(酸化チタン水分散液の1.7重量%)を添加し、100Wの高圧水銀ランプを用いて紫外線(UV)を3時間照射して(UV照射量:5mW/cm2)、粗鉄化合物担持酸化チタン水分散液を得た。
(クロスフロー方式による膜濾過処理(2))
粗鉄化合物担持酸化チタン水分散液を、中空糸型限外濾過膜(商品名「FS03−FC−FUS03C1」、材質:PES、公称分画分子量:3万、ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製)を用い、室温(25℃)、濾過圧力0.02MPaにて、透過液量と同量の純水を加えながらクロスフロー方式による濾過処理を行い、精製鉄化合物担持酸化チタン水分散液を得た。
得られた精製鉄化合物担持酸化チタン水分散液の一部を、常圧下、105℃で1時間乾燥して、鉄化合物担持酸化チタン(比表面積:78m2/g、平均アスペクト比:3)を得た。得られた鉄化合物担持酸化チタンの鉄化合物の含有量は830ppmであった。また、得られた鉄化合物担持酸化チタンは、(110)(111)面を有し、前記(111)面にのみ鉄化合物が担持された棒状ルチル型酸化チタンと、(110)(111)(001)面を有し、前記(001)(111)面に鉄化合物が担持された棒状ルチル型酸化チタンの混合物であった。
実施例1
室温(25℃)にて、チタンペロオキソクエン酸アンモニウム四水和物(商品名「TAS-FINE」、フルウチ化学(株)製)40g、イオン交換水60gを混合し、室温(25℃)にて30分かけて撹拌し、チタンペロオキソクエン酸アンモニウム水溶液(1)を得た。
調製例1で得られた精製鉄化合物担持酸化チタン水分散液500gをチタンペロオキソクエン酸アンモニウム水溶液8.75g中に混合し、湿式媒体撹拌ミル(商品名「ウルトラアペックスミル UAM−015」、寿工業(株)製)を用いて分散させ、鉄化合物担持酸化チタン濃度9.8重量%の酸化チタンゾル(1)を得た。
得られた酸化チタンゾル(1)10gに、イオン交換水14.4g、過酸化チタン水溶液(商品名「ティオスカイコートC」、(株)ティオテクノ製、過酸化チタン濃度:1重量%)8.4gを加えて混合し、酸化チタン塗布液(1)(遷移金属化合物担持酸化チタン粒子(A)含有量:3.0重量%、分散剤(B)含有量:0.2重量%、溶媒(C)含有量:96.5重量%、バインダー成分(D)含有量:0.3重量%含有)を調製した。
スプレーコート法により、得られた酸化チタン塗布液(1)をガラス板上に塗布量(乾燥重量)が1.5g/m2になるように塗布して光触媒塗膜(1)を得た。
得られた光触媒塗膜(1)について、下記方法で光触媒能を評価した。
光触媒塗膜5cm×10cmを反応容器(スマートバッグ2F、材質:フッ化ビニリデン樹脂)の中に入れ、16ppmのアセトアルデヒドガス1Lを反応容器内に吹き込み、室温(25℃)で光照射(蛍光灯6000ルクス)を行った。光照射開始から30時間、反応容器中のアセトアルデヒド残量を水素炎イオン化検出器付きガスクロマトグラフ(商品名「GC−14B」、島津製作所製)を使用して測定した。その結果、光照射開始から24時間後のアセトアルデヒド残量は0ppmであった。すなわち、光照射開始から24時間後のアセトアルデヒドの分解量(%)[=(アセトアルデヒド初期濃度−アセトアルデヒド残量)/アセトアルデヒド初期濃度×100)]は100%であった(図1参照)。
比較例1
室温(25℃)にて、調製例1で得られた精製鉄化合物担持酸化チタン水分散液500gにヘキサメタリン酸ナトリウム2.5gを混合し、湿式媒体撹拌ミル(商品名「ウルトラアペックスミル UAM−015」、寿工業(株)製)を用いて分散させ、鉄化合物担持酸化チタン濃度9.9重量%の酸化チタンゾル(2)を得た。
得られた酸化チタンゾル(2)10gに、イオン交換水14.4g、過酸化チタン水溶液(商品名「ティオスカイコートC」、(株)ティオテクノ製、過酸化チタン濃度:1重量%)8.4gを加えて混合し、酸化チタン塗布液(2)(遷移金属化合物担持酸化チタン粒子(A)含有量:3.0重量%、分散剤(B)含有量:0.2重量%、溶媒(C)含有量:96.5重量%、バインダー成分(D)含有量:0.3重量%含有)を調製した。
スプレーコート法により、得られた酸化チタン塗布液(2)をガラス板上に塗布量(乾燥重量)が1.5g/m2になるように塗布して光触媒塗膜(2)を得た。
得られた光触媒塗膜(2)について、下記方法で光触媒能を評価した。
光触媒塗膜5cm×10cmを反応容器(テドラーバッグ、材質:フッ化ビニル樹脂)の中に入れ、16ppmのアセトアルデヒドガス1Lを反応容器内に吹き込み、室温(25℃)で光照射(蛍光灯6000ルクス)を行った。光照射開始から30時間、反応容器中のアセトアルデヒド残量を水素炎イオン化検出器付きガスクロマトグラフ(商品名「GC−14B」、島津製作所製)を使用して測定した。その結果、光照射開始から24時間後のアセトアルデヒド残量は14ppmであった。すなわち、光照射開始から24時間後のアセトアルデヒドの分解量(%)は12%であった(図1参照)。

Claims (9)

  1. 遷移金属化合物担持酸化チタン粒子(A)、水溶性チタン錯体からなる分散剤(B)、及び溶媒(C)を含有する酸化チタン分散液。
  2. 分散剤(B)における水溶性チタン錯体が、ヒドロキシカルボン酸又はアミン系化合物を配位子とするチタン錯体である請求項1記載の酸化チタン分散液。
  3. 遷移金属化合物担持酸化チタン粒子(A)が、鉄化合物担持酸化チタン粒子である請求項1又は2記載の酸化チタン分散液。
  4. 遷移金属化合物担持酸化チタン粒子(A)が、酸化チタン粒子の酸化反応面に遷移金属化合物を担持する粒子である請求項1〜3の何れか1項に記載の酸化チタン分散液。
  5. 遷移金属化合物担持酸化チタン粒子(A)における酸化チタン粒子が、ルチル型酸化チタン粒子である請求項1〜4の何れか1項に記載の酸化チタン分散液。
  6. 請求項1〜5の何れか1項に記載の酸化チタン分散液と、過酸化チタン、ケイ素系化合物、及びフッ素系樹脂から選択される少なくとも1種のバインダー成分(D)を含む酸化チタン塗布液。
  7. バインダー成分(D)が過酸化チタンを少なくとも含む請求項6に記載の酸化チタン塗布液。
  8. 請求項6又は7に記載の酸化チタン塗布液を用いて形成された光触媒塗膜。
  9. 基材の表面に請求項8記載の光触媒塗膜が設けられた光触媒塗装体。
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