JP5330783B2 - 光電気セル - Google Patents

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Description

本発明は、電解質中に水分子吸着剤を含ませることによって光電変換効率に対する水分子の影響を抑制し、高い光電変換効率を長期にわたって維持できる光電気セルに関する。
高バンドギャップを有する金属酸化物半導体材料が光電変換材料、光触媒材料等の他光センサーや蓄電材料(バッテリー)等に用いられている。
このうち、光電変換材料は光エネルギーを電気エネルギーとして連続して取り出せる材料であり、電極間の電気化学反応を利用して光エネルギーを電気エネルギーに変換する材料である。このような光電変換材料に光を照射すると、一方の電極側で電子が発生し、対電極に移動し、対電極に移動した電子は、電解質中をイオンとして移動して一方の電極に戻る。このエネルギー変換は連続であるため、たとえば、太陽電池などに利用されている。
一般的な太陽電池は、先ず透明性導電膜を形成したガラス板などの支持体上に光電変換材料用半導体の膜を形成して電極とし、次に、対電極として別の透明性導電膜を形成したガラス板などの支持体を備え、これらの電極間に電解質を封入して構成されている。
光電変換材料用半導体に吸着した光増感材に例えば太陽光を照射すると、光増感材は可視領域の光を吸収して励起する。この励起によって発生する電子は半導体に移動し、次いで、透明導電性ガラス電極に移動し、2つの電極を接続する導線を通って対電極に移動し、対電極に移動した電子は電解質中の酸化還元系を還元する。一方、半導体に電子を移動させた光増感材は、酸化体の状態になっているが、この酸化体は電解質中の酸化還元系によって還元され、元の状態に戻る。このようにして電子が連続的に流れ、光電変換材料は太陽電池として機能する。
この光電変換材料としては、半導体表面に可視光領域に吸収を持つ分光増感色素を吸着させたものが用いられている。たとえば、特開平1−220380号公報(特許文献1)には、金属酸化物半導体の表面に、ルテニウム錯体などの遷移金属錯体からなる分光増感色素層を有する太陽電池が記載されている。また、特表平5−504023号公報(特許文献2)には、金属イオンでドープした酸化チタン半導体層の表面に、ルテニウム錯体などの遷移金属錯体からなる分光増感色素層を有する太陽電池が記載されている。
特開平1−220380号公報 特表平5−504023号公報
上記のような太陽電池では、光を吸収して励起したルテニウム錯体などの分光増感色素層から酸化チタン半導体層へ電子の移動が迅速に行われることが光変換効率向上に重要であり、迅速に電子移動が行われないと再度ルテニウム錯体と電子の再結合あるいは電子の逆流(暗電流あるいはバックカレントという)が、起こり光変換効率が低下する。
特に、半導体表面に吸収した分光増感色素の中には水が存在すると脱離して光電変換に与らない分光増感色素が増加し、光電変換効率が低下する問題がある。
このような分光増感色素脱離の原因となる水は、主に光電気セル製造時に電解質が大気中から吸収する水、光電気セル使用時に電解質が大気中から吸収する水等がある。
このため、光電気セル製造工程を無水雰囲気とすることが行われているがそのための設備を必要とし、加えて生産性が低下する問題があった。
上記問題点に鑑み本発明者等は鋭意検討した結果、ゼオライトなどの水分子吸着剤を電解質層に含ませておくことによって、
光電気セルの光電変換効率が向上し、さらに、電解質が吸湿しても高い光電変換効率を維持することを見出して本発明を完成するに至った。
本発明の構成は以下の通りである。
[1]表面に電極層(1)を有し、かつ該電極層(1)表面に光増感材を吸着した多孔質金属酸化
物半導体膜(1)が形成されてなる基板(1)と、
表面に電極層(2)を有する基板(2)とが、
前記電極層(1)および電極層(2)が対向するように配置してなり、
多孔質金属酸化物半導体膜(1)と電極層(2)との間に電解質層を設けてなる光電気セルにおいて、
電解質層に水分子吸着剤を含むことを特徴とする光電気セル。
[2]前記水分子吸着剤がゼオライトである[1]の光電気セル。
[3]前記ゼオライトが、ZSM−5型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、フォージ
ャサイト型ゼオライト、A型ゼオライト、L型ゼオライト、βゼオライトから選ばれる1
種以上である[1]または[2]の光電気セル。
[4]前記水分子吸着剤の平均粒子径が50nm〜10μmの範囲にある[1]〜[3]の光電気
セル。
[5]前記水分子吸着剤中のアルカリ含有量が2重量%以下である[1]〜[4]の光電気セル。
[6]前記電極層(1)と多孔質金属酸化物半導体膜(1)との間にペルオキソチタン酸に由来す
る酸化チタン薄膜(1)を設けてなる[1]〜[5]の光電気セル。
[7]前記酸化チタン薄膜(1)の膜厚が10〜70nmの範囲にあり、細孔容積が0.01〜0.20ml/gの範囲にあり、平均細孔径が0.5〜5.0nmの範囲にある[1]〜[6]の光電気セル。
本発明によれば、電解質層に水分子吸着剤を含んでいるので水分子が混入しても(1)光増感材が脱離することが無く長期にわたって高い光電変換効率を維持することができ、(2)光電気セル製造工程を無水雰囲気とする必要が無く経済性に優れた、光電気セルを提供することができる。(3)水分子吸着剤が絶縁性の粒子であるのでスペーサー機能を有し、PET等の可撓性の有機ポリマー基板であっても応力が加わった際に対の電極の接触を防止することができる。
以下、本発明に係る光電気セルについて具体的に説明する。
光電気セル
本発明に係る光電気セルは、
表面に電極層(1)を有し、かつ該電極層(1)表面に光増感材を吸着した多孔質金属酸化物半導体膜(1)が形成されてなる基板(1)と、
表面に電極層(2)を有する基板(2)とが、
前記電極層(1)および電極層(2)が対向するように配置してなり、
多孔質金属酸化物半導体膜(1)と電極層(2)との間に電解質層を設けてなる光電気セルにおいて、電解質層に水分子吸着剤を含むことを特徴としている。
本発明に係る光電気セルとしては、たとえば、図1に示すものが挙げられる。
図1は、本発明に係る光電気セルの1例を示す概略断面図であり、表面に電極層(1)を
有し、必要に応じて該電極層(1)上に酸化チタン薄膜(1)を有し、電極層(1)上、あるいは
酸化チタン薄膜(1)上に光増感材を吸着した多孔質金属酸化物半導体膜(1)が形成されてなる基板(1)と、表面に電極層(2)を有する基板(2)とが、前記電極層(1)および電極層(2)が
対向するように配置してなり、多孔質金属酸化物半導体膜(1)と電極層(2)との間に水分子吸着剤を含む電解質が封入されている。
図1中、1は電極層(1)、2は半導体膜(1)、3は電極層(2)、4は電解質層(2)、5は基板(1)、6は基板(2)、7は酸化チタン薄膜(1)を示す。
なお、本発明によって得られる光電気セルは図示した光電気セルに限定されるものではなく、半導体膜を2層以上有し、この間に別の電極層および電解質層または水分子吸着剤を含む電解質層を設けた光電気セルであってもよい。
基板
一方の基板としてはガラス基板、PET等の有機ポリマー基板等の透明でかつ絶縁性を有する基板を用いることができる。
他の一方の基板としては使用に耐える強度を有していれば特に制限はなく、ガラス基板、PET等の有機ポリマー基板等の絶縁性基板の他に、金属チタン、金属アルミニウム、金属銅、金属ニッケルなどの導電性基板を使用することができる。
また、基板は少なくとも一方が透明であればよい。
電極層
基板(1)表面に形成された電極層(1)としては、酸化錫、Sb、FまたはPがドーピングされた酸化錫、Snおよび/またはFがドーピングされた酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、貴金属等などの従来公知の電極を使用することができる。
このような電極層(1)は、熱分解法、CVD法などの従来公知の方法により形成するこ
とができる。
また、他の一方の基板(2)表面に形成された電極層(2)としては、還元触媒能を有するものであれば特に制限されるものでなく、白金、ロジウム、ルテニウム金属、ルテニウム酸化物等の電極材料、酸化錫、Sb、FまたはPがドーピングされた酸化錫、Snおよび/またはFがドーピングされた酸化インジウム、酸化アンチモンなどの導電性材料の表面に前記電極材料をメッキあるいは蒸着した電極、カーボン電極など従来公知の電極を用いることができる。
このような電極層(2)は、基板(2)上に前記電極を直接コーティング、メッキあるいは蒸着させて、導電性材料を熱分解法、CDV法等の従来公知の方法により導電層を形成した後、該導電層上に前記電極材料をメッキあるいは蒸着するなど従来公知の方法により形成することができる。
なお、基板(2)は、基板(1)と同様に透明基板であってもよく、また電極層(2)は、電極
層(1)と同様に透明電極であってもよい。さらに、基板(2)は基板(1)と同じものであって
もよく、電極層(2)は電極層(1)と同じものであってもよい。
透明基板(1)と透明電極層(1)の可視光透過率は高い方が好ましく、具体的には50%以上、特に好ましくは90%以上であることが望ましい。可視光透過率が50%未満の場合は光電変換効率が低くなることがある。
電極層(1)および電極層(2)の抵抗値は、各々100Ω/cm2以下であることが好まし
い。電極層の抵抗値が100Ω/cm2を超えて高くなると光電変換効率が低くなること
がある。
酸化チタン薄膜
本発明において、必要に応じて電極層(1)上に酸化チタン薄膜(1)を形成することができる。この酸化チタン薄膜(1)は増粘剤を含むペルオキシチタン酸水溶液を用いて形成され
たものであり、緻密な膜である。
酸化チタン薄膜(1)は膜厚が10〜70nm、さらには20〜40nmの範囲にあるこ
とが好ましい。酸化チタン薄膜(1)の膜厚が薄いと、酸化チタン膜(1)による暗電流の抑制、電子の再結合の抑制が不充分となる。酸化チタン薄膜(1)の膜厚が厚すぎると、エネル
ギー障壁が大きくなりすぎて電子の移動が抑制され、逆に光電変換効率が低下することがある。
また、酸化チタン薄膜(1)は細孔容積が0.01〜0.20ml/g、さらには0.0
2〜0.15ml/gの範囲にあることが好ましい。細孔容積が前記上限よりも多いと、緻密性が低下してしまい、電解液と電極との接触が起こり、電子の逆流、電子の再結合の抑制効果が不充分となることがある。なお、スパッタリングなどの方法でも、緻密な酸化チタン薄膜を得ることは可能であるが、緻密すぎて電子の移動を阻害したり、後に形成する多孔質金属酸化物半導体膜との密着性が不充分となることがある。
酸化チタン薄膜(1)は平均細孔径が0.5〜5.0nm、さらには1.0〜3.5nm
の範囲にあることが好ましい。酸化チタン薄膜(1)の平均細孔径が前記上限よりも大きい
ものは、電解液と電極との接触が起こり、電子の逆流、電子の再結合の抑制効果が不充分となることがある。
このような酸化チタン薄膜(1)は、電極層(1)上に増粘剤を含むペルオキシチタン酸水溶液を、(A)スピンコート法、(B)ディップコート法、(C)フレキソ印刷法、(D)ロールコーター法、(E)電気泳動法から選ばれる1種以上の方法で塗布し、乾燥し、硬化させることに
より形成することができる。
酸化チタン薄膜(1)の形成に用いるペルオキシチタン酸水溶液の濃度はTiO2として0
.1〜2.0重量%、さらには0.3〜1.0重量%の範囲にあることが好ましい。ペルオキシチタン酸水溶液の濃度が薄いと、所望の膜厚の酸化チタン薄膜(1)が得られないこ
とがあり、繰返し塗布、乾燥を行う必要が生じる。ペルオキシチタン酸水溶液の濃度が薄いと、乾燥時にクラックが生じたり、緻密な膜を形成できないことがあり、暗電流の抑制、電子の再結合の抑制効果が得られないことがある。
ここで、ペルオキシチタン酸とは過酸化水和チタンをいい、たとえば、チタン化合物の水溶液、または水和酸化チタンのゾルまたはゲルに過酸化水素を加えて加熱することによって調製することができる。具体的には、まず、チタン化合物を加水分解してオルソチタン酸のゾルまたはゲルを調製する。
オルソチタン酸のゲルは、チタン化合物として塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニルなどのチタン塩を使用し、この水溶液にアルカリを加えて中和し、洗浄することによって得ることができる。また、オルソチタン酸のゾルは、チタン塩の水溶液をイオン交換樹脂に通して陰イオンを除去するか、あるいはチタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシドなどのチタンアルコキシドの水および/または有機溶媒に酸またはアルカリを加えて加水分解することによって得ることができる。
中和あるいは加水分解する際、チタン化合物の溶液のpHは7〜13の範囲にあることが好ましい。チタン化合物溶液のpHが上記範囲にあるとオルソチタン酸のゲルまたはゾルの微細な粒子が得られ、後述する過酸化水素との反応が容易となる。
さらに、中和あるいは加水分解する際の温度は0〜60℃の範囲にあることが好ましく、特に好ましい範囲は0〜50℃の範囲である。中和あるいは加水分解する際の温度が上記範囲にあるとオルソチタン酸のゲルまたはゾルの微細な粒子が得られ、後述する過酸化水素との反応が容易となる。得られたゲルまたはゾル中のオルソチタン酸粒子は、非晶質であることが好ましい。
次に、オルソチタン酸のゲルまたはゾルあるいはこれらの混合物に、過酸化水素を添加してオルソチタン酸を溶解してペルオキシチタン酸水溶液を調製する。
ペルオキシチタン酸水溶液を調製するに際しては、オルソチタン酸のゲルまたはゾルあるいはこれらの混合物を、必要に応じて約50℃以上に加熱したり、攪拌したりすることが好ましい。また、この際、オルソチタン酸の濃度が高くなるすぎると、その溶解に長時間を必要とし、さらに未溶解のゲルが沈殿したり、あるいは得られるペルオキシチタン酸水溶液が粘調になることがある。このため、TiO2濃度としては、約10重量%以下であることが好ましく、さらに約5重量%以下であることが望ましい。
添加する過酸化水素の量は、H22/TiO2(オルソチタン酸はTiO2に換算)重量比で1以上であれば、オルソチタン酸を完全に溶解することができる。H22/TiO2重量比が1未満であると、オルソチタン酸が完全には溶解せず、未反応のゲルまたはゾルが残存することがある。また、H22/TiO2重量比は大きいほど、オルソチタン酸の溶解速度は大きく反応時間は短時間で終了するが、あまり過剰に過酸化水素を用いても、未反応の過酸化水素が系内に残存するだけであり、経済的でない。このような量で過酸化水素を用いると、オルソチタン酸は0.5〜20時間程度で溶解する。本発明に用いるペルオキシ
チタン酸水溶液は溶解後、50〜90℃で熟成することが好ましい。この熟成を行うと実質的に非晶質であるがアナターゼ類似のX線回折パターンを示し、平均粒子径が10〜50nmの範囲にある粒子が生成し、前記細孔容積および平均細孔径を有する酸化チタン薄膜を再現性よく得ることができる。
熟成時間は熟成温度によっても異なるが、通常1〜25時間である。
また、本発明に用いるペルオキシチタン酸水溶液は増粘剤を含んでいるが、増粘剤としてはエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノール、ターシャリーブタノール等が含まれていてもよい。このような増粘剤がペルオキシチタン酸水溶液中に含まれていると、塗布液の粘度が高くなり、これにより均一に塗布することができ、クラックのない均一な膜厚の酸化チタン薄膜が得られ、下層の電極層との密着性の高い酸化チタン薄膜を得ることができる。
ペルオキシチタン酸水溶液中の増粘剤の濃度は増粘剤の種類によっても異なるが1.0〜60.0重量%、さらには3.0〜35.0重量%の範囲にあることが好ましい。増粘剤の濃度が低すぎると前記増粘剤を用いた効果が不充分であり、また濃度が高すぎると塗布性が低下し、膜厚が厚くなりすぎたり、クラックが生じることがあり、前記酸化チタン薄膜を設ける効果が得られないことがある。
ペルオキシチタン酸水溶液の塗布方法が(A)スピンコート法、(B)ディップコート法、(C)フレキソ印刷法、(D)ロールコーター法(E)電気泳動法のいずれかであれば、電極層との
密着性に優れ、膜厚が均一で、クラックがなく、かつ強度に優れた酸化チタン薄膜(1)を
形成することができ、特に工業的にはフレキソ印刷法が好適に採用することができる。
乾燥は分散媒である水を除去できる温度であればよく、従来公知の方法を採用することができ、風乾することも可能であるが、通常50〜200℃で0.2〜5時間程度乾燥する。本発明では、乾燥後、後述する多孔質金属酸化物半導体膜を形成することができるが、乾燥後硬化した後多孔質金属酸化物半導体膜を形成してもよい。
乾燥処理のみでも硬化するが、さらに必要に応じて紫外線を照射し、ついで加熱処理によってアニーリングする。
紫外線の照射はペルオキソチタン酸が分解して硬化するに必要な量照射すればよい。
加熱処理は、通常、200〜500℃、さらには300〜450℃で概ね1〜48時間処理する。
多孔質金属酸化物半導体膜
前記電極層(1)上、または必要に応じて設ける酸化チタン薄膜(1)上に多孔質金属酸化物半導体膜が形成されている。この多孔質金属酸化物半導体膜の膜厚は、0.1〜50μmの範囲にあることが好ましい。
多孔質金属酸化物半導体膜としては従来公知の多孔質金属酸化物半導体膜を用いることができ、通常、酸化チタン微粒子からなる多孔質金属酸化物半導体膜が用いられる。
酸化チタン微粒子の平均粒子径は5〜600nm、さらには10〜300nmの範囲にあることが好ましい。
酸化チタン微粒子の平均粒子径が5nm未満のものは得ることが困難であり、得られたとしても結晶性が低く、また、形成後の半導体膜を加熱処理した際に温度によっては焼結することがあり、酸化チタン微粒子の比表面積が低下するために光増感材の吸着量が低下し、光電変換効率が不充分となることがある。
酸化チタン微粒子の平均粒子径が600nmを越えると、光増感材の吸着量が不充分となり、光電変換効率が不充分となることがある。
酸化チタン微粒子は結晶性の酸化チタン、例えば、アナタース型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン、ルチル型酸化チタンであることが好ましい。
本発明に係る多孔質金属酸化物半導体膜の細孔容積は0.10〜0.80ml/g、さらには0.20〜0.65ml/gの範囲にあることが好ましい。
多孔質金属酸化物半導体膜の細孔容積が0.10ml/gより小さい場合は、増感色素の吸着が不十分となったり、電解質の拡散性が低下してバックカレントを引き起こすことがあり、変換効率が不充分となることがある。
また0.80ml/gを超えて高い場合には金属酸化物半導体膜の強度が不充分となることがある。
このような多孔質金属酸化物半導体膜の形成方法は、前記した酸化チタン微粒子を含む多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗布液を用いて、公知の塗布方法を採用できるが、好適には本願出願人の出願による特開平11−339867号公報に開示した金属酸化物半導体膜の製造方法は好適に準用することができる。
本発明に係る光電気セルでは、多孔質金属酸化物半導体膜(1)が光増感材を吸着してい
る。
光増感材
光増感材としては、可視光領域、紫外光領域、赤外光領域の光を吸収して励起するもの
であれば特に制限はなく、たとえば有機色素、金属錯体などを用いることができる。
有機色素としては、分子中にカルボキシル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基、スルホン基、カルボキシアルキル基等の官能基を有する従来公知の有機色素が使用できる。 具体的には、メタルフリーフタロシアニン、シアニン系色素、メタロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素およびウラニン、エオシン、ローズベンガル、ローダミンB、ジブロムフルオレセイン等のキサンテン系色素等が挙げられる。これらの有機色素は金属酸化物半導体膜への吸着速度が早いという特性を有している。
また、金属錯体としては、特開平1-220380号公報、特表平5-504023号公報などに記載された銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニンなどの金属フタロシアニン、クロロフィル、ヘミン、ルテニウム-トリス(2,2'-ビスピリジル-4,4'-ジカルボキシラート)、シス-(SCN-)-ビス(2,2'-ビピリジル-4,4'-ジカルボキシレート)ルテニウム、ルテニウム-シ
ス-ジアクア-ビス(2,2'-ビピリジル-4,4'-ジカルボキシラート)などのルテニウム-シス-
ジアクア-ビピリジル錯体、亜鉛-テトラ(4-カルボキシフェニル)ポルフィンなどのポルフィリン、鉄-ヘキサシアニド錯体等のルテニウム、オスミウム、鉄、亜鉛などの錯体を挙
げることができる。これらの金属錯体は分光増感の効果や耐久性に優れている。
上記の光増感材としての有機色素または金属錯体は単独で用いてもよく、有機色素または金属錯体の2種以上を混合して用いてもよく、さらに有機色素と金属錯体とを併用してもよい。
多孔質金属酸化物半導体膜の光増感材の吸着量は多孔質金属酸化物半導体膜の比表面積1cm2あたり100μg以上、さらには150μg以上であることが好ましい。
多孔質金属酸化物半導体膜の光増感材の吸着量が100μg未満の場合は光電変換効率が不充分となる。
このような光増感材の吸着方法は、特に制限はなく、光増感材を溶媒に溶解した溶液を、ディッピング法、スピナー法、スプレー法等の方法により多孔質金属酸化物半導体膜に吸収させ、次いで乾燥する等の一般的な方法が採用できる。さらに必要に応じて前記吸収工程を繰り返してもよい。また、光増感材溶液を加熱環流しながら前記基板と接触させて光増感材を多孔質金属酸化物半導体膜に吸着させることもできる。
光増感材を溶解させる溶媒としては、光増感材を溶解するものであればよく、具体的には、水、アルコール類、トルエン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、エチルセルソルブ、Nーメチルピロリドン、テトラヒドロフラン等を用いることができる。
光増感材溶液の光増感材の濃度は多孔質金属酸化物半導体膜の比表面積1cm2あたり
100μg以上、さらには200μg以上となる濃度が好ましい。
本発明では、前記した表面に電極層(1)を有し、該電極層(1)上に必要に応じて酸化チタン薄膜(1)を有し、かつ電極層(1)上または酸化チタン薄膜(1)上に光増感材を吸着した多
孔質金属酸化物半導体膜を有する基板(1)と、表面に電極層(2)を有する基板(2)とを、電
極層(1)および電極層(2)が対向するように配置し、側面を樹脂にてシールし、多孔質金属酸化物半導体膜(1)と電極層(2)との間に水分子吸着剤を含む電解質を封入し、さらに電極間をリード線で接続することによって光電気セルを製造することができる。
電解質層
電解質としては、電気化学的に活性な塩とともに酸化還元系を形成する少なくとも1種の化合物との混合物が使用される。
電気化学的に活性な塩としては、テトラプロピルアンモニウムアイオダイドなどの4級アンモニウム塩が挙げられる。酸化還元系を形成する化合物としては、キノン、ヒドロキ
ノン、沃素(I-/I- 3)、沃化カリウム、臭素(Br-/Br- 3)、臭化カリウム等が挙げられる。場合によってはこれらを混合して使用することもできる。
電解質の使用量は、電解質の種類、後述する溶媒の種類によっても異なるが、概ね0.
1〜5モル/リットルの範囲にあることが好ましい。
電解質層には、従来公知の溶媒を用いることができる。具体的には炭素数1〜6のアルコール類、オリゴエーテル類、プロピオンカーボネート等のカーボネート類、燐酸エステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、スルホラン66の硫黄化合物、炭酸エチレン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトンおよびイオン性液体等が挙げられる。
イオン性液体については、特に制限されるものではないが、室温で液体であり、例えば四級化イミダゾリウム誘導体、四級化ピリジウム誘導体、四級化アンモニウム誘導体等の窒素原子を有する化合物をカチオンとし、BF4 -、PF6 -、(HF)n -、ビストリフルオロメチルスルホニルイミド[N(CF3SO2)2 -]、トリシアノメチル[C(CN)3 -]、ヨウ化物イオン等をアニオンとして有する常温溶融塩が挙げられる。
本発明では、電解質層に水分子吸着剤が含まれている。
水分子吸着剤
水分子吸着剤としては、水分子吸着能を有し、電解質に対して化学的に安定であれば特に制限はなく、従来公知の吸着剤を用いることができる。このような水分子吸着剤を含むことで、光電気セル作製時およびその後の経時変化にともない、電解質層中に含まれる水分子が吸着される。その結果、光増感材が脱離することが無く長期にわたって高い光電変換効率を維持することができ、さらに光電気セル製造工程を無水雰囲気とする必要が無く経済性に優れた、光電気セルを提供することができる。
具体的には、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ・アルミナ、シリカ・ジルコニア、シリカ・チタニア等の無機酸化物、無機複合酸化物、吸水性樹脂ポリマー等およびこれらの混合物が挙げられる。
これらの水分子吸着剤は、絶縁性の粒子であるのでスペーサー機能を有し、PET等の可撓性の有機ポリマー基板であっても応力が加わった際に対の電極の接触を防止することが可能である。
中でも、結晶性のシリカ・アルミナであるゼオライトは、水分子を選択的に吸着し、吸着容量が大きく、吸着力が強いので好適に用いることができる。
ゼオライトとしては、ZSM−5型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、フォージャサイト型ゼオライト、A型ゼオライト、L型ゼオライト、βゼオライトから選ばれる1
種以上であることが好ましい。
水分子吸着剤は、平均粒子径が50nm〜10μm、さらには100nm〜2μmの範囲にあることが好ましい。なお、この範囲で、形成される電解質層の厚さに応じて、適宜粒子径は選択される。
水分子吸着剤の平均粒子径が小さすぎると、酸化チタン半導体膜の細孔径を塞ぎ、電解質の拡散を抑制する可能性がある。また、水分子吸着剤がゼオライトである場合、結晶性が低く、水分吸着量が低下し、ゼオライトの使用量を増加させる必要があり、水分子吸着剤の量は少量で効果を発揮させる観点から望ましくない。また、粒子が小さすぎると容易に移動することからスペーサー機能が得られない場合がある。水分子吸着剤の平均粒子径が大きすぎると、単一粒子として得ることが困難であり、得られたとしても電解質層中で
の分散が不均一になり、場合によって、セル自体を破損させることもなり、また、外部表面積が小さいために水分子吸着速度が低下するためか、本発明の効果、すなわち光増感材の脱離を抑制し、長期にわたって高い光電変換効率を維持できる効果が充分得られない場合がある。
水分子吸着剤の形状は特に制限はないが、球状粒子、針状粒子、多面体粒子等が一般的である。
本発明では、特に平均粒子径が50nm〜0.5μmの範囲にある微小ゼオライトを用いることが好ましい。(特表平8−500574号公報、特開2004−315338号公報)
このような微小ゼオライトを用いると、水分子の吸着速度、吸着能に優れ、電解質中のイオンの拡散を阻害せず、本願発明の効果を発揮することができる。
水分子吸着剤がアルカリ、特にナトリウムを含まないことが望ましく、水分子吸着剤中のアルカリ含有量は2重量%以下、特に1重量%以下であることが好ましい。水分子吸着剤中のアルカリ含有量が多くなると、アルカリイオンが遊離しやすく、遊離したアルカリイオンがI-/I- 3の酸化還元に対して影響を与えたり、吸着した水分子と同様、酸化物
半導体電極表面にエステル結合した色素の加水分解、加水分解による脱離を促進したりする場合がある。
ゼオライトのアルカリ含有量を低減させる方法としては、従来公知の方法を採用することができる。例えば、合成して得られたゼオライトを塩化アンモニウム塩などの水溶液中でイオン交換する方法が一般的である。イオン交換は必要に応じて繰り返し行うことが好ましく、途中で加熱焼成してイオン交換してもよい。また、耐酸性のあるモルデナイト型ゼオライト、ZSM型-5型ゼイオライトなどは直接塩酸等の酸で処理することも可能で
ある。
電解質層中の水分子吸着剤の含有量は水分子吸着剤の水分子吸着容量によっても異なるが、0.001〜10重量%、さらには0.01〜1重量%の範囲にあることが好ましい。
電解質層中の水分子吸着剤の含有量が少ないと、電解質層中の水分を充分吸着できず、このため、光増感材の脱離を抑制できず、光電変換効率が不充分となる場合がある。電解質層中の水分子吸着剤の含有量を多くしても、その必要性が殆どないことに加え、電解質の減量が多くなることに加え電解質中の電子の拡散が水分子吸着剤により阻害され、光電変換効率が不充分となる傾向にある。
水分子吸着剤は、電解質溶液に混合した後、光電気セル内に封入される。その方法は特に制限されないが、公知の方法を特に制限なく採用することができる。
なお、使用する溶媒は少なくとも水分量が、10000ppm以下のものであることが望ま
しい。これ以上水分を含んでいると、水分子吸着剤を多量に使用する必要が生じ、上記のような問題を生じることとなる。このため、予め溶媒などは脱水処理を行ってもよく、水分を吸着しないような設備や環境を設けておくことが望ましい。
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに実施例により限定されるものではない。
[水分子吸着剤の調製]
(1)ゼオライト水分子吸着剤
シリカアルミナヒドロゲルスラリー(1-1)の調製
NaOH水溶液(NaOH濃度48重量%)203gにアルミン酸ソーダ水溶液(Al23濃度22重量%、Na2O濃度17重量%)57.7gを加え、1時間攪拌した。
ついで、これにSiO2濃度16.2重量%の3号水硝子740gを1時間で添加した。この時、温度を30℃に維持した。ついで、30分間撹拌した後、38℃で12時間静置してシリカアルミナヒドロゲルスラリー(1-1)を調製した。
シリカアルミナヒドロゲルスラリー(1-1)の酸化物モル比は、Na2O:Al23:SiO2:H2O=16.0:1.0:16.0:332であった。
シリカアルミナヒドロゲルスラリー(2-1)の調製
SiO2濃度24重量%の3号水硝子500gにシリカアルミナヒドロゲルスラリー(1-1) 500gを撹拌しながら添加し、30分間攪拌して、シリカアルミナヒドロゲルスラリー(2-1)を調製した。この酸化物モル比は、Na2O:Al23:SiO2:H2O=26.0
:1.0:48.1:637であった。
ついで、シリカアルミナヒドロゲルスラリー(2-1)を60℃で48時間水熱処理し、遠
心分離し、イオン交換水で充分に洗浄し、コロイド状フォージャサイト型ゼオライト(1)
を合成した。得られたコロイド状フォージャサイト型ゼオライト(1)について、走査型電
子顕微鏡写真を撮影し、100個の粒子について粒子径を求めて算出した平均粒子径は60nmであった。また、SiO2/Al23比は4.0、比表面積は290m2/gであった
ついで、コロイド状フォージャサイト型ゼオライト(1)を過剰の硫酸アンモニウムの水
溶液でイオン交換を3回繰り返し、充分洗浄した後乾燥し、ついで、400℃で2時間焼成してゼオライト水分子吸着剤(1)を調製した。
ゼオライト水分子吸着剤(1)のアルカリ含有量は0.9重量%であった。
(2)ゼオライト水分子吸着剤の調製
シリカアルミナヒドロゲルスラリー(1-2)の調製
NaOH水溶液(NaOH濃度48重量%)188gにアルミン酸ソーダ水溶液(Al23濃度22重量%、Na2O濃度17重量%)56.9gを加えて、1時間攪拌した。
ついで、これにシリカ濃度17.5重量%の3号水硝子755gを1時間で添加した。この時、温度を30℃に維持した。ついで、30分間撹拌した後、38℃で50時間静置してシリカアルミナヒドロゲルスラリー(1-2)を調製した。
シリカアルミナヒドロゲルスラリー(1-2)の酸化物モル比は、Na2O:Al23:SiO2:H2O=16.0:1.0:17.9:332であった。
シリカアルミナヒドロゲルスラリー(2-2)の調製
SiO2濃度24重量%の3号水硝子500gにシリカアルミナヒドロゲルスラリー(1-5)500gを撹拌しながら添加し、30分間攪拌して、シリカアルミナヒドロゲルスラリ
ー(2-2)を調製した。この酸化物モル比は、Na2O:Al23:SiO2:H2O=26.1:1.0:50.5:641であった。
ついで、シリカアルミナヒドロゲルスラリー(2-2)を60℃で48時間水熱処理し、遠
心分離し、イオン交換水で充分に洗浄し、コロイド状フォージャサイト型ゼオライト(2)
を合成した。得られたコロイド状フォージャサイト型ゼオライト(2)の平均粒子径は10
0nmであった。また、SiO2/Al23比は4.0、比表面積は310m2/gであった
ついで、コロイド状フォージャサイト型ゼオライト(2)を過剰の硫酸アンモニウムの水
溶液でイオン交換を3回繰り返し、充分洗浄した後乾燥し、400℃で2時間焼成してゼオライト水分子吸着剤(2)を調製した。
ゼオライト水分子吸着剤(2)のアルカリ含有量は0.8重量%であった。
(3)ゼオライト水分子吸着剤
NaYゼオライト(日揮触媒化成(株)製:T−90、平均粒子径:1.2μm、Si
2/Al23比:5.0、比表面積:600m2/g)を過剰の硫酸アンモニウムの水溶液でイオン交換を1回行い、ついで、120℃で2時間乾燥し、600℃で2時間焼成した。ついで、過剰の硫酸アンモニウムの水溶液でイオン交換を2回行い、充分洗浄した後120℃で2時間乾燥し、400℃で2時間焼成してゼオライト水分子吸着剤(3)を調製し
た。
ゼオライト水分子吸着剤(3)のアルカリ含有量は0.5重量%であった。
(4)ゼオライト水分子吸着剤
NaYゼオライト(日揮触媒化成(株)製:T−90、平均粒子径1.2μm、SiO2/Al23比は5.0、比表面積600m2/g)を過剰の硫酸アンモニウムの水溶液でイ
オン交換を1回行い、ついで、120℃で2時間乾燥し、600℃で2時間焼成した。過剰の硫酸アンモニウムの水溶液でイオン交換を2回行い、充分洗浄した後、固形分濃度50重量%に調整したゼオライトスラリーをステンレス製容器に充填し、600℃で3時間、蒸し焼きにした。ついで、ゼオライトを粉砕した後、固形分濃度10重量%のスラリーとし、これに硫酸を加えてアルミナの一部を溶解除去した。充分洗浄した後120℃で2時間乾燥し、400℃で2時間焼成してゼオライト水分子吸着剤(4)を調製した。
ゼオライト水分子吸着剤(4)のSiO2/Al23比は8.0、アルカリ含有量は0.3重量
%であった。
(5)ゼオライト水分子吸着剤
テトラエチルオルソシリケート(TEOS)(東京化成工業(株)製:SiO2濃度2
8重量%)345.4gにテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)水溶液(セイケムアジア(株)製:TPAOH濃度40重量%)75.0gを添加した。
別途、イソプロピルアルコール(IPA)65.8gにアルミニウムイソプロポキシド(東京化成工業(株)製:Al23濃度25重量%)13.2gを溶解した。
ついで、TEOSとTPAOHとの混合(水)溶液にAIPOのIPA溶液を1.0時間で添加した。80℃で3時間撹拌してアルコールを蒸発させた後、固形分濃度が8.4%となるように水により希釈し、オートクレーブに充填し、撹拌下、2時間で160℃に昇温し、48時間水熱処理した。
濾過して合成母液と分離し、固形分を充分に洗浄し、120℃で2時間乾燥し、ついで、550℃で2時間焼成してゼオライト水分子吸着剤(5)を調製した。
ゼオライト水分子吸着剤(5)はZSM−5型ゼオライトであり、平均粒子径は0.5μ
m、比表面積は300m2/g、SiO2/Al23比は50であった。
[実施例1]
ペルオキシチタン酸水溶液(1)の調製
18.3gの4塩化チタンを純水で希釈してTiO2として1.0重量%含有する水溶
液を得た。これを撹拌しながら、濃度15重量%のアンモニア水を添加し、pH9.5の白色スラリーを得た。このスラリーを濾過洗浄し、TiO2として濃度10.2重量%の
水和酸化チタンゲルのケーキを得た。このケーキと濃度5%過酸化水素液400gを混合し、ついで80℃で2時間加熱して溶解し、TiO2として濃度1.0重量%のペルオキ
ソチタン酸水溶液(1)を得た。さらに、TiO2濃度0.5%、エチレングリコール濃度
20%となるように水およびペルオキソチタン酸水溶液にエチレングリコールを加えペルオキソチタン酸コーティング液(1)を得た。
酸化チタン薄膜(1)の形成
ペルオキソチタン酸コーティング溶液(1)をフッ素ドープした酸化スズを電極として形成
した透明ガラス基板にフレキソ印刷法で塗布し、自然乾燥し、引き続き低圧水銀ランプを用いて6000mJ/cm2の紫外線を照射してペルオキソ酸を分解させ、膜を硬化させ
た。さらに、450℃で30分間加熱して硬化およびアニーリングを行って酸化チタン薄膜(1)を形成した。
得られた酸化チタン薄膜(1)の膜厚および窒素吸着法によって求めた細孔容積と平均細
孔径を表1に示した。
多孔質金属酸化物半導体膜(1)の形成
多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(触媒化成工業(株)製:PST−18NR、酸化チタンコロイド平均粒子径:20nm、TiO2濃度17重量%、エチルセルロース濃度7.0重量%、溶媒:テルピネオール)をスクリーン印刷、および乾燥を繰り返し行い、450℃での焼成により13μmの膜厚となるように繰返し、その後450℃での焼成アニーリングを行って多孔質金属酸化物半導体膜(1)を形成した。
得られた多孔質金属酸化物半導体膜(1)の膜厚および窒素吸着法によって求めた細孔容
積と平均細孔径を表に示した。また、多孔質金属酸化物半導体膜(1)の密着性を評価し、
結果を表1に示した。
光増感材の吸着
光増感材としてDYESOL社製B2色素を濃度0.1%となるようにエタノール溶液を調製した。この溶液に多孔質金属酸化物半導体膜(1)を形成したガラスを5時間漬込み
、取り出した後エタノール水溶液で洗浄し、色素を吸着させた。色素の吸着量は、多孔質金属酸化物半導体膜の比表面積1cm2あたり180μgであった。
電解質溶液(1)の調製
先ず、溶媒としてはイオン性液体であるメチルプロピルイミダゾリウムトリシアノメチレートにI2を0.3M、LiIを0.5Mおよびtert−ブチルピリジンを0.58Mとなるように溶解したものを用いた。
電解質溶液の水分含有量を測定したところ100ppmppmであった。
この電解質溶液1000gに、先に調製したゼオライト水分子吸着剤(1)2gを混合し
て水分子吸着剤を含む電解質溶液(1)を調製した。
光電気セル(1)の作成
前記で調製した電極を一方の電極とし、他方の電極としてフッ素ドープした酸化スズを電極として形成し、その上に白金を担持した透明ガラス基板を対向して配置し、側面を樹脂にてシールし、電極間に上記の電解質溶液(1)を封入し、さらに電極間をリード線で接
続して光電気セル(1)を作成した。
光電気セル性能評価(1)
光電気セル(1)は、ソーラーシュミレーターで100W/m2の強度の光を入射角90°(セル面と90°)で照射して、Voc(開回路状態の電圧)、Joc(回路を短絡したときに流れる電流の密度)、FF(曲線因子)およびη(変換効率)を測定し結果を表1に示した。
光電気セル性能評価(2)
光電気セル(1)を(乾燥雰囲気下)30℃で30日放置した後、再び同様の測定を行っ
た。結果を表1に示した。
[実施例2]
電解質溶液(2)の調製
実施例1において、ゼオライト水分子吸着剤(1)1gを混合した以外は同様にして水分
子吸着剤を含む電解質溶液(2)を調製した。
光電気セル(2)の作成
実施例1において、水分子吸着剤を含む電解質溶液(2)を用いた以外は同様にして光電
気セル(2)を作成した。
光電気セル(2)について光電気セル性能評価(1)および 光電気セル性能評価(2)を行った。結果を表1に示した。
[実施例3]
電解質溶液(3)の調製
実施例1において、ゼオライト水分子吸着剤(1)5gを混合した以外は同様にして水分
子吸着剤を含む電解質溶液(3)を調製した。
光電気セル(3)の作成
実施例1において、水分子吸着剤を含む電解質溶液(3)を用いた以外は同様にして光電
気セル(3)を作成した。
光電気セル(3)について光電気セル性能評価(1)および光電気セル性能評価(2)を行った
。結果を表1に示した。
[実施例4]
電解質溶液(4)の調製
実施例1において、ゼオライト水分子吸着剤(2)2gを混合した以外は同様にして水分
子吸着剤を含む電解質溶液(4)を調製した。
光電気セル(4)の作成
実施例1において、水分子吸着剤を含む電解質溶液(4)を用いた以外は同様にして光電
気セル(4)を作成した。
光電気セル(4)について光電気セル性能評価(1)および 光電気セル性能評価(2)を行った。結果を表1に示した。
[実施例5]
電解質溶液(5)の調製
実施例1において、ゼオライト水分子吸着剤(3)2gを混合した以外は同様にして水分
子吸着剤を含む電解質溶液(5)を調製した。
光電気セル(5)の作成
実施例1において、水分子吸着剤を含む電解質溶液(5)を用いた以外は同様にして光電
気セル(5)を作成した。
光電気セル(5)について光電気セル性能評価(1)および 光電気セル性能評価(2)を行った。結果を表1に示した。
[実施例6]
電解質溶液(6)の調製
実施例1において、ゼオライト水分子吸着剤(4)5gを混合した以外は同様にして水分
子吸着剤を含む電解質溶液(6)を調製した。
光電気セル(6)の作成
実施例1において、水分子吸着剤を含む電解質溶液(6)を用いた以外は同様にして光電
気セル(6)を作成した。
光電気セル(6)について光電気セル性能評価(1)および 光電気セル性能評価(2)を行った。結果を表1に示した。
[実施例7]
電解質溶液(7)の調製
実施例1において、ゼオライト水分子吸着剤(5)10gを混合した以外は同様にして水
分子吸着剤を含む電解質溶液(7)を調製した。
光電気セル(7)の作成
実施例1において、水分子吸着剤を含む電解質溶液(7)を用いた以外は同様にして光電
気セル(7)を作成した。
光電気セル(7)について光電気セル性能評価(1)および 光電気セル性能評価(2)を行った。結果を表1に示した。
[実施例8]
電解質溶液(8)の調製
実施例1と同様にして調製した水分含有量100ppmの電解質溶液にさらに水を水分含有量1000ppmとなるように加え、これに、先に調製したゼオライト水分子吸着剤(1)5gを混合して水分子吸着剤を含む電解質溶液(8)を調製した。
光電気セル(8)の作成
実施例1において、水分子吸着剤を含む電解質溶液(8)を用いた以外は同様にして光電
気セル(8)を作成した。
光電気セル(8)について光電気セル性能評価(1)および 光電気セル性能評価(2)を行った。結果を表1に示した。
[比較例1]
電解質溶液(R1)
実施例1において、ゼオライト水分子吸着剤(1)を加えることなく、水分含有量100
ppmの電解質溶液を電解質溶液(R1)として用いた。
光電気セル(R1)の作成
実施例1において、電解質溶液(R1)を用いた以外は同様にして光電気セル(R1)を作成した。
光電気セル(R1)について光電気セル性能評価(1)および 光電気セル性能評価(2)を行っ
た。結果を表1に示した。
[比較例2]
電解質溶液(R2)
比較例1の電解質溶液(R1)に水分含有量が1000ppmとなるように水分を加えてを電解質溶液(R2)を調製した。
光電気セル(R2)の作成
実施例1において、電解質溶液(R2)を用いた以外は同様にして光電気セル(R2)を作成し
た。
光電気セル(R2)について光電気セル性能評価(1)および 光電気セル性能評価(2)を行っ
た。結果を表1に示した。
Figure 0005330783
本発明の光電気セルの1例を示す概略断面図である。
符号の説明
1・・・・・電極層(1)
2・・・・・半導体膜(1)
3・・・・・電極層(2)
4・・・・・電解質層(2)
5・・・・・基板(1)
6・・・・・基板(2)
7・・・・・酸化チタン薄膜

Claims (5)

  1. 表面に電極層(1)を有し、かつ該電極層(1)表面に光増感材を吸着した多孔質金属
    酸化物半導体膜(1)が形成されてなる基板(1)と、
    表面に電極層(2)を有する基板(2)とが、
    前記電極層(1)および電極層(2)が対向するように配置してなり、
    多孔質金属酸化物半導体膜(1)と電極層(2)との間に電解質層を設けてなる光電気セルにおいて、
    電解質層に水分子吸着剤を含み、前記水分子吸着剤がゼオライトであり、前記ゼオライトが、ZSM−5型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、フォージャサイト型ゼオライト、A型ゼオライト、L型ゼオライト、βゼオライトから選ばれる1種以上であることを特徴とする光電気セル。
  2. 前記水分子吸着剤の平均粒子径が50nm〜10μmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の光電気セル。
  3. 前記水分子吸着剤中のアルカリ含有量が2重量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の光電気セル。
  4. 前記電極層(1)と多孔質金属酸化物半導体膜(1)との間にペルオキソチタン酸に由来する酸化チタン薄膜(1)を設けてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光電気セル。
  5. 前記酸化チタン薄膜(1)の膜厚が10〜70nmの範囲にあり、細孔容積が0.01〜0.20ml/gの範囲にあり、平均細孔径が0.5〜5.0nmの範囲にあることを特徴とする請求項4に記載の光電気セル。
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