JP2003153681A - 蒸留酒の製造方法 - Google Patents
蒸留酒の製造方法Info
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Abstract
造方法を提供する。 【解決手段】 蒸留直前の醪のpHを3.8以下に調整
し、次いで醪から発生する蒸気を、銅及び/又は銅を含
む化合物の存在下で蒸留することを特徴とする蒸留酒の
製造方法。蒸留酒の例には、焼酎、スピリッツ、ウィス
キー、ブランデーなどがある。銅化合物の例には、酸化
物、塩類がある。また、蒸留液を、銅の存在下、Ca、
K、Mg、Naのいずれかを含む化合物の存在下で貯蔵して
もよい。 【効果】 バニリンを多く含有し、華やかで甘い芳香を
有し、丸みや熟成感が付与された蒸留酒を容易に得るこ
とができる。
Description
み、香味良好な蒸留酒の製造方法に関する。
より長期貯蔵したウィスキーなどの蒸留酒には、バニリ
ンが含まれていることが知られている。バニリンは、甘
い芳香をもち、その蒸留酒の熟成感、丸さ、重厚感に寄
与している。ウィスキーについては、蒸留液を樽で長期
間熟成させることによって、樽からバニリンの前駆成分
が溶出し、徐々にバニリンに変換されることが知られて
いる。一方、焼酎の一種である泡盛や大麦焼酎について
は、穀類などの原料に由来するバニリンの生成機構が明
らかにされている。泡盛は、通常、原料として米麹と水
のみを用いて仕込み、十分発酵させた後、ステンレス製
の単式蒸留機を用いて蒸留し、カメで貯蔵して十分熟成
させる方法によって製造されている。泡盛中のバニリン
の生成機構は、まず原料の細胞壁を構成するアラビノキ
シランの側鎖に結合しているフェルラ酸が遊離し,続い
て脱炭酸をうけて4−ビニルグアヤコール(4―Vin
ylguaiacol、以下、4−VGと略記する)と
なる。4−VGは、蒸留工程で蒸留液に移行し、その後
の数年間にも及ぶカメ貯蔵中に、徐々に酸化され、バニ
リンに変化する。
する手段として、フェルラ酸脱炭酸活性を有する酵素、
酵母を使用する方法が、特開平9−238673号公
報、特開平10−276788号公報、特開2000−
125840公報に開示されている。しかし、これらの
公報には、醪中に4−VGを得た結果が示されているも
のの、具体的なバニリンの値についての記載はない。更
に、蒸留工程以降の4−VGからバニリンへの変換方法
についての記載もなく、したがって最終的な蒸留酒製品
中のバニリン量についても明らかにされていない。
法として、醪熟成中にヒドロキシシンナミックアシッド
エステラーゼを使用する方法が、特開平7−11595
7号公報に開示されている。該公報には、蒸留前の醪に
4−VGやバニリンが増強されていることが示されてい
るが、蒸留後の蒸留液中のバニリン量については不明で
ある。更に、4−VGからバニリンへ変化させるための
有効な方法についての記載もない。また、4−VGは、
変換されずに多く残存した場合、特有の薬品臭を感じ、
官能的に好ましくない。
善剤を内装している焼酎蒸留機として、特開昭59−1
66077号公報が開示されている。該公報には、細線
状の銅からなる香味改善剤を充填した筒体を内装した蒸
留機を用いて蒸留することにより香味が改善された焼酎
が得られると記載されているが、蒸留前の醪のpHにつ
いての記載はなく、具体的にバニリンを増加させる方法
についての記載もない。
カメ貯蔵のような特別な熟成方法を必要とせず、短期間
で4−VGを効果的にバニリンに変換し、甘い芳香や熟
成感がある香味良好な蒸留酒を製造する方法の開発が求
められていた。
従来技術にかんがみ、バニリンを多く含み、香味良好な
蒸留酒の製造方法を提供することにある。
発明は、蒸留酒の蒸留工程において、蒸留直前の醪のp
Hを3.8以下に調整し、次いで醪から発生する蒸気
を、銅及び/又は銅を含む化合物の存在下で蒸留するこ
とを特徴とする蒸留酒の製造方法に関する。また、蒸留
後の蒸留液(これは、従来の蒸留液でも、上記した本発
明による蒸留液でもよい)に、銅及び/又は銅を含む化
合物を必要に応じて共存させて、カルシウム化合物、カ
リウム化合物、マグネシウム化合物、及びナトリウム化
合物よりなる群から選択される少なくとも1種の金属を
含む化合物の存在下で貯蔵することを特徴とする蒸留酒
の製造方法に関する。
好な蒸留酒を提供すべく、鋭意検討した。その結果、前
記した各発明に従って得られた蒸留酒がバニリンを多く
含み、更に芳香に富み、香味良好であることを見出し、
本発明を完成させた。
る。本発明でいう蒸留酒とは、穀類などの原料をアルコ
ール発酵させた醪を蒸留して得られるアルコール類のこ
とであり、例えば、焼酎、スピリッツ、ウィスキー、ブ
ランデーなどがある。
説明する。蒸留前の醪の製造方法については、通常の発
酵法で製造すればよく、特に限定はされない。例えば、
麦、米、トウモロコシ、イモなどのデンプン質原料を用
いる場合、これらの原料を蒸煮又は蒸きょう処理し、麹
及び/又は酵素剤で液化、糖化した後、酵母又は酒母を
添加して発酵させて製造することができる。上述の蒸留
前の醪の製造において、該醪を糖化後又は発酵後にろ過
することは任意であるが、本発明においては、良好な香
気成分を多く生産させるために、糖化後及び/又は発酵
後にろ過することが好ましい。得られた発酵醪のpH
は、通常4〜5の範囲であるが、本発明では、この蒸留
直前の醪に酸類を添加して醪のpHを3.8以下に調整
する。添加する酸類としては、特に限定はないが、酒税
法上認められているものとして、乳酸、リン酸、リンゴ
酸、酒石酸などがある。醪のpHが3.8を超える場
合、次の蒸留以降の工程でのバニリンの生成が少なくな
り、芳香に富んだ蒸留酒が得られない。本発明における
蒸留直前の醪のpHのより好ましい範囲は3.0〜3.
8である。醪のpHが3.0未満の場合、得られた蒸留
酒でバニリンが生成されるものの、不快な香味も多くな
り官能的に好ましくない。また、銅製の蒸留機を用いる
場合において、醪のpHが3.0〜3.8の範囲であれ
ば銅の溶出はあるものの、蒸留機の構造そのものに影響
を及ぼすことはないが、醪のpHが3.0未満になれ
ば、銅の溶出が激しくなり、蒸留缶本体やコンデンサ
ー、又は蒸留缶本体とコンデンサーを連結するスワンネ
ックなどの腐食の進行も早く現実的でない。
は、特に限定はないが、乙類焼酎などを製造する場合
は、通常単式蒸留機が用いられる。単式蒸留機とは、蒸
留缶、スワンネック(連結管)、コンデンサー(凝縮
器)などを具備し、水蒸気などの熱源で加熱し、回分式
蒸留操作で醪のアルコール分を回収できるようにした装
置である。加熱方式は、数本の水蒸気パイプを一定方向
に向けて蒸留缶内に設置し、その先端から水蒸気を吹き
出すような直接吹き込み方式、蒸留缶内に蛇管を設置し
たり、蒸留缶壁にジャケットを設置したりして、それら
に水蒸気を通して加熱する間接加熱方式、又は直接間接
併用方式などがあるが、これらのどの方法を用いてもよ
い。また、圧力の違いにより、大気圧下で蒸留する常圧
蒸留や、別に真空ポンプを設置して缶内の圧力を大気圧
より低い状態にして蒸留する減圧蒸留などがあるが、こ
れらの方法に特に限定はない。
び/又は銅を含む化合物の存在下で蒸留する方法とは、
醪を加熱することにより発生したエタノールを含んだ蒸
気を、上述の蒸留機におけるコンデンサーで凝縮、冷却
されるまでの間に、銅及び/又は銅を含む化合物ででき
た部分を通過させながら、蒸留する方法のことである。
また、本発明でいう銅を含む化合物には、例えば酸化
銅、また、塩類、例えば硫酸銅、塩化銅などがあるが、
特に限定はされない。好ましくは酸化銅(I)、酸化銅
(II)などの酸化銅が用いられる。本発明に用いる蒸留
機は、すべてが銅及び/又は銅を含む化合物でできたも
のであってもよいし、又は蒸留機の少なくとも一部が銅
及び/又は銅を含む化合物でできたものであってもよ
い。例えば、蒸気が通過する蒸留缶上部、スワンネッ
ク、コンデンサーなどの一部が銅製であってもよく、又
は蒸留缶、スワンネック、コンデンサーなどの内部に、
銅や酸化銅などの物質で表面加工した邪魔板、多孔板、
金網、管などを設置したものでもよい。特に、発生した
蒸気が凝縮する部分が銅及び/又は銅を含む化合物であ
ることがよく、例えば、コンデンサーの入口に銅や酸化
銅などの物質で加工された金網を設置したりすることが
好ましい。しかし、これらの装置すべてがガラスなどで
できた蒸留機で蒸留した場合は、銅又は銅を含む化合物
の溶出がなく、4−VGからバニリンへの変換が促進さ
れず、バニリンに富んだ蒸留酒を短期間で得ることがで
きない。
が抜けておらず香は刺激的で、味は荒々しく、通常、蒸
留直後から数週間〜数ヶ月程度、開放状態で貯蔵し、ガ
ス抜き操作を行う。この貯蔵期間中に油性物質が徐々に
酸化を受け、いわゆる油臭といわれる不快臭が発生する
が、これらの油臭を除去するために、すくい取り法やろ
過法などを用いて香味を調整している。しかし、本発明
によれば、このガス抜きのための比較的短い貯蔵期間中
にバニリンの生成が促進される。バニリンは特有の華や
かで甘い芳香を有しており、バニリンを多く含有するこ
とにより、甘い芳香と丸みや熟成感が付与された香味良
好な蒸留酒を得ることができる。蒸留液を貯蔵する容器
としては、樽、ステンレスタンク、ホーロータンクなど
があるが、本発明においては、欠減が少なく、材質的に
安定しているホーロータンクを用いることが好ましい。
本発明により得られた蒸留酒は、そのまま飲用すること
もできるが、水で希釈したり、ろ過精製したりして、飲
用することもできる。更に、貯蔵、熟成し、焼酎、スピ
リッツ、ウィスキーなどに加工し飲用することもでき
る。本発明の方法は、特に焼酎の製造に好ましく用いら
れる。
又は銅を含む化合物を必要に応じて共存させて、カルシ
ウム化合物、カリウム化合物、マグネシウム化合物、及
びナトリウム化合物よりなる群から選択される少なくと
も1種の金属を含む化合物の存在下で貯蔵することによ
り、バニリンの生成量を短期間に増大させることができ
る。カルシウムを含む化合物には、例えば炭酸塩、硝酸
塩、硫酸塩などの塩類、酸化物などがあるが、特に限定
はされない。炭酸カルシウム、酸化カルシウム等が例示
される。カリウムを含む化合物には、例えば塩化物など
があるが、特に限定はされない。塩化カリウム等が例示
される。マグネシウムを含む化合物には、例えば塩化
物、硝酸塩などがあるが、特に限定はされない。塩化マ
グネシウム等が例示される。更に、ナトリウムを含む化
合物には、例えば塩化物などがあるが、特に限定はされ
ない。塩化ナトリウム等が例示される。これらは、その
まま、あるいは水溶液として、蒸留液に添加すればよ
い。カルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム
をイオンとして添加することができるものであれば、ミ
ネラルウオーター、硬水等の水そのものを添加すること
も可能である。
て、銅、鉄、マグネシウム、マンガン、ナトリウムなど
が及ぼす影響の検討を行った。まず、4−VGを20m
g/リットル含有するエタノール分63v/v%の焼酎
醪の蒸留液を100mlずつ6本用意し、硫酸銅、硝酸
鉄(II)、塩化マグネシウム、塩化マンガン、塩化ナト
リウムをそれぞれ金属元素として2mg/リットル含む
ように添加し、各サンプルを調製した。その後、0.1
N NaOH又は0.1N HClで、サンプルのpH
を蒸留酒の普通のpHである5.3に調整し、それぞれ
を100mlずつガラス容器に入れて密封した後、40
℃で14日間貯蔵した。貯蔵後のサンプル中のバニリン
含有量を表1に示す。バニリンの分析は、後述の実施例
に記載の方法で行い、単位はmg/リットルで表してい
る。また<0.1は、検出限界(0.1mg/リット
ル)未満であることを表している。なお、化合物を加え
ないサンプルの結果も<0.1であった。
ニリン含量が明らかに多く、銅は、4−VGからバニリ
ンへの反応を促進する効果が高いことがわかった。
説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるもの
ではない。
/w%になるように汲み水と混合した。この混合液に、
液化酵素ターマミル120L〔ノボザイムスジャパン
(株)製〕を対原料重量の0.1w/w%を添加し、1
32℃で加圧蒸煮して蒸煮醪を得た。得られた蒸煮醪を
リン酸にてpHを3.8に調整した後、糖化酵素として
サンスーパー240L〔ノボザイムス ジャパン(株)
製〕及びセルラーゼとしてスミチームAC〔新日本化学
工業(株)製〕をそれぞれ原料重量に対して0.1w/
w%添加し、58℃で一昼夜糖化して糖化醪を得た。得
られた糖化醪に(財)日本醸造協会販売のワイン用の協
会4号を接種し、30℃にて5日間の発酵を行った。発
酵醪のエタノール分は8.8v/v%で、4−VG含有
量は273mg/リットルであった。4−VGの分析
は、次のようにして行った。すなわち、醪のサンプル1
mlを、濃度5mg/リットルの4−エチルグアヤコー
ル(以下、4−EGと略記する)を内部標準として含む
メタノール溶液にて10倍希釈し、かくはん遠心した上
澄を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)測定サン
プルとする。このサンプル50μlを、50mMリン酸
溶液で平衡化したカラム Inertsil ODS−
3V 4.6×250mm〔ジーエルサイエンス(株)
製〕を装着したHPLC Model 2690〔日本
ウォーターズ(株)製〕に注入した後、アセトニトリル
で8−100%の直線濃度勾配溶出を行った。なお、溶
出は流速1ml/minで55分間行った。分離された
チャートにおいて、リテンションタイム25.7min
に4−VGのピークが現れ、そのピークを検出器 99
6Photodiode Array Detecto
r〔日本ウォーターズ(株)製〕を用いて280nmの
吸収を測定し、ピーク面積から4−VG量を算出した。
lを1000mlずつに分割した後、試験区分に応じ
て、それぞれの醪のpHをリン酸で2.0、3.0、
3.8、4.4、5.0に調整し、蒸留直前の供試醪を
調製した。蒸留機は、蒸留缶、スワンネック、コンデン
サーすべてが銅製であり、更にスワンネックの内面は、
かなりの部分が自然に酸化されて赤黒い酸化銅の皮膜で
覆われた状態になっているものを用いた。
1回目の蒸留は、蒸留缶に供試醪1000mlを投入
し、常圧下で熱源としてガスバーナーを用いて蒸留缶底
部を加熱して行った。醪が沸騰するとエタノールを含ん
だ蒸気が発生し、その蒸気を銅製のスワンネックを通過
させ、更に銅製のコンデンサーで凝縮させることによっ
て銅及び酸化銅と接触させた。蒸気はコンデンサーで凝
縮して液体となり、更に冷却されて蒸留液となる。蒸留
液は、そのエタノール分が2v/v%になるまで回収し
た。第2回目の蒸留は、第1回目の蒸留で得られた蒸留
液340mlをエタノール分26v/v%まで水で希釈
し、上述と同じ蒸留缶に投入した。加熱方法、回収方法
は、第1回目の蒸留操作と同様の方法で行った。第2回
目の蒸留で得られた蒸留液はエタノール分50v/v%
まで回収した。得られたそれぞれの蒸留液をアルコール
度数63v/v%に加水調整した後、ホーローの容器に
入れてふたをし、40℃で40日間貯蔵して蒸留酒を得
た。
た蒸留酒を本発明1、pHが3.8の時の蒸留酒を本発
明2、pH2.0の時の蒸留酒を本発明3、また、pH
4.4の時の蒸留酒を比較例1、pH5.0の時の蒸留
酒を比較例2とする。更に、他の比較例として、蒸留直
前の醪のpHを3.0及び3.8に調整した後、蒸留
缶、スワンネック、コンデンサーなどすべてがガラス製
の蒸留機、及びすべてがステンレス製の蒸留機を用い
て、上述の方法と同様の方法で2回の蒸留操作を行っ
た。得られた蒸留液を上述と同様の方法で貯蔵し蒸留酒
を得た。pHが3.0でガラス製の蒸留機で蒸留したも
のを比較例3、同じくステンレス製の蒸留機で蒸留した
ものを比較例4とする。更に、pHが3.8でガラス製
の単式蒸留機で蒸留したものを比較例5、ステンレス製
の蒸留機で蒸留したものを比較例6とする。
酸度の分析結果を表2に示す。バニリンの定量は、以下
の方法で行った。すなわち、得られた蒸留酒のサンプル
500μlに、濃度が1000mg/リットルである4
−EG/メタノール溶液10μlを内部標準として添加
してかくはん後、これをメタノールにて20倍希釈し、
HPLC測定サンプルとした。これらのサンプル50μ
lを、50mMリン酸溶液で平衡化したカラム Ine
rtsil ODS−3V 4.6×250mm〔ジー
エルサイエンス(株)製〕を装着したHPLC Mod
el 2690〔日本ウォーターズ(株)製〕に注入し
た後、アセトニトリルで8−100%の直線濃度勾配溶
出を行った。なお、溶出は流速1ml/minで55分
間行った。分離されたチャートにおいて、リテンション
タイム15.1minにバニリンのピークが現れ、その
ピークを検出器 996 PhotodiodeArr
ay Detector〔日本ウォーターズ(株)製〕
を用いて280nmの吸収を測定し、ピーク面積からバ
ニリン量を算出した。なお、溶離液はアセトニトリルを
含む50mMリン酸溶液を用い、アセトニトリルのグラ
ジエント8−100%をかけて、流速1ml/minで
溶離を行った。結果を表2に示す。なお、<0.1と
は、上述の方法で測定した時の検出限界0.1mg/リ
ットル未満であるということを表している。また、酸度
の分析は、第四回改正国税庁所定分析法注解に記載の方
法に準じて行った。すなわち、蒸留酒のサンプル50m
lにフェノールフタレイン指示薬を4〜5滴加えた後、
1/100N NaOH溶液で滴定し、サンプル10m
l当りに要した1/100N NaOH溶液のml数で
表した。
留酒をエタノール分25v/v%に希釈したものについ
て、識別能力を有する17名のパネラーにより、3点評
価法にて実施した。すなわち、香味において優れている
ものを1、中程度のものを2、劣っているものを3とし
て評価し,その結果の平均値を表3に示した。
整して銅製の蒸留機で蒸留して得られた本発明1、2及
び3は、どれもバニリンを0.7mg/リットル以上含
んでおり、また官能的にも甘い芳香があり良好であっ
た。特に、蒸留直前の醪のpHが3及び3.8である本
発明1及び2は、バニリン含有量も多く、熟成感もあっ
て良好であった。
るように汲み水と混合した。この混合液に液化酵素ター
マミル120L〔ノボザイムス ジャパン(株)製〕を
対原料重量の0.1w/w%添加し、132℃で加圧蒸
煮し、蒸煮醪を得た。得られた蒸煮醪をリン酸でpHを
3.8に調整した後、糖化酵素としてサンスーパー24
0L〔ノボザイムス ジャパン(株)製〕及びセルラー
ゼとしてスミチームAC〔新日本化学工業(株)製〕を
それぞれ原料重量に対して0.1w/w%添加し、58
℃で一昼夜糖化して糖化醪を得た。得られた糖化醪に実
施例1と同様の協会4号を接種し、30℃で5日間の発
酵を行った。発酵醪のエタノール分は9.0v/v%で
あり、また実施例1と同様の方法で4−VGを分析した
ところ、4−VG含有量は251mg/リットルであっ
た。
でpH3.8に調整し、実施例1と同様に、すべて銅製
の缶体容積5リットルの蒸留機を用いて、2回の蒸留操
作を行った。
%に加水調整後、ホーローの容器に入れてふたをし、実
施例1と同様に40℃で40日間貯蔵して蒸留酒を得
た。これを本発明4とする。バニリンの分析及び官能検
査を実施例1と同様に行いその結果を表4に示す。
ンが1.3mg/リットルと高く、官能的にも丸みのあ
る香、熟成感があり、良好なものであった。
を製造した。次に得られた発酵醪1000mlをリン酸
でpH3.8に調整し、実施例1と同様に2回の蒸留操
作を行った。なお蒸留は、蒸留缶、スワンネック、コン
デンサーがすべてガラス製の蒸留機を使用し、コンデン
サー内部の蒸気が凝縮する部分に短く切断した新しい銅
管3.7gを設置し、蒸気がその銅管を通過するように
して行った。
%に加水調整後、ホーローの容器に入れてふたをし、実
施例1と同様に40℃で40日間貯蔵して蒸留酒を得
た。これを本発明5とする。また、蒸留時に銅管を設置
せずに上述と同様の蒸留操作を行い、更に同様に貯蔵し
て得られた蒸留酒を比較例7とする。バニリンの分析及
び官能検査を実施例1と同様に行いその結果を表5に示
す。
蒸留操作を行って得られた本発明5は、バニリンが1.
1mg/リットルと高く、官能的にも丸みのある香、甘
い芳香を有し、良好なものであった。
3v/v%の醸造用アルコールを調製した(比較例
8)。この比較例8に対して、更に銅を1mg/リット
ル含有させるサンプルを調製した(比較例9)。次に、
銅及びカルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウ
ムそれぞれを含有するサンプルを調製した(本発明6、
本発明7、本発明8、本発明9)。それぞれのサンプル
については、硫酸銅硝酸溶液、炭酸カルシウム塩酸溶
液、塩化カリウム水溶液、塩化マグネシウム塩酸溶液、
塩化ナトリウム水溶液を用いて、金属元素としての濃度
を、銅では1mg/リットル含有するように、また、カ
ルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウムではそ
れぞれ10mg/リットル含有するように調製した。そ
の後、0.1N NaOH及び0.1N HClでサン
プルのpHを蒸留酒の普通のpHである5.3に調整
し、それぞれを100mlずつガラス容器に入れて密封
した後、40℃で7日間貯蔵した。貯蔵後のサンプル中
のバニリン含有量及び4−VG含有量を表6に示す。バ
ニリン及び4−VGの分析は実施例1に記載の方法で行
い、単位はmg/リットル単位で表している。
及び本発明9は、銅を単独で含有する比較例9よりも更
にバニリンの生成が促進されていた。このことは、銅
と、カルシウム、カリウム、マグネシウム、及びナトリ
ウムよりなる群から選択される少なくとも1種の金属を
含む化合物との存在下で貯蔵することにより、甘い香味
をもたらすバニリンを短期間に生成させることができる
という顕著な効果をもつものである。
なるように汲み水と混合した。この混合液に液化酵素タ
ーマミル120L〔ノボザイムス ジャパン(株)製〕
を対原料重量の0.1w/w%添加し、132℃で加圧
蒸煮し、蒸煮醪を得た。得られた蒸煮醪を58℃まで冷
却し、糖化酵素としてサンスーパー240L〔ノボザイ
ムス ジャパン(株)製〕及びセルラーゼとしてスミチ
ームAC〔新日本化学工業(株)製〕をそれぞれ原料重
量に対して0.1w/w%添加し、58℃で3時間保持
し、糖化醪を得た。得られた糖化醪に実施例1と同様の
協会4号を接種し、25℃で5日間の発酵を行った。
トリウムを添加して酸度10に調整し、更に揮発酸とし
て酢酸を30mg/リットル添加してpH3.8に調整
した。発酵醪のエタノール分は8.1v/v%であっ
た。
スワンネック、コンデンサーすべてが銅製であり、更に
スワンネックの内部はかなりの部分が自然に酸化されて
赤黒い酸化銅の皮膜で覆われた状態になっている蒸留機
を用いて蒸留した。
リットルの醪を張り込み、ガスコンロで加熱した。蒸留
液を3.0リットル回収したところで蒸留を終了した。
更にこの蒸留液を水でエタノール分25v/v%まで希
釈し、5リットル容の蒸留缶に2リットル張り込み、ガ
スバーナーで加熱して再留を行った。蒸留液を700m
l回収したところで再留を終了した。
〔Volvic社製〕でエタノール分63v/v%まで
希釈し、40℃、21日間貯蔵した。得られたサンプル
を本発明10とし、一方、蒸留機をガラス製として、蒸
留操作以降のスケールを1/5として得られたサンプル
を比較例10とした。
ム、カリウム、マグネシウム、ナトリウムはP−401
0形ICP発光分析装置〔(株)日立製作所製〕を用
い、イットリウムを内部標準として定量を行った。すな
わち、測定サンプルは純水で10倍に希釈したものを使
用し、標準品は各金属元素の1000mg/リットルの
金属標準液〔和光純薬工業(株)製〕を純水で10mg
/リットルとしたものを使用した。それぞれには内部標
準として最終濃度10mg/リットルとなるようにイッ
トリウムを添加した。定量値は各金属元素に帰属される
銅324.75nm、カルシウム393.36nm、カ
リウム766.49nm、マグネシウム279.55n
m、ナトリウム588.99nmの波長における発光強
度に相当するピークの高さから算出した。結果を表7に
示す。単位はmg/リットル単位で示している。
と4−VGの分析及び官能検査を実施例1と同様に行
い、その結果を表8に示す。
間に、2.5mg/リットルという高い濃度まで生成さ
せることができ、また、官能的にも丸みのある香、バニ
リンの香りの感じられる良好なものであった。
製造方法を用いることにより、バニリンを多く含有し、
華やかで甘い芳香を有し、丸みや熟成感が付与された蒸
留酒を容易に得ることができる。
Claims (3)
- 【請求項1】 蒸留直前の醪のpHを3.8以下に調整
し、次いで醪から発生する蒸気を、銅及び/又は銅を含
む化合物の存在下で蒸留することを特徴とする蒸留酒の
製造方法。 - 【請求項2】 請求項1で得られる蒸留後の蒸留液を、
カルシウム化合物、カリウム化合物、マグネシウム化合
物、及びナトリウム化合物よりなる群から選択される少
なくとも1種の金属を含む化合物の存在下で貯蔵するこ
とを特徴とする請求項1記載の蒸留酒の製造方法。 - 【請求項3】 蒸留酒の製造において、蒸留後の蒸留液
を、銅及び/又は銅を含む化合物と、カルシウム化合
物、カリウム化合物、マグネシウム化合物、及びナトリ
ウム化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の
金属を含む化合物の存在下で貯蔵することを特徴とする
蒸留酒の製造方法。
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