JP2003034583A - 板状粉末の製造方法及び結晶配向セラミックスの製造方法 - Google Patents

板状粉末の製造方法及び結晶配向セラミックスの製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 優れた熱電特性を示すコバルト層状酸化物か
らなり、かつ高い{001}面配向度を有する結晶配向
セラミックスの製造方法を提供すること。また、結晶配
向セラミックスの製造に適した板状粉末の製造方法を提
供すること。 【解決手段】 コバルト層状酸化物からなり、かつ{0
01}面を発達面とする板状粉末は、少なくともアルカ
リ土類金属元素M、Co及び板状結晶成長元素Xを含
み、かつ、コバルト層状酸化物を生成可能な組成比を有
する1種又は2種以上の化合物、並びに多座配位子を溶
媒に溶解させ、この溶液をゲル化させた後、ゲルを所定
の条件下で焼成することにより得られる。また、コバル
ト層状酸化物からなり、かつ{001}面が配向した結
晶配向セラミックスは、コバルト層状酸化物からなる板
状粉末を単独で又は層状酸化物生成原料と共に成形体中
に配向させ、所定の温度で焼結させることにより得られ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、板状粉末の製造方
法及び結晶配向セラミックスの製造方法に関し、さらに
詳しくは、太陽熱発電器、海水温度差熱電発電器、化石
燃料熱電発電器等の各種の熱電発電器、光検出素子、レ
ーザーダイオード、電界効果トランジスタ、光電子増倍
管、分光光度計のセル、クロマトグラフィーのカラム等
の精密温度制御装置、恒温装置、冷暖房装置、冷蔵庫、
時計用電源等に用いられる熱電変換素子を構成する熱電
変換材料として好適な結晶配向セラミックスの製造方
法、及びこのような結晶配向セラミックスを製造する際
に用いられる板状粉末の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】熱電変換とは、セーベック効果やペルチ
ェ効果を利用して、電気エネルギーを冷却や加熱に、ま
た逆に熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換するこ
とをいう。熱電変換は、(1)エネルギー変換の際に余
分な老廃物を排出しない、(2)排熱の有効利用が可能
である、(3)材料が劣化するまで継続的に発電を行う
ことができる、(4)モータやタービンのような可動装
置が不要であり、メンテナンスの必要がない、等の特徴
を有していることから、エネルギーの高効率利用技術と
して注目されている。
【0003】熱を電気に変換できる材料、すなわち、熱
電変換材料の特性を評価する指標としては、一般に、性
能指数Z(=Sσ/κ、但し、S:ゼーベック係数、
σ:電気伝導率、κ:熱伝導率)、又は、性能指数Z
と、その値を示す絶対温度Tの積として表される無次元
性能指数ZTが用いられる。ゼーベック係数は、1Kの
温度変化によって生じる起電力の大きさを表す。熱電変
換材料は、それぞれ固有のゼーベック係数を持ってお
り、ゼーベック係数が正であるもの(p型)と、負であ
るもの(n型)に大別される。
【0004】また、熱電変換材料は、通常、p型の熱電
変換材料とn型の熱電変換材料とを接合した状態で使用
される。このような接合対は、一般に、熱電変換素子と
呼ばれている。熱電変換素子の性能指数は、p型熱電変
換材料の性能指数Z、n型熱電変換材料の性能指数Z
、並びに、p型及びn型熱電変換材料の形状に依存
し、また、形状が最適化されている場合には、Z及び
/又はZが大きくなるほど、熱電変換素子の性能指数
が大きくなることが知られている。従って、性能指数の
高い熱電変換素子を得るためには、性能指数Z、Z
の高い熱電変換材料を用いることが重要である。
【0005】このような熱電変換材料としては、例え
ば、Bi−Te系、Pb−Te系、Si−Ge系、酸化
物セラミックス系等の種々の材料が知られている。これ
らの中で、Bi−Te系及びPb−Te系の化合物半導
体は、それぞれ、室温近傍及び300〜500℃の中温
域において、優れた熱電特性(ZT〜0.8)を示す。
しかしながら、これらの化合物半導体は、高温域での使
用は困難である。また、材料中には高価な稀少元素(例
えば、Te、Sb、Seなど)や、毒性の強い環境負荷
物質(例えば、Te、Sb、Se、Pbなど)を含むと
いう問題がある。
【0006】一方、Si−Ge系の化合物半導体は、1
000℃付近の高温域において優れた熱電特性(ZT〜
1.0)を示し、また、材料中に環境負荷物質を含まな
いという特徴がある。しかしながら、Si−Ge系の化
合物半導体は、高温大気中において長時間使用するため
には、材料表面を保護する必要があり、熱的耐久性が低
いという問題がある。
【0007】これに対し、酸化物セラミックス系の熱電
変換材料は、材料中に稀少元素や環境負荷物質を必ずし
も含まない。また、高温大気中において長時間使用して
も熱電特性の劣化が少なく、熱的耐久性に優れるという
特徴がある。そのため、酸化物セラミックス系の熱電変
換材料は、化合物半導体に代わる材料として注目されて
おり、熱電特性の高い新材料やその製造方法について、
従来から種々の提案がなされている。
【0008】例えば、A.C.Massetらは、コバルトを含有
する層状酸化物(以下、これを「コバルト層状酸化物」
という。)の一種であるCaCoの多結晶体及
び単結晶を作製し、その結晶構造と熱電特性の評価を行
っている(A.C.Masset et al., Phys. Rev. B, 62(1),
pp.166-175, 2000参照)。同文献には、CaCo
は、岩塩型の結晶構造を有するCaCoO層と、
CdI型の結晶構造を有するCoO層が、所定の周
期でc軸方向に積層された格子不整合層状酸化物である
点が記載されている。
【0009】また、同文献には、CaCoの比
抵抗に異方性があり、{001}面内の比抵抗は、{0
01}面に垂直な方向(すなわち、c軸方向)の比抵抗
より格段に小さくなる点が記載されている。さらに、C
Co単結晶の{001}面方向のゼーベック
係数は、300K近傍において約125μV/Kに達
し、ゼーベック係数の温度依存性も小さい点が記載され
ている。
【0010】なお、コバルト層状酸化物の「{001}
面」とは、熱電特性が高い面、すなわち、CoO層と
平行な面をいう。コバルト層状酸化物は、結晶構造が明
らかになっていないものが多く、また、単位格子の取り
方によって結晶軸及び結晶面の定義が異なるが、本発明
においては、{001}面を上述のように定義する。
【0011】また、例えば、特開2001−19544
号公報には、BiSr2−xCa Co、Bi
2−yPbSrCo、BiSr2−zLa
Co等の一般式(但し、0≦x≦2、0≦y≦
0.5、0<z≦0.5)で表される組成を有し、層状
の結晶構造を有し、かつ1.0×10S/m以上の電
気伝導度を有する複合酸化物焼結体が開示されている。
また、同公報には、Bi供給源、Sr供給源、Ca供給
源、Co供給源等の原料を加圧成形し、この成形体を一
軸加圧しながら酸素雰囲気中で加熱することによって原
料の一部を部分溶融させた後、徐冷する複合酸化物の製
造方法が開示されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】CaCo、B
Sr2−xCaCo等のコバルト層状酸化
物は、相対的に大きなゼーベック係数を有するp型の熱
電変換材料であり、しかも、その熱電特性には、結晶方
位に応じた異方性がある。従って、熱電特性の高い結晶
面({001}面)が一方向に配向した材料を用いれ
ば、熱電特性の異方性を最大限に利用することができ、
性能指数の向上が期待できる。また、これを用いた熱電
変換素子の性能指数の向上も期待できる。
【0013】しかしながら、CaCO、Co
の成分元素を含む単純化合物の混合物を仮焼し、これを
成形・焼結する通常のセラミックス製造プロセスでは、
熱電特性の高い結晶面が一方向に配向したコバルト層状
酸化物の焼結体は得られない。
【0014】一方、特開2001−19554号公報に
は、成形体を一軸加圧しながら原料の一部を部分溶融さ
せた後、徐冷すると、冷却過程において再結晶が起こ
り、加圧面に平行な方向に沿って{001}面が成長し
た結晶粒からなる焼結体が得られる点が記載されてい
る。
【0015】しかしながら、この方法では、再結晶によ
って所望の結晶が得られる物質系や組成のみに限られ、
例えば、結晶化の際に分相や結晶構造の変化を生ずる系
には適用できないという問題がある。また、再結晶化が
可能な物質系や組成であっても、大量合成は困難であ
る。
【0016】さらに、熱電特性の高い結晶面を配向させ
るために、コバルト層状酸化物を単結晶化することも考
えられる。しかしながら、単結晶は、製造コストが高い
という問題がある。また、一般に、小さな単結晶は得ら
れるが、熱電変換に用いるミリメートルオーダーサイズ
のバルク材料の作製は困難である。
【0017】本発明が解決しようとする課題は、優れた
熱電特性を示すコバルト層状酸化物からなる結晶配向セ
ラミックスを効率よく製造することができ、しかも、比
較的広範囲な系に対して適用可能な結晶配向セラミック
スの製造方法を提供することにある。また、本発明が解
決しようとする他の課題は、このような結晶配向セラミ
ックスの製造に適した板状粉末の製造方法を提供するこ
とにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明に係る板状粉末の製造方法は、少なくともアル
カリ土類金属元素M、Co及び板状結晶成長元素Xを含
み、かつ、コバルト層状酸化物を生成可能な組成比を有
する1種又は2種以上の化合物、並びに多座配位子を溶
媒に溶解させる溶液調製工程と、該溶液調製工程におい
て得られた溶液をゲル化させるゲル化工程と、該ゲル化
工程において得られたゲルを焼成し、前記コバルト層状
酸化物からなる板状結晶を成長させる焼成工程とを備え
ていることを要旨とするものである。
【0019】所定の組成を有するアルカリ土類金属元素
M、Co及び板状結晶成長元素X、並びに多座配位子を
含む溶液をゲル化させると、これらの元素が均一に分散
したゲルが得られる。このゲルを所定の条件下で焼成す
ると、板状結晶成長元素Xにより物質移動が促進され、
コバルト層状酸化物からなり、かつ、自形の発達した板
状粉末が得られる。
【0020】また、本発明に係る結晶配向セラミックス
の製造方法は、請求項1から5までのいずれかの方法に
より得られる板状粉末、又は、該板状粉末及びこれと反
応して前記板状粉末と同一若しくは異なる組成を有する
コバルト層状酸化物を生成する層状酸化物生成原料を含
む原料を調製する原料調製工程と、前記板状粉末が配向
するように前記原料を成形する成形工程と、該成形工程
で得られた成形体を焼結させる焼結工程とを備えている
ことを要旨とするものである。
【0021】本発明に係る方法により得られる板状粉末
は、所定の組成を有するコバルト層状酸化物からなり、
かつ、{001}面を発達面とする。そのため、この板
状粉末を単独で、又は層状酸化物生成原料と共に成形体
中に配向させ、所定の温度で加熱すれば、板状粉末と同
一又は異なる組成を有するコバルト層状酸化物からな
り、かつ、{001}面を発達面とする板状結晶が一方
向に配向した結晶配向セラミックスが得られる。
【0022】
【発明の実施の形態】以下に本発明の一実施の形態につ
いて詳細に説明する。初めに、本発明に係る板状粉末の
製造方法により得られる板状粉末について説明する。本
発明により得られる板状粉末は、コバルト層状酸化物の
内、少なくともアルカリ土類金属元素M、Co及び板状
結晶成長元素Xを含むものからなる。
【0023】ここで、「コバルト層状酸化物」とは、構
造は明確にされていないが、一般的にはCoO層を副
格子とする層状化合物、すなわち、CoO層からなる
第1副格子と、CoO層とは異なる層からなる第2副
格子とが、所定の周期で交互に堆積した層状化合物をい
う。これらの内、第一副格子(CoO層)は電導層で
あり、第2副格子は絶縁層であると現在のところ考えら
れている。
【0024】第1副格子は、1層又は2層以上のCoO
層からなる。また、「CoO層」とは、正八面体の
中心に1個のCo原子があり、かつ、その頂点に合計6
個の酸素原子があるCoO八面体が、酸素を共有する
形で二次元的に連結したものをいう。また、CoO
に含まれるCo原子の一部が、他の金属元素(例えば、
Cu等)に置換されている場合もある。
【0025】一方、第2副格子は、CoO層とは異な
る層からなり、一般に、コバルト層状酸化物の組成に応
じて、その組成や副格子構造が異なる。すなわち、第2
副格子が1種類の層からなる場合と、組成や副格子構造
の異なる2種以上の層が規則的又は不規則的に組み合わ
されたものからなる場合がある。
【0026】また、第1副格子と第2副格子は、交互に
堆積しているが、その堆積周期は、一般に、コバルト層
状酸化物の組成に応じて異なる。すなわち、コバルト層
状酸化物は、1層又は2層以上のCoO層(第1副格
子)と、1層又は2層以上の他の層(第2副格子)と
が、短周期もしくは長周期で規則的に堆積している場合
と、これらが不規則的に堆積している場合がある。
【0027】本発明に係る製造方法によれば、各元素の
組成比に応じて、種々の結晶構造を備えたコバルト層状
酸化物からなる板状粉末が得られる。また、コバルト層
状酸化物の中でも、特に、第2副格子が岩塩構造又は歪
んだ岩塩構造を有するものは、高い熱電特性を示すが、
本発明に係る製造方法によれば、このような構造を備え
たコバルト層状酸化物からなる板状粉末であっても製造
することができる。
【0028】また、本発明に係る製造方法によれば、種
々のアルカリ土類金属元素Mを含むコバルト層状酸化物
からなる板状粉末を製造することができ、板状粉末を構
成するコバルト層状酸化物に含まれるアルカリ土類金属
元素Mの種類は、特に限定されるものではない。また、
1種類のアルカリ土類金属元素Mを含むコバルト層状酸
化物だけではなく、2種以上のアルカリ土類金属元素M
を含むコバルト層状酸化物からなる板状粉末であっても
製造することができる。特に、Ca、Sr及びBaから
選ばれる1種以上のアルカリ土類金属元素Mを含むコバ
ルト層状酸化物は、高い熱電特性を示すが、本発明に係
る製造方法によれば、このようなコバルト層状酸化物か
らなる板状粉末であっても製造することができる。
【0029】「板状結晶成長元素X」とは、コバルト層
状酸化物の構成元素の一部となると同時に、コバルト層
状酸化物が合成される際にその板状結晶を成長させる作
用を有するものをいう。そのためには、板状結晶成長元
素Xは、コバルト層状酸化物が生成する温度以上におい
て、単独で又は他の元素と協働して液相又は気相を生じ
させる元素が好ましい。また、高い熱電特性を有する結
晶配向セラミックスを得るためには、板状結晶成長元素
Xは、熱電特性に悪影響を及ぼさない元素であることが
好ましい。
【0030】このような板状結晶成長元素Xとしては、
具体的には、Bi、Cr等が好適な一例として挙げられ
る。本発明に係る製造方法によれば、これらの内、いず
れか1種類の板状結晶成長元素Xを含むコバルト層状酸
化物、及び、2種以上の板状結晶成長元素Xを含むコバ
ルト層状酸化物からなる板状粉末のいずれであっても製
造することができる。
【0031】なお、Xは、板状結晶成長元素としての役
割を果たすと共に、通常、Biの場合は、Mと同じ原子
サイトに、Crの場合は、Coと同じ原子サイトに入
り、良好な熱電特性を示す化合物を形成する。これは、
Bi及び/又はCrを含むコバルト層状酸化物の板状結
晶は、電気伝導率の高い{001}面が発達しているた
めである。そのため、本発明の方法によれ得られる板状
粉末は、結晶配向セラミックスを製造するための出発原
料として好適である。
【0032】本発明に係る製造方法において、アルカリ
土類金属元素M、Co及び板状結晶成長元素Xの比率
は、コバルト層状酸化物の結晶構造を維持でき、かつ熱
電特性に悪影響を及ぼさない限り、任意に選択すること
ができる。但し、板状結晶成長元素Xの比率が過少にな
ると、板状結晶が効率よく成長しないので好ましくな
い。板状結晶成長元素Xの比率は、全陽イオン元素の
0.05atm%以上40atm%以下が好ましく、さ
らに好ましくは0.1atm%以上20atm%以下で
ある。
【0033】また、本発明に係る製造方法によれば、板
状粉末に含まれるアルカリ土類金属元素M及びCoの一
部が他の置換元素Aで置換されたコバルト層状酸化物か
らなる板状粉末であっても製造することができる。この
場合、置換元素Aの種類及び置換量は、コバルト層状酸
化物の結晶構造を維持でき、かつ熱電特性に悪影響を及
ぼさない限り、任意に選択することができる。
【0034】Coのための置換元素Aとしては、具体的
には、Cu等が好適な一例として挙げられる。また、ア
ルカリ土類金属元素Mのための置換元素Aとしては、具
体的には、Na、K等が好適な一例として挙げられる。
中でも、第1副格子及び/又は第2副格子に含まれるC
oの一部をCuで置換したコバルト層状酸化物からなる
板状粉末は、高いゼーベック係数を有しているので、結
晶配向セラミックスを製造するための出発原料として特
に好適である。この場合、CuによるCoの置換量は、
10atm%以下が好ましい。さらに、CrがCoの置
換元素として、BiがMの置換元素として入っていても
良い。
【0035】本発明に係る方法により製造可能な板状粉
末の組成としては、具体的には、次の化1の式で表され
るコバルト層状酸化物、及びこれらを構成する陽イオン
元素の一部が他の置換元素Aにより置換されたコバルト
層状酸化物(以下、これを「置換化合物」という。)が
好適な一例として挙げられる。化1の式で表されるコバ
ルト層状酸化物及びその置換化合物からなる板状粉末
は、高い熱電特性を有しているので、結晶配向セラミッ
クスを製造するための出発原料として特に好適である。
【0036】
【化1】Ca3−xBiCo (0.01
<x<0.5)
【0037】また、本発明に係る製造方法によれば、最
も大きな面積を占める面(以下、これを「発達面」とい
う。)が{001}面からなる板状粉末が得られる。
{001}面を発達面とする板状粉末は、成形方法を最
適化することによって成形体中に容易に配向させること
ができ、しかも、板状粉末を核として{001}面を発
達面とする板状結晶が成長するので、結晶配向セラミッ
クスの製造用原料として特に好適である。
【0038】また、このような板状粉末を用いて、高い
配向度を有する結晶配向セラミックスを製造するために
は、板状粉末は、成形時に一定の方向に配向させること
が容易な形状を有していることが好ましい。そのために
は、板状粉末の平均アスペクト比(=板状粉末の直径/
厚さの平均値)は、3以上であることが望ましい。平均
アスペクト比が3未満であると、成形時に板状粉末を一
方向に配向させるのが困難となる。板状粉末の平均アス
ペクト比は、さらに好ましくは5以上である。
【0039】一般に、板状粉末の平均アスペクト比が大
きくなるほど、板状粉末の配向が容易化される傾向があ
る。但し、平均アスペクト比が過大になると、焼結体を
作製するために原料を処理する過程で板状粉末が破砕さ
れ、板状粉末が配向した成形体が得られない場合があ
る。従って、板状粉末の平均アスペクト比は、100以
下が好ましく、さらに好ましくは20以下である。
【0040】また、板状粉末の直径の平均値(平均粒
径)は、0.05μm以上20μm以下が好ましい。板
状粉末の平均粒径が0.05μm未満であると、成形時
に作用する剪断応力によって板状粉末を一定の方向に配
向させるのが困難になる。一方、板状粉末の平均粒径が
20μmを超えると、焼結性が低下する。板状粉末の平
均粒径は、さらに好ましくは、0.1μm以上5μm以
下である。
【0041】本発明に係る製造方法によれば、適切な製
造条件を選択することにより、このような平均アスペク
ト比及び平均粒径を有し、しかも、所定の組成を有する
コバルト層状酸化物からなり、かつ、{001}面を発
達面とする板状粉末を比較的容易に製造することができ
る。
【0042】次に、本発明に係る板状粉末の製造方法に
ついて説明する。本発明に係る板状粉末の製造方法は、
溶液調製工程と、ゲル化工程と、焼成工程とを備えてい
る。
【0043】初めに、溶液調製工程について説明する。
溶液調製工程は、少なくともアルカリ土類金属元素M、
Co及び板状結晶成長元素Xを含み、かつ、コバルト層
状酸化物を生成可能な組成比を有する1種又は2種以上
の化合物、並びに多座配位子を溶媒に溶解させる工程で
ある。
【0044】溶液調製工程において用いられる化合物に
は、少なくともアルカリ土類金属元素M、Co又は板状
結晶成長元素Xを含むものが用いられる。また、この化
合物には、上述したCu等の置換元素Aが含まれていて
も良い。
【0045】また、溶液調製工程においては、アルカリ
土類金属元素M、Co、板状結晶成長元素X又は置換元
素Aをそれぞれ単独で含む1種又は2種以上の化合物を
用いても良く、あるいは、これらの元素の内、いずれか
2種以上の元素を含む1種又は2種以上の複合化合物を
組み合わせて用いても良い。
【0046】さらに、溶液調製工程において用いられる
化合物は、適当な溶媒に可溶である可溶性化合物であっ
ても良く、あるいは、適当な処理によって溶媒に溶解さ
せることが可能となる不溶性化合物であっても良い。
【0047】なお、溶液調製工程において用いられる溶
媒には、通常、水が用いられるが、使用する化合物の性
質に応じて、有機溶媒、水と有機溶媒との混合溶媒等を
用いても良い。また、不溶性化合物を溶媒に溶解させる
ための処理方法としては、具体的には、酸による溶解処
理、水熱処理等が好適な一例として挙げられる。
【0048】Coのみを含有する化合物(以下、これを
「第1化合物」という。)としては、具体的には、酸化
コバルト(CoO、Co)、水酸化コバルト(C
o(OH))、塩化コバルト(CoCl)、炭酸コバ
ルト(CoCO)、硝酸コバルト(Co(NO))、
Co金属単体等が好適な一例として挙げられる。
【0049】アルカリ土類金属元素Mを含有する化合物
(以下、これを「第2化合物」という。)の内、Caの
みを含むものとしては、具体的には、酸化カルシウム
(CaO)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、塩化
カルシウム(CaCl)、炭酸カルシウム(CaCO
)、硝酸カルシウム(Ca(NO))等が好適な一
例として挙げられる。
【0050】また、Srのみを含有する第2化合物とし
ては、具体的には、酸化ストロンチウム(SrO)、水
酸化ストロンチウム(Sr(OH))、塩化ストロンチ
ウム(SrCl)、炭酸ストロンチウム(SrC
)、硝酸ストロンチウム(Sr(NO))等が好
適な一例として挙げられる。
【0051】また、Baのみを含有する第2化合物とし
ては、具体的には、酸化バリウム(BaO)、水酸化バ
リウム(Ba(OH))、塩化バリウム(BaC
)、炭酸バリウム(BaCO)、硝酸バリウム
(Ba(NO))等が好適な一例として挙げられる。
【0052】板状結晶成長元素Xを含有する化合物(以
下、これを「第3化合物」という。)の内、Biのみを
含むものとしては、具体的には、酸化ビスマス(Bi
)、硝酸ビスマス(Bi(NO))、塩化ビスマ
ス(BiCl)、水酸化ビスマス(Bi(OH))、
Bi金属単体等が好適な一例として挙げられる。
【0053】また、Crのみを含有する第3化合物とし
ては、具体的には、酸化クロム(Cr)、硝酸ク
ロム(Cr(NO))、塩化クロム(CrCl)、
水酸化クロム(Cr(OH))、Cr金属単体等が好適
な一例として挙げられる。
【0054】置換元素Aを含有する化合物(以下、これ
を「第4化合物」という。)の内、Cuのみを含むもの
としては、具体的には、酸化銅(CuO、CuO)、
炭酸銅(CuCO)、塩化銅(CuCl、CuC
)、Cu金属単体等が好適な一例として挙げられ
る。
【0055】本発明において、「多座配位子」とは、上
述した各種の化合物を溶解させる溶媒に溶解し、アルカ
リ土類金属元素M、Co、板状結晶成長元素X及び置換
元素Aの内、少なくとも2以上の元素と錯体を形成する
ことが可能であり、かつ、2以上の配位座を有するもの
をいう。このような多座配位子としては、具体的には、
ジオール化合物、2個以上のカルボシキル基を有する多
カルボン酸等、及びこれらの誘導体が好適な一例として
挙げられる。
【0056】溶液調製工程で使用可能なジオール化合物
としては、具体的には、エチレングリコール((CH
OH))、ピコナール(HOC(CH)C(CH)
OH)等が好適な一例として挙げられる。
【0057】また、溶液調製工程で使用可能な多カルボ
ン酸としては、具体的には、クエン酸(HOOCCH
C(OH)(COOH)CHCOOH)等のトリカルボン
酸、シュウ酸((COOH))等のジカルボン酸等が好
適な一例として挙げられる。
【0058】上述した各化合物を溶媒に溶解させる場
合、各化合物の配合比率は、目的とするコバルト層状酸
化物に含まれるアルカリ土類金属元素M、Co、板状結
晶成長元素X及び置換元素Aの比率と、調製された溶液
中に含まれるこれらの元素の比率が等しくなるように、
各化合物の組成に応じて定められる。また、調製された
溶液に含まれるこれらの化合物の濃度は、均一溶液が得
られる濃度であれば良く、特に限定されるものではな
い。
【0059】また、多座配位子の添加量は、使用する多
座配位子の種類、調製された溶液中に含まれるアルカリ
土類金属元素M、Co、板状結晶成長元素X及び置換元
素Aの濃度等に応じて、最適な値が異なる。一般的に
は、多座配位子の添加量が相対的に過少であると、各元
素が均一に分散したゲルが得られないので好ましくな
い。一方、多座配位子の添加量が相対的に過大になる
と、得られるゲルが不均一化するので好ましくない。
【0060】例えば、多座配位子としてクエン酸を用い
る場合、溶液中に含まれる全陽イオン元素のモル数に対
するクエン酸のモル数の比は、1以上20以下が好まし
く、さらに好ましくは、1以上5以下である。
【0061】また、上述した各化合物及び多座配位子を
含む溶液を調製する手順は、使用する溶媒、化合物及び
多座配位子の種類に応じて、最適な手順を選択すればよ
く、特に限定されるものではない。例えば、アルカリ土
類金属元素M、Co、板状結晶成長元素X及び置換元素
Aを含む化合物として、水溶性の塩類を使用する場合、
まず塩類を水に溶解させ、次いでこの水溶液に多座配位
子を溶解させればよい。
【0062】一方、アルカリ土類金属元素M、Co、板
状結晶成長元素X及び置換元素Aを含む化合物として、
水に不溶であるが酸には可溶な酸化物、単体金属等を使
用する場合には、まずこれらの化合物を酸水溶液に溶解
させて均一溶液とした後、この水溶液に多座配位子を溶
解させればよい。
【0063】次に、ゲル化工程について説明する。ゲル
化工程は、溶液調製工程で得られた溶液をゲル化させる
工程である。溶液をゲル化させる方法は、特に限定され
るものではなく、溶液中に溶解させた化合物及び多座配
位子の種類に応じて、最適な方法を選択すれば良い。
【0064】例えば、アルカリ土類金属元素M、Co、
板状結晶成長元素X及び置換元素Aを含む化合物を硝酸
水溶液に溶解させ、これに多座配位子を溶解させた溶液
の場合、水分を徐々に蒸発させるだけで水を含んだ湿潤
ゲルが得られる。また、水分及び硝酸をすべて揮発させ
ると、水を含まない乾燥ゲルが得られる。
【0065】次に、焼成工程について説明する。焼成工
程は、ゲル化工程において得られたゲルを焼成し、コバ
ルト層状酸化物からなる板状結晶を成長させる工程であ
る。
【0066】焼成温度は、目的とするコバルト層状酸化
物が得られるように、その組成に応じて、最適な温度を
選択すればよい。例えば、化1の式で表されるコバルト
層状酸化物の場合、焼成温度は、800℃以上920℃
以下が好ましい。
【0067】また、焼成時間は、所定の平均アスペクト
比及び平均粒径を有する板状粉末が得られるように、作
製しようとするコバルト層状酸化物の組成、焼成温度等
に応じて、最適な時間を選択すればよい。さらに、焼成
は、大気中又は酸素雰囲気中で行うのが好ましい。
【0068】なお、ゲル化工程において得られた乾燥ゲ
ルは、そのまま焼成しても良く、あるいは、乾燥ゲルを
粉砕した後に焼成しても良い。また、乾燥ゲルを焼成す
ると、通常、合成された板状粉末が凝集した状態となる
ので、このような場合には、焼成後に焼成物の解砕を行
うのが好ましい。
【0069】次に、本発明に係る板状粉末の製造方法の
作用について説明する。アルカリ土類金属元素M、Co
及び板状結晶成長元素X、並びに必要に応じて加えられ
る置換元素Aを含む溶液に多座配位子を溶解させると、
多座配位子の配位座にアルカリ土類金属元素M、Co、
板状結晶成長元素X、及び置換元素Aがランダムに配位
し、錯体を形成する。このような溶液をゲル化させる
と、これらの元素が原子レベルで均一に分散したゲルが
得られる。
【0070】次に、得られたゲルを所定の条件下で焼成
すると、まず、ゲル中に含まれる各元素の比率に対応し
た組成を有するコバルト層状酸化物の核が生成する。さ
らに焼成を続行すると、生成した核が、自形の発達した
板状粉末、すなわち、表面エネルギーの最も小さい{0
01}面を発達面とする板状粉末に成長する。
【0071】本発明に係る製造方法によれば、溶解、ゲ
ル化及び焼成という比較的単純な操作によって、目的と
する組成及び形状を有する板状粉末を容易に量産するこ
とができる。これは、多座配位子により各元素が均一に
分散したゲルが得られることに加えて、板状結晶成長元
素Xにより焼成過程における物質移動が促進されるため
である。板状結晶成長元素Xにより物質移動が促進され
るのは、板状結晶成長元素Xが単独で又は他の元素と協
働して液相又は気相を生成し、この液相又は気相を介し
て物質移動が行われるためと考えられる。
【0072】次に、本発明に係る結晶配向セラミックス
の製造方法により得られる結晶配向セラミックスについ
て説明する。本発明に係る方法により得られる結晶配向
セラミックスは、上述した板状粉末と同一又は異なる組
成を有するコバルト層状酸化物からなる。製造可能な結
晶配向セラミックスの組成範囲が、製造可能な板状粉末
の組成範囲より広いのは、後述するように、板状粉末
は、単独で用いることができるだけでなく、層状酸化物
生成原料と共に用いることもできるためである。
【0073】本発明に係る方法により製造可能な結晶配
向セラミックスの組成であって、化1の式で表される組
成以外の組成としては、具体的には、次の化2の式で表
される組成が好適な一例として挙げられる。化2の式で
表されるコバルト層状酸化物は、高い熱電特性を有して
いるので、結晶方位を一方向に揃えることによって、高
い性能指数を有する熱電変換材料となる。
【0074】
【化2】{(Ca1−x−yBiCoO
3+α}(CoO2+β (但し、Aは、Na及び/又はK、0<x、0<x+y
≦0.3、0.5≦z≦2.0、0.85≦{3+α+
(2+β)z}/(3+2z)≦1.15)
【0075】なお、化2の式において、「0.85≦
{3+α+(2+β)z}/(3+2z)≦1.15」
は、基本組成({(Ca1−x−yBi)CoO
}(CoO) )を有するコバルト層状酸化物に含ま
れる酸素の化学量論量(3+2z)に対し、最大で±1
5atm%の範囲で酸素が過剰となったり、あるいは、
酸素の欠損を生ずる場合があることを示す。この場合、
増減する酸素は、第1副格子に含まれる酸素(β)又は
第2副格子に含まれる酸素(α)のいずれか一方であっ
ても良く、あるいは、双方の酸素であっても良い。
【0076】また、化2の式に示すコバルト層状酸化物
において、第1副格子及び/又は第2副格子に含まれる
Coの一部をCuで置換しても良い。Coの一部をCu
で置換すると、層状酸化物のゼーベック係数が向上する
という効果がある。この場合、CuによるCoの置換量
は、10atm%以下が好ましい。
【0077】本発明に係る方法により製造可能な結晶配
向セラミックスの組成の他の具体例としては、次の化3
の式で表されるコバルト層状酸化物が好適な一例として
挙げられる。化3の式で表されるコバルト層状酸化物も
また、結晶方位を一方向に揃えることによって、高い性
能指数を有する熱電変換材料となる。
【0078】
【化3】(Bi1−x−yCo1+α)(Co
2+β (但し、Mは、1種又は2種以上のアルカリ土類金属元
素、0.2≦x≦0.8、0≦y<0.5、0.2≦x
+y<1、0.25≦z≦0.5、0.85≦{1+α
+(2+β)z}/(1+2z)≦1.15)
【0079】なお、化3の式において、「0.85≦
{1+α+(2+β)z}/(1+2z)≦1.15」
は、基本組成( (Bi1−xーyCoO)(CoO
))を有するコバルト層状酸化物に含まれる酸素の
化学量論量(1+2z)に対し、最大で±15atm%
の範囲で酸素が過剰となったり、あるいは、酸素の欠損
を生ずる場合があることを示す。この場合、増減する酸
素は、第1副格子に含まれる酸素(β)又は第2副格子
に含まれる酸素(α)のいずれか一方であっても良く、
あるいは、双方の酸素であっても良い。
【0080】また、化3の式に示すコバルト層状酸化物
において、第1副格子及び/又は第2副格子に含まれる
Coの一部をCuで置換しても良い。Coの一部をCu
で置換すると、層状酸化物のゼーベック係数が向上する
という効果がある。この場合、CuによるCoの置換量
は、10atm%以下が好ましい。
【0081】また、結晶配向セラミックスに含まれる各
結晶粒の配向の程度は、ロットゲーリング法による配向
度で表すことができる。ロットゲーリング法による配向
度とは、次の数1の式で表される平均配向度Q(HKL)
をいう。
【0082】
【数1】
【0083】なお、数1の式において、ΣI(hkl)
は、結晶配向セラミックスについて測定されたすべての
結晶面(hkl)のX線回折強度の総和であり、ΣI
(hkl)は、結晶配向セラミックスと同一組成を有する
無配向セラミックスについて測定されたすべての結晶面
(hkl)のX線回折強度の総和である。また、Σ'I
(HKL)は、結晶配向セラミックスについて測定された
結晶学的に等価な特定の結晶面(HKL)のX線回折強
度の総和であり、Σ'I(HKL)は、結晶配向セラミ
ックスと同一組成を有する無配向セラミックスについて
測定された結晶学的に等価な特定の結晶面(HKL)の
X線回折強度の総和である。
【0084】従って、多結晶体を構成する各結晶粒が無
配向である場合には、平均配向度Q(HKL)は0%とな
り、すべての結晶粒の(HKL)面が一方向に配向して
いる場合には100%となる。
【0085】コバルト層状酸化物の熱電特性の異方性を
最大限に利用し、高い性能指数を得るためには、{00
1}面の配向度は、高い程良い。{001}面の配向度
は、具体的には、50%以上が好ましく、さらに好まし
くは、80%以上である。本発明に係る製造方法によれ
ば、このような高い{001}面配向度を有する結晶配
向セラミックスを容易に製造することができる。
【0086】次に、本発明に係る結晶配向セラミックス
の製造方法について説明する。本発明に係る結晶配向セ
ラミックスの製造方法は、原料調製工程と、成形工程
と、焼結工程とを備えている。
【0087】初めに、原料調製工程について説明する。
原料調製工程は、上述したコバルト層状酸化物からなる
板状粉末、又は、この板状粉末及び層状酸化物生成原料
を含む原料を調製する工程である。すなわち、板状粉末
は、単独で用いても良く、あるいは、層状酸化物生成原
料と組み合わせて用いても良い。また、板状粉末は、上
述したように、所定の平均アスペクト比及び平均粒径を
有するものを用いるのが好ましい。
【0088】「層状酸化物生成原料」とは、板状粉末と
反応して、板状粉末と同一又は異なる組成を有するコバ
ルト層状酸化物となる化合物をいう。層状酸化物生成原
料の組成及び配合比率は、結晶配向セラミックスを構成
するコバルト層状酸化物の組成、及び使用する板状粉末
の組成に応じて定まる。また、層状酸化物生成原料の形
態については、特に限定されるものではなく、水酸化
物、酸化物粉末、複合酸化物粉末、炭酸塩、硝酸塩、シ
ュウ酸塩、酢酸塩などの塩類等を用いることができる。
さらに、層状酸化物生成原料として、作製しようとする
結晶配向セラミックスと同一組成を有するコバルト層状
酸化物からなる非板状粉末を用いることもできる。
【0089】層状酸化物生成原料が固体である場合又は
固体状態のまま原料の調製を行う場合、層状酸化物生成
原料の平均粒径は、20μm以下が好ましい。平均粒径
が20μmを超えると、反応が不均一となったり、焼結
性が低下するので好ましくない。層状酸化物生成原料の
平均粒径は、さらに好ましくは5μm以下である。層状
酸化物生成原料の平均粒径は、成形性や取扱性が低下し
ない限りにおいて、小さいほど良い。
【0090】出発原料として、板状粉末及び層状酸化物
生成原料を用いる場合において、層状酸化物生成原料の
配合比率が過大になると、必然的に原料全体に占める板
状粉末の配合比率が小さくなり、結晶配向セラミックス
の{001}面の配向度が低下するおそれがある。従っ
て、層状酸化物生成原料の配合比率は、要求される{0
01}面の配向度が得られるように、最適な値を選択す
るのが好ましい。
【0091】また、原料調製工程においては、使用する
原料の種類、原料の成形方法等に応じて、種々の処理を
行う。例えば、所定の平均粒径及び平均アスペクト比を
有する板状粉末のみを出発原料として用いて一軸加圧成
形する場合、特別の処理を施すことなくそのまま成形に
供することもできる。また、例えば、ゲルを粉砕せずに
そのまま焼成して得た板状粉末は、各板状粉末が凝集し
ている場合が多い。このような場合には、板状粉末の解
砕処理を施し、形状を整えるのが好ましい。
【0092】また、例えば、板状粉末と層状酸化物生成
原料の混合物を出発原料として用いる場合、あるいは、
原料にバインダ及び/又は可塑剤を添加する場合には、
原料の混合を行う。この場合、混合は、乾式で行っても
良く、あるいは、水、アルコール等の適当な分散媒を加
えて湿式で行っても良い。
【0093】次に、成形工程について説明する。成形工
程は、原料調製工程において所定の処理が施された原料
を板状粉末が配向するように成形する工程である。ここ
で、「板状粉末が配向する」とは、各板状粉末の発達面
が互いに平行に配列(以下、このような状態を「面配
向」という。)すること、又は、各板状粉末の発達面が
成形体を貫通する1つの軸に対して平行に配列(以下、
このような状態を「軸配向」という。)することの双方
を意味する。
【0094】なお、軸配向の場合には、その配向の程度
は、面配向と同様の配向度(数1の式)では定義できな
い。しかしながら、配向軸に垂直な面に対してX線回折
を行った場合の{001}回折に関するロットゲーリン
グ法による平均配向度(以下、これを「軸配向度」とい
う。)を用いて、軸配向の程度を表すことができる。板
状粉末が軸配向している成形体の場合、軸配向度は負の
値となる。また、板状粉末がほぼ完全に軸配向している
成形体の軸配向度は、板状粉末がほぼ完全に面配向して
いる成形体について測定された軸配向度と同程度にな
る。
【0095】成形方法については、板状粉末を配向させ
ることが可能な方法であれば良く、特に限定されるもの
ではない。板状粉末を面配向させる成形方法としては、
具体的には、ドクターブレード法、一軸加圧成形法、圧
延法、押出法(テープ状)等が好適な一例として挙げら
れる。また、板状粉末を軸配向させる方法としては、具
体的には、押出成形法(非テープ状)が好適な一例とし
て挙げられる。
【0096】また、板状粉末が面配向した成形体(以
下、これを「面配向成形体」という。)の厚さを増した
り、配向度を上げるために、面配向成形体に対し、さら
に、積層圧着、プレス、圧延などの処理(以下、これを
「面配向処理」という。)を行っても良い。この場合、
面配向成形体に対して、いずれか1種類の面配向処理を
行っても良く、あるいは、2種以上の面配向処理を行っ
ても良い。また、面配向成形体に対して、1種類の面配
向処理を複数回繰り返して行っても良く、あるいは、2
種以上の面配向処理をそれぞれ複数回繰り返し行っても
良い。
【0097】これらの中でも、一軸加圧成形法は、簡便
な方法によって面配向成形体が得られるという利点があ
る。また、ドクターブレード法によりテープキャストし
た後、得られたテープを積層圧着する方法によれは、さ
らに配向度の高い面配向成形体が得られるという利点が
ある。
【0098】次に、焼結工程について説明する。焼結工
程は、成形工程で得られた成形体を焼結させる工程であ
る。板状粉末のみを配向させた成形体を所定温度に加熱
すると、板状粉末間で焼結が進行する。また、板状粉末
と層状酸化物生成原料を含む成形体を所定の温度に加熱
すると、これらの反応によって板状粉末と同一又は異な
る組成を有するコバルト層状酸化物が生成すると同時
に、生成したコバルト層状酸化物の焼結も進行する。
【0099】加熱温度は、焼結及び反応が効率よく進行
するように、板状粉末、層状酸化物生成原料、及び作製
しようとする結晶配向セラミックスの組成に応じて最適
な温度を選択すればよい。例えば、化1の式で表される
コバルト層状酸化物からなる結晶配向セラミックスの焼
結を行う場合、焼結温度は、800℃以上920℃以下
が好ましい。また、加熱時間は、所定の焼結体密度が得
られるように、結晶配向セラミックスの組成、加熱温度
等に応じて最適な値を選択すればよい。
【0100】さらに、加熱方法としては、室温から所定
温度に徐々に昇温する方法や、あらかじめ所定温度に加
熱した炉内に配向成形体を導入し、一気に加熱する方法
など、作製しようとする結晶配向セラミックスの組成な
どに応じて、最適な方法を選択すればよい。
【0101】また、焼結工程は、酸素が存在する雰囲気
下(すなわち、大気中又は酸素中)で行うのが好まし
い。酸素を含まない雰囲気下で成形体を加熱すると、得
られる結晶配向セラミックス中の酸素量が減少し、熱電
特性が低下する場合があるので好ましくない。特に、酸
素中において成形体を加熱すると、高い熱電特性を有す
る結晶配向セラミックスが得られる。
【0102】なお、バインダを含む成形体の場合、焼結
工程の前に、脱脂を主目的とする熱処理を行っても良
い。この場合、脱脂の温度は、特に限定されるものでは
なく、少なくともバインダを熱分解させるに十分な温度
であれば良い。
【0103】また、配向成形体の脱脂を行うと、配向成
形体中の板状粉末の配向度が低下したり、あるいは、反
応が進行して配向成形体が膨張する場合がある。このよ
うな場合には、脱脂を行った後、焼結を行う前に、配向
成形体に対して、さらに静水圧(CIP)処理を行うの
が好ましい。脱脂後の配向成形体に対して、さらに静水
圧処理を行うと、脱脂に伴う配向度の低下、あるいは、
配向成形体の密度低下に起因する焼結体密度の低下を抑
制できるという利点がある。
【0104】次に、本発明に係る結晶配向セラミックス
の製造方法の作用について説明する。コバルト層状酸化
物のような複雑な組成を有するセラミックスは、通常、
成分元素を含む単純化合物を化学量論比になるように混
合し、この混合物を成形・仮焼した後に解砕し、次いで
解砕粉を再成形・焼結する方法によって製造される。し
かしながら、このような方法では、各結晶粒の特定の結
晶面が特定の方向に配向した配向焼結体を得るのは極め
て困難である。
【0105】これに対し、{001}面を発達面とする
コバルト層状酸化物からなる板状粉末を含む原料を、剪
断応力が作用するような成形方法を用いて成形すると、
板状粉末が配向した成形体が得られる。このような配向
成形体を所定の温度で加熱すると、板状粉末の配向方位
を維持したまま板状粉末間で焼結が進行する。また、原
料中に層状酸化物生成原料が含まれる場合には、板状粉
末の配向方位を承継したまま、コバルト層状酸化物の板
状結晶が成長する。そのため、各結晶粒の{001}面
が高い配向度で配向した結晶配向セラミックスが容易に
得られる。
【0106】本発明に係る製造方法は、通常のセラミッ
クスプロセスをそのまま用いることができるので、低コ
ストである。また、{001}面の配向度が高いだけで
なく、配向度及び組成が均一な結晶配向セラミックスが
得られる。さらに、本発明に係る製造方法により得られ
る結晶配向セラミックスは、多結晶体であるので、単結
晶より破壊靱性が大きく、また、粒界や空孔でフォノン
が散乱されるので、単結晶より熱伝導率が低くなる。
【0107】また、本発明により得られる結晶配向セラ
ミックスは、電気伝導度の高い{001}面が一方向に
配向しているので、{001}面が配向している方向と
平行な方向の性能指数は、同一組成を有する無配向セラ
ミックスより高い電気伝導度を示す。そのため、本発明
に係る製造方法により得られた結晶配向セラミックスを
熱電変換材料として用いれば、耐久性及び熱電特性に優
れた熱電変換素子を作製することができる。
【0108】
【実施例】(実施例1)図1に示す手順に従い、Ca
2.7Bi0.3Co3.7Cu0.3組成を有す
る板状粉末を合成した。まず、図1のステップ1(以
下、単に「S1」という。)において、CaCO:2
7.00g(0.27mol)、Co:21.83g
(0.37mol)、CuO:2.39g(0.03m
ol)及びBi :6.99g(0.015mo
l)をイオン交換水に分散させた。次いで、80℃に加
熱しながら、均一な溶液が得られるまで、適量の5Mの
硝酸水溶液を加えた。これらの化合物が完全に溶解し、
クリアーな溶液となった後、この溶液に、イオン交換水
に溶解させたクエン酸:134.40g(0.70mo
l)を滴下した。
【0109】次に、S2において、調製された溶液の入
った容器を、300℃に加熱したホットプレートの上に
置き、溶液中の水分を徐々に蒸発させた。加温が進行す
るに伴い、クリアーであった溶液が徐々に白濁し、やが
て全体が白い水を含んだ湿潤ゲルとなった。このまま水
が完全に蒸発するまで加温を行った後、さらに300℃
で3時間加熱した。これにより、硝酸が分解・蒸発し、
乾燥ゲルが得られた。
【0110】次に、得られた乾燥ゲルを粉砕した後、こ
れを加熱温度:900℃、加熱時間:3h、加熱雰囲
気:Airの条件下で焼成し、コバルト層状酸化物を合
成した(S3)。次いで、原料粉末をエタノール溶液中
において、室温で24hボールミル混合した(S4)。
さらに、ポットからスラリーを取り出し、エタノールを
蒸発させた(S5)。得られた粉末は、所定の組成を有
するコバルト層状酸化物からなり、かつ平均粒径12μ
m及び平均アスペクト比7の板状粉末であった。
【0111】(実施例2)図2に示す手順に従い、Ca
2.7Bi0.3Co3.7Cu0.3組成を有す
る結晶配向セラミックスを作製した。まず、図2のS1
1において、実施例1で得られた板状粉末を、そのまま
一軸加圧成形法(加圧力:250MPa)により加圧成
形した。次いで、S12において、得られた成形体を、
常圧下において、加熱温度:900℃、加熱時間:24
h、加熱雰囲気:Airの条件下で焼結させた。
【0112】(比較例1)図3に示す手順に従い、Ca
2.7Bi0.3Co3.7Cu0.3組成を有す
るセラミックスを作製した。まず、図3のS21におい
て、実施例1で得られた板状粉末をそのまま袋に詰め、
加圧力:250MPaでCIP(冷間等方加圧)により
加圧成形した。次いで、S22において、得られた成形
体を、常圧下において、加熱温度:900℃、加熱時
間:24h、加熱雰囲気:Airの条件下で焼結させ
た。
【0113】(実施例3)図4に示す手順に従い、Ca
2.7Bi0.3Co3.7Cu0.3組成を有す
る結晶配向セラミックスを作製した。まず、図4のS3
1において、実施例1で得られた板状粉末、トルエン及
びエタノールをそれぞれ容器に所定量計り取った。次い
で、これらの原料をボールミルに入れ、24h湿式混合
した(S32)。混合終了後、スラリーに所定量のバイ
ンダー及び可塑剤を添加し(S33)、さらにボールミ
ルで3h湿式混合した(S34)。
【0114】次に、スラリーをポットから取り出し、テ
ープキャストにより厚さ約100μmのシート状に成形
した(S35)。さらに、得られたシートを重ね合わ
せ、温度:80℃、圧力:10MPaの条件で圧着した
(S36)。
【0115】次に、得られた成形体を、大気中におい
て、温度:700℃、加熱時間:2時間の条件下で脱脂
した(S37)。さらに、この成形体を、大気中におい
て、温度:900℃、加熱時間:24hの条件下で焼結
した(S38)。
【0116】(実施例4)以下の手順に従い、Ca
2.7Bi0.3Co3.7Cu0.3組成を有す
る結晶配向セラミックスを作製した。まず、実施例3と
同一の手順(図4のS31〜S37まで)に従い、実施
例1で得られた板状粉末が面配向した成形体を作製し、
これを脱脂した。次に、得られた脱脂体に対して、ホッ
トプレスを行った。なお、ホットプレス条件は、加熱温
度:900℃、加熱時間:24h、加熱雰囲気:Ai
r、加圧力:2MPaとし、加圧力は、テープ面に対し
て垂直に印加した。
【0117】図5及び図6に、それぞれ、実施例2及び
比較例1で得られた焼結体の破断面のSEM写真を示
す。板状粉末をCIP成形した比較例1の場合、図6に
示すように、得られた焼結体は、板状粉末がランダムに
配向した無配向焼結体であった。これに対し、板状粉末
を一軸加圧成形した実施例2の場合、図5に示すよう
に、加圧方向に対して垂直に板状結晶が配向した配向焼
結体が得られた。
【0118】実施例2及び比較例1で得られた焼結体に
ついて、数1の式を用いてロットゲーリング法による
{001}面の平均配向度を求めた。その結果、比較例
1で得られた焼結体の平均配向度は、3%であるのに対
し、実施例2で得られた焼結体の平均配向度は、86%
であった。
【0119】次に、実施例2〜4及び比較例1で得られ
た焼結体から、テープ面と平行な方向に沿って棒状試料
を切り出した。次いで、この棒状試料を用いて、473
K〜1073Kの温度範囲において、テープ面と平行な
方向について、ゼーベック係数、熱伝導率及び電気伝導
率を測定した。さらに、得られたゼーベック係数、電気
伝導率及び熱伝導率を用いて、性能指数Zを算出した。
図7に、その結果を示す。
【0120】図7より、実施例2で得られた配向焼結体
の性能指数Zは、全温度域において、比較例1の無配向
焼結体より大きいことがわかる。これは、電気伝導率の
高い{001}面を一方向に配向させることによって、
テープ面と平行な方向の電気伝導率が向上し、これによ
って性能指数Zが向上したためである。
【0121】また、図7より、テープキャスト及び積層
圧着により得られた焼結体(実施例3)は、一軸加圧成
形により得られた焼結体(実施例2)より性能指数Zが
高くなり、積層圧着された配向成形体をホットプレスし
て得た焼結体(実施例4)は、性能指数Zがさらに向上
することがわかる。これは、積層圧着あるいはホットプ
レスによって{001}面配向度が増し、テープ面と平
行な方向の電気伝導率がさらに向上したためである。
【0122】以上、本発明の実施の形態について詳細に
説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定される
ものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の
改変が可能である。
【0123】例えば、上記実施例では、一軸加圧成形又
はドクターブレード法によるテープキャストによって板
状粉末を面配向させているが、押出成形法を用いて、板
状粉末を軸配向させても良い。板状粉末をこのように軸
配向させた場合であっても、無配向焼結体より高い性能
指数を有する結晶配向セラミックスが得られる。また、
押出成形法を用いると、ある程度の厚さを有する焼結体
を低コストで作製できるという利点がある。
【0124】さらに、本発明に係る製造方法により得ら
れる結晶配向セラミックスは、高い性能指数を示すの
で、熱電発電器、精密温度制御装置、恒温装置、冷暖房
装置、冷蔵庫、時計用電源等に用いられる熱電発電素子
を構成する熱電変換材料として特に好適であるが、本発
明に係る製造方法により得られる結晶配向セラミックス
の用途はこれに限定されるものではなく、巨大磁気抵抗
効果を利用した各種の電子素子(例えば、磁気ヘッド)
にも応用することができる。
【0125】
【発明の効果】本発明に係る板状粉末の製造方法は、多
座配位子によって成分元素が均一に分散したゲルが得ら
れ、しかも、板状結晶成長元素Xによって焼成時の物質
移動が促進されるので、所定の組成を有するコバルト層
状酸化物からなり、かつ{001}面を発達面とする板
状粉末が得られるという効果がある。また、比較的単純
なプロセスによって、このような板状粉末を大量合成で
きるという効果がある。
【0126】また、本発明に係る板状粉末の製造方法
は、アルカリ土類金属元素M、Co及び板状結晶成長元
素Xのみを含む系のみならず、他の元素(例えば、C
u)を含む系に対しても適用可能であり、熱電特性に優
れた種々のコバルト層状酸化物からなる板状粉末を合成
できるという効果がある。
【0127】また、本発明に係る結晶配向セラミックス
の製造方法は、コバルト層状酸化物の板状粉末を出発原
料に用いているので、コバルト層状酸化物からなり、か
つ、高い{001}面配向度を有する配向焼結体を効率
よく製造できるという効果がある。また、コバルト層状
酸化物の板状粉末と層状酸化物生成原料の混合物を出発
原料に用いて配向焼結体を製造することもできるので、
板状粉末と同一組成のみならず、板状粉末と異なる組成
を有するコバルト層状酸化物からなる結晶配向セラミッ
クスであっても製造できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る板状粉末の製造方法の一例を示
す工程図である。
【図2】 本発明に係る結晶配向セラミックスの製造方
法の一例を示す工程図である。
【図3】 比較例1の製造方法を示す工程図である。
【図4】 本発明に係る結晶配向セラミックスの製造方
法の他の一例を示す工程図である。
【図5】 実施例2で得られた結晶配向セラミックスの
破断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図6】 比較例1で得られた無配向セラミックスの破
断面の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
【図7】 実施例2〜4で得られた結晶配向セラミック
ス及び比較例1で得られた無配向セラミックスの温度と
性能指数との関係を示す図である。
フロントページの続き (72)発明者 河本 邦仁 愛知県名古屋市北区名城三丁目1 9− 401号 (72)発明者 文 志雄 愛知県尾張旭市桜ヶ丘町1丁目13番地 パ ークタウン桜ヶ丘A棟203号室 Fターム(参考) 4G030 AA08 AA09 AA10 AA22 AA28 AA31 AA43 BA01 BA21 CA02 CA04 CA08 GA03 GA08 GA10 GA11 GA14 GA15 GA17 GA20 GA21 GA25 GA27 4G048 AA05 AB02 AB05 AC08 AD04 AD06 AE05

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくともアルカリ土類金属元素M、C
    o、及び板状結晶成長元素Xを含み、かつ、コバルト層
    状酸化物を生成可能な組成比を有する1種又は2種以上
    の化合物、並びに多座配位子を溶媒に溶解させる溶液調
    製工程と、 該溶液調製工程において得られた溶液をゲル化させるゲ
    ル化工程と、 該ゲル化工程において得られたゲルを焼成し、前記コバ
    ルト層状酸化物からなる板状結晶を成長させる焼成工程
    とを備えた板状粉末の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記板状結晶成長元素Xは、Bi及び/
    又はCrである請求項1に記載の板状粉末の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記多座配位子は、ジオール化合物、多
    カルボン酸及びこれらの誘導体から選ばれる1種又は2
    種以上の化合物である請求項1又は2に記載の板状粉末
    の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記多座配位子は、クエン酸である請求
    項1又は2に記載の板状粉末の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記化合物は、さらにCuを含むもので
    ある請求項1、2、3又は4に記載の板状粉末の製造方
    法。
  6. 【請求項6】 請求項1から5までのいずれかの方法に
    より得られる板状粉末、又は、該板状粉末及びこれと反
    応して前記板状粉末と同一若しくは異なる組成を有する
    コバルト層状酸化物を生成する層状酸化物生成原料を含
    む原料を調製する原料調製工程と、 前記板状粉末が配向するように前記原料を成形する成形
    工程と、 該成形工程で得られた成形体を焼結させる焼結工程とを
    備えた結晶配向セラミックスの製造方法。
  7. 【請求項7】 前記成形工程は、前記原料を一軸加圧成
    形するものである請求項6に記載の結晶配向セラミック
    スの製造方法。
  8. 【請求項8】 前記成形工程は、前記原料をテープキャ
    ストして得られるテープを積層圧着するものである請求
    項6に記載の結晶配向セラミックスの製造方法。
  9. 【請求項9】 前記結晶配向セラミックスは、ロットゲ
    ーリング法による{001}面の平均配向度が50%以
    上である請求項6、7又8に記載の結晶配向セラミック
    スの製造方法。
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