JP2002361486A - ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents

ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 使用上の作業性と低温衝撃値に優
れたガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを
提供する。 【解決手段】 低炭素鋼の軟鋼用外皮にチタニア
系をベースとするフラックスを充填したガスシールドア
ーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、前記フラッ
クスが、ワイヤ全重量に対して重量でTiO 4.0
〜8.0%、Mn1.0〜3.0%、Si 0.1〜
1.0%、B 0.002〜0.02%、Mg 0.2
〜0.45%、Al 0.15〜0.3%を含有するよ
うにし、ここで、さらに好ましくは、前記Alに対する
前記Mgの含有比率を1.45以上1.55以下にす
る。これにより、全姿勢での溶接作業性に優れていると
ともに、低温靭性の良好な溶接金属が得られ、また、良
好なビード形状とアーク安定性、そしてスパッタ発生量
の最小化から溶接能率性が極めて良好になるという効果
がある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フラックス入りワ
イヤに関し、特に、チタニア系をベースとするフラック
スが充填され、炭酸ガスまたはアルゴンと炭酸ガスとの
混合ガスをシールドガスとして使用するガスシールドア
ーク溶接用フラックス入りワイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、軟鋼および引張強度が50kg
f/mm以上である高張力鋼に主として適用している
チタニア系フラックス入りワイヤは、作業性は非常に良
好であるものの、低温や大入熱溶接などの溶接金属では
衝撃靭性が低いことが短所として指摘されてきた。特
に、衝撃値を厳格に規定している船級規格グレードII
I(Grade III;−20℃で55J以上)、ア
ルミニウムキルド鋼などの低温用鋼(−40℃〜−50
℃で28J以上)では溶接金属の衝撃値が問題となり、
その適用が困難であった。そこで、塩基性系のフラック
スを充填することによって溶接金属の低温における衝撃
値はある程度満足させることができたが、作業性におい
ては全姿勢溶接が不安である、あるいはスパッタおよび
溶接ヒュームの発生が増加するなどの問題が生じた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明
は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、使用上の
作業性と低温衝撃値に優れたガスシールドアーク溶接用
フラックス入りワイヤを提供することにその目的があ
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明によるガスシールドアーク溶接用フラックス
入りワイヤは、低炭素鋼の軟鋼用外皮にチタニア系をベ
ースとするフラックスを充填したガスシールドアーク溶
接用フラックス入りワイヤにおいて、前記フラックス
は、ワイヤ全重量に対して重量でTiO 4.0〜
8.0%、Mn 1.0〜3.0%、Si 0.1〜
1.0%、B 0.002〜0.02%、Mg0.2〜
0.45%、Al 0.15〜0.3%を含有したこと
を特徴とする。ここで、前記Alに対する前記Mgの含
有比率が1.45以上1.55以下であればより好まし
い。
【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明の構成についてさら
に詳細に説明する。本発明において、軟鋼用外皮の内部
に充填されるフラックスは、各々アーク安定剤、スラグ
形成剤、脱酸剤および合金添加剤などの機能をし得るよ
うに配合して構成される。このうち、スラグ被包性と流
動性を考慮して、酸化物としてTiO成分の含量(以
下、重量%)がワイヤ全重量に対して4.0〜8.0%
となるようにする。また、脱酸剤としてFe−Mn、M
e−Mn、その他のMn合金鉄などをフラックス中に添
加し、これらをMn量で換算したとき、ワイヤ全重量に
対して1.0〜3.0%の範囲となるようにする。
【0006】そして、脱酸機能とスラグの粘性などを考
慮してFe−Si、Fe−Si−Bなどを添加するもの
の、その構成比は、Siで換算したとき、ワイヤ全重量
に対して0.1〜1.0%範囲となるようにし、Bはワ
イヤ全重量に対して0.002〜0.02%となるよう
に調整することによって、スラグの被包性と流動性を一
定にし、安定した全姿勢溶接を可能にし、且つ低温にお
ける衝撃値も向上させることができる。
【0007】また、アーク安定性とビードの形状を改善
するためにMgとAlを添加するが、Alに対するMg
の含有比率(Mg/Al)が式(1)を満足できるよう
にすることによって、アークの安定性と集中力をさらに
向上させ、前述したフラックスの諸般機能をさらに向上
させて全姿勢溶接を便利にすることができ、特に、低温
における衝撃靭性をさらに向上させることができる。 1.45≦Mg/Al≦1.55 − − − 式(1) 一方、ここに使用される供給原料としてはMg−Al、
Me−Mg、Fe−Al、Me−Alなどを添加するこ
とができる。
【0008】次いで、本発明のフラックスにおける数値
限定の理由について詳細に説明する。チタニア系フラッ
クスの主成分であるTiOは、スラグ形成剤の機能と
アーク安定剤の機能を果たす非常に重要な成分であっ
て、スラグ形成剤としては珍しく優れた被包性と剥離性
を有している。しかし、前記TiOは、4.0%未満
では良好なビード外観と形状が得られなく、スラグ被包
性に乏しくなり、アーク安定性も悪化されながらスパッ
タ発生量が増加することになる。また、8.0%を超え
ると、スラグ過多が発生してスラグ層が厚くなり、溶融
池の浮上過程で非金属介在物として残存したり、スラグ
混入が起こったりする恐れがある。
【0009】このTiOの供給原料としては鉱石とし
てのルチルサンドや還元イルミナイトまたは酸化チタ
ン、ルコキシンなどが使用される。脱酸剤として添加さ
れるMnは、脱酸剤としての主機能とともに、溶接金属
の酸素量を減らして低温靭性を向上させる付加的機能も
果たす。しかし、前記Mnは、1.0%未満では脱酸力
が不充分なのでアークが不安定になる、もしくはブロー
ホールが発生し易くなる。また、3.0%を超えると、
強度が規定規格を超える、あるいは高温における割れが
発生し易くなる。したがって、Mnの含量は、ワイヤ全
重量に対して1.0〜3.0%が好適で、供給原料とし
てはFe−Mn、Me−Mn、Si−Mnなどが使用さ
れる。
【0010】脱酸剤として添加されるSiは、溶接金属
内の酸素を減らしたり、SiO形態のスラグとなって
流動性と被包性をよくしたりし、且つ、スラグの粘性を
調整してより容易に立向上進姿勢での溶接ができるよう
にする。しかし、0.1%未満では、その機能が不充分
なので脱酸力が劣り、ブローホールの発生による溶接欠
陥を引き起こしたり、スラグの被包性と粘性の不足によ
って立向上進姿勢での使用適用性が低下したりする。ま
た、1.0%を超える場合には、溶接金属内のSi含量
が増加されてシグマ相を促進させ、低温靭性の劣化を生
じさせる逆効果があるので注意が必要である。また、ス
パッタの発生量と溶接ヒュームの発生量を増加させたり
することもあるので、ワイヤ全重量に対して1.0%以
下に限定するのが好ましく、供給原料としてはFe−S
i、Fe−Si−Mnなどがある。
【0011】Bは、溶接金属の組織を微細化して低温靭
性を向上させる役割をするが、限定された範囲を超える
と急速に金属を硬化させて高温割れを発生させるので、
その使用量に対しては格別な注意が必要とされている。
したがって、前記Bの添加量の限定範囲はワイヤ全重量
に対して0.002〜0.02%にするのが好適であ
る。
【0012】Mgは、アーク安定剤と強力な脱酸剤とし
ての機能を有し、アーク中で瞬間的な酸化反応によって
MgOに変化するが、このMgOは、スラグの凝固点を
上昇させることから、立向上進姿勢でビードの垂れのな
い溶接外観を可能にする。しかし、0.2%未満ではそ
の効果は殆どなく、0.45%を超える場合にはスパッ
タ発生量を増加させ、スラグの形成を弱くし、かえって
ビードの形状を悪くするので、その含量をワイヤ全重量
に対して0.2〜0.45%に限定する。
【0013】Alは、脱酸剤としての機能を有し、Fe
−Mn、Fe−Siとの複合的な作用によってスラグ形
成を助け、溶融金属の垂れを防止する。しかし、0.3
%を超える場合には、ビードの形状を悪くし、アーク感
覚を硬くすることもあり、低温靭性を低下させるので、
その添加量は0.15〜0.3%にするのが好ましい。
【0014】前記MgとAlの添加比率のMg/Al
を、1.45よりは大きく1.55よりは小さくする
と、本発明の主要特性の一つである全姿勢での溶接性を
向上させ、立向上進姿勢での溶接をさらに便利にするこ
とができる。また、アークの安定性による溶接能率を向
上させることができ、−40℃のアルミニウムキルド鋼
で適用可能な水準の低温靭性値である50J以上を得る
ことができる。
【0015】このようにMgとAlの適切な組合せによ
って他の脱酸剤の機能を上昇させることができると同時
に、スラグの融点調整などが可能となって全姿勢の適用
性にも優れていると言える。しかし、本発明で要求する
範囲を外れる場合には、その他のフラックスの組成比を
満足させてもその効果は半減されることになる。
【0016】次いで、本発明の実施例を比較例に基づい
て具体的に比較、説明する。
【0017】
【実施例】軟鋼用外皮の内部に充填されるフラックスの
成分と組成比が本発明の設計限定範囲内にあるものを実
施例とし、少なくとも1種以上のフラックスが設計限定
範囲を外れたものを比較例として試作品を製造した。実
施例と比較例に対するフラックスの組成比を表1に表し
た。試作品は、充填率を15%として1.2mm径に製
造し、評価した。
【0018】次いで、試作製造されたワイヤを用いて表
2に表した溶接条件にしたがって試験片溶接を施し、溶
接時のアーク安定性、スパッタ発生量、スラグ剥離性お
よびヒューム発生量を確認した。
【表1】
【表2】
【0019】また、立向上進では、図1に示すT形の試
験片に連続的にビード積層を施し、溶接に際して溶融金
属の垂れの程度と溶接後のビード垂れなどを肉眼で観察
し、その結果を表3に表した。(図面符号1は母材、2
は溶接ビード、Dは溶接方向)
【表3】 注)◎:非常に良好 O:良好 △:普通
X:不良 *:溶接初層またはクレーターでビード割れの多発
【0020】溶接部の性能評価は、溶接金属の機械物理
的試験のための試験片の製作を船級協会で決める規定に
基づいて行い、表4に試験片の製作のための溶接条件を
示した。溶接部の高温割れ試験は、機械物理試験用の板
材と同じ鋼種で図2aおよび図2bに示すような試験片
を製作し、ルートギャップを6mm与え250A/31
Vで毎分24cmの溶接速度で溶接を施した後、スラグ
を取除き、液状浸透法によってビード割れの有無を確認
した。(図面符号3は試験板材、4は溶接ビード、5は
拘束台、6はバッキングセラミック材、Dは溶接方向で
ある)
【0021】引張試験と低温衝撃並びに高温割れ試験の
結果を表5に表した。
【表4】
【表5】
【0022】前記表1に表すようなフラックスの構成比
のうち化学成分の組成比が本発明の請求範囲内にある実
施例1ないし実施例8のワイヤは、優れた溶接作業性と
ともに、立向上進姿勢の溶接においても溶融金属の垂れ
やビードの垂れが生じず、極めて良好なビード外観が得
られた。また、引張強度は規格を満足し、低温衝撃値に
おいても−40℃の温度で米国溶接協会規格(AWS)
の規定を満足する結果値を得た。そして、高温割れ試験
においても溶接金属の溶接ビードでは割れが発生しない
良好な結果を得た。
【0023】しかし、フラックスの構成と組成比におい
て1種以上のフラックスが本発明の請求範囲を外れた比
較例では、使用上の作業性が劣るとか、機械物理的性質
のうち衝撃値が要求水準に達しない結果が表れた。特
に、比較例9は、脱酸剤としてのMnの不足とMg/A
lの比が本発明の請求範囲を外れた場合であって、脱酸
力の不足によるブローホール発生頻度の増加とアーク安
定性の不足、そして立向上進姿勢でのビード垂れの発生
によって溶接の能率性が劣化された。
【0024】比較例10の場合は、作業性は概ね良好で
あったが、低温衝撃特性が要求水準を満足できなかった
し、ビードの形状もやや不揃いな状態を表した。
【0025】また、比較例11の場合は、TiOとM
g/Alの比が本発明の請求範囲を外れた場合であっ
て、スラグの不足によって被包性が悪く、溶融スラグの
粘性不足によって立向上進でビードの垂れが生じた。
【0026】また、比較例12ないし比較例15は、M
g/Alの比が本発明の請求範囲を超えた場合であっ
て、ヒューム発生量の増加とビードの偏りが発生し、か
えって本発明で追求する溶接性に逆効果をもたらし、特
に、比較例15および比較例16の場合は、Bの添加量
超過によって溶接ビードの高温割れ発生が増加する結果
となった。
【0027】
【発明の効果】上述したように、本発明によるガスシー
ルドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、全姿勢での
溶接作業性に優れているとともに、低温靭性の良好な溶
接金属が得られる効果がある。また、良好なビード形状
とアーク安定性、そしてスパッタ発生量の最小化によっ
て溶接能率性が極めて良好になる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例と比較例に対する溶接作業性を
試験するために使用された立向上進溶接用の試験片を示
す斜視図。
【図2】図2aは、本発明の実施例と比較例に対する溶
接部の高温割れ試験のために使用された試験片を示す平
面図であり、図2bは、図2aのA−A線に沿った断面
図である。
【符号の説明】
1 母材 2、4 溶接ビード 3 試験板材 5 拘束台 6 バッキングセラミック材 D 溶接方向

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 低炭素鋼の軟鋼用外皮にチタニア系をベ
    ースとするフラックスを充填したガスシールドアーク溶
    接用フラックス入りワイヤにおいて、 前記フラックスは、ワイヤ全重量に対して重量でTiO
    4.0〜8.0%、Mn 1.0〜3.0%、Si
    0.1〜1.0%、B 0.002〜0.02%、M
    g 0.2〜0.45%、Al 0.15〜0.3%を
    含有したことを特徴とするガスシールドアーク溶接用フ
    ラックス入りワイヤ。
  2. 【請求項2】 前記Alに対する前記Mgの含有比率が
    1.45以上1.55以下であることを特徴とする請求
    項1記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワ
    イヤ。
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