JP2002275581A - 鋼材料 - Google Patents

鋼材料

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JP2002275581A JP2001080313A JP2001080313A JP2002275581A JP 2002275581 A JP2002275581 A JP 2002275581A JP 2001080313 A JP2001080313 A JP 2001080313A JP 2001080313 A JP2001080313 A JP 2001080313A JP 2002275581 A JP2002275581 A JP 2002275581A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】鋼材料の強度、硬度および靱性を向上させ、し
かも、該鋼材料を加熱するに際して割れを生じ難くす
る。 【解決手段】原料鋼にBおよびNを含有させて鋼材料と
する。BおよびNの大部分は、鋼材料を構成する金属組
織中に固溶されてFe(B,N)系固溶体またはFe
(C,B,N)系固溶体の状態で存在する。なお、B、
Nの含有量は、それぞれ、重量割合で7〜30ppm、
10〜70ppmとする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、BおよびNを含有
する鋼材料に関する。
【0002】
【従来の技術】Fe−C系合金からなる鋼材料は最も一
般的な金属材料の1種であり、特に、何らかの元素を含
有する鋼材料は特殊鋼と指称され、構造用部材や工具、
治具の原材料として広汎に使用されている。
【0003】特殊鋼に含有される元素としては、Al、
B、Co、Cr、Mn、Mo、N、Ni、Pb、S、
V、Ti、Ta、WまたはZr等が挙げられ、これら
は、所定の割合で含有されることにより鋼材料の特性を
向上させる。例えば、40〜70ppm(重量割合、以
下同じ)のBを含有するボロン鋼は、一般的な鋼材料に
比して強度、硬度および靱性に優れる。また、Pbを含
有する鋼は、切削加工を施すことが著しく容易な快削鋼
として広く知られている。
【0004】なお、鋼材料中におけるこれらの元素の存
在状態は、元素によって異なる。ほとんどの元素は、鋼
材料を構成するフェライト(α−FeとCとの固溶体)
またはセメンタイト(Fe3C)との固溶体ないし化合
物として存在するが、酸化物や硫化物等の非金属化合
物、または金属間化合物として存在することもある。さ
らに、上記したPb快削鋼においては、Pbは、他の元
素と結合することなくそれ自体で鋼材料中に存在する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、鋼材料に圧
延や鍛造等の各種の加工を施して所定の形状に塑性加工
する最中には、焼き入れや浸炭、窒化等のいわゆる表面
処理を施すことが一般的である。焼き入れは、鋼材料の
表面を加熱してオーステナイト(γ−FeとCとの固溶
体)を形成させた後に急冷してマルテンサイトを形成さ
せるものである。また、浸炭、窒化は、鋼材料を加熱し
た後、該鋼材料の表面から内部に指向してCまたはNを
浸透させるものである。このような表面処理により、該
鋼材料の表面が硬化される。
【0006】しかしながら、例えば、上記のボロン鋼に
は、焼き入れの最中に割れが生じ易いという欠点があ
る。勿論、割れが発生したものは製品として供すること
ができない。換言すれば、ボロン鋼を焼き入れする場
合、歩留まりの低下を招くという不具合が生じる。この
理由は、鋼材料中に不純物として遊離状態で存在するご
く微量のFe、C、Si、Ni、Mo等とBとが反応す
ることによってFeB、Fe2B、Fe5SiB2、Ni4
3、MoFeB4、Mo2FeB2、B4C等の脆性材料
が生成して鋼材料の結晶粒界に析出・偏在し、このため
に焼き入れ時に鋼材料に発生する熱応力が大きくなるた
めであると考えられている。
【0007】しかも、ボロン鋼には、ごく表面の強度、
硬度および靱性は良好であるが、内部の上記諸特性は充
分ではないという不具合がある。すなわち、鋼材料をホ
ウ化する際にBが上記したような遊離元素と早期に反応
してしまうので、Bを内部深くまで浸透(拡散)させる
ことが困難であるからである。
【0008】また、浸炭や窒化を行っても、CまたはN
の表面からの拡散距離は通常0.1mm程度、最大でも
0.25mmをやや超える程度である。すなわち、浸炭
または窒化では、鋼材料の表面のごく近傍を硬化するこ
とはできるが、表面からの距離が0.3mmを超える内
部を硬化することは著しく困難である。しかも、この場
合、鋼材料の靱性が浸炭または窒化を行う前に比して低
下してしまうという不具合がある。
【0009】上記各種処理とは別に、特開昭53−14
2933号公報には、まず鋼材料を窒化処理し、その
後、ホウ化処理する表面処理方法が提案されている。こ
のような表面処理方法によれば、ホウ化処理の際、窒化
処理を施さない場合に比して鋼材料の加熱温度を低くす
ることができ、したがって、ひずみのない製品を得るこ
とができるとされている。
【0010】しかしながら、同号公報に記載されている
ように、この表面処理方法においては、Fe−B−N系
化合物が鋼材料のごく表面に形成されるのみである。す
なわち、BまたはNが内部まで浸透しないので、鋼材料
の諸特性を内部まで向上させることは困難である。
【0011】本発明は上記した問題を解決するためにな
されたもので、強度、硬度および靱性に優れ、しかも、
加熱に際して割れが生じ難く、このために高い歩留まり
で製品を得ることが可能な鋼材料を提供することを目的
とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するた
めに、本発明は、重量割合で7〜30ppmのBと10
〜70ppmのNとを含有することを特徴とする。
【0013】Bをこのような割合で含有する鋼材料は、
Bを含有していない鋼材料に比して強度、硬度および靱
性に優れる。また、Nをこのような割合で含有する場
合、Bと鋼材料中に不純物として存在する遊離元素とが
互いに反応することが著しく抑制される。すなわち、上
記したような脆性材料が鋼材料中に生成することが抑制
されるので、該鋼材料に割れが発生することを抑制する
ことができる。したがって、歩留まりも向上する。
【0014】鋼材料中におけるBとNは、六方晶BN
(h−BN)または正方晶BN(c−BN)、さらには
FeおよびCとともに結合してFe−C−B−N系ホウ
窒化物の状態で存在していてもよいが、最も優れた強
度、硬度および靱性が得られるということから、Feに
固溶されたFe(B,N)系固溶体またはFeおよびC
に固溶されたFe(C,B,N)系固溶体の状態で存在
することが好ましい。しかも、この場合、鋼材料を構成
する組織の変化が緩やかとなるので、該鋼材料を加熱し
た際に発生する熱応力が小さくなる。このため、割れが
発生することが一層抑制されるようになる。
【0015】なお、BおよびNが固溶する組織の代表的
なものとしては、フェライト、オーステナイト、ベイナ
イト(オーステナイトの冷却変態生成物)等が例示され
る。また、Fe(B,N)系固溶体またはFe(C,
B,N)系固溶体中には、鋼材料に微量に含まれるSi
やMn、P、S等がさらに固溶されていてもよい。
【0016】BおよびNをFe組織中に固溶させる場
合、当該鋼材料の内部深く、具体的には、表面から0.
3mmを超える内部までこれらBおよびNを拡散させる
ことができる。すなわち、ボロン鋼におけるBの拡散距
離や、窒化によるNの拡散距離が通常0.1mm、最大
で0.25mmをやや超える程度であるのに比して、B
およびNを著しく大きな距離で拡散させることができ
る。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る鋼材料につき
好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に
説明する。
【0018】本実施の形態に係る鋼材料は、フェライ
ト、オーステナイト、ベイナイト等に固溶してFe
(B,N)系固溶体またはFe(C,B,N)系固溶体
の状態で存在するBとNとを含有する。
【0019】Bは、ボロン鋼における場合と同様に、鋼
材料の強度、硬度および靱性を向上させる成分である。
そして、Bの割合は7〜30ppmに設定される。7p
pm未満では上記の諸特性を向上させる効果に乏しく、
また、30ppmを超えると鋼材料の靱性が低下してし
まう。Bのより好ましい割合は、10〜20ppmであ
る。
【0020】Nは、鋼材料中に不純物として遊離状態で
含有されたFe、Si、Ni、Mo等とBとの反応を抑
制する成分である。すなわち、Nが存在する場合、Bと
これらの遊離元素とが互いに反応することが著しく抑制
され、このため、FeB、Fe2B、Fe5SiB2、N
43、MoFeB4、Mo2FeB2、B4C等の脆性材
料が生成することが著しく抑制される。したがって、本
実施の形態に係る鋼材料では、焼き入れをはじめとする
加熱時に発生する熱応力が一般的なボロン鋼に比して著
しく小さくなり、結局、割れが発生し難いものとなる。
【0021】Nの割合は、10〜70ppmに設定され
る。10ppm未満では鋼材料の割れの発生を抑制する
効果に乏しい。一方、70ppmを超えると、鋼材料の
硬度が低下してしまうからである。
【0022】鋼材料中におけるBとNは、上記したよう
に、Fe(B,N)系固溶体またはFe(C,B,N)
系固溶体の状態で存在する。この場合、鋼材料は、Bと
Nがh−BNまたはc−BNの状態で存在する鋼材料に
比して優れた強度、硬度および靱性を示す。
【0023】しかも、この場合、該BおよびNの拡散距
離が著しく大きくなる。すなわち、BとNは、ボロン鋼
や窒化された鋼材料に比して内部深くまで浸透する。N
が共存することによって、Bが鋼材料中の遊離元素と反
応することが著しく抑制されるからである。具体的に
は、本実施の形態に係る鋼材料では、表面からの距離が
30〜70mmを超える内部においてもNとBとが存在
することがある。
【0024】さらに、この場合、該鋼材料を構成する組
織が該鋼材料の表面から内部にかけて緩やかに変化す
る。このため、該鋼材料を加熱する際に発生する熱応力
が著しく小さくなるので、割れが著しく発生し難くな
る。
【0025】このように、本実施の形態に係る鋼材料に
おいては、内部深くまでNとBとが拡散している。この
ため、該鋼材料の内部においても優れた強度、硬度およ
び靱性を確保することができるとともに、割れが発生す
ることを著しく抑制することができる。
【0026】本実施の形態に係る鋼材料は、以下のよう
にして製造することができる。
【0027】上記した鋼材料の製造方法のフローチャー
トを図1に示す。この製造方法は、原料鋼をホウ素化合
物で被覆または囲繞する第1工程S1と、前記原料鋼を
加熱窒化処理する第2工程S2とを有する。
【0028】まず、第1工程S1において、原料鋼をホ
ウ素化合物で被覆または囲繞する。
【0029】具体的には、原料鋼をホウ素化合物で被覆
する場合、原料鋼の表面にホウ素化合物からなるコーテ
ィング膜を形成する。コーティング膜は、例えば、キシ
レンやトルエン、あるいはアセトン等の溶媒にh−BN
等のようなホウ素化合物が分散された溶液を原料鋼の表
面に噴霧した後、前記溶媒を揮散除去することにより容
易かつ簡便に形成することができる。または、化学的気
相成長(CVD)法や物理的気相成長(PVD)法等に
よりコーティング膜を形成するようにしてもよい。
【0030】また、原料鋼をホウ素化合物で囲繞する場
合、原料鋼を収容した坩堝内にB4C等のような粉末状
ホウ素化合物を充填すればよい。
【0031】次いで、第2工程S2において、前記コー
ティング膜が形成された原料鋼または粉末状ホウ素化合
物に囲繞された原料鋼を加熱窒化処理する。この処理に
より原料鋼が窒化されるとともに、ホウ素化合物からB
が拡散して原料鋼の表面から内部に指向して浸透する。
勿論、原料鋼を窒化したNも原料鋼の表面から内部に指
向して浸透する。その結果、上記した鋼材料が得られる
に至る。
【0032】原料鋼を窒化するための窒化ガスは、NH
3、N2およびH2の混合ガス、NH3、N2およびArの
混合ガスのようにNH3を含むガスであってもよいが、
2のみであることが好ましい。原料鋼に拡散させるN
は上記したように重量割合で10〜70ppmと著しく
少ないので、活性が低いN2の方が原料鋼へのNの拡散
量を容易に制御することができるからである。
【0033】ここで、窒化ガスは、温度が1100〜1
750Kの範囲内であるときに導入する。1100K未
満では、Nがフェライトやオーステナイト、ベイナイト
等に容易に固溶されてしまうので、Nの重量割合が70
ppmを超えるようになる。また、1750Kを超える
と、Bが原料鋼中のFe、Si、Ni、Mo等の遊離元
素と優先的に結合するので、上記したような脆性のホウ
化物が生成し、結局、割れが発生し易い鋼材料となって
しまう。なお、温度が上記範囲外の際には、Ar等の不
活性窒化ガスを導入するようにすればよい。原料鋼の表
面にコーティング膜を形成した場合には、真空引きを行
うようにしてもよい。
【0034】また、第2工程S2での加熱手段は特に限
定されるものではないが、原料鋼を短時間で昇温するこ
とができ、このために鋼材料を効率よく製造することが
できるということから、高周波誘導加熱装置が特に好適
である。この場合、原料鋼を筒状体の内部に収容し、か
つ該筒状体の内部に窒化ガスを流通させた状態で原料鋼
の窒化を行うことが好ましい。これにより窒化ガスを原
料鋼に確実に接触させることができるので、高周波加熱
装置を使用する場合であっても原料鋼を効率よく窒化さ
せることができるからである。なお、筒状体としては、
例えば、石英または黒鉛製のものを使用することができ
る。
【0035】処理時間は、原料鋼の肉厚や体積に応じて
設定されるが、加熱炉による加熱では概ね10分〜2時
間、高周波誘導装置による加熱では概ね5秒〜5分とす
れば充分である。処理時間を長くし過ぎると、Bまたは
Nがそれぞれ30ppm、70ppmを超えるようにな
るので注意を要する。
【0036】
【実施例】1.BおよびNの効果 原料鋼として、50mm×50mm×100mmの直方
体のS50C(JIS規格)を用意した。キシレンにh
−BNが分散された溶液をこの原料鋼の表面に噴霧し、
室温で放置して乾燥することによりh−BNからなるコ
ーティング膜を形成した。
【0037】次いで、この原料鋼を加熱炉内に入れ、1
0K/分で1600Kまで昇温した後、1600Kで3
0分保持して加熱窒化処理することにより、BおよびN
を含有する鋼材料を得た。これを実施例1とする。な
お、温度が1200Kとなるまでは加熱炉内を真空引き
し、1200Kに到達した直後からN2を導入した。
【0038】この実施例1の鋼材料におけるBおよびN
の重量割合を吸光光度分析法にて定量分析したところ、
それぞれ、17ppm、20ppmであった。
【0039】また、上記と同一寸法の原料鋼を用意し、
この原料鋼をB4Cの粉末が充填された坩堝内に圧入し
て該原料鋼をB4Cの粉末で囲繞した。
【0040】この状態で原料鋼を坩堝ごと加熱炉内に入
れ、実施例1と同様の条件下で加熱窒化処理して鋼材料
を得た。これを実施例2とする。なお、実施例2の鋼材
料では、BおよびNの各重量割合は18ppm、50p
pmであった。
【0041】さらに、直径10mm×長さ30mmの円
柱状の原料鋼に対して火炎焼き入れを行ったものを用意
した。これを比較例1とする。なお、比較例1の鋼材料
にはBおよびNは検出されなかった。
【0042】これら実施例1、2および比較例1の各鋼
材料につきビッカース硬度を測定したところ、比較例1
の鋼材料の表面における値は640であった。これに対
し、実施例1、2の各鋼材料におけるビッカース硬度
は、図2に表すように、一側面から他側面に亘って比較
例1の表面に比して80〜100程度高い値を示した。
この結果から、BおよびNを含有することにより鋼材料
の硬度が向上することが明らかである。また、実施例
1、2の各鋼材料の硬度が略均一であることから、これ
ら鋼材料においては、その表面から内部中央までBおよ
びNが拡散していることも諒解される。
【0043】次に、実施例1、2および比較例1から引
っ張り試験用の試験片と衝撃試験用の試験片とを切り出
し、各試験片につき引っ張り強度とシャルピー衝撃値を
測定した。結果を図3に示す。なお、シャルピー衝撃値
が高いほど靱性が高いことを表す。この図3から、比較
例1の鋼材料に比して実施例1、2の各鋼材料が引っ張
り強度および靱性に優れるものであることが分かる。
【0044】以上の結果から、BおよびNを含有させる
ことにより鋼材料の硬度、強度および靱性を向上させる
ことができることが明らかである。
【0045】これらとは別に、原料鋼としてSCM43
0(JIS規格)を選定したことを除いては実施例1に
準拠して鋼材料を得た。これを実施例3とする。
【0046】また、真空引きを行いながら10K/分の
昇温速度で1200Kまで昇温した後に1200Kで3
0分間保持し、さらに1500Kに到達した時点でN2
ガスを導入して1650Kで30分間保持したことを除
いては実施例3に準拠して鋼材料を得た。これを実施例
4とする。
【0047】さらに、1000cm3の水を溶媒とし、
この中に115gのKCl、20gのBaCl2、7.
5gのNaF、1gのB23、5gのフェロボロンが溶
解されたソルト浴に実施例3、4と同一寸法のSCM4
30を2時間浸漬することにより該SCM430をホウ
化した。これを比較例2とする。
【0048】なお、以上の実施例3、4および比較例2
の各鋼材料におけるBの重量割合を定量分析したとこ
ろ、それぞれ、19ppm、21ppm、2ppmであ
った。
【0049】そして、これら実施例3、4および比較例
2の各鋼材料につき、表面から内部に指向してビッカー
ス硬度を測定した。表面からの距離とビッカース硬度と
の関係を図4に併せて示す。この図4から、比較例2の
鋼材料では0.05mmを超える深度ではビッカース硬
度が激減しているのに対し、実施例3、4の各鋼材料で
は、0.3mmを超える深度でも硬度に優れていること
が明らかである。また、この結果からも、実施例3、4
の各鋼材料では比較例2の鋼材料に比して内部にまでB
が拡散していることが諒解される。
【0050】2.加熱窒化処理時間と鋼材料の諸特性と
の関係 原料鋼としてSKS63(JIS規格)を選定し、長さ
は一定として底面積を変化させた直方体を種々作製し
た。そして、1400Kに到達した時点でN2ガスを導
入し、保持時間を種々変化させたことを除いては実施例
1に準拠して各直方体にBおよびNを固溶させ、鋼材料
を得た。このうち、底面の寸法が40mm×40mm以
上の各鋼材料から引っ張り試験用の試験片と破壊靱性値
(KIC)測定用の試験片とを切り出し、各試験片につき
引っ張り強度およびKICを求めた。さらに、各鋼材料に
おける表面のロックウェル硬度(Cスケール、HRC)を
測定した。これらの測定結果を加熱窒化処理における保
持時間および含有するBの重量割合とともに図5および
図6に示す。
【0051】これら図5、図6から、処理時間を設定す
ることによって鋼材料の諸特性を制御することができる
ことが分かる。
【0052】3.割れの抑制について 図7に示す直径50mm×長さ200mmの円柱状のS
CM420(JIS規格)を原料鋼10として用意し
た。キシレンにh−BNが分散された溶液をこの原料鋼
10の表面に噴霧し、室温で放置して乾燥することによ
りh−BNからなるコーティング膜(図示せず)を形成
した。そして、この原料鋼10の略中央部に、該原料鋼
10の軸方向に直交する直径8mmの貫通孔12を設け
た。
【0053】次いで、一端部の近傍に複数個の孔部14
が設けられた半ピース16a、16bをこの原料鋼10
に装着することにより、図8に示すように、円筒状部材
18を構成した。そして、孔部14を介してN2ガスを
流通させ、かつ円筒状部材18を30rpmの回転速度
で回転させながら、480V、48kW、周波数19k
Hzの条件下で、高周波加熱装置によって原料鋼10を
加熱して鋼材料を作製した。加熱時間は10秒とした。
これを実施例5とする。
【0054】また、加熱時間を15秒または30秒とし
たことを除いては実施例5に準拠して鋼材料を得た。こ
れらをそれぞれ実施例6、7とする。なお、実施例7に
おいて、原料鋼10および鋼材料につき定量分析を行っ
たところ、BおよびNは、原料鋼10では検出されず、
一方、鋼材料では、それぞれ、17ppm、50ppm
であった。
【0055】比較のため、原料鋼10に対してコーティ
ング膜を形成することなく高周波加熱装置にて焼き入れ
を行った。この場合、原料鋼10を大気中で30rpm
の回転速度で回転させながら、460V、45kW、周
波数19kHzの条件下で8秒間加熱した。これを比較
例3とする。
【0056】これら実施例5〜7および比較例3の各鋼
材料につき割れの発生を調査したところ、比較例3で
は、10本の試料のうち6本に貫通孔12の周囲に割れ
が発生していることが確認された、一方、実施例5〜7
では、合計40本の試料の全てにおいて、割れが発生し
ていることは認められなかった。
【0057】次に、これら実施例5〜7および比較例3
の各鋼材料につき、表面から内部に亘ってビッカース硬
度を測定した。表面からの距離とビッカース硬度との関
係を図9に示す。
【0058】この図9から、比較例3では、表面からの
距離が2mm以上となると硬度が急激に低下すること、
これに対し、実施例5〜7では、硬度は緩やかに減少し
ていることが分かる。このことから、比較例3の鋼材料
では組織が急激に変化し、一方、実施例5〜7の各鋼材
料では組織の変化が緩やかであることが諒解される。こ
のような組織を有する実施例5〜7の鋼材料では、比較
例3の鋼材料に比して加熱時に発生する熱応力が著しく
小さくなる。実施例5〜7において、割れが発生しない
理由はこのためであると考えられる。
【0059】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る鋼材
料によれば、BとNとを所定の割合で含有している。こ
のため、Bの作用によって優れた強度、硬度および靱性
を示すとともに、Nの作用によって脆性材料が鋼材料中
に生成することが抑制されるので加熱に際して割れが発
生し難い鋼材料とすることができるという効果が達成さ
れる。このため、この鋼材料に対して加工を施して製品
を得る際の歩留まりが向上する。
【0060】特に、BとNが鋼材料の金属組織中に固溶
されてFe(B,N)系固溶体またはFe(C,B,
N)系固溶体の状態で存在する場合、該鋼材料を構成す
る組織は、該鋼材料の表面から内部にかけて緩やかに変
化する。このため、該鋼材料を加熱した際に発生する熱
応力が小さくなるので、該鋼材料に割れが発生すること
が一層抑制されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼材料の製造方法のフローチャートである。
【図2】実施例1、2の各鋼材料の一側面から他側面に
亘るビッカース硬度を示す図表である。
【図3】実施例1、2および比較例1の各鋼材料から得
られた試験片の引っ張り強度とシャルピー衝撃値を示す
図表である。
【図4】実施例3、4および比較例2の各鋼材料におけ
る表面からの距離とビッカース硬度との関係を示すグラ
フである。
【図5】各鋼材料における加熱窒化処理時間と、Bの重
量割合、表面のロックウェル硬度(Cスケール)、引っ
張り強度および破壊靱性値との関係を示す図表である。
【図6】各鋼材料における加熱窒化処理時間と、Bの重
量割合、表面のロックウェル硬度(Cスケール)、引っ
張り強度および破壊靱性値との関係を示す図表である。
【図7】原料鋼と該原料鋼に装着する円筒状部材を構成
する半ピースの概略全体構成説明図である。
【図8】図7の原料鋼に円筒状部材を装着した状態を示
す概略全体構成説明図である。
【図9】実施例5〜7および比較例3の各鋼材料におけ
る表面からの距離とビッカース硬度との関係を示すグラ
フである。
【符号の説明】
10…原料鋼 12…貫通孔 14…孔部 16a、16b…半
ピース 18…円筒状部材
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成14年3月26日(2002.3.2
6)
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正内容】
【図2】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C21D 1/06 C21D 1/06 A

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量割合で7〜30ppmのBと10〜7
    0ppmのNとを含有することを特徴とする鋼材料。
  2. 【請求項2】請求項1記載の鋼材料において、BとN
    は、当該鋼材料を構成する構成元素であるFeとともに
    Fe(B,N)系固溶体またはFe(C,B,N)系固
    溶体を形成した状態で含有されていることを特徴とする
    鋼材料。
  3. 【請求項3】請求項2記載の鋼材料において、当該鋼材
    料における表面から内部へのBおよびNの拡散距離が
    0.3mmを超えていることを特徴とする鋼材料。
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