JP2002143997A - 鋳型内鋳片の状態検知装置、方法、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体 - Google Patents

鋳型内鋳片の状態検知装置、方法、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体

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JP2002143997A
JP2002143997A JP2000344335A JP2000344335A JP2002143997A JP 2002143997 A JP2002143997 A JP 2002143997A JP 2000344335 A JP2000344335 A JP 2000344335A JP 2000344335 A JP2000344335 A JP 2000344335A JP 2002143997 A JP2002143997 A JP 2002143997A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 鋳型に埋設した熱電対等の温度検出手段によ
り計測された温度に基づいて、鋳型内鋳片の状態を精度
よく検知できるようにする。 【解決手段】 鋳型内鋳片の状態検知装置は、鋳型20
5内の熱電対207、209により計測された温度情報
を用いて逆問題解析を行い、鋳型205内表面での熱流
束を求める逆問題解析部101と、逆問題解析部101
により求められた熱流束についてウェーブレット変換に
より周波数解析を行う周波数解析部102と、周波数解
析された結果に基づいて鋳型内鋳片201の状態を判定
する状態検知部103とを備えており、これにより鋳型
205内に配置された熱電対207、209により計測
された温度情報に基づいて、鋳型内表面の温度を演算に
より推定できるようにして、鋳型内鋳片201の状態を
精度よく検知できるようにする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、連続鋳造における
鋳型内鋳片の欠陥状態を検知するための鋳型内鋳片の状
態検知装置、方法、及びコンピュータ読み取り可能な記
憶媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、連続鋳造における鋳型に熱電
対を埋設しておき、その熱電対により計測された温度に
基づいて、鋳型内鋳片の凝固状態やパウダー潤滑状態等
の状態を検知することがなされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、鋳型内
部の温度と鋳型内表面の温度とには、その間での伝熱抵
抗等による減衰のため差が生じてしまう。そのため、鋳
型に埋設された熱電対により計測された温度に基づいて
鋳型内鋳片の状態を検知するのでは、精度の高い状態検
知が行えないことがあった。
【0004】本発明は上記のような点に鑑みてなされた
ものであり、鋳型に埋設した熱電対等の温度検出手段に
より計測された温度に基づいて、鋳型内鋳片の状態を精
度よく検知できるようにすることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の鋳型内鋳片の状
態検知装置は、鋳型内の鋳造方向上下2点以上に配置さ
れた温度検出手段により計測された温度情報に基づいて
鋳型内鋳片の状態を検知する鋳型内鋳片の状態検知装置
であって、前記温度検出手段により計測された温度情報
を用いて逆問題解析を行い、前記鋳型内表面における物
理量を求める逆問題解析手段を備えた点に特徴を有す
る。
【0006】また、本発明の鋳型内鋳片の状態検知装置
の他の特徴とするところは、前記逆問題解析手段により
求められた物理量について周波数解析を行う周波数解析
手段と、前記周波数解析された結果に基づいて前記鋳型
内鋳片の状態を判定する判定手段とを備えた点にある。
【0007】また、本発明の鋳型内鋳片の状態検知装置
の他の特徴とするところは、前記判定手段は、前記鋳型
内の上側温度検出手段及び下側温度検出手段のうち少な
くともいずれか一方の位置における高周波数域の前記物
理量の乱れを監視する点にある。
【0008】また、本発明の鋳型内鋳片の状態検知装置
の他の特徴とするところは、前記判定手段は、前記鋳型
内の上側温度検出手段の位置と下側温度検出手段の位置
との間での低周波数域の前記物理量のずれを監視する点
にある。
【0009】また、本発明の鋳型内鋳片の状態検知装置
の他の特徴とするところは、前記周波数解析手段は、ウ
ェーブレット変換を行う点にある。
【0010】また、本発明の鋳型内鋳片の状態検知装置
の他の特徴とするところは、前記逆問題解析手段により
求められた物理量から所定の次元を有する再構成アトラ
クタを作成するアトラクタ作成手段と、前記アトラクタ
作成手段により作成されたアトラクタに基づいてリカレ
ンスプロットを作成するリカレンスプロット作成手段
と、前記リカレンスプロットに基づいて前記鋳型内鋳片
の状態を判定する判定手段とを備えた点にある。
【0011】また、本発明の鋳型内鋳片の状態検知装置
の他の特徴とするところは、前記判定手段は、前記リカ
レンスプロットの時間ごとのプロット数に基づいて前記
鋳型内鋳片の状態を判定する点にある。
【0012】また、本発明の鋳型内鋳片の状態検知装置
の他の特徴とするところは、前記鋳型内表面における物
理量は、前記鋳型内表面での熱流束である点にある。
【0013】本発明の鋳型内鋳片の状態検知方法は、鋳
型内の鋳造方向上下2点以上に配置された温度検出手段
により計測された温度情報に基づいて鋳型内鋳片の状態
を検知する鋳型内鋳片の状態検知方法であって、前記温
度検出手段により計測された温度情報を用いて逆問題解
析を行い、前記鋳型内表面における物理量を求める点に
特徴を有する。
【0014】本発明のコンピュータ読み取り可能な記憶
媒体は、上記鋳型内鋳片の状態検知装置の各手段として
コンピュータを機能させるためのプログラムを格納した
点に特徴を有する。
【0015】本発明の他のコンピュータ読み取り可能な
記憶媒体は、上記鋳型内鋳片の状態検知方法の処理手順
をコンピュータに実行させるためのプログラムを格納し
た点に特徴を有する。
【0016】上記のようにした本発明においては、鋳型
内に設置された熱電対により計測された温度に基づい
て、逆問題解析により鋳型内表面における熱流束や温度
を求めることができる。そして、その求められた鋳型内
表面における熱流束や温度について周波数解析を行った
り、作成した再構成アトラクタに基づいてリカレンスプ
ロットを作成したりすることにより、鋳型内鋳片の状態
を判定、検知することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の
鋳型内鋳片の状態検知装置、方法、及びコンピュータ読
み取り可能な記憶媒体の実施の形態について説明する。
【0018】(第1の実施の形態)図1は、第1の実施
形態における鋳型内鋳片の状態検知装置の構成を示すブ
ロック図である。また、図2は、連続鋳造設備の構成を
示す模式図である。
【0019】まず、図2を参照して、連続鋳造設備の概
要について説明する。同図において、201は鋳型内鋳
片である。202は溶融金属である。203は凝固シェ
ルである。204はパウダー層で、鋳型内鋳片201と
鋳型205との間での摩擦を減らすためのものである。
205は鋳型である。206は水冷溝で、鋳型205を
冷却し鋳型内鋳片201から抜熱するための冷却水を通
過させるためのものである。但し、201は溶鋼から周
囲の冷却により凝固して行くものであり、液相と固相の
両方を含む。
【0020】207は上部熱電対で、鋳型205内に設
置されている。当該上部熱電対207での計測結果であ
る第1の計測結果208(温度情報)は、図1に示す本
装置に伝えられる。209は下部熱電対で、鋳型205
内に設置されている。当該下部熱電対209での計測結
果である第2の計測情報210(温度情報)は、図1に
示す本装置に伝えられる。これら上部熱電対207、下
部熱電対209は鋳造方向上下に位置し、鋳型205の
サイズ等にもよるが、湯面下30mm〜300mm程度
の範囲に配置される。
【0021】なお、211、212は、上部熱電対20
7、下部熱電対209の位置から鋳型205の内表面ま
で水平に平行移動させた点である。
【0022】次に、図1を参照して、本実施の形態にお
ける鋳型内鋳片の状態検知装置について説明する。同図
において、101は逆問題解析部であり、上記熱電対2
07、209からの温度情報、熱電対207、209が
埋め込まれた鋳型205の物性値等を用いて逆問題解析
を行い、鋳型205の内表面(点211、212)にお
ける熱流束を求める。
【0023】逆問題解析部101は、例えば、鋳型20
5、鋳型205に埋め込まれた熱電対207、209を
含む系を対象にした所定の方程式(偏微分微分方程式
等)と、鋳型205の内表面における熱流束の仮定値と
を用いて、熱電対207、209により計測されるであ
ろう温度を算出する。そして、その算出した温度と、実
際に熱電対207、209により計測された温度との誤
差が所定値よりも小さくなるように上記仮定値を修正し
て、算出処理を繰り返す。その結果、算出された温度
と、実際に熱電対207、209により計測された温度
との誤差が所定値よりも小さくなったときの仮定値を、
鋳型205の内表面における熱流束とする。
【0024】また、例えば、次式(1)、(2)に基づ
いて、鋳型205の内表面における熱流束を算出する。
【0025】
【数1】
【0026】上記式(1)は非定常方程式であり、本実
施の形態の場合、熱伝導方程式である。この式(1)に
対して所定の演算等を施すと、式(2)で表される積分
境界方程式となる。この式(2)において、Gは共役方
程式の解、uはスカラー値(本実施の形態の場合、温
度)、∂u/∂nはスカラー勾配(本実施の形態の場
合、熱流束)である。
【0027】上記式(2)において、左辺は評価面(鋳
型205の内表面)に関する積分であり、右辺は所定の
既知境界面、例えば熱電対207、209を含む面に関
する積分である。したがって、熱電対207、209の
計測値に基づいて、右辺が求められ、その求められた値
から左辺のスカラー勾配∂u/∂n(熱流束)が求めら
れる。さらに、上記のようにして得られたスカラー勾配
∂u/∂n(熱流束)を、熱電対207、209の計測
値を境界条件として解くことにより、評価面のスカラー
値u(温度)を求めることができる。
【0028】図1に戻って、102は周波数解析部であ
り、上記逆問題解析部101により求められた時系列の
熱流束について周波数解析する。具体的には、上記逆問
題解析部101により求められた時系列の熱流束(上述
した式(1)、(2)を用いて逆問題解析を行う場合に
は、スカラー値uまたはスカラー勾配∂u/∂n)をウ
ェーブレット変換する。なお、本実施の形態で用いるウ
ェーブレット変換は、離散ウェーブレット変換とする。
【0029】103は状態検知部であり、上記周波数解
析部102による周波数解析の結果に基づいて、鋳型内
鋳片201の欠陥状態を判定、検知する。
【0030】以下、図3のフローチャートに基づいて、
本実施の形態における鋳型内鋳片の状態検知装置の処理
動作について説明する。まず、逆問題解析部101にお
いて、上部熱電対207、下部熱電対209から供給さ
れる第1及び第2の計測情報208、210を取り込み
(ステップS301)、その第1及び第2の計測情報2
08、210を用いて逆問題解析処理を行って、鋳型2
05内表面(点211、212)における熱流束を求め
る(ステップS302)。
【0031】このようにして求められた熱流束と、熱電
対207、209により計測された温度とを比較する
と、熱電対により計測された温度は、鋳型内表面から熱
電対207、209までの伝熱抵抗による伝熱遅れのた
め変化が鈍った状態で検出される。それに対して、当該
計測された温度に基づいて求められた熱流束は、変化が
鋭く明確に検出される。したがって、精度よく鋳型内表
面での温度変化を捉えることができる。
【0032】ここで、鋳片の割れ等は、鋳型内における
凝固不均一が原因で起こり、凝固不均一の主な要因は、
鋳型と鋳片との間に流入するパウダー層(図2の204
参照)の状態に支配される。かかるパウダー層の状態
は、伝熱抵抗の変動として、鋳型内表面の熱流束に反映
される。つまり、上記逆問題解析により求めた時系列の
熱流束には、割れ等の原因となるパウダー層の状態に関
する情報が含まれることになる。
【0033】周波数解析部102では、上記ステップS
302で算出された時系列の鋳型205の内表面(点2
11、212)における熱流束について周波数解析処理
を行う(ステップS303)。この周波数解析は離散ウ
ェーブレット変換を用いて行い、上記時系列の熱流束値
信号に含まれる変動成分を周波数ごとに抽出する。
【0034】状態検知部103では、上記ステップS3
03での結果に基づいて、鋳型内鋳片の欠陥状態を判
定、検知する(ステップS304)。上述したように、
逆問題解析により求めた時系列の熱流束には、割れ等の
原因となるパウダー層の状態に関する情報が含まれてい
る。したがって、かかる時系列の熱流束について周波数
解析(ウェーブレット変換)を行い、変動周期ごとに熱
流束の乱れを検知することで、パウダー層伝熱抵抗の健
全性の評価を介して鋳型内鋳片201の欠陥状態を判定
することができる。
【0035】具体的には、高周波域(例えば4〜16秒
周期)での熱流束の乱れは、パウダー流入不良状態を表
す。その結果、鋳型205と鋳片201との間に潤滑不
良が生じ、それが原因となり鋳型内鋳片201が変形す
る。そして、この鋳片201の変形に起因する鋳型20
5の内表面での熱流束の乱れは、低周波域(例えば32
〜256秒周期)にある上下熱流束変動量の同期のず
れ、すなわち、上下熱流束変動値の位相又は振幅のずれ
として表れる。
【0036】図4には、鋳造時間[sec]と、各周波数
ごとの上下熱電対207、209の位置での熱流束変動
量[kcal/m2/Hr]との関係を示す。図4(A)は8秒周
期帯、(B)は16秒周期帯、(C)は128秒周期帯
での熱流束変動成分を示したものである。
【0037】図4(A)の領域1001では、上下熱電
対207、209の両位置における熱流束に波形の乱れ
が見られる。すなわち、パウダー流入不良状態にあるも
のと考えられる。この乱れは、図4(B)の領域100
2、図4(C)の領域1003に示すように、高周波側
から低周波側(長周期帯)へと順に伝搬している。
【0038】図5(A)は、8秒周期帯(図4(A))
での熱流束の最大変動値をグラフ化したものである。こ
のグラフからも、図4(A)の領域1001に対応する
部分(図中501)で最大値が大きくなっており、熱流
束の乱れが生じていることがわかる。例えば、最大変動
値(縦軸)について所定のしきい値を設定しておき、最
大変動値が当該しきい値を超えた場合、熱流束の乱れが
生じていると判定すればよい。
【0039】また、図4(C)の領域1003では、上
下熱電対207、209の位置における熱流束変動値の
位相、振幅のずれが見られ、上下熱流束変動量の同期の
ずれが生じている。すなわち、パウダー流入不良状態が
生じた結果、鋳型205と鋳片201との間に潤滑不良
が生じ、それが原因となり鋳型内鋳片201が変形した
ものと考えられる。
【0040】図5(B)は、128秒周期帯(図4
(C))での上下熱流束の差をグラフ化したものであ
る。このグラフからも、図4(C)の領域1003に対
応する部分(図中502)で差が大きくなっており、上
下熱流束変動量の同期のずれが生じていることがわか
る。例えば、上下熱流束の差(縦軸)について所定のし
きい値を設定しておき、差が当該しきい値を超えた場
合、上下熱流束変動量の同期のずれが生じていると判定
すればよい。
【0041】以上述べたように本実施の形態によれば、
鋳型205内に設置された熱電対207、209により
計測された温度に基づいて、逆問題解析により鋳型20
5の内表面(点211、212)における熱流束を求め
ることができる。そして、求められた熱流束にウェーブ
レット変換による周波数解析を施し、その結果に基づい
て鋳型内鋳片201の欠陥状態を判定、検知することが
できる。
【0042】なお、上記実施の形態では、ウェーブレッ
ト変換として離散ウェーブレット変換を用いているが、
連続ウェーブレット変換を用いるようにしてもよい。
【0043】(第2の実施の形態)上述した第1の実施
の形態では、周波数解析に基づいて鋳型内鋳片の状態検
知を行っていたが、第2の実施の形態では、再構成アト
ラクタによる位相空間領域での解析に基づいて鋳型内鋳
片の状態検知を行うようにしている。
【0044】図6を参照して、本実施の形態における鋳
型内鋳片の状態検知装置について説明する。601は逆
問題解析部であり、図1で説明した逆問題解析部101
と同様の機能を有する。
【0045】602はアトラクタ作成部であり、上記逆
問題解析部601により求められた時系列の熱流束或い
は温度に基づいて、アトラクタと呼ばれる軌道を再構成
する。まず、アトラクタ作成部602は、逆問題解析部
601により求められた時系列の熱流束或いは温度を使
って、その時系列データから決定される相関次元の2倍
以上の次元mを持つ遅延ベクトルv(t)=(u
(t),u(t+τ),u(t+2τ),…,u(t+
(m−1)τ))を作成する。
【0046】ここで、上記遅延ベクトルv(t)におい
て、u(T)は時刻Tにおける鋳型205内表面の熱流
束或いは温度である。例えば、上記逆問題解析部601
が上述した式(1)、(2)を用いて、鋳型205内表
面の熱流束或いは温度を求めた場合には、上記u(T)
はスカラー勾配∂u/∂n或いはスカラー値uである。
【0047】次に、アトラクタ作成部602は、上記作
成した遅延ベクトルv(t)を所定の次元を有する位相
空間に写像する。この写像した遅延ベクトルv(t)の
時間推移による軌道を作成することによりアトラクタを
再構成する。なお、以下の説明では、この再構成したア
トラクタを「再構成アトラクタ」と称す。
【0048】603はグラフ作成部であり、上記アトラ
クタ作成部602により再構成したアトラクタに基づい
て、リカレンスプロットを作成する。リカレンスプロッ
トは、現在の状態と過去の状態との類似構造を視覚化す
るものであり、多次元であるアトラクタの挙動を所定の
規則に従って2次元表示することにより得られる。具体
的には、グラフ作成部603は、再構成アトラクタにお
いて、現在時刻の点から所定の距離内にある近傍点を検
索する。その結果、検索された近傍点の時刻を、横軸を
現在時刻、縦軸を上記近傍点の時刻として2次元表示す
ることによりリカレンスプロットを作成する。
【0049】604は状態検知部であり、上記アトラク
タ作成部502、グラフ作成部503により得られた結
果に基づいて、鋳型内鋳片201の欠陥状態を判定、検
知する。
【0050】以下、図7のフローチャートに基づいて、
本実施の形態における鋳型内鋳片の状態検知装置の処理
動作について説明する。まず、逆問題解析部601にお
いて、上部熱電対207、下部熱電対209から供給さ
れる第1及び第2の計測情報208、210を取り込み
(ステップS701)、その第1及び第2の計測情報2
08、210を用いて逆問題解析処理を行って、鋳型2
05内表面(点211、212)における熱流束或いは
温度を求める(ステップS702)。
【0051】アトラクタ作成部602では、上記ステッ
プS702で算出された鋳型205の内表面(点21
1、212)における熱流束或いは温度からアトラクタ
を再構成する(ステップS703)。すなわち、アトラ
クタ作成部602は、逆問題解析部601により求めら
れた熱流束或いは温度に基づいて、m次元の遅延ベクト
ルv(t)を作成する。この遅延ベクトルを、(x
(t),x(t+7τ),x(t+(m−1)τ))を
座標としてプロットすることにより、図8に示すような
上記遅延ベクトルの時間推移を示すアトラクタを再構成
する。同図において、軌道が密な領域61は安定な状態
を示す軌道領域であり、軌道が疎な領域62、63は、
例えば鋳型内鋳片201に表面疵が生じているなどの不
安定な状態を示す軌道領域である。
【0052】グラフ作成部603は、上記ステップS7
03において再構成されたアトラクタに基づいて、リカ
レンスプロットを作成する(ステップS704)。リカ
レンスプロットは、上述したように、図8に示した再構
成アトラクタにおいて現在時刻の点から所定の距離内に
ある近傍点を検索し、検索された近傍点の時刻を縦軸
に、現在時刻を横軸にとってプロットすることにより作
成する。
【0053】図9(A)は、上記ステップS703にお
いて再構成されたアトラクタに基づき作成されたリカレ
ンスプロットを示す図である。リカレンスプロットで
は、再構成アトラクタにおいて安定状態を示す軌道領域
(図8の領域61参照)が領域901に対応している。
また、プロットの構造変化点である領域902は、不安
定な状態を示す領域である。つまり、リカレンスプロッ
トでは、鋳型内鋳片201の安定状態はプロットの密度
の高さとして表れ、不安定な状態はプロットの密度の減
少として表れる。
【0054】状態検知部604では、上記ステップS7
04での結果に基づいて、鋳型内鋳片の欠陥状態を判
定、検知する(ステップS705)。上述したように、
リカレンスプロットでは、鋳型内鋳片201の安定状態
はプロットの密度の高さで表され、不安定な状態(鋳型
内鋳片201に表面疵等が発生した状態)はプロットの
密度の減少として表れる。
【0055】図9(B)は、同図(A)に示すリカレン
スプロットにおける時間ごとのプロット数をグラフ化し
たものである。例えば、プロット数(縦軸)について所
定のしきい値を設定しておき、プロット数が当該しきい
値を超えている場合、鋳型内鋳片201は安定状態にあ
り、プロット数が当該しきい値以下の場合、不安定な状
態(鋳型内鋳片201に表面疵等が発生している状態)
にあると判定すればよい。
【0056】以上述べたように本実施の形態によれば、
鋳型205内に設置された熱電対207、209により
計測された温度に基づいて、逆問題解析により鋳型20
5の内表面の点211、212における熱流束或いは温
度を求めることができる。そして、求められた熱流束或
いは温度の振る舞いを示すリカレンスプロットを作成
し、その結果に基づいて鋳型内鋳片201の欠陥状態を
判定、検知することができる。
【0057】なお、実際の鋳型205には、図2に示し
た熱電対207、209の一組だけが埋設されているわ
けではなく、複数の組の上下熱電対が埋設されている。
すなわち、図2に示した上部熱電対207と同じ高さ位
置で、左右方向(図2の紙面垂直方向)に所定の間隔を
あけて他の上部熱電対が配置されている。同様に、図2
に示した下部熱電対209と同じ高さ位置で、左右方向
(図2の紙面垂直方向)に所定の間隔をあけて他の下部
熱電対が配置されている。
【0058】上記第2の実施の形態において、各上下熱
電対についてリカレンスプロットを作成して個別に判定
するのでは、情報量が多くなりすぎることになる。そこ
で、例えば、熱電対207、209と他の熱電対とにお
いて鋳型205内表面における熱流束を求め、次式を使
って作成したリカレンスプロットにより鋳型内鋳片20
1の状態を検知するようにしてもよい。
【0059】
【数2】
【0060】すなわち、熱電対207、209によるア
トラクタと、他の熱電対によるアトラクタとの近傍度を
正規化した上で算出し、その結果に基づいてリカレンス
プロットを作成する。これにより、1つの式の中で複数
のアトラクタについて考慮することができ、情報量の削
減を図ることができる。なお、上記式において、Nは計
測点数、Mは埋め込み次元数(関次元の2倍以上の次元
m)ある。
【0061】(その他の実施の形態)なお、上記実施の
形態鋳型内鋳片の状態検知装置は、コンピュータのCP
U或いはMPU、RAM、ROM等により構成されるも
のであり、RAMやROMに格納されたプログラムが動
作することによって各機能が実現される。この場合、コ
ンピュータが上記機能を果たすように動作させるプログ
ラムを供給するための手段、例えばかかるプログラムを
格納した記録媒体は本発明を構成する。記録媒体として
は、例えばフロッピー(登録商標)ディスク、ハードデ
ィスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、
磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用い
ることができる。
【0062】また、コンピュータが供給されたプログラ
ムコードを実行することにより、上述の実施の形態の機
能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードがコ
ンピュータにおいて稼働しているOS(オペレーティン
グシステム)或いは他のアプリケーションソフト等と共
同して上述の実施の形態の機能が実現される場合にもか
かるプログラムコードは本発明の実施の形態に含まれる
ことはいうまでもない。
【0063】なお、上記実施の形態において示した各部
の形状及び構造は、何れも本発明を実施するにあたって
の具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらに
よって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはなら
ないものである。すなわち、本発明はその精神、又はそ
の主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施す
ることができる。
【0064】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、鋳型
内に設置された熱電対により計測された温度に基づいて
逆問題解析を行って、鋳型内表面における熱流束や温度
を演算により求めるようにしたので、鋳型内部の温度と
鋳型内表面の温度との間に存在する伝熱抵抗等による減
衰のために生じる差を補償することができ、鋳型内鋳片
の状態を高精度に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態における鋳型内鋳片の状態検知
装置の構成を示すブロック図である。
【図2】連続鋳造設備の構成を示す模式図である。
【図3】第1の実施形態における鋳型内鋳片の状態検知
装置の処理動作を示すフローチャートである。
【図4】鋳造時間と、各周波数ごとの上下熱電対20
7、209の位置での熱流束変動量との関係を示す図で
ある。
【図5】(A)は8秒周期帯での熱流束の最大変動値を
グラフ化したものを示し、(B)は128秒周期帯での
上下熱流束の差をグラフ化したものを示す図である。
【図6】第2の実施形態における鋳型内鋳片の状態検知
装置の構成を示すブロック図である。
【図7】第2の実施形態における鋳型内鋳片の状態検知
装置の処理動作を示すフローチャートである。
【図8】再構成アトラクタを示す図である。
【図9】(A)はリカレンスプロットを示し、(B)は
リカレンスプロットにおける時間ごとのプロット数をグ
ラフ化したものを示す図である。
【符号の説明】
101 逆問題解析部 102 周波数解析部 103 状態検知部 601 逆問題解析部 602 アトラクタ作成部 603 グラフ作成部 604 状態検知部
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G01K 17/08 G01K 17/08 G01N 25/18 G01N 25/18 J 25/72 25/72 K (72)発明者 田谷 利之 大分市大字西ノ洲1番地 新日本製鐵株式 会社大分製鐵所内 Fターム(参考) 2F056 CL13 WF03 YF00 2G040 AA05 AB02 AB08 AB10 BA08 BA22 CA02 CB03 DA03 DA13 DA15 EA08 FA01 HA01 HA11 HA15 HA16 4E004 MA05 MC13

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋳型内の鋳造方向上下2点以上に配置さ
    れた温度検出手段により計測された温度情報に基づいて
    鋳型内鋳片の状態を検知する鋳型内鋳片の状態検知装置
    であって、 前記温度検出手段により計測された温度情報を用いて逆
    問題解析を行い、前記鋳型内表面における物理量を求め
    る逆問題解析手段を備えたことを特徴とする鋳型内鋳片
    の状態検知装置。
  2. 【請求項2】 前記逆問題解析手段により求められた物
    理量について周波数解析を行う周波数解析手段と、 前記周波数解析された結果に基づいて前記鋳型内鋳片の
    状態を判定する判定手段とを備えたことを特徴とする請
    求項1に記載の鋳型内鋳片の状態検知装置。
  3. 【請求項3】 前記判定手段は、前記鋳型内の上側温度
    検出手段及び下側温度検出手段のうち少なくともいずれ
    か一方の位置における高周波数域の前記物理量の乱れを
    監視することを特徴とする請求項2に記載の鋳型内鋳片
    の状態検知装置。
  4. 【請求項4】 前記判定手段は、前記鋳型内の上側温度
    検出手段の位置と下側温度検出手段の位置との間での低
    周波数域の前記物理量のずれを監視することを特徴とす
    る請求項2又は3に記載の鋳型内鋳片の状態検知装置。
  5. 【請求項5】 前記周波数解析手段は、ウェーブレット
    変換を行うことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1
    項に記載の鋳型内鋳片の状態検知装置。
  6. 【請求項6】 前記逆問題解析手段により求められた物
    理量から所定の次元を有する再構成アトラクタを作成す
    るアトラクタ作成手段と、 前記アトラクタ作成手段により作成されたアトラクタに
    基づいてリカレンスプロットを作成するリカレンスプロ
    ット作成手段と、 前記リカレンスプロットに基づいて前記鋳型内鋳片の状
    態を判定する判定手段とを備えたことを特徴とする請求
    項1に記載の鋳型内鋳片の状態検知装置。
  7. 【請求項7】 前記判定手段は、前記リカレンスプロッ
    トの時間ごとのプロット数に基づいて前記鋳型内鋳片の
    状態を判定することを特徴とする請求項6に記載の鋳型
    内鋳片の状態検知装置。
  8. 【請求項8】 前記鋳型内表面における物理量は、前記
    鋳型内表面での熱流束であることを特徴とする請求項1
    〜7のいずれか1項に記載の鋳型内鋳片の状態検知装
    置。
  9. 【請求項9】 鋳型内の鋳造方向上下2点以上に配置さ
    れた温度検出手段により計測された温度情報に基づいて
    鋳型内鋳片の状態を検知する鋳型内鋳片の状態検知方法
    であって、 前記温度検出手段により計測された温度情報を用いて逆
    問題解析を行い、前記鋳型内表面における物理量を求め
    る処理手順を有することを特徴とする鋳型内鋳片の状態
    検知方法。
  10. 【請求項10】 請求項1〜8のいずれか1項に記載の
    各手段としてコンピュータを機能させるためのプログラ
    ムを格納したことを特徴とするコンピュータ読み取り可
    能な記憶媒体。
  11. 【請求項11】 請求項9に記載の処理手順をコンピュ
    ータに実行させるためのプログラムを格納したことを特
    徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
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