JP3896026B2 - 連続鋳造鋳型内における溶鋼流動状態の診断装置、方法、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、連続鋳造鋳型内に注入される溶鋼の流動状態、具体的には溶鋼偏流の発生の有無を診断するのに好適な連続鋳造鋳型内における溶鋼流動状態の診断装置、方法、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
図9に示すように、連続鋳造においては、取鍋1からタンディッシュ2へと供給された溶鋼3が連続鋳造鋳型4へと注入される。タンディッシュ2から連続鋳造鋳型4への溶鋼注入は、タンディッシュ2の底部に設けられたスライディングノズル5の下部に位置する浸漬ノズル6の先端を連続鋳造鋳型4内の溶鋼3に浸漬した状態で行われる。
【0003】
スライディングノズル5の下部に位置する浸漬ノズル6は連続鋳造鋳型4の中央部に配置され、タンディッシュ2からの溶鋼3はスライディングノズル5を介して浸漬ノズル6内を流下し左右一対の吐出孔7から連続鋳造鋳型4内に注入される。浸漬ノズル6の吐出孔7から吐出された溶鋼3は、凝固シェル8に衝突した後、同図の矢印で表されるように上昇流と下降流とに分流される。
【0004】
定常時では、浸漬ノズル6の左右の吐出孔7から吐出される溶鋼量はほぼ均等になっている(図9の一方の連続鋳造鋳型4を参照)が、場合によっては、左右の吐出孔7から吐出される溶鋼量が左右で不均等となる溶鋼偏流が生じることがある(図9の他方の連続鋳造鋳型4を参照)。
【0005】
かかる溶鋼偏流が生じる原因としては、浸漬ノズル6の内面等にアルミナ等による付着物が付着したり、溶鋼流によって左右の吐出孔7が溶損して形状が不均一となったりすることが挙げられる。また、スライディングバルブ5の構造上、溶鋼3が浸漬ノズル6内の中央を流下せず、左右いずれかに偏って流下することが挙げられる。
【0006】
上記のような理由により連続鋳造鋳型4内で溶鋼偏流が生じると、溶鋼量の多い側では、凝固シェル8への衝突力が大きく、溶鋼3が凝固シェル8の内面に沿って上方及び下方に勢いよく分流することになる。勢いの強い上昇流は、湯面盛り上がりを生起して湯面上のフラックスが連続鋳造鋳型4の内壁面と凝固シェル8との間に供給されるのを阻害し、凝固シェル8の形成が不均一となりやすく、鋳造される鋳片の湯じわや割れ等の原因となってしまう。また、勢いの強い下降流は、溶鋼3の深くまで達して非金属介在物の浮上を妨げ、鋳片の非金属介在物性欠陥をもたらす等の原因となってしまう。
【0007】
一方、溶鋼量の少ない側では、凝固シェル8への衝突力が小さく、溶鋼3が凝固シェル8の内面に沿って上方及び下方に分流する力は弱い。上昇流及び下降流の勢いが弱いと、吐出孔7内の溶鋼流によどみが発生しやすく、アルミナ等の付着によりノズル閉塞等の原因となってしまう。
【0008】
以上述べたように連続鋳造鋳型4内において溶鋼偏流が生じると、連続鋳造の操業に支障があるばかりではなく、鋳片の品質悪化を招き、好ましくないため、溶鋼偏流の発生の有無を検知する必要がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
連続鋳造鋳型4内は非常に高温であり、連続鋳造鋳型4内における溶鋼3の流動状態を直接観察することは不可能である。そこで、連続鋳造鋳型4内の左右の湯面レベル差を測定して比較したり、連続鋳造鋳型4に埋め込まれた熱電対により左右の温度差を測定して比較したりすることにより、溶鋼偏流の発生の有無を検知することが行われている。しかしながら、湯面レベルや温度は瞬時に変動するものであるため、それらを測定して比較することは難しく、溶鋼偏流の発生の有無を的確に検知しえないことが多い。
【0010】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、連続鋳造鋳型内での溶鋼の流動状態、具体的には溶鋼偏流の発生の有無を的確に診断できるようにすることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、本発明の連続鋳造鋳型内における溶鋼流動状態の診断装置は、一対の長辺と一対の短辺とを有する平面断面形状とされ、その中央に両短辺方向に溶鋼を吐出する浸漬ノズルが配置される連続鋳造鋳型内での溶鋼の流動状態を診断するための連続鋳造鋳型内における流動状態診断装置であって、上記連続鋳造鋳型の長辺幅方向の中心に対して一方の側に埋め込まれた第1の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報と、他方の側に埋め込まれた第2の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報とに基づいて、それぞれ所定の次元を有する遅延ベクトルを生成し、アトラクタを再構成するアトラクタ作成手段と、上記アトラクタに基づいて、2変数のリカレンスプロットを作成するリカレンスプロット作成手段と、上記リカレンスプロットに基づいて、上記連続鋳造鋳型内での溶鋼の流動状態を診断する診断手段とを備えた点に特徴を有する。
【0012】
本発明の他の連続鋳造鋳型内における溶鋼流動状態の診断装置は、一対の長辺と一対の短辺とを有する平面断面形状とされ、その中央に両短辺方向に溶鋼を吐出する浸漬ノズルが配置される連続鋳造鋳型内での溶鋼の流動状態を診断するための連続鋳造鋳型内における流動状態診断装置であって、上記連続鋳造鋳型の長辺幅方向の中心に対して一方の側に埋め込まれた第1の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報と、他方の側に埋め込まれた第2の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報とに基づいて、それぞれ所定の次元を有する遅延ベクトルを生成し、アトラクタを再構成するアトラクタ作成手段と、上記いずれか一方のアトラクタ上の基準時刻での点の周囲に存在する他方のアトラクタ上の近傍点が、上記基準時刻から所定時間推移後での点の周囲にいくつ存在するかの割合を評価指標として求める評価指標演算手段と、上記評価指標に基づいて、上記連続鋳造鋳型内での溶鋼の流動状態を診断する診断手段とを備えた点に特徴を有する。
【0013】
本発明の連続鋳造鋳型内における流動状態診断方法は、一対の長辺と一対の短辺とを有する平面断面形状とされ、その中央に両短辺方向に溶鋼を吐出する浸漬ノズルが配置される連続鋳造鋳型内での溶鋼の流動状態を診断するための連続鋳造鋳型内における流動状態診断方法であって、上記連続鋳造鋳型の長辺幅方向の中心に対して一方の側に埋め込まれた第1の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報と、他方の側に埋め込まれた第2の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報とに基づいて、それぞれ所定の次元を有する遅延ベクトルを生成し、アトラクタを再構成するアトラクタ作成手順と、上記アトラクタに基づいて、2変数のリカレンスプロットを作成するリカレンスプロット作成手順と、上記リカレンスプロットに基づいて、上記連続鋳造鋳型内での溶鋼の流動状態を診断する診断手順とを有する点に特徴を有する。
【0014】
本発明の他の連続鋳造鋳型内における溶鋼流動状態の診断方法は、一対の長辺と一対の短辺とを有する平面断面形状とされ、その中央に両短辺方向に溶鋼を吐出する浸漬ノズルが配置される連続鋳造鋳型内での溶鋼の流動状態を診断するための連続鋳造鋳型内における流動状態診断方法であって、上記連続鋳造鋳型の長辺幅方向の中心に対して一方の側に埋め込まれた第1の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報と、他方の側に埋め込まれた第2の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報とに基づいて、それぞれ所定の次元を有する遅延ベクトルを生成し、アトラクタを再構成するアトラクタ作成手順と、上記いずれか一方のアトラクタ上の基準時刻での点の周囲に存在する他方のアトラクタ上の近傍点が、上記基準時刻から所定時間推移後での点の周囲にいくつ存在するかの割合を評価指標として求める評価指標演算手順と、上記評価指標に基づいて、上記連続鋳造鋳型内での溶鋼の流動状態を診断する診断手順とを有する点に特徴を有する。
【0015】
本発明のコンピュータプログラムは、一対の長辺と一対の短辺とを有する平面断面形状とされ、その中央に両短辺方向に溶鋼を吐出する浸漬ノズルが配置される連続鋳造鋳型内での溶鋼の流動状態を診断するためのコンピュータプログラムであって、上記連続鋳造鋳型の長辺幅方向の中心に対して一方の側に埋め込まれた第1の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報と、他方の側に埋め込まれた第2の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報とに基づいて、それぞれ所定の次元を有する遅延ベクトルを生成し、アトラクタを再構成するアトラクタ作成処理と、上記アトラクタに基づいて、2変数のリカレンスプロットを作成するリカレンスプロット作成処理と、上記リカレンスプロットに基づいて、上記連続鋳造鋳型内での溶鋼の流動状態を診断する診断処理とをコンピュータに実行させる点に特徴を有する。
【0016】
本発明の他のコンピュータプログラムは、一対の長辺と一対の短辺とを有する平面断面形状とされ、その中央に両短辺方向に溶鋼を吐出する浸漬ノズルが配置される連続鋳造鋳型内での溶鋼の流動状態を診断するためのコンピュータプログラムであって、上記連続鋳造鋳型の長辺幅方向の中心に対して一方の側に埋め込まれた第1の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報と、他方の側に埋め込まれた第2の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報とに基づいて、それぞれ所定の次元を有する遅延ベクトルを生成し、アトラクタを再構成するアトラクタ作成処理と、上記いずれか一方のアトラクタ上の基準時刻での点の周囲に存在する他方のアトラクタ上の近傍点が、上記基準時刻から所定時間推移後での点の周囲にいくつ存在するかの割合を評価指標として求める評価指標演算処理と、上記評価指標に基づいて、上記連続鋳造鋳型内での溶鋼の流動状態を診断する診断処理とをコンピュータに実行させる点に特徴を有する。
【0017】
本発明のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、上記コンピュータプログラムを格納した点に特徴を有する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の連続鋳造鋳型内における溶鋼流動状態の診断装置、方法、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体の実施の形態について説明する。なお、以下では、図9で説明した構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1には、本実施の形態の連続鋳造鋳型内における溶鋼流動状態の診断装置の概略構成を示す。101は逆問題解析部であり、連続鋳造鋳型4に埋め込まれた熱電対により計測された時系列の温度情報から、逆問題解析により該熱電対位置に対応する連続鋳造鋳型4の稼動面での時系列の熱流束情報を求める。
【0020】
ここで、図2を参照して、連続鋳造鋳型4に埋め込まれた熱電対について説明する。図2(A)に示すように、連続鋳造鋳型4は一対の長辺4aと一対の短辺4bとを有する平面断面形状とされており、その中央に浸漬ノズル6が配置される。浸漬ノズル6には、連続鋳造鋳型4の両短辺4b方向に溶鋼を吐出する一対の吐出孔7が形成されている。
【0021】
図2(A)、(B)に示すように、連続鋳造鋳型4のある高さ位置(鋳造方向位置)において、一方の長辺4a側の面(「F面」と称する)には、長辺幅方向の中心(図中Y線)を挟んで対称的に配置された複数の熱電対F1、F3、F5、F7、F9、F11が埋め込まれている。同様に、他方の長辺4a側の面(「L面」と称する)には、長辺幅方向の中心(図中Y線)を挟んで対称的に配置された複数の熱電対L1、L3、L5、L7、L9、L11が埋め込まれている。
【0022】
また、連続鋳造鋳型4のF面及びL面には、上記の高さ位置とは異なる一又は複数の高さ位置にも、同様に熱電対F2、F4、F6、F8、F10、F12、熱電対L2、L4、L6、L8、L10、L12が埋め込まれている。
【0023】
さらに、図2(C)、(D)に示すように、一方の短辺4b側の面(「S面」と称する)には、短辺幅方向の中心に配置された熱電対S12が埋め込まれている。同様に、他方の短辺4b側の面(「N面」と称する)には、短辺幅方向の中心に配置された熱電対N12が埋め込まれている。これら熱電対S12、N12も、図では1個ずつしか示さないが、上記各高さ位置の熱電対F1〜F11、L1〜L11に対応して連続鋳造鋳型4の適当な高さ位置に配置されている。
【0024】
図1に説明を戻して、102はアトラクタ作成部であり、上記長辺幅方向の中心に対して一方の側(「S側」と称する)の熱電対F7、F9、F11、L7、L9、L11、S12を用いて上記逆問題解析部101により算出された時系列の熱流束情報に基づいて、所定の次元を有する遅延ベクトルを生成し、アトラクタと呼ばれる軌道を再構成する。また、上記長辺幅方向の中心に対して他方の側(「N側」と称する)の熱電対F1、F3、F5、L1、L3、L5、N12を用いて上記逆問題解析部101により算出された時系列の熱流束情報に基づいて、所定の次元を有する遅延ベクトルを生成し、アトラクタと呼ばれる軌道を再構成する。
【0025】
103はリカレンスプロット作成部であり、上記アトラクタ作成部102により再構成されたS側のアトラクタ及びN側のアトラクタに基づいて、2変数のリカレンスプロット、すなわちS側の熱流束分布及びN側の熱流束分布を変数とするリカレンスプロットを作成する。
【0026】
104は診断部であり、上記リカレンスプロット作成部103により作成された2変数のリカレンスプロットに基づいて、連続鋳造鋳型4内での溶鋼の流動状態、具体的には溶鋼偏流の発生の有無を診断する。
【0027】
以下、図3のフローチャートを参照して、本実施の形態の連続鋳造鋳型内における溶鋼流動状態の診断処理について説明する。まず、逆問題解析部101において、所定の高さ位置の熱電対F1〜F11、L1〜L11、S12、N12の組により計測された時系列の温度情報から、逆問題解析により、各熱電対F1〜F11、L1〜L11、S12、N12位置に対応する連続鋳造鋳型4の稼動面での時系列の熱流束情報を求める(ステップS301)。
【0028】
逆問題解析では、熱電対F1を例にして説明すると、熱電対F1、熱電対F1が埋め込まれた連続鋳造鋳型4等を含む系を対象にした所定の方程式(偏微分方程式等)と、熱電対F1位置に対応する連続鋳造鋳型4の稼動面での熱流束の仮定値とを用いて、熱電対F1位置での温度を算出する。そして、その算出した熱電対F1位置での温度と、熱電対F1により実際に計測された温度との誤差が所定の値より小さくなるように上記熱流束の仮定値を修正し、熱電対F1位置での温度の算出を繰り返す。その結果、算出した熱電対F1位置での温度と、熱電対F1により実際に計測された温度との誤差が所定の値より小さくなったときの熱流束の仮定値を、熱電対F1位置に対応する連続鋳造鋳型4の稼動面での熱流束値とする。
【0029】
また、例えば、下記の数1に示す式(1)、(2)に基づいて、熱電対F1位置に対応する連続鋳造鋳型4の稼動面での熱流束を算出する。
【0030】
【数1】
【0031】
上記式(1)は非定常の熱伝導方程式である。式(1)に対して所定の演算等を施すと、式(2)に示すような積分境界方程式になる。式(2)において、Gは共役方程式の解、uはスカラー量(本例の場合、温度)、∂u/∂nはスカラー勾配(本例の場合、熱流束)である。
【0032】
上記式(2)において、左辺は熱電対F1位置に対応する連続鋳造鋳型4の稼動面に関する積分であり、右辺は所定の既知境界面、例えば熱電対F1位置を含む面に関する積分である。したがって、熱電対F1での計測温度に基づいて、式(2)の右辺の各値が求められ、その求められた値から式(2)の左辺のスカラー勾配∂u/∂n(熱電対F1位置に対応する連続鋳造鋳型4の稼動面での熱流束)が求められる。
【0033】
なお、上記所定の高さ位置の熱電対F1〜F11、L1〜L11、S12、N12の組をどのようにして決めるかについてであるが、高さ方向(鋳造方向)に熱電対F1〜F11、L1〜L11、S12、N12の組が複数配置されている場合に、各熱電対F1〜F11、L1〜L11、S12、N12が最高温度を示す組を対象とすればよい。このように最高温度を示す熱電対F1〜F11、L1〜L11、S12、N12では、連続鋳造鋳型4内の温度変動すなわち流動状態が最も直接的に反映されているといえ、凝固シェル8や上方の空気層による影響が小さい。
【0034】
なお、通常は、ある高さ位置の熱電対F1〜F11、L1〜L11、S12、N12すべてが最高温度を示すことがほとんどであるが、例えば、一部の熱電対はある高さ位置で最高温度を示し、残りの熱電対は別の高さ位置で最高温度を示すような場合は、最高温度を示す熱電対の数が多い高さ位置の熱電対F1〜F11、L1〜L11、S12、N12の組を対象としたり、各高さ位置から最高温度を示す熱電対F1〜F11、L1〜L11、S12、N12をそれぞれ選び出してその組を対象としたりしてもよい。
【0035】
図4には、実際の連続鋳造鋳型4における実績例であり、溶鋼偏流が発生していることが分かっている鋳造長さ(≒鋳造時間)において、熱電対F1〜F11、L1〜L11、S12、N12を用いて得られた熱流束情報を示す。同図に示すように、連続鋳造鋳型4内で溶鋼偏流が発生している場合、長辺幅方向の中心を挟んで対称的に配置された熱電対間で熱流束が互いに増減する方向に変動する。本例の場合、特に熱電対F1/F11、L1/L11で熱流束が大きな割合で互いに増減する方向に変動しており、熱流束の大きなN側(熱電対F1、L1のある側)では溶鋼量が多くなっているのに対して、熱流束の小さなS側(熱電対F11、L11のある側)ではS側の溶鋼量が少なくなっているといえる。
【0036】
図3のフローチャートに説明を戻して、次にアトラクタ作成部102において、上記長辺幅方向の中心に対して一方の側(S側)の熱電対F7、F9、F11、L7、L9、L11、S12を用いて上記逆問題解析部101により算出された時系列の熱流束情報に基づいて、所定の次元を有する遅延ベクトルを生成し、アトラクタと呼ばれる軌道を再構成する。また、上記長辺幅方向の中心に対して他方の側(N側)の熱電対F1、F3、F5、L1、L3、L5、N12を用いて上記逆問題解析部101により算出された時系列の熱流束情報に基づいて、所定の次元を有する遅延ベクトルを生成し、アトラクタと呼ばれる軌道を再構成する(ステップS302)。
【0037】
すなわち、アトラクタ作成部102は、N側の熱電対F5、F3、F1、N12、L1、L3、L5の熱流束情報から、下記の数2に示すように、対象とする現象の2倍以上の次元mを持つ遅延ベクトルvN(t)を作成する。同様に、逆問題解析部101により算出されたS側の熱電対F7、F9、F11、S12、L11、L9、L7の熱流束情報から、下記の数2に示すように、対象とする現象の2倍以上の次元mを持つ遅延ベクトルvS(t)を作成する。なお、x(t)は時刻tにおける熱流束、τは時間遅れ間隔である。
【0038】
【数2】
【0039】
続いて、遅延ベクトルvN(t)、vS(t)を所定の次元を有する位相空間にそれぞれ写像する。この写像した遅延ベクトルvN(t)、vS(t)の時間推移による軌道を作成することによりアトラクタを再構成する。
【0040】
次に、リカレンスプロット作成部103において、上記アトラクタ作成部102により再構成されたS側のアトラクタ及びN側のアトラクタに基づいて、2変数のリカレンスプロット、すなわちS側の熱流束分布及びN側の熱流束分布を変数とするリカレンスプロットを作成する(ステップS303)。リカレンスプロットとは再構成されたアトラクタの非定常挙動を2次元表示したものであり、ここで作成するリカレンスプロットは、リカレンスプロットを2変数に拡張したもので、以下では「相互リカレンスプロット」と称する。
【0041】
具体的には、一方の変数の再構成アトラクタ上にある現在時刻点から所定の範囲内にあるの近傍点を、他方の変数の再構成アトラクタ上から検索する。その結果、検索された近傍点の時刻を、横軸を現在時刻、縦軸を上記近傍点の時刻として2次元表示することにより、2変数の相互相関性を表す相互リカレンスプロットを作成する。
【0042】
図5には、上記図4で述べたのと同じ連続鋳造鋳型4での実績例であり、S側の熱流束分布及びN側の熱流束分布を変数とする相互リカレンスプロットを示す。
【0043】
次に、診断部104において、上記リカレンスプロット作成部103により作成された相互リカレンスプロットに基づいて、連続鋳造鋳型4内での溶鋼の流動状態の健全性、具体的には溶鋼偏流の発生の有無を診断する(ステップS304)。
【0044】
具体的には、S側の熱流束分布及びN側の熱流束分布を変数とする相互リカレンスプロットを考えると、S側の熱流束分布及びN側の熱流束分布の類似性が大きければ、相互リカレンスプロット上では対角線(現在時刻と近傍点の時刻とが同じ点の集合)近傍に平行な線分が密集して現れる。逆に、連続鋳造鋳型4内で溶鋼偏流が発生して、S側の熱流束分布及びN側の熱流束分布に乖離が生じると、相互リカレンスプロット上では対角線近傍に平行な線分がほとんど存在しなくなる。
【0045】
図5に示す相互リカレンスプロットでは、中央部分(鋳造長さ45[m]付近)で対角線に平行な線分がほとんど存在しておらず、対角線上両側が白抜き状態となっている。すなわち、その白抜き部分ではS側の熱流束分布及びN側の熱流束分布についての類似性がなく、連続鋳造鋳型4内で溶鋼偏流が発生していると判断することができる。
【0046】
以上述べたように本実施の形態においては、S側の熱流束分布及びN側の熱流束分布を変数とするリカレンスプロットを作成し、そのリカレンスプロットに基づいて連続鋳造鋳型4内での溶鋼偏流の発生の有無を診断するようにしたので、溶鋼偏流の発生の有無を的確に診断することができる。
【0047】
すなわち、図4にも示したように、溶鋼偏流が発生した場合、長辺幅方向の中心を挟んで配置された熱電対間で熱流束が互いに増減する方向に変動することから、上記従来例で述べたようにS側及びN側での温度を測定して比較し、そういった変動を捉えることにより溶鋼偏流の発生の有無を診断することも可能である。しかしながら、図4に示すように瞬間を捉えた関係からは明確に理解できるが、実際には温度等は瞬時に変動するものであり、それらを比較した上で上記のような変動を捉えることは難しく、溶鋼偏流の発生の有無を的確に検知しえないことが多い。
【0048】
それに対して、S側の熱流束分布及びN側の熱流束分布を変数とするリカレンスプロットを作成することにより、長辺幅方向の中心を挟んで配置された熱電対間で熱流束が互いに増減するといった変動を精度よく捉えることができ、溶鋼偏流の発生の有無を的確に診断することが可能となるものである。
【0049】
(第2の実施の形態)
図6には、本実施の形態の連続鋳造鋳型内における溶鋼流動状態の診断装置の概略構成を示す。なお、同図において、逆問題解析部101及びアトラクタ作成部102については、上記第1の実施の形態で説明したものと同じである。また、連続鋳造鋳型4に埋め込まれた熱電対F1〜F11、L1〜L11、S12、N12の配置等についても上記第1の実施の形態と同様であり、以下では詳細な説明を省略する。
【0050】
603は評価指標演算部であり、上記アトラクタ作成部102により再構成されたS側及びN側のいずれか一方のアトラクタ上の基準時刻での点の周囲に存在する他方のアトラクタ上の近傍点が、上記基準時刻から所定時間推移後での点の周囲にいくつ存在するかの割合を評価指標として求める。
【0051】
評価対象の状態の挙動、具体的には連続鋳造鋳型4内でのS側及びN側への溶鋼の流動状態の挙動をΔtの時間スケールで観察したときに、時間発展の様子が決定論的、すなわちある法則性に支配されて推移するようにみえるということは、図7に示すように、再構成された軌道群の近接した部分がΔt後に同じように近傍した部分に移されることを意味する。
【0052】
そこで、評価指標演算部603では、S側及びN側のいずれか一方のアトラクタ上の現時刻点x(t)を中心とする直径εの超球を考え、そこに含まれる他方のアトラクタ上の近傍点が、Δt時刻後のx(t+Δt)を中心とする直径εの超球にいくつ存在するかの割合を評価指標として定義する。
【0053】
具体的には、評価指標は、評価指標=(Δt時刻後に生き残った近傍点数)/(時刻tにおける近傍点数)により表される。この評価指標は、2変数(S側の熱流束分布及びN側の熱流束分布)の時系列変化の法則性依存度を表し、法則性依存度が大きいほど1に近づき、ランダム状態となるほど0に近づく。例えば、図7において、評価指標は3/5=0.6となる。
【0054】
604は診断部であり、上記評価指標演算部603により求められた評価指標に基づいて、連続鋳造鋳型4内での溶鋼の流動状態、具体的には溶鋼偏流の発生の有無を診断する。
【0055】
図8には、上記図4及び図5で述べたのと同じ連続鋳造鋳型4での実績例であり、鋳造長さと評価指標との関係を示す。S側の熱流束分布及びN側の熱流束分布の類似性が大きければ、評価指標は1に近くなるが、連続鋳造鋳型4内で溶鋼偏流が発生して、S側の熱流束分布及びN側の熱流束分布に乖離が生じると、評価指標は低くなる。図8では、鋳造長さ45[m]付近で評価指標が低下しており、S側の熱流束分布及びN側の熱流束分布についての類似性がなく、連続鋳造鋳型4内で溶鋼偏流が発生していると判断することができる。
【0056】
以上述べたように本実施の形態においては、S側の熱流束分布及びN側の熱流束分布の類似性を表す評価指標を求め、その評価指標に基づいて連続鋳造鋳型4内での溶鋼偏流の発生の有無を診断するようにしたので、溶鋼偏流の発生の有無を的確に診断することができる。
【0057】
なお、上記実施の形態では、連続鋳造鋳型4のS側及びN側にそれぞれ複数の熱電対を埋め込んだ例を説明したが、その位置や数は限定されるものではない。また、例えば、S側及びN側にそれぞれ1つの熱電対を埋め込んだ場合でも本発明は適用可能である。さらに、S側の熱電対及びN側の熱電対は、連続鋳造鋳型4の長辺幅方向の中心を挟んで対称的に配置されるのが望ましいが、対称的に配置されていない場合にも本発明は適用可能である。
【0058】
また、上記実施の形態では、逆問題解析により連続鋳造鋳型4の稼動面での時系列の熱流束情報を求めるようにしたが、逆問題解析により連続鋳造鋳型4の稼動面での時系列の温度情報を求めるようにしてもよい。また、各熱電対により検出された時系列の温度情報をそのまま、或いは、温度情報に対して時間遅れ等を考慮した補正処理を行うようにして時系列情報を得るようにしてもよい。
【0059】
(その他の実施の形態)
上述した実施の形態の連続鋳造鋳型内における溶鋼流動状態の診断装置は、コンピュータのCPU或いはMPU、RAM、ROM等により構成され、RAMやROMに記憶されたプログラムが動作することによって実現される。したがって、コンピュータに対し、上記実施の形態の機能を実現するためのプログラム自体が上述した実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラム自体は本発明を構成する。
【0060】
また、上記プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを格納した記録媒体は本発明を構成する。かかるプログラムコードを記憶する記録媒体としては、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
【0061】
また、コンピュータが供給されたプログラムを実行することにより、上述の実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムがコンピュータにおいて稼働しているOS(オペレーティングシステム)或いは他のアプリケーションソフト等と共同して上述の実施の形態の機能が実現される場合にもかかるプログラムドは本発明の実施の形態に含まれることはいうまでもない。
【0062】
さらに、供給されたプログラムがコンピュータの機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに格納された後、そのプログラムの指示に基づいてその機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合にも本発明に含まれることはいうまでもない。
【0063】
なお、上記実施の形態において示した各部の形状及び構造は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。例えば、本発明をネットワーク環境で利用すべく、全部或いは一部のプログラムが他のコンピュータで実行されるようになっていてもかまわない。
【0064】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、連続鋳造鋳型内での溶鋼偏流の発生の有無を的確に診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態の連続鋳造鋳型内における溶鋼流動状態の診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】連続鋳造鋳型4に埋め込まれた熱電対について説明するための図である。
【図3】第1の実施の形態の連続鋳造鋳型内における溶鋼流動状態の診断処理を説明するためのフローチャートである。
【図4】熱電対F1〜F11、L1〜L11、S12、N12を用いて得られた熱流束情報の実績例を示す図である。
【図5】S側の熱流束分布及びN側の熱流束分布を変数とするリカレンスプロットの実績例を示す図である。
【図6】第2の実施の形態の連続鋳造鋳型内における溶鋼流動状態の診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【図7】アトラクタ近傍点の時間推移を説明するための図である。
【図8】鋳造長さと評価指標との関係の実績例を示す図である。
【図9】連続鋳造設備の概要を説明するための模式図である。
【符号の説明】
4 連続鋳造鋳型
4a 長辺
4b 短辺
6 浸漬ノズル
101 逆問題解析部
102 アトラクタ作成部
103 リカレンスプロット作成部
104 診断部
603 評価指標演算部
604 診断部
Claims (13)
- 一対の長辺と一対の短辺とを有する平面断面形状とされ、その中央に両短辺方向に溶鋼を吐出する浸漬ノズルが配置される連続鋳造鋳型内での溶鋼の流動状態を診断するための連続鋳造鋳型内における流動状態診断装置であって、
上記連続鋳造鋳型の長辺幅方向の中心に対して一方の側に埋め込まれた第1の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報と、他方の側に埋め込まれた第2の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報とに基づいて、それぞれ所定の次元を有する遅延ベクトルを生成し、アトラクタを再構成するアトラクタ作成手段と、
上記アトラクタに基づいて、2変数のリカレンスプロットを作成するリカレンスプロット作成手段と、
上記リカレンスプロットに基づいて、上記連続鋳造鋳型内での溶鋼の流動状態を診断する診断手段とを備えたことを特徴とする連続鋳造鋳型内における溶鋼流動状態の診断装置。 - 一対の長辺と一対の短辺とを有する平面断面形状とされ、その中央に両短辺方向に溶鋼を吐出する浸漬ノズルが配置される連続鋳造鋳型内での溶鋼の流動状態を診断するための連続鋳造鋳型内における流動状態診断装置であって、
上記連続鋳造鋳型の長辺幅方向の中心に対して一方の側に埋め込まれた第1の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報と、他方の側に埋め込まれた第2の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報とに基づいて、それぞれ所定の次元を有する遅延ベクトルを生成し、アトラクタを再構成するアトラクタ作成手段と、
上記いずれか一方のアトラクタ上の基準時刻での点の周囲に存在する他方のアトラクタ上の近傍点が、上記基準時刻から所定時間推移後での点の周囲にいくつ存在するかの割合を評価指標として求める評価指標演算手段と、
上記評価指標に基づいて、上記連続鋳造鋳型内での溶鋼の流動状態を診断する診断手段とを備えたことを特徴とする連続鋳造鋳型内における溶鋼流動状態の診断装置。 - 上記周囲として上記基準時刻での点及び上記所定時間推移後での点を中心とする一定直径の超球を考えることを特徴とする請求項2に記載の連続鋳造鋳型内における溶鋼流動状態の診断装置。
- 上記第1の温度検出手段により計測された時系列の温度情報と、上記第2の温度検出手段により計測された時系列の温度情報とから、逆問題解析により上記時系列情報として各温度検出手段に対応する連続鋳造鋳型の稼動面での時系列の熱流束情報或いは温度情報を求める逆問題解析手段を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の連続鋳造鋳型内における溶鋼流動状態の診断装置。
- 上記一対の長辺側の面のうち少なくともいずれか片面には、上記長辺幅方向の中心に対して一方の側に上記第1の温度検出手段としての一又は複数の熱電対と、上記他方の側に上記第2の温度検出手段としての一又は複数の熱電対とが配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の連続鋳造鋳型内における溶鋼流動状態の診断装置。
- 上記一方の側の熱電対と上記他方の側の熱電対とは上記長辺幅方向の中心を挟んで対称的に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の連続鋳造鋳型内における溶鋼流動状態の診断装置。
- 上記長辺幅方向の中心に対して一方の側の短辺側の面には、上記第1の温度検出手段としての熱電対が短辺幅方向の中心に配置され、他方の側の短辺側の面には、上記第2の温度検出手段としての熱電対が短辺幅方向の中心に配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の連続鋳造鋳型内における溶鋼流動状態の診断装置。
- 上記診断手段は、上記連続鋳造鋳型内での溶鋼の流動状態として溶鋼偏流の発生の有無を診断することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の連続鋳造鋳型内における溶鋼流動状態の診断装置。
- 一対の長辺と一対の短辺とを有する平面断面形状とされ、その中央に両短辺方向に溶鋼を吐出する浸漬ノズルが配置される連続鋳造鋳型内での溶鋼の流動状態を診断するための連続鋳造鋳型内における流動状態診断方法であって、
上記連続鋳造鋳型の長辺幅方向の中心に対して一方の側に埋め込まれた第1の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報と、他方の側に埋め込まれた第2の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報とに基づいて、それぞれ所定の次元を有する遅延ベクトルを生成し、アトラクタを再構成するアトラクタ作成手順と、
上記アトラクタに基づいて、2変数のリカレンスプロットを作成するリカレンスプロット作成手順と、
上記リカレンスプロットに基づいて、上記連続鋳造鋳型内での溶鋼の流動状態を診断する診断手順とを有することを特徴とする連続鋳造鋳型内における溶鋼流動状態の診断方法。 - 一対の長辺と一対の短辺とを有する平面断面形状とされ、その中央に両短辺方向に溶鋼を吐出する浸漬ノズルが配置される連続鋳造鋳型内での溶鋼の流動状態を診断するための連続鋳造鋳型内における流動状態診断方法であって、
上記連続鋳造鋳型の長辺幅方向の中心に対して一方の側に埋め込まれた第1の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報と、他方の側に埋め込まれた第2の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報とに基づいて、それぞれ所定の次元を有する遅延ベクトルを生成し、アトラクタを再構成するアトラクタ作成手順と、
上記いずれか一方のアトラクタ上の基準時刻での点の周囲に存在する他方のアトラクタ上の近傍点が、上記基準時刻から所定時間推移後での点の周囲にいくつ存在するかの割合を評価指標として求める評価指標演算手順と、
上記評価指標に基づいて、上記連続鋳造鋳型内での溶鋼の流動状態を診断する診断手順とを有することを特徴とする連続鋳造鋳型内における溶鋼流動状態の診断方法。 - 一対の長辺と一対の短辺とを有する平面断面形状とされ、その中央に両短辺方向に溶鋼を吐出する浸漬ノズルが配置される連続鋳造鋳型内での溶鋼の流動状態を診断するためのコンピュータプログラムであって、
上記連続鋳造鋳型の長辺幅方向の中心に対して一方の側に埋め込まれた第1の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報と、他方の側に埋め込まれた第2の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報とに基づいて、それぞれ所定の次元を有する遅延ベクトルを生成し、アトラクタを再構成するアトラクタ作成処理と、
上記アトラクタに基づいて、2変数のリカレンスプロットを作成するリカレンスプロット作成処理と、
上記リカレンスプロットに基づいて、上記連続鋳造鋳型内での溶鋼の流動状態を診断する診断処理とをコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。 - 一対の長辺と一対の短辺とを有する平面断面形状とされ、その中央に両短辺方向に溶鋼を吐出する浸漬ノズルが配置される連続鋳造鋳型内での溶鋼の流動状態を診断するためのコンピュータプログラムであって、
上記連続鋳造鋳型の長辺幅方向の中心に対して一方の側に埋め込まれた第1の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報と、他方の側に埋め込まれた第2の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報とに基づいて、それぞれ所定の次元を有する遅延ベクトルを生成し、アトラクタを再構成するアトラクタ作成処理と、
上記いずれか一方のアトラクタ上の基準時刻での点の周囲に存在する他方のアトラクタ上の近傍点が、上記基準時刻から所定時間推移後での点の周囲にいくつ存在するかの割合を評価指標として求める評価指標演算処理と、
上記評価指標に基づいて、上記連続鋳造鋳型内での溶鋼の流動状態を診断する診断処理とをコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。 - 請求項11又は12に記載のコンピュータプログラムを格納したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
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