JP7332875B2 - 連続鋳造鋳型内可視化装置、方法、およびプログラム - Google Patents
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そこで、特許文献1には、以下の技術が開示されている。まず、鋳型4の相互に対向する領域に埋め込まれた熱電対により測定された温度を用いて伝熱逆問題解析を行う。この逆問題解析により、鋳型4の相互に対向する領域の一方および他方の側(N側、S側)における熱流束の時系列の情報を算出する。この熱流束の時系列の情報から、遅延ベクトルを算出し、この遅延ベクトルの時間推移による軌道を作成することにより、N側のアトラクタおよびS側のアトラクタを再構成する。N側のアトラクタおよびS側のアトラクタに基づいて、N側の熱流束の分布およびS側の熱流束の分布を変数とするリカレンスプロットを作成し、このリカレンスプロットに基づいて、偏流の有無を診断する。
[第1の実施形態]
まず、第1の実施形態を説明する。
<本発明者らが得た知見>
特願2018-114563号には、連続鋳造設備の鋳型内の溶鋼の状態を可視化する技術が提案されている。かかる技術では、時刻t0から時刻t-Δtまでの観測データyt0:t-Δtを基に決定される時刻tでの状態ベクトルxtの条件付き確率密度関数である第1の確率密度関数p(xt|y0:t-Δt)と、当該時刻tでの状態ベクトルxtが得られたときの観測ベクトルytの条件付き確率密度関数p(yt|xt)と当該時刻tでの観測データytとから導出される状態ベクトルxtの尤度関数L(xt|yt)とを、データ同化を行うフィルタのアルゴリズムに与えることにより、時刻t0から時刻tまでの観測データyt0:tを基に決定される時刻tでの状態ベクトルxtの条件付き確率密度関数である第2の確率密度関数p(xt|y0:t)を導出し、第2の確率密度関数p(xt|y0:t)の最頻値を、時刻tでの状態ベクトルxtの推定値として導出する。また、第2の確率密度関数p(xt|y0:t)におけるアンサンブルメンバーxt (k)(kは、アンサンブルメンバーを指定する添字)に基づいて、時刻t+Δtでの数値解析データxt+Δt (k)を数値シミュレーションにより求めるための溶鋼3の温度および流速、並びに境界条件のパラメータを複数導出する。ここで、状態ベクトルxtは、計算格子点における溶鋼の温度および流速の全ての瞬時値で構成されるベクトルとする。
図1は、連続鋳造鋳型内可視化装置100の機能的な構成の一例を示す図である。連続鋳造鋳型内可視化装置100のハードウェアは、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、および各種のインターフェースを有する情報処理装置、または専用のハードウェアを用いることにより実現される。連続鋳造鋳型内可視化装置100は、連続鋳造設備の鋳型4内における溶鋼3(溶融金属)の流動および温度の状態を可視化するためのデータを作成する装置である。本発明において、連続鋳造鋳型内の全部または一部の領域における溶鋼(場合によっては凝固シェル)の物理量(流速や温度など)の分布を導出することを可視化と称し、可視化によって溶鋼の物理量の分布を導出する領域を可視化対象領域と称する。尚、以下の説明では、連続鋳造鋳型内可視化装置を必要に応じて可視化装置と略称する。
数値解析データ導出部101は、数値シミュレーションにより、可視化対象平面領域の各計算格子点における流速および熱電対10a~10lが配置されている位置における温度を第1の状態ベクトルの成分のデータとして導出し、当該第1の状態ベクトル(の成分)のデータを加工したデータを数値解析データとして導出し、当該数値解析データを成分として含む第2の状態ベクトルのデータを導出する。本実施形態では、数値解析データ導出部101は、数値シミュレーション部101aと、数値シミュレーションデータ加工部101bとを有する。
数値シミュレーション部101aは、可視化の対象となる連続鋳造設備における非定常の伝熱および流動の数値シミュレーションを、連続鋳造設備の操業パラメータおよび溶鋼3の物性値とを用いて行う。連続鋳造設備の操業パラメータおよび溶鋼3の物性値は、予め数値シミュレーション部101aが記憶しているものである。
数値シミュレーションを実行する際には、初期条件と境界条件とを設定する必要がある。流動および伝熱の境界条件は、例えば、鋳型4の内壁面と、溶鋼3の湯面と、浸漬ノズル6の壁面(即ち、外壁面、吐出口7a、7bが形成されている部分以外の内壁面、及び吐出口7a、7bが形成されている部分の内壁面)と、タンディッシュ2と浸漬ノズル6との境界面(浸漬ノズル6の上端)と、凝固シェル8と溶鋼3との境界面と、溶鋼3の下端とにおいて設定される。溶鋼3の下端とは、可視化対象平面領域のうち最も下の位置(X軸の正の方向の端の位置)を指す。流動および伝熱の初期条件は、溶鋼3において設定される。
図2において、破線で示す仮想線6aは、タンディッシュ2と浸漬ノズル6との境界面(浸漬ノズル6の上端面)を示す。一点鎖線で示す仮想線6bは、浸漬ノズル6の軸を示す。本実施形態では、浸漬ノズル6の内部の領域を、浸漬ノズルの軸6bよりも、吐出口7aが形成されている側の領域6cと、浸漬ノズルの軸6bよりも、吐出口7bが形成されている側の領域6dとに分ける。そして、数値シミュレーションでは、領域6cに流入する溶鋼3は、全て吐出口7aから鋳型4内に注入され、領域6dに流入する溶鋼3は、全て吐出口7bから鋳型4内に注入されるものとする(即ち、領域6cに流入する溶鋼3の流量と、吐出口7aから鋳型4内に注入される溶鋼3の流量は同じであり、領域6dに流入する溶鋼3の流量と、吐出口7bから鋳型4内に注入される溶鋼3の流量は同じであるものとする)。また、タンディッシュ2から浸漬ノズル6に注入される溶鋼3の流量Uは一定であり変化しないものとする。数値シミュレーションでは、タンディッシュ2から領域6dに流入する溶鋼3の流量をuinletとし、タンディッシュ2から領域6cに流入する溶鋼3の流量は、前述した一定の流量Uから、タンディッシュ2から領域6dに流入する溶鋼3の流量uinletを減算することにより導出されるものとする。
本実施形態では、熱電対10a~10lが配置されている位置における温度が、各計算位置における物理量に基づいて導出される物理量の一例となる。
尚、連続鋳造設備に対するナビエストークス方程式、連続の式、およびエネルギー保存式や、初期条件および境界条件の内容については、例えば、特許文献3や非特許文献1に記載されているので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
数値シミュレーションデータ加工部101bは、数値シミュレーション部101aで導出された第1の状態ベクトルx→(1)(の成分)のデータを加工して、第2の状態ベクトルx→(2)のデータを導出する。本実施形態では、第2の状態ベクトルx→(2)が、以下の(2)式で表される場合を例に挙げて説明する。尚、x→(2)の→は、(2)式において、xの上に付されている→に対応する。
第1の確率密度関数導出部102は、後述する観測データ取得部103aで取得された時刻t-Δtまでの観測データ(情報)y→(1) t0:t-Δtを基に推定される時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの条件付き確率密度関数p(x→(2) t|y→(1) t0:t-Δt)を導出する。確率密度関数p(x→(2) t|y→(1) t0:t-Δt)は、数値シミュレーションデータ加工部101bにより導出された複数の数値解析データ{x→(2) t (k)}kが示す確率密度関数である。以下の説明では、この確率密度関数p(x→(2) t|y→(1) t0:t-Δt)を必要に応じて第1の確率密度関数とも称する。本実施形態では、第1の確率密度関数導出部102は、ステップ幅Δtの時間隔で、各時刻tでの状態ベクトルxtの第1の確率密度関数p(x→(2) t|y→(1) t0:t-Δt)を導出する。
また、第1の確率密度関数導出部102は、時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの第1の確率密度関数p(x→(2) t|y→(1) t0:t-Δt)がガウス分布であると仮定して、数値シミュレーションデータ加工部101bにより導出された時刻tでの複数の数値解析データ{x→(2) t (k)}kから平均値と分散値を導出してもよい。
尚、第1の確率密度関数導出部102は、以上のようにして導出される時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの第1の確率密度関数p(x→(2) t|y→(1) t0:t-Δt)を、ガウス分布のような確率密度関数に従うノイズを用いて修正してもよい。
観測データ導出部103は、可視化断面の各観測位置における温度の測定値を観測ベクトルの成分として観測データを導出する。本実施形態では、観測データ導出部103は、観測データ取得部103aを有する。
((観測データ取得部103a))
観測データ取得部103aは、連続鋳造設備において測定された時系列データ(測定値)に基づいて観測データを取得する。
本実施形態では、観測データ取得部103aは、熱電対10a~10lで測定される温度(鋳型4内の温度)の測定値を入力する。
尤度関数導出部104は、観測データ取得部103aで取得された時刻tでの観測データy→(1) t (0)(yt (0)は観測位置において取得される熱電対10a~10lの測定値T'1~T'Lで構成されるベクトル)の観測ノイズを、過去の当該観測データから評価することにより、時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tが得られたときの観測ベクトルy→(1) tの条件付き確率密度関数p(y→(1) t|x→(2) t)に対する第2の状態ベクトルx→(2) tの尤度関数L(x→(2) t|y→(1) t)を導出する。尤度関数L(x→(2) t|y→(1) t)とは、条件付き確率密度関数p(y→(1) t|x→(2) t)を第2の状態ベクトルx→(2) tの関数と見做したもので、観測ベクトルy→(1) tに観測データy→(1) t (0)を代入することによって第2の状態ベクトルx→(2) tの関数として確定する。本実施形態では、尤度関数導出部104は、ステップ幅Δtの時間隔で、各時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの尤度関数L(x→(2) t|y→(1) t)を導出する。
データ同化部105は、第1の確率密度関数導出部102により導出された時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの第1の確率密度関数p(x→(2) t|y→(1) 0:t-Δt)と、尤度関数導出部104により導出された時刻tでの観測データが得られたときの当該時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの尤度関数L(x→(2) t|y→(1) t)とを、ベイズの定理を基礎としたベイズ統計のモデリングによるデータ同化を行うフィルタのアルゴリズムに与えることにより、時刻tまでの観測データが得られたときの時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの条件付き確率密度関数p(x→(2) t|y→(1) t0:t)を導出する。以下の説明では、この確率密度関数p(x→(2) t|y→(1) t0:t)を必要に応じて第2の確率密度関数とも称する。本実施形態では、データ同化部105は、ステップ幅Δtの時間隔で、各時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの第2の確率密度関数p(x→(2) t|y→(1) t0:t)を導出する。
y→(1) t=Htx→(2) t+wt ・・・(4)
ここで、Htは、観測行列であり、wtは、観測ノイズである。例えば、観測ベクトルの第i成分が第2の状態ベクトルの第j成分の物理量と同一であれば、観測行列Htは、その(i,j)成分が1で、第i行の他の成分が0(ゼロ)である行列となる。また、観測位置iがどの計算格子点jとも一致しなければ、第2の状態ベクトルで補間するように観測行列Htを定めることもできる。
この場合、データ同化部105は、第1の確率密度関数導出部102により導出された時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの第1の確率密度関数p(x→(2) t|y→(1) t0:t-Δt)と、尤度関数導出部104により導出された当該時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの尤度関数L(x→(2) t|y→(1) t)とを、アンサンブル近似し、アンサンブルメンバー(粒子)を導出する。時刻t-Δtの各アンサンブルメンバーx→(2) t-Δt (k)を、システム方程式に基づいて更新し、一期先(時刻t)の予測分布のアンサンブルx→(2) t|t-Δt (k)を第1の確率密度関数導出部102により導出する。そして、データ同化部105は、一期先の予測分布のアンサンブルx→(2) t|t-Δt (k)から、フィルタ分布のアンサンブルx→(2) t (k)を導出する。このようなフィルタ分布のアンサンブルの導出を行うことにより、時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの第2の確率密度関数が導出される。
以上のようにして、時刻tにおいて、鋳造方向(X軸方向)の流速vl1~vlN、鋳造幅方向(Y軸方向)の流速vt1~vtN、鋳造厚方向(Z軸方向)の流速vd1~vdN、および温度T1~TNの推定値が、各計算格子点において導出される。
可視化データ作成部106は、データ同化部105により導出された時刻tでの、各計算格子点jにおける、鋳造方向(X軸方向)の流速vl1~vlN、鋳造幅方向(Y軸方向)の流速vt1~vtN、鋳造厚方向(Z軸方向)の流速vd1~vdN、および温度T1~TNの推定値に基づいて、鋳型内4の各位置における溶鋼3の温度と流速の少なくとも何れか一方の表示データを作成する。
可視化データ作成部106は、各時刻における各位置における溶鋼3の温度と流速を、可視化装置100のユーザが認識できるようにしていれば、どのような表示データを作成してもよい。ただし、可視化データ作成部106は、可視化装置100のユーザが直感的に分かり易い表示データを作成するのが好ましい。
出力部107は、可視化データ作成部106で作成された表示データをコンピュータディスプレイに表示する。また、出力部107は、このような表示データに代えてまたは加えて、データ同化部105により導出された各時刻での状態ベクトルの推定値を構成する各位置における溶鋼3の温度と流速のデータを出力することができる。出力の態様は、可視化装置100の内部または外部の記憶媒体への送信、外部装置への送信が挙げられる。このようにすれば、各時刻での各位置における溶鋼3の温度と流速を表示するための表示データを、後で別途作成することができる。
次に、図3のフローチャートを参照しながら、可視化装置100の処理の一例を説明する。
まず、ステップS301において、数値シミュレーション部101aは、時刻tを初期値(t0)に設定する。
次に、ステップS302において、数値シミュレーション部101aは、時刻tから時刻t+Δtまでの間での流入境界条件のパラメータuinletの初期値を設定する。
次に、ステップS304において、数値シミュレーション部101aは、時刻tにおける計算格子点における溶鋼3の温度および流速を導出し、その結果に基づいて、時刻tにおける第1の状態ベクトルx→(1) tのデータを導出する((1)式を参照)。
次に、ステップS307において、観測データ取得部103aは、時刻tでの観測データy→(1) t (0)(各観測位置iにおける熱電対10a~10lの測定値)を取得する。
次に、ステップS309において、データ同化部105は、時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの第1の確率密度関数p(x→(2) t|y→(1) 0:t-Δt)と、当該時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの尤度関数L(x→(2) t|y→(1) t)とを、ベイズ統計のモデリングによるデータ同化を行うフィルタのアルゴリズムに与えることにより、時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの第2の確率密度関数p(x→(2) t|y→(1) t0:t)を導出する。
次に、ステップS311において、可視化データ作成部106は、データ同化部105により導出された時刻tでの、各計算格子点jにおける、鋳造方向(X軸方向)の流速vl1~vlN、鋳造幅方向(Y軸方向)の流速vt1~vtN、鋳造厚方向(Z軸方向)の流速vd1~vdN、および温度T1~TNの推定値に基づいて、時刻tでの鋳型4内の各位置における溶鋼3の温度と流速の表示データを作成する。
ステップS313において、数値シミュレーション部101aは、数値シミュレーションで使用するデータである時刻tから時刻t+Δtまでの間での流入境界条件のパラメータuinletを、ステップS308でデータ同化部105により導出された、時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの第2の確率密度関数p(x→(2) t|y→(1) t0:t)に基づいて複数導出する。
以上のようにして時刻tが、予め設定された時刻tendになると、処理は、ステップS314に進む。ステップS314において、出力部107は、可視化データ(可視化データ作成部106で作成された表示データと、データ同化部105により導出された各時刻での鋳型4内の各位置における溶鋼3の温度と流速のデータ)を出力する。尚、表示データは、ステップS310で表示データが作成される度にコンピュータディスプレイに表示されるようにしてもよい。
以上のように本実施形態では、可視化装置100は、時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの第1の確率密度関数p(x→(2) t|y→(1) 0:t-Δt)と、当該時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの尤度関数L(x→(2) t|y→(1) t)とを、データ同化を行うフィルタのアルゴリズムに与えることにより、時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの第2の確率密度関数p(x→(2) t|y→(1) 0:t)を導出する。可視化装置100は、この第2の確率密度関数p(x→(2) t|y→(1) 0:t)の最頻値を、時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの推定値として導出する。また、可視化装置100は、この第2の確率密度関数p(x→(2) t|y→(1) 0:t)に基づいて、時刻t+Δtでの数値解析データ{xt (k)}kを求めるための流入境界条件のパラメータuinletを複数導出する。従って、連続鋳造機の内部における溶融金属の流動および温度の分布を、観測データによる事実と、物理法則に基づいた数値シミュレーションによる合理的な数値データとして可視化できて、溶鋼3の偏流の様な異常現象の発生の様子を、時々刻々と知ることがきる。よって、鋳造の操業条件を臨機応変に制御したり、問題のある部材の変更、交換をタイミングよく行ったりすることが可能になり、高品質の鋼材を歩留まり良くかつ生産性良く製造することができる。
本実施形態において、可視化装置100は、第2の確率密度関数p(x→(2) t|y→(1) 0:t)の最頻値を、時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの推定値として導出したが、第2の確率密度関数p(x→(2) t|y→(1) 0:t)の平均値を、時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの推定値として導出してもよいし、第2の確率密度関数p(x→(2) t|y→(1) 0:t)の中央値を、時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの推定値として導出してもよい。
また、熱電対10a~10lが配置されている位置における温度に代えてまたは加えて、湯面レベル計9により測定される位置における溶鋼3の湯面レベルを用いてもよい。
次に、第2の実施形態を説明する。第1の実施形態では、第2の状態ベクトルx→(2) tに含める成分(uinlet、T1~TL)が瞬時値である場合を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、第2の状態ベクトルx→(2) tに含める成分の少なくとも一部が時間平均値である場合を例に挙げて説明する。このように本実施形態と第1の実施形態とは、第2の状態ベクトルx→(2) tの構成が異なることに基づく構成および処理が主として異なる。従って、本実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の部分については、図1~図3に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
第1の実施形態で説明したように、溶鋼3のレイノルズ数は大きいことから溶鋼3は大きくゆらぐ。このため、状態ベクトルおよび観測ベクトルの成分(物理量)として瞬時値を用いると、データ同化において、計算のタイミングにおける溶鋼3のゆらぎに起因して、状態ベクトルを過度に修正したり、状態ベクトルを(殆ど)修正しなかったりする虞がある。そこで、本発明者らは、状態ベクトルおよび観測ベクトルの相互に対応する成分として、時間平均値を用いれば、鋳型4内における溶鋼3の偏流の推定精度を向上させることができると考えた。以下に説明する本発明の第2の実施形態は、このような知見に基づいてなされたものである。
図4は、連続鋳造鋳型内可視化装置400の機能的な構成の一例を示す図である。連続鋳造鋳型内可視化装置400のハードウェアは、例えば、第1の実施形態の連続鋳造鋳型内可視化装置100のハードウェアと同じもので実現することができる。
数値解析データ導出部401は、数値シミュレーションにより、可視化対象平面領域の各計算格子点に流速および熱電対10a~10lが配置されている位置における温度を第1の状態ベクトルの成分のデータとして導出し、当該第1の状態ベクトルのデータを加工して、数値解析データを成分として含む第2の状態ベクトルのデータを導出する。本実施形態では、数値解析データ導出部401は、数値シミュレーション部101aと、数値シミュレーションデータ加工部401aとを有する。
数値シミュレーションデータ加工部401aは、数値シミュレーション部101aで導出された第1の状態ベクトルx→(1)のデータを加工して、第2の状態ベクトルx→(2)のデータを導出する。本実施形態では、第2の状態ベクトルx→(2)が、以下の(5)式で表される場合を例に挙げて説明する。
数値シミュレーションデータ加工部401aは、数値シミュレーション部101aにおいて導出された熱電対10a~10lが配置されている位置における推定温度T1 (k)~TL (k)の時間平均値T1ave (k)~TLave (k)を時刻tにおけるT1ave~TLaveの値として導出する。ここで、kは、アンサンブルメンバーを指定する添字である。時間平均値T1ave (k)~TLave (k)は、ステップ幅Δtの時間隔毎に導出された推定温度T1 (k)~TL (k)の値を用いて導出しても良いし、ステップ幅Δtを細分した時間隔毎に導出された推定温度T1 (k)~TL (k)の値を用いて導出しても良い。時間平均値T1ave (k)~TLave (k)を導出する際に用いる推定温度T1 (k)~TL (k)の値は、0.5秒以上かつ10秒以下の時間隔で取得するのが好ましく、1秒以上かつ5秒以下の時間隔で取得するのがより好ましい。以下の説明では、熱電対10a~10lが配置されている位置における推定温度T1 (k)~TL (k)の時間平均値T1ave (k)~TLave (k)を、必要に応じて、熱電対10a~10lの位置における推定温度の時間平均値T1ave (k)~TLave (k)と称する。タンディッシュ2から領域6dに流入する溶鋼3の流量uinletの値uinlet (k)は、時刻tにおける数値シミュレーションで使用した値でも、時刻tより前の時刻から時刻tまでの所定の時間における数値シミュレーションで使用した値の時間平均値であってもよい。ここで、所定の時間は、T1ave~TLaveを温度T1~TLの時間平均値と定義した際の平均する時間と同一である。また、第2の状態ベクトルx→(2)には、熱電対10a~10lが配置されている位置における温度T1~TL(瞬時値)は含まれない。
第1の確率密度関数導出部102は、第2の状態ベクトルx→(2)の成分として、熱電対10a~10lが配置されている位置における温度T1~TLに代えて、その時間平均値T1ave~TLaveを用いて、時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの条件付き確率密度関数p(x→(2) t|y→(2) t0:t-Δt)を導出する。
観測データ導出部402は、可視化断面の各観測位置における温度の測定値を第1の観測ベクトルの成分として第1の観測データを導出し、当該第1の観測データを加工して第2の観測データを導出する。本実施形態では、観測データ導出部402は、観測データ取得部103aと、観測データ加工部402aとを有する。
観測データ加工部402aは、観測データ取得部103aにより取得された観測データである第1の観測データy→(1) t (0)を加工して、第2の観測データy→(2) t (0)を導出する。本実施形態では、第1の実施形態における観測ベクトルを第1の観測ベクトルと称し、第1の観測ベクトルの時刻tより前の時刻から時刻tまでの所定の時間における時間平均ベクトルを第2の観測ベクトルと称する。ここで、所定の時間は、T1ave~TLaveを温度T1~TLの時間平均値と定義した際の平均する時間と同一である。従って、第2の観測データy→(2) t (0)は、以下の(6)式で表される。尚、y→(2) t (0)の→は、(6)式において、yの上に付されている→に対応する。
尤度関数導出部104は、(第1の)観測ベクトルy→(1)に代えて第2の観測ベクトルy→(2)を用い、(第1の)観測データy→(1) t (0)に代えて第2の観測データy→(2) t (0)を用いて、時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの尤度関数L(x→(2) t|y→(2) t)を導出する。
データ同化部105は、時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの第1の確率密度関数p(x→(2) t|y→(1) 0:t-Δt)に代えて、時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの第1の確率密度関数p(x→(2) t|y→(2) 0:t-Δt)を用いると共に、時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの尤度関数L(x→(2) t|y→(1) t)に代えて、時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの尤度関数L(x→(2) t|y→(2) t)を用いて、第1の実施形態で説明した処理を行う。
(可視化データ作成部106、出力部107)
可視化データ作成部106および出力部107の処理は、第1の実施形態で説明した通りである。
次に、図5のフローチャートを参照しながら、可視化装置400の処理の一例を説明する。
ステップS301~S304は、図3のフローチャートのステップS301~S304と同じである。ステップS304において、数値シミュレーション部101aにより、時刻tにおける第1の状態ベクトルx→(1) tのデータが導出される((1)式を参照)。
次に、ステップS307において、観測データ取得部103aは、時刻tでの(第1の)観測データy→(1) t (0)(各観測位置iにおける熱電対10a~10lの測定値)を取得する。
次に、ステップS502において、観測データ加工部402aは、時刻tにおける第1の観測データy→(1) t (0)を加工して、時刻tにおける第2の観測データy→(2) t (0)を導出する((6)式を参照)。時刻tにおける第2の観測データy→(2) t (0)には、熱電対10a~10lの測定値の時刻tにおける時間平均値T'1ave~T'Laveが含まれる。
以上のように本実施形態では、可視化装置400は、熱電対10a~10lが配置されている位置における推定温度T1 (k)~TL (k)に代えて、その時間平均値T1ave (k)~TLave (k)を含む第2の状態ベクトルx→(2) tのデータを導出し、熱電対10a~10lの測定値T'1~T'Lに代えて、その時間平均値T'1ave~T'Laveを含む第2の観測データy→(2) t (0)を導出する。従って、第1の実施形態で説明した効果に加えて、データ同化において、計算のタイミングにおける溶鋼3のゆらぎに起因して、状態ベクトルを過度に修正したり、状態ベクトルが殆ど修正されなかったりすることを抑制することができる。従って、鋳型4内における溶鋼3の偏流の推定精度をより向上させることができる。
尚、本実施形態においても、第1の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。第1の実施形態の<変形例>の項で説明したのと同様に、熱電対10a~10lが配置されている全ての位置における温度の時間平均値T1ave~TLaveを、第2の状態ベクトルx→(2)に含めなくてもよい。
次に、第3の実施形態を説明する。第2の実施形態では、観測される物理量(温度)と同じ物理量の時間平均値T1ave~TLave、T'1ave~T'Laveを用いて第2の状態ベクトルx→(2)を構成する場合を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、第2の状態ベクトルx→(2)に含める成分の少なくとも一部が、観測される物理量と異なる物理量の時間平均値である場合を例に挙げて説明する。このように本実施形態と第1、第2の実施形態とは、第2の状態ベクトルx→(2)の構成が異なることに基づく構成および処理が主として異なる。従って、本実施形態の説明において、第1、第2の実施形態と同一の部分については、図1~図5に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
状態ベクトルおよび観測ベクトルの次数が高いと、データ同化において修正すべき状態ベクトルの成分が多くなり、本来修正すべき成分への修正が適切に修正されなくなる虞がある。そこで、本発明者らは、状態ベクトルおよび観測ベクトルに含める成分を、鋳型4内における溶鋼3の偏流を可及的にダイレクトに反映する物理量に絞る必要があると考えた。このような物理量として、例えば、熱流束が挙げられる。以下に説明する本発明の第3の実施形態は、このような知見に基づいてなされたものである。
図6は、連続鋳造鋳型内可視化装置600の機能的な構成の一例を示す図である。連続鋳造鋳型内可視化装置600のハードウェアは、例えば、第1の実施形態の連続鋳造鋳型内可視化装置100のハードウェアと同じもので実現することができる。
数値解析データ導出部601は、数値シミュレーションにより、可視化対象平面領域の各計算格子点における流速および熱電対10a~10lが配置されている位置における温度を第1の状態ベクトルの成分のデータとして導出し、当該第1の状態ベクトルのデータを加工して、数値解析データを成分として含む第2の状態ベクトルのデータを導出する。本実施形態では、数値解析データ導出部601は、数値シミュレーション部101aと、数値シミュレーションデータ加工部601aとを有する。
数値シミュレーションデータ加工部601aは、数値シミュレーション部101aで導出された第1の状態ベクトルx→(1)のデータを加工して、第2の状態ベクトルx→(2)のデータを導出する。本実施形態では、第2の状態ベクトルx→(2)が、以下の(7)式で表される場合を例に挙げて説明する。尚、x→(2)の→は、(7)式において、xの上に付されている→に対応する。
また、領域41a~41b、42a~42b、43a~43bにおける熱流束の差の時間平均値Δq1ave、Δq2ave、Δq3aveは、時刻tより前の時刻から時刻tまでの所定の時間における時間平均値である。所定の時間は、0.5秒以上かつ30秒以下とするのが好ましく、3秒以上かつ10秒以下とするのがより好ましい。
第1の確率密度関数導出部102は、第2の状態ベクトルx→(2)の成分として、熱電対10a~10lが配置されている位置における温度T1~TLに代えて、鋳型上部の熱流束の差の時間平均値Δq1ave、鋳型中央部の熱流束の差の時間平均値Δq2ave、および鋳型下部の熱流束の差の時間平均値Δq3aveを用いて、時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの条件付き確率密度関数p(x→(2) t|y→(2) t0:t-Δt)を導出する。
観測データ導出部602は、可視化断面の各観測位置における温度の測定値を第1の観測ベクトルの成分として第1の観測データを導出し、当該第1の観測データを加工して第2の観測データを導出する。本実施形態では、観測データ導出部602は、観測データ取得部103aと、観測データ加工部602aとを有する。
観測データ加工部602aは、観測データ取得部103aにより取得された観測データである第1の観測データy→(1) t (0)を加工して、第2の観測データy→(2) t (0)を導出する。本実施形態では、第1の実施形態における観測ベクトルを第1の観測ベクトルと称し、鋳型4の短辺部4a、4bの領域41a~41b、42a~42b、43a~43bにおける熱流束の差の時間平均で構成されるベクトルを第2の観測ベクトルと称する。従って、第2の観測データy→(2) t (0)は、以下の(8)式で表される。尚、y→(2) t (0)の→は、(8)式において、yの上に付されている→に対応する。
本実施形態では、鋳型4の短辺部4a、4bの領域41a~41b、42a~42b、43a~43bにおける熱流束の差の時間平均値が、各観測位置における物理量に基づいて導出される物理量の一例となる。
尤度関数導出部104は、(第1の)観測ベクトルy→(1)に代えて第2の観測ベクトルy→(2)を用い、(第1の)観測データy→(1) t (0)に代えて第2の観測データy→(2) t (0)を用いて、時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの尤度関数L(x→(2) t|y→(2) t)を導出する。
データ同化部105は、時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの第1の確率密度関数p(x→(2) t|y→(1) 0:t-Δt)に代えて、時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの第1の確率密度関数p(x→(2) t|y→(2) 0:t-Δt)を用いると共に、時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの尤度関数L(x→(2) t|y→(1) t)に代えて、時刻tでの第2の状態ベクトルx→(2) tの尤度関数L(x→(2) t|y→(2) t)を用いて、第1の実施形態で説明した処理を行う。
(可視化データ作成部106、出力部107)
可視化データ作成部106および出力部107の処理は、第1の実施形態で説明した通りである。
次に、図7のフローチャートを参照しながら、可視化装置600の処理の一例を説明する。
ステップS301~S304は、図3のフローチャートのステップS301~S304と同じである。ステップS304において、数値シミュレーション部101aにより、時刻tにおける第1の状態ベクトルx→(1) tのデータが導出される((1)式を参照)。
次に、ステップS307において、観測データ取得部103aは、時刻tでの(第1の)観測データy→(1) t (0)(各観測位置iにおける熱電対10a~10lの測定値)を取得する。
次に、ステップS702において、観測データ加工部602aは、時刻tにおける第1の観測データy→(1) t (0)を加工して、時刻tにおける第2の観測データy→(2) t (0)を導出する((8)式を参照)。時刻tにおける第2の観測データy→(2) t (0)には、温度測定値に基づく熱流束の差の時間平均値Δq'1ave、Δq'2ave、Δq'3aveが含まれる。
以上のように本実施形態では、可視化装置600は、熱電対10a~10lが配置されている位置における推定温度T1 (k)~TL (k)に代えて、鋳型4の短辺部4a、4bの領域41a~41b、42a~42b、43a~43bにおける熱流束の差の時間平均値Δq1ave (k)、Δq2ave (k)、Δq3ave (k)を含む第2の状態ベクトルx→(2) tのデータを導出し、熱電対10a~10lの測定値T'1~T'Lに代えて、温度測定値に基づく熱流束の差の時間平均値Δ'q1ave、Δ'q2ave、Δ'q3aveを含む第2の観測データy→(2) t (0)を導出する。従って、第1、第2の実施形態で説明した効果に加えて、状態ベクトルおよび観測ベクトルに含める成分を、鋳型4内における溶鋼3の偏流を可及的にダイレクトに反映する物理量に絞ることができる。従って、鋳型4内における溶鋼3の偏流の推定精度をより一層向上させることができる。
本実施形態のように、鋳型4の短辺部4a(領域41a~43a)における熱流束の代表値の時間平均値と、鋳型4の短辺部4b(領域41b~43b)における熱流束の代表値の時間平均値との差を用いれば、状態ベクトルの次数を低くすることができるので好ましい。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、鋳型4の短辺部4a(領域41a~43a)における熱流束の代表値と、鋳型4の短辺部4b(領域41b~43b)における熱流束の代表値を、状態ベクトルおよび観測ベクトルの成分に含めてもよい。
この他、本実施形態においても、第1、第2の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
次に、実施例を説明する。
本実施例では、数値シミュレーションとして、以下の(9a)式~(9c)式を基礎式とする数値シミュレーションを行った。
また、鋳造速度(鋳片の引き抜き速度)を1.2m/minとした。また、鋳型4内に注入される溶鋼3の温度を1618℃とした。
図8、図9、図10、図11は、それぞれ、発明例1、発明例2、発明例3、比較例の結果を示す図である。何れもステップ幅Δtを3秒とした。また、発明例2と発明例3において、T1ave~TLaveを温度T1~TLの時間平均値と定義した際の平均する時間およびT'1ave~T'Laveを測定値T'1~T'Lの時間平均値と定義した際の平均する時間を3秒とし、時間平均値T1ave (k)~TLave (k)を導出する際に用いる推定温度T1 (k)~TL (k)の値を取得する時間間隔および時間平均値T'1ave~T'Laveを導出する際に用いる測定値T'1~T'Lを取得する時間間隔を1秒とした。
以上のように第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態の手法により、溶鋼3の流れを精度よく導出し、可視化することができることが分かる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
Claims (15)
- 連続鋳造設備の鋳型に浸漬ノズルを介して注入される溶鋼の可視化対象領域の各計算位置における物理量および当該物理量に基づいて導出される物理量の少なくとも一方を含む状態ベクトルについて、時刻tでの前記状態ベクトルのデータである数値解析データを、数値シミュレーションの結果に基づいて時間隔Δtごとに導出することを、時刻tの前記時間隔Δtだけ前の時刻t-Δtから当該時刻tまでの間での流入境界条件のパラメータが少なくとも異なる複数のケースのそれぞれについて行う数値解析データ導出手段と、
前記数値解析データ導出手段により導出された前記複数のケースの時刻tでの数値解析データから当該時刻tでの前記状態ベクトルの第1の確率密度関数を導出する第1の確率密度関数導出手段と、
前記連続鋳造設備の各観測位置における物理量および当該物理量に基づいて導出される物理量との少なくとも一方を含む観測ベクトルについて、時刻tでの前記観測ベクトルのデータである観測データを前記各観測位置に配置されたセンサの測定値に基づいて前記時間隔Δtごとに導出する観測データ導出手段と、
前記観測データ導出手段により導出された時刻tでの観測データから当該時刻tでの前記状態ベクトルの尤度関数を導出する尤度関数導出手段と、
前記第1の確率密度関数導出手段により導出された時刻tでの前記状態ベクトルの前記第1の確率密度関数と、前記尤度関数導出手段により導出された当該時刻tでの前記状態ベクトルの前記尤度関数とに基づいて、ベイズ統計のモデリングによるデータ同化を行うフィルタにより、当該時刻tでの前記状態ベクトルの第2の確率密度関数を導出し、当該状態ベクトルの前記第2の確率密度関数に基づいて、当該時刻tでの前記状態ベクトルの推定値を導出するデータ同化手段と、
を有し、
前記数値解析データ導出手段において時刻tでの前記数値解析データを導出する際の前記複数のケースは、前記データ同化手段により導出された当該時刻tの前記時間隔Δtだけ前の時刻t-Δtでの前記状態ベクトルの前記第2の確率密度関数に基づいて導出され、
前記状態ベクトルには、前記各計算位置における物理量および当該物理量に基づいて導出される物理量の少なくとも一方と、当該各計算位置における物理量を導出する際の数値シミュレーションの際に用いた前記流入境界条件のパラメータとが含まれ、
前記各計算位置における物理量および当該物理量に基づいて導出される物理量には、前記溶鋼における流速は含まれず、且つ、前記溶鋼における温度、前記鋳型における温度、または前記鋳型における熱流束が含まれ、
前記流入境界条件のパラメータは、前記浸漬ノズルに流入する溶鋼の流量を含み、
前記各観測位置における物理量および当該物理量に基づいて導出される物理量には、前記鋳型における温度または熱流束が含まれることを特徴とする連続鋳造鋳型内可視化装置。 - 前記浸漬ノズルは、第1の吐出口および第2の吐出口を有し、
前記第1の吐出口から、前記鋳型の内壁面であって、相互に対向する2つの内壁面のうちの第1の内壁面の方向に溶鋼が吐出され、前記第2の吐出口から、当該2つの内壁面のうちの第2の内壁面の方向に溶鋼が吐出され、
前記流入境界条件のパラメータは、前記浸漬ノズルの内部の領域のうち、前記浸漬ノズルの軸よりも、前記第1の吐出口側の領域に流入する溶鋼の流量と、前記浸漬ノズルの内部の領域のうち、前記浸漬ノズルの軸よりも、前記第2の吐出口側の領域に流入する溶鋼の流量とのうち、少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造鋳型内可視化装置。 - 前記浸漬ノズルに流入する溶鋼の流量は変化しないものとして前記数値シミュレーションが行われ、
前記データ同化手段において前記第2の確率密度関数に基づいて導出される前記流入境界条件のパラメータは、前記浸漬ノズルの軸よりも、前記第1の吐出口側の領域に流入する溶鋼の流量と、前記浸漬ノズルの領域のうち、前記浸漬ノズルの軸よりも、前記第2の吐出口側の領域に流入する溶鋼の流量とのうち、一方のみを含むことを特徴とする請求項2に記載の連続鋳造鋳型内可視化装置。 - 前記観測位置は、少なくとも前記鋳型の短辺部内に設けられることを特徴とする請求項2または3に記載の連続鋳造鋳型内可視化装置。
- 前記各計算位置における物理量および当該物理量に基づいて導出される物理量の少なくとも一方と、前記各観測位置における物理量および当該物理量に基づいて導出される物理量の少なくとも一方は、時間平均値であることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の連続鋳造鋳型内可視化装置。
- 前記各計算位置における物理量に基づいて導出される物理量は、前記各計算位置における物理量と異なる第2の物理量であり、
前記各観測位置における物理量に基づいて導出される物理量は、前記第2の物理量であることを特徴とする請求項5に記載の連続鋳造鋳型内可視化装置。 - 前記各計算位置における物理量は、前記溶鋼における温度を含み、
前記各観測位置における物理量は、前記鋳型における温度を含み、
前記第2の物理量は、前記鋳型における熱流束を含むことを特徴とする請求項6に記載の連続鋳造鋳型内可視化装置。 - 前記浸漬ノズルは、第1の吐出口および第2の吐出口を有し、
前記第1の吐出口から、前記鋳型の内壁面であって、相互に対向する2つの内壁面のうちの第1の内壁面の方向に溶鋼が吐出され、前記第2の吐出口から、当該2つの内壁面のうちの第2の内壁面の方向に溶鋼が吐出され、
前記第2の物理量は、前記鋳型のうち、前記第1の内壁面を構成する部分における熱流束と、前記鋳型のうち、前記第2の内壁面を構成する部分における熱流束との差を表す物理量であることを特徴とする請求項7に記載の連続鋳造鋳型内可視化装置。 - 前記観測位置は、少なくとも前記鋳型の短辺部内に設けられることを特徴とする請求項8に記載の連続鋳造鋳型内可視化装置。
- 前記データ同化手段により導出された時刻tでの前記状態ベクトルの推定値に基づいて、時刻tでの前記可視化対象領域の各計算位置における前記物理量の表示データを作成する可視化データ作成手段を更に有することを特徴とする請求項1~9の何れか1項に記載の連続鋳造鋳型内可視化装置。
- 前記データ同化手段は、時刻tでの前記状態ベクトルの第2の確率密度関数の最頻値を、時刻tでの前記状態ベクトルの推定値として導出することを特徴とする請求項1~10の何れか1項に記載の連続鋳造鋳型内可視化装置。
- 前記各計算位置における物理量は、前記溶鋼における温度を含み、
前記各計算位置における物理量に基づいて導出される物理量は、前記鋳型における温度を含むことを特徴とする請求項1~11の何れか1項に記載の連続鋳造鋳型内可視化装置。 - 前記フィルタは、アンサンブルカルマンフィルタまたは粒子フィルタであることを特徴とする請求項1~12の何れか1項に記載の連続鋳造鋳型内可視化装置。
- 連続鋳造設備の鋳型に浸漬ノズルを介して注入される溶鋼の可視化対象領域の各計算位置における物理量および当該物理量に基づいて導出される物理量の少なくとも一方を含む状態ベクトルについて、時刻tでの前記状態ベクトルのデータである数値解析データを、数値シミュレーションの結果に基づいて時間隔Δtごとに導出することを、時刻tの前記時間隔Δtだけ前の時刻t-Δtから当該時刻tまでの間での流入境界条件のパラメータが少なくとも異なる複数のケースのそれぞれについて行う数値解析データ導出工程と、
前記数値解析データ導出工程により導出された前記複数のケースの時刻tでの数値解析データから当該時刻tでの前記状態ベクトルの第1の確率密度関数を導出する第1の確率密度関数導出工程と、
前記連続鋳造設備の各観測位置における物理量および当該物理量に基づいて導出される物理量との少なくとも一方を含む観測ベクトルについて、時刻tでの前記観測ベクトルのデータである観測データを前記各観測位置に配置されたセンサの測定値に基づいて前記時間隔Δtごとに導出する観測データ導出工程と、
前記観測データ導出工程により導出された時刻tでの観測データから当該時刻tでの前記状態ベクトルの尤度関数を導出する尤度関数導出工程と、
前記第1の確率密度関数導出工程により導出された時刻tでの前記状態ベクトルの前記第1の確率密度関数と、前記尤度関数導出工程により導出された当該時刻tでの前記状態ベクトルの前記尤度関数とに基づいて、ベイズ統計のモデリングによるデータ同化を行うフィルタにより、当該時刻tでの前記状態ベクトルの第2の確率密度関数を導出し、当該状態ベクトルの前記第2の確率密度関数に基づいて、当該時刻tでの前記状態ベクトルの推定値を導出するデータ同化工程と、
を有し、
前記数値解析データ導出工程において時刻tでの前記数値解析データを導出する際の前記複数のケースは、前記データ同化工程により導出された当該時刻tの前記時間隔Δtだけ前の時刻t-Δtでの前記状態ベクトルの前記第2の確率密度関数に基づいて導出され、
前記状態ベクトルには、前記各計算位置における物理量および当該物理量に基づいて導出される物理量の少なくとも一方と、当該各計算位置における物理量を導出する際の数値シミュレーションの際に用いた前記流入境界条件のパラメータとが含まれ、
前記各計算位置における物理量および当該物理量に基づいて導出される物理量には、前記溶鋼における流速は含まれず、且つ、前記溶鋼における温度、前記鋳型における温度、または前記鋳型における熱流束が含まれ、
前記流入境界条件のパラメータは、前記浸漬ノズルに流入する溶鋼の流量を含み、
前記各観測位置における物理量および当該物理量に基づいて導出される物理量には、前記鋳型における温度または熱流束が含まれることを特徴とする連続鋳造鋳型内可視化方法。 - 請求項1~13の何れか1項に記載の連続鋳造鋳型内可視化装置の各手段としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
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