JP2016016414A - 溶鋼の流動状態推定方法及び流動状態推定装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】オンラインで鋳型内全体の三次元での流動状態を推定すること。
【解決手段】CPU113が、連続鋳造機の鋳型内の熱電対41が設置された位置において、該熱電対41により測定される溶鋼の温度分布と物理モデルにより算出される溶鋼の温度分布との誤差を算出し、溶鋼を鋳型内に吐出するノズルの吐出口の近傍に外力を印加し、誤差を補償するように調整された外力が印加された状態で溶鋼の流動状態を算出することにより、連続鋳造機の鋳型内の溶鋼の流動状態を推定する。
【選択図】図9

Description

本発明は、連続鋳造機で鋳造される鋳片の品質向上を目的とした、鋳型内の溶鋼の流動状態の推定技術に関する。
連続鋳造機において、溶鋼は、タンディッシュから連続的に注がれ、水冷管が埋設された鋳型により冷却され、鋳型の下部から引き抜かれる。その際、マスバランスを保証するため、引き抜き速度に応じてノズルの開度が調整される。このような構造の連続鋳造機内において、特に高速な鋳造を行う場合、ノズルの吐出口からの溶鋼の噴流が不安定化しやすく、左右の吐出口からの吐出流が不均一となる偏流とよばれる現象が生じる場合がある。鉄鋼各社において、このような不安定性を低減すべく、モールドの外部から磁場を印加することにより溶鋼にブレーキ力を与える流動制御装置が導入されている。また、凝固シェル表面にトラップされた介在物や気泡を洗い流すために、溶鋼に攪拌力を与える動磁場を印加する流動制御装置の導入も進んでいる。
従来、このような溶鋼の流動制御装置を設計するために、例えば特許文献1に記載されているように、水モデル実験や数値計算により流動状態の解析が行われている。しかしながら、特許文献1に記載の技術によれば、モデル計算の解析結果と実現象とにおける流動状態の照合は、定常操業における数点のデータについてのみにとどまっている。一方、実際の設備では、ノズルの閉塞やアルゴンガスの乱れ、ノズルの開度による境界条件の乱れなど、様々な外乱が存在する。このような外乱の影響を考慮して、オンラインで溶鋼の流動状態を推定し制御を行うことができれば、製品の品質向上につながると考えられる。
このような背景から、溶鋼の流動状態をオンラインで推定する技術が提案されている。例えば、特許文献2〜4には、鋳型に埋設された熱電対により測定された溶鋼の温度から換算することにより流動状態を推定する技術が記載されている。
特開平10−5957号公報 特開2003−1386号公報 特開2003−181609号公報 特許第3386051号公報
しかしながら、特許文献2〜4に記載されているように溶鋼の温度から換算して溶鋼の流動状態を推定する技術は、鋳型近傍の凝固界面に限り適用できるため、鋳型内全体の三次元での溶鋼の流動状態を推定するができない。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、オンラインで鋳型内全体の三次元での溶鋼の流動状態を推定することが可能な溶鋼の流動状態推定方法及び流動状態推定装置を提供することにある。
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る溶鋼の流動状態推定方法は、連続鋳造機の鋳型内の溶鋼の流動状態を推定する溶鋼の流動状態推定方法であって、鋳型内に設置されたセンサの位置において、該センサにより測定される物理量の分布と物理モデルにより算出される前記物理量の分布との誤差を算出する誤差算出ステップと、前記溶鋼を前記鋳型内に吐出するノズルの吐出口の近傍に外力を印加する外力印加ステップと、前記誤差を補償するように調整された前記外力が印加された状態で前記流動状態を算出する推定ステップと、を含むことを特徴とする。
また、本発明に係る溶鋼の流動状態推定方法は、上記発明において、前記推定ステップは、前記外力が印加された状態での流動状態と、前記外力が印加されていない定常状態での流動状態との差分を、前記外力による流動状態の摂動として算出する摂動算出ステップと、前記誤差を補償するように前記外力及び前記流動状態の摂動を調整して補正項を算出する補正項算出ステップと、前記定常状態での流動状態に、前記補正項を重ね合わせることにより前記流動状態を算出する流動状態算出ステップと、を含むことを特徴とする。
また、本発明に係る溶鋼の流動状態推定方法は、上記発明において、前記外力印加ステップは、複数の外力パターンを基底としてそれぞれの影響度に応じて組み合わされた外力を前記ノズルの吐出口の近傍に印加し、前記摂動算出ステップは、前記各外力パターンに対応して、前記外力が印加された状態での前記物理量の分布と前記外力が印加されていない定常状態での前記物理量の分布との差分を算出し、該差分と前記誤差とを線形回帰分析することにより、前記誤差を補償する前記各外力パターンの影響度を算出し、前記補正項算出ステップは、該影響度と、前記各外力パターンに対応して算出された前記外力が印加された状態での流動状態と前記外力が印加されていない定常状態での流動状態との差分とに基づいて、前記誤差を補償する補正項を算出する、ことを特徴とする。
また、本発明に係る溶鋼の流動状態推定方法は、上記発明において、前記センサは熱電対であり、前記物理量は該熱電対が設置された位置における溶鋼の温度であることを特徴とする。
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る溶鋼の流動状態推定装置は、連続鋳造機の鋳型内の溶鋼の流動状態を推定する溶鋼の流動状態推定装置であって、鋳型内に設置されたセンサの位置において、該センサにより測定される物理量の分布と物理モデルにより算出される前記物理量の分布との誤差を算出する誤差算出手段と、前記溶鋼を前記鋳型内に吐出するノズルの吐出口の近傍に外力を印加する外力印加手段と、前記誤差を補償するように調整された前記外力が印加された状態で前記流動状態を算出する推定手段と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る溶鋼の流動状態推定方法及び流動状態推定装置によれば、オンラインで鋳型内全体の三次元での溶鋼の流動状態を推定することできる。
図1は、本発明が適用される連続鋳造機の一構成例を示す模式図である。 図2は、鋳型内への熱電対の配置位置を例示する図である。 図3は、乱流モデルを適用する際の境界条件を例示する図である。 図4は、乱流モデルにより算出されたスラブの厚み方向の中央の断面における溶鋼の流動状態を例示する図である。 図5は、乱流モデルにより算出されたスラブの厚み方向の鋳型近傍における溶鋼の流動状態を例示する図である。 図6は、乱流モデルにより算出された溶鋼の流動状態から変換して算出された溶鋼の温度分布を例示する図である。 図7は、熱電対により測定される温度と乱流モデルにより算出される温度とを照合する手順を説明するための説明図である。 図8は、ノズルの吐出口近傍に印加される外力を例示する図である。 図9は、本発明の一実施形態である流動状態推定装置の構成を示すブロック図である。 図10は、本発明の一実施形態である流動状態推定処理の流れを示すフローチャートである。 図11Aは、ノズルの左吐出口にのみ水平方向に外力が付加された状態で算出された溶鋼の流動状態を例示する図である。 図11Bは、ノズルの左吐出口にのみ水平方向に外力が付加された状態で算出された溶鋼の温度分布を例示する図である。 図12Aは、ノズルの右吐出口にのみ水平方向に外力が付加された状態で算出された溶鋼の流動状態を例示する図である。 図12Bは、ノズルの右吐出口にのみ水平方向に外力が付加された状態で算出された溶鋼の温度分布を例示する図である。 図13Aは、ノズルの左吐出口にのみ水平方向に外力が付加された状態と定常状態との溶鋼の流動状態の差分を例示する図である。 図13Bは、ノズルの左吐出口にのみ水平方向に外力が付加された状態と定常状態との溶鋼の温度分布の差分を例示する図である。 図14Aは、ノズルの右吐出口にのみ水平方向に外力が付加された状態と定常状態との溶鋼の流動状態の差分を例示する図である。 図14Bは、ノズルの右吐出口にのみ水平方向に外力が付加された状態と定常状態との溶鋼の温度分布の差分を例示する図である。 図15Aは、測定された温度分布と定常状態で算出された温度分布との誤差を補償する外力の水平方向の時間推移を示す図である。 図15Bは、測定された温度分布と定常状態で算出された温度分布との誤差を補償する外力の垂直方向の時間推移を示す図である。 図16Aは、測定された温度分布と、定常状態で算出された補正前の温度分布と、外力が印加された補正後の温度分布との関係を示す図である。 図16Bは、測定された温度分布と、定常状態で算出された補正前の温度分布と、外力が印加された補正後の温度分布との関係を示す図である。 図17Aは、測定された温度分布と、定常状態で算出された補正前の温度分布と、外力が印加された補正後の温度分布との関係を示す図である。 図17Bは、測定された温度分布と、定常状態で算出された補正前の温度分布と、外力が印加された補正後の温度分布との関係を示す図である。 図18Aは、測定された温度分布と、定常状態で算出された補正前の温度分布と、外力が印加された補正後の温度分布との関係を示す図である。 図18Bは、測定された温度分布と、定常状態で算出された補正前の温度分布と、外力が印加された補正後の温度分布との関係を示す図である。 図19Aは、定常状態で算出された補正前の溶鋼の流動状態を例示する図である。 図19Bは、外力を印加する補正により推定された溶鋼の流動状態を例示する図である。
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である溶鋼の流動状態推定装置による流動状態推定処理について説明する。
〔連続鋳造機の構成〕
始めに、図1を参照して、本発明が適用される連続鋳造機の一構成例について説明する。図1に示すように、連続鋳造機1において、溶鋼2が満たされたタンディッシュ3の鉛直方向下方に鋳型4が設けられ、タンディッシュ3の底部に鋳型4への溶鋼2の供給口となるノズル5が設けられている。溶鋼2は、タンディッシュ3から連続的に鋳型4に注がれ、水冷管が埋設された鋳型4により冷却され、鋳型4の下部から引き抜かれてスラブとなる。その際、マスバランスを保証するため、引き抜き速度に応じてノズル5の開度が調整される。
鋳型4には、図2に例示するように、鋳造されるスラブの厚み方向(紙面に垂直な方向)の両端となるF面およびB面に、複数の熱電対41が設置される。各熱電対41は、各設置位置での溶鋼2の温度を測定する。本実施の形態では、高さ方向に7段、幅方向に16個の熱電対41が埋設されている。また、鋳型4には、湯面を回転させる撹拌磁場を発生させる図示しないコイルが設置されている。
〔溶鋼の流動状態を算出するための物理モデル〕
次に、本発明の一実施形態である溶鋼の流動状態推定装置による流動状態推定処理に用いられる物理モデルについて説明する。本発明の一実施形態である溶鋼の流動状態推定装置による流動状態推定処理では、溶鋼2の流動状態は、乱流モデルによって算出される。具体的に、鋳造速度、スラブの幅、厚み、撹拌磁場のコイル電流などの操業条件を入力条件として、乱流モデルの標準k−εモデルを用いて溶鋼2の流動状態(流速分布)が算出される。その際、図3に示す境界条件が設定される。すなわち、流入部では、設定された鋳造速度に応じたマスフローに相当する流速が与えられる。また、流出部では、流れ方向に各種物理量の勾配がないものとする自由流出境界条件が仮定される。そして、鋳型4の内壁は、鋳造速度と等速度で移動する固体壁とされる。図4及び図5は、このようにして算出された溶鋼2の流動状態を例示する図である。図4は、鋳造されるスラブの厚み方向の中央の断面における溶鋼2の流速分布を例示する図である。また、図5は、鋳造されるスラブの厚み方向の鋳型4近傍における溶鋼2の流速分布を例示する図である。
また、凝固界面の流速に応じて溶鋼2と凝固シェルとの熱伝達係数は変化し、鋳型4の熱電対41位置での温度の変化に反映される(特許文献4参照)。そこで、本実施の形態では、乱流モデルにより算出された溶鋼2の流動状態を温度分布に換算することにより温度分布が算出される。具体的には、特許文献4に記載されている温度から流速への換算則が逆方向に用いられる。図6は、このようにして算出された溶鋼2の温度分布を例示する図である。図6において、横軸と縦軸とはともに、図2に示した7行×16列の熱電対の位置に対応している。すなわち、縦軸は下から1〜7段の熱電対の段番号を示し、横軸は左から1〜16の熱電対設置の位置番号を示す。以下、熱電対位置での温度分布を示す際は、同様の軸を用いる。
〔温度分布の測定値と算出値との誤差の補償〕
次に図7を参照し、本発明の原理について説明する。本発明では、図7に示すように、上記の物理モデルにより算出された温度分布(以下、Tcalcと表記)と熱電対41により測定された温度分布(以下、Tactと表記)とを照合する。そして、その誤差を後述する流動状態推定処理によって補償することにより、溶鋼2の流動状態を推定する。
ここで、上記の物理モデルにより算出された温度分布Tcalcと熱電対41により測定された温度分布Tactとの差分は、主に、ノズル5の付着物による閉塞等の形状変化(ノズル5近傍の境界条件)に由来するものと考えられる。ここで、ノズル5から吐出された溶鋼2は流動の運動方程式に従うものと仮定する。そこで、本実施の形態では、ノズル5の形状変化を固定壁を用いず簡略化して表すため、ノズル5の吐出口近傍に流動状態の摂動を生じさせる外力を印加することにより、物理モデル上で誤差を補償する。具体的に、図8に示すように、ノズル5の左右の吐出口51のそれぞれの近傍に、水平方向の外力Fx(Fx(左),Fx(右))および垂直方向の外力Fy(Fy(左),Fy(右))をそれぞれの影響度に応じて印加する。
以下、上記の4パターンの外力に対応して、各外力が印加された状態で物理モデルにより算出される溶鋼2の流動状態をUと表記する。ここで、iは印加する外力のパターンの識別情報を意味し、1から4の整数である。同様に、外力が印加された状態で物理モデルにより算出される溶鋼2の温度分布をTと表記する。また、この外力が印加された状態で物理モデルにより算出される溶鋼2の流動状態Uと外力の印加されていない定常状態で物理モデルにより算出される溶鋼2の流動状態(以下、Ucalcと表記)との差分をΔUと表記する。同様に、外力が印加された状態で物理モデルにより算出される溶鋼2の温度分布Tと定常状態で物理モデルにより算出される温度分布Tcalcとの差分をΔTと表記する。このとき、次式(1),(2)が成立する。
〔流動状態推定装置の構成〕
次に、図9を参照して、本発明の一実施形態である溶鋼の流動状態推定装置の構成について説明する。図9は、本発明の一実施形態である溶鋼の流動状態推定装置の構成を示すブロック図である。図9に示すように、本発明の一実施形態である溶鋼の流動状態推定装置100は、情報処理装置101、入力装置102、及び出力装置103を備えている。
情報処理装置101は、パーソナルコンピュータやワークステーション等の汎用の情報処理装置によって構成され、RAM111、ROM112、及びCPU113を備えている。RAM111は、CPU113が実行する処理に関する制御プログラムや制御データを一時的に記憶し、CPU113のワーキングエリアとして機能する。
ROM112は、本発明の一実施形態である溶鋼の流動状態推定処理を実行する推定プログラム112aと情報処理装置101全体の動作を制御する制御プログラムと制御データとを記憶している。CPU113は、ROM112内に記憶されている推定プログラム112a及び制御プログラムに従って情報処理装置101全体の動作を制御する。具体的に、CPU113は、後述するように、入力された操業情報と既知の物理モデルとに基づいて流動状態を算出し、算出された流動状態を温度分布に変換することにより、温度分布を算出する。そして、CPU113は、算出された温度分布と、鋳型4内に埋設された熱電対41により実測された温度分布との差分を解析することにより、溶鋼2の流動状態を推定する。
入力装置102は、キーボード、マウスポインタ、テンキー等の入力装置によって構成され、情報処理装置101に対して各種情報を入力する際に操作される。出力装置103は、表示装置や印刷装置等の出力装置によって構成され、情報処理装置101の各種処理情報を出力する。
〔流動状態推定処理〕
次に、図10に示すフローチャートを参照して、本発明の一実施形態である溶鋼の流動状態推定処理の流れについて説明する。図10は、本発明の一実施形態である溶鋼の流動状態推定処理の流れを示すフローチャートである。図10に示すフローチャートは、オペレータが入力装置102を操作することによって情報処理装置101に対し流動状態推定処理の実行を指示したタイミングで開始となり、流動状態推定処理はステップS1の処理に進む。なお、以下に示す流動状態推定処理は、CPU113がROM112内に格納されている推定プログラム112aを実行することによって実現される。
ステップS1の処理では、CPU113が、図示しない外部DBから取得した操業情報を入力条件として、乱流モデルを用いて定常状態での溶鋼2の流動状態Ucalcと温度分布Tcalcとを算出する。これにより、ステップS1の処理は完了し、流動状態推定処理はステップS2の処理に進む。
ステップS2の処理では、CPU113が、乱流モデルを用いてノズル5の吐出口51近傍に上記した外力が付加された状態での溶鋼2の流動状態Uと温度分布Tとを算出する。これにより、ステップS2の処理は完了し、流動状態推定処理はステップS3の処理に進む。
図11A〜図12Bは、外力が付加された状態で算出された溶鋼2の流動状態および温度分布を例示する図である。図11Aは、ノズル5の左吐出口51にのみ水平方向にFx(左)(例えば、i=1とする)が付加された状態で算出された溶鋼2の流動状態Uを示し、図11Bは、このときの溶鋼2の温度分布Tを示す。また、図12Aは、ノズル5の右吐出口51にのみ水平方向にFx(右)(例えば、i=2とする)が付加された状態で算出された溶鋼2の流動状態Uを示し、図12Bは、このときの溶鋼2の温度分布Tを示す。
ステップS3の処理では、CPU113が感度解析を行う。すなわち、CPU113は、溶鋼2の流動状態について、外力が印加された状態での算出値Uと定常状態での算出値Ucalcとの差分ΔUを算出する。また、CPU113は、溶鋼2の温度分布について、外力が印加された状態での算出値Tと定常状態での算出値Tcalcとの差分ΔTを算出する。ここで算出されたΔU,ΔTは、付加された外力の影響、すなわち付加された外力による流動状態及び温度分布を意味する。これにより、ステップS3の処理は完了し、流動状態推定処理はステップS4の処理に進む。
図13A〜図14Bは、算出されたΔU,ΔTを例示する図である。図13Aは、ノズル5の左吐出口51にのみ水平方向にFx(左)(例えば、i=1)が付加された状態でのΔUを示し、図13Bは、このときのΔTを示す。また、図14Aは、ノズル5の右吐出口51にのみ水平方向にFx(右)(例えば、i=2)が付加された状態でのΔUを示し、図14Bは、このときのΔTを示す。
ステップS4の処理では、CPU113が、熱電対41で測定された溶鋼2の温度分布Tactと定常状態で算出された溶鋼2の温度分布Tcalcとを照合し、誤差を算出する。これにより、ステップS4の処理は完了し、流動状態推定処理はステップS5の処理に進む。
ステップS5の処理では、CPU113が、ステップS4の処理で算出された誤差をステップS3の処理で算出された感度解析結果のΔTにより線形回帰分析する。具体的に、CPU113は、次式(3)〜(7)に示すように、4パターンの外力に対応する4つの基底と5段の熱電対41に対応する5つのバイアス補正用の基底との計9つの基底(回帰変数)により、TactとTcalcとの誤差の線形回帰分析を行う。
ここで、7段の熱電対41のうち5段の熱電対41による測定値を流動状態推定処理に用いる。使用する5段の熱電対41の各段について、F面およびB面に共通して外力に影響されない一定のバイアスが存在するものと仮定し、5段分のバイアス補正に対応する5つの基底を用意する。上記式(4),(6)に示すバイアス行列Bの行数は5段の熱電対41の総数(F面とB面との合計)とし、列数は5段の熱電対41に対応する5列とする。また、上記式(6),(7)に示すベクトル1の要素数は、各段の熱電対41の数(F面とB面との合計)とする。これにより、ステップS5の処理は完了し、流動状態推定処理はステップS6の処理に進む。
なお、ここで求められる回帰係数ベクトルwのうち、4つの外力の基底に対応する1〜4番目の要素のみからなるベクトルw’の各要素は、誤差を補償する外力における上記の4パターンの各外力の影響度を表すものと考えることができる。従って、このベクトルw’から、誤差を補償する外力を求めることができる。図15Aは、ノズル5の左右の吐出口51に水平方向の外力Fx(外方を正とする)の時間推移を示す図である。また、図15Bは、ノズル5の左右の吐出口51に垂直方向の外力Fy(下方を正とする)の時間推移を示す図である。
また、ベクトルw’の要素と上記の温度分布の差分ΔTとを乗じた補正項Tcorrectを定常状態での温度分布Tcalcに重ね合わせることにより、外力の印加により補正(誤差を補償)された温度分布Testが算出される。図16A〜図18Bは、測定(実測)された温度分布Tactと、定常状態で算出された補正前の温度分布Tcalcと、外力が印加された補正後の温度分布Testとの関係を示す図である。図16Aと図16B、図17Aと図17B、図18Aと図18Bは、それぞれ同一段で異なる面(F面/B面)に埋設された熱電対41位置での温度分布を示す。外力の印加による補正後の温度分布Testは、補正前の温度分布Tcalcでは表わすことができないF面とB面とでの実測された温度分布Tcalcの差異に追随することがわかる。
ステップS6の処理では、CPU113が、回帰係数を表すベクトルw’の要素と上記の流動状態の差分ΔUとを乗じた補正項Ucorrectを定常状態での流動状態Ucalcに重ね合わせることにより、溶鋼2の補正後の流動状態Uestを算出(推定)する。ここで、定常状態での流動状態Ucalcと、外力が印加された状態での流動状態Uとは、いずれも連続した乱流モデル式を満たすことから、その差分ΔUも連続した式を満たす。したがって、定常状態での流動状態Ucalcに補正項Ucorrectを加えても質量保存の法則は満たされるため、補正後の流動状態Uestを推定できる。具体的に、CPU113は、次式(8)〜(9)により、溶鋼2の補正後の流動状態Uestを推定する。これにより、ステップS6の処理は完了し、一連の流動状態推定処理は終了する。
図19Aは、補正前の定常状態での流動状態Ucalcを例示する図である。そして、図19Bは、上記した本実施の形態の流動状態推定処理により推定された(補正後の)流動状態を例示する図である。
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態である流動状態推定処理によれば、CPU113が、物理モデルに基づいて算出された温度分布と、実測された温度分布との差分を解析することにより、物理モデルに基づいて算出された流動状態を補正する。これにより、物理モデルに基づいて算出された流動状態が質量保存の法則を満たして補正されるので、優れた物理的整合性を保持して、オンラインで鋳型4内全体の三次元での流動状態を推定できる。
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例、及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
1 連続鋳造機
2 溶鋼
3 タンディッシュ
4 鋳型
41 熱電対
5 ノズル
51 吐出口
100 流動状態推定装置
101 情報処理装置
102 入力装置
103 出力装置
111 RAM
112 ROM
112a 推定プログラム
113 CPU

Claims (5)

  1. 連続鋳造機の鋳型内の溶鋼の流動状態を推定する溶鋼の流動状態推定方法であって、
    鋳型内に設置されたセンサの位置において、該センサにより測定される物理量の分布と物理モデルにより算出される前記物理量の分布との誤差を算出する誤差算出ステップと、
    前記溶鋼を前記鋳型内に吐出するノズルの吐出口の近傍に外力を印加する外力印加ステップと、
    前記誤差を補償するように調整された前記外力が印加された状態で前記流動状態を算出する推定ステップと、
    を含むことを特徴とする溶鋼の流動状態推定方法。
  2. 前記推定ステップは、
    前記外力が印加された状態での流動状態と、前記外力が印加されていない定常状態での流動状態との差分を、前記外力による流動状態の摂動として算出する摂動算出ステップと、
    前記誤差を補償するように前記外力及び前記流動状態の摂動を調整して補正項を算出する補正項算出ステップと、
    前記定常状態での流動状態に、前記補正項を重ね合わせることにより前記流動状態を算出する流動状態算出ステップと、
    を含むことを特徴とする請求項1に記載の溶鋼の流動状態推定方法。
  3. 前記外力印加ステップは、複数の外力パターンを基底としてそれぞれの影響度に応じて組み合わされた外力を前記ノズルの吐出口の近傍に印加し、
    前記摂動算出ステップは、前記各外力パターンに対応して、前記外力が印加された状態での前記物理量の分布と前記外力が印加されていない定常状態での前記物理量の分布との差分を算出し、該差分と前記誤差とを線形回帰分析することにより、前記誤差を補償する前記各外力パターンの影響度を算出し、
    前記補正項算出ステップは、該影響度と、前記各外力パターンに対応して算出された前記外力が印加された状態での流動状態と前記外力が印加されていない定常状態での流動状態との差分とに基づいて、前記誤差を補償する補正項を算出する、
    ことを特徴とする請求項2に記載の溶鋼の流動状態推定方法。
  4. 前記センサは熱電対であり、前記物理量は該熱電対が設置された位置における溶鋼の温度であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶鋼の流動状態推定方法。
  5. 連続鋳造機の鋳型内の溶鋼の流動状態を推定する溶鋼の流動状態推定装置であって、
    鋳型内に設置されたセンサの位置において、該センサにより測定される物理量の分布と物理モデルにより算出される前記物理量の分布との誤差を算出する誤差算出手段と、
    前記溶鋼を前記鋳型内に吐出するノズルの吐出口の近傍に外力を印加する外力印加手段と、
    前記誤差を補償するように調整された前記外力が印加された状態で前記流動状態を算出する推定手段と、
    を備えることを特徴とする溶鋼の流動状態推定装置。
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