JP6428424B2 - 連続鋳造鋳型内の湯面プロフィール計測方法、装置及びプログラム、並びに連続鋳造の制御方法 - Google Patents

連続鋳造鋳型内の湯面プロフィール計測方法、装置及びプログラム、並びに連続鋳造の制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、連続鋳造鋳型(モールド)内の湯面プロフィール計測方法、装置、及びプログラム、並びに連続鋳造の制御方法に関する。
連続鋳造操業においては、安定鋳造(ブレイクアウト等の鋳造トラブルの防止)や鋳片品質確保の観点から、鋳型内の湯面レベルの検出精度の向上が極めて重要である。
近年、連続鋳造操業においては、表面品質向上の観点から電磁攪拌装置(以下、EMSともいう)が普及している。EMSにより電磁攪拌する場合、従来の浸漬ノズルの左右吐出流によって形成された短辺衝突流、及び短辺部の湯面盛り上がり(幅中央部は相対的に湯面が低くなる)という湯面レベルの分布とは異なる湯面プロフィールを呈する。具体的には、電磁攪拌により形成される旋回流は、浸漬ノズルと鋳型長辺の狭隘部で圧損を受けるため、静圧降下により、湯面が低下する場合がある。このようにEMSにより電磁攪拌する鋳型内流動は、従来の浸漬ノズルからの吐出流動のみとは異なり、複雑な流動を形成するのが一般的であり、かつこの流れに吐出流に起因した流動が重なり合い、一層複雑な流動となって湯面の形状を形成する。
一方で、溶融パウダーは、溶鋼との比重差により、溶鋼表面の低い個所に集まりやすいため、湯面の低い部位で厚く、湯面の高い部位で薄くなる。したがって、湯面高低差が大きくなると、溶融パウダー厚みが薄い部位では、パウダー流れ込み不足による潤滑不良が生じやすくなり、ブレイクアウト等の発生リスクが高くなる。
特許文献1には、鋳型壁の高さ方向に沿って等間隔に複数個の測温素子を埋設し、任意周期毎に各素子の点における温度の時間変化率値を演算し、該時間変化率の最大値を示す素子(n)を検出し、該素子(n)とその前後の素子(n−1)、(n+1)の各時間変化率値を結ぶ二次曲線の最大値を示す位置を求め、該位置を湯面レベルとする技術が開示されている。
また、特許文献2には、鋳造方向に間隔をおいて鋳型の複数箇所に埋設した温度計測手段で鋳型温度を計測し、鋳型温度計測値に基づいて各計測点における鋳型内面での熱流束を伝熱逆問題手法を用いてそれぞれ推定する技術が開示されている。
また、特許文献3には、浸漬ノズルの短辺側左右に配設され、鋳型長手方向に往復移動する一対のセンサーにより、鋳型内の溶鋼湯面レベルを連続的に測定し、湯面プロフィールを求め、求めた湯面変動の差が所定値を越えた場合に、鋳造速度を変化させる技術が開示されている。
また、特許文献4では、鋳型銅板幅方向に複数の熱電対を配置して鋳型銅板温度を測定し、各測定温度の特定の周波数成分の変動量から鋳型内幅方向各位置の湯面変動量を推定する技術が開示されている。
特開昭53−26230号公報 特開2001−239353号公報 特開平2−137655号公報 特開平11−90600号公報
しかしながら、特許文献1に代表される既存の手法は、鋳型の鋳造方向の温度が最大となる位置が湯面近傍にあり、湯面位置とある相関があるという経験則に基づくものである。このように経験則に基づく場合、湯面レベルの検出精度が低いものとなってしまう懸念がある。具体的には、鋳型に埋設された熱電対の温度変化率は溶鋼温度や湯面変化速度によって左右され、溶鋼温度が高いほど温度変化率が大きくなり、また湯面変化速度が大きいと鋳型の温度上昇の時間遅れにより湯面位置の検出遅れが大きくなるという問題がある。
特許文献2は、熱流束を伝熱逆問題を用いて推定する方法であるが、熱流束と湯面レベル、湯面プロフィール計測についての記述はない。
特許文献3では、鋳型長手方向に一対のセンサーを往復運動させて求めた湯面プロフィールを求めるため、鋳型長辺及び鋳型短辺から一定程度離れた湯面プロフィールしか計測できない。湯面位置変化によるセンサー破損回避のため、センサーと湯面は一定程度の距離を保つ必要があり、一般に測定エリアが拡大する傾向となるためである。結果、鋳型壁面にセンサーが近づきすぎると計測エリアに鋳型壁面が入り、計測誤差が出やすくなる。この結果、鋳型壁面近傍の湯面変化よりも鈍った沖合の湯面変化しか把握できず、鋳型内流動に起因した鋳型壁面近傍の局所的な湯面の盛り上がりや湯面低下を計測することができない。
特許文献4では、湯面変動量は検知可能であるが、湯面レベルは検知できず、上述した湯面高低差は把握できないため、パウダー流れ込み不足による潤滑不良等の現象が把握できない。
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、湯面位置における熱移動の影響を捉えて湯面レベルを検出することにより湯面レベルの検出精度を高め、鋳型内の湯面プロフィールの計測精度向上を図り、安定操業を実現することを目的とする。
上記課題を解決するための、本発明は以下のとおりである。
[1] 連続鋳造鋳型内の湯面プロフィール計測方法であって、
前記連続鋳造鋳型の鋳型長辺の幅方向及び/又は鋳型短辺の幅方向の複数の位置において鋳造方向に配置、埋設された複数の温度検出手段の計測値を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得した前記温度検出手段の計測値を用いて伝熱逆問題を解き、前記複数の位置での稼動面における熱流束の鋳造方向の成分値を計算する計算ステップと、
前記計算ステップで計算した前記複数の位置での稼動面における熱流束の鋳造方向の成分値に基づいて、前記複数の位置での湯面レベルを検出して、同じタイミングで前記複数の位置それぞれで検出した湯面レベルを、該タイミングでの湯面プロフィールとして計測する湯面プロフィール計測ステップとを有し、
前記湯面プロフィール計測ステップでは、前記計算ステップで計算した前記複数の位置での稼動面における熱流束の鋳造方向と逆向きとなる湯面の法線方向の成分値が最大となる位置を湯面レベルと判定することを特徴とする連続鋳造鋳型内の湯面プロフィール計測方法。
] 前記連続鋳造鋳型の一対の鋳型短辺及び一対の鋳型長辺で、複数の温度検出手段が鋳造方向に配置、埋設されていることを特徴とする[1]に記載の連続鋳造鋳型内の湯面プロフィール計測方法。
] [1]又は[2]に記載の連続鋳造鋳型内の湯面プロフィール計測方法により求めた湯面プロフィールにおける最高値と最低値の差が所定の値を超えたとき、鋳造速度を減少させることを特徴とする連続鋳造の制御方法。
] 湯面プロフィールにおける最高値と最低値の差が15mmを超えたとき、鋳造速度を10%以上減少させることを特徴とする[3]に記載の連続鋳造の制御方法。
] [1]又は[2]に記載の連続鋳造鋳型内の湯面プロフィール計測方法により求めた湯面プロフィールにおける最高値と最低値の差が所定の値を超えたとき、電磁攪拌装置の電磁攪拌推力を減少させることを特徴とする連続鋳造の制御方法。
] 湯面プロフィールにおける最高値と最低値の差が15mmを超えたとき、電磁攪拌推力を20%以上減少させることを特徴とする[5]に記載の連続鋳造の制御方法。
] 連続鋳造鋳型内の湯面プロフィール計測装置であって、
前記連続鋳造鋳型の鋳型長辺の幅方向及び/又は鋳型短辺の幅方向の複数の位置において鋳造方向に配置、埋設された複数の温度検出手段の計測値を入力する入力手段と、
前記入力手段で入力した前記温度検出手段の計測値を用いて伝熱逆問題を解き、前記複数の位置での稼動面における熱流束の鋳造方向の成分値を計算する計算手段と、
前記計算手段で計算した前記複数の位置での稼動面における熱流束の鋳造方向の成分値に基づいて、前記複数の位置での湯面レベルを検出して、同じタイミングで前記複数の位置それぞれで検出した湯面レベルを、該タイミングでの湯面プロフィールとして計測する湯面プロフィール計測手段とを備え
前記湯面プロフィール計測手段は、前記計算手段で計算した前記複数の位置での稼動面における熱流束の鋳造方向と逆向きとなる湯面の法線方向の成分値が最大となる位置を湯面レベルと判定することを特徴とする連続鋳造鋳型内の湯面プロフィール計測装置。
] 連続鋳造鋳型内の湯面プロフィールを計測するためのプログラムであって、
前記連続鋳造鋳型の鋳型長辺の幅方向及び/又は鋳型短辺の幅方向の複数の位置において鋳造方向に配置、埋設された複数の温度検出手段の計測値を入力する入力処理と、
前記入力した前記温度検出手段の計測値を用いて伝熱逆問題を解き、前記複数の位置での稼動面における熱流束の鋳造方向の成分値を計算する計算処理と、
前記計算した前記複数の位置での稼動面における熱流束の鋳造方向の成分値に基づいて、前記複数の位置での湯面レベルを検出して、同じタイミングで前記複数の位置それぞれで検出した湯面レベルを、該タイミングでの湯面プロフィールとして計測する湯面プロフィール計測処理とをコンピュータに実行させ
前記湯面プロフィール計測処理では、前記計算処理で計算した前記複数の位置での稼動面における熱流束の鋳造方向と逆向きとなる湯面の法線方向の成分値が最大となる位置を湯面レベルと判定することを特徴とするプログラム。
本発明によれば、湯面位置における熱移動の影響を捉えて湯面レベルを検出することにより湯面レベルの検出精度を高め、鋳型内の湯面プロフィールの計測精度向上を図り、安定操業を実現することができる。
第1の実施形態における連続鋳造鋳型の概要を模式的に示す図である。 電磁攪拌が湯面プロフィールに与える影響を説明するための図である。 第1の実施形態に係る連続鋳造の制御装置の機能構成を示す図である。 伝熱逆問題の座標系を示す図である。 湯面レベルの検出の概要を説明するための図である。 湯面レベルを実測するための装置構成例を示す図である。 本発明の手法で検出した湯面レベルと、既存の手法で検出した湯面レベルと、実測の湯面レベルとを示す特性図である。 第1の実施形態において制御部が実行する制御処理を示すフローチャートである。 第1の実施形態において鋳造速度を減少させた場合に制御部が実行する制御処理を示すフローチャートである。 第2の実施形態において制御部が実行する制御処理を示すフローチャートである。 第2の実施形態において電磁攪拌推力を減少させた場合に制御部が実行する制御処理を示すフローチャートである。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
[第1の実施形態]
図1に、連続鋳造鋳型(以下、単に鋳型と呼ぶ)1の概要を模式的に示す。鋳型1は、互いに対向する一対の鋳型短辺2a、2bと、互いに対向する一対の鋳型長辺3a、3bとにより構成される。鋳型1の内面を稼動面、外面を水冷面と呼ぶ。即ち、鋳型1の各面のうち、溶湯に接する面が稼動面である(ただし、潤滑パウダーを用いる場合は該潤滑パウダーを通して溶湯に接する)。
鋳型1の中央には浸漬ノズル4が配置されており、浸漬ノズル4の左右の吐出孔4a、4bから左右の鋳型短辺2a、2bへ向かって溶鋼が吐出される。符号5は、湯面を示す。なお、図1は左右一対の吐出孔4a、4bを有する例を示すが、吐出孔は左右複数対あってもよい。
鋳型1の鋳型短辺の幅方向及び/又は鋳型短辺の幅方向の複数の位置において、鋳造方向に複数の熱電対6が配置、埋設されている。本実施形態では、一対の鋳型長辺3a、3bのそれぞれ5箇所において、鋳造方向に複数の熱電対6が配置、埋設される。また、一対の鋳型短辺2a、2bのそれぞれ1箇所において、鋳造方向に複数の熱電対6が配置、埋設される。
湯面プロフィール(湯面の形状)を計測するという目的からいえば、熱電対6の列は、鋳型1の周方向に偏りなく、等間隔或いはそれに近い間隔で配置するのが好ましい。
鋳型1の周囲には、電磁攪拌装置(EMS)7が配設される。電磁攪拌装置7は、鋳型1内の磁界を回転移動させることで溶鋼に流れを作り、凝固シェル表層部に介在物が留まったまま固まらないようにする。図2の矢印8は、電磁攪拌印加域の溶鋼流動ベクトルを示す。図2に示すように、電磁攪拌により形成される旋回流は、浸漬ノズルと鋳型長辺の狭隘部で圧損を受けるため、静圧降下により湯面が低下し、流れの主流が湯面より下方にもぐりこむ流れとなる。そして、鋳型短辺2bで衝突した流れは上下に分かれ、上昇した流れは湯面で浸漬ノズル4方向に反転する流れを形成するとともに、短辺2b付近の湯面を押し上げる(図2では鋳型短辺2bに衝突した流れから上へ分かれた流のみを図示)。
図3に、第1の実施形態に係る連続鋳造の制御装置100の機能構成を示す。なお、本実施形態では、制御装置100が本発明を適用した連続鋳造鋳型内の湯面プロフィール計測装置としても機能する。
101は入力部であり、鋳型1の複数の位置において鋳造方向に配置、埋設された複数の熱電対6の計測値を入力する。本実施形態では、図1に示すように、鋳型長辺3a、3bそれぞれ5列の熱電対6の計測値、及び鋳型短辺2a、2bそれぞれ1列の熱電対6の計測値が入力される。
102は計算部であり、詳細は後述するが、入力部101で入力した熱電対6の計測値を用いて伝熱逆問題を解き、複数の位置それぞれで、稼動面における熱流束の鋳造方向のベクトル成分値、換言すれば稼動面における熱流束の湯面に垂直な方向のベクトル成分値を計算する。
103は湯面プロフィール計測部であり、複数の位置それぞれで、計算部102で計算した稼動面における熱流束の鋳造方向と逆向きとなる湯面の法線方向のベクトル成分値が最大となる位置を湯面レベルと判定して、湯面プロフィールを計測する。すなわち、同じタイミングで複数の位置それぞれで求めた湯面レベルを、該タイミングでの湯面プロフィールとするものである。この場合に、ある熱電対6の列と、それに隣り合う熱電対6の列と間では、各列で求めた湯面レベルを補間等して湯面レベルを求めるようにすればよい。
104は制御部であり、詳細は後述するが、湯面プロフィール計測部103で計測した湯面プロフィールにおける最高値と最低値の差(以下、湯面高低差とも呼ぶ)が所定の値以上となったとき、鋳造速度を減少させる。
入力部101、計算部102、湯面プロフィール計測部103、及び制御部104は、例えば一定周期で、熱電対6の計測値の入力、ベクトル成分値の計算、湯面プロフィール
の計測、及び鋳造速度の制御を実行する。
(湯面レベルの検出について)
連続鋳造操業においては、鋳型1内にパウダーを添加して、溶鋼の保温及び酸化防止、溶鋼中の介在物の吸収、凝固シェルの潤滑性の確保、抜熱の調整をする。これにより、鋳型内メニスカスでの凝固シェルを均一に生成して表面割れを防止し、鋳型と凝固シェルの焼き付きを防止する。
このように鋳型1内の湯面上にはパウダーが供給されることから、本発明では「パウダーによる抜熱の影響で湯面に垂直で上向きの熱流束値は、鋳型の他の部位と比べて最も大きくなる。」という推論に基づき、湯面レベルを検出する。
以下、鋳型1に埋設された複数の熱電対6の計測データに基づいて、稼働面の熱流束ベクトルを推定する伝熱逆問題を説明する。
温度推定のための内外挿温度関数u*を、鋳型1に埋設された複数の熱電対6の時系列
データセットに基づいて、鋳型1の鋳造方向−抜熱方向の2次元断面温度分布の時間変化を予測する数式を作成する。同式に基づいて、稼働面における熱流束ベクトル(大きさと向き)を求め、湯面レベル判定のための基本物理量とする。
図4に、伝熱逆問題の座標系を示す。空間x軸は稼働面をx=0とする抜熱方向、空間y軸は鋳型1の上端をy=0とする鋳造方向であり、これらに時間軸tを加えた時空間3次元座標を考える。
図4のプロットは、あるyにおける空間x−時間tの2次元断面図上の計算に使用する情報量の定義点を示す。x軸の熱電対位置の情報量は熱電対6の計測データを使う。一方、水冷面の位置には熱電対が無いので、水冷熱伝達係数と水温を既知として決まる熱流束値を情報量に使い、上述した熱電対位置と併せ、測温データ採取点の領域と定義する。この領域をy軸方向にある熱電対位置に拡張し、空間x−空間y−時間tの3次元測温データ採取点の領域とする。
上述した3次元測温データ採取点の領域の情報量に基づいて作成した内外挿温度関数u*(x,y,t)を使って、稼働面における熱流束ベクトルを推定する。
以下に、内外挿温度関数u*(x,y,t)を構成するための数学手続きを述べる。
式(1)の非定常熱伝導方程式を考える。ここで、aは鋳型1の熱拡散係数の平方根の物理量である。位置座標x,yは[0,1]で規格化した。
Figure 0006428424
冷却面の境界条件を式(2)で表す。ここで、g(t)=uwγとし、水温uwと熱伝達係数γの積として定義した。βは鋳型1の熱伝導率である。
Figure 0006428424
鋳型1の熱電対温度情報を式(3)で記述する。x*,y*は熱電対位置を表し、[0,
1]で規格化している。
Figure 0006428424
内外挿温度関数u*(x,y,t)は後述する基底関数φを使い、式(4)で記述する。
Figure 0006428424
係数λjは、行列方程式(5)を解いて決定する。ここで、Aは(m+l)×(m+l
)行列、bは(m+l)ベクトルである。xk,xs,tk,tsは上述の測温データ採取点の領域にある情報量の定義点である。一方、xj,tjは中心点と呼ばれる時空間座標上での基準点の座標であり、通常は、情報量の定義点と同一点を採用しておけばよい。
Figure 0006428424
次に、基底関数φを、式(1)式を満足する基本解の形式を使い、式(6)、(7)のように定義する。
Figure 0006428424
ここで、Tは基本解の拡散プロフィールを調整するパラメータであり、H(t)はヘビサイド関数である。稼働面における熱流束のy方向成分qyは、式(8)で計算することが
できる。kは鋳型材料の熱伝導率である。
Figure 0006428424
実機において、本発明の手法で湯面レベルを検出し、既存の手法で検出した湯面レベル及び実測の湯面レベルと比較した。この比較においては、鋳型短辺の鋳造方向に複数の熱
電対6を配置、埋設している。
本発明の手法では、図5(c)、(d)に示すように、稼動面における熱流束の鋳造方向のベクトル成分値を計算し、それが最大となる位置を湯面レベルと判定する。図5(c)には、鋳型1内の温度分布(ドットが濃いほど高温であることを示す)と、稼動面における熱流束とを示す。図5(d)には、稼動面における熱流束の鋳造方向のベクトル成分値を示す。
一方、既存の手法では、図5(b)に示すように、鋳型1内の温度分布を計算し、経験則に基づいて、最高温度×0.65となる位置を湯面レベルと判定する。
また、図6に示すように、湯面にフロート501を浮かべ、フロート501にロッド502を設けている。また、オッシレーション測定治具503を設定している。そして、ロッド502の先端、オッシレーション測定金物先端の動きをビデオカメラ504で撮影し、画像処理により垂直方向の変位をデジタル化し記録することにより、湯面レベルを実測した。
図7に、本発明の手法で検出した湯面レベルと、既存の手法で検出した湯面レベルと、実測の湯面レベルとを示す。横軸は時間を、縦軸は湯面レベルを示す。
既存の手法では、実測の湯面レベルが高くなると検出精度が極端に低下し、実測値に追従できなくなっている。
それに対して、本発明の手法では、広範囲に亘り実測値を追従できているのがわかる。湯面レベルの実測精度が5−10mm程度のバラツキがあることを勘案すると、本発明の手法により検出した湯面レベルは実測の湯面レベルと良い対応関係にあるといえる。
以上述べたように、パウダーによる抜熱という湯面位置における熱移動の影響を捉えて湯面レベルを検出するので、湯面レベルの検出精度を高めることができる。
(制御部104の処理について)
図8に、制御部104が実行する制御処理を示す。
ステップS801で、制御部104は、湯面プロフィール計測部103から湯面プロフィールを取得する。
ステップS802で、制御部104は、ステップS801で取得した湯面プロフィールにおける最高値と最低値の差が所定の値、本例では15mmを超えているか否かを判定する。15mmを超えていれば、湯面高低差を解消する必要があるとして、ステップS803に進む。15mm以下であれば、本処理を抜ける。
ステップS803で、制御部104は、鋳造速度を減少させる。本実施形態では、鋳造速度を、現在の鋳造速度よりも10%以上減少させる。鋳造速度を減少させることにより、湯面高低差を解消することができる。
図9は、図8のステップS803で鋳造速度を減少させた場合に制御部104が実行する制御処理を示す。
ステップS901で、制御部104は、湯面プロフィール計測部103から湯面プロフィールを取得する。
ステップS902で、制御部104は、ステップS901で取得した湯面プロフィールにおける最高値と最低値の差が所定の値、本例では15mm以下であるか否かを判定する。15mm以下であれば、湯面高低差は解消されたとして、ステップS903に進む。15mmを超えていれば、湯面高低差が発生しているとして、本処理を抜ける。
ステップS903で、制御部104は、現在の鋳造速度を、ステップS803で減少させる前の鋳造速度に復帰させる。
ここで、本実施形態では、湯面高低差の閾値を15mm、鋳造速度の減少率を10%以上としたが、これは実績から得られた知見に基づくものである。
表1に、湯面高低差とブレイクアウト警報発生率を示す。ブレイクアウト警報発生率は、350Tの溶鋼量あたりの発生回数と定義する。縦軸は湯面高低差を、横軸は鋳造速度を示す。ここでは、ブレイクアウト警報発生率が1.0%を超える範囲が、許容できない範囲であるとする(図中の白抜きの範囲)。鋳造条件は、鋳造厚:250mm、鋳造幅:1250mm、モールド上端〜湯面位置:100mm、鋼種:低炭AL−K鋼、電磁攪拌:印加(100mmFe)である。なお、−で示される範囲は、該鋳造条件下において、該鋳造速度では湯面変動が生じなかったことを示す。
通常時の鋳造速度が1.20mpmであるとする。鋳造速度が1.20mpmの場合、湯面高低差が15mmを超えると、ブレイクアウト警報発生率が許容できない範囲となる。この場合に、鋳造速度を1.08mpmに減少させると(10.0%の減少)、ブレイクアウト警報発生率は許容範囲に収まることがわかる。このことから、鋳造速度を10%以上減少させるのが好ましいことがわかる。
また、湯面高低差が20mmを超えた場合、鋳造速度を1.08mpmに減少させても(10.0%の減少)、ブレイクアウト警報発生率が許容できない範囲のままであり、鋳造速度を0.96mpmに減少させると(20.0%の減少)、ブレイクアウト警報発生率は許容範囲に収まることがわかる。このことから、図8で説明した制御と並列的に、湯面高低差が20mmを超えたとき、鋳造速度を20%以上減少させるという制御を行うようにしてもよい。
Figure 0006428424
以上述べたように、湯面位置における熱移動の影響を捉えて湯面レベルを検出することにより湯面レベルの検出精度を高め、鋳型内の湯面プロフィールの計測精度向上を図り、安定操業を実現することができる。
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、第1の実施形態とは制御部104の処理を変更した例である。以下では、第1の実施形態との共通点の説明は省略し、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
(制御部104の処理について)
図10に、制御部104が実行する制御処理を示す。
ステップS1001で、制御部104は、湯面プロフィール計測部103から湯面プロフィールを取得する。
ステップS1002で、制御部104は、ステップS1001で取得した湯面プロフィールにおける最高値と最低値の差が所定の値、本例では15mmを超えているか否かを判定する。15mmを超えていれば、湯面高低差を解消する必要があるとして、ステップS1003に進む。15mm以下であれば、本処理を抜ける。
ステップS1003で、制御部104は、電磁攪拌装置7の電磁攪拌推力を減少させる。本実施形態では、電磁攪拌推力を、現在の電磁攪拌推力よりも20%以上減少させる。電磁攪拌推力を減少させることにより、湯面高低差を解消することができる。
図11は、図10のステップS1003で電磁攪拌推力を減少させた場合に制御部104が実行する制御処理を示す。
ステップS1101で、制御部104は、湯面プロフィール計測部103から湯面プロフィールを取得する。
ステップS1102で、制御部104は、ステップS1101で取得した湯面プロフィールにおける最高値と最低値の差が所定の値、本例では15mm以下であるか否かを判定する。15mm以下であれば、湯面高低差は解消されたとして、ステップS1103に進む。15mmを超えていれば、湯面高低差が発生しているとして、本処理を抜ける。
ステップS1103で、制御部104は、現在の電磁攪拌推力を、ステップS1003で減少させる前の電磁攪拌推力に復帰させる。
ここで、本実施形態では、湯面高低差の閾値を15mm、電磁攪拌推力の減少率を20%以上としたが、これは実績から得られた知見に基づくものである。
表2に、湯面高低差とブレイクアウト警報発生率を示す。ブレイクアウト警報発生率は、350Tの溶鋼量あたりの発生回数と定義する。縦軸は湯面高低差を、横軸は電磁攪拌推力を示す。ここでは、ブレイクアウト警報発生率が1.0%を超える範囲が、許容できない範囲であるとする(図中の白抜きの範囲)。鋳造条件は、鋳造厚:250mm、鋳造幅:1250mm、モールド上端〜湯面位置:100mm、鋳造速度:1.20mpm、鋼種:低炭AL−K鋼である。なお、−で示される範囲は、該鋳造条件下において、該電磁攪拌推力では湯面変動が生じなかったことを示す。
通常時の電磁攪拌推力が100mmFeであるとする。電磁攪拌推力が100mmFeの場合、湯面高低差が15mmを超えると、ブレイクアウト警報発生率が許容できない範囲となる。この場合に、電磁攪拌推力を80mmFeに減少させると(20%の減少)、ブレイクアウト警報発生率は許容範囲に収まることがわかる。このことから、電磁攪拌推力を20%以上減少させるのが好ましいことがわかる。
また、湯面高低差が20mmを超えた場合、電磁攪拌推力を80mmFeに減少させても(20%の減少)、ブレイクアウト警報発生率が許容できない範囲のままであり、電磁攪拌推力を60mmFeに減少させると(40%の減少)、ブレイクアウト警報発生率は許容範囲に収まることがわかる。このことから、図10で説明した制御と並列的に、湯面高低差が20mmを超えたとき、電磁攪拌推力を40%以上減少させるという制御を行うようにしてもよい。
Figure 0006428424
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、発明の範囲内で変更等が可能である。
本発明を適用した連続鋳造鋳型内の湯面プロフィール計測装置は、例えばCPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータ装置により実現することが可能である。
また、本発明は、連続鋳造鋳型内の湯面プロフィール計測機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。
1:連続鋳造鋳型、2a、2b:鋳型短辺、3a、3b:鋳型長辺、4:浸漬ノズル、5:湯面、6:熱電対、7:電磁攪拌装置、100:連続鋳造の制御装置、101:入力部、102:計算部、103:湯面プロフィール計測部、104:制御部

Claims (8)

  1. 連続鋳造鋳型内の湯面プロフィール計測方法であって、
    前記連続鋳造鋳型の鋳型長辺の幅方向及び/又は鋳型短辺の幅方向の複数の位置において鋳造方向に配置、埋設された複数の温度検出手段の計測値を取得する取得ステップと、
    前記取得ステップで取得した前記温度検出手段の計測値を用いて伝熱逆問題を解き、前記複数の位置での稼動面における熱流束の鋳造方向の成分値を計算する計算ステップと、
    前記計算ステップで計算した前記複数の位置での稼動面における熱流束の鋳造方向の成分値に基づいて、前記複数の位置での湯面レベルを検出して、同じタイミングで前記複数の位置それぞれで検出した湯面レベルを、該タイミングでの湯面プロフィールとして計測する湯面プロフィール計測ステップとを有し、
    前記湯面プロフィール計測ステップでは、前記計算ステップで計算した前記複数の位置での稼動面における熱流束の鋳造方向と逆向きとなる湯面の法線方向の成分値が最大となる位置を湯面レベルと判定することを特徴とする連続鋳造鋳型内の湯面プロフィール計測方法。
  2. 前記連続鋳造鋳型の一対の鋳型短辺及び一対の鋳型長辺で、複数の温度検出手段が鋳造方向に配置、埋設されていることを特徴とする請求項に記載の連続鋳造鋳型内の湯面プロフィール計測方法。
  3. 請求項1又は2に記載の連続鋳造鋳型内の湯面プロフィール計測方法により求めた湯面プロフィールにおける最高値と最低値の差が所定の値を超えたとき、鋳造速度を減少させることを特徴とする連続鋳造の制御方法。
  4. 湯面プロフィールにおける最高値と最低値の差が15mmを超えたとき、鋳造速度を10%以上減少させることを特徴とする請求項に記載の連続鋳造の制御方法。
  5. 請求項1又は2に記載の連続鋳造鋳型内の湯面プロフィール計測方法により求めた湯面プロフィールにおける最高値と最低値の差が所定の値を超えたとき、電磁攪拌装置の電磁攪拌推力を減少させることを特徴とする連続鋳造の制御方法。
  6. 湯面プロフィールにおける最高値と最低値の差が15mmを超えたとき、電磁攪拌推力を20%以上減少させることを特徴とする請求項に記載の連続鋳造の制御方法。
  7. 連続鋳造鋳型内の湯面プロフィール計測装置であって、
    前記連続鋳造鋳型の鋳型長辺の幅方向及び/又は鋳型短辺の幅方向の複数の位置において鋳造方向に配置、埋設された複数の温度検出手段の計測値を入力する入力手段と、
    前記入力手段で入力した前記温度検出手段の計測値を用いて伝熱逆問題を解き、前記複数の位置での稼動面における熱流束の鋳造方向の成分値を計算する計算手段と、
    前記計算手段で計算した前記複数の位置での稼動面における熱流束の鋳造方向の成分値に基づいて、前記複数の位置での湯面レベルを検出して、同じタイミングで前記複数の位置それぞれで検出した湯面レベルを、該タイミングでの湯面プロフィールとして計測する湯面プロフィール計測手段とを備え
    前記湯面プロフィール計測手段は、前記計算手段で計算した前記複数の位置での稼動面における熱流束の鋳造方向と逆向きとなる湯面の法線方向の成分値が最大となる位置を湯面レベルと判定することを特徴とする連続鋳造鋳型内の湯面プロフィール計測装置。
  8. 連続鋳造鋳型内の湯面プロフィールを計測するためのプログラムであって、
    前記連続鋳造鋳型の鋳型長辺の幅方向及び/又は鋳型短辺の幅方向の複数の位置において鋳造方向に配置、埋設された複数の温度検出手段の計測値を入力する入力処理と、
    前記入力した前記温度検出手段の計測値を用いて伝熱逆問題を解き、前記複数の位置での稼動面における熱流束の鋳造方向の成分値を計算する計算処理と、
    前記計算した前記複数の位置での稼動面における熱流束の鋳造方向の成分値に基づいて、前記複数の位置での湯面レベルを検出して、同じタイミングで前記複数の位置それぞれで検出した湯面レベルを、該タイミングでの湯面プロフィールとして計測する湯面プロフィール計測処理とをコンピュータに実行させ
    前記湯面プロフィール計測処理では、前記計算処理で計算した前記複数の位置での稼動面における熱流束の鋳造方向と逆向きとなる湯面の法線方向の成分値が最大となる位置を湯面レベルと判定することを特徴とするプログラム。
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