JP4681127B2 - 湯面高さ検知装置、方法、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体 - Google Patents

湯面高さ検知装置、方法、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種溶解炉や連続鋳造機等における湯面高さを経時的に検知する湯面高さ検知装置、方法、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶湯の湯面高さを検知する技術については、いくつかの技術が提案されている。例えば、特開平6−229812号公報には、導電性セラミックス等の検知棒を湯面に接触させて、電気の通電の有無から湯面位置を検知する手法が紹介されている。この手法は、低融点金属に対しては実用的であるが、鋼等の高融点金属に対しては、セラミックスの耐食性と導電性とを両立させるのは難しく、侵食破損が起きやすくなってしまう問題がある。
【0003】
また、電磁誘導を利用した渦流センサ、γ線を用いた透過型湯面センサ等、非接触式の湯面検知装置も知られている。これらの手法も非常に有用ではあるが、液体金属の湯面を扱うような高温場対応のセンサとなると、その耐久性に特別な配慮をせざるを得ず、大変高価なものとなってしまう問題がある。
【0004】
一方、古くから経験的に実施されてきた手法としては、溶融金属の容器壁内に熱電対を湯面の高さ方向に並べて埋設しておき、その温度変化から定性的に湯面位置を「推定」する手法が知られている。例えば、連続鋳造機では、溶融金属冷却面である銅版可動面の背面に熱電対が埋め込まれており、その経時変化データから経験的に湯面位置変動を推定している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように容器壁に埋設した熱電対を利用する手法においては、理論的に湯面高さを決めているのではなく、例えば、上下2つの熱電対の温度が上がった(下がった)場合、その相対上昇値(相対下降値)に応じた湯面高さの上昇分(下降分)を予め決めておき、そのような修正を各時間で繰り返して湯面高さを推定するといった、非常に経験的なものであった。
【0006】
さらに、この手法では、湯面位置変動が起こってから、熱電対にその情報が伝わるまでの「遅れ時間」を理論的に、きちんと考慮することが難しいといった問題もあった。
【0007】
本発明は前記のような点に鑑みてなされたものであり、容器の側面内に埋設した複数の温度検出手段を用いて、その計測温度から熱流束分布を捉え、前記熱流束分布から湯面高さを算出することにより、湯面高さをできるだけ正確に検知できるようにすることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の湯面高さ検知装置は、上下方向に配列して容器の側の内部に埋設された複数の温度検出手段を用いて、前記容器内の流体の湯面高さを検知する湯面高さ検知装置であって、前記温度検出手段で計測した温度の変化を表現する熱流束分布を、非定常二次元熱伝導方程式で逆問題解析を行うことにより算出する熱流束分布算出手段と、前記熱流束分布から湯面高さを算出する湯面高さ算出手段とを備え、前記熱流束分布算出手段において、前記側壁の湯面側側面と、前記側壁の外面と、前記側壁の上端部と、前記側壁の下端部とにより囲まれた領域について、前記外面を複数に分割しそれぞれの分割での熱流束を既知として与えて、逆問題解析を行い、前記湯面側側面における熱流束分布を算出する点に特徴を有する。
【0009】
また、本発明の湯面高さ検知装置の他の特徴とするところは、前記湯面高さ算出手段は、前記側壁の湯面側側面における最大熱流束と最小熱流束との中間の熱流束となる位置を湯面高さとして算出する点にある。
【0010】
また、本発明の湯面高さ検知装置の他の特徴とするところは、前記湯面高さ算出手段は、前記側壁の湯面側側面における前記熱流束分布を所定の分割数で分割して表現する点にある。
【0011】
また、本発明の湯面高さ検知装置の他の特徴とするところは、前記側壁の湯面側側面における前記熱流束分布を二分割で表現する点にある。
【0012】
また、本発明の湯面高さ検知装置の他の特徴とするところは、湯面より下の流体側の熱流束規定値を予め規定し、前記熱伝導方程式モデルにより算出した熱流束の最大値が、前記熱流束規定値から一定の偏差の範囲にあるように前記側壁の湯面側側面における前記熱流束分布の分割位置を決める点にある。
【0013】
また、本発明の湯面高さ検知装置の他の特徴とするところは、湯面より上の気体側の熱流束規定値を予め規定し、前記熱伝導方程式モデルにより算出した熱流束の最小値が、前記熱流束規定値から一定の偏差の範囲にあるように前記側壁の湯面側側面における前記熱流束分布の分割位置を決める点にある。
【0014】
また、本発明の湯面高さ検知装置の他の特徴とするところは、最大の熱流束規定値と最小の熱流束規定値とを予め規定し、前記熱伝導方程式モデルにより算出した最大の熱流束及び前記最大の熱流束規定値の偏差の二乗と、前記熱伝導方程式モデルにより算出した最小の熱流束及び前記最小の熱流束規定値の偏差の二乗との和が最小となるように前記側壁の湯面側側面における前記熱流束の分割位置を決める点にある。
【0015】
また、本発明の湯面高さ検知装置の他の特徴とするところは、上下方向に配列して容器の側の内部に埋設された複数の温度検出手段の列は、前記容器の周囲方向に複数列配置されている点にある。
【0016】
本発明の湯面高さ検知方法は、上下方向に配列して容器の側の内部に埋設された複数の温度検出手段を用いて、前記容器内の流体の湯面高さを検知する湯面高さ検知方法であって、前記温度検出手段で計測した温度の変化を表現する熱流束分布を、非定常二次元熱伝導方程式で逆問題解析を行うことにより算出する熱流束分布算出処理と、前記算出された熱流束分布から湯面高さを算出する湯面高さ算出処理とを行い、前記熱流束分布算出処理において、前記側壁の湯面側側面と、前記側壁の外面と、前記側壁の上端部と、前記側壁の下端部とにより囲まれた領域について、前記外面を複数に分割しそれぞれの分割での熱流束を既知として与えて、逆問題解析を行い、前記湯面側側面における熱流束分布を算出する点に特徴を有する。
【0017】
本発明のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、上記湯面高さ検知装置の各算出手段としてコンピュータを機能させるためのプログラムを格納した点に特徴を有する。
【0018】
本発明の別のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、上記湯面高さ検知方法の各算出処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを格納した点に特徴を有する。
【0019】
上記のようにした本発明においては、容器の側面の内部に埋設された熱電対等の温度検出手段での計測温度を用いて、熱伝導方程式モデルにより、前記温度検出手段での計測温度の変化を表現する熱流束分布を算出する。温度検出手段の位置での温度変化は熱流束に応じて変化するものであり、熱流束分布から湯面高さを検知することにより、温度検出手段に情報が伝わるまでの「遅れ時間」等を考慮することができ、より正確に湯面高さを検知することが可能となる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の湯面高さ検知装置、方法、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体の実施の形態について説明する。
【0021】
図1には、連続鋳造設備で用いられるタンディッシュ1の壁(側面)内部に複数の熱電対2を埋設させた例を示す。タンディッシュ1は、図示しないレードルから溶鋼を受け、その溶鋼をモールドへと送り込むためのものである。複数の熱電対2は、タンディッシュ1の壁内部で、湯面高さ方向(上下方向)に適当な間隔をおいて配列させられている。
【0022】
上記熱電対2で計測された温度情報は、本実施の形態において湯面高さ検知装置として機能するデータ処理装置3に伝えられる。データ処理装置3は、熱流束分布算出部3aと、湯面高さ算出部3bとを備えており、以下に説明するようにしてタンディッシュ1内溶鋼の湯面高さを検知する。
【0023】
本実施の形態における湯面高さの検知手法の概要について説明すると、従来は、熱電対で計測された温度そのものから湯面高さを推定していたのに対して、本実施の形態では、熱電対2で計測された温度情報に基づいて、熱伝導方程式モデルを用いてタンディッシュ1の壁内面での熱流束分布を捉え、この熱流束分布に基づいて湯面高さを算出しようとするものである。
【0024】
すなわち、熱流束分布算出部3aでは、熱電対2で計測された温度に基づいて、逆問題解析を行うことにより熱流束分布を算出する。図2に示すように、熱流束分布(qi)や熱伝達率等の境界条件を与え、壁内部の温度分布(Ti)の変化を求めるのが順問題である。それに対して、壁内部の温度分布(Ti)の変化があり、それを使って境界条件である熱流束分布(qi)を求めるのが逆問題である。本実施の形態では、非定常二次元熱伝導方程式(下記の数1を参照)を対象として、熱電対2により計測された温度分布から熱流束分布を求める。なお、物性値は、一定値であることを仮定する。
【0025】
【数1】
Figure 0004681127
【0026】
湯面高さ算出部3bでは、熱流束分布算出部3aにより算出された熱流束分布から湯面高さを算出する。図3(A)に示すようにタンディッシュ1の壁内面のうち、溶鋼に触れる部分と空気層に触れる部分とでは、図3(B)に示すように、熱流束が極端に変わる。したがって、湯面高さXと熱流束qとの関係を捉えると、溶鋼部分と空気層部分との境界部分、すなわち湯面高さで、熱流束分布は極端に変化する。そこで、ある熱電対2で計測された温度に基づいて、該熱電対2の計測温度の変化を最もよく表現する熱流束分布を求め、最大熱流束と最小熱流束との中間の熱流束となる位置を湯面高さ位置とする。
【0027】
ただ、熱流束分布を正確に求めるのでは処理に時間がかかってしまい、また、湯面高さを検知するという点からいえば、極端に変化する熱流束分布を正確に求めてもさほど意味がない。そこで、図3(C)に示すように、熱流束の高いものと低いものとに二分割して表現し、この二分割の熱流束分布からある熱電対で計測される温度変化を最もよく表現する熱流束分布を決めてやる。すなわち、分割位置を変えていき、どの分割位置において、温度変化を最もよく表現する熱流束分布が表現されるかを解析し、その最適な分割位置を湯面高さ位置とする。
【0028】
ここで、非定常熱伝導方程式の逆問題定式化の一例について説明する。下記の数2に示すように、未来時間の熱流束の関数形を仮定して、複数未来点データを用いて、最小二乗近似を行う。式(2)では、ある熱電対で計測された温度Yと、熱流束の仮定値から熱伝導方程式モデルにより算出された温度Tとの間の二乗が最小となるように最適化を行う。式(3)では、温度測定誤差があっても解が安定するように空間方向の正則化を行う。
【0029】
【数2】
Figure 0004681127
【0030】
式(1)を目的関数として、下記の数3に示すように、未知である熱流束分割領域に対して極小点を探す。
【0031】
【数3】
Figure 0004681127
【0032】
ここで、下記の数4に示すように、解を安定させる目的で、各時間ステップの熱流束値が、一定の未来時間まで不変であると仮定する。
【0033】
【数4】
Figure 0004681127
【0034】
そして、上記式(4)の極小化を、上記式(5)の仮定を用いて展開すると、下記の数5に示すように、マトリクス形に展開することができる。
【0035】
【数5】
Figure 0004681127
【0036】
上記式(6)式は、温度変化を起こした熱流束というのがどのくらい変わったのか推定する式であり、各時間ステップにおいて、この式を使って各熱流束分割領域での熱流束を修正し、その経時変化を求めていく。このときに、熱伝導方程式モデルを使った順問題解析により温度分布を計算して、求めた熱流束qが妥当かどうかを調整し、次の時間ステップでの温度参照値T*とする。
【0037】
以下、図4のフローチャートを参照して、本実施の形態における湯面高さ検知処理を説明する。ここでは、熱流束分布を二分割して表現する場合の例を述べる。
【0038】
まず、適当な初期温度分布を与え(ステップS401)、湯面位置を仮定する(ステップS402)。
【0039】
仮湯面位置が決まると、ある熱電対2で計測された温度変化を用いて、逆問題解析により、その仮湯面位置での最大・最小の熱流束qL predict、qU predictを算出する(ステップS403)
【0040】
次に、仮湯面位置を変えてやり(ステップS404)、ステップS403の算出処理を行う。この仮湯面位置の変更は、例えば上下に少なくとも1回づつ変えてやる。そして、ステップS403において算出された結果について、予め実験等を参考にして先験的に規定した最大・最小熱流束qL given、qU givenとの間で下記の数6に示す式を満たすqL predict、qU predictとなった湯面位置を、実際の湯面高さとして決定する(ステップS405)。
【0041】
【数6】
Figure 0004681127
【0042】
その後、次の時間ステップt=t+Δtにおいても上記同様の処理を行い、湯面高さを決定する(ステップS406)。
【0043】
上記数5を用いて、各時間ステップで熱流束を補正するが、この式だけでは修正が不十分となり、推定した熱流束の精度が悪くなる場合がある。この場合に、逆問題解析(式(6))に並行して、順問題熱伝導方程式モデルを計算して、qL predict、qU predictの更なる補正を施すと解が安定する。この場合、求めたqL predict、qU predictを参考にして、順問題の境界条件が定められるので、壁面内の温度分布がより正確に決定される。
【0044】
このとき、逆問題での熱流束分布が二分割でも、順問題熱伝導方程式モデルの分割数は、より細かくとることが望ましい。例えば、計測すべき湯面高さ変動が1mmの場合、順問題での分割数は、それ以下にすべきであろう。これにより、1mm単位で逆問題の熱流束分割位置を変更することができ、qL predict、qU predictをより細かい範囲で変更可能となり、上記数6の精度も向上する。
【0045】
以上述べた本実施の形態によれば、タンディッシュ1の壁内に埋設された熱電対2を用いるので、湯面に接触させるセンサ等に比べて、コストをかけずに湯面高さを検知することができる。しかも、熱電対2での計測温度そのものを用いるのではなく、タンディッシュ1の壁内面での熱流束分布を捉えて湯面高さを算出するので、時間遅れ等を考慮することができ、より正確に湯面高さを検知することができる。さらに、熱流束分布を分割して表現することにより、熱流束分布を求めるための処理時間を短縮化させることができる。
【0046】
なお、上記実施の形態では、熱流束分布を二分割して表現した例を説明したが、分割数を変えてもよい。分割数としては、熱電対の数と同じ、あるいは、それ以下の分割数とするのが望ましい。
【0047】
また、上記実施の形態では、分割位置を決めるのに、図3のフローチャートに示す処理を行ったが、他の処理を行ってもよい。例えば、湯面より下の溶鋼側の熱流束規定値qL givenを予め規定し、熱伝導方程式モデルにより算出した熱流束の最大値qL predictが、熱流束規定値qL givenから一定の偏差の範囲にあるように前記熱流束分布の分割位置を決めてもよい。或いは、湯面より上の気体側の熱流束規定値qU givenを予め規定し、熱伝導方程式モデルにより算出した熱流束の最小値qU predictが、熱流束規定値qU givenから一定の偏差の範囲にあるように前記熱流束分布の分割位置を決めてもよい。
【0048】
なお、上記実施の形態ではタンディッシュ1を例に説明したが、本発明は、容器内の流体の湯面位置を検出するものであれば、他のものに適用してもかまわない。例えば、図5に示す例では、連続鋳造設備で用いられるモールド4の銅板内部に複数の熱電対2を埋設させて、溶鋼の湯面高さを検知するようにしている。また、高炉等の側壁耐火物に埋め込まれた熱電対から、湯留りの在銑高さを検知することにも利用できる。
【0049】
さらに、上記に並べた複数の熱電対を一列として、これを容器の周囲方向に複数列並べることで、湯面高さの容器内分布を求めることができる。例えば、溶融金属に電磁力を与える等して、容器内に不均一な流れが生じたり、融金属等の局所的な盛り上がりが生じたりする場合も考えられる。このような場合でも、熱電対の列を容器の周囲方向に複数列配置することで、湯面高さの分布を計測することが可能となる。
【0050】
(他の実施の形態)
なお、本発明の湯面高さ検知装置は、複数の機器から構成されるものであっても、1つの機器から構成されるものであってもよい。
【0051】
また、上前述した実施の形態は、コンピュータのCPU或いはMPU、RAM、ROM等で構成されるものであり、RAMやROMに記録されたプログラムが動作することで実現される。したがって、前記実施の形態の機能を実現するためのソフトウェアのプログラムコードをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムコードを格納した記憶媒体は本発明の範疇に含まれる。
【0052】
【実施例】
実際の連続鋳造機モールド内の鋼浴の湯面位置の経時変動を、本発明による湯面高さ検知装置(以下、本発明装置と称する)により推定した結果の一例を示す。ある熱電対の温度経時変化データを用いて、逆問題解法により2つの熱流束で表現した場合の計算結果である。
【0053】
図6に、モデルの概略を示している。厚さ8mmの銅板をモールド可動面とし、実際の操業では、7〜8ヘルツの周期で上下運動させている。シース熱電対4本TC1〜TC4(×で図示)が、銅板の湯面側側面から4mm深さ位置まで挿入されており、最上部熱電対は銅板上端部より60mmの位置にあり、その他の3本は、それぞれ下方に向かって20mmピッチで並べられている。実際の装置では、銅板の下端部は更に下まで繋がっているが、本モデルでは、上部から160mmを抜き出してモデル化している。
【0054】
図6には明示していないが、熱伝導方程式モデル(順問題)の解法として、有限要素法を用いており、この場合の分割数は、高さ方向40分割(1メッシュ4mm)、厚み方向2分割とした。
【0055】
逆問題解法で湯面位置を設定する場合も、この4mmメッシュを1単位とする。すなわち、図6の熱流束qL predict、qU predictの境界は、4mmずつずらしながら、上記数6を満たす位置を探索した。
【0056】
銅板背面側は、既知の水冷条件と仮定し、h=30000W/m2℃の熱伝達係数と、水温Ta=25℃を与える。さらに各時間ステップで順問題から求めた銅板の背面表面温度Tsを使って、図示するように、8分割(この場合、逆問題1分割は、順問題の5分割に相当)として平均化し、q=h(Ta−Ts)により、それぞれの分割での熱流束qを既知として与えている。すなわち、上記数5において、これらの分割でのΔqは既知とする。
【0057】
同様にして、上端部は、自然放冷条件として、20W/m2℃の熱伝達係数と、空気温度30℃から決まる熱流束qであり、下端部は断熱条件で、それぞれ既知とした。また、熱流束qL given、qU givenの先見値は、それぞれ500kW/m2、4000kW/m2とした。
【0058】
上記数1の熱伝導方程式モデルの銅板の熱物性値は、比重ρ=8960kg/m3、比熱Cp=0.40kJ/kg℃、熱伝導度κ=380W/m℃の一定値を仮定した。銅板内の計算初期温度は、30℃均一とした。
【0059】
図7には、4本の熱電対の測定温度経時データを示す。銅板下部の熱電対ほど温度が高く、それぞれ、図6のTC1〜TC4に対応させて図示している。これらの値を使って湯面位置を推定した結果を図8に示す。同図において、実線は本発明装置による結果であり、破線は従来の方式(熱電対の温度差から簡易的に推定した)結果である。
【0060】
縦軸の湯面位置の値は、図6の下端部を原点としている。この例では、本発の装置での湯面変動1メッシュが4mmと、比較的大きめに設定したので、ステップ状の変化になっている。
【0061】
両者の結果は、一部の傾向が一致しているが、完全な相関関係にはない。この結果とは別に、渦流センサを用いて、浴中央部での浴面変動を調べたが、本発明の推定結果の傾向と良好な相関関係にあり、本発明の方がより正確な湯面位置を推定しているものと推察された。
【0062】
本発明では、熱伝導方程式モデルという物理モデルを介しているので、湯面が上下したことによる温度変動と、熱流束qU又はqL一方の熱流束のみが変動したことによる温度変動を明確に区別でき、熱電対の温度データから直接に湯面位置を推定する従来方式に比べて、予測精度が高くなったと考える。一方、従来方式では、両者の変動を明確に区別できないので、実際の湯面変動よりも非常に鈍った推定値になっている。
【0063】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、容器の側面内に埋設された熱電対等の温度検出手段を用いるので、容器内の流体が非常に高温となるような場合に、湯面に接触させるセンサ等に比べてコストをかけずに湯面高さを検知することができる。しかも、温度検出手段での計測温度そのものを用いるのではなく、熱流束分布を捉えて湯面高さを算出するようにしたので、時間遅れ等を理論的にきちんと考慮して湯面高さを算出することができ、熱伝導方程式モデルという物理モデルを介しているので、より正確に湯面高さを検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】タンディッシュを対象とした湯面高さ検知装置の構成を示す図である。
【図2】逆問題の考え方を説明するための図である。
【図3】熱流束分布について説明するための図である。
【図4】湯面高さ検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】モールドに適用した例を示す図である。
【図6】実施例におけるモデルの概略を示す図である。
【図7】4本の熱電対の測定温度経時データを示す図である。
【図8】湯面位置を推定した結果を示す図である。
【符号の説明】
1 タンディッシュ
2 熱電対
3 データ処理装置
3a 熱流束分布算出部
3b 湯面高さ算出部
4 モールド

Claims (11)

  1. 上下方向に配列して容器の側の内部に埋設された複数の温度検出手段を用いて、前記容器内の流体の湯面高さを検知する湯面高さ検知装置であって、
    前記温度検出手段で計測した温度の変化を表現する熱流束分布を、非定常二次元熱伝導方程式で逆問題解析を行うことにより算出する熱流束分布算出手段と、
    前記熱流束分布から湯面高さを算出する湯面高さ算出手段とを備え
    前記熱流束分布算出手段において、前記側壁の湯面側側面と、前記側壁の外面と、前記側壁の上端部と、前記側壁の下端部とにより囲まれた領域について、前記外面を複数に分割しそれぞれの分割での熱流束を既知として与えて、逆問題解析を行い、前記湯面側側面における熱流束分布を算出することを特徴とする湯面高さ検知装置。
  2. 前記湯面高さ算出手段は、前記側壁の湯面側側面における最大熱流束と最小熱流束との中間の熱流束となる位置を湯面高さとして算出することを特徴とする請求項1に記載の湯面高さ検知装置。
  3. 前記湯面高さ算出手段は、前記側壁の湯面側側面における前記熱流束分布を所定の分割数で分割して表現することを特徴とする請求項1に記載の湯面高さ検知装置。
  4. 前記側壁の湯面側側面における前記熱流束分布を二分割で表現することを特徴とする請求項3に記載の湯面高さ検知装置。
  5. 湯面より下の流体側の熱流束規定値を予め規定し、前記熱伝導方程式モデルにより算出した熱流束の最大値が、前記熱流束規定値から一定の偏差の範囲にあるように前記側壁の湯面側側面における前記熱流束分布の分割位置を決めることを特徴とする請求項4に記載の湯面高さ検知装置。
  6. 湯面より上の気体側の熱流束規定値を予め規定し、前記熱伝導方程式モデルにより算出した熱流束の最小値が、前記熱流束規定値から一定の偏差の範囲にあるように前記側壁の湯面側側面における前記熱流束分布の分割位置を決めることを特徴とする請求項4に記載の湯面高さ検知装置。
  7. 最大の熱流束規定値と最小の熱流束規定値とを予め規定し、前記熱伝導方程式モデルにより算出した最大の熱流束及び前記最大の熱流束規定値の偏差の二乗と、前記熱伝導方程式モデルにより算出した最小の熱流束及び前記最小の熱流束規定値の偏差の二乗との和が最小となるように前記側壁の湯面側側面における前記熱流束の分割位置を決めることを特徴とする請求項4に記載の湯面高さ検知装置。
  8. 上下方向に配列して容器の側の内部に埋設された複数の温度検出手段の列は、前記容器の周囲方向に複数列配置されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の湯面高さ検知装置。
  9. 上下方向に配列して容器の側の内部に埋設された複数の温度検出手段を用いて、前記容器内の流体の湯面高さを検知する湯面高さ検知方法であって、
    前記温度検出手段で計測した温度の変化を表現する熱流束分布を、非定常二次元熱伝導方程式で逆問題解析を行うことにより算出する熱流束分布算出処理と、
    前記算出された熱流束分布から湯面高さを算出する湯面高さ算出処理とを行い、
    前記熱流束分布算出処理において、前記側壁の湯面側側面と、前記側壁の外面と、前記側壁の上端部と、前記側壁の下端部とにより囲まれた領域について、前記外面を複数に分割しそれぞれの分割での熱流束を既知として与えて、逆問題解析を行い、前記湯面側側面における熱流束分布を算出することを特徴とする湯面高さ検知方法。
  10. 請求項1〜8に記載の各算出手段としてコンピュータを機能させるためのプログラムを格納したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
  11. 請求項9に記載の各算出処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを格納したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
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