JP6702014B2 - 電気炉におけるスクラップ溶け落ち判定方法、電気炉における炉壁損耗量推定方法、プログラム及びシステム - Google Patents

電気炉におけるスクラップ溶け落ち判定方法、電気炉における炉壁損耗量推定方法、プログラム及びシステム Download PDF

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Description

本発明は、電気炉においてスクラップを溶解する際に適用する、スクラップ溶け落ち判定方法、炉壁損耗量推定方法、プログラム及びシステムに関する。
スクラップを溶解するアーク溶解炉、即ち電気炉において、投入電力は、スクラップの溶解過程の進展に伴い制御される。スクラップの溶け落ちの判定に伴い、投入電力を大きく変化させる。従って、スクラップの溶け落ちを正確に判定することは、効率良く電力を用いるために必須である。更に、アーク溶解炉内部の耐火物は、アーク放電による熱負荷によって損耗するため、スクラップの溶け落ちの判定を正確に行い、投入電力を最適に制御することは、投入電力効率の大幅な上昇と炉壁耐火物の長寿命化につながり、生産コストの大幅な低下につながる。
スクラップの溶け落ちを判定するためには、アーク溶解炉の状態を監視し、炉内の状態を知る必要がある。特許文献1及び特許文献2においては、炉内の映像をカメラ等で取り込み、映像信号から炉内の状況を判断し、投入火力を制御する技術が開示されている。また、特許文献3においては、アーク溶解炉におけるアーク放電の実効抵抗値を求めることでアーク溶融工程を監視する技術が開示されている。また、特許文献4においては、アーク溶解炉において発生する放電音を電気信号に変換し、その信号形態から溶融状態を検出する技術が開示されている。また、特許文献5においては、映像信号、音響信号の両方を用い、ファジー推論の手法を用いて、アーク溶解炉におけるスクラップの溶け落ちを判定する技術が開示されている。
しかしながら、映像信号を用いる方法では、高温におけるカメラの劣化による映像信号の劣化、背景輻射雑音により得られる情報量が限られてしまう懸念がある。また、アーク放電の状態を実効電気抵抗の変化として捉える方法では、アーク溶解炉という大きな空間に広がる分布定数系としての放電現象を、電気抵抗という局所的な集中定数系パラメータとして取り扱うため、情報量が少なくなってしまい、正確な現象をとらえられない懸念がある。また、音響信号を用いる方法でも、工場内等の雑音による音響信号の劣化の懸念は否定できない。
アーク溶解炉内の状態を推定するには、炉の内周面の温度を測定することが重要である。しかしながら、炉の内周面は、1000〜1500℃の高温となり、激しいアーク放電が生じる。そのため、白金等の高温に耐えうる熱電対であっても断線、破壊してしまい、継続的に測温することが難しい。
例えば、特許文献6においては、反応容器壁内の温度分布から容器壁面の加熱又は冷却特性を評価する技術が開示されている。また、特許文献7においては、容器外壁温度の値から容器壁材料内部の温度を非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いて推定する技術が開示されている。更に、非特許文献1〜3には、そのような解法に有用な数学的記述が開示されている。更にまた、特許文献8には、容器壁の温度あるいは、熱流束の推定方法が開示されているが、電気炉におけるスクラップ溶け落ち判定技術については何の開示も無い。また、電気炉の内周面における炉壁温度の変化は、スクラップの状態の変化に対して緩慢な応答を示し、炉壁温度からは、感度良くスクラップの溶け落ちを感度良く判定するには不十分である懸念があった。更に、アーク溶解炉におけるスクラップの溶け落ち現象に伴う炉壁材料の伝熱的応答の特徴は不明である。更にまた、特許文献8には、容器壁の損耗状態を推定する技術についても開示されているが、推定の際に必要となるアーク溶解炉内温度又は炉壁の内周面温度を知り得ることは困難である。
即ち、アーク溶解炉におけるスクラップの溶け落ちを正確に判定する方法、及び炉壁の内周面の損耗量を正確に推定する方法は無かった。
特開昭59−63482号公報 特開平1−234530号公報 特開昭58−153720号公報 特公昭55−17314号公報 特開平7−286218号公報 特開2005−134383号公報 特開2009−69079号公報 特開2007−71686号公報
Hon, Y.C. and Wei, T., "The method of fundamental solution for solving multidimensional inverse heat conduction problems", Comput. Model. in Eng. and Sci., 7(2005), no.2, 119-132 P.C. Hansen,"Regularization Tools. A matlab Package for Analysis and Solution of Discrete Ill-Posed Problems", http://www.imm.dtu.dk (2008), 1〜36 G.H. Golub, C.F. Van Loan, "Matrix Computations 3rd edition", The Johns Hopkins University Press (1996), 69〜73 小笠原一紀ら, "転炉用マグネシア・カーボンれんがの損耗機構", 鐵と鋼 : 日本鐡鋼協會々誌 67(12), S807, 1981-09-10
本発明は、電気炉におけるスクラップの溶け落ちの判定や、炉壁の損耗量の推定を正確に行うことにより、電気炉の操業を適切に行うことができるようにし、電気炉への投入電力を効率的に使い、炉耐火物の長寿命化に資することを目的としたものである。
本発明の要旨は以下の通りである。
[1]複数のアーク電極を用いる電気炉においてスクラップを溶解する際のスクラップの溶け落ち判定を実行するスクラップ溶け落ち判定方法であって、
電気炉の炉壁内部及び炉壁外面のうち複数の位置で温度検出端により温度を測定する温度測定手順と、
前記温度検出端で測定した温度に基づいて炉壁の内周面における熱流束を算出する熱流束算出手順と、
前記熱流束算出手順で算出した炉壁の内周面における熱流束に基づいてスクラップの溶け落ちの開始を判定する判定手順とを有し、
前記複数の温度検出端は、前記電気炉の中心軸に直交する直線であって、前記アーク電極の中心軸上を通る直線の近傍、且つ、スクラップが全て溶け落ちた場合に溶鋼の湯面より上の位置に配置され、
前記熱流束算出手順では、前記電気炉の炉体を含む領域の熱伝導を記述する非定常熱伝導方程式を用いた非定常伝熱逆問題解析により炉壁の内周面における熱流束を算出することを特徴とする電気炉におけるスクラップ溶け落ち判定方法。
[2]スクラップ装入前に前記領域における炉壁の内周面の損耗量を測定する損耗量測定手順を更に有し、
前記熱流束算出手順では、前記損耗量測定手順に基づいた炉壁厚みを用いて炉壁の内周面における熱流束を算出することを特徴とする[1]に記載の電気炉におけるスクラップ溶け落ち判定方法。
[3]前記アーク電極に対して列又は群をなす前記温度検出端の位置の平均である重心位置は、前記直線上にあるようにすることを特徴とする[1]又は[2]に記載の電気炉におけるスクラップ溶け落ち判定方法。
[4]単数のアーク電極を用いる電気炉においてスクラップを溶解する際のスクラップの溶け落ち判定を実行するスクラップ溶け落ち判定方法であって、
電気炉の炉壁内部及び炉壁外面のうち複数の位置で温度検出端により温度を測定する温度測定手順と、
前記温度検出端で測定した温度に基づいて炉壁の内周面における熱流束を算出する熱流束算出手順と、
前記熱流束算出手順で算出した炉壁の内周面における熱流束に基づいてスクラップの溶け落ちの開始を判定する判定手順とを有し、
前記複数の温度検出端は、スクラップが全て溶け落ちた場合に溶鋼の湯面より上の位置に配置され、
前記熱流束算出手順では、前記電気炉の炉体を含む領域の熱伝導を記述する非定常熱伝導方程式を用いた非定常伝熱逆問題解析により炉壁の内周面における熱流束を算出することを特徴とする電気炉におけるスクラップ溶け落ち判定方法。
[5]スクラップ装入前に炉壁の内周面の損耗量を測定する損耗量測定手順を更に有し、
前記熱流束算出手順では、前記損耗量測定手順に基づいた炉壁厚みを用いて炉壁の内周面における熱流束を算出することを特徴とする[4]に記載の電気炉におけるスクラップ溶け落ち判定方法。
[6]前記判定手順では、前記熱流束算出手順で算出した炉壁の内周面における熱流束の経時変化において、該熱流束の値が正の値に転じる時点で、或いは0より大きい閾値を超えた時点で、スクラップの溶け落ち開始と判定し、
前記熱流束は、前記熱流束の方向が前記電気炉の内部から前記炉壁に入る方向である場合に前記正の値をとることを特徴とする[1]乃至[5]のいずれか1に記載の電気炉におけるスクラップ溶け落ち判定方法。
[7]前記熱流束算出手順では、炉壁の内周面における熱流束を、前記温度検出端で測定した温度に基づいて、前記非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析によって算出した温度の炉壁の内周面の法線方向の温度勾配によって算出するものであり、
前記非定常熱伝導方程式は、炉壁温度をT、炉壁耐火物密度をρ、炉壁耐火物比熱をC、炉壁耐火物のx方向の熱伝導度をkx、y方向の熱伝導度をky、z方向の熱伝導度をkzとして、下式(1)で表わされ、
位置ベクトル(x,y,z)、時間tとし、前記非定常熱伝導方程式の厳密解を与えるx、y、z、tを変数とする内外挿関数F、及びパラメータαj,i、基準位置ベクトル(xj,yj,yj)、基準時間ti、基準位置ベクトルの数Nj、基準時間の数Niを用いて、前記非定常熱伝導方程式の厳密解を与える関数を、下式(2)により表現し、
(xk,yk,yk)を温度情報測定位置ベクトル、tlを温度サンプリング時間とし、温度情報測定位置において測定された温度情報ak,lとして、前記パラメータαj,iを、下記の連立方程式(3)を用いて決めることを特徴とする[6]に記載の電気炉におけるスクラップ溶け落ち判定方法。
[8]前記内外挿関数F(x,y,z,t)を、下式(4)で与えることを特徴とする[7]に記載の電気炉におけるスクラップ溶け落ち判定方法。
[9]温度のサンプリング回数Nlは、基準時間の数Niに等しく、且つ温度のサンプリング時間の時間間隔と基準時間の時間間隔とを等しくすることを特徴とする[7]又は[8]に記載の電気炉におけるスクラップ溶け落ち判定方法。
[10][1]乃至[9]のいずれか1に記載の電気炉におけるスクラップ溶け落ち判定方法における前記熱流束算出手順と、前記判定手順とをコンピュータに実行させるためのプログラム。
[11]複数のアーク電極を用いる電気炉においてスクラップを溶解する際のスクラップの溶け落ち判定を実行するスクラップ溶け落ち判定システムであって、
電気炉の炉壁内部及び炉壁外面のうち複数の位置で温度を測定する温度検出端と、
前記温度検出端で測定した温度に基づいて炉壁の内周面における熱流束を算出する熱流束算出手段と、
前記熱流束算出手段で算出した炉壁の内周面における熱流束に基づいてスクラップの溶け落ちの開始を判定する判定手段とを備え、
前記複数の温度検出端は、前記電気炉の中心軸に直交する直線であって、前記アーク電極の中心軸上を通る直線の近傍、且つ、スクラップが全て溶け落ちた場合に溶鋼の湯面より上の位置に配置され、
前記熱流束算出手段では、前記電気炉の炉体を含む領域の熱伝導を記述する非定常熱伝導方程式を用いた非定常伝熱逆問題解析により炉壁の内周面における熱流束を算出することを特徴とする電気炉におけるスクラップ溶け落ち判定システム。
[12]スクラップ装入前に前記領域における炉壁の内周面の損耗量を測定する損耗量測定手段を更に有し、
前記熱流束算出手段では、前記損耗量測定手段に基づいた炉壁厚みを用いて炉壁の内周面における熱流束を算出することを特徴とする[11]に記載の電気炉におけるスクラップ溶け落ち判定システム。
[13]単数のアーク電極を用いる電気炉においてスクラップを溶解する際のスクラップの溶け落ち判定を実行するスクラップ溶け落ち判定システムであって、
電気炉の炉壁内部及び炉壁外面のうち複数の位置で温度を測定する温度検出端と、
前記温度検出端で測定した温度に基づいて炉壁の内周面における熱流束を算出する熱流束算出手段と、
前記熱流束算出手段で算出した炉壁の内周面における熱流束に基づいてスクラップの溶け落ちの開始を判定する判定手段とを備え、
前記複数の温度検出端は、スクラップが全て溶け落ちた場合に溶鋼の湯面より上の位置に配置され、
前記熱流束算出手段では、前記電気炉の炉体を含む領域の熱伝導を記述する非定常熱伝導方程式を用いた非定常伝熱逆問題解析により炉壁の内周面における熱流束を算出することを特徴とする電気炉におけるスクラップ溶け落ち判定システム。
[14]スクラップ装入前に炉壁の内周面の損耗量を測定する損耗量測定手段を更に有し、
前記熱流束算出手段では、前記損耗量測定手段に基づいた炉壁厚みを用いて炉壁の内周面における熱流束を算出することを特徴とする[13]に記載の電気炉におけるスクラップ溶け落ち判定システム。
[15]複数のアーク電極を用いる電気炉においてスクラップを溶解する際の炉壁の損耗量の推定を実行する炉壁損耗量推定方法であって、
電気炉の炉壁内部及び炉壁外面のうち複数の位置で温度検出端により温度を測定する温度測定手順と、
前記温度検出端で測定した温度に基づいて炉壁の内周面における温度及び熱流束の少なくとも何れか一方を算出する温度・熱流束算出手順と、
前記温度・熱流束算出手順で算出した炉壁の内周面における温度及び熱流束の少なくとも何れか一方に基づいて炉壁の損耗量を算出する炉壁損耗量算出手順とを有し、
前記複数の温度検出端は、前記電気炉の中心軸に直交する直線であって、前記アーク電極の中心軸上を通る直線の近傍、且つ、スクラップが全て溶け落ちた場合に溶鋼の湯面より上の位置に配置され、
前記熱流束算出手順では、前記電気炉の炉体を含む領域の熱伝導を記述する非定常熱伝導方程式を用いた非定常伝熱逆問題解析により炉壁の内周面における熱流束を算出することを特徴とする電気炉における炉壁損耗量推定方法。
[16]スクラップ装入前に前記領域における炉壁の内周面の損耗量を測定する損耗量測定手順を更に有し、
前記温度・熱流束算出手順では、前記損耗量測定手順に基づいた炉壁厚みを用いて炉壁の内周面における温度及び熱流束の少なくとも何れか一方を算出することを特徴とする[15]に記載の電気炉における炉壁損耗量推定方法。
[17]前記アーク電極に対して列又は群をなす前記温度検出端の位置の平均である重心位置は、前記直線上にあるようにすることを特徴とする[15]又は[16]に記載の電気炉における炉壁損耗量推定方法。
[18]単数のアーク電極を用いる電気炉においてスクラップを溶解する際の炉壁の損耗量の推定を実行する炉壁損耗量推定方法であって、
電気炉の炉壁内部及び炉壁外面のうち複数の位置で温度検出端により温度を測定する温度測定手順と、
前記温度検出端で測定した温度に基づいて炉壁の内周面における温度及び熱流束の少なくとも何れか一方を算出する温度・熱流束算出手順と、
前記温度・熱流束算出手順で算出した炉壁の内周面における温度及び熱流束の少なくとも何れか一方に基づいて炉壁の損耗量を算出する炉壁損耗量算出手順とを有し、
前記複数の温度検出端は、スクラップが全て溶け落ちた場合に溶鋼の湯面より上の位置に配置され、
前記熱流束算出手順では、前記電気炉の炉体を含む領域の熱伝導を記述する非定常熱伝導方程式を用いた非定常伝熱逆問題解析により炉壁の内周面における熱流束を算出することを特徴とする電気炉における炉壁損耗量推定方法。
[19]スクラップ装入前に炉壁の内周面の損耗量を測定する損耗量測定手順を更に有し、
前記温度・熱流束算出手順では、前記損耗量測定手順に基づいた炉壁厚みを用いて炉壁の内周面における温度及び熱流束の少なくとも何れか一方を算出することを特徴とする[18]に記載の電気炉における炉壁損耗量推定方法。
[20]前記炉壁損耗量算出手順では、前記温度・熱流束算出手順で算出した炉壁の内周面における温度及び熱流束の少なくとも何れか一方から損耗進行速度を決定して炉壁の損耗量を算出することを特徴とする[15]乃至[19]のいずれか1に記載の電気炉における炉壁損耗量推定方法。
[21]前記温度・熱流束算出手順では、炉壁の内周面における温度を、前記温度検出端で測定した温度に基づいて、前記非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析によって算出し、炉壁の内周面における熱流束を、算出した温度の炉壁の内周面の法線方向の温度勾配によって算出するものであり、
前記非定常熱伝導方程式は、炉壁温度をT、炉壁耐火物密度をρ、炉壁耐火物比熱をC、炉壁耐火物のx方向の熱伝導度をkx、y方向の熱伝導度をky、z方向の熱伝導度をkzとして、下式(1)で表わされ、
位置ベクトル(x,y,z)、時間tとし、前記非定常熱伝導方程式の厳密解を与えるx、y、z、tを変数とする内外挿関数F、及びパラメータαj,i、基準位置ベクトル(xj,yj,yj)、基準時間ti、基準位置ベクトルの数Nj、基準時間の数Niを用いて、前記非定常熱伝導方程式の厳密解を与える関数を、下式(2)により表現し、
(xk,yk,yk)を温度情報測定位置ベクトル、tlを温度サンプリング時間とし、温度情報測定位置において測定された温度情報ak,lとして、前記パラメータαj,iを、下記の連立方程式(3)を用いて決めることを特徴とする[20]に記載の電気炉における炉壁損耗量推定方法。
[22]前記内外挿関数F(x,y,z,t)を、下式(4)で与えることを特徴とする[21]に記載の電気炉における炉壁損耗量推定方法。
[23]温度のサンプリング回数Nlは、基準時間の数Niに等しく、且つ温度のサンプリング時間の時間間隔と基準時間の時間間隔とを等しくすることを特徴とする[21]又は[22]に記載の電気炉における炉壁損耗量推定方法。
[24][15]乃至[23]のいずれか1に記載の電気炉における炉壁損耗量推定方法における前記温度・熱流束算出手順と、前記炉壁損耗量算出手順とをコンピュータに実行させるためのプログラム。
[25]複数のアーク電極を用いる電気炉においてスクラップを溶解する際の炉壁の損耗量の推定を実行する炉壁損耗量推定システムであって、
電気炉の炉壁内部及び炉壁外面のうち複数の位置で温度を測定する温度検出端と、
前記温度検出端で測定した温度に基づいて炉壁の内周面における温度及び熱流束の少なくとも何れか一方を算出する温度・熱流束算出手段と、
前記温度・熱流束算出手段で算出した炉壁の内周面における温度及び熱流束の少なくとも何れか一方に基づいて炉壁の損耗量を算出する炉壁損耗量算出手段とを備え、
前記複数の温度検出端は、前記電気炉の中心軸に直交する直線であって、前記アーク電極の中心軸上を通る直線の近傍、且つ、スクラップが全て溶け落ちた場合に溶鋼の湯面より上の位置に配置され、
前記熱流束算出手段では、前記電気炉の炉体を含む領域の熱伝導を記述する非定常熱伝導方程式を用いた非定常伝熱逆問題解析により炉壁の内周面における熱流束を算出することを特徴とする電気炉における炉壁損耗量推定システム。
[26]スクラップ装入前に前記領域における炉壁の内周面の損耗量を測定する損耗量測定手段を更に有し、
前記温度・熱流束算出手段では、前記損耗量測定手段に基づいた炉壁厚みを用いて炉壁の内周面における熱流束を算出することを特徴とする[25]に記載の電気炉における炉壁損耗量推定システム。
[27]単数のアーク電極を用いる電気炉においてスクラップを溶解する際の炉壁の損耗量の推定を実行する炉壁損耗量推定システムであって、
電気炉の炉壁内部及び炉壁外面のうち複数の位置で温度を測定する温度検出端と、
前記温度検出端で測定した温度に基づいて炉壁の内周面における温度及び熱流束の少なくとも何れか一方を算出する温度・熱流束算出手段と、
前記温度・熱流束算出手段で算出した炉壁の内周面における温度及び熱流束の少なくとも何れか一方に基づいて炉壁の損耗量を算出する炉壁損耗量算出手段とを備え、
前記複数の温度検出端は、スクラップが全て溶け落ちた場合に溶鋼の湯面より上の位置に配置され、
前記熱流束算出手段では、前記電気炉の炉体を含む領域の熱伝導を記述する非定常熱伝導方程式を用いた非定常伝熱逆問題解析により炉壁の内周面における熱流束を算出することを特徴とする電気炉における炉壁損耗量推定システム。
[28]スクラップ装入前に炉壁の内周面の損耗量を測定する損耗量測定手段を更に有し、
前記温度・熱流束算出手段では、前記損耗量測定手段に基づいた炉壁厚みを用いて炉壁の内周面における熱流束を算出することを特徴とする[27]に記載の電気炉における炉壁損耗量推定システム。
Figure 0006702014
Figure 0006702014
本発明によれば、電気炉におけるスクラップの溶け落ちの判定や、炉壁の損耗量の推定を正確に行うことにより、電気炉の操業を適切に行うことができ、電気炉への投入電力の制御の最適化が可能となり、省電力化、炉耐火物の長寿命化が可能となり、生産コストの大幅な低下が可能となる。
電気炉を含むスクラップ溶け落ち判定システムの概略構成を示す平面図である。 図1のA−A線断面図(上部蓋も含む)である。 計算機による処理動作を示すフローチャートである。 計算機による処理動作を示すフローチャートである。 計算機による処理動作を示すフローチャートである。 計算機による処理動作を示すフローチャートである。 電力制御しない場合の炉壁内面の温度の経時変化を示す特性図である。 電力制御しない場合の炉壁内面における入熱流束の経時変化を示す特性図である。 電力制御した場合の炉壁内面の温度の経時変化を示す特性図である。 電力制御した場合の炉壁内面における入熱流束の経時変化を示す特性図である。 炉壁内面の損耗量推定結果を示す特性図である。
本願発明者は、アーク溶解炉(電気炉)の炉壁を構成する耐火物の特定の場所に温度検出端を配置し、得られた温度分布から、炉壁内面の温度、熱流束等の伝熱応答物理量を計算によって求め、アーク溶解過程の進展との相関関係を調査し、炉壁内面における入熱流束と溶解過程との間に明瞭な相関があることを見出した。このことから、スクラップの溶け落ちを正確に判定する方法と、炉壁の損耗量を正確に推定する方法を見出した。炉壁内面とは、炉壁の内周面のうち電気炉内におけるアーク放電により発生する輻射熱を直接受ける可能性のある面、即ち、電気炉内の溶鋼やスクラップに直接接する可能性のある面のことである。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
[電気炉の概略構成及び温度検出端の位置]
図1は電気炉1(上蓋部2は不図示)を含むスクラップ溶け落ち判定システムの概略構成を示す平面図、図2は図1のA−A線断面図(上部蓋2も含む)である。
本実施形態に係る電気炉1は、上部蓋2と、電気炉1の中心軸Sのまわりに等しい角度間隔で設置された3本のアーク電極3と、電気炉1の底部に設けられた炉底電極4とを備える。
電気炉1の炉壁を構成する450mmの厚さの耐火物(以下、炉壁耐火物と称する)には、複数の温度検出端である熱電対5を埋め込んでいる。本実施形態では、炉壁内面1a上の点の座標を0mmとして、炉壁内面1aに垂直な直線上の座標が150mm、300mm、450mm(炉壁外面(炉壁の外周面)上)である3点に熱電対5を埋め込んでいる。前述したように、炉壁内面1aとは、炉壁の内周面のうち、電気炉1内におけるアーク放電からの熱を直接受ける面、即ち電気炉1内の溶鋼やスクラップに直接接する可能性のある面のことである。
熱電対5は、電気炉1の中心軸Sに直交する直線であって、且つ各アーク電極3の中心軸を通る直線6上に並べられる。以下、このような直線6を直角軸線と呼ぶこととする。
また、直角軸線6と炉壁内面1aとの交点をホットスポット7と呼ぶこととする。ホットスポット7は、一つのアーク電極3に対して一つ存在するので、アーク電極3が複数あれば複数個のホットスポット7が存在する。本実施形態においては、アーク電極3は3本であり、3箇所のホットスポット7が存在することになる。そして、各ホットスポット7に対して熱電対5が一列をなすようにする。即ち、一列をなす熱電対5の位置の平均である重心位置は、ホットスポット7を通る直角軸線6上にあると言い換えることができる。
ホットスポット7の高さ位置、言い換えればホットスポット7に対して一列をなす熱電対5の高さ位置は、スクラップ8が全て溶け落ちた場合に溶鋼9の湯面より上にあるものとする。これにより、電気炉1におけるスクラップ溶け落ち判定の精度が最も高くなることが分かった。
熱電対5の列を、同一の高さのまま、炉壁内面1a上で電気炉1の中心軸の周りに45度回転した位置に配置した場合、算出される炉壁内面1aにおける熱流束の時間変化が緩慢となり、明確な溶け落ち判定ができなかった。そのため、投入電力の制御の感度が大きく低下してしまうことが分かった。また、熱電対5の列を同様に60度回転した位置に配置した場合も同様に算出される熱流束の時間変化が緩慢となり、明確な溶け落ち判定ができなかった。そのため、投入電力の制御の感度が大きく低下してしまうことが分かった。投入電力の制御精度が低下することによって、電力効率が下がるばかりでなく、炉壁内面1aがアーク電極3から受ける輻射熱が適正に制御されないため、熱負荷がより多くかかる。そのため、炉壁耐火物の損耗が激しくなり、炉壁耐火物の寿命が短くなってしまうことも分かった。
従って、熱電対5の列は、上述したように、溶鋼9の湯面より上にあるホットスポット7を通る直角軸線6上に配置するのが、電力効率の向上及び炉壁耐火物の長寿命化の両方に最も効果があることが分かった。
本実施形態では、各ホットスポット7に対して熱電対5が一列をなす例を説明したが、1次元的な列ばかりでなく、千鳥状に2次元或いは3次元に、即ち熱電対5の群として、炉壁内に埋め込むようにしてもよい。
ここで、熱電対の群は、直角軸線6の近傍に配置するのが好ましい。具体的には、図1に示すように、アーク電極3の中心から、それに対応するホットスポット7までの距離をLとしたときに、該ホットスポット7に対する熱電対5の群は、該直角軸線6から上下左右に各々0.2L以内の領域に収まっていることが好ましい。上下とは、電気炉1の中心軸Sに平行な方向であり、左右とは、前記上下方向に直角な方向(炉壁の周方向)である。そして、上下左右の距離とは、炉壁内面1aに平行に計った直線距離である。即ち、熱電対5の群は、炉壁耐火物内部において、該ホットスポット7を中心とした一辺0.4Lの矩形を一面とする直方体領域に入るように設置する。該領域を超えると感度良くスクラップの溶け落ち判定することと、炉壁耐火物の損耗量を推定することが困難になる虞があるからである。熱電対5の群は、ホットスポット7に近い位置にあるのが好ましいので、直角軸線6から上下左右に0.1L以内の領域に熱電対5の群が収まっているのが更に好ましい。
本実施形態においては、L=1500mmであった。従って、直角軸線6から上下左右各々0.2×1500=300mm以内の領域に収まるように熱電対5の群を炉壁耐火物内に埋め込むようにする。
また、群をなす熱電対5の位置の平均である重心位置は、ホットスポッ7を通る直角軸線6上にあるようにする。
本実施形態では、3本のアーク電極3があるので、各アーク電極3に対応する3箇所のホットスポット7が存在する。これら3箇所に、熱電対5の1次元的な列、或いは2次元的或いは3次元的な群を配置すれば、スクラップの溶け落ち判定と炉壁耐火物の損耗量の推定とをよりきめ細かく行うことができる。具体的には、これら3箇所でスクラップの溶け落ち開始時間が異なるため、最も早くスクラップの溶け落ちが開始する時間に合わせて投入電力を制御することで、投入電力の制御の精度が上がり、電力効率及び炉壁耐火物寿命の向上を行うことができる。
なお、アーク電極3が1本である場合は、電気炉1の中心軸Sとアーク電極3の中心軸とが一致し、アーク放電による発熱が炉壁に与える影響は、均一性が高く、ホットスポット7のように熱の影響が局所的に表れやすい場所は明瞭ではない。従って、複数の熱電対5の位置は、スクラップ8が全て溶け落ちた場合に溶鋼9の湯面より上にあればよい。
また、本実施形態においては、温度検出端として熱電対5を用いたが、放射温度計等の他の温度検出端を用いることを妨げるものではない。また、本実施形態においては、1つのホットスポット7に対して、それぞれ3つの熱電対5を配置した。しかしながら、電気炉1の炉壁(炉壁耐火物)の内部と電気炉1の炉壁の外周面とのうち、電気炉1の炉壁の内部を含む複数の位置であって、電気炉1の炉壁の厚み方向の位置が異なる複数の位置に複数の温度検出端を配置していれば、1つのホットスポットに対する温度検出端の数は3つに限定されない。即ち、前記複数の位置は、電気炉1の炉壁の内部のみの位置、又は、電気炉1の炉壁の内部および外周面の位置であればよい(言い換えると、前記複数の位置は、炉壁内面1aの位置を除く位置になる)。
図1、図2において、101はサーバ等の計算機であり、以下に説明する各種演算処理等を行い、全体の制御を司る。102は温度サンプリング装置であり、熱電対5で測定される温度情報が入力される。103は投入電力制御装置、104は電力投入装置であり、電気炉1への投入電力を制御する。
さらに、スクラップ装入前に不図示の炉壁損耗量測定手段により温度検出端位置における炉壁損耗量(即ち炉壁内面位置)を測定し、非定常伝熱逆問題解析によって得られた温度分布から炉壁内面における温度又は熱流束を読み取る際に、測定によって得られた炉壁内面位置を用いることにより温度又は熱流束の推定精度が向上する。このとき、炉壁損耗量測定手段としてはレーザー距離計を用いる方法などが知られているが、他の炉壁損耗量測定手段を用いることを妨げるものではない。ここで、伝熱逆問題とは、計算領域を支配する熱伝導方程式を基にして、領域内部の温度情報を既知として領域境界での温度や熱流束等の境界条件又は初期条件を推定する問題を指す。これに対して、伝熱順問題は、既知である境界条件を基にして、領域内部の温度情報を推定する問題を指す。
[非定常熱伝導方程式の解法と入熱流束の計算]
炉壁内面1aにおける熱流束は、熱電対5で測定される温度情報から、電気炉1の炉体(炉壁を構成する炉耐火物)を含む領域の熱伝導を記述した非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた非定常伝熱逆問題解析によって算出した温度の内面1aの法線方向の温度勾配によって算出する。
非定常熱伝導方程式は、炉壁温度をT、炉壁耐火物密度をρ、炉壁耐火物比熱をC、炉壁耐火物のx方向の熱伝導度をkx、y方向の熱伝導度をky、z方向の熱伝導度をkzとして、下式(1)で表わされる。
Figure 0006702014
位置ベクトル(x,y,z)、時間tとし、非定常熱伝導方程式の厳密解を与えるx、y、z、tを変数とする内外挿関数F、及びパラメータαj,i、基準位置ベクトル(xj,yj,yj)、基準時間ti、基準位置ベクトルの数Nj、基準時間の数Niを用いて、非定常熱伝導方程式の厳密解を与える関数を、下式(2)により表現する。
Figure 0006702014
(xk,yk,yk)を温度情報測定位置ベクトル、tlを温度サンプリング時間とし、温度情報測定位置において測定された温度情報ak,lとして、パラメータαj,iを、下記の連立方程式(3)を用いて決める。
Figure 0006702014
内外挿関数F(x,y,z,t)は、下式(4)で与える。
Figure 0006702014
図1に示すように、電気炉1において、450mmの厚さの炉壁耐火物に、炉壁外面上、及び、該炉壁外面から深さ150mm及び300mmの位置に直線状に熱電対5を埋め込み、取り付けた。即ち、温度測定点の数Nk=3とした。対象とするホットスポット7は、1箇所である。この場合に測定した炉壁耐火物内部の温度データから炉壁内面1aのホットスポット7における熱流束を算出する方法について説明する。ここで、炉壁耐火物の厚み方向をxとし、炉壁内面1aの座標をx=0mm、炉壁外面の座標をx=450mmとする。また、炉壁耐火物は、等方的な熱伝導度を有するため、該熱伝導度をkで表わす。熱流束は1次元熱伝導方程式を用いて炉壁耐火物の厚み方向の1次元温度分布を推定し、算出する。即ち、式(1)に対応する非定常熱伝導方程式は、下式(5)となる。
Figure 0006702014
また、式(4)に対応する内外挿関数Fは、下式(6)となる。
Figure 0006702014
任意の位置x、時間tにおける温度を表わす式(2)に対応する式は、下式(7)となる。ここで、xj、tiは、各々、基準位置、基準時間である。
Figure 0006702014
式(7)は、基準位置xjにおいて基準時間tiに仮想的な熱源が存在したと考え、その仮想的な熱源の影響が位置x、時間tにおける温度に影響しているという考えに立脚するものである。従って、基準時間tiは、時間tより過去の時間である。また、前記仮想的熱源の影響を表わす関数がF(x−xk,t−tl)である。パラメータαj,iは、前記仮想的熱源の影響に与える重みを表わす。この重みが決定できれば、位置xにおける時間tでの温度を推定することができるのである。但し、基準時間tiをあまり近い過去に設定すると、F(x−xk,t−tl)は鋭い関数となり、誤差が大きくなる。
k個の温度情報測定位置を設け、Nl回の温度サンプリングを行った時点で、基準位置xjにおける基準時間tiからの影響の重みを求める。ここで、基準位置xjの数はNj個、基準時間tiの数はNi個である。即ち、Nk×Nl個の温度情報を用いて、Nj×Ni個のパラメータαj,iを求めることになる。
パラメータαj,iを求める方法は、基本的に、測定された温度情報が正しく再現されるように決めればよい。位置xk、時間tlにおいて測定された温度情報をak,lとする。T(xk,tl)=ak,lとなるので、パラメータαj,iを未知数とする下記の連立方程式(8)を得る。
Figure 0006702014
式(8)は、パラメータαj,i以外の量は既知であり、αj,iを決める基本的な連立方程式である。しかしながら、該連立方程式から常に解が得られるということは保証されていない。また、温度情報にランダムな測定誤差が入り込むことによって、安定的な解を得ることができない場合もある。
式(8)の右辺を、式(6)を用いて、再度、関数Fを用いて表わせば、該連立方程式は下式(9)のようになる。
Figure 0006702014
式(9)の右辺は、パラメータαj,iが決まれば、温度情報測定位置xk及び温度サンプリング時間tlにおける温度情報の推定値を与える。従って、該右辺をTk,lと、添え字k、lのみで表現することができる。即ち、該連立方程式は、下式(10)のようになる。但し、Tk,lは、下式(11)で表わされる。
Figure 0006702014
ここで、基準位置xjの数Njを、温度測定点の数Nkと、基準時間tiの数Niをサンプリング時間jの数Njと一致させれば、連立方程式(10)は、未知数であるパラメータαj,iの数Nj×Niと方程式の数Nk×Nlが一致し、該連立方程式は原理的には解けることになる。しかしながら、基準点、基準時間の取り方によって、必ずしもNj×NiとNk×Nlは一致せず、連立方程式(11)において、必ずしも連立方程式の解を求めることができない。また、前記未知数の数と方程式の数を一致させたとしても、安定的な解が得られることは保証されない。このような問題は、非特許文献2にあるように、"性質の悪い問題(ill-posed problem)"と呼ばれる。
ここで、前記連立方程式を簡潔に表現する為に二重添え字の組み(k,l)及び(j,i)を各々一つの添え字s及びpと置き換えることにする。これは、例えば次のような方法で可能である。Nj×Ni=Q、Nk×Nl=Rとし、s=Nl(k−1)+1(k=1、2、・・・、Nk、l=1、2、・・・、Nl)とすれば、二重添え字(k,l)は一つの添え字s(s=1、2、・・・、R)に置き換えることができる。同様に、p=Ni(j−1)+i(j=1、2、・・・、Nj、i=1、2、・・・、Ni)とすれば、二重添え字(j,i)は一つの添え字p(p=1、2、・・・、Q)に置き換えることができる。
即ち、Nk行Nl列の行列成分であったTk,l及びak,lは、R次元のベクトル成分Ts及びasで表わすことができ、Nj行Ni列の行列成分であったαj,iは、Q次元のベクトル成分αp表わすことができ、F(xk−xj,tl−ti)は、R行Q列の行列成分Fs,pで表わされることになる。即ち、Tk,l=Ts、ak,l=as、αj,i=αp、F(xk−xj,tl−ti)=Fs,pである。これらのベクトルをT、a及びαで表わし、また、行列をFで表わすこととする。このとき、式(10)、式(11)は、下式(12)、下式(13)のように表わすことができる。
Figure 0006702014
ここで、asは計測値であり、Fs,pは関数値であり、既知の値である。即ち、温度情報の測定値を正しく与える係数αpを求める問題となる。これは、前記のように、未知数の数Qと方程式の数Rが一般的に一致せず、解くことができない。即ち、"性質の悪い問題(ill-posed problem)"と呼ばれる。非特許文献1及び非特許文献2にそのような問題を取り扱う、"正則化法(regularization method)"と呼ばれる方法等が記載されている。
基本的に、計測値asと、推定値Tsとの誤差の2乗の総和が最小となるようにαpを決定する。このような誤差の総和は、下式(14)のように表わされる。
Figure 0006702014
これを最小にするように係数αpを決めればよい。しかしながら、非特許文献2によれば、このような手法でも安定的な解が得られない場合が多い。非特許文献2によれば、最小化すべき量を、下式(15)とすると安定な解が得られる。但し、rは正の定数であり、問題によって異なる。ここでは、rとして2.25×10-6を採用した。
Figure 0006702014
式(15)を最小にするαpを求める方法は、非特許文献1及び非特許文献2に記述されている。これら非特許文献によれば"特異値分解(Singular Value Decomposition)"と呼ばれる手法を用いる。"特異値分解( Singular Value Decomposition)"によれば、即ち非特許文献3に示されるように、任意のR行Q列の行列は、3個の正方行列の積で表示することができる。これら3個の行列のうち、一つは、対角成分のみが0でない行列であり、他の二つは、各々自身の転置行列、即ち行成分と列成分を入れ替えた行列が各々自身の逆行列となるような行列(直交行列)で表わされる。即ち、前記行列Fに特異値分解を適用すれば、下式(16)を満たす前記の3個の行列が一義的に存在することが保証される。即ち、下式(16)を満たす行列Σ、W及びVが存在する。
Figure 0006702014
ここで、Σは前記対角成分のみが0でない行列であり、W及びVは前記直交行列である。また、V'は、Vの転置行列である。但し、WはR次の正方行列、VはQ次の正方行列、ΣはR行Q列の行列であり、その対角成分の数は、RとQのうちの小さい方の数Uである。即ち、Uは、下式(17)で表現する。
Figure 0006702014
ここで、行列Σのn番目の対角成分をσn、行列W及びVのs行p列の成分を各々ws,p、vs,pと記載すれば、式(16)は下式(18)のように書ける。
Figure 0006702014
式(18)を式(15)のFs,pに代入し、式(15)の値を最小とするような係数αpを求めることになる。このような問題は、非特許文献1及び非特許文献2によれば、下式(19)のように求められる。
Figure 0006702014
ここで、rは定数であり、温度測定対象物の熱特性により変化する。r=0とした場合は、式(16)の値を最小とする解となるが、その場合の温度は、温度測定点の間で大きく変化する不安定な温度が得られた。本実施形態においては、1.0×10-6〜5.0×10-6の範囲とすることで安定な解が得られ、温度を正しく推定することができた。rは、対象とする耐火物と同一のものの試験片を少量切り出し、実験室レベルで小規模な事前試験をすることで最適値を決めることもできる。上の記載において、パラメータαj,iの計算に係る温度情報の測定データの数Nk×Nl=Rと、基準位置データの数Nj×Ni=Qは、異なった場合も含めたが、計算精度を考慮すれば、両者は一致することが好ましい。即ち、P=Qであることが好ましい。更なる計算精度を考慮すれば、温度情報測定位置の数と基準位置の数が一致し、且つ、パラメータαj,iの計算に係る温度サンプリングデータの数と基準時間の数が一致することが好ましい。
得られたαpを式(13)に代入し、添え字pを添え字j,iに戻し、添え字sを添え字k,lに戻す。即ち、添え字jは、pをNiで除算して得られた商に1を加えたものであり、前記除算で得られる余りが添え字iとなる。また、添え字kは、sをNlで除算して得られる商に1を加えたものであり、前記除算で得られる余りが添え字lとなる。
また、入熱流束は、以下のようにして計算することができる。
(x0,y0,z0)を炉壁内面1aにおける入熱流束推定点の座標とし、bを該温度推定点における該内面1aにおいて外向き、即ち該炉壁から溶鋼側を向いた単位法線ベクトルとし、Kを熱伝導度からなる行列とし、該単位法線ベクトルと、該温度推定点における温度勾配の内積である下式(20)で与える。
Figure 0006702014
ここで、∇は勾配ベクトル演算子であり、Kは下式(21)で表わされる。
Figure 0006702014
本実施形態においては、温度情報測定用の熱電対5は1次元に配置し、また、熱電対5が埋め込まれた耐火物の熱伝導度は等方的であるため、kx=ky=kz=kとした。即ち、入熱流束推定点の座標をx0として、式(20)は、式(7)を用いて下式(22)のようになる。
Figure 0006702014
以上のように、温度情報から、所定の位置における入熱流束を計算する。
[温度サンプリングの時間間隔と基準時間の時間間隔]
本実施形態においては、温度サンプリング開始時間を時間τ1とし、時間間隔Δ1でNk個の位置での温度をサンプリングし、Nl回サンプリングし、採取した温度情報を用いて、式(20)より係数αpを求め、式(2)におけるパラメータαj,iを求める。即ち、温度サンプリング開始してからNl回目の温度サンプリング終了後に初めて係数αpを求める計算を行う。その後は、温度サンプリングの進捗ごとに係数αpを計算する。係数αp、即ちパラメータαj,iは、前記のように、Nj個の基準点xjにおける、Ni個の基準時間tiにおいて存在した仮想的な熱源が、任意の座標における任意の時間での温度に与える影響の重みを表わすものと考えることができる。従って、該基準時間は、過去の時間と考えることが好ましい。即ち、基準時間とは、好ましくは、過去の時間τ2からτ2+(Ni−1)Δ2まで時間間隔Δ2でNi個あるとすることができる。即ち、温度サンプリング時間tl及びtiは、下式(23)で表わされる。
Figure 0006702014
また、本実施形態においては、1次元を考えているので、式(2)或いは式(11)に示される、過去の熱源からの影響は、F(xk−xj,tl−ti)となり、下式(24)のように表わされる。
Figure 0006702014
l回の温度サンプリングが終了したら、上式より、式(4)或いは式(6)の内外挿関数Fを用いて、[非定常熱伝導方程式の解法と入熱流束の計算]に記載のように行列Fを特異値分解して、係数を求め、推定温度を求め、熱流束を求める。
基準時間は、過去の一定の時間として更新しなくても計算に支障をきたすことは無いが、計算の精度を向上させるためには、基準時間も更新してゆくことが好ましい。例えば、温度サンプリング数が基準時間の数Niを超えたら、時間間隔Δ2で基準時間を更新する。但し、係数αj,iの計算に係る基準時間は、基準時間のパラメータαj,iの計算に係る温度情報のサンプリング時間より過去であることが必要である。温度サンプリング回数がNl、Niの両者より大きい場合、該温度サンプリング回数はNl或いはNiの剰余系で表わすことができる。即ち、適当な数M1或いはM2を用いて、M1l+l(M1=1、2、・・・、l=1、2、・・・、Nl)、或いは、M2i+i(M2=1、2、・・・、i=1、2、・・・、Ni)。この場合、温度情報サンプリング時間と基準時間は、下式(25)のように表される。
Figure 0006702014
この場合、内外挿関数は、下式(26)のように表わされる。
Figure 0006702014
温度測定を開始してからどの程度でスクラップの溶け落ちが始まるか予想がつけば、前記M1、M2を事前に決めておくことができる。従って、式(26)に示されるFは、各々のM1、M2について事前に計算しておき、各々のFについて特異値分解(Singular Value Decomposition)を実施しておけば、温度推定が短時間で可能である。しかしながら、前記スクラップの溶け落ち開始時間は、予測できない場合が多い。その場合、温度サンプリングの進捗とともに、式(26)のFを求め、特異値分解を行い、係数αpを求める必要がある。この場合は、計算ステップ数が増加してしまい、計算効率が低下する懸念がある。
ここで、Nl=Niとし、更にΔ1=Δ2=Δととる。即ち、係数αj,iの計算に係る基準時間の数と、温度サンプリング回数の数を等しくし、温度サンプリングの進捗の時間間隔と基準時間の進捗の時間間隔を等しくとる。このとき、M1=M2であるから、式(26)は、下式(27)となる。
Figure 0006702014
式(27)は、温度サンプリングが進捗し、基準時間が更新されても不変である。従って、式(27)に示されたFを求めておき、[非定常熱伝導方程式の解法と入熱流束の計算]の項に記載された、特異値分解(Singular Value Decomposition)を事前に適用しておき、温度サンプリングの進捗ごとに式(19)から係数αを求めればよい。これにより、計算ステップ数が大幅に少なくなり、精度を落とすことなく計算時間を著しく低減することができる。更に、事前にスクラップの溶け落ち時間を予想して係数αが得られれば、式(20)或いは式(22)より、炉壁内面1aにおける熱流束を求める。
[熱流束計算プログラムによる処理動作]
図3A〜図3Dに、温度サンプリング時間間隔と基準時間間隔が同一の場合における熱流束計算プログラムによる処理動作を示す。このフローチャートは、計算機101が熱流束計算プログラムを実行することにより実現される。
本フローチャートは、主として、事前準備ステップ(図3A)、温度情報サンプリングステップ(図3B)、メモリ操作ステップ(図3C)、熱流束計算ステップ(図3D)によって構成される。また、本実施形態においては、温度サンプリング時間間隔と基準時間間隔を等しくΔとしている。即ち、事前に計算が必要な行列Fは一つだけである。
図3Aに示すように、事前準備ステップでは、必要なパラメータを入力し(ステップS301)、式(4)或いは式(6)からなる内外挿関数より、行列成分Fs,pを求める(ステップS302)。更に、行列Fを特異値分解し、式(16)或いは式(18)を満たす行列W、V、Σを求める(ステップS303)。特異値分解の方法は、非特許文献1〜非特許文献3に示される一般的な方法を用いる。事前準備ステップが終了すると、温度情報取得準備状態となる。
温度情報取得準備状態において、開始信号を取得すると、図3Bに示すように、温度情報サンプリングステップに入る。開始時間t=0とし(ステップS304)、温度サンプリング開始時間τ1になるまで状態を保持し、t=τ1において、カウンタ変数c=1とし、Nk個の温度情報測定位置における最初の温度サンプリングを行う(ステップS305)。即ち、一度の温度サンプリングにおいて、Nk個の温度情報を採取する。採取したNk個の温度情報は、カウンタ変数cとともにバッファメモリに送る(ステップS306)。ここで、バッファメモリとは、一時的に情報を記憶しておく領域を言う。次に、カウンタ変数cを1増やして更新し、次のサンプリング時間になったら温度サンプリングを行う(ステップS307)。その後、温度情報を、カウンタ変数とともにバッファメモリに送る(ステップS306)。
このように、温度情報サンプリングステップでは、温度のサンプリングと、カウンタ変数cの更新、温度情報及びカウンタ変数の送信を繰り返す。これを、終了信号を受信するまで継続する。
図3Cに示すように、メモリ操作ステップでは、バッファメモリの温度情報とカウンタ変数cをワークメモリに蓄積する。ここで、ワークメモリとは、熱流束計算に用いる情報を蓄積する領域を言う。受信したカウンタ変数cがNlを下回っていれば(ステップS308)、受信した温度情報は、ak,c(k=1、2、・・・、Nk、c=1、2、・・・、Nl)としてワークメモリに蓄積する(ステップS309)。受信したカウンタ変数cがNlに等しければ(ステップS308、S310)、温度情報蓄積後(ステップS311)に、ワークメモリにはNk×Nl個の温度情報ak,lと最新カウンタ変数cが蓄積されていることになる。そこで、熱流束計算ステップを呼び出す(ステップS312)。受信したカウンタ変数cがNlより大きければ(ステップS308、S310)、既にワークメモリに蓄積されているNk×Nl個の温度情報ak,l(k=1、2、・・・、Nk、l=1、2、・・・、Nl)のうち、最も古いl=1の温度情報をワークメモリから削除し、l≧2であるものについてl→l−1とし、新たなak,l(k=1、2、・・・、Nk、l=1、2、・・・、Nl−1)として書き換え、更新する。そして、受信した最新のNk個の温度情報をak,l(l=Nl)としてワークメモリに蓄積し、更にこのときのカウンタ変数cもワークメモリに蓄積する(ステップS313)。その後、熱流束計算ステップを呼び出す(ステップS312)。
このように、メモリ操作ステップでは、データ受信の度に、ワークメモリの書き換え更新と新規温度情報及びカウンタ変数の蓄積、及び熱流束計算ステップの呼び出しを繰り返す。
図3Dに示すように、熱流束計算ステップでは、ワークメモリにあるNk×Nl個の温度情報ak,l(k=1、2、・・・、Nk、l=1、2、・・・、Nl)より、式(19)により係数αpを求める。その後、添え字pから添え字j、iへの変換を行い、αj,iを求める。更に、カウンタ変数cより、最新データ取得時間t=τ1+(c−1)Δを求め、式(20)或いは式(22)より炉壁内面1aにおける熱流束qを計算する(ステップS314)。そして、該熱流束の値によりスクラップの溶け落ちが始まったかどうかを判定する(ステップS315)。基本的には、熱流束の値が正の値に転じる時点でスクラップの溶け落ち開始と判定する。但し、入熱流束qが、安定的にゼロから正に変わったことを確認することも必要となるので、閾値β(β>0)をとり、q>βであればスクラップの溶け落ち開始と判定するのが実際的である。本実施形態では、β=5000kcal/m2hとした。
なお、温度サンプリングの失敗等の問題があった場合に備えて、前記各ステップの間に冗長性を持たせるステップを入れることも可能であるが、本実施形態において特に問題は見出されなかった。
[損耗量の計算]
炉壁内面1aの損耗量は予め損耗進行速度推定式を作成し、推定する。このとき、損耗進行速度とは単位時間に進行する損耗量のことで、損耗進行速度を炉壁内面1aの温度および熱流束の少なくとも何れか一方の関数式として与えたものを損耗進行速度推定式と呼ぶことにする。具体的に損耗量の計算方法を損耗進行予測式が炉壁内面の温度Tの関数として与えられたときの例で示す。未使用状態、もしくは測定により損耗量h0が既知であるとし、このときの時間をt0とする。また、損耗進行予測式がg(T)で与えられるものとする。さらに、本実施形態で説明した非定常伝熱逆問題解析により炉壁内面の時間tにおける温度T(t)が推定されたとすると、時間tにおける損耗量は下式(28)となる。
Figure 0006702014
損耗進行速度推定式は耐火物特性や炉構造などの影響を受けることから同等炉から得られたデータを基に作成するのが望ましい.例えば、非特許文献4には耐火物の損耗速度が絶対温度の逆数の指数関数となるデータが得られていることから、パラメータc1、c2を用いて損耗進行速度式を式(29)で表す。
Figure 0006702014
温度パターンの異なる数ケースについて損耗量の実績値と式(28)による推定値が最も近い値になるようにパラメータc1、c2を決定すれば損耗進行速度式が完成する。パラメータc1、c2を決定するときに最適化手法を用いることも可能である。
ここでは、損耗進行速度推定式を炉壁内面の温度の関数式として与えたが、その他の関数式でも良い。例えば、炉壁内面の熱流束の関数式として与えても良く、炉壁内面の温度と熱流束の両者の関数式として与えても良い。尚、炉壁内面の温度・熱流束は、本実施形態で説明した逆問題解析により導出されるものである。
図1で説明したように、電気炉1の炉壁を構成する450mmの厚さの耐火物に、炉壁内面1a上の点の座標を0mmとして、炉壁内面1aに垂直な直線上の座標が150mm、300mm、450mm(炉壁外面上)である3点に熱電対5を直線状に埋め込んだ。即ち、温度情報測定位置の座標をx=150mm、300mm、450mmとし、基準位置の数Nk=3とした。また、一度の解析で温度を推定する基準時間は10秒間隔とし、そのは数Nl=7とした。サンプリング時間間隔は10秒間とし。温度を推定する地点である基準位置の座標は、炉壁内面1a及び150mm、300mm炉壁耐火物内部に入った、即ち、x=0mm、150mm、300mmの計3点とした。即ち、基準位置の数Nj=3とした。更に、基準位置での、ある基準時間の温度を推定するのに、基準時間に近い、各熱電対位置にて、過去60秒間に計測された7個の温度情報を用いることとした。即ち、サンプリング時間数Ni=7である。従って、Ni×Nj=Nk×Nl=21であり、前記の定数はP=Q=U=21である。従って、式(13)における行列Fは、行数及び列数がともに21の正方行列である。温度情報測定位置、温度サンプリング時間、基準位置、基準時間は事前に決定できるので、行列Fは、事前に求められる。従って、事前に決定した行列Fに、事前に特異値分解を適用しておき、式(18)の右辺の各成分σp、ws,p、vs,pを求めておく。60秒間の測定データが集まった時点で、その時点での各基準点での温度を推定するための係数を式(19)より求める。次に、式(13)により各基準位置での推定温度を求める。更に、式(22)により炉壁内面1aにおける熱流束を求めた。
このようにして求められた熱流束は、電気炉1においてスクラップの溶け落ち前は、負の値を取り、ゼロの値をとり、その後急激に上昇した。電気炉1の上方に設置したカメラによる画像の変化をみると、熱流束が正の値に転じる時とスクラップの溶け落ち開始が一致することを確認した。しかしながら、数回の試験によってカメラの劣化により画像から判断する精度が落ちたが、温度情報計測系においては、耐火物に埋め込まれた熱電対5の劣化は見られず、熱流束は正確に判断することができた。本実施形態においては、スクラップの溶け落ちを判定するにとどめ、投入電力の制御信号を出力することはしていない。図4に、このときに計算された炉壁内面1aのホットスポット7での温度の経時変化を示す。また、図5に、同位置における入熱流束の経時変化を示す。入熱流束が負から正に代わる点において、温度は緩慢な変化を示す。温度に比較して、入熱流束は、より明確にスクラップの溶け落ちを捉えることができることが示される。また、本実施形態を2次元、3次元に拡張した場合は、炉壁内面1aにおいて複数の点での熱流束を推定することになるが、各点での熱流束に重みをつけた重みつき平均をとり、前記重みを最適化することで感度の高いスクラップの溶け落ち判定が可能となることを確認した。
炉壁内面1aの位置(即ち炉壁損耗量)が正確に知り得なかったときの炉壁内面1aにおける熱流束及び温度の推定誤差を評価した。損耗量が10mmのときに熱流束及び温度の推定を行ったとき、x=0mmとx=10mmにおける熱流束及び温度の推定値はほぼ一致した。しかし,損耗量が100mmのときには、x=0mmにおける熱流束はx=100mmにおける熱流束の最大で2倍、x=0mmにおける温度はx=100mmにおける温度の最大で1.5倍と大きな開きがあった。従って、スクラップ装入前に炉壁損耗量を測定しておくことが、炉壁内面における熱流束及び温度を精度良く推定するのに有効であることを確認した。
図1に示すように、投入電力制御装置103、電力投入装置104により、電気炉1への投入電力を制御する。図3A〜図3Dに示した処理動作を実行する計算機101は、1次元に配置された熱電対5の温度サンプリング装置、及び、投入電力制御装置103を管理している。電気炉1において、投入電力は、スクラップが固体のままである場合とスクラップの溶け落ち開始後では、異なる投入電力制御モードで制御する。計算機101は、各熱電対5からの温度情報に基づいてスクラップの溶け落ち開始を判定し、スクラップの溶け落ち開始と判定した場合、投入電力制御装置103に溶け落ち開始の信号を送る。溶け落ち開始信号を受信した投入電力制御装置103は投入電力制御モードを変更し、投入電力を効率的に制御する。
図6に、このときに計算された炉壁内面1aのホットスポット7での温度の経時変化を示す。また、図7に、同位置における入熱流束の経時変化を示す。計算機101では、ノイズ等の影響を見て、入熱流束が負から正になり5000kcal/m2hとなった時点でスクラップの溶け落ち開始と判定し、投入電力制御装置103に溶け落ち開始の信号を送信した。投入電力制御装置103は、スクラップ溶け落ち信号の受信とともに制御モードを変更し、電力投入装置104による投入電力を最適化した。図7に示すように、入熱熱流束は、最初の溶け落ち後の増加は抑えられ、再度負になり再度負から正に転じている。即ち、スクラップの溶け落ちが2回起きていることが分かる。即ち、一度の溶け落ちで全てのスクラップが溶け落ちるわけではなく、複数回に分けて溶け落ち、均一性の高い溶け落ちプロセスが進行することが分かる。このため、本装置を用いることで適切に電力が管理され、炉壁耐火物の損耗が少なくなり耐火物寿命が大幅に延びた。スクラップ単位重量あたりの電力が11%程度節約でき、耐火物寿命が3倍に延び、電気炉の効率が著しく上昇した。
図8に、スクラップ溶解を19回実施したときのホットスポットにおける各溶解終了後の損耗量の実績値(実績)、各溶解前の損耗量を入力して推定した推定値(推定1)及び初期状態から通して推定した推定値(推定2)を示す。また、損耗進行速度推定式として式(29)を用いた。推定2は推定1と比較して若干精度が落ちるものの、両者ともに良好な推定精度が得られている。
(その他の実施形態)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。すなわち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
1:電気炉、2:上部蓋、3:アーク電極、4:炉底電極、5:熱電対、6:直角軸線、7:ホットスポット、8:スクラップ、9:溶鋼、101:計算機、102:温度サンプリング装置、103:投入電力制御装置、104:電力投入装置

Claims (28)

  1. 複数のアーク電極を用いる電気炉においてスクラップを溶解する際のスクラップの溶け落ち判定を実行するスクラップ溶け落ち判定方法であって、
    電気炉の炉壁内部及び炉壁外面のうち複数の位置で温度検出端により温度を測定する温度測定手順と、
    前記温度検出端で測定した温度に基づいて炉壁の内周面における熱流束を算出する熱流束算出手順と、
    前記熱流束算出手順で算出した炉壁の内周面における熱流束に基づいてスクラップの溶け落ちの開始を判定する判定手順とを有し、
    前記複数の温度検出端は、前記電気炉の中心軸に直交する直線であって、前記アーク電極の中心軸上を通る直線の近傍、且つ、スクラップが全て溶け落ちた場合に溶鋼の湯面より上の位置に配置され、
    前記熱流束算出手順では、前記電気炉の炉体を含む領域の熱伝導を記述する非定常熱伝導方程式を用いた非定常伝熱逆問題解析により炉壁の内周面における熱流束を算出することを特徴とする電気炉におけるスクラップ溶け落ち判定方法。
  2. スクラップ装入前に前記領域における炉壁の内周面の損耗量を測定する損耗量測定手順を更に有し、
    前記熱流束算出手順では、前記損耗量測定手順に基づいた炉壁厚みを用いて炉壁の内周面における熱流束を算出することを特徴とする請求項1に記載の電気炉におけるスクラップ溶け落ち判定方法。
  3. 前記アーク電極に対して列又は群をなす前記温度検出端の位置の平均である重心位置は、前記直線上にあるようにすることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気炉におけるスクラップ溶け落ち判定方法。
  4. 単数のアーク電極を用いる電気炉においてスクラップを溶解する際のスクラップの溶け落ち判定を実行するスクラップ溶け落ち判定方法であって、
    電気炉の炉壁内部及び炉壁外面のうち複数の位置で温度検出端により温度を測定する温度測定手順と、
    前記温度検出端で測定した温度に基づいて炉壁の内周面における熱流束を算出する熱流束算出手順と、
    前記熱流束算出手順で算出した炉壁の内周面における熱流束に基づいてスクラップの溶け落ちの開始を判定する判定手順とを有し、
    前記複数の温度検出端は、スクラップが全て溶け落ちた場合に溶鋼の湯面より上の位置に配置され、
    前記熱流束算出手順では、前記電気炉の炉体を含む領域の熱伝導を記述する非定常熱伝導方程式を用いた非定常伝熱逆問題解析により炉壁の内周面における熱流束を算出することを特徴とする電気炉におけるスクラップ溶け落ち判定方法。
  5. スクラップ装入前に炉壁の内周面の損耗量を測定する損耗量測定手順を更に有し、
    前記熱流束算出手順では、前記損耗量測定手順に基づいた炉壁厚みを用いて炉壁の内周面における熱流束を算出することを特徴とする請求項4に記載の電気炉におけるスクラップ溶け落ち判定方法。
  6. 前記判定手順では、前記熱流束算出手順で算出した炉壁の内周面における熱流束の経時変化において、該熱流束の値が正の値に転じる時点で、或いは0より大きい閾値を超えた時点で、スクラップの溶け落ち開始と判定し、
    前記熱流束は、前記熱流束の方向が前記電気炉の内部から前記炉壁に入る方向である場合に前記正の値をとることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電気炉におけるスクラップ溶け落ち判定方法。
  7. 前記熱流束算出手順では、炉壁の内周面における熱流束を、前記温度検出端で測定した温度に基づいて、前記非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析によって算出した温度の炉壁の内周面の法線方向の温度勾配によって算出するものであり、
    前記非定常熱伝導方程式は、炉壁温度をT、炉壁耐火物密度をρ、炉壁耐火物比熱をC、炉壁耐火物のx方向の熱伝導度をkx、y方向の熱伝導度をky、z方向の熱伝導度をkzとして、下式(1)で表わされ、
    位置ベクトル(x,y,z)、時間tとし、前記非定常熱伝導方程式の厳密解を与えるx、y、z、tを変数とする内外挿関数F、及びパラメータαj,i、基準位置ベクトル(xj,yj,yj)、基準時間ti、基準位置ベクトルの数Nj、基準時間の数Niを用いて、前記非定常熱伝導方程式の厳密解を与える関数を、下式(2)により表現し、
    (xk,yk,yk)を温度情報測定位置ベクトル、tlを温度サンプリング時間とし、温度情報測定位置において測定された温度情報ak,lとして、前記パラメータαj,iを、下記の連立方程式(3)を用いて決めることを特徴とする請求項6に記載の電気炉におけるスクラップ溶け落ち判定方法。
    Figure 0006702014
  8. 前記内外挿関数F(x,y,z,t)を、下式(4)で与えることを特徴とする請求項7に記載の電気炉におけるスクラップ溶け落ち判定方法。
    Figure 0006702014
  9. 温度のサンプリング回数Nlは、基準時間の数Niに等しく、且つ温度のサンプリング時間の時間間隔と基準時間の時間間隔とを等しくすることを特徴とする請求項7又は8に記載の電気炉におけるスクラップ溶け落ち判定方法。
  10. 請求項1乃至9のいずれか1項に記載の電気炉におけるスクラップ溶け落ち判定方法における前記熱流束算出手順と、前記判定手順とをコンピュータに実行させるためのプログラム。
  11. 複数のアーク電極を用いる電気炉においてスクラップを溶解する際のスクラップの溶け落ち判定を実行するスクラップ溶け落ち判定システムであって、
    電気炉の炉壁内部及び炉壁外面のうち複数の位置で温度を測定する温度検出端と、
    前記温度検出端で測定した温度に基づいて炉壁の内周面における熱流束を算出する熱流束算出手段と、
    前記熱流束算出手段で算出した炉壁の内周面における熱流束に基づいてスクラップの溶け落ちの開始を判定する判定手段とを備え、
    前記複数の温度検出端は、前記電気炉の中心軸に直交する直線であって、前記アーク電極の中心軸上を通る直線の近傍、且つ、スクラップが全て溶け落ちた場合に溶鋼の湯面より上の位置に配置され、
    前記熱流束算出手段では、前記電気炉の炉体を含む領域の熱伝導を記述する非定常熱伝導方程式を用いた非定常伝熱逆問題解析により炉壁の内周面における熱流束を算出することを特徴とする電気炉におけるスクラップ溶け落ち判定システム。
  12. スクラップ装入前に前記領域における炉壁の内周面の損耗量を測定する損耗量測定手段を更に有し、
    前記熱流束算出手段では、前記損耗量測定手段に基づいた炉壁厚みを用いて炉壁の内周面における熱流束を算出することを特徴とする請求項11に記載の電気炉におけるスクラップ溶け落ち判定システム。
  13. 単数のアーク電極を用いる電気炉においてスクラップを溶解する際のスクラップの溶け落ち判定を実行するスクラップ溶け落ち判定システムであって、
    電気炉の炉壁内部及び炉壁外面のうち複数の位置で温度を測定する温度検出端と、
    前記温度検出端で測定した温度に基づいて炉壁の内周面における熱流束を算出する熱流束算出手段と、
    前記熱流束算出手段で算出した炉壁の内周面における熱流束に基づいてスクラップの溶け落ちの開始を判定する判定手段とを備え、
    前記複数の温度検出端は、スクラップが全て溶け落ちた場合に溶鋼の湯面より上の位置に配置され、
    前記熱流束算出手段では、前記電気炉の炉体を含む領域の熱伝導を記述する非定常熱伝導方程式を用いた非定常伝熱逆問題解析により炉壁の内周面における熱流束を算出することを特徴とする電気炉におけるスクラップ溶け落ち判定システム。
  14. スクラップ装入前に炉壁の内周面の損耗量を測定する損耗量測定手段を更に有し、
    前記熱流束算出手段では、前記損耗量測定手段に基づいた炉壁厚みを用いて炉壁の内周面における熱流束を算出することを特徴とする請求項13に記載の電気炉におけるスクラップ溶け落ち判定システム。
  15. 複数のアーク電極を用いる電気炉においてスクラップを溶解する際の炉壁の損耗量の推定を実行する炉壁損耗量推定方法であって、
    電気炉の炉壁内部及び炉壁外面のうち複数の位置で温度検出端により温度を測定する温度測定手順と、
    前記温度検出端で測定した温度に基づいて炉壁の内周面における温度及び熱流束の少なくとも何れか一方を算出する温度・熱流束算出手順と、
    前記温度・熱流束算出手順で算出した炉壁の内周面における温度及び熱流束の少なくとも何れか一方に基づいて炉壁の損耗量を算出する炉壁損耗量算出手順とを有し、
    前記複数の温度検出端は、前記電気炉の中心軸に直交する直線であって、前記アーク電極の中心軸上を通る直線の近傍、且つ、スクラップが全て溶け落ちた場合に溶鋼の湯面より上の位置に配置され、
    前記熱流束算出手順では、前記電気炉の炉体を含む領域の熱伝導を記述する非定常熱伝導方程式を用いた非定常伝熱逆問題解析により炉壁の内周面における熱流束を算出することを特徴とする電気炉における炉壁損耗量推定方法。
  16. スクラップ装入前に前記領域における炉壁の内周面の損耗量を測定する損耗量測定手順を更に有し、
    前記温度・熱流束算出手順では、前記損耗量測定手順に基づいた炉壁厚みを用いて炉壁の内周面における温度及び熱流束の少なくとも何れか一方を算出することを特徴とする請求項15に記載の電気炉における炉壁損耗量推定方法。
  17. 前記アーク電極に対して列又は群をなす前記温度検出端の位置の平均である重心位置は、前記直線上にあるようにすることを特徴とする請求項15又は16に記載の電気炉における炉壁損耗量推定方法。
  18. 単数のアーク電極を用いる電気炉においてスクラップを溶解する際の炉壁の損耗量の推定を実行する炉壁損耗量推定方法であって、
    電気炉の炉壁内部及び炉壁外面のうち複数の位置で温度検出端により温度を測定する温度測定手順と、
    前記温度検出端で測定した温度に基づいて炉壁の内周面における温度及び熱流束の少なくとも何れか一方を算出する温度・熱流束算出手順と、
    前記温度・熱流束算出手順で算出した炉壁の内周面における温度及び熱流束の少なくとも何れか一方に基づいて炉壁の損耗量を算出する炉壁損耗量算出手順とを有し、
    前記複数の温度検出端は、スクラップが全て溶け落ちた場合に溶鋼の湯面より上の位置に配置され、
    前記熱流束算出手順では、前記電気炉の炉体を含む領域の熱伝導を記述する非定常熱伝導方程式を用いた非定常伝熱逆問題解析により炉壁の内周面における熱流束を算出することを特徴とする電気炉における炉壁損耗量推定方法。
  19. スクラップ装入前に炉壁の内周面の損耗量を測定する損耗量測定手順を更に有し、
    前記温度・熱流束算出手順では、前記損耗量測定手順に基づいた炉壁厚みを用いて炉壁の内周面における温度及び熱流束の少なくとも何れか一方を算出することを特徴とする請求項18に記載の電気炉における炉壁損耗量推定方法。
  20. 前記炉壁損耗量算出手順では、前記温度・熱流束算出手順で算出した炉壁の内周面における温度及び熱流束の少なくとも何れか一方から損耗進行速度を決定して炉壁の損耗量を算出することを特徴とする請求項15乃至19のいずれか1項に記載の電気炉における炉壁損耗量推定方法。
  21. 前記温度・熱流束算出手順では、炉壁の内周面における温度を、前記温度検出端で測定した温度に基づいて、前記非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析によって算出し、炉壁の内周面における熱流束を、算出した温度の炉壁の内周面の法線方向の温度勾配によって算出するものであり、
    前記非定常熱伝導方程式は、炉壁温度をT、炉壁耐火物密度をρ、炉壁耐火物比熱をC、炉壁耐火物のx方向の熱伝導度をkx、y方向の熱伝導度をky、z方向の熱伝導度をkzとして、下式(1)で表わされ、
    位置ベクトル(x,y,z)、時間tとし、前記非定常熱伝導方程式の厳密解を与えるx、y、z、tを変数とする内外挿関数F、及びパラメータαj,i、基準位置ベクトル(xj,yj,yj)、基準時間ti、基準位置ベクトルの数Nj、基準時間の数Niを用いて、前記非定常熱伝導方程式の厳密解を与える関数を、下式(2)により表現し、
    (xk,yk,yk)を温度情報測定位置ベクトル、tlを温度サンプリング時間とし、温度情報測定位置において測定された温度情報ak,lとして、前記パラメータαj,iを、下記の連立方程式(3)を用いて決めることを特徴とする請求項20に記載の電気炉における炉壁損耗量推定方法。
    Figure 0006702014
  22. 前記内外挿関数F(x,y,z,t)を、下式(4)で与えることを特徴とする請求項21に記載の電気炉における炉壁損耗量推定方法。
    Figure 0006702014
  23. 温度のサンプリング回数Nlは、基準時間の数Niに等しく、且つ温度のサンプリング時間の時間間隔と基準時間の時間間隔とを等しくすることを特徴とする請求項21又は22に記載の電気炉における炉壁損耗量推定方法。
  24. 請求項15乃至23のいずれか1項に記載の電気炉における炉壁損耗量推定方法における前記温度・熱流束算出手順と、前記炉壁損耗量算出手順とをコンピュータに実行させるためのプログラム。
  25. 複数のアーク電極を用いる電気炉においてスクラップを溶解する際の炉壁の損耗量の推定を実行する炉壁損耗量推定システムであって、
    電気炉の炉壁内部及び炉壁外面のうち複数の位置で温度を測定する温度検出端と、
    前記温度検出端で測定した温度に基づいて炉壁の内周面における温度及び熱流束の少なくとも何れか一方を算出する温度・熱流束算出手段と、
    前記温度・熱流束算出手段で算出した炉壁の内周面における温度及び熱流束の少なくとも何れか一方に基づいて炉壁の損耗量を算出する炉壁損耗量算出手段とを備え、
    前記複数の温度検出端は、前記電気炉の中心軸に直交する直線であって、前記アーク電極の中心軸上を通る直線の近傍、且つ、スクラップが全て溶け落ちた場合に溶鋼の湯面より上の位置に配置され、
    前記熱流束算出手段では、前記電気炉の炉体を含む領域の熱伝導を記述する非定常熱伝導方程式を用いた非定常伝熱逆問題解析により炉壁の内周面における熱流束を算出することを特徴とする電気炉における炉壁損耗量推定システム。
  26. スクラップ装入前に前記領域における炉壁の内周面の損耗量を測定する損耗量測定手段を更に有し、
    前記温度・熱流束算出手段では、前記損耗量測定手段に基づいた炉壁厚みを用いて炉壁の内周面における熱流束を算出することを特徴とする請求項25に記載の電気炉における炉壁損耗量推定システム。
  27. 単数のアーク電極を用いる電気炉においてスクラップを溶解する際の炉壁の損耗量の推定を実行する炉壁損耗量推定システムであって、
    電気炉の炉壁内部及び炉壁外面のうち複数の位置で温度を測定する温度検出端と、
    前記温度検出端で測定した温度に基づいて炉壁の内周面における温度及び熱流束の少なくとも何れか一方を算出する温度・熱流束算出手段と、
    前記温度・熱流束算出手段で算出した炉壁の内周面における温度及び熱流束の少なくとも何れか一方に基づいて炉壁の損耗量を算出する炉壁損耗量算出手段とを備え、
    前記複数の温度検出端は、スクラップが全て溶け落ちた場合に溶鋼の湯面より上の位置に配置され、
    前記熱流束算出手段では、前記電気炉の炉体を含む領域の熱伝導を記述する非定常熱伝導方程式を用いた非定常伝熱逆問題解析により炉壁の内周面における熱流束を算出することを特徴とする電気炉における炉壁損耗量推定システム。
  28. スクラップ装入前に炉壁の内周面の損耗量を測定する損耗量測定手段を更に有し、
    前記温度・熱流束算出手段では、前記損耗量測定手段に基づいた炉壁厚みを用いて炉壁の内周面における熱流束を算出することを特徴とする請求項27に記載の電気炉における炉壁損耗量推定システム。
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