JP7091901B2 - 鋳造状態判定装置、鋳造状態判定方法、およびプログラム - Google Patents
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Description
図16に示すように、連続鋳造工程では、浸漬ノズル6から鋳型4内に溶鋼1が注入される。鋳型4内に注入された溶鋼1は、鋳型4で冷却され、その表面から凝固シェル2が形成されて凝固する。表面は凝固シェル2となっているが内部は凝固していない鋼が、鋳型4の下端部から連続的に引き出される。このようにして鋳型4から引き出される過程で、鋳型4の下方に配置される2次冷却部分(冷却スプレーから噴射される冷却水)によって鋼の冷却を進めることで、内部まで鋼が凝固される。
割れ性ブレークアウトを予測する技術として特許文献1に記載の技術がある。
特許文献1には、鋳型4の短辺近傍の湯面レベル(溶鋼の表面の高さ位置)の単位時間当たりの変動量が、予め設定された上限値を上回る場合に、鋳造速度を低下させることが記載されている。
また、特許文献2には、鋳型4内を鋳造方向に移動する凝固シェル2の特定位置が、鋳型4内において熱電対が埋設されている各位置を通過するときの熱流束の時間変化量の積に基づいて、ブレークアウトの発生の判定を行うことが記載されている。
本発明の鋳造状態判定装置の第2の例は、連続鋳造工程における割れ性ブレークアウトの予兆の発生の有無を判定する鋳造状態判定装置であって、鋳型に埋設された複数の測温手段であって、鋳造方向における位置が相互に異なる複数の測温手段で測定された温度を取得する温度取得手段と、前記温度取得手段により所定時間内の複数の時刻に取得された温度を用いて、前記鋳造方向における複数の位置での凝固シェルの厚みを前記所定時間内の複数の時刻のそれぞれにおいて導出する凝固シェル厚導出手段と、前記鋳造方向における2つの位置での前記凝固シェルの厚みの相関を示す指標を導出する相関導出手段と、前記相関導出手段により導出された前記指標に基づいて、前記割れ性ブレークアウトの予兆の発生の有無を判定する判定手段と、を有し、前記相関導出手段は、前記2つの位置の組として、少なくとも何れか一方の位置が相互に異なる複数の組のそれぞれについて、当該2つの位置における前記凝固シェルの厚みの相関を示す指標を導出し、前記判定手段は、前記相関導出手段により導出された前記指標と、当該指標の頻度との関係を、前記複数の組に対する前記指標のそれぞれについて導出し、導出した複数の関係に基づいて、前記割れ性ブレークアウトの予兆の発生の有無を判定することを特徴とする。
本発明の鋳造状態判定装置の第3の例は、連続鋳造工程における割れ性ブレークアウトの予兆の発生の有無を判定する鋳造状態判定装置であって、鋳型に埋設された複数の測温手段であって、鋳造方向における位置が相互に異なる複数の測温手段で測定された温度を取得する温度取得手段と、前記温度取得手段により所定時間内の複数の時刻に取得された温度を用いて、前記鋳造方向における複数の位置での凝固シェルの厚みを前記所定時間内の複数の時刻のそれぞれにおいて導出する凝固シェル厚導出手段と、前記鋳造方向における2つの位置での前記凝固シェルの厚みの相関を示す指標を導出する相関導出手段と、前記相関導出手段により導出された前記指標に基づいて、前記割れ性ブレークアウトの予兆の発生の有無を判定する判定手段と、を有し、前記鋳型は、水平断面における長手方向の長さが相対的に長い長辺部であって、相互に間隔を有して配置される2つの長辺部と、水平断面における長手方向の長さが相対的に短い短辺部であって、相互に間隔を有して配置される2つの短辺部と、を有し、前記2つの長辺部と前記2つの短辺部とを組み合わせることにより形成される中空の領域に溶鋼が注入される構成であり、前記測温手段は、前記短辺部の領域、または、前記長辺部の第1の位置から第2の位置までの間の領域に埋設され、前記長辺部の第1の位置は、前記長辺部の前記短辺部と接触している位置のうち、前記鋳型の最も中心側の位置であり、前記長辺部の第2の位置は、前記長辺部の第1の位置から、前記鋳型の水平断面の長辺の方向に沿って前記鋳型の中心側に100mm離れた位置であることを特徴とする。
本発明の鋳造状態判定方法の第2の例は、連続鋳造工程における割れ性ブレークアウトの予兆の発生の有無を判定する鋳造状態判定方法であって、鋳型に埋設された複数の測温手段であって、鋳造方向における位置が相互に異なる複数の測温手段で測定された温度を取得する温度取得工程と、前記温度取得工程により所定時間内の複数の時刻に取得された温度を用いて、前記鋳造方向における複数の位置での凝固シェルの厚みを前記所定時間内の複数の時刻のそれぞれにおいて導出する凝固シェル厚導出工程と、前記鋳造方向における2つの位置での前記凝固シェルの厚みの相関を示す指標を導出する相関導出工程と、前記相関導出工程により導出された前記指標に基づいて、前記割れ性ブレークアウトの予兆の発生の有無を判定する判定工程と、を有し、前記相関導出工程では、前記2つの位置の組として、少なくとも何れか一方の位置が相互に異なる複数の組のそれぞれについて、当該2つの位置における前記凝固シェルの厚みの相関を示す指標を導出し、前記判定工程では、前記相関導出工程により導出された前記指標と、当該指標の頻度との関係を、前記複数の組に対する前記指標のそれぞれについて導出し、導出した複数の関係に基づいて、前記割れ性ブレークアウトの予兆の発生の有無を判定することを特徴とする。
本発明の鋳造状態判定方法の第3の例は、連続鋳造工程における割れ性ブレークアウトの予兆の発生の有無を判定する鋳造状態判定方法であって、鋳型に埋設された複数の測温手段であって、鋳造方向における位置が相互に異なる複数の測温手段で測定された温度を取得する温度取得工程と、前記温度取得工程により所定時間内の複数の時刻に取得された温度を用いて、前記鋳造方向における複数の位置での凝固シェルの厚みを前記所定時間内の複数の時刻のそれぞれにおいて導出する凝固シェル厚導出工程と、前記鋳造方向における2つの位置での前記凝固シェルの厚みの相関を示す指標を導出する相関導出工程と、前記相関導出工程により導出された前記指標に基づいて、前記割れ性ブレークアウトの予兆の発生の有無を判定する判定工程と、を有し、前記鋳型は、水平断面における長手方向の長さが相対的に長い長辺部であって、相互に間隔を有して配置される2つの長辺部と、水平断面における長手方向の長さが相対的に短い短辺部であって、相互に間隔を有して配置される2つの短辺部と、を有し、前記2つの長辺部と前記2つの短辺部とを組み合わせることにより形成される中空の領域に溶鋼が注入される構成であり、前記測温手段は、前記短辺部の領域、または、前記長辺部の第1の位置から第2の位置までの間の領域に埋設され、前記長辺部の第1の位置は、前記長辺部の前記短辺部と接触している位置のうち、前記鋳型の最も中心側の位置であり、前記長辺部の第2の位置は、前記長辺部の第1の位置から、前記鋳型の水平断面の長辺の方向に沿って前記鋳型の中心側に100mm離れた位置であることを特徴とする。
<着想>
前述したように、湯面レベルの変動や熱流束といった指標を用いても割れ性ブレークアウトの発生を正確に予測することは容易ではない。割れ性ブレークアウトは、凝固シェル2の厚みが不均一であることにより発生することから、本発明者らは、凝固シェル2の厚みを捉えることにより、割れ性ブレークアウトの発生を予測することを指向し、以下の着想に想到した。即ち、鋳型4のコーナー部付近の領域において凝固シェル2の厚みが薄くなると、当該厚みが薄い凝固シェル2の領域にかかる応力が急激に大きくなる。このような応力の急激な変動により、割れ性ブレークアウトが生じると考えられる。従って、鋳造方向(鋳型4の高さ方向)における凝固シェル2の厚みの分布が急激に変動する場合に割れ性ブレークアウトが生じると考えられる。また、凝固シェル2は、鋳造方向の上から下に移動する。従って、或る時刻において鋳造方向の相対的に上側の第1の位置にある凝固シェル2の厚みは、相対的に下側の第2の位置に移動すると、当該時刻において当該第2の位置にある凝固シェル2の厚みになると推測することができる。そこで、本発明者らは、各時刻において、鋳造方向の複数の位置における凝固シェル2の厚みの相関がとれているか否かを判定することで、割れ性ブレークアウトの予兆を精度よくオンラインで検出することができると考えた。以下に説明する本発明の各実施形態は、このような着想の下でなされたものである。
以上のように、複数の熱電対7により測定された温度を用いて、非定常伝熱逆問題解析を行うことにより、鋳型内凝固状態推定量が導出される。ここで、非定常伝熱逆問題とは、計算領域を支配する非定常熱伝導方程式を基にして、当該非定常熱伝導方程式で求める解となる領域内部の温度情報を既知として、領域境界での温度や熱流束や熱伝達係数などの、当該非定常熱伝導方程式を解く際の境界条件または初期条件を推定する問題を指す。これに対して、非定常伝熱順問題は、既知である境界条件を基にして、領域内部の温度情報を推定する問題を指す。
以上が、特許文献3に記載の鋳型4内の凝固状態の推定方法である。
熱電対7の埋設位置は、鋳造状況を監視するために従来から使用している熱電対7の埋設位置(既存の鋳型4における熱電対7の埋設位置)でもよい。ただし、鋳型4内の凝固状態の推定を行うに際しては、以下のように鋳型4に熱電対7が埋設されるようにするのが好ましい。以下、鋳型4内の凝固状態の推定を行うに際し、好適な熱電対7(測温手段)の埋設位置について説明する。
鋳造方向(z軸方向)における熱電対7の埋設位置は、特許文献3に記載のように定めるのが好ましい。即ち、鋳型4において想定されている溶鋼1の湯面レベルと、当該湯面レベルから鋳造方向において下方に95mmだけ離れた位置とにより定まる範囲内の任意の位置をP1とする。また、溶鋼1の湯面レベルから鋳造方向において下方に220mm以上400mm以内だけ離れた範囲内の任意の位置をP2とする。このようにして定義される位置P1から位置P2までの範囲に鋳造方向において120mm以下の間隔で熱電対7を設け、且つ、鋳型4の下端から300mm以内の位置に少なくとも1つ熱電対7を設けるのが好ましい。また、鋳造方向において異なる位置に埋設される熱電対7の数は、5以上であるのが好ましい。
配置パターン1は、鋳型4の上端から100mm以上340mm以内の範囲において間隔が120mmとなるように熱電対7を埋設すると共に、鋳型4の下端から250mmまでの位置に1つ熱電対7を埋設することを示す。
配置パターン2は、鋳型4の上端から40mm以上400mm以内の範囲において間隔が120mmとなるように熱電対7を埋設すると共に、鋳型4の下端から250mmまでの位置に2つ熱電対7を埋設することを示す。
配置パターン3は、鋳型4の上端から100mm以上340mm以内の範囲において間隔が60mmとなるように熱電対7を埋設すると共に、鋳型4の下端から250mmまでの位置に1つ熱電対7を埋設することを示す。
配置パターン4は、鋳型4の上端から100mm以上340mm以内の範囲において間隔が120mm以下で不等間隔となるように熱電対7を埋設すると共に、鋳型4の下端から250mmの位置に1つ熱電対7を埋設することを示す。
一般的な連続鋳造機では、溶鋼1の湯面の、鋳型4の上端からの距離が80mm以上120mm以内の位置になるように溶鋼1の注入量を調整していることから、位置P1を鋳型4の上端から120mm以上175mm以下の任意の位置とし、位置P2を鋳型4の上端から340mm以上480mm以下の任意の位置とすれば、溶鋼1の湯面がいずれの位置であっても、鋳造方向の熱電対7の埋設位置の好適な条件を満足することになる。
以下、凝固シェル2の厚みをオンラインで導出する手法として<鋳型4内の凝固状態の推定方法>で説明した手法を用いると共に、熱電対7の埋設位置が<熱電対7の位置>で説明した位置であるものとして、本発明の鋳造状態判定装置100の実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態を説明する。
図4は、鋳造状態判定装置100の機能的な構成の一例を示す図である。
[温度取得部401]
温度取得部401は、鋳造方向の埋設位置が相互に異なる複数の熱電対7で測定された温度を取得する。温度取得部401は、取得した温度を用いて補間処理および補外処理の少なくとも何れか一方を行うことにより、鋳造方向における鋳型4の温度分布を導出する。これにより、熱電対7の埋め込み深さ位置での鋳型4の温度Tc(t,z)が得られる。温度取得部401は、複数の熱電対7で測定された温度を0.01s以上、20s以下の間隔で取得するのが好ましい。複数の熱電対7で測定された温度の取得間隔(サンプリング間隔)を0.01s未満とすると、鋳型状態判定装置100のメモリ容量が足りなくなる。このため、処理がオーバーフローを起こす虞がある。また、複数の熱電対7で測定された温度の取得間隔を0.01s未満としても、割れ性ブレークアウトの予兆の検出精度は大きく向上しない。一方、複数の熱電対7で測定された温度の取得間隔が20sを上回ると、凝固シェル2の厚みsest(t,z)の導出間隔が大きくなる。このため、割れ性ブレークアウトの予兆の検出精度が低下する虞がある。
熱流束導出部402は、温度取得部401で得られた、各熱電対7の埋め込み深さ位置での鋳型4の温度Tc(t,z)から式(48)を用いて、鋳型4を通過する熱流束qout(t,z)を導出する。
[鋳型内壁面温度導出部403]
鋳型内壁面温度導出部403は、温度取得部401で得られた、各熱電対7の埋め込み深さ位置での鋳型4の温度Tc(t,z)から式(47)を用いて、鋳型4の内壁面の温度Tm(t,z)を導出する。
熱伝達係数導出部404は、温度取得部401で得られた、熱電対7の埋め込み深さ位置での鋳型4の温度Tcと、熱流束導出部402で得られた、鋳型4を通過する熱流束qoutと、鋳型内壁面温度導出部403で得られた、鋳型4の内壁面の温度Tmとを用いて式(50)の最小化問題を解くことにより、熱伝達係数αest(t,z)、βest(t,z)を同時に導出(決定)する。
凝固シェル厚導出部405は、鋳型内壁面温度導出部403で得られた、鋳型4の内壁面の温度Tmと、熱伝達係数導出部404で得られた、熱伝達係数αest(t,z)、βest(t,z)とを式(46)に適用して、凝固シェル2の厚みsest(t,z)および凝固シェル2の温度Test(t,z,x)を導出する。これにより、熱電対7による温度の測定時刻t、各熱電対7の鋳造方向の埋設位置zにおける凝固シェル2の厚みsest(t,z)が得られる。尚、凝固シェル2の温度Test(t,z,x)については必ずしも導出する必要はない。温度取得部401、熱流束導出部402、鋳型内壁面温度導出部403、熱伝達係数導出部404、凝固シェル厚導出部405における処理は、熱電対7で測定された温度が取得される度に繰り返し行われる。
相関係数導出部406は、所定時間分の凝固シェル2の厚みsest(t,z)が得られたか否かを判定する。そして、相関係数導出部406は、所定時間分の凝固シェル2の厚みsest(t,z)が得られると、鋳造方向の埋設位置が相互に異なる2つの熱電対7の鋳造方向の埋設位置のそれぞれにおける凝固シェル2の厚みsest(t,z)の相関係数を導出する。尚、以下の説明では、この相関係数を、必要に応じて凝固シェル厚み相関係数と称する。また、相関係数は、2変数の共分散を、2変数の標準偏差の積で割った値である。
凝固シェル状態判定部407は、相関係数導出部406により得られた、凝固シェル厚み相関係数の値に基づいて、割れ性ブレークアウトの予兆が発生しているか否かを判定する。
本実施形態では、相関係数導出部406は、各時刻において、複数の凝固シェル厚み相関係数を導出する。従って、複数の凝固シェル厚み相関係数について、それらの時系列データが得られる。そこで、本実施形態では、凝固シェル状態判定部407は、複数の凝固シェル厚み相関係数の時系列データを用いて、割れ性ブレークアウトの予兆が発生しているか否かを判定する。以下に、複数の凝固シェル厚み相関係数の時系列データを用いた、割れ性ブレークアウトの予兆の発生の有無の判定方法の一例を説明する。
その後、凝固シェル状態判定部407は、相関係数導出部406により、複数の凝固シェル厚み相関係数が新たに導出されると、当該複数の凝固シェル厚み相関係数を保持しておいた複数の凝固シェル厚み相関係数に追加して、それらを用いて、複数の凝固シェル厚み相関係数が新たに導出された時刻において割れ性ブレークアウトの予兆が発生しているか否かを判定する。
まず、連続鋳造設備を実際に操業して、割れ性ブレークアウトが発生した場合と、そうでない場合とのそれぞれについて、凝固シェル厚み相関係数の時系列データを収集する。そして、割れ性ブレークアウトが発生したときの凝固シェル厚み相関係数の時系列データと、割れ性ブレークアウトが発生していないときの凝固シェル厚み相関係数の時系列データと、を見比べて、前述した所定時間、閾値、および所定数としてどのような値が適切であるのかを定める。例えば、所定時間として10分、閾値として0.75、所定数として3を採用することができる。尚、閾値としては、凝固シェル厚み相関係数の導出対象となる凝固シェル2の厚みsest(t,z)の鋳造方向の位置の組の間隔(凝固シェル厚み相関係数を導出するために用いる2つの熱電対7の鋳造方向の間隔)が短いほど大きな値を採用するのが好ましい。
出力部408は、凝固シェル状態判定部407により、割れ性ブレークアウトの予兆が発生していると判定されると、そのことを示す情報を出力する。この情報の出力の形態は、例えば、コンピュータディスプレイへの表示、鋳造状態判定装置100の外部、内部の記憶媒体への記憶、および外部装置への送信の少なくとも何れか1つにより実現される。尚、出力部408は、凝固シェル状態判定部407により、割れ性ブレークアウトの予兆が発生していないと判定された場合に、そのことを示す情報を出力してもよい。
次に、図5のフローチャートを参照しながら、鋳造状態判定装置100による鋳造状態判定方法の一例を説明する。尚、図5のフローチャートは、温度取得部401により、鋳造方向の位置が異なる複数の熱電対7で測定された温度が取得される度に、繰り返し実行されるものとする。また、前述した計算で使用する既知の値については、図5のフローチャートの開始前に得られているものとする。
次に、ステップS503において、鋳型内壁面温度導出部403は、ステップS501で得られた、各熱電対7の埋め込み深さ位置での鋳型4の温度Tc(t,z)から式(47)を用いて、鋳型4の内壁面の温度Tm(t,z)を導出する。
次に、ステップS510において、出力部408は、割れ性ブレークアウトの予兆が発生していることを示す情報を出力する。そして、図5のフローチャートによる処理が終了する。尚、ステップS509において、閾値を下回る凝固シェル厚み相関係数の数が所定数以上でないと判定された場合に、出力部408は、割れ性ブレークアウトの予兆が発生していないことを示す情報を出力してもよい。
試験用の鋳型を用いて実際の操業を模擬し、当該鋳型に埋め込まれた熱電対で測定された温度を本実施形態の鋳造状態判定装置100に与えて前述した処理により、凝固シェル厚み相関係数の時系列データを得た。位置P1から位置P2までの範囲に鋳造方向において20mm間隔で15個の熱電対を配置し、位置P2よりも下方に4個の熱電対を配置した。鋳型4の下端から300mm以内の位置に配置される熱電対の数は1個とした。また、各熱電対は、鋳型の短辺部の幅方向および厚み方向の中央の位置に配置した。
図6(a)は、前述した15個の熱電対のうち、上から5番目の熱電対の埋設位置における凝固シェル2の厚みsest(t,z)と、上から6番目の熱電対の埋設位置における凝固シェル2の厚みsest(t,z)との相関係数(凝固シェル厚み相関係数)を示す。
同様に、図6(b)、図7(a)、図7(b)、図8(a)、図8(b)は、前述した15個の熱電対のうち、上から6、7番目、7、8番目、8、9番目、9、10番目、10、11番目の熱電対の埋設位置における凝固シェル2の厚みsest(t,z)の相関係数(凝固シェル厚み相関係数)を示す。
図7(b)、図8(a)、および図8(b)に示すように3200s~3800sの間において、3個の凝固シェル厚み相関係数が0.75未満となっており、この期間は、エッジ割れ範囲に含まれる。従って、割れ性ブレークアウトの予兆が発生するタイミングに対応して、3個の凝固シェル厚み相関係数が0.75未満となっていることが分かる。
また、図6(a)において、他要因範囲で示す期間において、相関係数(凝固シェル厚み相関係数)が0.75より大きく下回っている。しかしながら、図6(b)、図7(a)、図7(b)、図8(a)、および図8(b)に示すように、この期間において、その他の相関係数(凝固シェル厚み相関係数)は0.75を下回っていない。このため、割れ性ブレークアウトの予兆が発生しているとは判定されない。よって、割れ性ブレークアウトの予兆が発生していることが過検出されることが抑制されることが分かる。
以上のように本実施形態では、鋳造状態判定装置100は、鋳造方向における埋設位置が相互に異なる2つの熱電対7の埋設位置における凝固シェル2の厚みの相関係数(凝固シェル厚み相関係数)を複数導出する。そして、鋳造状態判定装置100は、所定時間において、閾値を下回る凝固シェル厚み相関係数の数が所定数以上である場合に、割れ性ブレークアウトの予兆が発生していると判定し、そうでない場合に、割れ性ブレークアウトの予兆が発生していないと判定する。従って、割れ性ブレークアウトが発生する際の凝固シェルの挙動を推測して、割れ性ブレークアウトの予兆が発生しているか否かを判定することができる。よって、湯面レベルや、熱電対7で測定された温度そのものや、熱流束そのものといった、割れ性ブレークアウトに対する間接的な評価指標を用いる場合よりも、割れ性ブレークアウトの予兆が発生しているか否かを精度よく判定することができる。連続鋳造工程において割れ性ブレークアウトが発生するか否かを精度よくオンラインで予測することができる。
本実施形態のように、複数の凝固シェル厚み相関係数を導出し、それらを用いて、割れ性ブレークアウトの予兆が発生しているか否かを判定すれば、割れ性ブレークアウトの予兆の検出精度を向上させることができるので好ましい。しかしながら、割れ性ブレークアウトの予兆が発生しているか否かを判定するために用いる凝固シェル厚み相関係数の数は1つであってもよい。例えば、鋳型4の構造や特性等により、割れ性ブレークアウトの予兆を顕著に表す凝固シェルの鋳造方向の範囲が特定される場合には、当該範囲内の2つの位置における凝固シェル2の厚みから凝固シェル相関係数を導出し、当該凝固シェル相関係数が閾値を下回る場合に、割れ性ブレークアウトの予兆が発生していると判定してもよい。
また、鋳造方向における2つの位置における凝固シェル2の厚みの相関を示す指標を用いて、割れ性ブレークアウトが発生するか否かを判定していれば、必ずしも前述した相関係数を用いなくてもよい。例えば、共分散を用いてもよい。また、鋳造方向における2つの位置における凝固シェル2の厚みの相関を示す指標として、本実施形態で説明した相関係数の逆数を用いる場合には、当該指標が、閾値を上回るか否かを判定することになる。
次に、第2の実施形態を説明する。
第1の実施形態では、凝固シェル厚み相関係数と閾値とを比較することにより、割れ性ブレークアウトの予兆が発生しているか否かを判定する場合を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、凝固シェル厚み相関係数の頻度分布(ヒストグラム)に基づいて、割れ性ブレークアウトの予兆が発生しているか否かを判定する。このように本実施形態と第1の実施形態とは、割れ性ブレークアウトの予兆が発生しているか否かの判定基準が主として異なる。従って、本実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の部分については、図1~図8に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
[温度取得部401~相関係数導出部406]
温度取得部401、熱流束導出部402、鋳型内壁面温度導出部403、熱伝達係数導出部404、凝固シェル厚導出部405、および相関係数導出部406は、第1の実施形態で説明したものと同じ機能で実現することができる。
凝固シェル状態判定部907は、相関係数導出部406により、複数の凝固シェル厚み相関係数の時系列データとして所定時間分の時系列データが得られたか否かを判定する。そして、複数の凝固シェル厚み相関係数の時系列データとして所定時間分の時系列データが得られると、凝固シェル状態判定部907は、当該複数の凝固シェル厚み相関係数のそれぞれについて、当該凝固シェル厚み相関係数の所定時間分の時系列データを用いて、当該凝固シェル厚み相関係数の頻度分布を導出(作成)する。このとき、凝固シェル状態判定部907は、凝固シェル厚み相関係数を対数目盛で表示する片対数グラフで、凝固シェル厚み相関係数の頻度分布を表す。また、凝固シェル厚み相関係数の階級(ビン)の幅は、0.01以上且つ0.1以下とするのが好ましい。ここでは、頻度分布として相対頻度分布を用いた例を挙げて説明する。相対頻度分布とは、ここでは、横軸を凝固シェル厚み相関係数、縦軸を凝固シェル厚み相関係数の各階級に属する相対頻度で示す片対数グラフを意味する(尚、相対頻度とは、各階級に属する個数を全個数で割った値である。このことは、以下の説明でも同じである)。尚、頻度分布として相対頻度分布に代えて絶対頻度分布(縦軸を相対頻度ではなく、各階級に属する個数そのもの(絶対頻度)を用いた頻度分布)を用いてもよい。
その後、凝固シェル状態判定部907は、相関係数導出部406により、複数の凝固シェル厚み相関係数が新たに導出されると、当該複数の凝固シェル厚み相関係数を保持しておいた複数の凝固シェル厚み相関係数に追加して、それらを用いて、複数の凝固シェル厚み相関係数が新たに導出された時刻において割れ性ブレークアウトの予兆が発生しているか否かを判定する。
まず、連続鋳造設備を実際に操業して、割れ性ブレークアウトが発生した場合と、そうでない場合とのそれぞれについて、凝固シェル厚み相関係数の発生頻度の傾きを導出する。そして、割れ性ブレークアウトが発生したときの凝固シェル厚み相関係数の発生頻度の傾きと、割れ性ブレークアウトが発生していないときの凝固シェル厚み相関係数の発生頻度の傾きとを見比べて、前述した所定時間および所定数としてどのような値が適切であるのかを定める。例えば、所定時間として10分、所定数として3を採用することができる。
出力部908は、凝固シェル状態判定部907により、割れ性ブレークアウトの予兆が発生していると判定されると、そのことを示す情報を出力する。この情報の出力の形態は、例えば、コンピュータディスプレイへの表示、鋳造状態判定装置100の外部、内部の記憶媒体への記憶、および外部装置への送信の少なくとも何れか1つにより実現される。尚、出力部908は、凝固シェル状態判定部907により、割れ性ブレークアウトの予兆が発生していないと判定された場合に、そのことを示す情報を出力してもよい。
次に、図10のフローチャートを参照しながら、鋳造状態判定装置100による鋳造状態判定方法の一例を説明する。尚、図10のフローチャートは、温度取得部401により、鋳造方向の位置が異なる複数の熱電対7で測定された温度が取得される度に、繰り返し実行されるものとする。また、前述した計算で使用する既知の値については、図10のフローチャートの開始前に得られているものとする。
ステップS507の処理の後、ステップS1001に進む。ステップS1001において、凝固シェル状態判定部907は、複数の凝固シェル厚み相関係数の時系列データとして所定時間(例えば、10分)分の時系列データが得られたか否かを判定する。この判定の結果、複数の凝固シェル厚み相関係数の時系列データとして所定時間分の時系列データが得られていない場合、図10のフローチャートによる処理が終了する。一方、複数の凝固シェル厚み相関係数の時系列データとして所定時間分の時系列データが得られている場合、処理は、ステップS1002に進む。
次に、ステップS1005において、凝固シェル状態判定部907は、ステップS1003で導出された凝固シェル厚み相関係数の頻度分布の傾きのうち、代表値を下回る凝固シェル厚み相関係数の頻度分布の傾きの数が、所定値以上であるか否かを判定する。この判定の結果、代表値を下回る凝固シェル厚み相関係数の頻度分布の傾きの数が、所定値以上でない場合、割れ性ブレークアウトの予兆が発生していないとし、図10のフローチャートによる処理が終了する。
次に、ステップS1006において、出力部908は、割れ性ブレークアウトの予兆が発生していることを示す情報を出力する。そして、図10のフローチャートによる処理が終了する。尚、ステップS1005において、代表値を下回る凝固シェル厚み相関係数の頻度分布の傾きの数が、所定値以上でないと判定された場合に、出力部908は、割れ性ブレークアウトの予兆が発生していないことを示す情報を出力してもよい。
第1の実施形態の[実施例]で得られた凝固シェル厚み相関係数の時系列データから、本実施形態で説明した処理により、凝固シェル厚み相関係数の頻度分布(階級の幅は0.05)を導出した(凝固シェル厚み相関係数の時系列データについては図6~図8を参照)。本実施例では、10分間の間に、凝固シェル厚み相関係数の頻度分布の傾きとして3個以上の傾きが平均値を下回ると、割れ性ブレークアウトの予兆が発生するものとした(凝固シェル状態判定部907の判定に用いられる所定時間を10分、所定数を3、代表値を平均値とした)。その他の鋳造状態判定装置100における解析条件は、第1の実施形態の[実施例]で説明したものと同じである。
図11(a)は、第1の実施形態の[実施例]で説明した15個の熱電対のうち、上から5番目の熱電対の位置における凝固シェル2の厚みsest(t,z)と、上から6番目の熱電対の位置における凝固シェル2の厚みsest(t,z)との相関係数(凝固シェル厚み相関係数)の頻度分布を示す。
同様に、図11(b)、図12(a)、図12(b)、図13(a)、図13(b)は、第1の実施形態の[実施例]で説明した15個の熱電対のうち、上から6、7番目、7、8番目、8、9番目、9、10番目、10、11番目の熱電対の埋設位置における凝固シェル2の厚みsest(t,z)の相関係数(凝固シェル厚み相関係数)の頻度分布を示す。
以上のように本実施形態では、鋳造状態判定装置100は、凝固シェル厚み相関係数の頻度分布の傾きを複数導出し、それらの代表値を下回る傾きが所定数以上ある場合に、割れ性ブレークアウトの予兆が発生していると判定し、そうでない場合に、割れ性ブレークアウトの予兆が発生していないと判定する。このようにしても第1の実施形態で説明したのと同様の効果を得ることができる。
本実施形態のように、凝固シェル厚み相関係数の頻度分布の傾きを複数導出し、それらを用いて、割れ性ブレークアウトの予兆が発生しているか否かを判定すれば、割れ性ブレークアウトの予兆の検出精度を向上させることができるので好ましい。しかしながら、割れ性ブレークアウトの予兆が発生しているか否かを判定するために用いる凝固シェル厚み相関係数の頻度分布の傾きの数は1つであってもよい。図14は、凝固シェル厚み相関係数の頻度分布の変形例を示す図である。第1の実施形態の[変形例]の項で説明したように、鋳型4の構造や特性等により、割れ性ブレークアウトの予兆を顕著に表す凝固シェルの鋳造方向の範囲が特定される場合には、当該範囲内の2つの位置における凝固シェル2の厚みから凝固シェル相関係数を導出し、当該凝固シェル相関係数の頻度分布の傾きを導出し、当該凝固シェル相関係数の頻度分布の傾きが閾値を下回る場合に、割れ性ブレークアウトの予兆が発生していると判定してもよい。
次に、第3の実施形態を説明する。本実施形態では、割れ性ブレークアウトの予兆の発生の有無の判定基準として、第1の実施形態で説明した判定基準と、第2の実施形態で説明した判定基準とを組み合わせる場合について説明する。従って、本実施形態の説明において、第1~第2の実施形態と同一の部分については、図1~図12に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
ただし、凝固シェル状態判定部907は、第1の実施形態で説明した凝固シェル状態判定部407と同様に、所定時間において、閾値を下回る凝固シェル厚み相関係数の数が所定数以上であるか否かを判定する。即ち、本実施形態では、凝固シェル状態判定部907は、割れ性ブレークアウトの予兆の発生の有無を判定するために、第1の判定と第2の判定を行う。
凝固シェル状態判定部907は、第1の判定において、代表値を下回る凝固シェル厚み相関係数の頻度分布の傾きの数が、所定値以上である場合、または、第2の判定において、所定時間において、閾値を下回る凝固シェル厚み相関係数の数が所定値以上である場合に、割れ性ブレークアウトの予兆が発生していると判定し、そうでない場合に、割れ性ブレークアウトの予兆が発生していないと判定する。
以上のようにすれば、割れ性ブレークアウトの予兆が発生していることを、より確実に予測することができる。
例えば、割れ性ブレークアウトの予兆が発生していることの過検出と未検出のどちらをより確実に抑制したいかに応じて、第1の判定と第2の判定との少なくとも何れか一方の判定基準を選択すればよい。
また、第1、第2の実施形態の[変形例]の項で説明した判定基準を組み合わせてもよい。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
Claims (16)
- 連続鋳造工程における割れ性ブレークアウトの予兆の発生の有無を判定する鋳造状態判定装置であって、
鋳型に埋設された複数の測温手段であって、鋳造方向における位置が相互に異なる複数の測温手段で測定された温度を取得する温度取得手段と、
前記温度取得手段により所定時間内の複数の時刻に取得された温度を用いて、前記鋳造方向における複数の位置での凝固シェルの厚みを前記所定時間内の複数の時刻のそれぞれにおいて導出する凝固シェル厚導出手段と、
前記鋳造方向における2つの位置での前記凝固シェルの厚みの相関を示す指標を導出する相関導出手段と、
前記相関導出手段により導出された前記指標と、当該指標の頻度との関係とに基づいて、前記割れ性ブレークアウトの予兆の発生の有無を判定する判定手段と、
を有することを特徴とする鋳造状態判定装置。 - 前記判定手段は、前記関係を線形式で表現した場合の傾きを導出し、導出した傾きと、閾値とを比較した結果に基づいて、前記割れ性ブレークアウトの予兆の発生の有無を判定することを特徴とする請求項1に記載の鋳造状態判定装置。
- 連続鋳造工程における割れ性ブレークアウトの予兆の発生の有無を判定する鋳造状態判定装置であって、
鋳型に埋設された複数の測温手段であって、鋳造方向における位置が相互に異なる複数の測温手段で測定された温度を取得する温度取得手段と、
前記温度取得手段により所定時間内の複数の時刻に取得された温度を用いて、前記鋳造方向における複数の位置での凝固シェルの厚みを前記所定時間内の複数の時刻のそれぞれにおいて導出する凝固シェル厚導出手段と、
前記鋳造方向における2つの位置での前記凝固シェルの厚みの相関を示す指標を導出する相関導出手段と、
前記相関導出手段により導出された前記指標に基づいて、前記割れ性ブレークアウトの予兆の発生の有無を判定する判定手段と、
を有し、
前記相関導出手段は、前記2つの位置の組として、少なくとも何れか一方の位置が相互に異なる複数の組のそれぞれについて、当該2つの位置における前記凝固シェルの厚みの相関を示す指標を導出し、
前記判定手段は、前記相関導出手段により導出された前記指標と、当該指標の頻度との関係を、前記複数の組に対する前記指標のそれぞれについて導出し、導出した複数の関係に基づいて、前記割れ性ブレークアウトの予兆の発生の有無を判定することを特徴とする鋳造状態判定装置。 - 前記判定手段は、前記相関導出手段により導出された前記複数の組に対する前記指標と、閾値とをそれぞれ比較した結果に基づいて、前記割れ性ブレークアウトの予兆の発生の有無を判定することを特徴とする請求項3に記載の鋳造状態判定装置。
- 前記判定手段は、前記関係を線形式で表現した場合の傾きを、前記複数の関係のそれぞれについて導出し、導出した傾きと、閾値とを比較した結果に基づいて、前記割れ性ブレークアウトの予兆の発生の有無を判定することを特徴とする請求項3または4に記載の鋳造状態判定装置。
- 連続鋳造工程における割れ性ブレークアウトの予兆の発生の有無を判定する鋳造状態判定装置であって、
鋳型に埋設された複数の測温手段であって、鋳造方向における位置が相互に異なる複数の測温手段で測定された温度を取得する温度取得手段と、
前記温度取得手段により所定時間内の複数の時刻に取得された温度を用いて、前記鋳造方向における複数の位置での凝固シェルの厚みを前記所定時間内の複数の時刻のそれぞれにおいて導出する凝固シェル厚導出手段と、
前記鋳造方向における2つの位置での前記凝固シェルの厚みの相関を示す指標を導出する相関導出手段と、
前記相関導出手段により導出された前記指標に基づいて、前記割れ性ブレークアウトの予兆の発生の有無を判定する判定手段と、
を有し、
前記鋳型は、水平断面における長手方向の長さが相対的に長い長辺部であって、相互に間隔を有して配置される2つの長辺部と、水平断面における長手方向の長さが相対的に短い短辺部であって、相互に間隔を有して配置される2つの短辺部と、を有し、前記2つの長辺部と前記2つの短辺部とを組み合わせることにより形成される中空の領域に溶鋼が注入される構成であり、
前記測温手段は、前記短辺部の領域、または、前記長辺部の第1の位置から第2の位置までの間の領域に埋設され、
前記長辺部の第1の位置は、前記長辺部の前記短辺部と接触している位置のうち、前記鋳型の最も中心側の位置であり、
前記長辺部の第2の位置は、前記長辺部の第1の位置から、前記鋳型の水平断面の長辺の方向に沿って前記鋳型の中心側に100mm離れた位置であることを特徴とする鋳造状態判定装置。 - 前記判定手段は、前記相関導出手段により導出された前記指標と、閾値とを比較した結果に基づいて、前記割れ性ブレークアウトの予兆の発生の有無を判定することを特徴とする請求項6に記載の鋳造状態判定装置。
- 前記指標を対数で表すことを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載の鋳造状態判定装置。
- 前記指標は、相関係数であることを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載の鋳造状態判定装置。
- 前記複数の測温手段の数は、5以上であることを特徴とする請求項1~9の何れか1項に記載の鋳造状態判定装置。
- 前記2つの位置は、前記鋳造方向において相互に隣接する位置にある2つの前記測温手段の前記鋳造方向における位置であることを特徴とする請求項1~10の何れか1項に記載の鋳造状態判定装置。
- 前記鋳型、前記凝固シェル、前記鋳型内の溶鋼を含む領域における熱伝導を表現する熱伝導方程式における解となる温度から、当該熱伝導方程式の解を導出する際に用いる境界条件を求める問題である逆問題を解くことによって、前記鋳型内の凝固シェルと前記鋳型との間の単位温度差あたりの熱流束である熱伝達係数αと、前記鋳型内の溶鋼と前記凝固シェルとの間の熱伝達係数βとを導出する熱伝達係数導出手段を更に有し、
前記凝固シェル厚導出手段は、前記熱伝達係数導出手段により導出された前記熱伝達係数αおよび前記熱伝達係数βを用いて前記凝固シェルの厚みを導出することを特徴とする請求項1~11の何れか1項に記載の鋳造状態判定装置。 - 連続鋳造工程における割れ性ブレークアウトの予兆の発生の有無を判定する鋳造状態判定方法であって、
鋳型に埋設された複数の測温手段であって、鋳造方向における位置が相互に異なる複数の測温手段で測定された温度を取得する温度取得工程と、
前記温度取得工程により所定時間内の複数の時刻に取得された温度を用いて、前記鋳造方向における複数の位置での凝固シェルの厚みを前記所定時間内の複数の時刻のそれぞれにおいて導出する凝固シェル厚導出工程と、
前記鋳造方向における2つの位置での前記凝固シェルの厚みの相関を示す指標を導出する相関導出工程と、
前記相関導出工程により導出された前記指標と、当該指標の頻度との関係とに基づいて、前記割れ性ブレークアウトの予兆の発生の有無を判定する判定工程と、
を有することを特徴とする鋳造状態判定方法。 - 連続鋳造工程における割れ性ブレークアウトの予兆の発生の有無を判定する鋳造状態判定方法であって、
鋳型に埋設された複数の測温手段であって、鋳造方向における位置が相互に異なる複数の測温手段で測定された温度を取得する温度取得工程と、
前記温度取得工程により所定時間内の複数の時刻に取得された温度を用いて、前記鋳造方向における複数の位置での凝固シェルの厚みを前記所定時間内の複数の時刻のそれぞれにおいて導出する凝固シェル厚導出工程と、
前記鋳造方向における2つの位置での前記凝固シェルの厚みの相関を示す指標を導出する相関導出工程と、
前記相関導出工程により導出された前記指標に基づいて、前記割れ性ブレークアウトの予兆の発生の有無を判定する判定工程と、
を有し、
前記相関導出工程では、前記2つの位置の組として、少なくとも何れか一方の位置が相互に異なる複数の組のそれぞれについて、当該2つの位置における前記凝固シェルの厚みの相関を示す指標を導出し、
前記判定工程では、前記相関導出工程により導出された前記指標と、当該指標の頻度との関係を、前記複数の組に対する前記指標のそれぞれについて導出し、導出した複数の関係に基づいて、前記割れ性ブレークアウトの予兆の発生の有無を判定することを特徴とする鋳造状態判定方法。 - 連続鋳造工程における割れ性ブレークアウトの予兆の発生の有無を判定する鋳造状態判定方法であって、
鋳型に埋設された複数の測温手段であって、鋳造方向における位置が相互に異なる複数の測温手段で測定された温度を取得する温度取得工程と、
前記温度取得工程により所定時間内の複数の時刻に取得された温度を用いて、前記鋳造方向における複数の位置での凝固シェルの厚みを前記所定時間内の複数の時刻のそれぞれにおいて導出する凝固シェル厚導出工程と、
前記鋳造方向における2つの位置での前記凝固シェルの厚みの相関を示す指標を導出する相関導出工程と、
前記相関導出工程により導出された前記指標に基づいて、前記割れ性ブレークアウトの予兆の発生の有無を判定する判定工程と、
を有し、
前記鋳型は、水平断面における長手方向の長さが相対的に長い長辺部であって、相互に間隔を有して配置される2つの長辺部と、水平断面における長手方向の長さが相対的に短い短辺部であって、相互に間隔を有して配置される2つの短辺部と、を有し、前記2つの長辺部と前記2つの短辺部とを組み合わせることにより形成される中空の領域に溶鋼が注入される構成であり、
前記測温手段は、前記短辺部の領域、または、前記長辺部の第1の位置から第2の位置までの間の領域に埋設され、
前記長辺部の第1の位置は、前記長辺部の前記短辺部と接触している位置のうち、前記鋳型の最も中心側の位置であり、
前記長辺部の第2の位置は、前記長辺部の第1の位置から、前記鋳型の水平断面の長辺の方向に沿って前記鋳型の中心側に100mm離れた位置であることを特徴とする鋳造状態判定方法。 - 請求項1~12の何れか1項に記載の鋳造状態判定装置の各手段としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
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