JP2001315159A - 金属板を有する射出成形品の製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 電磁波遮蔽性に優れ、強度にも優れ、ＯＡ機
器、電子機器の筐体用として有用な金属板を有する射出
成形品の製造方法を提供すること。 【解決手段】 金属板を有する射出成形品を製造法にお
いて、少なくとも一方の面を被覆樹脂で被覆した金属板
を射出成形金型のキャビティ内に挿入・固定し、この金
属板の被覆樹脂の面に溶融樹脂を射出して射出成形部分
を形成し、金属板と射出成形部分とを一体化することを
特徴とする。 【効果】 上記課題が解決される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、金属板を有する射
出成形品の製造方法に関する。さらに詳しくは、電磁波
遮蔽性に優れ、強度にも優れたＯＡ機器、電子機器など
の筐体（ハウジング）用として有用な、壁面の一部また
は全部に金属板を有する射出成形品の製造方法に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】従来、各種企業の事務所や各家庭に設置
している各種のＯＡ機器、電子機器などは、自身で電磁
波を発射して隣接して配置されている他のＯＡ機器、電
子機器に悪影響を与えたり、これら機器を操作する人
体、これら機器の近傍で生活する人体に悪影響を与えた
りすることが知られている。さらに、飛行機のエンジ
ン、自動車のエンジンなどから発射される電波、電磁波
が、テレビゴースト障害、各種のＯＡ機器や電子機器の
不調や誤作動の原因となるという問題もある。

【０００３】自身で電磁波を発射しないかまたは外部か
らの電波、電磁波の影響を受け難い各種のＯＡ機器、電
子機器などの筐体は、従来、例えば次のいずれかの方法
で製造されていた。(1)電磁波を遮蔽する物質を配合し
た樹脂組成物を原料として、射出成形法によって製造す
る方法、(2)あらかじめ射出成形法などによって製造し
た樹脂製筐体の壁面に、金属板を接着剤によって接着す
る方法、(3)貫通孔を穿設した金属板の両面に、あらか
じめ製造した樹脂成形品を嵌め込み固定する方法。

【０００４】しかしながら、上記方法のうち(1)の方法
は筐体の肉厚を厚くしないと電波、電磁波の影響を阻止
することは難かしく、筐体の肉厚を薄くするという最近
の動向に合致しないばかりでなく、強度が十分でないと
いう問題がある。また、上記(2)の方法では、樹脂製筐
体の壁面と金属板との界面の接着強度が使用する接着剤
の種類によって決まるが、接着剤から発生または飛散す
るガスなどにより、用途が制限されることがある。さら
に、上記(3)の方法は、嵌め込み固定した部分が振動に
より脱落することがあるという問題がある。

【０００５】

【発明が解決しようとした課題】本発明は、かかる従来
技術の諸欠点を解消した筐体の製造法を提供することを
目的として、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至
ったものである。すなわち、本発明の目的は、次のとお
りである。 (1)電磁波遮蔽性に優れたＯＡ機器、電子機器などの筐
体用として有用な、金属板を有する射出成形品の製造方
法を提供すること。 (2)強度に優れたＯＡ機器、電子機器などの筐体用とし
て有用な、金属板を有する射出成形品の製造方法を提供
すること。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明では、金属板を有する射出成形品を製造する
にあたり、少なくとも一方の面を被覆樹脂で被覆した金
属板を射出成形金型のキャビティ内に挿入・固定し、こ
の金属板の被覆樹脂の面に溶融樹脂を射出して射出成形
部分を形成し、金属板と射出成形部分とを一体化するこ
とを特徴とする、金属板を有する射出成形品の製造方法
を提供する。

【０００７】

【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明方法において金属板は、射出成形品の壁面の一部
または全部に配置または埋設されて電磁波を遮蔽し、か
つ、筐体の強度を高めるように機能する。金属板を構成
する金属の具体例としては、純アルミニウム、アルミニ
ウム合金、鋼板、ニッケル、亜鉛、銅などの金属を単層
メッキしてなる単層メッキ鋼板、これら金属の２種以上
を複層メッキしてなる複層メッキ鋼板、これら金属の２
種以上からなる合金をメッキしてなる合金メッキ鋼板な
どが挙げられる。

【０００８】さらに、これら鋼板およびメッキ鋼板にク
ロム水和酸化物からなる単層皮膜を形成させる重クロム
酸溶液中の電解処理、または上層がクロム水和酸化物、
下層が金属クロムからなる２層皮膜を形成させる電解ク
ロム酸処理などの化成処理によって皮膜を形成した各種
の表面処理鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム合金
板、および、クロム水和酸化物からなる単層皮膜を形成
させる上記の化成処理や、他の化成処理である浸漬クロ
ム酸処理、リン酸クロム酸処理、さらにはアルカリ溶液
または酸溶液によるエッチング処理、陽極酸化処理など
を施してなるアルミニウム板、アルミニウム合金板、
銅、銅合金などが挙げられる。

【０００９】金属板の表面には、金属板と被覆樹脂との
密着性を向上させる目的で、各種のプライマー、接着剤
を介在させることもできる。プライマーや接着剤は、従
来から知られている、アルミニウム系、チタン系、シラ
ン系などのカップリング剤や、アクリル樹脂系接着剤、
ウレタン樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、ポリエ
ステル樹脂系接着剤などを挙げることができるが、これ
ら例示したものに限定されるものではない。

【００１０】本発明方法では、少なくとも一方の面が被
覆樹脂で被覆された金属板を使用する。こ被覆樹脂は、
金属板と射出成形部分とを強固に接着して、両者を一体
化させるように機能する。金属板の被覆樹脂の具体例と
しては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテ
レフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリエチレ
ン、ポリプロピレン、エチレンを主成分とする共重合体
などのオレフィン系樹脂、ポリアミド６、ポリアミド１
１、ポリアミド１２、ポリアミド６６、ポリアミド６１
０、ポリアミド６１２、ポリアミド４６、メタキシリレ
ンジアミンとアジピン酸の重縮合反応で生成する構造単
位を９０モル％以上を含有する芳香族ポリアミドなどの
ポリアミド系樹脂が挙げられる。また、これら樹脂の無
水カルボン酸などによる酸変性物、グリシジルメタクリ
レートなどによるエポキシ変性物などの単独または混合
物なども挙げられる。被覆樹脂は、上に例示したものに
限定されるものではない。上に例示した被覆樹脂の中で
は、ポリエステル系樹脂が好適である。これら被覆樹脂
には、接着性付与剤、滑剤、顔料などを配合することが
できる。

【００１１】金属板を被覆樹脂によって被覆するには、
(1)上記の被覆樹脂をあらかじめフィルム状にして金属
板の表面に積層・被覆する方法、(2)１００〜２００℃
に加熱した金属板の上に被覆樹脂をフィルム状に押出し
て直ちに積層・被覆する方法、のいずれでもよい。被覆
樹脂をあらかじめフィルム状にする方法は、特に制約さ
れるものではなく、従来から知られている方法で製造さ
れたものでもよい。金属板の被覆樹脂で被覆しない残り
の面は、あらかじめ剥離し易い別の樹脂フィルムで被覆
しておくと、射出成形法で射出成形部分を成形する工程
などで傷が付き難く、射出成形部分を成形した後に別の
樹脂フィルムを剥離すれば美麗な成形品が得られる。

【００１２】被覆樹脂の厚さは、１０〜２００μｍの範
囲で選ぶのが好ましい。被覆樹脂の厚さが１０μｍ未満
であると、あらかじめ樹脂被覆金属板に絞り加工、曲げ
加工などを施す際にピンホールが生じたりして射出成形
部分との接着性を向上させることができず、２００μｍ
を超えると厚くなり過ぎて経済的に不利であり、いずれ
も好ましくない。被覆樹脂をあらかじめ製膜した場合
は、金属板との接着性を向上させる目的で、コロナ放電
処理を施しておくのが好ましい。

【００１３】本発明方法では、上記樹脂被覆金属板を射
出成形金型のキャビティ内に挿入固定して、被覆樹脂で
被覆した面に溶融樹脂を射出して射出成形部分を形成
し、金属板の被覆樹脂と射出成形部分とを一体化させ
る。樹脂被覆金属板は、最終的に得ようとする射出成形
品の壁面に一部または全部に配置または埋設されるの
で、射出成形品の大きさ、形状、電磁波を遮蔽したい射
出成形品の部位などに合わせて、裁断し、絞り加工、曲
げ加工、穴あけなどを行い、平面、側面Ｌ字型、側面コ
字型とすることができる。

【００１４】射出成形する際に使用できる樹脂は特に制
限されるものではなく、ポリスチレン、ＡＢＳ樹脂、Ｍ
ＢＳ樹脂などのスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレ
ートなどのアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ
オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネー
ト、ポリフェニレンオキサイド、およびこれら樹脂の混
合物が挙げられる。中でも、金属板被覆樹脂と相溶性の
あるものが好ましく、金属板被覆樹脂がポリエステル系
樹脂の場合には、ポリカーボネートとＡＢＳ樹脂との混
合物が好適である。

【００１５】次に、本発明方法に従って射出成形品を製
造する手順を説明する。まず、樹脂被覆金属板を射出成
形金型のキャビティ内に挿入・固定する。樹脂被覆金属
板の挿入・固定する位置は、射出成形金型の雄型側、雌
型側のいずれでもよく、箱型成形品の場合には一つの面
でも、複数の面でもよい。固定方法は、(1)雌型の挿入
する方法、(2)雄型面へ被せる方法、(3)金型外部からキ
ャビティ面に通じる真空孔へ減圧を適用する方法、(4)
(1)と(3)とを組み合わせる方法、のいずれかによればよ
い。

【００１６】ブック型のコンピュータの箱型ハウジング
を製造しようとする場合には、被覆樹脂で被覆したアル
ミニウム合金製の金属板を長方形に裁断し、樹脂被覆面
を内側にし、四周を曲げ加工を施して浅い箱型とし、必
要な位置に穴あけ加工などを施したあと、これを射出成
形金型のキャビティの雌型側に挿入して型閉めし、キャ
ビティの残余の部分に溶融樹脂を射出して、箱型ハウジ
ングの内側の樹脂被覆面にリブ、ネジ止用ボスなどの射
出成形部分を形成することができる。

【００１７】本発明方法によって得られる射出成形品
は、外側に露出した金側面または樹脂製の射出成形部分
に塗料を塗布したり、化学メッキを施すことができる。
外側に露出した金側面をあらかじめ別の剥離性フィルム
で被覆した場合には、射出成形部分を形成したあとに剥
離すれば美麗な金属面をそのまま生かすことができる。
本発明方法によって得られる射出成形品は、パーソナル
コンピュータ、卓上コンピュータ、各種印刷機、各種コ
ピー機などのＯＡ機器、電話機、電子辞典・辞書、音響
機器、テレビジョン、ラジオなどの電子機器などの筐体
（ハウジング）用、部品用として有用である。

【００１８】

【実施例】以下、本発明方法を、実施例に基づいて更に
詳細に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、
以下の記載例に限定されるものではない。

【００１９】［実施例］図１は、この実施例によって得
られた金属板を有する射出成形品の一例の縦断側面図で
ある。厚さが０．７５mmのアルミニウム板（Ａ５１８
２）１の片面に厚さが５０μｍのポリブチレンテレフタ
レート製フィルム２を被覆したもの（三菱樹脂社製、商
品名：アルセットＨＢ）樹脂被覆金属板３を準備し、１
６５mm×７５mmの大きさに裁断した。この樹脂被覆金属
板３の長さ方向の両端部４、４を、５mm幅で樹脂被覆面
側に折曲げて賦型した。ついで、この樹脂被覆金属板を
射出成形の金型キャビティに挿入し、樹脂被覆面側に、
溶融させたポリカーボネートとＡＢＳ樹脂の混合物を射
出し、射出成形部分５を形成した。成形部分には、ボス
部６、凸部７、８を一体的に形成した。金属板を有する
成形品１０は、金属板の被覆フィルム２と射出成形部分
５とは、強固に接着されており、指で強く押しても剥離
しなかった。

【００２０】［比較例］実施例に記載の例において、金
属板１３をポリブチレンテレフタレート製フィルムで被
覆しない厚さが０．７５mmのアルミニウム（Ａ５１８
２）に代えたほかは、同例におけると同様の手順で射出
成形部分を形成した。金属板と射出成形部分との接着強
度は弱く、指で押すと弱い力で簡単に剥離した。

【００２１】

【発明の効果】本発明は、以上詳細に説明したとおりで
あり、次のような特別に有利な効果を奏し、その産業上
の利用価値は極めて大である。 １．本発明に係る製造方法によれば、壁面に金属板が一
体化された電磁波遮蔽性に優れた射出成形品を、極めて
容易に得ることができる。 ２．本発明に係る製造方法によれば、壁面に金属板が一
体化され強度に優れた射出成形品を、極めて容易に得る
ことができる。 ３．本発明に係る製造方法によって得られる射出成形品
は、金属板が優れた電磁波遮蔽性を発揮するので、ＯＡ
機器、電子機器などの筐体（ハウジング）用として使用
した場合、自身からの電磁波の外部への放射が抑制され
るので、隣接して配置されている他のＯＡ機器、電子機
器に悪影響を与えない。 ４．本発明に係る製造方法によって得られる射出成形品
は、また、外部からの電磁波も遮蔽するので、誤作動し
たりゴーストやノイズが発生するなどの不調をきたすこ
とがない。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明に係る製造方法によって得られた金属
板を有する成形品の一例の縦断側面図である。

【符号の説明】

１：アルミニウム板 ２：ポリブチレンテレフタレート製フィルム ３：樹脂被覆金属板 ４：長さ方向の両端部 ５：射出成形部分 ６：ボス部 ７、８：凸部 １０：金属板を有する成形品

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 徳永 俊一 東京都台東区台東四丁目19番９号 三菱樹 脂株式会社関東支社内 (72)発明者 宮崎 浩二 滋賀県長浜市三ツ矢町５−８ 三菱樹脂株 式会社長浜工場内 (72)発明者 森下 昌史 千葉県浦安市鉄鋼通り三丁目１番１号 株 式会社佐渡島テクノロジー内 (72)発明者 水野 健 東京都中央区新富一丁目３番７号 株式会 社佐渡島内 (72)発明者 味元 正隆 東京都中央区新富一丁目３番７号 株式会 社佐渡島内 Ｆターム(参考） 4F206 AE03 AH42 JA07 JB12 JQ81

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 金属板を有する射出成形品を製造するに
   あたり、少なくとも一方の面を被覆樹脂で被覆した金属
   板を射出成形金型のキャビティ内に挿入・固定し、この
   金属板の被覆樹脂の面に溶融樹脂を射出して射出成形部
   分を形成し、金属板と射出成形部分とを一体化すること
   を特徴とする、金属板を有する射出成形品の製造方法。
2. 【請求項２】 金属板の被覆樹脂がポリエステル系樹脂
   であり、射出成形部分を形成用の樹脂がポリカーボネー
   トとＡＢＳ樹脂との混合物である、請求項１または請求
   項２に記載の射出成形品の製造方法。