JP2001158930A - 高強度Mg基合金とMg基鋳造合金及び物品 - Google Patents

高強度Mg基合金とMg基鋳造合金及び物品

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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明の目的は、流動性,機械的特性に優れた
高強度Mg基合金とMg基鋳造合金及びその合金を用い
て金型鋳造した物品を提供することである。 【解決手段】重量で、Al2〜20%,Zn0.1〜1
0%,Sn0.1〜15%及びMn0.05〜1.5%を
含むことを特徴とする高強度Mg基合金。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、OA部品,自動車
部品,家電品部品等をダイカスト,射出成形等により量
産することのできる新規なMg基合金とMg基鋳造合金
及びそれを用いて金型鋳造した物品に関する。
【0002】
【従来の技術】現在実用化されている鋳造用Mg合金に
は、 (1)AZ,AM系(Mg−Al−(Zn)−Mn系、例
えばASTM:AZ91D) (2)AS系(Mg−Al−Si−Mn系、例えばAS
TM:AS41) (3)AE,QE,WE系(REM,Ag,Yを1種以
上添加した合金系) などがある。(1)はダイカスト及び射出成形用Mg合
金として、最も一般的に使用されており、特にAZ91
Dは鋳造性,耐食性に優れ、自動車部品,家電品等に広
く適用されている。(2)(3)は、クリープ特性や高
温強度など機械的強度を改善したものである。これらに
関連する従来技術として次の特許公報に種々提案されて
いる。
【0003】例えば、特開平6−330216 号公報にはC
a,Si,Al,Zn,Mnを含有するMg合金,特開
平9−104942 号公報にはAl5〜10,Si0.2 〜
1,Cu0.05〜0.5を含有するMg基合金、及び特
開平10−147830号公報にはGd1〜6,Y6〜12を含
有するMg基合金が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】近年、携帯用機器等の
軽量,小型化のために部品の薄肉,精密化が要求され、
高流動性合金が求められている。上述(1)のAZ91
D合金は比較的流動性に優れている合金であるが、射出
成形における成形歩留りは必ずしも満足できるものでは
ない。
【0005】(2)(3)はAZ91Dと比較してクリ
ープ特性や室温・高温強度等機械的特性は優れる合金系
である。しかし鋳造性は劣るため、射出成形法のような
冷却速度の速い成形法では鋳造割れが発生しやすく成形
性が悪い。
【0006】流動性を改善するためには合金溶湯温度を
上げればよい。しかし溶湯温度の上昇は、溶湯酸化,設
備機器の耐久寿命の点などに問題がある。このため他の
手段で流動性を改善することが必要となる。
【0007】AZ91Dの凝固組織はインゴット鋳造時
程度の比較的緩やかな冷却速度では、デンドライト状に
なることが知られている。この合金は上述の通り溶融時
の流動性を重視しており、凝固後の特性についてはデン
ドライト状組織を前提に機械的性質等の諸特性が適正化
できるよう合金設計されている。
【0008】しかしながら近年適用が進んでいるダイカ
スト,射出成形の場合、冷却速度が著しく速く凝固後の
組織はデンドライトではなくセルラー状組織となること
が明らかとなっている。このため従来の合金成分の考え
方をかえる必要がある。
【0009】本発明の目的は、流動性,機械的特性に優
れた高強度Mg基合金とMg基鋳造合金及びその合金を
用いて金型鋳造した物品を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に種々検討を重ねた結果、マグネシウム合金に所定のA
l,Sn及びZnを添加すると合金融点が低下し流動性
が向上すること、また金属組織が微細になり機械的性質
が改善されることを見出し本発明を完成した。本発明
は、重量で、Al2〜20%,Zn0.1〜10%,S
n0.1〜15%及びMn0.05〜1.5%を含むこと
を特徴とする高強度Mg基合金にある。
【0011】本発明は、重量で、Al2〜20%,Zn
0.1〜10%,Sn0.1〜15%及びMn1.5% 以
下を含み、結晶粒径が10〜300μmであることを特
徴とする高強度Mg基合金にある。
【0012】本発明は、重量で、Al8〜20%,Zn
0.1〜5%,Sn0.1〜10%及びMn1.5%以下
を含み、20℃での引張強さ(x)が240MPa以上
及びその伸び率(y)が0.5%以上であり、y=−0.
295x+78によって求められる値以上の伸び率を有
することを特徴とする高強度Mg基合金にある。
【0013】本発明は、重量で、Al12〜15%,Z
n0.1〜5%,Sn1〜10%,Mn0.1〜0.5%
及び残部が75%以上のMgよりなることを特徴とする
高強度Mg基合金にある。
【0014】本発明は、重量で、Al12〜15%,Z
n0.1〜5%,Sn1〜10%及びMn0.1〜0.5%
を含むMg基合金又は上述のMg基合金にCa,Si及
び希土類元素の1種又は2種以上の合計量で5%以下、
Sr及びSbの1種又は2種の合計量で1%以下の少な
くとも1種を含むMg基合金、又はこれらの合金の残部
が実質的にMgであることを特徴とする高強度Mg基合
金にある。
【0015】本発明は、重量で、Al2〜20%及びS
n0.1〜15% を含むことを特徴とするMg基鋳造合
金にある。
【0016】本発明は、重量で、Al2〜20%,Zn
0.1〜10%,Sn0.1〜15%及びMn1.5%以
下を含むことを特徴とするMg基鋳造合金にある。
【0017】本発明は、前述のMg基鋳造合金に、C
a,Si及び希土類元素の1種又は2種以上の合計量で
5重量%以下、Sr及びSbの1種又は2種の合計量で
1重量%以下の少なくとも1種を含む鋳造合金、又はこ
れらの合金の残部が実質的にMgであることを特徴とす
る。
【0018】本発明は、前述のいずれかに記載の合金の
溶湯を用いて金型鋳造されたことを特徴とするダイキャ
スト物品にある。
【0019】本発明は、前述のいずれかに記載の合金の
液相と固相の混合溶湯を用いて金型鋳造されたことを特
徴とするチクソモールド物品にある。
【0020】前述のマグネシウム基合金は具体的には射
出成形によるダイカストにより所望の形状に成形される
ことが好ましい。
【0021】本発明のマグネシウム合金は、特に、Al
含有Mg基合金にSnを少量加えることによって融点低
下により流動性が向上し、表面欠陥の少ない部材を得る
ことができる。またより低温での成形が可能となるため
凝固時の収縮量が小さくなり、寸法精度の良好な部材が
得られる。従って成形歩留りは大幅に改善される。
【0022】また機械設備、例えば射出成形機のシリン
ダー等への負荷が低減され、耐熱材の耐久寿命が長くな
る。
【0023】さらに本発明のマグネシウム合金は、均一
微細な組織であるため機械的特性,耐食性に優れてい
る。
【0024】Alは固溶強化,析出強化,流動性改善を
目的として2%以上、好ましくは8%以上、より好まし
くは12%以上添加される。しかし、Alの20%を超
える過剰の添加は粗大なMg−Al系金属間化合物を生
成し伸びを著しく低減する。また、ダイカストや射出成
形のように冷却速度の大きな鋳造法では、その凝固組織
はAl含有量の増加と共に微細化し、Mg−Al系金属
間化合物も粗大化することなく結晶粒界に微細に分散さ
れる。この効果は特にSnとの同時添加でより顕著とな
る。特に、伸び率として3.5% 以上及び引張強さ26
5MPa以上とするには12〜17%が好ましい。
【0025】更に、本発明のマグネシウム合金における
Alはα−Mg相へ固溶し、合金融点を下げる。またα
相へ固溶すると共に、Mg−Al系金属間化合物を晶出
して室温強度を向上させる。また溶湯酸化を抑制し、湯
流れを改善する。これらの十分な効果を得るために12
%以上、より望ましくは15%以上である。
【0026】Snはα−Mg相へ固溶し、0.1%程
度、特に0.5%以上の少量で合金融点を下げ、更にα
相へ固溶すると共に、Mg−Sn系金属間化合物を晶出
して室温強度を向上させる。Snによる融点降下は、A
l,Znと同時添加した時により顕著となるが、その効
果はSn含有量が5%でほぼ飽和する。また15%を超
えると伸びの減少が著しいこと、また合金の比重が大き
くなり、軽量というマグネシウム合金の利点がなくな
る。特に、伸び率を3.5% 以上にするには、10%以
下とし、望ましくは4%以上の伸びとするには8%以下
である。特に、1〜7%では強度及び伸び率ともに高い
ものが得られる。
【0027】Znは室温強度,鋳造性を改善するために
0.1%以上加えられる。しかし、10%を超えると鋳
造割れが発生しやすくなる。望ましくは強度が高く鋳造
割れのほとんど発生しない1〜5%である。
【0028】MnはAlと化合物を形成し、合金中に不
純物として含まれ耐食性を著しく悪化させるFeをその
中に固定し、耐食性を向上させる。Mn含有量が1%を
超えるとAl−Mn系化合物が過度に析出し、機械的特
性に悪影響を及ぼすので上限を1%とする。特に、0.
05% 以上で効果があり、より好ましくは0.1〜0.5
%である。
【0029】本発明合金はさらに、1種又は合計で5%
以下のCa,Si,希土類元素、及び1種又は合計で1
%以下のSr,Sbからなる群から選ばれた少なくとも
1種以上の元素を含む。Ca,Si希土類元素はMgと
共晶系をつくるため、融点降下に有効である。しかしこ
れら元素の添加は鋳造性を悪くするので、上限を5%と
する。特に、0.1%以上とすること、上限を3%とす
るのが好ましい。
【0030】Sr,Sbは合金組織を微細化し、機械的
特性を改善する。これらはSiやCaと同時添加すると
より効果がある。含有量増加とともに効果は増すが、1
%を超えて添加しても効果は飽和するので、上限を1%
とする。特に、0.03%以上とすること、上限を0.5
% とするのが好ましい。
【0031】本発明に係るMg基合金は、その表面に、
原子比でMg15〜35%、好ましくは20〜30%及
びMo5〜20%を含む酸化物皮膜、原子比でMg15
〜35%,Mo5〜20%及びAl30%以下、好まし
くは10〜25%を含む酸化物皮膜、金属Alを含む酸
化物皮膜、原子比でMg15〜35%,Mo5〜20
%、酸化物としてのAl10〜30%及び金属Al15
%以下、好ましくは4〜12%を含む酸化物皮膜、0.
01モルのNa247,pH9.2 ,25℃水溶液に
30分浸漬後の自然浸漬電位が−1500mV以上、好
ましくは−1400mV以上の貴である酸化物皮膜、1モル
のNa2SO4,25℃水溶液に15分浸漬後の自然浸漬
電位が−1500mV以上、好ましくは−1450mV
以上の貴である酸化物皮膜、又は更に、前述の酸化物皮
膜又は特定の酸化物皮膜と該皮膜上にフッ素を含む撥水
性有機皮膜を設けることを特徴とする。
【0032】
【発明の実施の形態】(実施例1)電気炉中で予熱した
鋳鉄製の坩堝の内面に塩化マグネシウム系のフラックス
を塗布し、その中に表1に示す組成(重量%)の合金と
なるように原材料を挿入し、溶解した。溶湯温度750
℃で攪拌,除滓後、150℃に予熱した50mm×50mm
×300mmの金型に鋳込んでMg合金インゴットを作製
した。溶解作業中は燃焼防止のため必要に応じてフラッ
クスを溶湯表面に散布した。
【0033】図2はこのようにして得た合金の代表的な
金属組織を示す。α相粒界にMg−Al系共晶(白い部
分)がネットワーウ状に晶出し、更にその間にMg−S
n系共晶(黒い部分)が晶出している。
【0034】図3はこの各合金の融点測定結果につい
て、特に合金No.1〜3,11〜13とSn含有量との
関係を示す。合金融点はSn含有量増加と共に下がり、
10wt%を超えると効果は飽和する。しかしAl,Z
n含有量が本発明の規定値よりも少ないNo.12の融点
は、AZ91D合金(No.11)からの融点降下が小さ
いことがわかる。また、図に示すように、Sn量が2%
まではSn量の含有量とともに急激に融点が下がるが、
それ以上ではゆるやかに低下している。更に、Sn量を
0.5%以上とすることにより、AZ91Dの融点(58
0℃)よりも低下させることができる。
【0035】(実施例2)電気炉中で予熱した鋳鉄製の
坩堝の内面に塩化マグネシウム系のフラックスを塗布
し、その中に表1に示す組成の合金となるように原材料
を挿入し、溶解した。溶湯温度750℃で攪拌,除滓
後、150℃に予熱した30mm×30mm×300mmの金型
に鋳込んでMg合金インゴットを作製した。溶解作業中
は燃焼防止のため必要に応じてフラックスを溶湯表面に
散布した。このようにして得たインゴットを切削加工し
て2〜10mmの合金チップを製造し、射出成形の原料と
して用いた。射出成形は型締め力75tのマシンを用
い、120mm×50mm×厚さ1mmの射出成形品を作成し
た。成形条件は下記の通りとした。
【0036】射出速度:1.6m/sec 射出圧力:800kg/cm2 溶湯温度:合金融点+20℃ 金型温度:150℃ このようにして得た成形品から下記の試験片を取出し強
度評価試験(硬さ,引張強さ,伸び)を実施した。
【0037】試験片:厚さ1mm,標点間距離12mm,標
点間幅10mm,平行部長さ16mm。 引張試験:インストロン試験機により、歪み速度0.3
/min,25℃で測定。 No.1〜10,12,13は本実施形態となる成分範囲
内である実施例、No.11,14,15は成分範囲外の
比較例(No.11はAZ91D規格合金)である。
【0038】
【表1】
【0039】図1は本実施例で用いた射出成形機の要部
の断面図である。
【0040】射出成形用の合金原料1はホッパー2に挿
入され、シリンダー4内に供給される。このシリンダー
4内で原料は、回転するスクリュー5によってノズル6
の方向に送られながら混練・攪拌されるとともに、シリ
ンダーヒータ7により加熱される。合金原料は、加熱温
度が液相線温度よりも高い場合溶融状態と、液相線温度
よりも低い温度の固相と液相が混在した半溶融状態とに
よって射出成形される。スクリュー5の前方に送られた
溶融或いは半溶融状態の溶湯10合金原料は、スクリュ
ー5を高速射出機構8によって前進させることにより、
ノズル6から金型9内に充填される。溶湯は凝固まで金
型内を加圧保持し、凝固後、金型9を開き成形品を取り
出す。図中、スクリュー5は中実の円筒状基体14にら
せん状のブレード13が設けられ、スクリュー5の回転
によって合金原料1がブレード13によって混練・攪拌
させながら高温に加熱され、ヒータ7の温度によって溶
融又は半溶融にするものである。12は溶湯10の逆流
防止リングである。
【0041】本実施例で用いた合金原料1は予め各組成
の合金を非酸化性雰囲気中で溶解によって形成した後、
10mm以下のチップに切削,切断を行って粒状の原料と
したものである。
【0042】図4〜図6は、表1に示す各合金の射出成
形体の硬さ及び引張試験結果について、Sn含有量との
関係を示す線図である。図に示す様に、硬さ及び引張強
さ共にSn含有量1%の添加によって硬さでHv110
以上,引張強さで269MPa以上となる。一方伸び率は
Sn含有量が5wt%までは顕著に向上するが、5%を
超えると減少し、9%以上になるとSnの添加前より急
激に低下する。
【0043】図7及び図8は合金No.2(Mg−12A
l−3Zn−5Sn)を基準として、Al含有量を変化
させたときの引張試験結果を示す線図である。図に示す
様に、Al含有量の増加と共に引張強さは向上し、Al
12%以上で279MPa以上の引張強さが得られる。
伸びはAl含有量が20%までは伸び率1.0% 以上の
大きな値が得られるが、20%を超えると著しく低下
し、その値は1%以下となり、実用的ではなくなる。
【0044】マグネシウム合金中のAl,Zn,Sn含
有量が増加するとα相粒界に晶出する金属間化合物(M
g−Al系,Mg−Sn系)が増加する。このような金
属間化合物の増加は一般に伸びの低下の原因となる。し
かしAl,Zn,Sn添加は同時にα相を微細化する効
果があり、金属間化合物が増量しても、α相粒界体積と
金属間化合物量の相対比に大きな変化はない。従って伸
びの著しい低下を抑制することができると考えられる。
しかしSn,Alの含有量がそれぞれ10wt%,20
wt%付近で微細化効果は飽和に達し、伸びは急激に低
下するものと考えられる。
【0045】図9は合金No.2の射出成形品の組織写真
を示す。約10〜20μm程度のα相と、その粒界にM
g−Al系共晶がネットワーク状に晶出している。黒色
の小塊状物はMg−Sn系共晶であり、本図より凝固組
織の微細化とMg−Al系、及びMg−Sn系共晶の均
一分散が図られていることが判る。
【0046】上記のマグネシウム合金のうち、本発明の
実施例であるNo.1〜3を、同じ溶湯温度(620℃)
に設定して射出成形した場合、AZ91D合金の成形品
と比較して表面欠陥が大幅に減少しており、鋳肌粗さが
細かく、平滑な鋳肌面の成形体が得られた。これは融点
が低下した分、溶湯温度との差が大きくなり流動性が改
善されたことによる。
【0047】また射出成形時の溶湯温度を各合金の融点
よりも10℃低い温度に設定して成形した場合、即ち固
相と液相とが混在した半溶融状態で射出成形した場合の
成形品の寸法精度はいずれの合金もAZ91D合金より
も優れていた。
【0048】図10は12%Al−3%Znに対してS
n量を変えたMg基合金の引張強さと伸び率との関係を
示す線図である。図の示すように、Sn量が5%までは
強度と延性を高め、それ以上では強度を高めるか伸び率
を低める。しかし、Sn11%でも伸び率が0.5% 以
上の高い値を示している。
【0049】図中の直線は伸び率(%)yと引張強さ
(MPa)(x)とによって得られる線図で、本実施例で
はy=−0.295x+78 によって得られる値以上の
高い伸び率を有するものである。更に、この関係は、y
=−0.295x+82,85又は87によって得られ
る値以上の高い引張強さと伸び率が得られるものにする
のが好ましい。
【0050】図11は3%Zn−5%Snに対してAl
量を変えたMg基合金の引張強さと伸び率との関係を示
す線図である。図に示すようにAlを12%以上に高め
ることによって引張強さは275MPa以上の高い値が
得られるとともに、Al20.5%以下では伸び率が0.5
% 以上の高い値が得られることが分る。この図におい
ても前述の伸び率(y)と引張強さ(x)との関係によ
って得られる値以上とするのが好ましい。
【0051】図12は、本実施例合金No.2,5,6,
7及び比較例合金No.11,15の射出成形品について
20℃での塩水噴霧試験(5%NaCl水溶液を360
時間噴霧)による腐食減量を調べた結果を示した。図よ
り、本実施例合金はいずれもAZ91D合金(No.1
1)と比較して腐食減量が0.1(g/cm2・day)以下の
優れた耐食性を示す。またAlの含有量が高い方が耐食
性が改善される。即ち、Mnを添加したNo.2は、Mn
を添加していない比較材No.15と比べて優れた耐食性
を示すことがわかるように、Mnの極少量の添加は耐食
性を著しく高めることが明らかである。また、Alを高
めることによりNo.5及び7に示すように高い耐食性が
得られることが分る。
【0052】(実施例3)図13はノート型パソコンの
斜視図である。本体21には操作入力手段用キーボード
22と、表示用のLEDとメインスイッチを実装したス
イッチボードユニット23が配置されている。本体21
の外装は本体上ケース26と本体下ケース27とで構成
されている。表示部24の外装はLCDケース41とL
CDフロント42で構成され、LCDフロント42には
液晶表示画面25の表示部が見えるように表示窓が開け
てある。
【0053】これら構成部品のうち、軽量化,剛性,放
熱性の改善を目的として、LCDフロント42を、合金
No.2を用いて、型締力650tの射出成形機により成
形した。成形条件は、射出速度3m/sec ,溶湯温度5
80℃,金型温度200℃とした。成形品の寸法は23
0mm×180mm×4mm、平均肉厚は0.7mm であった。
このようにして得られた成形品は、表面欠陥がなく、寸
法精度が良好であり、歩留まり良く成形することができ
た。同様にボトムケースを製造した。
【0054】(実施例4)図14は液晶プロジェクター
の斜視図である。
【0055】本体は表示用のLEDとメインスイッチを
実装したスイッチユニット32,投射レンズ33で構成
され、外装は本体上ケース31と本体下ケース34とで
構成されている。
【0056】これら構成部品のうち本体上ケース31
を、合金No.2を用いて、型締力600tのホットチャン
バーダイカストマシンにより成形した。成形条件は、射
出速度2.5m/sec,溶湯温度600℃,金型温度20
0℃とした。成形品の寸法は248mm×330mm×10
0mm、平均肉厚は1.5mm であった。このような比較的
大きな部品に関しても、薄肉部での充填不良や表面欠陥
の発生を起こすことなく、良好な成形品を得ることがで
きた。
【0057】(実施例5)図15は本発明に係るMg基
合金を羽根車に用いた家庭用電気掃除機の斜視図であ
る。
【0058】図15において、51は制御回路や電動送
風機等が内蔵された掃除機本体、52は、掃除機本体5
1の吸込口部に接続されたホース、53はホース手元
部、54はホース52の先端(ホース手元部53)に接
続された延長管、55は延長管54に接続された吸口
体、56はホース手元部53に設けられたスイッチ操作
部、57はホース手元部53に設けられた第一の赤外線
発光部、58はホース手元部53に設けられた第二の赤
外線発光部、59は掃除機本体の上面に設けられた赤外
線受光部である。
【0059】図16は羽根車の分解斜視図である。
【0060】前面プレート61及び後面プレート62と
ブレード63とを一体的に形成させる成型方法として、
本実施例では射出成型法を採用した。この方法は射出成
型法と同様にペレット状の軽金属原料を用い、溶解炉等
を使用することなく直接射出成形機内で混練溶融し、金
型に射出して成型品を得る方法である。本実施例では、
一体的に形成された前面プレート61及び後面プレート
62とブレード63とを各々実施例1に示したマグネシ
ウム基合金により一体に形成している。前面プレート6
1と後面プレート62側にはろう材の層が全面に設けら
れ、ブレード63がろう材によって結合される。64は
吸込口である。本実施例ではいずれも液相と固相との混
合溶湯によって図1に示す射出成形機を用いて羽根車を
得ることができる。
【0061】本実施例によれば、0.7mm の薄肉として
も充填不良がなく羽根車を軽量化でき、空気抵抗を低減
できるので、消費電力1KW時における回転数を450
00〜50000rpm とすることができ、吸込仕事率を
550W以上とすることができる。
【0062】(実施例6)実施例1に示したMg基合金
を用いて、21型テレビのフロントキャビネット,自動
車のステアリングホイール芯金,ビデオカメラの筐体,
MDプレーヤーディスクのふた,コンパクトカメラの筐
体を図1に示す射出成形機を用い、液相又は液相と固相
との混合溶湯を用いて製造される。いずれも0.7mm と
薄肉部分においても充填不良がなく良好な成形晶を得る
ことができる。
【0063】(実施例7)実施例3〜6に記載の本発明
に係るMg基合金を用いた各種製品を1M−Na2Mo
4及び1M−Na2SO4−0.5M・NaF(H2SO4
でpH3.0に調整)の60℃水溶液中に各々180秒
浸漬し、製品の表面に0.1 〜3μmの厚さの酸化皮膜
を形成した。製品の表面は処理によって着色され、その
色あいによってその厚さを予想できる。処理時間により
薄い褐色から濃い褐色、更に黒ぽい色になる。得られた
皮膜は0.01M−Na247(pH9.18)中、30
分後の自然電位が−1500mV以上の貴な電位を有
し、優れた耐食性が得られた。そして、その皮膜は塗装
下地としても好適なものであった。
【0064】更に、酸化皮膜の上に撥水性のフッ素化合
物をパーフルオロヘキサンを溶解した溶液に24時間浸
漬して、150℃で10分間加熱した。その有機皮膜は
水との接触角が120〜130度と高い撥水性を有して
おり、その耐久性を更に高めることができた。
【0065】
【発明の効果】本発明によれば、融点が低く、成形時の
流動性が良好であり、その組織は均一微細であるため機
械的特性にも優れたMg基合金が得られる。更に、流動
性向上による表面欠陥の低減,低温成形による寸法精度
の改善により、成形歩留りは大幅に改善される。さら
に、設備機器として、金型や射出成形機のシリンダー等
の金属材料,耐熱材への負荷が軽減されることから、こ
れら部材の寿命が長期化し、マグネシウム基合金部品の
生産効率の向上につながる。
【0066】更に、本発明によれば溶液中での処理によ
り、複数の価数を持った重金属イオンが存在しかつ特に
母材中のAlが富化した酸化物皮膜を、Al含合Mg合
金表面に作製することで、耐食性に優れた塗装下地とす
ることができる。またこのような皮膜を、環境有害性の
ある物質を用いることなく作製することができる。
【0067】この皮膜の上に通常の防食塗装、あるいは
撥水性の塗装をすることで、さらに優れた防食被覆とな
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例で用いた射出成形機の断面構成図。
【図2】実施例1で作成したマグネシウム基合金インゴ
ットの金属組織を示す顕微鏡写真。
【図3】Sn含有量と融点との関係を示す線図。
【図4】Sn含有量とヴィッカース硬さとの関係を示す
線図。
【図5】Sn含有量と引張強度との関係を示す線図。
【図6】Sn含有量と伸び率との関係を示す線図。
【図7】Al含有量と引張強度との関係を示す線図。
【図8】Al含有量と伸び率との関係を示す線図。
【図9】実施例2で作製したマグネシウム基合金の金属
組織を示す顕微鏡写真。
【図10】伸び率と引張強度との関係を示す線図。
【図11】伸び率と引張強度との関係を示す線図。
【図12】塩水噴霧試験後の腐食減量を示すグラフ。
【図13】ノート型パソコンの斜視図。
【図14】モバイル用液晶プロジェクターの斜視図。
【図15】家庭用電機掃除機の斜視図。
【図16】羽根車の斜視図。
【符号の説明】
1…合金原料、2…ホッパー、4…シリンダー、5…ス
クリュー、6…ノズル、7…シリンダーヒータ、8…高
速射出機構、9…金型、10…溶湯、11…製品、12
…逆流防止リング、13…ブレード、14…円筒状基
体、21…本体、22…キーボード、23…スイッチボ
ードユニット、25…液晶表示画面、26,31…本体
上ケース、27,34…本体下ケース、32…スイッチ
ユニット、33…投射レンズ、41…LCDケース、4
2…LCDフロント、51…掃除機本体、52…ホー
ス、53…ホース手元部、54…延長管、55…吸口
体、56…スイッチ操作部、61…前面プレート、62
…後面プレート、63…ブレード、64…吸込口。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 内田 敏夫 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 阿部 輝宜 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量で、Al2〜20%,Zn0.1〜1
    0%,Sn0.1〜15%及びMn0.05〜1.5%を
    含むことを特徴とする高強度Mg基合金。
  2. 【請求項2】重量で、Al2〜20%,Zn0.1〜1
    0%,Sn0.1〜15%及びMn1.5% 以下を含
    み、結晶粒径が10〜300μmであることを特徴とす
    る高強度Mg基合金。
  3. 【請求項3】重量で、Al8〜20%,Zn0.1〜5
    %,Sn0.1〜10%及びMn1.5%以下を含み、20
    ℃での引張強さ(x)が240MPa以上及びその伸び
    率(y)が0.5%以上であり、y=−0.295x+7
    8によって求められる値以上の伸び率を有することを特
    徴とする高強度Mg基合金。
  4. 【請求項4】重量で、Al12〜15%,Zn0.1〜
    5%,Sn1〜10%,Mn0.1〜0.5% 及び残部
    が75%以上のMgよりなることを特徴とする高強度M
    g基合金。
  5. 【請求項5】重量で、Al12〜15%,Zn0.1〜
    5%,Sn1〜10%,Mn0.1〜0.5% 及びC
    a,Si及び希土類元素の1種又は2種以上の合計量で
    5%以下、Sr及びSbの1種又は2種の合計量で1%
    以下の少なくとも1種、及び残部が実質的にMgである
    ことを特徴とする高強度Mg基合金。
  6. 【請求項6】重量で、Al2〜20%及びSn0.1〜
    15% を含むことを特徴とするMg基鋳造合金。
  7. 【請求項7】重量で、Al2〜20%,Zn0.1〜1
    0%,Sn0.1〜15%,Mn1.5%以下を含むこ
    とを特徴とするMg基鋳造合金。
  8. 【請求項8】請求項1〜3のいずれかにおいて、Ca,
    Si及び希土類元素の1種又は2種以上の合計量で5重
    量%以下、Sr及びSbの1種又は2種の合計量で1重
    量%以下の少なくとも1種を含むことを特徴とする高強
    度Mg基合金。
  9. 【請求項9】請求項6又は7において、Ca,Si及び
    希土類元素の1種又は2種以上の合計量で5重量%以
    下、Sr及びSbの1種又は2種の合計量で1重量%以
    下の少なくとも1種を含むことを特徴とするMg基鋳造
    合金。
  10. 【請求項10】請求項1〜9のいずれかに記載の合金の
    溶湯を用いて金型鋳造されたことを特徴とするダイキャ
    スト物品。
  11. 【請求項11】請求項1〜9のいずれかに記載の合金の
    液相と固相の混合溶湯を用いて金型鋳造されたことを特
    徴とするチクソモールド物品。
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