JP3696844B2 - 半溶融成型性に優れたアルミニウム合金 - Google Patents

半溶融成型性に優れたアルミニウム合金 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半溶融成型性に優れたアルミニウム合金に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半溶融成型ビレットを用いるチクソキャスト法は、従来の金型鋳造法と比較し鋳造偏析やガス巻き込み、引け巣等の内部欠陥が少なく、機械的特性や寸法精度も向上し、しかも金型寿命が長いなどの利点があり、最近注目をあびてきている技術である。
【0003】
これに使用するビレットの鋳造方法は、ペシネーやアルマックス方式のように、ビレット段階で初晶α(Al)相を球状化するため、半溶融温度域で電磁撹拌を行う方法(方式A)が良く知られており既に実用化されている。
また、特許第3216684号には、アルミニウム合金の給湯時に液相線より30℃を越えない温度領域に限定し、1℃/秒以上の凝固区間冷却速度で冷却固化し、さらに溶解度線から固相線温度までを0.5℃/分以上の速度で昇温し、さらに固相線を越える温度領域まで昇温するとともに5〜60分間保持して初晶を球状化した後、液相線以下の成型温度まで更に昇温し半溶融状態になった溶湯を成型する方法で、そのアルミニウム合金にはTi,Bを添加する方法(方式B)が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の方法の中、方式Aでは工程が非常に煩雑で、設備費も高価で製造コストが高くなるという問題があった。
また、方式Bでは多量のAl−Ti−Bを添加するため、炉内でのTiB沈降による品質不安定が発生し、更に液相線近傍温度で冷却と昇温を行うため温度制御が複雑で、しかも作業工程が煩雑なため量産化や低コスト化が図れないという問題があった。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであって、上記従来技術の欠点を解消し、工程が簡素でしかも低コスト化が達成でき、得られる成型品が均質で高品質な半溶融成型性に優れたアルミニウム合金及びその鋳塊の製造方法を提供することを目的とし、特に半溶融成型用アルミニウム合金ビレットの半連続鋳造時に結晶粒微細化剤として添加するTiとBの添加方法を規制し、添加量を適量に配合し、TiBの形状とサイズと組成比を限定することと、その後アルミニウム合金ビレットを鋳造する際、鋳造条件のコントロールを調整することにより微細化した鋳造組織を得ることを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本願発明の第1発明は、Ti0.005〜0.5wt%、B0.0001〜0.1wt%を含み、残部が実質的にアルミニウムから成ることを特徴とする半溶融成型性に優れたアルミニウム合金を採用する。
【0007】
ここで、上記アルミニウム合金には、TiとBを適量含有するので、合金の結晶粒を微細化できるものである。
【0008】
また、上記目的を達成するため本願発明の第2発明は、アルミニウム合金の結晶粒微細化のために添加されるTiは、Al−Ti母合金で添加し、更にAl−Ti−B母合金で添加されることを特徴とする第1発明に記載の半溶融成型性に優れたアルミニウム合金を採用する。
【0009】
ここで、上記アルミニウム合金には、TiをまずAl−Ti母合金で添加し、次いでAl−Ti−B母合金を添加しているので、より微細な鋳造組織とすることができる。
【0010】
また、上記目的を達成するため本願発明の第3発明は、アルミニウム合金の結晶粒微細化のために添加されるTi,B量はTi/B比が3〜40であり、(Al・Ti)B(x=1〜7,y=1〜9)化合物のサイズが10μm以下の粒状で、しかもAl/Tiの原子量比が0.2〜2.5であることを特徴とする第1発明又は第2発明に記載の半溶融成型性に優れたアルミニウム合金を採用する。
【0011】
また、上記目的を達成するため本願発明の第4発明は、Ti0.005〜0.5wt%、B0.0001〜0.1wt%を含み、残部が実質的にアルミニウムから成るアルミニウム合金を半連続鋳造するに際し、アルミニウム合金の溶湯を筒形状の強制冷却鋳型内に上方から注湯し、鋳型により一次冷却して表面凝固層を形成すると共に、該凝固層を形成した鋳塊をその下端を支える下型と共に、前記鋳型から引き下ろし、該鋳塊の表面に冷媒を供給し二次冷却する際、一次冷却と二次冷却までの距離を150mm以内とし、二次冷却用冷媒が鋳塊に当たる角度を鋳造方向に対して20°以上で80°未満とすることを特徴とする半溶融成型性に優れたアルミニウム合金鋳塊の製造方法を採用する。
【0012】
また、上記目的を達成するため本願発明の第5発明は、アルミニウム合金のTiは、Al−Ti母合金で添加し、更にAl−Ti−B母合金で添加されることを特徴とする第4発明に記載の半溶融成型性に優れたアルミニウム合金鋳塊の製造方法を採用する。
【0013】
また、上記目的を達成するため本願発明の第6発明は、アルミニウム合金のTi,B量は、Ti/B比が3〜40であり、(Al・Ti)B(x=1〜7,y=1〜9)化合物のサイズが10μm以下の粒状で、しかもAl/Tiの原子量比が0.2〜2.5であることを特徴とする第4発明又は第5発明に記載の半溶融成型性に優れたアルミニウム合金鋳塊の製造方法を採用する。
【0014】
また、上記目的を達成するため本願発明の第7発明は、アルミニウム合金を半連続鋳造するに際し、二次冷却した後、更に鋳塊の冷却を強化するため三次冷却用冷媒を鋳造方向に対して20°以上で80°未満の角度で鋳塊に当てることを特徴とする第4発明、第5発明又は第6発明に記載の半溶融成型性に優れたアルミニウム合金鋳塊の製造方法を採用する。
【0015】
また、上記目的を達成するため本願発明の第8発明は、アルミニウム合金を半連続鋳造するに際し、筒形状の強制冷却鋳型内に上方から注湯し、鋳型により一次冷却して表面凝固層を形成させる際に、鋳型内の給湯面に配設した浮子式溶湯分配器から溶湯を流出させる溶湯レベル制御において、浮子式溶湯分配器からの溶湯の射出角度が鋳造方向に対して20°以上で80°未満であることを特徴とする第4発明、第5発明、第6発明又は第7発明に記載の半溶融成型性に優れたアルミニウム合金鋳塊の製造方法を採用する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下本発明で用いるアルミニウム合金の成分量の数値限定等種々の数値限定理由について詳述し、本発明の理解に供する。
【0017】
Ti成分は、鋳塊の組織を微細化し、鋳塊割れの発生を防止するが、0.005wt%未満ではその効果は少なく、一方0.5wt%を越えるとTiAlの巨大な晶出物の発生を促進させるため、0.005〜0.5wt%とした。
【0018】
B成分もまたTi成分とともに鋳塊の組織を微細化し、鋳塊割れの発生を防止するが、0.0001wt%未満ではその効果が顕著ではなく、一方0.1wt%を越えて添加してもそれ以上の効果は期待できないので0.0001〜0.1wt%とした。
【0019】
鋳塊の結晶粒微細化のために添加されるTiは、まずAl−Ti母合金で添加することが重要である。一度に所定量をAl−Ti−B母合金で添加すると、母合金中のTiBが溶湯中に沈降して添加量に見合った微細化効果が得られない。このため、まずAl−Ti母合金で添加して結晶粒を微細化させ、次にAl−Ti−B母合金を添加することにより微細な鋳造組織を得ることが出来る。このため微細な結晶粒組織を得るための微細化剤添加法は、Al−Ti母合金でまず添加し、続いてAl−Ti−B母合金で適量添加することとした。
【0020】
鋳塊の結晶粒微細化のために添加されるTi,B量はTi/B比が重要で、Ti/B比が3未満では十分な微細化効果は得られず、一方Ti/B比が40を越えると微細化効果は飽和するため、Ti/B比を3〜40とした。
【0021】
次に添加される(Al・Ti)B化合物のサイズであるが、(Al・Ti)Bのサイズも結晶粒の微細化に影響を及ぼし、10μmを越えると微細化効果は著しく低下するとともに、結晶粒微細化の核となる(Al・Ti)Bの形状が粒状でないと微細化能は低下するため、(Al・Ti)Bのサイズは10μm以下でしかも形状を粒状とした。
ここで、(Al・Ti)Bのx,yについてだが、x=1〜7,y=1〜9とした。その理由は、x,yともにその範囲を外れると得られる鋳塊の結晶粒微細化効果が劣るようになるからである。
(Al・Ti)B化合物を構成するAlとTiの原子量比も結晶粒の微細化に大きく寄与し、Al/Tiが0.2未満では微細化効果が少なく、一方2.5を越えても微細化効果が劣るためにAl/Tiy比を0.2〜2.5とした。
【0022】
鋳塊の結晶粒微細化は微細化剤の添加とともに鋳造時の冷却を強化し、アルミニウム溶湯の凝固速度を早め、結晶成長を抑制することも重要な要因の一つである。
アルミニウム合金の半連続鋳造に当たり、アルミニウム合金溶湯を上下が開放された冷却鋳型(モールド)を使用し、鋳型下部を閉塞するよう下型を配設し、アルミニウム合金溶湯を出湯ノズルから鋳型内に導入して下型上に供給し、鋳型内の溶湯レベルを鋳型内に配設したフロート分配器のような浮子式溶湯分配器により制御しながら、鋳型内壁からの冷却(一次冷却)により鋳塊殻を形成し、下型を降下させて凝固した鋳塊を鋳型から引き出し、鋳型から引き出された鋳塊を更に冷媒で冷却し(二次冷却)鋳塊全体を凝固させる鋳造方法をとっている。溶湯がモールドに接して冷却される一次冷却と冷媒が直接鋳塊に当たって冷却される二次冷却までの距離は短いほど冷却は早まり結晶粒は微細化されるが、150mmを越えると一次冷却から二次冷却までの時間が長くなり、鋳造時の冷却が弱くなるため微細な結晶粒組織が得られない。そのため、一次冷却と二次冷却までの距離は150mm以内とした。
また、冷媒が鋳塊表面に当たる角度によっても二次冷却の程度が変動し、鋳造方向に対して20°未満か80°以上では冷却水が鋳塊表面にうまく当たらず冷却能が低下するため20°以上で80°未満とした。
【0023】
二次冷却された後、更に冷却を強化するため三次冷媒を鋳塊表面に当てるが、三次冷媒が鋳造方向に対して20°未満では冷却能が低下する。一方80°以上の角度で鋳塊に当てると冷媒は鋳塊に沿って当たらないために、三次冷媒は鋳造方向に対して20°以上で80°未満とした。
【0024】
前記アルミニウム合金の半連続鋳造に当たり、鋳型内の給湯面に配設した浮子式溶湯分配器(フロート)から溶湯を流出させて溶湯レベル制御において、浮子式溶湯分配器(フロート)からの鋳型内に溶湯を噴射するが、射出角度により溶湯の冷却能が大きく変化する。鋳造方向に対して20°未満の射出角度では、溶湯は鋳造方向に強く落下するためズンプが深くなり、冷却が弱くなる。一方、80°以上では溶湯が鋳型に強く当たるため鋳塊の外観が悪くなる。このため、モールド内に給湯された溶湯のメタルレベル制御に用いるフロートからの溶湯の射出角度は鋳造方向に対して20°以上で80°未満とした。
【0025】
一般的には、鋳造は半連続鋳造で行われ、鋳型内の溶湯レベル制御は浮子式溶湯分配器(フロート)を使用するが、浮子式溶湯分配器(フロート)を用いないHOT−TOP鋳造法を用いると、冷却は強化され凝固速度が速くなり結晶粒は微細化される。
【0026】
Ti,Bの適量添加及び最適鋳造条件の選択により鋳塊の結晶を微細化するもので、アルミニウム合金は特に限定しないが、アルミニウムに添加される主要添加元素はMg,Si,Mn,Zn,Cu,Fe,Cr,Ni,Li,V,Zr,Sn,Pb,Bi,Co,Sr等である。
【0027】
【実施例】
以下本発明の具体的な実施例を比較例と共に示す。
【0028】
鋳塊組成をそれぞれ下記表1に示すような合金組成にTi,Bを添加し、半連続鋳造にてアルミニウム合金ビレットを鋳造した。
【0029】
【表1】
Figure 0003696844
【0030】
アルミニウム合金ビレットを下記表2に示す条件で鋳造し、半溶融成型時の成型性、半溶融成型後の初晶α(Al)相の形状を評価した結果も表2に併記した。
【0031】
【表2】
Figure 0003696844
【0032】
表2に示した鋳塊の外観評価は表面が引っ掻き、冷接等の欠陥が無くスムースなものを○と判定した。また、鋳塊の結晶粒は300μm以下を○と判定し、それを越える場合を×と判定した。
半溶融成型の成型性は、良好なものを○と判定し、成型性の悪いものを×と判定した。
半溶融成型後の初晶α(Al)相の形状は、球状化が認められるものを○とし、球状化が不十分であるものを×と判定した。半溶融成型後の初晶α(Al)相の微細均一化では、初晶α(Al)相のサイズが500μm以下を○と判定し、500μmを越えるサイズのものを×と判定した。
【0033】
図1は、初晶α(Al)相の微細均一化が○評価の代表例写真を示し、図2は、初晶α(Al)相の微細均一化が×評価の代表例写真を示す。
【0034】
【発明の効果】
以上述べてきた如く、本発明によれば、従来の半溶融ビレットよりも工程が簡素化され、しかも低コスト化が図れる。
また得られる組織も初晶α(Al)相サイズが平均500μm以下で、かつ面積率50%の均一球状化組織となっており、広い範囲の用途に使用可能であるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】初晶α(Al)相の微細均一化が○評価の代表例の顕微鏡組織写真である。
【図2】初晶α(Al)相の微細均一化が×評価の代表例の顕微鏡組織写真である。

Claims (2)

  1. Ti0.005〜0.5wt%、B0.0001〜0.1wt%を含み、残部が実質的にアルミニウムから成り、アルミニウム合金の結晶粒微細化のために添加されるTi,B量は、Ti/B比が3〜40であり、添加される(Al・Ti)B(x=1〜7,y=1〜9)化合物のサイズが10μm以下の粒状で、しかも(Al・Ti)B化合物を構成するAlとTiの原子量比Al/Tiが0.2〜2.5であることを特徴とする半溶融成型性に優れたアルミニウム合金。
  2. 前記アルミニウム合金の結晶粒微細化のために添加されるTiは、Al−Ti母合金で添加し、更にAl−Ti−B母合金で添加されることを特徴とする請求項1に記載の半溶融成型性に優れたアルミニウム合金。
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