JP2000001731A - 過共晶Al−Si系合金ダイカスト部材及びその製造方法 - Google Patents

過共晶Al−Si系合金ダイカスト部材及びその製造方法

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JP2000001731A
JP2000001731A JP16813698A JP16813698A JP2000001731A JP 2000001731 A JP2000001731 A JP 2000001731A JP 16813698 A JP16813698 A JP 16813698A JP 16813698 A JP16813698 A JP 16813698A JP 2000001731 A JP2000001731 A JP 2000001731A
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Akio Hashimoto
昭男 橋本
Yutaka Ishida
豊 石田
Takaaki Igari
隆彰 猪狩
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Nippon Light Metal Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 耐摩耗性,切削性に優れ、品質が安定した過
共晶Al−Si系合金ダイカスト部材を得る。 【構成】 この過共晶Al−Si系合金ダイカスト部材
は、Si:12〜18%,Sr:0.005〜0.05
%,P:0.0035〜0.01%を含む組成をもち、
ダイカスト鋳造後の鋳造組織において晶出した塊状Si
の平均粒径が3〜6μmの範囲に調整されており、且つ
塊状Siが鋳造組織の全体に分散されている。他の合金
成分としては、Cu:0.3〜4.5%,Mg:0.1
〜2.0%,Mn:0.1〜0.6%,Cr:0.1〜
0.3%,Ti:0.05〜0.2%,Fe:0.3〜
2.0%,必要に応じB:0.0001〜0.01%及
び/又はNi:0.3〜3.0%等がある。組成が特定
された過共晶Al−Si系合金の溶湯をスリーブに注入
した後、4秒以内に鋳型キャビティに射出し、50℃/
秒以上の溶湯冷却速度で成形することにより製造され
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐摩耗性が要求される
用途に適し、組織の均一性に由来して品質安定性に優れ
た過共晶Al−Si系合金ダイカスト部材及びその製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】過共晶Al−Si系合金は、金属組織に
晶出した初晶Siによって耐摩耗性が付与されることか
ら、ビデオデッキのシリンダ,トランスミッション部
品,コンプレッサ部品等の耐摩耗性が要求される部材と
して使用されている。鋳造方法には金型重力鋳造やダイ
カスト鋳造等があるが、生産性に優れているダイカスト
鋳造が工業的に魅力のある鋳造法として多用されてい
る。
【0003】しかし、ダイカスト鋳造で得られた製品
は、品質にバラツキがあるため、機能部品等の用途では
信頼性に欠ける嫌いがある。品質のバラツキは、初晶S
iのサイズ,分布等に原因がある。すなわち、過共晶A
l−Si系合金の溶湯を保持炉からレードル,スリーブ
を経て金型キャビティに注入する過程で、溶湯の温度降
下に伴って初晶Siが部分的に生成・成長し易い。その
ため、初晶Siの偏析を抑え、粒径を所定範囲にコント
ロールすることが難しく、結果として最終製品の性能が
安定化しない。初晶Siの粒径をコントロールする手段
としては、初晶Siの微細化剤であるPを添加する方法
が一般的である。P添加によると、たとえばAl−15
%Si系合金のダイカスト部材では5〜10μmの範囲
に初晶Siの平均粒径がコントロールされる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】P添加により初晶Si
の粒径がコントロールされるものの、晶出したSiの偏
析は解消されていない。具体的には、Al−15%Si
系合金をP処理後にダイカストして得られた製品のミク
ロ組織を観察すると、初晶Siの面積率が1〜2%の場
合や7〜8%の場合等、ダイカスト部材内部でのバラツ
キが大きい。バラツキは、品質を不安定化させる要因で
ある。また、針状に晶出した1〜2μmの共晶Siも観
察される。針状の共晶Siは耐摩耗性に寄与しないた
め、同じSi含有量であっても耐摩耗性が異なる製品と
なる。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、このような問
題を解消すべく案出されたものであり、P及びSrを複
合添加した過共晶Al−Si系合金をダイカストマシン
のスリーブに注入した後、直ちに金型キャビティに射出
することにより、適正粒径の晶出Siが均一に分散した
鋳造組織とし、耐摩耗性及び切削性に優れ、品質が安定
した過共晶Al−Si系合金ダイカスト部材を得ること
を目的とする。本発明の過共晶Al−Si系合金ダイカ
スト部材は、その目的を達成するため、Si:12〜1
8重量%,Sr:0.005〜0.05重量%,P:
0.0035〜0.01重量%を含み、残部が実質的に
Alの組成をもち、ダイカスト鋳造後の鋳造組織におい
て晶出した塊状Siの平均粒径が3〜6μmの範囲に調
整されており、且つ塊状Siが鋳造組織の全体に分散さ
れていることを特徴とする。
【0006】過共晶Al−Si系合金としては、Cu:
0.3〜4.5重量%,Mg:0.1〜2.0重量%,
Mn:0.1〜0.6重量%,Cr:0.1〜0.3重
量%,Ti:0.05〜0.2重量%,Fe:0.3〜
2.0重量%を含む組成をもつものが使用される。更
に、B:0.0001〜0.01重量%及び/又はN
i:0.3〜3.0重量%を含むこともできる。この過
共晶Al−Si系合金ダイカスト部材は、組成が特定さ
れた過共晶Al−Si系合金の溶湯をスリーブに注入し
た後、4秒以内に金型キャビティに射出し、50℃/秒
以上の溶湯冷却速度で成形することにより製造される。
【0007】
【作用】本発明の過共晶Al−Si系合金では、初晶S
i,共晶Si等の晶出Siを所定粒径に塊状化すること
により、実質的に全量の晶出Siを耐摩耗性に寄与さ
せ、耐摩耗性の向上を図っている。また、晶出Siのサ
イズを平均粒径で3〜6μmにコントロールして、機械
加工時の切削性を改善している。従来の過共晶Al−S
i系合金ダイカスト部材は、図1に示すような金属組織
をもっている。図1で黒くみえる部分が晶出Siであ
り、粒径が15μmを超えるような大きく成長したもの
もある。晶出Siは、白くみえるマトリックスに比較し
て硬度が非常に高く、マトリックスとの間で大きな硬度
差を生じている。また、晶出Siが局部的に集中した分
散形態をとっていることからも、軟質部と硬質部との物
性差が強調される組織となっている。このような大粒径
の晶出Si及び晶出Siの偏在は、切削時に切欠き等の
欠陥を発生させる原因となる。摩耗時においても、硬質
の晶出Siが欠け落ちる原因にもなる。
【0008】これに対し、本発明の過共晶Al−Si系
合金は、図2に示すように粒径がコントロールされた晶
出Siが全体にわたって均一に分散した金属組織をもっ
ている。このような分散形態のため、硬質の初晶Siに
由来する耐摩耗性が十分に発揮され、機械加工時の切削
性も向上する。図2に示した初晶Siの分散形態は、P
及びSrを複合添加することにより得られる。Srは、
共晶Siを微細化する添加剤として知られているが、P
との複合添加によって微細な針状の共晶Siの発生を抑
え、晶出Siを適正粒径に調整する作用を呈するものと
推察される。P及びSrの複合添加自体は、特開平9−
87768号公報で紹介されているところであるが、断
熱容器の中で5秒〜60分間保持しているため、40μ
m以上と大きく成長した初晶Siが分散した組織にな
り、十分な切削性が得られない。P及びSrを複合添加
した過共晶Al−Si系合金は、スリーブや金型キャビ
ティ内で晶出Siが大きく成長しないように、ダイカス
トマシンのスリーブに過共晶Al−Si系合金を注入し
た後、直ちに金型キャビティに射出して急速冷却する。
このようにして、平均粒径3〜6μmにコントロールさ
れた晶出Siが均一分散した組織をもち、耐摩耗性,切
削性に優れ且つ品質が安定したダイカスト部材が得られ
る。
【0009】以下、本発明の過共晶Al−Si系合金ダ
イカスト部材に含まれる合金成分,含有量,製造条件等
を説明する。 Si:12〜18重量% 耐摩耗性の向上に有効な合金成分である。耐摩耗性の改
善に有効な晶出Siを十分に発生させるためには、12
重量%以上のSiが必要である。しかし、18重量%を
超える多量のSiが含まれると、液相線温度が上昇して
溶解性が悪くなり、高温溶解が必要になるため、炉の寿
命やエネルギコスト等に悪影響を及ぼす。 Sr:0.005〜0.05重量% 共晶Siを微細化する添加剤として従来考えられている
が、本発明者等の調査・研究によると、Pと共存したと
き、微細で針状の共晶Siの晶出を抑え、共晶Siを塊
状化させる作用を呈することが判った。X線マイクロア
ナライザを用いてミクロ組織を観察すると、SrがSi
の全面に共存しており、微細な共晶Siの晶出がなく、
3〜6μmの範囲に平均粒径が調整された晶出Siが均
一に分散していることが検出される。このような効果
は、0.005重量%以上のSr含有量で顕著になる
が、0.05重量%で飽和する。Srの効果及び経済性
を考慮すると、好ましくは0.01〜0.02重量%の
範囲にSr含有量が設定される。 P:0.0035〜0.01重量% Al−P系化合物として添加され、初晶Siの核として
働く。その結果、多数のSi粒が発生すると共に、初晶
Siが微細化される。このような作用は従来から知られ
ているものであるが、Srとの共存によって初晶Siの
成長を抑制する作用を呈することは、本発明者等による
調査・研究の結果から初めて見出されたものである。し
かし、0.01重量%を超える多量のPが含まれると、
Srの作用が低下すると共に、Pのみの状況に近付いて
いく。すなわち、Sr及びPが特定された範囲にあると
きに初めて相互作用が発揮される。
【0010】晶出Si:塊状で平均粒径が3〜6μm 晶出Siの平均粒径は、鋳型に注入された溶湯の冷却速
度にもよるが、スリーブ内で初晶Siの生成・成長を抑
え、最終的に3〜6μmの範囲に調整する。平均粒径が
3μm未満では耐摩耗性が不足し、6μmを超える平均
粒径では晶出Siの偏析が発生し易くなる。一般的に
は、晶出Siの粒径が大きいほど耐摩耗性が改善される
が、大きすぎる晶出Siは品質のバラツキや切削性劣化
の原因となる。この点、本発明では、平均粒径が3〜6
μmの範囲にコントロールされた塊状の晶出Siを金属
組織全体に均一分散させている。すなわち、大粒径の晶
出Siが局部的に集中してマトリックスとの間に大きな
物性差を示す金属組織(図1)ではなく、所定粒径にコ
ントロールされた塊状の晶出Siが均一分散した金属組
織(図2)とすることにより、耐摩耗性,切削性を両立
させると共に、品質安定性を図っている。晶出Siを塊
状で平均粒径3〜6μmにコントロールするためには、
Sr及びPの複合添加が必要である。Sr又はPを単独
で添加したものでは、晶出Siの平均粒径を3〜6μm
の範囲に収めることができない。また、Sr及びPの複
合添加により2μm以下の微細な共晶Siがなくなるた
め、晶出したSi粒の全量が耐摩耗性の向上に働く。
【0011】具体的には、次に揚げる合金成分を含むア
ルミニウム合金に適用される。 Cu:0.3〜4.5重量% マトリックスを強化し、耐摩耗性の向上に有効な合金成
分であり、0.3重量%以上でCuの添加効果が顕著に
なる。また、ダイカスト部材を溶体化処理後に時効する
用途では、強度向上に有効なAl2 Cu析出源ともな
る。しかし、4.5重量%を超える多量のCuを添加す
ると、内部欠陥の増加や耐食性の低下を引き起こし、応
力腐食割れが発生し易くなる。 Mg:0.1〜2.0重量% マトリックスを強化し、硬度,耐摩耗性,機械強度等を
向上させる合金成分であり、ダイカスト部材を溶体化処
理後に時効すると強度向上に有効なMg2Siとなって
析出する。このような効果は0.1重量%以上のMg含
有量で顕著になるが、2.0重量%を超える多量のMg
が含まれると靭性が劣化する。
【0012】Mn:0.1〜0.6重量% マトリックスを強化し、機械的性質の向上に有効な合金
成分であり、0.1重量%以上でMnの添加効果が顕著
になる。しかし、0.6重量%を超えるMn含有量で
は、Mnを含む粗大な金属間化合物が晶出し、機械的性
質が劣化する。また、Mn含有量が過剰になると、合金
溶製時にスラッジが炉底に形成し易くなる問題も生じ
る。 Cr:0.1〜0.3重量% Al−Si−Fe−Mn−Cr系金属間化合物を微細な
晶出物として組織全体に均一分散させ、硬度,機械的性
質を向上させる合金成分である。Al−Si−Fe−M
n−Cr系金属間化合物は、300〜500MHVの硬
さをもち、初晶Siの硬さ約1000MHVに比較して
軟らかい。そのため、相手材に対する初晶Siの攻撃性
を緩和し、機械加工時の切削抵抗を下げ、工具の摩耗を
軽減する。したがって、機械加工されたダイカスト部材
は、表面粗さが小さな仕上げ加工面をもち、表面粗さの
バラツキも抑えられる。
【0013】Ti:0.05〜0.2重量% マトリックスのα−Al晶を微細化する作用を呈し、
0.05重量%以上でその効果が顕著になる。しかし、
0.2重量%を超える多量のTiを添加すると、却って
機械的性質の低下を招く。 Fe:0.3〜2.0重量% ダイカスト鋳造時、金型内面に対する高温溶湯の焼付き
を防止する上で有効な合金成分であり、0.3重量%以
上でその効果が顕著になる。しかし、2.0重量%を超
える多量のFeが含まれると、ミクロポロシティの発生
原因となり、靭性及び強度を低下させる。 B:0.0001〜0.01重量% 必要に応じて添加される合金成分であり、Tiとの共存
によってα−Al晶を微細化させる作用を呈する。Bの
添加効果は0.0001重量%以上で顕著になるが、
0.01重量%を超える過剰量が含まれると合金部材を
脆化させる欠点が現れる。
【0014】Ni:0.3〜3.0重量% 必要に応じて添加される合金成分であり、Al3 Ni,
Al−Cu−Ni等の金属間化合物を生成して高温強
度,硬度及び耐摩耗性を改善する作用を呈する。Niの
添加効果は0.3重量%以上で顕著になるが、3.0重
量%を超える添加は高価なNiを多量に消費して材料コ
ストを上げる。本発明が対象とする過共晶Al−Si系
合金では、不純物として含まれるZnを1.5重量%以
下(好ましくは、0.1重量%以下)に規制することが
望ましい。多量にZnが含まれると、Znに起因して耐
食性が劣化する。
【0015】鋳造条件:スリーブ注入後、4秒以内に金
型キャビティに射出 50℃/秒以上の溶湯冷却速度 過共晶Al−Si系合金は、通常の方法で溶製され、脱
ガス,微細化処理後に所定の組成に成分調整され、脱滓
・鎮静化される。用意された溶湯をダイカストマシンの
スリーブに注入した後、4秒以内にダイカスト鋳造す
る。スリーブ内での溶湯保持時間が4秒を超えて長くな
ると、スリーブ内で初晶Siの成長が進行し、切削性に
有害な平均粒径が6μmを超える初晶Siが分散した鋳
造組織となる。また、晶出Siの偏析が生じ易く、鋳造
組織が均一でなく、機械的性質が不安定になる。金型に
射出された過共晶Al−Si系合金溶湯は、50℃/秒
以上の冷却速度で急冷される。この急冷により、平均粒
径が3〜6μmの範囲にコントロールされた晶出Siが
均一に分散した鋳造組織が得られる。なお、溶湯冷却速
度は製品の肉厚に応じて変わることから、肉厚部に対し
ても50℃/秒以上の冷却速度が得られるように金型の
冷却能を調整することが重要である。溶湯冷却速度が5
0℃/秒に達しないと、晶出Siの成長が進行し、平均
粒径で6μmを超える大きな晶出Siが分散するばかり
でなく、図1でみられるように晶出Siが偏在した鋳造
組織になり易い。
【0016】急冷で生成した鋳造組織をもつダイカスト
部材は、大きな晶出Siがなく、3〜6μmの平均粒径
に調整されているため耐摩耗性及び切削性に優れてい
る。また、晶出Siが局部的な偏在なく組織全体に分散
しているので、Si晶出部とマトリックスとの間の物性
差が大きくならず、品質安定性も改善されている。50
℃/秒以上の溶湯冷却速度は、ダイカスト鋳造により達
成可能であり、他の鋳造法ではこのような大きな溶湯冷
却速度が得られない。また、水冷機構を用いた重力鋳造
法では、生産性が悪いため工業的な実施に問題がある。
ダイカスト鋳造時、金型キャビティの空気を酸素で置換
した後、溶湯を射出してもよい。金型キャビティに充満
した酸素は、Alと反応してAl23 となり空気の巻
込みを防止するため、ダイカスト部材にポロシティが発
生することを有効に防止する。したがって、ダイカスト
部材を熱処理してもガス起因のフクレが発生せず、溶体
化処理及び後続する時効処理によって優れた強度及び伸
びが部材に付与される。
【0017】酸素置換ダイカスト法で製造された部材
は、後続する熱処理によって強度及び伸びが向上する。
熱処理としては、代表的には480〜520℃×0.5
〜8時間→水冷→150〜180℃×5〜10時間のT
6処理が採用される。この場合、酸素置換によって空気
の巻込みが抑えられているため、熱処理時にフクレが生
じることがない。480〜520℃×0.5〜8時間の
溶体化処理でCu,Mg等の析出強化元素を十分に固溶
させ、水焼入れ後に150〜180℃×5〜10時間の
時効処理を施すことによりMg2 Si,Al2 Cu等が
析出し機械的性質が向上する。T6処理された部材は、
機械加工が施されて製品となる。なお、酸素置換を伴わ
ない普通ダイカスト法で製造された部材は、熱処理時に
フクレが発生する虞れがあるため、一般的には熱処理す
ることなく機械加工が施される。
【0018】
【実施例】Si:15重量%,Cu:3.5重量%,M
g:0.8重量%,Cr:0.2重量%,Fe:0.8
重量%,Sr:0.015重量%,P:0.007重量
%,残部:Alの組成に調整された溶湯を760℃で溶
製し、Ti:0.1重量%を添加して微細化処理した
後、脱ガス及び脱滓処理を経て700℃に保持した。用
意された溶湯を、ダイカストマシンのスリーブを介して
幅180mm,長さ150mm,厚さ6mmのキャビテ
ィをもつ金型に射出した。スリーブへの注入から金型へ
の射出までのタイムラグを3秒に設定した。金型として
は、水冷構造を備えたものを使用し、溶湯冷却速度を約
200℃/秒に維持した。また、鋳造圧力は78MPa
に、金型温度は約170℃に保持した。得られたダイカ
スト部材は、溶湯冷却速度が最も遅い製品板厚の肉厚中
心部のミクロ組織でみても、平均粒径が4〜6μmの範
囲にコントロールされ、しかも偏在することなく全体に
わたって初晶Siが均一に分散した鋳造組織(図2)を
もっていた。
【0019】比較のため、Srを含まないことを除き同
じ組成をもつAl合金を同じ条件下で溶製し、ダイカス
ト鋳造した。この場合に得られたダイカスト部材は、約
50μmに近い大きな初晶Siが分散した鋳造組織(図
1)になっていた。また、晶出Siが局部的に集中して
分布し、晶出Siが少ないα−Al晶が多いマトリック
ス領域と晶出Siに富んだ領域が明確に区別され、組織
の均一性に欠けていた。更に、針状の晶出Siも観察さ
れた。各ダイカスト部材の表面を1mm切削した後、摩
耗試験用の試験片を作製した。摩耗試験では、滑り速度
1.1mm/秒,潤滑油あり,滑り距離8km,摩耗
子:鋳鉄の条件を採用し、それぞれ3個の試験片a〜c
に異なる面圧を加えた。摩耗試験後の各試験片につい
て、摩耗量(深さ)を同じ面圧で3か所測定した。
【0020】表1の測定結果にみられるように、本発明
に従った試験片は、何れの面圧を加えた摩耗試験でも、
比較例に対して小さな摩耗量を示した。また、各試験に
おける摩耗量のバラツキも、本発明例の方が小さくなっ
ていた。これらの結果から、本発明に従ったダイカスト
部材は、摩耗性に優れ、しかも品質も安定していること
が判る。更に、各ダイカスト部材を切削すると、本発明
に従ったダイカスト部材では、何ら支障なくできた。切
削面も平滑であり、切削性に優れていた。他方、比較例
のダイカスト部材では、疵が発生するものもあった。疵
の発生は、大粒径の晶出Siに起因するものと推察され
る。
【0021】
【0022】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の過共晶
Al−Si系合金ダイカスト部材は、P及びSrの複合
添加によって晶出Siを平均粒径で3〜6μmの範囲に
コントロールすると共に、晶出Siが均一に分散した鋳
造組織としている。このように適正粒度の晶出Siが偏
在することなく均一分散しているため、耐摩耗性,切削
性に優れ、品質も安定したダイカスト製品が得られ、ビ
デオデッキ用シリンダ,トランスミッション部品,コン
プレッサ部品等の耐摩耗性が要求される摺動機能部品と
しても使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来の組成をもつ過共晶Al−Si系合金か
ら得られたダイカスト部材の鋳造組織を示す顕微鏡写真
であり、大粒径の晶出Siが偏在していることが観察さ
れる。
【図2】 本発明に従った組成をもつ過共晶Al−Si
系合金から得られたダイカスト部材の鋳造組織を示す顕
微鏡写真であり、適正粒径の晶出Siが均一に分散して
いることが観察される。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成10年6月16日(1998.6.1
6)
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正内容】
【図2】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 猪狩 隆彰 静岡県庵原郡蒲原町蒲原1丁目34番1号 日本軽金属株式会社グループ技術センター 内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Si:12〜18重量%,Sr:0.0
    05〜0.05重量%,P:0.0035〜0.01重
    量%を含み、残部が実質的にAlの組成をもち、ダイカ
    スト鋳造後の鋳造組織において晶出した塊状Siの平均
    粒径が3〜6μmの範囲に調整されており、且つ塊状S
    iが鋳造組織の全体に分散されている耐摩耗性及び切削
    性に優れた過共晶Al−Si系合金ダイカスト部材。
  2. 【請求項2】 過共晶Al−Si系合金がCu:0.3
    〜4.5重量%,Mg:0.1〜2.0重量%,Mn:
    0.1〜0.6重量%,Cr:0.1〜0.3重量%,
    Ti:0.05〜0.2重量%,Fe:0.3〜2.0
    重量%を含む組成をもつ請求項1記載の過共晶Al−S
    i系合金ダイカスト部材。
  3. 【請求項3】 更にB:0.0001〜0.01重量%
    及び/又はNi:0.3〜3.0重量%を含む請求項2
    記載の過共晶Al−Si系合金ダイカスト部材。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3の何れかに記載の組成をも
    つ過共晶Al−Si系合金の溶湯をスリーブに注入した
    後、4秒以内に金型キャビティに射出し、50℃/秒以
    上の溶湯冷却速度で成形する過共晶Al−Si系合金ダ
    イカスト部材の製造方法。
JP16813698A 1998-06-16 1998-06-16 過共晶Al−Si系合金ダイカスト部材及びその製造方法 Pending JP2000001731A (ja)

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