JPH08104937A - 高温強度に優れた内燃機関ピストン用アルミニウム合金及び製造方法 - Google Patents

高温強度に優れた内燃機関ピストン用アルミニウム合金及び製造方法

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JPH08104937A
JPH08104937A JP26310794A JP26310794A JPH08104937A JP H08104937 A JPH08104937 A JP H08104937A JP 26310794 A JP26310794 A JP 26310794A JP 26310794 A JP26310794 A JP 26310794A JP H08104937 A JPH08104937 A JP H08104937A
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aluminum alloy
internal combustion
combustion engine
primary crystal
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JP26310794A
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Yamaji Kitaoka
山治 北岡
Hiroji Namekawa
洋児 滑川
Yoshiteru Miyasaka
禧輝 宮坂
Haruyasu Katto
晴康 甲藤
Ryoichi Nakajima
良一 中島
Yasushi Matsuse
康詩 松瀬
Tomonari Watanabe
智成 渡辺
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Art Kinzoku Kogyo KK
Nippon Light Metal Co Ltd
Original Assignee
Art Kinzoku Kogyo KK
Nippon Light Metal Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高温強度が改善されたピストン用アルミニウ
ム合金を得る。 【構成】 この内燃機関ピストン用アルミニウム合金
は、Cu:3〜7%,Si:8〜13%,Mg:0.3
〜1.0%,Fe:0.1〜1.0%,Ti:0.01
〜0.3%,P:0.001〜0.01%,Ca:0.
0001〜0.01%及び必要に応じてNi:0.2〜
2.5%を含み、P/Caが重量比で0.5〜50の範
囲に調整されている。冷却速度20℃/秒以下で鋳造
し、480〜510℃に3〜10時間加熱する溶体化処
理,温水に焼入れ,160〜230℃に2〜10時間加
熱する時効処理を経た後、目標形状に機械加工される。 【効果】 初晶Siを微細化し、共晶Siの成長を促進
させることにより、優れた耐摩耗性を維持し、且つ高温
強度が改善される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ディーゼルエンジン,
ガソリンエンジン等の内燃機関に組み込まれるピストン
等として好適な高温強度に優れたアルミニウム合金及び
その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】Siを12.6重量%以上含有する過共
晶Al−Si合金は、熱膨張係数が小さく、耐摩耗性に
優れている。また、溶湯が凝固する際に高硬度の初晶S
iが晶出するため、耐摩耗性が要求される内燃機関のピ
ストンとして使用されている。しかし、初晶Siが大き
く成長するため、機械加工性に劣る。この点、亜共晶A
l−Si合金では、共晶Siの晶出もあり、加工性の改
善も見られる。亜共晶Al−Si合金の代表的なものと
して、AC8Aがある。最近の内燃機関では、エネルギ
ー資源の有効利用から燃焼効率を上昇させる傾向にあ
る。燃焼効率を向上させようとすると燃焼温度が上昇
し、これに伴って内燃機関に組み込まれている各種部
品、特にピストンの材質として200℃付近の温度域で
高い高温強度が要求される。
【0003】高温強度を改善したピストン用アルミニウ
ム合金としては、T5 熱処理でも十分な高温強度及び耐
熱衝撃性をもつものが特開昭57−79410号公報で
紹介されている。この合金においては、Si含有量を
8.5〜13.5重量%の範囲に規制すると共に、Sb
添加によって共晶Siを改良している。また、特開昭5
5−24784号公報では、Fe系基材をAl−Si−
Cu−Mg合金で鋳ぐるみピストンを製造するとき、鋳
造後に480〜520℃に1〜8時間加熱する熱処理に
よって耐熱衝撃性を改善している。Al−Si合金は、
硬質の初晶Siが晶出することに起因して優れた耐摩耗
性を呈するが、初晶Siが大きく成長した鋳造組織にな
り易い。この状態で加工を施すと、初晶Siやアルミニ
ウムマトリックスとの界面等に亀裂が入り、目的とする
製品が得られないばかりでなく、機械的性質も十分でな
い。特に、切削加工の際に、初晶Siに起因するカジリ
が発生する欠点がある。初晶Siは、急冷凝固法によっ
て微細化される。たとえば、粉末法を採用したり、特開
昭52−129607号公報にみられるような溶湯圧延
法によってアルミニウム合金溶湯を急冷凝固し、鋳造組
織の微細化を図っている。
【0004】アルミニウム合金溶湯をP処理することに
よっても、初晶Siを微細化することができる。P添加
によって初晶Siを微細化し、加工性及び機械的性質の
改善を図っている。添加されたPは、金属間化合物Al
Pを形成し、この金属間化合物AlPが初晶Siの微細
化に作用するものと考えられている。たとえば、特開昭
52−153817号公報では、ヘキサメタリン酸ナト
リウム及びアルミナの融合物をアルミニウム合金溶湯に
添加し、初晶Siの偏析を抑制し、鋳造組織の微細化を
図っている。また、特開昭60−204843号公報で
は、Cu−P合金,赤燐,リン酸ソーダ,リン酸カルシ
ウム等のP含有物質で16〜25重量%のSiを含有す
る過共晶Al−Si合金を処理することが紹介されてい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、金型鋳造,D
C鋳造のようにインゴットを経る方法では、P添加のみ
では微細化が不十分な場合が多く、特に押出し材,鍛造
材等として使用するとき、加工時における初晶Siの割
れが問題となる。初晶Siを微細化するP添加の作用
は、Al−Si合金がNa又はCaを含むときに失われ
がちである。この点に関し、たとえば財団法人素形材編
集「昭和59年度ハイシリコン・アルミニウム合金ダイ
カストの開発研究報告書(I)」第24〜25頁では、
次のように説明されている。Al−Si合金に含まれて
いるNa及びCaがPと反応してNa−P及びCa−P
を形成し、初晶Siの微細化に作用するAlPの生成が
妨げられる。そのため、初晶Siの微細化を狙ったP添
加は、適用対象がNaやCaをなるべく含まない過共晶
Al−Si合金に限られていた。
【0006】Caは、共晶Siを改良する作用を呈し、
亜共晶合金の引張り特性や衝撃値等の性質を改善する有
効な合金元素である。しかし、Al−Si合金において
は、Caが初晶Si微細化のために添加されるPの作用
を阻害することと、逆にPがCaによる共晶組織の改良
作用を阻害する。そのため、この系の合金において、初
晶Siの更なる微細化によって加工性等を向上しようと
するとき、P処理のみでは不十分であり、特殊な設備を
必要とする溶湯圧延法等の急冷凝固に頼らざるを得な
い。本発明は、このような問題を解消すべく案出された
ものであり、P/Ca比のコントロールにより、金型鋳
造,DC鋳造のようにインゴットを経る方法であっても
十分に微細化した初晶Siを晶出させ、且つCu,S
i,Mg,Fe,Ti等の成分を相関的に調整すること
によって、高温性,耐摩耗性及び加工性に優れたピスト
ン用Al−Si合金を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の内燃機関ピスト
ン用アルミニウム合金は、その目的を達成するため、C
u:3〜7重量%,Si:8〜13重量%,Mg:0.
3〜1.0重量%,Fe:0.1〜1.0重量%,T
i:0.01〜0.3重量%,P:0.001〜0.0
1重量%及びCa:0.0001〜0.01重量%を含
み、P/Caが重量比で0.5〜50の範囲に調整され
ていることを特徴とする。このアルミニウム合金は、更
にNi:0.2〜2.5重量%を含むこともできる。本
発明に従った内燃機関ピストン用アルミニウム合金は、
前述した組成をもつアルミニウム合金溶湯を冷却速度2
0℃/秒以下で鋳造した後、480〜510℃に3〜1
0時間加熱する溶体化処理を施し、直ちに温水に焼入
れ、次いで160〜230℃に2〜10時間加熱する時
効処理を施し、空冷した後、目標形状に機械加工するこ
とにより製造される。鋳造後の組織は、初晶Siの平均
粒径が40μm以下で、共晶Siの平均長さが20μm
以上になっている。
【0008】以下、本発明のアルミニウム合金に含まれ
る合金元素及びその含有量等について説明する。 Cu:3〜7重量% 高温強度及び高温疲労強度の向上に有効な合金元素であ
り、Cu添加の効果は固溶状態で顕著となる。Cu含有
量が3重量%未満では、高温強度が不足する。しかし、
7重量%を超える多量のCuが含まれると鋳造時にAl
2 Cu等の大きな晶出物が生成し、鋳造割れが発生し易
くなる。また、多量にCuを添加しても、増量に見合っ
た強度改善の効果も得られない。 Si:8〜13重量% 耐摩耗性の向上及び熱膨張係数の低減に有効な共晶Si
となる必須の合金元素であり、湯流れを良好にする作用
も呈する。また、共存しているMgと反応し、時効硬化
に有効なMg2 Siをも生成する。Si含有量が8重量
%に達しないと、α−Alが主体となり、耐摩耗性や高
温強度が低下し、熱膨張係数が大きくなる。逆に、13
重量%を超えるSi含有量では、初晶Siのサイズが大
きくなり、かつ分散量も多くなる。その結果、応力集中
による高温強度の低下を招く。
【0009】Mg:0.3〜1.0重量% Siと結合し、時効硬化に有効なMg2 Siを生成す
る。Mg含有量が0.3重量%に達しないと、十分な時
効作用が得られない。逆に、1.0重量%を超えるMg
含有量では、鋳造時に多量のMg2 Siが晶出し、機械
的性質を低下させる。 Fe:0.1〜1.0重量% 高温強度の向上に有効な合金元素であり、0.1重量%
以上のFe含有量で効果が顕著となる。Feは、金属間
化合物として晶出し、高温での強度を改善する。しか
し、1.0重量%を超えるFe含有量では、Feを含む
金属間化合物が数百μmの大きな晶出物となり、却って
高温強度を低下させる。
【0010】Ti:0.01〜0.3重量% α−Alを微細化し、材質を均質化する上で有効な合金
元素である。Ti含有量が0.01重量%以上になる
と、α−Alがマクロ結晶粒で直径10mm以下とな
り、微細化による効果が顕著になる。しかし、0.3重
量%を超えるTi含有量では、Al−Ti系の大きな晶
出物が生成し、機械的性質を劣化させる。Tiは、Ti
−B系の微細化剤として添加することができる。この点
で、0.03重量%以下のBの共存も許容される。 P:0.001〜0.01重量%,Ca:0.0001
〜0.01重量% P及びCaの共存によって、初晶Siの粗大化が抑制さ
れ、高強度が維持される。また、共晶Siが大きくな
り、耐摩耗性の改善が図られる。しかし、0.01重量
%を超えるPや0.01重量%を超えるCaは、湯流れ
性を悪化させ、鋳造組織を不均一にする。
【0011】本発明で規定した合金系では、Si含有量
に応じて共晶Si及び初晶Siが共存し、或いは初晶S
iがほとんどみられない組織となる。本発明では、内燃
機関用ピストンとして要求される性能を共晶Siに依っ
ている。また、初晶Siが晶出しても、平均粒径が小さ
いと、高温強度に悪影響を与えず、却って耐摩耗性に優
れた材料が得られる。 P/Ca(重量比):0.5〜50 共晶Si及び初晶Siのサイズは、P/Ca重量比で制
御できる。P/Ca重量比の調整による作用自体は本発
明者等が特願平4−244259号公報,特願平5−1
61380号等で紹介したところであるが、P/Ca重
量比が0.5に達しないと、共晶Siの平均長さが20
μm未満になり、耐摩耗性の劣化を招く。逆に50を超
えるP/Ca重量比では、P量の増加に起因して溶湯の
粘度が上昇し、安定した組織が得られ難くなる。
【0012】P/Ca重量比の調整は、含有量が規定さ
れた合金成分と関連して鋳造組織に晶出する共晶Si及
び初晶Siを最適化する。本発明で規定したP含有量,
Ca含有量及びP/Ca重量比は、図1に示す領域で表
される。図1の点線は、本発明の概念を説明するために
付したものであり、完全には定量的なものではないが、
実験的には近傍を表示しているものと考えられる。本発
明で規定した合金系では、Si含有量がおよそ11重量
%を超えると、鋳造時の冷却速度にも依るが初晶Siが
晶出し易くなる。冷却速度が10〜20℃/秒では10
〜11重量%のSi含有量で初晶Siが晶出し、冷却速
度10℃/秒以下の徐冷になると11〜12重量%のS
i含有量で初晶Siが晶出してくる。そして、共晶Si
の外に初晶Siが晶出する組成及び冷却条件下で図1の
範囲になると、初晶Siが微細化しにくくなる。この
点、初晶Siが晶出する場合、P含有量,Ca含有量及
びP/Ca重量比が図1の領域〜にあるように調整
する必要がある。
【0013】実験結果から、初晶Siの結晶核として働
く化合物が領域〜で次のように異なるものと推察さ
れる。領域では主としてAl−P系化合物,領域で
はAl−P系化合物及びP−Ca系化合物,領域では
主としてP−Ca系化合物が初晶Siの結晶核になる。
他方、領域では、Al−P系,P−Ca系化合物が少
ないため、初晶Siを十分に微細化する作用が発揮され
ない。一方、初晶Siが少ない条件,すなわちSi含有
量が11重量%付近より少ない条件下では、Siが共晶
として晶出する。そのため、図1に示した領域のどこで
も、共晶Siの平均長さが20μm以上となる。換言す
ると、直線D−Cより下のP,Ca量では、共晶Siが
20μm以下に微細化され、耐摩耗性が劣化する。その
ため、内燃機関のピストンとして要求される特性が満足
されない。P含有量,Ca含有量及びP/Ca重量比を
適正に維持するため、アルミニウム合金溶湯を溶製する
場合にも工夫が必要とされる。すなわち、Pは溶湯中に
比較的残存し易いが、Caは活性であるため含有量が変
動し易い。そこで、鋳造直前にCaを添加し、鋳込まれ
る合金溶湯のCa含有量を規定範囲に維持する。
【0014】Ni:0.2〜2.5重量% 必要に応じて添加される合金元素であり、200℃付近
における耐熱性,高温強度を改善する。Ni添加の効果
は、0.2重量%以上で顕著になる。しかし、2.5重
量%を超える多量のNiを含ませると、伸びが低下し、
アルミニウム合金を脆くする欠点が現れる。本発明に従
ったアルミニウム合金においては、その他の合金元素と
して、Na,Mn,Zr等を含むことがある。Naは、
不純物として混入してくる元素であり、共晶Siを微細
化する作用を呈することから、上限を20ppmにする
ことが望ましい。Mnは、Fe/Mn重量比が約1のと
き、針状のAl−Fe系化合物を塊状にし、鋳造性及び
湯流れ性を改善し、ヒケ巣の防止に有効に作用する。Z
rは、結晶粒微細化に有効であり、0.3重量%以下の
量でTiと同時に或いはZr単独で添加することもでき
る。
【0015】初晶Si:平均粒径が40μm以下 過共晶Al−Si合金の高温強度は、初晶Siの大きさ
に大きく影響される。必要とする高温強度を確保する上
から、初晶Siの平均粒径を40μm以下に規制するこ
とが必要とされる。 共晶Si:平均長さが20μm以上 硬質の共晶Siは、耐摩耗性の改善に有効である。この
ような効果は、共晶Siの平均長さが20μm以上にな
ると顕著に現れる。 鋳造時の冷却速度:20℃/秒以下 平均長さ20μm以上に共晶Siを成長させるために
は、鋳造時の冷却速度を20℃/秒以下に設定すること
が必要である。冷却速度が20℃/秒を超えると、平均
長さが20μmに満たない共晶Siが晶出し易く、耐摩
耗性が劣化する。なお、本発明では、金型鋳造や溶湯鍛
造法が採用され、ピストンの素形材に鋳造される。実際
の金型鋳造では溶湯の冷却速度が8℃/秒,溶湯鍛造法
では3〜4℃/秒である。
【0016】溶体化処理:480〜510℃に3〜10
時間加熱 本発明で規定した合金系では、Cu及びMgを十分に固
溶させる必要がある。溶体化処理では、十分な固溶を図
る上で、480〜510℃に3〜10時間加熱する。加
熱温度が510℃を超える高温ではバーニング現象が現
れ、480℃に達しない低温では十分な固溶が図れな
い。固溶による効果は、10時間で飽和し、それ以上の
長時間をかけても特性の改善が見られない。逆に、3時
間に満たない加熱では、固溶が不十分である。溶体化処
理後のアルミニウム合金は、温水焼入れされる。水焼入
れでは、Cu含有量が多いことから焼き割れが発生し易
い。 時効処理:160〜230℃に2〜10時間加熱 本発明で規定した合金系は、加熱温度160℃以上の時
効処理でMg2 Siが析出し、強度が向上する。しか
し、230℃を超える加熱では、過時効により却って強
度が低下する。1時間に達しない短時間加熱では効果が
小さく,10時間を超えて加熱しても長時間化に見合っ
た改善がみられない。
【0017】
【実施例】
実施例1:Si:10.5重量%,Cu:6.0重量
%,Mg:0.5重量%,Fe:0.4重量%,Ti:
0.1重量%,B:0.0006重量%,Mn:0.4
重量%,Na:0.0004重量%及びZr:0.00
01重量%を含み、P含有量,Ca含有量及びP/Ca
重量比を表1に示すように調整したアルミニウム合金溶
湯を溶製した。各アルミニウム合金溶湯を、冷却速度8
℃/秒で760℃からJIS4号舟型に鋳込んだ。な
お、冷却速度は、舟型を200℃に加熱することによっ
て調整した。得られた鋳塊に500℃×6時間の溶体化
処理を施し、60℃の温水に焼き入れた後、220℃×
6時間の時効処理を施し、空冷した。
【0018】
【表1】
【0019】時効処理された各合金から、切削加工によ
り常温摩耗試験片及び高温引張り試験片を切り出した。
高温試験は、200℃に100時間予備加熱した後の試
験片を対象とした。常温摩耗試験は、フリクション型摩
耗試験機を使用し、相手材を鋳鉄FCMP70とし、過
重50kgf/mm2 ,摺動速度0.23m/秒,摺動
距離3km,潤滑剤使用の条件下で行った。試験結果
を、初晶Si及び共晶Siのサイズと併せて表2に示
す。試験番号1〜7から、初晶Siの出現は、P含有
量,Ca含有量及びP/Ca重量比に依存していること
が判る。すなわち、P含有量が少なくCa含有量が多い
と、初晶Siが出現しにくくなっている。これは、Al
−Si状態図において共晶点が右側にずれるためと考え
られる。一方、P含有量が多いと、共晶点が左側にず
れ、初晶Siが出現する傾向が強くなる。この関係は、
P/Ca重量比と相乗的に絡み合い、初晶Siを微細化
すると共に、共晶Siを大きく成長させる。このように
して初晶Si及び共晶Siが改質された試験番号2〜6
では、引張り強さ,0.2%耐力,伸び等の機械的性質
に優れ、且つ耐摩耗性も良好であった。本実施例で使用
した各合金はSi含有量が10.5重量%と低く、しか
も冷却速度が遅いことから、初晶Siがほとんど晶出し
ない、或いは晶出しても僅少又は少量であった。しか
し、P/Ca重量比に応じて共晶Siの平均長さが大き
くなり、それと共に高温引っ張り強度が上昇し、摩耗量
が急激に低下した。他方、P/Ca重量比が0.3の試
験番号1では、共晶Siの平均長さが15μmと小さ
く、摩耗量も240mgと大きな値を示した。多量のP
を含む試験番号7では、溶湯の粘度が上昇し、湯流れが
悪く、試料に湯境が発生した。12.0重量%と多量の
Siを含む試験番号8では、初晶Siが晶出しているも
のの、P含有量及びCa含有量が図1の領域にあるた
め、初晶Siに対する微細化効果が小さく、大きな平均
粒径をもつ初晶Siが晶出した。その結果として、20
0℃における高温引張り強さが低下している。試験番号
9は、試験番号8とほぼ同じ組成をもつが、P含有量及
びCa含有量を図1の領域に調整している。その結
果、初晶Siが微細化され、200℃の高温引張り強さ
も上昇している。
【0020】
【表2】
【0021】実施例2:Si:10.5重量%,Cu:
6.0重量%,Mg:0.5重量%,Fe:0.4重量
%,Ti:0.1重量%,Ni:0.5重量%,B:
0.0005重量%,Mn:0.4重量%,Na:0.
0003重量%及びZr:0.0001重量%を含み、
P含有量,Ca含有量及びP/Ca重量比を表3に示す
ように調整したアルミニウム合金溶湯を溶製した。各ア
ルミニウム合金溶湯を、実施例1と同じ条件下で鋳造し
た。得られた鋳塊に500℃×6時間の溶体化処理を施
し、60℃の温水に焼き入れた後、220℃×6時間の
時効処理を施し、空冷した。
【0022】
【表3】
【0023】得られた各合金の機械的特性を、共晶Si
及び初晶Siと併せて表4に示す。この場合も、共晶S
i及び初晶Siが適正に調整されたものでは、優れた特
性が示された。また、Ni添加によって高温強度の改善
も図られた。
【0024】
【表4】
【0025】実施例3:表5に示すようにSi:10.
5重量%,Cu:6.0重量%,Mg:0.5重量%,
Fe:0.4重量%,Ti:0.1重量%,Ni:0重
量%又は0.5重量%に成分調整し、更にB:0.00
05重量%,Mn:0.4重量%,Na:0.0003
重量%,Zr:0.0001重量%となるようにしたア
ルミニウム合金溶湯(試験番号19〜24)を溶製し、
種々の冷却速度で760℃からJIS4号舟型に鋳込ん
だ。冷却速度は、2℃/秒付近を得る場合には舟型を4
00℃に加熱し、8℃/秒付近を得る場合には舟型を2
00℃に加熱し、15℃/秒付近を得る場合には銅製鋳
型を150℃に加熱し、30℃/秒付近を得る場合には
水冷構造をもった銅製鋳型に冷却水を流すことによって
調整した。得られた各合金鋳物の共晶Si,初晶Si,
機械的特性等を表6に示す。冷却速度が30℃/秒と早
い試験番号21,24では、P/Ca重量比が適正値に
あるものの、共晶Siの平均長さが短くなっており、摩
耗量が増加している。Naを含有量46ppmまで添加
したAC8Aの試験番号25では、Na添加に起因して
初晶Siがほとんど見られず、共晶Siも微細化されて
いることから、耐摩耗性が低下していた。
【0026】
【表5】
【0027】
【表6】
【0028】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明は、含有
量が特定された成分・組成をもつAl−Si−Cu−M
g系合金においてP含有量,Ca含有量及びP/Ca重
量比を調整することにより、共晶Siを大きく成長させ
ると共に、初晶Siを微細化している。これにより、高
温強度,耐摩耗性等が改善され、内燃機関のピストンと
して好適なアルミニウム合金が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明で規定した領域をP含有量−Ca含有
量のグラフで表す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宮坂 禧輝 東京都港区三田3丁目13番12号 日本軽金 属株式会社内 (72)発明者 甲藤 晴康 静岡県庵原郡蒲原町蒲原1丁目34番1号 株式会社日軽技研内 (72)発明者 中島 良一 長野県上田市下之郷813−6 アート金属 工業株式会社研究開発センター内 (72)発明者 松瀬 康詩 長野県上田市下之郷813−6 アート金属 工業株式会社研究開発センター内 (72)発明者 渡辺 智成 長野県上田市下之郷813−6 アート金属 工業株式会社研究開発センター内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Cu:3〜7重量%,Si:8〜13重
    量%,Mg:0.3〜1.0重量%,Fe:0.1〜
    1.0重量%,Ti:0.01〜0.3重量%,P:
    0.001〜0.01重量%及びCa:0.0001〜
    0.01重量%を含み、P/Caが重量比で0.5〜5
    0の範囲に調整されている高温強度に優れた内燃機関ピ
    ストン用アルミニウム合金。
  2. 【請求項2】 更にNi:0.2〜2.5重量%を含む
    請求項1記載の高温強度に優れた内燃機関ピストン用ア
    ルミニウム合金。
  3. 【請求項3】 初晶Siの平均粒径が40μm以下で、
    共晶Siの平均長さが20μm以上の鋳造組織をもつ請
    求項1又は2記載の高温強度に優れた内燃機関ピストン
    用アルミニウム合金。
  4. 【請求項4】 請求項1又は2記載の組成をもつアルミ
    ニウム合金溶湯を冷却速度20℃/秒以下で鋳造した
    後、480〜510℃に3〜10時間加熱する溶体化処
    理を施し、直ちに温水に焼入れ、次いで160〜230
    ℃に2〜10時間加熱する時効処理を施し、空冷した
    後、目標形状に機械加工する内燃機関用アルミニウム合
    金製ピストンの製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項4の方法で製造された内燃機関用
    ピストン。
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