JP3430684B2 - 高温強度,耐摩耗性及び防振性に優れたダイカスト製内燃機関部品及びその製造方法 - Google Patents
高温強度,耐摩耗性及び防振性に優れたダイカスト製内燃機関部品及びその製造方法Info
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ド,シリンダーブロック,シリンダーヘッド等として使
用されるディーゼルエンジン,ガソリンエンジン等の内
燃機関部品に関する。
は過共晶Al−Si合金は、熱膨張係数が小さく、耐摩
耗性に優れている。また、Si含有量が多くなると溶湯
が凝固する際に高硬度の初晶Siが晶出するため、耐摩
耗性が要求される内燃機関のピストン,コンプレッサー
部品等の各種機械部品として使用されている。なかで
も、AC8Aが代表的なAl−Si合金として使用され
ている。最近の内燃機関では、エネルギー資源の有効利
用から燃焼効率を上昇させる傾向にある。燃焼効率を向
上させようとすると燃焼温度が上昇し、これに伴って内
燃機関に組み込まれている各種部品、特にピストンの材
質として200℃付近の温度域で高い高温強度が要求さ
れる。内燃機関に使用される他の部品についても、同様
に耐摩耗性の向上が求められている。
ム合金としては、T5熱処理でも十分な高温強度及び耐
熱衝撃性をもつものとして、Si含有量を8.5〜1
3.5重量%の範囲に規制すると共に、Sb添加によっ
て共晶Siを改良したものがある。また、特開昭55−
24784号公報では、Fe系基材をAl−Si−Cu
−Mg合金で鋳ぐるみピストンを製造するとき、鋳造後
に480〜520℃に1〜8時間加熱する熱処理によっ
て耐熱衝撃性を改善している。一般に、高温強度の優れ
たAlーSi系材料には、ベースとなるAl−Si−C
u−Mg系合金に少量のNi,Mn,Fe,Cr,Zr
等の高融点成分が含まれている。高融点成分は、溶湯が
凝固する際に微小の晶出部として晶出し、Al合金の高
温変形を阻止する作用を呈する。しかし、高融点成分の
含有量増加に従って、粗大な金属間化合物が多量に生成
し、強度を劣化させ易い。この点から、高融点成分の添
加量に制約が加えられている。
合金は、従来の合金成分の調整や添加成分による組織改
良では最早材料特性を改善することができないレベルに
達している。そのため、従来にはない方法で組成・組織
を改善し、現状を大幅に上まわる特性、特に高温特性を
示す材料の開発が必要とされている。もっとも問題にさ
れる点としては、高温特性の改善に有効な高融点成分の
添加量増加に伴い粗大な晶出物が生成し、強度劣化を起
こすことである。そこで、強度劣化を伴わずに高融点成
分の添加量増加によって特性の向上を図ることができれ
ば、各種用途に要求される材料特性を満足するAl−S
i系合金が得られる。本発明は、このような要求に応え
るべく案出されたものであり、速い冷却速度を有する鋳
造法であるダイカストで成分系が特定されたAl−Si
系合金を鋳造することにより、高融点成分を高温で安定
な微細金属間化合物として晶出させた組織とし、高温強
度,耐摩耗性及び防振性に優れたアルミニウム合金ダイ
カスト製内燃機関部品を提供することを目的とする。
燃機関部品の製造方法は、その目的を達成するため、C
u:1〜7重量%,Si:10〜16重量%,Mg:
0.3〜2重量%,Fe:0.5〜2重量%,Mn:
0.1〜4重量%,Ti:0.01〜0.3重量%,
P:0.001〜0.02重量%及びCa:0.000
1〜0.02重量%を含み、更に必要に応じてNi:
0.2〜6重量%を含み、残部が不可避的不純物及びA
lからなり、P/Caが重量比で0.5を超え50以下
の範囲に調整されたアルミニウム合金溶湯を冷却速度2
0℃/秒以上でダイカストすることにより製造されるこ
とを特徴とする。本発明法で得られたダイカスト製内燃
機関部品を構成するアルミニウム合金は、初晶Siの粒
径,針状共晶Siの平均長径及び他の晶出物の平均長径
がいずれも20μm以下の鋳造組織を有している。
る合金元素及びその含有量等について説明する。 Cu:1〜7重量% 高温強度及び高温疲労強度の向上に有効な合金元素であ
り、Cu添加の効果は固溶状態で顕著となる。Cu含有
量が1重量%未満では、高温強度が不足する。しかし、
7重量%を超える多量のCuが含まれると鋳造時にAl
2 Cu等の大きな晶出物が生成し、鋳造割れが発生し易
くなる。また、多量にCuを添加しても、増量に見合っ
た強度改善の効果も得られない。 Si:10〜16重量% 耐摩耗性及び防振性を向上させると共に熱膨張係数の低
減に有効な共晶Siとなる必須の合金元素であり、湯流
れを良好にする作用も呈する。また、共存しているMg
と反応し、時効硬化に有効なMg2 Siをも生成する。
Si含有量が10重量%に達しないと、耐摩耗性,防振
性や高温強度が目標値よりも低くなり、熱膨張係数が大
きくなる。逆に、16重量%を超えるSi含有量では、
初晶Siのサイズが大きくなり、かつ分散量も多くな
る。その結果、応力集中による高温強度の低下を招く。
る。Mg含有量が0.3重量%に達しないと、十分な時
効作用が得られない。逆に、2重量%を超えるMg含有
量では、鋳造時に多量のMg2 Siが晶出し、機械的性
質を低下させる。 Fe:0.5〜2重量% 高温強度の向上に有効な合金元素であり、0.5重量%
以上のFe含有量で効果が顕著となる。しかも、ダイカ
スト時における金型の焼付きを防止する。Feは、種々
の金属間化合物として晶出し、高温での強度を改善す
る。しかし、2重量%を超えるFe含有量では、Feを
含む粗大な金属間化合物が晶出するため、却って高温強
度を低下させる。 Mn:0.1〜4重量% Al−Mn−Si,Al−Fe−Mn−Si系等の金属
間化合物として晶出し、耐摩耗性及び防振性を向上させ
る。また、200℃近傍における高温強度の改善にも有
効な合金元素である。このような効果を得るためには、
0.1重量%以上のMnが必要である。しかし、4重量
%を超える多量のMn含有量では、巨大な晶出物が多量
に生成するため、伸び低下等の欠陥を引き起こす。
元素である。Ti含有量が0.01重量%以上になる
と、α−Alがマクロ結晶粒で直径10mm以下とな
り、微細化による効果が顕著になる。しかし、0.3重
量%を超えるTi含有量では、Al−Ti系の大きな晶
出物が生成し、機械的性質を劣化させる。Tiは、Ti
−B系の微細化剤として添加することができる。この点
で、0.03重量%以下のBの共存も許容される。 P:0.001〜0.02重量%,Ca:0.0001
〜0.02重量% P及びCaの共存によって、初晶Siの粗大化が抑制さ
れ、高強度が維持される。また、共晶Siが大きくな
り、耐摩耗性及び防振性が改善される。しかし、0.0
2重量%を超えるPやCaは、湯流れ性を悪化させ、湯
まわり不良等の鋳造欠陥を発生し、また鋳造組織を不均
一にする。
に応じて共晶Si及び初晶Siが共存し、或いは初晶S
iがほとんどみられない組織となる。本発明では、内燃
機関用ピストン材を代表とする耐熱・耐摩耗材料として
要求される性能を共晶Siに依っている。また、初晶S
iが晶出しても、Pを十分に添加することにより平均粒
径が小さいと、高温強度に悪影響を与えず、却って耐摩
耗性及び防振性に優れた材料が得られる。 P/Ca(重量比):0.5〜50 共晶Si及び初晶Siのサイズは、P/Ca重量比で制
御できる。P/Ca重量比の調整による作用自体は本発
明者等が特願平4−244259号公報,特願平5−1
61380号等で紹介したところであるが、P/Ca重
量比が0.5に達しないと、共晶Siが微細で球状化
し、耐摩耗性及び防振性の劣化を招く。逆に50を超え
るP/Ca重量比では、P量の増加に起因して溶湯の粘
度が上昇し、湯まわり不良等の鋳造欠陥を発生し、安定
した組織が得られ難くなる。
属間化合物を晶出させ、200℃付近における耐熱性,
高温強度を改善する。Ni添加の効果は、0.2重量%
以上で顕著になる。しかし、6重量%を超える多量のN
iを含ませると、Al−Ni−Cu−Si系の大きな金
属間化合物が成長し、そのため伸びが低下し、アルミニ
ウム合金を脆くする欠点が現れる。本発明に従ったアル
ミニウム合金においては、その他の合金元素として、N
a,Cr,Zr,Zn等を含むことがある。Naは、不
純物として混入してくる元素であり、共晶Siを微細化
する作用を呈することから、上限を20ppmにするこ
とが望ましい。Crは、0.3重量%以下の含有量で耐
摩耗性の向上に寄与する。Zrは、結晶粒微細化に有効
であり、0.3重量%以下の量でTiと同時に或いはZ
r単独で添加することもできる。Znは、不純物として
混入してくる元素であり、耐食性の劣化,鋳造割れの発
生等の原因となることから、上限を3重量%に設定する
ことが好ましい。
約12重量%以上で初晶Siが晶出する。他方、冷却速
度が20℃/秒以上の急冷になるダイカストでは、初晶
Siが晶出開始するSi含有量は、冷却速度の上昇に伴
って13〜15重量%まで移動する。初晶Siのサイズ
も冷却速度に影響され、冷却速度20℃/秒未満の鋳造
では20〜100μm以上に、冷却速度20℃/秒以上
の鋳造では数μm〜30μmになる。この点、本発明に
あっては、鋳造時の冷却速度を20℃/秒以上に設定
し、P及びCaでコントロールしていることから、初晶
Siが20μm以下に微細化される。その結果、巨大な
初晶Siに起因した切削性の劣化がなく、良好な耐摩耗
性及び防振性が確保される。共晶Siのサイズも、冷却
速度及びP/Ca比によって影響される。冷却速度が大
きいときに細かな粒状となり、遅い冷却速度では針状に
なり易い。また、P/Ca比がたとえば0.5を超える
と針状化し、小さなP/Ca比では粒状化する。良好な
耐摩耗性及び防振性を得るためには、5μm以上の針状
共晶Siが好ましい。この点、冷却速度が大きな鋳造法
であるダイカストでは、全体的に共晶Siが微細化され
るが、針状共晶Siの方が良好な耐摩耗性及び防振性を
呈することから、P/Ca比を0.5を超える値に設定
すること必要がある。
も、20μmを超えるサイズで晶出すると、高温強度を
劣化させる悪影響を呈する。そのため、本発明において
は、必要とする高温強度を確保する上から、晶出物の平
均長径を20μm以下に規定した。高融点金属の化合物
は、冷却速度が遅い場合には大きく発達し、数十〜数百
μmに達する場合もある。化合物は、針状,漢字(chin
ese script)状,塊状等、様々の形態をとるが、大きい
場合には何れも応力集中を起こして強度を低下させ易
い。特にAl−Fe系の化合物は針状になり易く、影響
が大きい。冷却速度が速い場合には、化合物の発達が抑
制され、応力集中が起こりにくい粒状になり易い。 鋳造時の冷却速度:20℃/秒以上 Fe,Ni,Mn等の高融点金属を含む金属間化合物の
微細化によって高温強度を向上させるためには、鋳造時
の冷却速度を20℃/秒以上に設定することが必要であ
る。冷却速度が20℃/秒未満であると、平均長さが2
0μmを超える粗大な金属間化合物が晶出し易く、伸び
や強度等の低下を引き起こす。素形材は、そのままの状
態で機械加工してもよく、或いは必要に応じて溶体化処
理や時効処理を施しても良い。
%,Mg:0.75重量%,Ti:0.1重量%,B:
0.0006重量%,Cr:0.05重量%,Zn:
1.0重量%,Zr:0.05重量%,P:0.002
重量%及びCa:0.0004重量%を含み、P/Ca
重量比を5に設定し、表1に示すようにFe,Mn及び
Niを調整したアルミニウム合金溶湯を溶製した。な
お、表1に掲げた試験番号11では、P:0.0005
重量%,Ca:0.02重量%及びP/Ca比:0.0
25とした。
解し、溶湯温度を720℃まで下げた。そして、通常の
金型鋳造としてJIS4号舟型に、ダイカスト鋳造とし
てはダイカスト機TP型に鋳込んだ。TP型は、平行部
直径10mm,長さ70mmをもつ引張り試験片及び5
0mm×50mm×6mmの摩耗試験片が採取できるも
のを用いた。なお、冷却速度は、鋳型温度をそれぞれ1
50℃に加熱することによって調整し、金型鋳造では5
℃/秒に、ダイカスト鋳造では50℃/秒に設定した。
得られた鋳塊の組織を観察し、鋳造条件が晶出物に与え
る影響を調査した結果を表2に示す。また、試験番号9
では、純銅製のJIS4号舟型を用いることによって冷
却速度を25℃/秒に設定した。
間の溶体化処理を施し、60℃の温水に焼き入れた後、
220℃×6時間の時効処理を施し、空冷した。他方、
ダイカスト材については、220℃×6時間の時効処理
を施し、空冷した。熱処理された各合金から、切削加工
により常温摩耗試験片及び高温引張り試験片を切り出し
た。高温試験は、200℃に100時間予備加熱した後
の試験片を対象とした。常温摩耗試験は、フリクション
型摩耗試験機を使用し、相手材を鋳鉄FCMP70と
し、荷重50kgf/cm2 ,摺動速度0.23m/
秒,摺動距離3km,潤滑剤使用の条件下で行った。引
張り強さ及び耐摩耗性の試験結果を、表3に示す。
試験番号3では、初晶Si及び共晶Si以外の晶出物が
20μm以上に大きく晶出し、強度が低下している。M
n含有量が多いと、湯流れが悪く鋳造不良であったり
(試験番号4,7)、Ni含有量が多いと、晶出物が大
きく強度不足を引き起こした(試験番号8)。また、鋳
造時の冷却速度が遅いと、試験番号10にみられるよう
に、共晶Siが大きく成長し、耐摩耗性は良好であるも
のの、強度が不足していた。P/Ca比を低く設定した
試験番号11では、共晶Siが過度に微細化され、耐摩
耗性が悪化した。これに対し、合金成分及び鋳造時の冷
却速度が本発明で規定した範囲にあるものでは、試験番
号1,2,5,6,9の何れにおいても200℃の引張
り強さが200N/mm2 以上,摩耗量が30mg以下
と優れた高温強度及び耐摩耗性をもっていた。また、防
振性も良好であった。
量が特定された成分・組成をもつAl−Si−Cu−M
g−Fe−Mn(−Ni)系合金においてP含有量,C
a含有量及びP/Ca重量比を調整し、鋳造時の冷却速
度を規制したダイカスト法により、共晶Si及び初晶S
i、ならびにFe,Mn,Ni系晶出物をも微細化して
いる。これにより、高温強度,耐摩耗性,防振性等が改
善されたアルミニウム合金ダイカスト製内燃機関部品が
得られる。
Claims (3)
- 【請求項1】 Cu:1〜7重量%,Si:10〜16
重量%,Mg:0.3〜2重量%,Fe:0.5〜2重
量%,Mn:0.1〜4重量%,Ti:0.01〜0.
3重量%,P:0.001〜0.02重量%及びCa:
0.0001〜0.02重量%を含み、残部が不可避的
不純物及びAlからなり、P/Caが重量比で0.5を
超え50以下の範囲に調整されたアルミニウム合金溶湯
を冷却速度20℃/秒以上でダイカストすることにより
製造されることを特徴とする高温強度,耐摩耗性及び防
振性に優れたダイカスト製内燃機関部品の製造方法。 - 【請求項2】 更にNi:0.2〜6重量%を含む請求
項1記載の高温強度,耐摩耗性及び防振性に優れたダイ
カスト製内燃機関部品の製造方法。 - 【請求項3】 請求項1又は2に記載の方法で製造さ
れ、初晶Siの粒径,針状共晶Siの平均長径及び他の
晶出物の平均長径がいずれも20μm以下の鋳造組織を
有しているダイカスト製内燃機関部品。
Priority Applications (1)
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JP29399094A JP3430684B2 (ja) | 1994-11-02 | 1994-11-02 | 高温強度,耐摩耗性及び防振性に優れたダイカスト製内燃機関部品及びその製造方法 |
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JP29399094A JP3430684B2 (ja) | 1994-11-02 | 1994-11-02 | 高温強度,耐摩耗性及び防振性に優れたダイカスト製内燃機関部品及びその製造方法 |
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JPH08134577A JPH08134577A (ja) | 1996-05-28 |
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JP29399094A Expired - Lifetime JP3430684B2 (ja) | 1994-11-02 | 1994-11-02 | 高温強度,耐摩耗性及び防振性に優れたダイカスト製内燃機関部品及びその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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1994
- 1994-11-02 JP JP29399094A patent/JP3430684B2/ja not_active Expired - Lifetime
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