JP2008001954A - セミソリッド鋳造用アルミニウム合金及びアルミニウム合金鋳物の製造方法 - Google Patents

セミソリッド鋳造用アルミニウム合金及びアルミニウム合金鋳物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】スラリー中のAl−Si共晶粒のサイズを500μm以下に抑えることができるセミソリッド鋳造用アルミニウム合金、及びこれを用いた鋳物の製造方法の提供。
【解決手段】Al−Si共晶粒が共晶マトリックス中に分散した複合共晶組織を有しているアルミニウム合金鋳物を、固相と液相とが共存した状態の溶湯であるスラリを用いて鋳造して製造するためのセミソリッド鋳造用アルミニウム合金であって、Si:9〜13%、Sr:0.003〜0.3%を含有し、さらに、Ti:0.03〜1%、Zr:0.03〜0.5%、Ni:0.1〜3%、Cr:0.1〜1%のうち1種又は2種以上を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、スラリを得る際のα−Al相が単独で晶出している区間の冷却速度を0.5℃/secとした場合に、スラリー中における共晶粒の大きさが500μm以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、セミソリッド鋳造に最適なAl−Si系合金、及びこれを用いてセミソリッド鋳造することによりアルミニウム合金鋳物を製造する方法に関するものである。
様々な金属部品においては、軽量化の要請に基づいて、従来の鉄系部材の多くがアルミニウム系部材に移行している。このようなアルミニウム系部材としては、例えば、自動車のエンジン部材、シャーシ部材、ホイール等がある。この内、高い強度や靱性が要求される部材は鍛造等により製造されることも多いが、複雑形状の部材や薄肉の部材等は鋳造によって製作されることが多い。
鋳造方法には様々な方法があるが、いずれの場合でも、優れた鋳造性が要求されることに変わりない。特に、鋳造品を低コストで量産する場合、非常に高い鋳造性が要求される。ここで鋳造性に優れるとは、例えば、鋳造欠陥等がなく、鋳造品の機械的性質等が部位に拘わらず安定していることである。鋳造欠陥には、鋳巣、引け、割れ等があるが、このような鋳造欠陥は、流動性の低下した溶湯が鋳型の細部まで回らなかったり、溶湯が液相から固相に変化する際の凝固収縮等によって生じる。また、鋳造品の機械的性質(例えば、強度や靱性等)のバラツキは、前記鋳造欠陥による他、金属組成や組織等が部位によって偏在することによっても生じ得る。
このような鋳造性を改善する目的で、鋳造用Al合金の組成、鋳型の方案、溶湯加圧の有無、溶湯の状態等が種々工夫されている。その一つにAl−Si系合金を用いたセミソリッド鋳造法がある。これは、初晶Alや初晶Siからなる固相と残余の液相とが混在した固液共存状態の溶湯(スラリ)を、鋳型のキャビティヘ注湯等するものである。なお、本明細書では、便宜上、適宜、完全な液相状態にある合金を「溶湯」と呼び、固液共存状態の合金を「スラリ」と呼んで、両者を区別する。ちなみに、通常、初晶Alが晶出するのはSi量が共晶組成よりも少ないAl−Si亜共晶合金の場合で、初晶Siが晶出するのはSi量が共晶組成よりも多いAl−Si過共晶合金の場合である。
セミソリッド鋳造法の場合、鋳型のキャビティに注入されたスラリは、半凝固状態または半溶融状態から凝固するため、完全な溶融状態にある溶湯を一気に凝固させる通常の鋳造法の場合に比べて、凝固収縮量が少なく、それに伴う鋳巣、引け、割れ等の鋳造欠陥の発生が抑制される。また、セミソリッド鋳造法の場合、比較的低温での鋳造が可能であり、また、凝固の際に放出される顕熱も小さい。このため、型寿命の長期化等が図られると共に凝固時間も短く成形サイクルの短縮を図れ、低コスト化、生産性の向上等も可能となる。
このように多くの利点を備えたセミソリッド鋳造法は、例えば、下記の特許文献に開示されている。特許文献1はAl−Si亜共晶合金について開示したものであり、特許文献2はAl−Si過共晶合金について開示したものである。
従来のセミソリッド鋳造法は、固液共存状態中の固相として初晶Al(α−Al)や初晶Siを利用したものであり、全体的な組成は、亜共晶または過共晶のAl−Si合金となっていた。これらの合金の組織をミクロ的に観れば、初晶Alまたは初晶Siからなる部分と、Al−Si共晶からなる部分とに分れ、組成的に均一とはなっていなかった。このため、例えば、複雑な薄肉形状の部材を鋳造した場合、部位によって組成や組織が偏在したものとなり易い。何故なら、キャビティの末端や薄肉部分等には流動性の高い液相が優先的に流れ、固相である初晶はそのような部分に流れずに、特定箇所に滞留し、そのような状態で全体が凝固してしまうからである。従って、従来のような亜共晶または過共晶のAl−Si合金でセミソリッド鋳造法を行っても、必ずしも良好な鋳物が得られず、前述した鋳造性が十分には改善されていなかった。
また、Si量が共晶点付近かそれ以上あるAl−Si合金の場合、従来のセミソリッド鋳造法を行うと、固液共存状態のスラリは、鋳型のキャビティ壁面から凝固を始める表皮形成型の凝固形態となり、粥状の凝固形態とはならなかった。このため、従来、セミソリッド鋳造を行っても、機械的性質等に優れた鋳物は得られなかった。
なお、上記特許文献3の段落[0010]には、共晶組成に近いAl−Si系合金にSrを添加すると、共晶Siを微細化し延性を向上させ得る旨が記載されている。しかし、上記記載のSrの添加に依る共晶Si微細化の効果は、従来から知られているものに過ぎない。また、上記特許文献3には、Mg合金にSrを添加したものしか開示されておらず、共晶組成に近いAl−Si系合金にSrを添加したものは開示されていない。さらに、後述する本発明のような複合共晶組織に関する記載は特許文献3に全くない。ちなみに、Mg合金にSrを添加しているのは鋳造引けを改善するためであって、本発明の意図とするところと全く異なる。
そして、特許文献4には、以上のような事情に鑑みて為されたセミソリッド鋳造用アルミニウム合金が示されている。
特開2002−105611号公報 特表2002−535488号公報 特開平8−325652号公報 特開2005−89827号公報
上記特許文献4に示されたアルミニウム合金は、合金全体が主にAl−Si共晶からなり、組成の偏在等が殆どない状態が実現されている。
しかしながら、上記特許文献4を含む従来技術においては、スラリーにおけるAl−Si共晶粒のサイズを細かくすることができず、スラリー中の共晶粒サイズが500μmを超えてしまう。そのため、鋳造時に型内へ固相(Al−Si共晶粒)と液相とが共存した状態の溶湯であるスラリを充填する際に、流動性が悪くなり、得られた鋳物に欠陥が残る場合がある。
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、スラリー中のAl−Si共晶粒のサイズを500μm以下に抑えることができるセミソリッド鋳造用アルミニウム合金、及びこれを用いたアルミニウム合金鋳物の製造方法を提供しようとするものである。
第1の発明は、Al−Si共晶からなる粒状の共晶粒が、Al−Si共晶からなる共晶マトリックス中に分散した複合共晶組織を有しているアルミニウム合金鋳物を、固相と液相とが共存した状態の溶湯であるスラリを用いて鋳造して製造するためのセミソリッド鋳造用アルミニウム合金であって、
Si:9〜13%(質量%、以下同様)、
Sr:0.003〜0.3%を含有し、
さらに、
Ti:0.03〜1%、
Zr:0.03〜0.5%、
Ni:0.1〜3%、
Cr:0.1〜1%、
のうち1種又は2種以上を含有し、
残部がAl及び不可避的不純物からなり、
かつ、上記スラリを得る際のα−Al相が単独で晶出している区間の冷却速度を0.5℃/secとした場合に、上記スラリー中における上記共晶粒の大きさが500μm以下であることを特徴とするセミソリッド鋳造用アルミニウム合金にある(請求項1)。
本発明のセミソリッド鋳造用アルミニウム合金(以下、適宜、単にアルミニウム合金という)は、その名称の通り、セミソリッド鋳造を行うためのアルミニウム合金であり、これを用いることによって、容易にセミソリッド鋳造を実施することができ、組織的にも非常に優れた共晶組成のアルミニウム合金鋳物を得ることができる。
本発明のアルミニウム合金は、上記特定の成分組成を有するAl−Si共晶合金よりなる。ここで、上記「Al−Si共晶」とは、いわゆる学術的に定義されるただ1点の共晶点で形成される組成を必ずしも意味しない。当業者が組織観察によって一般的に共晶と判断し得るものであれば足る。また、同一合金内においても、後述するアルミニウム合金鋳物と同様の組織状態が得られた場合に、共晶粒毎に若しくは共晶マトリックスの部分によって厳密な共晶組成は異なり得る。平均的に観て、本発明の上記組成範囲内で収まれば十分である。さらに、AlやSi以外の含有合金元素によって、Al−Si共晶点は変動し、その組成を厳密に特定することは困難である。そこで本発明では、Al合金全体として、Si量を9〜13重量%と定めた。
Si量が9重量%未満では、従来の亜共晶合金と大差なく、良好な複合共晶組織は得られず、機械的性質の向上も望めない。Si量が13重量%超では、従来の過共晶合金と大差なく、初晶からなる粗大なSi相が出現すると共にその周囲にAl−Si共晶(共晶Si相)が針状に晶出するようになり、良好な複合共晶組織は得られず、むしろ鋳物の強度や靱性等の機械的性質を低下させるようになる。他の合金元素量にも依るが、Si量の下限は10重量%、10.5重量%さらに11重量%としても良く、Si量の上限は12.5重量%、12重量%としても良い。
また、本発明のアルミニウム合金は、Srを0.003〜0.3%含有する。
Srは、本発明のアルミニウム合金をセミソリッド鋳造用として用いる際に最適なスラリを得る上で非常に有効な元素である。上記共晶組成をもつAl合金の溶湯にSrを含有させることで、その溶湯中から共晶粒となるAl−Si共晶の固相が粥状に晶出し易くなる。そしてその溶湯は、全体が粥状のスラリとなった後に凝固する。つまり、粥状凝固をする。一方、その溶湯中にSr等を含有させない場合、溶湯は鋳型のキャビティ壁面から共晶組織を形成するようになり、表皮形成型の凝固形態となり易い。
このSrの含有量が、0.003重量%(30ppm)未満では少なすぎて上述した効果が十分には得られない。0.3重量%(3000ppm)超では、共晶Si相が粗い針状組織となって、最終的に得られるアルミニウム合金鋳物の機械的性質を低下させてしまう。そのため、その下限は0.005重量%、その上限は0.05重量%であるとより好ましい。
また、本発明のアルミニウム合金において最も注目すべきことは、さらに、Ti:0.03〜1%、Zr:0.03〜0.5%、Ni:0.1〜3%、Cr:0.1〜1%、のうち1種又は2種以上を必ず含有することである。これにより、上記Al−Si共晶粒のサイズを小さくすることができる。そして、上記スラリを凝固させる際のα−Al相が単独で晶出している区間の冷却速度を0.5℃/secとした場合に、上記共晶粒の大きさが500μm以下という要件を実現することができる。
この理由は、上記Ti等の元素を添加することにより得られる金属間化合物等が、Al−Siの二元共晶組織の不均質凝固核となるためと考えられる。つまり、上記Ti等の元素の添加によって、Al−Si共晶粒生成の起点となる化合物量が増加し、溶湯内での核生成頻度が上昇することによって、上記Ti等を適量含有していない場合に比べて多くのAl−Si共晶粒が細かく生成するためであると考えられる。以下、各元素ごとの含有範囲について説明する。
Tiを含有する場合には、0.03〜1%の範囲とする。この範囲のTi含有によって、Al−Si共晶粒生成の核となる金属間化合物であるAl3Ti等を晶出させることができる。Ti含有量が0.03%未満の場合には、Al3Ti等の金属間化合物の晶出量が少ないために、Al−Si共晶粒の微細化効果を十分に得ることができない。そのため、好ましくは、Ti含有量を0.3%以上とするのがよい。また、Tiを0.03%以上添加することによって、凝固時に初晶として晶出するα−Alを微細化する効果も得ることができる。一方、Ti含有量が1%を超える場合には、粗大なTi化合物が晶出するので好ましくない。なお、Tiの添加をAl−Ti−B合金、Al−Ti−C合金などによって行う場合には、不純物としてBおよびCの含有を許容する。
Zrを含有する場合には、0.03〜0.5%の範囲とする。この範囲のZr含有によって、Al−Si共晶粒生成の核となる金属間化合物であるAl3Zr等を晶出させることができる。Zr含有量が0.03%未満の場合には、Al3Zr等の金属間化合物の晶出量が少ないために、Al−Si共晶粒の微細化効果を十分に得ることができない。そのため、好ましくは、Zr含有量を0.3%以上とするのがよい。一方、Zr含有量が0.5%を超える場合には、粗大なZr化合物が晶出するので好ましくない。
Niを含有する場合には、0.1〜3%の範囲とする。この範囲のNi含有によって、Al−Si共晶粒生成の核となる金属間化合物であるAl3Ni等を晶出させることができる。Ni含有量が0.1%未満の場合には、Al3Ni等の金属間化合物の晶出量が少ないために、Al−Si共晶粒の微細化効果を十分に得ることができない。そのため、好ましくは、Ni含有量を2%以上とするのがよい。またNiを0.1%以上添加することによって、高温強度を増加させ、硬さを増加させる効果を得ることもできる。一方、Ni含有量が3%を超える場合には、粗大なNi化合物が晶出するので好ましくない。
Crを含有する場合には、0.1〜1%の範囲とする。この範囲のCr含有によって、Al−Si共晶粒生成の核となる金属間化合物であるAl7Cr等を晶出させることができる。Cr含有量が0.1%未満の場合には、Cr添加によって生ずる金属間化合物の晶出量が少ないために、Al−Si共晶粒の微細化効果を十分に得ることができない。一方、Cr含有量が1%を超える場合には、粗大なCr化合物が晶出するので好ましくない。
第2の発明は、Al−Si共晶からなる粒状の共晶粒が、Al−Si共晶からなる共晶マトリックス中に分散した複合共晶組織を有するアルミニウム合金鋳物を製造する方法であって、
上記第1の発明のセミソリッド鋳造用アルミニウム合金を、固相と液相とが共存した状態の溶湯であるスラリを得るスラリ調製工程と、
上記スラリを鋳型に注入する注入工程と、
注入された上記スラリを冷却して凝固させる凝固工程とを備え、
上記スラリ調整工程においては、α−Al相が単独で晶出している区間の冷却速度を0.5℃/sec以上とすることにより、上記スラリー中の上記共晶粒の大きさを500μm以下とすることを特徴とするアルミニウム合金鋳物の製造方法にある(請求項4)。
この製造方法では、上記第1の発明のセミソリッド鋳造用アルミニウム合金を原料として用いることにより、優れたアルミニウム合金鋳物を容易に製造することができる。
このスラリを調製する際には、完全に溶融させた溶湯を上記共晶粒が生じる温度まで冷却する必要があるが、上記第1の発明のセミソリッド鋳造用アルミニウム合金を用い、凝固過程におけるα−Al相が単独で晶出している区間の冷却速度を0.5℃/sec以上とすることにより、スラリ中の上記共晶粒の大きさを500μm以下とする。これにより、上記注入工程において、スラリの流動性を十分に維持することができ、鋳造欠陥の発生を防止することができる。また、得られるアルミニウム合金鋳物におけるAl−Si共晶粒の大きさも微細化することができ、優れた特性を得ることができる。
そして、また、得られたアルミニウム合金鋳物は、従来のAl合金と異なり、金属組織中に存在する分散組織とマトリックス組織とが共にAl−Si共晶からなるため、少なくとも、成分組成的な偏在は著しく少ない。従って、どの部位を切り出しても、また、鋳物の部位に拘わらず、組成的に安定している。その結果、製品毎のバラツキも抑制でき、安定した機械的性質が期待できる。また、本発明のAl−Si共晶合金は、従来の亜共晶合金に比べてSi量が多いため、強度、耐摩耗性、耐熱性等の点で優れた特性を発現し得る。
このようなAl−Si共晶合金からなる本発明のAl合金製鋳物は、前述したように、部位に依らずにほぼ均一な組成をもち、さらに、その組織が共晶粒からなるか共晶マトリックスからなるかは別にして、主に共晶からなるため、機械的性質も安定しており、かつ、優れたものである。そして、本発明のような複合共晶組織からなる鋳物は凝固収縮量が少なく、鋳造欠陥等も少ないので歩留まりや生産性の点でも優れる。
上記第1の発明においては、さらに、Na:0.001〜0.05%を含有することが好ましい(請求項2)。
上記のごとく、Srの添加は粥状凝固状態を得るために非常に有効であるが、冷却条件が比較的遅い条件の場合には、共晶Si相が針状に晶出してしまうことがあり、冷却条件の管理を厳密に行う必要がある。これに対し、Naを上記Srと同時に添加することにより、例えば砂型のような凝固速度条件が比較的遅い場合であっても、共晶Si相が針状に晶出することを抑制し、なおかつ、粥状凝固状態を達成することができる。そのため、冷却条件の管理をあまり厳格に行わなくても、所望の組織のアルミニウム合金鋳物を容易に得ることができる。そして、共晶Siの針状化抑制によって、針状化した場合に比べて機械的性質を大きく向上させることができる。
上記Naの含有量が0.001%(10ppm)未満の場合には、冷却速度条件によって共晶Si相が針状に晶出することを防止する効果が得られず、一方、0.05%(500ppm)を超える場合には、Srによる粥状凝固効果を打ち消してしまい、セミソリッド鋳造に供することが困難となってしまう。また、0.05%を超える場合、溶湯中で金属間化合物(たとえばAl−Si−Na化合物)が生成してしまうおそれもある。Na含有量のより好適な範囲は10〜100ppmである。
また、さらに、Mg:0.05〜1%、Cu:5%以下、Zn:3%以下、Sn:0.2%以下のうち1種又は2種以上を含有することが好ましい(請求項3)。
Mgは、溶湯中のSrやNaの酸化損耗を防止する効果があり、これは、Mgがこれら元素よりも優先的に酸化するためである。また、時効硬化熱処理でMg2Siを形成して合金を析出強化する効果もある。その含有量は0.05%以下では酸化損耗防止に不充分である。また1%を超えてもこれらの効果が飽和してしまう。より好適な範囲は0.1〜0.7%である。
Cuは固溶強化に寄与する。また、時効硬化熱処理を施すとCuAl2を形成して、合金を析出強化させる。さらに、粒状に晶出する共晶組織の粒径を小さくし微細に晶出させる効果がある。これらの効果を得るために、上記のごとくCuを5%以下含有することが好ましい。Cu含有量が5%を超えると、靱性が劣化して耐食性が悪くなるため不適である。より好ましいCu含有量は1〜3.5%である。
Znは不可避的不純物に含まれるが、強度向上のために積極添加してもよい。特にMgとの共存により、機械的性質、機械加工性を向上させるという役割を果たす。Znを多量に含有すると靱性が劣化し、耐食性が悪くなるおそれがあることから、その含有量は3%以下が好ましい。
Snは0.2%以下とすることが好ましい。Sn含有量が0.2%を超えると低融点化合物が晶出し、鋳造性を劣化させてしまい、欠陥が増加して機械的性質が低下するおそれがある。
また、第1の発明においては、Mnを0.1〜2%の範囲でさらに含有させてもよい。Mnを0.1%以上添加することによって、FeやTiとの共存により金属間化合物を形成し強度の向上効果を得ることができる。一方、Mn含有量が2%を超える場合には、粗大なMn化合物が晶出するので好ましくない。
また、同様に、Feを0.6%以下の範囲でさらに含有させてもよい。Fe含有量が0.6%を超える場合には、粗大なFe化合物が晶出するので好ましくない。
また、上記第2の発明のアルミニウム合金鋳物の製造方法における上記スラリ調製工程では、上記アルミニウム合金を完全に溶融させた状態から、その溶湯をAl−Si共晶が晶出しない第1冷却域で冷却する第1冷却工程と、第1冷却工程後の溶湯を、Al−Si共晶からなる粒状の共晶粒が晶出する第2冷却域で冷却する第2冷却工程とを行うこととなる。ここで、上記のα−Al相が単独で晶出している区間は、上記第1冷却工程と上記第2冷却工程との間の移行冷却域に相当する区間であり、少なくともその区間の冷却速度を0.5℃/sec以上とする。これによって、上記スラリー中の上記共晶粒の大きさを500μm以下とすることができる。
また、得られるアルミニウム合金鋳物は、鋳造後に熱処理を施しても良いが、熱処理を施さない鋳放し状態でも、優れた強度、耐摩耗性、耐熱性等を発揮する。特にダイキャスト鋳造品であれば、鋳造に要するサイクルタイムも短かく、鋳造後の加工等がほとんど不要であり、強度や耐摩耗性、耐熱性等に優れた鋳物が低コストで得られる。
また、本発明のアルミニウム合金鋳物の用途は種々考えられるが、例えば、次のようなものがある。自動車や二輪車の分野ではエンジンブロックやシリンダヘッド等のエンジン部材、ボディ構造用部材、シャシ部材、ホイール、スペースフレーム、ステアリングホイール(芯金)、シートフレーム、サスペンションメンバー、ミッションケース、プーリ、オイルパン、シフトレバー、インスツルメントパネル、ドアインパクトパネル、吸気用サージタンク、ペダルブラケット、フロントシュラウドパネル等である。
実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
本例では、Al−Si共晶組成を基本とするセミソリッド鋳造用アルミニウム合金として複数の合金(試料1〜7)を準備し、1kgずつ溶解温度750℃にて溶解した。
具体的には、表1に示す組成となるように、地金として、福岡アルミ工業(株)製の純Al、Al−25%Si、Al−40%Cu、Al−10%Mg、Al−10%Mn、Al−10%Fe、Al−5%Ti、Al−10%Zr、Al−20%Niを用い、これらを適宜秤量混合して用いた。
そして、750℃にて溶解した上記組成の合金の溶湯を、熱分析用シェルカップ(SGカップ−A、(株)ナカヤマ製)に注湯し、φ30×50の鋳物を鋳込んだ。このとき、α−Al相が単独で晶出している区間(上記移行冷却域)の冷却速度は0.5℃/secであった。
次に、注湯から3分後に水浴中にて焼入を施し、その断面を観察し、画像解析ソフトウェア(Image-Pro Plus Ver.4、 Media Cybernetics社製)を用いてAl−Si共晶粒の大きさを測定した。
測定結果を表1に示す。
Figure 2008001954
表1より知られるごとく、Ti:0.03〜1%、Zr:0.03〜0.5%、Ni:0.1〜3%、Cr:0.1〜1%、のうち少なくとも1種を含有する本発明の実施例である試料3〜7は、いずれも共晶粒サイズが500μm以下まで細かくできることがわかる。一方、上記Ti、Zr、Ni、Crのいずれも適正量含有していない比較例としての試料1、2は、共晶粒サイズが500μmを超える結果となった。

Claims (4)

  1. Al−Si共晶からなる粒状の共晶粒が、Al−Si共晶からなる共晶マトリックス中に分散した複合共晶組織を有しているアルミニウム合金鋳物を、固相と液相とが共存した状態の溶湯であるスラリを用いて鋳造して製造するためのセミソリッド鋳造用アルミニウム合金であって、
    Si:9〜13%(質量%、以下同様)、
    Sr:0.003〜0.3%を含有し、
    さらに、
    Ti:0.03〜1%、
    Zr:0.03〜0.5%、
    Ni:0.1〜3%、
    Cr:0.1〜1%、
    のうち1種又は2種以上を含有し、
    残部がAl及び不可避的不純物からなり、
    かつ、上記スラリを得る際のα−Al相が単独で晶出している区間の冷却速度を0.5℃/secとした場合に、上記スラリー中における上記共晶粒の大きさが500μm以下であることを特徴とするセミソリッド鋳造用アルミニウム合金。
  2. 請求項1において、さらに、Na:0.001〜0.05%を含有することを特徴とするセミソリッド鋳造用アルミニウム合金。
  3. 請求項1又は2において、さらに、Mg:0.05〜1%、Cu:5%以下、Zn:3%以下、Sn:0.2%以下のうち1種又は2種以上を含有することを特徴とするセミソリッド鋳造用アルミニウム合金。
  4. Al−Si共晶からなる粒状の共晶粒が、Al−Si共晶からなる共晶マトリックス中に分散した複合共晶組織を有するアルミニウム合金鋳物を製造する方法であって、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載のセミソリッド鋳造用アルミニウム合金を、固相と液相とが共存した状態の溶湯であるスラリを得るスラリ調製工程と、
    上記スラリを鋳型に注入する注入工程と、
    注入された上記スラリを冷却して凝固させる凝固工程とを備え、
    上記スラリ調整工程においては、α−Al相が単独で晶出している区間の冷却速度を0.5℃/sec以上とすることにより、上記スラリー中の上記共晶粒の大きさを500μm以下とすることを特徴とするアルミニウム合金鋳物の製造方法。
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