【発明の詳細な説明】
発酵性麦汁の製造方法
発明の分野
本発明は、穀物種子、特にモルトで処理していない穀物種子からの発酵性麦汁
の製造に関する。本発明の更なる特徴は、本発明の方法を実施することにより得
られる麦汁である。また、本発明はアルコールの製造、蒸留酒製造業、又はビー
ルの醸造における、本発明の方法によって得られた麦汁の発酵に関する。
発明の背景
ビールは、モルト処理された穀物又はモルト処理されていない穀物のいずれか
の発酵によって製造される。後者の例においては、市販の酵素を用いて穀物を液
化及び糖化して、酵母発酵に必要な発酵性の糖、アミノ酸又は他の形態の窒素(
利用可能な窒素、以下、まとめてFANと言及する)を含む麦汁を得る。
例えば、MacFadden らは、モルト処理していないモロコシからのビール醸造に
おいて、α−アミラーゼ、プロテアーゼ、β−グルカナーゼ、セルラーゼ、真菌
のα−アミラーゼ、アミログルコシダーゼ等の酵素を添加することを提案した(M
acFadden,D.P.及び Clayton,M.Brewing and Beverage Industries Internati
onal(1989),1 77-81)。また、MacFadden らは、モルト処理していないモロコシ
を用いる場合に、発酵のためのイーストフードを加えることを薦めている。
Bajomoら(M.F.及びYoung,T.W.,J.Inst.Brew.(1992)98,515-523; Bajomo,M.F.
及びYoung,T.W.J.Inst.Brew.(1994)100,79-843)は、モルト処理されていないモ
ロコシ由来の麦汁中に存在するFANのレベル(51mg/l)がモルト処理された大麦
から製造された麦汁の発酵に必要なくらい低いという事実にもかかわらず、100
%モルト処理されていないモロコシ穀物からビールを醸造したことを報告してい
る。
国際特許出願WO 92/20777において、モルト処理されていない全穀粒又はミロ
をアミラーゼによる穀物液化、グルコアミラーゼ及び酸真菌のプロテアーゼによ
る麦芽汁糖化を含むエタノールを製造する方法が開示されている。上記方法は、
糖化工程だけでなく発酵工程の際にプロテアーゼが添加される。発酵培地のpH
は、真菌のエキソプロテアーゼが不活性な4〜5の範囲である(Labbe,J.P.Rebey
rotte,P.Biochimie(974)56,839-844,Lehman,K und Uhlig,H.Hoppe Seyler's
Z.Physiol.Chem.(1969)350,99-104)。従って、上記方法の不都合は、上記条
件下では用いられる真菌プロテアーゼはエンドプロテオリシスのみを実施し、そ
の結果主にオリゴペプチド及び少量のフリーのアミノ酸が生成する。
この分野の一般的な概要のために、レビューについて言及すべきである(G.H.C
ereal Science and Technology.In: Cereal Science and Technology.(1989)e
d.Aberdeen University Press,Aberdeen,Scotland,61-242)。
発明の要約
本発明は、穀物から、高い自由に利用できる窒素(本明細書においてFANと
いう)、良好なろ過性及び麦汁の収率等の予期しない性質を有する麦汁を製造す
る方法を提供する。また、該方法は、モルト処理された穀物からの麦汁の製造に
おいても用いられるが、モルト処理されていないモロコシ(sorghum)、又はモル
ト処理されていないモロコシ及び穀粒の混合物等のモルト処理されていない穀物
からの麦汁の製造に特に有利である。また、利点は、モルト処理されていない穀
物(例えば、穀粒、米又はモロコシ)と組み合わせたモルト処理された穀物(例
えばモルト処理された大麦)、いわゆる「混合醸造」から製造された麦汁に存在
する。
従って、本発明は、(a)α−アミラーゼ及び/又はエンドプロテアーゼ活性を
用いて穀物材料を液化して液化された麦芽汁を得;(b)α−アミラーゼの存在下
、上記液化された麦芽汁を糖化し;(c)上記液化及び糖化された麦芽汁をろ過し
て発酵性麦汁を得る、穀物から発酵性麦汁を製造する方法であって、上記工程(a
)及び(b)の少なくとも1工程をエキソペプチダーゼ活性を有する酵素の存在下で
行う方法を提供する。エキソペプチダーゼ活性を有する酵素として有用なものは
エキソペプチダーゼであり、好ましくは真菌のアミノペプチダーゼ等の耐熱性の
エキソペプチダーゼであるが、熱安定性のカルボキシペプチダーゼも有用である
。本発明に特に好ましいものは、アスペルギルス真菌類、更に好ましくはアスペ
ルアスペルギルス・ソジャエ(A.sojae)の内因性アミノペプチダーゼである。
本発明は、少なくとも20%のモルト処理されていない穀物、好ましくは50%以
上のモルト処理されていない穀物を含む穀物、例えば、モルト処理されていない
トウモロコシの穂軸(corn cobs)、米又は他のモルト処理されていない穀物を補
充したモロコシに有用である。穀物の液化の間にエキソペプチダーゼが存在する
場合、本発明は非常に有利であることがわかる。
本発明の他の特徴によれば、本発明の方法によって得られる発酵性麦汁が提供
される。本発明の更なる特徴は、発酵性麦汁が本発明に従って用いられるビール
の醸造方法にある。
更に、本発明は、本発明の方法を用いて麦汁を製造し、次いで又は同時に、上
記麦汁を発酵し、それによってビール等を得る、ビール等のアルコール飲料の製
造方法を提供する。
他の態様によれば、大量のグルテリン及び/又はプロラミンを含有する穀物か
ら自由に利用できる窒素を酵素的に遊離する方法であって、穀物、又は該穀物か
ら得られた液化麦芽汁に、エンドプロテアーゼ及びエキソペプチダーゼの組み合
わせを添加する工程を有する方法が提供される。
本発明の方法で得られるFANを、アルコールを生産し得る酵母の存在下で発
酵させる工程を含む、アルコールの製造方法。
本発明は以下の図面によって説明される。
図面の説明
図1は、アスペルギルス・ニガー由来のロイシン−アミノペプチダーゼのpH
プロフィールを示す。
図2は、アスペルギルス・ニガー由来のフェニルアラニン−アミノペプチダー
ゼのpHプロフィールを示す。
図3は、両アミノペプチダーゼの温度プロフィールを示す。
本発明を、以下に更に詳細に説明する。
発明の詳細な説明
穀物から発酵性麦汁を製造する方法が提供され、用いられる条件下で少なくと
もエキソペプチダーゼ活性を有するタンパク質が存在する。液化工程の間にpH
が落ちる範囲であるpH5〜8で十分に安定で活性であるので、真菌、特にアス
ペルギルスに内因性のアミノペプチダーゼが有用である。この温度及びpHでは
、カルボキシペプチダーゼはそんなに有用でない。糖化工程の間は、液化の間よ
りもわずかに酸性の条件が優勢であり、この工程では、50〜60℃の範囲の温度、
好ましくは50〜70℃の範囲の温度において十分に安定であるカルボキシペプチダ
ーゼが有利に用いられる。
本発明の方法は、モルト処理されていない穀物、特に穀粒、小麦、オート麦又
は米等の他の穀物材料を任意に補充したモルト処理されていないモロコシから発
酵性麦汁を製造するのに特に有利である。本発明において、穀物とは、モロコシ
、小麦、大麦、オート麦、米及び穀粒等を含む。
本発明のエキソペプチダーゼの使用は、原則としてモルト処理された穀物とモ
ルト処理されていない生の穀物を用いた混合醸造(例えば、80%まで、また90%
までのモルト処理された穀物、残りはモルト処理されていない穀物)においても
有用であり、エキソペプチダーゼは官能的性質にポジティブに影響する。それら
の混合物だけでなく、上記利点がモルト処理されていないものだけでなく、モル
ト処理されたものからの醸造に共通であると認識される。
エキソペプチダーゼの使用がろ過性、収率及び官能的性質の点で特に有利であ
る穀物は、相対的に高いプロラミン及びグルテリン蛋白画分を有するものである
。モロコシに加え、米(約80%グルテリン)もこの部類に属する。モロコシを用
いた場合、ポリオール濃度が相対的に低い変化が選択されることに注意が払われ
るべきである。
エキソペプチダーゼの添加とは離れ、例えば、ビール醸造のための麦汁の製造
は通常に行われる。一般に、それは穀物原料を液化して麦芽汁を得、次いで該麦
芽汁を糖化して麦汁を得ることを含む。発酵前のろ過が重要である。
液化工程は、通常、穀物原料を粉砕して適当な粒径の粉末を得、約1〜約4部
、好ましくは約3部の水、用いられるエンドプロテアーゼに依存して、任意に約
50〜約300ppmのカルシウム、好ましくは200ppmのCa2+で水和することを含む。バ
チルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus Stearothermophilus)から得られた
酵素はカルシウム依存が少ないように思われる。従って、この場合はCa2+の補充
は必要でない。粉砕された穀物の粒径は約3mmを越えるべきでなく、3.5%未
満が 1.3mmを越え、1.5%未満が0.25mmより小さいべきである。添加して用
いられる酵素は、セルラーゼ、β−グルカナーゼ、及び他の植物細胞壁分解酵素
である。
培養液の液化は、例えば水酸化カルシウムを用いて、通常約5〜8、好ましく
は約6〜7のpHに調整される。エンドプロテアーゼとともに、α−アミラーゼ
、好ましくは耐熱性α−アミラーゼを、少なくとも部分的に穀類デンプンを液化
し、少なくとも部分的にタンパク質を分解するのに十分な量添加することが重要
である。α−アミラーゼの適量は、B.A.T.S を用いた場合、1トン当たり、約 0
.5〜約 2kg、好ましくは約1〜1.5kg である。ブルーワーズプロテアーゼ(Brewe
rs protease)2000の場合、プロテアーゼの適量は、1トンの穀物当たり0.5kg(Kg
/T)以上であり、好ましくは 1kg/T 以上である。パンスチマーゼ(Panstimase)40
0の場合、2kg/T 以上であり、好ましくは5以上であり、更に好ましくは 10kg/T
以上が用いられる。
液化工程においては、高温での多くの工程が実施される。α−アミラーゼ及び
プロテアーゼの添加後、十分な液化が得られるまで、混合物を約 40℃〜65℃、
好ましくは約 45〜55℃、最も好ましくは 50℃の温度に維持する。時間は用いら
れる穀物又は穀物混合物に依存するが、通常は約30分〜約2時間で十分である。
次いで、温度を徐々に(速度は重要でない)、約 90〜95℃に上昇し、この温度
に約 30分〜約1時間放置する。次いで、混合物を、糖化が行われる温度、通常
は約50〜約70℃、好ましくは約55〜65℃、最も好ましくは60℃まで冷却する。糖
化工程に用いられる酵素の耐熱性に依存して、70℃よりわずかに高い温度が可能
である。好ましい温度に達した時に、ブルーワーズファーメックス(Brewers Fer
mex,α−アミラーゼ)又はノバミル(Novamyl,組換えβ−アミラーゼ)を、通常は
ブルーワーズファーメックスについては約 400g/T〜約 1kg/T の範囲で添加する
。グルコアミラーゼもしばしば用いられる。糖化を約30分〜約2時間行い、その
後、酵素、及び不溶な微生物を不活性化するために温度を約 75℃〜約 85℃に上
昇させ、好ましい温度を約10分間維持する。時間は重要でない。
次いで、そのようにして得られた麦芽汁を、当業界で周知の装置を用いてろ過
する。Schleicher & Schuell ろ紙が、満足に機能する。ろ過した後、麦汁を、
用いる種及び最終目的に依存した条件下で、適当な酵母で発酵させる。ビール醸
造に加え、生物燃料又はアルコール飲料等のアルコールの製造が本発明によって
認識される。適当な種、及び適当な条件は当業者に周知である。
例えば、ビール醸造のための麦汁の製造の間のエキソペプチダーゼの使用は、
穀物原料の液化工程の間に特に有利である。エキソペプチダーゼの不存在に比べ
、糖化の間のエキソペプチダーゼの添加は、より高いFANレベル、向上したろ
過性及びより高い麦汁の収率等の言及された長所を導く。
本発明の方法は、pH及び温度条件が真菌エキソペプチダーゼを活性化するこ
とを許容する段階を許容すべきである。適当なエキソペプチダーゼは、一般に真
菌、特にアスペルギルス種の真菌に対して内因性である。アスペルギルス・ニガ
ー、アスペルギルス・ソジャエ及びアスペルギルス・オリザエを含むアスペルギ
ルス種のアミノペプチダーゼが特に有用であることがわかった。
上述したことから明らかなように、麦汁の製造において液化及び/又は糖化工
程の間のエキソペプチダーゼ活性を示す酵素の添加は、良好なろ過性、高収率及
び高FANを有する麦汁を製造する。これは、有意な割合のモルト処理されてい
ない、又は独占的にモルト処理されていない穀物を用いた、ビールの醸造、アル
コール飲料(酒)の製造、アルコール(生物燃料として)の製造を魅力的にする
。後者は、麦汁の輸入が制限されるか、経済的に魅力的でない国の醸造者にとっ
て非常に好都合である。特に、アフリカにおいては、大きい割合のモロコシを含
む穀物原料(混合物)からビールが製造される。
更に、液化工程又は糖化工程(又は両方)でエキソペプチダーゼが用いられる
麦汁から製造されたビールの官能的性質(味及び匂い)が向上することが見出さ
れた。エキソペプチダーゼが、通常の大麦モルト又は混合醸造ビール(すなわち
、モルト処理された穀物とモルト処理されていない穀物の組み合わせから)混合
処理等のモルト処理された穀物からのビールの製造において用いられる場合、こ
の長所が得られることが認識された。
実験A. 耐熱性α−アミラーゼ(液化)
本発明の方法の液化工程において用いられるα−アミラーゼは、一般にデンプ
ン中のα−1,4−グルコース−グルコース結合を切断する酵素である。それは
、耐熱性α−アミラーゼの中から選ばれる。Gist-Brocadesから商標BrewersAmyl
iq Thermo Stable(B.A.T.S)として商業的に入手できるバチルス・リケニホルミ
ス(Bacillus licheniformis)由来のα−アミラーゼによって非常に良好な結果が
得られる。B. エンドプロテアーゼ(液化)
本発明の方法の液化工程において用いられるエンドプロテアーゼは、一般に液
化工程の最初のpH及び温度条件で(pH 5〜6;温度 45〜55℃)タンパク
質中のペプチド結合を切断する酵素である。Gist-Brocades から商標 Brewer's
Protease2000として入手できるバチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus
amyloljquefacjens)由来の中性プロテアーゼによって非常に良好な結果が得られ
る。Panstimase Se SARL から商標 Panstimase 400 として入手できるストレプ
トマイセス・フラジエ(StrePtomvces fradiae)由来のタンパク質分解酵素も、使
用できる。C. エキソペプチダーゼ(液化及び/又は糖化)
本発明の方法の液化工程で用いられるエキソペプチダーゼは、一般にペプチド
又はタンパク質のN−末端結合を切断する酵素である。アスペルギルス種由来の
試料によって非常に良好な結果が得られる。アスペルギルス・ニガーからアミノ
ペプチダーゼを得る方法は、以下に記載する。C.1 酵素活性の測定
エキソペプチダーゼ活性は、ロイシンアミノペプチダーゼユニット又はフェニ
ルアラニンアミノペプチダーゼユニットとして表わす。
1 Leu-AP ユニットは、ユニットは、pH7.2、及び20℃でL−ロイシン−
p−ニトロアニリドから、1分当たり1μモルのp−ニトロアニリンを生産する
のに必要な酵素量である。
フェニルアラニンアミノペプチダーゼユニット
1 Phe-AP ユニットは、pH7.2、及び20℃でL−フェニルアラニン−p−
ニトロアニリドから1分当たり、1μモルのp−ニトロアニリンを生産するのに
必要な酵素量である。C.1.1 フェニルアラニン−アミノペプチダーゼ(Phe-AP)
フェニルアラニンパラニトロアニリドを0.9mMの濃度で7.5mM塩酸に溶解した。
該基質溶液1mlを1.5mlの0.1Mリン酸バッフアーpH7.2と混合した。t=0において
、0.5ml酵素を導入し、20℃で反応させた。15分後に1mLの 1N 塩酸を加えた。ブ
ランクは、t=0において 1N 塩酸を導入して行った。400nmにおいてブランク(ODb lank
)及び検定(ODassay)について吸光度を測定した。活性を以下のように計算し
た。
C.1.2 ロイシン−アミノペプチダーゼ(Leu-AP)
ロイシンパラニトロアニリドを9mMの濃度で水に溶解した。該基質溶液1mlを1.
5m1の-.1M リン酸バッファーpH7.2と混合した。t=0において、0.5mlの酵素
を導入し、20℃で反応させた。15分後に 1ml の 1N 塩酸を加えた。ブランクは
、t=0において 1N 塩酸を導入して行った。400nm においてブランク(ODblank)及
び検定(ODassay)について吸光度を測定した。活性を以下のように計算した。
C.1.3 エンドプロテアーゼ(PU)
この活性は、pH6.0、40℃、1時間におけるカゼインの加水分解によって
測定した。1PU は、残存するタンパク質をトリクロロ酢酸で沈殿させた後に1分
当たり1μモルのチロシン同等物を遊離するのに必要な酵素量である。C.2 アスペルギルス・ニガー種のスクリーニング
異なる出所から分離した、又はカルチャーコレクションから得た200のアス
ペルギルス・ニガーを、15g/lのジャガイモ粉末、20g/lのバクトペプトン、7g/l
の酵母抽出物、4g/lのリン酸二水素カリウム、0.5g/lの硫酸マグネシウム、0.5g
/lの塩化カルシウム、0.5g/l の塩化亜鉛を含む、pHが4.8の培地中で増殖させ
た。240rpm、30℃での24時間の予備培養、及び275rpm、30℃での96時間の培養の
後、上清を集め、上述したように、ロイシン−、フェニルアラニン−、及びバリ
ン−アミノペプチダーゼ活性を定量した。表1に示すように、いくつかのアスペ
ルギルス・ニガ−株は上記酵素の少なくとも一つについて高い生産能力を示した
(各値は、4回の個々の結果の平均値である)。
上述の株から、株1108及び1502をカルチャーコレクションから得、それぞれ受
託番号NRRL 3112及びCBS 115.39として寄託した。NRRL 3112株を、アミロ
グルコシダーゼ、α−アミラーゼ及びグルコアミラーゼの生産のために用いた。
CBS 115.39株をアミラーゼの生産のために用いた。C.3 研究室スケールでのエキソペプチダーゼの生産
実施例1で記載したスクリーニングからのいくつかの株を研究室発酵槽(10
リットル)で発酵させた。本実施例で1502株で得られた結果を示す。
30℃で7〜10日間インキュベーションした後、アスペルギルス・ニガー1502株
の胞子をPDA-プレート上に集めた。接種工程は、pH4.8でグルコース(20g/l)及
びコーンスティープ(20g/l)を含む培地中の振盪フラスコ上で24時間行った。
主要な発酵はバッチプロセスで行った。以下の栄養素を用いた。100g/l のマ
ルトデキストリン、40g/lの大豆粉末、40g/lの加水分解カゼイン、5g/1のコーン
スティープ、2g/lのゼラチン、2g/lのリン酸二水素カリウム、1.3g/lの硝酸ナト
リウム、1g/1の塩化アンモニウム、0.01g/lの硫酸鉄及び0.5g/lの消泡剤。
マルトデキストリンを除き、最初に全ての栄養素を一緒に混合した。pHを4.
8±0.1に調整した。次いで、発酵槽を 125℃で 40 分間滅菌した。マルトデキス
トリン溶液を別に滅菌し、無菌であるが冷却された発酵培地に添加した。
上述した培地6リットルで満たした研究室発酵槽中で主要な発酵を実施し、接
種フラスコを接種した。溶存酸素を可能な限り高く維持するように攪拌及び空気
供給を調整した。温度を 30℃に維持した。全ての栄養素が消費された時、すな
わち約130時間後に発酵を停止した。
発酵培養液をろ過して全ての微生物を除去した。ろ液中のアミノペプチダーゼ
及びエンドプロテアーゼ活性を測定した。
0.15 Leu-AP/ml
1.0 Phe-AP/ml
<0.05Val-AP/ml
<0.1 PU/ml
安定剤である液状アミノペプチダーゼ、グリセロール(50%)を定式化するため
に UF 濃縮を行った。「ペプチダーゼL2」と呼ばれる、得られた溶液は以下の活
性を有する。
0.5 Leu-AP/ml
3.2 Phe-AP/ml
〈0.05 Val-AP/ml
〈0.1 PU/ml
上記結果は、我々の選択した条件下で増殖した、選択されたアスペルギルス・
ニガー株がエンドプロテアーゼの実質的な量なしでアミノペプチダーゼを生産す
ることを示す。C.4 酵素活性のpHプロフィール
2.5〜9.0のpH範囲をスクリーニングするための異なるバッファーを用いて、
ペプチダーゼL2から、Leu-AP及びPhe-AP活性を測定した。
アスペルギルス・ニガー由来のロイシン−アミノペプチダーゼのpHプロフィ
ールを図1に示す。
アスペルギルス・ニガー由来のフェニルアラニン−アミノペプチダーゼのpH
プロフィールを図2に示す。
図は、Leu-AP が5〜8.5のpHで活性であるが、Phe-AP は他のアスペルギルス
種由来のアミノペプチダーゼと同様な5.5〜9のpHで活性であることを示す。C.5 酵素活性の温度プロフィール
Leu-AP 及びPhe-AP の生活は、5〜70℃の範囲の温度をスクリーニングするた
めの異なる温度を用いて、ペプチダーゼL2から測定した。
温度プロフィールを図3に示す。
結果は、各酵素が異なる至適温度、すなわちLeu-AP が50℃、Phe-AP が60℃の
至適温度を有することを示す。
アスペルギルス・ニガーの培養液からのアミノペプチダーゼを製造する方法は
開示されている。該アミノペプチダーゼはpH6〜8の範囲、及び50〜60℃の範
囲で最適な活性を有する。更に、該培養条件で、アミノペプチダーゼは検出可能
又は相当量のエンドプロテアーゼなしに生産される。有利に、アミノペプチダー
ゼの活性ははエキソプロテーゼより好ましくは10倍、更に好ましくは30倍存在す
る。D. マルトゲニックアミラーゼ(糖化)
本発明の方法の糖化工程において用いられるアミラーゼは、主要な生産物とし
てマルトース及び/又はグルコースを生産するためのデキストリン又はデンプン
中のα-1,4-グルコース−グルコース結合を開裂する酵素である。商標 Brewers'
Fermex として Gist-Brocades から商業的に入手できるアスペルギルス・オリザ
エ由来のα−アミラーゼ、又は商標 Novamylとして Novo から商業的に入手でき
るバチルス・アミロリクエフアシエンス由来の組換えβ−アミラーゼで良好な結
果が得られる。
実施例1
モロコシ(var.FAFA FARA)及びトウモロコシの穂軸を、ビール製造のための標
準規格に従って粉砕した。1部の穀物(60%モロコシ+40%トウモロコシ穂軸)
を3部の水で水和させた。糖化媒体中の全Ca2+が200ppm となるように、塩化カ
ルシウムを加えた。pHを水酸化カルシウムで6.5に調整した。B.A.T.S.を、穀
物1トン当たり1.5kg加えた。他のタンパク質分解酵素を表2に示す量加えた。
混合物を50℃に1時間維持した。次いで、温度を95℃に上げ(速度1℃/分)
、95℃に45分維持した。次いで、5分間で60℃に冷却した。次いで、Brewers Fe
rmexを追加した(600g/T)。次いで、麦芽汁を60℃で45分間糖化させた。次いで、
温度を76℃に上昇させ、この温度に10分間維持した。次いで、Schleicher and
Schuellろ紙を含む漏斗に麦芽汁を注いだ。次いで、ろ過した麦汁の量を測定し
、その比重も測定した。これは、抽出物及び収率の計算も許容する。アミノ酸は
、標準としてグリシンを用いてニンヒドリン試薬で測定した。得られたアミノ酸
濃度を、同じ糖含有量(12°プラトー)での麦汁の間の比較のために補正した。
結果を表3に示す。
上記結果は、本発明の製造方法においてエキソペプチダーゼと組み合わせたエ
ンドプロテアーゼの使用が、麦汁中のアミノ酸の量だけでなく、収率及びろ過性
を増加することができることを示す。
実施例2
このシリーズにおいて、表4に示すように、アスペルギルス種由来の異なるエ
キソペプチダーゼとバチルス・アミロリクエファシエンス由来の中性プロテアー
ゼ(1.8kg Brewers Protease 2000/1トンの穀物)との組み合わせを用いて実施
例1を実施した。
結果を表5に示す。
どんな生物起源のエキソペプチダーゼであっても、全てのエンドプロテアーゼ
+エキソペプチダーゼの組み合わせはエンドプロテアーゼ単独よりも良好に機能
した。また、ここにおいても、アミノ酸含有量に加え、収率及びろ過性が向上し
た。
実施例3
ビール製造のために得られた麦汁の能力を制御するために、モロコシ及びトウ
モロコシ穂軸を実施例1に記載されたように醸造した。同時に、モルトを完全に
モロコシに換え、酵素を用いずに実施した。表6を参照。 結果を表7に示す。
各醸造の詳細なアミノ酸組成は、HPLCにより測定した。アミノ酸は、サッ
カロミセス種による同化作用の速度に従って、分類した。
グループA:迅速な同化作用
グループB:中間の同化作用
グループC:遅い同化作用
結果を表8に示す。(表7ではグリシンを標準として用いているが、HPLC キ
ャリブレーションは全く異なるので、N.B 値は表6における全アミノ酸値と一致
しない。 各麦汁を45分間煮沸した。糖含有量を12°プラトーで調整するために沸騰した
蒸留水を各麦汁に無菌的に加えた。各標準化した麦汁350mlを無菌フラスコに加
えた。ビール酵母を各フラスコに接種した(5g/l)。11℃で8日間発酵させた。各
発酵麦汁の明らかな希釈を、8日発酵後の密度から測定した。
結果を表9に示す。
本発明の製造方法における、モロコシへのエンドプロテアーゼ+エキソペプチ
ダーゼの組み合わせの適用は、モルトで得られた麦汁と比較した場合、ビール発
酵について十分な能力を有する麦汁を製造することを可能にする。意外にも、バ
チルス・アミロリクエファシエンス由来のエンドプロテアーゼ+アスペルギルス
・ソジャエ由来のエキソペプチダーゼの組み合わせはグループA+グループBに
おいて重要な改良点を与える。
実施例4
本実施例は、本発明の方法における糖化工程よりも液化工程でのエキソペプチ
ダーゼの導入の利点を示す。モロコシ+トウモロコシの穂軸を、実施例1に記載
されたように醸造した。Brewers Protease 2000 を、全ての醸造において液化工
程で加えた(1.8kg/T)。アスペルギルス・ソジャエ由来のエキソペプチダーゼ(40
000 Leu-AP/T)を、液化工程(試験n°1〜2)又は糖化工程(試験n°3〜4
)で加えた。
結果を表10に示す。
同じ試験を繰り返すことにより、ろ過容量、収率及びアミノ酸含量の標準偏差
を決定した。評価は、それぞれ、10ml、0.5%及び0.9mg/lである。
従って、上述の結果は、液化工程でのエキソペプチダーゼの導入が主としてア
ミノ酸生産及びろ過性について有意なポジティブな利点をもたらすことを示す。
実施例5
本実施例は、醸造におけるアスペルギルス・オリザエ由来のエキソペプチダー
ゼの量の増加の効果を示す。
モロコシ+トウモロコシの穂軸を、実施例1に記載したように醸造した。Brew
ers Protease 2000 及びエキソペプチダーゼを液化工程で加えた(表11)。 結果を表12に示す。
エキソペプチダーゼが多いほど、高い収率及び大量のフリーのアミノ酸が得ら
れる。逆に、ろ過効果は低いエキソペプチダーゼレベルで最適値に達する。
実施例6
本実施例は、醸造におけるアスペルギルス・ニガー由来のエキソペプチダーゼ
の量の増加の効果を示す。
モロコシ+トウモロコシの穂軸を、実施例1に記載したように醸造した。Brew
ers Protease 2000 及びエキソペプチダーゼを液化工程で加えた(表11)。 結果を表14に示す。
ここにおいても、エキソペプチダーゼが多いほど、高い収率及び大量のアミノ
酸が得られる。上記結果は、アスペルギルス・オリザエのエキソペプチダーゼは
、アスペルギルス・ニガーのエキソペプチダーゼより、よく機能することを示す
。
実施例7
大麦(var.PLAISANT)を、醸造所のフィルタープレスに適合する微細な粉末に
粉砕した。9mgのB.A.T.S.、2mgのFiltrase L3000(+)(Gist-brocades から商業的
に入手できるバチルス・アミロリクエファシエンス由来のβ−グルカナーゼ)、4
mgのBrewers Protease 2000、及び関連した量のアスペルキルス・ソジャエ由来
のエキソペプチダーゼを含む、300mlの水に、57gの粉末を50℃で1時間懸濁させ
た。次いで、温度を63℃に上昇させ(1℃/分の速度)、63℃に30分維持した。
次いで、90℃に上昇させ(1℃/分の速度)、90℃に20分維持した。次いで、醸
造を25℃に冷却し、7000gで15分遠心した。可溶性タンパク質及びフリーのアミ
ノ酸について、上清を最終的に分析した。
結果を表15に示す。
上記結果は、液化工程の間に酵素を適用した場合に、アスペルギルス・ソジャ
エ由来のエキソペプチダーゼが、大麦醸造におけるフリーのアミノ酸のレベルを
モルト処理した醸造におけるのと同じくらい高く到達させるのを可能にすること
を示す。
実施例8
アスペルギルス・ソジャエ由来のエキソペプチダーゼをアスペルギルス・ニガ
ー由来のエキスペプチダーゼに代え、実施例7に記載されたように大麦を醸造し
た。
結果を表16に示す。
アスペルギルス・ニガー由来のエキソペプチダーゼがアスペルギルス・ソジャ
エ由来のものより効率的でないとしても、ビール発酵に十分は12°プラトー大麦
麦汁において100mg/lアミノ酸に到達することを可能とする。微生物の寄託
エキソペプチダーゼの製造に用いた株を、Centraal Bureau voor schimmelcul
tures,Oosterstraat 1,Baarn,The Netherlandsに、受託番号 CBS115.39(パブ
リックコレクション)、CBS 209.96(アスペルギルス・ソジャエ)(DS 8351): (受
託日1996年2月12日)、及びCBS 210.96(アスペルギルス・オリザエ(DS 23617):
(受託日1996年2月12日) として寄託した。
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