JP2000306582A - 電極用黒鉛材料およびそれを用いたリチウムイオン二次電池 - Google Patents

電極用黒鉛材料およびそれを用いたリチウムイオン二次電池

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JP2000306582A JP11114332A JP11433299A JP2000306582A JP 2000306582 A JP2000306582 A JP 2000306582A JP 11114332 A JP11114332 A JP 11114332A JP 11433299 A JP11433299 A JP 11433299A JP 2000306582 A JP2000306582 A JP 2000306582A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 可逆容量が大きくて、急速充放電でも高容量
を維持するリチウムイオン二次電池、およびその負極用
黒鉛材料を提供すること。 【解決手段】 25℃から800℃まで昇温したときの
CO脱離量とCO2脱離量の和が5〜100μmol/
gであり、非晶質炭素が表面に存在することを特徴とす
る電極用黒鉛材料、および該黒鉛材料を負極として利用
したリチウムイオン二次電池。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リチウムイオン二
次電池に関する。更に詳しくは、高い電流密度での充放
電においても高放電容量を維持するリチウムイオン二次
電池、およびその負極用黒鉛材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、電子機器の小型化に伴い高容量の
二次電池のさらなる高容量化が望まれている。そのた
め、ニッケル・カドミウム、ニッケル・金属水素化物電
池に比べ、よりエネルギー密度の高いリチウムイオン二
次電池が注目されている。その負極材料としては、最初
にリチウム金属を用いることが試みられたが、充放電を
繰り返すうちにデンドライト状のリチウムが析出してセ
パレーターを貫通して正極にまで達し、短絡して発火事
故を起こす可能性があることが判明した。そのため、充
放電過程におけるリチウムの出入りを層間で行い、リチ
ウム金属の析出を防止できる炭素材料を負極材料として
使用することが注目されている。
【0003】この炭素材料として、特開昭57−208
079号公報では黒鉛材料を使用することが提案されて
いる。また、特開平4−237949号公報では、高分
子炭化物、コークス、石炭および石油ピッチ焼成物な
ど、黒鉛よりも結晶性が低い炭素質物を使用することが
提案されている。更に、特開平4−368778号公報
や特開平4−370662号公報では、非晶質部と結晶
性の高い黒鉛質の多相構造を有する複合炭素質物を用い
ることが提案されている。
【0004】炭素質、黒鉛質粒子(炭素質、黒鉛質およ
びそれらを含む複層炭素質物)は、難黒鉛化性炭素材料
に比べて結晶性が高く、真密度が高い。従って、これら
炭素、黒鉛類の炭素材料を用いて電極を構成すれば、高
い電極充填性が得られ、電池の体積エネルギー密度を高
めることができる。しかしながら、それらの炭素質表面
は本質的に極性のある電解液には濡れにくく、高充填さ
れればされるほど電極内部の空隙は減少してリチウムイ
オンの拡散は阻害されてしまう。このため、高容量及
び、高率での充放電を要求される電気自動車などに利用
しうる程度の十分な特性は得られていない。
【0005】性能向上のための効果的な方法として、炭
素負極剤の表面をフッ素を含有したガスで処理する方法
や(特開平7−312218号公報や特開平9−245
793号等)、カーボンナノチューブのようなミクロな
材料にイオン性もしくは共有結合性のフッ素を表面に結
合させることにより過電圧を改良する方法(特開平9−
289019号公報)が提案されている。しかしなが
ら、いずれの方法による材料を用いても、黒鉛の理論容
量に近い容量や、高い電流密度での十分な充放電容量値
は得られていない。更に、特開平10−284080号
公報には、表面に非晶質炭素を有する黒鉛材料を、酸、
アルカリ処理することが記載されている。しかしなが
ら、ここにはCO脱離量とCO2脱離量の和が電極用黒
鉛材料の性能に影響を与えることの記載は無く、また具
体的実施例で得られる黒鉛材料の処理程度は低く、得ら
れる二次電池性能は、未だ向上が求められるレベルのも
のであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、これらの従
来技術の問題を解決することを課題とした。すなわち本
発明は、可逆容量および高い電流密度での容量低下を改
善し、急速充放電でも高容量を維持するリチウムイオン
二次電池、およびそれに用いる炭素材料を提供すること
を解決すべき課題とした。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは前記課題を
解決するために鋭意検討を重ねた結果、昇温時のCOお
よびCO2脱離量が特定の範囲内にあり、かつ非晶質炭
素が表面に存在する黒鉛材料を負極として使用すること
により、高い電流密度での充放電においても高容量を維
持することができるリチウムイオン二次電池を提供しう
ることを見出し、本発明に到達した。すなわち本発明
は、25℃から800℃まで昇温したときのCO脱離量
とCO 2脱離量の和が5〜100μmol/gであり、
非晶質炭素が表面に存在することを特徴とする電極用黒
鉛材料を提供するものである。
【0008】本発明の黒鉛材料は、アルゴンレーザーラ
マンスペクトルにおける1570〜1620cm-1のピ
ーク強度に対する1350〜1370cm-1のピーク強
度の比であるR値が0.2〜2.0であり、1570〜
1620cm-1のピークの半値幅が20〜40cm-1
あることが好ましい。なお、本明細書において「〜」は
その前後に記載される数値を含む範囲を意味する。ま
た、本発明の黒鉛材料は、フッ素化剤、オゾンまたは硝
酸を用いた表面処理が施されていることが好ましい。本
発明は上記の黒鉛材料を含む電極も提供する。さらに本
発明は、該電極からなる負極、正極、および溶質と非水
溶媒とからなる非水系電解液を有するリチウムイオン二
次電池も提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】以下において、本発明の黒鉛材
料、電極およびリチウムイオン二次電池について詳細に
説明する。
【0010】黒鉛材料 本発明の黒鉛材料は、25℃から800℃まで昇温した
ときのCO脱離量とCO2脱離量の和が5〜100μm
ol/gであり、非晶質炭素が表面に存在することを特
徴とする。CO脱離量とCO2脱離量の和は8〜90μ
mol/gであることが好ましく、11〜80μmol
/gであることがより好ましく、11〜70μmol/
gであることがさらにより好ましく、12〜50μmo
l/gであることが特に好ましい。
【0011】25℃から800℃まで昇温したときのC
O脱離量とCO2脱離量の和が5μmol/g未満であ
る場合には、リチウムイオン二次電池の負極として利用
したときに該負極表面に生成する電解質および電解液が
リチウムイオンによって還元されて生成する界面皮膜
(SEI被膜)を十分安定させるに足りる量の含酸素官
能基が導入されていないため、十分な容量が得られな
い。一方、25℃から800℃まで昇温したときのCO
脱離量とCO2脱離量の和が100μmol/gよりも
多い場合には、リチウムイオン二次電池の非可逆容量が
増加し、可逆容量の低下を引き起こしてしまう。
【0012】本明細書において「25℃から800℃ま
で昇温したときのCO脱離量とCO 2脱離量」は、昇温
熱分解質量分析計(TPD−MS)を用いて測定した値
を意味する。具体的には後述する試験例1に記載される
方法、およびそれに準ずる方法により測定された値を意
味する。測定対象となる黒鉛材料は、通常は粒状のまま
で測定する。
【0013】本発明の黒鉛材料は、アルゴンレーザーラ
マンスペクトルにおける1570〜1620cm-1に存
在するピークの強度(IA)に対する1350〜137
0cm-1に存在するピークの強度(IB)の比であるR
値(IB/IA)が、0.20〜2.0であることが好
ましく、0.21〜1.50であることがより好まし
く、0.22〜1.20であることがさらにより好まし
く、0.25〜1.20が一層好ましく、0.30〜
1.0が特に好ましい。R値が0.2未満である場合に
は十分な含酸素官能基が表面に導入されていない傾向が
あり、2.0よりも高い場合には、黒鉛構造はかなり破
壊されており、リチウムの層間への吸蔵が困難になる傾
向にある。また、本発明の黒鉛材料は、アルゴンレーザ
ーラマンスペクトルにおける1570〜1620cm-1
のピークの半値幅が20〜40cm-1であることが好ま
しく、23〜35cm-1であることがより好ましく、2
5〜33cm-1であることがさらにより好ましい。
【0014】本発明の黒鉛材料を製造するのに用いられ
る黒鉛質原料は、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化メソカー
ボンマイクロビーズをはじめとして、ピッチ系、ポリア
クリロニトリル系、メソフェーズピッチ系、気相成長系
の黒鉛化炭素繊維を粉末状に加工したものも用いること
ができる。また、単体でも、これら二種以上を混合して
用いてもよいが、この中で最も好ましいのは精製天然黒
鉛または人造黒鉛である。また、溶融溶解性有機物、熱
硬化性高分子等を不活性ガス雰囲気下または、真空中に
おいて600〜3000℃、好ましくは800〜180
0℃の温度で加熱することによって得られる人造黒鉛、
コークス等の既製の炭素質物を更に加熱処理して黒鉛質
化を適度に進行させて得られる人造黒鉛も使用できる。
【0015】これらの黒鉛質原料は、X線回折による
(002)面の面間隔d002が3.37Å以下であるこ
とが好ましく、3.36Å以下であることがより好まし
い。また、C軸方向の結晶子の大きさ(Lc)は500
Å以上であることが好ましく、1000Å以上であるこ
とがより好ましい。なお、本明細書でいうこれらの数値
は、学振法に基づく補正を行った数値である。また、波
長5145Åのアルゴンイオンレーザー光を用いたラマ
ンスペクトル分析において、1570〜1620cm-1
の範囲に存在するピークの強度(IA)に対する135
0〜1370cm-1の範囲に存在するピークの強度(I
B)の比であるR値(IB/IA)は、通常0.45以
下であることが好ましく、0.40以下であることがよ
り好ましく、0.35以下が更に好ましく、0.32以
下が一層好ましく、0.30以下が特に好ましい。
【0016】これらの黒鉛質原料の表面に非晶質炭素を
形成することによって、本発明の黒鉛材料を作製するこ
とができる。ただし、入手した黒鉛質原料の表面にすで
に非晶質炭素が形成されている場合は、特に表面に非晶
質炭素を形成する処理を行う必要はない。表面に非晶質
炭素を形成する方法は特に制限されない。黒鉛質原料の
表面に非晶質炭素を形成させる好ましい方法として、例
えば、黒鉛質原料と有機物等とを混合して焼成する方法
や、CVD法などを挙げることができる。
【0017】有機物としては、軟ピッチから硬ピッチま
でまでのコールタールピッチや乾留液化油などの石炭系
重質油や、常圧残油、減圧残油等の直流系重質油、原
油、ナフサなどの熱分解時に副生するエチレンタール等
分解系重質油等の石油系重質油が挙げられる。また、こ
れら重質油を200〜400℃で蒸留して得られた固体
状残査物を1〜100μmに粉砕したものも用いること
ができる。さらに塩化ビニル樹脂や、焼成によりフェノ
ール樹脂やイミド樹脂となる樹脂前駆体も用ることがで
きる。
【0018】黒鉛質原料と有機物との混合には、回転羽
根を用いたかき混ぜ式混合機、ニーダー、かい形ねりま
ぜ機、ロール形ねりまぜ機などのねりまぜ式混合装置が
使用でき、また、容器自身の回転により混合するV形混
合機、円筒形混合機、二重円錐形混合機、さらには、混
合羽根を用いたリボン形混合機や、回転パドルを用いた
パドルドライヤなども使用できる。こうして得られた黒
鉛質原料と有機物との混合物を不活性ガス雰囲気で焼成
して表面に非晶質炭素を形成させた黒鉛材料を得ること
ができる。不活性ガスとしては、窒素、アルゴンなどを
用いることができる。
【0019】得られた黒鉛材料は、必要により粉砕して
適度な粒径になるようにすることが好ましい。本発明の
黒鉛材料は、体積基準メジアン径が5〜70μmである
ことが好ましく、10〜40μmであることがより好ま
しく、15〜30μmであることがさらにより好まし
い。BET法を用いて測定した比表面積は、1〜10m
2/gであることが好ましく、1〜4m2/gであること
がより好ましく、1〜3m2/gであることがさらによ
り好ましい。また、見かけ密度は炭素被覆に使用した核
黒鉛質原料よりも更に向上するが、0.7〜1.2g/
cm3の範囲であることが好ましい。
【0020】本発明の黒鉛材料は、表面に含酸素官能基
を導入するための表面処理を施したものであることが好
ましい。表面処理を行うことで、CO脱離量とCO2
離量の和をより好ましい範囲に調整することが一段と容
易になる。表面処理方法としては、種々の方法が知られ
ているが、例えば、フッ素処理、オゾン処理、硝酸酸化
処理等を好適に用いることができる。これらの方法は基
本的に独立して行い、2種以上を続けて行ってもよい。
フッ素処理に用いるフッ素化剤としては、フッ素ガス、
NF3等のフッ素原子を放出する物質が用いられる。フ
ッ素化剤での処理温度としては、−100℃〜200
℃、好ましくは、0℃〜50℃の温度域が選ばれる。ま
た、フッ素化剤での処理時間は炭素材料に均一にフッ素
等が供給されれば短時間の処理でよく、通常は1分〜2
日間、好ましくは30分以下である。フッ素ガスのフッ
素分圧は、加圧〜減圧まで特に制限はないが、好ましく
は100〜760mmHgで処理するのが好ましい。一
方、0℃以下の低温、あるいは特開平7−312218
号公報や特開平9−245793号公報の実施例に見ら
れるような炭素負極材の表面を100mmHg以下の分
圧のフッ素を含有したガスで処理する方法では、効果は
不十分である。また、フッ素ガスは単独で用いても、窒
素、アルゴン等の不活性ガス、または、酸素等と混合し
て用いてもよい。
【0021】更に、フッ素処理と組み合わせて、その前
後に、空気やオゾン酸化、硝酸、硫酸等を用いた湿式酸
化処理、あるいは、水蒸気や他の薬剤を用いた賦活処理
等を好適に用いることができる。また、複数の表面処理
方法を組み合わせて行うこともできる。オゾン処理は乾
式でも湿式でも好適に用いることができる。乾式オゾン
処理では、オゾン発生装置を用いて、酸素ガス気流中の
オゾン濃度が1〜100%、好ましくは5〜50%とし
たガス(炭素材20gに対して、流量は1〜10リット
ル/min)を1分から数日、好ましくは1〜24時間
流して処理を行う。また、湿式オゾン処理は、蒸留水、
好ましくは0.01〜1Nの酢酸水溶液中に炭素材を分
散し、オゾン発生装置を用いて、酸素ガス気流中のオゾ
ン濃度が1〜100%、好ましくは5〜50%としたガ
ス(炭素材20gに対して、流量は1〜10リットル/
min)を1分から数日、好ましくは、1〜24時間流
して処理を行う。
【0022】硝酸処理は、例えば炭素材料20gに対し
て数N以上、好ましくは10N以上の濃度の濃硝酸を用
いて攪拌しながら、反応温度15〜100℃、好ましく
は80〜90℃の温度域で1分から数日、好ましくは3
時間から3日程度処理を行う。処理後は、蒸留水等を用
いて十分に洗浄する。これらの方法は、特開平10−2
84080号公報の記載に準じて実施することができ
る。
【0023】本発明の黒鉛材料は、特定の特性を発揮し
うる程度の結晶性を有していることが好ましい。炭素質
粉末の結晶性は、リチウムイオンを用いた電気化学的容
量で判別することができる。本発明の黒鉛材料は、充放
電レートを0.2mA/cm 2とした半電池による電気
容量にして、270mAh/g以上であることが好まし
く、330mAh/g以上であることがより好ましく、
350mAh/g以上であることがさらにより好まし
い。すなわち、炭素六角網面構造がある程度発達した高
結晶性炭素材料であって、金属イオンがインターカレー
ションした際に、C6Liで表される組成、すなわち炭
素6原子に対してリチウム1原子を収容するステージ1
構造を形成できる材料であることが好ましい。
【0024】電極 本発明の黒鉛材料を用いて電極を作製することができ
る。電極の形状および製造方法は特に制限されず、また
製造した電極の用途も特に制限されるものではない。例
えば、本発明の黒鉛材料に結着剤、溶媒等を加えてスラ
リー状とし、銅箔等の金属製の集電体の基板にスラリー
を塗布・乾燥することによって電極材料を製造すること
ができる。また、該電極材料をそのままロール成形、圧
縮成型等の方法で電極の形状に成形することもできる。
【0025】上記の目的で使用できる結着剤としては、
溶媒に対して安定な、ポリエチレン、ポリプロピレン、
ポリエチレンテレフタレート、芳香族ポリアミド、セル
ロース等の樹脂系高分子、スチレン・ブタジエンゴム、
スチレン・イソプレンゴム、イソプレンゴム、ブタジエ
ンゴム、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子、
スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、そ
の水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロッ
ク共重合体、その水素添加物等の熱可塑性エラストマー
状高分子、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエ
ン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−
オレフィン(炭素数2〜12)共重合体等の軟質樹脂状
高分子、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエ
チレン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合
体等のフッ素系高分子、アルカリ金属イオン、特にリチ
ウムイオンのイオン伝導性を有する高分子組成物が挙げ
られる。
【0026】上記のイオン伝導性を有する高分子として
は、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等
のポリエーテル系高分子化合物、ポリエーテル化合物の
架橋体高分子、ポリエピクロルヒドリン、ポリフォスフ
ァゼン、ポリシロキサン、ポリビニルピロリドン、ポリ
ビニリデンカーボネート、ポリアクリロニトリル等の高
分子化合物に、リチウム塩、またはリチウムを主体とす
るアルカリ金属塩を複合させた系、あるいはこれにプロ
ピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチ
ロラクトン等の高い誘電率を有する有機化合物を配合し
た系を用いることができる。この様なイオン伝導性高分
子組成物の室温におけるイオン導電率は、好ましくは1
-5S/cm以上、より好ましくは10-3S/cm以上
である。
【0027】本発明の黒鉛材料と上記の結着剤との混合
様式としては、各種の形態をとることができる。すなわ
ち、両者の粒子が混合した形態、繊維状の結着剤が黒鉛
材料の粒子に絡み合う形で混合した形態、または、結着
剤の層が炭素質物の粒子表面に付着した形態などが挙げ
られる。炭素質物と上記結着剤との混合割合は、炭素質
物に対し、好ましくは0.1〜30重量%、より好まし
くは0.5〜10重量%である。30重量%を越える量
の結着剤を添加すると、電極の内部抵抗が大きくなって
好ましくなく、0.1重量%未満の量では、集電体と炭
素質粉体との結着性に劣る傾向がある。
【0028】リチウムイオン二次電池 本発明の黒鉛材料を用いた上記電極を負極として利用す
ることによって、良好な特性を有するリチウムイオン二
次電池を提供することができる。本発明のリチウムイオ
ン二次電池は、上記電極を負極として用いるものであれ
ば、特にその構造の詳細や製造方法は制限されない。例
えば、上記負極板と以下に説明する電解液、正極板を、
その他の電池構成要素であるセパレータ、ガスケット、
集電体、封口板、セルケース等と組み合わせて二次電池
を構成することができる。作製可能な電池は筒型、角
型、コイン型等特に限定されるものではないが、基本的
にはセル床板上に集電体と負極材料を乗せ、その上に電
解液とセパレータを、更に負極と対向するように正極を
乗せ、ガスケット、封口板と共にかしめて二次電池とす
る。
【0029】電解液用に使用できる非水溶媒としては、
プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、クロ
ロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカー
ボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネー
ト、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エ
チルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネー
ト、イソプロピルメチルカーボネート、エチルプロピル
カーボネート、イソプロピルエチルカーボネート、ブチ
ルメチルカーボネート、ブチルエチルカーボネート、ジ
プロピルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、γ
−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテ
トラヒドロフラン、スルホラン、3−メチルスルホラ
ン、2,4−ジメチルスルホラン、1,3−ジオキソラ
ン、酢酸メチル、酢酸エチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル
等の有機溶媒の単独、または、二種類以上を混合したも
のを用いることができる。また、負極上に良質のパシベ
ーション膜を形成することができる公知の化合物を任意
の割合で上記単独または混合溶媒に添加してもよい。
【0030】これらの溶媒に、0.5〜2.0M程度の
LiClO4、LiPF6、LiBF 4、LiAsF6、L
iCl、LiBr等の無機のリチウム塩、LiCF3
3、LiN(SO2CF32、LiN(SO2
252、LiC(SO2CF33、LiN(SO3
32等の有機のリチウム塩を電解質として上記溶媒に
溶解して電解液とすることができる。また、リチウムイ
オン等のアルカリ金属カチオンの導電体である高分子固
体電解質を用いることもできる。
【0031】正極の材料は、特に限定されないが、リチ
ウムイオンなどのアルカリ金属カチオンを充放電時に吸
蔵・放出できる金属カルコゲン化合物からなることが好
ましい。その様な金属カルコゲン化合物としては、バナ
ジウムの酸化物、硫化物、モリブデンの酸化物、硫化
物、クロムの酸化物、チタンの酸化物、硫化物および、
これらの複合酸化物、複合硫化物等が挙げられる。ま
た、LiMY2(Mは、Co,Ni等の遷移金属、Y
は、O,S等のカルコゲン化合物)、LiM24(Mは
Mn,YはO)、WO3等の酸化物、CuS、Fe0.28
0.752、Na0.1CrS2等の硫化物、NiPS3、F
ePS3等のリン、硫黄化合物、VSe2、NbSe3
のセレン化合物等を用いることもできる。これらを負極
材と同様、結着剤と混合して集電体の上に塗布して正極
板とする。電解液を保持するセパレーターは、一般的に
保液性に優れた材料であり、例えば、ポリオレフィン系
樹脂の不織布や多孔性フィルムなどを使用して、上記電
解液を含浸させることができる。
【0032】
【実施例】以下に具体例を挙げて本発明をさらに具体的
に説明する。以下の具体例に示す材料、使用量、割合、
操作等は、本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更す
ることができる。したがって、本発明の範囲は以下に示
す具体例に制限されるものではない。
【0033】(実施例1)人造黒鉛A(d002:3.3
5Å、粒径22μm)の粉末3kgと、有機物としてナ
フサ分解時に得られるエチレンヘビーエンドタール(三
菱化学(株)社製)1kgとを混合機で20分混合し混
合物を得た。この混合物63gを、黒鉛製トレー(内寸
140mm角、深さ20mm)に仕込み、雰囲気ガス導
入管及びガス排出管を接続した内径300mmΦ、奥行
き900mmのインコネル製インナーマッフルを有する
焼成炉に入れ、窒素ガスを10L/minの速度で流し
ながら、1300℃まで500℃/時間の速度で昇温
し、その温度で一時間保持した後室温まで放冷し、複合
炭素質物49gを得た。得られた複合炭素質物を多数の
ピンを有する衝撃式粉砕器で粉砕し、5〜50μmの粒
径範囲の粉末状の複合炭素質物とした。この複合炭素質
物100gをフッ素処理用反応器内に入れ、容器内を真
空に保った後、フッ素含有ガス(F2:39.5vol
%、O2:60.5vol%)を導入し、室温下、大気
圧で10分間15rpmで回転させながらフッ素処理し
て黒鉛材料を得た。
【0034】(実施例2)実施例1と同法により得られ
た粉末状の複合炭素質物40gを湿式オゾン処理用反応
器内に入れ、オゾン発生装置を用いて、オゾン濃度10
重量%の酸素ガスを3L/min流しながら室温下、
0.1N酢酸100ml中で2.5時間オゾン処理して
黒鉛材料を得た。
【0035】(実施例3)実施例1と同法により得られ
た粉末状の複合炭素質物20gをガラスフラスコ内に入
れ、15.5NのHNO3水溶液175mlを導入し、
50℃で24時間反応させることによって黒鉛材料を得
た。
【0036】(実施例4)天然黒鉛B(d002:3.3
6Å、粒径19μm)の粉末3kgと、有機物としてナ
フサ分解時に得られるエチレンヘビーエンドタール(三
菱化学(株)製)1kgとを混合機で20分混合し混合
物を得た。この混合物63gを、黒鉛製トレー(内寸1
40mm角、深さ20mm)に仕込み、雰囲気ガス導入
管及びガス排出管を接続した内径300mmΦ、奥行き
900mmのインコネル製インナーマッフルを有する焼
成炉に入れ、窒素ガスを10L/minの速度で流しな
がら、1300℃まで500℃/時間の速度で昇温し、
その温度で一時間保持した後室温まで放冷し、複合炭素
質物49gを得た。得られた複合炭素質物を多数のピン
を有する衝撃式粉砕器で粉砕し、5〜50μmの粒径範
囲の粉末状の複合炭素質物とした。この複合炭素質物1
00gをフッ素処理用反応器内に入れ、容器内を真空に
保った後、フッ素含有ガス(F2:100vol%)を
導入し、室温下、大気圧で10分間15rpmで回転さ
せながらフッ素処理して黒鉛材料を得た。
【0037】(比較例1)フッ素処理を行わないこと以
外は、実施例1と同様に処理して黒鉛材料を得た。 (比較例2)フッ素処理を行わないこと以外は、実施例
4と同様に処理して黒鉛材料を得た。 (比較例3)天然黒鉛Bの粉末をそのまま黒鉛材料とし
た。
【0038】(試験例1)実施例および比較例で製造し
た各黒鉛材料の物性を、以下の方法にしたがって測定し
た。 (1)昇温時のCOおよびCO2脱離量の測定 発生ガスを同定、定量するTG−MS(アネルバ社製A
GS7000)に接続された加熱炉(真空理工社製)
に、各黒鉛材料400mgを仕込み、Heガスを80m
l/minで流しながら10℃/minの速度で室温
(25℃)から800℃まで昇温し、黒鉛材料より脱離
するCOガス量とCO2ガス量を測定して和を求めた。
【0039】(2)ラマンスペクトル測定 日本分光社製NR−1800を用いて、各黒鉛材料に波
長5145Åのアルゴンイオンレーザー光を30mWの
強度で照射した。1570〜1620cm-1の範囲に存
在するピークの強度(IA)および、1350〜137
0cm-1の範囲に存在するピークの強度(IB)を測定
し、これらから計算されるR値(IB/IA)を求め
た。また、1570〜1620cm-1の範囲に存在する
ピークの半値幅(Δν)も求めた。結果を以下の表1に
示す。
【0040】(試験例2)実施例および比較例で製造し
た各黒鉛材料を用いて半電池を作製し、特性試験を行っ
た。まず、炭素質物に熱可塑性エラストマーをバインダ
ーとして加えたスラリーを作製し、ドクターブレード法
で銅箔上に塗布してシート電極を作製した。この電極を
直径15.4mmの円盤状に打ち抜き、電解液を含浸さ
せたセパレーターを中心にリチウム金属電極に対向させ
た2016タイプコインセルを作製した。電解液として
は、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを重
量比2:8の比率で混合した溶媒に過塩素酸リチウムを
1.5mol/Lの割合で溶解させたものを使用した。
【0041】充放電試験では、電流密度0.17mA/
cm2で両電極間の電位差が0Vになるまで充電を行
い、1.5Vになるまで0.33mA/cm2で放電を
行って3サイクル目の脱ドープ容量を可逆容量とした。
また、高率での充放電試験では、0.17mA/cm2
で充電の後、5.0mA/cm2で放電を行って脱ドー
プ容量を測定し、通常レートの場合を基準とした容量維
持率を求めた。結果を以下の表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【発明の効果】本発明の黒鉛材料を含む電極を負極とし
て用いたリチウムイオン二次電池は、従来のリチウムイ
オン二次電池に比べて可逆容量が大きく、急速充放電で
も高容量を維持するという優れた特徴を有する。したが
って、本発明の黒鉛材料、電極およびリチウムイオン二
次電池は、二次電池が必要とされる様々な分野で広範に
利用することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山口 祥司 香川県坂出市番の州町1番地 三菱化学株 式会社坂出事業所内 (72)発明者 渡辺 賢治 香川県坂出市番の州町1番地 三菱化学株 式会社坂出事業所内 (72)発明者 見勢 信猛 福岡県北九州市八幡西区黒崎城石1番1号 三菱化学株式会社黒崎事業所内 Fターム(参考) 4G046 EA06 EB06 EB07 EB11 EB13 EC02 EC06 5H003 AA01 AA02 BA07 BB01 BC01 BC06 BD00 BD01 BD03 5H014 AA01 BB11 CC07 EE08 HH00 HH01 5H029 AJ02 AJ03 AK02 AK03 AK05 AL06 AM03 AM04 AM05 AM07 BJ01 CJ12 CJ14 CJ21 DJ12 DJ16 DJ17 DJ18 HJ00 HJ13 HJ14

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 25℃から800℃まで昇温したときの
    CO脱離量とCO2脱離量の和が5〜100μmol/
    gであり、非晶質炭素が表面に存在することを特徴とす
    る電極用黒鉛材料。
  2. 【請求項2】 アルゴンレーザーラマンスペクトルにお
    ける1570〜1620cm-1のピーク強度に対する1
    350〜1370cm-1のピーク強度の比であるR値が
    0.2〜2.0であることを特徴とする請求項1に記載
    の電極用黒鉛材料。
  3. 【請求項3】 アルゴンレーザーラマンスペクトルにお
    ける1570〜1620cm-1のピークの半値幅が20
    〜40cm-1であることを特徴とする請求項1または2
    に記載の電極用黒鉛材料。
  4. 【請求項4】 フッ素化剤、オゾンまたは硝酸を用いた
    表面処理が施されていることを特徴とする請求項1〜3
    のいずれかに記載の電極用黒鉛材料。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載の電極用
    黒鉛材料を含むことを特徴とする電極。
  6. 【請求項6】 請求項5に記載の電極からなる負極、正
    極、および溶質と非水溶媒とからなる非水系電解液を有
    することを特徴とするリチウムイオン二次電池。
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