JP2017033766A - 非水電解質二次電池用負極活物質、並びにこれを用いた非水電解質二次電池用負極および非水電解質二次電池 - Google Patents

非水電解質二次電池用負極活物質、並びにこれを用いた非水電解質二次電池用負極および非水電解質二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】炭素を主成分とする非水電解質二次電池用負極活物質において、充放電の進行に伴うガス発生とこれに起因する電池の膨れを抑制しつつ、1000サイクルといった長期サイクル耐久性も向上させうる手段を提供する。【解決手段】炭素を主成分とする非水電解質二次電池用負極活物質において、ラマン分光法により求めたR値(RA)と、当該活物質を用いて1000サイクルの充放電を行った後のR値(RB)とが、以下の関係:を満たすようにするか、または、50℃から400℃までの温度上昇における昇温脱離ガス分析(TDS)において測定される、初期の脱離二酸化炭素分子(CO2)数が1.5〜3.1×1015[個/2mg]であり、かつ、ラマン分光法により求めたR値が0.41〜0.45となるようにする。【選択図】なし

Description

本発明は、非水電解質二次電池用負極活物質、並びにこれを用いた非水電解質二次電池用負極および非水電解質二次電池に関する。
現在、携帯電話などの携帯機器向けに利用される、リチウムイオン二次電池をはじめとする非水電解質二次電池が商品化されている。非水電解質二次電池は、一般的に、正極活物質等を集電体に塗布した正極と、負極活物質等を集電体に塗布した負極とが、セパレータに非水電解液または非水電解質ゲルを保持した電解質層を介して接続された構成を有している。そして、リチウムイオン等のイオンが電極活物質中に吸蔵・放出されることにより、電池の充放電反応が起こる。
ところで、近年、地球温暖化に対処するために二酸化炭素量を低減することが求められている。そこで、環境負荷の少ない非水電解質二次電池は、携帯機器等だけでなく、ハイブリッド自動車(HEV)、電気自動車(EV)、および燃料電池自動車等の電動車両の電源装置にも利用されつつある。
電動車両への適用を指向した非水電解質二次電池は、高出力および高容量であることが求められる。電動車両用の非水電解質二次電池の正極に使用する正極活物質としては、層状複合酸化物であるリチウム複合酸化物が、高電圧を得ることができ、かつ高いエネルギー密度を有することから、既に広く実用化されている。一方、負極に使用する負極活物質としては、天然黒鉛等の炭素を含む材料が、高容量で耐久性にも優れることから広く用いられている。ここで、リチウムイオン二次電池では、電池の充放電を繰り返すと、電解質中の非水溶媒が負極活物質と電気化学的に反応することによって分解し、その際に生成する分解物が負極活物質の表面にSEI(Solid Electrolyte Interface)皮膜として堆積する。これにより、負極の化学的安定性が確保されている。
しかしながら、SEI皮膜生成の際に副反応性生成物としてガスが発生する。ガスが発生すると、扁平ラミネート型電池では電池の外装体が膨張し、電池の厚さが増大する。また、電極間距離も増大することから、電極間での反応が進行しにくくなり、容量劣化が引き起こされるという問題もある。このため、電池膨れを見越して予め発生ガス分の容積を確保した電池設計を行う必要があることから、限られた電池容積を活物質を詰め込むための容積として有効に利用することができない結果となっている。
また、電池を高温で保存した際には、SEI皮膜の劣化が起こりやすく、この劣化部位において負極と電解液が反応し、さらに多量のガスが発生するという問題がある。このガス発生量はSEI皮膜の安定性に大きく影響を受けるため、良好なSEI皮膜を形成するための検討が多くなされている。
例えば特許文献1には、天然黒鉛を濃硫酸等で酸処理した後に、100〜600℃での熱処理を施すことによって表面官能基量を調整し、これにより良好なSEI皮膜を形成して、発生するガス量を低減させるとともに不可逆容量を低下させる技術が開示されている。
特開2010−219036号公報
本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載されているような技術をもってしても、発生するガス量(ひいては電池の膨れ)を十分に抑制することができないことが判明した。また、1000サイクルといった長期サイクル耐久性の点でも依然として改善の余地が存在することも判明した。
そこで本発明は、炭素を主成分とする非水電解質二次電池用負極活物質において、充放電の進行に伴うガス発生とこれに起因する電池の膨れを抑制しつつ、1000サイクルといった長期サイクル耐久性も向上させうる手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、炭素を主成分とする非水電解質二次電池用負極活物質において、ラマン分光法により求めたR値(R)と、当該活物質を用いて1000サイクルの充放電を行った後のR値(R)とが所定の関係を満たすように、または、50℃から400℃までの温度上昇における昇温脱離ガス分析(TDS)において測定される、初期の脱離二酸化炭素分子(CO)数が所定の範囲内の値であって、かつ、ラマン分光法により求めたR値が所定の範囲内の値となるように制御することで、上記課題を解決可能な非水電解質二次電池用負極活物質が提供されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の一形態によれば、炭素を主成分とする非水電解質二次電池用負極活物質であって、ラマン分光法により求めたR値(R)と、当該活物質を用いて1000サイクルの充放電を行った後のR値(R)とが、以下の関係:
を満たすことを特徴とする、非水電解質二次電池用負極活物質が提供される。
また、本発明の他の形態によれば、炭素を主成分とする非水電解質二次電池用負極活物質であって、50℃から400℃までの温度上昇における昇温脱離ガス分析(TDS)において測定される、初期の脱離二酸化炭素分子(CO)数が1.5〜3.1×1015[個/2mg]であり、かつ、ラマン分光法により求めたR値が0.41〜0.45であることを特徴とする、非水電解質二次電池用負極活物質が提供される。
さらに、本発明のさらに他の形態によれば、炭素を主成分とする非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法であって、活物質前駆体を熱処理することを含み、前記熱処理の前後の、50℃から400℃までの温度上昇における昇温脱離ガス分析(TDS)において測定される、初期の脱離二酸化炭素分子(CO)数を、それぞれN(熱処理前)およびN(熱処理後)とし、
前記熱処理の前後の、ラマン分光法により求めたR値を、それぞれR(熱処理前)およびR(熱処理後)としたときに、以下の関係:
を満たすことを特徴とする、非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法が提供される。
本発明に係る負極活物質においては、負極活物質の表面における吸着物や官能基が十分に除去されており、また、主成分である炭素の結晶性がある程度低く制御されている。その結果、表面の吸着物や官能基と電解液との副反応が抑制され、充放電の進行に伴うガス発生とこれに起因する電池の膨れを抑制することができる。また、SEI皮膜の均一な形成が可能となり、1000サイクルといった長期サイクル耐久性も向上させることが可能となる。
本発明の電池の一実施形態である非水電解質二次電池の概要を模式的に表した断面概略図であり、後述する図2に示すA−A線に沿った断面概略図である。 本発明の電池の代表的な実施形態である扁平な非水電解質二次電池の外観を表した斜視図である。
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
本発明の一形態によれば、炭素を主成分とする非水電解質二次電池用負極活物質であって、ラマン分光法により求めたR値(R)と、当該活物質を用いて1000サイクルの充放電を行った後のR値(R)とが、以下の関係:
を満たすことを特徴とする、非水電解質二次電池用負極活物質(以下、「第1の負極活物質」とも称する)が提供される。また、本発明の他の形態によれば、炭素を主成分とする非水電解質二次電池用負極活物質であって、50℃から400℃までの温度上昇における昇温脱離ガス分析(TDS)において測定される、初期の脱離二酸化炭素分子(CO)数が1.5〜3.1×1015[個/2mg]であり、かつ、ラマン分光法により求めたR値が0.41〜0.45であることを特徴とする、非水電解質二次電池用負極活物質(以下、「第2の負極活物質」とも称する)が提供される。
このように、本発明では、まず負極活物質が提供される。この負極活物質が集電体の表面の負極活物質層に含まれることで、集電体と負極活物質層とが負極を構成する。そして、この負極は、集電体の表面に正極活物質層が形成されてなる正極と、電解質層とともに発電要素を構成して、非水電解質二次電池の主要構成要素となる。以下、本形態に係る負極活物質について説明する。
[負極活物質]
本発明に係る負極活物質(第1の負極活物質および第2の負極活物質)は、炭素を主成分とするものである。ここで、負極活物質が「炭素を主成分とする」とは、負極活物質に占める炭素原子の割合が50質量%以上であることを意味し、この割合は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上である。
第1の負極活物質は、ラマン分光法により求めたR値(R)と、当該活物質を用いて1000サイクルの充放電を行った後のR値(R)とが、以下の関係:
を満たす点に特徴がある。
ここで、ラマン分光法により求められるR値は、負極活物質の主成分である炭素のラマンスペクトルにおける1580cm−1(Gバンド)領域のピーク強度に対する1360cm−1(Dバンド)領域のピーク強度の比(R=I1360/I1580)である。炭素のラマンスペクトルにおけるDバンド領域の吸収は乱層構造に起因し、Gバンド領域の吸収は黒鉛結晶構造に起因する。すなわち、表面の結晶性が高いほど(結晶状態の炭素に近くなるほど)Gバンド領域の吸収が強く、非晶質の程度が大きいほどDバンド領域の吸収が強い。
第1の負極活物質によれば、上述したRとRとが上記の関係を満たすことで、充放電の進行に伴うガス発生とこれに起因する電池の膨れを抑制しつつ、1000サイクルといった長期サイクル耐久性も向上させることが可能となる。かような効果が奏されるメカニズムは、以下のように推測される。すなわち、負極活物質の表面における吸着物や官能基が十分に除去されており、また、主成分である炭素の結晶性がある程度低く制御されている。その結果、表面の吸着物や官能基と電解液との副反応が抑制され、充放電の進行に伴うガス発生とこれに起因する電池の膨れを抑制することができる。また、SEI皮膜の均一な形成が可能となり、1000サイクルといった長期サイクル耐久性も向上させることが可能となるものと考えられる。
R値の測定方法は特に限定されない。ただし、測定方法によって測定値がばらつく場合には、公知のアルゴンレーザーを用いたレーザーラマン分光装置を用いてラマンスペクトルを検出し、1360cm−1(Dバンド)および1580cm−1(Gバンド)におけるピークをそれぞれ検出し、ピーク強度比(I1360/I1580)を算出することによりR値を求める方法を採用するものとする。
上述したように、第1の負極活物質は、ラマン分光法により求めたR値(R)と、当該活物質を用いて1000サイクルの充放電を行った後のR値(R)とが上記所定の関係を満たすものである。ここで、Rを求めるための「1000サイクルの充放電」を行う充放電条件は、後述する実施例の欄に記載の通りとする。
第1の負極活物質が満たす「R/R×100」の値は、87.5〜92.7である。この値は、好ましくは90.5〜92.7であり、さらに好ましくは91.0〜92.7である。これらの好ましい範囲においては、電池の膨れおよび長期サイクル耐久性をよりいっそう改善することができる。
続いて、第2の負極活物質は、50℃から400℃までの温度上昇における昇温脱離ガス分析(TDS)において測定される、初期の脱離二酸化炭素分子(CO)数が1.5〜3.1×1015[個/2mg]であり、かつ、ラマン分光法により求めたR値が0.41〜0.45である点に特徴がある。
ここで、ラマン分光法によりR値を求める方法については、第1の負極活物質について上述した
上述した通りである。また、50℃から400℃までの温度上昇における昇温脱離ガス分析(TDS)により初期の脱離二酸化炭素分子(CO)数を求める方法は、後述する実施例の欄に記載の通りとする。
第2の負極活物質において、初期の脱離二酸化炭素分子(CO)数は1.5〜3.1×1015[個/2mg]であることが必須であるが、この値は、好ましくは1.5〜2.4×1015[個/2mg]であり、より好ましくは1.5〜1.6×1015[個/2mg]である。また、第2の負極活物質において、ラマン分光法により求めたR値は0.41〜0.45であることが必須であるが、この値は、好ましくは0.41〜0.44であり、より好ましくは0.41〜0.42である。これらから、第2の負極活物質の好ましい実施形態において、前記脱離二酸化炭素分子数は1.5〜2.4×1015[個/2mg]であり、かつ、ラマン分光法により求めたR値は0.41〜0.44である。また、第2の負極活物質のより好ましい実施形態において、前記脱離二酸化炭素分子数は1.5〜1.6×1015[個/2mg]であり、かつ、ラマン分光法により求めたR値は0.41〜0.42である。これらの好ましい範囲においては、電池の膨れおよび長期サイクル耐久性をよりいっそう改善することができる。
第1および第2の負極活物質の製造方法について特に制限はないが、本発明のさらに他の形態によれば、第1および第2の負極活物質を製造するための好ましい製造方法が提供される。当該製造方法は、炭素を主成分とする非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法であって、活物質前駆体を熱処理することを含むものである。そして、当該製造方法は、前記熱処理の前後の、50℃から400℃までの温度上昇における昇温脱離ガス分析(TDS)において測定される、初期の脱離二酸化炭素分子(CO)数を、それぞれN(熱処理前)およびN(熱処理後)とし、前記熱処理の前後の、ラマン分光法により求めたR値を、それぞれR(熱処理前)およびR(熱処理後)としたときに、以下の関係:
を満たす点に特徴がある。このようにして製造された負極活物質は、充放電の進行に伴うガス発生とこれに起因する電池の膨れを抑制しつつ、1000サイクルといった長期サイクル耐久性も向上させることが可能である。
負極活物質の原料として用いられる炭素材料は特に限定されない。例えば、グラファイト構造を有する人造または天然の黒鉛を主成分として含有する炭素粒子を原料の炭素材料として用いることができる。
原料の炭素粒子としては非晶質炭素粒子を用いることもできる。非晶質炭素粒子としては、カーボンブラックや、5員環もしくは6員環の環式炭化水素化合物または含酸素環式有機化合物を熱分解して合成したものを用いることができる。
原料の炭素粒子の形状は、球状、塊状、または扁平球状であることが好ましい。炭素粒子の平均粒径(D50)は、1〜50μmの範囲であることが好ましく、2〜30μmの範囲であればより好ましく、5〜25μmの範囲であればよりいっそう好ましい。この平均粒径の値の好ましい形態は、第1および第2の負極活物質の平均粒径の値についても同様にあてはまる。
原料の炭素粒子の形状は、例えば燐片状または繊維状のように、アスペクト比の大きな形状であってもよい。ただし、このような炭素粒子を原料として用いても、作製された負極活物質のアスペクト比は1〜5の範囲とすることが好ましく、1〜3の範囲であればより好ましい。原料の炭素粒子のc軸長さLcは、上記のアスペクト比を満足する範囲内であればよい。アスペクト比が上記の範囲を超えると、無定形の大きな粒子の比率が高くなる。このような炭素粒子を原料とする負極活物質の充填性は低いため、負極密度が上げにくくなる傾向にあり、高いエネルギー密度が得られないので好ましくない。
炭素粒子の平均粒径の測定方法は特に限定されない。例えば、レーザ散乱を利用した粒度分布測定装置(例えば、マイクロトラック)を用いて測定することができる。
本形態に係る製造方法は、上述した炭素粒子等の原料を活物質前駆体として用いて、これを熱処理することを含む。熱処理の具体的な形態について特に制限はなく、「N/N×100」および「R/R×100」の値が上記所定の範囲内の値となるように制御すればよい。ここで、これらの値は、以下の関係:
を満たすことが好ましく、以下の関係:
を満たすことがより好ましい。これらの好ましい範囲においては、電池の膨れおよび長期サイクル耐久性をよりいっそう改善することができる。
熱処理条件の一例として、熱処理の温度は、好ましくは90〜190℃であり、より好ましくは100〜190℃であり、さらに好ましくは150〜190℃であり、特に好ましくは180〜190℃である。典型的には、この熱処理温度を低くすると、「N/N×100」および「R/R×100」の値は大きくなる傾向にあり、熱処理温度を高くすると、これらの値は小さくなる傾向にある。また、熱処理時間は、好ましくは1〜5時間程度である。さらに、熱処理雰囲気は、大気雰囲気下であってもよいし、アルゴンまたは窒素等の不活性ガス雰囲気下であってもよい。また、雰囲気圧力は常圧であってもよいし、10〜1000Pa程度の減圧であってもよい。
本発明のさらに他の形態によれば、集電体と、前記集電体の表面に配置された、負極活物質を含む負極活物質層とを有する非水電解質二次電池用負極であって、前記負極活物質として、本発明に係る第1もしくは第2の負極活物質、または本発明に係る製造方法によって製造された負極活物質を用いた非水電解質二次電池用負極もまた、提供される。
[非水電解質二次電池]
図1は、本発明に係る負極活物質および負極の一実施形態である非水電解質二次電池(以下、単に「積層型電池」ともいう)の概要を模式的に表した断面概略図であり、後述する図2に示すA−A線に沿った断面概略図である。なお、本明細書においては、図1に示す扁平型(積層型)の双極型でないリチウムイオン二次電池を例に挙げて詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はかような形態のみに制限されない。
まず、本発明に係る非水電解質二次電池の全体構造について、図面を用いて説明する。
[電池の全体構造]
図1に示すように、本実施形態の積層型電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、外装体である電池外装材29の内部に封止された構造を有する。ここで、発電要素21は、正極と、セパレータ17と、負極とを積層した構成を有している。なお、セパレータ17は、電解質(本実施形態では、添加剤を含有する液体電解質(電解液))を内蔵している。正極は、正極集電体12の両面に正極活物質層15が配置された構造を有する。負極は、負極集電体11の両面に負極活物質層13が配置された構造を有する。具体的には、1つの正極活物質層15とこれに隣接する負極活物質層13とが、セパレータ17を介して対向するようにして、負極、電解質層および正極がこの順に積層されている。これにより、隣接する正極、電解質層および負極は、1つの単電池層19を構成する。したがって、図1に示す積層型電池10は、単電池層19が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するとも言える。
なお、発電要素21の両最外層に位置する最外層正極集電体には、いずれも片面のみに負極活物質層13が配置されているが、両面に活物質層が設けられてもよい。すなわち、片面にのみ活物質層を設けた最外層専用の集電体とするのではなく、両面に活物質層がある集電体をそのまま最外層の集電体として用いてもよい。また、図1とは正極および負極の配置を逆にすることで、発電要素21の両最外層に最外層正極集電体が位置するようにし、該最外層正極集電体の片面正極活物質層が配置されているようにしてもよい。
正極集電体12および負極集電体11は、各電極(正極および負極)と導通される正極集電板(タブ)27および負極集電板(タブ)25がそれぞれ取り付けられ、電池外装材29の端部に挟まれるようにして電池外装材29の外部に導出される構造を有している。正極集電板27および負極集電板25はそれぞれ、必要に応じて正極リードおよび負極リード(図示せず)を介して、各電極の正極集電体12および負極集電体11に超音波溶接や抵抗溶接などにより取り付けられていてもよい。
なお、図1では、扁平型(積層型)の双極型ではない積層型電池を示したが、集電体の一方の面に電気的に結合した正極活物質層と、集電体の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層と、を有する双極型電極を含む双極型電池であってもよい。この場合、一の集電体が正極集電体および負極集電体を兼ねることとなる。
以下、本発明の一実施形態である非水電解質リチウムイオン二次電池を構成する各部材について説明する。
[正極]
正極は、集電体と、前記集電体の表面に形成された正極活物質層とを有するものである。
(集電体;正負極共通)
集電体を構成する材料に特に制限はないが、好適には金属が用いられる。具体的には、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅、その他合金等などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、またはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位の観点からは、アルミニウム、ステンレス、銅が好ましい。また、正極集電体にはアルミニウムが最適であり、負極集電体には銅が最適である。
集電体の大きさは、電池の使用用途に応じて決定される。例えば、高エネルギー密度が要求される大型の電池に用いられるのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。集電体の厚さについても特に制限はない。集電体の厚さは、通常は1〜100μm程度である。
(正極活物質層)
正極活物質層は、正極活物質を含む。正極活物質の具体的な構成について特に制限はなく、従来公知の材料が用いられうる。一例として、正極活物質は、スピネル系リチウムマンガン複合酸化物および/またはリチウムニッケル系複合酸化物を含むことが好ましい。以下、これらの正極活物質の好ましい形態について、説明する。
・スピネル系リチウムマンガン複合酸化物
スピネル系リチウムマンガン複合酸化物は、典型的にはLiMnの組成を有し、スピネル構造を有する、リチウムおよびマンガンを必須に含有する複合酸化物であり、その具体的な構成や製造方法については、従来公知の知見が適宜参照されうる。
スピネル系リチウムマンガン複合酸化物は、一次粒子が凝集してなる二次粒子の構成を有している。そして、この二次粒子の平均粒径(平均二次粒径;D50)は、好ましくは5〜50μmであり、より好ましくは7〜20μmである。なお、平均二次粒径の測定は、レーザー回折法により行う。
・リチウムニッケル系複合酸化物
リチウムニッケル系複合酸化物は、リチウムとニッケルとを含有する複合酸化物である限り、その組成は具体的に限定されない。リチウムとニッケルとを含有する複合酸化物の典型的な例としては、リチウムニッケル複合酸化物(LiNiO)が挙げられる。ただし、リチウムニッケル複合酸化物のニッケル原子の一部が他の金属原子で置換された複合酸化物がより好ましく、好ましい例として、リチウム−ニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物(以下、単に「NMC複合酸化物」とも称する)は、リチウム原子層と遷移金属(Mn、NiおよびCoが秩序正しく配置)原子層とが酸素原子層を介して交互に積み重なった層状結晶構造を持ち、遷移金属Mの1原子あたり1個のLi原子が含まれ、取り出せるLi量が、スピネル系リチウムマンガン酸化物の2倍、つまり供給能力が2倍になり、高い容量を持つことができる。加えて、LiNiOより高い熱安定性を有しているため、正極活物質として用いられるニッケル系複合酸化物の中でも特に有利である。
本明細書において、NMC複合酸化物は、遷移金属元素の一部が他の金属元素により置換されている複合酸化物も含む。その場合の他の元素としては、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Cr、Fe、B、Ga、In、Si、Mo、Y、Sn、V、Cu、Ag、Znなどが挙げられ、好ましくは、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crであり、より好ましくは、Ti、Zr、P、Al、Mg、Crであり、サイクル特性向上の観点から、さらに好ましくは、Ti、Zr、Al、Mg、Crである。
NMC複合酸化物は、理論放電容量が高いことから、好ましくは、一般式(1):LiNiMnCo(但し、式中、a、b、c、d、xは、0.9≦a≦1.2、0<b<1、0<c≦0.5、0<d≦0.5、0≦x≦0.3、b+c+d=1を満たす。MはTi、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crから選ばれる元素で少なくとも1種類である)で表される組成を有する。ここで、aは、Liの原子比を表し、bは、Niの原子比を表し、cは、Mnの原子比を表し、dは、Coの原子比を表し、xは、Mの原子比を表す。サイクル特性の観点からは、一般式(1)において、0.4≦b≦0.6であることが好ましい。なお、各元素の組成は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法により測定できる。
一般に、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)は、材料の純度向上および電子伝導性向上という観点から、容量および出力特性に寄与することが知られている。Ti等は、結晶格子中の遷移金属を一部置換するものである。サイクル特性の観点からは、遷移元素の一部が他の金属元素により置換されていることが好ましく、特に一般式(1)において0<x≦0.3であることが好ましい。Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、SrおよびCrからなる群から選ばれる少なくとも1種が固溶することにより結晶構造が安定化されるため、その結果、充放電を繰り返しても電池の容量低下が防止でき、優れたサイクル特性が実現し得ると考えられる。
NMC複合酸化物において、本発明者らは、例えば、LiNi0.5Mn0.3Co0.2のように、ニッケル、マンガンおよびコバルトの金属組成が不均一であると、上記充放電時の複合酸化物のひずみ/割れの影響が大きくなることを見出した。これは、金属組成が不均一であるために、膨張収縮時に粒子内部にかかる応力にひずみが生じ、複合酸化物に割れがより生じやすくなるためであると考えられる。したがって、例えば、Niの存在比がリッチである複合酸化物(例えば、LiNi0.8Mn0.1Co0.1)や、Ni、MnおよびCoの存在比率が均一である複合酸化物(例えば、LiNi0.33Mn0.33Co0.33)と比較して、長期サイクル特性の低下が顕著となる。一方、本形態に係る構成とすることにより、LiNi0.5Mn0.3Co0.2のように金属組成が不均一である複合酸化物においても、驚くべきことに、サイクル特性が改善されることが見出された。
したがって、一般式(1)において、b、cおよびdが、0.44≦b≦0.51、0.27≦c≦0.31、0.19≦d≦0.26である複合酸化物の正極活物質であると好ましい。かような構成とすることで、容量特性と出力特性とのバランスに優れた電池が提供されうる。
リチウムニッケル系複合酸化物もまた、一次粒子が凝集してなる二次粒子の構成を有している。そして、当該一次粒子の平均粒径(平均一次粒径;D50)は好ましくは0.9μm以下であり、より好ましくは0.20〜0.6μmであり、さらに好ましくは0.25〜0.5μmである。また、二次粒子の平均粒径(平均二次粒径;D50)は、好ましくは5〜20μmであり、より好ましくは5〜15μmである。さらに、これらの比の値(平均二次粒径/平均一次粒径)は、11より大きいことが好ましく、より好ましくは15〜50であり、さらに好ましくは25〜40である。なお、リチウムニッケル系複合酸化物を構成する一次粒子は通常、層状構造を有する六方晶系の結晶構造を有しているが、その結晶子径の大小は平均一次粒径の大小と相関性を有している。ここで「結晶子」とは、単結晶とみなせる最大の集まりを意味し、粉末X線回折測定などにより得られた回折強度から、結晶の構造パラメータを精密化する方法により測定が可能である。リチウムニッケル系複合酸化物を構成する一次粒子の結晶子径の具体的な値について特に制限はないが、寿命特性の観点からは、好ましくは1μm以下であり、より好ましくは360nm以下であり、さらに好ましくは310nm以下である。かような構成とすることで、活物質の膨張収縮時の変位量を低減することが可能となり、充放電の繰り返しに伴う二次粒子の微細化(割れ)の発生が抑制され、サイクル特性の向上に寄与しうる。なお、結晶子径の値の下限値について特に制限はないが、通常は20nm以上である。ここで、本明細書において、正極活物質粒子における結晶子径の値は、粉末X線回折測定により得られる回折ピーク強度から結晶子径を算出する、リートベルト法により測定するものとする。
リチウムニッケル系複合酸化物のタップ密度は、好ましくは2.3g/cmであり、より好ましくは2.4〜2.9g/cmである。かような構成とすることで、正極活物質の二次粒子を構成する一次粒子の高い緻密性が十分に確保され、サイクル特性の改善効果も維持されうる。
また、リチウムニッケル系複合酸化物のBET比表面積は、好ましくは0.1〜1.0m/gであり、より好ましくは0.3〜1.0m/gであり、特に好ましくは0.3〜0.7m/gである。活物質の比表面積がかような範囲にあることで、活物質の反応面積が確保され、電池の内部抵抗が小さくなることから、電極反応時の分極発生を最小限に抑えることができる。
さらに、リチウムニッケル系複合酸化物について、粉末X線回折測定により得られる(104)面の回折ピークと(003)面の回折ピークとが、回折ピーク強度比((003)/(104))として1.28以上であることが好ましく、より好ましくは1.35〜2.1である。また、回折ピーク積分強度比((003)/(104))としては1.08以上であることが好ましく、より好ましくは1.10〜1.45である。これらの規定が好ましいのは以下の理由による。すなわち、リチウムニッケル系複合酸化物は、酸素層の間にLi層、Ni3+層が存在する層状岩塩構造を有している。しかしながら、Ni3+はNi2+に還元されやすく、またNi2+のイオン半径(0.83Å)はLiのイオン半径(0.90Å)とほぼ等しいため、活物質合成時に生じるLi欠損部にNi2+が混入しやすくなる。LiサイトにNi2+が混入すると、局所的に電気化学的に不活性な構造ができるとともに、Li+の拡散を妨げるようになる。このため、結晶性の低い活物質を用いた場合には、電池充放電容量の減少や耐久性が低下する可能性がある。この結晶性の高さの指標として、上記の規定が用いられるのである。ここでは、結晶性を定量化する方法として、上述したようにX線回折を用いた結晶構造解析による(003)面と(104)面の回折ピークの強度の比と回折ピークの積分強度の比を用いた。これらのパラメータが上記の規定を満たすことで、結晶内の欠陥が少なくなり、電池充放電容量の減少や耐久性の低下を抑えることができる。なお、このような結晶性のパラメータは、原料、組成や焼成条件などによって制御されうる。
NMC複合酸化物などのリチウムニッケル系複合酸化物は、共沈法、スプレードライ法など、種々公知の方法を選択して調製することができる。本形態に係る複合酸化物の調製が容易であることから、共沈法を用いることが好ましい。具体的に、NMC複合酸化物の合成方法としては、例えば、特開2011−105588号に記載の方法のように、共沈法によりニッケル−コバルト−マンガン複合酸化物を製造した後、ニッケル−コバルト−マンガン複合酸化物と、リチウム化合物とを混合して焼成することにより得ることができる。
なお、正極活物質がスピネル系リチウムマンガン複合酸化物およびリチウムニッケル系複合酸化物を含む場合、これらの混合比は特に制限されないが、寿命特性およびコストの観点から、スピネル系リチウムマンガン複合酸化物の含有量は、リチウムニッケル系複合酸化物の含有量100質量%に対して、好ましくは15〜40質量%であり、より好ましくは30〜40質量%である。
正極活物質層は上述した正極活物質のほか、必要に応じて、導電助剤、バインダー、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性ポリマー、電解液など)、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩などのその他の添加剤をさらに含む。ただし、正極活物質層および後述の負極活物質層中、活物質として機能しうる材料の含有量は、85〜99.5質量%であることが好ましい。
(導電助剤)
導電助剤とは、正極活物質層または負極活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、炭素繊維などの炭素材料が挙げられる。活物質層が導電助剤を含むと、活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。
(バインダー)
正極活物質層に用いられるバインダーとしては、特に限定されないが、例えば、以下の材料が挙げられる。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびその塩、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのバインダーは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
電解質塩(リチウム塩)としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiTaF、LiSbF、LiAlCl、Li10Cl10、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF、LiSCN等の無機酸陰イオン塩、LiCFSO、Li(CFSON、LiBOB(リチウムビスオキサイドボレート)、LiBETI(リチウムビス(パーフルオロエチレンスルホニルイミド);Li(CSONとも記載)等の有機酸陰イオン塩などが挙げられる。これらの電解質塩は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。
正極活物質層および後述の負極活物質層中に含まれる成分の配合比は、特に限定されない。配合比は、リチウムイオン二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。各活物質層の厚さについても特に制限はなく、電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、各活物質層の厚さは、2〜100μm程度である。
[負極活物質層]
負極活物質層は活物質を含み、必要に応じて、導電助剤、バインダー、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性ポリマー、電解液など)、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩などのその他の添加剤をさらに含む。導電助剤、バインダー、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性ポリマー、電解液など)、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩などのその他の添加剤については、上記正極活物質層の欄で述べたものと同様である。
上述したように、負極活物質は、本発明に係る第1もしくは第2の負極活物質、または本発明に係る製造方法によって製造された負極活物質を必須に含む。負極活物質層に含まれる負極活物質に占める「本発明に係る第1もしくは第2の負極活物質、または本発明に係る製造方法によって製造された負極活物質」の割合は特に制限はないが、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。なお、「本発明に係る第1もしくは第2の負極活物質、または本発明に係る製造方法によって製造された負極活物質」以外の負極活物質としては、従来公知の材料が用いられうるが、その一例としては、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム−遷移金属複合酸化物(例えば、LiTi12)、金属材料、リチウム合金系負極材料などが挙げられる。
負極活物質のBET比表面積(SSA)は、好ましくは0.5〜10m/gであり、より好ましくは1.0〜6.0m/gであり、さらに好ましくは2.0〜4.2m/gである。負極活物質の比表面積が下限値以上の値であれば、内部抵抗の増大に伴う低温特性の悪化の虞が低減される。一方、上限値以下の値であれば、電解質との接触面積の増大に伴う副反応の進行を防止することが可能となる。特に、比表面積が大きすぎると初回充電時(電解液添加剤による皮膜が固定化されていない)に発生するガスが原因で、電極面内に局所的に過電流が流れて電極の面内に被膜の不均一が生じてしまい、寿命特性が悪くなることがあるが、上記上限値以下の値であれば、その虞も低減されうる。
負極活物質層においては、少なくとも水系バインダーを含むことが好ましい。水系バインダーは、結着力が高い。また、原料としての水の調達が容易であることに加え、乾燥時に発生するのは水蒸気であるため、製造ラインへの設備投資が大幅に抑制でき、環境負荷の低減を図ることができるという利点がある。
水系バインダーとは水を溶媒もしくは分散媒体とするバインダーをいい、具体的には熱可塑性樹脂、ゴム弾性を有するポリマー、水溶性高分子など、またはこれらの混合物が該当する。ここで、水を分散媒体とするバインダーとは、ラテックスまたはエマルジョンと表現される全てを含み、水と乳化または水に懸濁したポリマーを指し、例えば自己乳化するような系で乳化重合したポリマーラテックス類が挙げられる。
水系バインダーとしては、具体的にはスチレン系高分子(スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル共重合体等)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、(メタ)アクリル系高分子(ポリエチルアクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリメチルメタクリレート(メタクリル酸メチルゴム)、ポリプロピルメタクリレート、ポリイソプロピルアクリレート、ポリイソプロピルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヘキシルアクリレート、ポリヘキシルメタクリレート、ポリエチルヘキシルアクリレート、ポリエチルヘキシルメタクリレート、ポリラウリルアクリレート、ポリラウリルメタクリレート等)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブタジエン、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシド、ポリエピクロルヒドリン、ポリフォスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂;ポリビニルアルコール(平均重合度は、好適には200〜4000、より好適には、1000〜3000、ケン化度は好適には80モル%以上、より好適には90モル%以上)およびその変性体(エチレン/酢酸ビニル=2/98〜30/70モル比の共重合体の酢酸ビニル単位のうちの1〜80モル%ケン化物、ポリビニルアルコールの1〜50モル%部分アセタール化物等)、デンプンおよびその変性体(酸化デンプン、リン酸エステル化デンプン、カチオン化デンプン等)、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびこれらの塩等)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸(塩)、ポリエチレングリコール、(メタ)アクリルアミドおよび/または(メタ)アクリル酸塩の共重合体[(メタ)アクリルアミド重合体、(メタ)アクリルアミド−(メタ)アクリル酸塩共重合体、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜4)エステル−(メタ)アクリル酸塩共重合体など]、スチレン−マレイン酸塩共重合体、ポリアクリルアミドのマンニッヒ変性体、ホルマリン縮合型樹脂(尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂等)、ポリアミドポリアミンもしくはジアルキルアミン−エピクロルヒドリン共重合体、ポリエチレンイミン、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白、並びにマンナンガラクタン誘導体等の水溶性高分子などが挙げられる。これらの水系バインダーは1種単独で用いてもよいし、2種以上併用して用いてもよい。
上記水系バインダーは、結着性の観点から、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、およびメタクリル酸メチルゴムからなる群から選択される少なくとも1つのゴム系バインダーを含むことが好ましい。さらに、結着性が良好であることから、水系バインダーはスチレン−ブタジエンゴムを含むことが好ましい。
水系バインダーとしてスチレン−ブタジエンゴムを用いる場合、塗工性向上の観点から、上記水溶性高分子を併用することが好ましい。スチレン−ブタジエンゴムと併用することが好適な水溶性高分子としては、ポリビニルアルコールおよびその変性体、デンプンおよびその変性体、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびこれらの塩等)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸(塩)、またはポリエチレングリコールが挙げられる。中でも、バインダーとして、スチレン−ブタジエンゴムと、カルボキシメチルセルロース(塩)とを組み合わせることが好ましい。スチレン−ブタジエンゴムと、水溶性高分子との含有質量比は、特に制限されるものではないが、スチレン−ブタジエンゴム:水溶性高分子=1:0.1〜10であることが好ましく、0.5〜2であることがより好ましい。
負極活物質層に用いられるバインダーのうち、水系バインダーの含有量は80〜100質量%であることが好ましく、90〜100質量%であることが好ましく、100質量%であることが好ましい。
[セパレータ(電解質層)]
セパレータは、電解質を保持して正極と負極との間のリチウムイオン伝導性を確保する機能、および正極と負極との間の隔壁としての機能を有する。
セパレータの形態としては、例えば、上記電解質を吸収保持するポリマーや繊維からなる多孔性シートのセパレータや不織布セパレータ等を挙げることができる。
ポリマーまたは繊維からなる多孔性シートのセパレータとしては、例えば、微多孔質膜を用いることができる。該ポリマーまたは繊維からなる多孔性シートの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン;これらを複数積層した積層体(例えば、PP/PE/PPの3層構造をした積層体など)、ポリイミド、アラミド、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)等の炭化水素系樹脂、ガラス繊維などからなる微多孔質(微多孔膜)セパレータが挙げられる。
微多孔質(微多孔膜)セパレータの厚みとして、使用用途により異なることから一義的に規定することはできない。1例を示せば、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)、燃料電池自動車(FCV)などのモータ駆動用二次電池などの用途においては、単層あるいは多層で4〜60μmであることが望ましい。前記微多孔質(微多孔膜)セパレータの微細孔径は、最大で1μm以下(通常、数十nm程度の孔径である)であることが望ましい。
不織布セパレータとしては、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル;PP、PEなどのポリオレフィン;ポリイミド、アラミドなど従来公知のものを、単独または混合して用いる。また、不織布のかさ密度は、含浸させた高分子ゲル電解質により十分な電池特性が得られるものであればよく、特に制限されるべきものではない。さらに、不織布セパレータの厚さは、電解質層と同じであればよく、好ましくは5〜200μmであり、特に好ましくは10〜100μmである。
ここで、セパレータとしては多孔質基体に耐熱絶縁層が積層されたセパレータ(耐熱絶縁層付セパレータ)であることが好ましい。耐熱絶縁層は、無機粒子およびバインダーを含むセラミック層である。耐熱絶縁層付セパレータは融点または熱軟化点が150℃以上、好ましくは200℃以上である耐熱性の高いものを用いる。耐熱絶縁層を有することによって、温度上昇の際に増大するセパレータの内部応力が緩和されるため熱収縮抑制効果が得られうる。その結果、電池の電極間ショートの誘発を防ぐことができるため、温度上昇による性能低下が起こりにくい電池構成になる。また、耐熱絶縁層を有することによって、耐熱絶縁層付セパレータの機械的強度が向上し、セパレータの破膜が起こりにくい。さらに、熱収縮抑制効果および機械的強度の高さから、電池の製造工程でセパレータがカールしにくくなる。
耐熱絶縁層における無機粒子は、耐熱絶縁層の機械的強度や熱収縮抑制効果に寄与する。無機粒子として使用される材料は特に制限されない。例えば、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタンの酸化物(SiO、Al、ZrO、TiO)、水酸化物、および窒化物、ならびにこれらの複合体が挙げられる。これらの無機粒子は、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、マイカなどの鉱物資源由来のものであってもよいし、人工的に製造されたものであってもよい。また、これらの無機粒子は1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。これらのうち、コストの観点から、シリカ(SiO)またはアルミナ(Al)を用いることが好ましく、アルミナ(Al)を用いることがより好ましい。
耐熱性粒子の目付けは、特に限定されるものではないが、5〜15g/mであることが好ましい。この範囲であれば、十分なイオン伝導性が得られ、また、耐熱強度を維持する点で好ましい。
耐熱絶縁層におけるバインダーは、無機粒子どうしや、無機粒子と樹脂多孔質基体層とを接着させる役割を有する。当該バインダーによって、耐熱絶縁層が安定に形成され、また多孔質基体層および耐熱絶縁層の間の剥離を防止される。
耐熱絶縁層に使用されるバインダーは、特に制限はなく、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリロニトリル、セルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、アクリル酸メチルなどの化合物がバインダーとして用いられうる。このうち、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アクリル酸メチル、またはポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いることが好ましい。これらの化合物は、1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
耐熱絶縁層におけるバインダーの含有量は、耐熱絶縁層100質量%に対して、2〜20質量%であることが好ましい。バインダーの含有量が2質量%以上であると、耐熱絶縁層と多孔質基体層との間の剥離強度を高めることができ、セパレータの耐振動性を向上させることができる。一方、バインダーの含有量が20質量%以下であると、無機粒子の隙間が適度に保たれるため、十分なリチウムイオン伝導性を確保することができる。
耐熱絶縁層付セパレータの熱収縮率は、150℃、2gf/cm条件下、1時間保持後にMD、TDともに10%以下であることが好ましい。このような耐熱性の高い材質を用いることで、正極発熱量が高くなり電池内部温度が150℃に達してもセパレータの収縮を有効に防止することができる。その結果、電池の電極間ショートの誘発を防ぐことができるため、温度上昇による性能低下が起こりにくい電池構成になる。
(電解質)
上述したように、セパレータは、電解質を含む。電解質としては、かような機能を発揮できるものであれば特に制限されないが、液体電解質またはゲルポリマー電解質が用いられる。ゲルポリマー電解質を用いることにより、電極間距離の安定化が図られ、分極の発生が抑制され、耐久性(サイクル特性)が向上する。
液体電解質は、リチウムイオンのキャリヤーとしての機能を有する。液体電解質は、有機溶媒にリチウム塩が溶解した形態を有する。用いられる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類が例示される。また、リチウム塩としては、Li(CFSON、Li(CSON、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiTaF、LiCFSO等の電極の活物質層に添加されうる化合物が同様に採用されうる。
液体電解質は、上述した成分以外の添加剤をさらに含んでもよい。かような化合物の具体例としては、例えば、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、ジフェニルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、ジエチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1,2−ジビニルエチレンカーボネート、1−メチル−1−ビニルエチレンカーボネート、1−メチル−2−ビニルエチレンカーボネート、1−エチル−1−ビニルエチレンカーボネート、1−エチル−2−ビニルエチレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、ビニルオキシメチルエチレンカーボネート、アリルオキシメチルエチレンカーボネート、アクリルオキシメチルエチレンカーボネート、メタクリルオキシメチルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、プロパルギルエチレンカーボネート、エチニルオキシメチルエチレンカーボネート、プロパルギルオキシエチレンカーボネート、メチレンエチレンカーボネート、1,1−ジメチル−2−メチレンエチレンカーボネートなどが挙げられる。なかでも、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートが好ましく、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートがより好ましい。これらの環式炭酸エステルは、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
ゲルポリマー電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマー(ホストポリマー)に、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。電解質としてゲルポリマー電解質を用いることで電解質の流動性がなくなり、各層間のイオン伝導性を遮断することで容易になる点で優れている。マトリックスポリマー(ホストポリマー)として用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HEP)、ポリ(メチルメタクリレート(PMMA)およびこれらの共重合体等が挙げられる。
ゲル電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
[正極集電板および負極集電板]
集電板(25、27)を構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましい。軽量、耐食性、高導電性の観点から、より好ましくはアルミニウム、銅であり、特に好ましくはアルミニウムである。なお、正極集電板27と負極集電板25とでは、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料が用いられてもよい。
[正極リードおよび負極リード]
また、図示は省略するが、集電体11と集電板(25、27)との間を正極リードや負極リードを介して電気的に接続してもよい。正極および負極リードの構成材料としては、公知のリチウムイオン二次電池において用いられる材料が同様に採用されうる。なお、外装から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆することが好ましい。
[電池外装体]
電池外装体29としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。また、外部から掛かる発電要素への群圧を容易に調整することができ、所望の電解液層厚みへと調整容易であることから、外装体はアルミネートラミネートがより好ましい。
[セルサイズ]
図2は、二次電池の代表的な実施形態である扁平なリチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
図2に示すように、扁平なリチウムイオン二次電池50では、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極タブ58、負極タブ59が引き出されている。発電要素57は、リチウムイオン二次電池50の電池外装材52によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素57は、正極タブ58および負極タブ59を外部に引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素57は、先に説明した図2に示すリチウムイオン二次電池10の発電要素21に相当するものである。発電要素57は、正極(正極活物質層)15、電解質層17および負極(負極活物質層)13で構成される単電池層(単セル)19が複数積層されたものである。
なお、上記リチウムイオン二次電池は、積層型の扁平な形状のものに制限されるものではない。巻回型のリチウムイオン二次電池では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよいなど、特に制限されるものではない。上記円筒型の形状のものでは、その外装材に、ラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。好ましくは、発電要素がアルミニウムラミネートフィルムで外装される。当該形態により、軽量化が達成されうる。
また、図2に示すタブ58、59の取り出しに関しても、特に制限されるものではない。正極タブ58と負極タブ59とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし、正極タブ58と負極タブ59をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出しようにしてもよいなど、図2に示すものに制限されるものではない。また、巻回型のリチウムイオン電池では、タブに変えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
一般的な電気自動車では、電池格納スペースが170L程度である。このスペースにセルおよび充放電制御機器等の補機を格納するため、通常セルの格納スペース効率は50%程度となる。この空間へのセルの積載効率が電気自動車の航続距離を支配する因子となる。単セルのサイズが小さくなると上記積載効率が損なわれるため、航続距離を確保できなくなる。
したがって、本発明において、発電要素を外装体で覆った電池構造体は大型であることが好ましい。具体的には、ラミネートセル電池の短辺の長さが100mm以上であることが好ましい。かような大型の電池は、車両用途に用いることができる。ここで、ラミネートセル電池の短辺の長さとは、最も長さが短い辺を指す。短辺の長さの上限は特に限定されるものではないが、通常400mm以下である。
[体積エネルギー密度および定格放電容量]
一般的な電気自動車では、一回の充電による走行距離(航続距離)は100kmが市場要求である。かような航続距離を考慮すると、電池の体積エネルギー密度は157Wh/L以上であることが好ましく、かつ定格容量は20Wh以上であることが好ましい。
また、電極の物理的な大きさの観点とは異なる、大型化電池の観点として、電池面積や電池容量の関係から電池の大型化を規定することもできる。例えば、扁平積層型ラミネート電池の場合には、定格容量に対する電池面積(電池外装体まで含めた電池の投影面積)の比の値が5cm/Ah以上であり、かつ、定格容量が3Ah以上である電池においては、単位容量当たりの電池面積が大きいため、本実施形態の解決しようとする問題点がよりいっそう顕在化しやすい。したがって、本形態に係る非水電解質二次電池は、上述したような大型化された電池であることが、実施形態の作用効果の発現によるメリットがより大きいという点で、好ましい。さらに、矩形状の電極のアスペクト比は1〜3であることが好ましく、1〜2であることがより好ましい。なお、電極のアスペクト比は矩形状の正極活物質層の縦横比として定義される。アスペクト比をかような範囲とすることで、車両要求性能と搭載スペースを両立できるという利点がある。
[組電池]
組電池は、電池を複数個接続して構成した物である。詳しくは少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成されるものである。直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。
電池が複数、直列にまたは並列に接続して装脱着可能な小型の組電池を形成することもできる。そして、この装脱着可能な小型の組電池をさらに複数、直列に又は並列に接続して、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池を形成することもできる。何個の電池を接続して組電池を作製するか、また、何段の小型組電池を積層して大容量の組電池を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
[車両]
本発明の非水電解質二次電池は、長期使用しても放電容量が維持され、サイクル特性が良好である。さらに、体積エネルギー密度が高い。電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの車両用途においては、電気・携帯電子機器用途と比較して、高容量、大型化が求められるとともに、長寿命化が必要となる。したがって、上記非水電解質二次電池は、車両用の電源として、例えば、車両駆動用電源や
補助電源に好適に利用することができる。
具体的には、電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を車両に搭載することができる。本発明では、長期信頼性および出力特性に優れた高寿命の電池を構成できることから、こうした電池を搭載するとEV走行距離の長いプラグインハイブリッド電気自動車や、一充電走行距離の長い電気自動車を構成できる。電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を、例えば、自動車ならばハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)に用いることにより高寿命で信頼性の高い自動車となるからである。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、他の車両、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
以下、実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに何ら限定されるわけではない。
≪ラミネート電池の作製≫
[比較例1]
(1)正極の作製
正極活物質であるNMC複合酸化物(LiNi0.5Mn0.3Co0.2、平均二次粒径(D50)=10μm)を95質量%、導電助剤として導電性カーボンブラック(super−P)2質量%、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)3質量%、およびスラリー粘度調整溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量混合して、正極活物質スラリーを調製した。
得られた正極活物質スラリーを正極集電体であるアルミニウム箔(厚さ:20μm)の両面に塗布し、120℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形して、正極活物質層の片面塗工量(集電体を除く)18mg/cm、正極活物質層の密度3.1g/cmの正極を作製した。
(3)負極の作製
負極活物質として天然黒鉛(表面に非晶質コーティング層を有する、平均粒径(D50)=18μm、BET比表面積(SSA)=1.6m/g)を用い、この負極活物質96質量%、導電助剤として導電性カーボンブラック(super−P)1質量%、バインダーとしてカルボキシメチルセルロース(CMC)1質量%およびスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)2質量%を精製水中に分散させて、負極活物質スラリーを調製した。なお、ここで用いた負極活物質を「活物質(1)」とも称する。
得られた負極活物質スラリーを負極集電体である銅箔(厚さ:10μm)の両面に塗布し、120℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形して、負極活物質層の片面塗工量(集電体を除く)9.5g/cm、負極活物質層の密度1.5g/cmの負極を作製した。
(4)ラミネート電池の作製
上記で得られた正極(200mm四方にカット)および負極(202mm四方にカット)をそれぞれセパレータ(セルガード♯2500、ポリプロピレン微多孔膜、サイズ204mm四方)を介して交互に積層(正極3層、負極4層)することで積層体を作製した。この積層体の正負極にタブ(集電板)を溶接し、これをアルミラミネートフィルムで挟んで三辺を封止した。その後、所定量の非水電解液を注入し、残りの辺を真空封止して、ラミネート電池を作製した。なお、非水電解液としては、1.0M LiPFをエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合溶媒(体積比3:7、3EC7DEC)に溶解した溶液に、添加剤としてビニレンカーボネートを1質量%(電解質塩と混合溶媒との合計質量に対する質量百分率)の濃度で添加したものを用いた。また、非水電解液の注液量は、正極、負極およびセパレータの総空孔体積に対する非水電解質液量の比率(液係数L)が1.5となる量とした。
得られた比較例1のラミネート電池の定格容量(Ah)および定格容量に対する電池面積の比は、それぞれ4.5Ahおよび70cm/Ahであった。
[実施例1]
「(3)負極の作製」において、活物質(1)に代えて、活物質(1)に対して大気雰囲気下、90℃にて3時間の熱処理を施したものを負極活物質として用いたこと以外は、上述した比較例1と同様の手法により、ラミネート電池を作製した。
[実施例2]
「(3)負極の作製」において、活物質(1)に代えて、活物質(1)に対して大気雰囲気下、100℃にて3時間の熱処理を施したものを負極活物質として用いたこと以外は、上述した比較例1と同様の手法により、ラミネート電池を作製した。
[実施例3]
「(3)負極の作製」において、活物質(1)に代えて、活物質(1)に対して大気雰囲気下、180℃にて3時間の熱処理を施したものを負極活物質として用いたこと以外は、上述した比較例1と同様の手法により、ラミネート電池を作製した。
[実施例4]
「(3)負極の作製」において、活物質(1)に代えて、活物質(1)に対してアルゴン(Ar)雰囲気下、180℃にて3時間の熱処理を施したものを負極活物質として用いたこと以外は、上述した比較例1と同様の手法により、ラミネート電池を作製した。
[実施例5]
「(3)負極の作製」において、活物質(1)に代えて、活物質(1)に対して窒素(N)雰囲気下、180℃にて3時間の熱処理を施したものを負極活物質として用いたこと以外は、上述した比較例1と同様の手法により、ラミネート電池を作製した。
[実施例6]
「(3)負極の作製」において、活物質(1)に代えて、活物質(1)に対して減圧(100Pa)雰囲気下、180℃にて3時間の熱処理を施したものを負極活物質として用いたこと以外は、上述した比較例1と同様の手法により、ラミネート電池を作製した。
[実施例7]
「(3)負極の作製」において、活物質(1)に代えて、活物質(1)に対して大気雰囲気下、190℃にて3時間の熱処理を施したものを負極活物質として用いたこと以外は、上述した比較例1と同様の手法により、ラミネート電池を作製した。
[比較例2]
「(3)負極の作製」において、活物質(1)に代えて、活物質(1)に対して大気雰囲気下、200℃にて3時間の熱処理を施したものを負極活物質として用いたこと以外は、上述した比較例1と同様の手法により、ラミネート電池を作製した。
[比較例3]
「(3)負極の作製」において、活物質(1)に代えて、活物質(1)に対して大気雰囲気下、210℃にて3時間の熱処理を施したものを負極活物質として用いたこと以外は、上述した比較例1と同様の手法により、ラミネート電池を作製した。
得られた実施例1〜7および比較例2〜3のラミネート電池の定格容量(Ah)および定格容量に対する電池面積の比は全て、それぞれ4.5Ahおよび70cm/Ahであった。
≪ラミネート電池の評価≫
[負極活物質の物性評価]
各実施例および各比較例で用いた負極活物質に対して、電子科学製昇温脱離ガス分析装置TDS−1200型を用いて、脱離する二酸化炭素(CO)分子の量(個数)の測定および解析を行った。具体的には、昇温脱離ガス分析(TDS)により、50℃から400℃までの温度上昇において負極活物質から脱離した二酸化炭素分子(CO)の個数(個/2mg)を測定した。結果を下記の表1に示す。
なお、TDSにおいて、試料としての負極活物質をセットする試料ステージは石英製、試料皿はSiC製である。また、昇温速度は10℃/minとした。昇温は試料表面温度をモニターすることにより制御した。また、試料質量は2mgとし、実測質量で補正した。検出には四重極質量分析計を用い、印加電圧は1000Vとした。測定値の解析に用いた質量数[M/z]は、Hが2、HOが18、COが28、COが44とし、上記質量数に対応するガスは、それぞれ全て上記の各物質であるとした。なお、TDS中における試料温度(すなわち、負極活物質の温度)としては、雰囲気温度ではなく試料表面温度を用いた。
次に、レーザーラマン分光装置(日本分光製NRS−2100)を用いて、作製した負極活物質のR値を測定した。測定光源としてはアルゴンレーザーを用いた。測定は、試料としての原料炭素粒子にアルゴンレーザーを照射し、その散乱光スペクトルから1360cm−1(Dバンド)及び1580cm−1(Gバンド)のピーク強度であるI1360およびI1580を求め、これらのピーク強度の比(I1360/I1580)であるR値を算出した。なお、R値の測定は、後述する1000サイクル後容量維持率の測定後のラミネート電池を解体して得られた負極活物質に対しても行った。結果を下記の表1に示す。
[1000サイクル後容量維持率]
正極に対する電流密度を2mA/cmとして、各実施例および各比較例で作製したラミネート電池をカットオフ電圧4.15Vまで充電して初期充電容量とし、1時間の休止後カットオフ電圧3.0Vまで放電したときの容量を初期放電容量とした。この充放電サイクルを1000回繰返した。そして、初期放電容量に対する1000サイクル目の放電容量の割合を算出した。結果を下記の表1に示す。
[セル膨れの評価]
セル膨れの評価は、作製直後のラミネート電池と1000サイクル容量維持率の測定後のラミネート電池との体積を比較することにより行った。ここで、ラミネート電池の体積はアルキメデス法により測定した。結果を下記の表1に示す。なお、電子天秤としては、島津製作所製 UX6200Hを用いた。また、水中温度の測定には温度計YOKOGAWA TX1001、熱電対Type Kを用い、水はイオン交換水を使用した(推奨イオン電導度0.1〜100μS/cm)。さらに、測定環境温度は25℃±3℃とした。具体的な手順を以下に示す。
1)電子天秤にラミネート電池を吊るし、大気中での質量を測定する。
次いで、水槽を上昇させ、ラミネート電池の全部位を水中に沈め、水中での質量を測定する。そして、セル質量が安定するところを水中での質量とする(約2分)。
2)下記式(1)を用いてセル体積を算出する。なお、水の密度は体積測定中の温度での密度を使用する。
表1に示す結果から、ラマン分光法によるR値の1000サイクル充放電後の変化割合が所定の範囲内の値である負極活物質、または、昇温脱離ガス(CO)量が所定の範囲内の値であり、かつ、ラマン分光法による初期のR値が所定の範囲内の値である負極活物質を用いて非水電解質二次電池を構成することで、充放電の進行に伴うガス発生とこれに起因する電池の膨れを抑制しつつ、1000サイクルといった長期サイクル耐久性も向上させることが可能となることがわかる。
なお、活物質に対する熱処理がこれらのパラメータに影響を及ぼす因子として機能することもわかり、特に熱処理の際の温度条件がパラメータの変化に対して一定の傾向を示すことも見出された。
また、実施例および比較例で得られたラミネート電池は、定格容量および定格容量に対する電池面積の比よりもわかるように、大型、大容量および大面積のラミネート電池である。これより、本発明の効果は電池の容量やサイズにより限定されるものではないが、本発明は大型、大容量および大面積の非水電解質二次電池にとって特に有用であることが確認された。
10、50 リチウムイオン二次電池、
11 負極集電体、
12 正極集電体、
13 負極活物質層、
15 正極活物質層、
17 セパレータ、
19 単電池層、
21、57 発電要素、
25 負極集電板、
27 正極集電板、
29、52 電池外装材、
58 正極タブ、
59 負極タブ。

Claims (10)

  1. 炭素を主成分とする非水電解質二次電池用負極活物質であって、
    ラマン分光法により求めたR値(R)と、当該活物質を用いて1000サイクルの充放電を行った後のR値(R)とが、以下の関係:
    を満たすことを特徴とする、非水電解質二次電池用負極活物質。
  2. 炭素を主成分とする非水電解質二次電池用負極活物質であって、
    50℃から400℃までの温度上昇における昇温脱離ガス分析(TDS)において測定される、初期の脱離二酸化炭素分子(CO)数が1.5〜3.1×1015[個/2mg]であり、かつ、ラマン分光法により求めたR値が0.41〜0.45であることを特徴とする、非水電解質二次電池用負極活物質。
  3. 前記脱離二酸化炭素分子数が1.5〜2.4×1015[個/2mg]であり、かつ、ラマン分光法により求めたR値が0.41〜0.44である、請求項2に記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
  4. 前記脱離二酸化炭素分子数が1.5〜1.6×1015[個/2mg]であり、かつ、ラマン分光法により求めたR値が0.41〜0.42である、請求項3に記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
  5. 炭素を主成分とする非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法であって、
    活物質前駆体を熱処理することを含み、
    前記熱処理の前後の、50℃から400℃までの温度上昇における昇温脱離ガス分析(TDS)において測定される、初期の脱離二酸化炭素分子(CO)数を、それぞれN(熱処理前)およびN(熱処理後)とし、
    前記熱処理の前後の、ラマン分光法により求めたR値を、それぞれR(熱処理前)およびR(熱処理後)としたときに、以下の関係:
    を満たすことを特徴とする、非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法。
  6. 以下の関係:
    を満たす、請求項5に記載の非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法。
  7. 以下の関係:
    を満たす、請求項6に記載の非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法。
  8. 集電体と、
    前記集電体の表面に配置された、負極活物質を含む負極活物質層と、
    を有する非水電解質二次電池用負極であって、
    前記負極活物質が、請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極活物質、または請求項5〜7のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された非水電解質二次電池用負極活物質であることを特徴とする、非水電解質二次電池用負極。
  9. 請求項8に記載の非水電解質二次電池用負極を備えた、非水電解質二次電池。
  10. 定格容量に対する電池面積(電池外装体まで含めた電池の投影面積)の比の値が5cm/Ah以上であり、かつ、定格容量が3Ah以上である、請求項9に記載の非水電解質二次電池。
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