JP2021163542A - 非水電解質二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】サイクル耐久性をよりいっそう向上させた、層状岩塩型構造を有する正極活物質と濃厚電解液とを組み合わせて用いた非水電解質二次電池を提供する。【解決手段】層状岩塩型構造を有する正極活物質および電解液を含有する正極活物質層13を含む非水電解質二次電池用正極において、前記電解液が25℃における飽和リチウムイオン濃度の50%以上の濃度のリチウムイオンを含有するように構成するとともに、前記正極活物質の、平均粒子径から算出される幾何比表面積に対するBET比表面積の比の値として定義されるラフネスファクターの値を3以下とする。【選択図】図1

Description

本発明は、非水電解質二次電池に関する。
近年、環境・エネルギー問題の解決へ向けて、種々の電気自動車の普及が期待されている。これら電気自動車の普及の鍵を握るモータ駆動用電源などの車載電源として、二次電池の開発が鋭意行われている。二次電池としては、高エネルギー密度、高出力が期待できる非水電解質二次電池に注目が集まっている。
ここで、特許文献1には、高い容量を有している層状岩塩型構造を有する正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池の出力特性を向上させることを目的とした技術が開示されている。具体的に、特許文献1に記載の技術は、振動分光スペクトルが所定のプロファイルを示す電解液を、層状岩塩型構造を有する正極活物質と組み合わせて用いることで、リチウムイオン二次電池の容量特性および出力特性の両立を図っている。
特開2016−58365号公報
しかしながら、本発明者らが検討を行ったところ、特許文献1に記載の技術を用いた電池であっても、セル電圧が高い充放電条件下においてはサイクル耐久性が低下する場合があることが判明した。このように、特許文献1に記載の技術にもなお、改善の余地が存在するのが現状である。
そこで本発明は、層状岩塩型構造を有する正極活物質と25℃における飽和リチウムイオン濃度の50%以上の濃度のリチウムイオンを含有する電解液(濃厚電解液)とを組み合わせて用いた非水電解質二次電池において、サイクル耐久性をよりいっそう向上させうる手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その過程で、上述したようなセル電圧が高い充放電条件下におけるサイクル耐久性の低下は、層状岩塩型構造を有する正極活物質からの遷移金属の溶出が原因となっていることを見出した。そして、この知見に基づき、本発明者らは、正極活物質の表面の状態を平滑に制御することで、セル電圧が高い充放電条件下であってもサイクル耐久性の低下を抑制することが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の一形態によれば、層状岩塩型構造を有する正極活物質および電解液を含有する正極活物質層を含む非水電解質二次電池用正極が提供される。ここで、当該正極においては、前記電解液が25℃における飽和リチウムイオン濃度の50%以上の濃度のリチウムイオンを含有し、かつ、前記正極活物質の、平均粒子径から算出される幾何比表面積に対するBET比表面積の比の値として定義されるラフネスファクターの値が3以下である点に特徴がある。
本発明によれば、層状岩塩型構造を有する正極活物質と濃厚電解液とを組み合わせて用いた非水電解質二次電池において、サイクル耐久性をよりいっそう向上させることが可能である。
図1は、本発明の一実施形態である扁平型(積層型)の非双極型(内部並列接続タイプ)二次電池(積層型二次電池)の全体構造を模式的に表した断面概略図である。 図2は、本発明の他の実施形態である双極型二次電池を模式的に表した断面図である。
本発明の一形態は、層状岩塩型構造を有する正極活物質および電解液を含有する正極活物質層を含む非水電解質二次電池用正極であって、前記電解液が25℃における飽和リチウムイオン濃度の50%以上の濃度のリチウムイオンを含有し、前記正極活物質の、平均粒子径から算出される幾何比表面積に対するBET比表面積の比の値として定義されるラフネスファクターの値が3以下である、非水電解質二次電池用正極である。本形態に係る非水電解質二次電池用正極によれば、層状岩塩型構造を有する正極活物質と濃厚電解液とを組み合わせて用いた非水電解質二次電池において、サイクル耐久性をよりいっそう向上させることが可能である。
以下、図面を参照しながら、上述した本形態の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)、相対湿度40〜50%RHの条件で行う。
図1は、本発明の一実施形態である扁平型(積層型)の非双極型(内部並列接続タイプ)二次電池(以下、単に「積層型二次電池」とも称する)の全体構造を模式的に表した断面概略図である。
図1に示すように、本実施形態の積層型二次電池10aは、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、ラミネートフィルム29の内部に封止された構造を有する。ここで、発電要素21は、正極集電体11’の両面に正極活物質層13が配置された正極と、電解液を含有するセパレータからなる電解質層17と、負極集電体12の両面に負極活物質層15が配置された負極とを積層した構成を有している。具体的には、1つの正極活物質層13とこれに隣接する負極活物質層15とが、電解質層17を介して対向するようにして、負極、電解質層及び正極がこの順に積層されている。
これにより、隣接する正極、電解質層、及び負極は、1つの単電池層19を構成する。したがって、図1に示す積層型二次電池10aは、単電池層19が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。なお、発電要素21の両最外層に位置する最外層の正極集電体には、いずれも片面のみに正極活物質層13が配置されているが、両面に活物質層が設けられてもよい。すなわち、片面にのみ活物質層を設けた最外層専用の集電体とするのではなく、両面に活物質層がある集電体をそのまま最外層の集電体として用いてもよい。また、図1とは正極及び負極の配置を逆にすることで、発電要素21の両最外層に最外層の負極集電体が位置するようにし、該最外層の負極集電体の片面又は両面に負極活物質層が配置されるようにしてもよい。
正極集電体11’及び負極集電体12には、各電極(正極及び負極)と導通される正極集電板25及び負極集電板27がそれぞれ取り付けられ、ラミネートフィルム29の端部に挟まれるようにしてラミネートフィルム29の外部に導出される構造を有している。正極集電板25及び負極集電板27は、それぞれ必要に応じて正極端子リード及び負極端子リード(図示せず)を介して、各電極の正極集電体11’及び負極集電体12に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられていてもよい。
図2は、本発明の他の実施形態である双極型二次電池を模式的に表した断面図である。図2に示す双極型二次電池10bは、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、電池外装体であるラミネートフィルム29の内部に封止された構造を有する。なお、本明細書では、双極型リチウムイオン二次電池を単に「双極型二次電池」とも称し、双極型リチウムイオン二次電池用電極を単に「双極型電極」と称することがある。
図2に示すように、本形態の双極型二次電池10bの発電要素21は、集電体11の一方の面に電気的に結合した正極活物質層13が形成され、集電体11の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層15が形成された複数の双極型電極23を有する。各双極型電極23は、電解質層17を介して積層されて発電要素21を形成する。この際、一の双極型電極23の正極活物質層13と前記一の双極型電極23に隣接する他の双極型電極23の負極活物質層15とが電解質層17を介して向き合うように、各双極型電極23および電解質層17が交互に積層されている。すなわち、一の双極型電極23の正極活物質層13と前記一の双極型電極23に隣接する他の双極型電極23の負極活物質層15との間に電解質層17が挟まれて配置されている。
隣接する正極活物質層13、電解質層17、および負極活物質層15は、一つの単電池層19を構成する。したがって、双極型二次電池10aは、単電池層19が積層されてなる構成を有するともいえる。また、単電池層19の外周部にはシール部(絶縁層)31が配置されている。これにより、電解質層17からの電解液の漏れによる液絡を防止し、電池内で隣り合う集電体11どうしが接触したり、発電要素21における単電池層19の端部の僅かな不揃いなどに起因する短絡が起こったりするのを防止している。なお、発電要素21の最外層に位置する正極側の最外層集電体11aには、片面のみに正極活物質層13が形成されている。また、発電要素21の最外層に位置する負極側の最外層集電体11bには、片面のみに負極活物質層15が形成されている。
さらに、図2に示す双極型二次電池10aでは、正極側の最外層集電体11aに隣接するように正極集電板(正極タブ)25が配置され、これが延長されて電池外装体であるラミネートフィルム29から導出している。一方、負極側の最外層集電体11bに隣接するように負極集電板(負極タブ)27が配置され、同様にこれが延長されてラミネートフィルム29から導出している。
なお、単電池層19の積層回数は、所望する電圧に応じて調節する。また、双極型二次電池10では、電池の厚みを極力薄くしても十分な出力が確保できれば、単電池層19の積層回数を少なくしてもよい。双極型二次電池10bでも、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、発電要素21を電池外装体であるラミネートフィルム29に減圧封入し、正極集電板25および負極集電板27をラミネートフィルム29の外部に取り出した構造とするのがよい。
以下、本形態に係る非水電解質二次電池用正極の主要な構成部材について説明する。本形態に係る非水電解質二次電池用正極は、集電体および正極活物質層を含む。また、正極活物質層は、層状岩塩型構造を有する正極活物質および電解液を必須に含み、必要に応じて、導電助剤、導電部材、バインダなどのその他の添加剤をさらに含む。そして、電解液は、通常、非水溶媒および高濃度の電解質塩(ここでは、リチウム塩)を含む。
[集電体]
集電体は、電極活物質層からの電子の移動を媒介する機能を有する。集電体を構成する材料に特に制限はない。集電体の構成材料としては、例えば、金属や、導電性を有する樹脂が採用されうる。
具体的には、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材などが用いられてもよい。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位、集電体へのスパッタリングによる負極活物質の密着性等の観点からは、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケルが好ましい。
また、後者の導電性を有する樹脂としては、非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂が挙げられる。
非導電性高分子材料としては、例えば、ポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)など)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはポリスチレン(PS)などが挙げられる。かような非導電性高分子材料は、優れた耐電位性または耐溶媒性を有しうる。
上記の導電性高分子材料または非導電性高分子材料には、必要に応じて導電性フィラーが添加されうる。特に、集電体の基材となる樹脂が非導電性高分子のみからなる場合は、樹脂に導電性を付与するために必然的に導電性フィラーが必須となる。
導電性フィラーは、導電性を有する物質であれば特に制限なく用いることができる。例えば、導電性、耐電位性、またはリチウムイオン遮断性に優れた材料として、金属および導電性カーボンなどが挙げられる。金属としては、特に制限はないが、Ni、Ti、Al、Cu、Pt、Fe、Cr、Sn、Zn、In、およびSbからなる群から選択される少なくとも1種の金属もしくはこれらの金属を含む合金または金属酸化物を含むことが好ましい。また、導電性カーボンとしては、特に制限はない。好ましくは、アセチレンブラック、バルカン(登録商標)、ブラックパール(登録商標)、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック(登録商標)、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、およびフラーレンからなる群より選択される少なくとも1種を含むものである。
導電性フィラーの添加量は、集電体に十分な導電性を付与できる量であれば特に制限はなく、一般的には、集電体の全質量100質量%に対して5〜80質量%である。
なお、集電体は、単独の材料からなる単層構造であってもよいし、あるいは、これらの材料からなる層を適宜組み合わせた積層構造であっても構わない。集電体の軽量化の観点からは、少なくとも導電性を有する樹脂からなる導電性樹脂層を含むことが好ましい。また、単電池層間のリチウムイオンの移動を遮断する観点からは、集電体の一部に金属層を設けてもよい。
[正極活物質層]
正極活物質層は、充電時にリチウムイオン等のイオンを放出し、放電時にリチウムイオン等のイオンを吸蔵できる正極活物質を含む。具体的には、上述したように、正極活物質層は、層状岩塩型構造を有する正極活物質を含む。層状岩塩型構造を有する正極活物質は一般に高い容量を有している。したがって、層状岩塩型構造を有する正極活物質を用いることで、非水電解質二次電池の電池容量を向上させることができる。
(層状岩塩型構造を有する正極活物質)
層状岩塩型構造を有する正極活物質としては、例えば、LiCoO、LiNiO、LiMnO、Li(Ni−Mn−Co)O、Li(Ni−Co−Al)Oおよびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム−遷移金属複合酸化物が挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。より好ましくはリチウムとニッケルとを含有する複合酸化物が用いられ、さらに好ましくはLi(Ni−Mn−Co)Oおよびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの(以下、単に「NMC複合酸化物」とも称する)またはLi(Ni−Co−Al)Oおよびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの(以下、単に「NCA複合酸化物」とも称する)が用いられ、特に好ましくはNMC複合酸化物が用いられる。NMC複合酸化物およびNCA複合酸化物は、リチウム原子層と遷移金属原子層とが酸素原子層を介して交互に積み重なった層状結晶構造を持ち、遷移金属Mの1原子あたり1個のLi原子が含まれ、取り出せるLi量が、スピネル系リチウムマンガン酸化物の2倍、つまり供給能力が2倍になり、高い容量を持つことができる。
NMC複合酸化物およびNCA複合酸化物には、上述したように、遷移金属元素の一部が他の金属元素により置換されている複合酸化物も含む。その場合の他の元素としては、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Cr、Fe、B、Ga、In、Si、Mo、Y、Sn、V、Cu、Ag、Znなどが挙げられ、好ましくは、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crであり、より好ましくは、Ti、Zr、P、Al、Mg、Crであり、サイクル特性向上の観点から、さらに好ましくは、Ti、Zr、Al、Mg、Crである。ただし、NCA複合酸化物の遷移金属元素を置換しうる他の金属元素はAl以外のものである。
NMC複合酸化物は、理論放電容量が高いことから、好ましくは、一般式(1):LiNiMnCo(但し、式中、a、b、c、d、xは、0.9≦a≦1.2、0<b<1、0<c≦0.5、0<d≦0.5、0≦x≦0.3、b+c+d+x=1を満たす。MはTi、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crから選ばれる元素で少なくとも1種類である)で表される組成を有する。ここで、aは、Liの原子比を表し、bは、Niの原子比を表し、cは、Mnの原子比を表し、dは、Coの原子比を表し、xは、Mの原子比を表す。サイクル特性の観点からは、一般式(1)において、0.4≦b≦0.6であることが好ましい。なお、各元素の組成は、例えば、プラズマ(ICP)発光分析法により測定できる。
一般に、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)は、材料の純度向上および電子伝導性向上という観点から、容量および出力特性に寄与することが知られている。Ti等は、結晶格子中の遷移金属を一部置換するものである。サイクル特性の観点からは、遷移元素の一部が他の金属元素により置換されていることが好ましく、特に一般式(1)において0<x≦0.3であることが好ましい。Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、SrおよびCrからなる群から選ばれる少なくとも1種が固溶することにより結晶構造が安定化されるため、その結果、充放電を繰り返しても電池の容量低下が防止でき、優れたサイクル特性が実現し得ると考えられる。
より好ましい実施形態としては、一般式(1)において、b、cおよびdが、0.44≦b≦0.51、0.27≦c≦0.31、0.19≦d≦0.26であることが、容量と寿命特性とのバランスを向上させるという観点からは好ましい。例えば、LiNi0.5Mn0.3Co0.2は、一般的な民生電池で実績のあるLiCoO、LiMn、LiNi1/3Mn1/3Co1/3などと比較して、単位重量あたりの容量が大きく、エネルギー密度の向上が可能となることでコンパクトかつ高容量の電池を作製できるという利点を有しており、航続距離の観点からも好ましい。なお、より容量が大きいという点ではLiNi0.8Co0.1Al0.1がより有利である。他方、LiNi0.5Mn0.3Co0.2はLiNi1/3Mn1/3Co1/3並みに優れた寿命特性を有している。
なお、本形態に係る非水電解質二次電池用正極において、正極活物質は、層状岩塩型構造を有する正極活物質以外の正極活物質(例えば、リチウム−遷移金属リン酸化合物、リチウム−遷移金属硫酸化合物など)をさらに含んでもよい。ただし、本形態において、正極活物質100質量%に占める層状岩塩型構造を有する正極活物質の含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、いっそう好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。
本形態に係る非水電解質二次電池用正極においては、正極活物質のラフネスファクターが3以下である点に特徴がある。ここで、「ラフネスファクター」とは、正極活物質の表面の平滑性の指標となるパラメータであり、後述する実施例の欄に記載されている手法により、正極活物質の「平均粒子径から算出される幾何比表面積」に対する「BET比表面積」の比の値(=BET比表面積/幾何比表面積)として算出される。本形態に係る非水電解質二次電池用正極を用いた非水電解質二次電池によれば、正極活物質のラフネスファクターが3以下に制御されていることにより、層状岩塩型構造を有する正極活物質および後述する濃厚電解液を用い、かつ、セル電圧が高い条件下で充放電を行った場合であっても、サイクル耐久性の低下を抑制することができるという利点がある。なお、ラフネスファクターの値は、好ましくは2.7以下であり、より好ましくは2.4以下であり、さらに好ましくは2.3以下であり、いっそう好ましくは2.2以下である。一方、ラフネスファクターの下限値は、1.0以上である。また、正極活物質が2種以上の混合物からなる場合には、まず、当該混合物を構成する各正極活物質について上記の手法によりBET比表面積および幾何比表面積をそれぞれ測定し、得られた値を混合比で足し合わせることにより当該混合物のBET比表面積および幾何比表面積を算出する。そして、これらの算出値から上記と同様の手法によりラフネスファクターを算出するものとする。
ここで、本発明者らの検討によれば、上述したように、従来の正極活物質を用いた電池においては、セル電圧が高い条件下で充放電を行うと、層状岩塩型構造を有する正極活物質から遷移金属が溶出することによってサイクル耐久性の低下が引き起こされていることが判明した。これに対し、本形態に係る非水電解質二次電池用正極を適用した電池においては、正極活物質粒子の表面の平滑性が向上している結果、従来の技術に係る正極のような高いセル電圧の条件下であっても遷移金属の溶出が防止されることにより、サイクル耐久性の向上が達成されているものと推測されている。
正極活物質層に含まれる正極活物質の平均粒子径は特に制限されないが、高出力化の観点からは、好ましくは1〜10μmであり、より好ましくは1.5〜6μmであり、さらに好ましくは2〜5μmである。なお、正極活物質の平均粒子径の値としては、後述する実施例の欄に記載の手法により測定された値を採用するものとする。
よりいっそうサイクル耐久性を向上させるという観点からは、本形態に係る非水電解質二次電池用正極において、正極活物質の結晶子径は、好ましくは1μm以上である。ここで、正極活物質の結晶子径が1μm以上であるか否かについては、後述する実施例の欄に記載の手法により判定することができる。また、結晶子径の値をより正確に測定することが可能であれば、そのようにして測定された結晶子径の値から判定してもよい。また、上記と同様の理由から、正極活物質を構成する粒子に占める単一の結晶子からなる粒子の個数割合は、好ましくは10%以上であり、より好ましくは20%以上であり、さらに好ましくは30%以上である。
正極活物質のラフネスファクターの値を3以下に制御する手法については特に制限はなく、正極活物質粒子の表面の平滑性を制御しうる従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、NMC複合酸化物を製造する手法の一例として、まず、(1)前駆体である(NiCoMn)(OH)を共沈法により合成する。具体的には目的とする化学量論比の硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガン、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム等の原料を含む水溶液を所定の時間撹拌する。沈殿析出物をろ過分離した後、例えば80℃程度の温度で8〜15時間程度乾燥して前駆体を得る。次いで、(2)得られた前駆体を600〜800℃程度の温度条件下にて3〜7時間程度焼成すると、NiCoMnが得られる。その後、(3)得られた酸化物に1〜1.2倍の量論比となるようにリチウム塩(例えば、炭酸リチウム)を加え、ボールミルで粉砕・混合する。そして、(4)大気中または酸素雰囲気下、600〜800℃程度の温度条件下で3〜5時間程度焼成した後、さらに750〜1000℃程度の温度で2〜12時間程度焼成を行う。最後に、(5)このようにして焼成した粉末を水洗して残留したリチウム塩を除去した後、80℃程度の温度で10〜15時間程度乾燥することにより、NMC複合酸化物を得ることができる。なお、(6)必要に応じて、ボールミルでサンプルを粉砕した後、大気中または酸素雰囲気下で500〜1000℃、3〜5時間の再焼成を行ってもよい。この際、NMC複合酸化物のラフネスファクターの値を制御するためには、(2)の焼成温度や時間、(3)の粉砕の程度、(4)の焼成時間・温度、(6)の粉砕の程度を調整することで、一次粒子のサイズを制御可能である。また、(6)の再焼成を長時間・高温で行うことにより、粉砕後の表面がより平滑となりラフネスファクターが低下しうる。
また、上述したように正極活物質の結晶子径を例えば1μm以上と大きい値に制御したり、正極活物質を構成する粒子に占める単一の結晶子からなる粒子の個数割合を上記の好ましい範囲に制御したりする手法として、特許第6574222号、特許第5702289号といった特許文献や、Solid State Ionics,Volume 345,February 2020,115200、Journal of The Electrochemical Society,165(5)A1038−A1045(2018)といった非特許文献に開示された手法を参照することができる。
正極活物質層における正極活物質の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、60〜99質量%の範囲内であることが好ましく、80〜98質量%の範囲内であることがより好ましい。
本形態に係る非水電解質二次電池用正極において、正極活物質層は、上述したように、層状岩塩型構造を有する正極活物質に加えて、電解液を含む。
電解液(液体電解質)は、リチウムイオンのキャリヤーとしての機能を有する。電解液層を構成する電解液(液体電解質)は、有機溶媒にリチウム塩が溶解した形態を有する。用いられる有機溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、プロピオン酸メチル(MP)、酢酸メチル(MA)、ギ酸メチル(MF)、4−メチルジオキソラン(4MeDOL)、ジオキソラン(DOL)、2−メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、およびγ−ブチロラクトン(GBL)などが挙げられる。中でも、有機溶媒は、急速充電特性および出力特性をより向上できるとの観点から、好ましくは鎖状カーボネートであり、より好ましくはジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジメチルカーボネート(DMC)からなる群から選択される少なくとも1種であり、より好ましくはエチルメチルカーボネート(EMC)およびジメチルカーボネート(DMC)から選択される。
リチウム塩としては、Li(FSON(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド;LiFSI)、Li(CSON、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO等が挙げられる。中でも、リチウム塩は、電池出力および充放電サイクル特性の観点から、好ましくはリチウムイオンの対アニオンとしてイミド基含有アニオンを含むものであり、より好ましくはLi(FSON(LiFSI)である。
電解液は、上述した成分以外の添加剤をさらに含有してもよい。かような化合物の具体例としては、例えば、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、ジフェニルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、ジエチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1,2−ジビニルエチレンカーボネート、1−メチル−1−ビニルエチレンカーボネート、1−メチル−2−ビニルエチレンカーボネート、1−エチル−1−ビニルエチレンカーボネート、1−エチル−2−ビニルエチレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、ビニルオキシメチルエチレンカーボネート、アリルオキシメチルエチレンカーボネート、アクリルオキシメチルエチレンカーボネート、メタクリルオキシメチルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、プロパルギルエチレンカーボネート、エチニルオキシメチルエチレンカーボネート、プロパルギルオキシエチレンカーボネート、メチレンエチレンカーボネート、1,1−ジメチル−2−メチレンエチレンカーボネートなどが挙げられる。これらの添加剤は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、添加剤を電解液に使用する場合の使用量は、適宜調整することができる。
本形態に係る非水電解質二次電池は、電解質塩を高い濃度で含有している(すなわち、濃厚電解液である)点に特徴がある。すなわち、本形態に係る非水電解質二次電池用正極は、濃度が高い電解液を用いることを特徴とするものである。具体的に、本形態に係る非水電解質二次電池用正極を構成する正極活物質層に含まれる電解液は、25℃における飽和リチウムイオン濃度の50%以上の濃度のリチウムイオンを含有するものである。なお、25℃における飽和リチウムイオン濃度は、25℃において非水溶媒にリチウム塩を溶解させてゆき、溶けきれなくなって析出が生じる時点を指標として測定することができる。また、上記電解液は、好ましくは25℃における飽和リチウムイオン濃度の53%以上の濃度のリチウムイオンを含有し、より好ましくは電解液は、25℃における飽和リチウムイオン濃度の56%以上の濃度のリチウムイオンを含有し、さらに好ましくは電解液は、25℃における飽和リチウムイオン濃度の60%以上の濃度のリチウムイオンを含有する。この濃度の上限値について特に制限はないが、通常は95%以下であり、好ましくは90%以下であり、さらに好ましくは85%以下である。
なお、本形態において、電池のレート特性やサイクル耐久性といった電池特性を向上させるという観点から、電解液におけるリチウム塩の濃度は、好ましくは3モル/L以上であり、より好ましくは3.5モル/L以上であり、さらに好ましくは4モル/L以上である。一方、電解液におけるリチウム塩の濃度の上限値について特に制限はないが、通常は6モル/L以下であればよい。
正極活物質層は上述したような正極活物質を含み、必要に応じて、導電助剤、導電部材、バインダなどのその他の添加剤をさらに含む。
前記導電助剤とは、活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、アセチレンブラック等のカーボンブラックなどの炭素材料が挙げられる。正極活物質層が導電助剤を含むと、正極活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。
導電部材は、正極活物質層中で電子伝導パスを形成する機能を有する。特に、導電部材の少なくとも一部が、正極活物質層の電解質層側に接触する第1主面から集電体側に接触する第2主面までを電気的に接続する導電通路を形成していることが好ましい。このような形態を有することで、正極活物質層中の厚さ方向の電子移動抵抗がさらに低減される。その結果、電池の高レートでの出力特性がよりいっそう向上しうる。なお、導電部材の少なくとも一部が、正極活物質層の電解質層側に接触する第1主面から集電体側に接触する第2主面までを電気的に接続する導電通路を形成しているか否かは、SEMや光学顕微鏡を用いて正極活物質層の断面を観察することにより確認することができる。
導電部材は、繊維状の形態を有する導電性繊維であることが好ましい。具体的には、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を、導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。なかでも、導電性に優れ、軽量であることから炭素繊維が好ましい。
正極活物質層に用いられる任意成分のバインダとしては、特に限定されないが、例えば、以下の材料が挙げられる。
ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(水素原子が他のハロゲン元素にて置換された化合物を含む)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリエーテルニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ポリイミド、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミドであることがより好ましい。
また、本形態において、正極活物質層に含まれうる、導電助剤、導電部材、バインダなどのその他の添加剤の配合比は、特に限定されない。それらの配合比は、非水電解質二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。
本形態の非水電解質二次電池用正極において、正極活物質層の厚さは特に制限されず、電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、正極活物質層の厚さは、通常1〜1000μm程度、好ましくは20〜800μmであり、より好ましくは30〜500μmであり、さらに好ましくは40〜200μmである。正極活物質層の厚さが大きいほど、十分な容量(エネルギー密度)を発揮するための正極活物質を保持することが可能となる。一方、正極活物質層の厚さが小さいほど、放電レート特性が向上しうる。
正極(正極活物質層)は、通常のスラリーを塗布(コーティング)する方法によって形成することができる。
本形態に係る非水電解質二次電池用正極は、非水電解質二次電池の構成部材として用いられる。すなわち、本発明の他の形態によれば、上述した本発明の一形態に係る非水電解質二次電池用正極を有する発電要素を備えた、非水電解質二次電池が提供される。非水電解質二次電池の正極以外の構成要素について、以下に簡単に説明する。
[負極活物質層]
負極活物質層は、放電時にリチウムイオン等のイオンを放出し、充電時にリチウムイオン等のイオンを吸蔵できる負極活物質を含む。負極活物質の種類としては、特に制限されないが、炭素材料、金属酸化物および金属活物質が挙げられる。炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等が挙げられる。また、金属酸化物としては、例えば、Nb、LiTi12等が挙げられる。さらに、ケイ素系負極活物質やスズ系負極活物質が用いられてもよい。ここで、ケイ素およびスズは第14族元素に属し、非水電解質二次電池の容量を大きく向上させうる負極活物質であることが知られている。これらの単体は単位体積(質量)あたり多数の電荷担体(リチウムイオン等)を吸蔵および放出しうることから、高容量の負極活物質となる。ここで、ケイ素系負極活物質としては、Si単体を用いることが好ましい。また同様に、Si相とケイ素酸化物相との2相に不均化されたSiO(0.3≦x≦1.6)などのケイ素酸化物を用いることも好ましい。この際、xの範囲は0.5≦x≦1.5であることがより好ましく、0.7≦x≦1.2であることがさらに好ましい。さらには、ケイ素を含有する合金(ケイ素含有合金系負極活物質)が用いられてもよい。一方、スズ元素を含む負極活物質(スズ系負極活物質)としては、Sn単体、スズ合金(Cu−Sn合金、Co−Sn合金)、アモルファススズ酸化物、スズケイ素酸化物等が挙げられる。このうち、アモルファススズ酸化物としてはSnB0.40.63.1が例示される。また、スズケイ素酸化物としてはSnSiOが例示される。また、負極活物質として、リチウムを含有する金属を用いてもよい。このような負極活物質は、リチウムを含有する活物質であれば特に限定されず、金属リチウムのほか、リチウム含有合金が挙げられる。リチウム含有合金としては、例えば、Liと、In、Al、SiおよびSnの少なくとも1種との合金が挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。本発明は、充放電時の負極活物質の膨張収縮が大きい場合に特に優れた効果を奏するものである。このような観点と、高容量であるという点で、負極活物質は、炭素材料、金属リチウム、ケイ素系負極活物質またはスズ系負極活物質を含むことが好ましい。
負極活物質の形状は、例えば、粒子状(球状、繊維状)、薄膜状等が挙げられる。負極活物質が粒子形状である場合、その平均粒径(D50)は、例えば、1nm〜100μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10nm〜50μmの範囲内であり、さらに好ましくは100nm〜20μmの範囲内であり、特に好ましくは1〜20μmの範囲内である。なお、本明細書において、活物質の平均粒径(D50)の値は、レーザー回折散乱法によって測定することができる。
負極活物質層における負極活物質の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、60〜99質量%の範囲内であることが好ましく、80〜98質量%の範囲内であることがより好ましい。
また、負極活物質層は、正極活物質層について上述したのと同様に電解液をさらに含み、必要に応じて、導電助剤、導電部材、バインダなどのその他の添加剤をさらに含む。
本形態の非水電解質二次電池において、負極活物質層の厚さは特に制限されず、電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、負極活物質層の厚さは、通常1〜1000μm程度、好ましくは10〜800μmであり、より好ましくは15〜600μmであり、さらに好ましくは20〜200μmである。負極活物質層の厚さが大きいほど、十分な容量(エネルギー密度)を発揮するための負極活物質を保持することが可能となる。一方、負極活物質層の厚さが小さいほど、放電レート特性が向上しうる。
負極(負極活物質層)は、通常のスラリーを塗布(コーティング)する方法によって形成することができる。
[電解質層]
本形態に係る非水電解質二次電池の電解質層は、セパレータに電解液が含浸されてなる構成を有する。電解液(液体電解質)の具体的な構成および好ましい実施形態については、正極の欄において上述した通りであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
本形態に係る非水電解質二次電池において、電解質層にはセパレータが用いられる。セパレータは、電解質を保持して正極と負極との間のリチウムイオン伝導性を確保する機能、および正極と負極との間の隔壁としての機能を有する。
セパレータの形態としては、例えば、上記電解液を吸収保持するポリマーや繊維からなる多孔性シートのセパレータや不織布セパレータ等を挙げることができる。
ポリマーないし繊維からなる多孔性シートのセパレータとしては、例えば、微多孔質(微多孔膜)を用いることができる。該ポリマーないし繊維からなる多孔性シートの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン;これらを複数積層した積層体(例えば、PP/PE/PPの3層構造をした積層体など)、ポリイミド、アラミド、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)等の炭化水素系樹脂、ガラス繊維などからなる微多孔質(微多孔膜)セパレータが挙げられる。
微多孔質(微多孔膜)セパレータの厚みとして、使用用途により異なることから一義的に規定することはできない。1例を示せば、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)、燃料電池自動車(FCV)などのモータ駆動用二次電池などの用途においては、単層あるいは多層で4〜60μmであることが望ましい。前記微多孔質(微多孔膜)セパレータの微細孔径は、最大で1μm以下(通常、数十nm程度の孔径である)であることが望ましい。
不織布セパレータとしては、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル;PP、PEなどのポリオレフィン;ポリイミド、アラミドなど従来公知のものを、単独または混合して用いる。また、不織布のかさ密度は、含浸させた高分子ゲル電解質により十分な電池特性が得られるものであればよく、特に制限されるべきものではない。さらに、不織布セパレータの厚さは、電解質層と同じであればよく、好ましくは5〜200μmであり、特に好ましくは10〜100μmである。
また、セパレータとしては多孔質基体に耐熱絶縁層が積層されたセパレータ(耐熱絶縁層付セパレータ)であることが好ましい。耐熱絶縁層は、無機粒子およびバインダを含むセラミック層である。耐熱絶縁層付セパレータは融点または熱軟化点が150℃以上、好ましくは200℃以上である耐熱性の高いものを用いる。耐熱絶縁層を有することによって、温度上昇の際に増大するセパレータの内部応力が緩和されるため熱収縮抑制効果が得られうる。その結果、電池の電極間ショートの誘発を防ぐことができるため、温度上昇による性能低下が起こりにくい電池構成になる。また、耐熱絶縁層を有することによって、耐熱絶縁層付セパレータの機械的強度が向上し、セパレータの破膜が起こりにくい。さらに、熱収縮抑制効果および機械的強度の高さから、電池の製造工程でセパレータがカールしにくくなる。
耐熱絶縁層における無機粒子は、耐熱絶縁層の機械的強度や熱収縮抑制効果に寄与する。無機粒子として使用される材料は特に制限されない。例えば、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタンの酸化物(SiO、Al、ZrO、TiO)、水酸化物、および窒化物、ならびにこれらの複合体が挙げられる。これらの無機粒子は、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、マイカなどの鉱物資源由来のものであってもよいし、人工的に製造されたものであってもよい。また、これらの無機粒子は1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。これらのうち、コストの観点から、シリカ(SiO)またはアルミナ(Al)を用いることが好ましく、アルミナ(Al)を用いることがより好ましい。
耐熱性粒子の目付けは、特に限定されるものではないが、5〜15g/mであることが好ましい。この範囲であれば、十分なイオン伝導性が得られ、また、耐熱強度を維持する点で好ましい。
耐熱絶縁層におけるバインダは、無機粒子どうしや、無機粒子と樹脂多孔質基体層とを接着させる役割を有する。当該バインダによって、耐熱絶縁層が安定に形成され、また多孔質基体層および耐熱絶縁層の間の剥離を防止される。
耐熱絶縁層に使用されるバインダは、特に制限はなく、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリロニトリル、セルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、アクリル酸メチルなどの化合物がバインダとして用いられうる。このうち、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アクリル酸メチル、またはポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いることが好ましい。これらの化合物は、1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
耐熱絶縁層におけるバインダの含有量は、耐熱絶縁層100重量%に対して、2〜20重量%であることが好ましい。バインダの含有量が2重量%以上であると、耐熱絶縁層と多孔質基体層との間の剥離強度を高めることができ、セパレータの耐振動性を向上させることができる。一方、バインダの含有量が20重量%以下であると、無機粒子の隙間が適度に保たれるため、十分なリチウムイオン伝導性を確保することができる。
耐熱絶縁層付セパレータの熱収縮率は、150℃、2gf/cm条件下、1時間保持後にMD、TDともに10%以下であることが好ましい。このような耐熱性の高い材質を用いることで、発熱量が高くなり電池内部温度が150℃に達してもセパレータの収縮を有効に防止することができる。その結果、電池の電極間ショートの誘発を防ぐことができるため、温度上昇による性能低下が起こりにくい電池構成になる。
[正極集電板および負極集電板]
集電板(25、27)を構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましい。軽量、耐食性、高導電性の観点から、より好ましくはアルミニウム、銅であり、特に好ましくはアルミニウムである。なお、正極集電板27と負極集電板25とでは、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料が用いられてもよい。
[シール部]
シール部は、双極型二次電池(直列積層型電池)に特有の部材であり、電解質層からの電解液の漏れを防止する機能を有する。このほかにも、電池内で隣り合う集電体同士が接触したり、積層電極の端部の僅かな不ぞろいなどによる短絡が起こったりするのを防止することもできる。
シール部の構成材料としては、特に制限されないが、ポリエチレン、ポリプロピレンな
どのポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ゴム、ポリイミド等が用いられうる。これらの
うち、耐蝕性、耐薬品性、製膜性、経済性などの観点からは、ポリオレフィン樹脂を用い
ることが好ましい。
[正極リードおよび負極リード]
また、図示は省略するが、集電体と集電板との間を正極リードや負極リードを介して電気的に接続してもよい。正極および負極リードの構成材料としては、公知のリチウムイオン二次電池において用いられる材料が同様に採用されうる。なお、外装から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆することが好ましい。
[電池外装材]
電池外装材としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、図1および図2に示すように発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルム29を用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。また、外部から掛かる発電要素への群圧を容易に調整することができることから、外装体はアルミニウムを含むラミネートフィルムがより好ましい。
本形態に係る非水電解質二次電池は、複数の単電池層が並列に接続された構成を有することにより、高容量でサイクル耐久性に優れるものである。したがって、本形態に係る積層型二次電池は、EV、HEVの駆動用電源として好適に使用される。
特に、本形態に係る非水電解質二次電池は、層状岩塩型構造を有する正極活物質および濃厚電解液を用いているにもかかわらず、高いセル電圧の条件下であってもサイクル耐久性を向上させることができるという利点を有している。したがって、本発明の一形態に係る非水電解質二次電池は、セル電圧として好ましくは4.4V以上、より好ましくは4.5V以上、さらに好ましくは4.6V以上の作動電圧を示すものである。言い換えれば、本発明のさらに他の形態によれば、セル電圧として好ましくは4.4V以上、より好ましくは4.5V以上、さらに好ましくは4.6V以上の作動電圧を経るように、本発明の一形態に係る非水電解質二次電池を運転する方法もまた、提供される。このように高いセル電圧の条件下で電池を運転することができれば、層状岩塩型構造を有する正極活物質が本来有している高い容量を十分に取り出すことが可能となるため、非常に好適である。
[組電池]
組電池は、電池を複数個接続して構成した物である。詳しくは少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成されるものである。直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。
電池が複数、直列にまたは並列に接続して装脱着可能な小型の組電池を形成することもできる。そして、この装脱着可能な小型の組電池をさらに複数、直列にまたは並列に接続して、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池(電池モジュール、電池パックなど)を形成することもできる。何個の電池を接続して組電池を作製するか、また、何段の小型組電池を積層して大容量の組電池を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
[車両]
電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を車両に搭載することができる。本発明では、長期信頼性に優れた高寿命の電池を構成できることから、こうした電池を搭載するとEV走行距離の長いプラグインハイブリッド電気自動車や、一充電走行距離の長い電気自動車を構成できる。電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を、例えば、自動車ならばハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)に用いることにより高寿命で信頼性の高い自動車となるからである。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、他の車両、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
以下、実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに何ら限定されるわけではない。
《正極活物質の準備》
正極活物質として、以下の3種類の市販品を購入することにより準備した。
・正極活物質(1):LiNi0.88Mn0.06Co0.06、平均粒子径4.4μm、結晶子径1μm以上、ラフネスファクター3.0、単一の結晶子からなる粒子の個数割合は30%以上
・正極活物質(2):LiNi0.83Mn0.11Co0.06、平均粒子径3.6μm、結晶子径1μm以上、ラフネスファクター2.4、単一の結晶子からなる粒子の個数割合は30%以上
・正極活物質(3)(比較品):LiNi0.80Mn0.10Co0.10、平均粒子径10.2μm、結晶子径1μm未満、ラフネスファクター4.3、単一の結晶子からなる粒子の個数割合は10%未満。
なお、各正極活物質の平均粒子径およびラフネスファクターの値は、以下の手法により測定した。
[ラフネスファクターの測定方法]
まず、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて正極活物質の粉末を観察し、得られたSEM画像から、活物質粒子の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち最大の距離を粒子径として測定し、数十視野中に観察される粒子の粒子径の算術平均値を平均粒子径として算出した。なお、結晶子径が1μm以上であるか否かついては、SEM画像から判断した。
次いで、上記で算出された平均粒子径の値から、当該平均粒子径を粒子径とする真球状の粒子の粒子体積[m]および粒子表面積[m]を算出し、得られた粒子体積に活物質の比重(ここでは、4.78[g/cm])を乗じることにより、上記真球状の粒子の粒子重量[g]を算出した。そして、上記で算出した粒子表面積を、同じく上記で算出した粒子重量で除することにより、「平均粒子径から算出される幾何比表面積[m/g]」を算出した。
一方、JIS Z8830:2013(ISO 9277:2010)に記載の「ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法」に準じて、静的容量法により窒素ガスを吸着ガスとして測定を行い、多点法により解析することによりBET比表面積[m/g]を算出した。そして、上記で算出された「平均粒子径から算出される幾何比表面積」に対する「BET比表面積」の比の値(=BET比表面積/幾何比表面積)として、ラフネスファクターを算出した。
《電池の作製》
[実施例1]
<電解液の調製>
非水溶媒であるジメチルカーボネート(DMC)に、リチウム塩であるLi(FSON(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド;LiFSI)を4mol/L(4M)の濃度で溶解させて、本実施例の電解液を調製した。なお、飽和溶解量(ここでは5.5M)を100%としたときの当該電解液におけるリチウム塩の溶解量は73%であった。
<正極の作製>
上記で準備した正極活物質(1)95質量%、導電助剤である導電性カーボンブラック3質量%、およびバインダであるポリフッ化ビニリデン(PVdF)2質量%からなる固形分を用意した。この固形分に対し、スラリー粘度調整溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量添加し、混合して、正極活物質スラリーを作製した。次に、得られた正極活物質スラリーを、集電体であるアルミニウム箔(厚み20μm)の片面にドクターブレードを用いて塗布し、80℃のホットプレート上で1時間乾燥させた。その後、得られた積層体を、ロールプレス機を用いてプレスすることにより、正極活物質層の空孔率を25%に制御した。そして、真空乾燥機に入れ、真空条件下、130℃にて8時間乾燥させて、本実施例の正極(厚さ80μm)を作製した。
<負極の作製>
負極活物質である黒鉛(平均粒子径:20μm)95.5質量%、導電助剤であるカーボンブラック0.5質量%、およびバインダであるポリフッ化ビニリデン(PVdF)4質量%からなる固形分を用意した。この固形分に対し、スラリー粘度調整溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量添加し、混合して、負極活物質スラリーを作製した。次に、得られた負極活物質スラリーを、集電体である銅箔(厚み20μm)の片面に塗布し、上記と同様にして乾燥およびプレス処理を施して、本実施例の負極(厚さ60μm)を作製した。
<試験用セルの作製>
上記で得られた正極を12cm、負極を13cmのサイズに裁断した。そして、正極の集電体(アルミニウム箔)にはアルミニウム端子付きアルミニウム箔を積層した。一方、負極の集電体(銅箔)にはニッケル端子付き銅箔を積層した。
次いで、セパレータ(セルガード社製、ポリプロピレン(PP)製)を正極および負極の電極活物質層側に挿入して、積層体とした。この積層体を外装体である熱融着型アルミラミネートフィルム(厚み150μm)に挟み、上記で調製した電解液を注入後、真空シーラーを用いて外装体の内部を真空まで減圧し、いったん減圧を解除して大気圧まで戻した後、再度真空度99.7%まで減圧して封止することにより、正極活物質層と負極活物質層とがセパレータを介して対向するように積層された発電要素を有するパウチ型リチウムイオン電池(試験用セル)を作製した。
<試験用セルの評価(サイクル耐久性の測定)>
上記で作製した試験用セルについて、充放電サイクル耐久性試験を行った。具体的には、まず、電極反応面内に均一に圧力を印加するため、ゴム板でセルの電極部分を挟み、さらにアルミニウムの平板で挟んでボルトで固定した。
次いで、初回および2回目の充放電を0.1Cのレートで行った。この際、セル電圧として2.5〜4.6Vの範囲で、充電をCC−CVモードで、放電をCCモードで(充電・放電間の休止時間8時間)実施した。その後、0.33Cのレートで上記と同じセル電圧の範囲で上記と同様のセル電圧範囲で20サイクルの充放電を実施した。そして、1サイクル目の放電容量に対する20サイクル目の放電容量の割合を容量維持率[%]として算出した。結果を下記の表1に示す。
[実施例2]
本実施例では、正極活物質(1)に代えて正極活物質(2)を用いたこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、本実施例のパウチ型リチウムイオン電池(試験用セル)を作製し、サイクル耐久性試験を行った。結果を下記の表1に示す。
[比較例1]
本比較例では、正極活物質(1)に代えて正極活物質(3)を用いたこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、本比較例のパウチ型リチウムイオン電池(試験用セル)を作製し、サイクル耐久性試験を行った。結果を下記の表1に示す。
[比較例2]
非水溶媒であるエチルメチルカーボネート(EMC)とエチレンカーボネート(EC)との等体積混合液に、添加剤であるビニレンカーボネート(VC)を前記混合液100質量%に対して0.5質量%の濃度で溶解させ、リチウム塩であるLi(FSON(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド;LiFSI)を2mol/L(2M)の濃度で溶解させて、本比較例の電解液を調製した。なお、リチウム塩の飽和溶解量(ここでは5.2M)を100%としたときの当該電解液におけるリチウム塩の溶解量は38%であった。
本比較例では、上記で調製した電解液を用いたこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、本比較例のパウチ型リチウムイオン電池(試験用セル)を作製し、サイクル耐久性試験を行った。結果を下記の表1に示す。
[比較例3]
本比較例では、正極活物質(1)に代えて正極活物質(3)を用いたこと以外は、上述した比較例2と同様の手法により、本比較例のパウチ型リチウムイオン電池(試験用セル)を作製し、サイクル耐久性試験を行った。結果を下記の表1に示す。
Figure 2021163542
表1に示す結果から、正極活物質のラフネスファクターが3以下である実施例1および実施例2では、層状岩塩型構造を有する正極活物質および濃厚電解液を用い、かつ、高いセル電圧の条件下で充放電を行った場合であっても、サイクル耐久性の低下が抑制されていることがわかる。これに対し、層状岩塩型構造を有する正極活物質および濃厚電解液を用いているにもかかわらず正極活物質のラフネスファクターが3よりも大きい比較例1では、サイクル耐久性の低下が確認された。したがって、本発明の構成とすることにより、層状岩塩型構造を有する正極活物質および濃厚電解液を用い、かつ、高いセル電圧の条件下で充放電を行った場合であっても、サイクル耐久性が低下するのを抑制することができることが示された。
なお、濃厚電解液を用いていない比較例2では、層状岩塩型構造を有する正極活物質のラフネスファクターを3以下としても、ラフネスファクターが3よりも大きい比較例3に対するサイクル耐久性の改善効果はわずかなものであった。これは、サイクル耐久性の低下という課題が、層状岩塩型構造を有する正極活物質に加え、濃厚電解液をさらに用いた場合に特異的に生じることを裏付けるものである。
10a 積層双極型二次電池、
10b 双極型二次電池
11 集電体、
11a 正極側の最外層集電体、
11b 負極側の最外層集電体、
11’ 正極集電体
12 負極集電体
13 正極活物質層、
15 負極活物質層、
17 電解質層、
19 単電池層、
21 発電要素、
23 双極型電極、
25 正極集電板(正極タブ)、
27 負極集電板(負極タブ)、
29 ラミネートフィルム、
31 シール部。

Claims (8)

  1. 層状岩塩型構造を有する正極活物質および電解液を含有する正極活物質層を含む非水電解質二次電池用正極であって、
    前記電解液が25℃における飽和リチウムイオン濃度の50%以上の濃度のリチウムイオンを含有し、
    前記正極活物質の、平均粒子径から算出される幾何比表面積に対するBET比表面積の比の値として定義されるラフネスファクターの値が3以下である、非水電解質二次電池用正極。
  2. 前記正極活物質の結晶子径が1μm以上である、請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極。
  3. 前記正極活物質を構成する粒子に占める単一の結晶子からなる粒子の個数割合が10%以上である、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池用正極。
  4. 前記正極活物質が、Li(Ni−Mn−Co)Oまたはこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換された組成を有するNMC複合酸化物を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用正極。
  5. 前記電解液が、リチウムイオンの対アニオンとしてイミド基含有アニオンを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用正極。
  6. 前記電解液における電解質の濃度が3モル/L以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用正極を有する発電要素を備えた、非水電解質二次電池。
  8. セル電圧として4.4V以上の作動電圧を示す、請求項7に記載の非水電解質二次電池。
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