JP2015069970A - リチウムイオン二次電池用負極活物質、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池、およびリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用負極活物質、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池、およびリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2015069970A
JP2015069970A JP2013206479A JP2013206479A JP2015069970A JP 2015069970 A JP2015069970 A JP 2015069970A JP 2013206479 A JP2013206479 A JP 2013206479A JP 2013206479 A JP2013206479 A JP 2013206479A JP 2015069970 A JP2015069970 A JP 2015069970A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
negative electrode
lithium ion
ion secondary
active material
electrode active
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2013206479A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2015069970A5 (ja
JP6160417B2 (ja
Inventor
明秀 田中
Akihide Tanaka
明秀 田中
西村 悦子
Etsuko Nishimura
悦子 西村
啓太 須賀
Keita Suga
啓太 須賀
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Showa Denko Materials Co Ltd
Original Assignee
Hitachi Chemical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Chemical Co Ltd filed Critical Hitachi Chemical Co Ltd
Priority to JP2013206479A priority Critical patent/JP6160417B2/ja
Publication of JP2015069970A publication Critical patent/JP2015069970A/ja
Publication of JP2015069970A5 publication Critical patent/JP2015069970A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6160417B2 publication Critical patent/JP6160417B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/10Energy storage using batteries

Landscapes

  • Carbon And Carbon Compounds (AREA)
  • Battery Electrode And Active Subsutance (AREA)

Abstract

【課題】出力密度と保存容量維持率が共に高いリチウムイオン二次電池用負極材を提供する。【解決手段】昇温脱離ガス分析(TDS)において、400℃から1250℃までの温度上昇での脱離水素分子数A、300℃から1250℃までの温度上昇での脱離一酸化炭素分子数B、および300℃から1250℃までの温度上昇での脱離二酸化炭素分子数Cに関して1.2≰A/B、および、6.0≰A/Cのいずれか一方を満たすリチウムイオン二次電池用負極活物質。【選択図】図1

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用負極活物質、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池、およびリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法に関する。
近年、リチウムイオン二次電池に関する開発が盛んに進められている。リチウムイオン二次電池は、高いエネルギー密度を有するため、例えば鉄道や自動車等の車両に搭載するための電池や、太陽光発電や風力発電等で発電した電力を蓄えて電力系統に供給するための電池として注目されている。また、電力系統が遮断された非常時に電力を供給するための定置式電力貯蔵システム用の電池としての用途にも期待されている。
リチウムイオン二次電池をこのような多様な用途に用いるためには、高い出力密度と高い保存容量維持率が求められる。保存容量維持率が高いとは、高温環境での繰り返し充放電や長期保管の後でも電池容量の低下が小さいことを意味する。
特許文献1には、水素が存在する環境において200℃以上800℃以下の温度範囲で熱処理した非晶質炭素材料を負極に用いることで、高い容量を維持しながら不可逆容量を軽減することが開示されている。特許文献2には、窒素雰囲気で熱処理した黒鉛粒子を負極に用いることで、急速充放電特性に優れた炭素材料を提供することが開示されている。特許文献3には、1000℃以上2800℃以下の温度で水素プラズマ処理した酸化黒鉛を負極に用いることで、放電容量が大きくサイクル寿命に優れた二次電池を提供することが開示されている。
特開平9−22696号公報号公報 特開2010−135314 特開2007−265915号公報
しかし、特許文献1に記載された水素存在環境での温度範囲である200℃以上800℃以下では、炭素官能基は水素化されずに脱酸素が起こるのみであると考えられる。また、特許文献2に記載されている窒素雰囲気における黒鉛粒子の熱処理も、脱酸素が起こるのみであると考えられる。従って、特許文献1および2に記載された炭素材料を負極活物質として用いたリチウムイオン二次電池では、高い出力密度と高い保存容量維持率は両立されない。特許文献3には、水素プラズマ雰囲気における炭素粒子の熱処理について記載されているが、このような処理により得られた膨張炭素を負極活物質として用いたリチウムイオン二次電池では、容量は増大するものの、初回の不可逆容量が大きいことや保存容量維持率が高くない等の欠点がある。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極活物質は、炭素を主成分とし、式1および式2の少なくとも一方を満たす。
式1: 1.2≦A/B
式2: 6.0≦A/C
ただし、式1および式2において、
Aは、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質に対して、400℃から1250℃までの温度上昇における昇温脱離ガス分析(TDS)において測定された、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質から脱離した水素分子(H)数(個/mg)、
Bは、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質に対して、300℃から1250℃までの温度上昇における昇温脱離ガス分析(TDS)において測定された、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質から脱離した一酸化炭素分子(CO)数(個/mg)、
Cは、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質に対して、300℃から1250℃までの温度上昇における昇温脱離ガス分析(TDS)において測定された、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質から脱離した二酸化炭素分子(CO)数(個/mg)、
である。
また、本発明のリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法は、炭素を主成分とする炭素粒子を雰囲気温度1300℃以上の水素含有雰囲気に所定時間保持して、炭素粒子の炭素官能基を水素化する水素化処理工程を有する。
本発明によれば、出力密度と保存容量維持率が共に高いリチウムイオン二次電池用負極材を提供することができる。
本発明に係るリチウムイオン二次電池の内部構造を示す断面図である。 実施例および比較例の負極活物質の物性を示す一覧表である。 実施例および比較例のリチウムイオン二次電池に対して行った出力密度と保存容量維持率の測定結果である。
<負極活物質>
本発明に係るリチウムイオン二次電池用負極活物質は、炭素を主成分とした粒子状であって、粒子表面の炭素官能基が水素化処理されている。このような粒子を負極活物質とする負極を有するリチウムイオン二次電池は、高い出力密度と高い保存容量維持率を両立する。その理由は明らかではないが、本発明者らは、本発明に係るリチウムイオン二次電池用負極活物質表面の炭素官能基が水素化されることで、炭素表面におけるリチウムイオンの吸蔵放出が容易になるためと推測している。水素化された炭素官能基の数(量)は、下記の式1および式2により評価する。即ち、本発明に係るリチウムイオン二次電池負極用負極活物質は、次に記載の式1および式2の少なくとも一方を満たす。
式1: 1.2≦A/B
式2: 6.0≦A/C
ただし、式1および式2において、
Aは、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質に対して、400℃から1250℃までの温度上昇における昇温脱離ガス分析(TDS)において測定された、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質から脱離した水素分子(H)個数(個/mg)、
Bは、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質に対して、300℃から1250℃までの温度上昇における昇温脱離ガス分析(TDS)において測定された、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質から脱離した一酸化炭素分子(CO)個数(個/mg)、
Cは、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質に対して、300℃から1250℃までの温度上昇における昇温脱離ガス分析(TDS)において測定された、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質から脱離した二酸化炭素分子(CO)個数(個/mg)、
である。
式1のA/B(離脱H個数/離脱CO個数)の値が1.2以上の場合、または、式2のA/C(離脱H/離脱CO個数)の値が6.0以上の場合は、炭素官能基の水素化が十分であることを意味する。このような負極活物質を用いたリチウムイオン二次電池は、高い出力密度と高い保存容量維持率を両立する。
一方、式1のA/B(離脱H個数/離脱CO個数)の値が1.2より小さく、かつ、式2のA/C(離脱H/離脱CO個数)の値が6.0より小さい場合、炭素官能基の水素化が不十分であることを意味する。このような負極活物質を用いたリチウムイオン二次電池は、高い出力密度と高い保存容量維持率を両立できない。
A/Bの値は、1.5以上10以下であることが好ましく、2.0以上5以下であればさらに好ましくい。A/Cの値は、7以上50以下であることが好ましく、9以上30以下であればさらに好ましく、12以上20以下であればより一層好ましい。
本発明に係るリチウムイオン二次電池負極用炭素粒子は、さらに下記の式3を満たすことが好ましい。式3: 0.8≦A/D
ただし、式3において、
Aは、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質に対して、400℃から1250℃までの温度上昇における昇温脱離ガス分析(TDS)において測定された、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質から脱離した水素分子(H)個数(個/mg)、
Dは、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質に対して、25℃から1250℃までの温度上昇における昇温脱離ガス分析(TDS)において測定された、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質から脱離した水分子(HO)個数(個/mg)、
である。
A/D(離脱H個数/離脱HO個数)の値が0.8より小さい場合、炭素官能基の水素化が不十分であるか、または水の含有率が高いことを意味する。このような負極活物質に用いたリチウムイオン二次電池は、出力密度と保存容量維持率が低く寿命が短い。
昇温脱離ガス分析(TDS)は、例えば、電子科学株式会社製TDS1200型の昇温脱離ガス分析装置を用いて行うことができる。
本発明に係るリチウムイオン二次電池用負極活物質は、主成分である炭素に対してラマン分光法より求めたR値が0.15以上であることが好ましく、0.20であればさらに好ましい。R値は、炭素のラマンスペクトルにおける1580cm−1(Gバンド)領域のピーク強度に対する1360cm−1(Dバンド)領域のピーク強度の比(R=I1360/I1580)である。
炭素のラマンスペクトルにおけるDバンド領域の吸収は乱層構造に起因し、Gバンド領域の吸収は黒鉛結晶構造に起因する。即ち、表面の結晶性が高いほど(結晶状態の炭素に近くなるほど)Gバンド領域の吸収は強く、非晶質の程度が大きいほどDバンド領域の吸収は強い。
R値が0.15以上の場合、負極活物質表面の結晶には欠陥が多く、炭素官能基が多く存在し、これらの炭素官能基の水素化が十分に行われたと考えられる。このような負極活物質を用いたリチウムイオン二次電池では、高い出力密度と高い保存容量維持率の両立が期待できる。
R値の測定方法は特に限定されない。例えば、公知のアルゴンレーザーを用いたレーザーラマン分光装置を用いてラマンスペクトルを検出し、1360cm−1(Dバンド)及び1580cm−1(Gバンド)におけるピークをそれぞれ検出し、ピーク強度比(I1360/I1580)を算出することによりR値を求めることができる。
本発明に係るリチウムイオン二次電池用負極活物質は、さらに下記の式4を満たすことが好ましい。
式4: 20≦S4−10/S1−10×100
ただし、式4において、
4−10は、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質に対してガス吸着法により求めた、直径4nm以上、かつ10nm以下の細孔表面積、
1−10は、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質に対してガス吸着法により求めた、直径1nm以上、かつ10nm以下の細孔表面積、
である。
炭素官能基を水素化処理する際に細孔の発生を伴う場合がある。S4−10/S1−10×100の値が20未満である場合、水素化処理における細孔の発生が多過ぎることを意味する。このような負極活物質を用いたリチウムイオン二次電池では、電解液中へのリチウムイオンの拡散が妨げられ、保存容量維持率が低くなることが考えられる。従って、S4−10/S1−10×100の値は20以上であることが好ましく、25以上であればさらに好ましく、30以上であればより一層好ましい。
負極活物質の細孔表面積の測定方法は特に限定されない。例えば、公知のBET比表面積測定装置を用いて、吸着等温線を既知のガス吸着データを用いてBJH法等で解析することで求めることができる。
本発明に係るリチウムイオン二次電池用負極活物質は、比表面積が0.5〜20m/gの範囲であることが好ましい。比表面積が20m/gを超える場合、負極活物質の表面におけるリチウムイオンの吸蔵放出速度は速い反面、電解液の分解反応が起こり易いので好ましくない。また、比表面積が0.5m/gを下回る場合には、負極活物質の表面においてリチウムイオンの吸蔵放出を行う面積が不足するため十分な出力密度を確保できない。比表面積は、0.5〜10m/gであればより好ましく、1.0〜7m/gであればさらに好ましく、2.0〜4m/gであればより一層好ましい。
負極活物質の比表面積の測定方法は特に限定されない。例えば、上記のBET比表面積測定装置を用いて求めることができる。比表面積は、後述する粒度分布、および/または粒子表面への被覆の程度を変化させることにより調整することが可能である。
本発明に係るリチウムイオン二次電池用負極活物質は、X線回折(XRD)測定により求めた炭素002面の面間隔(d002)が、0.3345〜0.3370nmの範囲であることが好ましい。d002が上記範囲内である場合、負極活物質は炭素結晶を含有することを意味する。このような負極活物質に用いたリチウムイオン二次電池は、高い出力密度と高い保存容量維持率を両立できる。
炭素002面の面間隔の測定方法は特に限定されない。例えば、X線源としてCuKα線を用いたX線広角回折法によって求めることができる。
本発明に係るリチウムイオン二次電池用負極活物質は、表面が非晶質炭素により被覆されていることが好ましい。非晶質炭素により被覆されることで、負極活物質の表面の結晶に欠陥を有する状態となり、表面の炭素官能基の水素化が行われ易くなる。このような状態の負極活物質に対して、ラマン分光法よりR値を求めると0.15以上となる。
次に、本発明に係るリチウムイオン二次電池用負極活物質の作製方法について説明する。
<負極活物質の作製>
本発明に係るリチウムイオン二次電池用負極活物質の原料として用いられる炭素粒子は特に限定されない。例えば、グラファイト構造を有する人造又は天然の黒鉛を主成分として含有する炭素粒子を用いることができる。ただし、コークス粉末やピッチ等の熱処理により製造した黒鉛からなる炭素粒子を用いることが好ましい。炭素粒子に黒鉛化可能なバインダ(例えば、石炭系、石油系、有機合成系等の各種ピッチ、タール、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂等の有機系材料)を配合して焼成してもよい。炭素粒子は、バインダを混合させることにより粒径が拡大することを考慮し、最終的に得たい負極活物質粒子の1/2以下の平均粒径とすることが好ましい。例えば、平均粒径10μm以上の平均粒径を有する負極活物質粒子を作製するためには、平均粒径5μmのコークス粉末、または、そのコークス粉末を粉砕したものを原料の炭素粒子として用い、これにピッチ系バインダを添加して焼成する。
原料の炭素粒子としては非晶質炭素粒子を用いることもできる。非晶質炭素粒子としては、カーボンブラックや、5員環もしくは6員環の環式炭化水素化合物または含酸素環式有機化合物を熱分解して合成したものを用いることができる。
原料の炭素粒子の形状は、球状、塊状、または扁平球状であることが好ましい。炭素粒子の平均粒径は、1〜50μmの範囲であることが好ましく、2〜30μmの範囲であればより好ましく、5〜25μmの範囲であればより一層好ましい。原料の炭素粒子の平均粒径が50μmを超えるような負極活物質を用いたリチウムイオン二次電池では、負極における電池反応が均一でなくなるため好ましくない。逆に、原料の炭素粒子の平均粒径が1μmを下回るような負極活物質を用いたリチウムイオン二次電池は、高い出力密度を実現することが困難であり好ましくない。
原料の炭素粒子の形状は、例えば燐片状又は繊維状のように、アスペクト比の大きな形状であってもよい。ただし、このような炭素粒子を原料として用いても、作製された負極活物質のアスペクト比は1〜5の範囲とすることが好ましく、1〜3の範囲であればより好ましい。原料の炭素粒子のc軸長さLcは、上記のアスペクト比を満足する範囲内であればよい。アスペクト比が上記の範囲を超えると、無定形の大きな粒子の比率が高くなる。このような炭素粒子を原料とする負極活物質の充填性は低いため、負極密度が上げにくくなる傾向にあり、高いエネルギー密度が得らないので好ましくない。
炭素粒子の平均粒径の測定方法は特に限定されない。例えば、レーザ散乱を利用した粒度分布測定装置(例えば、マイクロトラック)を用いて測定することができる。
原料としての炭素粒子は公知の方法によって作製できる。例えば、上記説明の材料を所定の配合比で混合して粉砕したものを加圧成形した後、不活性ガス雰囲気中で焼成する。得られた焼成物を再度粉砕して、微細な粉末を得る。粉砕手段としては、例えばハンマーミルを用いることができる。不活性ガスとしては、窒素やアルゴンを用いることができる。焼成温度は400〜3000℃の範囲であることが好ましく、焼成時間は、1〜50時間の範囲であることが好ましい。焼成温度が高いほど、焼成時間を短くできる。
原料の炭素粒子表面には、非晶質炭素による被覆層が設けられた、いわゆるコア・シェル構造の被覆炭素粒子であることが好ましい。被覆層の厚さは5〜200nmの範囲であることが好ましい。被覆層の厚さが5nmを下回る場合、このように被覆層が薄い被覆炭素粒子を原料とする負極活物質を用いたリチウムイオン二次電池においては、電解液の有機溶媒が被覆層を浸透して炭素粒子の表面に達する。その結果、炭素粒子の表面において有機溶媒の還元分解反応が起こるので好ましくない。逆に、被覆層の厚さが200nmを超える場合、このように被覆層が厚い被覆炭素粒子を原料とする負極活物質を用いたリチウムイオン二次電池においては、リチウムイオンの拡散が阻害され、大電流時の電池容量が低下するので好ましくない。被覆層の厚さは、被覆される炭素粒子材料と被覆する非晶質炭素材料との比率等を適宜設定して調整することができる。
非晶質炭素材料による被覆層は、多孔質ではなく緻密な構造であることが好ましい。被覆層が緻密な構造であることにより、電解液の有機溶媒が被覆層を浸透して炭素粒子表面に到達することを抑制できる。その結果、炭素粒子の表面において有機溶媒が還元分解反応を起こすことを防ぐことができる。
被覆層の厚さの測定と構造の評価については、例えば、集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)加工装置により被覆炭素粒子を切断し、その切断面を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)により観察することで行うことができる。
被覆層は、既に説明した通り、非晶質炭素材料を主成分とする。被覆層の材料は特に限定されないが、例えば、フェノール樹脂(例えば、ノボラック型フェノール樹脂)、ナフタレン、アントラセン、クレオソート油等の多環芳香族炭化水素である非晶質炭素質材料を用いることができる。被覆層を形成するには、例えば、非晶質炭素材料を有機溶媒中に希釈し、その中に炭素粒子を分散させて、炭素粒子表面に非晶質炭素材料を付着させる。次に、非晶質炭素材料が付着した炭素粒子材料を濾取して乾燥させることで有機溶媒を除去し、さらに加熱処理して、炭素粒子表面に非晶質炭素材料による被覆層を形成し被覆炭素粒子とする。加熱処理温度は、200〜1000℃の範囲が好ましく、500〜800℃の範囲がより好ましい。加熱処理時間は、1〜50時間の範囲が好ましい。加熱処理温度が500〜800℃の範囲である場合には、被覆層である非晶質炭素材料の体積弾性率が炭素粒子の体積弾性率よりも小さいため、被覆層と炭素材料の密着性が良好となり好ましい。
被覆層の材料としては、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルピロリドン等のような含酸素有機化合物を用いてもよい。これらの含酸素有機化合物を用いて炭素粒子に非晶質炭素材料の被覆層を形成するには、例えば、含酸素有機化合物と炭素粒子材料とを混合し、その混合物を加熱して含酸素有機化合物を熱分解して実現可能である。熱分解する際の温度は、200〜400℃の範囲が好ましく、300〜400℃の範囲がより好ましい。熱分解の時間は1〜50時間の範囲であることが好ましい。熱分解の温度が300〜400℃の範囲である場合には、被覆層が炭素粒子の表面に強固に結合されるので好ましい。
被覆層には、少量の窒素、リン、酸素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等の元素が含まれていてもよい。例えば、被覆炭素粒子の表面をX線光電子分光装置により測定したこれらの元素の炭素に対する濃度が、0.01〜10原子%の範囲であることが好ましい。これらの元素が含有されることにより、被覆層の強度が増大し、また、電解液の分解反応をさらに抑制する効果が期待できる。
被覆層に含有される炭素濃度の計測方法は特に限定されない。例えば、炭素粒子に被覆層を形成する前後の重量を測定し、それらの差から被覆層の重量を求め、X線光電子分光装置により測定された原子濃度の値から、炭素の含有量を計算することができる。
炭素粒子の表面に被覆層が被覆されても、リチウムイオンは被覆層を浸透して炭素粒子に到達するので、リチウムイオン二次電池としての機能には影響を与えない。
次に、炭素官能基の水素化処理について説明する。上記の通り、原料の炭素粒子表面には、非晶質炭素による被覆層が設けられた被覆炭素粒子であることが好ましい。ただし、被覆層が設けられていない炭素粒子であっても、表面に炭素官能基が多く存在するものであれば、水素化が良好に行えるので、被覆層の存在は必須ではない。
炭素官能基の水素化処理は、例えば、水素含有雰囲気で熱処理することにより行われる。水素含有雰囲気の水素濃度は50%以上が好ましいく、70%以上であればより好ましく、100%であればより一層好ましい。水素化処理の雰囲気温度は、1300℃以上が好ましく、1500℃以上であればより好ましい。これらの条件が満たされない場合には、炭素官能基から含酸素官能基が除去されるのみで、炭素官能基の水素化は有効に行われない。水素化処理の方法、および水素化処理による効果については、被覆層が無い炭素粒子の場合と同様である。炭素官能基の水素化が行われることにより、本発明に係るリチウムイオン二次電池用負極活物質が作製される。
炭素官能基の水素化処理を行うための別の方法としては、窒素等の不活性ガスと水蒸気の混合ガス雰囲気中での熱処理が挙げられる。水蒸気は純水等を蒸発させることで得られる。水蒸気雰囲気による水素化は、水素雰囲気による水素化に比べて、より低温で熱処理できる。ただし、水蒸気には賦活効果があるため、水素化処理される粒子の表面に細孔が発生する傾向がある。そのため、処理温度、処理時間、混合ガス流量、水蒸気濃度等の制御を厳密に行う必要がある。例えば、処理温度については、800〜1100℃の範囲が好ましく、800〜1000℃の範囲であればより好ましい。処理時間は2時間以下が好ましい。
既に記載したように、炭素官能基を水素化処理する際に細孔の発生を伴う場合がある。細孔の発生に関して、次の条件を満たすことが好ましい。即ち、ガス吸着法により求めた直径4nm以上かつ10nm以下の細孔表面積をS4−10とし、同じく直径1nm以上かつ10nm以下の細孔表面積をS1−10とした場合、S4−10/S1−10×100の値が20以上であることが好ましい。
炭素官能基の水素化処理方法としては、水素プラズマ処理も考えられる。しかし、この方法は表面に細孔が発生し易く、この方法により水素化を行なった場合、S4−10/S1−10×100の値は20未満となり好ましくない。
<負極の作製>
本発明に係るリチウムイオン二次電池用負極活物質を用いた負極の作製について説明する。
負極は、負極集電体の表面に負極活物質層を主成分とする負極合剤層を形成することにより作製される。負極集電体の材質は特に限定されず、銅、ステンレス鋼、チタン、ニッケル等の種々の金属材料を用いることができる。例えば、厚さ10〜100μmの銅箔、厚さ10〜100μmの銅箔に直径0.1〜10mmの多数の孔が設けられた製穿孔銅箔等を用いることができる。また、エキスパンドメタルや発泡金属板等も用いることができる。
負極合剤層は、負極活物質に加えてバインダが含まれていてもよい。バインダの材質は特に限定されない。例えば、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、およびこれらの混合材料や複合材料を用いることができる。スチレン-ブタジエンゴムとカルボキシメチルセルロースとの混合物が好ましい。
負極合剤層は、負極集電体の表面に密着していることが好ましい。負極合剤層の厚さは特に限定されないが、1〜200μmの範囲であることが好ましい。
本発明に係るリチウムイオン二次電池用負極活物質は、粒子状または塊状である。この負極活物質とバインダとを混合して負極合剤を調製する。バインダは負極活物質の粒子同士を結着させるために用いる。次に、負極合剤を溶媒中で混合・分散させて、負極合剤スラリーを調製する。負極合剤スラリーの中に、形成しようとする負極合剤層の厚さを超える負極活物質粒子が含まれないように、負極活物質に対して風流分級やふるい分級等の分級処理を行なって、粗大な負極活物質粒子を予め除去することが好ましい。負極合剤スラリーを調製するための溶媒は、バインダに適したものを選択する。例えば、バインダがスチレン-ブタジエンゴムの場合には水を用いることが好ましく、バインダがPVDFの場合にはN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いることが好ましい。負極合剤スラリーを、ドクターブレード法、ディッピング法、スプレー法等の塗布方法により負極集電体表面に塗布した後、溶媒を蒸発除去する。次いで、ロールプレス等により加圧成形して負極集電体の表面に負極合剤層が形成される。なお、負極合剤スラリーの塗布から溶媒を蒸発除去までを複数回に分けて行うことで、負極集電体の表面に積層構造の負極合剤層を形成することもできる。
<リチウムイオン二次電池の作製>
次に、本発明に係るリチウムイオン二次電池の一実施形態について説明する。本発明に係るリチウムイオン二次電池の内部構成を図1に模式的に示す。
図1に示すように、本発明に係るリチウムイオン二次電池1の一実施形態は、正極10、セパレータ11、負極12、電池缶13、正極集電タブ14、負極集電タブ15、内蓋16、内圧開放弁17、ガスケット18、正温度係数(PTC:Positive temperature coefficient)、抵抗素子19、電池蓋20、軸心21を備える。セパレータ11は正極10と負極12の間に挿入されて、正極10と負極12が短絡することを防止する。軸心21には、正極10、セパレータ11及び負極12が捲回される。電池蓋20は正極外部端子を兼ねている。なお、電池蓋20は、内蓋16、内圧開放弁17、ガスケット18及びPTC抵抗素子19を組み付けた一体構造とすることができる。
正極10は、正極集電体の表面に正極合剤層が形成された構成となっている。正極活物質としては、例えば、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiMnO、LiMn、LiMnO、LiMn12、LiMn2−xMxO(Mは、Co、Ni、Fe、Cr、Zn、Taのうちのいずれかであり、x=0.01〜0.2)、LiMnMO(Mは、Fe、Co、Ni、Cu、Znのうちのいずれかである)、Li1−xMn(Aは、Mg、Ba、B、Al、Fe、Co、Ni、Cr、Zn、Caのいずれかであり、x=0.01〜0.1)、LiNi1−x(Mは、Co、Fe、Gaのいずれかであり、x=0.01〜0.2)、LiFeO、Fe(SO、LiCo1−x(Mは、Ni、Fe、Mnのいずれかであり、x=0.01〜0.2)、LiNi1−x(Mは、Mn、Fe、Co、Al、Ga、Ca、Mgのいずれかであり、x=0.01〜0.2)、Fe(MoO、FeF、LiFePO及びLiMnPO等を用いることができる。
正極活物質は、酸化物であるため電気抵抗が高い。このため、正極合剤層には、通常、正極活物質の電気伝導性を向上させるために、炭素粉末を主成分とする導電剤が含まれる。導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、炭素、非晶質炭素等の炭素材料を用いることができる。正極において導電性が確保されるためには、導電剤の粒径は、正極活物質の平均粒径より小さいことが好ましく、導電剤の平均粒径は正極活物質の平均粒径の1/10以下であればより好ましい。正極活物質の平均粒径の測定は、既に説明した炭素粒子の平均粒径の測定と同様の方法により行うことができる。
正極集電体の材質は特に限定されず、負極集電体と同様の材料を使用することができる。正極合剤層は、正極集電体の表面に密着していることが好ましい。正極合剤層の厚さは特に限定されないが、1〜300μmの範囲であることが好ましい。本発明の正極は、上記説明の負極の作製方法に準じた方法により作製できる。
セパレータとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンを主成分とするポリオレフィン系高分子シート、ポリオレフィン系高分子シートと四フッ化ポリエチレン等によるフッ素系高分子シートを溶着させた多層構造のシート、セルロース繊維やポリアクリルニトリルの不織布等を用いることができる。電池温度が高くなった場合にセパレータが収縮しないように、表面にセラミックスとバインダの混合物を層状に形成させたセパレータを用いることもできる。セパレータは、電池の充放電時にリチウムイオンを通過させる必要があるため、通常、直径0.01〜10μm、気孔率20〜90%で細孔が多数設けられたものを使用する。
セパレータ11は、正極10と電池缶13との間、および負極12と電池缶13との間にも挿入され、電池缶13と正極10、および電池缶13と負極12とが短絡することを防止する。
正極10、負極12、及びセパレータ11は軸心21に捲回されて電極群を構成する。正極10は、正極集電タブ14を介して内蓋16に接続されている。負極12は、負極集電タブ15を介して電池缶13に接続されている。集電タブ14および15は、ワイヤ状や板状等、任意の形状を用いことができる。集電タブ14および15は、電流を流したときのオーム損失が小さく、かつ電解液と反応しないことを条件として、形状、本数、および材質は、電池缶13の構造に応じて任意に選択できる。
正温度係数(PTC)抵抗素子19は、電池内部の温度が高くなったときに、リチウムイオン二次電池1の充放電を停止させ、電池を保護するために配置される。
正極10、負極12、およびセパレータ11からなる電極群は、円筒状や扁平状、短冊状等、任意の形状に捲回されたものでよい。また、電池の形状は、電極群の形状に合わせて、円筒状、偏平長円形状、角型等、任意の形状を選択できる。電池容器は、電池缶13のような底面部材と側面部材とが一体となった構造でもよく、また、電池容器の底面に電池蓋を取り付け、この電池蓋に負極が接続された構成としてもよい。
電池容器の材質は、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等、非水電解質に対して耐食性のある材料から適宜選択すればよい。また、電池容器を正極集電タブまたは負極集電タブに電気的に接続する場合、非水電解質と接触している部分において、電池容器の腐食やリチウムイオンとの合金化による変質が起こらないように、リード線の材料を選定する必要がある。
電池缶13に電池蓋20を取り付ける方法としては、かしめ、溶接、接着等を用いることができる。電池缶13の内部に電極群を挿入した後、電解液を電池缶13に注入して、正極10、負極12、およびセパレータ11の表面に電解液を接触させる。
電解液としては、正極および負極においてで分解しないことを条件に、種々の有機溶媒を用いることができる。例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、1,2-ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、3-メチル-2-オキサゾリジノン、テトラヒドロフラン、1,2-ジエトキシエタン、クロルエチレンカーボネート及びクロルプロピレンカーボネート等の有機溶媒や、これらの有機溶媒の混合物を用いることができる。
有機溶媒に電解質を混合・分散して電解液を調整する。電解質としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、およびリチウムトリフルオロメタンスルホンイミドに代表されるリチウムのイミド塩から選択されるリチウム塩を用いることができる。なお、正極および負極において分解しないものであれば、上記以外の電解質を用いてもよい。
電解液と電解質の組み合わせとしては、電解液として、エチレンカーボネートに、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、およびエチルメチルカーボネートのうちのいずれかを混合したもの、電解質として、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)またはホウフッ化リチウム(LiBF)が好ましい。
電解液としては、イオン性液体を用いることもできる。イオン性液体としては、例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート (EMI−BF)、リチウム塩LiN(SOCF(LiTFSI)とトリグライムとテトラグライムとの混合錯体、環状四級アンモニウム系陽イオン(例えば、N−メチル−N−プロピルピロリジニウム)及びイミド系陰イオン(例えば、ビス(フルオロスルホニル)イミド)を挙げることができる。正極および負極において分解しないものであれば、上記以外のイオン性液体を用いることもできる。
電解液を電池容器に注入する方法は、電池容器の形状等により適宜選択すればよい。例えば、電池蓋20を電池缶13から取り外して電極群に直接注入してもよいし、電池蓋20に設置した注液口から注入するようにしてもよい。
電解液を用いる代わりに、イオン伝導性ポリマーに上記の電解質を含有させた固体高分子電解質(ポリマー電解質)やポリマー電解質と上記の非水電解液との混合物(ゲル電解質)を用いてもよい。ポリマー電解質やゲル電解質を用いる場合には、セパレータが不要になる。イオン伝導性ポリマーとしては、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリメタクリル酸メチル、ポリヘキサフルオロプロピレン等を挙げることができる。
(実施例1)
まず、正極活物質を作製した。正極活物質の原料として酸化ニッケル、酸化マンガン、及び酸化コバルトを使用し、これらの原料を、Ni:Mn:Co比が原子比で1:1:1となるように秤量した後、湿式粉砕機で粉砕混合した。次に、粉砕混合した正極活物質原料にバインダとしてポリビニルアルコール(PVA)を加え、噴霧乾燥機(スプレードライヤー)から噴射して粒子を作製した。こうして得られた粒子を高純度アルミナ容器に入れ、600℃で12時間の条件で仮焼成を行った。空冷後に粉砕し、これに、Li:遷移金属(Ni+Mn+Co)の原子比が1:1となるよう水酸化リチウム水和物を添加して混合した。この混合物を高純度アルミナ容器に入れて900℃で6時間本焼成を行うことで正極活物質を得た。この正極活物質をボールミルでさらに粉砕し分級した。マイクロトラックを用いてこの正極活物質の平均粒径を測定したところ6μmであった。
分級後の正極活物質を用いて次の手順で正極を作製した。正極活物質86.0重量部に、導電材として粉末状炭素とアセチレンブラックをそれぞれ6.0重量部と2.0重量部混合して混合粉末を調整した。一方、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に、バインダとして6.0重量部のポリフッ化ビニリデン(PVDF)を溶解した溶液を調整した。この溶液に上記の混合粉末を加えて、さらにプラネタリ−ミキサーで混合して正極合剤スラリーを調製した。この正極合剤スラリーを、厚さ20μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に塗布機で均一に塗布した。正極集電体の一部には正極合剤スラリーを塗布しない未塗布部を設けた。塗布後、ロールプレス機により圧縮して正極を作製した。
次に、負極活物質を作製した。オートクレーブを用いて、石炭系コールタールを空気雰囲気において400℃で熱処理して生コークスを得た。この生コークスを粉砕した後、不活性雰囲気において2800℃でか焼して黒鉛からなる炭素粒子を得た。
この炭素粒子を分級機付きの衝撃破砕機を用いて粉砕し、300メッシュの篩にて粗粉を除去した。マイクロトラックを用いて分級後の炭素粒子の平均粒径を測定したところ16.2μmであった。また、BET比表面積測定装置を用いて比表面積を測定したところ5.6m/gであった。
分級した炭素粒子100重量部を、ノボラック型フェノール樹脂(日立化成工業株式会社製)160重量部をメタノールに溶解した溶液に浸漬して溶液中に炭素粒子を分散させて、炭素粒子とフェノール樹脂の混合物溶液を調製した。この混合物溶液から炭素粒子とフェノール樹脂の混合物を濾取し、これを真空中にて80℃で24時間乾燥させた。乾燥後の混合物を、窒素雰囲気において温度800℃で10時間保持し、得られた粒子をカッターミルで粉砕してフェノール樹脂で被覆された被覆炭素粒子を得た。
次に、上記の被覆炭素粒子を、水素100%雰囲気において温度1500℃で2時間熱処理し、粒子表面の炭素官能基を水素化し、負極活物質を得た。マイクロトラックを用いて負極活物質粒子の平均粒径を測定したところ16.5μmであった。また、BET比表面積測定装置を用いて比表面積を測定したところ4.2m/gであった。
なお、炭素官能基の水素化処理は、負極活物質を作製する際の最終工程で行うことが好ましく、途中の工程において行うことは好ましくない。例えば、原料の炭素粒子に対して水素化を行うと、炭素粒子の表面や内部に多くの細孔が形成されてしまい、かさ密度の小さい負極活物質となるからである。
作製された負極活物質に対して、リガク社製X線回折装置RU200Bを用いて、主成分である炭素の002面の面間隔(d002)を測定したところ0.3350nmであった。なお、X線源としてはCuKα線(λ=0.15418nm)を用い、X線広角回折法により測定を行った。回折角度はSiを用いて補正を行い、測定されたピークをプロファイルフィッティングし、ブラッグの式を用いて算出した。
作製された負極活物質に対して、電子科学製昇温脱離ガス分析装置TDS−1200型を用いて、脱離する水素分子、一酸化炭素分子、二酸化炭素分子、および水分子の量(個数)の測定と解析を次の要領で行なった。
まず、下記に記載のA、B、CおよびDの手順で、負極活物質から離脱した水素分子、一酸化炭素分子、二酸化炭素分子、および水分子の個数を求めた。
A:昇温脱離ガス分析(TDS)により、400℃から1250℃までの温度上昇において負極活物質から脱離した水素分子(H)個数(個/mg)を測定。
B:昇温脱離ガス分析(TDS)により、300℃から1250℃までの温度上昇において負極活物質から脱離した一酸化炭素分子(CO)個数(個/mg)を測定。
C:昇温脱離ガス分析(TDS)により、300℃から1250℃までの温度上昇において負極活物質から脱離した二酸化炭素分子(CO)個数(個/mg)を測定。
D:昇温脱離ガス分析(TDS)により、25℃から1250℃までの温度上昇において負極活物質から脱離した水分子(HO)個数(個/mg)を測定。
次に、A〜Cの測定で得た測定値を用いて、A/B、A/C、およびA/Dの値を算出した。それぞれの値は、3.1、12.5、1.5となった。
なお、TDSにおいて、試料としての負極活物質をセットする試料ステージは石英製、試料皿はSiC製である。また、昇温速度は10℃/minとした。昇温は試料表面温度をモニターすることにより制御した。また、試料重量は2mgとし、実測重量で補正した。検出には四重極質量分析計を用い、印加電圧は1000Vとした。測定値の解析に用いた質量数[M/z]は、Hが2、HOが18、COが28、COが44とし、上記質量数に対応するガスは、それぞれ全て上記の各物質であるとした。なお、TDS中における試料温度(即ち、負極活物質の温度)としては、雰囲気温度ではなく試料表面温度を用いるのが好ましい。雰囲気温度を用いると、実際の測定試料が予想より低温になる恐れがある。
次に、レーザーラマン分光装置(日本分光製NRS−2100)を用いて、作製した負極活物質のR値を測定した。測定光源としてはアルゴンレーザーを用いた。測定は、試料としての原料炭素粒子にアルゴンレーザーを照射し、その散乱光スペクトルから1360cm−1(Dバンド)及び1580cm−1(Gバンド)のピーク強度であるI1360およびI1580を求め、これらのピーク強度の比(I1360/I1580)であるR値を算出した。
次に、負極活物質の細孔表面積および比表面積を下記の手順により求めた。試料としての負極活物質を真空雰囲気において温度120℃で3時間乾燥した後、日本ベル社製BELSORP−miniを用いて、77Kにおける窒素吸着を平衡時間300秒間測定した。得られた吸着等温線をBJH法およびBET法で解析して細孔表面積と細孔径分布を求めた。細孔表面積と細孔径分布から、直径4nm以上かつ10nm以下の細孔表面積S4−10と、直径1nm以上、かつ10nm以下の細孔表面積S1−10とを求め、これらの値から、S4−10/S1−10×100(%)の値を算出した。その結果は32(%)であった。
作製した負極活物質に対して行った上記説明の種々の測定の結果を、図2の表に示す。
次に、上記説明の手順により作製した負極活物質を用いて下記の手順で負極を作製した。作成した負極活物質97.0重量部に、カルボメチルセルロース(CMC)の1%水溶液と、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)の40%水溶液を混合し、さらにプラネタリ−ミキサーで混合し負極合剤スラリーを調製した。なお、CMCの1%水溶液は固形分1.5重量部相当量に相当し、SBRの40%水溶液は固形分1.5重量部相当量に相当する。この負極合剤スラリーを、厚さ10μmの圧延銅箔からなる集電体の両面に塗布機で均一に塗布した。集電体の一部には負極合剤スラリーを塗布しない未塗布部を設けた。塗布後、ロールプレス機により圧縮して負極を作製した。
次に、リチウムイオン二次電池を作製した。上記正極と上記負極を所望の大きさに切断し、正極および負極の未塗布部それぞれに集電タブを超音波溶接した。集電タブとしては、正極にはアルミニウムのリード片、負極にはニッケルのリード片をそれぞれ用いた。次に、多孔性のポリエチレンフィルムからなる厚さ30μmのセパレータを正極及と負極とで挟み、これらを捲回し捲回体を作製した。この捲回体を電池缶に挿入し、負極タブを電池缶の缶底に抵抗溶接により接続し、正極タブには電池蓋を超音波溶接により接続した。次に、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、およびジエチルカーボネート(DEC)を体積比が1:1:1となるように混合した溶媒に、電解質としてLiPFを1mol/lの濃度となるように溶解させて電解液を調整し、これを電池缶に注液し、電池蓋を電池缶にかしめて密封した。上記説明の手順によりリチウムイオン二次電池を作製した。
作製した上記リチウムイオン二次電池を、常温(25℃)において0.3C相当の電流で電圧が4.20Vとなるまで充電し、次いで、電圧4.20Vで電流が0.03C相当となるまで定電圧充電を行った。30分間放置した後、0.3C相当の定電流で電圧3.0Vとなるまで定電流放電を行った。以上の手順を4サイクル行い、4サイクル目の放電容量を測定し、この値を初期電池容量とした。初期容量より、エネルギー密度を求めた。結果を図3の表に示す。
次に、上記リチウムイオン二次電池の直流抵抗(DCR)を測定してこの電池の出力密度を求めた。具体的には次の通りである。0.3Cで3.7Vまで定電流充電を行った後、1C相当、3C相当、および5C相当の電流値でそれぞれ10秒間放電した。この時の電圧値の傾きをそれぞれ求め、それぞれの傾きを2.5Vまで外挿して限界電流を求め、これらの値から3.7Vにおける出力密度である2780(W/kg)を求めた。結果を図3の表に示す。
次に、50℃の温度での保存試験を行った。具体的には次の通りである。上記リチウムイオン二次電池を0.3C相当の電流で4.20Vまで充電し、その後4.20Vで電流が0.03C相当となるまで定電圧充電を行った。30分間放置した後、50℃の恒温槽にて6ヵ月間保管した。6ヵ月間経過した後、上記リチウムイオン二次電池を恒温槽より取り出して、25℃で3時間放置した。次に、25℃において0.3C相当の電流で電圧が4.20Vとなるまで充電し、次いで、電圧4.20Vで電流が0.03C相当となるまで定電圧充電を行った。30分間放置した後、0.3C相当の定電流で電圧3.0Vとなるまで定電流放電を行い、その際の放電容量を測定し、この値を保存電池容量とした。
以上の測定により得られた結果を用いて、下記式により保存容量維持率を算出したところ82(%)であった。結果を図3の表に示す。
保存容量維持率(%)=(保存電池容量)/(初期電池容量)
(実施例2)
負極活物質を作製する際に、分級後の炭素粒子について、実施例1では平均粒径が16.2μmのものを用いたが、本実施例では平均粒径が8.5μmのものを用いた。それ以外は、実施例1と同様の条件でリチウムイオン二次電池を作製し、同様の項目について測定を行った。その結果を図3の表に示す。
(実施例3)
負極活物質を作製する際に、分級後の炭素粒子に対して、実施例1ではフェノール樹脂を用いて被覆層を設けたが、本実施例では被覆層を設けなかった。それ以外は、実施例1と条件でリチウムイオン二次電池を作製し、同様の項目について測定を行った。その結果を図3の表に示す。
(実施例4)
負極活物質を作製する際に、分級後の炭素粒子に対して、実施例1ではフェノール樹脂を用いて被覆を行ったが、本実施例では被覆層を設けなかった。それ以外は、実施例2と同様の条件でリチウムイオン二次電池を作製し、同様の項目について測定を行った。その結果を図3の表に示す。
(実施例5)
負極活物質を作製する際に、分級後の炭素粒子について、実施例3では平均粒径が16.2μmのものを用いたが、本実施例では平均粒径が19.5μmのものを用いた。また、粉砕した生コークスをか焼して黒鉛を得る際の雰囲気温度は、実施例3では2800℃であったが、本実施例では1500℃とした。それ以外は、実施例3と同様の条件でリチウムイオン二次電池を作製し、同様の項目について測定を行った。その結果を図3の表に示す。因みに、本実施例で得られた負極活物質の炭素002面の面間隔は0.345nm、比表面積は3.5m/gであった。
(実施例6)
負極活物質を作製する際に、分級後の炭素粒子について、実施例5では平均粒径が19.5μmのものを用いたが、本実施例では平均粒径が7.8μmのものを用いた。それ以外は、実施例5と同様の条件でリチウムイオン二次電池を作製し、同様の項目について測定を行った。その結果を図3の表に示す。
(実施例7)
負極活物質を作製する際に、実施例1では、分級後の炭素粒子とフェノール樹脂の混合物を乾燥後に800℃の窒素雰囲気で10時間保持したが、本実施例では、400℃の酸素雰囲気で30分保持した後に、800℃の窒素雰囲気で10時間保持した。それ以外は、実施例1と同様の条件でリチウムイオン二次電池を作製し、同様の項目について測定を行った。その結果を図3の表に示す。
(実施例8)
負極活物質を作製する際に、分級後の炭素粒子について、実施例7では平均粒径が16.2μmのものを用いたが、本実施例では平均粒径が8.5μmのものを用いた。それ以外は、実施例7と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製し、同様の項目について測定を行った。その結果を図3の表に示す。
(実施例9)
負極活物質を作製する際に、水素化処理時間について、実施例1では2時間であったが、本実施例では5時間とした。それ以外は、実施例1と同様の条件でリチウムイオン二次電池を作製し、同様の項目について測定を行った。その結果を図3の表に示す。
(実施例10)
負極活物質を作製する際に、水素化処理時間について、実施例1では2時間であったが、本実施例では7時間とした。それ以外は、実施例1と同様の条件でリチウムイオン二次電池を作製し、同様の項目について測定を行った。その結果を図3の表に示す。
(実施例11)
負極活物質を作製する際に、水素化処理温度について、実施例1では1500℃であったが、本実施例では1300℃とした。それ以外は、実施例1と同様の条件でリチウムイオン二次電池を作製し、同様の項目について測定を行った。その結果を図3の表に示す。
比較例
(比較例1)
負極活物質を作製する際に、水素化処理の工程を省略したこと以外は、実施例1と同様の条件でリチウムイオン二次電池を作製し、同様の項目について測定を行った。その結果を図3の表に示す。
(比較例2)
負極活物質を作製する際に、水素化処理の工程を省略したこと以外は、実施例2と同様の条件でリチウムイオン二次電池を作製し、同様の項目について測定を行った。その結果を図3の表に示す。
(比較例3)
負極活物質を作製する際に、水素化処理の工程を省略したこと以外は、実施例3と同様の条件でリチウムイオン二次電池を作製し、同様の項目について測定を行った。その結果を図3の表に示す。
(比較例4)
負極活物質を作製する際に、水素化処理の工程を省略したこと以外は、実施例4と同様の条件でリチウムイオン二次電池を作製し、同様の項目について測定を行った。その結果を図3の表に示す。
(比較例5)
負極活物質を作製する際に、水素化処理の工程を省略したこと以外は、実施例5と同様の条件でリチウムイオン二次電池を作製し、同様の項目について測定を行った。その結果を図3の表に示す。
(比較例6)
負極活物質を作製する際に、水素化処理の工程を省略したこと以外は、実施例6と同様の条件でリチウムイオン二次電池を作製し、同様の項目について測定を行った。その結果を図3の表に示す。
(比較例7)
負極活物質を作製する際に、被覆炭素粒子の水素化処理について、実施例1では水素100%雰囲気で熱処理したが、本比較例では、窒素100%雰囲気で熱処理した。即ち、この比較例においては、水素化処理を行なわなかった。それ以外は、実施例1と同様の条件でリチウムイオン二次電池を作製し、同様の項目について測定を行った。その結果を図3の表に示す。
(比較例8)
負極活物質を作製する際に、被覆炭素粒子の水素化処理について、実施例1では温度1500℃で熱処理を行ったが、本比較例では温度1200℃とした。それ以外は、実施例1と同様の条件でリチウムイオン二次電池を作製し、同様の項目について測定を行った。その結果を図3の表に示す。
(比較例9)
負極活物質を作製する際に、実施例1では、分級後の炭素粒子とフェノール樹脂の混合物を乾燥後に800℃の窒素雰囲気に保持したが、本比較例では、800℃の水素雰囲気に保持した。それ以外は、実施例1と同様の条件でリチウムイオン二次電池を作製し、同様の項目について測定を行った。その結果を図3の表に示す。
(比較例10)
負極活物質を作製する際に、実施例5では、石炭系コールタールを熱処理して生コークスを得る際に実施例5では、400℃の空気雰囲気で行ったが、本比較例では、400℃の水素雰囲気とした。それ以外は、実施例5と同様の条件でリチウムイオン二次電池を作製し、同様の項目について測定を行った。その結果を図3の表に示す。
(比較例11)
負極活物質を作製する際に、水素化処理の条件を、500℃の水素プラズマ雰囲気としたこと以外は、実施例1と同様の条件でリチウムイオン二次電池を作製し、同様の項目について測定を行った。その結果を図3の表に示す。
図3の表において、実施例1と比較例1、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3、実施例4と比較例4、実施例5と比較例5、実施例6と比較例6、をそれぞれ比較する。実施例1〜6で作製したリチウムイオン二次電池の負極活物質では、式1により計算された値が1.2以上であるか、または、式2により計算された値が6.0であるか、少なくともいずれか一方を満たす。即ち、実施例1〜6の負極活物質においては、昇温脱離ガス分析(TDS)を行った際、一酸化炭素および/または二酸化炭素の脱離分子数に対する水素の脱離分子数が比較例1〜6に比べて多い。これは、負極活物質の炭素官能基の水素化が十分に行われたことを意味する。その結果、実施例1〜6のリチウムイオン二次電池は、出力密度と保存容量維持率のいずれについても、比較例1〜6のリチウムイオン二次電池に比べて優れたものとなったと考えられる。
実施例7〜11のリチウムイオン二次電池についても、実施例1〜6のリチウムイオン二次電池と同等の出力密度と保存容量維持率が得られている。
比較例7では、負極活物質を作成する際に、被覆炭素粒子を水素雰囲気ではなく窒素雰囲気で熱処理している。即ち、被覆炭素粒子表面の炭素官能基の水素化は行われていない。その結果、このような負極活物質を用いて作製された比較例7のリチウムイオン二次電池では、出力密度についても、また、保存容量維持率についても、実施例1のリチウムイオン二次電池に及ばなかったものと考えられる。
比較例8では、負極活物質を作成する際に、被覆炭素粒子は水素雰囲気で熱処理されている。しかし、実施例1では温度が1500℃であるのに比べて、比較例8ではこれより300℃低い1200℃であり、炭素官能基が十分に水素化されなかったことが考えられる。その結果、このような負極活物質を用いて作製されたリチウムイオン二次電池では、出力密度についても、また、保存容量維持率についても、実施例1のリチウムイオン二次電池に及ばなかったものと考えられる。
比較例9では、負極活物質を作成する際に、分級後の炭素粒子とフェノール樹脂の混合物を乾燥した後に、実施例1では窒素雰囲気で熱処理しているのに対して、水素雰囲気で熱処理している。また、比較例10では、負極活物質を作成する際に、石炭系コールタールを熱処理して生コークスを得る際に、実施例5では400℃の空気中で熱処理したのに対して、400℃の水素雰囲気中で熱処理している。また、比較例11では、負極活物質を作成する際に、炭素官能基の水素化処理の際に、実施例1では1500℃の水素100%雰囲気で2時間の熱処理したのに対して、水素プラズマ雰囲気で行っている。そのために、炭素粒子に多くの細孔が発生したと考えられ、これらの比較例のリチウムイオン二次電池では、出力密度についても、また、保存容量維持率についても、実施例1のリチウムイオン二次電池に比べて大きく劣るものとなったと考えられる。特に保存容量維持率の低下が著しい。
実施例1〜11より、負極活物質が、式3の条件を満たす場合には、出力密度も保存容量維持率もさらに高い値が得られることがわかる。同様に、負極活物質が、ラマン分光法より求められるR値が0.15以上であること、式4の条件、比表面積が、0.5m2/g以上、かつ20m2/g以下であること、およびX線回折(XRD)測定により求めた炭素002面の面間隔が、0.334nm以上、かつ0.338nm以下であることの条件を満たす場合にも、それぞれ、より高い出力密度とより高い保存容量維持率を実現する効果があることがわかる。
上記の通り、種々の実施の形態及び変形例について説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
10 正極
11 セパレータ
12 負極
13 電池缶
14 正極タブ
15 負極タブ
16 内蓋
17 内圧開放弁
18 ガスケット
19 PTC素子
20 電池蓋

Claims (13)

  1. 炭素を主成分とし、式1および式2の少なくとも一方を満たすことを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極活物質。
    式1: 1.2≦A/B
    式2: 6.0≦A/C
    ただし、式1および式2において、
    Aは、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質に対して、400℃から1250℃までの温度上昇における昇温脱離ガス分析(TDS)において測定された、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質から脱離した水素分子(H)数(個/mg)、
    Bは、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質に対して、300℃から1250℃までの温度上昇における昇温脱離ガス分析(TDS)において測定された、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質から脱離した一酸化炭素分子(CO)数(個/mg)、
    Cは、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質に対して、300℃から1250℃までの温度上昇における昇温脱離ガス分析(TDS)において測定された、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質から脱離した二酸化炭素分子(CO)数(個/mg)、
    である。
  2. 請求項1に記載のリチウムイオン二次電池負極用負極活物質において、
    さらに式3を満たすことを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極活物質。
    式3: 0.8≦A/D
    ただし、式3において、
    Aは、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質に対して、400℃から1250℃までの温度上昇における昇温脱離ガス分析(TDS)において測定された、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質から脱離した水素分子(H)数(個/mg)、
    Dは、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質に対して、25℃から1250℃までの温度上昇における昇温脱離ガス分析(TDS)において測定された、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質から脱離した水分子(HO)数(個/mg)、
    である。
  3. 請求項1および2のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質において、
    前記炭素についてラマン分光法より求めたR値が0.15以上であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極活物質。
  4. 請求項1〜3に記載のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質において、
    さらに式4を満たすことを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極活物質。
    式4: 20≦S4−10/S1−10×100
    ただし、式4において、
    4−10は、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質に対してガス吸着法により求めた、直径4nm以上、かつ10nm以下の細孔表面積、
    1−10は、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質に対してガス吸着法により求めた、直径1nm以上、かつ10nm以下の細孔表面積、
    である。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質において、
    比表面積は、0.5m2/g以上、かつ20m2/g以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極活物質。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質において、
    前記炭素についてX線回折(XRD)により測定した002面の面間隔が、0.334nm以上、かつ0.338nm以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極活物質。
  7. 請求項1〜乃至6のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質を有するリチウムイオン二次電池用負極。
  8. 請求項7に記載のリチウムイオン二次電池負極において、
    請求項1乃至6のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質以外の物質であって、かつ、リチウムイオンを吸蔵放出可能な材料を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極。
  9. 請求項7または8のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用負極を備えたリチウムイオン二次電池。
  10. リチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法であって、
    炭素を主成分とする炭素粒子を雰囲気温度1300℃以上の水素含有雰囲気に所定時間保持して、前記炭素粒子の炭素官能基を水素化する水素化処理工程を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法。
  11. 請求項10のリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法であって、
    前記炭素粒子の表面に非晶質炭素材料により被覆層を形成して被覆炭素粒子とする被覆工程をさらに有し、
    前記水素化処理工程において、前記被覆炭素粒子を雰囲気温度1300℃以上の水素含有雰囲気に所定時間保持して、前記被覆炭素粒子の炭素官能基を水素化することを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法。
  12. 請求項10または11のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法であって、
    前記水素含有雰囲気は水素100%雰囲気であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法。
  13. 請求項10〜12のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法であって、
    前記雰囲気温度は1500℃以上であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法。
JP2013206479A 2013-10-01 2013-10-01 リチウムイオン二次電池用負極活物質、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池、およびリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法 Expired - Fee Related JP6160417B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013206479A JP6160417B2 (ja) 2013-10-01 2013-10-01 リチウムイオン二次電池用負極活物質、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池、およびリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013206479A JP6160417B2 (ja) 2013-10-01 2013-10-01 リチウムイオン二次電池用負極活物質、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池、およびリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2015069970A true JP2015069970A (ja) 2015-04-13
JP2015069970A5 JP2015069970A5 (ja) 2016-05-19
JP6160417B2 JP6160417B2 (ja) 2017-07-12

Family

ID=52836410

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013206479A Expired - Fee Related JP6160417B2 (ja) 2013-10-01 2013-10-01 リチウムイオン二次電池用負極活物質、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池、およびリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6160417B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017033766A (ja) * 2015-07-31 2017-02-09 日産自動車株式会社 非水電解質二次電池用負極活物質、並びにこれを用いた非水電解質二次電池用負極および非水電解質二次電池
JP2018106917A (ja) * 2016-12-26 2018-07-05 新日鐵住金株式会社 負極活物質材料、負極活物質材料の製造方法、負極及び電池
JP2020114804A (ja) * 2020-05-12 2020-07-30 株式会社 東北テクノアーチ 多孔質炭素材料

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH10149831A (ja) * 1996-11-20 1998-06-02 Toray Ind Inc 電池用電極、その製造方法、およびそれを用いた二次電池
JP2004265733A (ja) * 2003-02-28 2004-09-24 Tdk Corp 電極の製造方法および電池の製造方法
WO2013002162A1 (ja) * 2011-06-30 2013-01-03 三洋電機株式会社 非水電解質二次電池及びその製造方法

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH10149831A (ja) * 1996-11-20 1998-06-02 Toray Ind Inc 電池用電極、その製造方法、およびそれを用いた二次電池
JP2004265733A (ja) * 2003-02-28 2004-09-24 Tdk Corp 電極の製造方法および電池の製造方法
WO2013002162A1 (ja) * 2011-06-30 2013-01-03 三洋電機株式会社 非水電解質二次電池及びその製造方法

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017033766A (ja) * 2015-07-31 2017-02-09 日産自動車株式会社 非水電解質二次電池用負極活物質、並びにこれを用いた非水電解質二次電池用負極および非水電解質二次電池
JP2018106917A (ja) * 2016-12-26 2018-07-05 新日鐵住金株式会社 負極活物質材料、負極活物質材料の製造方法、負極及び電池
JP2020114804A (ja) * 2020-05-12 2020-07-30 株式会社 東北テクノアーチ 多孔質炭素材料
JP7093085B2 (ja) 2020-05-12 2022-06-29 株式会社 東北テクノアーチ 多孔質炭素材料

Also Published As

Publication number Publication date
JP6160417B2 (ja) 2017-07-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5994571B2 (ja) リチウムイオン二次電池用負極材及びリチウムイオン二次電池
JP4475326B2 (ja) リチウム遷移金属系化合物粉体、その製造方法、及びその焼成前駆体となる噴霧乾燥体、並びにそれを用いたリチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池
JP3957692B2 (ja) リチウムイオン二次電池負極材料用複合黒鉛粒子、負極およびリチウムイオン二次電池
KR102318855B1 (ko) 부극 활물질, 혼합 부극 활물질 재료 및 부극 활물질의 제조 방법
JP5543533B2 (ja) リチウムイオン二次電池用負極材料
JP4040606B2 (ja) リチウムイオン二次電池用負極材料およびその製造方法、ならびにリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池
KR102297486B1 (ko) 부극 활물질, 혼합 부극 활물질 재료 및 부극 활물질의 제조 방법
KR102314600B1 (ko) 부극 활물질, 혼합 부극 활물질 재료, 및 부극 활물질의 제조 방법
KR20120022731A (ko) 비수 전해액 2 차 전지용 부극 재료 및 이것을 사용한 비수 전해액 2 차 전지
KR20120003442A (ko) 비수 전해액 2 차 전지용 부극 재료 및 이것을 사용한 비수 전해액 2 차 전지
KR102335477B1 (ko) 부극 활물질, 혼합 부극 활물질 재료 및 부극 활물질의 제조 방법
JP7084849B2 (ja) 負極活物質、混合負極活物質、水系負極スラリー組成物、及び、負極活物質の製造方法
KR102292181B1 (ko) 부극 활물질, 혼합 부극 활물질 재료 및 부극 활물질의 제조 방법
JP2018092916A (ja) リチウムイオン二次電池負極材料用炭素質被覆黒鉛質粒子およびその製造方法、リチウムイオン二次電池負極ならびにリチウムイオン二次電池
CN116022771A (zh) 硬碳材料、负极极片以及电化学装置
JP2011243567A (ja) リチウムイオン二次電池用負極材料およびその製造方法、リチウムイオン二次電池用負極ならびにリチウムイオン二次電池
JP4933092B2 (ja) リチウムイオン二次電池用負極材料、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池
JP5394721B2 (ja) リチウムイオン二次電池、そのための負極材料および負極
JP4672958B2 (ja) 黒鉛質粒子、リチウムイオン二次電池、そのための負極材料および負極
JP6160417B2 (ja) リチウムイオン二次電池用負極活物質、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池、およびリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法
KR102335474B1 (ko) 부극 활물질, 혼합 부극 활물질 재료, 및 부극 활물질의 제조 방법
JP4996827B2 (ja) リチウムイオン二次電池負極用金属−黒鉛系複合粒子およびその製造方法、リチウムイオン二次電池用負極材料および負極ならびにリチウムイオン二次電池
KR102608550B1 (ko) 탄소질 입자, 리튬 이온 이차 전지용 음극재, 리튬 이온 이차 전지용 음극, 및 리튬 이온 이차 전지
JP5567232B1 (ja) 複合炭素粒子およびそれを用いたリチウムイオン二次電池
WO2024071116A1 (ja) 二次電池用負極活物質、二次電池、および二次電池用負極活物質の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160329

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160329

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170127

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170131

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170331

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20170331

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20170404

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170516

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170529

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6160417

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20170815

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees