JP2000071377A - 光触媒機能性積層フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

光触媒機能性積層フィルムおよびその製造方法

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JP2000071377A
JP2000071377A JP10245229A JP24522998A JP2000071377A JP 2000071377 A JP2000071377 A JP 2000071377A JP 10245229 A JP10245229 A JP 10245229A JP 24522998 A JP24522998 A JP 24522998A JP 2000071377 A JP2000071377 A JP 2000071377A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 光触媒機能層の透明性や強度などに優れ、農
業用フィルム、窓用保護フィルム等の長期間屋外で使用
される用途に有用な光触媒機能性積層フィルムを提供す
る。 【解決手段】 基材フィルムの少なくとも片面に、平均
粒径0.001〜0.5μmのチタン酸化物および下記
式(1)で表わされる加水分解性ケイ素化合物の加水分
解物を含む組成物からなる光触媒機能層を設けた積層フ
ィルムであって、該積層フィルムの光触媒機能層面と反
対の面にガラス板を貼り合せ、その光触媒機能層面にサ
ンシャインウェザーメーターにて光線を1000時間照
射した後のヘーズ変化が4%未満であることを特徴とす
る光触媒機能性積層フィルム。 (式(1)中、nは0〜8の整数、X1、X2、X3、X4
は、それぞれハロゲン原子または炭素数1〜8のアルコ
キシ基を表わす。ただし、X1、X2、X3、X4は互いに
同一あるいは異なっていてもよい。)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光触媒機能性積層
フィルムおよびその製造方法に関し、詳しくは光酸化触
媒として使用されるチタン酸化物含有層を設けた積層フ
ィルムおよびその製造法に関し、さらに詳しくは光触媒
機能層の透明性や強度などに優れ、農業用フィルム、窓
用保護フィルム等の長期間屋外で使用される用途に有用
な光触媒機能性積層フィルムおよびその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】チタン酸化物は、それ自体が光半導体で
あり、そのバンドギャップ以上のエネルギーを持つ光、
例えば紫外線を照射されると伝導帯に電子が励起し、価
電子帯には正孔(ホール)が生じる。この励起電子およ
び正孔によって生じる電子移動に基づく酸化還元作用に
より近傍の物質を分解するという光触媒活性が知られて
いる。また特許2756474号公報には、励起された
チタン酸化物表面に吸着結合した水に由来するといわれ
る水酸基が多数生じることによる、いわゆる「超親水
化」という現象が記載されている。そこでこれらの光触
媒活性を産業に利用する試みが種々行われている。
【0003】さらに、特許2756474号公報には、
これらの光触媒活性により得られる効果として、超親水
化による基材表面の防曇効果や、また超親水性による油
性汚れの付着防止、水性汚れの易洗浄、さらには洗浄後
残存した汚れの光触媒分解という、いわゆる「セルフク
リーニング効果」などが挙げられ、これらの効果の産業
への利用として、農業用ハウス、テント、窓の表面保護
などといった、防曇、防汚による透明性の保持を要求さ
れる用途が記載されている。
【0004】この光触媒活性を持つチタン酸化物による
光触媒機能性層を種々の基材表面に形成させる方法とし
て多くの方法が試みられている。例えば、チタン酸化物
粉末を加水分解性ケイ素化合物の加水分解物からなる組
成物をバインダーとして基材表面に付着させる方法(特
開平8−164334号公報)が簡便かつ有効な方法と
して知られている。しかし、この方法は加水分解性ケイ
素化合物の加水分解物が重縮合反応により強固な無機バ
インダー被膜を形成する反面、該重縮合反応の重合連鎖
長や架橋度を制御することが難しく、不適当な製造条件
においては目的とする充分に重縮合した被膜を生成させ
られない場合が生じ、その結果として被膜の透明性など
に支障をきたす問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、かか
る問題を解消し、光触媒機能層の透明性や強度などに優
れ、農業用フィルム、窓用保護フィルム等の長期間屋外
で使用される用途に有用な光触媒機能性積層フィルムお
よびその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、以下の2つの
構成からなる。 1.基材フィルムの少なくとも片面に、平均粒径0.0
01〜0.5μmのチタン酸化物および下記式(1)で
表わされる加水分解性ケイ素化合物の加水分解物を含む
組成物からなる光触媒機能層を設けた積層フィルムであ
って、該積層フィルムの光触媒機能層面と反対の面にガ
ラス板を貼り合せ、その光触媒機能層面にサンシャイン
ウェザーメーターにて光線を1000時間照射した後の
ヘーズ変化が4%未満であることを特徴とする光触媒機
能性積層フィルム。
【0007】
【化4】 (式(1)中、nは0〜8の整数、X1、X2、X3、X4
は、それぞれハロゲン原子または炭素数1〜8のアルコ
キシ基を表わす。ただし、X1、X2、X3、X4は互いに
同一あるいは異なっていてもよい。)
【0008】2.基材フィルムとして二軸配向ポリエス
テルフィルムを使用し、ポリウレタン樹脂、ポリエステ
ル樹脂、アクリル系樹脂、ならびにアクリル系樹脂およ
びビニル系樹脂変性ポリエステル樹脂から選ばれた少な
くとも1種類の樹脂、あるいはシランカップリング剤の
水溶液または水分散体を主成分とする組成物を含む塗液
を、配向結晶化の完了前の基材フィルムの少なくとも片
面に塗布した後、乾燥・延伸・熱固定を施すことにより
プライマー層を設け、該プライマー層の上に平均粒径
0.001〜0.5μmのチタン酸化物および式(1)
で表わされる加水分解性ケイ素化合物の加水分解物を含
む組成物からなる光触媒機能層を設けることを特徴とす
る光触媒機能性積層フィルムの製造方法。以下、本発明
を詳細に説明する。
【0009】[積層フィルムの耐候ヘーズ変化]本発明
の光触媒機能性積層フィルムは、光触媒機能層面と反対
の面にガラス板を貼り合せ、その光触媒機能層面にサン
シャインウェザーメーターにて光線を1000時間照射
した後のヘーズ変化が4%未満であることを特徴とする
ものである。該ヘーズ変化が4%以上となるフィルム
は、後述する光触媒機能層被膜のクレージング、あるい
は基材フィルムの劣化などが原因であると考えられ、該
積層フィルムの透明性や被膜および/または基材フィル
ムの機械的強度などに支障をきたす可能性があるため、
長期間屋外で使用される用途の産業用資材として使用に
耐えないため好ましくない。なお、上記ヘーズ変化評価
は、JIS−K−6783bに準じて実施する。
【0010】該ヘーズ変化を4%未満とするような積層
フィルムの製造方法としては、例えば、光触媒機能層形
成後に室温以上250℃未満の温度で10分以上200
時間未満の間処理するような工程を経るものが好まし
い。この加熱処理により、光触媒機能層のバインダー被
膜の重縮合反応が完全なものとなり、強固で透明性の高
い被膜が生成する。この処理を行わない場合、重縮合反
応未完結の光触媒機能層バインダー被膜の残反応が、屋
外使用などの苛酷な環境により促進され、被膜の収縮に
よるひび割れ(クレージング)に起因するフィルムの透
明性低下を引起こしたり、同じく被膜の収縮により積層
フィルムにカールを生じさせたりし、産業用資材として
使用に耐えないものとなる可能性がある。
【0011】上記処理温度は、室温以上基材のガラス転
移温度未満であることが、積層フィルムの平面性保持
や、基材フィルム中の低分子量物析出による積層フィル
ムの透明性低下防止のため特に好ましい。また、上記処
理時間は、1時間以上100時間未満であればさらに好
ましい。
【0012】なお、本発明においては、総処理時間中、
処理温度が上記範囲内にある間の時間をもって加熱処理
の処理時間とし、温度が上記範囲外の、例えば昇温や降
温などに相当する時間は含まれない。
【0013】上記加熱処理を施す方法については特に限
定されないが、光触媒機能層を塗工などの方法により形
成させた後、一旦ロール状に巻取ったものをロール状の
まま改めて加熱する方法をとってもよいし、フィルムを
工程中走行させたまま加熱装置に導いて処理を行う方法
を取ってもよい。また該積層フィルムを所望のサイズに
断裁した後に枚葉で加熱処理を行ってもよい。
【0014】さらに加熱方法についても限定されず、公
知の熱風循環式などの恒温槽を用いてもよいし、紫外
光、可視光、赤外光、マイクロ波などの電磁波、あるい
は超音波などを用いてフィルムおよび/または被膜層を
昇温させる方法を取ってもよい。
【0015】[基材フィルム]本発明における基材フィ
ルムとしては、知られている種々のもの、例えば、ポリ
エチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフ
タレートなどのポリエステル、ポリエチレンやポリプロ
ピレンなどのポリオレフィン、脂肪族/半芳香族/全芳
香族ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリ
フェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリテトラフル
オロエチレンやエチレン−テトラフルオロエチレン共重
合体などのフッ素樹脂などのポリマーを、二軸延伸また
は一軸延伸して得られるフィルム、あるいは延伸せずに
得られるフィルムが挙げられる。これらの中、二軸延伸
ポリエステルフィルムは、機械的特性、耐熱性、耐薬品
性などに優れ、磁気テープ、写真フィルム、電気絶縁材
料、メタライズフィルム、包装用フィルムなどとして使
用されている他に、農業用ハウス、テント、窓の表面保
護フィルムなどといった、屋外で長期間使用される用途
にも広く使われているため好ましい。
【0016】上記ポリエステルとは、芳香族二塩基酸又
はそのエステル形成性誘導体とジオール又はそのエステ
ル形成性誘導体とから製造される結晶性の線状飽和ポリ
エステルであり、具体的には、ポリエチレンテレフタレ
ート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテ
レフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、
ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレ
ート)などが好ましく例示され、ポリエチレンテレフタ
レート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが特に好
ましく例示される。
【0017】また、酸成分および/またはジオール成分
の一部が他成分に置換された共重合体や、ポリアルキレ
ングリコール或は他の樹脂との混合体であっても良い。
【0018】さらに、上記ポリエステルには種々の添加
剤を配合することもできる。例えば、帯電防止剤として
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどを含有させ
ることができる。
【0019】本発明における基材フィルムは、耐候性を
有することが好ましい。基材フィルムに耐候性を付与す
る手段としては、基材フィルムを構成する成分に紫外線
吸収性化合物を含有させる方法が好ましい。さらに紫外
線吸収性化合物としては、式(2)または式(3)で表
わされるベンゾフェノン誘導体が好ましい。
【0020】
【化5】
【0021】(式(2)中、R1、R2は、それぞれ水素
原子または炭素数1〜18のアルキル基、アルコキシ
基、または水酸基を表わす。ただし、R1、R2は互いに
同一あるいは異なっていてもよい。R3〜R10は、それ
ぞれ水素原子または炭化水素基を表わす。ただし、R3
〜R10は互いに同一あるいは異なっていてもよい。)
【0022】
【化6】
【0023】(式(3)中、R1、R2は、それぞれ水素
原子または炭素数1〜18のアルキル基、アルコキシ
基、または水酸基を表わす。ただし、R1、R2は互いに
同一あるいは異なっていてもよい。)
【0024】上記紫外線吸収性化合物の基材フィルム中
の含有量は、0.1〜5重量%、さらに0.2〜3重量
%であることが、紫外線吸収性化合物の不足によるポリ
エステルフィルムの耐候性低下、紫外線吸収性化合物の
過剰によるポリエステル重合度低下に起因する機械的特
性の劣化を防止するため好ましい。
【0025】上記の紫外線吸収性化合物の基材フィルム
中への添加方法は特に限定されないが、例えばポリエス
テルフィルムの場合、ポリエステル重合工程、フィルム
製膜前の溶融工程での樹脂中への練込み、二軸延伸フィ
ルムへの含浸などを挙げることができ、特にポリエステ
ル重合度低下を防止する意味でもフィルム製膜前の溶融
工程での樹脂中への練込みが好ましい。その際の紫外線
吸収性化合物の練込みは、該化合物粉体の直接添加法、
マスターバッチ法などにより行うことができる。
【0026】本発明における基材フィルムは、従来から
知られている方法で製造できる。例えば二軸配向ポリエ
ステルフィルムの場合、上記ポリエステルを乾燥後溶融
し、ダイ(例えばTダイ、Iダイ等)から冷却ドラム上
に押出し冷却して未延伸フィルムとし、該未延伸フィル
ムを二軸方向に延伸し、更に熱固定することによって製
造することができる。フイルムの厚みは、5〜250μ
mが好ましい。ポリエステルフィルムとしては滑剤を含
まないフィルムが透明性、表面平坦性の点で好ましい
が、表面粗さ制御のため滑剤、例えば炭酸カルシウム、
カオリン、シリカ等の如き無機微粒子、触媒残渣の析出
微粒子および/またはシリコーン、ポリスチレン架橋体
の如き有機微粒子等を含有させたフィルムであっても良
い。また本発明のポリエステルフィルム中に添加剤、例
えば安定剤、染料、および難燃剤などを所望により含有
させることができる。
【0027】[プライマー層]本発明の積層フィルム
は、基材フィルムと光触媒機能層との間に、ポリウレタ
ン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、ならびに
アクリル系樹脂およびビニル系樹脂変性ポリエステル樹
脂から選ばれた少なくとも1種類の樹脂、あるいはシラ
ンカップリング剤の水溶液または水分散体を主成分とす
る組成物からなるプライマー層を設けたものであること
が光触媒活性機能層との接着性を向上させるために好ま
しく、特に、基材フィルムにポリエステルフィルムを用
いた場合は、配向結晶化の完了前のポリエステルフィル
ムの少なくとも片面に塗布した後、乾燥・延伸・熱固定
を施すことによりプライマー層を設けたものであること
が芥、塵埃などを巻込むことのないクリーンな雰囲気で
製造することができるので好ましい。
【0028】ここで、結晶配向が完了する前のポリエス
テルフィルムとは、ポリエステルを熱溶融してそのまま
急冷固化させてフィルム状となした未延伸フィルム、未
延伸フィルムを縦方向(長手方向)または横方向(幅方
向)の何れか一方に配向せしめた一軸延伸フィルム、さ
らには縦方向及び横方向の二方向に低倍率延伸配向せし
めたもの(最終的に縦方向または横方向に再延伸せしめ
て配向結晶化を完了せしめる前の二軸延伸フィルム)等
を含むものである。
【0029】プライマー層として用いるポリウレタン樹
脂としては、それを構成する成分として以下のごとき多
価ヒドロキシ化合物、多価イソシアネート化合物、鎖長
延長剤、架橋剤などを例示できる。すなわち、多価ヒド
ロキシ化合物としては、ポリオキシエチレングリコー
ル、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテト
ラメチレングリコールのようなポリエーテル類、ポリエ
チレンアジペート、ポリエチレン−ブチレンアジペー
ト、ポリカプロラクトンのようなポリエステル類、ポリ
カーボネート類、アクリル系ポリオール、ひまし油など
を用いることができる。多価イソシアネート化合物とし
ては、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシ
アネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネー
ト、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイ
ソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイ
ソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどを用い
ることができる。鎖長延長剤あるいは架橋剤の例として
は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエ
チレングリコール、トリメチロールプロパン、ヒドラジ
ン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エチレ
ンジアミン−ナトリウムアクリレート付加物、4,4’
−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジシ
クロヘキシルメタン、水などを用いることができる。こ
れらの化合物の中から、それぞれ適宜1つ以上選択し
て、常法の重縮合−架橋反応によりポリウレタン系樹脂
を合成する。
【0030】プライマー層として用いるポリエステル樹
脂としては、それを構成する成分として以下のような多
価カルボン酸および多価ヒドロキシ化合物を例示でき
る。すなわち、多価カルボン酸としては、テレフタル
酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、4,4’−ジフェ
ニルジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、
2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキ
サンジカルボン酸、2−カリウムスルホテレフタル酸、
5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼ
ライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタ
ル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、無水
トリメリット酸、無水フタル酸、p−ヒドロキシ安息香
酸、トリメリット酸モノカリウム塩、およびそれらのエ
ステル形成性誘導体などを用いることができ、多価ヒド
ロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2−
プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコー
ル、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオー
ル、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペン
チルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノー
ル、p−キシリレングリコール、ビスフェノールA−エ
チレングリコール付加物、ビスフェノールA−1,2−
プロピレングリコール付加物、ジエチレングリコール、
トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポ
リプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコー
ル、ポリテトラメチレンオキシドグリコール、ジメチロ
ールプロピオン酸、グリセリン、トリメチロールプロパ
ン、ジメチロールエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチ
ロールプロピオン酸カリウムなどを用いることができ
る。これらの多価カルボン酸から1種以上、および多価
ヒドロキシ化合物から1種以上選択して、常法の重縮合
反応によりポリエステル樹脂を合成する。
【0031】プライマー層として用いるアクリル系樹脂
としては、アルキルアクリレートあるいはアルキルメタ
クリレートを主要な成分とするものが好ましく、当該成
分が30〜90モル%であり、共重合可能でかつ官能基
を有するビニル単量体成分70〜10モル%を含有する
水溶性あるいは水分散性樹脂である。アルキルアクリレ
ートあるいはアルキルメタクリレートと共重合可能でか
つ官能基を有するビニル単量体は、官能基としてカルボ
キシル基またはその塩、酸無水物基、スルホン酸基また
はその塩、アミド基またはアルキロール化されたアミド
基、アミノ基(置換アミノ基を含む)またはアルキロー
ル化されたアミノ基あるいはそれらの塩、水酸基、エポ
キシ基などを有するビニル単量体である。これらの中で
も特に好ましいものはカルボキシル基またはその塩、酸
無水物基、エポキシ基を有するビニル単量体である。こ
れらの官能基は樹脂中に2種類以上含有されていてもよ
い。アルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレー
トのアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n
−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブ
チル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリ
ル基、ステアリル基、シクロヘキシル基などが挙げられ
る。アルキルアクリレートあるいはアルキルメタクリレ
ートと共重合する官能基を有するビニル系単量体は、反
応性官能基、自己架橋性官能基、親水性基などの官能基
を有する下記の化合物類が使用できる。カルボキシル基
またはその塩、酸無水物基を有する化合物としては、ア
クリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、こ
れらのカルボン酸のナトリウムなどとの金属塩、アンモ
ニウム塩あるいは無水マレイン酸などが挙げられる。ス
ルホン酸基またはその塩を有する化合物としては、ビニ
ルスルホン酸、スチレンスルホン酸、これらのスルホン
酸のナトリウムなどとの金属塩、アンモニウム塩などが
挙げられる。アミド基あるいはアルキロール化されたア
ミド基を有する化合物としては、アクリルアミド、メタ
クリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、メチロー
ル化アクリルアミド、メチロール化メタクリルアミド、
ウレイドビニルエーテル、β−ウレイドイソブチルビニ
ルエーテル、ウレイドエチルアクリレートなどが挙げら
れる。アミノ基あるいはアルキロール化されたアミノ基
あるいはそれらの塩を有する化合物としては、ジエチル
アミノエチルビニルエーテル、2−アミノエチルビニル
エーテル、3−アミノプロピルビニルエーテル、2ーア
ミノブチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルメタ
クリレート、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、そ
れらのアミノ基をメチロール化したもの、ハロゲン化ア
ルキル、ジメチル硫酸、サルトンなどにより4級化した
ものなどが挙げられる。水酸基を有する化合物として
は、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキ
シエチルメタクリレート、β−ヒドロキシプロピルアク
リレート、β−ヒドロキシプロピルメタクリレート、β
−ヒドロキシエチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペ
ンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニル
エーテル、ポリエチレングリコールモノアクリレート、
ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロ
ピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレング
リコールモノメタクリレートなどが挙げられる、エポキ
シ基を有する化合物としては、グリシジルアクリレー
ト、グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。その
他官能基を有する化合物として、ビニルイソシアネー
ト、アリルイソシアネートなどが挙げられる。さらに、
エチレン、プロピレン、メチルペンテン、ブタジエン、
スチレン、α−メチルスチレンなどのオレフィン類や、
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニル
トリアルコキシシラン、アクリロニトリル、メタクリロ
ニトリル、塩化ビニリデン、塩化ビニル、フッ化ビニリ
デン、四フッ化エチレン、酢酸ビニルなどもビニル系単
量体化合物として挙げられる。
【0032】プライマー層として用いるアクリル系樹脂
およびビニル系樹脂変性ポリエステル樹脂は、ポリエス
テルの水溶性または水分散性樹脂中においてアクリル系
樹脂およびビニル系樹脂を重合することによって合成で
きる。このポリエステルを構成する成分としては、前述
のポリエステル樹脂と同様の多価カルボン酸および多価
ヒドロキシ化合物およびこれらの化合物のエステル形成
性誘導体を例示でき、これらの化合物の中から、それぞ
れ適宜1つ以上各成分ごとに選択して、常法の重縮合反
応によりポリエステル樹脂を合成したのち水溶性または
水分散性樹脂とする。アクリル系樹脂およびビニル系樹
脂を構成する成分としては、前述のアクリル系樹脂と同
様のアルキルアクリレートあるいはアルキルメタクリレ
ート、ビニル系単量体化合物を適宜用いることができ
る。本発明のアクリル系樹脂およびビニル系樹脂変性ポ
リエステル樹脂の水溶性または水分散性樹脂としては、
特開平1−165633号公報に記載されているアクリ
ルグラフトポリエステルのような分子構造を持つものも
含まれる。
【0033】プライマー層として用いるシランカップリ
ング剤は、一般式YRSiX3で表わされる化合物であ
る。ここで、Yはビニル基、エポキシ基、アミノ基、メ
ルカプト基等の如き有機官能基、Rはメチレン、エチレ
ン、プロピレン等の如きアルキレン基、Xはメトキシ
基、エトキシ基等の如き加水分解基及びアルキル基であ
る。具体的な化合物としては、例えばビニルトリエトキ
シシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキ
シプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロ
ピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)
−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(ア
ミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシ
ラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を
挙げることができる。好ましいシランカップリング剤と
しては、水溶性又は水分散性を有するシランカップリン
グ剤である。これらの化合物の中から、それぞれ適宜1
つ以上選択して使用するが、特に、エポキシ基含有シラ
ンカップリング剤とアミノ基含有シランカップリング剤
のように互いの官能基が反応しうる組合せのものを適量
併用することは、プライマー層の強度を向上させる意味
で好ましい使用形態の一つである。
【0034】上記シランカップリング剤と共にアルカリ
性無機微粒子を併用して架橋プライマー層を構成するこ
とも好ましい使用形態の一つである。使用されるアルカ
リ性無機微粒子としては、例えば酸化鉄ゾル、アルミナ
ゾル、酸化スズゾル、酸化ジルコニウムゾル、シリカゾ
ル等を挙げることができるが、特にアルミナゾル、シリ
カゾルが好ましい。就中シランカップリング剤の初期反
応性(ダイマー化、トリマー化等)を促進する点から、
シリカゾルが好ましい。
【0035】アルカリ性無機微粒子は表面積の大きい小
粒径のものが良く、平均粒径が1〜150nm、さらに
は2〜100nm、特に3〜50nmであるものが好ま
しい。平均粒径が150nmより大きくなると、表面積
が小さくなりすぎ、シランカップリング剤の反応促進作
用が低下し、かつ架橋プライマー層の表面が粗れるので
好ましくない。他方、平均粒径が1nmより小さくなる
と、表面積が大きすぎ、シランカップリング剤の反応制
御が困難となることがある。
【0036】アルカリ性無機微粒子の量は、シランカッ
プリング剤の量に対して、1〜50重量%、さらには2
〜20重量%であることが好ましい。この量が1重量%
未満であると、架橋反応が進まず、他方50重量%を超
えると塗布液の安定性に欠け、例えば無機微粒子の添加
後短時間で塗布液中に沈澱が発生することがある。
【0037】シランカップリング剤及びアルカリ性無機
微粒子を含有するプライマー塗布液、特に水性塗布液
は、そのpHを4.0〜7.0、好ましくは5.0〜
6.7に調整する。このpが4.0未満になると、無機
微粒子の触媒活性が失われ、他方7.0を超えると塗液
が不安定となり、沈澱が生じることがある。
【0038】このpHを調整する酸としては塩酸、硝
酸、硫酸等の無機酸や蓚酸、蟻酸、クエン酸、酢酸等の
有機酸が用いられるが、特に有機酸が好ましい。
【0039】かかるプライマー塗布液、特に水性液に
は、アニオン界面活性剤、カチオン型界面活性剤、ノニ
オン型界面活性等の界面活性剤を必要量添加して用いる
ことができる。
【0040】かかる界面活性剤としては塗布液の表面張
力を50dyne/cm以下、好ましくは40dyne
/cm以下に降下でき、ポリエステルフィルムおよび/
または耐候性樹脂層への濡れを促進するものが好まし
く、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリ
オキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシ
エチレン―脂肪酸エステルソルビタン脂肪酸エステル、
グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石鹸、アルキル
硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク
酸塩、第4級アンモニウムクロライド塩、アルキルアミ
ン塩酸等を挙げることができる。更に本発明の効果を消
失させない範囲において、例えば帯電防止剤、紫外線吸
収剤、顔料、有機または無機フィラー、潤滑剤、ブロッ
キング防止剤等の他の添加剤を混合することができる。
【0041】プライマー層を形成する塗布液の固形分濃
度は、特に限定されないが、通常30重量%以下であ
り、10重量%以下が更に好ましい。塗布量は走行して
いるフィルム1m2当り0.5〜20g、さらに1〜1
0gが好ましい。
【0042】塗布方法としては、公知の任意の塗工法が
適用できる。例えば、キスコート法、バースコート法、
ダイコート法、リバースコート法、オフセットグラビア
コート法、マイヤバーコート法、グラビアコート法、ロ
ールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコ
ート法、含浸法及びカーテンコート法などを単独又は組
み合わせて適用するとよい。また、塗布液の基材フィル
ムへの濡れ性を向上させる目的で、コロナ放電処理など
公知の方法を用いて基材フィルム表面を活性化させても
よい。
【0043】塗液は好ましくは結晶配向が完了する前の
基材フィルムに塗布され、乾燥され、延伸、熱固定等の
工程に導かれる。例えば水性液を塗布した縦一軸延伸フ
ィルムは、ステンターに導かれて横延伸及び熱固定され
る。この間、塗布液は乾燥され、必要に応じて熱架橋さ
れる。
【0044】基材フィルムの配向結晶化条件、例えば延
伸、熱固定等の条件は、従来から当業界に蓄積された条
件で行うことができる。
【0045】本発明におけるプライマー層は、基材フィ
ルムに対して優れた接着性を奏し、かつ光触媒機能層に
対しても優れた接着性を有する。
【0046】[光触媒機能層]本発明に用いられるチタ
ン酸化物とは、特定エネルギーを持つ光の照射で有機物
の酸化還元に対して触媒作用を示すものであり、純粋な
チタン酸化物の他、含水酸化チタン、水和酸化チタン、
メタチタン酸、オルトチタン酸、水酸化チタンと呼ばれ
ているものを含む。二酸化チタンまたはこれより低次酸
化状態にあるものが特に好ましく用いられる。二酸化チ
タンの結晶型はアナターゼ型、ルチル型、フルッカイト
型のいずれでもよくまたこれらの混合体でも良いが、特
にアナターゼ型が好ましい。
【0047】これらのチタン酸化物は微粉末状であり、
その粒径は光触媒活性の強さから見て0.001〜0.
5μmである必要がある。この微粉末は乾燥状態の粉末
として用いても良いが、後述の加水分解性ケイ素化合物
から誘導されるシリカバインダーと均一分散させるため
に予め分散体としておく事が望ましい。本発明の組成物
中においてチタン酸化物が良好に分散されているか否か
は塗膜を形成したときの光触媒機能に大きく影響する。
【0048】チタン酸化物は種々の公知の方法で製造さ
れる。例えば、 1.硫酸チタニル、塩化チタン、有機チタン化合物など
のチタン化合物を必要に応じて核形成種の存在下に加水
分解する方法、 2.硫酸チタニル、塩化チタン、有機チタン化合物など
のチタン化合物に、必要に応じて核成形種の存在下にア
ルカリを添加し中和する方法、 3.塩化チタン、有機チタン化合物などを気相酸化する
方法、 4.上記1,2の方法で得られたチタン酸化物を焼成す
る方法などが挙げられる。特に、前記1,2の方法で得
られたチタン酸化物は光触媒機能が高いため好ましい。
光触媒機能を更に向上させるためにチタン酸化物表面に
白金、金、銀、銅、パラジウム、ロジウム、ルテニウム
などの金属、酸化ルテニウム、酸化ニッケル等の金属酸
化物、またこれらの金属および/または金属化合物の錯
体などを付着または被覆しても良い。
【0049】これらのチタン酸化物は水などの溶媒に高
度に分散させて使用される。超微粒子となっているチタ
ン酸化物を二次凝集させずに水などの溶媒と均一分散さ
せておくためには、酸性またはアルカリ性として保存し
ておくことが好ましい。酸性下に置くときはpH0.5
〜4、特に1〜3.5とするのが好ましい。分散媒体と
しては水の他、水とアルコールの混合物を用いても良
い。
【0050】本発明で用いられる前記式(1)で表わさ
れる加水分解性ケイ素化合物としては、アルキルシリケ
ート、ハロゲン化ケイ素及びこれらの部分加水分解物で
ある。アルキルシリケートとしてはメチル、エチル、イ
ソプロピルシリケートなどが用いられる。これらのシリ
ケートはいずれも単量体もしくは部分加水分解によって
生成するオリゴマーの形で用いられ、オリゴマーとして
は一般式Sinn-1(OR)2n+2(ただしnは2〜6,
Rは炭素数1〜4のアルキル基)で表わされるアルキル
シリケート縮合物が特に好ましい。これらのオリゴマー
は混合物でも用いられる。
【0051】部分加水分解するときの触媒としては酸、
アルカリのいずれもが使用できる。チタン酸化物分散体
が酸性のときは酸で加水分解したアルキルシリケートが
好ましい。加水分解液の分散溶媒は水または炭素数が1
〜4のアルコールが用いられる。酢酸エチルなどのエス
テル類は、組成物液を不安定にするので好ましくない。
本発明において用いられるケイ素化合物及びその部分加
水分解物は、チタン酸化物を結合させる目的で用いられ
るものであるので以下においてシリカバインダーと呼
ぶ。
【0052】チタン酸化物とシリカバインダーとの混合
は適宜に出来るが、一例を示すと酸性下にある所定量の
二酸化チタン水性分散液を10〜50℃の液温に保持
し、これに秤量したアルキルシリケートもしくは部分加
水分解物を一定時間かけて滴下添加する。滴下終了後、
1〜5時間撹拌下に反応させて組成物液を調製する。ア
ルキルシリケートもしくは部分加水分解物添加の際にこ
れの加水分解触媒を同時に加えても良いし、二酸化チタ
ン分散液中に存在する酸分を利用して加水分解を進めて
も良い。分散媒体としてアルコール系の媒体を用いる場
合は、二酸化チタンの水/アルコール混合媒体分散液
と、アルコール媒体中でアルキルシリケートもしくは部
分加水分解物を50〜1500%加水分解した液とを撹
拌下に混合して本組成物を得ることもできる。
【0053】本発明において加水分解率とは、アルキル
シリケート1モルに対し水2モルの割合で使用した場合
を加水分解率100%として水の使用量によって算出し
たものである。一般式Sinn-1(OR)2n+2の形の部
分加水分解物を用いた場合は、この縮合体1モルに対し
水n+1モルの割合で使用した場合を加水分解率100
%として算出した。
【0054】本発明の組成物中のチタンとシリカとの割
合は、各々二酸化チタンと二酸化ケイ素に換算した重量
比(TiO2/SiO2)で96/4〜30/70とする
ことが好ましい。シリカの割合が70%を超えるとチタ
ン酸化物の光触媒機能が小さくなってしまい、実用性が
乏しくなる。これはチタン酸化物粒子表面を覆うシリカ
の割合が大きくなる。一方、シリカの混合割合が4%以
下であると基材及びチタン酸化物同士の接着強度が充分
でなく指触や振動で容易に脱落してしまい、塗膜として
工業的に使用しにくいものになる。シリカのさらに好ま
しい割合は10〜50%である。
【0055】かかる光触媒機能層は、基材フィルムの少
なくとも片面、プライマー層を設ける構成ではプライマ
ー面に設けられる。
【0056】光触媒機能層を構成する組成物は、基材フ
ィルムのプライマー層を設けた面に塗布され、乾燥、場
合によって低温焼成されて塗膜化される方法が好まし
い。
【0057】上記組成物を含む塗液中の固形分濃度は重
量で30%以下であることが好ましい。ここで固形分と
は全組成物中におけるチタン酸化物とシリカの合計量を
言い、チタン酸化物は二酸化チタンに、シリカは組成物
中のアルキルシリケートもしくはそのオリゴマー中のケ
イ素(Si)分をSiO2に換算した値を用いる。その
他の成分は水分及び/または有機溶媒が主体であり、塗
液を基材面上へ塗布後、乾燥により実質的に除去される
べきものである。好ましい固形分濃度は5〜20%であ
り、5%以下になると基材との接着性は強固になるが塗
膜の厚さ、つまり二酸化チタン量が不十分で光触媒機能
を充分発揮できる塗膜を形成できない。二層塗り、三層
塗りで塗膜厚さを厚くする事は可能であるが、通常は固
形分濃度をわざわざ低くして手間の掛かる二層塗りをす
るメリットは出てこない。しかし、光触媒機能を犠牲に
しても強固な薄い塗膜を必要とする場合など特殊な用途
には用いることができる。一方、固形分濃度が30%を
超えると組成物中の固形物の分散性が悪くなり、組成物
の保存安定性が著しく低下し、僅かな日数でゲル化が生
じ易くなる。また、このような高濃度になると成膜性も
悪く、形成された被膜の基材との接着性が大きく低下
し、指で擦ると剥離してしまうようになるので好ましく
ない。
【0058】本発明の組成物には少量のチタンアルコキ
シド、四塩化チタンを加えても良い。またチタン、ある
いはシランカップリング剤などを加えても良い。更に、
組成物の安定性確保及び濡れ特性を改善するために各種
界面活性剤を加えても良い。また、アルコキシ基を2個
以上含むアルキルシランもしくはハイドロシランを少量
添加しても良いがこれらチタン、シランの化合物は固形
分算出の際のシリカ換算に加えるものとする。
【0059】塗布方法は塗布すべき基材の形状によって
スピンコーティング、スプレーコーティング、バーコー
ト、ディップ法などが適宜に使用される。塗膜の厚さは
0.001〜3μm、特に0.01〜2μmが適当であ
る。チタン酸化物の光触媒活性は、表面に露光し酸化分
解されるべき化合物と接触可能なチタン酸化物の量に関
係するので本来は塗膜の厚さは関係ないが、現実には塗
膜厚さに不均一があり、又粒子の分散は必ずしも理想と
する均一性が得られず、余り薄くすると塗膜表面上のチ
タン酸化物量が少なく光触媒活性が充分でないので前記
程度の厚さにすることが好ましい。このような厚さであ
ると塗膜を透明にすることも可能であり、基材の持つ透
明性や色などを損なうことなく、その表面に光活性を持
つ被膜を形成することが出来る。
【0060】上記の方法で設けられた塗膜は100〜1
80℃の乾燥によって、爪でこすっても容易に剥離しな
い強固な被膜を形成することができる。
【0061】さらに、本発明においてプライマー層を設
ける場合、プライマー層と光機能触媒層との間に前述の
式(1)で表わされる加水分解性ケイ素化合物の加水分
解物からなる層を設けることにより、光触媒作用による
プライマー層の酸化分解を完全に防止することができ、
積層フィルムの長期耐久性が向上するので好ましい。
【0062】かかる加水分解性ケイ素化合物は、前述の
光触媒機能層を構成する加水分解性ケイ素化合物と同一
または同種のものであり、また層を設ける方法も同じ方
法で実施することができる。かかる加水分解性ケイ素化
合物の加水分解物からなる層を設けることにより、プラ
イマー層と光触媒機能層との接着性はさらに向上する効
果がある。
【0063】また、本発明の積層フィルムは、本発明の
効果を阻害しない限りにおいて、その表面に、易接着
性、易滑性、離形性などを付与する目的で表面処理を施
したり、本発明の光触媒機能層の他に、ガスバリア層、
光線反射層、導電層、磁気などの記録層などを設けた
り、あるいは着色や印刷を施してもよい。
【0064】本発明の積層フィルムは、その光触媒活性
と特に基材にポリエステルフィルムを用いた場合の優れ
た機械的特性、耐熱性、耐薬品性などにより屋外使用さ
れる極めて広い種々の用途に利用できる。例えば、農業
用フィルムとして使用すると、防曇効果による透明性保
持のほか、降雨などによる外面の自動浄化が期待でき
る。また、建築物の窓ガラスに貼合せると、窓外面を同
様に自動浄化できるため清掃作業の省略が期待できる。
さらには、車用ミラーやカーブミラーなどの屋外で使用
される鏡に貼り合せるだけで水滴による曇り防止や汚れ
除去に適用できる。
【0065】これらの用途のために、ガラス、金属、プ
ラスチックなどの種々の対象物との貼合せや接着には、
公知の粘着剤や接着剤を使用することができ、光触媒活
性機能を持つ保護フィルムとして、すでに設置されてい
る構造物に対する適用に特に有用である。
【0066】
【実施例】以下、実施例を掲げて本発明を更に詳細に説
明する。なお、例中の「部」は重量部」を意味する。ま
た、積層フィルムの特性は以下の方法で測定、評価し
た。
【0067】(1)屋外曝露促進試験 サンシャインウェザーメーター(スガ試験機(株)製、
WEL−SUN−HCL型)を使用し、JIS−K−6
783bに準じてガラス板上に積層フィルムを光触媒機
能層と反対の面を貼付けた試料積層体に1000時間
(屋外曝露1年間に相当)照射することにより屋外曝露
促進試験を行った。
【0068】(2)耐候性(1;ヘーズ変化) 屋外曝露促進試験実施前後のサンプルについて、ヘーズ
メーター(POIC(株)製、SEP−HS−D1型)
によりヘーズを測定し、屋外曝露促進試験前後のヘーズ
変化をもって、下記の基準により耐候性を評価した。 ○:ヘーズ変化が4%未満 △:ヘーズ変化が4%以上8%未満 ×:ヘーズ変化が8%以上
【0069】(3)耐候性(2;クレージング) 屋外曝露促進試験実施前後のサンプルについて、光触媒
機能層側表面を公知の光学顕微鏡を用いて観察し(対物
レンズ倍率:×200、×50)、下記の基準により耐
候性を評価した。 ◎:ひび割れが全く生じていない ○:ひびの間隔が写真視野範囲中で200μm以上 △:ひびの間隔が写真視野範囲中で20μm以上200
μm未満 ×:ひびの間隔が写真視野範囲中で20μm未満、ある
いは被膜脱落が見られる
【0070】(4)アルデヒド分解性 サンプルを0.8リットルのガラス容器に入れ、悪臭成
分であるアセトアルデヒドを100ppmの濃度となる
量をガラス容器に導入し密封した。次に30分間紫外線
を照射せずに30分間維持した後、サンプル表面での紫
外線強度が1mW/cm2となる量ブラックライト光を
照射した。60分間照射後、ガラス容器中のアセトアル
デヒドの濃度を測定し、下記の基準で評価した。 ○:50ppm未満 △:50ppm以上75ppm未満 ×:75ppm以上
【0071】(5)防曇性 500mlビーカーに100mmlの水を入れ、30℃
で保持した状態で、サンプルフィルムを、光触媒機能層
が内側になるようにしてビーカーのふたをして、室内の
温度を8℃以下に保ち、7日間観察し下記の基準で評価
した。 ○:フィルム表面に曇りがなかった。 ×:フィルム表面に曇りが発生した。
【0072】[実施例1]35℃のo−クロロフェノー
ル中で測定した固有粘度0.65、ガラス転移温度(D
SC昇温20℃/分)78℃のポリエチレンテレフタレ
ート(滑剤500ppm含有)を20℃に維持した回転
冷却ドラム上に溶融押出して厚み480μmの未延伸フ
ィルムを得、次に機械軸方向に3.5倍延伸したのち、
一軸延伸フィルムの片面に、アクリル系樹脂水分散体
(メチルメタクリレート成分(65モル%)、エチルア
クリレート成分(28モル%)、2−ヒドロキシエチル
メタクリレート成分(2モル%)、およびN−メチロー
ルアクリルアミド成分(5モル%)の共重合体、Tg=
45℃)を固形分として40重量部、ポリエステル系樹
脂水分散体(高松油脂(株)製、ペスレジン2000、
Tg=68℃)を固形分として50重量部、ならびに、
平均粒径0.03μmの架橋アクリル系樹脂微粒子水分
散体を固形分として10重量部からなる組成物をイオン
交換水で希釈して固形分濃度2.7重量%とした水性塗
布液を、キスコート法にてフィルム1m2当たり塗布液
重量として約3gの平均塗布量で塗布した。引続き10
5℃にて乾燥しながら横方向に3.9倍延伸し、さらに
210℃で熱処理し、厚み38μmのプライマー被覆ポ
リエステルフィルムを得た。
【0073】該フィルムのプライマー層の上に、加水分
解性ケイ素化合物の加水分解物としてエチルシリケート
を部分加水分解した塗布液(コルコート103X,コル
コート株式会社製)を塗布液にして5g/m2の塗布量
でコーティングし、150℃で1分間乾燥した。さらに
その上に、平均粒径0.07〜0.1μmのアナターゼ
型二酸化チタンとエチルシリケートの組成物として、T
iO2/SiO2に換算して50部/50部となる割合の
組成物を溶媒に溶解し、固形分濃度10%の溶液とした
塗布液(ST−K03、コルコート株式会社製)を塗布
液にして5g/m2の塗布量でコーティングし、150
℃2分間乾燥した。得られた積層フィルムを、熱風循環
式の恒温槽中で40℃3日間熱処理し、前述の評価を行
った。この積層フィルムの特性を表1に示す。
【0074】[実施例2]積層フィルムの加熱処理条件
を、熱風循環式の恒温槽中で70℃4日間に変更する以
外は実施例1と同じ方法で積層フィルムを得た。この積
層フィルムの特性を表1に示す。
【0075】[比較例1]実施例1と同様にして得られ
た積層フィルムを、その後の加熱処理を行わずに試験に
供した。この積層フィルムの特性を表1に示す。光触媒
機能層のエチルシリケート加水分解縮合物バインダーの
重縮合反応が充分でないため、屋外曝露促進試験中も光
触媒機能層の重縮合が進行し、バインダーが収縮してい
く結果クレージングが生じ、試験後のフィルムヘーズは
増加する。またバインダー収縮にともない該フィルムサ
ンプルのカールが著しく、このようなフィルムは長期間
の屋外使用には適さない。
【0076】
【表1】 ------------------------------------------------------------- 耐候性 光触媒活性 ヘーズ変化 クレージング アルデヒド分解性 防曇性 ------------------------------------------------------------- 実施例1 ○ ○ ○ ○ 実施例2 ○ ◎ ○ ○ 比較例1 × × ○ ○ -------------------------------------------------------------
【0077】
【発明の効果】本発明によれば、ポリエステルフィルム
基材の耐候性に優れ、かつ光触媒作用を奏するため防
曇、防汚による透明性の保持などの特性に優れた、屋外
使用に適した積層フィルムおよびその製造方法を提供す
ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4F100 AA20B AA21B AG00C AH02H AH03H AH06D AK25D AK41A AK42A AK51D AK52D AR00B AT00A BA01 BA03 BA04 BA10A BA10C CA07 DE01B DE01D EH461 EJ371 EJ38A EJ421 EJ65D EJ67D EJ861 GB01 GB07 JK01 JL06 JL08B JL09 JM01D JN01 YY00 YY00B

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材フィルムの少なくとも片面に、平均
    粒径0.001〜0.5μmのチタン酸化物および下記
    式(1)で表わされる加水分解性ケイ素化合物の加水分
    解物を含む組成物からなる光触媒機能層を設けた積層フ
    ィルムであって、該積層フィルムの光触媒機能層面と反
    対の面にガラス板を貼り合せ、その光触媒機能層面にサ
    ンシャインウェザーメーターにて光線を1000時間照
    射した後のヘーズ変化が4%未満であることを特徴とす
    る光触媒機能性積層フィルム。 【化1】 (式(1)中、nは0〜8の整数、X1、X2、X3、X4
    は、それぞれハロゲン原子または炭素数1〜8のアルコ
    キシ基を表わす。ただし、X1、X2、X3、X4は互いに
    同一あるいは異なっていてもよい。)
  2. 【請求項2】 基材フィルムが二軸配向ポリエステルフ
    ィルムである請求項1記載の光触媒機能性積層フィル
    ム。
  3. 【請求項3】 二軸配向ポリエステルフィルムが二軸配
    向ポリエチレンテレフタレートフィルムまたは二軸配向
    ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムである請
    求項2記載の光触媒機能性積層フィルム。
  4. 【請求項4】 基材フィルムと光触媒機能層との間に、
    ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹
    脂、ならびにアクリル系樹脂およびビニル系樹脂変性ポ
    リエステル樹脂から選ばれた少なくとも1種類の樹脂、
    あるいはシランカップリング剤の水溶液または水分散体
    を主成分とする組成物からなるプライマー層を設けた請
    求項1〜3のいずれかに記載の光触媒機能性積層フィル
    ム。
  5. 【請求項5】 プライマー層と光触媒機能層との間に式
    (1)で表わされる加水分解性ケイ素化合物の加水分解
    物からなる層を設けた請求項4記載の積層フィルム。
  6. 【請求項6】 基材フィルムが耐候性を有する請求項1
    〜5のいずれかに記載の光触媒機能性積層フィルム。
  7. 【請求項7】 基材フィルムが紫外線吸収性化合物を含
    有する請求項6記載の光触媒機能性積層フィルム。
  8. 【請求項8】 紫外線吸収性化合物が、式(2)または
    式(3)で表わされるベンゾフェノン誘導体である請求
    項7記載の光触媒機能性積層フィルム。 【化2】 (式(2)中、R1、R2は、それぞれ水素原子または炭
    素数1〜18のアルキル基、アルコキシ基、または水酸
    基を表わす。ただし、R1、R2は互いに同一あるいは異
    なっていてもよい。R3〜R10は、それぞれ水素原子ま
    たは炭化水素基を表わす。ただし、R3〜R10は互いに
    同一あるいは異なっていてもよい。) 【化3】 (式(3)中、R1、R2は、それぞれ水素原子または炭
    素数1〜18のアルキル基、アルコキシ基、または水酸
    基を表わす。ただし、R1、R2は互いに同一あるいは異
    なっていてもよい。)
  9. 【請求項9】 基材フィルムとして二軸配向ポリエステ
    ルフィルムを使用し、ポリウレタン樹脂、ポリエステル
    樹脂、アクリル系樹脂、ならびにアクリル系樹脂および
    ビニル系樹脂変性ポリエステル樹脂から選ばれた少なく
    とも1種類の樹脂、あるいはシランカップリング剤の水
    溶液または水分散体を主成分とする組成物を含む塗液
    を、配向結晶化の完了前の基材フィルムの少なくとも片
    面に塗布した後、乾燥・延伸・熱固定を施すことにより
    プライマー層を設け、該プライマー層の上に平均粒径
    0.001〜0.5μmのチタン酸化物および式(1)
    で表わされる加水分解性ケイ素化合物の加水分解物を含
    む組成物からなる光触媒機能層を設けることを特徴とす
    る光触媒機能性積層フィルムの製造方法。
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